JP6964200B2 - 螺旋軸を有する膝装具並びにその設計方法および製造方法 - Google Patents

Description

膝装具は、靭帯の不安定性、変形性関節症、外傷、または手術後に装着者の膝を安定させるために使用される装置である。一部の既存の装具は、大腿骨のロールバック運動を考慮して設計されているが、しかしながら、そのような装具は矢状面でのみ機能し、装着者の膝の自然な動きを完全には考慮していない。従って、改善の余地が多々ある。

一態様によれば、膝装具が提供される。膝装具は、装着者の大腿骨に対して係合するための大腿骨セクションと、装着者の脛骨に対して係合するための脛骨セクションと、装着者の膝に対して大腿骨および脛骨セクションを内側にて枢動可能に係合する内側ヒンジであって、球形の弧に対応する形状を有し、かつ内側ヒンジが関節運動するときに変位する第１の幾何学的中心を有する重ね合わせシェルを含む内側ヒンジと、装着者の膝に対して大腿骨および脛骨セクションを外側にて枢動可能に係合する外側ヒンジであって、球形の弧に対応する形状を有し、かつ内側外側ヒンジが関節運動するときに変位する第２の幾何学的中心であって、第１の幾何学的中心から独立して変位する第２の幾何学的中心を有する重ね合わせ球形シェルを含む外側ヒンジと、を含む。ここで、第１および第２の幾何学的中心は、内側および外側ヒンジの周りの膝装具の完全な関節運動全体にわたって、互いに一致しない。

一態様によれば、膝装具が提供される。膝装具は、単一片の一部として一体的に形成された大腿骨カフおよび大腿骨ヒンジを含む大腿骨セクションと、脛骨カフおよび脛骨ヒンジであって、単一片の一部として一体的に形成された脛骨カフおよび脛骨ヒンジを含む脛骨セクションとを含み、大腿骨ヒンジおよび脛骨ヒンジは、大腿骨セクションおよび脛骨セクションがピボット軸を中心に互いに対して旋回することを可能にする装具関節を画定するように枢動可能に係合されており、前記ピボット軸は、大腿骨および脛骨セクションが関節を中心に互いに対して旋回するとき、矢状面、前頭面および横断面にて動くように構成されている。

一態様によれば、装具が提供される。装具は、装着者の手足の近位部分に固定するための近位セクションであって、単一片の一部として一体的に形成された近位カフおよび近位ヒンジを含む近位セクションと、装着者の手足の遠位部分に固定するための遠位セクションであって、近位セクションとヒンジ式に係合可能であり、近位ヒンジに係合するための遠位カフおよび遠位ヒンジを含む遠位セクションとを含み、前記遠位カフおよび遠位ヒンジは、単一片の一部として一体的に形成されており、近位ヒンジおよび遠位ヒンジは併せて、螺旋ヒンジ軸を中心に枢動可能な装具関節を画定する。

一態様によれば、膝装具キットが提供される。膝装具キットは、単一片の一部として一体的に形成された大腿骨カフおよび大腿骨ヒンジを含む大腿骨セクションと、脛骨カフと大腿骨ヒンジに係合された脛骨ヒンジとを含む脛骨セクションであって、前記脛骨カフおよび脛骨ヒンジは、単一片の一部として一体的に形成されている、脛骨セクションとを含み、大腿骨セクションおよび脛骨セクションは、螺旋ヒンジ軸を中心に関節運動可能な膝装具を形成するように、大腿骨および脛骨ヒンジに沿って互いに固定可能である。

