以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
<眼科撮影装置の概略構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る眼科撮影装置100の概略構成の一例を示す図である。この眼科撮影装置100は、本発明における「画像処理装置」に相当するものである。
眼科撮影装置100は、被検眼Eの眼底Erを撮影する装置であり、図1に示すように、撮像部110、及び、制御・処理部120を有して構成されている。
≪撮像部110≫
まず、図1に示す撮像部110について説明する。
ここで、本実施形態においては、撮像部110は、OCT装置により形成されているものとする。この際、OCT装置としては、例えば、FD−OCT装置であるSD−OCT装置やSS−OCT装置を適用可能であるが、ここでは、OCT装置としてSS−OCT装置を用いる場合について説明する。
光源101は、波長掃引型(Swept Source:SS)光源であり、例えば、掃引中心波長1050nm程度、掃引幅100nm程度で掃引しながら光を出射する。光源101から出射された光は、光ファイバ102−1を介して、ビームスプリッタ103に導かれ、測定光(OCT測定光とも言う)と参照光(OCT測定光に対応する参照光とも言う)に分岐される。ここでのビームスプリッタ103の分岐比は、例えば、90(参照光):10(測定光)である。
ビームスプリッタ103で分岐された測定光は、光ファイバ102−2を介して出射され、コリメータ104によって平行光とされる。平行光となった測定光は、被検眼Eの眼底Erにおいて測定光を走査するガルバノスキャナ105、スキャンレンズ106、フォーカスレンズ107を介して、被検眼Eに入射する。ここで、図1では、ガルバノスキャナ105を単一のミラーとして記載しているが、実際には、被検眼Eの眼底Erをラスタースキャンするように、2枚のガルバノスキャナであるx軸スキャナー105xとy軸スキャナー105yによって構成されている。また、フォーカスレンズ107は、ステージ108上に固定されており、光軸方向に動くことで、フォーカス調整をすることができるようになっている。また、ガルバノスキャナ105とステージ108は、後述する信号取得制御部122によって制御され、被検眼Eの眼底Erの所望の範囲(断層画像の取得範囲、断層画像の取得位置または測定光の照射位置とも言う)で測定光を走査することができるように構成されている。
なお、図1には図示していないが、眼科撮影装置100において、被検眼Eの眼底Erの動きを検出し、ガルバノスキャナ105のミラーを眼底Erの動きに追従させて走査させるトラッキング機能が付与されていることが望ましい。この際、トラッキング方法については、一般的な技術を用いて行うことが可能であり、リアルタイムで行うことも、ポストプロセッシングで行うことも可能である。例えば、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)装置を用いる方法がある。この場合、眼科撮影装置100は、眼底Erについて、SLO装置を用いて光軸に対して垂直な面内の2次元画像(眼底表面画像)を経時的に取得し、当該2次元画像中の血管分岐などの特徴箇所を抽出する。そして、眼科撮影装置100は、取得する2次元画像中の特徴箇所がどのように動いたかを眼底Erの移動量として算出し、算出した移動量をガルバノスキャナ105にフィードバックすることでリアルタイムトラッキングを行うことができる。
測定光は、ステージ108上に乗ったフォーカスレンズ107により、被検眼Eに入射し、眼底Erにフォーカスされる。そして、眼底Erを照射した測定光は、各網膜層で反射・散乱し、上述した光学経路を辿ってビームスプリッタ103に戻る。ビームスプリッタ103に入射した測定光の戻り光は、光ファイバ102−3を経由し、ビームスプリッタ109に入射する。
一方、ビームスプリッタ103で分岐された参照光は、光ファイバ102−4、偏光制御器111、光ファイバ102−5を介して出射され、コリメータ112によって平行光とされる。ここで、偏光制御器111は、参照光の偏光を所望の偏光状態へ変化させることができるものである。その後、参照光は、分散補償ガラス113、NDフィルタ114、コリメータ115を介し、光ファイバ102−6に入射する。この際、コリメータ115と光ファイバ102−6の一端は、コヒーレンスゲートステージ116の上に固定されており、被検眼Eの眼軸長の相違などに対応して光軸方向に駆動するように、信号取得制御部122で制御される。なお、本実施形態では、参照光の光路長を変更しているが、測定光の光路と参照光の光路との光路長差を変更できれば他の形態でもよい。そして、光ファイバ102−6を通過した参照光は、ビームスプリッタ109に入射する。
ビームスプリッタ109では、測定光の戻り光と参照光とが合波されて、干渉光(合波光)とされた上で2つに分割される。分割される干渉光は、互いに反転した位相の干渉光(以下、「正の成分」及び「負の成分」と記載する)となっている。分割された干渉光の正の成分は、光ファイバ102−7を経由してディテクタ117の一方の入力ポートに入射する。一方、分割された干渉光の負の成分は、光ファイバ102−8を経由してディテクタ117の他方に入射する。
ディテクタ117は、差動検出器となっており、位相が180°反転した2つの干渉光が入力すると、直流成分を除去して干渉成分のみを抽出し、これを光干渉信号として検出する検出手段である。そして、ディテクタ117で検出された光干渉信号は、光の強度に応じた電気信号である撮像信号として後述する信号処理部121に出力される。このディテクタ117を有する撮像部110は、制御・処理部120と通信可能に接続されている。
≪制御・処理部120≫
次いで、図1に示す制御・処理部120について説明する。
制御・処理部120は、図1に示すように、信号処理部121、信号取得制御部122、表示制御部123、及び、表示部124を有して構成されている。
信号処理部121は、ディテクタ117から出力された撮像信号を取得して、当該撮像信号の処理を行う。この信号処理部121は、図1に示すように、断層画像生成部1211、血管画像生成部1212、形状解析部1213、及び、血管評価部1214を有して構成されている。
断層画像生成部1211は、被検眼Eの眼底Erに係る第1の撮像信号を取得して、眼底Erの3次元断層画像を生成する第1の生成手段である。ここで、断層画像生成部1211は、例えば、輝度画像に係る3次元断層画像を生成する。
血管画像生成部1212は、被検眼Eの眼底Erに係る第2の撮像信号を取得して、断層画像生成部1211で生成される3次元断層画像との位置関係が対応付いている血管画像であって眼底Erの血管が映し出された血管画像を生成する第2の生成手段である。本実施形態においては、血管画像生成部1212は、例えばSS−OCT装置である撮像部110から、光干渉信号の変動を利用する擬似血管造影法であるOCTアンギオグラフィー(OCT Angiography:以下、「OCTA」と記載)を用いて得られた信号を第2の撮像信号として取得し、モーションコントラスト画像に係る血管画像を生成するものとする。以下、光干渉信号から時間変調が起こっている信号を画像としたものをモーションコントラスト画像とし、また、そのモーションコントラスト画像の画素値をモーションコントラストとし、そのデータのセットをモーションコントラストデータとする。
