以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
以下に説明する各実施の形態に係る自動点検システムでは、プラントなどの現場設備で発生する周期の長いうなり音(稼働音)の音を収集し、収集した音を解析し、音圧の時系列値と、平均値と、変動の幅で表される「うなり音圧」と、うなり音圧の周期(以下、「うなりの周期」と呼ぶ)とを解析結果として、無線親機へ送信する。
[第1の実施の形態]
初めに、本実施の第1の実施の形態に係る自動点検システムの構成例及び動作例について、図1〜図13を参照して説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る自動点検システム1の全体構成例を示すブロック図である。自動点検システム1は、例えば、発電プラント、化学プラント、鉄鋼プラント、変電所等のプラントやビル等の建物に適用される。そして、自動点検システム1は、無線子機10,10’、無線中継機20、無線親機30及び監視端末40を備える。無線子機10,10’と無線中継機20の間、及び、無線中継機20と無線親機30の間は、無線通信経路L1により各種のデータを送受信可能である。また、無線親機30と監視端末40の間は、無線通信経路L2により各種のデータを送受信可能である。なお、無線親機30と監視端末40の間は、有線通信経路により各種のデータを送受信可能としてもよい。
プラントには、例えば、モータ、ポンプ、コンプレッサ、タービン、ボイラ等の音を発生させる設備が設けられている。設備で発生する音の周波数(数Hz〜1Hz以下)は、音の質を表す数十Hz〜数十kHzの周波数に比べはるかに低い。そして、設備で発生する音の大きさが変動する場合がある。このような音の成分を「うなり音」と呼ぶ。
ここで、うなり音について説明する。
図2は、うなり音の例を示す説明図である。
うなり音とは、音圧(音のエネルギの大きさ)が周期的に変動する音の成分のことである。うなり音は、変動の幅を示すうなり音圧と、変動の周期(うなり周期)とで表される。図2には、上述した音の質を表す数十Hz〜数十kHzの高い周波数と、設備で発生する音を表す数Hz〜1Hz以下の低い周波数(うなり周期)の例とが示される。また、図2には、うなり音圧の平均値が表される。うなり音圧の平均値は、変動するうなり音圧を単位時間で平均した値である。
再び図1の説明に戻る。
プラントに設けられ、うなり音を発生する設備の少なくとも一部は、自動点検システム1による監視対象(点検対象)となる。以下の説明では、監視対象となる設備を「点検対象物」と呼ぶ。点検対象物A2の近傍には、無線子機10(子機の一例)が設けられている。無線子機10は、点検対象物A2に接触して設けられてもよいし、点検対象物A2から離れて設けられてもよい。また、異なる点検対象物A2及び点検対象物B3に対して、それぞれ一つずつの異なる無線子機10及び無線子機10’が設けられ、それぞれの無線子機10及び無線子機10’により点検対象物A2及び点検対象物B3を監視する構成としてもよい。また、一つの点検対象物A2に対して無線子機10及び無線子機10’を設け、点検対象物A2の異なる部位をそれぞれの無線子機10及び無線子機10’が監視する構成としてもよい。
無線子機10は、点検対象物A2から発生する音を収集し、音の特徴を検出する「音センサ装置」として用いられる。このため、無線子機10は、点検対象物A2から発生する音を収音し、収音した音の振幅の離散値を所定の期間ずつ時間積分した値を解析した解析結果を得て、無線親機30に解析結果を含むデータを送信する。ここで、振幅は無音状態を基準とした変位である。解析結果を含むデータは、後述する図4に詳細な構成が示されるパケットD1であり、以下の説明では、解析結果を含むデータをパケットD1と呼ぶ。
この無線子機10は、収音部11、解析部12、無線通信部13、電源部14を備える。無線子機10が備える各部は、防水、防塵機能を有する筐体内に格納される。ここでは、無線子機10を、センサ機能と無線通信機能とを一体化した装置として説明する。ただし、別々に構成されたセンサ機能部(収音部11、解析部12)と、無線通信機能部(無線通信部13)とを信号線を通じて接続した装置を無線子機10として扱ってもよい。
収音部11は、点検対象物A2の発する音を収音し、収音した音をアナログの電気信号(アナログ信号)として解析部12に出力する。収音部11が出力するアナログの電気信号は、解析部12へ入力される。
解析部12は、収音部11により収音された音の振幅の離散値を、指定の周波数帯域で所定の期間ずつ時間積分した値で表されるうなり音圧の平均値と、うなり音圧の変動の幅と、うなり音圧の変動の周期とを解析結果として得る。そして、解析部12は、解析結果を無線通信部13へ送る。この解析部12は、高速タイマ15、AD(Analog-to-Digital)変換部16、低速タイマ17、指定帯域音圧抽出部18及び周波数解析部19を備える。
ここで、解析部12の内部構成例と共に、解析部12の内部における機能ブロックで行われる処理について、図2と図3を参照して説明する。
図3は、解析部12の内部処理〈手順1〉〜〈手順3〉の例を示す説明図である。
図3の〈手順1〉には、AD変換部16が高速周期(周期T1)でAD変換処理を行う様子が示される。点検対象物A2から発生する音のアナログ信号の振幅は、サインカーブ状に変動している。そこで、高速タイマ15は、AD変換部16に対してアナログ信号のデジタル値への変換を指示する高速周期信号を出力する。この高速周期信号の周波数は、音質を示す周波数の2倍以上であり、例えば、図3に周期T1(第1周期の一例)として示される。
AD変換部16は、高速タイマ15から高速周期信号を受けて、アナログ信号の振幅に対して周期T1で標本化及び量子化を行い、アナログ信号をデジタル値に変換する。そして、AD変換部16は、指定帯域音圧抽出部18にデジタル値を出力する。
図3の〈手順2〉には、指定帯域音圧抽出部18が指定帯域ごとに低速周期(周期T2)で時間積分による音圧のサンプリングを行う様子が示される。指定帯域とは、低周波数帯域及び高周波数帯域があるが、いずれか一方の帯域だけであってもよい。図中では、低周波数帯域を「指定帯域(低)」と記載し、高周波数帯域を「指定帯域(高)」と記載する。指定帯域は、例えば、帯域指定端末5によって設定される。帯域指定端末5は、例えば、作業者が携帯するタブレット端末等であり、無線子機10の据え付け時に無線子機10に対して有線又は無線で接続される。
