本発明は、第1フィルムと第2フィルムとが貼合された光学フィルムの製造方法であって、第1フィルムの幅方向に外力を付加する外力付加工程と、前記外力付加工程の後、前記第1フィルムの片面に第2フィルムを重ねて1対の貼合ロール間に通すことにより互いに貼合する貼合工程と、を含む。第1フィルムと第2フィルムは、単層フィルムであっても、複層フィルムであってもよい。第1フィルムと第2フィルムは、例えば、樹脂フィルムである。
図1は、本発明に係る光学フィルムの製造方法を模式的に示す側面図である。図1を参照して、本発明に係る光学フィルムの製造方法は、第1フィルム1の片面に第2フィルム2を重ねて1対の貼合ロール41,42間を通すことにより第1フィルム1と第2フィルム2との積層体を上下から押圧して貼合する貼合工程を経て光学フィルム3を製造する。貼合工程に供される第1フィルム1は、外力付加手段10にて外力付加工程に供された後に、1対の貼合ロール41,42間に導入される。
本発明において、第1フィルム1は、第2フィルム2と重ねて貼合する貼合工程の前に、幅方向に外力を付加する外力付加工程に供される。これにより、第1フィルム1と第2フィルム2とが貼合された光学フィルム3の枚葉体におけるTDカールを調整することができる。第1フィルム1において、外力付加工程により付加された外力に対する応力が残存する状態で第2フィルム2が貼合されることにより、第1フィルム1に残存した応力によって光学フィルム3のTDカールが調整されることによるものと予想される。
図2(a),(b)を参照して、凸側の面を下にして平坦な台の上にカールした光学フィルム3の枚葉体を置いたとき、「TDカール」とはTD(機械流れ方向に直交する方向)における端部(典型的には両端部)が持ち上がるようなカールであり、「MDカール」とはMD(機械流れ方向)における端部(典型的には両端部)が持ち上がるようなカールである。
光学フィルム3が有し得るカール量の評価(正カール、逆カール、MDカール、TDカール)は、得られた光学フィルム3から裁断した枚葉体について行う。この枚葉体は、一つの対角線がMD又はTDと平行となる長方形の枚葉体であり、長辺の長さは50mm以上、短辺の長さは30mm以上とする。例えば、TDカール量を測定する場合、一つの対角線がTDと平行となる長方形の枚葉体を裁断し、カールした枚葉体の凸側の面を下にして平坦な台の上に置いたときに、平坦な台から持ち上がるTDと平行な対角線の両端の角と平坦な台からの高さを計測し、それら2つの角の高さの平均値をTDカール量とする。
本発明に係る製造方法は、光学フィルム3の枚葉体に生じるTDカールの調整に有利である。本発明に係る製造方法は、上記したTDカールの調整を含み、さらに、MDカールの調整を含むものであっても、含まないものであってもよい。MDカールの調整方法は、例えば、貼合工程に供される第1フィルム1及び第2フィルム2のMD方向の張力を調整することにより調整することができる。
外力付加工程で用いられる外力付加手段10は、通過する第1フィルム1に対して、幅方向の外力を付加することができる手段であれば限定されることはなく、例えば、エキスパンダーロール、ピンチエキスパンダー、クラウンロール、逆クラウンロール等が例示される。第1フィルム1の幅方向に付加される外力は、内方向の収縮力であっても、外方向の伸張力であってもよい。第1フィルム1の幅方向に付加される外力は、他の方向に外力が付加された結果生じる外力よりも、直接付加される外力である方が、付加される外力の大きさの調整が容易となる点から好ましい。
外力付加工程に供される第1フィルム1は、i)第2フィルム2より厚さが厚いフィルムであること、ii)第2フィルム2より引張弾性率が大きいフィルムであること、の少なくともいずれかの条件を満たすものであることが好ましい。第1フィルム1がこのような特徴を有するものであることにより、光学フィルム3の枚葉体において、TDカールをより効果的に調整することができる。以下では、第1フィルム1が偏光板であり、第2フィルム2がプロテクトフィルムであり、第1フィルム1と第2フィルム2とが貼合された光学フィルム3がプロテクトフィルム付偏光板であり、外力付加手段10としてエキスパンダーロールを用いる実施形態を例示して本発明を詳細に説明する。第1フィルム1が偏光板であり、第2フィルム2がプロテクトフィルムである場合は、通常、上記条件ii)を満たす。
[プロテクトフィルム付偏光板の製造方法]
図3(a),(b),(c)は、本実施形態に係るプロテクトフィルム付偏光板の製造方法を模式的に示す図である。図3(a)は側面図であり、図3(b)は図3(a)において偏光板2の搬送工程を偏光板の貼合面側から見た上面図であり、図3(c)は図3(a)に示す外力付加工程の部分を拡大して示す側面図である。
図3(a),(b),(c)を参照して、本実施形態に係る製造方法では、偏光板1の片面にプロテクトフィルム2を重ねて1対の貼合ロール41,42間に通すことにより、偏光板1とプロテクトフィルム2との積層体を上下から押圧して貼合する貼合工程を経てプロテクトフィルム付偏光板3が得られる。偏光板1及びプロテクトフィルム2は、図示しない繰出ロールから連続的に繰出されるとともに連続的に搬送される。偏光板1は、ガイドロール11とエキスパンダーロール12を介して、1対の貼合ロール41,42間に導入される。偏光板1は、エキスパンダーロール12に接触して搬送される際に、幅方向の外力が付加される(外力付加工程)。プロテクトフィルム2は、ガイドロール21を介して1対の貼合ロール41,42間に導入される。
(1)外力付加工程
外力付加工程では、偏光板1をエキスパンダーロール12に接触させて搬送することにより、偏光板1の幅方向に外力を付加する。偏光板1の幅方向に付加される外力は、内方向の収縮力であっても、外方向の伸張力であってもよい。偏光板1を外力付加工程に供した後に貼合工程に供することにより、プロテクトフィルム付偏光板3の枚葉体におけるTDカールを調整することができる。
偏光板1は、偏光フィルムを含む積層構成であり、層構成等に応じて、画像表示素子に貼合される側の第1主面と、これとは反対側の第2主面とが決定される。偏光板1は、層構成等によるものの、枚葉体としたときに逆カール(第2主面を凸とするカール)を生じるものが典型的である。枚葉体としたときに逆カールが生じる偏光板1に対して、内方向の収縮力を外力として付加することにより、プロテクトフィルム付偏光板3の枚葉体に生じるTDカールを調整することができ、より具体的には逆カールを抑制することができる。したがって、TDカールが抑制されたプロテクトフィルム付偏光板又はTD方向の正カールを有するプロテクトフィルム付偏光板を製造することができる。したがって、得られたプロテクトフィルム付偏光板3を不具合なく画像表示素子に貼合させる観点からは、外力付加工程において、偏光板1に内方向の収縮力を付加することが好ましい。
枚葉体としたときに逆カールが生じる偏光板1に対して、内方向の収縮力を外力として付加することにより、プロテクトフィルム付偏光板3の枚葉体に生じるTD方向の逆カールを抑制することができるメカニズムは明らかではないが、外力付加工程で付加された内方向の収縮力に対する伸張力が残存した状態で偏光板1が貼合工程に供されるので、かかる伸張力が、貼合工程を経て得られたプロテクトフィルム付偏光板3においてTD方向の逆カールを抑制する力として作用することによるものと予想される。かかる予想は、貼合工程で用いられる一対の貼合ロールの配置位置を、外力付加工程で用いられるエキスパンダーロールに近づけるほど大きな逆カールの矯正力が得られるとの実験結果とも合致する。一対の貼合ロールの配置位置がエキスパンダーロールに近い程、残存している伸張力の大きさが大きいと考察することができるからである。
枚葉体としたときに正カール(第1主面を凸とするカール)が生じる偏光板1に対しては、外方向の伸張力を外力として付加することにより、プロテクトフィルム付偏光板3の枚葉体に生じるTDカールを調整することができ、より具体的には正カールを抑制することができる。したがって、TDカールが抑制されたプロテクトフィルム付偏光板を製造することができる。
枚葉体としたときに正カールが生じる偏光板1に対して、外方向の伸張力を外力として付加することにより、プロテクトフィルム付偏光板3の枚葉体に生じるTD方向の正カールを抑制することができるメカニズムは明らかではないが、外力付加工程で付加された外方向の伸張力に対する収縮力が残存した状態で偏光板1が貼合工程に供されるので、かかる収縮力が、貼合工程を経て得られたプロテクトフィルム付偏光板3においてTD方向の正カールを抑制する力として作用することによるものと予想される。
