以下に、本発明の実施の形態にかかる加工条件解析装置、レーザ加工装置、レーザ加工システムおよび加工条件解析方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるレーザ加工条件解析装置を含む、レーザ加工システムの構成例を示す図である。レーザ加工システムは、本発明にかかる加工条件解析装置10と、レーザ加工装置20とを備える。本実施の形態のレーザ加工装置20は、レーザ光を集光することにより被加工物であるワーク30を切断するレーザ切断加工を行う。加工条件解析装置10は、レーザ加工装置20が行う加工、すなわちレーザ切断加工における加工条件を調整する。
レーザ加工装置20は、図1に示すように、制御部21、レーザ発振器22および加工ヘッド23を備える。レーザ発振器22はレーザ光を発振して射出する。加工に使用するレーザ加工装置20のレーザ光の波長は、レーザ光の加工対象への吸収率、反射率等を考慮して適宜選択することができる。例えば、0.193μm〜11μmとすることができる。レーザ発振器22から射出されたレーザ光は光路を介して、加工ヘッド23へ供給される。加工ヘッド23内部には、加工ガスが供給され、レーザ光がワーク30へ照射される際に、加工ガスがワーク30へ供給される。加工ヘッド23は、レーザ光をワーク30へ集光する不図示の集光レンズを有している。加工ヘッド23は、レーザ光を集光してワーク30へ照射することによりワーク30を切断する。加工ヘッド23は不図示のノズルを有する。ノズルは、集光レンズとワーク30との間のレーザビーム光路上に開口部を有し、この開口部をレーザ光および加工ガスが通過する。一般には、図示しない、モータ及びモータ駆動装置が、加工ヘッド23が設置される軸、あるいは、ワーク30を配置する加工テーブル、あるいは、加工ヘッド23が設置される軸およびワーク30を配置する加工テーブル、に備えられ、制御部21の制御の元でモータ駆動装置がモータを制御することにより加工ヘッド23とワーク30との相対位置を変更することが可能である。
レーザ発振器22の種類は限定されない。レーザ発振器22の一例は、ファイバレーザ発振器であるが、炭酸ガスレーザや銅蒸気レーザや各種イオンレーザ、YAG結晶等を励起媒体とする固体レーザであってもよいし、レーザダイオードの光をそのまま利用するダイレクトダイオードレーザ等であってもよい。また、上記レーザ発振器22から発生したレーザ光を波長変換する波長変換部を備えても良い。
制御部21は、加工プログラムと加工条件を示す加工パラメータとに従って、レーザ光がワーク30上の加工経路を走査するように、レーザ発振器22およびモータ駆動装置を制御する。制御部21は、加工パラメータとしては、レーザ出力、加工ガス圧、加工速度、集光光学系の焦点位置、集光径、レーザのパルス周波数、レーザのパルスのデューティ比、ノズル径、ワーク30とノズルとの距離、レーザビームモードの種類、ノズル穴の中心とレーザビームの位置関係等が挙げられる。加工パラメータは、上述した例に限定されない。使用するレーザの種別、レーザ加工装置20が備える機能などに応じて、加工パラメータとしてどのようなものを用いるかが適宜決定される。
制御部21が用いる加工パラメータは、後述するように加工条件解析装置10により算出される補正量に応じて変更可能である。すなわち、加工パラメータは加工条件解析装置10により補正可能である。加工条件解析装置10により補正される前の加工パラメータは、例えば、加工内容に応じて予め定められている。また、レーザ加工装置20が、作業者からの入力を受ける入力手段を備え、加工条件解析装置10により補正される前の加工パラメータが作業者からの入力により変更可能であってもよい。また、図示しない他のコンピュータなどの装置から、加工条件解析装置10により補正される前の加工パラメータがレーザ加工装置20へ送信されてもよい。
加工条件解析装置10は、図1に示すように、撮影器11、特徴量抽出部12、評価部13および補正量算出部14を備える。撮影器11は、レーザ加工装置20により加工されたワーク30の切断面31を撮影し、撮影した画像を特徴量抽出部12へ出力する。ここで、撮影した画像とは静止画像に限定されず、動画として撮影された画像も含む。特徴量抽出部12は、撮影器11から出力された画像から特徴量を抽出し、抽出した特徴量を評価部13へ出力する。特徴量は、レーザ切断加工によって切断された切断面を撮影した画像に基づく切断面情報の一例である。加工条件解析装置10による加工の評価と加工パラメータの補正量の算出は、例えば、製品の生産用の加工である生産加工へ移行する前に行われる。
評価部13は、特徴量抽出部12から出力された特徴量を用いて切断面31の加工良否を判定し、判定結果を補正量算出部14へ出力する。詳細には、評価部13は、レーザ切断加工によって切断された切断面31を撮影した画像に基づく切断面情報を用いて、複数の加工不良モードのそれぞれに対応する加工品質を示す評価値を生成する。切断面情報は、特徴量抽出部12から出力された特徴量であってもよく、画像自体であってもよい。そして、評価部13は、複数の加工不良モードのそれぞれに対応する複数の評価値である組み合わせパターンを判定結果として出力する。補正量算出部14は、評価部13から出力された判定結果が否すなわち加工不良であることを示す値であった場合、所望の加工品質を得るため加工パラメータの補正量をレーザ加工装置20へ出力する。所望の加工品質とは、一定以上の水準の加工品質であり、具体例については後述する。補正量算出部14は、評価部13から出力された判定結果が良を示す値であった場合、補正量は算出せず、判定結果が良であることをレーザ加工装置20へ通知する。
レーザ加工装置20では、補正量算出部14から補正量が出力されると、補正後の加工パラメータを用いた切断加工を実施する。詳細には、制御部21が、補正量算出部14から補正量の分だけ加工パラメータを補正した後に、切断加工を実行するよう加工ヘッド23およびレーザ発振器22を制御する。また、レーザ加工装置20は、判定結果が良であることを補正量算出部14から通知されると、生産加工へ移行する。
