以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、生体情報測定用電極の中心軸Jに平行な方向をZ軸方向とし、中心軸Jに直交する面において、互いに直交する2つの方向のうち一方をX軸方向とし、他方をY軸方向とする。以下の説明において、+Z軸方向を上といい、−Z軸方向を下という場合がある。
<生体情報測定用電極>
一実施形態に係る生体情報測定用電極について説明する。本実施形態では、一例として、生体の一部である頭皮または額に生体情報測定用電極を接触させて生体情報の測定を行う場合について説明する。本実施形態に係る生体情報測定用電極は、生体の一部に接触させて生体情報の測定を行うものであればよく、例えば、頭皮や額以外の皮膚などの一部に接触させて生体情報の測定を行うものでもよい。
図1は、一実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す斜視図であり、図2は、一実施形態に係る生体情報測定用電極の外観を示す他の斜視図であり、図3は、図1のI−I断面図である。なお、図1〜図3中の一点鎖線は、生体情報測定用電極の中心軸Jを示す。中心軸Jとは、生体情報測定用電極を生体に設置した際の中心となる軸である。図1〜図3に示すように、生体情報測定用電極10は、基体部20と、複数(図1〜図3では、8個)の電極脚30と、面状部材40Aと、支持部材50とを備えて構成されている。
[基体部]
基体部20は、平面視(+Z軸方向から見たとき)において、図1に示すように、略円形に形成されている。
基体部20を形成する材料としては、導電性エラストマー、絶縁材料、カーボン材料、金属、または導電性セラミックスなどを用いることができる。なお、絶縁材料とは、導電性がないか導電性が極めて小さい材料をいう。本実施形態では、基体部20は、導電性エラストマーで形成されている。
基体部20を形成する材料として用いられる導電性エラストマーは、その種類は特に限定されるものではない。導電性エラストマーは、例えば、導電性フィラーをゴム弾性を有する非導電性エラストマーに一定の配合割合で均一に混合することで得られる。基体部20は、ゴム弾性を有する非導電性エラストマーを含んで成形されることで、低い弾性率を有する。そのため、生体情報測定用電極10の使用時に、基体部20は頭皮や額など生体の凹凸形状に追従して変形し易いので、生体への接触を確実にできると共に、生体への押圧力を緩和できる。
上述の導電性フィラーとしては、導電性を有していれば、その種類は特に限定されるものではない。例えば、導電性フィラーとしては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンまたはカーボンファイバー(炭素繊維)などのカーボン材料;アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、またはニッケルなどの金属;いわゆるABO3型のペロブスカイト型複合酸化物などの導電性セラミックスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。耐久性の点から、カーボン材料を用いることが好ましい。
上述の非導電性エラストマーとしては、例えば、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリルニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、またはフッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、耐久性などの点から、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
また、導電性エラストマーではない絶縁材料としては、上記の非導電性エラストマー、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、または液晶ポリマー(LCP)などを用いることができる。
基体部20を形成する材料として用いられるカーボン材料としては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンまたはカーボンファイバー(炭素繊維)などを用いることができる。
基体部20を形成する材料として用いられる金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、またはニッケルなどを用いることができる。
