<発明者等の得た知見>
本発明者等は、自走式電線点検装置について、以下に述べる新規な課題を見出した。
鉄塔を乗り越えるよう構成される自走式電線点検装置では、鉄塔を乗り越えるため、例えば、アームの長さ方向の中間部を挟んで両端側に設けられる一対のフック機構が架空地線を把持した状態で、本体部がアームに沿って移動する動作を行う。
ここで、上述のフック機構としては、例えば、逆手状に架空地線を把持する構成が考えられる。このような場合、一対のフック機構により架空地線を把持するためには、例えば、以下の一連の動作を行う必要がある。
例えば、まず、アームの両端が前方を向いた状態で、走行部に対して本体部およびアームを前傾させる。アームを前傾させたら、アームの一端を送り出し、一対のフック機構を架空地線の下を通過させる。一対のフック機構を架空地線の下を通過させたら、走行部に対して本体部およびアームを後傾させることで、一対のフック機構のフックを架空地線よりも上に変位させる。一対のフック機構のフックを架空地線よりも上に変位させたら、走行部に対して本体部の向きを変化させ、一対のフック機構のフックを架空地線の直上に移動させる。一対のフック機構のフックが架空地線の直上にきたら、本体部およびアームを水平姿勢に戻すことで、一対のフック機構のフックを架空地線に引っ掛ける。これにより、一対のフック機構により架空地線を把持させることができる。
また、一対のフック機構による架空地線の把持を解除し、走行動作に復帰する動作では、上述の一対のフック機構により架空地線を把持する動作と逆の順に動作させる。
このように、フック機構が逆手状に架空地線を把持するよう構成されている場合では、走行部に対して本体部およびアームを前傾または後傾させたり、走行部に対して本体部およびアームを鉛直方向に昇降させたりする動作が必要となっていた。このため、自走式電線点検装置が鉄塔を乗り越える動作が複雑化していた。
自走式電線点検装置が鉄塔を乗り越える動作が複雑化していたため、一対のフック機構のフックを架空地線に引っ掛けるときに、フックの位置を適切な位置となるように精度良く調整することが必要となるなど、監視項目が増加する可能性があった。また、自走式電線点検装置が鉄塔を乗り越える動作が複雑化していたため、当該一連の動作に係る時間が長くなる可能性があった。これらの結果、自走式電線点検装置による電線の点検が非効率化する可能性があった。
本発明では、本発明者が見出した上記新規な課題に基づき、以下のような構成を採用した。
鉄塔間に架線された架空地線に沿って走行しながら電線の点検を行う自走式電線点検装置であって、
前記架空地線上を走行可能な走行部と、
前記走行部の下方に配置される本体部と、
前記本体部に対して相対移動可能に連結され、前記鉄塔を迂回するように前記本体部を移動させるための迂回路を形成する円弧型のアームと、
前記アームを前記架空地線に懸垂させるために前記アームの長さ方向の中間部を挟んで両端側に設けられる一対のフック機構と、
を備え、
前記一対のフック機構のそれぞれは、前記架空地線が出入り可能な開口部を有し、該開口部のうち前記架空地線が出入りする出入口を水平方向の一方から鉛直上方に向けずに前記一方と反対側の他方へ移動させることが可能に構成される
自走式電線点検装置。
この構成を採用すれば、フック機構により、架空地線を把持させながら該架空地線を通り抜けさせることができる。その結果、自走式電線点検装置が鉄塔を乗り越える動作を簡略化させることができる。
<本発明の第1実施形態>
(1)自走式電線点検装置の構成
図1を用い、本実施形態の自走式電線点検装置100について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る自走式電線点検装置の構成を示す斜視図である。
なお、図1は、水平角180°で鉄塔120(図1には不図示、図5以降に図示)に支持された架空地線140に沿って自走式電線点検装置100が走行するときの姿勢を示している。架空地線140の「水平角」は、鉄塔120を上から見たときに、鉄塔120から一方向に延在する架空地線140と他方向に延在する架空地線140とのなす角度、言い換えれば、鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140のなす角度をいい、架空地線140の「挟角」または「夾角」と言い換えることもできる。なお、以下において「水平角」等といった場合には、鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140のなす2つの角度のうち、角度が小さいほうを意味する。
図示した自走式電線点検装置100は、鉄塔120間に架線された架空地線140に沿って走行しながら電線(送電線、電力線など)の点検を行う。自走式電線点検装置100は、鉄塔120を乗り越える機能を有するもので、架空地線140上を走行可能な走行部1と、走行部1から垂下するように設けられた本体部2と、本体部2に対して相対移動可能に連結されたアーム3と、アーム3の(円弧の)径方向の内側に設けられたバンパ40と、アーム3の長さ方向の中間部を挟んで両端側に設けられた一対のフック機構4と、を備える。
鉄塔120には、該鉄塔120の付属部材として、レール(セーフティレール)(不図示)が付設されている。レールには、図示しない安全器が取り付けられる。安全器は、作業員が鉄塔120に昇ったり降りたりするときに、作業員が装着する安全帯をつないでおくための機器である。
架空地線140は、複数の鉄塔120を順に経由するように、それらの鉄塔120間にカテナリ方式等で架線される。その場合、架線方向で隣り合う2つの鉄塔120間は「径間」と呼ばれ、この径間を一方の鉄塔120から他方の鉄塔120に向かって自走式電線点検装置100が走行する。ここで、自走式電線点検装置100が鉄塔120を乗り越えるとは、鉄塔120を境に2つの径間が存在する場合に、一方の径間に架線されている架空地線140から、次の径間に架線されている架空地線140に自走式電線点検装置100が乗り移ることを意味する。架空地線140の直径は、たとえば、10mm以上15mm以下である。架空地線140は、本実施形態では図例のような1条タイプで、鉄塔120の頂部に耐張方式または懸垂方式に取り付けられる。ただし、本発明は、鉄塔に2条タイプで架線された架空地線に沿って走行しながら電線の点検を行う場合にも適用可能である。
(方向の定義)
以下において、自走式電線点検装置100の各部の相対的な位置関係や動作の向き、方向性などを明確にするために、次のように方向を定義する。まず、隣り合う2つの鉄塔120間に架線された架空地線140上を電線を点検しながら自走式電線点検装置100が走行する場合、自走式電線点検装置100の姿勢は、理想的には傾きのない水平姿勢に維持される。その場合、水平姿勢に維持される自走式電線点検装置100の高さ方向を上下方向とし、自走式電線点検装置100の進行方向(走行方向)の下流側を前方(前側)、上流側を後方(後ろ側)とする。また、架空地線140に自走式電線点検装置100を設置したときに、重力が働く方向(鉛直方向)に平行な方向を垂直方向とし、それと直交する方向を水平方向とする。また、水平姿勢を維持しながら架空地線140に沿って走行するときの自走式電線点検装置100の向きを基準に、自走式電線点検装置100の前後方向および左右方向を規定する。このため、上記図1において、自走式電線点検装置100が矢印Mの方向に走行するものとすると、矢印Mの指す方向が前方、それと反対の方向が後方、矢印Mの方向に向かって左側が左方、右側が右方となる。
また、以下において、アーム3の「長さ方向」とは、アーム3が構成する円弧に沿った方向のことをいい、アーム3の「周方向」と言い換えることができる。また、アーム3の「径方向」(半径方向)とは、アーム3が構成する円弧の中心から外周側に向かう方向のことをいう。
(走行部1)
走行部1は、駆動源となる走行用モータ(不図示)と、走行用モータの駆動にしたがって回転する一対の車輪(歯付き車)8と、一対の車輪8を支えるフレーム9と、を備える。一対の車輪8のそれぞれは、架空地線140に係合するV字形状の溝を有する。また、一対の車輪8は、これらの外周に沿って架け渡されるチェーン(符号不図示)を有し、走行用モータ(不図示)の駆動により、互いに同期して回転するよう構成されている。
(本体部2)
本体部2は、走行部1の下方に配置されている。本体部2は、走行部1から垂下するように、支持機構15によって支持されている。支持機構15は、傾き制御機構部16と、シャフト17と、を備える。
傾き制御機構部16は、円弧状のガイドレール18と、ガイドレール18に取り付けられた揺動部19とを有し、揺動部19がガイドレール18に沿って揺動することにより、本体部2とアーム3の傾きを制御可能になっている。ここで記述する「傾き」とは、ガイドレール18の円弧の中心を通る水平軸を中心とした、本体部2とアーム3の前後方向の傾きをいう。
ガイドレール18は、略U字形に配置されている。ガイドレール18の両端(上端部)は、走行部1に連結されている。ガイドレール18の外側の面にはラック(不図示)が形成されている。揺動部19は、ガイドレール18に移動可能に取り付けられている。揺動部19には、ガイドレール18のラックに噛み合うピニオン(不図示)と、このピニオンを回転させるモータ(不図示)と、が設けられている。モータによってピニオンを回転させると、ピニオンの回転方向および回転量に応じて揺動部19がガイドレール18に沿って揺動(移動)する。揺動部19が揺動すると、走行部1に対するシャフト17の傾きが変化し、これに応じて本体部2とアーム3の傾きも変化する。したがって、傾き制御機構部16により、本体部2とアーム3の傾きを制御(調整)することができる。
ここで、図2(a)〜図2(c)を用い、傾き制御機構部16による動作の具体例を説明する。図2(a)は水平な架空地線に沿って走行する場合の側面図、図2(b)は走行部の進行方向に対して鉛直上側に傾斜した架空地線に沿って走行する場合の側面図、図2(c)は走行部の進行方向に対して鉛直下側に傾斜した架空地線に沿って走行する場合の側面図である。