加工条件解析装置10とレーザ加工装置20とは、有線または無線で接続されていてもよく、ネットワークを介して接続されていてもよい。なお、図1に示した例では、加工条件解析装置10とレーザ加工装置20とを別の装置としているが、加工条件解析装置10がレーザ加工装置20に含まれていてもよい。すなわち、レーザ加工装置20が、撮影器11、特徴量抽出部12、評価部13および補正量算出部14を備えていてもよい。
次に、本実施の形態の動作について説明する。図2は、本実施の形態のレーザ加工システムにおける加工パラメータ調整の動作の一例を示すフローチャートである。レーザ加工システムは、例えば、生産加工の実施前に、加工パラメータ調整のために図2に示す動作を実行する。なお、図2に示す動作を実行するタイミングは生産加工の実施前に限定されず、例えば、生産加工の途中などに実行されてもよい。
図2のステップS1は、図1に示したレーザ加工装置20により実施され、ステップS2は、図1に示した撮影器11により実施される。図2のステップS3は、図1に示した特徴量抽出部12により実施され、図2のステップS4〜S8は、図1に示した評価部13により実施される。また、図2のステップS9,S11は、図1に示した補正量算出部14により実施され、図2のステップS10は、レーザ加工装置2により実施される。以下、各ステップの詳細について説明する。
図2に示すように、まず、レーザ加工装置20が切断加工を行う(ステップS1)。次に、加工条件解析装置10の撮影器11が、切断加工により形成された切断面31を撮影する(ステップS2)。切断面31の画像取得は、レーザ加工の実施中に、切断が完了した部分の切断面31を撮影してもよく、切断完了後の加工対象の切断面31を撮影してもよい。撮影器11は、デジタルカメラでもよいしビデオカメラでもよい。特徴量を抽出するのに用いる画像は、特徴量を抽出することができる画像であれば、静止画像を用いてもよく動画像を用いてもよい。また、画像を取得するカメラに代えて、3次元形状測定機で切断面の凹凸の面内分布を計測したデータを取得する装置を用いてもよい。
次に、特徴量抽出部12が、撮影器11によって撮影された画像から特徴量を抽出する(ステップS3)。
特徴量抽出部12は、例えば、特徴量として、画像処理技術を用いて、切断面31の色相、彩度、明度、各画素間の明度相関、高次局所自己相関(HLAC:Higher order Local AutoCorrelation)を算出する。また、特徴量抽出部12は、特徴量として、画像処理技術を用いて、ガウシアン平滑化処理(Sobelフィルタを用いた処理)により得られる処理結果、アファイン変換により得られる結果、局所領域の明度の勾配方向のヒストグラム(HoG特徴量)、SIFT(Scale Invariant Feature Transform:位置不変量)、位相限定相関法を用いた解析結果、フーリエ変換を用いた解析結果などで算出してもよい。また、特徴量抽出部12は、前処理として、画像の露出補正、色温度やホワイトバランス等の色調補正、軸上色収差補正、倍率色収差補正等の収差補正、平滑化フィルタであるGaussianフィルタ、Medianフィルタ、バイラテラルフィルタ、Guidedフィルタ、ヒストグラム平坦化処理であるコントラスト制限付適応ヒストグラム平坦化(Contrast Limited Histogram Enhancement: CLAHE)、微分フィルタであるSobelフィルタ、Laplarcianフィルタ、色空間変換方法である、RGB、輝度、HSV(Hue、Saturation、Value)、HLS(Hue、Lightness、Saturation)、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage) L*a*b*(CIELAB)、CIE L*u*v*(CIELUV)、アフィン変換等を用いてもよい。また、特徴量抽出部12は、画素値情報としてヒストグラム、平均、分散を特徴量として算出してもよいし、フーリエ変換、ウェーブレット変換などにより得られる周波数情報を特徴量として算出してもよい。また、特徴量抽出部12は、高次局所自己相関特徴(Higher-order Local AutoCorrelation)、CILAC(Color Indel Local AutoCorrelation)、NLAC(Normal Local AutoCorrelations)、GLAC(Gradient Local AutoCorrelations)、SIFT(Scale Invariant Feature Transform) 、HOG(Histograms of Oriented Gradients)、SURF(Speeded Up Robust Features)、LBP(Local Binary Pattern)を利用した特徴量、ガボール フィルタ(Gabor Filter)を利用した特徴量、GLCM(Gray-Level Co-occurrence Matrix)に基づく特徴量、Haralick's texture features、深層ニューラルネットワークにおけるボトルネック特徴量、バギング(Bag of Visual Words)、KAZE、AKAZE(Accelerated-KAZE)、BRIEF(Binary Robust Independent Elementary Features)、ORB (Oriented FAST and Rotated BRIEF)、MSER(Maximally Stable Extremal Regions)、GBTT(Good Features to Track)、AGAST(Adaptive and Generic Accelerated Segment Test)等を特徴量として算出してもよい。また、これらの画像処理技術は一般的なものを用いることができるため、特徴量の抽出の詳細な説明は省略する。特徴量はこれらに限定されず、どのようなものを用いてもよい。また、特徴量抽出部12は、画像そのものを、特徴量としてもよい。また、特徴量抽出部12が抽出する特徴量の数は、1つでもよく複数でもよい。