基体部20を形成する材料として用いられる導電性セラミックスとしては、いわゆるABO3型のペロブスカイト型複合酸化物などを用いることができる。
基体部20は、平面視(+Z軸方向から見た時)において基体部20の略中央部(中心軸Jが通る位置)に、図3に示すように、Z軸方向に貫通した挿入孔21を有する。挿入孔21の内周面には支持部材50と螺合するねじ溝が形成されている。
[電極脚]
図1および図2に示すように、電極脚30は、基体部20の裏面に環状に8本(図1および図2参照)設けられている。電極脚30は、基体部20の裏面に対して直角となるように、−Z軸方向に向けて支持されている。電極脚30は基体部20と一体に成形されている。電極脚30の数は、基体部20の大きさなどに基づいて設計される。
電極脚30は、円柱状に形成されており、その先端に生体と接触可能な先端部301を有する。先端部301は、先端に丸みがある曲面形状に形成されており、本実施形態では、ドーム形状に形成されている。なお、先端部301は、ドーム形状に形成されている部分であり、生体と接触する先端と、生体と接触する可能性のある、先端の周辺領域のことを含む。先端部301の形状は、他の曲面形状として、丸みがある円錐形状でもよいし、生体に接触できる端面を有する平坦形状であってもよい。
電極脚30は、導電性を有する材料で形成され、上記の、基体部20を形成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。電極脚30は、基体部20と同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
(導電層)
電極脚30は、その先端部301の表面に導電層を有する。本実施形態では、基体部20が導電性エラストマーを用いてされているので、基体部20および支持部材50との導通は確保されている。そのため、本実施形態では、導電層は、先端部301の表面にのみ形成する。
導電層は、導電性高分子を含有することが好ましい。導電性高分子としては、例えば、ポリ3、4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(ポリ4−スチレンサルフォネート;PSS)をドープしたPEDOT/PSS、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、またはポリピロールなどを用いることができる。中でも、生体との接触インピーダンスがより低く、高い導電性を有する点から、PEDOT/PSSを用いることが好ましい。
導電層の厚さは、1〜5μmであることが好ましい。この範囲内であれば、導電性を有することができ、生体から伝達される電気信号を安定して通電させることができる。なお、導電層の厚さとは、導電層の厚さの平均値をいう。例えば、導電層の断面において、任意の場所で数カ所(例えば、6か所程度)測定した時、これらの測定箇所の厚さの平均値をいう。また、本実施形態において、厚さとは、導電層の接触面に対して垂直方向の層の長さをいう。
[面状部材]
図1および図2に示すように、面状部材40Aは、円盤状に形成されており、面状部材40Aの生体である額と向き合う主面401(図2を参照)は、額の皮膚に対して面接触が可能である。主面401の皮膚との接触面積は、8個の電極脚30の皮膚との接触面積の和よりも大きいのが好ましい。
面状部材40Aは、−Z軸方向から見た時に(図2を参照)、基体部20の裏面に環状に配置された、複数の電極脚30により形成される外側包絡円よりも、外側に大きい外形状を有するように形成されている。
面状部材40Aは、導電性を有する。面状部材40Aは、導電性を有する材料で形成され、上記の、基体部20を形成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。面状部材40Aは、基体部20と同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
面状部材40Aは、主面401に8個(図2参照)の貫通孔41を有する。貫通孔41は、−Z軸方向から見たときに、基体部20の裏面に配置された電極脚30の位置と同じ位置に、面状部材40Aに環状に配設されている。貫通孔41は、電極脚30が貫通可能な大きさを有している。貫通孔41の数は、電極脚30の数に合うように設計される。
