以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。以下では、一例として、車両制御装置が自動運転車両に適用された実施形態について説明する。自動運転とは、例えば、自動的に車両の操舵または加減速のうち、一方または双方を制御して運転制御を実行することである。上述した運転制御には、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control System)やTJP(Traffic Jam Pilot)、ALC(Automated Lane Change)、CMBS(Collision Mitigation Brake System)、LKAS(Lane Keeping Assistance System)等の運転制御が含まれてもよい。また、自動運転車両は、乗員の手動操作による運転制御(いわゆる手動運転)が実行されてもよい。以下では、左側通行の法規が適用される場合について説明するが、右側通行の法規が適用される場合、左右を逆に読み替えればよい。
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を含む車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池等のバッテリ(蓄電池)の放電電力を使用して動作する。
車両システム1は、例えば、カメラ(撮像部の一例)10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、車室内カメラ90と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。HMI30と、自動運転制御装置100とを組み合わせたものが、「車両制御装置」の一例である。HMI30は、「受付部」の一例である。自動運転制御装置100のうち、第1制御部120および第2制御部160を組み合わせたものは「運転制御部」の一例であり、HMI制御部180は「通知制御部」の一例である。
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度等を認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。また、物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。その場合、車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等のネットワークを利用して、例えば、自車両Mの周辺に存在する他車両、自車両Mを利用する利用者の端末装置、或いは各種サーバ装置と通信する。
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、例えば、車線変更開始スイッチ32と、追い越し開始スイッチ34と、表示部36とを備える。車線変更開始スイッチ32は、例えば、乗員による操舵操作や加減速操作に依らずに、自動運転制御装置100により自車両Mを車線変更させる車線変更制御を実行させるためのスイッチである。操舵操作とは、例えば、運転操作子80に含まれるステアリングホイール82に対する操作である。加減速操作とは、例えば、運転操作子80に含まれるアクセルペダル84やブレーキペダル86に対する操作である。操舵操作および加減速操作としては、例えば、ジョイスティック、ジェスチャ認識装置等も使用され得る。車線変更制御とは、例えば、自車両Mの操舵制御または速度制御のうち、一方または双方を制御して、自車両Mを走行車線(第1車線)から目標の隣接車線(第2車線)に車線変更させるALC制御である。また、車線変更開始スイッチ32は、車線変更の開始操作を受け付けるとともに、自車両Mが車線変更を行う左右何れかの方向を示す情報を受け付けてもよい。
追い越し開始スイッチ34は、例えば、自動運転制御装置100により、自車両Mが前走車両を追い越す追い越し制御を実行させるためのスイッチである。追い越し制御とは、自車両Mの操舵制御または速度制御のうち、一方または双方を制御して、自車両Mを走行車線(第1車線)から前走車両が走行していない隣接車線(第2車線)に車線変更させる第1の車線変更と、自車両Mが前走車両を追い越した後、元の車線(第1車線)に車線変更させる第2の車線変更とを含む制御である。
また、車線変更開始スイッチ32および追い越し開始スイッチ34は、一つのスイッチであってもよい。また、車線変更開始スイッチ32および追い越し開始スイッチ34は、例えば、ボタン等でもよく、表示部36に表示されるGUI(Graphical User Interface)スイッチでもよい。
また、HMI30は、車線変更開始スイッチ32および追い越し開始スイッチ34に加えて、追従走行開始スイッチや車線維持開始スイッチを備えていてもよい。追従走行開始スイッチは、乗員による操舵操作や加減速操作に依らずに、自動運転制御装置100により自車両Mを前走車両に追従させる運転制御を実行させるためのスイッチである。車線維持開始スイッチ22は、乗員による操舵操作に寄らずに、自動運転制御装置100により自車両Mが走行する車線を維持する運転制御を実行させるためのスイッチである。また、HMI30は、自動運転による各種運転制御の開始または終了を切り替えるスイッチを備えていてもよい。
自動運転制御装置100は、例えば、自車両Mの走行状況に応じて、乗員に車線変更制御や追い越し制御を実行するか否かの問い合わせを行い、問い合わせ後に乗員による車線変更開始スイッチ32または追い越し開始スイッチ34のスイッチ操作を受け付け、受け付けられた操作(指示)に対応する運転制御を実行する。また、自動運転制御装置100は、上記の問い合わせを行わずにスイッチ操作を受け付けた場合や運転操作子80への操作を受け付けた場合に、受け付けた操作(指示)に対応する運転制御を実行してもよい。また、自動運転制御装置100は、自車両Mの周辺状況に基づいて、上述した乗員の操作を受け付けずに、車線変更制御や追い越し制御等の運転制御を実行してもよい。また、自動運転制御装置100は、乗員が自分の意思で、自車両Mの運転モードを自動運転から手動運転に切り替えるための所定の操作(例えば、オーバーライド操作)を受け付けた場合に、自動運転から手動運転に切り替える制御を行ってもよい。
