<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態に係る通信装置は、通信回路と、装置内部を冷却するファンと、前記通信回路及び前記ファンに同時に電力を供給する電源回路と、前記電源回路において所定の許容電流を超える電流の発生が推定される条件が成立する場合に、前記許容電流以下の電流が発生する初期値から前記ファンの負荷が時間的に増加するように前記ファンの負荷を制御する、負荷制御を実行する制御回路と、を備える。なお、ここでいう許容電流とは、通信回路に正常な動作を行わせ、且つ、過電流保護機能が働かない大きさの電流である。したがって、上記構成により、ファンの負荷が急激に増大して許容電流を超える電流が発生するようなことがなく、電圧降下による通信回路の動作不良及び過電流保護機能による電力供給の停止を防止することができる。
(2) また、本実施形態に係る通信装置では、前記ファンは複数設けられ、前記負荷は、駆動する前記ファンの数であってもよい。これにより、初期には複数のファンのうちの一部が駆動され、その後駆動されるファンの数が増加していくので、電源回路において流れる電流を時間的に徐々に増加させることができ、許容電流を超える大きな電流が急激に発生することを防止できる。
(3) また、本実施形態に係る通信装置では、前記負荷は、前記ファンの回転速度であってもよい。これにより、初期には低い回転速度でファンが駆動され、その後ファンの回転速度が増加していくので、電源回路において流れる電流を時間的に徐々に増加させることができ、許容電流を超える大きな電流が急激に発生することを防止できる。
(4) また、本実施形態に係る通信装置では、前記負荷制御は、前記初期値から前記回転速度がステップ状に増加するように前記回転速度を制御する処理、及び、前記初期値から前記回転速度が連続的に増加するように前記回転速度制御する処理の少なくとも一方を含んでもよい。これにより、時間に応じてステップ状又は連続的にファンの負荷が増加するので、許容電流を超える大きな電流が発生することを防止できる。なお、連続的にファンの付加を増加させる場合、連続的であれば、線形的、2次関数的等、負荷の増加の仕方は問われない。
(5) また、本実施形態に係る通信装置では、前記通信装置は、前記電源回路の出力電圧を検出する電圧センサ、前記電源回路の出力電流を検出する電流センサ、及び、自装置内部の温度を検出する温度センサの少なくとも1つをさらに備え、前記条件は、前記電圧センサ、前記電流センサ、及び前記温度センサの少なくとも1つによる検出値に基づいて定められてもよい。電圧センサ又は電流センサの検出値を用いることにより、所定以上の電圧降下が発生したり、過電流保護機能が働くような過大な電流が発生したりする前に、負荷が時間的に増加するファンの負荷制御を開始することができ、電圧降下及び過大な電流の発生を防止することができる。また、温度センサの検出値を用いることにより、装置内部が高温となる場合に、負荷が時間的に増加するファンの負荷制御を実行して、急激に高負荷となるようなファンの動作を防止することができ、かかる動作による過大な電流の発生を防止することができる。
(6) また、本実施形態に係る通信装置では、前記条件が成立する場合は、前記ファンが前記初期値を超える負荷で駆動される起動処理を前記制御回路が実行する場合であってもよい。これにより、起動処理において急激に高負荷となるようなファンの動作を防止することができ、かかる動作による過大な電流の発生を防止することができる。
(7) また、本実施形態に係る通信装置では、前記ファンは、第1ファンと第2ファンとを備え、前記条件が成立する場合は、前記第1ファンが停止し、前記第2ファンが前記初期値を超える負荷で駆動される異常時制御処理を前記制御回路が実行する場合であり、前記負荷制御は、前記第1ファンの負荷を対象とせず、前記第2ファンの負荷を対象とする処理であってもよい。これにより、故障、保守作業、点検作業、交換作業等により第1ファンが停止した場合に、急激に高負荷となるような第2ファンの動作を防止することができ、かかる動作による過大な電流の発生を防止することができる。
(8) また、本実施形態に係るファンの制御方法は、通信回路及びファンに同時に電力を供給する電源回路において所定の許容電流を超える電流の発生が推定される条件が成立するか否かを判定し、前記条件が成立する場合に、前記許容電流以下の電流が発生する初期値の負荷で前記ファンを駆動し、前記負荷が時間的に増加するように前記ファンの負荷を制御する。これにより、ファンの負荷が急激に増大して許容電流を超える電流が発生するようなことがなく、電圧降下による通信回路の動作不良及び過電流保護機能による電力供給の停止を防止することができる。
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
〔通信装置の構成〕
図1は、本実施形態に係る通信装置の概略構成を示す平面図である。図1では、上方から見たときの装置内部における各構成部品の位置が示されている。本実施形態に係る通信装置100は、通信回路200と、2つのファンユニット301及び302と、2つの電源ユニット401及び402と、電源回路500と、制御回路600とを備える。