図2(a)に示すように、水平な架空地線140に沿って走行する場合には、傾き制御機構部16により、本体部2およびアーム3を走行部1(の一対の車輪8の配置方向)に対して平行に維持する。これにより、シャフト17を鉛直に維持し、本体部2およびアーム3を水平姿勢に維持することができる。ここでいう本体部2およびアーム3の水平姿勢とは、水平方向に対する本体部2およびアーム3の傾きが実質ゼロ(傾きなし)である状態をいう。なお、水平な架空地線140に沿って走行する場合には、フック機構4のフック32は、架空地線140と同じ高さに配置されることとなる。
図2(b)に示すように、走行部1の進行方向に対して鉛直上側に傾斜した架空地線140に沿って走行する場合には、傾き制御機構部16により、本体部2およびアーム3を走行部1に対して架空地線140の傾斜角だけ相対的に前傾させる。ここでいう走行部1に対する本体部2の相対的な前傾とは、本体部2の前後方向において、本体部2の前側(アーム支持部21側)が後ろ側よりも走行部1から鉛直下方向に離れた位置となるように傾くことをいう。走行部1に対する本体部2の相対的な前傾により、シャフト17を鉛直に維持し、本体部2およびアーム3を水平姿勢に維持することができる。なお、走行部1の進行方向に対して鉛直上側に傾斜した架空地線140に沿って走行する場合には、フック機構4のフック32は、架空地線140よりも低い位置に配置されることとなる。
図2(c)に示すように、走行部1の進行方向に対して鉛直下側に傾斜した架空地線140に沿って走行する場合には、傾き制御機構部16により、本体部2およびアーム3を走行部1に対して架空地線140の傾斜角だけ相対的に後傾させる。ここでいう走行部1に対する本体部2の相対的な後傾とは、本体部2の前後方向において、本体部2の前側(アーム支持部21側)が後ろ側よりも走行部1に向けて鉛直上方向に近い位置となるように傾くことをいう。走行部1に対する本体部2の相対的な後傾により、シャフト17を鉛直に維持し、本体部2およびアーム3を水平姿勢に維持することができる。なお、走行部1の進行方向に対して鉛直下側に傾斜した架空地線140に沿って走行する場合には、フック機構4のフック32は、架空地線140よりも高い位置に配置されることとなる。
このように、傾き制御機構部16によって本体部2およびアーム3の傾きを制御することにより、架空地線140が鉛直上下側に傾斜している場合であっても、本体部2およびアーム3を水平姿勢に維持することが可能となる。
シャフト17は、本体部2に対して垂直に立てて配置されるとともに、シャフト連結部20を介して揺動部19に連結されている。シャフト17の位置は、走行部1の2つの車輪8に自走式電線点検装置100の自重が均等に加わるように、2つの車輪8間の中心位置の直下に設定されている。シャフト17の外周面には、ボールネジ溝とボールスプライン溝が形成されている。シャフト17は、本体部2を上下に貫通するように配置されている。
本実施形態では、本体部2は、例えば、機器搭載部5と、搭載部支持部6と、昇降回転駆動部(不図示)と、アーム支持部21と、近接センサと、を有している。
機器搭載部5は、例えば、電線の点検に関わる機器を搭載している。電線の点検に関わる機器は、例えば、制御部と、電線点検部と、バッテリと、を含んでいる。
制御部は、所定の制御用プログラムに基づいて自走式電線点検装置100の各部の動作を統括的に制御する。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、およびI/Oポートを有している。RAM、記憶装置、およびI/Oポートは、CPUとデータ交換可能に構成されている。また、制御部には、外部と送受信する送受信部が接続されている。I/Oポートは、本体部2以外の各部や、電線点検部などに接続されている。記憶装置は、上述の各部の制御に係る各種データ並びにプログラム、電線点検部による点検結果などを記憶するよう構成されている。RAMは、CPUによって記憶装置から読み出される各種データやプログラム等が一時的に保持されるよう構成されている。CPUは、記憶装置に格納された所定のプログラムを実行することにより、上述の各部を制御するように構成されている。
電線点検部は、架空地線140よりも下方で鉄塔120に架線される送電線などの電線の点検や、点検用データの取得などを行う。電線点検部が行う点検項目には、たとえば、電線の外観、電線と樹木との離隔距離、電線接続管の発熱などが含まれる。また、これ以外にも、鉄塔120の外観をカメラ等で撮影して点検することも可能である。なお、点検の結果は、上述の記録装置に電子データとして記録してもよいし、送受信部を介して外部の装置にデータを取り込んで処理してもよい。
バッテリは、自走式電線点検装置100の動作に係る各部に電力を供給するよう構成されている。
なお、本実施形態では、機器搭載部5は、例えば、搭載部支持部6を挟んで一対設けられている。これにより、走行部1の進行方向に対する本体部2の左右のバランスを向上させることができる。
搭載部支持部6は、例えば、アーム3からの機器搭載部5の距離を調整するよう、(アーム3の径方向の外側で)アーム3の径方向に沿って機器搭載部5を移動可能に支持するよう構成されている。搭載部支持部6は、例えば、ラックアンドピニオン機構により、機器搭載部5を直線に沿って移動させるよう構成されている。これにより、自走式電線点検装置100の重心位置を調整することができる。
昇降回転駆動部(不図示)は、本体部2の搭載部支持部6内に設けられている。昇降回転駆動部は、例えば、シャフト17の中心軸方向において走行部1と本体部2の間の離間距離を変化させ、本体部2の位置を基準に走行部1を相対的に昇降させるよう構成されている。また、昇降回転駆動部は、例えば、シャフト17の中心軸まわりに回転動作することで、走行部1に対する本体部2の向きを変化させるよう構成されている。
アーム支持部21は、例えば、本体部2の搭載部支持部6の前部に設けられている。本体部2の前部とは、自走式電線点検装置100が架空地線140上を走行するときに前方に位置する部分をいう。アーム支持部21は、アーム3を移動可能に支持し、傾き制御機構部16やシャフト17よりも前方に位置している。
アーム支持部21には、アーム3を相対的に移動可能に支持するアーム支持機構(不図示)と、本体部2に対してアーム3を相対移動させるための駆動源となるモータ(不図示)と、各々のモータに対応するピニオン(不図示)と、が設けられている。ピニオンは、アーム3の外側面に形成されたラック28と噛み合うことにより、ラックアンドピニオン機構を構成する。モータの駆動によりピニオンを回転させることで、ピニオンの回転方向および回転量に応じて、本体部2とアーム3の相対位置を変化させることができる。
本実施形態では、アーム支持部21のアーム支持機構は、例えば、アーム3の長さ方向に直交する断面で見たときに、アーム3の外周全体を把持するよう構成されている。なお、ここでいう「アーム3の外周」とは、アーム3の長さ方向に直交する断面において、アーム3の外形を構成する周囲のことをいう。アーム支持機構がアーム3の外周全体を把持することで、アーム3と本体部2との結合を強固にすることができる。
近接センサは、例えば、本体部2の搭載部支持部6の前方下部に設けられ、自走式電線点検装置100から鉄塔120までの離間距離を検出するよう構成されている。近接センサは、例えば、レーザ光を用いた光学式で構成されている。
(アーム3)
アーム3は、架空地線140を支持する鉄塔120を迂回(回避)するように本体部2を移動させるための迂回路を形成する。アーム3は、たとえば、FRP(Fiber−Reinforced Plastics)などの樹脂により、一定の曲率で円弧型(半円型)に形成されている。アーム3の曲率半径は、例えば、鉄塔120やレールとの接触を避けて本体部2を移動させるのに必要な寸法に設定される。
アーム3は、アーム支持部21で本体部2の前部に連結されている。アーム3の外側面にはラック28が形成されている。ラック28は、アーム3の長さ方向の一端から他端にわたって連続的に形成されている。アーム支持部21において、モータを駆動すると、アーム3の一端はアーム支持部21から遠ざかる方向に移動し、アーム3の他端はアーム支持部21に近づく方向に移動する。
(フック機構4)
ここで、図1、図3(a)および図3(b)を用い、本実施形態のフック機構4について説明する。図3(a)および図3(b)は、それぞれ、フック機構を分解したときの斜視図である。なお、図3(a)および図3(b)では、ブラケット31を、鉛直方向に沿って立設した形状に簡略化している。
図1に示すように、本実施形態の一対のフック機構4は、アーム3を架空地線140に懸垂させるためにアーム3の長さ方向の中間部を挟んで両端側に設けられている。
本実施形態では、一対のフック機構4のそれぞれは、例えば、架空地線140が出入り可能な開口部32aを有し、該開口部32aのうち架空地線140が出入りする出入口を水平方向の一方から鉛直上方に向けずに一方と反対側の他方へ移動させることが可能に構成されている。これにより、当該フック機構4によって、架空地線140を把持させながら該架空地線140を通り抜けさせることができる。
具体的には、図3(a)および図3(b)に示すように、本実施形態では、一対のフック機構4のそれぞれは、例えば、フック32と、ブラケット31と、を有している。
フック32は、例えば、架空地線140を直接把持する部分であり、略円盤状に構成されている。フック32は、例えば、開口部32aと、フック係止爪32bと、周溝部32cと、連結部32dと、を有している。
開口部32aは、例えば、該フック32の外周から径方向の中心に向けて凹んで開設されている。開口部32aは、該フック32の厚さ方向に貫通している。開口部32aのうち架空地線140が出入りする出入口とは、例えば、該フック32の外周側の開口のことをいう。フック32の周方向における開口部32aの出入口の幅は、例えば、架空地線140が出入り可能な幅となっている。このような構成により、開口部32a内に、フック32の厚さ方向(軸方向)に沿って、架空地線140を挿通させることができる。
また、開口部32aは、フック32の厚さ方向から見て、略U字状に設けられている。すなわち、フック32の周方向における開口部32aの幅は、例えば、フック32の径方向に一定である。
また、開口部32aは、例えば、架空地線140を、開口部32a内にフック32の径方向の中心まで取り込み(入り込ませ)可能に構成されている。すなわち、開口部32aは、該開口部32a内に取り込んだ架空地線140の中心軸とフック32の中心軸とを一致させることができる位置まで、フック32の径方向の中心側に延在している。
