図1は、実施例1に係る眼科検査装置のブロック図である。図1に示すように、投影部10、制御部21、電極22、検出器24および表示部30を備えている。投影部10は、光源11、調整部12、走査部13、投影光学系14、駆動回路15および入力回路16を備えている。制御部21は、画像制御部20、信号処理部26および分布生成部28を備えている。
画像制御部20は、網膜に投影する画像を生成する。入力回路16には、画像制御部20から画像信号が入力する。駆動回路15は、入力回路16が取得した画像信号および画像制御部20の制御信号に基づき光源11および走査部13を駆動する。
光源11は、例えば赤色レーザ光(波長:610nm~660nm程度)、緑色レーザ光(波長:515nm~540nm程度)および青色レーザ光(波長:440nm~480nm程度)を出射する。赤色、緑色および青色レーザ光を出射する光源11として、例えばRGB(赤・緑・青)それぞれのレーザダイオードチップと3色合成デバイスとマイクロコリメートレンズとが集積された光源が挙げられる。また光源11は1つの光源であり単一の波長のレーザ光を出射してもよい。
調整部12は、コリメートレンズ、トーリックレンズおよび/またはアパーチャ等を有しており、レーザ光50を成型する。走査部13(スキャナ)は例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等の走査ミラーまたは透過型のスキャナであり、レーザ光50を2次元方向に走査する。投影光学系14は、走査されたレーザ光50を被検者の眼球70に照射する。
電極22には、網膜電位が直接または間接的に加わる。検出器24は、電極22からの応答信号を検出する。信号処理部26は、画像制御部20からの制御信号に基づき検出器24の出力信号を処理する。分布生成部28は、信号処理部26が処理した信号に基づき2次元の分布画像を生成する。表示部30は分布画像(網膜電図)を表示する。検出器24および信号処理部26は、駆動回路15からの同期信号に基づき、光源11がレーザ光50を出射したタイミングで応答信号の検出を開始する。
画像制御部20、信号処理部26および分布生成部28は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムと協働し処理を行ってもよい。画像制御部20、信号処理部26および分布生成部28は、専用に設計された回路でもよい。画像制御部20、信号処理部26および分布生成部28は、1つの回路でもよいし、異なる回路でもよい。表示部30は、例えば液晶ディスプレイ等である。
図2は、実施例1に係る眼科検査装置の光学系を示す図である。眼科検査装置は、マクスウェル視を利用し網膜74に検査用画像を投影する。光源11から出射されたレーザ光は調整部12において開口数(NA)および/またはビーム径が調整される。平面ミラー17により反射されたレーザ光50は走査部13であるMEMSミラーにより2次元に走査される。走査されたレーザ光50はレンズ18および19を介し、被検者の眼球70に照射する。レーザ光50は、水晶体72付近で収束し、硝子体78を通過し網膜74に照射される。眼球70にはコンタクトレンズ型の透明な電極22が装着されている。電極22と接地電極との電位差が応答信号として図1の検出器24に入力する。網膜電位は、網膜と角膜との間の電位であり、接地電極は、例えば前頭部、側頭部、眼尻または耳朶に接触する。ここでの電極22は、コンタクトレンズ型のもので、角膜に接触させる角膜電極である。電極22は、これ以外にも、下眼瞼の皮膚などの被検者の眼の周辺の皮膚に設置する皮膚電極であってもよい。