一態様によれば、膝装具の製造方法が提供される。この方法は、ａ）装着者の脚の３Ｄモデルを取得するステップと、ｂ）３Ｄモデルを使用して、内側および外側ヒンジを内側および外側大腿顆に実質的に配置するステップと、ｃ）内側および外側ヒンジをカスタマイズして、装着者の膝の自然な動きに従う装具関節を定義するステップと、ｄ）３Ｄモデルの外面に適合するように大腿骨および脛骨カフをモデル化するステップと、ｅ）大腿骨カフと外側および内側ヒンジの大腿骨部分とを含む大腿骨セクションを単一片として製造するステップと、ｆ）脛骨カフと外側および内側ヒンジの脛骨部分とを含む脛骨セクションを単一片として製造するステップと、ｇ）大腿骨および脛骨セクションを組み立てて、膝装具を形成するステップと、を含む。
本開示の要旨は次のとおりである。
［１］
膝装具であって、
−装着者の大腿骨に対して係合するための大腿骨セクションと、
−装着者の脛骨に対して係合するための脛骨セクションと、
−装着者の膝に対して前記大腿骨および脛骨セクションを内側にて枢動可能に係合する内側ヒンジであって、球形の弧に対応する形状を有し、かつ前記内側ヒンジが関節運動するときに変位する第１の幾何学的中心を有する重ね合わせシェルを含む内側ヒンジと、
−装着者の膝に対して前記大腿骨および脛骨セクションを外側にて枢動可能に係合する外側ヒンジであって、球形の弧に対応する形状を有し、かつ内側外側ヒンジが関節運動するときに変位する第２の幾何学的中心であって、前記第１の幾何学的中心から独立して変位する第２の幾何学的中心を有する重ね合わせ球形シェルを含む外側ヒンジと、
を含み、
前記第１および第２の幾何学的中心が、前記内側および外側ヒンジの周りの膝装具の完全な関節運動全体にわたって、共通の矢状面に沿って互いに一致しない、膝装具。
［２］
前記第１および第２の幾何学的中心は、前記内側および外側ヒンジの周りの膝装具の完全な関節運動全体にわたって矢状面に制約される中心を有する共通のピボット軸と一致する、［１］に記載の膝装具。
［３］
前記ピボット軸が、装着者の膝の大腿骨上顆軸に対応する、［２］に記載の膝装具。
［４］
前記ピボット軸が、装着者の膝の非対称的な螺旋状回転軸に対応する、［２］または［３］に記載の膝装具。
［５］
前記ピボット軸は、前記膝装具が関節運動するときに動くように構成され、前記ピボット軸は、装着者の膝の瞬間的な運動軸に追従するように非対称に動く第１および第２の末端を有する、［４］に記載の膝装具。
［６］
前記内側ヒンジは、装着者の膝の螺旋状回転軸の内側端に対応する第１のピボットの周りを動くように構成され、更に、前記外側ヒンジは、装着者の膝の螺旋状の回転軸の外側端に対応する第２のピボットの周りを動くように構成されている、［４］または［５］に記載の膝装具。
［７］
前記第１および第２のピボットは、前記膝装具が前記内側および外側ヒンジの周りを関節運動するときに、矢状面、前頭面および横断面において動くように構成されている、［６］に記載の膝装具。
［８］
前記第１および第２のピボットは、前記膝装具が前記内側および外側ヒンジの周りで関節運動するときに、それぞれの弓状経路に沿って動くように構成されている、［６］または［７］に記載の膝装具。
［９］
前記膝装具が前記内側および外側ヒンジの周りで関節運動するとき、前記第１および第２のピボットのうちの第１のピボットは、凸状の弓状経路に沿って動くように構成され、前記第１および第２のピボットのうちの第２のピボットは、凹状の弓状経路に沿って動くように構成されている、［８］に記載の膝装具。
［１０］
前記内側および外側ヒンジを中心とした前記膝装具の完全な関節運動全体を通して、前記第１のピボットは、装着者の内側顆の回転軸に追従するように構成され、前記第２のピボットは、装着者の外側顆の回転軸に追従するように構成されている、［６］〜［９］のいずれか一項に記載の膝装具。
［１１］
前記内側および外側ヒンジを中心とした前記膝装具の完全な関節運動全体にわたって、前記内側ヒンジは、装着者の内側顆に整列するように構成され、前記外側ヒンジは、装着者の外側顆に整列するように構成されている、［１］〜［１０］のいずれか一項に記載の膝装具。
［１２］
前記内側および外側ヒンジのシェルのうち少なくとも１つが、対応するピンと係合し、所定の経路に沿って前記ピンを誘導するように成形された溝を含む、［１］〜［１１］のいずれか一項に記載の膝装具。
［１３］
前記内側および外側ヒンジのシェルが、少なくとも３つの対応するピンと係合し、その動きを誘導するように成形された少なくとも３つの溝を含み、前記少なくとも３つのピンが、前記装具関節のピボット軸の末端に対応するピボットを定義する中心を有する幾何学的構成で配置されている、［１２］に記載の膝装具。
［１４］
前記溝は、前記ピンが前記溝内のそれらの所定の経路に沿って移動するときに、弓状経路に沿って前記幾何学的構成の中心の変位を引き起こすように構成されている、［１３］に記載の膝装具。
［１５］
前記大腿骨セクションは、装着者の大腿の特定の解剖学的構造に適合するように寸法決めおよび成形された大腿骨カフを含み、前記脛骨セクションは、装着者の脛の特定の解剖学的構造に適合するように寸法決めおよび成形された脛骨カフを含む、［１］〜［１４］のいずれか一項に記載の膝装具。
［１６］
前記内側および外側ヒンジのそれぞれの重ね合わせシェルが、前記大腿骨カフに対して固定された大腿骨シェルと、前記脛骨カフに固定された脛骨シェルとを含む、［１５］に記載の膝装具。
［１７］
前記大腿骨カフおよび前記大腿骨シェルは単一片の一部として一体的に形成され、前記脛骨カフおよび前記脛骨シェルは単一片として一体的に形成されている、［１６］に記載の膝装具。
［１８］
前記大腿骨シェルは、前記脛骨シェルに対して固定された少なくとも１つの対応するピンを誘導するためにその中に形成された少なくとも１つの溝を含み、前記脛骨シェルは、前記脛骨シェルに対して固定された少なくとも１つの対応するピンを誘導するためにその中に形成された少なくとも１つの溝を含む、［１６］〜［１７］のいずれか一項に記載の膝装具。
［１９］
少なくとも１つのピンが前記大腿骨シェルまたは前記脛骨シェルの一部として一体的に形成されている、［１５］〜［１８］のいずれか一項に記載の膝装具。
［２０］
前記少なくとも１つのピンが、前記大腿骨シェルまたは前記脛骨シェルの内面から延在している、［１９］に記載の膝装具。
［２１］
前記大腿骨シェルおよび前記脛骨シェルのうち少なくとも一方が、互いに間隔を置いて配置された一対のシェルを含み、更に、少なくとも１つのピンが前記一対のシェル間を延在し、かつ、それに対して固定されている、［１６］〜［２０］のいずれか一項に記載の膝装具。
［２２］
前記溝は、前記内側および外側ヒンジのシェルの外側および内側にて開口する開口部を含む、［１２］〜［２１］のいずれか一項に記載の膝装具。
［２３］
前記溝を補強するために前記内側および外側ヒンジのシェル上に配置された補強板を更に備える、［１２］〜［２２］のいずれか一項に記載の膝装具。
［２４］
前記補強板が、前記内側および外側ヒンジのシェルに画定された溝に追従するように成形された開口部がその中に画定された金属板である、［２３］に記載の膝装具。
［２５］
前記シェルは、装着者の顆のサイズおよび／または形状に適合するように寸法決めおよび／または成形されている、［１］〜［２４］のいずれか一項に記載の膝装具。
［２６］
前頭面において装着者の大腿および脛を再調整するように、前記大腿骨セクションは、装着者の大腿に２つまたは３つの領域の力を印加するように構成され、前記脛骨セクションは、装着者の脛に２つまたは３つの領域の力を印加するように構成されている、［１］〜［２５］のいずれか一項に記載の膝装具。
［２７］
前記大腿骨および脛骨セクションがそれぞれ、装着者の脚の外側に第１の領域の力を印加し、装着者の脚の内側に第２の領域の力を印加するように構成されている、［２６］に記載の膝装具。