面状部材40Aは、基体部20と向き合う主面402の略中央部(中心軸Jが通る位置)に、図3に示すように、Z軸方向に形成された溝部402aを有し、溝部402aの周囲に、係合用溝部402bを有する。係合用溝部402bには、支持部材50の先端部の窪みに、支持部材50に対して回転自在に嵌め込まれるワッシャー43が収容される。ワッシャー43は、支持軸体51Aの先端部に形成された窪みに嵌め込まれた後、係合用溝部402bに溶接や接着剤などの接合剤を用いて固着されている。溝部402aには、支持部材50の先端部が収容される。これにより、溝部402aには、支持部材50の先端部が回転自在に、かつ溝部402aから抜け出さないように、支持部材50が保持されている。よって、面状部材40Aは、支持部材50と回転自在に連結される。
[支持部材]
図3および図4に示すように、支持部材50は、面状部材40Aを基体部20と生体との間で上下方向に移動可能に支持している。支持部材50は、面状部材40Aに係合された支持軸体51Aで構成されている。支持軸体51Aはネジ軸となっており、支持軸体51Aは、基体部20の挿入孔21のネジ溝に螺合して係合している。支持部材50は、その先端部にワッシャー43が嵌め込まれる窪みを有する。ワッシャー43は支持軸体51Aの先端部の窪みに嵌め込まれた後、係合用溝部402bに溶接や接着剤などの接合剤を用いて接合される。これにより、支持部材50は、面状部材40Aと係合する。基体部20の挿入孔21をガイドとして支持軸体51AをZ軸方向に動かし、基体部20が上下方向に移動することで、基体部20と生体との間を面状部材40Aは相対的に移動する。
支持部材50は、導電性を有する。支持部材50は、導電性を有する材料で形成され、上記の、基体部20を形成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。支持部材50は、基体部20と同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
図4および図5に示すように、支持部材50の先端部が−Z軸方向に移動することで、面状部材40Aは、電極脚30の先端部301よりも−Z軸方向に移動できる。
図1〜図3に示すように、支持部材50は、支持軸体51Aの上方(+Z軸方向)に保持部511を有する。保持部511の外周には、金属層52が形成されている。金属層52としては、金、銀、または銅などの金属が好適に用いられる。なお、金属層52は、支持軸体51Aの上面に設けてもよい。また、保持部511の外周には、金属層52以外に、導電性を有する材料により形成された層を設けてもよい。
生体情報測定用電極10では、基体部20、電極脚30、面状部材40A、および支持部材50は、いずれも、導電性を有する。電極脚30は基体部20を介して支持部材50と電気的に接続されると共に、面状部材40Aは支持部材50と電気的に接続されている。そのため、電極脚30の先端部301から支持部材50の保持部511にかけて電気的に接続されると共に、面状部材40Aの主面401から支持部材50の保持部511にかけて電気的に接続されることになる。
生体情報測定用電極10の製造方法の一例について説明する。基体部20の挿入孔21に支持部材50を挿入した後、支持部材50の先端部の窪みにワッシャー43を回転自在に嵌め込む。その後、支持部材50の先端部を面状部材40Aの主面402の溝部402aに収容し、ワッシャー43を係合用溝部402bに固着することで、支持部材50の先端部が面状部材40Aの主面402の溝部402aに回転自在に固定される。これにより、生体情報測定用電極10が得られる。
基体部20、電極脚30、面状部材40A、および支持部材50は、それぞれ、これらを形成する材料(樹脂や金属など)を用いて成形することで得られる。基体部20、電極脚30、面状部材40A、および支持部材50は、圧縮成形(コンプレッション成形)、射出成形(インジェクション成形)、または押出成形(トランスファー成形)など公知の成形方法で、所望の形状を有する基体部20、電極脚30、面状部材40A、および支持部材50をそれぞれ成形することができる。これらの成形法を用いる際、基体部20、電極脚30、面状部材40A、および支持部材50の形状に対応した金型が用いられる。
生体情報測定用電極10は、支持部材50を基体部20の挿入孔21で任意の位置で支持することで、面状部材40Aを任意の位置に保持できる。これにより、面状部材40Aの位置は、電極脚30の先端部301よりも+Z軸側か−Z軸側に調整できる。
次に、生体情報測定用電極10の操作方法の一例について説明する。
生体情報測定用電極10は、支持部材50を回転して、面状部材40Aを+Z軸方向に、電極脚30の軸方向に沿って電極脚30の先端部301側から基体部20の裏面に向かって移動させる。これにより、図3に示すように、面状部材40Aを、電極脚30の先端部301よりも+Z軸方向に位置するように調整できる。一方、支持部材50を回転して、面状部材40Aを−Z軸方向に、電極脚30の軸方向に沿って基体部20の裏面側から電極脚30の先端部301側に移動させる。これにより、図4および図5に示すように、面状部材40Aは、電極脚30の先端部301よりも−Z軸方向に位置するように調整できる。