表示部36は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の各種表示装置である。表示部36は、例えば、インストルメントパネルのうち運転者に対面する部分に設けられるメーターディスプレイや、インストルメントパネルの中央に設けられるセンターディスプレイ、HUD(Head Up Display)等である。HUDは、例えば、風景に重畳させて画像を視認させる装置であり、一例として、自車両Mのフロントウインドシールドやコンバイナーに画像を含む光を投光することで、乗員に虚像を視認させる。また、表示部36は、例えば、タッチパネルのように乗員の操作を受け付ける操作受付部を備えていてもよい。また、HMI30は、スピーカ、ブザー、タッチパネル、キー等を含んでもよい。
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、ヨーレート(例えば、自車両Mの重心点を通る鉛直軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。車両センサ40により検出した結果は、自動運転制御装置100に出力される。
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キー等を含む。GNSS受信機51は、車両センサ40に設けられてもよい。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、POI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。ナビゲーション装置50は、決定した地図上経路を、MPU60に出力する。
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線数、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、駐車場情報、電話番号情報等が含まれてよい。道路情報とは、例えば、道路の曲率半径(或いは曲率)、幅員、勾配等である。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。第1地図情報54および第2地図情報62は、地図情報として一体に設けられていてもよい。また、地図情報は、記憶部190に記憶されていてもよい。
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82と、アクセルペダル84と、ブレーキペダル86と、ウインカー(方向指示器)を作動させるウインカーレバー88とを備える。また、運転操作子80は、シフトレバー、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含んでもよい。運転操作子80の各操作子には、例えば、乗員による操作子の操作量あるいは操作の有無を検出する操作検出部が取り付けられている。操作検出部は、例えば、ステアリングホイール82の操舵角や操舵トルク、アクセルペダル84やブレーキペダル86の踏込量、ウインカーレバー88の位置等を検出する。そして、操作検出部は、検出結果を自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一方または双方に出力する。
車室内カメラ90は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。車室内カメラ90は、ステレオカメラであってもよい。車室内カメラ90は、自車両Mの室内の任意の箇所に取り付けられる。車室内カメラ90は、車室内に存在する各シートを含む領域を撮像する。これにより、車室内カメラ90により撮像された画像から車室内に存在する乗員の状態等を取得することができる。車室内カメラ90は、上記の領域を周期的に繰り返し撮像してもよく、所定のタイミングで撮像してもよい。車室内カメラ90により撮像された画像は、自動運転制御装置100に出力される。
自動運転制御装置100は、乗員からの指示等に基づいて自動運転を実行する。また、自動運転制御装置100は、乗員による所定の操作によって自動運転から手動運転に切り替える制御を行ってもよい。所定の操作とは、例えば、ステアリングホイール82の操舵角や操舵トルクが閾値以上となる操作や、アクセルペダル84やブレーキペダル86の踏込量が閾値以上となる操作である。
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、HMI制御部180と、記憶部190とを備える。第1制御部120と、第2制御部160と、HMI制御部180とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。上述のプログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD−ROM、メモリカード等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置やカードスロット等に装着されることで自動運転制御装置100の記憶装置にインストールされてもよい。
記憶部190は、上記の各種記憶装置、或いはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部190には、例えば、基準値情報192、プログラム、その他各種情報等が格納される。また、記憶部190には、地図情報(第1地図情報54および第2地図情報62)が格納されていてもよい。基準値情報192には、例えば、自動運転制御装置100による車線変更制御の実行を許可するか否かを判定するための第1基準値Rth1と、自動運転制御装置100による追い越し制御の実行を許可するか否かを判定するための第2基準値Rth2とが含まれる。
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示等がある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。また、第1制御部120は、例えば、MPU60やHMI制御部180等からの指示や、端末装置300からの指示に基づいて自車両Mの自動運転に関する制御を実行する。