作業者は、帯域指定端末5を操作して、指定帯域音圧抽出部18に一つ以上の指定帯域を指定することができる。例えば、点検対象物A2がモータであれば、指定帯域は、モータの回転数で決まる値となる。無線子機10の据え付けが完了すると、帯域指定端末5と無線子機10との通信は切断される。その後、例えば、点検対象物A2を入れ替えたり、点検対象物A2を修理した後に、再び帯域指定端末5が無線子機10に接続され、指定帯域音圧抽出部18に一つ以上の指定帯域が指定されることがある。
なお、帯域指定端末5を用いなくても、例えば、作業者が監視端末40を通じて指定帯域を入力することで、無線親機30が、無線中継機20を介して複数の無線子機10が有する指定帯域音圧抽出部18に指定帯域を一斉に指定してもよい。
低速タイマ17は、指定帯域音圧抽出部18に対して指定の周波数帯域のデジタル値の時間積分(解析)の開始を指示する低速周期信号を出力する。この低速周期信号は、音圧が変動する周波数(うなり音の周波数)の2倍以上であり、例えば、周期T1より長い周期T2(第2周期の一例)であることが図3に示される。指定帯域音圧抽出部18は、低速周期信号を受けて、デジタル値の一時的な記録を開始する。デジタル値の記録は、低速周期信号の周期より短い所定の期間だけ行う。記録したデジタル値は、時系列データとなる。
そして、指定帯域音圧抽出部18は、周期T2でデジタル値の絶対値を加算する時間積分を開始する。指定帯域音圧抽出部18は、この時系列データから、1回目のフーリエ変換などにより周波数帯域毎に、音の強度の分布を導出する。次に、音のうなりが生じる帯域として、予め指定された周波数帯域に絞り、周波数帯域毎に音の強度を積算して抽出する。抽出した音の強度に、時系列データの時間積分で求められる全体の音のエネルギ(即ち音圧)を掛ければ、指定された周波数帯域における音圧の値が得られる。この音圧の値は、うなり音圧の値として扱われる。そして、指定帯域音圧抽出部18は、時間積分により得た音圧の値を、周波数解析部19に出力する。
図3の〈手順3〉には、周波数解析部19が、指定帯域音圧抽出部18によって積分された音圧の変動と、周波数を解析する様子が示される。ここでは、図3の〈手順2〉に示した「指定帯域(低)」を例に挙げて説明する。周波数解析部19は、デジタル値を時間積分した値で表される音圧の変動により、うなり音圧の平均値と、うなり音圧の変動の幅と、うなり音圧の変動の周期とを求める。なお、「指定帯域(高)」についても、周波数解析部19により図3の〈手順3〉と同じ処理が行われ、うなり音圧の平均値と、うなり音圧の変動の幅と、うなり音圧の変動の周期とが求められる。
周波数解析部19は、指定帯域音圧抽出部18から入力され、指定した周波数帯域の音圧の値を一時的に格納する。格納された音圧の値は、周期T2毎に音圧の値が変動する時系列データとして得られる。ここでは、〈手順2〉の低周波数帯域で示された音圧が変動する様子が示される。周波数解析部19は、この時系列データを2回目のフーリエ変換などで周波数解析し、ピークを持つ周波数とその強度から、うなり周期とうなり音圧を導出する。また、周波数解析部19は、平均的な音の大きさとして、うなり音圧の平均値も算出する。周波数解析部19は、これらの値を解析結果として、無線通信部13に出力する。
この周波数解析部19は、無線中継機20、又は、無線親機30、さらには監視端末40に実装されてもよい。周波数解析部19が監視端末40に実装された形態については、後述する図16にて説明する。
無線通信部13は、解析部12が得た解析結果に無線親機30の宛先情報を付したパケットD1を、無線中継機20を介して無線親機30に所定のタイミングで無線送信する。この処理は、無線通信部13が、無線中継機20の無線通信部21と通信することで行われる。解析結果を含むパケットD1は、無線通信経路L1に示すように無線中継機20に送信され、さらに無線中継機20から無線親機30へ送信される。
電源部14は、無線子機10が内蔵する内蔵電池58(後述する図5を参照)に蓄電された電力を供給して、収音部11、解析部12及び無線通信部13を動作させる。内蔵電池58の種類は問わないものとする。
無線中継機20は、プラントに張り巡らされたセンサネットワークの一部を構成しており、上述したように無線子機10,10’から送信されたパケットD1を無線親機30に転送することが可能である。
センサネットワークの一部には、点検対象物A2,B3から発生する異音を検出して点検対象物A2,B3の状態を診断することが可能な音センサネットワークが含まれてもよい。この場合は、センサネットワークは、音センサネットワークの他にも、温度、湿度、圧力、電圧値、電流値、周波数、抵抗値、流量、流速、色、画像等の少なくともいずれか一つ以上の情報を検出することが可能なセンサネットワークを含んでもよい。あるいは、プラント内に設けられたセンサネットワークの全てが音センサネットワークで構成されてもよい。
無線中継機20は、一つの無線子機10、又は複数の無線子機10,10’から無線送信されたパケットD1を受信した後、無線親機30にパケットD1を無線送信することが可能である。また、無線中継機20は、複数の無線子機10,10’から受信したそれぞれのパケットD1を無線親機30に転送することが可能である。具体的には、無線中継機20は、複数の無線子機10と無線通信し、各無線子機10,10’から受信したパケットD1を無線親機30へ送信することができる。ここで、無線中継機20は、複数の無線子機10,10’に対して、パケットD1の送信順を指示して、送信順に従って無線中継機20が無線子機10,10’から受信したデータを、無線中継機20を介して無線受信する。
例えば、無線親機30は、ポーリング方式により順に選択した複数の無線子機10,10’に対して、パケットD1の送信を無線中継機20を介して指示する。無線親機30から指示を受信した無線子機10,10’は、無線中継機20にパケットD1を順に送信する。その後、無線中継機20は、各無線子機10,10’から受信したパケットD1を、指示された送信順に従って無線親機30に向けて順に送信する。このため、無線親機30は、複数の無線子機10,10’から無線中継機20を介して送信されるパケットD1の衝突を避けてパケットD1を受信することができる。なお、近接する複数の無線子機10,10’間では、後述する図12と図13に示すように、いわゆるバケツリレー方式(マルチホップルーティング)で無線子機10,10’同士がパケットD1を無線親機30まで転送することもできる。このとき、パケットD1をバケツリレーする無線子機10(3)(図12〜図14を参照)はパケットD1を中継する無線中継機として機能する。
