JP6966610B1 - 可塑性油脂組成物、o/w/o乳化組成物及び食品 - Google Patents
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(1)最外油相に乳化剤を含有しないO/W/O乳化組成物を製造するための当該最外油相用の可塑性油脂組成物であって、当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50〜95質量%含み、固体脂含量が5℃で5〜15質量%であり、25℃での固体脂含量が、当該5℃のときの固体脂含量より0.5〜8質量%少なく、当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1〜10質量%含むことを特徴とする、可塑性油脂組成物、
(2)(1)の可塑性油脂組成物を最外油相として含み、当該最外油相は乳化剤を含まないことを特徴とする、O/W/O乳化組成物、
(3)(2)のO/W/O乳化組成物を含む食品、
である。
本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物は、当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50〜95質量%含み、固体脂含量が5℃で5〜15質量%であり、25℃での固体脂含量が、当該5℃のときの固体脂含量より0.5〜8質量%少なく、当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1〜10質量%含む。当該可塑性油脂組成物をO/W/O乳化組成物の最外油相として用いることで、最外油相に乳化剤を使わずとも容易にO/W/O乳化組成物を製造することができ、かつ、当該O/W/O乳化組成物を、最外相が油相にもかかわらずO/W乳化物のみずみずしさが感じられるものとすることができる。近年、健康志向の高まりから、乳化剤を含まない商品を求める消費者がいる。本発明によればこのような消費者のニーズに応えることができる。また、例えば、本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物を食用とすることで得られるO/W/O乳化組成物は、撥水性及び呈味性に優れているので、接触する食品素材への水分移行を抑制するための優れた撥水性と、O/W乳化物のみずみずしい風味及び食感を感じることができる優れた呈味性とを兼ね備えたO/W/O乳化組成物を提供することができる。さらに、可塑性油脂組成物を用いて、O/W/O乳化組成物を製造するとき、乳化剤を用いなくとも、O/W乳化物と混合するだけでよいので、その製造が容易である。なお、本発明において可塑性油脂組成物は、可塑性を有する油脂組成物が意図される。
本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物の態様には、油脂のみの態様、油脂に加えて水系原料を含むW/O乳化物の態様のものが含まれる。本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物を食用とする場合、油脂のみの態様としては例えばショートニングが挙げられ、W/O乳化物の態様としては例えばマーガリンが挙げられる。また、本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物では、油脂を、可塑性油脂組成物の総量に対して、例えば65質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上含む。
「液油」は、品温20℃で、液状でかつ油脂結晶が析出しない油脂が意図される。本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物に含まれる液油は、特定の液油に制限されない。例えば、菜種油、オリーブ油、ごま油、えごま油、大豆油、グレープシードオイル、コーン油、亜麻仁油、米油、綿実油、サフラワー油、落花生油、パーム分別油等の植物性油脂であって前記「液油」の定義に該当するもの;魚油、肝油等の動物性油脂であって前記「液油」の定義に該当するものが挙げられる。液油は、粗油、半精製油、精製油、又はサラダ油であってよい。所望の可塑性油脂組成物が得られるように、各液油の特性を考慮して適切な液油を選択すればよい。液油は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物は、液油を、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、50〜95質量%含む。これにより、可塑性油脂組成物は柔らかい物性を有し、ひいては、得られるO/W/O乳化組成物の物性もより柔らかくなる。可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対する液油の含有量が50質量%未満であると、可塑性油脂組成物が硬くなり、得られるO/W/O乳化組成物も硬くなり、食用とする場合、得られるO/W/O乳化組成物の食感が悪くなる。