JP6970458B2 - アプタマー及びその使用 - Google Patents

アプタマー及びその使用 Download PDF

Info

Publication number
JP6970458B2
JP6970458B2 JP2019552416A JP2019552416A JP6970458B2 JP 6970458 B2 JP6970458 B2 JP 6970458B2 JP 2019552416 A JP2019552416 A JP 2019552416A JP 2019552416 A JP2019552416 A JP 2019552416A JP 6970458 B2 JP6970458 B2 JP 6970458B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fgfr1
aptamer
seq
cells
structured
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019552416A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2019093503A1 (ja
Inventor
信介 山東
亮介 植木
彩香 植木
早紀 熱田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Tokyo NUC
Original Assignee
University of Tokyo NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Tokyo NUC filed Critical University of Tokyo NUC
Publication of JPWO2019093503A1 publication Critical patent/JPWO2019093503A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6970458B2 publication Critical patent/JP6970458B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/11DNA or RNA fragments; Modified forms thereof; Non-coding nucleic acids having a biological activity
    • C12N15/115Aptamers, i.e. nucleic acids binding a target molecule specifically and with high affinity without hybridising therewith ; Nucleic acids binding to non-nucleic acids, e.g. aptamers

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Description

本発明は、アプタマー及びその使用に関する。より詳細には、本発明は、アプタマー、Fibroblast Growth Factor Receptor 1(FGFR1)シグナリング関連疾患の予防又は治療剤、細胞培養用組成物、細胞培養方法、Fibroblast Growth Factor 2(bFGF)とFGFR1との結合阻害方法、細胞の増殖抑制方法、FGFR1の活性化方法、細胞の増殖促進方法、及び、多能性幹細胞の多能性維持方法に関する。本願は、2017年11月11日に、米国に仮出願された米国特許第62/584,755号明細書に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
受容体シグナリングでは、細胞が細胞膜上の受容体でリガンドを受容すると、細胞内にシグナルが伝達され、細胞の分化や増殖等が制御されることが知られている。シグナル分子の受容により、細胞は周囲の環境や状況を検知できる。
線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factors,FGF)は増殖因子のひとつであり、チロシンキナーゼ型受容体を活性化して、細胞増殖や細胞分化の過程において重要な役割を果たしている(例えば、非特許文献1を参照)。なかでも、bFGFは、induced pluripotent stem cell(iPS細胞)等の多能性幹細胞を、その多能性と自己複製能を維持した状態で培養するために培地に添加される重要な因子の1つである。
Lemmon, M. A. and Schlessinger, J. Cell Signaling by Receptor Tyrosine Kinases. Cell 141, 1117-1134,2010.
しかしながら、bFGFの製造には、動物細胞又は微生物を用いた発現系を利用する必要がある。このため、bFGFは高価なものとなっている。また、リコンビナントタンパク質は、品質管理が煩雑である。そこで、bFGFの機能を模倣することができる合成代替物の開発が求められている。このような背景のもと、本発明は、bFGFの活性をアプタマーで模倣する技術を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]配列番号1に記載の塩基配列を含み、Fibroblast Growth Factor Receptor 1(FGFR1)に結合する活性を有するポリヌクレオチドからなる、アプタマー。
[2]配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが少なくとも一部を形成するループ構造を有する、[1]に記載のアプタマー。
[3]前記ループ構造が塩基数28〜40のポリヌクレオチド鎖からなる、[2]に記載のアプタマー。
[4]前記ループ構造に連結する2本鎖ポリヌクレオチドからなるステム構造を有する、[2]又は[3]に記載のアプタマー。
[5]グアニン四重鎖構造を形成する、[1]〜[4]のいずれかに記載のアプタマー。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のアプタマーが2つ以上連結された、FGFR1に結合してFGFR1を活性化する活性を有する、アプタマー。
[7][1]〜[5]のいずれかに記載のアプタマーがリンカーで連結され、前記リンカーの長さがポリヌクレオチド換算で80塩基以下の長さである、[6]に記載のアプタマー。
[8]配列番号11に記載の塩基配列、又は配列番号11に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり且つFGFR1に結合してFGFR1を活性化する活性を有する、[6]又は[7]に記載のアプタマー。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載のアプタマーを有効成分として含有する、FGFR1シグナリング関連疾患の予防又は治療剤。
[10][1]〜[8]のいずれかに記載のアプタマーを有効成分として含有する、細胞培養用組成物。
[11][1]〜[8]のいずれかに記載のアプタマーを含む培地で、FGFR1陽性細胞を培養することを含む、細胞培養方法。
[12][1]〜[5]のいずれかに記載のアプタマーを、FGFR1陽性細胞と接触させることを含む、bFGFと前記FGFR1との結合阻害方法。
[13][1]〜[5]のいずれかに記載のアプタマーを、FGFR1陽性細胞と接触させることを含む、前記細胞の増殖抑制方法。
[14][6]〜[8]のいずれかに記載のアプタマーを、FGFR1陽性細胞と接触させることを含む、前記FGFR1の活性化方法。
[15][6]〜[8]のいずれかに記載のアプタマーを、FGFR1陽性細胞と接触させることを含む、前記細胞の増殖促進方法。
[16][6]〜[8]のいずれかに記載のアプタマーを、FGFR1陽性多能性幹細胞と接触させることを含む、前記多能性幹細胞の多能性維持方法。
本発明によれば、bFGFの活性をアプタマーで模倣する技術を提供することができる。
アプタマーの例を示す模式図である。 マルチ構造アプタマーの例を示す模式図である。 マルチ構造アプタマーの例を示す模式図である。 マルチ構造アプタマーの例を示す模式図である。 マルチ構造アプタマーの例を示す模式図である。 (a)及び(b)は、リンカーが2本鎖DNAであるアプタマーの一例を示す模式図である。 複数のリンカーを含むマルチ構造アプタマーの一例を示す模式図である。 (a)及び(b)は、アプタマー固定担体の一例を示す模式的である。 実験例2において、アプタマーの立体構造を解析した結果を示す模式図である。 実験例2において、アプタマーとFGFR1−Fcビーズとの結合を解析した結果を示すグラフである。 実験例3の結果を示す写真である。 (a)は、実験例4におけるフローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。(b)は、実験例4におけるSPR解析の結果を示すグラフである。 実験例5におけるフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。 (a)及び(b)は、実験例6におけるCDスペクトル測定の結果を示すグラフである。 実験例7におけるCDスペクトル測定の結果を示すグラフである。 (a)及び(b)は実験例8におけるフローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。 実験例9におけるCDスペクトル測定の結果を示すグラフである。 (a)は、実験例10においてアプタマーの構造を予測した結果を示す図である。(b)及び(c)は、実験例10においてFGFR1の活性化を解析した結果を示す写真である。 実験例11においてFGFR1の活性化を解析した結果を示す写真である。 (a)は、実験例12において、Oct−4及びNanogの発現量を、定量的RT−PCR(RT−qPCR)により解析した結果を示すグラフである。(b)は、実験例12において、細胞増殖を測定した結果を示すグラフである。 実験例13における蛍光免疫染色の結果を示す写真である。 (a)及び(b)は、実験例14において作製したアプタマーの構造を示す模式図である。 (a)は、実験例15において、FGFR1のリン酸化を測定した結果を示すグラフである。(b)は、実験例15において、Erk1/2のリン酸化を測定した結果を示す写真である。 (a)は、実験例16において、SSEA−4タンパク質の発現を解析した結果を示すグラフである。(b)は、(a)の結果を数値化したグラフである。
[アプタマー]
1実施形態において、本発明は、配列番号1に記載の塩基配列を含み、FGFR1に結合する活性を有するポリヌクレオチドからなる、アプタマーを提供する。
アプタマーとは、標的分子に結合可能な分子であり、核酸やペプチドからなるアプタマーが知られている。本実施形態のアプタマーは、FGFR1に結合する核酸アプタマーである。本実施形態のアプタマーは、FGFR1に結合して、bFGFとFGFR1との結合を阻害することが好ましい。
なお、ヒトFGFR1タンパク質には複数のアイソフォームが存在し、NCBIアクセッション番号は、NP_056934.2、NP_001167534.1、NP_001341297.1、NP_001167537.1、NP_001341299.1等である。本実施形態のアプタマーが結合するFGFR1としては、なかでもNCBIアクセッション番号がNP_056934.2であるFGFR1が好ましい。
また、ヒトbFGFタンパク質にも複数のアイソフォームが存在し、NCBIアクセッション番号はNP_001348594.1、NP_001997.5等である。本実施形態のアプタマーがFGFR1との結合を阻害するbFGFとしては、なかでもNCBIアクセッション番号がNP_001348594.1であるbFGFが好ましい。
本明細書において、核酸は、DNAやRNA等の天然の核酸であってもよく、LNA(locked nucleic acid)やBNA(bridged nucleic acid)等の人工核酸であってもよく、核酸と同等の機能を有するものであれば、PNA(Peptide Nucleic Acid)等のペプチド核酸に代表される核酸類縁体であってもよい。アプタマーを構成する核酸は、DNAとLNAの組合せ等、複数種の核酸を組合せることが可能である。
FGF受容体は、FGFと結合可能なタンパク質であり、FGF受容体としては、受容体型チロシンキナーゼの一種のFGFR1〜4が知られている。受容体型チロシンキナーゼは、細胞膜貫通型のタンパク質として知られ、細胞外側にリガンド結合ドメインを有し、細胞質側に細胞内ドメインを有する。リガンド結合ドメインはリガンドと結合可能である。細胞内ドメインは、キナーゼ活性を有する。
受容体型チロシンキナーゼは、リガンドの結合によって2量体を形成することが知られている。2量体が形成されると、2量体の細胞内ドメインのチロシン残基が互いにリン酸化される。本実施形態のアプタマーが結合するFGFR1は、単量体であってもよく、2量体以上の複合体であってもよい。
図1に1実施形態に係るアプタマーの模式図を示す。アプタマー1は、ポリヌクレオチドからなり、配列番号1に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド10である。
実施例において後述するように、発明者らは、FGFR1への結合能を有するアプタマーをスクリーニングした。その結果、配列番号1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチドが、FGFR1への結合能を有することを見出した。配列番号1に記載の塩基配列は、スクリーニングにより得られた、FGFR1への結合能を有する数十種類のアプタマーのコンセンサス配列である。
