JP6973750B2 - 貴金属ナノ粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
PEIは、ソリューションプラズマ法による貴金属ナノ粒子の合成に際し、良好な還元剤として作用し得る。このことにより、従来のソリューションプラズマ法では不可能とされていた、溶液原料からの合金ナノ粒子の合成を実現することができる。
さらに、本明細書において「静置状態において沈殿物が視覚上認められない」とは、巨視的にみて当該合金ナノ粒子分散液が静止した状態(典型的には12時間以上静置した後の状態、例えば半日以上2日以下程度静置した後の状態)にあるときに、粗大粒子の存在や沈殿が視認されないことをいう。
(1)貴金属イオンと、保護剤としてのポリエチレンイミンと、を含む水溶液を用意すること。
(2)用意した水溶液中でプラズマを発生させることで貴金属イオンを還元し、水溶液中に当該貴金属イオンを構成する貴金属からなる貴金属ナノ粒子を形成する。
まず、目的の貴金属ナノ粒子の原料たる貴金属源を含む水溶液(以下、単に「原料水溶液」とも言う。)を調製する。ここで、貴金属としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)の元素が挙げられる。これらは、いずれか1種であってもよいし、2種以上であってもよい。すなわち、本発明によると、単一の貴金属元素からなる貴金属ナノ粒子を製造することもできるし、2種以上の貴金属元素からなる貴金属合金ナノ粒子を製造することもできる。従来のソリューションプラズマ法による金属ナノ粒子の製造においては、原料を水溶液中にのみ供給して合金ナノ粒子を製造することは不可能であった。これに対し、本技術によると、原料水溶液からの原料の供給によって、合金ナノ粒子を製造することが可能とされる。なお、本明細書において、合金とは、2種以上の元素を含む金属的性質を示す材料の全般を包含する。合金における各元素の混じり方は、固溶体、化合物、およびこれらの混合のいずれであってもよい。
PEIは、エチレンイミン(C2H5N、EI)を重合した水溶性ポリマーである。PEIの分子式は[−(CH2CH2NH)−]n(nは自然数。)で表され、直鎖型であってもよいし分岐型であってもよい。このようなPEIは、カチオン密度が高く、水中ではポリカチオンとして存在する。また、PEIのアミノ基は、極性基であり、貴金属ナノ粒子の表面の水酸基と容易に水素結合する。さらにPEIは、疎水基であるエチレン基を分子構造に有する。このことから、水溶液中にPEIを添加しておくことで、精製された貴金属ナノ粒子同士の凝集を抑制することができる。分岐型のPEIは、2級アミンに加えて、1級アミンおよび3級アミンを含み、より吸着性に富むために好ましい。
そして本技術では、以上のように貴金属イオンと保護剤とを含む原料水溶液を用意し、該水溶液中でプラズマを発生させる。換言すると、本技術においては、貴金属イオンの還元の場として、該水溶液中で発生させるプラズマ反応場を利用するようにしている。水溶液中で発生させるプラズマ(ソリューションプラズマ)では、プラズマを構成する正負のイオン、電子およびラジカル等の活性種の作用によって、原料水溶液中に含まれる貴金属イオンの還元と、これに伴うゼロ価の貴金属からなるナノ粒子の形成とが実現される。ここで活性種としては、典型的には、水溶液中の水分子が分解されて生成する水素イオン、水酸化物イオン、酸素イオン、水素ラジカル、酸素ラジカルおよびヒドロキシラジカル等が考慮できる。そして本技術においては、これらの活性種に加え、水溶液に添加されたPEIやその誘導体が活性種として作用し得る。
すなわち、ソリューションプラズマは、原料水溶液中に電極を設置し、この電極間にマイクロ波や高周波を印加することで原料水溶液を高電界に晒し、原料水溶液を構成する物質を気化、電離させることで、発生させることができる。ソリューションプラズマの好ましい一態様では、電圧の印加によって発生した気相中に、当該気体を構成する分子を部分的ないしは完全に電離させることができる。このようなソリューションプラズマにおいては、プラズマ相を気相が取り囲み、気相をさらに液相が取り囲む。このような構成によって、プラズマを構成する上記のプラズマ活性種は制限された気相中で自由にかつ高濃度で運動し得る。そのため、解放された気相中に発生される気相プラズマ(典型的には、大気圧プラズマ、低圧プラズマ等)とは異なる物理的および化学的性質を示す。