なお、図1には、1つの無線中継機20だけが設けられた例が示されるが、複数の無線中継機20が設けられてもよい。また、無線通信経路L1が無線中継機20を含まなくてもよい。この場合、無線子機10は無線親機30と直接無線通信することもできる。
無線親機30は、無線子機10から無線中継機20を介して受信したデータ(パケットD1)を管理する。このため、無線親機30は、例えば、パケットD1の内容を解釈して(これを例えばデータパース機能と呼ぶ)、ファイルとして保存する機能を有する。このファイルに記載されるデータの内容は、無線子機10から送信された解析結果がテキストに変換されたものでもよいし、パケットのビット、もしくは、バイト情報をそのままテキスト化したものでもよい。ファイルの形式もタブ区切り、スペース区切り、カンマ区切り等、様々なものが考えられ、作業者が任意に設計すればよい。この無線親機30は、点検対象物A2,B3の状態を監視する監視端末40からの要求に基づいて、データから取り出した解析結果を監視端末40に送信する。このため、無線親機30は、無線子機10から受信した解析結果を保持する。そして、無線親機30は、解析結果から求めた、点検対象物A2,B3の稼働負荷とうなり音圧との関係に基づいて、点検対象物A2,B3に異常が発生したことを監視端末40に通知する。この無線親機30は、無線通信部31と、データ格納部32と、データ公開部33とを備える。
無線通信部31は、無線中継機20と通信する。
データ格納部32は、無線子機10から受信したパケットD1から解析結果を含むデータを取り出し、無線親機30がパケットD1を収集した時刻と対応付けてデータを格納する。これにより、データ格納部32は、データを時系列データ化する。データ格納部32が全ての時系列データを保持可能なストレージ容量を具備していない場合には、外部の情報処理装置、もしくは、情報記憶装置に保存用データを転送してシステム全体としては全ての情報を保持するように構成してもよい。
データ公開部33は、データ格納部32が保持する時系列データや点検対象物A2の異常の可能性を、監視端末40からの要求に応じて監視端末40に提供する。
監視端末40は、無線親機30を通じて、作業者が点検対象物A2,B3の状態を監視するために用いられる。この監視端末40は、無線親機30から受信した解析結果から点検対象物A2,B3の状態を判定して公開する処理を行う。例えば、監視端末40は、時系列データのグラフ表示等を監視結果として、ディスプレイ、プリンタ等へ出力する。監視端末40は、データ格納部32が保持する時系列データのクラスタリング処理などのデータ分析処理を行うことも可能である。
図4は、解析結果を含むパケットD1,D2の構成例を示す。
図4の上側に示すパケットD1は、ヘッダとデータ部によって構成される。データ部には、音圧の平均値、うなり音圧の値、うなり周期の値を表すデータが解析結果として格納される。
ヘッダには、パケットD1が最終的に到達する無線親機30を特定するネットワークアドレス(例えば、IPアドレス)、又は無線親機30の識別情報等で表される宛先情報が含まれている。
音圧の平均値は、図2に示した、うなり音圧を単位時間で平均した値である。
うなり音圧の値は、図3の手順3に示した、周期T2で取得される値である。
うなり周期の値は、図3の手順3に示した、うなり音圧の変動周期を表す値である。
帯域指定端末5によって指定された周波数帯域が1種類であれば、図4の上側に示すパケットD1のように指定帯域IDが付されなくてもよい。また、指定された周波数帯域が複数種類であっても、無線子機10が無線中継機20にパケットD1を送信する順番が周波数帯域ごとに決まっており、無線親機30がパケットD1の送信順を把握しているのであれば、パケットD1に周波数帯域を指定する情報が付されなくてもよい。この場合、一つの無線子機10からチェーン状につながった複数のパケットD1が無線中継機20に送信されることとなる。
一方で、無線子機10毎に指定された複数の周波数帯域が異なっており、無線子機10毎に異なる周波数帯域で得た解析結果を含むデータが無線中継機20に送信される場合がある。あるいは、事前に複数の周波数帯域が無線子機10に指定され、複数の周波数帯域から選択される任意の数の周波数帯域で無線子機10が得た解析結果を含むデータが無線中継機20に送信される場合もある。このような場合、無線親機30は、受信したデータが、どの周波数帯域で得られた解析結果を含むのかを明確にする必要がある。
そこで、図4の下側に示すように、自動点検システム1は、データ部に無線子機ID及び指定帯域IDを付加したパケットD2を用いて、無線子機10から無線中継機20又は無線親機30にパケットD2を送信してもよい。
パケットD2についても、ヘッダとデータ部によって構成される。ただし、パケットD2のデータ部には、音圧の平均値、うなり音圧の値、うなり周期の値に加えて、無線子機ID及び指定帯域IDを含むデータが格納される。
無線子機IDは、パケットD2の作成元である無線子機10を識別するために、無線子機10毎に一意に割り当てられた識別情報である。
指定帯域IDは、作業者によって事前に指定された周波数帯域を識別するために、周波数帯域毎に一意に割り当てられた識別情報である。作業者が指定する複数の周波数帯域毎に異なる指定帯域IDが割り当てられる。このため、パケットD2を受信した無線親機30は、パケットD2に解析結果として含まれる音圧の平均値、うなり音圧の値、うなり周期の値がどの周波数帯域で導出されたものであるかを判断できる。
なお、以下の説明では、自動点検システム1にてパケットD1が伝送される例を示すが、パケットD2が伝送される形態であってもよい。
次に、自動点検システム1の各装置を構成する計算機50,60のハードウェア構成例について、図5と図6を参照して説明する。
図5は、無線子機10を構成する計算機50のハードウェア構成例を示すブロック図である。なお、無線子機10’を構成する計算機50のハードウェア構成例は、無線子機10と同様であるため、以下の説明では、無線子機10に注目して無線子機10を構成する計算機50のハードウェア構成例を説明する。
計算機50は、無線子機10及び無線中継機20で使用されるコンピュータとして用いられるハードウェアである。計算機50は、MPU(Micro Processing Unit)51、主記憶装置52、補助記憶装置53及びバス54を備える。さらに、計算機50は、マイクロフォン55、入出力回路56、通信回路57及び内蔵電池58を備える。各ブロックは、バス54を介して相互に通信可能に接続されている。