フック係止爪32bは、例えば、後述のブラケット係止爪36aと係合する突起状の爪として構成され、該フック32の外周縁の全周に亘って設けられている。フック係止爪32bは、例えば、該フック32の厚さ方向の外側に向けて突出している。また、フック係止爪32bは、例えば、該フック32の厚さ方向の両側に一対設けられている。
周溝部32cは、例えば、後述のブラケット31の狭口部36bを取り込み可能に構成されている。周溝部32cは、例えば、該フック32の厚さ方向の略中央で、且つ、該フック32の外周に沿って、外周から径方向の中心に向けて凹んで設けられている。
連結部32dは、例えば、周溝部32cによって分けられたフック32の一方と他方とを連結している。連結部32dは、例えば、フック32の厚さ方向から見て、開口部32aの幅と略等しい幅を有している。また、連結部32dは、例えば、該フック32の径方向の中心側における開口部32aの端部(底部)から該開口部32aの延在方向に沿ってフック32の外周まで延在している。
ブラケット31は、例えば、アーム3の一部に連結され、フック32を該フック32の周方向に回転可能に支持している。なお、本実施形態では、ブラケット31は、後述するフック機構駆動部39を介してアーム3の一部に連結されている。
ブラケット31は、例えば、アーム3の一部からアーム3の径方向の外側に離れるよう、鉛直斜め上方向に立ち上がっている。これにより、アーム3の円弧の半径を小さくすることができる。また、一対のフック32の間の距離を所定の把持力が得られる程度に確保することができる。
また、ブラケット31は、例えば、鉛直上方から見たときに、フック32の沿面方向(主面に沿った方向)がアーム3の接線方向に沿うように(好ましくは一致するように)フック32を支持している。また、ブラケット31は、例えば、一対のフック機構4がアーム3の両端に位置しているときに、2つのフック32を結ぶ仮想直線の中点が、アーム3の円弧の中心と一致するように、フック32を支持している。これにより、アーム3の円弧の半径を小さくすることができる。なお、2つのフック32を結ぶ仮想直線の中点が、アーム3の円弧の中心と一致していることで、後述のように一対のフック機構4のうち少なくともいずれかが移動可能に構成されている場合に、一対の架空地線140の水平角に対する一対のフック機構4の適用可能な拡開角度範囲を広げることができ、また、乗り越え動作時に本体部2を容易にオフセットさせることができる。
また、ブラケット31は、例えば、アーム3と連結される側と反対側の先端に、フック32と係合するブラケット係合部36を有している。ブラケット係合部36は、例えば、ブラケット係止爪36aと、狭口部36bと、フック駆動部(不図示)と、を有している。
ブラケット係止爪36aは、例えば、フック係止爪32bと係合する突起状の爪として構成されている。ブラケット係止爪36aは、例えば、フック32の鉛直方向の移動を規制しつつ、フック32の周方向の回転を許容するよう、円弧状に設けられている。ブラケット係止爪36aは、例えば、ブラケット係合部36と係合するフック32の厚さ方向の外側から内側に向けて突出している。また、ブラケット係止爪36aは、例えば、ブラケット係合部36と係合するフック32の厚さ方向の両外側から挟むように一対設けられている。
ブラケット係止爪36aの周方向の長さは、例えば、フック32の周方向における開口部32aの出入口の幅よりも長い。これにより、フック32の開口部32aがブラケット係止爪36aと重なったとき(すなわち、開口部32aが鉛直下方を向いているとき)であっても、フック係止爪32bとブラケット係止爪36aとの係合を維持することができる。
なお、一対のブラケット係止爪36aは、ブラケット係合部36の他部とは別体として着脱可能に設けられている。これにより、ブラケット係合部36にフック32を配置した後に、ブラケット係合部36の他部に一対のブラケット係止爪36aを取り付け、該一対のブラケット係止爪36aのそれぞれをフック係止爪32bに係合させることができる。
狭口部36bは、例えば、ブラケット係合部36の中央に設けられ、上述のフック32の周溝部32c内に挿入される板状部として構成されている。狭口部36bは、例えば、フック32の開口部32a内に架空地線140が入り込んだ状態で該開口部32aとブラケット係止爪36aとが重なったときに、開口部32aのうち架空地線140以外の領域を狭めるよう構成されている。これにより、フック機構4により架空地線140を把持させているときに、架空地線140の可動域を狭めることができる。その結果、フック機構4により架空地線140を強固に把持させることができる。
また、狭口部36bは、例えば、半円状(半月状)に構成されている。狭口部36bが構成する半円のうちの弦の部分は、例えば、フック32の開口部32aが水平方向の一方を向いたときに、開口部32aの下辺と一致するか、或いは、該下辺よりも鉛直下側に位置している。つまり、狭口部36bは、フック32の開口部32aが水平方向の一方を向いたときに、開口部32aを塞がないように配置されている。これにより、開口部32a内に架空地線140を取り込んだときに、狭口部36bが架空地線140と干渉することを抑制することができる。
また、狭口部36bが構成する半円のうちの弦の部分は、例えば、フック32が周方向に回転し開口部32aが水平方向の一方を向いたときに、連結部32dの下辺と当接するようになっている。これより、開口部32aが誤って鉛直上方に向くことがないようにフック32の周方向の回転を規制することができる。つまり、フック32は、狭口部36bと連結部32dとの当接によって、該フック32の周方向に半回転(180°回転)しかできないようになっている。
フック駆動部は、例えば、ブラケット係合部36内に設けられ、フック32を周方向に回転させるよう構成されている。具体的には、フック駆動部は、例えば、モータと、ゴム車輪と、を有している。モータは、フック32を周方向に回転させる駆動源として構成されている。ゴム車輪は、その周側面をフック32の周側面に当接させながら、モータの駆動力により回転するよう構成されている。このような構成により、フック32を周方向に回転させることができる。なお、例えば、フック32の周側面にピニオンが設けられ、一方で、フック駆動機構にモータで回転するピニオンが設けられることで、ラックアンドピニオン機構が構成されていてもよい。
ブラケット31は、例えば、フック32がアーム3の径方向に走行部1よりもアーム3の円弧の中心側に配置されるよう、フック32を支持している。言い換えれば、本体部2とアーム3とが相対的に移動したときに、一対のフック機構4のそれぞれのフック32が描く軌跡である仮想円の半径は、例えば、走行部1の車輪8が描く軌跡である仮想円の半径よりも小さい。つまり、走行部1の進行方向に後方に配置されるフック32を、前方の車輪8よりも鉄塔120に近づけて配置することができる。フック32を鉄塔120に近づけることで、鉄塔120の乗り越えに必要なフック32間距離を短くすることができ、その分だけアーム3の長さや曲率半径を小さくすることができる。その結果、アーム3の小型化を図ることが可能となる。
ここで、本実施形態では、一対のフック機構4のうち少なくともいずれかは、例えば、アーム3に沿って移動可能に構成されている。これにより、鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140の水平角が180°未満である場合に、当該水平角に応じて、フック機構4の位置を変更することができる。水平角が180°未満である場合の乗り越え動作については、詳細を後述する。
本実施形態では、一対のフック機構4のうち少なくともいずれかは、例えば、該フック機構4自身をアーム3に沿って移動させるフック機構駆動部39を有している。すなわち、当該フック機構4は、自走式に構成されている。これにより、フック機構駆動部39によって、該フック機構4をアーム3に沿って任意に移動させることができる。
また、一対のフック機構4のうちの少なくともいずれかが有するフック機構駆動部39は、例えば、アーム支持機構のピニオンとともにアーム3のラック28を共用し、該ラック28に噛み合って回転するフック側ピニオン(不図示)を有している。アーム3のラック28を共用することで、アーム3に多重のラックが不要となる。
ここでは、例えば、一対のフック機構4の両方が、それぞれ、フック機構駆動部39を有し、アーム3に沿って移動可能に構成されている。これにより、走行部1の進行方向に対して左右どちらに鉄塔120が配置されるかに応じて、一対のフック機構4のそれぞれの位置を変更することができる。また、一対のフック機構4の両方が、それぞれ、フック機構駆動部39を有することで、一対のフック機構4の重量を等しくすることができる。これにより、アーム3の両端のバランスを向上させることができる。
ここで、図4(a)〜図4(e)を用い、フック機構4が架空地線140を把持してから該架空地線140を通り抜けるまでの動作について説明する。図4(a)〜図4(e)は、フック機構が架空地線を把持してから該架空地線を通り抜けるまでの動作を示す斜視図である。
フック機構4によって架空地線140を把持させる場合には、例えば、まず、アーム3の一端を送り出すか、或いは、フック機構4をアーム3に沿って移動させるなどにより、フック機構4のフック32を架空地線140に近づける。
このとき、図4(a)に示すように、フック32を周方向に回転させることで、フック32の開口部32aの出入口を、水平方向のうち架空地線140が位置する側の一方に向ける。これにより、水平方向から見て、該開口部32aの出入口と架空地線140とを一致させる。
次に、図4(b)に示すように、フック32の開口部32a内に架空地線140を取り込む(入り込ませる)。このとき、開口部32a内にフック32の径方向の中心まで架空地線140を取り込み、架空地線140の中心軸とフック32の中心軸とを一致させる。
次に、図4(c)に示すように、開口部32a内に架空地線140を取り込んだ状態で、開口部32aの出入口を水平方向の一方から鉛直上方に向けずに鉛直下方に向ける。開口部32aの出入口を鉛直下方に向けることで、開口部32aとブラケット係止爪36aとを重ならせ、開口部32aの出入口を閉じることができる。これにより、フック機構4によって、架空地線140を把持させることができる。