これにより、頭髪などの毛がある部分に用いる場合には、複数の電極脚30を面状部材40Aよりも患者側に出して(図3の状態)、電極脚30で毛を掻き分けながら、電極脚30と皮膚(頭皮)表面とを接触させて測定する。額など毛(頭髪)のない部分に用いる場合には、面状部材40Aを電極脚30の先端部301よりも患者側に出して(図5の状態)、面状部材40Aと皮膚表面とを接触させて測定することができる。
次に、生体情報測定用電極10を備えた検査装置を用いて患者などの脳波を測定する場合の一例について説明する。図6は、生体情報測定用電極10を備えた検査装置を用いて患者などの脳波を測定する一例を示す図である。
図6に示すように、検査装置60は、生体情報測定用電極10と、患者などの頭部にかぶせるキャップ61と、導線62と、測定部63と、表示部64とを有する。
キャップ61は、患者などの頭部および額65を覆うように帽子またはヘルメットの形状を有し、合成樹脂や布などで形成される。生体情報測定用電極10が、キャップ61に所定間隔で複数カ所(例えば、21か所)に設けられ、患者などの頭皮66や額65の任意の場所に取り付けられる。このとき、頭皮66の場所に取り付けられる生体情報測定用電極10は、電極脚30(図1〜図3参照)の先端部301を面状部材40A(図1〜図3参照)より頭皮66側に移動させて(図3の状態)、電極脚30を患者などの頭皮66に接触させる。一方、額65の場所に取り付けられる生体情報測定用電極10は、面状部材40Aを電極脚30の先端部301よりも額65側に移動させて(図5の状態)、面状部材40Aを患者などの額65に接触させる。
また、導線62は、例えば、リード線などであり、一端が保持部511の表面に設けた金属層52に接続され、他端が測定部63に接続される。測定部63は、電源部631、および額65からの生体情報信号(電気信号)を解析して、生体情報として脳波を測定する信号解析部632を有する。表示部64は、モニターであり、信号解析部632で解析された脳波641を表示する。脳波641は、その周波数により、例えば、α波(8〜13Hz)、β波(14〜30Hz)、θ波(4〜7Hz)、δ波(0.5〜3Hz)に分類される。
そして、電源部631を入れて、測定を開始すると、頭皮66からの電気信号が電極脚30(図1〜図3参照)の先端部301(図1〜図3参照)に伝えられる。伝達された電気信号は、先端部301(図1〜図3参照)から、電極脚30(図1〜図3参照)、基体部20(図1〜図3参照)、および支持部材50(図1〜図3参照)を介して、保持部511(図3参照)に伝えられる。保持部511(図3参照)に伝えられた電気信号は、金属層52、導線62、および測定部63の順に伝えられる。信号解析部632は、伝えられた電気信号を解析して、表示部64に脳波(例えば、α波、β波、θ波など)641を表示する。
同様にして、額65からの電気信号が額65から面状部材40A(図1〜図3参照)に伝えられる。伝達された電気信号は、面状部材40A(図1〜図3参照)から、支持部材50(図1〜図3参照)を介して、保持部511(図3参照)に伝えられる。保持部511(図3参照)に伝えられた電気信号は、保持部511(図3参照)から、金属層52、導線62、および測定部63の順に伝えられる。信号解析部632は、伝えられた電気信号を解析して、表示部64に脳波(例えば、α波、β波、θ波など)641を表示する。
以上のように構成された、生体情報測定用電極10は、基体部20と、8個(図2参照)の電極脚30と、面状部材40Aと、支持部材50とを有している。面状部材40Aは、生体に対して面接触が可能であり、電極脚30よりも生体との接触面積が大きい、導電性を有する部材である。支持部材50は、面状部材40Aを基体部20と生体との間で移動可能に支持している。そのため、支持部材50により、面状部材40Aを基体部20側に移動させ、面状部材40Aが電極脚30の先端部301よりも基体部20側の位置で支持部材50に支持されている時は、電極脚30が生体と接触する。一方、支持部材50により、面状部材40Aを電極脚30の先端部301側に移動させ、面状部材40Aが電極脚30の先端部301よりも生体側(−Z軸方向)の位置で支持される時は、面状部材40Aが生体と接触して、面電極として機能する。