配列番号1に記載の塩基配列(5’−kywtgghwkdggatggyrkggkyt−3’)において、kはg(グアニン)又はt(チミン)を表し、yはc(シトシン)又はt(チミン)を表し、wはa(アデニン)又はt(チミン)を表し、dはa(アデニン)、g(グアニン)又はt(チミン)を表し、hはa(アデニン)、c(シトシン)又はt(チミン)を表す。また、配列番号1に記載の塩基配列は、任意の位置の塩基が1若しくは数個の挿入又は欠失したものであってもよい。ここで、1若しくは数個とは、1〜3個であってもよく、1〜2個であってもよく、1個であってもよい。
より具体的には、例えば、5’側から2番目の「y」が欠失していてもよい。あるいは、5’側から8番目の「w」が欠失していてもよい。あるいは、5’側から17番目の「y」と18番目の「r」との間に1塩基の挿入があってもよい。
更に具体的には、配列番号1に記載の塩基配列は、以下の配列番号24〜35のいずれかに記載の塩基配列であってもよい。実施例において後述するように、配列番号24〜35に記載の塩基配列を含むヌクレオチドは、配列番号1に示すコンセンサス配列を有するヌクレオチドであり、FGFR1に結合する活性を有することが確認されたものである。
5’-ttatggctggggatggtgtgggtt-3’(配列番号24)
5’-ttatggcaggggatggtgtgggtt-3’(配列番号25)
5’-gtttggtgtggatggcaggggct-3’(配列番号26)
5’-ttatggtgtggatggctatgggct-3’(配列番号27)
5’-ttatggtgtggatggctggggttt-3’(配列番号28)
5’-tcatggtgtggatggcaggggct-3’(配列番号29)
5’-ttttggtgtggatggcaggggcg-3’(配列番号30)
5’-ttatggtgtggatggcaggggct-3’(配列番号31)
5’-tatggtgtggatggcaggggct-3’(配列番号32)
5’-tcatggagtggatggcaggggtt-3’(配列番号33)
5’-tcatggtgtggatggcaggggtt-3’(配列番号34)
5’-ttatggttaggatggtgtggttt-3’(配列番号35)
本実施形態のアプタマーの塩基数は、例えば、28〜48塩基であってもよく、33〜43塩基であってもよく、38塩基であってもよい。
本実施形態のアプタマーは、配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが少なくとも一部を形成するループ構造を有することが好ましい。実施例において後述するように、配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが少なくとも一部を形成するループ構造を有するアプタマーは、FGFR1に対する結合能が高い傾向にある。
本明細書中において、ループ構造とは、鎖状の化合物の1か所以上が互いに結合して形成された環状の構造をいう。例えば、ループ構造は、1本鎖核酸において、1組以上の相補的な塩基同士が塩基対を形成して形成された環状の構造であってもよい。ループ構造は、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが一部を形成していてもよく、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドのみから形成されていてもよい。ループ構造を形成するための結合の手段は、塩基対の形成によるものに限られず、例えば、核酸の5’末端と3’末端とのライゲーションによるものや、その他任意の架橋構造によるものであってもよい。
配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドがループ構造の一部を形成している場合、ループ構造の残分は、アプタマーがFGFR1に結合する活性を有する限りいかなる塩基配列を有していてもよい。
ループ構造の塩基数は、例えば、28〜40塩基であってもよく、28〜35塩基であってもよく、28〜30塩基であってもよい。
図1に示すように、アプタマー2は、ポリヌクレオチドからなり、配列番号1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド10が、少なくとも一部を形成するループ構造20を有する。
本実施形態のアプタマーは、前記ループ構造に連結する2本鎖ポリヌクレオチドからなるステム構造を有することが好ましい。実施例において後述するように、上述したループ構造に連結する2本鎖ポリヌクレオチドからなるステム構造を有するアプタマーは、FGFR1に対する結合能が更に高い傾向にある。
本明細書中において、ステム構造とは、鎖状の化合物の2か所以上が互いに結合して形成された鎖状の構造をいう。例えば、ステム構造は、1本鎖核酸において、1組以上の相補的な塩基同士が塩基対を形成して形成された鎖状の構造であってもよい。ステム構造を形成するための結合の手段は、塩基対の形成によるものに限られず、その他任意の架橋構造によるものであってもよい。
ループ構造にステム構造が連結する形態は特に限定されず、ループ構造及びステム構造が一続きのポリヌクレオチドから形成された形態を例示できる。このような核酸の形態は、一般にステム・ループ構造と呼ばれる構造であり、tRNA等に見出される。ステム構造は、互いに相補的な塩基同士が対合して形成された2本鎖ポリヌクレオチドに代表される。
図1に示すように、アプタマー3は、ポリヌクレオチドからなり、配列番号1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド10が少なくとも一部を形成するループ構造20と、ループ構造20に連結する2本鎖ポリヌクレオチドからなるステム構造30とを有する。
アプタマーが2本鎖ポリヌクレオチドからなるステム構造を有することにより、容易にループ構造を形成可能であり、FGF受容体への結合能が向上する。
ステム構造は、2本鎖ポリヌクレオチドのみから構成されていてもよい。その場合、2本鎖ポリヌクレオチドを形成する片方の1本鎖ポリヌクレオチドは、塩基数2〜50のポリヌクレオチド鎖であってよく、塩基数4〜30のポリヌクレオチド鎖であってもよく、塩基数5〜15のポリヌクレオチド鎖であってもよい。
本実施形態のアプタマーは、グアニン四重鎖構造を形成することが好ましい。実施例において後述するように、グアニン四重鎖構造を形成するアプタマーは、FGFR1に対する結合能が更に高い傾向にある。
グアニン四重鎖構造は、標的に結合能を有する核酸において確認される場合がある。グアニン四重鎖という名称のとおり、グアニン四重鎖構造は、4組のG配列により形成される特定の立体構造である(Nonaka Y., et al., Screening and improvement of an anti-VEGF DNA aptamer, Molecules, 15 (1), 215-225, 2010. を参照)。
グアニン四重鎖はそのトポロジーから「並行型」及び「逆並行型」に分類可能である。ここで、本実施形態のアプタマーが形成するグアニン四重鎖構造は、並行型であってもよく、逆並行型であってもよい。
ポリヌクレオチドがグアニン四重鎖構造を形成するかどうかは、公知の方法により確認することができる。並行型グアニン四重鎖構造の存在は、例えば、CDスペクトル測定によって、245nm付近の負のピークと、265nm付近の正のピークが検出されることにより確認することができる。また、グアニン四重鎖構造の形成はKイオンを要求するため、例えば、Kイオンを含む溶液中におけるポリヌクレオチドのCDスペクトル測定結果と、Kイオンを含まない溶液中におけるポリヌクレオチドのCDスペクトル測定結果とを比較することにより、グアニン四重鎖構造の存在を、より信頼性高く確認することができる。
本実施形態のアプタマーは、グアニン四重鎖構造を形成するという観点から、連続する2つ以上のGの配列を4組以上含むものであることが好ましい。本実施形態のアプタマーがループ構造を有する場合、ループ構造を形成するポリヌクレオチドは、連続する2つ以上のGの配列を4組以上含むものであることが好ましい。
本実施形態のアプタマーが有するポリヌクレオチドの塩基数は、500塩基以下であってもよく、250塩基以下であってもよく、150塩基以下であってもよく、80塩基以下であってもよく、70塩基以下であってもよく、60塩基以下であってもよく、55塩基以下であってもよい。
また、本実施形態のアプタマーが有するポリヌクレオチドの塩基数は、28塩基以上であってもよく、35塩基以上であってもよく、40塩基以上であってもよく、45塩基以上であってもよい。
また、本実施形態のアプタマーが有するポリヌクレオチドの塩基数は、例えば、28〜500塩基であってもよく、35〜250塩基であってもよく、40〜150塩基であってもよく、40〜150塩基であってもよく、40〜80塩基であってもよく、40〜70塩基であってもよく、40〜60塩基であってもよく、45〜55塩基であってもよい。
本実施形態のアプタマーは、FGFR1に結合する活性を有する限り、配列番号1に示される塩基配列を含むポリヌクレオチドに、更にいかなる塩基配列を有するポリヌクレオチドが付加されたものであってもよい。また、本実施形態のアプタマーは、例えば生体内での安定性を高めるための種々の修飾や、色素等の標識が付加されていてもよい。
実施形態のアプタマーは、公知の手法により製造可能である。核酸合成の手法やその修飾の方法は、生命科学分野において広く用いられている。
[マルチ構造アプタマー]
1実施形態において、本発明は、上述したアプタマーが2つ以上連結され、FGFR1に結合してFGFR1を活性化する活性を有する、アプタマーを提供する。
本実施形態のアプタマーは、上述したアプタマーを1単位として、2単位以上のアプタマーが連結されたマルチ構造を有するものである。本明細書において、2単位以上のアプタマーが連結されたアプタマーを「マルチ構造アプタマー」という場合がある。マルチ構造アプタマーとしては、例えば、1単位のアプタマーが2つ連結されたダイマーを例示することができる。なお、連結されたアプタマー同士は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
マルチ構造アプタマーは、ループ構造に連結する2本鎖ポリヌクレオチドからなるステム構造を有することが好ましい。また、ループ構造が塩基数28〜40のポリヌクレオチド鎖からなるものであってもよい。また、マルチ構造アプタマーは、グアニン四重鎖構造を形成することが好ましい。したがって、マルチ構造アプタマーは連続する2つ以上のGの塩基配列を4組以上含んでいることが好ましい。
図2は、マルチ構造アプタマーの例を示す模式図である。マルチ構造アプタマー4は、ポリヌクレオチドからなり、配列番号1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド10が2つ以上連結されたマルチ構造を有する。マルチ構造アプタマー4は、1単位のアプタマー1が、2つ連結されたものである。ポリヌクレオチド10同士は同一の塩基配列を有するポリヌクレオチドであってもよい。又は、ポリヌクレオチド10同士は、それぞれ異なる塩基配列を有するポリヌクレオチドであってもよい。
マルチ構造アプタマーは、FGFR1に結合して、FGFR1を活性化する活性を有する。FGFR1の活性化状態は、公知の検出方法により確認できる。FGFR1の活性化は、例えば、FGFR1のリン酸化を検出することで検出することができる。FGFR1のリン酸化は、FGFR1のリン酸化を特異的に検出可能な公知の抗体を用いて、検出すすることができる。
アプタマーが、FGF受容体活性化作用を有するかどうかは、公知の検出方法により確認することができる。例えば、FGF受容体を発現している細胞を含みアプタマーを含まない試料液Cと、FGF受容体を発現している細胞及びアプタマーを含む試料液Dとを用意する。各試料液中で細胞を培養した後、試料液C処理と試料液D処理とで、FGF受容体のリン酸化を示す値を比較すればよい。比較実験は比較可能な同条件のもと行われるものとする。試料液DにおけるFGF受容体のリン酸化を示す値が、試料液CにおけるFGF受容体のリン酸化を示す値と比べ、高い値であった場合、当該アプタマーが、FGF受容体活性化作用を有すると判断できる。なお、アプタマーが、FGFR1活性化作用を有すると判断する方法は、上記方法に限られない。
図2に示すように、マルチ構造アプタマー5は、配列番号1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド10が少なくとも一部を形成するループ構造20が、2つ以上連結されたマルチループ構造を有する。このように、マルチ構造アプタマー5は、ループ構造20を有する1単位のアプタマー2が、2つ連結されたものである。
マルチ構造アプタマーは、ループ構造に連結する2本鎖ポリヌクレオチドからなるステム構造を有することが好ましい。
図2に示すように、マルチ構造アプタマー6は、配列番号1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド10が少なくとも一部を形成するループ構造20と、ループ構造20に連結する2本鎖ポリヌクレオチドからなるステム構造30とを有する構造が、2つ以上連結されたマルチループ構造を有する。
このように、マルチ構造アプタマー6は、ループ構造20と、ステム構造30とを有する1単位のアプタマー3が、2つ連結されたものである。分子内にステム構造を複数有する場合、各ステム構造を形成する塩基配列は互いに異なる配列としてもよい。分子内に2つ以上同一のステム構造を形成する塩基配列が存在する場合、相補鎖を形成する相手のヌクレオチド鎖が入れ替わる可能性がある。この点、各ステム構造を形成する塩基配列を互いに異なる配列とすることにより、相補鎖形成する相手のヌクレオチド鎖が入れ替わることが防止される。なお、完全に同一のステム構造や、完全に同一のアプタマー配列を連続させたマルチ構造アプタマーであっても、FGFR1活性化作用を発揮することができる。