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺状況を認識する。例えば、認識部130は、入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺に存在する物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心等)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体が他車両等の移動体である場合、物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
また、認識部130は、例えば、自車両Mの走行車線を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレール等を含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、駐車場の出入口ゲート、停止エリア、乗降エリア、その他の道路事象を認識する。
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置等を、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
認識部130は、例えば、道路情報認識部132と、物体認識部134と、乗員状態認識部136と、基準値調整部138とを備える。これらの機能の詳細については後述する。
行動計画生成部140は、自動運転により自車両Mを走行させる行動計画を生成する。例えば、行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、認識部130による認識結果等に基づいて自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベント、自走駐車イベント等がある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
行動計画生成部140は、例えば、車線変更制御部142と、追い越し制御部144とを備える。これらの機能の詳細については後述する。
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率半径(或いは曲率)に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
図1に戻り、HMI制御部180は、HMI30により、乗員に所定の情報を通知する。所定の情報には、例えば、自車両Mの状態に関する情報や運転制御に関する情報等の自車両Mの走行に関連のある情報が含まれる。自車両Mの状態に関する情報には、例えば、自車両Mの速度、エンジン回転数、シフト位置等が含まれる。また、運転制御に関する情報には、例えば、自動運転による運転制御(例えば、車線変更制御、追い越し制御)の実行の有無や、自動運転を開始するか否かを問い合わせる情報、自動運転による運転制御状況に関する情報等が含まれる。また、所定の情報には、テレビ番組、DVD等の記憶媒体に記憶されたコンテンツ(例えば、映画)等の自車両Mの走行に関連しない情報が含まれてもよい。また、所定の情報には、例えば、自動運転における現在位置や目的地、自車両Mの燃料残量に関する情報が含まれてよい。HMI制御部180は、HMI30により受け付けられた情報を通信装置20、ナビゲーション装置50、第1制御部120等に出力してもよい。
また、HMI制御部180は、通信装置20を介して自車両Mの利用者が利用する端末装置や他の外部装置と通信を行い、所定の情報を端末装置や他の外部装置に送信してもよい。また、HMI制御部180は、端末装置や他の外部装置から取得した情報をHMI30に出力させてもよい。
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のアクセルペダル84から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のブレーキペダル86から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダル86の操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のステアリングホイール82から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
[自動運転による運転制御]
次に、実施形態の自動運転による運転制御について具体的に説明する。図3は、自車両Mの運転制御について説明するための図である。図3の例では、同一方向に進行可能な二つの車線L1、L2を含む道路RD1が示されている。車線L1は、区画線LLおよびCLで区画され、車線L2は区画線CLおよびRLで区画されている。また、図3の例において、自車両Mは、車線L1を速度VMで走行し、他車両m1は、車線L1を速度Vm1で走行しているものとする。
[道路情報認識部]
道路情報認識部132は、自車両Mの周辺状況に含まれる進行方向先の道路情報を認識する。道路情報は、例えば、道路の曲率半径(或いは曲率)、勾配、幅員、車線数等である。また、道路情報は、道路を区画する区画線や、区画線の種類、中央分離帯、交通標識、その他の道路に関する情報等を含んでもよい。道路情報認識部132は、例えば、第1認識部132Aと、第2認識部132Bとを備える。第1認識部132Aは、例えば、自車両Mの周辺を認識する認識部130からの認識結果(例えば、物体認識装置16により認識された認識結果)に基づいて道路情報を認識する。この場合、第1認識部132Aは、例えば、カメラ10により撮像された画像を解析し、画像において隣接画素との輝度差が大きいエッジ点(輝度差が所定値以上のエッジ点)を抽出し、エッジ点を連ねて画像平面における区画線LL、CL、およびRLを認識する。また、第1認識部132Aは、区画線LL、CL、およびRLの各エッジ点の位置を車両座標系に変換することで実際の区画線LL、CL、およびRLの形状を仮想的に設定し、設定された形状に基づいて道路RD1の曲率半径R1(道路RD1が形成する円弧の中心O1から距離)を認識する。曲率半径R1は、例えば、車線間の道路区画線(図3の例では、区画線CL)を基準とする。また、曲率半径R1は、例えば、走行車線(図3の例では、車線L1)の中央を基準としてもよい。