電源回路500は、直流電圧変換用のLDO又はDC/DCコンバータ等である。以下の説明では、電源回路500を、48Vの直流を12Vの直流に変換するDC/DCコンバータとする。かかる電源回路500は、電源ユニット401及び402のそれぞれを通じて外部から引き込まれた電力ケーブル411及び421に接続されており、電力ケーブル411及び421から直流を受電する。電源回路500は、通信装置100の構成部品に接続されており、電圧変換した直流を供給する。また、電源回路500は過電流保護回路510を有している。過電流保護回路510は電源回路500において所定以上の電流が流れた場合に動作し、出力電流を制限する。
通信回路200は、通信LSI(Large-Scale Integrated circuit)201と、複数の通信ポート202とを備える。通信LSI201は、例えばL2スイッチ、L3スイッチ、ブリッジ等のネットワーク通信用の集積回路である。通信ポート202は、ネットワークケーブルを接続可能な部品であり、例えば、光信号と電気信号とを相互変換する光トランシーバモジュールから構成される。
ファンユニット301及び302は、通信装置100の背面側に設けられる。ファンユニット301及び302の構成は同一であるので、ここではファンユニット301の構成について説明し、ファンユニット302の構成の説明は省略する。なお、ファンユニット301の構成要素には「31」で始まる3桁の符号を付し、ファンユニット302の構成要素には「32」で始まる3桁の符号を付す。また、ファンユニット301とファンユニット302との同一の構成要素の符号の末尾(一の位)は同一の数字とする。
ファンユニット301は、2つのファン311,312と、駆動回路313とを備える。ファン311,312は、回転することにより外部から通信装置100の内部に空気を取り入れ、通信装置100の内部の空気を外部へ排出する。これにより、通信装置100の内部が冷却される。ファン311,312のそれぞれは電源回路500に接続されており、12Vの直流電力の供給を受ける。駆動回路313は、ファン311,312のそれぞれに接続された集積回路であり、特定の駆動制御処理を実行することができる。駆動回路313は、ファン311,312のそれぞれを独立して制御し、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってファン311,312の回転速度を制御する。以下の説明では、駆動回路313がファン311,312のPWM制御を行う構成とする。
電源ユニット401及び402は、通信装置100の背面に設けられる。電源ユニット401及び402の構成は同一であるので、ここでは電源ユニット401の構成について説明し、電源ユニット402の構成の説明は省略する。なお、電源ユニット401の構成要素には「41」で始まる3桁の符号を付し、電源ユニット402の構成要素には「42」で始まる3桁の符号を付す。また、電源ユニット401と電源ユニット402との同一の構成要素の符号の末尾(一の位)は同一の数字とする。
電源ユニット401は、電力ケーブル411と、遮断器412と、ファン413と、駆動回路414と、電圧変換器415,416とを備える。遮断器412は電力ケーブル411の途中に設けられており、電力ケーブル411に過大な電流が流れると作動し、電路を遮断する。電圧変換器415,416は、直流電圧変換用のLDO又はDC/DCコンバータ等である。電圧変換器415は電力ケーブル411に接続されており、電力ケーブル411から供給された直流を降圧する。また、電圧変換器416は、電圧変換器415に接続されており、電圧変換器415から出力された直流を降圧する。以下の説明では、電圧変換器415を、48Vの直流を12Vの直流に変換するDC/DCコンバータとし、電圧変換器416を、12Vの直流を3.3Vの直流に変換するDC/DCコンバータとする。
ファン413は、回転することにより外部から通信装置100の内部に空気を取り入れ、通信装置100の内部の空気を外部へ排出する。これにより、通信装置100の内部が冷却される。ファン413は電圧変換器415に接続されており、電圧変換器415が出力する12Vの直流電力の供給を受ける。つまり、ファン413は電源回路500には接続されておらず、電源回路500からの電力供給は受けない。
駆動回路414は、ファン413に接続された集積回路であり、特定の駆動制御処理を実行することができる。駆動回路414は、例えば、PWM制御によってファン413の回転速度を制御する。かかる駆動回路414は、電圧変換器416に接続されており、電圧変換器416から出力される3.3Vの直流により動作する。
通信装置100は、上記のように2つのファンユニット301,302及び2つの電源ユニット401,402を備えることによって冗長化されている。つまり、ファンユニット301,302及び電源ユニット401,402は通信装置100が動作中であっても取り外しが可能であり、通信装置100の動作を停止させることなくファンユニット301,302及び電源ユニット401,402の保守、点検、交換作業を行うことができる。