このとき、ブラケット係止爪36aの周方向の長さが、フック32の周方向における開口部32aの出入口の幅よりも長いことで、フック係止爪32bとブラケット係止爪36aとの係合を維持することができる。これにより、フック32とブラケット31とが外れることを抑制することができる。
また、このとき、狭口部36bが開口部32aのうち架空地線140以外の領域を狭めるよう構成されていることで、フック32の開口部32aから外側に架空地線140が外れることを抑制することができる。
フック機構4によって架空地線140を把持させた後に、フック機構4による架空地線140の把持状態を解除する場合には、図4(d)に示すように、フック32を周方向に回転させることで、フック32の開口部32aの出入口を、鉛直上方に向けずに、架空地線140が入り込んだ側と反対側の水平方向の他方に向ける。これにより、水平方向から見て、該開口部32aの出入口と架空地線140とを一致させる。
次に、図4(e)に示すように、アーム3の一端を送り出すか、或いは、フック機構4をアーム3に沿って移動させるなどにより、フック機構4のフック32を架空地線140から遠ざける。これにより、架空地線140を開口部32aから水平方向の他方の外側に送り出す。
以上のようにして、フック機構4によって、架空地線140を把持させながら、該架空地線140を通り抜けさせることができる。
(バンパ40)
図1に示すように、バンパ40は、例えば、アーム3の径方向の内側に設けられ、本体部2がアーム3に沿って移動するときに、アーム3から径方向の内側に離間した位置で鉄塔120に当接するよう構成されている。これにより、鉄塔120に対する本体部2の接触を抑制することができる。
本実施形態では、バンパ40は、例えば、アーム3の長さ方向の一端および他端にそれぞれ連結され、アーム3の一端から他端に亘って該アーム3から離間した状態で延在して設けられている。つまり、バンパ40のうちアーム3の一端から他端までの間の領域は、本体部2がアーム3に沿って移動できるよう、アーム3から径方向の内側に所定の間隔をあけて配置されている。このような構成により、上述のように、アーム3の長さ方向に直交する断面で見たときに、アーム3の外周全体を把持するよう、本体部2を構成することができる。
本実施形態では、バンパ40は、例えば、3つの部分に分けられ、具体的には、第1円弧部41と、第2円弧部42と、当接部43と、を有している。
第1円弧部41は、例えば、アーム3の一端に連結され、アーム3が構成する円弧に沿うようにアーム3の一端から他端に向けて所定距離だけ延在している。第2円弧部42は、例えば、アーム3の他端に連結され、アーム3が構成する円弧に沿うようにアーム3の他端から一端に向けて所定距離だけ延在している。第1円弧部41および第2円弧部42のそれぞれと、アーム3との離間距離は、例えば、第1円弧部41および第2円弧部42のそれぞれの全長に亘って、一定である。このような構成により、アーム3を送り出すときに、第1円弧部41および第2円弧部42のそれぞれが構成する円弧内に、鉄塔120のレール等の付属部材を容易に避けることができる。
当接部43は、例えば、第1円弧部41と第2円弧部42との間を繋ぎ、第1円弧部41および第2円弧部42よりもアーム3の径方向の内側に設けられている。当接部43は、例えば、本体部2がアーム3に沿って移動するときに、鉄塔120に当接するよう構成されている。本体部2がアーム3に沿って移動するときに、当接部43が鉄塔120に当接することで、水平方向に対する本体部2のなす角度を小さくすることができる。なお、ここでいう「水平方向に対する本体部2のなす角度」とは、当接部43が鉄塔120に当接した状態で、本体部2がアーム3の長さ方向の中間部に到達したときの、水平方向に対する本体部2のなす最大角度のことをいう。
本実施形態では、当接部43は、例えば、アーム3の円弧に対して弦を構成している。言い換えれば、当接部43は、第1円弧部41と第2円弧部42との間を直線状に繋いでいる。これにより、当接部43が鉄塔120に当接したときの、水平方向に対する本体部2のなす角度を効率よく小さくすることができる。
また、本実施形態では、当接部43は、例えば、アーム3の一端と他端とを結ぶ仮想直線に対して平行である。これにより、当接部43が鉄塔120に当接したときに、鉄塔120に対する当接部43の当接点からアーム3の一端までの距離と、鉄塔120に対する当接部43の当接点からアーム3の他端までの距離と、を略等しくすることができる。
ここで、当接部43が鉄塔120に当接したときの、水平方向に対する本体部2のなす角度は、アーム3の円弧の中心からの当接部43の位置に依存する。例えば、当接部43の位置がアーム3の円弧の中心から遠くなるにつれて、フック32が架空地線140を把持する位置(以下、「フック点」ともいう)から鉛直下側に本体部2が大きく垂れ下がる。このため、水平方向に対する本体部2のなす角度が鉛直下側に大きくなる。一方で、当接部43の位置がアーム3の円弧の中心に近くなるにつれて、本体部2がフック点から鉛直下側に垂れ下がり難くなる。このため、水平方向に対する本体部2のなす角度が鉛直下側に小さくなるか、或いは、水平方向に対する本体部2のなす角度が鉛直上側に大きくなる。
本実施形態では、当接部43は、例えば、鉄塔120に当接したときに、水平方向に対する本体部2のなす角度が鉛直上側および鉛直下側にそれぞれ15°以内となる位置に配置されている。水平方向に対する本体部2のなす角度が鉛直下側に15°超となる位置に当接部43が配置されていると、アーム3に沿って本体部2を移動させる(登らせる)動作のために必要な駆動力が大きくなる可能性がある。これに対し、水平方向に対する本体部2のなす角度が鉛直下側に15°以内となる位置に当接部43を配置することで、アーム3に沿って本体部2を移動させる動作のために必要な駆動力を小さくすることができる。一方で、水平方向に対する本体部2のなす角度が鉛直上側に15°超となる位置に当接部43が配置されていると、当接部43がアーム3の円弧の中心に過剰に近づいてしまう可能性がある。このため、アーム3の送り出しの際に、バンパ40の当接部43が鉄塔120のレール等の付属部材に接触してしまう可能性がある。これに対し、水平方向に対する本体部2のなす角度が鉛直上側に15°以内となる位置に当接部43を配置することで、当接部43がアーム3の円弧の中心に過剰に近づくことを抑制することができる。これにより、アーム3の送り出しの際に、鉄塔120のレール等の付属部材に対する当接部43の接触を抑制することができる。
また、本実施形態では、当接部43は、例えば、アーム3の径方向の内側に、鉄塔120に当接したときの衝撃を吸収する緩衝材(符号不図示)を有している。緩衝材は、例えば、ゴムからなっている。これにより、鉄塔120に当接したときの衝撃を緩和することができる。
(2)自走式電線点検装置の動作
次に、本発明の第1実施形態に係る自走式電線点検装置100の動作について説明する。
本発明の第1実施形態に係る自走式電線点検装置100は、架空地線140に沿って走行(自走)する動作(以下、「走行動作」という。)と、鉄塔120を乗り越える動作(以下、「乗り越え動作」という。)を順に繰り返しながら、各径間を移動して電線の点検を行う。なお、自走式電線点検装置100を構成する各部の動作は、本体部2内の制御部により制御される。
(2−1)走行動作
走行動作において、自走式電線点検装置100は、上記図1に示すように、架空地線140に走行部1を乗せて装置全体を水平姿勢に維持し、その状態で走行部1を回転駆動することにより、架空地線140に沿って走行する。自走式電線点検装置100は、架空地線140を走行中に電線の点検を行う。このとき、本体部2はアーム3の中間部に位置する。アーム3は架空地線140を中心に左右対称に配置される。また、アーム3の両端はいずれも前方を向いて配置され、アーム3の中間部は後方を向いて配置される。
このとき、本体部2の搭載部支持部6は、例えば、自走式電線点検装置100の重心が走行部1の鉛直直下に位置するよう、アーム3からの機器搭載部5の距離を調整する。ここでいう「自走式電線点検装置100の重心が走行部1の鉛直直下に位置する」とは、鉛直上方から見て、自走式電線点検装置100の重心が走行部1と重なると言い換えることができる。具体的には、搭載部支持部6は、機器搭載部5をアーム3から遠ざけることで、走行部1の鉛直直下(搭載部支持部6とシャフト17との接点)を挟んで、機器搭載部5の重量によるモーメントと、アーム3の重量によるモーメントとを釣り合わせる。これにより、自走式電線点検装置100の重心を走行部1の鉛直直下に位置させることができる。
その結果、自走式電線点検装置100を水平姿勢に維持することができる。走行時の自走式電線点検装置100の姿勢が理想的な水平姿勢にあるときには、アーム3の両端と中間部とを上下方向で同じ高さに配置することができる。なお、その状態では、フック機構4のフック32は、架空地線140とほぼ同じ高さ位置に配置されることとなる。
山間部などに斜めに架線される架空地線140に沿って自走式電線点検装置100を走行させる場合には、上述のように、架空地線140の傾斜角と傾斜方向に応じて傾き制御機構部16を駆動することにより、シャフト17を鉛直に維持する。これにより、架空地線140の傾きによる自走式電線点検装置100の前後の傾きを補正することができる。この点は、架空地線140のカテナリ曲線による傾斜部分を走行する場合も同様である。
走行動作では、走行部1の回転駆動部分にエンコーダ(不図示)を装着しておき、走行部1の回転駆動量(たとえば、車輪8の回転量など)をエンコーダを用いて計測することにより、自走式電線点検装置100の走行距離と径間での位置を把握することができる。
(2−2)乗り越え動作1:水平角=180°の場合
次に、図5(a)〜図6(c)を用い、鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140の水平角が180°である場合(すなわち、一対の架空地線140が直線状に配置されている場合)において、自走式電線点検装置100が鉄塔120を乗り越えるときの一連の動作について説明する。図5(a)〜図6(c)は、それぞれ、本実施形態に係る自走式電線点検装置の乗り越え動作(S1−1)〜(S1−6)を示す平面図である。なお、ステップを「S」と略している。