なお、本実施形態においては、血管画像生成部1212で取得する第2の撮像信号として、光干渉信号の変動を利用する疑似血管造影法であるOCTAを用いて得られた信号を適用したが、本発明においてはこれに限定されるものではなく他の信号であってもよい。例えば、本発明における第2の撮像信号としては、上述したOCTAを用いて得られた信号に加えて、光干渉信号、眼底カメラにより得られた信号、及び、走査型レーザ検眼鏡により得られた信号のうちの少なくともいずれかの信号を適用することが可能である。
また、信号処理部121(例えば、血管評価部1214)は、断層画像生成部1211で生成される3次元断層画像と血管画像生成部1212で生成される血管画像との位置合わせを行うことにより、3次元断層画像と血管画像との位置関係を対応付ける処理を行う。
形状解析部1213は、断層画像生成部1211で生成された3次元断層画像を解析して、被検眼Eの眼底Erの形状に係る形状情報を取得する処理を行う。この際、形状解析部1213は、例えば、血管画像に含まれる血管の走行座標に対応する眼底Erの形状に係る形状情報を取得する。また、本実施形態においては、形状解析部1213で取得する形状情報は、3次元断層画像の各層における境界面の曲率、その曲率半径、前記境界面の傾き、その傾きの変化率、前記境界面の局所的な凹凸、前記各層の層厚、及び、その層厚の変化率のうちのいずれかの形状パラメータに係る情報、または、これらの形状パラメータの組合せに係る情報であるものとする。
血管評価部1214は、形状解析部1213により得られた形状情報に基づいて、血管画像生成部1212で生成された血管画像に含まれる血管を評価する処理を行う。この際、血管評価部1214は、例えば、形状情報に基づいて、血管画像に含まれる血管が存在する位置(存在する層や境界に対する位置(深さ))、当該血管の径及び当該血管の走行方向などを考慮して、血管画像に含まれる血管を評価することが好適である。また、血管評価部1214は、例えば、断層画像生成部1211で生成された3次元断層画像と血管画像生成部1212で生成された血管画像との位置合わせを行った後に、血管を評価する。
信号取得制御部122は、上述したように、撮像部110のガルバノスキャナ105、ステージ108及びコヒーレンスゲートステージ116の各部を制御する。
表示制御部123は、信号処理部121の処理の結果得られた各種の情報や各種の画像を表示部124に表示する制御を行う。例えば、表示制御部123は、血管評価部1214による血管の評価結果を表示部124に表示する制御を行う。例えば、この血管の評価結果の表示制御に係る第1の態様として、表示制御部123は、血管評価部1214による血管の評価結果に応じて血管画像に含まれる血管の表示態様を変更し、当該変更に係る血管画像を表示部124に表示する制御を行う。また、例えば、血管の評価結果の表示制御に係る第2の態様として、表示制御部123は、血管評価部1214による血管の評価結果に応じて血管画像に含まれる血管の表示態様を変更し、当該変更に係る血管画像を重畳させた3次元断層画像を表示部124に表示する制御を行う。
表示部124は、表示制御部123の制御に基づいて、信号処理部121の処理の結果得られた各種の情報や各種の画像を表示する。ここで、表示部124は、例えば、液晶などのディスプレイである。なお、表示制御部123と表示部124とは、有線で通信する形態であっても、無線で通信する形態であってもよい。また、図1では、表示部124は、制御・処理部120の内部に構成されている例を示しているが、本実施形態においてはこれに限定されるものではなく、制御・処理部120の外部に別構成として設けられていてもよい。また、表示部124は、例えばユーザが持ち運び可能な装置の一例であるタブレットとして構成されていてもよい。この場合、表示部124にタッチパネル機能を搭載し、タッチパネル上で画像の表示位置の移動や、拡大/縮小、表示される画像の変更などを操作可能に構成することが好ましい。
ここで、被検眼Eの眼底Erにおける測定光の走査について説明する。
被検眼E(より具体的には、眼底Er)の或る1点における奥行き方向の断層に関する情報を取得するための走査をA−scanと呼ぶ。また、A−scanと直交する方向で被検眼Eの断層に関する情報、即ち2次元画像を取得するための走査をB−scanを呼び、さらに、A−scan及びB−scanのいずれの走査方向とも直交する方向に走査することをC−scanと呼ぶ。
3次元断層画像を取得する際に被検眼Eの眼底面内に2次元ラスタースキャンをする場合、高速な走査方向がB−scan、B−scanをその直交方向に並べて走査する低速な走査方向をC−scanと呼ぶ。A−scan及びB−scanを行うことで2次元断層画像が得られ、A−scan、B−scan及びC−scanを行うことで3次元断層画像を得ることができる。B−scan及びC−scanは、上述したガルバノスキャナ105により行われる。
なお、ガルバノスキャナ105を構成するx軸スキャナー105x及びy軸スキャナー105yは、それぞれ、回転軸が互いに直交するよう配置された偏向ミラーで構成されている。そして、x軸スキャナー105xはx軸方向の走査を行い、y軸スキャナー105yはy軸方向の走査を行う。また、x軸方向及びy軸方向の各方向は、被検眼Eの眼球の眼軸方向に対して垂直な方向であり、互いに垂直な方向である。また、B−scanとC−scanのようなライン走査方向と、x軸方向またはy軸方向とは、一致していなくてもよい。このため、B−scanとC−scanのライン走査方向は、撮像したい2次元断層画像或いは3次元断層画像に応じて、適宜決めることができる。
<眼科撮影装置の処理手順>
図2は、本発明の第1の実施形態に係る眼科撮影装置100の制御方法(画像処理方法)における処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図3は、本発明の第1の実施形態に係る眼科撮影装置100の制御方法(画像処理方法)における詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。この図3において、図2に示す処理ステップと同様の処理ステップについては同じ符号を付している。以下の説明においては、図2及び図3に共通する処理ステップについては、図2の説明の際に説明するものとする。
まず、図2(図3も同様)のステップS110において、断層画像生成部1211は、撮像部110から、被検眼Eの眼底Erの3次元断層画像を形成するための光干渉信号のセットを第1の撮像信号として取得する。具体的に、撮像部110では、被検眼Eの眼底Erにおける所定の範囲をC−scanすることにより、3次元断層画像を形成するのに必要な光干渉信号のセットが得られる。なお、本ステップにおいて、第1の撮像信号以外に、ノイズ除去用のバックグラウンド信号を取得してもよい。この際、例えば、測定光の戻り光を遮断した参照光のみの光信号をバックグラウンド信号として取得することや、B−scanの光干渉信号のセットを平均する等してバックグラウンド信号を取得する。