図3は、実施例1における画像の生成方法を示す図である。図3に示すように、網膜74上に刺激光44を投影する場合について説明する。網膜74上で刺激光44を投影する領域42をタイル状に複数設定し、そのうち領域42aに刺激光44を投影する。この場合、画像制御部20は、網膜74の領域42aに刺激光44を投影し、他の領域42に刺激光44を投影しないような検査用画像40を生成する。この検査用画像40を網膜74に投影するとき、走査部13はレーザ光50を矢印52のように左上から右下までラスタースキャンする。走査部13が駆動しても光源11がレーザ光50を出射しないと、レーザ光50は網膜74に照射されない。図3の破線矢印52ではレーザ光50は出射されない。駆動回路15は、光源11と走査部13とを同期させる。これにより、光源11は、領域42a内の太実線53においてレーザ光50を出射する。これにより、領域42aに刺激光44としてレーザ光50が照射され、他の領域42にはレーザ光50は照射されない。このように、検査用画像40は網膜74内の領域42aに刺激光44が投影され、網膜74の他の領域42に刺激光44が投影されないような画像である。
領域42および刺激光44の形状として四角形状で説明するが、領域42および刺激光44の形状は、円形状、楕円形状、または六角形状等の多角形状でもよい。刺激光44は、赤色、緑色および青色レーザ光を含む白色光でもよいし、単一の波長のレーザ光を含む単色光でもよい。領域42の大きさは、例えば10μm×10μmである。図3では、網膜74に投影する検査用画像40を長方形に図示しているが、検査用画像40は網膜74の形状に合わせた円形状または多角形状でもよい。
図4は、実施例1における処理を示すフローチャートである。図5(a)から図5(f)は、実施例1において網膜に投影される画像を示す図である。図4に示すように、画像制御部20は、暗画像41を生成し、投影部10に生成した暗画像41を投影させる(ステップS10)。図5(a)に示すように、網膜74内の複数の領域42には領域42aから42cが含まれる。暗画像41は、全ての領域42に刺激光44を投影しない画像である。投影部10が暗画像41を網膜74に投影すると、網膜74には刺激光44は投影されない、すなわち、網膜74にはレーザ光50は照射されない。投影部10が網膜74に暗画像41を投影する期間は第2の期間である。
画像制御部20は、検査用画像40を生成し、投影部10に生成した検査用画像40を投影させる(ステップS12)。図5(b)に示すように、領域42aに刺激光44として例えば白色光が照射される。領域42a以外の網膜74の領域42にはレーザ光50は照射されない。投影部10が網膜74に検査用画像40を投影する期間は第1の期間である。信号処理部26は検出器24の出力信号を取得する(ステップS14)。例えば、検出器24は、駆動回路15からの同期信号に同期して応答信号を検出している。信号処理部26は、検査用画像40の投影に同期して、検出器24の出力信号の取得を開始する。画像制御部20は、暗画像41を生成し、投影部10に暗画像41を投影させる(ステップS16)。図5(c)に示すように、網膜74に暗画像41が投影され、網膜74にはレーザ光50は照射されない。信号処理部26は、適切なタイミングで検出器24の出力信号の取得を終了する。
画像制御部20は、最後の領域か判定する(ステップS22)。例えば、網膜74内の検査すべき領域42の検査が終了するとYesと判定する。Noのとき、画像制御部20は刺激光44を投影する領域42を変更する(ステップS24)。例えば、刺激光44を投影する領域42を領域42bとする。
図5(d)に示すように、画像制御部20は、刺激光44を領域42bに投影する検査用画像40を生成し、投影部10に生成した検査用画像40を投影させる(ステップS12)。領域42bに刺激光44が投影される。信号処理部26は、領域42bにおける検出器24の出力信号を取得する(ステップS14)。図5(e)に示すように、画像制御部20は、暗画像41を生成し、投影部10に生成した暗画像41を投影させる(ステップS16)。
ステップS22においてNoのとき、ステップS24において、画像制御部20は刺激光44を投影する領域42を領域42cとする。図5(f)に示すように、画像制御部20は、刺激光44を領域42cに投影する検査用画像40を生成し、投影部10に生成した検査用画像40を投影させる(ステップS12)。領域42cに刺激光44が投影される。信号処理部26は領域42cにおける検出器24の出力信号を取得する(ステップS14)。画像制御部20は、暗画像41を生成し、投影部10に生成した暗画像41を投影させる(ステップS16)。