なお、図5(a)〜図6(c)では、自走式電線点検装置100を簡略化して示している。また、図5(a)〜図6(c)において、フック32内に矢印が示されている場合には、開口部32aの出入口(開口方向)が矢印の方向に向いていることを示している。一方で、フック32内にX印が示されている場合には、開口部32aの出入口が鉛直下方を向いていることを示している。
(S1−1:走行部1の停止)
まず、図5(a)に示すように、自走式電線点検装置100が架空地線140に沿って走行中に鉄塔120に近づくと、搭載部支持部6の前方下部に設けられた近接センサ(図1参照)は、鉄塔120の接近を検出する。近接センサが鉄塔120に接近したことを検出したら、走行部1の走行を停止させる。このとき、バンパ40の当接部43が鉄塔120に接触しない限界まで鉄塔120に接近したときに、走行部1の走行を停止させる。
(S1−2:アーム3の送り出しおよびフック32による把持)
走行部1の走行を停止させたら、図5(b)に示すように、鉄塔120の周囲に迂回路を形成すべく、アーム3の端部を前方に送り出す。
このとき、アーム3の両端のうちどちらのアーム端を前方に送り出してもよいが、好ましくは、本体部2を支持している支持機構15の位置によって決めるとよい。支持機構15は、架空地線140の位置を基準に、左右いずれか一方に存在する。アーム3を送り出すときは、支持機構15と同じ側に存在するアーム3の一端を前方に送り出すとよい。理由は、その後の動作で本体部2をアーム3に沿って移動させるときに、昇降回転駆動部の駆動により支持機構15を下降させなくても、支持機構15と架空地線140との干渉を回避でき、乗り越え動作がシンプルになるメリットが得られるからである。このため、本実施形態では、支持機構15と同じ側に存在するアーム3の一端を前方に送り出すものとする。
アーム3の送り出しは、本体部2のアーム支持部21に設けられたモータ25を駆動することにより行う。モータ25を駆動することで、アーム支持部21の内部でアーム3のラック28に噛み合うピニオンが回転する。このため、アーム3の円弧の周方向において、本体部2とアーム3との相対位置が変化する。そして、両者の相対位置の変化により、アーム3の一端は本体部2から遠ざかる方向に移動し、アーム3の他端は本体部2に近づく方向に移動する。これにより、アーム3の一端を前方に送り出すことができる。
また、このとき、本実施形態では、例えば、バンパ40が3つの部分に分かれているため、アーム3の送り出しと、走行部1の短距離の進行と、を含むサイクルを所定回数繰り返す。これにより、バンパ40の形状に合わせて、段階的にアーム3の一端を前方に送り出すことができる。
また、このとき、本体部2およびアーム3が水平姿勢を維持しているため、一対のフック機構4のフック32のそれぞれは、架空地線140とほぼ同じ高さ位置に配置された状態を維持している。本実施形態では、この状態のまま、アーム3の一端を送り出し、アーム3の両端に連結された一対のフック機構4のフック32を架空地線140に近づける。
一対のフック機構4のフック32が架空地線140に近づいたら、上述の図4(a)〜図4(c)で示した一連の動作を行うことで、一対のフック機構4のそれぞれによって、架空地線140を把持させる。
(S1−3:本体部2移動)
一対のフック機構4のそれぞれが架空地線140を把持したら、搭載部支持部6により、機器搭載部5をアーム3の径方向に沿ってアーム3に近づける。つまり、機器搭載部5の重心をアーム3の円弧の中心に近づける。これにより、後述のようにフック点からアーム3を介して本体部2が垂れ下がったときに、機器搭載部5の重心を架空地線140側に近づけることができる。
機器搭載部5をアーム3に近づけたら、昇降回転駆動部により走行部1を本体部2に対して相対的に上昇させる。これにより、架空地線140よりも高い位置に走行部1が持ち上げられる。その結果、後述のアーム3に沿った本体部2の移動に際して、走行部1が架空地線140に干渉することを抑制することができる。また、上述したアーム3の送り出しS1−2に際しては、左右方向で支持機構15と同じ側に存在するアーム3の一端を送り出した。このため、後述のアーム3に沿った本体部2の移動に際して、支持機構15が架空地線140に干渉することを抑制することができる。
走行部1を持ち上げたら、図5(c)に示すように、アーム3に沿って本体部2を移動させる。これにより、本体部2は、走行部1と共に、鉄塔120を迂回するように移動する。
アーム3に沿って本体部2を移動させていくと、本体部2がアーム3の長さ方向の中間部に近づくにつれて、自走式電線点検装置100の重心がアーム3の長さ方向の中間部側に移動する(偏る)。自走式電線点検装置100の重心がアーム3の中間部に移動すると、フック32により架空地線140を把持するフック点からアーム3を介して本体部2が垂れ下がる。
このとき、本実施形態では、自走式電線点検装置100がバンパ40を有していることで、アーム3から径方向の内側に離間した位置で、バンパ40を鉄塔120に当接させることができる。これにより、鉄塔120に対する本体部2の接触を抑制することができる。
また、このとき、本実施形態では、バンパ40のうち、第1円弧部41および第2円弧部42よりもアーム3の径方向の内側に設けられた当接部43を、鉄塔120に当接させる。これにより、水平方向に対する本体部2のなす角度を小さくすることができる。
その後、本体部2をアーム3に沿ってアーム3の一端まで移動させる。
このとき、本体部2がアーム3の一端に近づくにつれて、自走式電線点検装置100の重心がアーム3の一端付近に移動する。これにより、フック点からアーム3を介して本体部2が垂れ下がっていた状態から、アーム3の長さ方向の中間部が鉛直上方に持ち上がり、アーム3が、再度、水平姿勢に戻る。
また、このとき、本体部2が移動を終える前(本体部2がアーム3の一端まで移動し終える前)までに、昇降回転駆動部により、本体部2に対して走行部1および支持機構15の向きを反転させる。これにより、支持機構15と架空地線140の干渉を回避することができる。
(S1−4:走行部1下降)
本体部2をアーム3の一端に到達させたら、図6(a)に示すように、昇降回転駆動部により走行部1を本体部2に対して相対的に下降させる。走行部1を下降させることで、架空地線140上に走行部1を着地させる。これにより、走行部1を架空地線140に乗せることができる。
走行部1を架空地線140に乗せたら、搭載部支持部6により、機器搭載部5をアーム3の径方向に沿ってアーム3から遠ざける。これにより、自走式電線点検装置100の重心を、走行動作時の位置、すなわち、走行部1の鉛直直下に位置させる。
(S1−5:走行部1に対する本体部2の回転)
走行部1下降S1−4が完了したら、上述の図4(d)で示した動作を行うことで、一対のフック機構4のそれぞれによる架空地線140の把持状態を解除する。
一対のフック機構4のそれぞれによる架空地線140の把持状態を解除したら、図6(b)に示すように、昇降回転駆動部によって、シャフト17を中心軸として、走行部1に対して本体部2を相対的に回転させる(本体部2の向きを変える)。これにより、鉛直上方から見て、走行部1を中心としてアーム3を回転移動させ、一対のフック機構4が把持していた一対の架空地線140から、アーム3を遠ざける。
このとき、アーム3を架空地線140から遠ざけることで、上述の図4(e)で示した動作のように、架空地線140を開口部32aから水平方向の外側に送り出す。
さらに、走行部1に対して本体部2を相対的に回転させることで、本体部2を挟んで鉄塔120と反対側に、アーム3を移動させる。
(S1−6:アーム3引き戻し)
本体部2を挟んで鉄塔120と反対側にアーム3を到達させたら、図6(c)に示すように、本体部2のアーム支持部21に設けられたモータの駆動によってアーム3を引き戻す。ここでいう「アーム3を引き戻す」とは、本体部2から遠い側のアーム3の端部を本体部2に向けて引き込む方向にアーム3を移動させることをいう。
このとき、本体部2から遠い側のアーム3の端部に連結されたフック機構4において、上述の図4(a)〜図4(e)に示した一連の動作を行うことにより、架空地線140を把持させながら、該架空地線140を通過させる。
さらに、アーム3を引き戻すことで、アーム3の中間部が本体部2と一致するようにアーム3を移動させる。これにより、アーム3の両端は前方を向いて配置される。
アーム3の移動が終了したら、走行部1による走行を復帰させる。
以上により、鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140の水平角が180°である場合の、一連の乗り越え動作が完了となる。
(2−3)乗り越え動作2:水平角<180°の場合
次に、図7(a)〜図9(b)を用い、鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140の水平角が180°未満である場合(すなわち、一対の架空地線140が鉄塔120を介して屈曲して配置されている場合)において、自走式電線点検装置100が鉄塔120を乗り越えるときの一連の動作について説明する。図7(a)〜図9(b)は、それぞれ、本実施形態に係る自走式電線点検装置の乗り越え動作(S2−1)〜(S2−8)を示す平面図である。
以下、上述の乗り越え動作1と同様である動作は、説明を省略する。
(S2−1:走行部1の停止)
まず、図7(a)に示すように、近接センサが鉄塔120に接近したことを検出したら、走行部1の走行を停止させる。
(S2−2:アーム3の送り出し)
次に、図7(b)に示すように、アーム3の一端を前方に送り出す。
このとき、一対のフック機構4の一方が乗り越え先の架空地線140に近づいたら、当該フック機構4において、上述の図4(a)〜図4(e)に示した一連の動作を行うことにより、架空地線140を把持させながら、該架空地線140を通過させる。
さらに、アーム3の一端を前方に送り出し、一対の架空地線140のそれぞれからアーム3の長さ方向の中間部までの距離が等しくなったら、アーム3の移動を停止させる。
(S2−3:フック機構4の移動)
アーム3の一端を前方に送り出したら、図7(c)に示すように、一対のフック機構4のそれぞれにおいて、フック機構駆動部39を駆動することで、フック機構4をアーム3に沿って移動させる。
