JP6965936B2 - 単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法、単層カーボンナノチューブ分散液 - Google Patents
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Description
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
単層カーボンナノチューブ材料として用いられる材料は、触媒金属除去等を目的とした酸処理等が行われていることがある。そのため、単層カーボンナノチューブ材料の中には、その表面等に、カルボキシル基やカルボニル基等の官能基が多く修飾されたものがある。そのような単層カーボンナノチューブ材料は、修飾された官能基の影響により、溶液中では、修飾されていない場合に比べて異なる電荷を帯びている。その結果、修飾された単層カーボンナノチューブ材料は、単層カーボンナノチューブ本来の性質とは異なる表面の電気的状態をなしている。したがって、修飾された単層カーボンナノチューブ材料を、金属型単層カーボンナノチューブと半導体型単層カーボンナノチューブに分離することが難しくなる。
図1は、本実施形態の単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法を示すフローチャートである。
本実施形態の単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法は、単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法であって、単層カーボンナノチューブ混合物の清浄化処理を有し、単層カーボンナノチューブ混合物と界面活性剤を含む分散液を作製する工程(以下、「工程A」と言う。)と、前記分散液に含まれる単層カーボンナノチューブ混合物を分離する工程(以下、「工程B」と言う。)と、を有する。また、工程Aにおいて、分散液の物性量を所定の範囲内に調整するための操作を有する。
工程Aでは、清浄化処理を行った単層カーボンナノチューブ混合物を、界面活性剤および分散媒を含む溶液に分散させることにより、単層カーボンナノチューブ分散液の物性量を所定の範囲内に調整する。本実施形態の単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法では、単層カーボンナノチューブ分散液の物性量は、単層カーボンナノチューブ分散液の平均ゼータ電位、単層カーボンナノチューブ分散液のpHまたは単層カーボンナノチューブ分散液の導電率である。
CnH2n(OCH2CH2)mOH (1)
(但し、n=12〜18、m=20〜100である。)
単層カーボンナノチューブ分散液における単層カーボンナノチューブ混合物の含有量が上記の範囲であれば、単層カーボンナノチューブ混合物に含まれる2群以上の異なる性質を有する単層カーボンナノチューブを、それぞれの性質別の単層カーボンナノチューブに分離することができる。
このような電気移動度の計測装置としては、例えば、大塚電子社製のELSZ−2Plus等が挙げられる。
単層カーボンナノチューブ分散液の平均ゼータ電位を−15mV以上とすれば、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる2群以上の異なる性質を有する単層カーボンナノチューブを、それぞれの性質別の単層カーボンナノチューブに分離することができる。
単層カーボンナノチューブ分散液の平均ゼータ電位を0mV以下とすれば、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる2群以上の異なる性質を有する単層カーボンナノチューブを、それぞれの性質別の単層カーボンナノチューブに分離することができる。
単層カーボンナノチューブ分散液のpHを上記の範囲内とすれば、単層カーボンナノチューブ分散液に含まれる2群以上の異なる性質を有する単層カーボンナノチューブを、それぞれの性質別の単層カーボンナノチューブに分離することができる。
回収の方法は、特に限定されず、分散液相Aと分散液相Bが拡散混合しない方法であればいかなる方法であってもよい。
回収の方法としては、例えば、第1の電極と第2の電極への直流電圧の印加を止め、それぞれの相から、ピペットにより静かに少量ずつ吸い出す方法が挙げられる。
本実施形態の単層カーボンナノチューブ分散液は、単層カーボンナノチューブ混合物と、界面活性剤とを含み、平均ゼータ電位が−15mV以上0mV以下である。
「単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の調製操作」
平均直径1nmの単層カーボンナノチューブ混合物を、真空中で、800℃にて2時間加熱した。
水に、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(商品名:Brij S100、シグマアルドリッチ社製)を1.0wt%溶解した溶液Aを調製した。
単層カーボンナノチューブ混合物の分散液における含有量が0.3μg/mLとなるように、単層カーボンナノチューブ混合物を秤量した。
次に、溶液Aに対して、単層カーボンナノチューブ混合物を投入した。
単層カーボンナノチューブ混合物を投入した溶液Aに対して、ホーン型超音波破砕機(商品名:Digital Sonifier 450、ブランソン社製)により、出力25Wで120分間、超音波分散処理を行った。その後、超遠心機(商品名:CS100GX、日立工機社製)により、250000×g、10℃にて50分間、超遠心分離操作を行った。そして、上澄み80%を、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液を得た。
得られた単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の一部を、例えば、透析法を用いて、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液に含まれる非イオン性界面活性剤を除去し、非イオン性界面活性剤の含有量を1/10まで低下させた。
非イオン性界面活性剤の含有量を1/10まで低下させた単層カーボンナノチューブ混合物の分散液について、平均ゼータ電位を測定した。
測定には、ゼータ電位測定装置(商品名:ELSZ−2Plus、大塚電子社製)を用いた。結果を図2に示す。
