JP6976576B2 - インターカレーション物質の製造方法および製造装置ならびにイオン置換物質の製造方法および製造装置 - Google Patents

インターカレーション物質の製造方法および製造装置ならびにイオン置換物質の製造方法および製造装置 Download PDF

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Description

この発明は、インターカレーション物質の製造方法および製造装置ならびにイオン置換物質の製造方法および製造装置に関し、例えば、LiTaS2 等の各種のインターカレーション物質の製造およびK3 2 (PO4 3 等の各種のイオン置換物質の製造に適用して好適なものである。
インターカレーションは、層状物質の層間や、かご状物質の結晶格子によって作られる空間内に分子やイオンを挿入する手法の総称であり、超伝導材料、電池材料、熱電材料等に幅広く利用されており、新たな電子物性の発現が期待されている。
従来のインターカレーション法は、液相法と気相法とに大別される。液相法では、ゲストのイオンや分子を含む溶液中でインターカレーションを行う。具体的には、例えば、溶融塩、アンモニア溶液等にゲストを溶かし、ホストの層間や結晶格子によって作られる空間内に誘導する。一方、気相法では、ゲストの蒸気内でインターカレーションを行う。すなわち、ゲストを気化し、直接、ホストに反応させることにより層間や結晶格子によって作られる空間内に誘導する。
一方、NASICON(sodium(Na) Super Ionic CONductor)型構造を有するNa3 2 (PO4 3 、Li3 2 (PO4 3 、K3 2 (PO4 3 等が知られている。これらのうちNa3 2 (PO4 3 およびLi3 2 (PO4 3 の合成に関しては数多く報告されている。これに対し、K3 2 (PO4 3 の合成に関しては、本発明者の知る限り、2015年に1件報告されているだけであり、しかもNASICON型構造を保てていない(非特許文献1参照。)。
なお、コロナ放電を用いてガラス基板内のアルカリ金属イオンをプロトンで置換することでアルカリ金属の含有割合を調整する方法が知られている(特許文献1参照。)。
特開2015−117167号公報
Adv. Energy Mater. 2015, 1500716
液相法では、ホスト側の酸化還元電位がインターカレーションに伴い変化し、ゲストが均一に挿入されない場合や、さらには溶媒の不純物も同時に層間や結晶格子によって作られる空間内に取り込まれてしまう場合がある。また、気相法では、ゲストの沸点や融点まで温度を上げるため、合成環境や試料が制限を受ける。また、アルカリ金属を気化させるため、合成スペースの劣化が激しい。
一方、NASICON型構造を有するNa3 2 (PO4 3 のNASICON骨格を残して、ナトリウムイオンをカリウムイオンに置換したイオン置換材料K3 2 (PO4 3 は、リチウムイオン電池の代替として期待されているナトリウムイオン電池の正極材料として有用であると考えられているが、このイオン置換材料を容易に合成することができれば、ナトリウムイオン電池の高性能化を図ることができる。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、従来の液相法や気相法と異なる方法によって、種々の被処理体に対して所望のイオンのインターカレーションを容易に行うことができ、不純物の混入も防止することができ、高純度のインターカレーション物質を容易に製造することができるインターカレーション物質の製造方法およびこのインターカレーション物質の製造方法の実施に用いて好適なインターカレーション物質の製造装置を提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、NASICON型構造を有するK3 2 (PO4 3 等のように構造の骨格を大きく変えずにイオンの置換を容易に行うことができ、それによって様々なイオンと様々な構造骨格とを組み合わせた多彩な新物質を容易に製造することができるイオン置換物質の製造方法およびこのイオン置換物質の製造方法の実施に用いて好適なイオン置換物質の製造装置を提供することである。
上記課題を解決するために、この発明は、
構造の骨格を形成していない第1のイオンを含む第1のイオン源とホストとなる第1の被処理体とを互いに積層または対向させ、上記第1の被処理体と反対側から上記第1のイオン源に上記第1のイオンと同符号の第2のイオンを注入することにより、上記第1のイオン源に含まれる上記第1のイオンをゲストとして上記第1の被処理体に移動させてインターカレーションを行うインターカレーション物質の製造方法である。
このインターカレーション物質の製造方法においては、電気的に中性の状態の第1のイオン源に第1のイオンと同符号の第2のイオンを注入すると、第1のイオン源は注入された第2のイオンの電荷の分だけ電荷が過剰な状態となってエネルギー的に不安定となる。第1のイオン源に含まれる第1のイオンは第1のイオン源の構造の骨格を形成しておらず第1のイオン源内を容易に移動可能であるため、第1のイオン源に注入された第2のイオンにより、第1のイオン源に含まれる最表面の第1のイオンが内部に押し込まれ、続いて内部の第1のイオンが次々と押し込まれ、最終的に過剰な電荷の分だけ第1のイオンが外部に押し出されることによって元の中性の状態を回復し、エネルギー的に安定になる。こうして外部に放出された第1のイオンをゲストとして第1の被処理体に移動させてインターカレーションを行う。
第2のイオンを注入し、第1のイオンを第1の被処理体に移動させてインターカレーションを行う環境の圧力は必要に応じて選ばれ、常圧、減圧、高圧(加圧)のいずれであってもよい。第2のイオンを生成する方法は特に限定されず、従来公知の方法の中から必要に応じて選ばれる。例えば、処理室の内部に第2のイオンの生成用の分子を含むガスを導入して放電を行うことにより第2のイオンを生成することができる。あるいは、処理室の外部に設けられたイオン生成源に第2のイオンの生成用の分子を含むガスを導入して放電を行うことにより生成した第2のイオンを処理室の内部に導入してもよい。第2のイオンを生成する環境の圧力は、その生成方法に応じて選ばれ、常圧、減圧、高圧(加圧)のいずれであってもよい。第2のイオンを放電により生成する場合、その方法としては、典型的にはコロナ放電が用いられる。このように第2のイオンをコロナ放電により生成する場合、好適には、針状電極の先端を第1の被処理体と反対側から第1のイオン源に対向させ、第2のイオンの生成用の分子(例えば、第2のイオンがプロトンである場合には水素(H2 ))を含む雰囲気において、針状電極と第1の被処理体との間に電圧を印加してコロナ放電を起こさせることにより第2のイオンを生成する。針状電極は、最低限1本用いられるが、必要に応じて複数本用いられる。例えば、第1のイオン源の第2のイオンを注入する領域の面積がある程度大きい場合には、1本の針状電極ではその面積の全体に亘って第2のイオンを注入することができなかったり、単位面積当たりの第2のイオンの注入量の均一性が悪化したりする問題があるが、複数本の針状電極を用いることによりこのような問題を解消することができる。これらの複数本の針状電極は、第1のイオン源の第2のイオンを注入する領域の形状、面積、針状電極の先端と第1のイオン源との間の距離等に応じて、その領域全体に第2のイオンをできるだけ均一に注入することができるように配置される。具体的には、例えば、第1のイオン源の第2のイオンを注入する領域が円形である場合には、その円形の領域の中心の上方に1本の針状電極を配置するとともに、その周りの、半径がその円形の領域の半径より小さい円周上に複数本、例えば4本の針状電極を等間隔に配置する。あるいは、その円形の領域全体に第2のイオンを注入することができるように複数本の針状電極を2次元アレイ状に配置してもよい。第1のイオン源の第2のイオンを注入する領域が正方形または長方形である場合には、例えば、その領域全体に第2のイオンを注入することができるように複数本の針状電極を2次元アレイ状に配置する。インターカレーションを行う際の第1の被処理体および第1のイオン源の温度は必要に応じて選ばれ、常温であることも、常温より高い温度であることも、常温より低い温度であることもある。
第1のイオン源(イオン伝導体と言い換えることもできる)は、従来公知のものの中から必要に応じて選ばれる。第1のイオン源に含まれる第1のイオンは陽イオンであっても陰イオンであってもよい。第1のイオン源に含まれる第1のイオンは一種に限定されず、複数種であってもよい。陽イオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン(Li+ 、Na+ 、K+ 等)、アルカリ土類金属イオン(Mg2+、Ca2+、Ba2+等)、Ag+ 、Cu+ 、Bi3+等が挙げられるが、これに限定されるものではない。陰イオンとしては、例えば、ハロゲン化物イオン(F- 、Cl- 、Br- 、I- 等)、O2-、OH- 、H- (ヒドリド)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。第1のイオン源は、典型的には固体電解質である。固体電解質は、例えば、ガラス、クラスレート、ゼオライト、スクッテルダイト、パイロクロア型酸化物、NASICON型構造を有する固体電解質、銀イオン(Ag+ )伝導体、銅イオン(Cu+ )伝導体、ハロゲンイオン伝導体、nA2 5 ・B2 O(n=5〜11)(A=Al、Ga、Fe等、B=Na、K、Rb、NH4 、Tl等)、O2-のイオン伝導体、黒鉛層間化合物等である。ガラスは、基本的にはどのようなものであってもよいが、例えば、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、ケイ酸塩ガラス、ゲルマニウムガラス、カルコゲナイドガラス、硫化物ガラス等である。これらのガラスにはNa+ 等のアルカリ金属イオンが含まれ、このアルカリ金属イオンが容易に移動することができる。クラスレートは、I型クラスレートMx 46、II型クラスレートMx 136 、I' 型クラスレートM24100 、III 型クラスレートMx 172 (Mはゲスト、Tはホスト)等である。ゼオライトは、結晶性アルミノケイ酸塩の総称であり、化学式は一般的にM2/n O・Al2 3 ・xSiO2 ・yH2 O(Mはn価の陽イオン、例えばNa+ 、K+ 、Ca2+、Ba2+等で例えばx=2〜10、y=2〜7)と表され、構造および組成は必要に応じて選ばれる。ゼオライトとしては、好適にはA型またはX型のものが用いられる。パイロクロア型酸化物は、A、B陽イオンからなる一般式A2 2 7 で表される酸化物であり、(1)Aが希土類やSc、Y、Bi等の3価の陽イオン、BがSn、Ti、Zr等のIV族元素や4価のV、Mo、Pt等の遷移金属元素イオンであるA3+4+