その後、断層画像生成部1211は、第1の撮像信号として取得した光干渉信号のセットに対して、再構成処理を行うことで3次元断層画像を生成する。この3次元断層画像の生成について、以下に具体的に説明する。
まず、断層画像生成部1211は、光干渉信号から固定パターンノイズの除去を行う。この際、固定パターンノイズの除去は、上述したバックグラウンド信号を光干渉信号から減算することにより行われる。次いで、断層画像生成部1211は、深さ分解能とダイナミックレンジを最適化するために、光干渉信号のセットに対して所望の窓関数処理を行う。その後、断層画像生成部1211は、光干渉信号のセットに対してFFT処理を行うことによって断層画像の輝度画像を生成する。この際、断層画像生成部1211は、B−scanに係る光干渉信号のセットに対して、再構成処理を行うことで断層画像の輝度画像を生成する。さらに、断層画像生成部1211は、C−scanに係る光干渉信号のセットに対して、再構成処理を行うことで3次元断層画像を生成する。この3次元断層画像の生成にあたっては、既知の画質向上を行ってもよい。例えば、断層画像生成部1211は、3次元断層画像の生成に際して、眼底Erの同一箇所を複数回撮影したデータを重ね合わせして平均化することによりランダムノイズを低減することや、重ね合わせの前に位置ずれ補正などを行って画質向上を図ってもよい。
続いて、図2(図3も同様)のステップS120において、血管画像生成部1212は、被検眼Eの眼底Erの血管画像を形成するための第2の撮像信号を取得する。具体的に、本実施形態では、血管画像生成部1212は、OCTAによって撮像部110が眼底Erの所定の範囲をC−scanすることにより得られた、モーションコントラストデータを計算するための光干渉信号のセットを第2の撮像信号として取得する。この際、血管画像生成部1212は、モーションコントラストデータを計算するために、同一y位置での複数のBスキャンに係る光干渉信号のセットを取得する。なお、OCTAのように、同じOCT装置(撮像部110)を使う場合、ステップS110における第1の撮像信号の取得工程と、本ステップS120における第2の撮像信号の取得工程とは、別々であっても同時であってもよい。別々の工程であれば、例えば、OCTでは眼底Erの広範囲を撮影し、OCTAでは眼底Erの必要な箇所に撮影領域を絞るような撮影を行うことができる。また、同一の工程であれば、OCTによる画像とOCTAによる画像との位置合わせが行い易くなる。この同一の工程である場合に、第1の撮像信号と第2の撮像信号とを同一の信号とすることもできる。そして、第1の撮像信号と第2の撮像信号とが同一の信号である場合には、後述するステップS141における3次元断層画像と血管画像との位置合わせを省力することができる。
その後、血管画像生成部1212は、眼底Erの血管が映し出された血管画像を生成する。本実施形態においては、血管画像生成部1212は、第2の撮像信号に基づき計算により得られたモーションコントラストデータから血管を抽出し、血管画像を生成する。このモーションコントラストデータから血管を抽出する方法については、後述する。この血管画像生成部1212の処理により、例えば後述する図5(a)の血管画像501が得られる。血管画像生成部1212で生成される血管画像は、OCTAやOCTなどの3次元的な信号を取得する場合には3次元的な位置情報をもち、また、眼底カメラや走査型レーザ検眼鏡などによる2次元的な信号を取得する場合には2次元的な位置情報をもつ。
続いて、図2(図3も同様)のステップS130において、形状解析部1213は、ステップS110で生成された3次元断層画像を解析して、被検眼Eの眼底Erの形状に係る形状情報を取得する処理を行う。具体的に、本実施形態においては、形状解析部1213は、ステップS110で生成された3次元断層画像から網膜の部位を切り出し、さらにそのセグメンテーション(層情報)及び形状を解析をして、形状情報を取得する。この図2のステップS130における詳細な処理手順について、図3を用いて説明する。
このステップS130の処理が開始されると、まず、図3のステップS131において、形状解析部1213は、ステップS110で生成された3次元断層画像に対し、セグメンテーションを行う。この図3のステップS131の詳細な処理について以下に説明する。
図3のステップS131では、形状解析部1213は、まず、処理対象とする3次元断層画像に対して、メディアンフィルタとSobelフィルタをそれぞれ適用して、それぞれメディアン画像とSobel画像を作成する。次いで、形状解析部1213は、作成したメディアン画像とSobel画像から、Aスキャンごとにプロファイルを作成する。ここでは、メディアン画像からは輝度値のプロファイルが作成され、Sobel画像からは勾配のプロファイルが作成される。次いで、形状解析部1213は、Sobel画像から作成したプロファイル内のピークを検出する。次いで、形状解析部1213は、検出したピークの前後やピーク間に対応するメディアン画像のプロファイルを参照し、被検眼Eの網膜層の各領域の境界を抽出する。ここで、抽出する層の境界としては、例えば以下の6層の境界が挙げられる。例えば、第1の境界としては神経線維層(NFL)の境界、第2の境界としては神経節細胞層(GCL)+内網状層(IPL)を合わせた層の境界が挙げられる。また、第3の境界としては内顆粒層(INL)+外網状層(OPL)を合わせた層の境界、第4の境界としては外顆粒層(ONL)+外境界膜(ELM)を合わせた層の境界が挙げられる。また、第5の境界としてはEllipsoid Zone(EZ)+Interdigitation Zone(IZ)+網膜色素上皮(RPE)を合わせた層の境界、第6の境界としては脈絡膜(Choroid)の層の境界が挙げられる。そして、形状解析部1213は、このように各層及びその境界を抽出することにより、被検眼Eの眼底Erの形状に係る形状情報を取得することが可能となる。なお、人眼の層構造は既知であるので、セグメンテーションが完了すると、どの層がどの網膜層に対応するかのレジストレーションもできる。
続いて、図3のステップS132において、形状解析部1213は、図3のステップS131で抽出した境界の境界面を使って被検眼Eの眼底Erの形状解析を行う。また、本実施形態においては、形状解析部1213で取得する形状情報は、網膜層の特異的な形状を抽出する特徴量のパラメータであればよい。例えば、形状情報は、上述したように、境界面の曲率やその曲率半径、前記境界面の傾きやその変化率、前記境界面の局所的な凹凸、各層の層厚やその変化率のうちのいずれかの形状パラメータ、またはこれらの形状パラメータの組合せに係る情報を適用可能である。ここで、形状解析部1213で計算するパラメータとしては、上述した全ての形状パラメータでもよいし、形状パラメータの種類や計算する領域を選択してもよい。また、パラメータや領域の選択は、検者が指定してもよいし、検査目的に応じて自動的に選択してもよい。そして、形状解析部1213は、計算したパラメータを形状情報として、3次元断層画像での位置と対応させて記憶する。
続いて、図2(図3も同様)のステップS140において、血管評価部1214は、ステップS130で得られた形状情報に基づいて、ステップS120で生成された血管画像に含まれる血管を分類等すべく評価を行う。この図2のステップS140における詳細な処理手順について、図3を用いて説明する。