図2の説明に戻る。評価部13は、特徴量抽出部12から出力された特徴量を用いて、加工不良モードごとの良否判定を行う。図2では、加工不良モードとして、荒れの発生、キズの発生、酸化膜剥れの発生、ドロスの発生を考慮した例を示している。したがって、図2に示すように、評価部13は、これらの加工不良モードにそれぞれ対応する良否判定として、荒れ判定(ステップS4)、キズ判定(ステップS5)、酸化膜剥れ判定(ステップS6)、ドロス判定(ステップS7)を行う。なお、図2では、荒れ判定、キズ判定、酸化膜剥れ判定、ドロス判定を並列に示しているが、評価部13は、これらの判定を並行して実施しても良いし、時系列で順に実施してもよい。
ここで、各加工不良モードについて詳細に説明する。図3は、本実施の形態におけるワーク30の上下方向の定義を示す図である。図3に示すように、ワーク30が加工される際に、加工ヘッド23の一部である集光レンズ231によりレーザビーム40が集光される。図3は、切断面31におけるワーク30および集光レンズ231の断面を模式的に示すものである。本実施の形態では、図3に示すように、ワーク30からみて、加工ヘッド23の存在する方向を上と定義、その反対側を下と定義する。
図4は、荒れが発生した状態で撮影された切断面31の画像の一例を示す図である。点線で囲まれた部分が荒れの特徴的な部分である。切断面31の上部に周期的に荒れが発生している。荒れが発生すると、荒れが発生していない場合に比べ、条痕の凹凸の深さが深くなる。荒れの発生の有無を判断する基準として、例えば、切断面31の面粗度が一定の値以上であるか否かを用いることができる。したがって、評価部13は、荒れ判定として、ステレオ撮影により凹凸の深さを測定したり、荒れの周期方向から照明をあてることで、山部は明るくその影の谷部は暗くなるので、明暗の度合いや影の長さや暗部の幅等により凹凸の深さを推測すること等で切断面31の面粗度を求め、面粗度が一定の値以上である場合に、荒れがあると判断することができる。
図5は、キズが発生した状態で撮影された切断面31の画像の一例を示す図である。点線で囲まれた部分がキズの特徴的な部分である。キズは、切断面31において局所的に上面から下面にかけて発生する。キズの発生の有無を判断する基準として、実作業では、例えば切断面31を複数の区間に分け、区間内の明度に基づいて凹凸のPV(Peak to Valley)値を求め、ある区間のPVの値が一定の値以上であるか否かを用いることができる。この区間としては、切断面を左右方向に複数に分割した区間を用いてもよい。本実施例においては、評価部13は、画像を上下および左右に複数の区間に分割し、区間内の他の画素の平均値と明度が閾値以上異なる部分をキズ候補部分とし、キズ候補部分の長さを求め、キズ候補部分の長さが一定以上の値の場合にキズの発生と判定してもよい。キズ候補部分の求め方はこの例に限定されない。
図6は、酸化膜剥れが発生した状態で撮影された切断面31の画像の一例を示す図である。点線で囲まれた部分が酸化膜剥れの特徴的な部分である。酸化膜剥れは、切断に用いる加工ガスが酸素である場合に生じ、切断面31に生じている酸化膜が剥れてしまう症状であり、切断面31の下部に発生する。評価部13は、例えば、画素の明度等の特徴量に基づいて、酸化膜が剥れた箇所と想定される部分の面積を求め、この面積が一定の値以上である場合に、酸化膜剥れが生じていると判定してもよい。酸化膜が剥れた箇所は、例えば、画素の明度の平均値との差が閾値以上ある部分を酸化膜剥れが生じている部分とすることができるが、酸化膜が剥れた箇所の算出方法はこれに限定されない。
図7は、ドロスが発生した状態で撮影された切断面31の画像の一例を示す図である。点線で囲まれた部分がドロスの特徴的な部分である。ドロスは、レーザ切断中に溶融した金属等が切断面31に付着する症状であり、切断面31の下端から発生する。評価部13は、画素の明度等の特徴量に基づいて、切断面31の下部においてドロス候補と想定される部分の長さを求め、この長さが一定の値以上である場合にドロスが生じていると判定してもよい。ドロス箇所の算出方法はこれに限定されない。
加工不良モードはこれらに限定されない。例えば、ワーク30の変色、振動面の有無等、他の加工不良モードも含めて判定を行ってもよいし、上述した加工不良モードのうちの一部に替えて他の加工不良モードの判定を行ってもよい。また、評価部13は、レーザ出力、加工速度、加工板厚の組み合わせ、加工ガスの種類等の加工パラメータによって、判定する加工不良モードを変更してもよい。
例えば、加工ガスの種類が酸素である場合は、切断面31に酸化膜が発生するため、酸化膜剥れの有無の判定が必要である。しかし、加工ガスの種類が窒素である場合は、切断面31に酸化膜が発生することがないため、酸化膜剥れの有無の判定は不要である。したがって、評価部13は、加工ガスの種類が窒素である場合は、酸化膜剥れ判定を省いてもよい。
図2の説明に戻る。評価部13は、荒れ判定(ステップS4)、キズ判定(ステップS5)、酸化膜剥れ判定(ステップS6)、ドロス判定(ステップS7)の後、これらの判定結果を用いて、切断加工の良否を判定する(ステップS8)。切断加工の良否の判定結果である評価値としては、良または否(不良)の度合いすなわち加工品質を2段階以上のあらかじめ定められた複数の段階的な値で表すものであってもよいし、連続的な値であってもよい。評価値は、換言する加工品質を示す値である。評価値が段階で表される場合、良または不良の2値のうちのいずれかを示す2段階の値であってもよいし、3段階以上の不良の度合いを示すものであってもよい。また、段階的な値のそれぞれについて確率と組み合わせてもよい。例えば、評価部13は、良である確率が90%、不良である確率が10%といった評価値を算出してもよい。評価部13は、加工不良モードごとの判定結果を、評価値として出力してもよい。例えば、加工不良モードごとの判定が、上述した荒れ判定、キズ判定、酸化膜剥れ判定、ドロス判定の4つであり、評価部13がこれらにそれぞれ対応する評価値として良または不良の2値のいずれかを出力するとする。評価値が1の場合を良、評価値が0の場合を不良とし、評価部13から、例えば、荒れ判定、キズ判定、酸化膜剥れ判定、ドロス判定にそれぞれ対応する評価値として、0,1,0,0が出力されるとする。この場合、キズ判定では不良すなわちキズが発生していると判定され、荒れ判定、酸化膜剥れ判定およびドロス判定では良と判定されたことを意味する。