外力付加工程において、エキスパンダーロール12を用いて偏光板1の幅方向に外力を付加する場合、外力の方向は、エキスパンダーロール12の配置角度等によって調整することができ、外力の大きさは、エキスパンダーロール12の配置角度、エキスパンダーロール12における偏光板1の接触角度、採用するエキスパンダーロール12の湾曲の程度(弧高)等によって調整することができる。
図3(a),(b),(c)では、偏光板1に内方向の収縮力を付与するようにエキスパンダーロール12が配置されている例を示す。エキスパンダーロール12は、図3(b)に示すように、湾曲した軸123上に不図示のボールベアリングが内蔵されたスプールが複数個配置されているものである。スプール上にゴム筒が被覆されているエキスパンダーロールをゴムエキスパンダーロールといい、ゴム筒が被覆されていないエキスパンダーロールを金属エキスパンダーロールという。本実施形態において、エキスパンダーロール12は、ゴムエキスパンダーロールであっても、金属エキスパンダーロールであってもよい。エキスパンダーロール12は、通常、軸123に対する垂直断面は円形でありその面積はいずれの垂直断面においても等しい。軸123に対する垂直断面は、例えば、直径50mm〜400mmである。
図3(b)に示すエキスパンダーロール12の中心部分122の中心軸に対する直交断面(a−a断面)を図3(a),(c)において断面122で示しその中心をC’とし、偏光板1の端部が接触する部分121の中心軸に対する直交断面を図3(a)において断面121で示しその中心をCとする。図3(a),(b),(c)に示すように、エキスパンダーロール12について、中心部分の断面122の中心C’が、断面121の中心Cよりも下流側に位置するように配置されている場合は、偏光板1に内方向の収縮力を外力として付加することができる。すなわち、図4に示すように、エキスパンダーロール12は湾曲しているために、偏光板1が全幅においてエキスパンダーロール12に同時に接触することはなく、幅方向の位置に応じてエキスパンダーロール12に最初に接触するタイミングが異なる。偏光板1の幅方向の端部が中心部分よりも先にエキスパンダーロール12に接触し(領域A1で示す)、その後中心部分がエキスパンダーロール12に接触するようにエキスパンダーロール12が配置されている場合は、偏光板1に内方向の収縮力(矢印D1で示す)を外力として付加することができる。
図3(a),(c)において、エキスパンダーロール12に入射する偏光板1の端部の入射方向を矢印xで示し、エキスパンダーロール12において中心Cから中心C’に向かう方向を矢印yで示した場合に、矢印xに対する矢印yの角度θは、50°〜130°の範囲であることが、偏光板1に内方向の収縮力を外力として十分に付加することができる観点から好ましい。以下、本明細書で用いられる「エキスパンダーロールの弧高」は中心Cと中心C’の距離を意味し、「エキスパンダーロールの配置角度」は矢印xに対する矢印yの角度θを意味する。エキスパンダーロール12の弧高は、例えば、1mm〜20mmである。
エキスパンダーロール12における偏光板1の接触角度αによっても偏光板1に付加される外力の大きさを調整することができる。接触角度αは、ガイドロール11及び/又はエキスパンダーロール12の位置を上下させることにより調整することができる。接触角度αは、10°〜100°であることが、エキスパンダーロール12により付加される外力の大きさの調整が容易である点から好ましい。
図5(a),(b),(c)には、偏光板1に外方向の伸張力を外力として付加する場合のエキスパンダーロール12の配置の一例を示す。図5(a),(b),(c)は、偏光板1に内方向の収縮力を外力として付加する場合の図3(a),(b),(c)にそれぞれ対応する。図5(a),(b),(c)に示すように、エキスパンダーロール12について、中心部分の断面122の中心C’が、断面121の中心Cよりも上流側に位置するように配置されている場合、すなわち偏光板1の幅方向の中心部が端部よりも先にエキスパンダーロール12に接触するように配置されている場合は、偏光板1に外方向の伸張力を外力として付加することができる。すなわち、図6に示すように、偏光板1の幅方向の中心部分が端部よりも先にエキスパンダーロール12に接触し(領域A2で示す)、その後端部がエキスパンダーロール12に接触するようにエキスパンダーロール12が配置されている場合は、偏光板1に外方向の伸張力(矢印b2で示す)を外力として付加することができる。
図5(a),(c)において、エキスパンダーロール12に入射する偏光板1の端部の入射方向を矢印xで示し、エキスパンダーロール12において中心Cから中心C’に向かう方向を矢印yで示した場合に、矢印xに対する矢印yの角度θが225°〜360°の範囲である場合は、偏光板1に外方向の伸張力を外力として十分に付加することができる。
エキスパンダーロール12における偏光板1の接触角度αによっても偏光板1に付加される外力の大きさを調整することができる。接触角度αは、ガイドロール11及び/又はエキスパンダーロール12の位置を上下させることにより調整することができる。接触角度αは、10°〜100°であることが、エキスパンダーロール12により付加される外力の大きさの調整が容易である点から好ましい。
エキスパンダーロール12に接触するフィルム(偏光板1)の幅は、特に限定されるものではないが、フィルム(偏光板1)は、エキスパンダーロール12の存在幅以内に存在していることが好ましい。エキスパンダーロール12の存在幅以内にフィルム(偏光板1)が存在することにより、フィルム幅全体に外力を付与することができ、TDカールの制御効果をフィルム全体に及ぼすことができる。また、エキスパンダーロール12の端部に、フィルムが接触することがないため、キズ、シワ等の外観異常の発生を抑えることができる。
(2)貼合工程
貼合工程では、外力付加工程に供された後の偏光板1の片面にプロテクトフィルム2を重ねて、1対の貼合ロール41,42間に通すことにより、偏光板1とプロテクトフィルム2の積層体を上下から押圧し互いに貼合して、プロテクトフィルム付偏光板3を得る。貼合工程において、偏光板1及びプロテクトフィルム2の搬送方向はフィルムの長手方向であり、通常、両者の搬送方向は平行である。
1対の貼合ロール41,42とエキスパンダーロール12との距離L(図3(a)、図5(a)参照)は、適宜調整することができる。距離Lは、3m以下であることが、外力付加工程で付加した外力に対する応力が残存した状態にある偏光板1を貼合工程に供しやすくなるので好ましい。距離Lは、1m以下であることがより好ましく、0.5m以下であることがさらに好ましい。また、距離Lは、0.1m以上であることが、しわがない状態にある偏光板1を貼合工程に供しやすくなるので好ましい。距離Lは、0.2m以上であることがより好ましい。また、距離Lは、エキスパンダーロール12の直径の4倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましい。通常、距離Lは、エキスパンダーロール12の直径の0.7倍以上である。
1対の貼合ロール41,42を用いた貼合工程において、偏光板1とプロテクトフィルム2との積層体に与えられる圧力(ニップ圧)は、例えば0.01〜0.5MPaであり、0.05〜0.3MPaであってもよい。貼合ロール41,42としては、表面が金属(SUS等の合金を含む。)やゴム製のものなど従来公知のものを使用することができる。
本実施形態によれば、枚葉体としたときにTD方向の逆カールが十分に抑制されている、好ましくはカールを有さずフラットであるか、又は正カールを有するプロテクトフィルム付偏光板3を得ることができる。このプロテクトフィルム付偏光板3によれば、粘着剤層を介して画像表示素子に貼合する際、貼合ミスを生じたり、粘着剤層と画像表示素子との界面に気泡が混入したりする不具合を効果的に抑制することができ、プロテクトフィルム付偏光板3と画像表示素子との貼合を生産性良く実施することができる。なお、プロテクトフィルム付偏光板3に生じているカールが正カールである分には、そのカール量が比較的大きくても、上記不具合及び生産性の点で特に問題はない。本実施形態により得られるプロテクトフィルム付偏光板3は、上記不具合を抑制できる(好ましくは上記不具合を生じない)程度において、逆カールを有していてもよい。
(3)プロテクトフィルム