電極4の形状は特に制限されず、例えば、平板電極や棒状電極、およびこれらの組み合わせ等であってよい。図1では、電界を局所的に集中させ易いとの観点からは、線状(ワイヤ状、針状)電極を採用している。電極4の材質についても特に制限されず、例えば、鉄(Fe)、金(Au)、タングステン(W)、白金(Pt)等により構成するとよい。また電極4は、電界集中を妨げる余分な電流を抑えるために、先端部(例えば、0.1〜2mm程度)のみを露出させ、残りの部分を絶縁部材6等で覆って絶縁している。絶縁部材6は、例えばゴムまたは樹脂(例えば、フッ素樹脂)により構成するとよい。
外部電源12は、直流パルス電圧を発生することが可能な直流パルス電源であるとよい。
そして「PDI」は、上記光子相関法で求めた自己相関関数をキュムラント法で解析して得られる粒子径分布についての分散度を示す指標である。PDIは0から1までの範囲の値をとり、PDIが「0」であるときに全ての粒子の径が同一(単分散)であることを示し、PDIが「1」に近づくほど粒度分布がブロードになり多分散性が強くなることを意味する。
金属源として塩化金(III)三水和物(HAuCl4・3H2O)を用い、40mMの塩化金酸水溶液を用意した。また、還元剤として、Mnが6万のポリエチレンイミン(PEI)を用い、エチレンイミンで換算したときのPEIの濃度(以下、単に「PEI濃度」等のように表現する。)が400mMとなるようにPEI水溶液を用意した。そしてこれらの水溶液を等量ずつ混合することで、例1の反応溶液を用意した。すなわち、表1に示すように、例1の反応溶液における塩化金酸の濃度は20mMであり、PEI濃度は200mMである。
例1において、濃度1000mMのPEI水溶液を用意した。その他の条件は例1と同様にして、最終的なPEI濃度が500mMとなるように、例2の反応溶液を用意した。
例2において、金属源として、塩化金酸三水和物の他に硝酸銀を用いた。まず、40mMの硝酸銀(AgNO3)水溶液を用意し、塩化金酸水溶液と硝酸銀水溶液とを体積比が90:10となるように秤量した。また、塩化金酸水溶液と硝酸銀水溶液の合計と等量(体積)の1000mMのPEI水溶液を用意した。そして最初に、硝酸銀水溶液とPEI水溶液とを混合したのち、塩化金酸水溶液を加えることで、例3の反応溶液を用意した。つまり、表1に示すように、例3の反応溶液における金属源の総濃度は20mMであり、PEI濃度は500mMである。
塩化金酸水溶液:硝酸銀水溶液が70:30の割合(体積比)となるように配合したこと以外は、例3と同様にして、例4の反応溶液を用意した。
塩化金酸水溶液:硝酸銀水溶液が50:50の割合(体積比)となるように配合したこと以外は、例3と同様にして、例5の反応溶液を用意した。
金属源として用意する塩化金酸水溶液と硝酸銀水溶液の濃度を100mMとした。またこれに伴い、用意するPEI水溶液の濃度を2500mMとした。これらの溶液を用い、例4と同じ手順および配合で各溶液を混合することで、例6の反応溶液を用意した。表1に示すように、例6の反応溶液における金属源の総濃度は50mMであり、PEI濃度は1250mMである。
金属源として用意する塩化金酸水溶液と硝酸銀水溶液の濃度を200mMとした。またこれに伴い、用意するPEI水溶液の濃度を5000mMとした。これらの溶液を用い、例4と同じ手順および割合で混合することで、例7の反応溶液を用意した。表1に示すように、例7の反応溶液における金属源の総濃度は100mMであり、PEI濃度は2500mMである。
金属源として用意する塩化金酸水溶液と硝酸銀水溶液の濃度を300mMとした。またこれに伴い、用意するPEI水溶液の濃度を9000mMとした。これらの溶液を用い、例4と同じ手順および割合で混合することで、例8の反応溶液を用意した。表1に示すように、例8の反応溶液における金属源の総濃度は150mMであり、PEI濃度は4500mMである。
金属源として用意する塩化金酸水溶液と硝酸銀水溶液の濃度を400mMとした。またこれに伴い、用意するPEI水溶液の濃度を10000mMとした。これらの溶液を用い、例4と同じ手順および割合で混合することで、例9の反応溶液を用意した。表1に示すように、例9の反応溶液における金属源の総濃度は200mMであり、PEI濃度は5000mMである。
金属源として、400mMの硝酸銀水溶液のみを用い、金属源水溶液とした。用意するPEI水溶液の濃度は12000mMとした。そして金属源水溶液とPEI水溶液とを等量ずつ混合することで、例10の反応溶液を用意した。表1に示すように、例10の反応溶液における金属源の総濃度は200mMであり、PEI濃度は6000mMである。