また、評価部13は、各加工不良モードに対応する判定の評価値の合計によって、切断加工の良否を判定してもよい。また、評価部13は、加工不良モードごとに判定結果に重み付けをして、重み付け後の合計に基づいて切断加工の良否を判定してもよい。例えば、評価部13は、加工不良モードに対応する判定結果のうち否と判定された数が閾値以上である場合に、切断加工の良否判定結果が否であると判定してもよい。または、各加工不良モードに対応する判定のうち1つでも否と判断された加工不良モードがある場合は、評価部13は、切断面31の良否判定結果を否としてもよい。
また、評価部13は、各加工不良モードに対応する判定において、良否の2値の判定でなく、良の可能性が高いと0に近づき不良の可能性が高いと1に近づくといった連続した値を求めるようにしてもよい。また、評価部13は、加工条件解析装置10の内部または外部の表示部に判定結果を表示するようにしてもよい。または、評価部13は、切断加工の良否判定結果が否の場合のみ、加工条件解析装置10の内部または外部の表示部に判定結果を表示するようにしてもよい。
また、評価部13は、特徴量抽出部12から出力された特徴量だけでなく、他の情報も用いて、良否判定を行ってもよい。図8は、他の情報を用いる場合の本実施の形態の評価部13への入力を示す図である。図8では、撮影器11の図示を省略して記載している。図8に示した例では、他の情報として、加工板厚、加工材料を用いている。加工板厚は、加工対象のワーク30のレーザ光入射方向の厚みであり、加工材料は加工対象のワーク30の材質である。これらの他の情報は、加工条件解析装置10が入力手段を備えることにより、作業者から加工条件解析装置10へ入力されていてもよいし、加工条件解析装置10がレーザ加工装置20から取得してもよい。
図2の説明に戻る。補正量算出部14は、評価部13から出力される判定結果が良であるか否かを判断し(ステップS9)、判定結果が良である場合(ステップS9 Yes)には、加工パラメータの調整を終了する。加工パラメータの調整が終了すると、生産加工が実行される。なお、評価部13が判定結果すなわち評価値として3段階以上の値または連続値を出力する場合、補正量算出部14は、ステップS9では、この評価値が定められた基準を満たすか否かにより、良否を判定する。例えば、評価値がレベル1からレベル5までの5段階であり、レベル1が加工の状態が最も良くレベル5が加工の状態が最も悪い場合、評価部13は、レベル3以上の場合に良であると判定する。なお、このように複数の段階で評価値を定義する場合には、例えば、キズ判定では、キズ候補の長さに応じて複数段階の評価値を定義するといった方法が考えられる。
補正量算出部14は、評価部13から出力される判定結果が良でない場合(ステップS9 No)、評価部13から出力される判定結果に基づいて加工パラメータの補正量を算出する(ステップS10)。補正量算出部14は、算出した補正量をレーザ加工装置20へ出力する。なお、補正量算出部14は、レーザ加工装置20から、レーザ加工装置20に設定されている加工パラメータを取得可能であり、評価部13から出力される判定結果と現在設定されている加工パラメータとに基づいて補正量を算出してもよい。レーザ加工装置20の制御部21は、補正量算出部14から受け取った補正量に基づいて加工パラメータを補正し(ステップS11)、再度、ステップS1を実行する。このように、評価部13による判定結果が否である場合には、加工パラメータが補正された後に再び切断加工が行われる。加工条件解析装置10は、切断加工が行われると、再度、ステップS2以降の処理を実行する。以上の処理により、評価部13から出力される判定結果が良となるまで、加工パラメータの補正と切断加工が繰り返される。なお、加工の安定性を確認したい場合は、同じ加工パラメータを用いた切断加工を複数回行い、その複数回の切断加工に関してそれぞれステップS2〜ステップS9を実行して、これらの切断加工に対応するステップS9の判定で全て良と判定された場合、加工パラメータ補正を終了するようにしてもよい。
ここで、ステップS10の加工パラメータの補正量の算出について詳細に説明する。補正すべき加工パラメータの例としては、レーザ出力、加工ガス圧、加工速度、集光光学系の焦点位置、集光径、レーザのパルス周波数、レーザのパルスのデューティ比、ノズル径、ワーク30とノズルとの距離、レーザビームモードの種類、ノズル穴の中心とレーザビームの位置関係等を挙げることができる。
補正量算出部14は、評価部13から評価値として加工不良モードごとの判定結果が出力される場合、各加工不良モードについての良否判定結果の組み合わせパターンに基づいて、補正する加工パラメータと該加工パラメータの補正量を決定してもよい。組み合わせパターンとは、例えば、評価値が1の場合を良、評価値が0の場合を不良とし、荒れ判定、キズ判定、酸化膜剥れ判定、ドロス判定にそれぞれ対応する評価値を評価部13が出力する場合、0,0,0,1などといった4つのデータの値の組み合わせのことである。例えば、ドロス判定に対応する値のみが1で他の値が0である場合には、加工パラメータのうちレーザ出力および加工ガス圧を補正量の算出対象とし、レーザ出力を増加させ加工ガス圧を低下させるように補正量を決定する。このように、組み合わせパターンごとに補正する加工パラメータと該加工パラメータの補正量を定めておくことができる。
また、評価部13から評価値として加工不良モードごとの判定結果が出力され、かつ各加工不良モードの良否判定結果が不良の度合いを示す値として出力される場合は、加工不良モードごとに補正すべき加工パラメータの補正量に重みをつけて変更してもよいし、補正を行う加工パラメータ自体を各加工不良モードの評価値に応じて変更してもよい。