また、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対する液油の含有量が95質量%を超えると油脂組成物の可塑性が損なわれ、О/W乳化物のみずみずしさが得られない。さらに、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対する液油の含有量が95質量%を超える場合、5℃での固体脂含量を5質量%以上にするためには、可塑性油脂組成物に含有させる後述の液油以外の油脂としてできるだけ硬い油脂を使用する必要が生じる。結果として5℃での固体脂含量と25℃での固体脂含量との差が小さくなる。その結果、食用とする場合、得られるO/W/O乳化組成物の呈味性が劣るおそれがある。複数種の液油を併用して含有する場合は、液油の総含有量が前述の範囲となるように液油を含有すればよい。
本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物に含まれる液油の含有量は、可塑性油脂組成物をより柔らかくし、滑らかにする観点から、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、好ましくは60質量%以上である。また、当該含有量は、撥水性及び食用とする場合の呈味性の観点から、好ましくは92質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物においては、固体脂含量(Solid Fat Content:SFC)が5℃で5〜15質量%であり、25℃でのSFCが、当該5℃のときのSFCより0.5〜8質量%少ない。
本発明の一態様にかかる可塑性油脂組成物は、5℃でのSFCが、撥水性及び食用とする場合の呈味性の観点から、好ましくは5質量%以上である。また、食用とする場合の呈味性の観点から、好ましくは12質量%以下である。
本発明の一態様にかかる可塑性油脂組成物は、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロール(以下、「C54以上の飽和TAG」という。)を可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、1〜10質量%含む。換言すれば、本発明の一態様にかかる可塑性油脂組成物は、可塑性油脂組成物の全油脂中のC54以上の飽和TAG量が前述の範囲となるように液油と液油以外の油脂とを含有すればよい。
本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物に含まれるC54以上の飽和TAG含有量は、撥水性の観点から、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、好ましくは2.5質量%以上、10質量%以下である。
本発明の一態様にかかる可塑性油脂組成物は、O/W/O乳化組成物の最外油相として使用した際の乳化安定性、撥水性及び、食用とする場合の呈味性を損なわない範囲で前述した以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分は目的に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の一態様にかかる可塑性油脂組成物を食用とする場合は、水、増粘安定剤、乳製品、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類、甘味料、着色料、酸化防止剤、植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、及び香辛料等を含有することができる。
本発明の一態様にかかる可塑性油脂組成物の製造方法は、前述の範囲となるように液油と液油以外の油脂とを含有すればよく、特に限定されない。例えば、液油及と液油以外の油脂とを混合した後に、急冷可塑化すればよい。
液油と液油以外の油脂とを混合する工程(以下、「混合工程」ともいう。)では、液油と液油以外の油脂とを混合することができればよく、混合方法は特に限定されない。例えば、従来公知の撹拌機を用いて撹拌混合すればよい。油脂は加温され、融解されて撹拌混合されることが好ましい。
混合工程後に必要により油脂結晶が析出しない程度に混合物を予備冷却した後、急冷可塑化を行なう。急冷可塑化は、従来公知の冷却機を用いて行うことができる。従来公知の冷却機としては、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、及びケムテーター等の密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等を用いて行ってもよく、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターとの組み合わせにより行ってもよい。急冷可塑化を行なうことにより、可塑性を有する油脂組成物が得られる。また、急冷可塑化の際には、冷却機に加えて、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)、レスティングチューブ、又はホールディングチューブ等を使用してもよい。