その後、ステップS22においてYesと判定されると、分布生成部28は、信号処理部26の各領域42における検出器24の出力信号に基づき、網膜74内の分布図(網膜電図)を作成する(ステップS26)。表示部30は、分布図を表示する(ステップS28)。
検査用画像40の投影は、例えば1Hzから12Hz周期で行う。検査用画像40の投影期間は例えば8m秒から1000m秒である。信号処理部26は、検査用画像40が投影(すなわち刺激光44の投影)が開始されてからの検出器24の出力信号を処理する。暗画像41の投影期間は例えば50m秒以上(例えば100m秒)である。暗画像41の投影期間は残像効果が消失する期間とする。
図6は、網膜電位の例を示す図である。図6に示すように、時間t0において、網膜74に刺激光44が投影される。網膜電位は一旦マイナス側に変化し、時間t1において網膜電位は最小となる。その後、網膜電位はプラス側に変化する。時間t2において網膜電位は最大となる。その後網膜電位は初期値に戻る。時間t0からt1の期間をT1とし、時間t0からt2の期間をT2とする。網膜電位の最小値と最大値との差を強度H1とする。
図7(a)から図7(c)は、実施例1において分布生成部が生成する画像の例を示す図である。図7(a)に示すように、円48は網膜74に相当する。分布生成部28は、円48内の複数の領域42に図6の網膜電位の波形46aを図示する。例えば領域42bおよび42dでは波形が他の領域42より小さい。図7(b)に示すように、分布生成部28は、円48内の複数の領域42に強度H1の数字46bを図示する。例えば領域42bおよび42dでは強度H1はそれぞれ2.3および3.3であり、他の領域42の強度H1より小さい。図7(c)に示すように、分布生成部28は、円48内の複数の領域42の色46cを付加する。例えば領域42bおよび42dの色は他の領域42の色と異なる。このように、分布生成部28は、網膜74内の網膜電位の分布を表示する画像を生成する。
液晶ディスプレイ等を用い刺激光を網膜に投影する場合、角膜、水晶体および硝子体等の透光体により刺激光が散乱される。これにより、透光体の状態が異なると、網膜74に投影される刺激光44の強度が異なる。このように、網膜電位に網膜感度以外に透光体の状態が影響する。また、透光体で散乱された刺激光44が検査すべき網膜74の領域以外の領域に投影される。これにより、検査すべき領域以外の領域の網膜電位が検出されてしまう。
実施例1によれば、投影部10(プロジェクタ)は、レーザ光50を2次元に走査することで、被検者の網膜74の所定領域42aに刺激光44を投影する。検出器24(ディテクタ)は、網膜74の電位を検出する。図4のステップS26および図7(a)から図7(c)のように、制御部21(コントローラ)は、刺激光44が投影された所定領域42aに対応した網膜74内の位置と検出器24の出力信号とから網膜74の網膜電図を生成する。
このように、ビーム径の小さなレーザ光50を用い刺激光44を含む検査用画像40を構成する。ビーム径の小さなレーザ光(例えばビームの直径が1mm以下好ましくは0.8mm)は、透光体においてほとんど散乱されない。このため、透光体の状態によらず網膜74に投影される刺激光44の強度を一定にできる。また、検査すべき領域以外の領域に散乱光が照射されないため、検査すべき領域以外の領域の網膜電位が検出されてしまうことを抑制できる。よって、刺激した網膜の位置に対応した網膜電位を適切に測定できる。よって、適切な網膜電図を生成できる。
また、投影部10は、レーザ光50を出射する光源11と、駆動することでレーザ光を2次元に走査する走査部13(スキャナ)と、を有する。図3のように、制御部21は、走査部13が駆動する範囲のうち領域42aに対応する一部の領域で光源11にレーザ光50を出射させ、他の領域でレーザ光50を出射させないことで、刺激光44を所定領域42aに投影する。これにより、レーザ光50のビーム径より大きな領域42aに刺激光44を投影できる。
図4から図5(f)のように、制御部21は、異なる時間に網膜74内の異なる複数の所定領域42aから42cに刺激光44を投影する複数の第1の期間と、複数の第1の期間の間に網膜74に刺激光44を投影しない第2の期間と、を設ける。制御部21は、複数の第1の期間に対応する検出器24の出力信号を取得する。これにより、異なる領域42aから42cに対応する検出器24の出力信号を取得し、網膜電図を生成できる。