例えば、評価部13が、各加工不良モードについて評価値として、0から1までの数値で3段階以上の値として出力するとする。例えば、ドロス判定の評価値としては、0,0.3,0.6,1.0の4段階で定義され、ドロス判定の評価値に応じて、レーザ出力および加工ガス圧の補正量を定めておく。例えば、ドロスの評価値が0.3である場合は、レーザ出力の補正量を+0.2[kW]とし、加工ガス圧の補正量を−0.01[MPa]とし、評価値が0.6の場合は補正量を+0.5[kW]とし、加工ガス圧の補正量を−0.02[MPa]とする。補正量算出部14は、このように定められた評価値と補正量との対応にしたがって補正量を求める。これにより、ドロスの評価値が0.3である場合は、レーザ出力を0.2[kW]上げ、加工ガス圧を0.01[MPa]下げ、評価値が0.6の場合は、レーザ出力を0.5[kW]上げ、加工ガス圧を0.02[MPa]下げることになる。なお、以上述べた補正量は一例であり、補正量は評価値に応じて定められていればよく、補正量をさらに補正前の加工パラメータの値に依存する値として定めておいてもよく、補正量の決定方法は上述した例に限定されない。
また、各加工不良モードについて評価値として連続した値が評価部13から出力される場合、評価値と補正量との対応をテーブルとして保持しておき、補正量算出部14が、テーブルを用いて、各加工パラメータの補正量を外挿または内挿により算出してもよい。外挿または内挿方法は、スプライン補間やラグランジュ補間等の多項式曲線を用いてもよいし、三角関数、円錐曲線等の各種関数を用いてもよい。
なお、以上述べた例では、評価部13は、加工不良モードとして切断面31の品質にかかわる不良の例を説明したが、作業者によって、切断面31の品質、生産性、加工の安定性など、優先度の高い改善項目が異なる場合がある。生産性、すなわち加工速度が極めて遅い場合は、切断面31の品質が良かったとしても、適切でない場合がある。このため、加工条件解析装置10が入力手段を設け、作業者からの改善項目ごとの優先度の入力を受け付けるようにしてもよい。補正量算出部14は、改善項目ごとの優先度に基づいて、加工パラメータの補正量を算出する。すなわち、補正量算出部14は、生産性、組み合わせパターン、加工安定性を含む複数の改善項目の優先度に基づいて加工パラメータの補正量を決定してもよい。例えば、改善項目によって、同じ加工パラメータの補正量の正負が逆になることが考えられる。このような場合には、補正量算出部14は、優先される作業項目に対応する補正量を選択する。
また、補正量算出部14は、優先度に応じた重み付けを行って補正量を求めてもよい。例えば、改善項目ごとに、各加工パラメータの補正量を予め定めておき、補正量算出部14は、改善項目の優先度に応じた重みを予め定めた補正量にそれぞれ乗算し、重みが乗算された後の補正量の合計を求めることで、出力する補正量を決定する。優先する項目ほど重みの値が大きくなるように重みを決定しておくと、優先度が高いほど出力される補正量への寄与度が大きくなる。このように、補正量算出部14は、優先度に応じた重み付けを行って、各項目のバランスをとって補正量を算出してもよい。
なお、加工条件解析装置10は、過去の試行結果を反映して、補正量を決定するようにしてもよい。この場合、加工条件解析装置10は、1組以上の加工パラメータと評価値の組を記憶しておく必要がある。図9は、複数回の試行結果を反映して、補正量を決定する場合の本実施の形態の加工条件解析装置の構成例を示す図である。図9に示す加工条件解析装置10aは、図1に示した加工条件解析装置10に加工条件記憶部15が追加されている。
加工条件解析装置10aでは、1つ前または過去の複数回の試行における、評価部13から出力される評価結果と該評価結果に対応する加工パラメータとの組の1組以上が加工条件記憶部15に記憶される。補正量算出部14は、評価部13から出力される評価結果と、加工条件記憶部15に記憶された過去の評価結果と加工パラメータとに基づいて、加工パラメータの補正量を算出する。このように、現在の情報だけでなく過去の情報に基づいて補正量を算出することで、補正量の算出精度を向上させることができる。一例としては、複数回分の評価結果と加工パラメータとの組を用いて補正量を算出することができる。実際の加工条件の調整においては、一般的に、同一の不具合パターンが、未観察あるいは観察不可能な状態量などの影響により、複数の加工条件で発生することが有りえる。そして、これらの補正条件の組み合わせも複数考えられる。このうちの1つの組み合わせが選択され次の試行加工において不具合パターンがどのように変化するかも考慮して補正量を決定することで、より正しい補正条件を見つけることが可能になる。例えば、加工条件解析装置10aが、加工パラメータである焦点位置を下げるように補正量を算出して、切断加工が行われる。加工条件記憶部15には、この加工において設定された加工パラメータと切断加工による結果に対応する評価結果とが記憶される。補正量算出部14は、評価部13から出力された評価結果が良でなかった場合、さらにもう一回、焦点位置を下げてレーザ加工の試行が実施される。補正量算出部14は、この2回の試行で、加工不良モードの一つであるドロスの判定が改善されなかった場合、加工条件記憶部15に記憶された加工パラメータと評価値の組に基づき、焦点位置を2回の試行で下げた量以上に焦点位置を上げるように補正量を算出してもよい。
また、加工条件解析装置10aは、入力手段を備え、作業者から、各加工不良モードに対応する段階的な評価値、または良否2つの判定結果で構成される評価値を出力する際に用いる各段階を決めるための閾値の入力を受け付けるようにしてもよい。そして、評価部13は、入力された閾値を用いて評価値を決定する。作業者ごとに、作業者の要望に応じた閾値を決定し各加工不良モードに評価の段階を細かくまたは粗く設定することができる。また、これにより、作業者は評価値の基準を厳しくまたは甘くする設定を行うことができる。
次に、本実施の形態の加工条件解析装置10のハードウェア構成について説明する。加工条件解析装置10の特徴量抽出部12、評価部13および補正量算出部14は、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサを備える回路であってもよいし、専用ハードウェアであってもよい。