このステップS140の処理が開始されると、まず、図3のステップS141において、血管評価部1214は、ステップS110で生成された3次元断層画像とステップS120で生成された血管画像との位置合わせを行う。具体的に、まず、血管評価部1214は、ステップS110で生成された3次元断層画像を用いて深さ方向の2次元画像(眼底表面画像)を取得して当該2次元画像中の血管分岐などの特徴箇所を抽出する。また、血管評価部1214は、ステップS120で生成された血管画像に対しても同様にして、画像中の血管分岐などの特徴箇所を抽出する。次いで、血管評価部1214は、3次元断層画像及び血管画像のそれぞれの画像に基づき抽出した特徴箇所から、どの程度位置ずれしているかを位置ずれ量(δx,δy,δθ)として算出する。ここで、位置ずれ量の算出方法としては、例えば、片方の画像の位置と角度を変えながら画像間の相関を算出し、相関が最大となるときの画像位置の差を位置ずれ量とすればよい。次いで、血管評価部1214は、算出した位置ずれ量に基づいて血管画像の位置を補正して、3次元断層画像及び血管画像の両画像の位置合わせを行う。ここで、血管画像が3次元の位置情報を持つ場合には、深さ方向(δZ)の位置ずれ量も同様に算出する。また、血管画像が水平方向(xy面)の2次元画像の場合、深さ方向の座標としては、OCTの3次元断層画像における対応する座標を割当てればよい。また、例えば、血管画像が網膜浅層血管の画像である場合、網膜表面(神経線維層と硝子体との境界面)の座標で代用してもよい。本ステップの位置合わせ工程により、3次元断層画像と血管画像との位置合わせがなされる。これにより、例えば、次工程において、血管走行の座標(血管中心位置等)に対して走行方向に直行した平面における網膜層の形状解析を行うことが可能となる。また、例えば、次工程において、血管走行の座標全点について形状解析を行うのではなく、適度な間隔をあけて形状解析を行い、その間については補間処理を行うことが可能となる。
続いて、図3のステップS142において、血管評価部1214は、ステップS130で得られた形状情報に基づいて、ステップS120で生成された血管画像に含まれる血管を分類等すべく評価を行う。具体的に、血管評価部1214は、血管画像中の血管が3次元断層画像内で位置する層の形状情報を当該血管に割り付けて、当該血管の評価を行う。
例えば、血管評価部1214は、血管画像に含まれる血管が網膜浅層(NFL)の血管であり、形状情報が神経線維層と硝子体との境界面の曲率である場合、当該血管が位置する層の境界面の曲率を当該血管に割り付けて、当該血管の評価を行う。このように、血管画像中の血管をOCTの3次元断層画像の形状情報に基づき評価することにより、3次元断層画像で見た時の形状情報が血管画像にも反映されることになる。
続いて、図2(図3も同様)のステップS150において、表示制御部123は、ステップS140での血管の評価結果を表示部124に表示する制御を行う。この図2のステップS150における詳細な処理手順について、図3を用いて説明する。
このステップS150の処理が開始されると、まず、図3のステップS151において、表示制御部123は、ステップS140での血管の評価結果に基づいて、予め指定された表示条件に従って表示情報を作成する。この際、表示条件としては、どの形状情報で評価(分類)した血管を表示するかを指定したり、3次元等の画像を表示する向きや倍率なども指定したりする。
続いて、図3のステップS152において、表示制御部123は、ステップS151で作成した表示情報を表示部124に表示制御する処理を行う。
続いて、図3のステップS153において、表示制御部123は、表示条件を変更する指示が入力されたか否かを判断する。
ステップS153の判断の結果、表示条件を変更する指示が入力された場合には(S153/Yes)、ステップS151に戻り、変更後の表示条件に従って表示情報の最作成が行われる。
一方、ステップS153の判断の結果、表示条件を変更する指示が入力されなかった場合には(S153/No)、図3(図2も同様)のフローチャートの処理を終了する。
次に、表示画面の表示例を説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態を示し、血管画像とOCTによる3次元断層画像とを並べて表示部124に表示した表示画面400の一例を示す図である。
図4には、被検眼Eの眼底Erの深さ方向における平面の血管画像410と、OCTによる3次元断層画像のうち、被検眼Eの眼底Erの深さ方向における平面の2次元画像420が示されている。なお、図4に示す例では、血管画像410及び次元画像420ともに、被検眼Eの眼底Erの深さ方向における平面画像を示しているが、本実施形態においてはこれに限定されるものではなく、例えば斜めから見た3次元画像(en−face画像)であってもよい。また、図4には、OCTによる3次元断層画像のうち、血管画像410と2次元画像420に示す切断面401a及び401bにそれぞれ対応する、水平方向の2次元断層画像430と垂直方向の2次元断層画像440が示されている。また、視点の移動ができるようにしてもよい。図4に示す表示画面400には、表示画像の視点を変更するための変更ボタン450として、拡大・縮小ボタン451、並進移動ボタン452、回転移動ボタン53が設けられている。また、図4に示す表示画面400には、血管画像に重畳表示する形状情報を選択するためのセレクトボックス460と、形状情報の大きさを表すカラーバー470が設けられている。セレクトボックス460をクリックすると、形状情報のリストが表示され、表示したい形状情報を選択することができるようになっている。また、カラーバー470は、特異的な形状を表す側が目立つ色、例えば暖色や蛍光色であることが望ましい。
図5は、本発明の第1の実施形態を示し、血管画像の表示例を示す図である。この図5は、図4の血管画像410の表示例として強度近視眼の例を示している。また、図5では、図4の血管画像410の背景を白黒反転させた画像を示している。
図5(a)は、血管510のみを表示する血管画像501を示している。また、図5(b)は、図5(a)に示す血管画像501の含まれる血管510のうち、血管の評価結果に応じて形状情報として神経線維層と硝子体との境界面の曲率を血管510aに着色した血管画像502を示している。即ち、図5(b)は、表示制御部123によって、血管評価部1214による血管の評価結果に応じて、血管画像501に含まれる血管の表示態様を変更し、当該変更に係る血管画像502を表示部124に表示する様子を示している。
より具体的に、図5(a)に示す血管画像501では、血管510は、単色の輪郭(図5(a)の例では白抜き)で表示されている。図5(b)に示す血管画像502では、血管510は、上述した境界面の曲率に応じた表示色で表示される。図5(b)において、点線511の内側の領域が眼球の後方牽引により陥没している凹部に相当し、血管510の走行に沿った血管中心座標における神経線維層と硝子体との境界面の曲率に対応した表示濃度(曲率が大きいほど高濃度)で血管510aの輪郭の内側が埋められている。