プロテクトフィルム2は通常、基材フィルムと、その上に積層される粘着剤層とで構成される。プロテクトフィルム2は、偏光板1の表面を保護するためのフィルムであり、通常、例えば画像表示素子などにプロテクトフィルム付偏光板3が貼合された後にそれが有する粘着剤層ごと剥離除去される。基材フィルムは、熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂などで構成することができる。粘着剤層は、アクリル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤等で構成することが出来る。また、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の自己粘着性を有する樹脂層で構成することも出来る。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。その他の「(メタ)」を付した用語においても同様である。
プロテクトフィルム2の厚みは、例えば5〜200μmであることができ、好ましくは10〜150μmであり、より好ましくは20〜120μmであり、さらに好ましくは25〜100μm(例えば90μm以下、さらには75μm以下)である。厚みが5μm未満の場合には、偏光板1の保護が不十分になることがあり、また取扱性の面でも不利である。厚みが200μmを超えることは、コストや、プロテクトフィルム2のリワーク性の面で不利である。
(3)偏光板
偏光板1は、少なくとも偏光フィルムを含む偏光素子であり、通常は偏光フィルムの少なくとも一方の面に積層される、保護フィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムをさらに含む。保護フィルムは、偏光フィルムの保護を担う光学フィルムである。
(3−1)偏光板の構成例
偏光板1は、偏光フィルム及び保護フィルム以外の層又はフィルム、例えば偏光フィルム以外の他の光学機能を有する光学層又は光学フィルムを含むことができる。当該他の光学機能を有する光学層又は光学フィルムの例は、位相差フィルム(又は位相差層)、輝度向上フィルムなどである。保護フィルムを含む各種光学フィルムは、接着剤層又は粘着剤層を介して偏光フィルム上に積層貼合することができる。また偏光板2は、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。
偏光板1の厚みは、通常200μm以下であり、薄膜化の観点から、好ましくは125μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下である。厚みが小さいほど偏光板1はその枚葉体においてカールを生じやすくなるが、本実施形態によれば、偏光板1は、厚みが薄く、枚葉体としたときにTD方向に逆カールを生じるものであっても、この逆カールを正カール方向へ効果的に矯正することができる。
偏光板1の層構成の例を図7〜図9を参照して説明するが、層構成はこれらの例に限定されるものではない。図7に示される偏光板1aは、偏光フィルム61;偏光フィルム61の一方の面に貼合される第1熱可塑性樹脂フィルム62;偏光フィルム61の他方の面に貼合される第2熱可塑性樹脂フィルム63;第2熱可塑性樹脂フィルム63の外面に積層される粘着剤層64;粘着剤層64の外面に積層されるセパレートフィルム65を含む。セパレートフィルム65は、粘着剤層64の表面(外面)を保護するための剥離可能なフィルムである。第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム62,63は、例えば保護フィルムである。
図8に示される偏光板1bのように、第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム62,63の一方が省略されてもよい。偏光板1bにおいては第2熱可塑性樹脂フィルム63が省略されており、偏光フィルム61の外面(第1熱可塑性樹脂フィルム20が積層される面とは反対側の面)に直接、粘着剤層64が貼合されている。このような偏光フィルム61の一方の面のみに熱可塑性樹脂フィルムを有する偏光板は、偏光板の薄膜化に有利である。偏光フィルム61の一方の面のみに熱可塑性樹脂フィルムが積層される場合には偏光板1はその枚葉体においてカールを生じやすくなるが、本発明によれば、偏光フィルム61の一方の面のみに熱可塑性樹脂フィルムが積層貼合されることによって偏光板1が枚葉体としたときに逆カールを生じるものであっても、この逆カールを正カール方向へ効果的に矯正することができる。
また図9に示される偏光板1cのように、粘着剤層64及びセパレートフィルム65が省略されてもよい。偏光板1は、上記貼合工程に供されるプロテクトフィルム2とは異なるプロテクトフィルムをあらかじめ一方面に有していてもよい。この場合、得られるプロテクトフィルム付偏光板3は、両面にプロテクトフィルムを有する偏光板である。
図7〜図9において図示を省略しているが、偏光フィルム10と第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム62,63との貼合は、好ましくは接着剤を用いて行うことができる。
(3−2)偏光フィルム
偏光フィルム10は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものであることができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、80.0〜100.0モル%の範囲であることができるが、好ましくは90.0〜100.0モル%の範囲であり、より好ましくは98.0〜100.0モル%の範囲である。ケン化度が80.0モル%未満であると、得られる偏光板1の耐水性及び耐湿熱性が低下し得る。
ケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:−OCOCH3)がケン化工程により水酸基に変化した割合
をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式:
ケン化度(モル%)=100×(水酸基の数)/(水酸基の数+酢酸基の数)
で定義される。ケン化度は、JIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、従って結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100〜10000であり、より好ましくは1500〜8000であり、さらに好ましくは2000〜5000である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度もJIS K 6726(1994)に準拠して求めることができる。平均重合度が100未満では好ましい偏光性能を得ることが困難であり、10000超では溶媒への溶解性が悪化し、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの形成が困難となり得る。
偏光フィルム61に含有(吸着配向)される二色性色素は、ヨウ素又は二色性有機染料であることができる。二色性有機染料の具体例は、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックを含む。二色性色素は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。二色性色素は、好ましくはヨウ素である。
偏光フィルム61は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋処理する工程;及び、架橋処理後に水洗する工程、を経て製造することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、上述したポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものである。製膜方法は、特に限定されるものではなく、溶融押出法、溶剤キャスト法のような公知の方法を採用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みは、例えば10〜150μm程度であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、架橋処理の前又は架橋処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶液中でポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素が含有された水溶液(染色溶液)に浸漬する方法が採用される。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理(膨潤処理)を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この染色水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり通常0.01〜1重量部である。また、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり通常0.5〜20重量部である。染色水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む染色水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。染色水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり通常1×10-4〜10重量部であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この染色水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。