7 型、(2)AがCa、Cd、Hg等の2価の陽イオン、BがNb、Ta、Sb等の4価の陽イオンであるA2+5+7 型、(3)定比の構造から8b位置の酸素(O’)や1個のAが取り除かれてできるA2 2 7 、AB2 6 で表される欠陥パイロクロア(Pb2 Ru2 6 、Cs(V、Te)2 6 等)である。スクッテルダイトは、LnT4 12(T=Fe、Os、Ru等、X=P、As、Sb)である。NASICON型構造を有する固体電解質はAx 2 (XO4 3 (Mは遷移金属、X=S、P、As、Mo、W、V等、A=Li、Na、K)であり、例えば、Na3 Zr2 Si2 PO12、LiGeAlP3 12、Na3 2 (PO4 3 、Li3 2 (PO4 3 、K3 2 (PO4 3 等である。銀イオン伝導体は、AgI、Ag2 S、AgRb4 5 等である。銅イオン伝導体は、CuI等である。ハロゲンイオン伝導体は、CaF2 、PbF2 、SrF2 、SrCl2 等である。O2-のイオン伝導体は、CaO・AO2 (A=Zr、Hf、Th、Ce等)、ZrO2 ・M2 5 (M=La、Sm、Y、Sc等)、CeO2 、LaGaO3 、Na0.5 Bi0.5 TiO3 、NdBaInO4 等である。黒鉛層間化合物に関しては、極めて多くのゲスト物質が存在する。
第1のイオン源に注入する第2のイオンは、必要に応じて選ばれるが、陽イオンとしては例えばプロトン、アルカリ金属イオン(Li+ 、Na+ 、K+ 等)、He+ 、Ar+ 等、陰イオンとしては例えばヒドリドやハロゲン化物イオン(F- 、Cl- 、Br- 、I- 等)が挙げられる。第2のイオンは第1のイオンと異なっても同じでもよい。
第1のイオン源に第2のイオンを注入する際には、第1のイオンと同価数の第2のイオンを注入する方法と、第1のイオンと価数が異なる第2のイオンを注入する方法とがある。前者の例を挙げると、第1のイオンがNa+ 等のアルカリ金属イオン、第2のイオンがH+ の場合である。後者の例を挙げると、第1のイオンがCa2+、第2のイオンがアルカリ金属イオンの場合である。後者の方法としては、例えば次のような方法がある。すなわち、第1のイオン源の前段に、構造の骨格を形成していない第2のイオンを含む第2のイオン源を設ける。そして、第2のイオン源に第2のイオンと同符号の第3のイオンを注入することにより第2のイオン源から第2のイオンを第1のイオン源に注入する。最終的に第1のイオン源から第1のイオンが外部に放出され、第1の被処理体に移動してインターカレーションが行われる。このように2段に配置された第1のイオン源および第2のイオン源を用いることにより、さらには3段以上に配置されたイオン源を用いることにより、第1の被処理体にインターカレーションを行うイオンの選択の自由度を大きくすることができ、様々なイオンのインターカレーションを行うことが可能となる。また、最上部のイオン源は電気的絶縁性を有するが、イオン源を2段以上重ねて用いる場合には、2段目以降のイオン源としては電気伝導性を有するものを用いることもできるため、イオン源の選択の自由度を大きくすることができる。第2のイオン源および3段目以上のイオン源は、第1のイオン源と同様に、典型的には固体電解質である。
第1のイオン源から第1の被処理体に第1のイオンを移動させる際に、第2のイオンの生成用の分子あるいはその分解生成物が何らかの悪影響を及ぼすこともあり得ることから、このような場合には、好適には、第2のイオンを生成する空間と第1の被処理体に第1のイオンを移動させる空間とを互いに分離する。
ホストとなる第1の被処理体は、最も広くはナノ空間材料、一般的には、層状物質またはかご状物質からなるが、これに限定されるものではない。第1の被処理体を構成する材料の具体例を挙げると、炭素系材料、遷移金属ダイカルコゲナイド、13族カルコゲナイド、14族カルコゲナイド、層状超伝導物質、層状窒化物、ゲスト物質非内包クラスレート化合物等である。炭素系材料は、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、2層グラフェン等である。遷移金属ダイカルコゲナイドは、MCh2 (M=Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W等、Ch=S、Se、Te)であり、例えば、TaS2 、NbSe2 、NbS2 、FeSe等である。13族カルコゲナイドは、GaS、GaSe、GaTe、InSe等である。14族カルコゲナイドは、GeS、SnS2 、SnSe2 、PbO等である。層状超伝導物質は、銅酸化物高温超伝導体、鉄系超伝導体、BiCh2 系超伝導体(Ch=S、Se、Te)等であり、具体的には、例えば、Bi2 Sr2 CaCu2 x 、LnFePnO1-x x 、FeSe1-x x 、FeTe1-x x 、FeTe1-x Sex 、Ln(O1-x x )BiCh2 (Ln=La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ch=S、Se、Te、Pn=As、P)であり、例えば、La(OF)BiS2 、Ce(OF)BiS2 、Pr(OF)BiS2 、Nd(OF)BiS2 、La(OF)BiSe2 、La(OF)BiSeS、La(OF)BiS2 等である。層状窒化物は、TiNCl、ZrNCl、HfNCl等である。そのほか、電池材料への適用可能性がある層状物質として、La2/3-x Li3xTiO、LiO2 −SiO2 系材料、Li−P−O−N系材料、Li2 S−SiO2 系材料、Li2 S−P2 5 系材料等がある。
第1のイオン源と第1の被処理体とを互いに対向させる場合、すなわち、第1のイオン源と第1の被処理体とを互いに離して配置する場合には、第1のイオン源に含まれる第1のイオンは、第1のイオン源への第2のイオンの注入により、第1のイオン源と第1の被処理体との間の空間を移動して第1の被処理体に移動する。
第1のイオン源に含まれる第1のイオンは、第1の被処理体の全面に移動させてもよいし、第1の被処理体に対して選択的に移動させてもよい。後者の場合は、第1のイオン源の表面または第1のイオン源と第1の被処理体との間、典型的には第1の被処理体の表面に第1のイオンに対して阻止能を有するマスクを設け、このマスクを用いて第1の被処理体に選択的に、第1のイオン源に含まれる第1のイオンを移動させる。
また、この発明は、
処理室を有し、
上記処理室内において、構造の骨格を形成していない第1のイオンを含む第1のイオン源とホストとなる第1の被処理体とを互いに積層または対向させ、上記第1の被処理体と反対側から上記第1のイオン源に上記第1のイオンと同符号の第2のイオンを注入することにより、上記第1のイオン源に含まれる上記第1のイオンをゲストとして上記第1の被処理体に移動させてインターカレーションを行うインターカレーション物質の製造装置である。
このインターカレーション物質の製造装置においては、第1のイオン源から第1の被処理体に第1のイオンを移動させる際に、第2のイオンの生成用の分子が何らかの悪影響を及ぼすこともあり得ることから、このような場合には、好適には、処理室において、第2のイオンを生成する空間と第1の被処理体に第1のイオンを移動させる空間とが互いに分離して設けられる。
このインターカレーション物質の製造装置の発明においては、その性質に反しない限り、上記のインターカレーション物質の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
構造の骨格を形成していない第4のイオンを含む第2の被処理体に上記第4のイオンと異なる同符号の第5のイオンを注入することにより、上記第2の被処理体に含まれる上記第4のイオンを上記第5のイオンで置換するイオン置換物質の製造方法である。
第2の被処理体については、上記のインターカレーション物質の製造方法の発明における第1のイオン源に関連して説明したことが成立する。上記のインターカレーション物質の製造方法の発明における第1の被処理体にゲストを挿入した物質は第2の被処理体の候補に成り得るし、逆に、ゲストが挿入された第2の被処理体からゲストを取り除いた物質は上記のインターカレーション物質の製造方法の発明における第1の被処理体の候補に成り得る。また、第5のイオンについては、上記のインターカレーション物質の製造方法の発明における第2のイオンに関連して説明したことが成立する。好適には、第2の被処理体の前段に、構造の骨格を形成していない第5のイオンを含む第3のイオン源を設け、第3のイオン源に第5のイオンと同符号の第6のイオンを注入することにより第3のイオン源から第5のイオンを第2の被処理体に注入する。第3のイオン源については、上記のインターカレーション物質の製造方法の発明における第1のイオン源に関連して説明したことが成立する。好適には、第2の被処理体の後段に第2の被処理体から放出される第4のイオンを吸収するイオン吸収体を設ける。イオン吸収体の材料は必要に応じて選ばれるが、例えば炭素(カーボン)である。このイオン置換物質の製造方法の発明においては、上記以外のことは、その性質に反しない限り、上記のインターカレーション物質の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
処理室を有し、
上記処理室内において、構造の骨格を形成していない第4のイオンを含む第2の被処理体に上記第4のイオンと異なる同符号の第5のイオンを注入することにより、上記第2の被処理体に含まれる上記第4のイオンを上記第5のイオンで置換するイオン置換物質の製造装置である。
このイオン置換物質の製造装置の発明においては、その性質に反しない限り、上記のイオン置換物質の製造方法およびインターカレーション物質の製造装置の発明に関連して説明したことが成立する。
この発明によれば、第1の被処理体と反対側から、構造の骨格を形成していない第1のイオンを含む第1のイオン源に第2のイオンを注入すると、第1のイオン源から第1のイオンが押し出されることにより、第1のイオン源に含まれる第1のイオンを第1の被処理体に移動させることができるため、第1の被処理体に対する第1のイオンのインターカレーションを容易に行うことができる。この場合、第1の被処理体への不純物の混入を防止することができる。これによって、高純度のインターカレーション物質を容易に製造することができる。
また、この発明によれば、構造の骨格を形成していない第4のイオンを含む第2の被処理体に第5のイオンを注入すると、第2の被処理体に含まれる第4のイオンを第5のイオンで容易に置換することができ、構造の骨格を形成していない第5のイオンを含むイオン置換物質を容易に製造することができる。これによって、様々なイオンと様々な構造骨格とを組み合わせた多彩な新物質を容易に製造することができる。