なお、図5(b)に示す例では、曲率が大きい部分へグレーの高濃度を割り付け表示したが、本実施形態においてはこれに限定されるものではなく、例えば曲率に応じたカラーを割り付けしてもよい。例えば、通常の領域は青色などの寒色とし、曲率が大きいなどの形状情報に特徴のある領域は赤色などの暖色や蛍光色で識別し易い表示色とすることができる。また、表示色は、形状情報の変数の絶対値または相対値を基準にしてもよく、さらに、割り付けは連続的であってもよいし、ある閾値で二値化してもよい。ここで、二値化を行うことは、血管を分類することに相当する。この際、閾値は、抽出したい対象やOCT装置の分解能でも変わる。例えば、曲率が1/20(1/μm)以上を曲率が大とする閾値を選択する。この際、閾値は固定値でもよいし、検者が変更できるようにしてもよい。さらに、複数の閾値を用いて血管の複数の分類を行ってもよい。図5に示す例では、血管評価部1214による血管の評価結果に応じて血管画像に含まれる血管の表示態様を変更し、当該変更に係る血管画像を表示部124に表示する例を示したが、当該該変更に係る血管画像を3次元断層画像に重畳表示する態様であってもよい。この態様について、図6を用いて説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態を示し、血管画像を3次元断層画像に重畳する表示例を示す図である。図6において、x,y,zの矢印は、それぞれ、x方向,y方向,z方向を表し、立方体690の領域は、3次元断層画像に係るC−scan領域を表している。また、図6において、図5に示す構成と同様の構成については、同じ符号を付している。
図6(a)では、血管画像601を3次元断層画像中に重畳表示した例を示している。この場合、3次元断層画像に重畳して表示する血管画像601は、血管画像生成部1212で生成された血管画像として抽出された血管の全数を対象とする必要はない。図6(a)に示すように、例えば網膜内節細胞層よりも硝子体側の層内の血管径100um以上である主要血管に対してのみ表示色を割り付けることが効果的である。この選択は、症例ごと、もしくは、確認したい形状変化に対応して選択可能であることが望ましい。また、図5で説明したように、点線511の内側の領域が眼球の後方牽引により陥没している凹部に相当する。図6(a)において、主要血管510は、形状情報(ここでは、神経線維層と硝子体との境界面の曲率)に応じた表示色で表示されており、主要血管510のうち、黒色の血管510aが曲率が大きい部分に相当する。
また、3次元断層画像との重畳では、血管画像を見易くするために、硝子体などの網膜よりも上方の構造や神経線維層などの網膜浅層の一部を非表示にしたり、半透明にしたりして表示してもよい。図6(a)の例では、3次元断層画像と血管画像601とを重畳することで、特異的な形状の情報は血管の表示色で、層形状は3次元断層画像から識別できるようになり、特異的な領域をより把握し易くなる。また、3次元断層画像の場合と同様に、3次元断層画像を垂直方向(z方向)や、断面(xz面やyz面、xy面など)でみた2次元画像に対して、血管画像を重畳して表示してもよい。本実施形態では、血管自体の特性、即ち血管径や血管の存在する網膜層を指定して重畳表示の選択に用いたが、これら血管特性を網膜層形状と組み合わせて、網膜血管の分類に用いることも可能である。
図6(b)では、血管画像602を3次元断層画像中に重畳表示した例を示している。この図6(b)に示す例では、形状情報で着色した血管510aを含む血管510のみの血管画像602を3次元断層画像中に重畳表示した例を示している。このように、形状情報で血管を着色することで、血管のみの血管画像602だけでも網膜構造に特徴がある領域の血管に着目し易くなる。
以上、本実施形態に係る眼科撮影装置100の制御方法(画像処理方法)における処理手順について説明を行ったが、本実施形態では、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。例えば、ステップS130の形状解析工程やステップS140の血管評価工程は、ステップS110の第1の撮像信号取得工程及びステップS120の第2の撮像信号取得工程の直後ではなく、時間をおいてポスト処理で行ってもよい。また、図3において、ステップS153における表示条件の変更を行うごとに(S153/Yes)、ステップS130の形状解析工程を実行してもよい。
また、例えば、形状解析をする対象を血管画像中の血管及びその近傍(例えば血管の位置する網膜層)の領域に絞ってもよい。このようにすることで、計算する範囲やデータ量を減らすことができる。
次に、血管画像生成部1212で取得する第2の撮像信号の具体例について説明する。
第2の撮像信号は、被検眼Eの眼底Erに係る血管画像を得ることができるものであればよい。例えば、第2の撮像信号は、上述したように、OCTAを用いて得られた信号、或いは、眼底カメラにより得られた信号、走査型レーザ検眼鏡により得られた信号、及び、OCTの光干渉信号のうちの少なくともいずれかの信号を適用することが可能である。また、眼底カメラでは、フルオレセインやインドシアニングリーンといった蛍光造影剤を使って、血管を強調した撮影を行ってもよい。
まず、OCTAによるモーションコントラストの計算により、血管画像を生成する場合について説明する。
この場合、血管画像生成部1212は、まず、例えば、複数フレームの断層画像の輝度画像から同じ位置のピクセルごとに分散値を計算し、その分散値をモーションコントラストとする。なお、モーションコントラストの求め方は種々あり、本実施形態においては、モーションコントラストの特徴量は同一のy位置でのBスキャン画像の各ピクセルの輝度値の変化を表す指標であれば適用が可能である。また、モーションコントラストは、複数フレームの断層画像の輝度画像から同じ位置のピクセルごとの分散値に替えて、他の手法を用いてもよい。例えば、各フレームの同ピクセルごとの平均値で正規化した変動係数を用いることも可能である。また、1つのA−scanにおける干渉スペクトルを複数領域に分割して、同一深さのピクセルを複数得て、その変動を得る手法も適用可能である。
そして、血管画像生成部1212は、すべてのy位置でのBスキャン画像に対し、モーションコントラスを求めることにより、モーションコントラストの3次元データ(3次元データ)を取得することができる。さらに、血管画像生成部1212は、血流部位情報については残しつつノイズを除去するために、モーションコントラストの3次元データに対して平滑化処理を施す。モーションコントラストの性質によって最適な平滑化処理は異なるが、例えば、以下の処理を行うことが考えられる。
第1の平滑化処理方法としては、注目画素の近傍nx×ny×nz個のボクセルからモーションコントラストの最大値を出力する平滑化方法が考えられる。また、第2の平滑化処理方法としては、注目画素の近傍nx×ny×nz個のボクセルのモーションコントラストの平均値を出力する平滑化方法が考えられる。また、第3の平滑化処理方法としては、注目画素の近傍nx×ny×nz個のボクセルのモーションコントラストの中央値を出力する平滑化方法が考えられる。また、第4の平滑化処理方法としては、注目画素の近傍nx×ny×nz個のボクセルのモーションコントラストに対して、距離による重みをつける平滑化方法が考えられる。また、第5の平滑化処理方法としては、注目画素の近傍nx×ny×nz個のボクセルのモーションコントラストに対して、距離による重みと注目画素との画素値の差に応じて重みをつける平滑化方法が考えられる。また、第6の平滑化処理方法としては、注目画素のまわりの小領域のモーションコントラストパターンと、周辺画素のまわりの小領域のモーションコントラストのパターンの類似度に応じた重みを用いた値を出力する平滑化方法が考えられる。なお、その他の血流部位情報を残しつつ平滑化を行う手法を用いてもよい。