このとき、本実施形態では、例えば、アーム3が構成する円弧の中心を中心とした一対のフック機構4の拡開角度が、一対の架空地線140の水平角と等しくなるように、フック機構4をアーム3に沿って移動させる。なお、ここでいう「一対のフック機構4の拡開角度」とは、鉛直上方から見たときに、一方のフック機構4のフック32とアーム3が構成する円弧の中心とを結ぶ仮想直線と、他方のフック機構4のフック32とアーム3が構成する円弧の中心とを結ぶ仮想直線と、のなす角度のうち、アーム3の長さ方向の中間部が位置するほうの角度のことをいう。一対のフック機構4の拡開角度を一対の架空地線140の水平角と等しくすることで、本体部2をアーム3に沿って移動させるときに、本体部2をフック点から鉛直下側に垂れ下がり難くすることができる。
また、このとき、本実施形態では、例えば、鉛直上方から見て一対のフック機構4のそれぞれのフック32と架空地線140とのなす角度が互いに60°以上120°以下、好ましくは90°になるように、フック機構4をアーム3に沿って移動させる。なお、ここでいう「フック32と架空地線140とのなす角度」とは、フック32の沿面方向と架空地線140とのなす角度のうち、アーム3の長さ方向の中間部側の角度のことをいう。フック32と架空地線140とのなす角度が60°未満であったり、120°超であったりすると、フック32が架空地線140に対して過度に斜めに引っ掛かることとなる。このため、開口部32a内に架空地線140を適切に取り込むことができず、フック32が架空地線140を把持する把持力が弱くなる可能性がある。これに対し、フック32と架空地線140とのなす角度を60°以上120°以下とすることで、フック32が架空地線140に対して過度に斜めに引っ掛かることを抑制することができる。これにより、開口部32a内に架空地線140を適切に取り込むことができる。その結果、フック32が架空地線140を把持する把持力を強くすることができる。さらに、フック32と架空地線140とのなす角度を90°とすることで、これにより、開口部32a内にフック32の径方向の中心まで架空地線140を取り込み、架空地線140の中心軸とフック32の中心軸とを一致させることができる。その結果、フック32が架空地線140を把持する把持力を安定的に強くすることができる。
一対のフック機構4をそれぞれ所定位置に近づいたら、上述の図4(a)〜図4(c)で示した一連の動作を行うことで、一対のフック機構4のそれぞれによって、架空地線140を把持させる。
(S2−4:本体部2移動)
一対のフック機構4のそれぞれにより架空地線140を把持させたら、図8(a)に示すように、本体部2を一方のフック機構4の位置からアーム3に沿って他方のフック機構4の位置まで移動させる。
なお、本体部2が移動を終える前に、本体部2に対して走行部1および支持機構15の向きを反転させる。
(S2−5:走行部1下降)
本体部2を他方のフック機構4の位置まで到達させたら、図8(b)に示すように、走行部1を架空地線140に乗せる。
(S2−6:フック機構4の移動)
走行部1を架空地線140に乗せたら、上述の図4(d)で示した動作を行うことで、一対のフック機構4のそれぞれによる架空地線140の把持状態を解除する。
次に、図8(c)に示すように、一対のフック機構4のそれぞれにおいて、フック機構駆動部39を駆動することで、フック機構4をアーム3に沿ってアーム3の端部に向けて移動させる。これにより、フック機構4は架空地線140から遠ざかる。
このとき、フック機構4を架空地線140から遠ざけることで、上述の図4(e)で示した動作のように、架空地線140を開口部32aから水平方向の外側に送り出す。
フック機構4がアーム3の端部まで到達したら、フック機構4の移動を停止させる。
(S2−7:アーム3引き戻し)
フック機構4をアーム3の端部まで移動させたら、図9(a)に示すように、アーム3を引き戻すことにより、アーム3の長さ方向の中間部が本体部2と一致するようにアーム3を移動させる。
このとき、乗り越え元の架空地線140側に位置するフック機構4において、上述の図4(a)〜図4(e)に示した一連の動作を行うことにより、架空地線140を把持させながら、該架空地線140を通過させる。
(S2−8:走行部1進行)
アーム3の長さ方向の中間部が本体部2と一致するようにアーム3を移動させたら、図9(b)に示すように、乗り越え先の架空地線140に沿って走行部1を走行させる。このとき、走行部1を走行させる距離を、例えば、アーム3の半径以上とする。
所定距離だけ走行部1を走行させたら、上述の乗り越え動作1における図6(a)の状態となるように、アーム3を送り出す。
図6(a)の状態となったら、上述の乗り越え動作1のうちのS1−5〜S1−6を行うことで、アーム3の両端が前方を向くように配置する。
アーム3の移動が終了したら、走行部1による走行を復帰させる。
以上により、鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140の水平角が180°未満である場合の、一連の乗り越え動作が完了となる。
(3)第1実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
(a)一対のフック機構4のそれぞれは、架空地線140が出入り可能な開口部32aを有し、該開口部32aのうち架空地線140が出入りする出入口を水平方向の一方から鉛直上方に向けずに一方と反対側の他方へ移動させることが可能に構成されている。これにより、当該フック機構4により、架空地線140を把持させながら該架空地線140を通り抜けさせることができる。つまり、走行部1に対して本体部2およびアーム3を前傾または後傾させたり、走行部1に対して本体部2およびアーム3を鉛直方向に昇降させたりする動作を行うことなく、アーム3を水平姿勢に維持したまま、該一対のフック機構4による架空地線140の把持から架空地線140の通過へと移行させることができる。その結果、自走式電線点検装置100が鉄塔120を乗り越える動作を簡略化させることができる。
自走式電線点検装置100が鉄塔120を乗り越える動作を簡略化することで、一対のフック機構4が架空地線140を把持するときの監視項目を削減することができる。また、自走式電線点検装置100が鉄塔120を乗り越える動作を簡略化することで、当該一連の動作に係る時間を短くすることができる。これらの結果、自走式電線点検装置100による電線の点検を効率よく行うことが可能となる。
(b)一対のフック機構4のそれぞれは、開口部32aを有し架空地線140を把持する円盤状のフック32と、アーム3の一部に連結され、フック32を該フック32の周方向に回転可能に支持するブラケット31と、を備えている。円盤状のフック32を周方向に回転させることで、開口部32aの出入口を水平方向の一方から鉛直上方に向けずに一方と反対側の他方へ移動させる動作を容易に行うことができる。
(c)フック32は、該フック32の外周縁の全周に亘って設けられるフック係止爪32bを有している。一方で、ブラケット31は、フック係止爪32bと係合し円弧状に設けられるブラケット係止爪36aを有している。
フック32の開口部32a内に架空地線140を取り込んだ状態で、フック係止爪32bとブラケット係止爪36aと係合させ、フック32の鉛直方向の移動を規制することで、架空地線140を把持しつつ、フック32とブラケット31との分離を抑制することができる。これにより、アーム3が一対のフック機構4を介して架空地線140に懸垂した状態を安定的に維持することができる。
また、フック32の開口部32a内に架空地線140を取り込んだ状態で、フック係止爪32bとブラケット係止爪36aと係合させ、フック32の周方向の回転を許容することで、該開口部32aの出入口を水平方向の一方から鉛直上方に向けずに一方と反対側の他方へ移動させることができる。これにより、当該フック機構4により、架空地線140を把持させながら該架空地線140を通り抜けさせることができる。
(d)ブラケット係止爪36aの周方向の長さは、フック32の周方向における開口部32aの出入口の幅よりも長い。これにより、フック32の開口部32aがブラケット係止爪36aと重なったとき(すなわち、開口部32aが鉛直下方を向いているとき)であっても、フック係止爪32bとブラケット係止爪36aとの係合を維持することができる。その結果、フック機構4により架空地線140を把持させているときに、フック32とブラケット31との分離を抑制することができる。
(e)ブラケット31のブラケット係合部36は、狭口部36bを有している。狭口部36bは、フック32の開口部32a内に架空地線140が入り込んだ状態で該開口部32aとブラケット係止爪36aとが重なったときに、開口部32aのうち架空地線140以外の領域を狭めるよう構成されている。これにより、フック機構4により架空地線140を把持させているときに、架空地線140の可動域を狭めることができる。その結果、フック機構4により架空地線140を強固に把持させることができる。
具体的には、例えば、自走式電線点検装置100に対して鉛直下側から風が吹き付けられるなどして、自走式電線点検装置100を突き上げる力が加わったとしても、フック32の開口部32aから外側に架空地線140が外れることを抑制することができる。これにより、フック機構4による架空地線140の把持が意図せずに解除されることを抑制することができる。
また、例えば、自走式電線点検装置100に対して水平方向に風が吹き付けられるなどして、自走式電線点検装置100を架空地線140に沿って移動させる力が加わったとしても、狭口部36bを架空地線140の撚線溝に引っ掛けることができる。これにより、自走式電線点検装置100が架空地線140に沿った方向に意図せずにずれることを抑制することができる。
(f)本実施形態では、一対のフック機構4のうち少なくともいずれかが、アーム3に沿って移動可能に構成されていることで、鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140の水平角が180°未満である場合に、当該水平角に応じて、フック機構4の位置を変更することができる。これにより、アーム3の円弧の中心を鉄塔120の中心に近づけることができ、一対のフック点の間でアーム3が鉛直下側に垂れ下がる長さを短くすることができる。その結果、水平面に対する本体部2のなす角度を小さくすることができる。