制御回路600は、通信回路200、ファンユニット301及び302、並びに電源ユニット401及び402のそれぞれを制御する。かかる制御回路600は、CPU601と、記憶部602と、メモリ603とを備える。
記憶部602は、不揮発性の記憶装置であり、例えば、フラッシュROMである。記憶部602には、通信装置100を制御するためのコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に使用されるデータが格納される。記憶部602に記憶されるコンピュータプログラムには、後述するようなファンの制御を行うための制御プログラムも含まれる。CPU601が当該制御プログラムを実行することにより、後述するファンの制御機能が発揮される。
CPU601は、上述したコンピュータプログラムを実行することができる。メモリ603は、揮発性メモリであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)である。このメモリ603は、CPU601がコンピュータプログラムを実行するときの作業領域として利用される。かかるCPU601は、通信LSI201、ファンユニット301,302の駆動回路313,323、電源ユニット401,402の駆動回路414,424に接続されており、制御信号を送信することができる。駆動回路313,323,414,424へ送信する制御信号には、PWM信号のデューティー比の指令値が含まれる。駆動回路313,323,414,424のそれぞれは、受信された制御信号に含まれる指令値に応じて、PWM信号を生成し、ファン311,312,321,322,413,423を駆動制御する。
通信装置100には、上記の電源回路500とは別に、複数の電圧変換器501,502,503,504が設けられている。また、ファンユニット301,302のそれぞれには、電圧変換器314,324が設けられている。電圧変換器501,502,503,504,314,324のそれぞれは、直流電圧変換用のLDO又はDC/DCコンバータ等である。かかる電圧変換器501,502,503,504,314,324のそれぞれは、電源回路500の出力側に接続されており、電源回路500から出力された直流を降圧する。以下の説明では、電圧変換器501,314,324のそれぞれを、12Vの直流を3.3Vの直流に変換するDC/DCコンバータとし、電圧変換器502を、12Vの直流を2.5Vの直流に変換するDC/DCコンバータとし、電圧変換器503を、12Vの直流を1.8Vの直流に変換するDC/DCコンバータとし、電圧変換器504を、12Vの直流を1.5Vの直流に変換するDC/DCコンバータとする。ただし、ここで説明する電圧変換器501,502,503,504,314,324の構成は一例であり、かかる構成に限定されない。これらの電圧変換器は、上記とは異なる電圧変換特性を有していてもよい。
かかる電圧変換器501,502,503,504,314,324は、集積回路とその周辺回路用の電源である。電圧変換器501の出力側は、通信回路200及び制御回路600に接続されている。電圧変換器502の出力側は、制御回路600に接続されている。電圧変換器503の出力側は、通信回路200に接続されている。電圧変換器504の出力側は、制御回路600に接続されている。つまり、通信回路200及び制御回路600は、電源回路500から出力された直流を、電圧変換器501,502,503,504による電圧変換後、受電する。
また、電圧変換器314の出力側は、駆動回路313に接続されており、電圧変換器324の出力側は、駆動回路323に接続されている。つまり、駆動回路313,323のそれぞれは、電源回路500から出力された直流を、電圧変換器314,324による電圧変換後、受電する。
上記のように、電源回路500は、ファンユニット301,302と、通信回路200と、制御回路600とで共有される。したがって、電源回路500に許容電流を超える電流が流れると、出力側で電圧降下が生じて通信回路200及び制御回路600の動作不良が発生したり、過電流保護機能によって電力供給が停止したりする可能性がある。そのため、制御回路600が後述するようなファン311,312,321,322の回転速度制御を行い、許容電流を超える電流が発生しないようにする。
また、通信装置100には、電圧センサ701及び温度センサ702が設けられている。電圧センサ701は、電源回路500の出力側に接続されており、電源回路500の出力電圧を検出する。温度センサ702は、通信装置100の筐体内部に設置されており、通信装置100の内部温度を検出する。かかる電圧センサ701及び温度センサ702のそれぞれは、CPU601に接続されており、検出値を送信することができる。
また、ファン311,312,321,322,413,423のそれぞれには図示しない回転センサが設けられており、これらの回転センサの検出信号が駆動回路414を通じてCPU601に送信される。
〔通信装置の動作〕
以下、本実施形態に係る通信装置100の動作について説明する。
(通信装置の起動)