この発明の第1の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法の原理を説明するための略線図である。 この発明の第2の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法の原理を説明するための略線図である。 この発明の第3の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法の原理を説明するための略線図である。 この発明の第4の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法の原理を説明するための略線図である。 この発明の第5の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法の原理を説明するための略線図である。 この発明の第6の実施の形態によるイオン置換物質の製造方法の原理を説明するための略線図である。 この発明の第6の実施の形態によるイオン置換物質の製造方法の原理を説明するための略線図である。 この発明の第6の実施の形態によるイオン置換物質の製造方法の原理を説明するための略線図である。 この発明の第6の実施の形態によるイオン置換物質の製造方法の原理を説明するための略線図である。 実施例1によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法を示す略線図である。 実施例1においてガラス基板80としてNa+ 含有リン酸塩ガラス基板を用いた場合のインターカレーション物質の製造方法を示す略線図である。 図9に示すインターカレーション物質の製造方法において使用されたTaS2 単結晶片70を示す図面代用写真である。 図9に示すインターカレーション物質の製造方法の詳細を説明するための略線図である。 実施例1によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用されたTaS2 単結晶片の結晶構造を示す略線図である。 実施例1によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてゲストとしてA+ のインターカレーションが行われたAX TaS2 単結晶片の結晶構造を示す略線図である。 実施例1によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用されたTaS2 単結晶片およびゲストとしてA+ のインターカレーションが行われたAX TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例1によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用されたTaS2 単結晶片およびゲストとしてNa+ のインターカレーションが行われたNaX TaS2 単結晶片の極低温での磁化の温度依存性の測定結果を示す略線図である。 実施例2によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用されたNbSe2 単結晶片およびゲストとしてA+ のインターカレーションが行われたAX NbSe2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例3によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてイオン交換材料として使用されたNa3 Zr2 Si2 PO12の結晶構造を示す略線図である。 実施例3によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用されたTaS2 単結晶片を構成するTaS2 ならびにイオン交換材料としてLiGeAlP3 12またはNa3 Zr2 Si2 PO12を使用してTaS2 にLi+ またはNa+ のインターカレーションが行われたLiX TaS2 およびNaX TaS2 のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例4によるコロナ放電を利用したイオン置換物質の製造方法を示す略線図である。 実施例4によるコロナ放電を利用したイオン置換物質の製造方法において出発物質として使用されたNa3 2 (PO4 3 およびこの出発物質を用いて製造されたH3 2 (PO4 3 のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例5によるコロナ放電を利用したイオン置換物質の製造方法を示す略線図である。 実施例5によるコロナ放電を利用したイオン置換物質の製造方法において出発物質として使用されたNa3 2 (PO4 3 およびこの出発物質を用いて製造されたK3 2 (PO4 3 のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例6によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法を示す略線図である。 実施例6によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてAg+ のインターカレーションが行われるまでの一連の反応を示す略線図である。 実施例6によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法により製造されたAgX TaS2 単結晶片を示す図面代用写真である。 実施例6によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法により製造されたCuX TaS2 単結晶片を示す図面代用写真である。 実施例6によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用されたTaS2 単結晶片を構成するTaS2 、ゲストとしてAg+ のインターカレーションが行われたAgX TaS2 単結晶片およびゲストとしてCu+ のインターカレーションが行われたCuX TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例7において予備的に行った実験においてBiSSeLaO単結晶片にCu+ を注入した後の状態を示す図面代用写真である。 図27の一部を拡大した図面代用写真である。 実施例7において予備的に行った実験において使用されたBiSSeLaO単結晶片およびこのBiSSeLaO単結晶片にCu+ を注入することにより得られたCuX SSeLaO単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例7において予備的に行った実験においてBiSSeLaO単結晶片からCuX SSeLaO単結晶片への変換の様子を模式的に示す略線図である。 実施例7において予備的に行った実験において得られたCuX SSeLaO単結晶片のX線回折パターンの測定結果およびシミュレーションにより求められたCuX SSeLaO単結晶のX線回折パターンを示す略線図である。 実施例7によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法を示す略線図である。 実施例7によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてBi3+のインターカレーションが行われるまでの一連の反応を示す略線図である。 実施例7によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法により製造されたBiX TaS2 単結晶片を示す図面代用写真である。 実施例7によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法により製造されたBiX TaS2 単結晶片を示す図面代用写真である。 実施例7によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法により製造されたBiX TaS2 単結晶片を示す図面代用写真である。 実施例7によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用されたTaS2 単結晶片およびゲストとしてBi3+のインターカレーションが行われたBiX TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例8によるコロナ放電を利用したイオン置換物質の製造方法を示す略線図である。 実施例8によるコロナ放電を利用したイオン置換物質の製造方法においてAl2 3 製リングの中心部に充填されたNa3 2 (PO4 3 粉末に対してイオン置換を行った後にAl2 3 製リングを切断した状態を示す図面代用写真である。 図37に示すAl2 3 製リングの中心部の粉末層の上部、中間部および下部のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された1T−TaS2 単結晶片の結晶構造を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された1T−TaS2 単結晶片の結晶構造を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された1T−TaS2 単結晶片の結晶構造を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された2H−TaS2 単結晶片の結晶構造を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された2H−TaS2 単結晶片の結晶構造を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された2H−TaS2 単結晶片の結晶構造を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された1T−TaS2 単結晶片および2H−TaS2 単結晶片を示す図面代用写真である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用される1T−TaS2 単結晶片を水素雰囲気中で種々の温度でアニールを行ったときのX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された2H−TaS2 単結晶片およびゲストとしてA+ のインターカレーションが行われたAX TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された2H−TaS2 単結晶片およびゲストとしてCu+ のインターカレーションが行われたCuX TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された2H−TaS2 単結晶片およびゲストとしてAg+ のインターカレーションが行われたAgX TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された2H−TaS2 単結晶片およびゲストとしてAg+ のインターカレーションが段階的に行われたAgX2TaS2 単結晶片およびAgX1TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された1T−TaS2 単結晶片およびゲストとしてA+ のインターカレーションが行われたAX TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された1T−TaS2 単結晶片およびゲストとしてCu+ のインターカレーションが行われたCuX TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてホストとして使用された1T−TaS2 単結晶片およびゲストとしてAg+ のインターカレーションが行われたAgX TaS2 単結晶片のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。 実施例9によるコロナ放電を利用したインターカレーション物質の製造方法においてゲストとしてAg+ のインターカレーションが行われたAgX TaS2 単結晶片を大気に暴露したときの暴露前後のX線回折パターンの測定結果を示す略線図である。