MPU51は、本実施の形態に係る無線子機10の各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを補助記憶装置53から読み出して主記憶装置52にロードし、実行する。このため、補助記憶装置53には、ブートプログラム、各種のパラメーターの他に、計算機50を機能させるためのプログラムが記録されている。補助記憶装置53は、MPU51が動作するために必要なプログラムやデータ等を永続的に記録しており、計算機50によって実行されるプログラムを格納したコンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。補助記憶装置53としては、半導体メモリ等からなる不揮発性のメモリが用いられる。
主記憶装置52には、MPU51の演算処理の途中で発生した変数やパラメーター等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメーター等がMPU51によって適宜読み出される。無線子機10では、MPU51がプログラムを実行することで無線子機10内の各部の機能が実現される。また、無線子機10では、収音部11(マイクロフォン55)から受け取ったアナログ信号を変換したデジタル値が補助記憶装置53に一時的に記憶され、解析部12の解析結果についても補助記憶装置53に一時的に記憶される。
マイクロフォン55は、点検対象物A2が発生する音を収音する装置である。ここで、点検対象物A2に異常が発生し始めた時には、可聴領域よりも高い超音波領域の音が発生することが知られている。このため、マイクロフォン55としては、可聴音だけでなく、可聴領域外の音、例えば、点検対象物A2が発生する超音波を収音可能な機能を有してもよい。無線子機10は、点検対象物A2から発する超音波を収音して解析することで、点検対象物A2の異常を正確に、かつ、早期に検出しやすくなる。
入出力回路56は、アナログ信号を入出力するためのインターフェースである。マイクロフォン55から入力したアナログ信号を解析部12のAD変換部16に出力する機能を有する。
通信回路57には、例えば、NIC(Network Interface Card)やIoT(Internet of Things)向け低電力無線モジュールなどが用いられ、NICに接続された無線LAN(Local Area Network)やマルチホップ型低電力無線などからなる無線通信経路を介して各種のデータを装置間で送受信することが可能である。無線子機10では、無線通信部13が通信回路57の動作を制御して、パケットD1を無線中継機20に送信したり、他の無線子機10から受信したパケットD1を無線中継機20に転送したりすることができる。
内蔵電池58は、無線子機10に搭載され、図1に示した電源部14の制御により計算機50内の各部に電力を供給する。本実施形態に係る内蔵電池58は、一次電池を想定したものであるが、後述する第2の実施の形態では内蔵電池58を二次電池としてもよい。
図6は、無線中継機20、無線親機30及び監視端末40を構成する計算機60のハードウェア構成例を示すブロック図である。
計算機60は、無線中継機20、無線親機30及び監視端末40で使用されるコンピュータとして用いられるハードウェアである。計算機60は、MPU61、主記憶装置62、補助記憶装置63、バス64、通信回路65及びユーザインターフェース装置66を備える。各ブロックは、バス64を介して相互に通信可能に接続されている。
MPU61は、本実施の形態に係る無線親機30及び監視端末40の各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを補助記憶装置63から読み出して主記憶装置62にロードし、実行する。
主記憶装置62には、MPU61の演算処理の途中で発生した変数やパラメーター等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメーター等がMPU61によって適宜読み出される。無線中継機20では、無線子機10から受信したパケットD1を無線親機30に転送するために無線通信部21を制御する機能がMPU61によって実現される。無線親機30では、無線通信部31が通信回路65の動作を制御して、無線中継機20から転送されたパケットD1を取り込み、MPU61がパケットD1のデータ部から取り出した各種のデータをデータ格納部32に格納する。また、無線親機30では、データ公開部33がデータ格納部32から取り出したデータを監視端末40に公開する機能がMPU61によって実現される。監視端末40では、データ公開部33によって公開処理が行われたデータを受信し、このデータを、ユーザインターフェース装置66を通じて作業者に提示する機能がMPU61によって実現される。
補助記憶装置63としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリ等が用いられる。補助記憶装置63には、OS、各種のパラメーターの他に、計算機60を機能させるためのプログラムが記録されている。補助記憶装置63は、MPU61が動作するために必要なプログラムやデータ等を永続的に記録しており、計算機60によって実行されるプログラムを格納したコンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。無線親機30では、データ格納部32の機能が補助記憶装置63によって実現される。また、監視端末40では、無線親機30から送信された解析結果を蓄積する機能が補助記憶装置63によって実現される。
通信回路65には、例えば、監視端末40ではNIC等が用いられ、NICに接続された無線LAN等からなる無線通信経路、又は有線通信経路を介して各種のデータを装置間で送受信することが可能である。無線中継機20及び無線親機30では通信回路65にIoT向け低電力無線モジュールなどが用いられる。無線中継機20では、無線通信部21が通信回路65の動作を制御して、無線子機10から受信したパケットD1を無線親機30に転送することができる。無線親機30では、無線通信部31が通信回路65の動作を制御して、無線中継機20から送信されたパケットD1を受信する。また、無線親機30は、通信回路65を通じて監視端末40にデータを送信することができる。監視端末40では、不図示の無線通信部が通信回路65の動作を制御して、無線親機30から送信されたデータを受信する。
