JP6986458B2 - ケミカルルーピングシステム及びケミカルルーピング法 - Google Patents
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ケミカルルーピングは、酸素キャリア金属粒子と呼ばれる金属酸化物を酸素源として複数の反応塔間で循環させ、燃焼反応を金属の酸化反応及び金属酸化物の還元反応に分割して行い、熱エネルギーや有用ガスを得ることのできるエネルギー変換システムである。
さらに、燃料反応塔の後段に水蒸気を供給する水素生成塔を備え、水蒸気中の酸素が酸素キャリア金属粒子との酸化反応により消費されることで、高純度の水素を生成する技術としても利用可能である。
したがって、燃料反応塔での反応後の酸素キャリア金属粒子を、次の反応塔に添加する前に、酸化数に応じて選択・分離することが必要となる。
すなわち、本発明は、以下のケミカルルーピングシステム及びケミカルルーピング法である。
本発明のケミカルルーピングシステムは、反応後の酸素キャリア金属粒子を比較的簡易な手段で分離することにより、反応に必要な酸化還元状態を有する酸素キャリア金属粒子の含有率を上げた状態で、酸素キャリア金属粒子を各反応塔に供給することができる。これにより、各反応の効率を向上させるとともに、酸素キャリア金属粒子の活性低下を防止して有効に利用することが可能となる。
この特徴によれば、酸素キャリア金属粒子において温度に応じて磁性が変わる物質に対し、磁気分離に適した温度に制御することができる。これにより、酸素キャリア金属粒子の選択・分離をより確実に行うことが可能となる。
この特徴によれば、簡易な構造及びプロセスで、酸素キャリア金属粒子を分離することが可能となる。
この特徴によれば、簡易なプロセスで、酸素キャリア金属粒子を分離するための磁力の制御が可能となる。
本発明のケミカルルーピング法は、反応後の酸素キャリア金属粒子を比較的簡易な手段で分離することができ、反応に必要な酸化還元状態を有する酸素キャリア金属粒子を多く含む酸素キャリア金属粒子を用いて、各反応塔での反応を行うことができる。これにより、各反応の効率を向上させるとともに、酸素キャリア金属粒子の活性低下を防止することが可能となり、所望の反応生成物を効率よく得ることができる。
図1は、本発明の第1の実施態様のケミカルルーピングシステムの構成を示す概略図である。
本発明の第1の実施態様のケミカルルーピングシステム1aは、炭化水素を含む燃料Fを酸素キャリア金属粒子Mと反応させる燃料反応部2を備え、窒素及び二酸化炭素の他に水素を得る水素製造プロセスである。
また、酸素キャリア金属粒子Mは、特に酸化還元状態を示す際には、還元状態をM1、部分酸化状態をMO、完全酸化状態をMO2として表記する。なお、この表記は金属化合物における相対的な酸化還元状態を示し、還元状態M1には酸化物を含むこともある。
燃料反応部2としての燃料反応塔21は、酸化された酸素キャリア金属粒子MO2と炭化水素(CmHn)を含む燃料Fを反応させる場であり、酸化された酸素キャリア金属粒子MO2を還元する場である。
図1に示すように、燃料反応塔21にはラインL20から燃料Fを供給し、ラインL1から酸素キャリア金属粒子MO2が供給される。反応後の酸素キャリア金属粒子M′はすべて還元された酸素キャリア金属粒子M1として排出されることが望ましいが、実際には還元状態のM1、部分酸化状態のMO及び未反応のMO2が混合した状態となる。この酸素キャリア金属粒子M′がラインL2を介して磁気分離部5へ供給される。また、燃料反応塔21で生成したCO2とH2OはラインL30を介して回収される。なお、燃料Fは、メタンガスや都市ガスのような気体燃料のみではなく、石炭のような固体燃料であってもよい。
磁気分離部3は、燃料反応部2から排出される反応後の酸素キャリア金属粒子M′を磁力の違いによって分離するものであり、燃料反応部2の後段にある酸素キャリア金属粒子M′の循環流路上に設けられる。