そのため、生体情報測定用電極10は、頭皮や額など生体の表面の状態に応じて、電極脚30または面状部材40Aを生体に接触させることができる。例えば、生体が頭髪などのある頭皮の場合には、支持部材50により面状部材40Aを基体部20の裏面側まで移動させて支持し、電極脚30を頭髪の間を通して(頭髪を掻き分けて)電極脚30の先端部301を頭皮に接触させる。生体が頭髪などのない額や外皮の場合には、面状部材40Aを電極脚30の先端部301よりも生体側で支持して、面状部材40Aを額や外皮に接触させる。
よって、生体情報測定用電極10によれば、生体の表面状態に応じて、生体に接触させる電極として電極脚30または面状部材40Aを使い分けられる。通常、生体情報測定用電極10を生体に取り付ける際、生体と電極脚30との導通を確保するため、生体情報測定用電極10は生体に押し付けられた状態で取り付けられる。生体情報測定用電極10を生体として頭皮に取り付ける際、電極脚30が頭髪などを掻き分けて頭皮に接触させるため、生体情報測定用電極10が頭皮に押圧された状態で取り付けられても、頭髪が緩衝材として機能するため、電極脚30が頭皮を押圧する押圧力は軽減される。そのため、患者などに痛みを与えたり、頭皮に接触痕などは付き難く、頭皮と電極脚30との導通を確保して頭皮から電極脚30を介して生体情報を安定して測定できる。
一方、生体情報測定用電極10を生体として額などに取り付ける際、生体情報測定用電極10を額に押圧した状態で取り付けると、額には頭髪などが存在しないため、電極脚30が頭皮を押圧する押圧力は軽減されない。そのため、生体情報測定用電極10が額に押圧された状態で取り付けられると、患者などに痛みを与えたり、額に接触痕などが付きやすい。本実施形態では、生体情報測定用電極10は、生体の表面状態に応じて、生体に接触させる電極として電極脚30または面状部材40Aを用いることができる。
そのため、測定時に生体情報測定用電極10を額など生体の一部に押し付けても、患者などに痛みを与えたり、額に接触痕などが付くのを軽減できるので、生体に加わる負担を軽減できる。これにより、生体情報測定用電極10は、患者などに安心して使用できる。
また、生体情報測定用電極10は、生体が頭髪などのない額や外皮の場合に、面状部材40Aを面電極として用いれば、電極脚30を用いる場合に比べて、生体との接触面積が大きくなる。この結果、生体との導通を安定させることができるので、測定の精度を向上できる。
さらに、生体情報測定用電極10は、生体の表面状態によって、電極脚30または面状部材40Aを用いることで、頭皮用、または額や外皮用の電極として使い分けることができる。そのため、頭皮用の電極と、額や外皮用の電極とをそれぞれ個別に用意する必要がない。
また、生体情報測定用電極10は、生体情報測定用電極10の保管時や電極脚30を生体に接触させて測定しない時には、図5に示すように、面状部材40Aを電極脚30の先端部301よりも−Z軸方向の位置で固定してもよい。面状部材40Aの主面401は平面であるため、面状部材40Aの主面401が机上などの設置台などに接するように置くことで、生体情報測定用電極10を設置台などに立て掛けた状態で保管できる。電極脚30の先端部301の表面に形成されている導電層は、設置台に接触して擦れたりすると容易に剥離する可能性がある。また、電極脚30の先端部301が汚れた際に、先端部301を洗浄するために布などで擦ると、導電層が剥離してしまう可能性がある。そのため、電極脚30はできる限り設置台などに接触させず、汚れないように保管することが好ましい。面状部材40Aの主面401が設置台などに接するように生体情報測定用電極10を設置台などに置くことで、電極脚30の先端部301の表面に形成されている導電層が設置台に触れるのを防ぐことができるので、導電層の汚染または剥離を抑えることができる。
また、生体情報測定用電極10では、面状部材40Aは、平面視(+Z軸方向から見た時)において、環状に配置された複数の電極脚30により形成される外側包絡円よりも外側に形成されている。これにより、面状部材40Aが生体と接触する面積を広げることができる。また、図7に示すように、生体情報測定用電極10を設置台に横向きに設置しても、電極脚30および面状部材40Aの主面401が設置台に接触するのを抑えることができるので、電極脚30および面状部材40Aの主面401が汚染されるのを軽減できる。
支持部材50は、支持軸体51Aを有し、基体部20は、支持軸体51Aが挿脱可能に形成された挿入孔21を有している。挿入孔21をガイドとして支持軸体51Aを上下方向に動かすことで、基体部20と生体との間で面状部材40Aを移動させることができるので、生体情報測定用電極10は、支持部材50を簡素な構成としながら、面状部材40Aを移動させることができる。