以上の処理により、血管画像生成部1212は、モーションコントラストによる3次元の血管画像を生成することができる。
続いて、眼底カメラにより得られた信号、走査型レーザ検眼鏡により得られた信号、及び、OCTの光干渉信号を用いて、血管画像を生成する場合について説明する。
例えば、眼底カメラや走査型レーザ検眼鏡により得られた信号については、血管画像生成部1212は、これらの信号に基づく画像の各画素の輝度値に対して閾値を設定して画像処理を行うことで、血管画像の水平方向(xy面)の2次元の血管画像を生成する。この際、血管画像生成部1212は、得られた血管画像に対して、平滑化処理などを行ってもよい。
また、例えば、OCTの光干渉信号については、血管画像生成部1212は、当該光干渉信号に基づく3次元断層画像を深さ方向(z方向)に輝度値を積算や平均、または最大輝度を算出することで、光干渉信号から疑似的に2次元画像(疑似SLO画像)を得る。そして、血管画像生成部1212は、この疑似SLO画像からも、同様にして2次元の血管画像を生成することができる。また、血管画像生成部1212は、OCTの3次元断層画像を解析することで、血管画像を生成することができる。例えば、OCTによる撮影では、血管での光の反射や吸収により、血管直下の領域の輝度値が小さくなり、血管の影上にアーチファクトが発生する。この特徴を利用して、血管画像生成部1212は、血管を3次元的に抽出して血管画像を生成することができる。即ち、血管画像生成部1212は、B−scan画像内の隣り合う画素同士を比較することで、血管によるアーチファクトを探索し、アーチファクトの上方に位置する血管を特定する。そして、血管画像生成部1212は、C−scan画像全体について処理することで、OCTの光干渉信号から3次元的に血管画像を生成することができる。
上述したOCTAと比べて、これらの手法で得られる血管画像は、2次元画像であったり、血管の解像度が劣る場合があるといった制約がある一方で、従来からある撮影機器を利用できるという利点がある。このように、血管画像を得た後、例えば、2値化処理→細線化→中心線分の座標の入手→所定間隔走行方向に沿った点を選択する、といったような手順で、形状解析を行う基準となる測定点座標を決定することができる。
次に、形状解析部1213で取得する形状情報に係るパラメータについて説明する。
形状解析部1213で取得する形状情報は、網膜層の特異的な形状を抽出する特徴量のパラメータであればよい。例えば、血管走行に沿って決定された基準となる測定点座標を含む血管走行方向に垂直な平面における網膜の特定境界面(線)の曲率やその曲率半径、特定境界面(線)の傾きやその変化率、特定境界面(線)の局所的な凹凸、各層の層厚やその変化率のうちのいずれかの形状パラメータ、またはこれらの形状パラメータの組合せに係る情報を適用可能である。
説明を簡略化するため、以下の説明では、2次元の断層画像を使って説明し、境界面=境界線として説明する。
形状解析を行うのにあたり、OCTの3次元断層画像の大きさを評価するためには、画素数での評価ではなく、深さ方向と水平方向の実寸法で換算して評価することが好ましい。なお、画素数と実寸法との対応が既知で後から換算可能な場合や相対比較でもよい場合には、画素数で評価してもよい。さらに、測定点座標における対象血管の血管径などで正規化した数値を用いることも有用である。また、3次元断層画像の中心部と周辺部とのゆがみや、眼軸長など深さによる違いを補正してもよい。
以下に、各形状パラメータの算出方法の例について説明する。
まず始めに、形状情報として、網膜層の境界線の曲率や曲率半径の形状パラメータを算出する方法について説明する。曲率や曲率半径の算出は、既知の方法を用いることができるが、その算出方法の一例について図7を用いて説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態を示し、図1の形状解析部1213で取得する形状情報の算出方法を説明するための図である。
図7(a)、図7(b)及び図7(c)は、それぞれ、3次元断層画像における所定血管V1,V2(不図示),V3の所定測定点(x1,z1),(x2,z2)(不図示),(x3,z3)における血管方向に垂直なx−z平面における網膜特定層の境界線Lの一部を示す。
ここで、所定測定点(x1,z1)は、所定血管V1の断面の中心位置を示すものとし、他の所定測定点も同様とする。なお、ここでは、所定測定点(x1,z1)は、所定血管V1の断面の中心位置を示すものとしたが、本実施形態においてはこれに限定されるものではなく、例えば所定血管V1の断面の周囲のいずれかの点であってもよく、他の所定測定点も同様とする。
境界線Lは、画素ごとに座標値(x,z)をもち、近似曲線z(x)で表される。近似曲線z(x)は、様々な曲線近似手法を用いることができるが、例えば、測定点のxi座標±3×血管径の範囲において、境界線Lの座標値から2次以上の多項式近似でカーブフィッティングにより得ることができる。ここで、境界線Lの曲率半径rや曲率(=1/r)は、境界線Lの近似曲線z(x)から、以下の(1)式によって算出できる。
この(1)式において、曲率半径r(xi,zi)の符号で上に凸か下に凸かが分かり、曲率半径rの大きさで形状の曲がり具合が分かる。また、曲率半径r(xi,zi)の逆数(1/r(xi,zi)から曲率が算出できる。
続いて、形状情報として、境界線の傾きやその変化率の形状パラメータを算出する方法について説明する。この境界線の傾きやその変化率の形状パラメータの算出方法の一例について図8を用いて説明する。
図8は、本発明の第1の実施形態を示し、図1の形状解析部1213で取得する形状情報の算出方法を説明するための図である。
図8は、被検眼Eの眼底Erの断層画像の境界線を模式的に示している。境界線Lは、セグメンテーションで抽出した境界線に対応する。この際、境界線は、多項式z(x)で近似する。接線L11〜L19は、境界線Lにおける接線の例を示しており、それぞれ、傾き(dz(x)/dx)をもつ。眼球は球状であるので、断層画像の境界線Lは、網膜浅層を除くと全体的には下向きに凸となり、最深部を挟んで傾き(dz(x)/dx)は、負及び正の符号をもつ。例えば、接線L11は負の傾き、接線L15は傾き零、接線L19は正の傾きにそれぞれ相当する。
眼底Erの形状に特徴(凹凸)がある場合、傾きの符号が局所的に反転し、傾きの変化率(d2z(x)/dx2)が局所的に大きな値をとる。図8に示す例では、接線L12〜L14が凹部801に相当し、接線L16〜L18が凸部802に相当する。傾きや変化率を用いることで、曲率と同様に凹凸を抽出することができる。この図8に示すように、曲率の替わりに傾きを用いる場合、計算量が少なくなる利点がある。境界線Lの傾きを使う方法は、RPEなど比較的なだらかな形状をもつ部位を対象に適用することができる。また、境界線Lの傾きやその変化率から局所的な凸部或いは凹部の領域が抽出できる。例えば、局所的な凸部の領域を+1、局所的な凹部の領域を−1、それ以外の領域を0として、形状情報とすればよい。以上の手法を用いることで、形状情報として、傾きやその変化率、或いは局所的な凹凸の情報を得ることができる。