(g)鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140の水平角が180°未満である場合に、一対のフック機構4のうち少なくともいずれかをアーム3に沿って移動させることで、鉛直上方から見た一対のフック機構4のそれぞれのフック32と架空地線140とのなす角度を、互いに60°以上120°以下、すなわち90°に近くすることができる。一対のフック機構4のそれぞれのフック32と架空地線140とのなす角度を90°に近くすることで、フック32が架空地線140に対して過度に斜めに引っ掛かることを抑制することができる。これにより、開口部32a内に架空地線140を適切に取り込むことができる。その結果、フック32が架空地線140を把持する把持力を強くすることができる。
また、一対のフック機構4のそれぞれのフック32と架空地線140とのなす角度を90°に近くすることで、アーム3をフック点から鉛直下側に垂れ下がり難くすることができる。これにより、本体部2を傾き難くすることができ、理想的には、本体部2を水平姿勢に維持させることもできる。
(h)本実施形態では、一対のフック機構4のうち少なくともいずれかは、該フック機構4自身をアーム3に沿って移動させるフック機構駆動部39を有している。すなわち、当該フック機構4は、自走式に構成されている。これにより、フック機構駆動部39によって、該フック機構4をアーム3に沿って任意に移動させることができる。
(i)一対のフック機構4のうちの少なくともいずれかが有するフック機構駆動部39は、アーム支持機構のピニオンとともにアーム3のラック28を共用し、該ラック28に噛み合って回転するフック側ピニオンを有している。アーム3のラック28を共用することで、アーム3に多重のラックが不要となる。これにより、フック機構駆動部39を設けたことに起因するアーム3の構造の複雑化を回避することができる。
(j)鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140の水平角が180°未満であるときに、アーム3が構成する円弧の中心を中心とした一対のフック機構4の拡開角度が、一対の架空地線140の水平角と等しくなるように、一対のフック機構4のうち少なくともいずれかを、アーム3に沿って移動させる。これにより、本体部2をアーム3に沿って移動させるときに、本体部2をフック点から鉛直下側に垂れ下がり難くすることができる。その結果、本体部2を傾き難くすることができ、理想的には、本体部2を水平姿勢に維持させることもできる。
<本発明の第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、フック機構4の態様が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態の変形例と同様に、第1実施形態と異なる要素についてのみ説明する。
(1)フック機構
本実施形態では、一対のフック機構4のうちいずれかは、例えば、第1実施形態と同様に、アーム3に沿って移動可能に構成されている。
しかしながら、本実施形態では、一対のフック機構4のうちいずれかは、例えば、自走式に構成されておらず、上述のフック機構駆動部を有していない。すなわち、一対のフック機構4のうちいずれかは、例えば、該フック機構4が架空地線140を把持した状態で、本体部2に対してアーム3を相対的に移動させることで、アーム3に沿って移動可能に構成されている。
ここでは、例えば、一対のフック機構4の両方が、フック機構駆動部を有さずに、アーム3に沿って移動可能に構成されている。これにより、走行部1の進行方向に対して左右どちらに鉄塔120が配置されるかに応じて、一対のフック機構4のそれぞれの位置を変更することができる。
(2)自走式電線点検装置の動作
次に、図10(a)〜図12(b)を用い、本実施形態に係る自走式電線点検装置100の動作のうち、鉄塔120を挟んだ一対の架空地線140の水平角が180°未満である場合において、自走式電線点検装置100が鉄塔120を乗り越えるときの一連の動作について説明する。図10(a)〜図12(b)は、それぞれ、本実施形態に係る自走式電線点検装置の乗り越え動作(S3−1)〜(S3−8)を示す平面図である。
以下、上述の実施形態の乗り越え動作1と同様である動作は、説明を省略する。
(S3−1:一方のフック32のみによる把持)
まず、図10(a)に示すように、近接センサが鉄塔120に接近したことを検出したら、走行部1の走行を停止させる。
走行部1の走行を停止させたら、乗り越え先の架空地線140に接近した一方のフック機構4のみにおいて、上述の図4(a)〜図4(c)で示した一連の動作を行うことで、乗り越え先の架空地線140を把持させる。
(S3−2:フック機構4の移動)
一方のフック機構4のみにより架空地線140を把持させたら、図10(b)に示すように、該フック機構4が架空地線140を把持した状態で、本体部2に対してアーム3を相対的に移動させる。具体的には、フック機構4が架空地線140を把持した方のアーム3の一端を、本体部2から遠ざかるように、前方に送り出す。これにより、架空地線140を把持したフック機構4を、アーム3に沿ってアーム3の他端に向けて移動させることができる。
このとき、例えば、アーム3が構成する円弧の中心を中心とした一対のフック機構4の拡開角度が、一対の架空地線140の水平角と等しくなるように、架空地線140を把持したフック機構4をアーム3に沿って移動させる。また、例えば、鉛直上方から見て一対のフック機構4のそれぞれのフック32と架空地線140とのなす角度が互いに60°以上120°以下、好ましくは90°になるように、架空地線140を把持したフック機構4をアームに沿って移動させる。
このように、架空地線140を把持した一方のフック機構4をアーム3に沿って所定位置に移動させることで、架空地線140を把持していない他方のフック機構4を、走行部1が乗っている架空地線140(乗り越え元の架空地線140)に近づけることができる。
(S3−3:他方のフック32による把持)
架空地線140を把持していない他方のフック機構4を、走行部1が乗っている架空地線140(乗り越え元の架空地線140)に近づけたら、図10(c)に示すように、当該他方のフック機構4のフック32において、上述の図4(a)〜図4(c)で示した一連の動作を行うことで、走行部1が乗っている架空地線140を把持させる。これにより、一対のフック機構4の両方により、一対の架空地線140を把持させることができる。
(S3−4:本体部2移動)
一対のフック機構4により一対の架空地線140を把持させたら、図11(a)に示すように、乗り越え元のフック機構4の位置からアーム3に沿って乗り越え先のフック機構4の位置まで本体部2を移動させる。
(S3−5:走行部1下降)
本体部2を乗り越え先のフック機構4の位置まで到達させたら、図11(b)に示すように、走行部1を架空地線140に乗せる。
(S3−6:フック機構4の移動)
走行部1を架空地線140に乗せたら、乗り越え元のフック機構4のみにおいて、上述の図4(d)で示した動作を行うことで、架空地線140の把持状態を解除する。一方で、乗り越え先のフック機構4による架空地線140の把持状態を維持する。
乗り越え元のフック機構4のみにおいて架空地線140の把持状態を解除したら、図11(c)に示すように、乗り越え先のフック32が架空地線140を把持した状態で、本体部2に対してアーム3を相対的に移動させる。具体的には、フック機構4の把持状態を解除した方のアーム3の他端を、本体部2から遠ざかるように、後方に送り出す。これにより、架空地線140を把持したフック機構4を、アーム3に沿ってアーム3の一端に向けて相対的に移動させることができる。
架空地線140を把持したフック機構4をアーム3の一端に向けて移動させたら、該フック機構4において、上述の図4(d)で示した動作を行うことで、架空地線140の把持状態を解除する。
(S3−7:アーム3引き戻し)
フック機構4による架空地線140の把持状態を解除したら、図12(a)に示すように、アーム3を引き戻すことにより、アーム3の中間部が本体部2と一致するようにアーム3を移動させる。
このとき、乗り越え元の架空地線140側に位置するフック機構4において、上述の図4(a)〜図4(e)に示した一連の動作を行うことにより、架空地線140を把持させながら、該架空地線140を通過させる。
(S3−8:走行部1進行)
アーム3の長さ方向の中間部が本体部2と一致するようにアーム3を移動させたら、図12(b)に示すように、乗り越え先の架空地線140に沿って走行部1を走行させる。このとき、走行部1を走行させる距離を、例えば、アーム3の半径以上とする。
所定距離だけ走行部1を走行させたら、上述の乗り越え動作1における図6(a)の状態となるように、アーム3を送り出す。
図6(a)の状態となったら、上述の乗り越え動作1のうちのS1−5〜S1−6を行うことで、アーム3の両端が前方を向くように配置する。
アーム3の移動が終了したら、走行部1による走行を復帰させる。
以上により、本実施形態の一連の乗り越え動作が完了となる。
(3)第2実施形態の効果
本実施形態では、一対のフック機構4のうちいずれかは、該フック機構4が架空地線140を把持した状態で、本体部2に対してアーム3を相対的に移動させることで、アーム3に沿って移動可能に構成されている。これにより、該フック機構4からフック機構駆動部を排除することができる。フック機構駆動部を排除することで、該フック機構4を軽量化かつ簡略化することができる。その結果、アーム3を保持する本体部2への負荷を軽減することができる。
<他の実施形態等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
上述の実施形態では、走行部1が一対の車輪8で走行するよう構成されている場合について説明したが、走行部1は、クローラ型により構成されていてもよい。
上述の実施形態では、アーム3の形状が正円に沿う円弧状である場合を想定して説明したが、アーム3の形状は完全な正円でなくてもよく、例えば、楕円に沿う円弧状であってもよい。
上述の実施形態では、搭載部支持部6が、ラックアンドピニオン機構により構成されている場合について説明したが、搭載部支持部6は、ラックアンドピニオン機構以外の機構により構成されていてもよい。具体的には、搭載部支持部6は、例えば、スライドレールを用いた機構により構成されていてもよい。