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という。)について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態においては、同一の部分には同一の符号を付す。
〈第1の実施の形態〉
[インターカレーション物質の製造方法]
図1は第1の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法を示す。図1に示すように、図示省略した処理室内において、ホストとなる第1の被処理体10と、構造の骨格を形成していない第1のイオンを含む第1のイオン源20とを互いに積層し、両者を互いに接触させる。図1中、第1のイオン源20中に含まれる第1のイオンを模式的に○で示した。第1の被処理体10および第1のイオン源20の形状は特に限定されないが、典型的には平坦な基板状であり、この場合、第1の被処理体10のインターカレーションを行う面と、第1のイオン源20の第1の被処理体10側の面とが互いに接触する。第1の被処理体10は図示省略した被処理体保持手段により保持される。被処理体保持手段は、従来公知のものの中から必要に応じて選ばれるが、例えば、第1の被処理体10を載せるステージである。インターカレーションを行う際の第1の被処理体10および第1のイオン源20の温度は必要に応じて選ばれ、常温であってもよいし、第1の被処理体10または第1のイオン源20あるいは両者をヒーター等により加熱して常温より高い温度としてもよいし、第1の被処理体10または第1のイオン源20あるいは両者をペルティエクーラー等により冷却して常温より低い温度としてもよい。第1の被処理体10は、全体がホストとなる場合もあるし、例えば、基板上に設けられた薄膜等がホストとなる場合もある。第1のイオン源20は、第1の被処理体10の種類、第1の被処理体10にインターカレーションを行う第1のイオンの種類等に応じて適宜選択される。
次に、処理室内を一旦、真空ポンプにより排気した後、処理室内を常圧雰囲気、減圧雰囲気あるいは高圧雰囲気に保ち、第1の被処理体10と反対側から第1のイオン源20に第2のイオンを注入する。第2のイオンは、処理室内に設けられたイオン生成源から生成されたものであっても、処理室の外部に設けられたイオン生成源により生成され、処理室内に導入されたものであってもよい。イオン生成源は、第2のイオンの種類、第2のイオンに持たせる初期エネルギー等に応じて適宜選ばれるが、例えば各種の放電装置が用いられ、好適にはコロナ放電装置が用いられる。第2のイオンの生成用の分子は、第2のイオンの種類等に応じて適宜選ばれるが、第2のイオンとしてプロトン(H+ )を用いる場合は、好適には水素(H2 )が用いられる。
上述のようにして第1のイオン源20に注入された第2のイオンはまず、第1のイオン源20に含まれる最表面の第1のイオンを内部に押し込み、続いて内部の第1のイオンが次々と押し込まれる結果、最終的に第1のイオン源20から第1のイオンが押し出され、こうして押し出された第1のイオンがゲストとして第1の被処理体10に移動する。すなわち、第1の被処理体10に対して第1のイオンのインターカレーションが行われる。必要な量の第1のイオンが第1の被処理体10に挿入された時点で処理を終了する。
以上により、第1の被処理体10に対して第1のイオンのインターカレーションが行われた目的とするインターカレーション物質が製造される。
以上のように、この第1の実施の形態によれば、第1の被処理体10と構造の骨格を形成していない第1のイオンを含む第1のイオン源20とを互いに積層し、第1の被処理体10と反対側から第1のイオン源20に第2のイオンを注入することにより、第1のイオン源20中の第1のイオンを第1の被処理体10に押し出すことができるため、第1の被処理体10に対する第1のイオンのインターカレーションを容易に行うことができる。この場合、従来の液相法を用いた場合のように、溶媒分子が挿入されることがなく、直接、必要な第1のイオンのみが第1の被処理体10の層間や結晶格子によって作られる空間内に挿入されるため、第1の被処理体10への不純物の混入を防止することができる。また、従来の気相法を用いた場合のように、合成スペースがゲスト分子の気化により汚染されることもない。また、第2のイオンの注入量、注入エネルギー、注入時間を制御することにより、第1のイオンの挿入量を制御することが可能となり、従来のインターカレーション法より反応を高速に進行させることができる。これによって、第1のイオンのインターカレーションが行われた高純度のインターカレーション物質を容易に製造することができる。また、従来の気相法では、ガラスチューブやステンレスチューブ等の中でインターカレーション物質の合成が行われるため、被処理体の大きさが制限されるのに対し、この第1の実施の形態によれば、合成スペースを広くすることができるため、大面積の第1の被処理体10に対してもインターカレーションを容易に行うことができる。この場合、第1のイオン源20の面積も第1の被処理体10と同程度にする。この方法は、特に、第1の被処理体10が基板上に形成された薄膜である場合にその薄膜全体にインターカレーションを行う場合に極めて有利である。
〈第2の実施の形態〉
[インターカレーション物質の製造方法]
図2は第2の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法を示す。図2に示すように、このインターカレーション物質の製造方法は、第1の被処理体10と第1のイオン源20とを互いに対向させて、すなわち、第1の被処理体10と第1のイオン源20とを互いに離した状態でインターカレーションを行う点が第1の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法と異なる。第1の被処理体10と第1のイオン源20とを互いに対向させるためには、例えば、インターカレーションを行う領域外の第1の被処理体10と第1のイオン源20との間にスペーサ30を挿入すればよい。スペーサ30としては、例えばAl2 3 スペーサが用いられる。スペーサ30の厚さ、言い換えると、第1の被処理体10と第1のイオン源20との間の距離は必要に応じて選ばれるが、例えば、0.5mm以上3mm以下である。
このインターカレーション物質の製造方法においては、第1の被処理体10と反対側から第2のイオンを第1のイオン源20に注入することにより第1のイオン源20中の第1のイオンを移動させることは第1の実施の形態と同様であるが、第1のイオンを第1のイオン源20から外部に放出させ、第1のイオン源20と第1の被処理体10との間の空間を飛行させてから第1の被処理体10に注入してインターカレーションを行うことが異なる。
その他のことは第1の実施の形態と同様である。
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈第3の実施の形態〉
[インターカレーション物質の製造方法]
図3は第3の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法を示す。図3に示すように、このインターカレーション物質の製造方法は、第1の被処理体10のインターカレーションを行う面に第1のイオンに対して阻止能を有する材料からなる所定形状のマスク40を形成し、このマスク40が形成された第1の被処理体10と第1のイオン源20とを互いに積層した状態でインターカレーションを行う点が第1の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法と異なる。マスク40の材料は、第1のイオンに対して阻止能を有する材料であれば基本的にはどのようなものであってもよいが、例えば、SiO2 やSiN等の絶縁体が用いられる。マスク40を形成する方法としては、第1の被処理体10のインターカレーションを行う面上に従来公知の方法、例えばCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法等により絶縁膜を形成した後、この絶縁膜をリソグラフィーおよびエッチングによりパターニングすればよい。
このインターカレーション物質の製造方法においては、第1の被処理体10と反対側から第2のイオンを第1のイオン源20に注入することにより第1のイオン源20中の第1のイオンを移動させることは第1の実施の形態と同様であるが、第1の被処理体10のマスク40で覆われている部分では第1のイオン源20から第1の被処理体10への第1のイオンの移動が妨げられるため、マスク40で覆われていない部分の第1の被処理体10にだけ第1のイオンが移動してインターカレーションが行われる。
その他のことは第1の実施の形態と同様である。
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、第1の被処理体10に対して選択的にインターカレーションを行うことができるという利点も得ることができる。
〈第4の実施の形態〉
[インターカレーション物質の製造方法]
図4は第4の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法を示す。図4に示すように、このインターカレーション物質の製造方法は、第1のイオン源20の前段に、構造の骨格を形成していない第2のイオンを含む第2のイオン源50を設ける。そして、第2のイオン源50に第2のイオンと同符号かつ第2のイオンと異なる価数を有する第3のイオンを注入することにより第2のイオン源50から第2のイオンを第1のイオン源20に注入する。最終的に、第1のイオン源20から第1のイオンが外部に放出され、第1の被処理体10にこの第1のイオンのインターカレーションが行われる。