また、第1認識部132Aは、LIDAR14の検出結果を更に加味して道路形状や曲率半径R1等を認識してもよい。また、第1認識部132Aは、区画線LL、CLおよびRLに基づいて、車線数や幅員を認識してもよい。
第2認識部132Bは、自車両Mの位置情報と地図情報とに基づいて道路情報を認識する。この場合、第2認識部132Bは、例えば、GNSS受信機51により得られる自車両Mの位置に基づいて、地図情報(第1地図情報54および第2地図情報62)を参照し、自車両Mの位置に存在する道路RD1を認識する。また、第2認識部132Bは、地図情報から進行方向先の道路RD1の曲率半径R1を認識する。また、道路情報認識部132は、地図情報から道路RD1の車線数や幅員を認識してもよい。
また、道路情報認識部132は、上述した第1認識部132Aおよび第2認識部132Bによる認識に加えて(または代えて)、例えば、車両センサ40に含まれる車速センサにより検出された自車両Mの車速を、ヨーレートセンサにより検出されたヨーレートで除算することで曲率半径R1を認識してもよい。また、道路情報認識部132は、ステアリングホイール82の操舵角に基づいて曲率半径R1を認識してもよい。
[物体認識部]
物体認識部134は、自車両Mの周辺を走行する他車両のうち、自車両Mと同一の車線を走行する前走車両を認識する。前走車両とは、例えば、自車両Mの前方の所定距離(例えば、約50〜200[m]程度)以内に存在する周辺車両である。図3の例において、物体認識部134は、他車両m1を前走車両として認識する。以下では、他車両m1を前走車両m1と称して説明するものとする。また、物体認識部134は、例えば、前走車両m1の車速Vm1や自車両Mに対する相対速度、相対位置を取得してもよい。
[乗員状態認識部]
乗員状態認識部136は、自車両Mの乗員の状態を認識する。例えば、乗員状態認識部136は、自車両Mを運転する乗員が運転操作を行っている状態を認識する。この場合、乗員状態認識部136は、車室内カメラ90で撮像された画像の解析し、画像の特徴情報等を用いたパターンマッチング等により画像に含まれる顔や目の位置や向きを認識する。そして、認識した顔や目の位置や向き等から乗員(例えば、運転操作子80を操作可能な運転者)が周辺監視を行っている状態を認識する。周辺監視を行っている状態とは、例えば、乗員の視線が自車両Mの進行方向または周囲に向いていると予測される状態である。
また、乗員状態認識部136は、乗員がステアリングホイール82を把持している状態を認識してもよい。この場合、乗員状態認識部136は、車室内カメラ90で撮像された画像の解析し、画像の特徴情報等を用いたパターンマッチング等により画像に含まれる乗員の腕や手の位置を認識する。そして、乗員状態認識部136は、認識した乗員の腕や手の位置から乗員の手がステアリングホイール82に接触していると予測される場合に、乗員がステアリングホイール82を把持している状態であると認識する。また、乗員状態認識部136は、ステアリングホイール82に設けられた把持センサの検出結果により乗員がステアリングホイール82を把持している状態を認識してもよい。
また、乗員状態認識部136は、アクセルペダル84やブレーキペダル86における踏込量が閾値以上である場合に、乗員が運転操作を行っている状態であると認識してもよい。
[基準値調整部]
基準値調整部138は、例えば、道路情報認識部132により認識された道路情報や、乗員状態認識部136により認識された乗員の状態、自車両Mの速度VM、車両情報(例えば、車両形状、車種、操舵性能)等に基づいて、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または双方を変更する。変更された情報は、基準値情報192として記憶部190に記憶されてよい。基準値調整部138の機能の詳細については後述する。
[車線変更制御部]
車線変更制御部142は、例えば、自動運転制御装置100による運転制御の実行中に、乗員によるウインカーレバー88の操作により、車線変更先である隣接車線方向を示すウインカー操作を受け付けた場合、または車線変更開始スイッチ32による操作を受け付けた場合に、車線変更制御を実行するか否かを判定する。図3の例の場合、車線変更制御部142は、自車両Mの進行方向先の道路RD1の曲率半径R1が、記憶部190に記憶された基準値情報192に含まれる第1基準値Rth1以上であるか否かを判定する。第1基準値Rth1以上であると判定された場合、車線変更制御部142は、自車両Mを車線L1から車線L2に車線変更させる運転制御の実行を許可する。また、車線変更制御部142は、他の実行条件として、「車線変更先の車線L2が認識されている」、「車線L1と車線L2との間を区画する区画線CLが車線変更の禁止を表す道路標示でない」、「車線変更先の車線L2に障害物が存在しない」、および、「車線変更制御よりも優先順位の高い他の運転制御が行われていない」等の条件を満たす場合に、車線変更制御の実行を許可してもよい。自車両Mを車線L1から車線L2に車線変更させる運転制御は、「第1動作」の一例である。
自車両Mを車線L1から車線L2に車線変更させる運転制御の実行を許可した場合、車線変更制御部142は、図3に示すように車線L2に車線変更を行うための目標軌道K1を生成し、生成した目標軌道K1に沿って自車両Mを走行させる運転制御を第2制御部160に実行させる。なお、車線L1や車線L2に他車両が存在する場合、車線変更制御部142は、他車両との相対位置や相対距離に基づいて、車線変更先とする目標位置(車線変更ターゲット位置)を設定し、他車両に接触することなく、車線変更ターゲット位置に移動するための目標軌道K1を生成する。