ユーザインターフェース装置66には、例えば、液晶ディスプレイモニタ、タッチパネル装置、マウス、キーボード等が用いられる。作業者は、ユーザインターフェース装置66に表示されたデータを確認し、ユーザインターフェース装置66を通じて各種のコマンドを入力することが可能である。ユーザインターフェース装置66は、主に監視端末40に設けられる。無線中継機20、無線親機30には、ユーザインターフェース装置66が設けられなくてもよい。
なお、無線中継機20に対する外部電源からの電力供給がない場合に、無線中継機20も内蔵電池を備えてもよい。
次に、無線子機10、無線中継機20及び無線親機30で実行される処理の例について、図7と図8を参照して順に説明する。無線子機10で実行される処理と同様である無線子機10’で実行される処理の詳細な説明は省略する。
図7は、無線子機10で実行される処理の例を示すフローチャートである。
無線子機10は、所定のタイミングが到来したか監視している(S11)。所定のタイミングが到来しなければ(S11:NO)、無線子機10は、再びタイミングの到来を監視し続ける。
所定のタイミングが到来すると(S11:YES)、無線子機10は、電源部14から収音部11に電力を供給し、マイクロフォン55を起動する(S12)。所定のタイミングは、一定の周期でもよいし、あるいは不定でもよい。さらには、無線中継機20を介して無線子機10に伝えられる無線親機30からの指示にしたがって、無線子機10が所定のタイミングを設定してもよい。
収音部11は、点検対象物A2の稼働音を収集する(S13)。収音部11により収集されてアナログの電気信号(アナログ信号)に変換された稼働音は、解析部12へ入力される(S14)。
解析部12は、収音部11から入力したアナログ信号を解析し、指定した周波数帯域のうなり音の音圧の平均値、うなり音圧の値、うなり周期の値を表すデータを解析結果として抽出する(S15)。そして、解析部12は、解析結果を無線通信部13へ送信する(S16)。
無線通信部13は、解析部12から受信した解析結果に基づいてパケットD1を生成し、無線中継機20へ送信する(S17)。
図8は、無線中継機20で実行される処理の例と、無線親機30で実行される処理の例とを示すフローチャートである。
先に無線中継機20の処理を説明する。
無線中継機20は、無線子機10から解析結果を含むパケットD1を受信すると(S21)、その解析結果を含むパケットD1を無線親機30へ転送する(S22)。無線子機10から送信されたパケットD1は、途中で他の装置を経由した場合でも、ヘッダに含まれるネットワークアドレス又は識別情報に従って無線親機30へ到達する。
無線親機30は、無線中継機20を介して無線子機10からの解析結果を含むパケットD1を受信すると(S31)、そのパケットD1から解析結果を取り出して、データ化する(S32)。データ化とは、パケットD1を収集した時刻の時刻情報と解析結果とを対応付けて格納することにより、時系列データとしてデータ格納部32に登録することである。
その後、無線親機30は、監視端末40からの要求に応じて時系列データ(解析結果の一例)を送信し、監視端末40が解析結果から点検対象物A2の状態を判定して公開する(S33)。監視端末40には、要求に応じて公開された時系列データが、ユーザインターフェース装置66にて所定のユーザインターフェースで表示される。
図9は、音圧の時間変化とうなり音の周期の時間変化の例を示すグラフである。図9の縦軸は音圧、及び、うなり周期を示し、図9の横軸は時間を示す。図9の上側に、うなり音の音圧と音圧の平均値の時間変化の様子が示され、図9の下側には、うなり音の周期の時間変化の様子が示される。
例えば、うなり音のうなり周期と稼動負荷に相関があることが知られている。うなりの周期が短く稼動負荷が低いにも関わらず、うなり音圧が大きい場合には、設備異常の可能性が高い、といった障害解析への応用も可能である。図9の上側のグラフに示すように、高音領域におけるうなり音圧の平均値と、低音領域におけるうなり音圧の平均値とは、明確に異なる。そして、低音領域におけるうなり音圧は、高音領域におけるうなり音圧よりも大きい。
図9のグラフの左側には、点検対象物A2の稼働負荷が低い時に、うなり音圧が小さいことが示される。
図9のグラフの中央には、点検対象物A2の稼働負荷が高くなると、うなり周期が長くなる。この時、うなり音圧が変動しやすいものの、うなり音圧は小さい。
図9のグラフの右側には、点検対象物A2の稼働負荷は低くなったにも関わらず、うなり音圧が大きくなっている。このとき、うなり周期が短くなっている。
このように点検対象物A2の稼働負荷が低いにも関わらず、うなり音圧が大きいと、点検対象物A2に異常が発生している可能性が高いと考えられる。そこで、無線親機30は、監視端末40に対して、異常が発生している可能性が高い点検対象物A2の情報を解析結果として送信する。監視端末40を操作する作業者は、この通知を確認すると、点検対象物A2の早期点検を行い、必要に応じて点検対象物A2の修理、交換等の対応を行うことができる。また、本実施の形態に係る自動点検システム1により、例えば、周波数帯域を高音領域、又は低音領域に指定してうなり音を抽出しておけば、うなりの音圧が高音領域又は低音領域のいずれかに偏っても、うなり音圧の増大を見逃すリスクを抑えることができる。
図10は、うなり音圧の平均値の変化から点検対象物A2の正常又は異常を判断する様子を示す図である。
例えば、最初は低かったうなり音圧の平均値が時間経過により、高くなったとする。この場合、うなり音圧の平均値が最初の低い値に戻れば、データ公開部33は、点検対象物A2が正常であると判断する。一方、うなり音圧の平均値が最初の低い値に戻らず、高い値を保ったり、さらに高い値になると、点検対象物A2は、異常動作をしている可能性が高い。このため、データ公開部33は、点検対象物A2が異常であると判断する。このようにうなり音圧の平均値の変化に基づいて、点検対象物A2の正常又は異常を判断することが可能となる。
以上説明した第1の実施の形態に係る自動点検システム1では、無線子機10に収音部11を設けており、無線子機10が一定時間ごと(例えば、10分ごと、1時間ごと)に収音部11を起動させ、収音部11に点検対象物A2の稼動音を収集させる。この自動点検システム1では、収音部11が集音可能な周波数帯域の全体の音データを無線子機10から無線親機30へ送信するのではなく、そのごく一部である指定した周波数帯域のうなり音の音圧と周期とその付随情報だけを解析結果として含むパケットD1を無線親機30に送信する。このため、無線子機10から無線親機30へ送信する解析結果のパケットD1のデータサイズを、収音部11が収集した音のデータそのままのデータサイズよりも低減できる。