二色性色素による染色後の架橋処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋剤含有水溶液に浸漬することにより行うことができる。架橋剤の好適な例はホウ酸であるが、ホウ砂のようなホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等の他の架橋剤を用いることもできる。架橋剤は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤含有水溶液における架橋剤の量は、水100重量部あたり通常2〜15重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、この架橋剤含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。架橋剤含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり通常0.1〜15重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。架橋剤含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
架橋処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、架橋処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、1〜40℃程度である。
水洗後に乾燥処理を施して、偏光フィルム61が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機による乾燥、熱ロールに接触させることによる乾燥、遠赤外線ヒーターによる乾燥などであることができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、50〜90℃が好ましい。
偏光フィルム61の厚みは、通常2〜40μm程度である。偏光板1の薄膜化の観点から、偏光フィルム61の厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。偏光フィルム61の厚みが小さいほど偏光板1はその枚葉体においてカールを生じやすくなるが、本発明によれば、偏光フィルム61の厚みが小さく、偏光板1が枚葉体としたときに逆カールを生じるものであっても、この逆カールを正カール方向へ効果的に矯正することができる。
(3−3)第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム
第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム62,63は、それぞれ独立して、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムである。第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム20,30を構成する熱可塑性樹脂は、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。より具体的な例は、ポリプロピレン系樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)、ポリエチレン系樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)を含む。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロース系樹脂とは、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等の原料セルロースから得られるセルロースの水酸基における水素原子の一部または全部がアセチル基、プロピオニル基及び/又はブチリル基で置換された、セルロース有機酸エステル又はセルロース混合有機酸エステルをいう。例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、及びそれらの混合エステル等からなるものが挙げられる。中でも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有する、上記セルロース系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。好適なポリエステル系樹脂の例は、ポリエチレンテレフタレートを含む。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなるエンジニアリングプラスチックであり、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性、透明性を有する樹脂である。ポリカーボネート系樹脂は、光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネート等であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位を含む重合体である。該重合体は、典型的にはメタクリル酸エステルを含む重合体である。好ましくはメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合が、全構造単位に対して、50重量%以上含む重合体である。(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、他の重合性モノマー由来の構成単位を含む共重合体であってもよい。この場合、他の重合性モノマー由来の構成単位の割合は、好ましくは全構造単位に対して、50重量%以下である。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得るメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、メタクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂を構成し得る上記他の重合性モノマーとしては、アクリル酸エステル、及びその他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を挙げることができる。他の重合性モノマーは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。アクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4である。(メタ)アクリル系樹脂において、アクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、エチレン、プロピレン、スチレン等のビニル系化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物が挙げられる。その他の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム62,63は、偏光フィルム61の一方の面に積層貼合される、偏光フィルム61を保護するための保護フィルムであることができる。第1又は第2熱可塑性樹脂フィルム62,63は、位相差フィルム、輝度向上フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。例えば、上記材料からなる熱可塑性樹脂フィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、該フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。第1及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム62,63は、その表面に積層される、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層のような表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。