また、車線変更制御部142は、道路RD1の曲率半径R1が、第1基準値Rth1未満である場合には、車線変更制御の実行を許可しない。これにより、直線道路の走行時に比して、より正確な操舵制御が要求されると共に進行方向の見通しが悪い急カーブ路における車線変更を抑制することができる。車線変更制御部142による車線変更制御の実行が許可されない場合、HMI制御部180は、車線変更の実行が許可されなかったことを示す情報を含む画像を生成し、生成した画像を表示部36に表示させて乗員に通知してもよい。また、HMI制御部180は、車線変更の実行が許可されなかったことを示す情報を含む音声を生成して、HMI30のスピーカから出力させることで乗員に通知してもよい。これにより、乗員に自車両Mの状況を、より正確に把握させることができる。
[追い越し制御部]
次に、追い越し制御部144について説明する。例えば、自動運転制御装置100は、運転制御の実行中に、自車両Mと前走車両m1との相対速度や車間距離等、周辺の他車両の有無や位置等に基づいて、前走車両m1を追い越した方がよいと判断した場合に、追い越し制御を行うか否かの問い合わせ情報をHMI30から出力する。前走車両m1を追い越した方がよい場合とは、例えば、前走車両m1の速度Vm1が走行車線の法定速度よりも所定速度以上遅い場合や、自車両Mと前走車両m1との車間距離が所定値以下であり、周辺に他車両が存在していない場合等である。乗員は、問い合わせ情報に基づいて、追い越し制御の実行を指示する場合に、追い越し開始スイッチ34の操作を行う。追い越し制御部144は、追い越し開始スイッチ34の操作を受け付けた場合に、前走車両m1を追い越す追い越し制御を実行するか否かを判定する。
図4は、自車両Mの追い越し制御の様子を説明するための図である。図4の例では、図3と同様の道路形状が示されている。追い越し制御部144は、例えば、走行中の道路RD1の曲率半径R1が、記憶部190に記憶された基準値情報192に含まれる第2基準値Rth2以上であるか否かを判定する。第2基準値Rth2は、第1基準値Rth1よりも大きい値である。走行中の道路の曲率半径R1が第2基準値Rth2以上である場合、追い越し制御部144は、追い越し制御の実行を許可する。また、追い越し制御部144は、他の実行条件として、「車線L1および車線L2が認識されている」、「車線L1と車線L2との間を区画する区画線CLが車線変更の禁止を表す道路標示でない」、「車線L1と車線L2との間に障害物が存在しない」、および、「追い越し制御よりも優先順位の高い他の運転制御が行われていない」等の条件を満たす場合に、追い越し制御の実行を許可してもよい。
追い越し制御の実行が許可された場合、追い越し制御部144は、図4に示すように、車線L1から車線L2への第1の車線変更を実行し、第1の車線変更後に車線L1を走行する前走車両m1を追い越し、追い越した後に、車線L2から車線L1への第2の車線変更を実行する目標軌道K2を生成する。そして、追い越し制御部144は、生成した目標軌道K2に沿って自車両Mを走行させる運転制御を第2制御部160に実行させる。上述した自車両Mの運転制御は、「第2動作」の一例である。なお、追い越し制御部144は、第1の車線変更、前走車両m1の追い越し、および第2の車線変更等のそれぞれの制御ごとに目標軌道を生成し、生成した目標軌道に沿って自車両Mを走行させてもよい。このように、第2動作では、一つのスイッチ操作で、前走車両m1を追い越す車線に移動するための第1の車線変更と、追い越した後に元の車線L1に戻るための第2の車線変更が実行される。
また、追い越し制御部144は、道路RD1の曲率半径R1が、第2基準値Rth2未満である場合には、追い越し制御の実行を許可しない。これにより、直線道路の走行時に比して、より正確な操舵制御が要求されると共に進行方向の見通しが悪い急カーブ路における追い越し制御を抑制することができる。追い越し制御部144による追い越し制御の実行が許可されない場合、HMI制御部180は、追い越し制御の実行が許可されなかったことを示す情報を含む画像を生成し、生成した画像を表示部36に表示させて乗員に通知してもよい。また、HMI制御部180は、追い越し制御の実行が許可されなかったことを示す情報を含む音声を生成して、HMI30のスピーカから出力させることで乗員に通知してもよい。これにより、乗員に自車両Mの状況を、より正確に把握させることができる。
上述したように、車線変更制御の実行を許可する曲率半径の基準値である第1基準値Rth1と、追い越し制御の実行を許可する曲率半径の基準値である第2基準値Rth2とを用いて、運転制御を行うことで、より適切な運転制御を実行することができる。
また、追い越し制御部144は、追い越し制御による第1の車線変更により、自車両Mを車線L1から車線L2に車線変更させた後に、道路RD1の曲率半径が第1基準値Rth1未満に変化した場合に、車線L1に戻る第2の車線変更を行わずに、自車両Mに車線L2の走行を継続させてもよい。
図5は、道路形状の変化に基づく追い越し制御の実行の様子について説明するための図である。図5の例において、道路RD1における地点P1から地点P2までの区間(区間P1−P2)における道路の曲率半径をR1とし、地点P2から地点P3までの区間(区間P3−P4)における道路の曲率半径(道路RD1が形成する円弧の中心O2から距離)をR2とし、地点P3から地点P4までの区間(区間P3−P4)における道路の曲率半径(道路RD1が形成する円弧の中心O3から距離)をR3とする。また、図5の例において、曲率半径R1は第2基準値Rth2以上であり、曲率半径R2は第1基準値Rth1未満であり、曲率半径R3は第1基準値Rth以上であるものとする。また、自動運転制御装置100は、自車両Mが区間P1−P2を走行中に追い越し開始スイッチ34による追い越し操作を受け付けたものとする。
追い越し制御部144は、追い越し開始スイッチ34の操作を受け付けると道路情報認識部132により認識された走行中の道路RD1の曲率半径R1と、第2基準値Rth2とを比較し、曲率半径R1が第2基準値Rth2以上であるため、車線L1から車線L2への第1の車線変更と、前走車両m1の追い越しを行う目標軌道K3を生成する。そして、追い越し制御部144は、目標軌道K3に沿って自車両Mを走行させる運転制御を実行させる。