具体例を挙げると、第1のイオン源20として2価の陽イオンを含むものを用い、第2のイオン源50として1価の陽イオンを含むものを用い、第3のイオンとして1価の陽イオンを用いる。第3のイオンとして1価の陽イオンを第2のイオン源50に注入すると、この1価の陽イオン1個に対して1個の割合で第2のイオン源50から1価の陽イオンが放出され、第1のイオン源20に注入される。そして、第1のイオン源20からはこの第2のイオン源50からの1価の陽イオン2個に対して1個の割合で2価の陽イオンが放出され、第1の被処理体10にこの2価の陽イオンのインターカレーションが行われる。第1のイオン源20に含まれる2価の陽イオンの例を挙げるとCa2+等のアルカリ土類金属イオン、第2のイオン源50に含まれる1価の陽イオンの例を挙げるとK+ 等のアルカリ金属イオン、第3のイオンの例を挙げるとH+ である。
その他のことは第1の実施の形態と同様である。
第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、第1の被処理体10に対して2価以上の多価イオンのインターカレーションを容易に行うことができるという利点を得ることができる。
〈第5の実施の形態〉
[インターカレーション物質の製造方法]
図5は第5の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法を示す。図5に示すように、このインターカレーション物質の製造方法は、第1の被処理体10に第1のイオンのインターカレーションを行う空間と、第2のイオンを生成し、第1のイオン源20に注入する空間とを隔壁60(図5には隔壁60の一部だけが示されている)により互いに分離する点が第1の実施の形態によるインターカレーション物質の製造方法と異なる。
第1の被処理体10に第1のイオンのインターカレーションを行う空間と、第2のイオンを生成し、第1のイオン源20に注入する空間とを隔壁60により互いに分離することにより、例えば、第2のイオンを生成するために導入する第2のイオンの生成用の分子あるいはその分解生成物による影響が第1の被処理体10に第1のイオンのインターカレーションを行う部位に及ばないようにすることができる。例えば、第1の被処理体10がH2 やH+ に晒されると第1のイオンのインターカレーションに支障が生じたり、第1の被処理体10が変質したりするおそれがある場合には、隔壁60が設けられていることにより、第1の被処理体10がこれらのH2 やH+ に晒されるのを防止することができる。
その他のことは第1の実施の形態と同様である。
第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、第2のイオンの生成用の分子あるいはその分解生成物により、第1の被処理体10への第1のイオンのインターカレーションに悪影響が生じたり、第1の被処理体10が変質したりするのを防止することができるという利点を得ることができる。
〈第6の実施の形態〉
[イオン置換物質の製造方法]
図6Aおよび図6Bは第6の実施の形態によるイオン置換物質の製造方法を示す。図6Aに示すように、図示省略した処理室内において、出発物質となる第2の被処理体100とイオン吸収体110とを積層または対向させる。第2の被処理体100は、構造の骨格を形成していない第4のイオンを含む。イオン吸収体110は、第4のイオンを吸収することができる物質からなる。図6A中、第2の被処理体100中に含まれる第4のイオンを模式的に○で示した。第2の被処理体100およびイオン吸収体110の形状は特に限定されないが、典型的には平坦な基板状である。第2の被処理体100およびイオン吸収体110は図示省略した被処理体保持手段により保持される。被処理体保持手段は、例えば、第2の被処理体100およびイオン吸収体110を載せるステージである。イオン置換を行う際の第2の被処理体100およびイオン吸収体110の温度は必要に応じて選ばれ、常温であってもよいし、第2の被処理体100またはイオン吸収体110あるいは両者をヒーター等により加熱して常温より高い温度としてもよいし、第2の被処理体100またはイオン吸収体110あるいは両者をペルティエクーラー等により冷却して常温より低い温度としてもよい。第2の被処理体100は、最終的に得たいイオン置換物質に応じて適宜選択される。
次に、処理室内を一旦、真空ポンプにより排気した後、処理室内を常圧雰囲気、減圧雰囲気あるいは高圧雰囲気に保ち、イオン吸収体110と反対側から第2の被処理体100に第4のイオンと同符号の第5のイオンを注入する。第5のイオンは、処理室内に設けられたイオン生成源から生成されたものであっても、処理室の外部に設けられたイオン生成源により生成され、処理室内に導入されたものであってもよい。イオン生成源は、第5のイオンの種類、第5のイオンに持たせる初期エネルギー等に応じて適宜選ばれるが、例えば各種の放電装置が用いられ、好適にはコロナ放電装置が用いられる。第5のイオンの生成用の分子は、第5のイオンの種類等に応じて適宜選ばれるが、第5のイオンとしてプロトン(H+ )を用いる場合は、好適には水素(H2 )が用いられる。
上述のようにして第2の被処理体100に注入された第5のイオンは、第2の被処理体100に含まれる最表面の第4のイオンを内部に押し込み、続いて内部で第4のイオンが次々と押し込まれると同時に第4のイオンが第5のイオンで置換され、最終的に第5のイオンで置換された分の第4のイオンが第2の被処理体100から押し出される。こうして、第2の被処理体100に含まれる第4のイオンが第5のイオンで置換される。第2の被処理体100から押し出された第4のイオンは、イオン吸収体110に吸収される。第2の被処理体100に含まれる第4のイオンのうち必要な量の第4のイオンが第5のイオンで置換された時点で処理を終了する。
以上により、図6Bに示すように、第2の被処理体100に含まれる第4のイオンのうち必要な量の第4のイオンが第5のイオンで置換されたイオン置換物質120が製造される。
第5のイオンは、構造の骨格を形成していない第5のイオンを含む第3のイオン源により供給してもよい。すなわち、図7Aに示すように、第2の被処理体100の前段に、構造の骨格を形成していない第5のイオンを含む第3のイオン源130を積層または対向させる。そして、この第3のイオン源130に第5のイオンと同符号の第6のイオンを注入する。第3のイオン源130に注入された第6のイオンは、第3のイオン源130の最表面に含まれる第5のイオンを内部に押し込み、続いて内部の第5のイオンが次々と押し込まれる結果、第3のイオン源130から第5のイオンが押し出され、第2の被処理体100に注入される。そして、第2の被処理体100に注入された第5のイオンは、第2の被処理体100の最表面に含まれる第4のイオンを内部に押し込み、続いて内部で第4のイオンが次々と押し込まれると同時に第4のイオンが第5のイオンで置換され、最終的に第5のイオンで置換された分の第4のイオンが第2の被処理体100から押し出される。こうして、第2の被処理体100に含まれる第4のイオンが第5のイオンで置換される。第2の被処理体100から押し出された第4のイオンは、イオン吸収体110に吸収される。第2の被処理体100に含まれる第4のイオンのうち必要な量の第4のイオンが第5のイオンで置換された時点で処理を終了する。
以上により、図7Bに示すように、第2の被処理体100の第4のイオンのうち必要な量の第4のイオンが第5のイオンで置換されたイオン置換物質120が製造される。第3のイオン源130は、第5のイオンの一部が第6のイオンで置換された第4のイオン源140となる。
以上のように、この第6の実施の形態によれば、構造の骨格を形成していない第4のイオンを含む第2の被処理体100に第5のイオンを注入することにより、第2の被処理体100中の第4のイオンを第5のイオンで置換したイオン置換物質120を容易に得ることができる。これによって、従来合成が困難であった、NASICON型構造を有するK3 2 (PO4 3 を容易に得ることができる。すなわち、NASICON型構造の骨格を保ったまま、Na3 2 (PO4 3 多結晶体のNa+ をK+ で置換することができることにより、NASICON型構造を有するK3 2 (PO4 3 多結晶体を容易に得ることができる。この手法によれば、K3 2 (PO4 3 だけでなく、様々なイオンと様々な構造骨格とを組み合わせた多彩な新物質を容易に製造することができる。また、この第6の実施の形態によれば、合成スペースを広くすることができるため、大面積の第2の被処理体100に対してもイオン置換処理を容易に行うことができる。
(実施例1)
実施例1は第1の実施の形態に対応するものである。
図8に示すように、コロナ放電装置の処理室内の試料台(図示せず)上に第1の被処理体10としてTaS2 単結晶片70を載せ、このTaS2 単結晶片70上に第1のイオン源20として、アルカリ金属イオンA+ (A=Li、Na、K)を含むガラス基板80を積層する。TaS2 単結晶片70は接地する。処理室内を真空ポンプにより十分に低圧に減圧した後、外部から処理室内に水素(H2 )を導入して常圧とする。そして、ガラス基板80の上方に先端がこのガラス基板80と対向するように設置された針状電極90に電圧を印加することによりコロナ放電を起こさせ、その結果、H2 を電離してH+ 、すなわちプロトンを発生させる。こうして発生したプロトンはガラス基板80に注入される。ガラス基板80にプロトンが注入されると、ガラス基板80の最表面のA+ が内部に押し込まれ、続いて内部のA+ が次々と押し込まれ、最終的にガラス基板80の下面から押し出され、この下面に接触したTaS2 単結晶片70に注入される。こうして、TaS2 単結晶片70にA+ のインターカレーションが行われてAx TaS2 単結晶片が得られる。このAx TaS2 単結晶片のxは、針状電極90とTaS2 単結晶片70との間に流す電流により制御することができ、電流を大きくすることにより大きくすることができる。
