JP6982154B2 - 機械式時計用測定装置 - Google Patents

Description

本発明は、手巻きまたは自動巻きの機械式時計の分野、さらに詳細には、この種の時計の機械式ムーブメントを検査するための装置に関する。

機械式時計のムーブメントの動作の規則性やその他のパラメータの特徴を明らかにするための検査が知られている。採用されている測定は、時計のムーブメントの機械的振動子によって生じるインパルスを光学式かつ／または音響式に測定することからなる。今日知られている音響式測定では、高価なマイクロフォンを使用することが多いため、この対策の費用対効果はそれほど高くはない。光学式方法を実施するのに使用される機材は、比較的複雑である上に高額である。

一般に、機械式時計の検査用の今日知られている装置は、研究環境向けに開発されたものである。このような装置は、時計を装着している個人による使用を目的としていない。小型で使いやすい検査装置は、現時点では市販されていない。

本発明は、前述の課題に対する解決策を提供することを狙いとしている。この目的は、添付の請求項に記載の装置および方法によって達成される。

本発明は、機械式時計の動作を特徴付ける１つ以上のパラメータの値を測定できる携帯型装置に関する。本装置は、接触部品と、例えば圧電部材を含む接触マイクロフォンとを備えている。本装置は、手に保持され、接触部品は、測定期間にわたって時計のケースと物理的に接触させられる。本装置はさらに、交換式または充電式のバッテリなどの電源、マイクロプロセッサ、メモリ、および測定した値を表示する画面、好ましくはタッチセンサー式の画面を含んでいる。好ましくは、本装置の寸法は、腕時計のケースと同程度である。１つの特定の実施形態によれば、本装置は、時計用ルーペの形状をしている。本発明はさらに、本発明の装置を用いた測定方法に関する。本装置は、使いやすく、着用者が自分自身の時計を検査するのを可能にするものである。

本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面に関して非限定的な例として挙げた以下の好適な実施形態の説明を読むことで明らかになるであろう。

本発明を、非限定的な例として挙げた添付の図面を用いて以下でさらに詳細に説明する。

図１ａおよび図１ｂは、本発明の一実施形態による装置の３次元図である。 図１の装置の組立分解図である。 図１および図２の装置の平面図および断面図である。 本発明の一実施形態による、装置内部のＰＣＢに搭載した構成要素の図である。 装置が時計ケースと接触した状態で保持されているときに本発明の装置内部のマイクロフォンが検知した典型的な信号を示す図である。

図１ａおよび図１ｂに示した装置１は、時計用ルーペの外形および寸法を有し、筒状部分２と円錐状または湾曲した部分を有する部分３を含むもので、部分３は筒状部分２から部分４の方向へ広がり、部分４は筒状部分２よりも広い。本装置の機能性は時計用ルーペの機能性とは大きく異なるため、本発明はこの形状に限定されない。筒状部分２の端部には湾曲面５が設けられる。面５は、装置と検査する時計ケースとの間の接触面として作用する。接触面５の湾曲およびこの面の素材の硬度は、面５とケースとの間の接触面積が、時計の平均寸法に対して測定した一点に本質的に制限されるような湾曲および硬度である。測定したデータを表示し、ユーザからの指示を受け取るために、部分４の中にはデジタル画面６、好ましくはタッチセンサー式の画面が組み込まれている。

図２および図３は、接触面５が円形部品１０の外面であることを示しており、円形部品を以下、接触部品と称する。一点での接触を生み出すため、接触部品１０は、例えば硬度が少なくとも１００ビッカースである硬質金属または硬質合成材料で作製されることが好ましい。接触部品１０は、外面５の反対側に筒状の空洞１１を含み、この空洞は、中空で筒状の隆起部１２に囲まれ、直径が接触面５の直径よりも短い。接触部品１０は、好ましくは金属製の筒状フレーム１４の内側フランジ１３に装着され、筒状隆起部１２は、フランジ１３に画定された開口を通る。接触部品１０とフランジ１３との間には、圧縮性材料製、例えば衝撃吸収発泡体で作製されたワッシャ１５が取り付けられる。部品１０、ワッシャ１５およびフランジ１３は、例えばワッシャ１５に接着性発泡体を使用することによって互いにしっかりと接続される。装置１が使用されていないとき、湾曲面５の頂点は、図３に示した差「ａ」の分だけフレーム１４の下平面から突出する。