自車両Mが前走車両m1を追い越した時点において、自車両Mは、区間P2−P3を走行しているものとする。区間P2−P3の曲率半径R2は、第1基準値Rth未満であるため、追い越し制御部144は、車線L2の走行を継続させる目標軌道K4を生成し、生成した目標軌道K4に沿って自車両Mを走行させる。なお、追い越し制御部144は、車線L2の走行の継続を開始してから所定時間が経過、または、車線L2の走行の継続を開始した地点から所定距離を走行するまで追い越し制御部144による制御を継続させる。所定時間は、固定時間でもよく、道路情報、自車両Mの周辺環境、自車両Mの速度、渋滞の度合等に基づいて変更可能な時間でもよい。また、所定距離は、固定距離でもよく、道路情報、自車両の周辺環境等に基づいて変更可能な距離でもよい。
そして、車線L2の走行の継続を開始してから所定時間が経過、または、車線L2の走行の継続を開始した地点から所定距離を走行する前に、自車両Mが地点P3を通過したものとする。この場合、自車両Mが走行する道路RD1の曲率半径R3は第1基準値Rth1以上となる。そのため、追い越し制御部144は、車線L2から元の車線L1に戻る第2の車線変更を行うための目標軌道K5を生成し、生成した目標軌道K5に沿って自車両Mを走行させる自動運転を第2制御部160に実行させる。
なお、追い越し制御部144は、曲率半径R3が第1基準値Rth1以上である場合に第2の車線変更を行ったが、これに代えて、曲率半径R3が第2基準値Rth2以上である場合に、第2の車線変更を行ってもよい。追い越し制御の実行が許可される第2基準値Rth2を用いて第2の車線変更の実行を判断することで、より緩やかなカーブ路で第2の車線変更を実行することができる。
また、追い越し制御部144は、車線L2の走行の継続を開始してから所定時間が経過または、車線L2の走行の継続を開始した地点から所定距離を走行した場合に、HMI制御部180により追い越し制御が継続できない(または第2の車線変更が実行できない)ことを示す情報をHMI30に出力させ、追い越し制御を終了する。これにより、乗員に、運転制御の状況を、より正確に把握させることができる。
また、追い越し制御部144は、上述した制御に代えて、車線L2の走行の継続を開始してから所定時間が経過、または、車線L2の走行の継続を開始した地点から所定距離を走行した場合に、道路RD1の曲率半径が第1基準値Rth1以上であるか否かに拘わらず、自車両Mを車線L2から元の車線L1に車線変更させてもよい。
また、上述した車線変更制御部142および追い越し制御部144は、例えば、第1認識部132Aにより認識された自車両Mの進行方向先の道路形状と、第2認識部132Bにより認識された自車両Mの進行方向先の道路形状とが異なる場合に、乗員による車線変更や追い越し制御の実行指示を受け付けた場合であっても、上述した車線変更制御および追い越し制御の実行を抑制する。これにより、道路形状の認識状態が不安定な状況下での車線変更や追い越し制御の実行を抑制することができ、より適切な運転制御を実行することができる。車線変更や追い越し制御の実行が抑制された場合、HMI制御部180は、道路形状の認識結果により車線変更や追い越し制御の実行が抑制されたことを示す情報をHMI30から乗員に通知してもよい。なお、上述の「道路形状が異なる場合」とは、例えば、道路形状の類似度が閾値以下である場合である。したがって、車線変更制御部142および追い越し制御部144は、二つの道路形状の差異が許容誤差の範囲内である場合には、乗員の指示による車線変更制御および追い越し制御を実行する。
[基準値調整部による基準値の調整]
次に、基準値調整部138による第1基準値Rth1または第2基準値Rth2の調整について具体的に説明する。基準値調整部138は、例えば、乗員状態認識部136による認識結果に基づいて、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を変更する。例えば、基準値調整部138は、乗員状態認識部136により乗員がステアリングホイール82を把持している状態であるか否かに応じて第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を変更する。この場合、基準値調整部138は、乗員状態認識部136により乗員がステアリングホイール82を把持している状態であると認識された場合に、把持していない場合に比して、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を小さく変更する。乗員がステアリングホイール82を把持している場合には、すぐに手動運転に切り替えることができるため、把持していない場合よりも急なカーブ路での車線変更や追い越し制御を実行させることができる。
また、基準値調整部138は、乗員状態認識部136により認識された乗員の状態が、自車両Mの周辺監視を行っている状態であるか否かに応じて第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を変更してもよい。この場合、基準値調整部138は、乗員状態認識部136により乗員が周辺監視を行っている状態であると認識された場合に、周辺監視を行っていない場合に比して、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を小さく変更する。乗員が周辺監視を行っている場合には、自車両Mの挙動や周辺の状況を正確に把握することができるため、状況に応じてすぐに手動運転に切り替えることができる。そのため、周辺監視を行っていない場合よりも急なカーブ路での車線変更や追い越し制御を実行させることができる。
なお、基準値調整部138は、例えば、乗員状態認識部136により乗員がステアリングホイール82を把持している状態であり、且つ、乗員が周辺監視を行っている状態である場合には、第1基準値Rth1および第2基準値Rth2を小さく変更し、何れが一つの状態のみを満たす場合には、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2の一方を小さく変更してもよい。また、基準値調整部138は、上述した状態を満たす時間が所定時間未満の場合には、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2の一方を小さく変更し、所定時間以上の場合に、第1基準値Rth1および第2基準値Rth2の双方を小さく変更してもよい。