図3、4にマルチ構造アプタマーの一例を模式的に示す。図3に示すマルチ構造アプタマー7は、1単位のアプタマー3が、並列に3つ以上連結されたものである。また、図4に示すマルチ構造アプタマー8a,8bは、1単位のアプタマー3が、放射状に3つ以上連結されたものである。
マルチ構造アプタマーを形成するポリヌクレオチドはDNAであってもよい。また、マルチ構造アプタマーを構成するヌクレオチドは、少なくとも一部にDNAを含むものであってもよく、DNAのみからなるものであってもよい。
マルチ構造アプタマーは、上述したアプタマーがリンカーによって連結され、前記リンカーの長さがポリヌクレオチド換算で80塩基以下の長さであってもよい。
図5では、マルチ構造アプタマー6を例に、マルチ構造アプタマーのリンカーについて説明する。リンカー40は、配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド10が少なくとも一部を形成するループ構造の末端間の領域である。アプタマーがステム構造30を有する場合、ステム構造もリンカーの一部に含めるものとする。すなわち、本明細書では、マルチ構造アプタマーを構成するループ構造とループ構造との間をつなぐ構造をリンカーとする。
リンカーの一部は1本鎖DNAから構成されていてもよい。あるいは、リンカーの全部が2本鎖DNAから構成されていてもよい。また、マルチ構造アプタマーが複数のリンカーを含む場合、一部のリンカーは1本鎖DNA部分を含むものであり、一部のリンカーは2本鎖DNAから構成されたものであってもよい。
図6(a)及び(b)は、リンカーの全部が2本鎖DNAであるアプタマーの一例を示す模式図である。図6(a)に示すように、マルチ構造アプタマー9aは、配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド10が少なくとも一部を形成するループ構造20を2つ有している。そして、第1のループ構造20と第2のループ構造20が2本鎖DNAからなるリンカー40で連結されている。
また、図6(b)に示すように、マルチ構造アプタマー9bは、配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド10が少なくとも一部を形成するループ構造20を2つ有している。そして、第1のループ構造20と第2のループ構造20が2本鎖DNAからなるリンカー40で連結されている。
また、図7は、複数のリンカーを含むマルチ構造アプタマーの一例を示す模式図である。図7に示すように、マルチ構造アプタマー10は、配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド10が少なくとも一部を形成するループ構造20を4つ有している。そして、マルチ構造アプタマー10は、複数のリンカー40a、40b、40cを含んでいる。リンカー40a及びリンカー40cは1本鎖DNA部分を含むリンカーであり、リンカー40bは2本鎖DNAのみから構成されたものである。また、リンカー40a及びリンカー40bはリンカーの一部を共有している。また、リンカー40b及びリンカー40cはリンカーの一部を共有している。
マルチ構造アプタマーにおいて、リンカー1つあたりの長さは、ポリヌクレオチド換算で80塩基以下の長さであることが好ましい。リンカーはポリヌクレオチド以外の材料で形成されていてもよい。例えば、ポリヌクレオチド以外の材料としては例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)が挙げられる。リンカーがポリヌクレオチド以外の材料で形成されていている場合、リンカーの長さは、ポリヌクレオチドの長さを基準に算出するものとする。基準となるポリヌクレオチドの長さは、二重らせん構造のDNAにおける塩基対間距離3.4オングストロームに基づいて算出するものとする。1オングストロームは、0.1nmである。
リンカーの長さは、ポリヌクレオチド換算で0〜80塩基の長さであってよく、5〜70塩基の長さであってよく、10〜60塩基の長さであってよく、15〜50塩基の長さであってよく、15〜30塩基の長さであってよく、16〜20塩基の長さであってもよい。
マルチ構造アプタマーは、ポリヌクレオチドの塩基数が、1000塩基以下であってもよく、700塩基以下であってもよく、500塩基以下であってもよく、250塩基以下であってもよく、150塩基以下であってもよく、100塩基以下であってもよく、80塩基以下であってもよく、60塩基以下であってもよい。
マルチ構造アプタマーが有するポリヌクレオチドの塩基数は、56塩基以上であってもよく、60塩基以上であってもよく、80塩基以上であってもよく、100塩基以上であってもよく、200塩基以上であってもよい。
マルチ構造アプタマーが有するポリヌクレオチドの塩基数は、例えば、56〜1000塩基であってもよく、60〜700塩基であってもよく、80〜500塩基であってもよく、90〜250塩基であってもよく、90〜150塩基であってもよく、90〜100塩基であってもよい。
マルチ構造アプタマーは、公知の手法により製造可能である。核酸合成の手法やその修飾の方法は、生命科学分野において広く用いられている。
マルチ構造アプタマーは、配列番号11に記載の塩基配列からなるものであってもよい。実施例において後述するように、配列番号11に記載の塩基配列からなるアプタマーは、bFGFと同様の活性を有することが確認されている。
マルチ構造アプタマーは、配列番号11に記載の塩基配列に対して変異を有していてもよい。具体的には、マルチ構造アプタマーは、配列番号11に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり且つFGFR1に結合してFGFR1を活性化する活性を有するものであってもよい。
本明細書において、1若しくは数個とは、1〜10個であってもよく、1〜5個であってもよく、1〜4個であってもよく、1〜3個であってもよく、1〜2個であってもよい。
[アプタマー固定担体]
1実施形態において、本発明は、上述したアプタマー又はマルチ構造アプタマーが、固相担体表面に固定化された、アプタマー固定担体を提供する。
固相担体の形状は特に限定されず、シート状、板状、粒子状、膜状等が挙げられる。また、固相担体の材料は、アプタマーを固定化可能な材料であれば特に限定されず、樹脂、シリカ、ガラス、金属等が例示できる。
図8(a)及び(b)にアプタマー固定担体の形態の一例を模式的に示す。アプタマー固定担体100は、シート状の固相担体110の表面に、アプタマー3が固定化されたものである。また、アプタマー固定担体101は、円柱状の固相担体120の表面に、アプタマー3が固定化されたものである。
[FGFR1シグナリング関連疾患の予防又は治療剤]
1実施形態において、本発明は、上述したアプタマー又はマルチ構造アプタマーを有効成分として含有する、FGFR1シグナリング関連疾患の予防又は治療剤を提供する。ここで、アプタマーとは単量体アプタマー(1単位のアプタマー)を意味し、マルチ構造アプタマーとは、2単位以上のアプタマーが連結されたアプタマーを意味する。
単量体アプタマーは、FGFR1に結合して、bFGFとFGFR1との結合を阻害する活性を有する。一方、マルチ構造アプタマーは、FGFR1に結合してFGFR1を活性化する活性を有する。
本実施形態のアプタマーを生体に投与することにより、FGFR1シグナリングを制御することができる。その結果、FGFR1シグナリング関連疾患を予防又は治療することができる。FGFR1シグナリング関連疾患としては、癌、糖尿病等が挙げられる。また、本明細書では、FGFR1シグナリング関連疾患に、擦傷、切創等の傷も含めるものとする。
単量体アプタマーを患者に投与することにより、FGFR1シグナリングを抑制することができる。この結果、細胞増殖を抑制し、例えば癌を治療することができる。
また、マルチ構造アプタマーを傷口に適用することにより、FGFR1を活性化し、細胞増殖を促進することができる。この結果、傷を速やかに治療することができる。また、本実施形態の予防又は治療剤を美容目的に使用することもできる。
1実施形態において、本発明は、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーの有効量を、治療を必要とする患者に投与する工程を備える、FGFR1シグナリング関連疾患の予防又は治療方法を提供する。
1実施形態において、本発明は、FGFR1シグナリング関連疾患の予防又は治療のための、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーを提供する。
1実施形態において、本発明は、FGFR1シグナリング関連疾患の予防又は治療剤を製造するための単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーの使用を提供する。
本実施形態のFGFR1シグナリング関連疾患の予防又は治療剤は、純粋な単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーの形態であってもよいし、適宜の薬理学的に許容される添加剤と混合した医薬組成物又は美容用組成物の形態であってもよい。医薬組成物又は美容用組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等の形態で経口的に投与するものであってもよいし、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、注射剤等の形態で非経口的に投与するものであってもよい。
これらの製剤は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、乳化剤、安定剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の添加剤を用いて、周知の方法で製造することができる。
賦形剤としては、有機系賦形剤、無機系賦形剤等が挙げられる。有機系賦形剤としては、白色ワセリン、流動パラフィン等の炭化水素類;乳糖、白糖等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース等のセルロース誘導体;アラビアゴム等が挙げられる。無機系賦形剤としては、硫酸カルシウム等の硫酸塩が挙げられる。
結合剤としては、上記の賦形剤、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
崩壊剤としては、上記の賦形剤;クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等のデンプン又はセルロースの誘導体;架橋ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
滑沢剤としては、タルク;ステアリン酸;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイロウ等のワックス類;硫酸ナトリウム等の硫酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等のラウリル硫酸塩;上記の賦形剤におけるデンプン誘導体等が挙げられる。
乳化剤としては、ベントナイト、ビーガム等のコロイド性粘土;ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム等の陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
安定剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール等のアルコール類;フェノール、クレゾール等のフェノール類が挙げられる。
希釈剤としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。注射剤用溶剤としては、水、エタノール、グリセリン等が挙げられる。
本実施形態の予防又は治療剤の投与量は、患者の症状等により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり、例えば0.1〜100mg程度の有効成分(アプタマー又はマルチ構造アプタマー)を投与することが挙げられる。
非経口的に投与する場合は、その投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば軟膏剤の場合、1回あたり、例えば0.01〜30mg程度を1日1回〜数回患部に塗布することが挙げられる。
本実施形態の予防又は治療剤は、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーを発現可能なベクターの状態であってもよい。
[細胞培養用組成物]
1実施形態において、本発明は、上述した単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーを有効成分として含有する、細胞培養用組成物を提供する。本実施形態の細胞培養用組成物は、培地であってもよいし、培地用添加剤であってもよい。
上述した単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーの存在下で細胞を培養することにより、細胞の分化、増殖等、FGFR1シグナリングに関わる各種の細胞の状態を制御することができる。
細胞培養用組成物は、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーのほかにも、基本培地、血清等を含んでいてもよい。
細胞培養用組成物中に含まれるアプタマーの濃度は、使用目的によって適宜調整することができ、例えば、0.01nM〜10μMであってもよいし、0.1nM〜5μMであってもよいし、1nM〜5μMであってもよいし、50nM〜3μMであってもよいし、100nM〜2μMであってもよい。なお、「M」は「mol/L」を表す。