また、図8を用いて、境界線Lの局所的な凹凸を取得する他の方法について説明する。この場合、境界線Lは、近似曲線z(x)で近似する。曲線近似z(x)における凹凸の向きは、上述した(1)式の符号から判定できる。局所的に符号が異なる領域がある場合、当該領域を局所的な凹凸として抽出できる。この際、境界線Lに対して下向きに凸の基準曲線L20を設けて、基準曲線L20に対する曲線近似z(x)のz方向での上下関係で判定してもよい。図8に示す基準曲線L20は、例えば、近似曲線z(x)よりも次数の低い2次の放物線などによる曲線近似を行って導出すればよい。そして、境界線Lの局所的な凹凸を求めることにより、局所的な凸部或いは凹部の領域が抽出できる。以上の手法を用いることで、形状情報として、局所的な凹凸の情報を得ることができる。
続いて、形状情報として、層厚やその変化率の形状パラメータを算出する方法について説明する。この層厚やその変化率の形状パラメータの算出方法の一例について図9を用いて説明する。
図9は、本発明の第1の実施形態を示し、図1の形状解析部1213で取得する形状情報の算出方法を説明するための図である。
層厚は、2つの境界線間の間隔から算出できる。例えば、図9の境界線L21と境界線L22のそれぞれのz座標の差から、その間の層の厚みを算出することができる。層の厚みを利用することで、例えば、菲薄化している領域を抽出できる。また、厚さの変化率を利用すると急峻に厚さが変化する部分を抽出できる。以上の手法を用いることで、形状情報として、層厚やその変化率の情報を得ることができる。
以上、形状パラメータの算出方法の一例について説明したが、上述した方法以外の方法で算出してもよい。例えば、上述した例では2次元断層画像を元に算出する方法について説明したが、3次元的な解析手法から算出してもよい。その場合、曲線近似の替わりに曲面近似を行えばよい。
また、形状解析部1213は、血管画像に含まれる血管の走行方向(走行座標)を考慮して、眼底Erの形状解析を行ってもよい。このように、血管の走行方向を考慮することで、より正確に眼底Erの形状解析を行える場合がある。この場合について図10を用いて説明する。
図10は、本発明の第1の実施形態を示し、血管画像の一例を示す拡大図である。
例えば、図10に示す血管1000を円柱(円筒)に近似したときに、円筒の中心軸L41に対して平行な断面(uw面やuv面)と、中心軸L41に対して垂直な断面(vw面)とで、上述した曲率を計算した場合に結果が異なる。例えば、血管1000の牽引がある場合、中心軸L41に対して垂直な断面(vw面)の方が平行な断面(uw面やuv面)よりも曲率が大きく計算され、牽引の程度を反映しやすい。同様に、上述した傾きや凹凸に関しても、血管の走行方向を考慮すると、より正確に形状解析を行える。
また、例えば、形状解析部1213において、算出した形状パラメータに対して、平滑化や異常値の補正などの処理を行ってもよい。この際、形状パラメータは、網膜層の特異的な形状を抽出する特徴量であればよく、上述した以外の形状パラメータを用いてもよい。また、複数の形状パラメータを組み合わせることで、抽出する領域をさらに絞ってもよい。また、被験眼Eの状態によっては、形状パラメータが算出できない領域が発生する場合もあり、この場合には、例えば、形状パラメータを算出できないことを異常値領域として形状情報としてもよい。この一例としては、緑内障でNFLが菲薄化し一部が消失している場合が挙げられる。
次いで、形状解析部1213の形状解析を行い、表示制御部123によって強調表示したい血管に関連する網膜層の特異的な形状の一例と、形状パラメータについて説明する。以下に、病的近視、加齢黄斑変性、及び、緑内障の被検眼Eの例を示す。
図11は、本発明の第1の実施形態を示し、図1の形状解析部1213による形状解析の一例を説明するための図である。この図11を用いて、被検眼Eが強度近視眼の場合の形状解析の一例について説明する。
図11(a)に示す眼底Erの2次元断層画像1101は、断層画像生成部1211で生成された3次元断層画像のうち、被検眼Eの眼底Erの深さ方向のおける2次元断層画像を示している。この図11(a)に示す眼底Erの2次元断層画像1101には、内境界膜(ILM)L1、神経線維層(NFL)と神経節細胞層(GCL)との境界L2、視細胞内節外節接合部(ISOS)L3が示されている。さらに、図11(a)に示す眼底Erの2次元断層画像1101には、網膜色素上皮層(RPE)L4、ブルッフ膜(BM)L5が示されている。病的近視眼では、図11(b)に示すように、眼球1102(強膜)が後方に伸長する。眼球の伸長は全体的に伸長する(黒矢印)だけでなく、局所的に伸長する(白矢印)場合がある。被検眼Eの強膜の後方伸展に伴い、網膜形状に変化が発生する。網膜の血管510は、網膜に対して伸長しにくい組織であり、強膜の後方伸長の結果、網膜の血管510により周辺の網膜が相対的に前方に牽引され(黒色の矢印)、症状が進行すると網膜分離が発生する。血管により牽引が発生している箇所(図11(a)のXXa)では、境界面での曲率が小さくなる。また、血管による牽引が発生していない箇所(図11(a)のXXb)では、境界面での曲率はなだらかになる。図11に示す例では、境界線L1の曲率を選択することで局所的な牽引を抽出することができる。また、境界線L1に下向きに凸の基準曲線を設けて、基準曲線と局所的な凹凸とを比較することによっても抽出することができる。同様に、境界面の傾きやその変化率を利用しても、凸部を抽出することができる。また、これらの形状情報を血管画像に付与することにより、牽引が生じている血管を抽出することができる。図5(b)に示す血管画像502を用いて説明する。この場合、図5(b)の血管510に対し、黒色で表示した血管510aが牽引されている血管を示すことになる。このように、牽引が生じている領域を可視化することで、牽引がどの領域まで広がっているかの進行具合や、深刻具合が把握し易くなる。
図12は、本発明の第1の実施形態を示し、図1の形状解析部1213による形状解析の一例を説明するための図である。この図12を用いて、被検眼Eが加齢黄斑変性の場合の形状解析の一例について説明する。図12に示す眼底Erの2次元断層画像1200は、断層画像生成部1211で生成された3次元断層画像のうち、被検眼Eの眼底Erの深さ方向のおける2次元断層画像を示している。
加齢黄斑変性では、図12に示す眼底Erの2次元断層画像1200のように、網膜色素上皮(RPE)(図12の境界線L4)の形状に変化が発生する場合がある。加齢に伴いRPEの働きが低下すると、未消化の老廃物1201及び1202(ドルーゼン)がブルッフ膜(図12の境界線L5)とRPE(図12の境界線L4)との間にたまる。OCTでは、RPEが網膜内側へ突出する形状が観察できる。この老廃物1201及び1202が蓄積すると、炎症反応が起き脈絡膜から新生血管(CNV)が生えてくる。CNVがブルッフ膜を突き破ってRPEの下や上まで侵入して増殖すると、CNVに由来する漏出が激しくなって黄斑の機能低下につながる。形状解析部1213による形状解析では、老廃物1201及び1202によりRPE(境界線L4)が網膜内側へ突出する形状を抽出する。例えば、RPEの境界線L4に対応する基準線L4aと局所的な凹凸を表す境界線L4とを比較することで老廃物1201及び1202の存在する可能性がある領域を抽出することができる。また、基準線を用いる以外にも、境界線の傾きやその変化率、凹凸の向きを利用して、局所的な凸部を抽出することもできる。そして、RPEに相当する部位の形状情報を近傍の血管画像に付与することにより、老廃物1201及び1202の周囲の血管を抽出することができ、CNVを見つけ易くなる。