ここで、無線子機10が無線親機30に向けて送信するパケットD1には、少なくとも音圧の平均値が含まれていればよい。点検対象物A2の稼働負荷が低いにも関わらず、音圧の平均値が通常より高くなっていれば、無線親機30が点検対象物A2に異常が発生していることを、監視端末40を通じて作業者に通知することができる。
また、無線子機10は、間欠駆動し、無線親機30が解析結果を取り出し可能な最低限のサイズのパケットD1を送信するため、無線子機10の消費電力を低減することができる。したがって、無線子機10は、解析結果を1回送信するのに要する電力エネルギを少なくし、内蔵電池58の消費電力を抑制することができる。この結果、無線子機10の内蔵電池58の寿命が長くなるので、無線子機10の電池交換頻度を少なくすることができる。
また、収音部11がAD変換部を備える構成としてもよい。この場合、収音部11が収音した音のアナログ信号の振幅に対して周期T1で標本化及び量子化を行い、アナログ信号をデジタル値に変換して、解析部12にデジタル値を出力する。このため、解析部12は、高速タイマ15及びAD変換部16を除く構成としてもよい。
また、無線子機10は、長期間にわたって点検対象物A2から取得した音データから抽出した一部の情報を無線親機30に向けて送信する。そして、無線親機30は、無線子機10が取得した音データの特徴を管理し、異音を検出した際には、監視端末40に対して、点検対象物A2に異常が発生したことを通知する。このため、監視端末40を使用する作業者は、点検対象物A2の状態を遠隔監視することができ、点検対象物A2まで近づいて異音を点検する機会を減らすことができる。このため、点検対象物A2の運用コストを低減できるばかりか、自動点検システム1の使い勝手を向上することも可能となる。
なお、無線子機10の通信可能距離の範囲内に無線親機30があれば、自動点検システム1に無線中継機20を設けず、無線子機10が無線親機30と直接通信するように構成してもよい。
[無線子機からマイクロフォンを離した構成例]
図11は、無線子機10の取り付け場所の例を示す図である。
図1に示した無線子機10は収音部11を内蔵しており、点検対象物A2から離れた位置に無線子機10が設置されていた。しかし、図11に示すように無線子機10が備える収音部11は、無線子機10の筐体から取り外し、無線子機10から離して点検対象物A2に取り付け可能となるように構成してもよい。
収音部11(マイクロフォン55)の大きさは、無線子機10の筐体に比べて小さいため、点検対象物A2に直接取り付けることが可能である。例えば、点検対象物A2が電動機である場合に、電動機の軸受けや電動機カバーの外側に収音部11を直接取り付けることが可能である。このように収音部11が電動機の各部に直接取り付けられることにより、収音部11が収音する音は、電動機が設置される周囲の環境音の影響を受けにくくなる。
収音部11と無線子機10とは、無線子機10から引き延ばされた電力線及び信号線により接続される。電力線及び信号線は、収音部11と無線子機10を接続するケーブル7内に収納される。収音部11は、電力線を通じて電源部14(内蔵電池58)から供給される電力により動作する。また、収音部11は、点検対象物A2から収音した音のアナログ信号を、無線子機10の解析部12に信号線を通じて出力する。解析部12は、周囲の雑音を含まない、点検対象物A2だけから発生した音のアナログ信号に基づいて、音の解析をすることができる。
[マルチホップネットワークの第1の構成例(シングルマネージャ)]
図12は、第1の実施の形態に係る自動点検システム1のマルチホップネットワークの第1の構成例(シングルマネージャ)を示す図である。
図1に示したように、自動点検システム1は、複数の無線子機10,10’、無線中継機20で構成される。通常、無線子機10,10’がパケットD1を最初に送信する宛先である無線中継機20は予め決まっている。しかし、無線子機10,10’が設置される環境は、様々な形状の設備が配置されるプラント内であることが多い。このため、無線子機10,10’が設置された後に、新たに設備6が設置されると無線子機10,10’から無線中継機20にパケットD1を送信できなくなってしまう。
ここで、自動点検システム1が構成する第1の構成例に係るマルチホップネットワークについて説明する。マルチホップネットワークでは、複数の無線子機10,10’がパケットD1を転送することが可能となる。複数の無線子機10,10’を識別するため、(1)〜(4)の符号を付した無線子機10(1)〜10(4)がマルチホップネットワークに設けられた例を示す。また、複数の無線中継機20を識別するため、(1),(2)の符号を付した無線中継機20(1),20(2)がマルチホップネットワークに設けられた例を示す。
無線子機10(1)は、点検対象物A2から発生する音を収音し、無線子機10(2)は、点検対象物B3から発生する音を収音する。そして、無線子機10(3),10(4)は、それぞれ点検対象物C4の異なる場所から発生する音を収音する。例えば、図12の左側に示す無線中継機20(1)には、2台の無線子機10(1),10(2)からパケットD1が送信される。また、図12の右側に示す無線中継機20(2)にも、2台の無線子機10(3),10(4)からパケットD1が送信されていたとする。
しかし、図12の右側に示す無線中継機20(2)と、2台の無線子機10(3),10(4)との間に設備6が設置されたことにより、無線中継機20(2)と、2台の無線子機10(3),10(4)とが直接通信できなかったとする。このように、複数の無線子機10(1)〜10(4)のうち、無線子機10(3),10(4)は、無線中継機20(2)に対してパケットD1を送信できないことを検出した場合に、他の無線中継機20(1)にデータを送信可能である他の無線子機10(2)に対して、パケットD1の転送を依頼する。
そこで、無線中継機20(2)にパケットD1を送信できない無線子機10(3),10(4)は、他の無線中継機20(1)にパケットD1を送信できる無線子機10(1),10(2)を探索する。そして、パケットD1を送信できない無線子機10(3),10(4)は、パケットD1を送信できる無線子機10(2)までパケットD1を転送する。この時、無線子機10(3)は、自身のパケットD1を無線子機10(2)に送信し、さらに無線子機10(4)から送信されたパケットD1を無線子機10(2)に転送する。