図7(a)から図7(c)のように、制御部21は、複数の検査用画像40に対応する複数の領域42aから42cと複数の検査用画像40に対応する複数の出力信号とに基づき網膜74の網膜電図を生成する。これにより、適切な網膜電図を生成できる。
[実施例1の変形例1]
図8は、実施例1の変形例1における処理を示すフローチャートである。図8に示すように、ステップS16の後、画像制御部20は、固視用画像を投影するか判定する(ステップS15)。Yesのとき、画像制御部20は、固視用画像を生成し、投影部10に生成した固視用画像を投影させる(ステップS17)。その後、ステップS16に戻る。
ステップS15においてNoのとき、画像制御部20は、刺激光44を投影する領域を次の領域に変更するか判定する(ステップS18)。Noのとき、画像制御部20はステップS12からS17を行なう。Yesのとき、信号処理部26は、同じ領域42において取得した検出器24の出力信号を統計処理する(ステップS20)。その後、ステップS22に進む。ステップS22において最後の領域でないとき、ステップS24において領域を変更した後、刺激光44を投影するときのレーザ光50の強度を設定する(ステップS25)。その後、ステップS12に進む。その他の処理は実施例1と同じであり説明を省略する。
図9(a)から図9(d)は、実施例1の変形例1において網膜に投影される画像を示す図である。画像制御部20は、暗画像41を生成し、投影部10に暗画像41を投影させる(ステップS10)。以下、暗画像41の図示は省略する。図9(a)に示すように、ステップS12において、画像制御部20は、刺激光44を領域42aに投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。ステップS14において信号処理部26は検出器24の出力信号を取得する。ステップS16において、画像制御部20は、暗画像41を生成し、投影部10に暗画像41を投影させる。
ステップS18においてNoのとき、図9(b)のように再度領域42aに刺激光44が投影される。領域42aに刺激光44が所望回数投影されると、ステップS18においてYesと判定される。ステップS20において、信号処理部26は領域42aにおける検出器24の出力信号を統計処理する。信号処理部26は、例えば検出器24の出力波形、強度H1等の平均を算出する。信号処理部26は、検出器24の出力信号が異常のとき、異常な出力信号を統計処理から除外してもよい。例えば、信号処理部26は、期間T1およびT2が所定範囲以外である波形について、統計処理から除外してもよい。
実施例1の変形例1によれば、図9(a)から図9(d)のように、制御部21は、異なる時間に網膜74内の同じ所定領域に刺激光44を投影する複数の第1の期間と、複数の第1の期間の間に網膜74に刺激光44を投影しない第2の期間と、を設ける(図8のステップS12およびS16)。制御部21は、複数の第1の期間に対応する検出器24の出力信号を取得し(ステップS14)、取得した複数の第1の期間に対応する複数の出力信号を統計処理する(ステップS20)。これにより、各領域42の網膜電位をより正確に測定できる。
図10(a)から図10(c)は、実施例1の変形例1において網膜に投影される画像の別の例を示す図である。図10(a)に示すように、ステップS12において、画像制御部20は、領域42eに刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。図10(b)に示すように、次の領域において、画像制御部20は、領域42eとは隣接しない領域42fに刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。図10(c)に示すように、次の領域において、画像制御部20は、領域42gに刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。