［２８］
前記大腿骨および脛骨セクションがそれぞれ、前記大腿骨または脛骨セクションのうち近位セクションを介して第１の領域の力を印加し、前記大腿骨または脛骨セクションのうち遠位セクションを介して第２の領域の力を印加するように構成されている、［２６］または［２７］に記載の膝装具。
［２９］
前記大腿骨および脛骨セクションは、前記装具の関節運動全体にわたって前記脛骨に対する装着者の大腿骨の外側への並進を促進するように力を印加することで、メディアリゼーションを矯正するように構成されている、［１］〜［２８］のいずれか一項に記載の膝装具。
［３０］
前記大腿骨および脛骨セクションは、前記装具の関節運動全体にわたって前記脛骨に対する大腿骨の角度を調整するように力を印加することで、外反または内反変形を矯正するように構成されている、［１］〜［２９］のいずれか一項に記載の膝装具。
［３１］
前記大腿骨および脛骨カフがそれぞれ、装着者の脚の内側および外側に沿って延在する内側および外側支持部材を含む、［１５］〜［３０］のいずれか一項に記載の膝装具。
［３２］
前記内側および外側支持部材は、前記外側支持部材の所定の領域における剛性を増加または減少させるための剛性構造を備える、［３１］に記載の膝装具。
［３３］
前記大腿骨および脛骨セクションの内側脚接触面に取り外し可能に固定されたクッション付きライナーを更に含む、［１］〜［３２］のいずれか一項に記載の膝装具。
［３４］
膝装具であって、
−単一片の一部として一体的に形成された大腿骨カフおよび大腿骨ヒンジを含む大腿骨セクションと、
−脛骨カフおよび脛骨ヒンジであって、単一片の一部として一体的に形成された前記脛骨カフおよび脛骨ヒンジを含む脛骨セクションと、
を含み、前記大腿骨ヒンジおよび前記脛骨ヒンジは、前記大腿骨セクションおよび前記脛骨セクションがピボット軸を中心に互いに対して旋回することを可能にする装具関節を画定するように枢動可能に係合されており、前記ピボット軸は、前記大腿骨セクションおよび脛骨セクションが前記関節を中心に互いに対して旋回するとき、矢状面、前頭面および横断面にて動くように構成されている、膝装具。
［３５］
前記装具関節のピボット軸は、５または６自由度に沿って装着者の膝の解剖学的軸に追従するように構成されている、［３４］に記載の膝装具。
［３６］
前記大腿骨および脛骨ヒンジは、前記大腿骨および脛骨セクションが前記関節を中心に互いに対して枢動するとき、前記ピボット軸が螺旋状に動くことを可能にするように構成されている、［３４］または［３５］に記載の膝装具。
［３７］
前記大腿骨および脛骨ヒンジは、装着者の膝の屈曲および伸長中の大腿骨のロールバックおよびスクリューホームメカニズムを考慮しつつ、前記ピボット軸が動くことを可能にするように構成されている、［３５］〜［３６］のいずれか一項に記載の膝装具。
［３８］
前記大腿骨および脛骨ヒンジがそれぞれ、互いに係合する球形シェルをそれぞれ含み、前記球形シェルが互いに対して旋回可能であることで、前記装具の関節運動を規定する、［３４］〜［３７］のいずれか一項に記載の膝装具。
［３９］
前記大腿骨ヒンジは互いに離間した一対の平行シェルを含み、前記脛骨ヒンジのシェルは前記平行シェル間の空間に配置されている、［３８］に記載の膝装具。
［４０］
前記一対の平行シェルのそれぞれが一定直径の球の弧として成形されている、［３９］に記載の膝装具。
［４１］
前記大腿骨および脛骨ヒンジがそれぞれ、一緒に内側ヒンジを規定する内側シェルと、一緒に外側ヒンジを規定する外側シェルとを含む、［３９］または［４０］に記載の膝装具。
［４２］
装着者が前記装具を着用したとき、前記内側ヒンジが内側大腿顆に整列するように配置され、前記外側ヒンジが外側大腿顆に整列するように配置されている、［４１］に記載の膝装具。
［４３］
装着者の膝の屈曲および伸長中に、前記内側ヒンジのヒンジ軸は、前記内側顆の瞬間的な運動軸に従う第１のピボットの周りを回転するように構成され、前記外側ヒンジのヒンジ軸は、前記外側大腿顆の瞬間的な運動軸に従う第２のピボットの周りを回転するように構成されている、［４２］に記載の膝装具。
［４４］
装着者の膝の屈曲および伸長中に、前記内側ヒンジは、第１の弓状経路に沿って前記ピボット軸の内側端の変位を誘導するように構成され、前記外側ヒンジは、第２の弓状経路に沿って前記ピボット軸の外側端の変位を誘導するように構成されている、［４２］または［４３］に記載の膝装具。
［４５］
前記大腿骨および脛骨ヒンジの内側シェルは、第１の直径を有する球の弧として成形され、前記大腿骨および脛骨ヒンジの外側シェルは、前記第１の直径とは異なる第２の直径を有する球の弧として成形されている、［４１］〜［４４］のいずれか一項に記載の膝装具。
［４６］
前記内側シェルは、第１の幾何学的中心を有する球の弧として成形され、前記外側シェルは、前記第１の幾何学的中心と一致しない、第２の幾何学的中心を有する球の弧として成形されている、［４１］〜［４５］のいずれか一項に記載の膝装具。
［４７］
前記内側および外側シェルは、前記大腿骨および脛骨セクションが互いに対して旋回するときに動く幾何学的中心を有するように構成され、前記内側および外側シェルの幾何学的中心は、前記装具の完全な関節運動全体にわたって共通の矢状面に制約された中心を有する共通のピボット軸に沿って交差する、［４６］に記載の膝装具。
［４８］
前記大腿骨および脛骨ヒンジのシェルのうち少なくとも一方が、対応するピンに係合し、所定の経路に沿ってそれを誘導するように成形された溝を含む、［３８］〜［４７］のいずれか一項に記載の膝装具。
［４９］
前記大腿骨および脛骨ヒンジのシェルは、３つの対応するピンに係合し、その動きを誘導するように成形された３つの溝を含み、前記３つのピンが三角形に配置され、前記ピボット軸の末端に対応する中心を有する、［４８］に記載の膝装具。
［５０］
前記ピンが前記溝内の所定の経路に沿って移動するときに、前記溝が、弓状経路に沿って三角形の中心の変位を引き起こすように構成されている、［４９］に記載の膝装具。
［５１］
前記大腿骨ヒンジのシェルは、前記脛骨ヒンジのシェルに対して固定された対応するピンを誘導するためにその中に形成された少なくとも１つの溝を含み、前記脛骨ヒンジのシェルは、前記内側ヒンジのシェルに対して固定された対応するピンを誘導するためにその中に形成された少なくとも１つの溝を含む、［４８］〜［５０］のいずれか一項に記載の膝装具。
［５２］
少なくとも１つのピンが、前記大腿骨ヒンジまたは前記脛骨ヒンジのシェルの一部として一体的に形成されている、［４８］〜［５１］のいずれか一項に記載の膝装具。
［５３］
前記少なくとも１つのピンが、前記大腿骨ヒンジまたは前記脛骨ヒンジのシェルの内面から延在している、［５２］に記載の膝装具。
［５４］
前記大腿骨および脛骨ヒンジのうち少なくとも一方は、互いに離間した一対のシェルを含み、更に、少なくとも１つのピンが前記一対のシェルの間を延在し、それに対して固定されている、［４８］〜［５３］のいずれか一項に記載の膝装具。
［５５］
前記溝は、前記シェルの外側および内側に開口する開口部を備える、［４８］〜［５４］のいずれか一項に記載の膝装具。
［５６］
前記溝を補強するために前記大腿骨または脛骨ヒンジに補強板を更に含む、［４８］〜［５５］のいずれか一項に記載の膝装具。
［５７］
前記補強板は、前記大腿骨または脛骨ヒンジのシェルに規定された溝に追従するように成形された開口部がその中に規定された金属板である、［５６］に記載の膝装具。
［５８］
前記シェルは、装着者の特定の解剖学的構造に適合するように寸法決めおよび／または成形されている、［３８］〜［５７］のいずれか一項に記載の膝装具。
［５９］