図13は、本発明の第1の実施形態を示し、図1の形状解析部1213による形状解析の一例を説明するための図である。この図13を用いて、被検眼Eが緑内障の場合の形状解析の一例について説明する。図13に示す眼底Erの2次元断層画像1300は、断層画像生成部1211で生成された3次元断層画像のうち、被検眼Eの眼底Erの深さ方向のおける2次元断層画像(yz面の2次元断層画像)を示している。また、図13において、図12に示す構成と同様の構成については同じ符号を付している。
図13に示す2次元断層画像1300において、左側が被検眼Eの下方で、右側が被検眼Eの上方に対応する。緑内障では、神経線維層(NFL)や神経節細胞層(GCL)の菲薄化が起こり、神経節細胞の欠損により視野障害が生じる。緑内障の進行に前後して網膜の血流障害が起こる。図13の例では、被検眼の下方(図の左側)でNFLの菲薄化が進んでいる。NFLやGCLの菲薄化を抽出するには、形状解析でNFLやGCLとIPLを合わせた層の厚みを測定すればよい。具体的に、図13の例では、L1とL2との間の厚みを計測すればよい。この際、閾値は、標準的な人眼のデータベースの値を基準としてもよいし、被検眼内の相対値であってもよい。また、検者が閾値を指定してもよい。菲薄化している部位の情報を形状情報として血管画像に付与することにより、菲薄化が進んでいる領域である図13に示す血管510aを血管画像からも見つけ易くなる。
なお、上述した本発明の第1の実施形態は、飽くまでも本発明における一例であり、本発明の要旨の範囲内において他の形態にも適用できるものである。また、所望の網膜形状を抽出できる形状パラメータを選択し、血管近傍の形状パラメータに基づいて血管を評価し、その評価結果を表示することで、特異的な網膜形状における血管に着目し易くなる。
以上説明したように、第1の実施形態に係る眼科撮影装置100では、断層画像生成部1211において、被検眼Eの眼底Erに係る第1の撮像信号を取得して眼底Erの3次元断層画像を生成するようにしている。また、血管画像生成部1212において、被検眼Eの眼底Erに係る第2の撮像信号を取得して眼底Erの血管が映し出された血管画像を生成するようにしている。そして、形状解析部1213において、3次元断層画像を解析して眼底Erの形状に係る形状情報を取得し、血管評価部1214において、形状情報に基づいて血管画像に含まれる血管を評価するようにしている。そして、表示制御部123において、血管評価部1214による血管の評価結果を表示部124に表示する制御を行うようにしている。
かかる構成によれば、被検眼の眼底(網膜)における形状と血管との対応関係を把握し易くすることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係る眼科撮影装置の概略構成は、図1に示す第1の実施形態に係る眼科撮影装置100の概略構成と同様である。また、第2の実施形態に係る眼科撮影装置100の制御方法(画像処理方法)における処理手順は、図2及び図3に示す第1の実施形態に係る眼科撮影装置100の制御方法(画像処理方法)における処理手順を示すフローチャートと同様である。
第2の実施形態では、上述した第1の実施形態に対して、血管評価部1214による血管の評価及び表示制御部123による血管の評価結果の表示制御に関する変形例について説明する。
第2の実施形態では、第1の撮像信号及び第2の撮像信号を、異なる日時において複数回取得するものとする。そして、第2の実施形態に係る眼科撮影装置100では、複数回のそれぞれの回について、断層画像生成部1211において第1の撮像信号に基づき3次元断層画像を生成し、血管画像生成部1212において第2の撮像信号に基づき血管画像を生成する。その後、第2の実施形態に係る眼科撮影装置100では、形状解析部1213において、それぞれの3次元断層画像を解析して眼底Erの形状に係る形状情報を取得する。そして、第2の実施形態に係る眼科撮影装置100では、血管評価部1214において、それぞれの形状情報に基づいて血管画像に含まれる血管を評価する。そして、表示制御部123において、血管評価部1214による血管の評価結果を表示部124に表示する制御を行う。
第2の実施形態では、例えば血管評価部1214において、形状解析部1213で取得されたそれぞれの形状情報に基づいて、形状情報の経時的な変化量または変化率を算出するようにしてもよい。なお、この形状情報の経時的な変化量または変化率の算出は、形状解析部1213で行ってもよい。この際の変化量または変化率は、初回の撮影を基準とすればよい。その後、表示制御部123において、このような形状情報の経時的な変化量または変化率を考慮した血管の評価結果を表示部124に表示制御を行うことにより、経時的に形状が変化している部位を網膜層の特異的な部位として強調して表示することができる。このように、形状情報の経時的な変化量または変化率を考慮し、これを血管画像の評価及びその評価結果の表示制御に反映することで、網膜形状に変化が生じた部位の血管に着目し易くなる。
また、第2の実施形態では、上述した形状情報の経時的な変化量または変化率を算出することに替えて、表示制御部123が、血管の評価結果を反映した血管画像を撮影順に表示したり、血管の評価結果を反映した複数枚の血管画像を並べて表示したりしてもよい。
図14は、本発明の第2の実施形態を示し、図1の血管評価部1214による血管の評価結果の表示例を示す図である。この図14には、異なる日時に撮影された複数の血管画像のそれぞれについて血管の評価結果を反映した血管画像を示している。
図14に示す例では、図14(a)に示す血管画像1401、図14(b)に示す血管画像1402、図14(c)に示す血管画像1403の順番に撮影されたものとする。なお、この図14(a)〜図14(c)において、図5(b)に示す構成と同様の構成については同じ符号を付している。
この図14に示す例では、特異的な領域にある血管510aが拡大している様子が分かる。このように、異なる日時等の経時変化に係る血管画像に血管の評価結果を反映させることにより、病気の進行度合いや回復度合いといった経時的な変化が視覚的に把握し易くなる。
第2の実施形態に係る眼科撮影装置100によれば、上述した第1の実施形態における効果に加えて、さらに、病気の進行度合いや回復度合いといった経時的な変化を視覚的に把握し易くすることができる。
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本発明に含まれる。
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、画像の表示の位置関係やGUIの形状は適宜変更可能である。また、3Dディスプレイによる立体視による表示でもよい。