図9(a)から図9(c)では、領域42aの後に領域42aに隣接する領域42bに刺激光44を投影する。この場合、領域42bの検出器24の出力信号に領域42aの刺激光44が影響する可能性がある。そこで、直前に刺激光44を投影した領域42eに隣接しない領域42fに刺激光44を投影する。これにより、精度よく網膜電図を測定できる。
図11(a)から図11(c)は、実施例1の変形例1において網膜に投影される画像のさらに別の例を示す図である。図11(a)に示すように、ステップS12において、画像制御部20は、網膜74の周辺に位置する領域42hにレーザ光50の強度が大きい刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。図11(b)に示すように、次の領域において、画像制御部20は、網膜74の中心45に近い領域42iにレーザ光50の強度が小さい刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。図11(c)に示すように、次の領域において、画像制御部20は、網膜74の周辺に位置する領域42jにレーザ光50の強度が大きい刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。このように、画像制御部20は、図8のステップS25において、領域42ごとにレーザ光の強度を設定する。
例えば、網膜74の中心視野に対し周辺視野では網膜74の感度が低い。このため、光強度を同じとすると、網膜74の周辺では、刺激光44を投影する領域を大きくすることになる。または同じ領域42に刺激光44を投影する回数を増やすことになる。そこで、図8のステップS25において、制御部21は、領域42hから42jの網膜74内の位置に応じ刺激光44を投影するときのレーザ光50の強度を異ならせる。例えば、制御部21は、網膜74の中央領域に刺激光44を投影するときのレーザ光50の強度に比べ、網膜74の周辺領域に刺激光44を投影するときのレーザ光50の強度を大きくする。これにより、網膜74内の領域42の感度によらず、刺激光44の大きさおよび/または同じ領域42に刺激光44を投影する回数を同じにできる。
図12(a)から図12(f)は、実施例1の変形例1において網膜に投影される画像のさらに別の例を示す図である。図12(a)において、画像制御部20は、領域42aに刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。その後、図8のステップS15においてYesと判定する。図12(b)に示すように、図8のステップS17において画像制御部20は、固視用画像40aを生成し、投影部10に固視用画像40aを投影させる。固視用画像40aでは、網膜74の中心45付近に固視視標47が投影され、網膜74内のその他の領域にはレーザ光50が照射されない。その後、図12(c)において、画像制御部20は、領域42aに刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。図12(a)から図12(c)では、画像制御部20は、同じ領域42aに刺激光44を投影する間の時間に網膜74に固視視標47を投影する固視用画像40aを生成し、投影部10に投影させる。
図12(d)において、画像制御部20は、領域42aに刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。その後、図8のステップS15においてYesと判定する。図12(e)に示すように、図8のステップS17において画像制御部20は、固視用画像40aを生成し、投影部10に固視用画像40aを投影させる。その後、図12(f)において、画像制御部20は、領域42aとは別の領域42bに刺激光44を投影する検査用画像40を生成し、投影部10に投影させる。図12(d)から図12(f)では、画像制御部20は、異なる領域42aおよび42bに刺激光44を投影する間の時間に網膜74に固視視標47を投影する固視用画像40aを生成し、投影部10に投影させる。