通信装置100の起動時には、制御回路600のCPU601が起動処理を実行する。通信装置100の起動前(つまり、停止時)には、ファン311,312,321,322のそれぞれは停止している。このため、起動時にファン311,312,321,322を例えば最大回転速度で駆動すると、電源回路500において許容電流を超える電流が流れる可能性がある。したがって、起動処理では、許容電流を超える電流の発生が推定されるものとして、CPU601が次に説明するようなファン311,312,321,322の回転速度制御を実行する。
図2は、起動処理の手順の一例を示すフローチャートである。まずCPU601は、ファン311,312,321,322の制御に必要な最低限の設定を行い(ステップS101)、ファン311,312,321,322の回転速度の目標値を設定する(ステップS102)。ステップS102の処理では、目標値を最大回転速度に設定してもよいし、最大回転速度とは異なる回転速度、例えば、最大回転速度の50%に設定してもよい。
次に、CPU601は、負荷増加制御処理を実行する(ステップS103)。図3は、負荷増加制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。負荷増加制御処理は、実施形態に係る負荷制御の一例である。本例における負荷増加制御処理では、CPU601が、ファン311,312,321,322の回転速度を、電源回路500において許容電流以下の電流が発生する初期値から時間的に連続増加するよう制御する。この例では、CPU601がファン311,312,321,322の回転速度を線形的に増加させる制御を行う。
負荷増加制御において、CPU601は、回転速度を初期値に設定する(ステップS151)。次にCPU601は、設定された回転速度に対応するPWM信号のデューティー比を決定する(ステップS152)。図4は、ファンの回転速度特性の一例を示すグラフである。図4において、縦軸はファンの回転速度を示し、横軸はPWM信号のデューティー比を示す。図4に示すように、ファン311,312,321,322の回転速度は、PWM信号のデューティー比に関して単調増加の関係にある。図4において破線で示される部分、即ちデューティー比が下限値未満の部分は、回転速度が安定しない不安定領域である。他方、実線で示される部分、即ちデューティー比が下限値以上の部分は、安定した回転速度が得られる安定領域である。この安定領域における回転数の最小値が下限回転速度である。回転速度の初期値は、例えば下限回転速度である。初期値が下限回転速度とされた場合、ステップS152では、デューティー比の下限値が決定される。また、回転速度の初期値は下限回転速度以外であってもよいが、電源回路500において許容電流を超える電流が生じない程度の回転速度とされる。例えば、回転速度の初期値を0とすることもできる。
なお、図4に示されるファンの回転速度特性は一例であり、これ以外の特性を有するファンも存在する。例えば、図4に示される不安定領域が存在せず、デューティー比が0%でも所定の回転速度で回転するファンもある。このようなファンの場合、許容電流を越える電流が生じない程度の任意の回転速度を初期値に設定することができる。
再び図3を参照する。CPU601は、設定されたデューティー比の指令値を含む制御信号を駆動回路313,323のそれぞれに送信する(ステップS153)。駆動回路313,323のそれぞれは、制御信号を受信し、指令されたデューティー比のPWM信号を生成し、ファン311,312,321,322へと出力する。電源回路500から出力される12Vの直流電圧がPWM信号と同じデューティー比のパルス電圧に成形され、ファン311,312,321,322に印加される。これにより、設定された回転速度によってファン311,312,321,322のそれぞれが動作する。
次にCPU601は、回転速度の現在の設定値が目標値に一致しているか否かを判定する(ステップS154)。回転速度の設定値が目標値に一致していない場合(ステップS154においてNO)、CPU601は、所定の時間変化率にしたがって回転速度の設定値を増加させる(ステップS155)。
図5Aは、回転速度の時間変化率の一例を示すグラフである。図5Aにおいて、縦軸はファンの回転速度を示し、横軸は時間を示す。図5Aに示す例では、時間変化率が一定、即ち線形である。これにより、ファン311,312,321,322の回転速度が急激に増加せず、一定の割合で時間的に増加する。したがって、電源回路500において許容電流を超える電流が流れることを防止できる。他方、許容電流を超える電流が発生する負荷がファン311,312,321,322にかけられなければ、一定以外の時間変化率としてもよい。図5Bは、回転速度の時間変化率の他の例を示すグラフである。図5Bに示す例では、2次関数的に回転速度が時間変化する。このようにすれば、時間経過に応じて回転速度の変化率が大きくなるため、回転速度が目標値に到達するまでの時間を短くすることができるが、その一方で、電源回路500において流れる電流が大きくなる。しかし、電源回路500で発生する電流の最大値を許容電流以下となるようにすれば、このような時間変化率を採用することもできる。かかる時間変化率のデータは、記憶部602に予め記憶されている。