また、基準値調整部138は、自車両Mの速度VMまたは車両情報に基づいて、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を設定してもよい。例えば、基準値調整部138は、速度VMが遅いほど第1基準値Rth1または第2基準値Rth2を小さく設定する。また、基準値調整部138は、例えば、車両情報に含まれる自車両Mの形状が小さいほど第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を小さく設定する。また、基準値調整部138は、例えば、車両情報に含まれる自車両Mの操舵性能がよいほど、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を小さく設定する。また、基準値調整部138は、例えば、車両情報に含まれる自車両Mの車種に基づいて、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を設定してもよい。
また、基準値調整部138は、自動運転制御装置100が実行している運転制御の度合に応じて、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を変更してもよい。この場合、基準値調整部138は、例えば、自動運転制御装置100が実行している運転制御の度合が小さいほど(実行中の運転制御が少ないほど)、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を小さく設定する。他の運転制御が少ない場合には制御における処理量が少なくなるため、車線変更や追い越し制御の実行に処理を集中させることができ、急なカーブ路での車線変更や追い越し制御であっても、適切な運転制御を実行することができる。
また、基準値調整部138は、道路情報認識部132により認識された道路形状に基づいて、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を変更してもよい。例えば、基準値調整部138は、自車両Mの進行方向先の道路が右側にカーブするか、または左側にカーブするかによって、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方に異なる値を設定する。また、基準値調整部138は、自車両Mの進行方向先の道路の勾配によって、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2のうち、一方または両方を変更してもよい。
基準値調整部138は、第1基準値Rth1および第2基準値Rth2を変更する場合、第1基準値Rth1の変化量と、第2基準値Rth2の変化量とを異ならせてもよく、同一にしてもよい。また、基準値調整部138は、乗員による操作により変化量を設定してもよい。また、基準値調整部138は、第1基準値Rth1または第2基準値Rth2を変更してもよいか否かの問い合わせを乗員に行い、変更してもよいことを示す操作を受け付けた基準値のみ、上述した調整を行ってもよい。上述した基準値調整を行うことにより、乗員の状態や道路情報、車両情報等に応じて、より適切に運転制御の実行の許否を判定することができる。
[処理フロー]
図6は、実施形態の自動運転制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、主に上述した車線変更制御および追い越し制御を含む運転制御の処理について説明する。また、以下の処理では、乗員からの操作指示によって、運転制御が実行される例について説明するが、乗員からの操作指示に依らず、自動運転制御装置100による制御(システム要求)に基づいて、以下の処理が実行されてもよい。
図6の処理において、自動運転制御装置100は、HMI30等により運転制御指示を受け付け(ステップS100)、受け付けた指示が車線変更制御か否かを判定する(ステップS110)。車線変更制御であると判定された場合、車線変更制御部142は、道路情報認識部132により認識された自車両Mの進行方向先の道路情報を取得し(ステップS120)、取得した進行方向先の道路の曲率半径が第1基準値以上であるか否かを判定する(ステップS130)。第1基準値以上であると判定された場合、車線変更制御部142は、車線変更制御の実行を許可し(ステップS140)、車線変更を実行するための目標軌道を生成し、生成した目標軌道に沿って自車両Mを走行させる車線変更制御を実行する(ステップS150)。
また、ステップS130の処理において、道路の曲率半径が第1基準値以上でないと判定された場合、車線変更制御部142は、車線変更制御の実行を許可せずに、HMI制御部180に車線変更を実行できないことを乗員に通知する制御を実行させる(ステップS160)。
また、ステップS110の処理において、受け付けた指示が車線変更制御でないと判定された場合、自動運転制御装置100は、受け付けた指示が追い越し制御であるか否かを判定する(ステップS170)。追い越し制御であると判定された場合、追い越し制御部144は、道路情報認識部132により認識された自車両Mの進行方向先の道路情報を取得し(ステップS180)、取得した進行方向先の道路の曲率半径が第2基準値以上であるか否かを判定する(ステップS190)。第2基準値以上であると判定された場合、追い越し制御部144は、追い越し制御の実行を許可し(ステップS200)、追い越し制御を実行させる(ステップS210)。ステップS210の処理の詳細については後述する。
また、ステップS190の処理において、道路の曲率半径が第2基準値以上でないと判定された場合、車線変更制御部142は、追い越し制御の実行を許可せずに、HMI制御部180に追い越し制御が実行できないことを乗員に通知する制御を実行させる(ステップS220)。
また、ステップS170の処理において、受け付けた指示が追い越し制御でないと判定された場合、自動運転制御装置100は、指示された運転制御を実行する(ステップS230)。ステップS230の処理で実行される運転制御としては、例えば、車線維持制御や追従走行制御が含まれる。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。