接触部品１０の空洞１１の底には圧電部材２０が固定され、部品１０と圧電部材２０で形成された組立体が接触マイクロフォンを構成するようになる。圧電部材２０は、電線２１を介して、フレーム１４の第２の内側フランジ２３に固定されたＰＣＢ（プリント回路基板）２２に接続される。ＰＣＢ２２には、マイクロフォンによって生じた信号を処理し、分析するように構成された電子部品が装備され、この信号については以下にさらに詳細に説明する。

フレーム１４の内部のＰＣＢ２２の上に、プラスチック製のバッテリキャリア２５が固定するように挿入される。バッテリキャリア２５は、取り換え可能なバッテリ２６、例えばＣＲ１６３２型の標準バッテリを受容できるハウジングを含んでいる。他の実施形態によれば、装置は、充電式バッテリを備えている。バッテリ２６をＰＣＢ２２に接続してＰＣＢの構成要素に給電するために、バッテリキャリア２５の中には伝導体（図示せず）が組み込まれる。バッテリキャリア２５は、ＰＣＢ２２と装置のデジタル画面６との間に接続点を形成するばね付きピン２８を通すいくつかの開口２７を有している。画面６は、ばね付きピン２８と接触状態になるコネクタ３０を備えている。

外側のルーペ形ケーシング３１がフレーム１４の周囲に取り付けられ、フレーム１４の外面上にあるリブ３２を介してこのフレームにクリップ留めされる。リブ３２は、外側ケーシングがフレーム１４の周囲に配置されて下向きに押されたとき、外側ケーシング３１の内部にある凹部３３に入る。外側ケーシング３１は、合成材料、例えばシリコンで作製され、それによって十分な変形が可能になってクリップ留めによる接続点ができる。この種の接続点の代わりに、本発明の範囲内で、ケーシング３１をフレーム１４に可逆的に装着する他の手段が可能である。ケーシング３１の上部は、タッチセンサー式の画面である場合にユーザの指示を伝送できる画面６用の保護ガラス３４を備えている。反対側では、ケーシング３１は、フレーム１４の外側フランジ３５と接触する。

装置１を使用するためには、ユーザは、装置を自分の手に保持し、接触面５が曲がった状態で時計ケースと物理的に接触していると同時に装置をやや押し下げるように装置を位置決めする。差「ａ」があることでこの圧力が弾性ワッシャ１５を圧縮でき、装置１と時計ケースとの間に十分な接触力を確保するようになる。装置は、例えば約１０秒という測定期間の間、固定システムを用いてこの位置に保持される。ユーザは、タッチセンサー画面６を介して装置を作動させることができるか、あるいは、装置が位置決めされて時計の面に押し付けられると直ちに自動的に作動するように装置を構成できる。このようにして測定期間が始まり、その間にマイクロフォンは、時計の機械式ムーブメントによって生じた音響ノイズを測定する。それ自体が公知のある方法では、このようなノイズは、特徴の異なる２種類のインパルスが交互に連続したものからなり、これは「チック」と「タック」と呼ばれることが多い。インパルスを分析することで、作動状態および打音などのムーブメントの動作に関連するパラメータを計算することが可能になる。これらの分析および計算は、ＰＣＢに搭載された構成要素によって実行される。これらの構成要素に対しては、本発明の範囲内でいくつかの構成が可能である。構成の一例を図４に示している。