上記のような時間変化率で複数のファン311,312,321,322のそれぞれの回転速度が一律に増加するように制御されることで、許容電流を超える電流が発生するような状況でファン311,312,321,322が動作することがなく、電圧降下による通信回路の動作不良及び過電流保護機能による電力供給の停止を防止することができる。
再び図3を参照する。ステップS155の後、CPU601は、ステップS152へと処理を移す。これにより、設定された回転速度に応じたデューティー比が決定され、ファン311,312,321,322のPWM制御が実行される。以降、ステップS152~S155の処理が繰り返されることにより、記憶部602に記憶された時間変化率によってファン311,312,321,322の回転速度が時間的に増加する。ステップS152~S155の1サイクルに要する時間は数ナノ秒~数マイクロ秒程度であるので、この回転速度の増加は実質連続的となる。
回転速度の設定値が増加した結果、目標値に一致した場合(ステップS154においてYES)、CPU601は、負荷増加制御処理を終了する。上記のような負荷増加制御処理は、ファン311,312,321,322の回転速度が対象である。電源ユニット401,402のファン413,423に対しても同様の回転速度の制御を行うことが可能である。しかし、ファン413,423は電源回路500ではなく、電圧変換器415からの電力供給を受けるため、一時的に大きな電流を必要とする状態となっても、これが電源回路500において許容電流を超える電流が発生する原因とはならない。したがって、ファン413,423に対して、負荷増加制御処理を実行しなくてもよい。
上記の負荷増加制御処理により、ファン311,312,321,322の回転速度が目標値に到達すると、CPU601はその回転速度を維持する回転速度制御を継続して実行する。これにより、回転速度が定常状態で維持される。
図2を参照し、起動処理について説明する。負荷増加制御処理が終了すると、CPU601は、通信装置100の起動に必要な他の設定を行い(ステップS104)、起動処理を終了する。なお、この例では、負荷増加制御処理の後、残りの設定を行う構成としたが、これに限定されない。負荷増加制御処理の実行と同時に、通信装置100の残りの設定を行うこともできる。
(電源回路の出力電圧の異常発生)
起動処理が終了すると、通信装置100は通常の動作状態となり、ファン311,312,321,322及びファン413,423に対して、装置内部の温度によるフィードバック制御を行う。図6は、ファンのフィードバック制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
温度センサ702は、通信装置100の内部温度を継続的に検出し、検出値をCPU601に送信する。CPU601は、温度センサ702による検出温度データを受信する(ステップS201)。次にCPU601は、受信された検出温度が、記憶部602に予め記憶された基準温度以上であるか否かを判定する(ステップS202)。ここで、基準温度は、ファン311,312,321,322の回転速度が急激に増加し、許容電流を越える電流が電源回路500に流れる可能性のある温度を規定する。つまり、通信装置100の内部温度が基準温度以上になると、ファン311,312,321,322の回転速度が急激に増加し、電源回路500に許容電流を越える電流が流れる可能性がある。そのため、この場合には、後述するように負荷増加制御処理を実行し、許容電流を越える電流の発生を抑制する。
検出温度が基準温度未満である場合(ステップS202においてNO)、CPU601は、検出温度に応じてファン311,312,321,322及びファン413,423の回転速度の目標値を設定する(ステップS203)。ステップS203の処理では、例えば通信装置100の目標温度が予め記憶部602に記憶されており、検出温度と目標温度との差に応じて回転速度の目標値を設定する。また、回転速度の目標値設定はこれに限られず、例えば検出温度と回転速度の目標値との対応関係を示すルックアップテーブルが予め記憶部602に記憶されており、CPU601がルックアップテーブルを参照することで、現在の検出温度に対応する回転速度の目標値を設定してもよい。
CPU601は、設定された回転速度の目標値に応じて、PWM信号のデューティー比を決定し(ステップS204)、決定されたデューティー比の指令値を含む制御信号を駆動回路313,323,414,424のそれぞれに送信する(ステップS205)。駆動回路313,323,414,424のそれぞれは、制御信号を受信し、指令されたデューティー比のPWM信号を生成し、ファン311,312,321,322,413,423へと出力する。これにより、回転速度の目標値によってファン311,312,321,322,413,423のそれぞれが動作し、通信装置100の内部が冷却される。
電圧センサ701は、電源回路500の出力電圧を継続的に検出し、検出値をCPU601に送信する。CPU601は、電圧センサ701による検出電圧データを受信する(ステップS206)。次にCPU601は、受信された検出電圧が、記憶部602に予め記憶された基準電圧以下であるか否かを判定する(ステップS207)。