処理回路がプロセッサを備える回路である場合、処理回路は例えば図10に示した構成の処理回路である。図10は、本実施の形態の処理回路の構成例を示す図である。図10に示す処理回路100は、プロセッサ101およびメモリ102を備える。特徴量抽出部12、評価部13および補正量算出部14が図10に示した処理回路100によって実現される場合、プロセッサ101が、メモリ102に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、これらが実現される。すなわち、特徴量抽出部12、評価部13および補正量算出部14が図10に示した処理回路100によって実現される場合、これらの機能は、ソフトウェアであるプログラムを用いて実現される。メモリ102はプロセッサ101の作業領域としても使用される。プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)等である。メモリ102は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク等が該当する。
特徴量抽出部12、評価部13および補正量算出部14が専用ハードウェアである場合、処理回路は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。なお、特徴量抽出部12、評価部13および補正量算出部14は、プロセッサを備える処理回路および専用ハードウェアを組み合わせて実現されてもよい。特徴量抽出部12、評価部13および補正量算出部14は、複数の処理回路により実現されてもよい。
レーザ加工の加工条件調整は、多次元のパラメータ探索となり、所望の水準以上の加工品質を得るための加工条件を探索するには非常に多くの試行回数を必要とする。本実施の形態の加工条件解析装置10,10aによれば、切断面の特徴量を抽出し、切断面の複数の加工不良モードの良否判定を行い、複数の加工不良モードごとの良否の組み合わせパターンと関連付けられた加工パラメータの補正量を決定することによって少ない試行回数で加工条件の補正を行うことが可能になる。
また、作業者が熟練者である場合には、経験とノウハウにより加工条件の調整を行うことができるが、本実施の形態の加工条件解析装置10,10aによれば、熟練者の知識およびノウハウを必要とせずに、加工条件の調整を行うことが可能である。また、本実施の形態の加工条件解析装置10を用いて調整された加工条件を用いて、レーザ加工装置20の加工条件の生成を行い、レーザ加工装置20における生産のための製造を行ってもよい。特許文献1に記載の技術では、レーザ切断面の状態量観測部において観測データとして切断面の平滑度あるいは面粗度等の測定値が用いられるため、測定に時間がかかる。このため、1回の切断加工の試行に時間を要する。本実施の形態の加工条件解析装置10,10aによれば、切断面31を撮影した画像から特徴量を抽出し、特徴量を用いて、切断面31の加工不良モードごとの良否判定を行うため1回の試行に要する時間を削減することができる。このように、本実施の形態では、作業者の熟練度によらず、調整時間を抑制して一定以上の水準の加工品質が得られるように調整することができる。
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2にかかる加工条件解析装置の構成例を示す図である。本実施の形態のレーザ加工システムは、加工条件解析装置10の替わりに図11に示す加工条件解析装置10bを備える以外は、実施の形態1のレーザ加工システムと同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
本実施の形態の加工条件解析装置10bでは、実施の形態1の加工条件解析装置10に機械学習器16が追加され、評価部13が削除されている。機械学習器16は、特徴量抽出部12により抽出された特徴量と、作業者が作成した評価値(作業者による評価値)とを関連付けて学習する。作業者による評価値は、例えば、図示しない入力手段から入力されてもよいし、他の装置から受信されてもよい。なお、機械学習器16は、実施の形態1の特徴量抽出部12、評価部13および補正量算出部14と同様に処理回路により実現される。
機械学習器16は、学習部161およびデータ取得部162を備える。学習部161は、機械学習により、入力と結果のデータの組を学習する。学習部161の機械学習のアルゴリズムとしてはどのようなものを用いてもよいが、例えば、教師あり学習のアルゴリズムを用いることができる。データ取得部162は、学習部161における入力として、特徴量抽出部12から特徴量を取得し、取得した特徴量を学習部161へ入力する。また、学習部161には、作業者による評価値も入力される。作業者による評価値は、切断面31の良否を各加工不良モードに関して判断した結果であり、実施の形態1で述べた評価部13における判定結果における評価値と同様に、段階的にレベルを示す値であってもよいし連続した数値であってもよい。すなわち、作業者による評価値は、実施の形態1で述べた組み合わせパターンに相当するものを作業者が決定したものである。なお、データ取得部162は、撮影器11から出力される画像を学習部161への入力として取得してもよい。このように、データ取得部162は、撮影器11から出力される画像または特徴量抽出部12から出力される特徴量を、状態変数として取得し、学習部161へ与える。学習部161は、状態変数と評価値で構成されるデータセットを用いて、切断面31の良否を機械学習することができる。データセットは、状態変数および評価データを互いに関連付けたデータである。
そして、機械学習による学習済みモデルを用いて、学習部161が、特徴量に応じた評価値を出力することで、より高精度に加工パラメータを補正することが可能である。なお、ここでは、学習部161が切断面31の良否を機械学習する機能と学習済モデルとしての機能の両方を有するようにしたが、学習済モデルを用いて評価値を出力する推論部を学習部161とは別に設けてもよい。すなわち、加工条件解析装置10bは、学習部161により学習が行われた学習済モデルを用いて切断面情報に基づいて組み合わせパターンを算出する推論部を備えてもよい。