[細胞培養方法]
1実施形態において、本発明は、上述した単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーを含む培地で、FGFR1陽性細胞を培養することを含む、細胞培養方法を提供する。単量体アプタマーの存在下でFGFR1陽性細胞を培養すると、単量体アプタマーがFGFR1に結合して、bFGFとFGFR1との結合が阻害される。その結果、細胞におけるFGFR1シグナリングを抑制することができる。また、マルチ構造アプタマーの存在下でFGFR1陽性細胞を培養すると、マルチ構造アプタマーがFGFR1に結合し、細胞におけるFGFR1シグナリングを活性化することができる。
[bFGFと前記FGFR1との結合阻害方法]
1実施形態において、本発明は、上述した単量体アプタマーを、FGFR1陽性細胞と接触させることを含む、bFGFと前記FGFR1との結合阻害方法を提供する。単量体アプタマーをFGFR1陽性細胞と接触させると、単量体アプタマーがFGFR1に結合して、bFGFとFGFR1との結合が阻害される。その結果、細胞におけるFGFR1シグナリングを抑制することができる。
本明細書において、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーとFGFR1陽性細胞とを接触させる方法は、特に制限されず、種々の方法を用いることができる。例えば、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーを含む培地中で細胞を培養することによって、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーを細胞に接触させてもよいし、同一の液体中に単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマー及び細胞を含有させることによって、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーを細胞に接触させてもよいし、細胞に単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーを含む組成物を滴下することによって単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーを細胞に接触させてもよい。また、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーとFGFR1陽性細胞との接触は、インビボで行われてもよいし、インビトロで行われてもよい。
[FGFR1陽性細胞の増殖抑制方法]
1実施形態において、本発明は、上述した単量体アプタマーを、FGFR1陽性細胞と接触させることを含む、前記細胞の増殖抑制方法を提供する。単量体アプタマーをFGFR1陽性細胞と接触させると、単量体アプタマーがFGFR1に結合して、bFGFとFGFR1との結合が阻害される。その結果、細胞の増殖を抑制することができる。
アプタマーが細胞の増殖を抑制しているかどうかは、例えば、アプタマーが接触した細胞と、アプタマーが接触していない細胞を比較し、アプタマーが接触した細胞のほうが、細胞増殖の程度が小さい場合、アプタマーが細胞の増殖を抑制していると判断することができる。
[FGFR1の活性化方法]
1実施形態において、本発明は、上述したマルチ構造アプタマーを、FGFR1陽性細胞と接触させることを含む、前記FGFR1の活性化方法を提供する。マルチ構造アプタマーをFGFR1陽性細胞と接触させると、マルチ構造アプタマーがFGFR1に結合し、細胞におけるFGFR1シグナリングを活性化することができる。
マルチ構造アプタマーがFGFR1を活性化したか否かは、例えば、マルチ構造アプタマーが接触した細胞と、マルチ構造アプタマーが接触していない細胞を比較し、マルチ構造アプタマーが接触した細胞のほうが、FGFR1のリン酸化の程度が大きい場合、マルチ構造アプタマーがFGFR1を活性化したと判断することができる。
[FGFR1陽性細胞の増殖促進方法]
1実施形態において、本発明は、上述したマルチ構造アプタマーを、FGFR1陽性細胞と接触させることを含む、前記細胞の増殖促進方法を提供する。マルチ構造アプタマーをFGFR1陽性細胞と接触させると、マルチ構造アプタマーがFGFR1に結合し、細胞におけるFGFR1シグナリングを活性化することができる。その結果、細胞の増殖を促進することができる。
マルチ構造アプタマーが細胞の増殖を促進したか否かは、例えば、マルチ構造アプタマーが接触した細胞と、マルチ構造アプタマーが接触していない細胞を比較し、マルチ構造アプタマーが接触した細胞のほうが、細胞増殖の程度が大きい場合、マルチ構造アプタマーが細胞の増殖を促進したと判断することができる。
[多能性幹細胞の多能性維持方法]
1実施形態において、本発明は、上述したマルチ構造アプタマーを、FGFR1陽性多能性幹細胞と接触させることを含む、前記多能性幹細胞の多能性維持方法を提供する。FGFR1陽性多能性幹細胞としては、iPS細胞、Embryonic stem cells(ES細胞)等の多能性幹細胞が挙げられる。
マルチ構造アプタマーが多能性幹細胞の多能性を維持しているか否かは、例えば、マルチ構造アプタマーが接触した細胞と、マルチ構造アプタマーが接触していない細胞を比較し、マルチ構造アプタマーが接触した細胞のほうが、多能性幹細胞マーカーの発現が高い場合、マルチ構造アプタマーが多能性幹細胞の多能性を維持したと判断することができる。多能性幹細胞マーカー遺伝子としては、例えば、Oct−4、Nanog、SSEA−4、SSEA−1、SOX2等が挙げられる。
[検出方法]
1実施形態において、本発明は、上述した単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーをFGFR1に結合させることを含む、FGFR1の検出方法を提供する。ここで、単量体アプタマー又はマルチ構造アプタマーは標識物質で標識されていることが好ましい。その結果、標識物質を検出することにより、FGFR1を検出することができる。標識物質としては、例えば、色素、蛍光色素、ラジオアイソトープ、抗体、抗原、酵素等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[材料及び方法]
(材料)
化合物は、一般的な供給会社より購入し、更に精製することなく使用した。全てのDNAサンプルはファスマック社より購入した。DNAのアニーリング(95℃5分、0.1℃/分で25℃又は室温まで冷却)はサーマルサイクラーにより行った。ダルベッコリン酸緩衝液(Dulbecco’s phosphate buffered saline,DPBS)は富士フイルム和光純薬株式会社より購入した。組換え塩基性FGF(#100−18B)と組換えヒトTGF−β(#100−21)はペプロテック社より購入した。組換えヒトFGFR1−Fcキメラタンパク質(#661−FR)と組換えヒトMet−Fcキメラタンパク質(#358−MT)はR&Dシステムズ社より購入した。組換えFGFR1細胞外ドメイン(#7421−20)はバイオビジョン社から購入した。蛍光画像は、sCMOS camera(Zyla4.2、アンドール・テクノロジー社)を搭載した倒立顕微鏡(IX−81、オリンパス株式会社)により取得した。吸光度と蛍光強度は、Infinite M200 pro(テカン社)により測定した。
(FGFR1結合DNAアプタマー)
PBS−T緩衝液(0.02% Tween 20(wt/vol)を加えたDPBS)中で、FGFR1−FcをDynabeads Protein G(#10004D、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)と30分間インキュベートした。ビーズのスラリー(12.6μL;結合能は20pmol)を20pmolのタンパク質を固定するために用いた。インキュベート後、ビーズをPBS−T緩衝液で3回洗浄し、セレクションに用いた。ヒトMet−Fc固定ビーズを同様の手順で用意し、ネガティブセレクションに用いた。各セレクションに用いた組換えタンパク質の量は表1に要約した。
Figure 0006970458
(FGFR1結合配列の分離)
配列番号2に表される1本鎖DNAの混合物(1本鎖DNAプール)を用意した。配列番号2中、Nは、a(アデニン)、t(チミン)、g(グアニン)、c(シトシン)のいずれかである。1本鎖DNAプールをDPBSに溶解し、95℃で5分間、解離させ、0.1℃/分でゆっくりと25℃まで冷却した。リフォールディング後、0.04% Tween 20(wt/vol)を含む、等量のDPBSを1本鎖DNAプールに加えた。1本鎖DNAプールをDynabeads Protein Gと共に室温で30分間インキュベートし、ビーズに結合した配列を除去した。5回、6回のセレクション中に、ヒトMet−Fc固定ビーズを用いてネガティブセレクションも行った。上清をFGFR1固定ビーズと室温で10分〜30分間インキュベートした。インキュベート後、ビーズをPBS−T緩衝液で洗浄した。ビーズと溶出バッファー(7M尿素を含む100mM 酢酸ナトリウム、3mM EDTA)を95℃で3分間インキュベートし、FGFR1結合配列を得た。溶出したDNAはフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール溶液で抽出し、Amicon Ultra(#UFC501096)により限外濾過した。各セレクションの条件は表1に要約した。
(1本鎖DNAプール)
溶出したDNAを、KOD DNAポリメラーゼを用い、マニュアルにしたがって、PCRにより増幅させた。プライマーは、配列番号3に記載の塩基配列からなるプライマーと、配列番号4に記載の塩基配列からなるプライマーを用いた。PCR後、反応混合液とストレプトアビジン磁性ビーズ(#21344、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を、緩衝液(10mM Tris−HCl、1M NaCl、1mM EDTA)中で、10分間インキュベートした。150mM NaOHを含む溶液中でビーズを5分間インキュベートし、1本鎖DNAを得た。上清は150mM HClで中和し、G−25スピンカラムで脱塩した。1本鎖DNAはヌクレアーゼフリーの水でカラムから溶出し、次のセレクションに用いた。
(シーケンシング)
6回のセレクション後、回収したDNAを未修飾のプライマーで増幅させた。PCR産物をTArget Clonetm−Plus kit(sha−puTAK−201、東洋紡株式会社)を用いてクローニングベクターに挿入した。標準的な大腸菌形質転換方法とクローニング方法にしたがって、DNAシーケンシングによってアプタマー候補配列を同定した。
(フローサイトメトリー)
各ビーズと細胞の蛍光強度は、フローサイトメトリー(Guava easyCyte、メルク社)を用いて測定した。
(FGFR1固定ビーズに結合したアプタマー)
ヒトFGFR1−Fc(各サンプルについて1pmol)とDynabeads Protein GをPBS−T中で30分間インキュベートした。インキュベート後、ビーズをPBS−Tで3回洗浄した。20pmolの5’−FITC−修飾DNAとFGFR1固定ビーズを50μLのPBS−T中で、37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、ビーズをPBS−Tで洗浄し、フローサイトメトリーで解析した。未処理のビーズの蛍光強度に対する、アプタマーとインキュベートしたビーズの蛍光強度の増加分を、平均蛍光強度として示した。
(SSEA−4の発現)
409B2細胞をディッシュから剥がし、DPBSで洗浄した。FCM緩衝液(1%BSAを含むDPBS)中で、細胞とAlexa488標識抗SSEA−4抗体(1:100希釈、#53−8843、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を、氷上で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をFCM緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリーで解析した。未処理の際簿の蛍光強度に対する、抗体染色した細胞の蛍光強度の増加分を、平均蛍光強度として示した。
(SPR解析)
SPR解析は、Series S Sensor Chip SA(#29104992、GEヘルスケア社)を用いて、Biacore T100(GEヘルスケア社)により行った。5’−ビオチン化DNAをセンサーチップに固定した。様々な濃度のFGFR1タンパク質(2.5,10,25,50,100nM)を、流速30μL/分で固定したDNAの表面に注入した(25℃の流動緩衝液:0.2% Nonidet−P40を含むDPBS、再生液:50mM NaOHを含む1M NaCl溶液、接触時間:180秒、解離時間:600秒)。
(細胞培養)
ヒト横紋筋肉腫細胞株であるA204細胞は、10%胎児牛血清(fetal bovine serum,FBS)と1% 抗マイコプラズマ抗生物質(#15240、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を含むDMEM中で培養した。409B2細胞は、1%ペニシリン−ストレプトマイシン混合液(#26253−84、ナカライテスク社)を含むStemFit(登録商標)AK02N(#AK02N、味の素株式会社)中で培養した。iMatrix−511(0.25 μg/cm,#892011、ニッピ社)を培養基質として用いた。全ての細胞は、37℃の加湿した5%CO雰囲気中のインキュベータ内で培養した。
(ELISA解析)