ファン311,312,321,322の回転速度の増加が大きすぎると、電源回路500に許容電流を超える電流が流れ、出力電圧が降下する。基準電圧は、通信回路200及び制御回路600に動作不良を生じさせる電圧値に対応している。つまり、電源回路500の出力電圧が基準電圧以下になると、通信回路200及び制御回路600に動作不良が発生する可能性がある。このため、検出電圧が基準電圧以下である場合(ステップS207においてYES)、電源回路500において許容電流以上の電流の発生が推定され、CPU601は、負荷増加制御処理を実行する(ステップS208)。なお、ステップS208における負荷増加制御処理は、図3に示される負荷増加制御処理と同様であるので、その説明を省略する。負荷増加制御処理が実行されると、ファン311,312,321,322の回転速度は初期値にまで下がり、その後目標値に達するまで時間的に増加する。これにより、電源回路500の出力電圧の降下が解消される。負荷増加制御処理が終了すると、CPU601はステップS210へ処理を移す。また、ステップS207において検出電圧が基準電圧より大きい場合も(ステップS207においてNO)、CPU601はステップS210へ処理を移す。
(通信装置内部の高温発生)
通信装置100の内部で高温が発生した場合、温度によるフィードバック制御を行うと、目標温度と検出温度との差が大きく、冷却するためにファン311,312,321,322,413,423の回転速度が大きく増加することがある。この場合、電源回路500における許容電流を超える電流の発生が推定される。ただし、高温が検出された場合でも、その時点でのファン311,312,321,322の回転速度が十分に高ければ、回転速度を増加してもその増加量は小さく、許容電流を超える電流は発生しない。そこで、本実施形態では、装置内部の温度が基準温度以上である場合に、以下に説明するような処理が行われる。
温度センサ702による検出温度が基準温度以上である場合(ステップ202においてYES)、CPU601は、その時点におけるファン311,312,321,322の回転速度が所定の基準値以上であるか否かを判定する(ステップS209)。回転速度が基準値以上である場合(ステップS209においてYES)、CPU601は、ステップS203に処理を移す。これにより、回転速度が十分に高い場合に、負荷増加制御処理は実行されない。
他方、回転速度が基準値未満である場合(ステップS209においてNO)、許容電流を超える電流の発生が推定される。よって、CPU601は、回転速度の目標値を最大回転速度に設定し(ステップS210)、負荷増加制御処理を実行する(ステップS208)。負荷増加制御処理が終了すると、CPU601はステップS211へ処理を移す。
なお、ステップS210において設定される回転速度の目標値は、十分な冷却効果が得られる回転速度であれば、最大回転速度でなくてもよい。例えば、目標値を最大回転速度の80%に設定することもできる。負荷増加制御処理が実行されると、ファン311,312,321,322の回転速度は初期値から目標値に達するまで時間的に増加する。これにより、電源回路500において許容電流を超える電流の発生を防止しつつ、目標値の回転速度でファン311,312,321,322を駆動することができる。
(ファンの停止)
ファン311,312,321,322,413,423のそれぞれは、故障により停止する場合がある。また、ファンユニット301,302又は電源ユニット401,402が交換、保守、点検作業のために通信装置100の筐体から取り外される場合があり、取り外されたユニットのファンは停止する。CPU601は、ファン311,312,321,322,413,423に取り付けられた回転センサの検出信号を監視し、ファン311,312,321,322,413,423が停止したか否かを判定する(ステップS211)。また、CPU601は、ファンユニット301,302及び電源ユニット401,402との電気接続状態を監視し、ファンユニット301,302及び電源ユニット401,402の一部が取り外され、その結果ファン311,312,321,322,413,423が停止したか否かを判定する(ステップS211)。
ファン311,312,321,322,413,423のいずれもが停止していない場合(ステップS211においてNO)、CPU601はステップS201に処理を戻す。他方、ファン311,312,321,322,413,423の一部が停止した場合(ステップS211においてYES)、冷却能力が低下する。そこで、CPU601は、停止していないファンを所定以上の回転速度で駆動する異常時制御処理を実行する(ステップS212)。かかる異常時制御処理により、冷却能力の低下分が補われる。
図7は、異常時制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。異常時制御処理において、まずCPU601は、停止していないファンの回転速度の目標値を最大回転数に設定する(ステップS251)。