なお、図11に示した例では、機械学習器16は加工条件解析装置10b内に設けられるが、加工条件解析装置10bとは別の装置であってもよい。例えば、加工条件解析装置10bと機械学習器16がネットワークを介して接続されていてもよい。また、機械学習器16は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
また、加工条件解析装置10bが実施の形態1で述べた評価部13を備え、実施の形態1と同様の動作により評価部13が判定した判定結果を用いて学習する機能を有していてもよい。例えば、上述したデータセットを用いてある程度学習が進んだ後に、評価部13による判定結果を修正し、その結果を学習部161が学習するようにしてもよい。図12は、評価部13を備える本実施の形態の加工条件解析装置10bの構成例を示す図である。評価部13は、例えば、実施の形態1で述べた、複数の加工不良モードのそれぞれに対応する複数の評価値である組み合わせパターンを算出し作業者がその評価値を修正し、修正した結果を機械学習器16へ入力する。このとき、評価部13における評価値を決定するためのアルゴリズム、判定のための閾値は作業者により適宜変更可能であってもよい。
学習部161は、例えば、ニューラルネットワークモデルを用いて、いわゆる教師あり学習により、切断面31の良否評価結果を学習する。ここで、教師あり学習とは、ある入力と結果(ラベル)とのデータの組であるデータセットを大量に学習器に与えることで、それらのデータセットにある特徴を学習し、入力から結果を推定する機械学習である。
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層、複数のニューロンからなり隠れ層とも呼ばれる中間層、および複数のニューロンからなる出力層で構成される。中間層は、1層でもよく2層以上であってもよい。
図13は、実施の形態2にかかるニューラルネットワークモデルの構成例を示す図である。X1,X2,X3は入力層のニューロンであり、Y1,Y2は中間層のニューロンであり、Z1,Z2,Z3は出力層のニューロンである。例えば、図13に示すような3層のニューラルネットワークモデルであれば、3つの入力値のそれぞれに対応するX1,X2,X3にそれぞれ入力されると、各入力値は、対応する重みw11〜w16が乗算されて中間層のニューロンであるY1,Y2に入力される。そして、Y1,Y2からの出力値は、対応する重みw21〜w26が乗算されて、出力層のニューロンであるZ1,Z2,Z3に入力される。出力層は、入力された値を加算し、出力結果として出力する。例えば、Z1,Z2,Z3からそれぞれ出力される結果を各加工不良モードに対応する評価結果に対応されることができる。この出力結果は、重みw11〜w16と重みw21〜w26の値によって変わる。
本実施の形態では、上述したデータセットを用いて、上記ニューラルネットワークの出力結果が、正解である切断面31の良否の評価結果に近づくように、重みw11〜w16と重みw21〜w26が調整されることにより、学習が行われる。なお、図13は、一例であり、ニューラルネットワークモデルの層数、および各層に属するニューロンの数は、図13の例に限定されない。
また、学習部161は、ニューラルネットワークモデルを用いて、いわゆる教師なし学習によって、切断面31の良否の評価結果を学習することもできる。教師なし学習とは、入力データのみを大量に学習部161に与えることで、入力データがどのような分布をしているか学習し、対応する教師出力データを与えなくても、入力データに対して圧縮、分類、整形等を行う方法を学習する手法である。例えば、教師なし学習では、入力データのセットが有する特徴が似ているもの同士をクラスタリングすること等ができる。何らかの基準を設けてクラスタリング等の結果を最適にするように、クラスタリング等の結果に対して評価結果の割り当てを行うことで、評価結果の予測を実現することできる。また、教師なし学習と教師あり学習の中間的な問題設定として、半教師あり学習と呼ばれるものもあり、これは一部のみ入力と出力のデータの組が存在し、それ以外は入力のみのデータである場合がこれに当たる。本実施の形態の学習部161は、半教師あり学習により機械学習を実現してもよい。
また、機械学習器16は、複数の加工条件解析装置からデータセットを取得し、切断面31の良否の評価結果を学習するようにしてもよい。複数の加工条件解析装置は、本実施の形態の加工条件解析装置10bであっても良いし実施の形態1の加工条件解析装置10,10aであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。なお、機械学習器16は、同一の現場で使用される複数の加工条件解析装置からデータセットを取得してもよいし、異なる現場でそれぞれ稼動する複数の加工条件解析装置からデータセットを取得してもよい。さらに、データセットの取得元の加工条件解析装置を途中で追加し、または、取得元の加工条件解析装置を途中で除去することも可能である。また、加工条件解析装置10bとは別に機械学習器16を設け、機械学習器16が、ある加工条件解析装置10bから取得したデータセットにより学習した後、別の加工条件解析装置10bと接続してさらにこの加工条件解析装置10bからデータセットを取得して再学習してもよい。
また、以上の説明では、撮影器11から出力される画像または特徴量抽出部12から特徴量と、切断面31の良否の評価結果との関係を学習する例を説明したが、撮影器11から出力される画像または特徴量抽出部12から出力される特徴量と、加工パラメータの補正量との関係を学習してもよい。この場合、データ取得部162は、撮影器11から出力される画像または特徴量抽出部12から出力される特徴量と、補正量算出部14から出力される補正量とを取得することになる。この場合、学習を行った後は、機械学習器16は、撮影器11から出力される画像または特徴量抽出部12から出力される特徴量に基づいて、各加工パラメータの補正量を算出して出力することができる。学習済モデルを機械学習器16と別に備える場合には、加工条件解析装置10bは、学習部161により学習が行われた学習済モデルを用いて切断面情報に基づいて加工パラメータの補正量を算出する推論部を備える。