このように、生体情報測定用電極10は、生体の表面状態に応じて、生体に接触させる電極として電極脚30または面状部材40Aを用いることで生体の負担を軽減できる。そのため、生体情報測定用電極10は、脳波以外に、例えば、脈波、心電、筋電、体脂肪など様々な生体の情報を皮膚に接触させて測定する生体情報測定用電極として好適に用いることができる。
[変形例]
生体情報測定用電極10の一例を示したが、これに限定されない。以下に、生体情報測定用電極10の変形例のいくつかについて、図8〜図31を参照して説明する。
支持部材50の変形例について説明する。
本実施形態では、支持部材50は、基体部20の挿入孔21において、他の構成により面状部材40Aの位置を調整するようにしてもよい。例えば、図8〜図10に示すように、支持部材50は、円柱状に形成された支持軸体51Bと、その側面51aに突出して設けられた一対の爪部53とを有するものでもよい。一対の爪部53は、支持軸体51Bの軸方向に所定間隔で設けられた、一対の爪部53Aと一対の爪部53Bとで構成されている。一対の爪部53Aは、支持軸体51Bの上方(+Z軸方向)の保持部511の近傍に設けられ、一対の爪部53Bは、支持軸体51Bの下方(−Z軸方向)の先端の近傍に設けられる。この場合、基体部20は、挿入孔21の上面に一対の爪部53に係合する爪用係合部23を有する。爪用係合部23は、Z軸方向視において、挿入孔21および一対の爪部53に対応した孔231を有する。
支持軸体51Bを径方向に回転させることで、一対の爪部53Bを爪用係合部23上に係止させることができるので、面状部材40Aを電極脚30の先端部301よりも+Z軸方向側で固定できる。一方、一対の爪部53Bを孔231を通過させて一対の爪部53Aを爪用係合部23上に係止させることで、面状部材40Aを電極脚30の先端部301よりも−Z軸方向で固定できる。
よって、一対の爪部53Aまたは一対の爪部53Bを爪用係合部23に係止させることで、支持軸体51Bが自重により−Z軸方向に移動するのを止めることができる。このため、面状部材40Aを基体部20の裏面側に引き上げた状態か、電極脚30の先端部301よりも−Z軸方向に固定した状態を保持できる。
また、図8〜図10では、支持部材50は支持軸体51Bの一対の爪部53を爪用係合部23に係合させているが、挿入孔21にプッシュプル機構を設け、支持軸体51Bをプッシュプル機構で係合させるようにしてもよい。
また、本実施形態では、支持部材50は、基体部20を電極脚30に係合させてもよい。例えば、図11および図12に示すように、支持部材50は、円柱状に形成された支持軸体51Bと、面状部材40Aと係合した支持基体54Aとを有するものでもよい。
支持基体54Aは、面状部材40Aと係合した支持基体本体541Aと、電極脚30側に突出するように設けた突起部542とで構成されている。また、図12に示すように、面状部材40Aの基体部20側に設けられた溝部402cと支持基体本体541Aの面状部材40A側に設けられた凸部541aとは、平面視においてほぼ同じ位置にあり、溝部402cおよび凸部541aにはネジ溝が形成されている。溝部402cに凸部541aを螺合させることで、支持基体本体541Aは面状部材40Aと係合する。
また、支持基体本体541Aの基体部20側の主面には凹部541bが形成され、平面視において、凸部541aとほぼ同じ位置にある。凹部541bと、支持軸体51Bの先端部とには、ネジ溝が形成されている。凹部541bに支持軸体51Bの先端部を螺合させることで、支持基体本体541Aは支持軸体51Bと係合する。支持軸体51Bが回転すると、支持基体本体541Aおよび面状部材40Aも回転するため、支持基体54Aは、回転可能に面状部材40Aを支持している。この場合、図13に示すように、電極脚30は、側面に、支持基体54Aを移動可能に支持するガイド部34を有する。ガイド部34は、電極脚30の軸方向に沿って突起部542が移動可能に形成された突起用移動部341と、突起部542が係合する突起用係合部342Aおよび342Bとを備える。突起用係合部342Aは、基体部20の裏面近くに設けられ、突起用係合部342Bは、電極脚30の先端部301の近くに設けられている。