そして、他の無線子機10(2)は、無線子機10(3),10(4)から送信されたパケットD1を無線中継機20(1)に転送する。つまり、無線子機10(2)は、自身のパケットD1を無線中継機20(1)に送信するとともに、無線子機10(3)から送信又は転送されたパケットD1についても無線中継機20(1)に送信する。このように自動点検システム1がマルチホップネットワークを構成することにより、全ての無線子機10(1)〜10(4)が無線中継機20(1)を介して無線親機30までパケットD1を送信することができる。
なお、無線子機10(2),10(3)が長期間にわたってパケットD1の転送を続けると、無線子機10(2),10(3)の内蔵電池58の消費電力が他の無線子機10(1),10(4)よりも多くなってしまう。このため、他の無線子機10(3),10(4)から送信されたパケットD1の転送を開始した無線子機10(2)の存在が無線親機30(1)を通じて監視端末40に通知されてもよい。この通知により、作業者は、無線子機10(3),10(4)と無線中継機20(2)とが無線通信できていない状況を知ることができる。そして、作業者は、無線中継機20(2)と通信可能な位置に無線子機10(3),10(4)を移動させたり、設備6を移動させたりする等の措置をとることができる。
監視端末40は、外部のインターネットを介して、点検対象物A2が設置されたプラントから離れた場所で点検対象物A2の状態を監視することが可能である。
[マルチホップネットワークの第2の構成例(マルチマネージャ)]
図13は、第1の実施の形態に係る自動点検システム1のマルチホップネットワークの第2の構成例(マルチマネージャ)を示す図である。
ここで、自動点検システム1が構成する第2の構成例に係るマルチホップネットワークについて説明する。自動点検システム1は、無線中継機20を備えない形態でマルチホップネットワークを構成することができる。複数の無線親機30を識別するため、(1),(2)の符号を付した無線親機30(1),30(2)がマルチホップネットワークに設けられた例を示す。つまり、このマルチホップネットワークでは、図12に示した無線中継機20(1),20(2)が、2台の無線親機30(1),30(2)に置き換えて構成される。そして、無線親機30(1),30(2)は、インターネット等からなる通信網を経由して監視端末40に接続される。
マルチホップネットワークでは、複数の無線子機10,10’がパケットD1を転送することが可能となる。例えば、図13の左側に示す無線親機30(1)には、2台の無線子機10(1),10(2)からパケットD1が送信される。また、図13の右側に示す無線親機30(2)にも、2台の無線子機10(3),10(4)からパケットD1が送信されていたとする。
しかし、図13の右側に示す無線親機30(2)と、2台の無線子機10(3),10(4)との間に設備6が設置されたことにより、無線親機30(2)と、2台の無線子機10(3),10(4)とが直接通信できなかったとする。このように、複数の無線子機10(1)〜10(4)のうち、無線子機10(3),10(4)は、無線親機30(2)に対してパケットD1を送信できないことを検出した場合に、他の無線親機30(1)にデータを送信可能である他の無線子機10(2)に対して、パケットD1の転送を依頼する。
そこで、無線親機30(2)にパケットD1を送信できない無線子機10(3),10(4)は、他の無線親機30(1)にパケットD1を送信できる無線子機10(1),10(2)を探索する。パケットD1を送信できない無線子機10(3),10(4)は、パケットD1を送信できる無線子機10(2)までパケットD1を転送する。この時、無線子機10(3)は、自身のパケットD1を無線子機10(2)に送信し、さらに無線子機10(4)から送信されたパケットD1を無線子機10(2)に転送する。
そして、他の無線子機10(2)は、無線子機10(3),10(4)から送信されたパケットD1を無線親機30(1)に転送する。つまり、無線子機10(2)は、自身のパケットD1を無線親機30(1)に送信するとともに、無線子機10(3)から送信又は転送されたパケットD1についても無線親機30(1)に送信する。このように自動点検システム1がマルチホップネットワークを構成することにより、全ての無線子機10(1)〜10(4)が無線親機30(1)を介して監視端末40までパケットD1を送信することができる。
なお、無線子機10(2),10(3)が長期間にわたってパケットD1の転送を続けると、無線子機10(2),10(3)の内蔵電池58の消費電力が他の無線子機10(1),10(4)よりも多くなってしまう。このため、他の無線子機10(3),10(4)から送信されたパケットD1の転送を開始した無線子機10(2)の存在が無線親機30(1)を通じて監視端末40に通知されてもよい。この通知により、作業者は、無線子機10(3),10(4)と無線親機30(2)とが無線通信できていない状況を知ることができる。そして、作業者は、無線親機30(2)と通信可能な位置に無線子機10(3),10(4)を移動させたり、設備6を移動させたりする等の措置をとることができる。
[マルチホップネットワークの第3の構成例(マルチマネージャ)]
図14は、第1の実施の形態に係る自動点検システム1のマルチホップネットワークの第3の構成例(マルチマネージャ)を示す図である。
ここで、自動点検システム1が構成する第3の構成例に係るマルチホップネットワークについて説明する。図12に示した第2の構成例に係るマルチホップネットワークのマルチマネージャ構成には、図14に示すように無線中継機20が含まれてもよい。
図14に示す自動点検システム1は、複数の無線中継機20と、複数の無線親機30とを備えた形態でマルチホップネットワークを構成することができる。このマルチホップネットワークでは、無線子機10(1),10(2)に無線中継機20(1)が接続され、無線子機10(3),10(4)に無線中継機20(2)が接続される。そして、無線中継機20(1)と無線親機30(1)が接続され、無線中継機20(2)と無線親機30(2)が接続される。そして、無線親機30(1),30(2)は、インターネット等からなる通信網を経由して監視端末40に接続される。