解析は、PathScan(登録商標)Phospho−FGF Receptor 1(panTyr) Sandwich ELISA Kit(#12909C、セルシグナリングテクノロジー社)を用いて、マニュアルのプロトコルにしたがって行った。3回の独立した実験を行い、平均値をエラーバー(SD)と共に示した。
(イムノブロット解析)
細胞破砕液は、SDS−PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。PVDF膜を、4℃で一晩、一次抗体と反応させた後、室温で1時間、適当な二次抗体と反応させた。一次抗体として、phospho−ERK1/2(#4370),ERK1/2 (#4695),beta−actin(#4967)をセルシグナリングテクノロジー社から購入した。二次抗体(Anti−Rabbit Immunoglobulins/HRP,P0488)はダコ社より購入した。膜はImmunoStar LD(#296−69901、 富士フイルム和光純薬株式会社)で検出した。
(FGFRアゴニスト存在下のhiPSC細胞の多能性維持)
iPS細胞の多能性維持に対する、FGFRアゴニストの潜在的効果を評価するために、「ABT培地」を作成し、基礎培地として実験に用いた。ABT培地は、StemFit(登録商標)AK02Nのsolution A(400mL)とsolution B(100mL)、組換えTGF−β(最終濃度2ng/mL)からなり、complete StemFit(登録商標)AK02Nは、solution A(400mL)、solution B(100mL)、solution C(2mL)からなる。組換えbFGFの非存在下では、ABT培地中で409B2 iPS細胞の多能性は維持できないことが確認された。409B2細胞(2×10細胞/cm)は、適当なFGFRアゴニスト、Y−27632(10μM)、iMatrix−511(0.3μg/cm)を含むABT培養液の入った培養シャーレ上に播種した。翌日、培地を、適当なFGFRアゴニストを含むABT培地に交換した。培地を一日おきに交換して細胞を維持した。
(免疫染色イメージング)
409B2細胞はDPBSで2回洗浄し、室温で30分間、4%パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液で固定した。固定後、細胞はDPBSで3回洗浄し、室温で15分、透過緩衝液(0.5% Triton X−100を含むDPBS)中でインキュベートした。透過処理後、細胞をDPBSで3回洗浄し、室温で15分間、ブロッキング緩衝液(3%BSAを含むDPBS)中でインキュベートした。次に、細胞を、4℃で一晩、Alexa488標識抗SSEA−4抗体(1:100希釈、#53−8843,Thermo Scientific Pierce)と反応させた。細胞は、DPBSで3回洗浄し、蛍光イメージング観察の前に、Hoechst 33258(1:1000、#H341、同仁化学研究所)で染色した。
(RT−qPCR解析)
全RNAは、FastGenetm RNA Premium Kit(#FG−81050、日本ジェネティクス社)により精製した。精製したRNAは、iScript cDNA Synthesis Kit(#1708890、バイオラッド社)を用いて、マニュアルのプロトコルにしたがって、逆転写反応に供した。遺伝子発現量の定量においては、KOD SYBR qPCR Mix(#QKD−201、東洋紡株式会社)を用いた。OCT4の発現量の定量には、配列番号20で表されるプライマーと、配列番号21で表されるプライマーを用いた。RPLP0の発現量の定量には、配列番号22で表されるプライマーと、配列番号23で表されるプライマーを用いた。
(細胞増殖解析)
409B2細胞はDPBSで2回洗浄し、0.5mM EDTAを含むDPBSによりシャーレから剥離した。細胞は、0.4%トリパンブルー溶液(#207−17081、富士フイルム和光純薬株式会社)で染色し、セルカウンターでカウントした。
[実験例1]
(FGFR1に結合するDNAアプタマーのスクリーニング)
ランダムな配列を有する1本鎖DNAプールの中から、PCRとアフィニティ精製により、FGFR1に結合する1本鎖DNAを濃縮し、クローニングした。
まず、配列番号2に示される、40塩基のランダムな配列を含む1本鎖DNAのプールを用意した。このプールとFGFR1を固定したビーズを接触させて、FGFR1に結合するDNAを選別した。続いて、選別したDNAを、PCRにより増幅させた。PCRにおいては、配列番号3で表されるDNAの5’末端をFITCにより標識したプライマーと、配列番号4で表されるDNAの5’末端をビオチンにより標識したプライマーを用いた。これらの工程を6回繰り返して、FGFR1に結合するDNAを濃縮した。
次に、濃縮したDNAプールとFGFR1陽性細胞と接触させて、FGFR1に結合するDNAを選別した。続いて、選別したDNAをPCRにより増幅させた。これらの工程を7回繰り返して、FGFR1に結合するDNAを濃縮した。
続いて濃縮したDNAをベクターにクローニングし、挿入したDNAの配列をシーケンシングにより解析した。その結果、配列番号36〜50に記載の塩基配列からなるアプタマーを含む、数十種類のアプタマーが得られた。
配列番号36〜50に記載の塩基配列からなるアプタマーをアラインメントした結果、これらのアプタマーは、部分配列として配列番号24〜35に記載の塩基配列を含むことが明らかとなった。更に、配列番号24〜35に記載の塩基配列は、配列番号1に記載の塩基配列をコンセンサス配列とすることが特定された。
スクリーニングの結果得られたアプタマーのうち、配列番号5に塩基配列を示すアプタマーに着目して以下の検討を行った。なお、配列番号5に記載の塩基配列は、配列番号38に記載の塩基配列の5’側及び3’側に、アプタマー増幅用のプライマー(配列番号3、4)の塩基配列が結合したものである。
[実験例2]
(FGFR1に結合するDNAアプタマーの部位)
実験例1において得られた全長84塩基のDNAアプタマー(配列番号5)から、FGFR1に結合する部位を同定した。
配列番号5に塩基配列を示す全長84塩基のDNAアプタマーの立体構造を解析したところ、2つのループ構造が連結されていると推測された。この構造を図9に示す。立体構造の解析には、Mfoldソフトウエアを用いた(Zuker M., Mfold web server for nucleic acid folding and hybridization prediction, Nucleic Acids Res., 31(13), 3406-3415, 2003. を参照)。
その結果、ループ構造と、ループ構造に連結されたステム構造が見出された。ステム構造とループ構造以外の配列は、実験例1において用いたプライマーの配列である。ループをloop30(L30)、ステムとループからなる構造をstem−loop38(SL38)と名付けた。L30の塩基配列は配列番号6で表され、SL38の塩基配列は配列番号7で表される。
全長84塩基、SL38、L30、及び、SL38の逆の配列であるSL38Revの、5’末端をFITCで標識したDNAを合成した。SL38Revの配列は、配列番号8で表される配列である。これらの配列とFGFR1−Fcとの結合を、フローサイトメトリーで解析した。結果を図10に示す。
図10は、各DNAとFGFR1−Fcビーズとの結合を、フローサイトメトリーにより解析した結果を示すグラフである。図10中、グラフの縦軸は、蛍光強度の平均値を示す。また、「Full84」は全長84塩基のDNAの結果であることを示し、「SL38」はSL38の結果であることを示し、「L30」はL30の結果であることを示し、「SL38Rev」はSL38Revの結果であることを示す。
その結果、全長84塩基、SL38、L30は、FGFR1に結合することが明らかになった。3種のDNAの中でも、SL38がFGFR1に最も強く結合した。
[実験例3]
(ステム構造と安定性)
アプタマーの安定性における、ステム配列の役割を解析した。SL38は、ループ構造に、AとTからなる4塩基のステム構造が連結していると予測された。SL38の安定性を高めるために、ステム構造の塩基配列をC又はGに改変した、SL38.2を合成した。SL38.2の塩基配列を、配列番号9に示す。
続いて、SL38とSL38.2を、10%ウシ胎児血清に入れてインキュベートし、ヌクレアーゼに対する抵抗性を解析した。インキュベート後のサンプルをポリアクリルアミドゲル電気泳動により展開した。
図11は、SL38又はSL38.2を血清に入れ、1時間〜4時間後のDNAを解析した結果を示す写真である。その結果、SL38は分解したが、SL38.2は4時間後も分解しないことが明らかになった。この結果から、SL38よりもSL38.2の方がヌクレアーゼに対して高い抵抗性を有することが明らかになった。
[実験例4]
(SL38.2とFGFR1の結合)
SL38.2とFGFR1の結合力を、フローサイトメトリー及び表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance、SPR)により解析した。
5’末端をFITCで標識した、SL38及びSL38.2を用意した。また、FGFR1−Fcをビーズに固定した。標識したSL38又はSL38.2と、FGFR1−Fcの結合力を、フローサイトメトリーで解析した。結果を図12(a)に示す。図12(a)中、「Vehicle」は陰性対照の結果である。
その結果、FGFR1に対し、SL38.2はSL38と同程度の結合力を有することが明らかになった。ヌクレアーゼに対する安定性を考慮すると、SL38.2はSL38よりも優れたアプタマーであると考えられた。
次に、SL38.2を固定したセンサーチップに対して、FGFR1の細胞外ドメインを含む溶液を流し、SPRのシグナルを解析した。図12(b)は、SL38.2とFGFR1細胞外ドメイン(FGFR1_ECD)の結合力の解析結果を示すグラフである。
その結果、SL38.2とFGFR1細胞外ドメインの解離定数は、13nMであった。SL38.2とbFGFの結合力の解析結果を表2に示した。bFGFのデータは、Ibrahimi O. A., Kinetic model for FGF, FGFR, and proteoglycan signal transduction complex assembly, Biochemistry, 43 (16), 4724-4730, 2004. による。その結果、SL38.2は、FGFR1細胞外ドメインに対し、bFGFと同等の結合力を有することが明らかになった。
Figure 0006970458
[実験例5]
(SL38.2とFGFR1〜4の結合)
SL38.2とFGFR1〜4の結合特異性を、フローサイトメトリーで解析した。具体的には、まず、5’末端をFITCで標識したSL38.2を用意した。また、FGFR1−Fc、FGFR2−Fc、FGFR3−Fc、FGFR4−Fcを、それぞれビーズに固定した。続いて、標識したSL38.2と、各FGFR−Fc固定ビーズの結合力を、フローサイトメトリーで解析した。
図13は、標識SL38.2と、各FGFR固定ビーズとの結合力を解析した結果を示すグラフである。その結果、SL38.2は、FGFR1〜4のうち、FGFR1と特異的に結合することが明らかになった。
[実験例6]
(グアニン四重鎖構造形成におけるステム構造の役割)
CDスペクトル測定によって、SL38とSL38.2のグアニン四重鎖構造を解析した。グアニン四重鎖はそのトポロジーから「並行型」「逆並行型」に分類可能である。並行型グアニン四重鎖構造の存在は、CDスペクトル測定によって、245nm付近の負のピークと、265nm付近の正のピークが検出されることにより確認できる。また、グアニン四重鎖構造の形成はKイオンを要求するので、Kイオンを含む溶液中でのポリヌクレオチドと、Kイオンを含まない溶液中でのポリヌクレオチドに対する、CDスペクトル測定結果を比較することで、グアニン四重鎖構造の確認を、より信頼性高く行うことができる。
まず、CDスペクトル測定によって、SL38のグアニン四重鎖構造を解析した。図14(a)は、Kイオン非存在下と、Kイオン存在下でそれぞれ測定した、SL38のCDスペクトルである。
その結果、SL38は、Kイオンの添加によって、スペクトルが変化することが明らかになった。この結果から、SL38は逆並行型グアニン四重鎖構造を有することが明らかになった。
CDスペクトル測定によって、SL38とSL38.2のグアニン四重鎖構造を比較した。結果を図14(b)に示す。その結果、SL38とSL38.2は、Kイオンの添加によって、スペクトルが変化することが明らかになった。この結果は、SL38とSL38.2は共に、逆並行型グアニン四重鎖構造を有することを示している。
[実験例7]
(グアニン四重鎖構造形成におけるG−richループの役割)
G−richループの塩基配列を改変し、グアニン四重鎖構造形成における、G−richループの役割を解析した。
SL38は、5’末端から、14〜15番目、18〜21番目、24〜25番目、29〜31番目にグアニンを有する。これら4か所は、グアニンの含有率が高い、G−richループである。
SL38の5’末端から14番目のグアニンをチミンに変異させた「G14T」を作製した。また、SL38の5’末端から24番目のグアニンをチミンに変異させた、「G24T」を作製した。これらについて、CDスペクトルを解析した。その結果を図15に示す。
図15は、Kイオン非存在下と、Kイオン存在下で測定した、G14TとG24TのCDスペクトルである。その結果、G14TとG24Tはグアニン四重鎖構造を有さないことが明らかになった。この結果から、SL38の5’末端から14番目と24番目のグアニンは、グアニン四重鎖構造の形成に必要であることが明らかになった。
[実験例8]
(SL38とFGFR1の結合におけるグアニン四重鎖構造の役割)