針状電極90に印加する電圧V、針状電極90とガラス基板80との間の距離d、放電時間、ガラス基板80の温度等は、使用するTaS2 単結晶片70およびガラス基板80の種類、インターカレーションを行うゲストの量等に応じて適宜選択される。Vは、コロナ放電が立ち上がる電圧という意味では例えば1.0kV以上であるが、基本的にはアーク放電が起こるまでの電圧であれば利用可能である。針状電極90に印加する最大電圧は、使用するガラス基板80の種類によって異なる。例えば、d=7mmとすると、シリケートガラス基板を用いる場合は7kV程度であるが、リン酸塩ガラス基板を用いる場合は6kVが上限である。以上のことを考慮すると、d=7mmに対しては、ガラス基板80としてリン酸塩ガラス基板を用いる場合、Vは1.0kV以上6kV以下である。dがより大きければ、Vはより高くすることができる。一般的には、Vが高い方がインターカレーションの効率は向上すると考えられる。ガラス基板80としてリン酸塩ガラス基板を用いる場合は、一般的には4kVから5kVの電圧が用いられる。dは、小さ過ぎれば放電が起こりやすくなるが、その分、効率的にプロトンとガラス基板80中のA+ とが置換される。プロトンの置換効率は針状電極90とガラス基板80との間の電場Eで決まる。この電場EはE=V/dとなる。dは、一般的には5mm以上10mm以下である。放電時間は特に限定されず、TaS2 単結晶片70にインターカレーションを行うゲストの量、TaS2 単結晶片70の大きさ等によって適宜選択されるが、一般的には数時間から数日間、例えば8時間である。ガラス基板80を加熱する場合、ガラス基板80として使用するガラスによってガラス転移温度(Tg )が異なるが、ガラス基板80の加熱温度はTg 以下に設定される。Tg は、シリケートガラスでは600℃程度、リン酸塩ガラスでは350℃程度である。ガラス基板80としてリン酸塩ガラス基板を用いる場合、加熱温度は、例えば、100℃以上350℃以下である。
図9に、ガラス基板80として円形のNa+ 含有リン酸塩ガラス基板を用いた場合にTaS2 単結晶片70にNa+ のインターカレーションが行われる様子を示す。TaS2 単結晶片70を図10に示す。TaS2 単結晶片70は円形の炭素電極95(カソード)上に載せられる。針状電極90(アノード)に電圧を印加することによるプロトンの発生から、TaS2 単結晶片70にNa+ のインターカレーションが行われるまでの一連の反応を図11に示す。
図12Aに、TaS2 単結晶片70を構成するTaS2 の結晶構造を示す。図12Aに示すように、TaS2 は層状構造を有する。
図12Bに、ゲストとしてA+ がインターカレートされたAx TaS2 単結晶片を構成するAx TaS2 の結晶構造を示す。図12Bに示すように、TaS2 の層間にゲストとしてAが挿入されている。TaS2 の層間にAが挿入されることにより層間が広がる。
以上のようにして製造されたAx TaS2 単結晶片のX線回折パターンを測定した。ガラス基板80としては、A:La:Ge:P=25:6:6:63の比を有するリン酸塩ガラス(A=Li、Na、K)を用いた。測定結果を図13に示す。図13には、比較のために、TaS2 単結晶片70のX線回折パターンの測定を行った結果も示す。図13に示すように、A=Liの場合はLix TaS2 が得られ、A=Naの場合はNax TaS2 が得られ、A=Kの場合はKx TaS2 が得られていることが分かる。
図14は、上述のようにして得られたNax TaS2 の極低温における磁化の温度依存性を測定した結果を示す。図14には、比較のために、TaS2 の極低温における磁化の温度依存性を測定した結果も示す。図14中の挿入図に、温度2.5Kから4.2Kの間の磁化の変化を拡大して示す。Nax TaS2 (FC)は磁場中冷却を行った場合、Nax TaS2 (ZFC)はゼロ磁場冷却を行った場合を意味する。図14に示すように、TaS2 では、測定した温度範囲では磁化はゼロであったのに対し、Nax TaS2 (ZFC)では、約3.3K以下で磁化が急激に減少して大きな負の磁化になっているのが分かる。これは、Nax TaS2 が超伝導状態となったことを意味する。このように、TaS2 にNa+ のインターカレーションを行ってNax TaS2 とすることにより、超伝導特性の向上を図ることができる。TaS2 の超伝導転移温度は0.8Kであるのに対し、Nax TaS2 の超伝導転移温度は2.5Kから4.2Kに上昇している。
(実施例2)
実施例2は第1の実施の形態に対応するものである。
TaS2 単結晶片70の代わりにNbSe2 単結晶片を用い、実施例1と同様にしてこのNbSe2 単結晶片にA+ のインターカレーションを行ってAx NbSe2 単結晶片を作製した。ガラス基板80としては、A:La:Ge:P=25:6:6:63の比を有するリン酸塩ガラス(A=Li、Na、K)を用いた。NbSe2 単結晶片を構成するNbSe2 は、図12Aに示すTaS2 単結晶片70を構成するTaS2 と同様に層状構造を有する。
ガラス基板80に含まれるA(NaまたはLi)のインターカレーションを行ったNbSe2 のX線回折パターンを測定した。その結果を図15に示す。図15には、比較のために、NbSe2 単結晶片のX線回折パターンを測定した結果も示す。図15に示すように、A=Liの場合はLix NbSe2 が得られ、A=Naの場合はNax NbSe2 が得られていることが分かる。
(実施例3)
実施例3は第1の実施の形態に対応するものである。
第1のイオン源20としてNASICON型構造を有する固体電解質の一種であるNa3 Zr2 Si2 PO12またはLiGeAlP3 12を用いてNaまたはLiのインターカレーションを行った。図16にNa3 Zr2 Si2 PO12の構造を示す。図16に示すように、Na3 Zr2 Si2 PO12では、PO4 またはSiO4 がZrO6 と陵共有した骨格を形成しており、この骨格の中をこの骨格を形成していないNa+ が移動することができる。このNa3 Zr2 Si2 PO12を用いて実施例1と同様にしてTaS2 単結晶片70にA+ のインターカレーションを行った。
NaソースとしてNa3 Zr2 Si2 PO12を使用してインターカレーションを行ったTaS2 およびLiソースとしてLiGeAlP3 12を使用してインターカレーションを行ったTaS2 のX線回折パターンを測定した。その結果を図17に示す。図17には、比較のために、TaS2 単結晶片70のX線回折パターンを測定した結果も示す。図17に示すように、LiソースとしてLiGeAlP3 12を使用してインターカレーションを行った場合はLix TaS2 が得られ、NaソースとしてNa3 Zr2 Si2 PO12を使用してインターカレーションを行った場合はNax TaS2 が得られていることが分かる。
(実施例4)
実施例4は第6の実施の形態に対応するものである。
図18に示すように、コロナ放電装置の処理室内の試料台(図示せず)上にイオン吸収体を兼用する炭素電極150を載せ、この炭素電極150上に第2の被処理体100としてNa3 2 (PO4 3 多結晶体160を載せ、このNa3 2 (PO4 3 多結晶体160上に第3のイオン源130として100%プロトン置換されたリン酸塩ガラス基板170を積層する。炭素電極150は接地する。処理室内を真空ポンプにより十分に低圧に減圧した後、外部から処理室内に水素(H2 )を導入して常圧とする。そして、リン酸塩ガラス基板170の上方に先端がこのリン酸塩ガラス基板170と対向するように設置された針状電極90に電圧を印加することによりコロナ放電を起こさせ、その結果、H2 を電離してH+ 、すなわちプロトンを発生させる。こうして発生したプロトンはリン酸塩ガラス基板170に注入される。リン酸塩ガラス基板170にプロトンが注入されると、リン酸塩ガラス基板170に含まれるH+ がリン酸塩ガラス基板170内を次々と移動し、最終的にリン酸塩ガラス基板170の下面からこの下面に接触したNa3 2 (PO4 3 多結晶体160に注入される。そして、Na3 2 (PO4 3 多結晶体160にプロトンが注入されると、Na3 2 (PO4 3 多結晶体160に含まれるNa+ がNa3 2 (PO4 3 多結晶体160内を次々と移動すると同時にNa+ がプロトンで置換され、最終的にNa3 2 (PO4 3 多結晶体160からNa+ が放出されて炭素電極150に吸収される。こうして、Na3 2 (PO4 3 多結晶体160のNa+ がH+ で置換されたH3 2 (PO4 3 多結晶体が製造される。
以上のようにして製造されたH3 2 (PO4 3 多結晶体のX線回折パターンを測定した。測定結果を図19の中段に示す。図19の下段には、シミュレーションにより求められたH3 2 (PO4 3 のX線回折パターンを示す。さらに、図19の上段には、比較のために、Na3 2 (PO4 3 多結晶体160のX線回折パターンの測定を行った結果も示す。図19に示すように、H3 2 (PO4 3 多結晶体のX線回折パターンはシミュレーションにより求められたH3 2 (PO4 3 のX線回折パターンと一致しており、確かにNASICON型構造を有するH3 2 (PO4 3 多結晶体が得られていることが分かる。
(実施例5)
実施例5は第6の実施の形態に対応するものである。
図20に示すように、コロナ放電装置の処理室内の試料台(図示せず)上にイオン吸収体110として炭素電極180を載せ、この炭素電極180上に第2の被処理体100としてNa3 2 (PO4 3 多結晶体190を載せ、このNa3 2 (PO4 3 多結晶体190上に第3のイオン源130としてK+ 含有リン酸塩ガラス基板200を積層する。炭素電極180は接地する。処理室内を真空ポンプにより十分に低圧に減圧した後、外部から処理室内に水素(H2 )を導入して常圧とする。そして、K+ 含有リン酸塩ガラス基板200の上方に先端がこのK+ 含有リン酸塩ガラス基板200と対向するように設置された針状電極90に電圧を印加することによりコロナ放電を起こさせ、その結果、H2 を電離してH+ 、すなわちプロトンを発生させる。こうして発生したプロトンはK+ 含有リン酸塩ガラス基板200に注入される。K+ 含有リン酸塩ガラス基板200にプロトンが注入されると、K+ 含有リン酸塩ガラス基板200に含まれるK+ がK+ 含有リン酸塩ガラス基板200内を次々と移動し、最終的にK+ 含有リン酸塩ガラス基板200の下面からこの下面に接触したNa3 2 (PO4 3 多結晶体190に注入される。そして、Na3 2 (PO4 3 多結晶体190にプロトンが注入されると、Na3 2 (PO4 3 多結晶体190に含まれるNa+ がNa3 2 (PO4 3 多結晶体190内を次々と移動すると同時にNa+ がK+ で置換され、最終的にNa3 2 (PO4 3 多結晶体190からNa+ が放出されて炭素電極180に吸収される。こうして、Na3 2 (PO4 3 多結晶体190のNa+ がK+ で置換されたK3 2 (PO4 3 多結晶体が製造される。
以上のようにして製造されたK3 2 (PO4 3 多結晶体のX線回折パターンを測定した。測定結果を図21の中段に示す。図21の下段には、シミュレーションにより求められたK3 2 (PO4 3 のX線回折パターンを示す。さらに、図21の上段には、比較のために、Na3 2 (PO4 3 多結晶体190のX線回折パターンの測定を行った結果も示す。図21に示すように、K3 2 (PO4 3 多結晶体のX線回折パターンはシミュレーションにより求められたK3 2 (PO4 3 のX線回折パターンと一致しており、確かにNASICON型構造を有するK3 2 (PO4 3 多結晶体が得られていることが分かる。