前記大腿骨および脛骨カフは、装着者の特定の解剖学的構造に適合するように寸法決めおよび／または成形されている、［３４］〜［５８］のいずれか一項に記載の膝装具。
［６０］
前頭面において装着者の大腿骨を装着者の脛骨に対して再調整するように、前記大腿骨セクションは、装着者の大腿骨に２つまたは３つの領域の力を印加するように構成され、前記脛骨セクションは、装着者の脛骨に２つまたは３つの領域の力を印加するように構成されている、［３４］〜［５９］のいずれか一項に記載の膝装具。
［６１］
前記大腿骨および脛骨セクションがそれぞれ、装着者の脚の外側に第１の領域の力を印加し、装着者の脚の内側に第２の領域の力を印加するように構成されている、［６０］に記載の膝装具。
［６２］
前記大腿骨および脛骨セクションがそれぞれ、前記大腿骨または脛骨カフの近位セクションを介して第１の領域の力を印加し、前記大腿骨または脛骨カフの遠位セクションを介して第２の領域の力を印加するように構成されている、［６０］または［６１］に記載の膝装具。
［６３］
前記大腿骨および脛骨セクションは、前記装具の関節運動全体を通じて、前記脛骨に対する装着者の大腿骨の外側への並進を促進する力を印加することで、メディアリゼーションを矯正するように構成されている、［３４］〜［６２］のいずれか一項に記載の膝装具。
［６４］
前記大腿骨および脛骨セクションは、前記装具の関節運動全体を通じて、前記脛骨に対する大腿骨の角度を調整するよう力を印加することで、外反または内反変形を矯正するように構成されている、［３４］〜［６３］のいずれか一項に記載の膝装具。
［６５］
前記大腿骨および脛骨カフがそれぞれ、装着者の脚の内側および外側に沿って延在する内側および外側支持部材を含む、［３４］〜［６４］のいずれか一項に記載の膝装具。
［６６］
更に、装着者の脚の後側の内側支持体と外側支持体との間に延在する複数のストラップを含む、［６５］に記載の膝装具。
［６７］
更に、装着者の脚の前側の内側支持体と外側支持体との間に延在する少なくとも１つのストラップを含む、［６５］または［６６］に記載の膝装具。
［６８］
更に、前記大腿骨および脛骨セクションの内側脚接触表面に取り外し可能に固定されたクッション付きライナーを含む、［３４］〜［６７］のいずれか一項に記載の膝装具。
［６９］
膝装具であって、
−装着者の大腿骨に対して係合するための大腿骨セクションと、
−装着者の脛骨に対して係合するための脛骨セクションと、
−前記装具の関節運動を画定するために前記大腿骨セクションおよび前記脛骨セクションを枢動可能に係合するヒンジと、
を含み、前記大腿骨セクション、脛骨セクション、およびヒンジは、前記装具の関節運動全体にわたって装着者の脛骨に対する装着者の大腿骨の外側への並進を促進するよう力を印加することで、メディアリゼーションを矯正するように構成されている、膝装具。
［７０］
前記大腿骨および脛骨セクションは、前記装具の関節運動全体にわたって装着者の脛骨に対する装着者の大腿骨の角度を調整するよう力を印加することで、外反または内反変形を矯正するように構成されている、［６９］に記載の膝装具。
［７１］
装具であって、
−装着者の手足の近位部分に対して係合するための近位セクションであって、近位カフおよび近位ヒンジを含む近位セクションと、
−装着者の手足の遠位部分に対して係合するための遠位セクションであって、前記近位セクションとヒンジ式に係合可能であり、前記近位ヒンジに係合するための遠位カフおよび遠位ヒンジを含む遠位セクションと、
を含み、前記近位ヒンジおよび前記遠位ヒンジは併せて、非対称的な螺旋状ピボット軸を中心に枢動可能な装具関節を定義し、内側ピボットおよび外側ピボットを含み、前記内側および外側ピボットは、正頭面、矢状面、および横断面のうち少なくとも２つに沿って非対称に動くように構成されている、装具。
［７２］
膝装具キットであって、
−単一片の一部として一体的に形成された大腿骨カフおよび大腿骨ヒンジを含む大腿骨セクションと、
−脛骨カフと前記大腿骨ヒンジに係合された脛骨ヒンジとを含む脛骨セクションであって、前記脛骨カフおよび脛骨ヒンジは、単一片の一部として一体的に形成されている、脛骨セクションと、
を含み、前記大腿骨セクションおよび前記脛骨セクションは、非対称的な螺旋ピボット軸を中心に関節運動可能な膝装具を形成するように、前記大腿骨および脛骨ヒンジに沿って互いに固定可能である、膝装具キット。
［７３］
膝装具の製造方法であって、
ａ）装着者の脚の３Ｄモデルを取得するステップと、
ｂ）前記３Ｄモデルを使用して装着者の脚を実質的に再調整するステップと、
ｃ）前記３Ｄモデルを使用して、装着者の内側および外側大腿顆に内側および外側ヒンジを実質的に配置するステップと、
ｄ）前記内側および外側ヒンジをカスタマイズして、装着者の膝の所望の動きに対応する所定の動きに従う装具関節を画定するステップと、
ｅ）前記外側ヒンジおよび内側ヒンジの大腿骨部分を製造するステップと、
ｆ）前記外側および内側ヒンジの脛骨部分を製造するステップと、
ｇ）前記大腿骨および脛骨部分を組み立てて、前記内側および外側ヒンジを形成するステップと、
を含む、方法。
［７４］
更に、前記３Ｄモデルを分析して、装着者の膝の自然な動きを決定するステップと、前記自然な動きに追従するように前記内側および外側ヒンジを設計するステップとを含む、［７３］に記載の方法。
［７５］
ステップｇ）に、前記外側および内側ヒンジにガイドピンを挿入するステップを含む、［７３］または［７４］に記載の方法。
［７６］
更に、前記外側および／または内側ヒンジの誘導溝を補強するための補強板を提供するステップを含む、［７３］〜［７５］のいずれか一項に記載の方法。
［７７］
更に、３Ｄモデルの外面に適合するように大腿骨および脛骨カフをモデル化するステップと、前記大腿骨および脛骨カフを製造するステップとを含む、［７３］〜［７６］のいずれか一項に記載の方法。
［７８］
前記大腿骨カフは、前記外側および内側ヒンジの大腿骨部分が前記膝装具の大腿骨セクションに対応する単一片として製造されており、更に、前記脛骨カフは、前記外側および内側ヒンジの脛骨部分が前記膝装具の脛骨セクションに対応する単一片として製造されている、［７７］に記載の方法。
［７９］
ステップａ）に、装着者の脚の目印を識別するためのマーカーを配置するステップと、装着者の脚をデジタル化して前記識別された目印を有する３Ｄモデルを取得するステップとを含む、［７７］または［７８］に記載の方法。
［８０］
更に、前記識別された目印に基づいて、前記カフおよび／または前記内側および外側ヒンジを配置するステップを含む、［７９］に記載の方法。
［８１］
更に、製造前に、
・前記大腿骨および／または脛骨カフの厚さ
・前記大腿骨および／または脛骨カフの補強部の形状および／または位置
・前記大腿骨および／または脛骨カフの上、下、内側および／または外側の限界
・前記大腿骨および／または脛骨セクションの外側支持部材の剛性および／または補強
・前記大腿骨および／または脛骨カフの開口部の形状、位置および／または数量
・ストラップの位置および／または数量
のパラメータのうち少なくとも１つを調整するステップを含む、［７７］〜［８０］のいずれか一項に記載の方法。
［８２］
更に、前記大腿骨および／または脛骨セクションの内面にクッション付きライナーを適用するステップを含む、［７７］〜［７５］のいずれか一項に記載の方法。
［８３］
前記大腿骨および脛骨セクションが、付加製造技術により製造されている、［７７］〜［８２］のいずれか一項に記載の方法。
［８４］
ステップｂ）に、メディアリゼーションを矯正するように、前記脛骨に対して前記大腿骨を外側に並進させるステップを含む、［７３］〜［８３］のいずれか一項に記載の方法。
［８５］
ステップｂ）に、外反または内反変形を矯正するように、前記脛骨に対する前記大腿骨の角度を調整するステップを含む、［７３］〜［８４］のいずれか一項に記載の膝装具。