グアニン四重鎖構造を形成しない、G14T又はG24Tと、FGFR1の結合力を解析し、SL38とFGFR1の結合におけるグアニン四重鎖構造の役割を検討した。
SL38、SL38の逆の配列であるSL38Rev、G14T、G24Tの5’末端をFITCで標識したDNAを作製した。また、FGFR1−Fcをビーズに固定した。続いて、標識したDNAと、FGFR1−Fc固定ビーズの結合力を、フローサイトメトリーで解析した。結果を図16(a)及び(b)に示す。
図16(a)は、各DNAとFGFR1−Fcビーズの結合を、フローサイトメトリーにより解析した結果を示すグラフである。図16(a)中、「Vehicle」は陰性対照の結果であることを示す。図16(b)は、蛍光強度の平均値を示すグラフである。その結果、G14TとG24TはFGFR1に結合しないことが明らかになった。
この結果から、FGFR1に対する結合において、SL38の14番目と24番目のグアニンが重要であることが明らかになった。また、FGFR1に対する結合力の有無は、グアニン四重鎖構造の有無と相関することが明らかになった。
[実験例9]
(熱安定性におけるステム構造の役割)
SL38及びSL38.2の融解温度を算出し、熱安定性におけるステム構造の役割を解析した。具体的には、SL38とSL38.2について、10℃〜70℃まで温度を変化させ、295nmにおけるCDスペクトルを計測した。結果を図17に示す。図17は、各温度下で、SL38及びSL38.2の295nmにおけるCDスペクトルを計測した結果を示すグラフである。
その結果、SL38の融解温度は39℃であり、SL38.2の融解温度は47℃であることが明らかになった。この結果から、ステム構造を変異させて、アデニンとチミンの結合を、より結合力の強いグアニンとシトシンの結合に置き換えることにより、アプタマー構造の熱安定性が高まることが明らかになった。
[実験例10]
(タンデムに結合させたアプタマー)
タンデムに結合させたアプタマーによる、FGFR1の活性化について解析した。FGFR1は、bFGFと結合すると二量体化して、活性化することが知られている。タンデムに連結したアプタマーが、FGFR1を二量体化し、活性化させるか否かを検討した。SL38.2をタンデムに連結させた、SL38.2_dimerの予測構造を図18(a)に示す。
ステム・ループ構造を有するアプタマーである、SL38とSL38.2を合成した。SL38の配列は、配列番号7で表される配列である。また、SL38をタンデムに結合させたSL38_dimer、SL38.2をタンデムに結合させたSL38.2_dimerを用意した。SL38_dimerの配列は配列番号10で示される配列であり、SL38.2_dimerの配列は配列番号11で示される配列である。
2nM bFGF、200nM SL38、200nM SL38.2、50nM又は100nM SL38_dimer、50nM又は100nM SL38.2_dimerを、それぞれ、A204細胞と接触させた後、A204細胞の破砕物を、SDS−PAGEにより展開した。続いて、抗FGFR1抗体、抗リン酸化FGFR1抗体を用いて、イムノブロット解析を行った。結果を図18(b)に示す。
その結果、SL38_dimer又はSL38.2_dimerはFGFR1をリン酸化したが、SL38又はSL38.2はFGFR1をリン酸化しなかった。この結果から、タンデムに結合させたアプタマーは、FGFR1を強く活性化することが明らかになった。
続いて、SL38.2_dimerの逆の塩基配列を有するRev−SL38.2_dimerを作製した。Rev−SL38.2_dimerの塩基配列を配列番号12に示す。続いて、2nM bFGF、10、50、100及び500nM SL38.2_dimer、並びに500nM Rev−SL38.2_dimerを、それぞれA204細胞と接触させた後、A204細胞の破砕物を、SDS−PAGEにより展開した。
続いて、抗FGFR1抗体、抗リン酸化FGFR1抗体、抗リン酸化Akt抗体、抗リン酸化Erk1/2抗体を用いて、イムノブロット解析を行った。図18(c)は、bFGF、SL38.2_dimer、Rev−SL38.2_dimerによるFGFR、Akt、Erk1/2のリン酸化を解析した結果である。
その結果、10nM SL38.2_dimerは、2nM bFGFと同程度に、FGFR1、Akt、Erk1/2をリン酸化することが明らかになった。
以上の結果から、単量体のSL38、SL38.2はFGFR1に結合するがFGFR1を活性化することができないことが明らかとなった。一方、SL38、SL38.2を2量体化したSL38_dimer、SL38.2_dimerはFGFR1を活性化することが明らかとなった。
[実験例11]
(タンデムに結合させたアプタマーによるFGFR1経路の活性化)
SL38.2_dimerによる、FGFR、下流のPI3K/Akt経路及びMAPK経路の活性化について、解析した。
A204細胞と、2nM bFGF又は50nM SL38.2_dimerを接触させて、1、5、10、15、30分後に細胞を回収した。続いて、各細胞の破砕物を、SDS−PAGEとイムノブロットにより解析した。
図19は、A204細胞と、bFGF又はSL38.2_dimerを接触させ、各時間後に、FGFR1、Akt、Erk1/2のリン酸化を解析した結果である。図19中、「Vehicle」は陰性対照の結果である。その結果、bFGFは、刺激して1分〜30分後まで継続して、FGFRをリン酸化することが確認された。一方、SL38.2_dimerにより刺激した場合、刺激して1分後に比較して、刺激して5分〜30分後には、FGFR1のリン酸化が減弱することが明らかになった。
[実験例12]
(タンデムに結合させたアプタマーによるヒトiPS細胞の多能性維持)
SL38.2_dimer刺激したヒトiPS細胞における、多能性マーカーの発現量を解析した。多能性マーカーとしては、Oct−4、Nanog、SSEA−4を検討した。
ヒトiPS細胞(409B2細胞)を、3nM bFGF、500nM SL38.2_dimer、500nM Rev−SL38.2_dimerにより刺激し、Oct−4及びNanogの発現量を、RT−qPCRにより解析した。
図20(a)は、刺激後のOct−4及びNanogの発現量を、RT−qPCRにより解析し、ハウスキーピング遺伝子であるRPLP0で規格化した結果を示すグラフである。図20(a)中、「Vehicle」は陰性対照の結果を示す。その結果、bFGFと同様に、SL38.2_dimerは、多能性マーカー遺伝子の発現を維持する効果を有することが明らかになった。
続いて、bFGF、SL38.2_dimer、Rev−SL38.2_dimerによる刺激が細胞増殖に与える影響を解析した。具体的には、ヒトiPS細胞(409B2細胞)を、3nM bFGF、500nM SL38.2_dimer、500nM Rev−SL38.2_dimerにより刺激した後、細胞数をカウントした。
結果を図20(b)は細胞数を測定した結果を示すグラフである。その結果、SL38.2_dimerによる刺激は、bFGFと同程度にiPS細胞の増殖を促進することが明らかになった。
[実験例13]
ヒトiPS細胞をSL38.2_dimer刺激し、多能性マーカーであるSSEA−4タンパク質の発現量の変化を解析した。
ヒトiPS細胞(409B2細胞)を、3nM bFGF、500nM SL38.2_dimer、500nM Rev−SL38.2_dimerにより刺激し、SSEA−4タンパク質の発現量を蛍光免疫染色により解析した。
図21は、蛍光免疫染色の結果を示す写真である。図21中、「PH image」は位相差顕微鏡写真の結果であることを示し、「Nuclei(Hoechst)」はHoechst33342で核を染色した結果であることを示し、「SSEA−4」は蛍光免疫染色によりSSEA−4タンパク質の発現を検出した結果であることを示す。また、「Vehicle」は陰性対照の結果であることを示す。
その結果、SL38.2_dimerによる刺激は、bFGFと同程度に、SSEA−4タンパク質の発現を促進することが明らかになった。この結果は、SL38.2_dimerをbFGFの代替物として使用できることを更に支持するものである。
[実験例14]
(二量体DNAアプタマーの合成)
様々な結合様式の二量体DNAアプタマーを合成した。具体的には、アプタマー同士を連結するリンカーが1本鎖DNAであるアプタマーと、アプタマー同士を連結するリンカーが2本鎖DNAであるアプタマーを合成した。
図22(a)は、プタマー同士を連結するリンカーが2本鎖DNAであるアプタマーである、DP20及びDP0の構造を示す模式図である。DP20は、配列番号13で表されるDP_Aと、配列番号14で表されるDP_Bがハイブリダイズしたものであり、アプタマー同士を連結するリンカーが2本鎖DNAである二量体DNAアプタマーである。DP_Aは、SL38.2の塩基配列の3’末端に、配列番号15で表されるリンカー配列が連結した塩基配列を有する。DP_Bは、SL38.2の塩基配列の3’末端に、配列番号16で表されるリンカー配列が連結した塩基配列を有する。
また、DP0は、配列番号13で表されるDP_Aと、配列番号17で表されるDP_Cがハイブリダイズしたものであり、アプタマー同士を連結するリンカーが2本鎖DNAである二量体DNAアプタマーである。DP_Cは、SL38.2の塩基配列の5’末端に、配列番号18で表されるリンカー配列が連結した塩基配列を有する。また、DP_Cにおけるステム配列は、DP_Aのステム配列とのハイブリダイズを抑制するためにDP_Aとは異なる塩基配列に置き換えた。
図22(b)は、プタマー同士を連結するリンカーが1本鎖DNAであるアプタマーである、SL38.2_dimer及びSL38.2_dimer20の構造を示す模式図である。
SL38.2_dimer20の塩基配列は、配列番号19に表される配列である。SL38.2_dimer20は、2つのSL38.2が20個のt(チミン)が連続したリンカーで連結された塩基配列を有している。
SL38.2_dimerの2個のループ構造は近接しているが、SL38.2_dimer20の2個のループ構造はSL38.2_dimerよりも離れている。また、DP0の2個のループ構造は近接しているが、DP20の2個のループ構造はDP0よりも離れている。
[実験例15]
(二量体DNAアプタマーによるFGFR1経路の活性化)
二量体DNAアプタマーによる、FGFR1経路の活性化について解析した。具体的には、それぞれ500nMの、SL38.2_dimer、Rev−L38.2_dimer、SL38.2_dimer20、DP20、DP0、及び2nMのbFGFをA204細胞に接触させた。
続いて、5分後に、各細胞を破砕し、細胞破砕液を得た。FGFR1のリン酸化は、PathScan(登録商標)phospho−FGF receptor 1(panTyr) sandwich ELISAキットにより解析した。
図23(a)は、FGFR1のリン酸化を測定した結果を示すグラフである。図23(a)中、「vehicle」は陰性対照である。
その結果、SL38.2_dimer、SL38.2_dimer20、DP20、DP0は、bFGFと同様に、FGFR1のリン酸化を促進することが明らかになった。この結果から、SL38.2_dimer、SL38.2_dimer20、DP20、DP0は、FGFR1を活性化することが明らかになった。
次に、それぞれ500nMの、SL38.2_dimer、Rev−L38.2_dimer、SL38.2_dimer20、DP20、DP0、及び2nMのbFGFをA204細胞に接触させ、Erk1/2のリン酸化について解析した。
図23(b)は解析結果を示す写真である。その結果、SL38.2_dimer、SL38.2_dimer20、DP20、DP0は、bFGFと同様に、Erk1/2のリン酸化を促進することが明らかになった。この結果から、SL38.2_dimer、SL38.2_dimer20、DP20、DP0は、Erk1/2を活性化することが明らかになった。
[実験例16]
(二量体DNAアプタマーの刺激によるiPS細胞の多能性維持)
二量体DNAアプタマーの刺激による、iPS細胞における、多能性マーカーの発現を解析した。
それぞれ500nMの、SL38.2_dimer、Rev−L38.2_dimer、SL38.2_dimer20、DP20、DP0、及び3nMのbFGFを含む培地でiPS細胞(409B2細胞)を7日間培養した。培地は、培養開始後1、3、5日目に交換した。続いて、Alexa488標識抗SSEA−4抗体によりiPS細胞を染色し、SSEA−4タンパク質の発現をフローサイトメトリーで解析した。
図24(a)は、SSEA−4タンパク質の発現を解析した結果を示すグラフである。図24(a)中、横軸は蛍光強度を示し、縦軸は細胞数を示す。また、図24(b)は、図24(a)の各細胞における蛍光強度の平均値を示すグラフである。図24(a)及び(b)中、「Vehicle」は陰性対照の結果を示す。
その結果、SL38.2_dimerを培地に添加した場合、bFGFを培地に添加した場合と同程度にSSEA−4タンパク質が発現することが明らかになった。一方、Rev−L38.2_dimer、SL38.2_dimer20、DP20、DP0を培地に添加した場合、SSEA−4タンパク質の発現量は、対照群と同等であった。
この結果は、SL38.2_dimer、SL38.2_dimer20、DP20、DP0は、bFGFと同様に、FGFR1経路を活性化することができるものの、iPS細胞の多能性を維持する活性はSL38.2_dimerが最も高いことを示す。
本発明によれば、bFGFの活性をアプタマーで模倣する技術を提供することができる。
1,2,3…アプタマー、4,5,6,7,8a,8b,9a,9b,10…マルチ構造アプタマー、10…ポリヌクレオチド、20…ループ構造、30…ステム構造、40,40a,40b,40c…リンカー、100,101…アプタマー固定担体、110,120…固相担体。