燃料反応部2で生成した複数の酸化還元状態を含む酸素キャリア金属粒子M′は、還元状態の高い酸素キャリア金属粒子M1の含有率を高くした状態で、水素生成部4に供給する必要がある。そのため、酸素キャリア金属粒子M′中のMOもしくはMO2のうち、少なくとも一つ、もしくは両方が、磁力によって酸素キャリア金属粒子M1と分離される。
なお、酸素キャリア金属粒子M′は、それぞれ独立した1粒子が、必ず1成分のみで構成されるものとは限らない。例えば、独立した1粒子内に複数の酸化還元状態を含むことも考えられる。ただし、1粒子内に複数の酸化還元状態が含まれる場合であっても、1粒子内に存在する比率が最も高い酸化還元状態に応じ、それぞれの酸素キャリア金属粒子M′の組成が決まるものとみなすことができる。
酸素キャリア金属粒子M1を含む磁気分離された酸素キャリア金属粒子MS1は水素生成部4へ供給し、酸素キャリア金属粒子M1を含まない磁気分離された酸素キャリア金属粒子MS2は酸化反応部5へ送るように構成する。なお、磁力への反応は、引き寄せ、反発のいずれでもよい。
例えば、循環流路上に設けたコイルに電流を流す電磁石を用いるものであってもよい。この場合、分離のための磁力の大きさを容易に制御することが可能となる。
また、循環流路内もしくは循環流路の外側に高速回転する磁石を設け、酸素キャリア金属粒子Mが近づくことにより発生する渦電流と磁界相互作用を利用した磁気分離としてもよい。この場合、対象となる酸素キャリア金属粒子Mが強磁性体でなくても、分離が可能となる。
水素生成部4としての水素生成塔41は、酸素キャリア金属粒子M1に酸化剤として水蒸気を加えて反応させる場であり、酸素キャリア金属粒子M1を部分酸化するとともに、水蒸気からH2を生成する場である。
図1に示すように、水素生成塔4にはラインL21から水蒸気を供給し、ラインL3から磁気分離部3を介して分離された酸素キャリア金属粒子MS1が供給される。ここで反応した酸素キャリア金属粒子MOはラインL5を介して酸化反応部5へ供給される。また、水素生成塔41で生成したH2はラインL31を介して回収される。
酸化反応部5としての酸化塔51は、部分酸化された酸素キャリア金属粒子MOと空気を反応させる場であり、酸素キャリア金属粒子Mを完全酸化するとともに、空気からO2を除去し、高濃度のN2を得る場である。なお、この反応は発熱反応であるため、ここから熱エネルギーを回収して、発電など他のシステムで利用するようにしてもよい。
図1に示すように、酸化塔51にはラインL22から空気を供給し、ラインL5から酸素キャリア金属粒子MOが供給される。また、ラインL4から磁気分離部3を介して分離された酸素キャリア金属粒子MS2が供給される。反応後、生成した酸素キャリア金属粒子MO2はラインL1を介して燃料反応部2へ供給される。また、酸化塔51で生成したN2はラインL32を介して回収される。なお、ラインL22から供給される空気は、コンプレッサーなど加圧ポンプによる加圧空気や、空気予熱器を通した空気であってもよい。
酸素キャリア金属粒子Mは、ケミカルルーピングシステムで用いられる公知の金属物質とすることができる。
本発明のケミカルルーピングシステムにおいては、酸素キャリア金属粒子Mとして、特に、金属化合物の酸化状態によって磁力の差が大きくなるものを用いることが好ましく、例えば、鉄、ニッケルを含むものが挙げられる。
4Fe2O3+CH4 → 8FeO+CO2+2H2O (1)
図2Aでは、温度上昇とともにCH4は減少するが、CO2及びH2O以外にもH2、CO、Cなどが生成し、不完全燃焼となることがわかる。一方、図2Bでは、広い温度範囲で、CO2及びH2Oのみが生成することがわかる。
図3Aでは、温度上昇とともにFe2O3がほとんどFeやFeOまで還元されることがわかる。一方、図3Bでは、Fe2O3は一部残存する。また、Fe3O4が最も多く生成し、他にFeOが生成することがわかる。