ここで、ファンの回転速度が目標値の最大回転数まで急激に増加すると、電源回路500における許容電流を超える電流の発生が推定される。そこで、本実施形態では、CPU601が負荷増加制御処理を実行する(ステップS252)。
なお、ステップS251において設定される回転速度の目標値は、十分な冷却効果が得られる回転速度であれば、最大回転速度でなくてもよい。例えば、目標値を最大回転速度の80%に設定することもできる。また、ステップS252における負荷増加制御処理は、停止中のファンの回転速度を対象とせず、停止していないファンの回転速度を対象とする処理である。制御対象が異なる以外については、ステップS252における負荷増加制御処理は図3に示される負荷増加制御処理と同様であるので、その説明を省略する。負荷増加制御処理が実行されると、ファン311,312,321,322のうちの動作中のファンの回転速度は初期値から目標値に達するまで時間的に増加する。これにより、電源回路500において許容電流を超える電流の発生を防止しつつ、目標値の回転速度で動作中のファンを駆動することができる。
負荷増加制御処理が終了すると、CPU601は回転速度の目標値を変更せず、回転速度を維持した状態で動作中のファンを制御する回転速度維持制御処理を実行する(ステップS253)。CPU601は、ファンユニット301,302及び電源ユニット401,402との電気接続状態を監視すること等により、停止していたファンが復旧したか否かを判定する(ステップS254)。ファンが復旧していない場合(ステップS254においてNO)、CPU601は、ステップS253へ処理を戻し、回転速度維持制御処理を繰り返す。他方、ファンが復旧した場合には(ステップS254においてYES)、CPU601は異常時制御処理を終了する。
再び図6を参照する。異常時制御処理を終了すると、CPU601はステップS201に処理を戻し、上記のようなフィードバック制御処理を継続する。
〔第1変形例〕
本変形例では、CPU601が、ファン311,312,321,322の回転速度を、電源回路500において許容電流以下の電流が発生する初期値からステップ状に増加させる負荷増加制御処理を実行する。図8は、本変形例に係る負荷増加制御処理の手順を示すフローチャートである。
この負荷増加制御において、CPU601は回転速度を初期値に設定する(ステップS161)。初期値は例えば下限回転速度である。次にCPU601は、設定された回転速度に対応するPWM信号のデューティー比を決定する(ステップS162)。
CPU601は、設定されたデューティー比の指令値を含む制御信号を駆動回路313,323のそれぞれに送信する(ステップS163)。駆動回路313,323のそれぞれは、制御信号を受信し、指令されたデューティー比のPWM信号を生成し、ファン311,312,321,322へと出力する。これにより、設定された回転速度によってファン311,312,321,322のそれぞれが動作する。
次にCPU601は、回転速度の現在の設定値が目標値に一致しているか否かを判定する(ステップS164)。回転速度の設定値が目標値に一致していない場合(ステップS164においてNO)、CPU601は一定時間待機する(ステップS165)。この待機時間は、例えば数ミリ秒~数秒である。
CPU601は、一定時間待機した後、回転速度の設定値を一定量増加させ(ステップS166)、ステップS162へと処理を移す。これにより、設定された回転速度に応じたデューティー比が決定され、ファン311,312,321,322のPWM制御が実行される。以降、ステップS162~S166の処理が繰り返されることにより、ファン311,312,321,322の回転速度がステップ状に増加する。
図9は、回転速度のステップ状の増加パターンの一例を示すグラフである。図9において、縦軸はファンの回転速度を示し、横軸は時間を示す。図9に示されるように、制御初期では下限回転速度とされ、一定時間経過する度に、回転速度が一定量増加する。ただし、回転速度の一回の増加量は、電源回路500で許容電流を超える電流が発生しない程度に設定される。また、待機時間、即ち、回転速度が増加してから次回増加するまでの時間は、1回の回転速度の増加によって増加した電源回路500における電流が、安定するのに必要な時間以上に設定される。これにより、電源回路500において許容電流を超える電流が流れることを防止できる。
再び図8を参照する。回転速度の設定値が増加した結果、目標値に一致した場合(ステップS164においてYES)、CPU601は、負荷増加制御処理を終了する。
〔第2変形例〕
本変形例では、ファン311,312,321,322の回転速度ではなく、駆動されるファンの数を負荷として時間的に増加させる制御を行う。
本変形例におけるファンの制御について具体的に説明する。本変形例では、ファンの制御の目標値を、ファン311,312,321,322の回転速度ではなく、ファン311,312,321,322のうち駆動するファンの台数とする。即ち、上記のステップS102、S203、S209、S212において、ファンの駆動台数の目標値が設定される。例えば、最大の冷却能力を必要とする場合には目標値が最大の「4」に設定され、小さい冷却能力でよい場合には目標値が「1」に設定される。