第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム62,63の厚みは通常1〜100μmであるが、強度や取扱性等の観点から5〜60μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。この範囲内の厚みであれば、偏光フィルム61を機械的に保護し、偏光板2が湿熱環境下に曝されたときの偏光フィルム61の収縮を抑制することができる。第1熱可塑性樹脂フィルム62や第2熱可塑性樹脂フィルム63の厚みが小さいほど偏光板1はその枚葉体においてカールを生じやすくなるが、本発明によれば、第1熱可塑性樹脂フィルム62や第2熱可塑性樹脂フィルム63の厚みが例えば40μm以下、さらには30μm以下と薄く、偏光板1が枚葉体としたときに逆カールを生じるものであっても、この逆カールを正カール方向へ効果的に矯正することができる。
図7及び図9に示される偏光板1a,1cのように、偏光フィルム61の一方の面に第1熱可塑性樹脂フィルム62を備え、他方の面に第2熱可塑性樹脂フィルム63を備える場合において、第1熱可塑性樹脂フィルム62と第2熱可塑性樹脂フィルム63とは、同種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよいし、異種の熱可塑性樹脂で構成されていてもよいが、異種の熱可塑性樹脂で構成されている場合など、両面に貼合される熱可塑性樹脂フィルムの平衡水分率や透湿度が互いに異なる場合には、偏光板2の枚葉体にカールがとりわけ発生しやすいため、このような場合に本発明はとりわけ有利である。
例えば、第1熱可塑性樹脂フィルム62として、第2熱可塑性樹脂フィルム63よりも平衡水分率が高いフィルムを用いることができる。偏光フィルム61の両面に貼合される第1熱可塑性樹脂フィルム62と第2熱可塑性樹脂フィルム63との平衡水分率の差が大きいほど偏光板1はその枚葉体においてカールを生じやすくなるが、本発明によれば、この平衡水分率の差が0.5重量%以上、さらには1重量%以上、なおさらには1.5重量%以上であり、偏光板1が枚葉体としたときに逆カールを生じるものであっても、この逆カールを正カール方向へ効果的に矯正することができる。
本明細書においてフィルムの平衡水分率は乾燥重量法によって測定され、具体的には、下記式:
平衡水分率(重量%)={(乾燥処理前のフィルム重量−乾燥処理後のフィルム重量)/乾燥処理前のフィルム重量}×100
に従って求められる。ここで乾燥処理前のフィルム重量は温度23℃、相対湿度55%の環境下にフィルムを24時間保管した後の重量であり、乾燥とはフィルムを105℃で2時間乾燥させる処理をいう。平衡水分率の差が0.5重量%以上である熱可塑性樹脂フィルムの組み合わせとしては、例えば、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と環状ポリオレフィン系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と(メタ)アクリル系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)とポリエステル系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と鎖状ポリオレフィン系樹脂フィルムとの組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムと環状ポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとポリエステル系樹脂フィルムとの組み合わせ等を挙げることができる。第1熱可塑性樹脂フィルム10と第2熱可塑性樹脂フィルム62の平衡水分率の差は、通常5重量%以下であり、好ましくは2.5重量%以下である。
第1熱可塑性樹脂フィルム62の平衡水分率は、例えば1.5重量%以上であり、2重量%以上であってもよい。第1熱可塑性樹脂フィルム62の平衡水分率は、通常5重量%以下である。
第1熱可塑性樹脂フィルム62として、第2熱可塑性樹脂フィルム63よりも平衡水分率が高いフィルムを用いる場合において、第2熱可塑性樹脂フィルム62の平衡水分率は、通常0.1〜1.5重量%であり、好ましくは0.1〜1重量%である。かかる平衡水分率を達成し得る第2熱可塑性樹脂フィルム62を構成する熱可塑性樹脂の例は、環状ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂などである。
熱可塑性樹脂フィルムの平衡水分率は、その材質(フィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類)のほか、フィルムの厚み、フィルム表面に付設することができる表面処理層(コーティング層)の有無や材質などによっても調整することができる。
第1熱可塑性樹脂フィルム62として、第2熱可塑性樹脂フィルム63よりも平衡水分率が高いフィルムを用いる場合、偏光板1に生じやすい逆カールを正カール方向に矯正するという観点から、通常は、上記押圧する工程においてプロテクトフィルム2は、偏光板1における第1熱可塑性樹脂フィルム62側に配置される。
また例えば、第1熱可塑性樹脂フィルム62として、第2熱可塑性樹脂フィルム63よりも透湿度が高いフィルムを用いることができる。偏光フィルム61の両面に貼合される第1熱可塑性樹脂フィルム62と第2熱可塑性樹脂フィルム63との透湿度の差が大きいほど偏光板1はその枚葉体においてカールを生じやすくなるが、本発明によれば、この透湿度の差が30g/(m2・24hr)以上、さらには50g/(m2・24hr)以上、なおさらには100g/(m2・24hr)以上であり、偏光板1が枚葉体としたときに
逆カールを生じるものであっても、この逆カールを正カール方向へ効果的に矯正することができる。
本明細書においてフィルムの透湿度は、JIS Z 0208に規定されるカップ法により測定される温度40℃、相対湿度90%での透湿度である。透湿度の差が30g/(m2・24hr)以上である熱可塑性樹脂フィルムの組み合わせとしては、例えば、セル
ロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と環状ポリオレフィン系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と(メタ)アクリル系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)とポリエステル系樹脂フィルムとの組み合わせ、セルロース系樹脂フィルム(TACフィルム等)と鎖状ポリオレフィン系樹脂フィルムとの組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムと環状ポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとポリエステル系樹脂フィルムとの組み合わせ等を挙げることができる。第1熱可塑性樹脂フィルム62と第2熱可塑性樹脂フィルム63の透湿度の差は、通常5000g/(m2・24hr)以下である。
第1熱可塑性樹脂フィルム62の透湿度は、例えば300g/(m2・24hr)以上であり、400g/(m2・24hr)以上であってもよい。透湿度が300g/(m2・24hr)以上であることは、水系接着剤を用いて第1熱可塑性樹脂フィルム62と偏光フィルム61とを貼合する場合において、水系接着剤からなる層を効率良く乾燥させることができ、生産性を高めることができる点でも有利である。第1熱可塑性樹脂フィルム62の透湿度は、通常5000g/(m2・24hr)以下である。