Claims (11)

  1. 配列番号5、6、7若しくは9に記載の塩基配列を含み、Fibroblast Growth Factor Receptor 1(FGFR1)に結合する活性を有するポリヌクレオチド、又は、配列番号5、6、7若しくは9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列を含み且つFGFR1に結合する活性を有するポリヌクレオチドからなる、アプタマー。
  2. グアニン四重鎖構造を形成する、請求項1に記載のアプタマー。
  3. 請求項1又は2に記載のアプタマーが2つ以上連結された、FGFR1に結合してFGFR1を活性化する活性を有する、アプタマー。
  4. 請求項1又は2に記載のアプタマーがリンカーで連結され、前記リンカーの長さがポリヌクレオチド換算で80塩基以下の長さである、請求項に記載のアプタマー。
  5. 配列番号11に記載の塩基配列からなるか、又は配列番号11に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり且つFGFR1に結合してFGFR1を活性化する活性を有する、請求項又はに記載のアプタマー。
  6. 請求項のいずれか一項に記載のアプタマーを有効成分として含有する、FGFR1シグナリング関連疾患の予防又は治療剤。
  7. 請求項のいずれか一項に記載のアプタマーを有効成分として含有する、細胞培養用組成物。
  8. 請求項のいずれか一項に記載のアプタマーを含む培地で、FGFR1陽性細胞を培養することを含む、細胞培養方法。
  9. 請求項のいずれか一項に記載のアプタマーを、インビトロでFGFR1陽性細胞と接触させることを含む、前記FGFR1の活性化方法。
  10. 請求項のいずれか一項に記載のアプタマーを、インビトロでFGFR1陽性細胞と接触させることを含む、前記細胞の増殖促進方法。
  11. 請求項のいずれか一項に記載のアプタマーを、FGFR1陽性多能性幹細胞と接触させることを含む、前記多能性幹細胞の多能性維持方法。
JP2019552416A 2017-11-11 2018-11-09 アプタマー及びその使用 Active JP6970458B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201762584755P 2017-11-11 2017-11-11
US62/584,755 2017-11-11
PCT/JP2018/041759 WO2019093503A1 (ja) 2017-11-11 2018-11-09 アプタマー及びその使用