図10は、本変形例に係る負荷増加制御処理の手順を示すフローチャートである。この負荷増加制御において、CPU601はファン駆動台数を初期値の「1」に設定する(ステップS171)。
次にCPU601は、設定されたファン駆動台数の指令値を含む制御信号を駆動回路313,323に送信する(ステップS172)。この制御信号には、PWM信号のデューティー比、例えば、最大デューティー比を示す指令値を含んでいてもよい。以下の説明では、ファンの駆動台数が「1」のときはファンユニット301の一方のファン311が駆動され、駆動台数が「2」のときはファンユニット301の2つのファン311,312が駆動され、駆動台数が「3」のときはファンユニット301の2つのファン311,312及びファンユニット302の一方のファン321が駆動され、駆動台数が「4」のときは全てのファン311,312,321,322が駆動されることとする。また、駆動されるファンは最大の回転速度、例えば、最大デューティー比のPWM信号による制御が行われることとする。
駆動回路313,323は、制御信号を受信し、指令された駆動台数のファンを駆動する。
次にCPU601は、ファン駆動台数の現在の設定値が目標値に一致しているか否かを判定する(ステップS173)。ファン駆動台数の設定値が目標値に一致していない場合(ステップS173においてNO)、CPU601は一定時間待機する(ステップS174)。この待機時間は、例えば数ミリ秒~数秒である。
CPU601は、一定時間待機した後、ファン駆動台数の設定値を1つ増加させ(ステップS175)、ステップS172へと処理を移す。これにより、設定された駆動台数のファンが駆動される。以降、ステップS172~S175の処理が繰り返されることにより、ファン311,312,321,322の駆動台数が順次増加する。
駆動台数の設定値が増加した結果、目標値に一致した場合(ステップS173においてYES)、CPU601は、負荷増加制御処理を終了する。
上記のようにファン311,312,321,322の駆動台数が順次増加するように制御されることで、許容電流を超える電流が発生するような状況でファン311,312,321,322が動作することがなく、電圧降下による通信回路の動作不良及び過電流保護機能による電力供給の停止を防止することができる。
なお、本変形例において、ファン311,312,321,322の一部が停止した場合、停止していないファンの駆動台数が順次増加する制御が行われる。例えばファンユニット301が交換のため通信装置100の筐体から取り外された場合、ファンユニット302のファン321,322が順次駆動される。
〔その他の変形例〕
上記の実施形態では、電圧センサ701による検出電圧が基準電圧以下である場合に、負荷増加制御処理を実行する構成としたが、これに限定されない。一定以上の電圧降下が生じた後に負荷増加制御処理を実行しても、その時点では既に通信回路200又は制御回路600の動作不良が発生している可能性がある。したがって、一定以上の電圧降下が発生する前に、電圧降下の発生を推定し、負荷増加制御処理を実行することが重要である。このため、例えば、電圧センサ701による検出電圧と基準電圧との比較結果に加えて、検出電圧の時間変化、即ち時間差分値を用いて、負荷増加制御処理の実行の可否を判定してもよい。検出電圧の時間変化を用いることで、電圧降下の発生を正確に推定することが可能となる。また、検出電圧の時間変化に代えて、又はこれに加えて、他のパラメータ、例えば、検出電圧の時間積分値を使用して、負荷増加制御処理の実行可否を判定してもよい。
また、電源回路500の出力電流を検出する電流センサを設け、この電流センサによる検出電流が予め設定された基準電流以上となる場合に、負荷増加制御処理を実行する構成とすることもできる。これにより、電源回路500における許容電流を超える電流の発生を推定することができる。さらに、例えば、電流センサによる検出電流と基準電流との比較結果に加えて、検出電流の時間変化、即ち時間差分値を用いて、負荷増加制御処理の実行の可否を判定してもよい。検出電流の時間変化を用いることで、過大な電流の発生を正確に推定することが可能となる。また、検出電流の時間変化に代えて、又はこれに加えて、他のパラメータ、例えば、検出電流の時間積分値を使用して、負荷増加制御処理の実行可否を判定してもよい。
また、負荷増加制御処理において、ファン311,312,321,322の回転速度を時間的に増加させる制御と、ファン311,312,321,322の駆動台数を時間的に増加させる制御とを組み合わせてもよい。
また、上記の実施形態では、起動処理において、制御回路600のCPU601が負荷増加制御処理を実行する構成としたが、これに限定されない。CPU601が制御プログラムの初期設定等を実行している間に、駆動回路313,323が、回転速度又はファン駆動台数を時間的に増加させる制御処理を実行する構成としてもよい。この場合、駆動回路313,323は制御回路600に含まれ、制御回路600の一部として機能する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。