しかしながら、図2及び図3の結果から、燃料反応部2で完全燃焼を行うための条件では、水素生成部4で必要とされる鉄の還元状態が不十分となる一方、水素生成部4で必要とされる十分な還元状態の鉄を得るためには、燃料反応部2での反応が不完全燃焼となってしまうというトレードオフの関係にあることがわかる。
図4は、本発明の第2の実施態様のケミカルルーピングシステムの構成を示す概略図である。
第2の実施態様のケミカルルーピングシステム1bは、図4に示すように、燃料反応部2の後段に、温度調整機構6を備えたものである。また、温度調整機構6は温度測定部61と温度制御部62からなり、それぞれ磁気分離部3の前段に備えたものとしている。その他の構成は第1の実施態様と同様である。
例えば、酸素キャリア金属粒子Mとして鉄を用いた場合、燃料反応部2で反応した酸素キャリア金属粒子M′に含まれるFe3O4のキュリー温度は585度であり、この温度以上では磁性を失うことになる。したがって、燃料反応部2から排出された酸素キャリア金属粒子M′の循環流路(ラインL2)内が585度以下となるように、温度調整機構6によって温度制御することが望ましい。
図5は、本発明の第3の実施態様のケミカルルーピングシステムの構成を示す概略図である。
本発明の第3の実施態様のケミカルルーピングシステム1cは、炭化水素を含む燃料Fを酸素キャリア金属粒子Mと反応させる燃料反応部20を備え、発電等に利用可能な熱エネルギーや、窒素及び二酸化炭素のような有用ガスを得ることのできる燃焼プロセスである。
また、本実施態様のケミカルルーピングシステム1cにおいては、図5に示すように、酸化反応部50から排出される酸素キャリア金属粒子Mの一部を、磁気分離部30の後段に戻すショートパス経路となるラインL10を設けるものとしてもよい。このラインL10は、磁気分離部30から分離された還元状態の酸素キャリア金属粒子M1に対して、酸化力を有する酸素キャリア金属粒子MO2を接触させるためのものである。詳細については後述するが、これにより、酸素キャリア金属粒子M1を酸化反応部50に供給するのに適した酸化還元状態とするものである。
例えば、酸素キャリア金属粒子Mとして鉄を用いた場合、燃料反応部20で完全燃焼反応が起こり、Fe又はFeOのような還元状態にある鉄が酸化塔52に供給されると、酸化塔52内での酸化反応による発熱量が大き過ぎるため、シンタリングと呼ばれる酸素キャリア金属粒子Mの活性低下が起きるという問題が生じる。
したがって、燃料反応部20において完全燃焼を行うための条件下で生成した鉄を含む生成物のうち、特に部分酸化状態の酸素キャリア金属粒子MOに相当するFe3O4を磁気分離部30において選択分離し、ラインL8を介して酸化反応部50に供給することで、酸素キャリア金属粒子Mの活性低下を防ぐことができる。
Claims (5)
- 酸素キャリア金属粒子と燃料とを反応させる燃料反応部と、
前記燃料反応部で生じた反応後の前記酸素キャリア金属粒子を酸化数に応じて分離する磁気分離部と、
を備えることを特徴とする、ケミカルルーピングシステム。 - 前記燃料反応部の後段であって、前記磁気分離部の前段に、温度調整機構を設け、
前記温度調整機構は、温度測定部と温度制御部とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のケミカルルーピングシステム。 - 前記磁気分離部は、永久磁石を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のケミカルルーピングシステム。
- 前記磁気分離部は、コイルに電流を流す電磁石を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のケミカルルーピングシステム。
- 酸素キャリア金属粒子と燃料とを反応させる燃料反応工程と、
前記燃料反応工程で生じた反応後の前記酸素キャリア金属粒子を酸化数に応じて分離する磁気分離工程と、
を含むことを特徴とする、ケミカルルーピング法。
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