図１Ａは、脛骨大腿関節における大腿骨上顆軸（ＴＥＡ）、大腿骨後顆軸（ＰＣＡ）、および前後軸（ＡＰ）を示す、大腿骨の遠位端図である。図１Ｂは、内側および外側大腿顆並びに内側および外側膝蓋面を示す大腿骨の遠位端図である。 大腿顆に対する大腿骨骨幹部の斜位を示す、大腿骨の遠位端の側面図である。 図３Ａは、脛骨プラトーと、その上にある内側および外側顆の非対称的なアタッチメントを示す、脛骨プラトーと、その上にある内側および外側顆の非対称的なアタッチメントを示す、脛骨の近位端図である。図３Ｂは、脛骨プラトーの後方傾斜を示す、脛骨の近位端の側面図である。 非対称的な螺旋軸に沿った膝の動きを示す３Ｄグラフである。 脛骨プラトーに関連した膝の螺旋軸の変位を示す２Ｄグラフである。 膝の軸回転中の内側および外側顆の動きを示す、脛骨大腿関節の斜視図である。 脛骨プラトーにおける内側および外側顆の動きを示す概略図である。 図８Ａは、膝の屈曲中の瞬間中心の後方移動を示す、脛骨大腿関節の側面図である。図８Ｂは、膝の伸長中の脛骨大腿骨接触点の前方位置を示す概略図である。図８Ｃは、膝の屈曲中の脛骨大腿骨接触点の後方位置を示す概略図である。 可動式外側区画および凹状脛骨プラトーにおける内側ピボットを示す、脛骨の近位端図である。 脛骨粗面の両側の平坦な内側表面および湾曲した外側表面を示す概略図である。 健常者および変形性関節症の被験者におけるスクワット時の脛骨プラトー上の脛骨大腿骨接触点を示す概略図である。 膝屈曲角によるＡＣＬ歪みの変化を示すグラフである。 膝伸長中のＡＣＬの傾斜角を示す概略図である。 膝屈曲中のＡＣＬの傾斜角を示す概略図である。 一実施形態による、装着者の膝の自然な動きに追従するように構成された膝装具の斜視図である。 図１４の膝装具の大腿骨セクションの個別の図である。 図１４の膝装具の脛骨セクションの個別の図である。 一実施形態による、その内面を示す、外側ヒンジの脛骨部分の詳細図である。 図１５Ａの外側ヒンジの脛骨部分の外面を示す詳細図である。 一実施形態による、外側ヒンジの大腿骨部分の内面を示す詳細図である。 図１５Ｃの外側ヒンジの大腿骨部分の外面を示す詳細図である。 代替的な一実施形態による、その内面を示す、外側ヒンジの脛骨部分の詳細図である。 図１６Ａの外側ヒンジの脛骨部分の外面を示す詳細図である。 代替的な一実施形態による、外側ヒンジの大腿骨部分の内面を示す詳細図である。 図１６Ｃの外側ヒンジの大腿骨部分の外面を示す詳細図である。 補強板を含む代替的な一実施形態による、外側ヒンジの脛骨部分の分解図である。 外面と同一平面になるように対応する凹部に挿入された補強板を示す、図１７Ａの外側ヒンジの脛骨部分の詳細図である。 膝の動きの螺旋軸と一致する内側および外側シェルの独立した幾何学的中心の概略図である。 膝の螺旋状の回転軸を示す、装着者の膝に配置された装具の一実施形態の概略図である。 一実施形態による、膝の螺旋状の回転軸の末端を示す、装具ヒンジの脛骨セクションの内面と、それに従う溝の構成との立面図である。 図２０Ａの脛骨セクションの内面の斜視図である。 膝屈曲の開始時に溝の初期方向の接線によって形成される角度を示す、図２０Ａの脛骨部分の内面の立面図である。 装着者の膝の内側および外側大腿顆に配置された内側および外側ヒンジを示す図である。 前頭面における装着者の大腿骨に対する装着者の脛骨の再調整に使用される力の適用領域を示す概略図である。 一実施形態による、組み立てられた膝装具の斜視図である。 患者の手足の外面のモデル上の内側および外側顆に対する内側および外側ヒンジのバーチャルポジショニングを示す図である。 患者の手足の外面のモデル上の脛骨および大腿骨カフのバーチャルポジショニングを示す図である。 単一片としての大腿骨カフおよびヒンジ、並びに単一片としての脛骨カフおよび脛骨ヒンジの概念を示す図である。 付加製造技術を使用して脛骨および大腿骨片のバーチャルモデルから作成された膝装具を示す図である。 オーダーメイドの膝装具の製造工程を示す概略図である。 膝装具コンポーネントのバーチャルポジショニングのための第１のグループの目印を示す、装着者の脚の内側図である。 第２のグループの目印を示す、装着者の脚の外側図である。 第３のグループの目印を示す、装着者の脚の前面図である。 第４のグループの目印を示す、装着者の脚の後面図である。 変形性関節症患者における大腿骨のメディアリゼーション（medialization）を示す概略図である。 外反変形と共に大腿骨のメディアリゼーションを矯正するために使用される力の適用領域を示す概略図である。 内反変形と共に大腿骨のメディアリゼーションを矯正するために使用される力の適用領域を示す概略図である。