(実施例6)
実施例6は第4の実施の形態に対応するものである。
図22に示すように、第2のイオン源50としてのガラス基板80として円形のNa+ 含有リン酸塩ガラス基板(Na:La:Ge:P=25:6:6:63)を用い、第1のイオン源20としてNa+ 含有リン酸塩ガラス基板と同じ円形のAgI多結晶体96を用いる。TaS2 単結晶片70は炭素電極95の上に載せられる。針状電極90に電圧を印加することによるプロトンの発生から、TaS2 単結晶片70にAg+ のインターカレーションが行われるまでの一連の反応を図23に示す。図23に示すように、針状電極90に電圧を印加することにより発生するプロトンがNa+ 含有リン酸塩ガラス基板に注入されることによりこのNa+ 含有リン酸塩ガラス基板中のNa+ がAgI多結晶体96に注入され、それによってAgI多結晶体96中のAg+ がTaS2 単結晶片70に注入される。こうして、TaS2 単結晶片70にAg+ のインターカレーションを行った。
AgI多結晶体96の代わりにCuI多結晶体を用いて上記と同様な方法によりTaS2 単結晶片70にCu+ のインターカレーションを行った。
図24は、TaS2 単結晶片70にAg+ のインターカレーションを行うことにより得られたAgx TaS2 単結晶片を示す。ただし、このAgx TaS2 単結晶片に含まれるAgとTaとの割合(原子数比)はAg:Ta=15.0:34.2であり、x=0.44である。また、図25は、TaS2 単結晶片70にCu+ のインターカレーションを行うことにより得られたCux TaS2 単結晶片を示す。ただし、このCux TaS2 単結晶片に含まれるCuとTaとの割合(原子数比)はCu:Ta=12.4:39.0であり、x=0.32である。
以上のようにして製造されたAgx TaS2 単結晶片およびCux TaS2 単結晶片のX線回折パターンを測定した。測定結果を図26に示す。図26には、比較のために、TaS2 単結晶片70のX線回折パターンの測定を行った結果も示す。図26に示すように、Agx TaS2 およびCux TaS2 を特徴付ける回折ピークが観測されている。
(実施例7)
実施例7は、第4の実施の形態においてイオン源を三段設けたものに対応するものである。
まず、予備的に次のような実験を行った。第2のイオン源50としてのガラス基板80として円形のNa+ 含有リン酸塩ガラス基板(Na:La:Ge:P=25:6:6:63)を用い、第1のイオン源20としてNa+ 含有リン酸塩ガラス基板と同じ円形のCuI多結晶体を用いる。炭素電極95上にBiSSeLaO単結晶片を載せ、その上に順次、CuI多結晶体およびNa+ 含有リン酸塩ガラス基板を載せた。針状電極90に電圧を印加することにより発生するプロトンをNa+ 含有リン酸塩ガラス基板に注入し、それによってこのNa+ 含有リン酸塩ガラス基板中のNa+ をCuI多結晶体に注入し、このCuI多結晶体中のCu+ をBiSSeLaO単結晶片に注入した。
図27は、上述のようにしてBiSSeLaO単結晶片にCu+ を注入した後の、最初、BiSSeLaO単結晶片であったものの走査型電子顕微鏡写真、図28は図27の一部を拡大した走査型電子顕微鏡写真を示す。図27および図28から分かるように、最初BiSSeLaO単結晶片であったものの表面および側面に球状Biが観測される。これは、BiSSeLaO単結晶片にCu+ が注入された結果、Bi3+が放出されて球状に凝集したものと考えられる。最初BiSSeLaO単結晶片であったものは、Bi3+がCu+ またはCu2+で置換された結果、Cux SSeLaO単結晶片になっている。
得られたCux SSeLaO単結晶片のX線回折パターンを測定した。測定結果を図29に示す。図29に示すように、BiSSeLaO単結晶片は図29の下側のX線回折パターンを示すのに対し、測定されたX線回折パターンは図29の上側に示すように、Cux SSeLaO単結晶のものであった。このことから、BiSSeLaO単結晶片にCu+ が注入された結果、BiSSeLaO単結晶片中のBi3+が放出され、Cux SSeLaO単結晶片になったものと考えられる。
単結晶構造解析により、BiSSeLaO単結晶片およびCux SSeLaO単結晶片の構造パラメータの変化を調べた。BiSSeLaOは空間群P4/nmm、格子定数はa=4.1102(2)Å、c=13.6010(7)Åであった。Cux SSeLaOは空間群P4/nmm、格子定数はa=4.03490Å、b=14.21600Åであった。この結果から、BiSSeLaO単結晶片の層状構造を保った状態でBiのサイトがCuに入れ替わりCux SSeLaO単結晶片となったものと考えられる。
図30は、BiSSeLaO単結晶片からBi3+が放出されてCux SSeLaO単結晶片に変換されるときの結晶構造の変化を単結晶構造解析の結果に基づいて模式的に表したものである。
図31の上段は測定されたCux SSeLaO単結晶片のX線回折パターンを、下段はシミュレーションにより求められたCux SSeLaO単結晶のX線回折パターンを示す。図31に示すように、得られたCux SSeLaO単結晶片のX線回折パターンは、c軸配向した単結晶の状態でBi3+がCu+ またはCu2+で置換されていることを示す。
上述のように、Cu+ の注入によりBiSSeLaO単結晶片からBi3+を放出させることができるが、BiSSeLaOと同様な結晶構造を有するBiS2 LaOの多結晶体にCu+ を注入することによっても同様にBi3+を放出させることができる。
実施例7では、上述のように、Cu+ の注入によりBiS2 LaO多結晶体からBi3+を放出させることができることを利用してTaS2 単結晶片70にBi3+のインターカレーションを行った。
すなわち、図32に示すように、第1のイオン源20として円形のBiS2 LaO多結晶体97を用い、第2のイオン源50としてBiS2 LaO多結晶体97と同じ円形のCuI多結晶体98を用い、第2のイオン源50の前段に設けられるイオン源としてのガラス基板80として円形のNa+ 含有リン酸塩ガラス基板(Na:La:Ge:P=25:6:6:63)を用いる。TaS2 単結晶片70は炭素電極95の上に載せられる。針状電極90に電圧を印加することによるプロトンの発生から、TaS2 単結晶片70にBi3+のインターカレーションが行われるまでの一連の反応を図33に示す。図33に示すように、針状電極90に電圧を印加することにより発生するプロトンがNa+ 含有リン酸塩ガラス基板に注入されることによりこのNa+ 含有リン酸塩ガラス基板中のNa+ がCuI多結晶体98に注入され、それによってCuI多結晶体98中のCu+ がBiS2 LaO多結晶体97に注入され、それによって最終的にBiS2 LaO多結晶体97からBi3+が放出されてTaS2 単結晶片70に注入される。こうして、TaS2 単結晶片70にBi3+のインターカレーションを行った。
図34Aは、TaS2 単結晶片70にBi3+のインターカレーションが行われてBix TaS2 単結晶片となったものを示す走査型電子顕微鏡写真、図34Bおよび図34CはBix TaS2 単結晶片の一部を順次拡大した走査型電子顕微鏡写真を示す。解析の結果、Bix TaS2 単結晶片に含まれるBiとTaとの割合(原子数比)はBi:Ta=22.1:33.8であり、x=0.65である。
以上のようにして製造されたBix TaS2 単結晶片のX線回折パターンを測定した。測定結果を図35に示す。図35には、比較のために、TaS2 単結晶片70のX線回折パターンの測定結果も示す。図35に示すように、Bix TaS2 が得られていることが分かる。
(実施例8)
実施例8は第6の実施の形態に対応するものである。
図36に示すように、コロナ放電装置の処理室内の試料台(図示せず)上にイオン吸収体110を兼用する炭素電極180を載せ、この炭素電極180上にAl2 3 製リング210を載せる。次に、このAl2 3 製リング210の中心部に第2の被処理体100としてNa3 2 (PO4 3 粉末220を充填した後、その上に第3のイオン源130としてK+ 含有リン酸塩ガラス基板200を積層する。K+ 含有リン酸塩ガラス基板200の組成は15K2 O・4La2 3 ・31P2 5 である。炭素電極180は接地する。炭素電極180はヒーター230により加熱する。処理室内を真空ポンプにより十分に低圧に減圧した後、外部から処理室内にH2 を導入して常圧とする。そして、K+ 含有リン酸塩ガラス基板200の上方に先端がこのK+ 含有リン酸塩ガラス基板200と対向するように設置された針状電極90に電圧を印加することによりコロナ放電を起こさせ、その結果、H2 を電離してH+ 、すなわちプロトンを発生させる。こうして発生したプロトンはK+ 含有リン酸塩ガラス基板200に注入される。K+ 含有リン酸塩ガラス基板200にプロトンが注入されると、K+ 含有リン酸塩ガラス基板200に含まれるK+ がこのK+ 含有リン酸塩ガラス基板200内を次々と移動し、最終的にK+ 含有リン酸塩ガラス基板200の下面からAl2 3 製リング210の中心部に充填されたNa3 2 (PO4 3 粉末220に注入される。こうしてNa3 2 (PO4 3 粉末220にK+ が注入されると、Na3 2 (PO4 3 粉末220に含まれるNa+ がNa3 2 (PO4 3 粉末220内を次々と移動すると同時にNa+ がK+ で置換され、最終的にNa3 2 (PO4 3 粉末220からNa+ が放出されて炭素電極180に吸収される。こうして、Na3 2 (PO4 3 粉末220のNa+ がK+ で置換されたK3 2 (PO4 3 粉末が得られる。
図37は上述のようにしてNa3 2 (PO4 3 粉末220のNa+ がK+ で置換されてK3 2 (PO4 3 粉末となった後にAl2 3 製リング210をその中心軸を含む平面で切断したものを斜め上から撮影した写真およびAl2 3 製リング210の切断面を拡大した写真である。図37より、Al2 3 製リング210の中心部に存在する粉末層は、厚さ0.53mmの上部、厚さ0.10mmの中間部および厚さ1.20mmの下部の三層からなることが分かる。
Al2 3 製リング210の中心部に存在する粉末層のX線回折パターンを測定した。測定結果を図38に示す。図38の下から三段目、下から二段目および最下段は、それぞれAl2 3 製リング210の中心部に存在する粉末層の上部、中間部および下部のX線回折パターンである。図38の最上段には、シミュレーションにより求められたK3 2 (PO4 3 のX線回折パターンを示す。図38に示すように、Al2 3 製リング210の中心部に存在する粉末層の上部のX線回折パターンはシミュレーションにより求められたK3 2 (PO4 3 のX線回折パターンと良く一致しており、確かにNASICON型構造を有するK3 2 (PO4 3 粉末が得られていることが分かる。また、Al2 3 製リング210の中心部に存在する粉末層の中間部のX線回折パターンは、K3 2 (PO4 3 の回折ピークに加えて、NaV2 (PO4 3 の回折ピークも含んでいる。従って、粉末層の中間部は、主成分のK3 2 (PO4 3 にNaV2 (PO4 3 が混合したものからなると考えられる。さらに、Al2 3 製リング210の中心部に存在する粉末層の下部のX線回折パターンは、NaV2 (PO4 3 を示す。従って、粉末層の下段は、NaV2 (PO4 3 からなると考えられる。