本発明の一態様に係るO/W/O乳化組成物は、前述の本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物を最外油相として含み、当該最外油相は乳化剤を含まない構成である。ここで、「O/W/O乳化組成物」は、水中油(O/W)型の乳化物を分散相として、連続相となる最外油相に分散相を均一に分散させた油中水中油(O/W/O)型の乳化組成物である。
本発明の一態様に係るO/W/O乳化組成物に含まれるO/W乳化物は、油相を分散相とし、水相を連続相として油相を均一に分散させた乳化物であれば、種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。O/W乳化物は、乳化剤を含んでいてもよい。O/W乳化物としては、例えば、マヨネーズ、生クリーム、カスタードクリーム、アイスクリーム等が挙げられる。O/W乳化物は、必要に応じて、水相成分として、水の他に、例えば、酸味料、食塩、調味料、糖類、香辛料、着色料、着香料、増粘剤、有機酸、酸化防止剤、保存料、静菌剤等を単独で又は2種以上を組み合わせて含むことができる。油相成分としては、植物油脂、動物油脂、鉱物油、合成油等が挙げられる。
本発明の一態様に係るO/W/O乳化組成物において、最外油相における本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物が占める割合が50〜100質量%であり、さらに、O/W乳化物と最外油相との質量比が5:5〜8:2である。最外油相における本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物が占める割合が50質量%以上であることにより、最外油相に乳化剤を使わずともO/W/O乳化組成物を製造することができる。さらに、O/W乳化物と最外油相との質量比が前述の範囲であることにより、O/W乳化物のみずみずしさに優れるO/W/O乳化組成物を製造することができる。
本発明の一態様に係るO/W/O乳化組成物の用途は、食品、化学品、医薬品、化粧品等、特に限定されないが、本発明の一態様に係るO/W/O乳化組成物は、呈味性に優れていることから、食品の調理に使用することが好ましい。食品の調理に使用する場合の具体的な用途としては例えば、例えば、練り込み用、スプレッド用、フィリング用、トッピング用及び調味料等が挙げられる。
本発明の一態様にかかるO/W/O乳化組成物の製造方法は、水中油(O/W)型の乳化物を分散相とし、本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物を連続相としてエマルションを形成すればよく、エマルションの形成方法は特に限定されない。例えば、本発明の一態様に係る可塑性油脂組成物とO/W乳化物とを、従来公知の撹拌機を用いて撹拌混合すればよい。
本発明の一態様に係るO/W/O乳化組成物を含む食品もまた、本発明の範疇に含まれる。当該食品としては、例えば、野菜サラダ、製菓製品等が挙げられる。その効果等は本発明のO/W/O乳化組成物について説明したとおりであるのでここでは繰り返さない。
食品中に含まれているO/W/O乳化組成物の含有量は特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができる。O/W/O乳化組成物そのものを食品として食してもよい。
(液油)
菜種油:市販品を用いた。
パーム油:市販品を用いた。
可塑性油脂の固体脂含量は、基準油脂分析試験法2.2.9−2013に記載の方法で定量した。
(ガスクロマトグラフィーの条件)
カラム:Ultra ALLOY−1(MS/HT)(FRONTIER LAB製)
移動相:ヘリウムガス
注入温度:380℃
カラム温度:280℃で1分間、その後に400℃で10分間(昇温速度10℃/分)
検出器:FID
検出器温度:400℃
(定量方法)
トリウンデカノイン及びC54〜C66の飽和トリアシルグリセロールをクロロホルムに溶解し、標準溶液を用意した。
表1に示す配合で、液油及び液油以外の油脂を60℃に加熱、溶解して混合した後に、冷却しながら練りを加えることで、実施例1の可塑性油脂組成物を作製した。
実施例2〜8、及び比較例1〜7において、表1及び表2に示す配合量にした以外は実施例1と同様にして可塑性油脂組成物を作製した。
<O/W乳化物>
試験例1のO/W乳化物として、市販のマヨネーズ(キユーピー株式会社製)を使用した。
実施例1〜4、8及び比較例1〜7の各可塑性油脂組成物をホバートミキサーで600秒間撹拌し、可塑性油脂組成物を含気させた。次いで、O/W乳化物と可塑性油脂組成物との比(質量比)が7:3となる量で、試験例1のO/W乳化物を投入し、ホイッパーを用いて軽く撹拌することによって両者を混合して、実施例1〜4、8及び比較例1〜7の各可塑性油脂組成物を最外油相として含むO/W/O乳化組成物を作製した。
<O/W乳化物>