検査の間に被検者が眼球を動かすと、刺激光44が意図しない領域42に投影されてしまう。そこで、図8のステップS17のように、制御部21は、複数の検査用画像40を網膜74に投影する期間(第1の期間)の間に、網膜74の中央領域に被検者の視線を向けさせるための固視視標47を投影する固視用画像40aを生成する。これにより、被検者は固視視標47に視線を向けるため、被検者が眼球を動かすことを抑制できる。
固視視標47を投影したときには、画像制御部20は信号処理部26に検出器24の出力信号を取得させず、信号処理部26は、固視視標47を投影したときの検出器24の出力信号を統計処理から除外する。
固視視標47としては図12(b)および図12(e)のような十字パターン以外にもドットパターン、星状パターン、円形状パターンまたは多角形状パターンでもよい。検査用画像40の投影回数を増やすためには、固視用画像40aの投影頻度は、検査用画像40の投影頻度より低いことが好ましい。例えば固視用画像40aは1秒に1回程度投影する。被検者に固視視標47を固視させるため、固視用画像40aの投影時間は、検査用画像40の投影時間より長いことが好ましい。例えば固視用画像40aの投影期間を100m秒以上とする。
実施例1およびその変形例では、画像制御部20が刺激光44を照射する領域42aと照射しない領域42を含む検査用画像40を生成する例を説明したが、画像制御部20は、刺激光44を照射する領域42のみにレーザ光50を走査させてもよい。すなわち、画像制御部20は網膜74に刺激光44を投影すればよい。また、画像制御部20がレーザ光50を照射しない暗画像41を生成する例を説明したが、画像制御部20は、第2の期間において画像を生成しなくてもよい。すなわち、画像制御部20は、第2の期間において網膜74にレーザ光50を照射しなければよい。
実施例3は、実施例1に係る眼科検査装置に走査型レーザ検眼鏡(SLO:Scanning Laser Ophthalmoscope)の機能を加えた眼科検査装置の例である。以下、実施例1と異なる点を主に説明する。図15は、実施例3に係る眼科検査装置のブロック図である。図15に示すように、実施例3の眼科検査装置は、実施例1の図1に加え、赤外光検出器32、信号処理部33、画像生成部34および操作部35を備えている。投影部10は、実施例1の図1に加え、分光部31、赤外線光学系14aおよび走査部13aを備えている。制御部21は、実施例1の図1に加え、信号処理部33および画像生成部34を備える。
光源11は、可視光線に加え、赤外レーザ光(波長:850nm程度)である不可視光線を出射する。光源11は、1つのモジュール内に、赤色レーザ光、緑色レーザ光、青色レーザ光および赤外レーザ光それぞれのレーザダイオードチップを有する。光源11が出射するレーザ光50には可視光線と不可視光線が含まれる。可視光線と不可視光線との光軸は一致している。
調整部12は、レーザ光50内の可視光線に加え不可視光線を成型する。分光部31は、例えばダイクロイックミラーまたはダイクロイックプリズム等の光学素子であり、レーザ光50を、可視レーザ光50aと、赤外レーザ光50bと、に分光する。投影光学系14は、分光部31で分光された可視レーザ光50aを走査部13によって2次元に走査して被検者の眼球70に照射する。赤外線光学系14aは、分光部31で分光された赤外レーザ光50bを走査部13aによって2次元に走査して被検者の眼球70に照射する。これにより、例えば、走査型レーザ検眼鏡の機能の一部を実現することができる。
赤外光検出器32は、例えばアバランシェフォトダイオードなどのフォトディテクターであり、被検者の眼球70で反射した赤外レーザ光50bを検出する。信号処理部33は、画像制御部20からの制御信号に基づき赤外光検出器32の出力信号を処理する。赤外光検出器32および信号処理部33は、駆動回路15からの同期信号に基づき、光源11が赤外レーザ光50bを出射したタイミングで検出を開始する。画像生成部34は、信号処理部33が処理した信号に基づき2次元の画像を生成する。表示部30は、画像生成部34が生成した画像を表示する。画像制御部20、信号処理部26、33、分布生成部28および画像生成部34は、例えばCPU等のプロセッサがプログラムと協働した機能でもよいし、専用に設計された回路でもよい。