以下の説明では、同じ参照符号は同様の要素を指す。更に、簡潔性および明白性のために、即ち、複数の参照符号により図に過度の負担をかけないように、全ての図に全てのコンポーネントおよび特徴への参照が含まれているわけではなく、一部のコンポーネントおよび特徴への参照は１つの図でのみ見られる場合があり、他の図に示されている本開示のコンポーネントおよび特徴は、そこから容易に推論することができる。実施形態、幾何学的構成、言及された材料および／または図に示される寸法は任意であり、例示的な目的でのみ与えられている。

様々な実施形態に関連して以下に説明されるように、螺旋軸を備えた膝装具が提供される。大まかに説明すると、膝装具は、以下でより詳細に説明するように、膝の解剖学的構造および動きに関する最新の知識に基づいて、自然な膝の動きを誘導するように設計されている。膝装具は、例えば、装着者の下肢のデジタル化された表面に基づいて、装着者の特定の解剖学的構造に適合するように調整可能であり、また付加製造技術を使用して製造可能である。本開示は、膝用の装具の実施形態に焦点を当てているが、同様の原理および構成が他の手足用の装具に適用可能であることが理解されよう。

図１Ａおよび図１Ｂを参照すると、脛骨大腿関節または膝の整列は、３つの平面、即ち、前頭面、矢状面、および横断面に関して変化する。脛骨大腿関節は、３自由度の角（回転）運動および２度の摺動運動を有する二重顆状関節である。屈曲および伸長は、遠位大腿骨の上顆を通る前額軸の周りの矢状面にて発生する。内側／外側（内部／外部）の回転は、内側脛骨顆の外側を通る縦軸の周りの横断面にて発生する。外転および内転は、前後軸（ＡＰ）の周りの前頭面にて発生する可能性があり、ホワイトサイドライン（Whiteside’s Line）とも呼ばれる。

更に図２を参照すると、大腿骨のシャフトは斜めの位置にある。外側顆はシャフトとより直接的に並んでおり、内側顆は更に遠位に延在している。大腿骨の遠位端は、本質的に水平状態を維持している。矢状面では、顆は凸状である。前頭面では、それらは僅かに凸状になる。外側大腿顆は内側顆に対して前方にシフトしており、その関節面はより短く、下部ではより長く見える。

理解され得るように、内側顆および外側顆は、脛骨プラトーに非対称的に取り付けられている。図３Ａに示すように、内側脛骨プラトーは前後方向により長く、外側脛骨関節軟骨はより厚くなっている。図３Ｂに示すように、脛骨プラトーも後方に約７°〜１０°傾斜している。脛骨プラトーは主に平坦であるが、前後の縁に凸面がある。