圧電部材２０によって生じた信号は、増幅段階４０を通って処理ユニット４１に進み、処理ユニットは、アナログ‐デジタル変換器（ＡＤＣ）４２、精密な振動子４４（好ましくはＴＣＸＯ-温度補償水晶振動子型のもの）によって計時されるマイクロプロセッサ４３およびメモリ４５を含む。処理ユニット４１は、バッテリに接続している電源ユニット４６、およびデジタル画面６に接続している。マイクロプロセッサ４３は、パラメータの値を計算し、その値をメモリ４５に記録し、画面６にその値を表示するように構成される。

図５は、測定期間Ｐにわたってマイクロフォンが測定した信号の図解を示している。「チック」と「タック」のインパルスが示されている。それ自体が公知のある方法では、各インパルスは、時計のムーブメント内部の脱進機を特徴付ける特定の現象に関連する一連のピークからなる。先行技術でもよく知られているように、インパルスを分析することで、ムーブメントの動作を特徴付けるいくつかのデジタルパラメータの値、例えば「チック」と「タック」の周波数、作動状態（振動子４４によって得られる基準振動と比較した場合のムーブメントの利得または損失）、ビート（チックの周波数とタックの周波数との差）、ムーブメントの振幅（平衡位置と均衡の取れた戻り位置との間の角度）および脱進機の種類（スイスレバー脱進機または同軸脱進機）を計算することが可能なる。

本発明の装置の動作の１つの可能な形態によれば、これらのパラメータのうち１つ以上の値が各測定期間の終わりに記録され、例えばそれは、上記に特定した５つのパラメータ（周波数、作動状態など）の値である。値は、測定期間Ｐの終わりに瞬時に特定できる。特定のパラメータの場合、値は、期間全体にわたって検知された信号に基づいて計算することもできる。例えば、図５に示したように、周波数は、同一種類の２つのインパルス（チックまたはタック）の間の時間に基づいて割り出した瞬間的周波数ｆ_tickとｆ_tockの平均値

および

として計算できる。

図５にも示した１つの具体的な動作形態は、ムーブメントの振幅の値を、全期間Ｐにわたってマイクロフォンが検知した「チック」インパルスの和５０および「タック」インパルスの和５１に基づいて計算することを含む。インパルスの和によって、それぞれのインパルスの一部を形成している個々のピークをよりよく特定することが可能になり、それによってムーブメントの振幅の計算精度が向上することがわかった。

本発明は、図面に示した外形に限定されない。総じて本装置は、携帯型かつ小型であり、好ましくは腕時計のケースと同程度の寸法である。本装置は、使いやすく、時計を着用している個人が使用するように設計されており、定期的に自分の時計の動作をチェックするのに使用できる。そのため本装置は、時計を着用している個人による使用が可能な診断装置として機能して動作データを収集することができ、それによって専門家が欠陥を発見することが可能になる。

１ 装置
２ 筒状部分
３ 円錐状または湾曲した部分を有する部分
４ 部分
５ 接触面
６ 画面
１０ 円形部品
１１ 空洞
１２ 隆起部
１３ フランジ
１４ フレーム
１５ ワッシャ
２０ 圧電部材
２１ 電線
２２ ＰＣＢ
２３ 内側フランジ
２５ バッテリキャリア
２６ バッテリ
２７ 開口
２８ ばね付きピン
３０ コネクタ
３１ ケーシング
３２ リブ
３３ 凹部
３４ 保護ガラス
３５ 外側フランジ
４０ 増幅段階
４１ 処理ユニット
４２ アナログ‐デジタル変換器
４３ マイクロプロセッサ
４４ 振動子
４５ メモリ
４６ 電源ユニット
５０ 「チック」インパルスの和
５１ 「タック」インパルスの和

Claims (10)