第3の構成例に係るマルチホップネットワークにおいても、無線子機10(3),10(4)と無線中継機20(2)との間に設備6が設置され、無線中継機20(2)と、2台の無線子機10(3),10(4)とが直接通信できなくなったとする。この場合、無線子機10(3),10(4)が、他の無線子機10(2)を探索する。そして、無線子機10(4)は、無線子機10(3)にパケットD1を送信する。無線子機10(3)は、無線子機10(3)自体が作成するパケットD1を無線子機10(2)に送信すると共に、無線子機10(4)から受信したパケットD1を無線子機10(2)に転送する。その後、無線子機10(2)が無線中継機20(1)にパケットD1を転送することで、無線子機10(3),10(4)のパケットD1は、無線中継機20(1)から無線親機30(1)に送信され、無線親機30(1)から通信網を経て監視端末40に送信される。
このように自動点検システム1が第3の構成例に係るマルチホップネットワークを構成することにより、全ての無線子機10(1)〜10(4)が、無線中継機20(1)、無線親機30(1)を介して監視端末40までパケットD1を送信することができる。なお、長期間にわたってパケットD1の転送が続くことを防ぐため、無線子機10(2),(3)がパケットD1の転送を開始したことを監視端末40に通知する処理は、第1の構成例に係るマルチホップネットワークと同様である。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る自動点検システムの構成例及び動作例について、図15を参照して説明する。
図15は、第2の実施の形態に係る自動点検システム1Aの構成例を示すブロック図である。本実施の形態では、無線子機10に発電部14Aを設けることにより、電源部14の内蔵電池58の消耗を抑制することを可能とする。なお、無線子機10Aと同様の構成である無線子機10A’の詳細な説明、及び第1の実施の形態に係る無線中継機20、無線親機30及び監視端末40と同じ個所についての詳細な説明は省略する。
第2の実施の形態に係る無線子機10Aは、発電部14Aをさらに備えている。発電部14Aは、例えば、圧電振動子等を含んで構成されており、点検対象物A2から発する音波による振動、又は点検対象物A2から生じる振動を電気エネルギ(電力)に変換して発電する装置である。発電部14Aで発電された電力は、電源部14に供給される。
電源部14は、発電部14Aから供給された電力と、内蔵電池58から取り出した電力の両方を、収音部11、解析部12及び無線通信部13へ供給(給電)することができる。内蔵電池58を充電可能な二次電池として構成することで、電源部14は、発電部14Aで発電された電力で内蔵電池58を充電してもよい。また、発電部14Aからの電力だけでは足りない場合に、電源部14は、無線子機10内の各部に内蔵電池58からの電力を供給する構成でもよい。発電部14Aの発電方式は問わない。例えば、発電部14Aは、太陽光を電気エネルギ(電力)に変換する発電装置であってもよい。ただし、点検対象物A2に由来する音や振動等のエネルギを利用する発電方式であることが好ましい。
第2の実施の形態に係る自動点検システム1Aにおいても、第1の実施の形態に係る自動点検システム1と同様の作用効果を奏する。さらに第2の実施の形態に係る自動点検システム1Aでは、無線子機10が発電部14Aを備えているため、内蔵電池58の交換頻度を、第1の実施の形態に係る無線子機10の内蔵電池58よりも低減することができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る自動点検システムの構成例及び動作例について、図16を参照して説明する。本実施の形態に係る自動点検システムは、監視端末が周波数解析を行う機能を有する。
図16は、自動点検システム1Bの全体構成例を示すブロック図である。
自動点検システム1Bは、無線子機10B,10B’、無線中継機20、無線親機30A及び監視端末40Aを備える。なお、無線子機10Bと同様の構成である無線子機10B’の詳細な説明、及び第1の実施の形態に係る無線中継機20、無線親機30及び監視端末40と同じ個所についての詳細な説明は省略する。
無線子機10Bは、収音部11、解析部12A、無線通信部13及び電源部14を備える。解析部12Aは、第1の実施の形態に係る解析部12と同様に、高速タイマ15、AD変換部16、低速タイマ17及び指定帯域音圧抽出部18を有するが、周波数解析部19を除いた構成である。このため、解析部12Aの解析結果は、収音部11により収音された音の振幅の離散値を所定の期間ずつ時間積分した値の周期的な時系列値である。この解析結果を含むパケットD1が、無線通信部13から無線中継機20の無線通信部21に送信される。
無線中継機20の無線通信部21は、無線子機10Bから受信したパケットD1を無線親機30Aの無線通信部31に転送する。
無線親機30の無線通信部31は、受信したパケットD1から取り出した解析結果をデータ格納部32に格納する。そして、データ公開部33は、データ格納部32から読み出した解析結果を監視端末40Aに送信する。
監視端末40は、周波数解析部41を備える。この周波数解析部41は、第1の実施の形態に係る周波数解析部19と同様に、解析結果の周波数解析を行う。このとき、周波数解析部41は、解析部12Aがデジタル値を時間積分した値で表されるうなり音圧の変動により、うなり音圧の平均値と、うなり音圧の変動の幅と、うなり音圧の変動の周期とを求める。そして、データ公開部33は、音圧の平均値と、音圧の変動の幅と、音圧の変動の周期とから判定する点検対象物A2の状態を監視端末40に公開する。このため、監視端末40は、点検対象物A2に異常が発生したことを作業者に知らせることができる。
以上説明した第3の実施の形態に係る自動点検システム1Bでは、監視端末40Aに設けられた周波数解析部41が、音圧の変動により、音圧の平均値と、音圧の変動の幅と、音圧の変動の周期とを求める処理を行う。このため、無線子機10Bにおける解析部12Aの消費電力量が、第1の実施の形態に係る解析部12より少なくなる。この結果、無線子機10Bが備える内蔵電池58の寿命が長くなり、無線子機10Bの電池交換頻度が、第1の実施の形態に係る無線子機10よりもさらに少なくなる。
なお、本発明は上述した各実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限り、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれる。さらに特許請求の範囲に記載された構成は、特許請求の範囲で明示している組合せ以外にも組み合わせることができ、本発明の目的を達成する範囲内で、実施形態の構成や処理方法は適宜変更することが可能である。
また、図中の制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。