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2019093503A1 JPWO2019093503A1 (ja) 2021-01-28
JP6970458B2 true JP6970458B2 (ja) 2021-11-24

Family

ID=66438480

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019552416A Active JP6970458B2 (ja) 2017-11-11 2018-11-09 アプタマー及びその使用

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6970458B2 (ja)
WO (1) WO2019093503A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112940100B (zh) * 2019-12-10 2022-06-07 湖南赛奥维生物技术有限公司 一种碱性成纤维细胞生长因子替代物及其组合物和应用

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6495927B2 (ja) * 2014-09-09 2019-04-03 国立大学法人 東京大学 Hgf受容体に結合するアプタマー

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2019093503A1 (ja) 2021-01-28
WO2019093503A1 (ja) 2019-05-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Richter et al. The molecular biology of FMRP: new insights into fragile X syndrome
Mittra et al. Circulating nucleic acids damage DNA of healthy cells by integrating into their genomes
Hu et al. The EGF receptor-sox2-EGF receptor feedback loop positively regulates the self-renewal of neural precursor cells
CA2962075A1 (en) Use of fgfr mutant gene panels in identifying cancer patients that will be responsive to treatment with an fgfr inhibitor
KR20140019770A (ko) 인간 ezh2의 억제제 및 이의 사용 방법
KR20140057374A (ko) Hsf1-관련 질환을 치료하기 위한 유기 조성물
JP6495927B2 (ja) Hgf受容体に結合するアプタマー
EP3272868A1 (en) Organic compositions to treat kras-related diseases
JP6442941B2 (ja) 血管内皮細胞増殖因子結合性核酸アプタマー及びその利用
Nakamura et al. RNA plasticity and selectivity applicable to therapeutics and novel biosensor development
TW201143780A (en) Treatment of Colony-stimulating factor 3 (CSF3) related diseases by inhibition of natural antisense transcript to CSF3
Shi et al. A novel long noncoding RNA FAF inhibits apoptosis via upregulating FGF9 through PI3K/AKT signaling pathway in ischemia–hypoxia cardiomyocytes
WO2017073536A1 (ja) vWFに結合するDNAアプタマー
CN102080087B (zh) 蛋白酪氨酸磷酸酶shp2的核酸适体及其制备方法
Pozniak et al. TNF‐α/TNFR2 regulatory axis stimulates EphB2‐mediated neuroregeneration via activation of NF‐κB
JP2022513327A (ja) 機能性アプタマーを選択するための方法および組成物
Li et al. Oligodendrocyte precursor cells transplantation improves stroke recovery via oligodendrogenesis, neurite growth and synaptogenesis
WO2016158851A1 (ja) 血管内皮増殖因子受容体に結合する核酸アプタマー
JP2020529418A (ja) T細胞急性リンパ芽球性白血病を治療するための化合物、組成及び方法
JP6970458B2 (ja) アプタマー及びその使用
Ma et al. Nanoscale organization of TRAIL trimers using DNA origami to promote clustering of death receptor and cancer cell apoptosis
Fu et al. Interaction between Tbx1 and Hoxd10 and connection with TGFβ-BMP signal pathway during kidney development
Eppard et al. Telomeres, cellular senescence, and aging: past and future
Kanayasu‐Toyoda et al. Occludin as a functional marker of vascular endothelial cells on tube‐forming activity
WO2011056930A2 (en) Fragile x mental retardation protein (fmrp), compositions, and methods related thereto

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200511

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7426

Effective date: 20200729

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20200729

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210608

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210730

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211005

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211022

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6970458

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150