還元剤として、Mnが1万のポリエチレンイミン(PEI)を用い、エチレンイミンに換算したときの濃度が5000mMとなるようにPEI水溶液を用意した。これらの溶液を用い、例4と同じ手順および割合で混合することで、例11の反応溶液を用意した。表1に示すように、例11の反応溶液における金属源の総濃度は100mMであり、PEI濃度は2500mMである。
(例12)
還元剤として、Mnが3万のポリエチレンイミン(PEI)を用い、エチレンイミンに換算したときの濃度が12000mMのPEI水溶液を用意した。これらの溶液を用い、例4と同じ手順および割合で混合することで、例12の反応溶液を用意した。表1に示すように、例12の反応溶液における金属源の総濃度は200mMであり、PEI濃度は6000mMである。
例7において、塩化金酸水溶液:硝酸銀水溶液が50:50の割合(体積比)となるように混合して金属源水溶液を調製したこと以外は、例7と同様にして、例13の反応溶液を用意した。表1に示すように、例13の反応溶液における金属源の総濃度は100mMであり、PEI濃度は2500mMである。
例4において、還元剤としてのPEI水溶液に代えて、重量平均分子量(Mw)が2.9万のポリビニルピロリドン(PVP)の160mM水溶液を用い、その他の条件は例4と同様にして、例14の反応溶液を用意した。また、PEI水溶液とPVP水溶液とではpHが大幅に異なるため、例10の反応溶液にはNaOH溶液を添加してpHを6に調整した。
還元剤として、例14と同じ重量平均分子量(Mw)が2.9万のポリビニルピロリドン(PVP)と、還元作用を示すとともに分散剤としても機能し得るクエン酸三ナトリウムと、還元作用を示すエタノールとを用いた。これらの還元剤は、エタノールの45体積%水溶液に、PVPが50mM、クエン酸三ナトリウムが150mMの濃度となるように溶解させることで、還元剤溶液とした。そして、例4において、還元剤としてのPEI水溶液に代えて、この還元剤溶液を用いることで、例15の反応溶液を用意した。表1に示すように、例15の反応溶液における金属源の総濃度は20mMであり、PVP濃度は25mMであり、クエン酸三ナトリウム濃度は75mMであり、エタノール濃度は22.5体積%である。
次いで、例1〜15の反応溶液中で、図1に示した装置を用いてソリューションプラズマを発生させた。反応溶液2は、ガラス製のビーカーからなる容器10にそれぞれ30mLずつ収容し、マグネチックスターラーからなる撹拌装置7により撹拌した。また、反応溶液2中に、プラズマを発生させるための一対の電極4を浸漬させた。電極4には、直径が0.8mmのタングステンワイヤ(ニラコ社製)を用い、電極間距離を0.3mmに設定した。この電極4に外部電源12としてのバイポーラパルス電源((株)栗田製作所製、MPS−R06K02C−WP1F)を接続し、電極間に、パルス周波数:150kHz、パルス幅:1μs、パルス電圧:1000Vの直流パルス電圧を30分間印加した。パルス電圧の印加直後から、黄色透明であった反応溶液が徐々に着色することが確認された。
ソリューションプラズマを照射した反応溶液を、総金属濃度が約0.2mMとなる程度に希釈し、希釈溶液の呈色を評価し、その結果を表1に示した。その結果、例1〜13、15の溶液は、赤色から橙色ないし黄色に呈色していることが確認できた。粒子径が10nm程度の金や銀のナノ粒子を含むコロイド溶液は、プラズモン発色により赤色(金)や黄色(銀)を呈することが知られている。このことから、例1、2の反応溶液中には金ナノ粒子が、例10の反応溶液中には銀ナノ粒子が、そして例3〜9、11〜13の反応溶液中には金銀合金ナノ粒子が形成されていると考えられる。
そこで、ソリューションプラズマを照射した例1〜15の反応溶液について、紫外可視赤外分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製、U−3900H)を用いて、300nm〜800nmの波長領域における吸収スペクトルを測定し、極大吸収波長を調べた。得られた極大吸収波長を表1に示した。また、参考のために、例5について得られたUV−Vis吸収スペクトルを図2に示した。
金ナノ粒子と銀ナノ粒子の表面プラズモン共鳴の極大吸収波長は、球状粒子について、それぞれ520nm付近(金)および400nm付近(銀)に見られることが報告されている。また、ナノ粒子の極大吸収波長は、ナノ粒子のサイズ、形状、凝集状態などによる影響を受けて高波長側にシフトすることが知られている。