支持部材50を用いれば、突起部542を突起用移動部341に沿って移動させた後、支持基体54Aを径方向に回転させて、突起部542を突起用係合部342Aまたは342Bに嵌める。これにより、支持基体54Aを基体部20の裏面側に引き上げた状態か、電極脚30の先端部301よりも−Z軸方向で固定した状態で止めることができる。よって、支持基体54Aをその自重により電極脚30の先端部301側に移動するのを防げるので、面状部材40Aを基体部20の裏面側に引き上げた状態か、電極脚30の先端部301よりも−Z軸方向で固定した状態で保持できる。例えば、図12に示すように、突起部542を突起用係合部342Aに嵌めて支持基体54Aを基体部20に近い位置で固定することで、面状部材40Aを基体部20側に位置させることができる。一方、図14に示すように、突起部542を突起用係合部342Bに嵌めて支持基体54Aを電極脚30の先端部301に近い位置で固定することで、面状部材40Aを電極脚30の先端部301よりも外側に位置させることができる。
また、ガイド部34を案内部として支持基体54Aを動かすことで、基体部20と生体との間で面状部材40Aを移動させることができるので、支持部材50は、簡単な機構で構成することができる。
なお、図11および図12では、突起部542は、電極脚30の側面30aのうち内側の面で係合しているが、図15および図16に示すように、突起部542は、電極脚30の側面30aのうち外側から電極脚30の側面30aの外側の面に係合するように構成してもよい。
また、本実施形態では、支持部材50は、支持軸体51Aを備えずに、面状部材40Aを基体部20と電極脚30の少なくとも何れかで支持させるようにしてもよい。この場合、支持部材50は、基体部20と電極脚30の少なくとも何れかで支持され、支持部材50を基体部20と電極脚30の少なくとも何れかで支持およびその解除が可能なロック機構を有するように構成する。
例えば、図17および図18に示すように、支持部材50は、支持基体54Bのみで構成することができる。支持基体54Bは、支持基体本体541Bと、支持基体本体541Bの側面に設けられた、一対の突起部542とを有する。支持基体本体541Bは、平面視(+Z軸方向から見た時)において、環状に配置された、複数の電極脚30により形成される内側包絡円の内側の領域に形成される。一対の突起部542は、支持基体本体541Bの側面の周方向に二組設けられている。図18に示すように、支持部材50は、突起部542を突起用係合部342Aに嵌めて支持基体54Aを基体部20に近い位置で固定することで、面状部材40Aを基体部20側に位置させることができる。一方、図19に示すように、突起部542を突起用係合部342Bに嵌めて支持部材50を電極脚30の先端部301に近い位置で固定することで、面状部材40Aを電極脚30の先端部301よりも外側に位置させることができる。
よって、支持部材50は、突起部542を突起用係合部342Aおよび342Bの何れかで支持およびその解除ができる。これにより、面状部材40Aを基体部20の裏面側に引き上げた状態か、電極脚30の先端部301よりも−Z軸方向で固定した状態で保持することができる。このため、支持部材50は、生体の表面の状態に応じて、電極脚30または面状部材40Aのいずれかを使い分けることを容易にできる。
なお、図17および図18では、支持部材50は、一対の突起部542を二組有しているが、電極脚30で位置が固定できる数であればよい。
また、図17および図18では、突起部542を電極脚30の突起用係合部342Aおよび342Bで支持させているが、基体部20で支持させてもよい。
さらに、図17および図18では、突起部542は、電極脚30の内側の面で支持させているが、図15および図16に示す突起部542と同様、電極脚30の外側の面で支持させてもよい。
また、本実施形態では、図20に示すように、支持部材50は、基体部20と面状部材40Aとの間に、面状部材40Aを生体側に付勢する弾性部材70を有していてもよい。基体部20と面状部材40Aとの間に弾性部材70が設けられることで、図21に示すように、面状部材40Aを−Z軸方向に移動させて面状部材40Aを生体に接触させた際、面状部材40Aの基体部20側の主面402が弾性部材70により押圧されるので、面状部材40Aは生体に押しつけられる。これにより、面状部材40Aの係合用溝部402bにおいて、係合用溝部402bとワッシャー43との間に隙間(ガタつき)があっても、ワッシャー43が−Z軸方向に押圧されて動きが固定されるので、支持軸体51Aの移動が抑えられる。この結果、面状部材40Aを生体に対して安定して接触させることができるので、面状部材40Aと生体との導通を安定させることができる。よって、生体情報測定用電極10は、面状部材40Aを用いた時の測定の精度を向上できる。