1. 機械式時計を検査するための携帯型装置（１）であって、手に保持し、機械式時計のケースと物理的に接触した状態を維持するように構成され、前記装置は、
   −前記時計のムーブメントによって生じたインパルスのノイズを検知するための接触部品（１０）および圧電部材（２０）を備えている接触マイクロフォンであって、前記接触部品（１０）は、前記時計の前記ケースと物理的に接触した状態で保持される、接触マイクロフォン、
   −前記マイクロフォンによって生じた信号に基づいて、前記時計のムーブメントの動作を特徴付ける１つ以上のパラメータの値を計算するように構成されたマイクロプロセッサ（４３）のほか、前記値を記憶するメモリ（４５）、
   −少なくとも前記値を表示するように構成された画面（６）、
   −少なくとも前記マイクロプロセッサ（４３）、前記メモリ（４５）および前記画面（６）に給電する電源（２６）、
   を備えている、装置において、
   前記装置（１）は、外側ケーシング（３１）、前記外側ケーシングの内部にあるフレーム（１４）を含み、前記接触部品（１０）は、前記時計ケースと接触状態で配置されるように構成された湾曲した外面（５）を有し、前記接触部品（１０）は、前記フレーム（１４）に装着され、それによって前記外面（５）は、前記装置が使用されていないとき、前記外側ケーシング（３１）から少なくとも部分的に突出し、前記外面（５）の湾曲および前記面の素材の硬度は、前記外面（５）と前記ケースとの間の接触領域が、前記時計の平均寸法に対して測定した一点に本質的に制限されるような湾曲および素材であることを特徴とする、装置。
2. 前記接触部品（１０）は、前記フレーム（１４）の硬質な面に装着され、前記接触部品（１０）と前記硬質な面との間に弾性部材（１５）が設置される、請求項１に記載の装置。
3. 前記マイクロプロセッサ（４３）および前記メモリ（４５）は、前記フレーム（１４）の内部に取り付けられるＰＣＢ（２２）に取り付けられる、請求項１または２に記載の装置。
4. 前記フレーム（１４）および前記外側ケーシング（３１）の少なくとも一部は、円筒形状で、前記接触部品（１０）は、前記ケーシングの片側で前記ケーシング（３１）から突出している円形部品であり、前記画面（６）は、前記ケーシングのもう一方の側に取り付けられる、請求項１〜３のいずれか一項に記載の装置。
5. 前記外側ケーシング（３１）は、時計用ルーペの形状であり、筒状部分（２）と、前記筒状部分（２）よりも広い部分（４）の方向に広がる部分（３）とを有し、前記画面（６）は、前記広い部分（４）に取り付けられる、請求項４に記載の装置。
6. 前記画面（６）はタッチセンサー式の画面である、請求項１〜５のいずれか一項に記載の装置。
7. 請求項１〜６のいずれか一項に記載の装置（１）を用いて機械式時計を巻いた状態で検査する方法であって、前記方法は、
   −前記装置（１）は、前記時計のケースと接触状態で保持されている間の測定期間にわたって、前記マイクロフォンによって生じた信号を取得し、前記信号は、前記時計のムーブメントによって生じた一連の「チック」と「タック」のインパルスを表すこと、
   −前記測定期間の終わりに、前記時計のムーブメントの動作を特徴付ける少なくとも１つのパラメータの値を記録すること、
   を含む、方法。
8. 請求項７に記載の方法を所定の間隔で繰り返すことを特徴とする方法。
9. 前記記録された値は、以下の値：
   −前記「チック」インパルスの周波数と前記「タック」インパルスの周波数、
   −作動状態、
   −ビート、
   −ムーブメントの振幅、
   −脱進機の種類
   のうち１つ以上を含む、請求項７又は８に記載の方法。
10. 前記ムーブメントの前記振幅を記録することを含み、前記振幅の計算は、前記測定期間にわたる前記「チック」インパルスに関連する前記信号の和（５０）および前記「タック」インパルスに関連する前記信号の和（５１）に基づく、請求項９に記載の方法。

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