例3〜9、11〜13のナノ粒子については、例えば図2に示されるように、波長400〜520nmの範囲に一つの吸収ピークが確認された。また、その極大吸収波長は、例1,10の極大吸収波長の間で、おおよそ反応溶液におけるAuとAgの組成比に応じた位置(464〜501nm)であった。このことから、例3〜9、11〜13においては微粒かつ球形で、分散性のよい金銀合金ナノ粒子が得られていると考えられる。また、その組成は、反応溶液中のAuイオンとAgイオンとの比に対応し、凡そAu90Ag10、Au70Ag30、Au50Ag50等あると考えられる。以上のことから、例えば、組成がAu(1−x)Agx(例えば0<x<1を満たす。)で表われるAuAg合金ナノ粒子分散液については、極大吸収波長が好ましくは450nm以上510nm以下(より好ましくは460nm以上510nm以下)程度であるといえる。
また、例15では、極大吸収波長が526nmと長波長側にシフトしていることが確認された。極大吸収波長が526nmとは、例えば、直径が30nmの金ナノ粒子分散液について観測される極大吸収波長に相等する。例14は、例4のPEIに代えて、PVPを使用した例である。例15は、例4のPEIに代えて、PVP、クエン酸三ナトリウムおよびエタノールを使用した例である。
そこでさらに、ソリューションプラズマを照射した例1〜15の反応溶液中のナノ粒子の粒度分布を動的光散乱法に基づき測定した。測定には、粒度分布測定装置(Malvern Instruments社製、ゼータサイザーナノZS)を使用した。散乱光強度の測定結果から個数基準の最大頻度粒径、Z平均粒子径およびPDIを算出し、表1に示した。
その一方で、例15では、ナノ粒子の最大頻度粒径が17nmと小さいにも関わらず、Z平均粒子径が759nmと極めて大きいことが確認された。これは、従来のソリューションプラズマ法による貴金属ナノ粒子の製造において見られたように、反応溶液中の貴金属イオンの濃度が高すぎるために、形成されたナノ粒子が容易に凝集してしまったことによるものと考えられる。
2 水溶液
4 電極
6 絶縁部材
8 撹拌装置
10 容器
12 外部電源
P ソリューションプラズマ
Claims (7)
- 貴金属イオンと、保護剤としてのポリエチレンイミンと、を含む水溶液(アルコールは含まない)を用意すること、
前記水溶液中でプラズマを発生させることで前記貴金属イオンを還元し、前記水溶液中に前記貴金属からなる貴金属ナノ粒子を形成すること、
を含み、
用意する前記水溶液は、前記貴金属イオンを10mM以上300mM以下の濃度で含む、貴金属ナノ粒子の製造方法。 - 用意する前記水溶液は、第1貴金属と第2貴金属とのイオンを含み、
前記貴金属ナノ粒子は、前記第1貴金属と前記第2貴金属との合金により構成されている、請求項1に記載の貴金属ナノ粒子の製造方法。 - 前記ポリエチレンイミンは、数平均分子量が1万以上7万以下である、請求項1または2に記載の貴金属ナノ粒子の製造方法。
- 前記貴金属ナノ粒子は、平均粒子径が20nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の貴金属ナノ粒子の製造方法。
- 前記水溶液中に一対の電極を配置し、
前記電極間に、パルス周波数:1kHz以上300kHz以下、パルス幅:0.1μs以上10μs以下、パルス電圧500V以上5000V以下の直流パルス電圧を印加することでプラズマを発生させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の貴金属ナノ粒子の製造方法。 - 前記プラズマは、グロー放電プラズマである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の貴金属ナノ粒子の製造方法。
- ポリエチレンイミンを含む水溶液中に金(Au)と銀(Ag)とを構成元素として含むAuAg合金ナノ粒子が分散された分散液(アルコールは含まない)であって、
前記AuAg合金ナノ粒子は、化学組成が一般式:Au(1−x)Agx(ただし、式中、xは0<x<1を満たす。);で表わされ、
吸光光度計を用いて測定される極大吸収波長は405nm以上520nm以下であり、
前記AuAg合金ナノ粒子の構成金属元素換算のモル濃度が100mM以上300mM以下であり、
静置状態において前記AuAg合金ナノ粒子を含む沈殿物が視覚上認められない、AuAg合金ナノ粒子分散液。
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