試験例2のO/W乳化物として、以下に示す配合で原料を混合して、生クリーム調製物を調製した。尚、生クリーム調製物とは、泡立てていない、液状の状態の生クリームをいう。
生クリーム(森永乳業株式会社製 大雪原45) 80質量%
上白糖 20質量%
<O/W/O乳化組成物の製造方法>
可塑性油脂組成物として、実施例1〜4、8及び比較例4〜7の可塑性油脂組成物を使用したこと、及びO/W乳化物として、試験例2のO/W乳化物を使用したこと以外は、試験例1と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
<O/W乳化物>
試験例3のO/W乳化物として、以下に示す配合で原料を混合して、アイスクリームミックスを調製した。得られたアイスクリームミックス全体に占める乳脂肪分は、約15質量%であった。
卵黄 12質量%
グラニュー糖 26質量%
生クリーム(森永乳業株式会社製 大雪原45) 31質量%
牛乳(森永乳業株式会社製) 31質量%
<O/W/O乳化組成物の製造方法>
可塑性油脂組成物として、実施例1〜4、8及び比較例1〜7の可塑性油脂組成物を使用したこと、及びO/W乳化物として、試験例3のO/W乳化物を使用したこと以外は、試験例1と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
<O/W乳化物>
試験例4のO/W乳化物として、以下に示す配合で原料を混合し、鍋で加熱撹拌(70℃達温まで)して、カスタードクリームを調製した。
卵黄 12質量%
上白糖 15質量%
薄力粉 5質量%
牛乳(森永乳業製) 68質量%
<O/W/O乳化組成物の製造方法>
可塑性油脂組成物として、実施例1〜8、及び比較例4〜7の可塑性油脂組成物を使用したこと、及びO/W乳化物として、試験例4のO/W乳化物を使用したこと以外は、試験例1と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
試験例1〜4の各O/W/O乳化組成物を平板上に薄く塗り広げ、その上にスポイト(Kartell S.p.A.製、パスツールピペット3ml非無菌)で水を1滴(0.03g)落とし、撥水性の有無を下記評価基準により目視で評価した。その水滴の形が丸く球状になっている場合、撥水性有りと判断した。撥水できていない場合は、水滴が球状にならず、滲む、又は水が白濁した。
○:十分撥水した。具体的には、水滴の形状が、球状、又は、少し扁平して水平方向から見たときに楕円となる形状で維持された。
△:○よりは弱いが、撥水した。具体的には、水滴の形状が○より扁平したが、白濁したり、濁ったりはしなかった。
×:撥水しなかった。具体的には、水滴が球状を維持せずに広がり、白濁したり濁ったりした。
パネラーが試験例1〜4の各O/W/O乳化組成物を喫食して、下記評価基準により呈味性を評価した。
◎:О/W乳化物のみずみずしい風味を最も強く感じた。
○:◎よりも弱いが、О/W乳化物のみずみずしい風味を強く感じた。
△:穏やかに感じた。
×:感じなかった。
実施例4の可塑性油脂組成物とサラダ油とを1:1(質量比)で混合し、ホバートミキサーで10分間撹拌して含気させ、比重0.50の油脂Aを得た。得られた油脂Aを最外相用油脂として用いた。油脂A30質量%と、試験例2と同じ方法で調製した生クリーム調製物(O/W乳化物)70質量%とを混合し、ホイッパーを用いて撹拌して、O/W/O乳化組成物を作製した。実施例9で得られたO/W/O乳化組成物では、O/W乳化物と最外油相との質量比は、7.0:3.0であった。
実施例4の可塑性油脂組成物を最外相用油脂として用い、試験例2と同じ方法で調製した生クリーム調製物(O/W乳化物)と実施例4の可塑性油脂組成物とを7.5:2.5(質量比)で混合したこと以外は実施例9と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
実施例4の可塑性油脂組成物を最外相用油脂として用い、試験例2と同じ方法で調製した生クリーム調製物(O/W乳化物)と実施例4の可塑性油脂組成物とを5.2:4.8(質量比)で混合したこと以外は実施例9と同様にしてO/W/O乳化組成物を作製した。
Claims (3)
- 最外油相に乳化剤を含有しないO/W/O乳化組成物を製造するための当該最外油相用の可塑性油脂組成物であって、
当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50〜95質量%含み、
固体脂含量が5℃で5〜15質量%であり、25℃での固体脂含量が、当該5℃のときの固体脂含量より0.5〜8質量%少なく、
当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを2.6〜8.6質量%含むことを特徴とする、可塑性油脂組成物。 - 請求項1に記載の可塑性油脂組成物を最外油相として含み、
当該最外油相は乳化剤を含まないことを特徴とする、O/W/O乳化組成物。 - 請求項2に記載のO/W/O乳化組成物を含む食品。
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