図7は、ステップS210の追い越し制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7の例において、追い越し制御部144は、走行車線(第1車線)から隣接車線(第2車線)への車線変更(第1の車線変更)を実行する(ステップS211)。次に、追い越し制御部144は、追い越し対象の前走車両との相対速度や相対距離等に基づいて、速度制御(加速等)を行い、前走車両を追い越す運転制御を実行する(ステップS212)。
次に、追い越し制御部144は、道路情報認識部132により認識された自車両Mの進行方向先の道路情報を取得し(ステップS213)、取得した進行方向先の道路の曲率半径が第1基準値以上であるか否かを判定する(ステップS214)。道路の曲率半径が第1基準値以上であると判定された場合、追い越し車線(第2車線)から元の車線(第1車線)に戻るための車線変更を実行する(ステップS215)また、道路の曲率半径が第1基準値以上でないと判定された場合、追い越し制御部144は、追い越し車線の走行を継続させる目標軌道を生成し、生成した目標軌道に沿って自車両Mを走行させる運転制御を実行する(ステップS216)。
次に、追い越し制御部144は、自車両Mが追い越し車線の走行の継続を開始した地点から所定距離を走行したか否か、または自車両Mが追い越し車線の走行の継続を開始した時点から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS217)。所定距離を走行していない、且つ所定時間が経過していないと判定された場合、ステップS214の処理に戻る。また、所定距離を走行、または所定時間が経過したと判定された場合、追い越し制御部144は、HMI制御部180に元の車線(第1車線)に車線変更できないことを乗員に通知する制御を実行させる(ステップS218)。ステップS215またはステップS218の処理後、追い越し制御を終了する(ステップS219)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。なお、ステップS218およびステップS219の処理が実行された場合には、自車両Mは、追い越し車線を走行している状態になる。この場合には、乗員から第2車線から第1車線への車線指示を受け付けることで、元の車線に車線変更することができる。
上述した実施形態によれば、例えば、自動運転制御装置100において、自車両Mの周辺状況を認識する認識部130と、自車両Mの運転制御を行う運転制御部(第1制御部120、第2制御部160)と、を備え、運転制御部は、周辺状況に含まれる自車両Mの進行方向の道路の曲率半径が、第1基準値以上である場合に第1動作の実行を許可し、第1基準値よりも大きい第2基準値以上である場合に第2動作の実行を許可し、第1動作は、自車両Mを第1車線から第2車線に車線変更させる動作であり、第2動作は、自車両Mが、第1車線から第2車線に車線変更した後、自車両Mに第2車線から1車線に車線変更させる動作であることにより、道路形状に基づいて、より適切な運転制御を実行することができる。また、実施形態によれば、曲率半径が小さい(曲率が大きい)場合に、車線変更や追い越し制御の実行が抑制されるため、運転者との親和性を向上させることができるとともに、カーブ走行時の減速等によって、追い越し制御が完了できないといった状況を抑制することができる。
[変形例]
上述した実施形態では、自車両Mの進行方向先の道路の曲率半径に基づいて、第1動作および第2動作の実行の許否を判定したが、曲率半径に代えて、曲率を用いてもよい。曲率は、曲率半径の逆数により導出される。したがって、曲率を用いる場合には、第1基準値Rth1や第2基準値Rth1の逆数により導出された曲率用の基準値を用いるとともに、逆数に応じて大小関係を設定することで、上述した実施形態と同様の処理を行うことができる。
[ハードウェア構成]
図8は、実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、自動運転制御装置100のコンピュータは、通信コントローラ100−1、CPU100−2、ワーキングメモリとして使用されるRAM100−3、ブートプログラム等を格納するROM100−4、フラッシュメモリやHDD等の記憶装置100−5、ドライブ装置100−6等が、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ100−1は、自動運転制御装置100以外の構成要素との通信を行う。ドライブ装置100−6には、光ディスク等の可搬型記憶媒体(例えば、コンピュータ読み込み可能な非一時的記憶媒体)が装着される。記憶装置100−5には、CPU100−2が実行するプログラム100−5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)等によってRAM100−3に展開されて、CPU100−2によって実行される。CPU100−2が参照するプログラム100−5aは、ドライブ装置100−6に装着された可搬型記憶媒体に格納されていてもよいし、ネットワークを介して他の装置からダウンロードされてもよい。これによって、自動運転制御装置100の各構成要素のうち一部または全部が実現される。
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
自車両の周辺状況を認識し、
前記自車両の運転制御を行い、
前記周辺状況に含まれる前記自車両の進行方向の道路の曲率半径が、第1基準値以上である場合に第1動作の実行を許可し、
前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上である場合に第2動作の実行を許可し、
前記第1動作は、前記自車両を第1車線から第2車線に車線変更させる動作であり、
前記第2動作は、前記自車両が、前記第1車線から前記第2車線に車線変更した後、前記自車両に前記第2車線から前記第1車線に車線変更させる動作である、
ように構成されている、車両制御装置。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。