また、データ取得部162は、学習部161の入力として、撮影器11から出力される画像または特徴量抽出部12から出力される特徴量だけでなく、さらに、切断面31の板厚、ワーク30の材質等も入力としてよい。また、学習部161で用いられる学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習(Deep Learning)などのニューラルネットワークを用いることもでき、他の公知の方法、例えば遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシン、フィッシャー判別法、部分空間法、マハラノビス空間を用いた判別分析などに従って機械学習を実行してもよい。また、学習部161で用いられる学習アルゴリズムとして、決定木、ランダムフォレスト(Random Forest)、ロジスティック回帰、k近傍法(kNN)、部分空間法、CLAFIC(CLAss-Featuring Information Compression method)、Isolation Forest、LOF(Local Outlier Factor)、ブースティング、AdaBoost、LogitBoost、One-Class SVM(Support Vector Machine)、Gaussian Mixture Model、判別分析法(Discriminant Analysis)、単純ベイズ分類器(Naive Bayes classifier)等を用いてもよい。また、深層学習、畳み込みニューラルネットワーク(Convolution Neural Network)などのように、画像から自動的に特徴量を抽出する学習を行う場合は、特徴量抽出部12を設けなくてもよい。また、加工不良モードごとに機械学習器16を設けてもよいし、1つの機械学習器16を複数の加工不良モードに対応させてもよい。以上述べた以外の本実施の形態の動作は実施の形態1と同様である。
以上のように、本実施の形態では、撮影器11から出力される画像または特徴量抽出部12から出力される特徴量と、切断面31の良否の評価結果とを用いて、切断面31の良否の判定結果を機械学習する。これにより、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、実施の形態1より精度よく加工パラメータの補正量を求めることができる。
実施の形態3.
図14は、本発明の実施の形態3にかかる加工条件解析装置の構成例を示す図である。本実施の形態のレーザ加工システムは、加工条件解析装置10の替わりに図14に示す加工条件解析装置10cを備える以外は、実施の形態1のレーザ加工システムと同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
本実施の形態の加工条件解析装置10cは、実施の形態1の加工条件解析装置10に表示部17および変更受付部18が追加されている。表示部17は、ディスプレイ、モニタ、タッチパネルなどにより実現される。変更受付部18は入力手段であり、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネルなどにより実現される。
本実施の形態では、評価部13が、切断面31の加工品質が不良であると判定した場合、表示部17が、切断面31の画像を表示する。すなわち、表示部17は、評価部13により算出された評価値のうち不良であることを示すものがある場合、該評価値に対応する加工不良モードの判定の根拠となる画像における部分を表示する。これにより、作業者は、加工品質が不良であると判定された切断面31を画像により把握することができる。また、加工不良モードごとに、不良と判定された根拠となる部分がわかるように表示することで、作業者は、どの部分に問題があるかを把握することができる。
作業者は、表示部17に表示された切断面31を画像で確認し、変更受付部18を用いて、評価部13における判定結果を変更したり、評価部13における判定に用いられる閾値などを変更したりするための入力を行うことができる。加工良否の評価基準に関しては、使用する作業者によって良否判断が異なることがある。表示部17に表示された切断面31を作業者が確認することによって、作業者自身が判定結果を変更することが可能である。評価部13は、作業者から入力された判定結果を反映した評価値を補正量算出部14へ出力する。
図15は、本実施の形態の表示部17に表示される表示画面の一例を示す図である。図15に示した表示画面200には、加工不良モードごとの判定結果を示す評価値と画像が上部に表示されている。下部には、該判定結果に対応する加工パラメータの補正量が補正条件として示されている。図15に示した例では、ドロス、キズおよび荒れが発生していると評価部13により判定された例を示しており、画像内の対応する部分が点線で囲まれて示されている。また、各画像の下部には、数値として表現された評価値がレベル1.0などとして示されている。例えば、作業者が考えるキズのレベルと、評価部13により判定された評価値とが異なっている場合には、作業者は、変更受付部18を介して評価値を変更する。または、作業者は、評価値自体を変更する替わりに、評価値の各レベルを判定のための閾値を変更してもよい。これにより作業者の所望の加工品質に近づくように加工パラメータの補正量が変更されるようになる。
なお、加工条件解析装置10cに機械学習器を設け、機械学習器が、撮影器11から出力される画像または特徴量抽出部12から出力される特徴量と、作業者により施された変更内容を学習するようにしてもよい。また、実施の形態2の加工条件解析装置10bに、表示部17および変更受付部18を追加し、作業者により変更された後の評価結果を機械学習器16が学習するようにしてもよい。
以上のように、本実施の形態によれば、切断面31の加工品質が不良であると判定した場合、表示部17が、切断面31の画像を表示し、作業者からの評価結果への変更を受け付けるようにした。これにより、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、作業者の要望に応じた加工状態を実現することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。