測定の結果、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の平均ゼータ電位は、−10.2mV近傍にあることが確認された。
まず、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液35mLを、1wt%ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル水溶液35mLにより希釈し、総量を70mLとし、単層カーボンナノチューブ分散液(Pristine分散液)を作製した。
次に、分離槽の下部に設けられた注入口より、水7mL、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液70mL、2wt%ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル水溶液15mLを順番に静かに注入した。その結果、分離槽内に、上から、水、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液、2wt%ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル水溶液の層構造が形成された。
また、水からなる層の上端に白金の陰極、2wt%ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル水溶液からなる層の下端に、白金の陽極を配置し、電極間距離を約20cmとした。
次に、陰極と陽極の間に、200Vの電圧を72時間継続して印加した。
図3は、電圧印加前(0hr)と電圧印加から72時間後(72hr)の分離槽内における単層カーボンナノチューブ分散液の状態を示す光学写真である。電圧印加前の写真と電圧印加から72時間後の写真を比較すると、72時間後には、分離槽内の溶液が3層に分離していることが分かった。
72時間後の単層カーボンナノチューブの分散液を約7mLずつ分画し、最下部のF1と下から11番目のF11層から分離操作後の単層カーボンナノチューブの分散液を回収した。分光光度計(商品名:紫外可視近赤外分光光度計 UV−3600、島津製作所社製)を用いて、それぞれの分離操作後の単層カーボンナノチューブの分散液と、分離操作前のPristine分散液の光吸収スペクトルの測定を行った。結果を図4に示す。さらに、ラマン分光分析を行った。結果を図5に示す。
図5に示すラマン分光分析の結果から、分離操作前(Pristine)の単層カーボンナノチューブ混合物の分散液における半導体型単層カーボンナノチューブの含有比率を67%と仮定して、分離後の単層カーボンナノチューブ分散液における半導体型単層カーボンナノチューブと金属型単層カーボンナノチューブの含有比率を求めると、分離後のF1層の単層カーボンナノチューブ分散液(Semiconducting)には半導体型単層カーボンナノチューブが98%以上含まれ、分離後のF11層の単層カーボンナノチューブの分散液(Metallic)には金属型単層カーボンナノチューブが79%含まれることが分かった。
「単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の調製操作」
水に、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(商品名:Brij S100、シグマアルドリッチ社製)を1.0wt%溶解した溶液Bを調製した。
単層カーボンナノチューブ混合物の分散液における含有量が0.3μg/mLとなるように、平均直径1nmの単層カーボンナノチューブ混合物を秤量した。なお、この秤量した単層カーボンナノチューブ混合物は、実施例1とは異なり、真空アニール処理は施していない。
次に、実施例1と同様に、溶液Bに対して、単層カーボンナノチューブ混合物を分散させ、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液(Pristine分散液)を得た。
得られた単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の一部を、透析法などにより、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液に含まれる非イオン性界面活性剤を除去し、非イオン性界面活性剤の含有量を1/10まで低下させた。
単層カーボンナノチューブ混合物の分散液について、実施例1と同様にして、平均ゼータ電位を測定した。結果を図2に示す。
測定の結果、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の平均ゼータ電位は、−16.5mV近傍にあることが確認された。
実施例1と同様にして、単層カーボンナノチューブの混合物の分散液等を分離層内へ注入し、分離操作を行った。
72時間後の単層カーボンナノチューブ混合物の分散液を7mLずつ分画し、最下部のF1層と下から11番目のF11層から、分離操作後の単層カーボンナノチューブ混合物の分散液を回収した。分光光度計(商品名:紫外可視近赤外分光光度計 UV−3600、島津製作所社製)を用いて、それぞれの分離操作後の単層カーボンナノチューブの分散液と、分離操作前のPristine分散液の光吸収スペクトルを測定した。
結果を図6に示す。
「単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の調製操作」
水に、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(商品名:Brij S100、シグマアルドリッチ社製)を1.0wt%溶解した溶液Bを調製した。
単層カーボンナノチューブ混合物の分散液における含有量が0.3μg/mLとなるように、eDIPS法で合成した平均直径1nmの単層カーボンナノチューブ混合物を秤量した。なお、この秤量した単層カーボンナノチューブ混合物は、実施例1とは異なり、真空アニール処理は施していない。
次に、実施例1と同様に、溶液Bに対して、単層カーボンナノチューブ混合物を分散させ、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液を得た。