第1熱可塑性樹脂フィルム62として、第2熱可塑性樹脂フィルム63よりも透湿度が高いフィルムを用いる場合において、第2熱可塑性樹脂フィルム63の透湿度は、通常1〜350g/(m2・24hr)であり、好ましくは5〜200g/(m2・24hr)である。かかる透湿度を達成し得る第2熱可塑性樹脂フィルム63を構成する熱可塑性樹脂の例は、環状ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂などである。
熱可塑性樹脂フィルムの透湿度は、その材質(フィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類)のほか、フィルムの厚み、フィルム表面に付設することができる表面処理層(コーティング層)の有無や材質などによっても調整することができる。
第1熱可塑性樹脂フィルム62として、第2熱可塑性樹脂フィルム63よりも透湿度が高いフィルムを用いる場合、偏光板1に生じやすい逆カールを正カール方向に矯正するという観点から、通常は、上記押圧する工程においてプロテクトフィルム2は、偏光板1における第1熱可塑性樹脂フィルム62側に配置される。
上述のように、偏光フィルム61と、第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム62,63とは、接着剤を用いて貼合することができる。偏光フィルム61に第1,第2熱可塑性樹脂フィルム62、63を積層貼合するに先立って、偏光フィルム61及び/又は第1,第2熱可塑性樹脂フィルム62、63の貼合面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理のような表面活性化処理を行ってもよい。この表面活性化処理により、偏光フィルム61と第1,第2熱可塑性樹脂フィルム62、63との接着性を高めることができる。
接着剤としては、水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤を用いることができ、好ましくは水系接着剤、活性エネルギー線硬化性接着剤である。偏光フィルム61の両面に熱可塑性樹脂フィルムを積層貼合する場合において両面の接着剤は、同種の接着剤あってもよいし異種の接着剤であってもよい。異種の接着剤を用いる場合には偏光板2はその枚葉体においてカールを生じやすくなるが、本発明によれば、異種の接着剤を用いることによって偏光板1が枚葉体としたときに逆カールを生じるものであっても、この逆カールを正カール方向へ効果的に矯正することができる。
水系接着剤は、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたものである。好ましく用いられる水系接着剤は、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を用いた接着剤組成物である。
接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、当該ポリビニルアルコール系樹脂は、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール樹脂であることができるほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような変性されたポリビニルアルコール系樹脂であってもよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるポリビニルアルコール系共重合体であってもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂を接着剤成分とする水系接着剤は通常、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液である。接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100重量部に対して、通常1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤は、接着性を向上させるために、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキザール、グリオキザール誘導体、水溶性エポキシ樹脂のような硬化性成分や架橋剤を含有することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンと、アジピン酸等のジカルボン酸との反応で得られるポリアミドアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂を好適に用いることができる。かかるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂の市販品としては、「スミレーズレジン650」(田岡化学工業(株)製)、「スミレーズレジン675」(田岡化学工業(株)製)、「WS−525」(日本PMC(株)製)等が挙げられる。これら硬化性成分や架橋剤の添加量(硬化性成分及び架橋剤としてともに添加する場合にはその合計量)は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部である。上記硬化性成分や架橋剤の添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して1重量部未満である場合には、接着性向上の効果が小さくなる傾向にあり、また、当該添加量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して100重量部を超える場合には、接着剤層が脆くなる傾向にある。
また、接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合の好適な例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好適である。
水系接着剤を使用する場合は、偏光フィルム61と第1及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム62,63とを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するための乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥工程後、例えば20〜45℃の温度で養生する養生工程を設けてもよい。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化する接着剤である。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、偏光板1が有する接着剤層は、当該接着剤の硬化物層である。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する接着剤であることができ、好ましくは、かかるエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する紫外線硬化性接着剤である。ここでいうエポキシ系化合物とは、分子内に平均1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。エポキシ系化合物は、1種のみを使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
好適に使用できるエポキシ系化合物の具体例は、芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルのような脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ系化合物である脂環式エポキシ系化合物を含む。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、硬化性成分として、上記エポキシ系化合物の代わりに、又はこれとともにラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有することができる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を挙げることができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含む場合、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。また、活性エネルギー線硬化性接着剤が(メタ)アクリル系化合物のようなラジカル重合性硬化性成分を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、チオキサントン系開始剤、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等を挙げることができる。