また、弾性部材70は、導電性を有することが好ましい。面状部材40Aを−Z軸方向に移動させて電極脚30の先端部301よりも外側に位置する時、弾性部材70が伸びて面状部材40Aと基体部20とが弾性部材70を介して連結される。そのため、面状部材40Aから弾性部材70を通して基体部20に導通することができるため、面状部材40Aとの電気的接続を容易に確保できる。
なお、図22に示すように、支持部材50に代えて、図18に示す支持部材50を用いることもできる。この場合、電極脚30には、図18に示す突起部542が嵌め込まれる突起用係合部342Aおよび342Bを設ける。これにより、図23に示すように、面状部材40Aを−Z軸方向に移動させた場合でも、弾性部材70は、導電性を有するため、弾性部材70が伸びて面状部材40Aと基体部20とが弾性部材70を介して連結される。これにより、面状部材40Aから弾性部材70を通して基体部20に導通することができる。
なお、図22では、一対の突起部542は、電極脚30の側面30aのうち内側の面で支持させているが、図15および図16に示す突起部542と同様、電極脚30の側面30aのうち外側の面で支持させてもよい。
次に、生体情報測定用電極10を構成する部材の他の変形例について説明する。
本実施形態では、生体情報測定用電極10は、電極脚30を複数有するが、電極脚30は1つでもよい。
本実施形態では、導電層は、少なくとも電極脚30の先端部301に形成されていればよく、先端部301の表面以外に、電極脚30の他の部分に形成されていてもよいし、基体部20および電極脚30の全面に形成されていてもよい。例えば、基体部20が絶縁材料で形成されている場合には、基体部20の導通を確保するため、導電層は、基体部20の全面に設けられる。また、本実施形態では、導電層が先端部301に形成されているが、基体部20が導電性エラストマーを用いて形成されており、基体部20と電極脚30との導通は確保されているため、導電層はなくてもよい。
本実施形態では、図24に示すように、基体部20の裏面側を−Z軸方向から見た時に、電極脚30の外側に突出した、一対の突出部42を設けた面状部材40Bを用いてもよい。これにより、生体情報測定用電極10を机上など設置台に横向き(基体部20の端面を下向き)にして置いた場合などに、電極脚30が設置台に触れるのを防ぐことができる。これにより、電極脚30の汚染を防ぐことができる。
また、一対の突出部42は、面状部材40Aに対して折り曲げ可能に構成されてもよい。図25に示すように、一対の突出部42が、面状部材40Bに対して垂直に折り曲げられることで、生体情報測定用電極10を机上など設置台に置いた際に、面状部材40Aの主面が汚れるのを低減できる。
なお、突出部42の数は、一対に限定されず、図26に示すように、一対の突出部42を三組設けてもよい。
本実施形態では、例えば、図27に示すように、−Z軸方向から見た時に、複数の電極脚30により形成される内側包絡円の内側の領域に形成された面状部材40Cを用いてもよい。面状部材40Cは、内側包絡円の内側の領域にあれば、面状部材40Cの製造時に高い寸法精度は必要ない。そのため、面状部材40Cの製造コストを低減できる。
また、この場合、図28に示すように、面状部材40Cは、電極脚30同士の間に配置されるように、一対の突出部42を3組設けてもよい。なお、一対の突出部42の数は、3組に限定されず、面状部材40Cの大きさなどに基づいて設計可能である。
本実施形態では、例えば、図29に示すように、面状部材40Dは、−Z軸方向から見た時に、六角形に形成されるなど多角形状に形成され、面状部材40Dの外周が電極脚30により形成される外側包絡円の外側に位置するように形成された面状部材40Dを用いてもよい。これにより、生体情報測定用電極10を机上などに横向きにして置いた際に、生体情報測定用電極10が転がるのを防げる。この結果、生体情報測定用電極10が机上などから落下するのを防ぐことができ、電極脚30の汚染を防ぐことができる。
本実施形態では、図30および図31に示すように、基体部20の上側(+Z軸方向)に端子部80を備えてもよい。この場合、端子部80は、基体部20の挿入孔21と同じ位置に同様の大きさの挿入孔81を備える。
端子部80を形成する材料としては、基体部20と同様の材料を用いることができる。基体部20と端子部80とは、同一の材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。図30および図31では、基体部20および端子部80は、同一の導電性エラストマーで一体に形成されている。そのため、電極脚30の先端部301側から基体部20を介して端子部80まで導通する。
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。