得られた単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の一部を、例えば、透析法等により、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液に含まれる非イオン性界面活性剤を除去し、非イオン性界面活性剤の含有量を1/10まで低下させた。
非イオン性界面活性剤の含有量を1/10まで低下させた単層カーボンナノチューブ混合物の分散液について、実施例1と同様にして、平均ゼータ電位を測定した。結果を図2に示す。
測定の結果、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の平均ゼータ電位は、−11.8mV近傍にあることが確認された。
実施例1と同様にして、単層カーボンナノチューブ混合物の分散液等を分離槽内へ注入し、分離操作を行った。
図7は、電圧印加前(0hr)と電圧印加から72時間後(72hr)の分離槽内における単層カーボンナノチューブ混合物の分散液の状態を示す光学写真である。電圧印加前の写真と電圧印加から72時間後の写真を比較すると、72時間後には、分離槽内の溶液は3層に分離していることが分かった。
72時間後の単層カーボンナノチューブ混合物の分散液を7mLずつ分画し、最下部のF1(図7)と下から11番目のF11から単層カーボンナノチューブの分散液を回収した。それぞれの分離操作後の単層カーボンナノチューブの分散液と、分離操作前のPristine分散液の分光分析を行った。
分光分析としては、光吸収分析とラマン分光分析を行った。結果を図8と図9に示す。
図9に示すラマン分光分析の結果から、分離操作前(Pristine)の単層カーボンナノチューブ混合物の分散液における半導体型単層カーボンナノチューブの含有比率を67%と仮定して、分離後の単層カーボンナノチューブ分散液における半導体型単層カーボンナノチューブと金属型単層カーボンナノチューブの含有比率を求めると、分離後のF1層の単層カーボンナノチューブの分散液(Semiconducting)には半導体型単層カーボンナノチューブが93%以上含まれ、分離後のF11層の単層カーボンナノチューブの分散液(Metallic)には金属型単層カーボンナノチューブが55%含まれることが分かった。
また、本発明によれば、単層カーボンナノチューブの混合物の初期状態によらず、単層カーボンナノチューブ混合物を高純度に分離することができる。従来は分離できなく、産業的に利用できなかった単層カーボンナノチューブ混合物に対して、適切な清浄化処理を施して、物性量を所望の範囲に収めれば、高純度に分離精製できる。この結果、分離操作により高純度に分離精製された単層カーボンナノチューブを低コストで提供することができる。
以上のように、本発明によれば、単層カーボンナノチューブ混合物を安定に、高純度に分離精製することが可能で、産業的な意義は極めて大きい。
CnH2n(OCH2CH2)mOH (1)
(但し、n=12〜18、m=20〜100である。)
Claims (9)
- 単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法であって、
前記単層カーボンナノチューブ混合物と界面活性剤を含む分散液を作製する工程と、
前記分散液に含まれる前記単層カーボンナノチューブ混合物を分離する工程と、
を有し、
前記単層カーボンナノチューブ混合物を分離する工程において、前記分散液の物性量が所定の範囲内にある分散液を使用し、
前記分散液の物性量は、平均ゼータ電位であり、
前記平均ゼータ電位を−15mV以上に調整する単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法。 - 前記平均ゼータ電位を0mV以下に調整することを特徴とする請求項1に記載の単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法。
- 前記単層カーボンナノチューブ混合物と界面活性剤を含む分散液を作製する工程において、
前記物性量を所定の範囲内に調整するために、前記単層カーボンナノチューブ混合物を清浄化する処理を施すことを特徴とする請求項1または2に記載の単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法。 - 前記単層カーボンナノチューブ混合物を清浄化する処理は、前記単層カーボンナノチューブ混合物の電荷を除去する処理であることを特徴とする請求項3に記載の単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法。
- 前記単層カーボンナノチューブ混合物を清浄化する処理は、前記単層カーボンナノチューブ混合物をアニールする工程が含まれることを特徴とする請求項3に記載の単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法。
- 単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法であって、
前記単層カーボンナノチューブ混合物と界面活性剤を含む分散液を作製する工程と、
前記分散液に含まれる前記単層カーボンナノチューブ混合物を分離する工程と、
を有し、
前記単層カーボンナノチューブ混合物を分離する工程において、前記分散液の物性量が所定の範囲内にある分散液を使用し、
前記分散液の物性量は、平均ゼータ電位であり、
前記平均ゼータ電位が−15mV以上である単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法。 - 前記平均ゼータ電位が0mV以下である請求項6に記載の単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法。
- 前記分散液を作製する工程において、前記界面活性剤として、下記式(1)で表わされるポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の単層カーボンナノチューブ混合物の分離方法。
CnH2n(OCH2CH2)mOH (1)
(但し、n=12〜18、m=20〜100である。) - 単層カーボンナノチューブ混合物と、
界面活性剤とを含み、
平均ゼータ電位が−10.2mV以上0mV以下であることを特徴とする単層カーボンナノチューブ分散液。
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