上述の実施形態では、一対のフック機構4のそれぞれにおいて、フック32の周方向における開口部32aの幅が、フック32の径方向に一定である場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、フック32の開口部32aは、フック32の中心側から外周に向けて徐々に広くなっていてもよい。これにより、開口部32a内への架空地線140の取り込みを容易に行うことができる。
上述の実施形態では、フック係止爪32bがフック32の厚さ方向の外側に向けて突出し、ブラケット係止爪36aがフック32の厚さ方向の外側から内側に向けて突出している場合について説明したが、フック係止爪32bおよびブラケット係止爪36aのそれぞれの突出方向は、上述の実施形態と反対であってもよい。すなわち、フック係止爪32bがフック32の厚さ方向の外側から内側に向けて突出し、ブラケット係止爪36aがフック32の厚さ方向の外側に突出していてもよい。
上述の実施形態では、一対のフック機構4のそれぞれが、開口部32aを有し架空地線140を把持する円盤状のフック32と、アーム3の一部に連結されフック32を該フック32の周方向に回転可能に支持するブラケット31と、を備える場合について説明したが、この場合に限られない。一対のフック機構4のそれぞれは、開口部32aのうち架空地線140が出入りする出入口を水平方向の一方から鉛直上方に向けずに一方と反対側の他方へ移動させることが可能に構成されていれば、他の態様で構成されていてもよい。
ここで、図13を用い、フック機構の変形例について説明する。図13は、フック機構の変形例を示す概略正面図である。
変形例のフック機構4は、例えば、フック32と、ブラケット31と、を有している。フック32は、例えば、フック上部32eと、フック下部32fと、一対のヒンジ部32gと、を有している。フック上部32eは、例えば、半円弧状に構成され、鉛直上側に配置されている。フック下部32fは、例えば、半円弧状に構成され、鉛直下側に配置されている。フック下部32fは、例えば、フック上部32eと対向して開口部32aを形成している。一対のヒンジ部32gは、例えば、フック上部32eおよびフック下部32fの周方向の両端に設けられ、フック上部32eおよびフック下部32fを解除可能に連結している。一対のヒンジ部32gは、それらのうちの一方がフック上部32eおよびフック下部32fの連結状態を解除させたときに開口部32aの出入口を形成し、他方がフック上部32eおよびフック下部32fの連結状態を維持するよう構成されている。
このような変形例のフック機構4であっても、開口部32aの出入口を水平方向の一方から鉛直上方に向けずに一方と反対側の他方へ移動させることができる。
上述の実施形態では、一対のフック機構4の両方がアーム3に沿って移動可能に構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、一対のフック機構4のうち一方のみが、アーム3に沿って移動可能に構成されていてもよい。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
(付記1)
鉄塔間に架線された架空地線に沿って走行しながら電線の点検を行う自走式電線点検装置であって、
前記架空地線上を走行可能な走行部と、
前記走行部の下方に配置される本体部と、
前記本体部に対して相対移動可能に連結され、前記鉄塔を迂回するように前記本体部を移動させるための迂回路を形成する円弧型のアームと、
前記アームを前記架空地線に懸垂させるために前記アームの長さ方向の中間部を挟んで両端側に設けられる一対のフック機構と、
を備え、
前記一対のフック機構のそれぞれは、前記架空地線が出入り可能な開口部を有し、該開口部のうち前記架空地線が出入りする出入口を水平方向の一方から鉛直上方に向けずに前記一方と反対側の他方へ移動させることが可能に構成される
自走式電線点検装置。
(付記2)
前記一対のフック機構のそれぞれは、
前記開口部の前記出入口を水平方向の一方に向け、前記開口部内に前記架空地線を取り込む動作と、
該開口部内に前記架空地線を取り込んだ状態で、前記開口部の前記出入口を水平方向の前記一方から鉛直上方に向けずに水平方向の前記一方と反対の他方へ移動させる動作と、
前記架空地線を前記開口部から水平方向の前記他方の外側に送り出す動作と、
を行うことで、前記架空地線を把持しながら該架空地線を通り抜けることができるよう構成される
付記1に記載の自走式電線点検装置。
(付記3)
前記一対のフック機構のそれぞれは、
前記開口部を有し前記架空地線を把持する円盤状のフックと、
前記アームの一部に連結され、前記フックを該フックの周方向に回転可能に支持するブラケットと、
を備える
付記1又は2に記載の自走式電線点検装置。
(付記4)
前記フックは、該フックの外周縁の全周に亘って設けられるフック係止爪を有し、
前記ブラケットは、前記フック係止爪と係合し、前記フックの鉛直方向の移動を規制しつつ、前記フックの周方向の回転を許容するよう円弧状に設けられるブラケット係止爪を有する
付記3に記載の自走式電線点検装置。
(付記5)
前記ブラケット係止爪の周方向の長さは、前記フックの周方向における前記開口部の前記出入口の幅よりも長い
付記4に記載の自走式電線点検装置。
(付記6)
前記ブラケットは、
前記フックの前記開口部内に前記架空地線が入り込んだ状態で該開口部と前記ブラケット係止爪とが重なったときに、前記開口部のうち前記架空地線以外の領域を狭める狭口部を有する
付記4又は5に記載の自走式電線点検装置。
(付記7)
前記一対のフック機構のそれぞれは、
半円弧状のフック上部と、
前記フック上部と対向して前記開口部を形成する半円弧状のフック下部と、
前記フック上部および前記フック下部の周方向の両端に設けられ、前記フック上部および前記フック下部を解除可能に連結する一対のヒンジ部と、
を有し、
前記一対のヒンジ部は、それらのうちの一方が前記フック上部および前記フック下部の連結状態を解除させたときに前記開口部の前記出入口を形成し、他方が前記フック上部および前記フック下部の連結状態を維持するよう構成される
付記1又は2に記載の自走式電線点検装置。
(付記8)
前記一対のフック機構のうち少なくともいずれかは、前記アームに沿って移動可能に構成される
付記1〜7のいずれか1つに記載の自走式電線点検装置。
(付記9)
前記一対のフック機構の両方は、前記アームに沿って移動可能に構成される
付記8に記載の自走式電線点検装置。
(付記10)
前記一対のフック機構のうち少なくともいずれかは、該フック機構自身を前記アームに沿って移動させるフック機構駆動部を有する
付記8又は9に記載の自走式電線点検装置。
(付記11)
前記本体部は、前記アームを相対的に移動可能に支持するアーム支持機構を備え、
前記アームは、周方向に沿ってラックを有し、
前記アーム支持機構は、前記アームの前記ラックに噛み合って回転させるピニオンを有し、
前記フック機構駆動部は、前記アーム支持機構の前記ピニオンとともに前記ラックを共用し、該ラックに噛み合って回転するフック側ピニオンを有する
付記10に記載の自走式電線点検装置。
(付記12)
前記一対のフック機構のうち少なくともいずれかは、該フック機構が前記架空地線を把持した状態で、前記本体部に対して前記アームを相対的に移動させることで、前記アームに沿って移動可能に構成される
付記8又は9に記載の自走式電線点検装置。
(付記13)
前記一対のフック機構のうち少なくともいずれかは、前記鉄塔を挟んだ一対の前記架空地線の水平角が180°未満であるときに、前記アームが構成する円弧の中心を中心とした前記一対のフック機構の拡開角度が、前記一対の架空地線の前記水平角と等しくなるように、前記アームに沿って移動する
付記8〜12のいずれか1つに記載の自走式電線点検装置。
(付記14)
前記一対のフック機構のうち少なくともいずれかは、前記一対のフック機構が前記一対の架空地線を把持するときの前記アームが構成する円弧の中心と前記鉄塔の中心とが一致するように、前記アームに沿って移動する
付記13に記載の自走式電線点検装置。
(付記15)
前記一対のフック機構は、それぞれ、前記架空地線を把持するフックを有し、
前記一対のフック機構のうち少なくともいずれかは、前記鉄塔を挟んだ一対の前記架空地線の水平角が180°未満であるときに、鉛直上方から見て前記一対のフック機構のそれぞれの前記フックと前記架空地線とのなす角度が互いに60°以上120°以下になるように、前記アームに沿って移動する
付記8〜14のいずれか1つに記載の自走式電線点検装置。
(付記16)
前記一対のフック機構のうち少なくともいずれかは、前記鉄塔を挟んだ一対の前記架空地線の水平角が180°未満であるときに、鉛直上方から見て前記一対のフック機構のそれぞれの前記フックと前記架空地線とにより前記アームの円弧の中心側で形成される角度が互いに90°となるように、前記アームに沿って移動する
付記15に記載の自走式電線点検装置。
(付記17)
鉄塔間に架線された架空地線に沿って走行しながら電線の点検を行う自走式電線点検装置の制御方法であって、
前記自走式電線点検装置は、
前記架空地線上を走行可能な走行部と、
前記走行部の下方に配置される本体部と、
前記本体部に対して相対移動可能に連結され、前記鉄塔を迂回するように前記本体部を移動させるための迂回路を形成する円弧型のアームと、
前記アームを前記架空地線に懸垂させるために前記アームの長さ方向の中間部を挟んで両端側に設けられる一対のフック機構と、
を備え、
前記一対のフック機構のそれぞれは、前記架空地線が出入り可能な開口部を有し、
前記一対のフック機構のそれぞれにおいて、前記開口部の前記出入口を水平方向の一方に向け、前記開口部内に前記架空地線を取り込む工程と、
該開口部内に前記架空地線を取り込んだ状態で、前記開口部の前記出入口を水平方向の前記一方から鉛直上方に向けずに水平方向の前記一方と反対の他方へ移動させる工程と、
前記架空地線を前記開口部から水平方向の前記他方の外側に送り出す工程と、
を有する
自走式電線点検装置の制御方法。
(付記18)
前記開口部内に前記架空地線を取り込む工程または前記架空地線を前記開口部から送り出す工程のうちいずれかでは、
前記鉄塔を挟んだ一対の前記架空地線の水平角に応じて、前記一対のフック機構のうち少なくともいずれかを、前記アームに沿って移動させる
付記17に記載の自走式電線点検装置の制御方法。