図38の下から四段目に、上記の粉末層の上部のK3 2 (PO4 3 多結晶体をN2 +5%H2 雰囲気中において600℃でアルールしたときのX線回折パターンを示す。図38より、600℃のアニールによりK3 2 (PO4 3 多結晶体の結晶性が向上していることが分かる。
(実施例9)
実施例9は第1の実施の形態に対応するものである。
実施例9においては、第1の被処理体10として1T−TaS2 単結晶片および2H−TaS2 単結晶片を用いる。図39A、図39Bおよび図39Cに1T−TaS2 単結晶片の結晶構造を示す。また、図40A、図40Bおよび図40Cに2H−TaS2 単結晶片の結晶構造を示す。図41に1T−TaS2 単結晶片および2H−TaS2 単結晶片を示す。
1T−TaS2 単結晶片を水素雰囲気中において150℃〜300℃の範囲で温度を変えてアニールした後に測定したX線回折パターンを図42に示す。図42の上部に1T相および2H相のピーク位置を矢印で示す。図42に示すように、アニール温度が200℃程度まではピーク位置が1T相の位置にあり、1T相が保持されていることが分かるが、アニール温度がより高くなるとピーク位置が次第に低角側にシフトし、アニール温度が300℃ではピーク位置は2H相のピーク位置に近づいていることが分かる。すなわち、アニール温度が200℃程度を超えて300℃まで高くなると、1T−TaS2 単結晶片は2H−TaS2 単結晶片に相転移することが分かる。
2H−TaS2 単結晶片に300℃でそれぞれアルカリ金属イオンA+ (A=Li、Na、K)、Cu+ およびAg+ のインターカレーションを行ったときのX線回折パターンを図43、図44および図45に示す。図43、図44および図45より、2H−TaS2 単結晶片にアルカリ金属イオンA+ (A=Li、Na、K)、Cu+ およびAg+ のインターカレーションが行われていることが分かる。
図46は、2H−TaS2 単結晶片に300℃でAg+ のインターカレーションのための処理を継続して行ったときにその途中で測定したX線回折パターンを示す。図46に示すように、インターカレーションのための処理を開始してから一定時間経過後にAgx2TaS2 を特徴付けるピークが観測され、さらに時間が経過した後にAgx1TaS2 (ただし、x1>x2)を特徴付けるピークが観測されている。このように、2H−TaS2 単結晶片へのAg+ のインターカレーションのための処理は継続して行われているにもかかわらず、ある程度の時間経過でAgx2TaS2 を特徴付けるピークが観測され、さらに時間が経過した後にAgx1TaS2 を特徴付けるピークが観測されていることから、2H−TaS2 単結晶片へのAg+ のインターカレーションは連続的に行われるのではなく、段階的に行われることが分かる。
1T−TaS2 は200℃以上で2H−TaS2 に変化するため、1T−TaS2 単結晶片に180℃でそれぞれアルカリ金属イオンA+ (A=Li、Na、K)、Cu+ およびAg+ のインターカレーションを行った。このときのX線回折パターンを図47、図48および図49に示す。図47、図48および図49より、1T−TaS2 単結晶片にアルカリ金属イオンA+ (A=Li、Na、K)、Cu+ およびAg+ のインターカレーションが行われていることが分かる。
図50は、1T−TaS2 単結晶片に180℃でAg+ のインターカレーションを行った後にコロナ放電装置の処理室から取り出した直後のAgx TaS2 単結晶片およびこのAgx TaS2 単結晶片を大気中に1週間放置して大気暴露した後に測定したX線回折パターンを示す。図50に示すように、1週間放置後のAgx TaS2 単結晶片は大気中の水分を吸収して水和した結果、(Agx +H2 O)TaS2 単結晶片となっている。
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、材料、形状、配置等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、形状、配置等を用いてもよい。
10 第1の被処理体
20 第1のイオン源
30 スペーサ
40 マスク
50 第2のイオン源
60 隔壁
70 TaS2 単結晶片
80 ガラス基板
90 針状電極
95 炭素電極
100 第2の被処理体
110 イオン吸収体
120 イオン置換物質
130 第3のイオン源
140 第4のイオン源
150 炭素電極

Claims (13)

  1. 構造の骨格を形成していない第1のイオンを含む第1のイオン源とホストとなる第1の被処理体とを互いに積層または対向させ、針状電極の先端を上記第1の被処理体と反対側から上記第1のイオン源に対向させ、上記第1のイオンと同符号の第2のイオンの生成用の分子を含む雰囲気において、上記針状電極と上記第1の被処理体との間に電圧を印加してコロナ放電を起こさせることにより上記第2のイオンを生成して上記第1のイオン源に注入することにより、上記第1のイオン源に含まれる上記第1のイオンをゲストとして上記第1の被処理体に移動させてインターカレーションを行うインターカレーション物質の製造方法。
  2. 上記第1のイオン源は固体電解質である請求項1記載のインターカレーション物質の製造方法。
  3. 上記第1の被処理体は層状物質またはかご状物質からなる請求項1または2記載のインターカレーション物質の製造方法。
  4. 上記第1の被処理体の表面または上記第1のイオン源と上記第1の被処理体との間に上記第1のイオンに対して阻止能を有するマスクを設け、このマスクを用いて上記第1の被処理体に選択的に、上記第1のイオン源に含まれる上記第1のイオンを移動させる請求項1〜3のいずれか一項記載のインターカレーション物質の製造方法。
  5. 上記第2のイオンを生成する空間と上記第1の被処理体に上記第1のイオンを移動させる空間とを互いに分離する請求項1〜4のいずれか一項記載のインターカレーション物質の製造方法。
  6. 上記第1のイオン源に上記第1のイオンと同価数の上記第2のイオンを注入する請求項1〜5のいずれか一項記載のインターカレーション物質の製造方法。
  7. 上記第1のイオン源に上記第1のイオンと価数が異なる上記第2のイオンを注入する請求項1〜5のいずれか一項記載のインターカレーション物質の製造方法。
  8. 構造の骨格を形成していない第1のイオンを含む第1のイオン源とホストとなる第1の被処理体とを互いに積層または対向させ、上記第1のイオン源の前段に、構造の骨格を形成していない、上記第1のイオンと同価数または価数が異なる同符号の第2のイオンを含む第2のイオン源を設け、針状電極の先端を上記第1の被処理体と反対側から上記第2のイオン源に対向させ、上記第2のイオンと同符号の第3のイオンの生成用の分子を含む雰囲気において、上記針状電極と上記第1の被処理体との間に電圧を印加してコロナ放電を起こさせることにより上記第3のイオンを生成して上記第2のイオン源に注入し、それによって上記第2のイオン源から上記第2のイオンを上記第1のイオン源に注入することにより、上記第1のイオン源に含まれる上記第1のイオンをゲストとして上記第1の被処理体に移動させてインターカレーションを行うインターカレーション物質の製造方法。
  9. 処理室を有し、
    上記処理室内において、構造の骨格を形成していない第1のイオンを含む第1のイオン源とホストとなる第1の被処理体とを互いに積層または対向させ、針状電極の先端を上記第1の被処理体と反対側から上記第1のイオン源に対向させ、上記第1のイオンと同符号の第2のイオンの生成用の分子を含む雰囲気において、上記針状電極と上記第1の被処理体との間に電圧を印加してコロナ放電を起こさせることにより上記第2のイオンを生成して上記第1のイオン源に注入することにより、上記第1のイオン源に含まれる上記第1のイオンをゲストとして上記第1の被処理体に移動させてインターカレーションを行うインターカレーション物質の製造装置。
  10. 構造の骨格を形成していない第4のイオンを含む、NASICON型構造を有する物質に針状電極の先端を対向させ、上記第4のイオンと異なる同符号の第5のイオンの生成用の分子を含む雰囲気において、上記針状電極と上記NASICON型構造を有する物質との間に電圧を印加してコロナ放電を起こさせることにより上記第5のイオンを生成して上記NASICON型構造を有する物質に注入することにより、上記NASICON型構造を有する物質に含まれる上記第4のイオンを上記第5のイオンで置換するイオン置換物質の製造方法。
  11. 構造の骨格を形成していない第4のイオンを含む、NASICON型構造を有する物質の前段に、構造の骨格を形成していない上記第4のイオンと異なる同符号の第5のイオンを含む第3のイオン源を設け、針状電極の先端を上記NASICON型構造を有する物質と反対側から上記第3のイオン源に対向させ、上記第5のイオンと同符号の第6のイオンの生成用の分子を含む雰囲気において、上記針状電極と上記NASICON型構造を有する物質との間に電圧を印加してコロナ放電を起こさせることにより上記第6のイオンを生成して上記第3のイオン源に注入し、それによって上記第3のイオン源から上記第5のイオンを上記NASICON型構造を有する物質に注入することにより、上記NASICON型構造を有する物質に含まれる上記第4のイオンを上記第5のイオンで置換するイオン置換物質の製造方法。
  12. 上記NASICON型構造を有する物質の後段に上記NASICON型構造を有する物質から放出される上記第4のイオンを吸収するイオン吸収体を設ける請求項10または11記載のイオン置換物質の製造方法。
  13. 処理室を有し、
    上記処理室内において、構造の骨格を形成していない第4のイオンを含む、NASICON型構造を有する物質に針状電極の先端を対向させ、上記第4のイオンと異なる同符号の第5のイオンの生成用の分子を含む雰囲気において、上記針状電極と上記NASICON型構造を有する物質との間に電圧を印加してコロナ放電を起こさせることにより上記第5のイオンを生成して上記NASICON型構造を有する物質に注入することにより、上記NASICON型構造を有する物質に含まれる上記第4のイオンを上記第5のイオンで置換するイオン置換物質の製造装置。
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