操作部35は、医師等の検査者が刺激光を照射する指定領域を入力するスイッチ、ボタンまたはタッチパネルである。検査者は、表示部30に表示された画像に基づき、刺激光を照射する指定領域を設定する。
図16は、実施例3に係る視覚検査装置の光学系を示す図である。図16に示すように、分光部31において分光された赤外レーザ光50bは、平面ミラー17aで反射され、走査部13aにより2次元に走査される。走査された赤外レーザ光50bは、レンズ18aを透過し合成部36に至る。合成部36は、例えばハーフミラーであり、分光部31において分光され走査部13により走査された可視レーザ光50aと赤外レーザ光50bとを合成する。合成された可視レーザ光50aと赤外レーザ光50bは、光軸がほぼ一致しており、レンズ19を介し、被検者の眼球70に照射される。可視レーザ光50aおよび赤外レーザ光50bは、水晶体72近傍で収束し、硝子体78を通過し網膜74に照射される。
赤外レーザ光50bは網膜74で反射する。反射された赤外レーザ光50bは、レンズ19、合成部36、レンズ18a、走査部13a、平面ミラー17aおよび分光部31の順に赤外レーザ光50bが網膜74に向かって進んできた光路を戻り、ハーフミラー37およびレンズ38を介して赤外光検出器32に入射する。これにより、赤外光検出器32は、網膜74で反射した赤外レーザ光50bを検出する。赤外光検出器32による赤外レーザ光50bの輝度変化などの検出結果によって、眼球70の眼底の状態の検出(眼底の状態情報の取得)を行うことができ、その検出対象の一例として眼底画像を取得することができる。走査部13aは、赤外レーザ光50bによる眼球70の眼底の状態の検出が実現できるよう、例えば1秒間に25フレームの画像が投影される場合に相当するような12.5kHzなどの比較的低い周波数で振動する。一方、走査部13は、例えば、1秒間に60フレームの画像が投影されるような28kHzなどの比較的高い周波数で振動する。
実施例3では、可視レーザ光50aと赤外レーザ光50bとを別々の走査部13および13aで2次元に走査する場合を例に示したが、1つの走査ミラーで2次元に走査する場合でもよい。例えば、28kHzなどの比較的高い周波数で振動する走査ミラーに可視レーザ光50aを照射するとともに、この走査ミラーに可視レーザ光50aよりも広い間隔(長い時間間隔)で赤外レーザ光50bを照射するようにしてもよい。
図17は、実施例3における赤外レーザ光の走査を説明する図である。図17に示すように、赤外線光学系14aの走査部13aは、赤外レーザ光50bを矢印54のように左上から右下までラスタースキャンする。走査部13aが振動しても光源11が赤外レーザ光50bを出射しないと、赤外レーザ光50bは網膜74に照射されない。矢印54のうち実線では赤外レーザ光50bが照射され、破線では赤外レーザ光50bは照射されない。駆動回路15は、光源11からの赤外レーザ光50bの出射と走査部13aの振動とを同期させる。赤外レーザ光50bが網膜74に照射されても、赤外レーザ光50bは不可視光線であることから、被検者は赤外レーザ光50bが照射されたことを認識できない。光源11は、例えば走査部13aの振動のうちの範囲56において赤外レーザ光50bを出射する。
図18は、実施例3における処理を示すフローチャートである。図19(a)から図19(d)は、実施例3において表示部に表示される画像を示す図である。図18に示すように、画像制御部20は、図17のように投影部10に赤外レーザ光50bを網膜に照射させる(ステップS30)。画像制御部20は、ステップS30の前に固視視標を網膜74に照射してもよい。
信号処理部33は、赤外光検出器32の出力信号を取得する(ステップS32)。例えば、赤外光検出器32は、駆動回路15からの同期信号に同期して赤外レーザ光50bを検出している。すなわち、赤外光検出器32は、光源11からの赤外レーザ光50bの出射に同期して赤外レーザ光50bを検出している。信号処理部33は、赤外レーザ光50bの出射に同期して、赤外光検出器32の出力信号の取得を開始する。
所定のフレーム数の赤外レーザ光50bの照射が終了すると、画像生成部34は、信号処理部33が取得した赤外光検出器32の出力信号に基づき、眼球70の検査画像(例えば眼底画像)を生成する(ステップS34)。表示部30は、検査画像を表示する(ステップS36)。