偏光フィルム61と第1及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム62,63との積層貼合に活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合には、積層貼合後、必要に応じて乾燥工程を行い、次いで活性エネルギー線を照射することによって活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化させる硬化工程を行う。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する紫外線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
活性エネルギー線硬化性接着剤からなる接着剤層への活性エネルギー線照射強度は、接着剤の組成によって適宜決定されるが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6000mW/cm2となるように設定されることが好ましい。照射強度が0.1mW/cm2以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm2以下である場合、光源から輻射される熱及び接着剤の硬化時の発熱による接着剤層の黄変や偏光フィルム61の劣化を生じるおそれが少ない。
活性エネルギー線の照射時間についても、接着剤の組成によって適宜決定されるが、上記照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cm2と
なるように設定されることが好ましい。積算光量が10mJ/cm2以上である場合、重
合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm2以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、偏光板1の良好な
生産性を維持できる。
(3−4)粘着剤層及びセパレートフィルム
図7及び図8に示されるように偏光板1は、粘着剤層64を含むことができる。この粘着剤層64は、第1若しくは第2熱可塑性樹脂フィルム62,63又は偏光フィルム61の表面に直接積層することができ、プロテクトフィルム付偏光板3を画像表示素子(例えば液晶セル)に貼合するために用いることができる。
プロテクトフィルム付偏光板3を画像表示素子(例えば液晶セル)に貼合するための粘着剤層64は、液晶セルなどの画像表示素子に貼合される側の偏光板の主面(第1主面)側に配置される。例えば偏光板1が第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム62,63を含み、第1熱可塑性樹脂フィルム62として、第2熱可塑性樹脂フィルム63よりも平衡水分率及び/又は透湿度が高いフィルムを用いる場合、粘着剤層64は、第2熱可塑性樹脂フィルム63側に配置することができる。
粘着剤層64は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分(ベースポリマー)とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。(メタ)アクリル系樹脂には、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤組成物である。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。さらに必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を含有させることもある。
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
粘着剤層64は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を偏光板1の粘着剤層形成面(すなわち、偏光フィルム61、又は第1若しくは第2熱可塑性樹脂フィルム62,63)上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。あるいは、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液をセパレートフィルム(例えばセパレートフィルム65)上に塗布し、乾燥させて粘着剤層を形成した後、これを偏光板1の粘着剤層形成面に転写してもよい。いずれの方法においても、粘着剤層64の外面にセパレートフィルムを貼着し、使用時まで粘着剤層64を保護しておくことが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された粘着剤層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する硬化物とすることができる。粘着剤層64の厚みは、通常1〜40μmであるが、偏光板1の薄膜化の観点から、3〜25μmとすることが好ましい。
セパレートフィルム65は、粘着剤層64を画像表示素子(例えば液晶セル)に貼合するまでその表面を保護するために貼着されるフィルムである。セパレートフィルム65は通常、片面に離型処理が施された熱可塑性樹脂フィルムで構成され、その離型処理面が粘着剤層64に貼り合わされる。セパレートフィルム65を構成する熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂等であることができる。セパレートフィルム65の厚みは、例えば10〜100μmである。
(3−5)偏光板のその他の構成要素
偏光板1は、上記以外の他の構成要素を含むことができる。他の構成要素としては、偏光フィルム61以外の他の光学機能を有する光学層又は光学フィルムを挙げることができ、その具体例は位相差フィルム、輝度向上フィルムなどの光学フィルムである。他の光学フィルムは、粘着剤層や接着剤層を介して積層貼合することができる。
また偏光板1は、上記押圧する工程に供されるプロテクトフィルム2とは異なるプロテクトフィルムを含むことができる。このプロテクトフィルムは、偏光板1の一方の表面に配置される。このプロテクトフィルムの構成については、前述したプロテクトフィルム2についての記述が引用される。
(3−6)偏光板のカール
上述のように本発明によれば、偏光板1を正カール方向に矯正することができ、これにより、枚葉体としたときに逆カールが十分に抑制されている、好ましくはカールを有さずフラットであるか、又は正カールを有するプロテクトフィルム付偏光板3を得ることができる。本実施形態に係る製造方法は、偏光板1が枚葉体としたときに逆カール(プロテクトフィルム2が重ねられる主面側を凸とするカール)を生じるものである場合(さらには、逆カールであって、かつTDカールを生じるものである場合)にとりわけ有利である。
上では、枚葉体としたときに逆カールが生じやすい偏光板1の形態の1つとして、第1熱可塑性樹脂フィルム62と第2熱可塑性樹脂フィルム63とが互いに異なる平衡水分率及び/又は透湿度を有する場合を挙げたが、これに限定されず、逆カールは、偏光板1が偏光フィルム61を基準に非対称の層構成を有する場合などにおいて生じやすい。
逆カールを生じやすい偏光板1の構成の例は次のとおりである。
(a)偏光フィルム61の片面にのみ熱可塑性樹脂フィルム(保護フィルム等)が貼合されている構成、
(b)偏光フィルム61の一方の面に保護フィルムが貼合されており、他方の面に保護フィルム以外の光学フィルム(輝度向上フィルム等)が貼合されている構成、
(c)偏光フィルム61の両面に貼合される熱可塑性樹脂フィルム(保護フィルム等)の構成(樹脂種、厚み、平衡水分率、透湿度、表面処理層の有無等)が互いに異なる構成、(d)偏光フィルム61の両面に熱可塑性樹脂フィルム(保護フィルム等)を貼合するための接着剤層が互いに異種の接着剤から形成される構成、
(e)偏光フィルム61の両面に熱可塑性樹脂フィルム(保護フィルム等)が貼合されており、かつ一方の熱可塑性樹脂フィルム上に他の光学フィルムが貼合されている構成、