上記の解剖学的構造によって、内側および外側大腿顆の動きにより、膝を螺旋状の運動軸に追従させる。図４に示すように、膝の屈曲および伸長中に、膝の運動軸が空間を移動する。この運動軸は、膝の中心の周りにおける内側および外側の変位を含むという点で、螺旋状であると言える。図示の実施形態では、軸は、内側および外側の変位の大きさおよび／または経路が異なるという点で、非対称的に螺旋状である。例えば、通常の膝屈曲中は、膝軸の内側端（即ち、内側の解剖学的関節に対応する）が後方に第１の距離だけ移動することができる一方、膝軸の外側端（即ち、外側の解剖学的関節に対応する）は前方に第２の距離だけ移動することができ、第１の距離と第２の距離とは大きさが異なる。図４に示す実施例では、膝軸の内側端は、脛骨上の内側大腿顆の後方並進に対応して、約２〜４ｍｍだけ後方に並進する。同様に、膝軸の外側端は、脛骨上の外側大腿顆の前方並進に対応して、約１４〜２２ｍｍだけ前方に並進する。内側および外側顆の同様の並進が、膝の伸長中に逆に発生することが理解されよう。

運動軸の末端の変位に加えて、運動軸の中心も膝の屈曲および伸長中に変位することが理解されよう。図５に示すように、膝の屈曲中には膝の運動軸が後方に変位する。更に理解され得るように、膝が完全に伸長および完全に屈曲する両方の場合に近付くにつれて、膝の軸回転の大きさは減少する。

図６に示すように、脛骨の外部回転中、内側顆（即ち、内側の解剖学的関節）は、第１の弧に沿って僅かに前方に移動する一方、外側顆（即ち、外側の解剖学的関節）は、第２の弧に沿ってより大きく後方に移動する。同様に、脛骨の内部回転中、内側顆はその弧に沿って僅かに後方に移動する一方、外側顆はその弧に沿って前方により大きな距離だけ移動する。理解され得るように、内側顆は、凹状の弧、即ち、遠位方向に頂点を有する弧に沿って移動する一方で、外側顆は、凸状の弧、即ち、近位方向に頂点を有する弧に沿って移動する。更に理解され得るように、図７に示すように、回転方向に関係なく、外側顆がより大きな運動弧に沿って移動する一方、内側顆はピボットポイントとして機能する。

図８Ａ、図８Ｂおよび図８Ｃに示されるように、膝の動きは、後方へのロールバックコンポーネントを含む。図８Ａに示すように、膝を屈曲すると、膝の瞬間中心は後方に移動する。図８Ｂおよび図８Ｃに示すように、膝を伸長すると、脛骨と大腿骨との間の接触点は前方に配置される一方、膝を屈曲させると、接触点が後方に移動する。

膝の動きは、更に、スクリューホームメカニズムを含む。図９に示すように、膝伸長時の脛骨の外旋と、膝屈曲時の脛骨の内旋とにわたって、外側顆は内側顆を中心に旋回し、このスクリューホームメカニズムを定義する。これにより、膝を固定して、立っている間に、四頭筋により実行される負担を低減させることができる。

図１０に示すように、脚の近位部および前部にて、脛骨粗面は脛骨の内側および外側の面と角度の頂点を形成する。脛骨粗面の内側に位置する表面は、外側と比較して平坦な表面を示している。これは、膝装具の脛骨カフの上部セクションを安定させ、脚の軸回転の制御を支援する表面として機能し得る。

理解され得るように、膝の構造が影響を受ける場合、脛骨プラトーへの負荷は母集団間で異なり得る。例えば、図１１に示すように、変形性関節症の被験者においては、健常者の被験者と比較して、スクワット運動中の脛骨大腿骨接触点が内側に変位する場合がある。従って、健康な被験者の接触点に対応するように接触点を移動するには、脛骨大腿関節の位置合わせの修正が必要になる場合がある。

前十字靭帯（ＡＣＬ）にかかる歪みは、膝の屈曲角度によって異なる。図１２に示すように、膝の完全な屈曲または伸長時に、ＡＣＬの歪みはより大きくなる。しかしながら、ＡＣＬの一部は、関節可動域にわたってタイトなままである。図１３Ａに示すように、膝を完全に伸長させた状態では、ＡＣＬの傾斜角度が最大になり、最終的に前向きの分力によって後方への大腿骨のロールが抑制される。図１３Ｂに示すように、膝の屈曲が増加すると、ＡＣＬの傾斜角度が減少し、前方への大腿骨のスライドが生成されるのに十分なほど前向きの分力が増加する。

理解され得るように、上記の膝の動きは、自然な膝の動きに追従するように装着者の膝を誘導する膝装具を設計するために使用することができる。より具体的には、膝装具は、膝装具を、上記のように膝の自然な非対称的な螺旋状の運動軸を反映する非対称的な螺旋状ピボット軸に沿って屈曲および伸長させるように構成されたヒンジ機構を有するように設計することができる。ヒンジ機構は、正頭面、矢状面、および横断面において、６自由度に沿った動きを個別に制御するように構成可能である。いくつかの実施形態では、装具は、上記の他の運動メカニズムの中でも、ロールバックおよびスクリューホームメカニズムを考慮して、５自由度、即ち、３自由度の角（回転）運動と、２自由度のスライド運動とを介して運動を誘導することができる。装具は、膝の運動全体にわたって、脛に対して装着者の大腿を再調整するように構成することで、例えば、脛骨大腿骨接触点を健康な膝の接触点に対応するように再配置することによって位置合わせを矯正し、および／または位置合わせを調整して、例えば、膝の摩耗領域を解放することもできる。