図19(a)に示すように、表示部30に眼底画像88が表示される。符号83は中心窩であり、符号81は視神経乳頭であり、符号82は網膜動脈または網膜静脈である。クロスハッチで病変部84aおよび84bを示している。このように、表示部30に被検者の網膜74の病変部84aおよび84bを表示できる。
図18に戻り、被検者または医師等の検査者は、表示部30に表示された眼底画像に基づき、操作部35を走査して指定領域を入力する。画像制御部20は、操作部35から指定領域を取得する(ステップS38)。
図19(b)に示すように、表示部30に表示された眼底画像88と重なるカーソル85aおよび85bを動かし刺激光を照射する指定領域を指定する。指定領域は1個でもよいし、複数でもよい。
図18に戻り、画像制御部20は、指定領域に刺激光を照射するための検査用画像を生成する(ステップS40)。画像制御部20は、投影部10に検査用画像を投影させる(ステップS12)。信号処理部26は検出器24の出力信号を取得する(ステップS14)。実施例1の図4と同様に、ステップS12の前およびステップS14の後に暗画像を投影してもよい。指定領域が複数の場合は、図4のように、複数の領域についてステップS12およびS14を行ってもよい。
分布生成部28は、信号処理部26の各指定領域における検出器24の出力信号に基づき、網膜74内の分布図(網膜電図)を作成する(ステップS26)。表示部30は、眼底画像に重ねて分布図を表示する(ステップS42)。その後終了する。
図19(c)に示すように、表示部30には、眼底画像88に重なるように指定領域86aおよび86bが表示される。指定領域86aおよび86bには、図7(a)のような波形、図7(b)のように数字または図7(c)のような色が表示される。これにより、眼底画像88の病変部84aおよび84bと指定領域86aおよび86bの網膜電位との関係を容易に把握できる。
実施例3では、検査者が指定領域を指定する例を説明したが、実施例1と同様に、網膜74全体の網膜電位を測定してもよい。図19(d)に示すように、表示部30に眼底画像88に重ね各領域42の網膜電図が表示されている。例えば、病変部84aおよび84bに重なる領域42の一部では他の領域と網膜電図の表示(例えば色)が異なる。これにより、病変部84aおよび84bと正常な部位との網膜電位を把握できる。よって、眼疾患の検出、診断における精度をさらに向上させることができる。
実施例3によれば、赤外線光学系14a(不可視光照射部)は、赤外レーザ光50b(光不可視光線)を2次元に走査することで、被検者の網膜74に赤外レーザ光50bを照射する。赤外光検出器32(不可視光検出器)は、被検者の網膜74で反射した赤外レーザ光50bを検出する。制御部21は、赤外光検出器32の出力信号から被検者の眼底の状態の検出を行う。これにより、網膜電図を生成する眼科検査装置で、眼底の状態の検出を行うことができる。
制御部21は、検出された前記被検者の眼底の状態から、眼底画像を生成する。これにより、眼底の状態を眼底画像として視認することができる。
ステップS36のように、制御部21は、生成した眼底画像88を表示部30に表示させる。ステップS38のように、制御部21は、眼底画像88を視認した検査者(ユーザ)が操作する操作部35から被検者の網膜74の指定領域を取得する。ステップS12のように、制御部21は、投影部10に刺激光を指定領域86aおよびに投影させる。これにより、検査者は、眼底画像88を視認して、病変部84aおよび84b等の網膜電位を検出することができる。
図19(c)および図19(d)のように、制御部21は、眼底画像88と網膜電図とを重ねた画像を生成する。これにより、眼疾患の検出、診断における精度をさらに向上させることができる。
実施例3においても、電極22は、角膜に接触させる角膜電極でなく、下眼瞼の皮膚などの被検者の眼の周辺の皮膚に設置する皮膚電極であってもよく、接地電極は、例えば前頭部、側頭部、眼尻または耳朶に設置されてもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。