(f)その他、偏光フィルム61を基準に、一方側におけるフィルム及び層の合計数と、他方側におけるフィルム及び層の合計数とが異なる構成。
(4)その他の工程
本発明に係る製造方法は、上記押圧する工程によって得られるプロテクトフィルム付偏光板3を裁断して、プロテクトフィルム付偏光板3の枚葉体を得る工程をさらに含むことができる。裁断には、シアーカッターなど通常用いられる裁断装置を用いることができる。
枚葉体の形状は特に制限されないが、通常は方形形状であり、長辺と短辺とを有する方形形状であることが好ましく、長方形であることがより好ましい。この枚葉体は、通常、対向する一対の辺がMDと平行であり、残りの対向する一対の辺がTDと平行となるように裁断されるが、各辺がMD又はTDから傾いた方向となるように裁断されてもよいし、一つの対角線がMDまたはTDと平行となる長方形の枚葉体でもよい。枚葉体の長辺及び短辺の長さは特に制限されないが、通常、長辺は50mm以上であり、短辺は30mm以上である。カールは、枚葉体のサイズが大きいほど生じやすい。サイズ(長辺及び/又は短辺)があまりに小さい場合には、カールの問題それ自体が生じにくい。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、以下の例において平衡水分率、透湿度、及び厚み、並びに、フィルム張力及びカール量は、以下の方法に従って測定した。
(1)フィルムの平衡水分率
TD長さ150mm×MD長さ100mmの試験片を切り出した。温度23℃、相対湿度55%の環境下に24時間保管した後のフィルム重量を測定した。その後、105℃で2時間乾燥処理を行い、乾燥処理後のフィルム重量を測定した。乾燥前後のフィルム重量より、下記式:
平衡水分率(重量%)={(乾燥処理前のフィルム重量−乾燥処理後のフィルム重量)/乾燥処理前のフィルム重量}×100
に基づき平衡水分率を求めた。
(2)フィルムの透湿度
JIS Z 0208に規定されるカップ法により、温度40℃、相対湿度90%での透湿度〔g/(m2・24hr)〕を測定した。
(3)偏光板及びフィルムの厚み
(株)ニコン製のデジタルマイクロメーター「MH−15M」を用いて測定した。
(4)偏光板及びプロテクトフィルムのMDにおけるフィルム張力
偏光板とプロテクトフィルムとを貼合するための一対の貼合ロールと、その上流側であって貼合ロールに最も近い一対のニップロールとの間を走行する偏光板及びプロテクトフィルムのフィルム張力〔N/m〕を、貼合ロールと貼合ロールに最も近い一対のニップロールとの間に設置されたテンション検出ロールを用いて測定した。
(5)プロテクトフィルム付偏光板及び偏光板のカール量
得られたプロテクトフィルム付偏光板から、一方の対角線がTDと平行となるように長辺300mm×短辺200mmの長方形の試験片を切り出し、温度23℃、相対湿度55%の環境下で24時間放置した。この試験片をその凹面を上にして、すなわち長方形の試験片の角部が持ち上がった状態になるように基準面(水平な台)上に置いた。この状態で試験片のTDと平行となる対角線の両端にある角のそれぞれについて基準面からの高さを測定し、それら2つの角の高さの平均としてTDカール量〔mm〕を求めた。カール量が正の値である場合は、第1熱可塑性樹脂フィルム側が凹となっていることを意味し(正カール)、負の値である場合は、第2熱可塑性樹脂フィルム側が凹となっていることを意味する(逆カール)。
<実施例1>
(A)偏光フィルムの作製
長尺のポリビニルアルコールフィルム(平均重合度:約2400、ケン化度:99.9モル%以上、厚み:30μm)を連続的に搬送しながら、乾式で約4倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100の水溶液に68℃で300秒間浸漬した。引き続き、5℃の純水で5秒間洗浄した後、70℃で180秒間乾燥して、一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された長尺の偏光フィルムを得た。偏光フィルムの厚みは11.1μmであった。
(B)偏光板の作製
上記(A)で得られた偏光フィルムを連続的に搬送するとともに、長尺の第1熱可塑性樹脂フィルム〔コニカミノルタオプト(株)製のTACフィルム「KC2UAW」にハードコート層が形成されたフィルム、厚み:32.4μm、平衡水分率:1.9重量%、透湿度:455g/(m2・24hr)〕及び長尺の第2熱可塑性樹脂フィルム〔JSR(
株)製の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである商品名「FEKB015D3」、厚み:15.1μm、平衡水分率:0.8重量%、透湿度:115g/(m2・24hr)〕
を連続的に搬送し、偏光フィルムと第1熱可塑性樹脂フィルムとの間、及び偏光フィルムと第2熱可塑性樹脂フィルムとの間に水系接着剤を注入しながら、貼合ロール間に通して第1熱可塑性樹脂フィルム/水系接着剤層/偏光フィルム/水系接着剤層/第2熱可塑性樹脂フィルムからなる積層フィルムを得た。引き続き、得られた積層フィルムを搬送し、熱風乾燥機に通して80℃、300秒の加熱処理を行うことにより水系接着剤層を乾燥させて、偏光板を得た。上記の水系接着剤には、ポリビニルアルコール粉末〔日本合成化学工業(株)製の商品名「ゴーセファイマー」、平均重合度1100〕を95℃の熱水に溶解して得られた濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液に架橋剤〔日本合成化学工業(株)製のグリオキシル酸ナトリウム〕をポリビニルアルコール粉末10重量部に対して1重量部の割合で混合した水溶液を用いた。
偏光板の厚みは58.6μmであった。上記の方法に従って偏光板のTDカール量を測定したところ、−26.0mm(逆カール)であった。
(C)プロテクトフィルム付偏光板の作製
上記(B)で得られた偏光板をエキスパンダーロール〔直径:100mm、弧高:5mm〕を介して連続的に搬送するとともに、長尺のプロテクトフィルム〔基材フィルムがポリエチレンテレフタレートからなり、その上に(メタ)アクリル系粘着剤層を有するプロテクトフィルム、総厚み:57.3μm〕を連続的に搬送し、これらを重ねて貼合ロール間に通すことによりプロテクトフィルムと偏光板との積層体を上下から押圧し貼合して、プロテクトフィルム付偏光板を作製した。プロテクトフィルムは、その粘着剤層を介して偏光板の第1熱可塑性樹脂フィルム(TACフィルム)面に貼合されている。なお、エキスパンダーロールにおける偏光板の接触角は37.5°とし、エキスパンダーロールと貼合ロールとの距離Lは350mmであり、エキスパンダーロールの直径の3.5倍であった。貼合ロールによってプロテクトフィルムと偏光板との積層体に与えられる圧力(ニップ圧)は、0.1MPaであった。上記接触角及びニップ圧は、下記の実施例2〜5においてもおよそ同じ値であり、上記ニップ圧は、下記の比較例においてもおよそ同じ値である。また、エキスパンダーロールの配置角度は50°とした。得られたプロテクトフィルム付偏光板のTDカール量を表1に示す。
<実施例2,3>
貼合前に偏光板に接触させたエキスパンダーロールの配置角度を表1に示されるとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして、プロテクトフィルム付偏光板を作製した。得られたプロテクトフィルム付偏光板のTDカール量を表1に示す。エキスパンダーロールと貼合ロールとの距離Lは350mmであり、エキスパンダーロールの直径の3.5倍であった。
<実施例4,5>
貼合前に偏光板に接触させたエキスパンダーロールの配置角度を表1に示されるとおりとし、エキスパンダーロールと貼合ロールとの距離Lを274mm(エキスパンダーロールの直径の2.74倍)としたこと以外は実施例1と同様にして、プロテクトフィルム付偏光板を作製した。得られたプロテクトフィルム付偏光板のTDカール量を表1に示す。
<比較例1>
貼合前に偏光板をエキスパンダーロールを介して搬送しなかった点以外は、実施例1と同様にして、プロテクトフィルム付偏光板を作製した。得られたプロテクトフィルム付偏光板のTDカール量を表1に示す。
実施例1〜5の結果より、エキスパンダーロールによってフィルム(偏光板)の幅方向に外力を付与することにより、TDカール量を制御することができた。また、実施例2〜5の結果より、エキスパンダーロールと貼合ロールとの距離Lを変化させることにより、同じエキスパンダーロールの配置角度でも、TDカール量を調整することができた。