図１４を参照すると、例示的な実施形態による膝装具１が示されている。膝装具は、装着者の大腿骨に対して係合するための大腿骨セクション３と、装着者の脛骨に対して係合するための脛骨セクション５とを備える。大腿骨セクション３および脛骨セクション５は、互いに枢軸的に係合して、装具１が、大腿骨セクション３および脛骨セクション５の軸が実質的に互いに整列している伸長構成（図１４参照）と、大腿骨セクション３および脛骨セクション５の軸が互いに対して角度が付けられている屈曲構成（図２４参照）との間を移動可能とする装具関節を定義する。理解され得るように、装具１は、装着者の膝の動きを誘導するように構成されており、装具１の完全な関節運動は、例えば、０°〜１３５°等、装着者の膝の屈曲および伸長による完全に自然な運動範囲に対応することが可能であるが、装具１の完全な関節運動は、装着者のニーズに応じて、より制限された運動範囲に対応させることも可能である。例えば、完全な関節運動は、１０°〜１２０°の範囲の伸長／屈曲に対応することが可能であり、従って、膝の完全なる伸長を１０°だけ制限し、膝の過伸展を防止することができる。

本実施形態では、大腿骨セクション３および脛骨セクション５は、装着者の膝に対して内側に配置された内側ヒンジ７と、装着者の膝に対して外側に配置された外側ヒンジ９とを介して旋回可能に係合される。以下でより詳細に説明するように、内側ヒンジ７および外側ヒンジ９はそれぞれ、留め具２７を介して互いに係合し、所定の経路に従って、互いに対して旋回するように構成された、重ね合わせシェル（即ち、互いに関連する実質的に滑らかな表面を備えた部材）を備える。本実施形態では、内側ヒンジ７および外側ヒンジ９が設けられているが、いくつかの実施形態では、装着者のニーズに応じて、内側または外側のいずれかに単一のヒンジを設けることも可能であることが理解されよう。理解され得るように、留め具２７を隠すためにキャップ部材３０を設けることができ、内側ヒンジ７および／または外側ヒンジ９に設けられた対応する凹部２９に係合させることができる。

より詳細に説明すると、図１４Ａを参照すると、大腿骨セクション３が分離して示されている。大腿骨セクション３は、装着者の大腿骨に対して係合するためのカフ１３を含む本体１１を有する。本実施形態では、カフ１３は、装着者の大腿の前面の輪郭に従うように寸法決めおよび成形された実質的に剛性の湾曲部材である。カフ１３は、装着者の大腿を部分的に取り囲むように構成されており、内側と外側との間で、その前側に沿って延在している。他の実施形態では、カフ１３は、装着者の大腿を完全にまたは部分的に取り囲むことができ、および／または装着者のニーズに応じて、剛性または可撓性セクション、またはそれらの組み合わせを有するように構成することができることが理解されよう。本明細書では「カフ」という用語が使用されているが、この部材は、装着者の大腿骨に対して係合するように構成された任意の形状に対応し得ることが理解されよう。

大腿骨セクション３の本体１１は、更に、膝装具１において関節の一部を形成するためのヒンジ１５を含む。本実施形態では、大腿骨ヒンジ１５は、内側ヒンジ７の一部を形成するための内側コンポーネント１５ａと、外側ヒンジ９の一部を形成するための外側コンポーネント１５ｂとを含む。大腿骨ヒンジ１５の内側コンポーネント１５ａおよび外側コンポーネント１５ｂはそれぞれ、一対の離間したシェル２１、即ち、装着者の脚に隣接して配置された内側シェル２１ａと、内側シェル２１ａから離間した外側シェル２１ｂとを含む。本実施形態では、内側シェル２１ａおよび外側シェル２１ｂは、互いに実質的に平行に配置され、それらの間に空間またはスロット２１ｃを画定している。本実施形態では、以下により詳細に説明するように、内側シェル２１ａおよび外側シェル２１ｂは、球のセグメントに対応する形状を有する。両方のシェル２１ａ、２１ｂは同じ球直径を有し、それらの球セグメントが互いに実質的に平行に配置されるように位置付けられる。

本実施形態では、ヒンジ１５は、カフ１３に対して遠位に離間しており、剛性の支持部材１７を介してカフ１３に固定されている。より具体的には、カフ１３の内側端は、装着者の大腿骨に沿って内側に延在する支持部材１７ａの内側コンポーネントを介して、大腿骨ヒンジの内側コンポーネント１５ａに固定される。同様に、カフ１３の外側端は、装着者の大腿骨に沿って外側に延在する支持部材１７ｂの外側コンポーネントを介して、大腿骨ヒンジの外側コンポーネント１５ｂに固定される。理解され得るように、支持部材コンポーネント１７ａ、１７ｂは、装着者の大腿の内側表面および外側表面の輪郭に適合するように成形および構成することができる。更に、理解され得るように、支持部材コンポーネント１７ａ、１７ｂは、装着者の要件に応じて剛性を変化させるように構成することができる。例えば、剛性構造１９は、支持部材１７および／またはカフ１３の所望のセクションにおける不撓性／剛性を増加または減少させるために提供され得る。本実施形態において、剛性構造１９は、大腿骨セクションの本体１１の一部として成形された追加の材料を有する隆起構造のような補強部と、カフ１３に形成された開口部とを備える。しかしながら、剛性を増加または減少させるために他の形状および構造も可能であることが理解されよう。例えば、剛性構造１９は、格子および／またはボイドを含むことができる。いくつかの実施形態では、剛性構造１９は、本体１１に取り付けられた追加の部材または支持体を含むことができる。

本実施形態では、大腿骨セクション３の本体１１は、単一片として形成されるという点で単一体である。換言すると、カフ１３、ヒンジ１５および支持部材１７は、これらのコンポーネントを一緒に固定するジョイント、留め具、溶接、接着剤等なしに、全て同じ部品の一部として一体的に形成される。以下でより詳細に説明するように、この単一体１１は、３Ｄプリント等の付加製造技術を使用して形成することができる。本体１１は、プラスチックまたは金属および／またはそれらの組み合わせ等の異なる材料を使用して形成することができる。同様に、本体は、剛性および／または重量の要件に応じて、様々な内部構造を有するように形成可能である。

次に図１４Ｂを参照すると、脛骨セクション５が分離して示されている。脛骨セクション５は、装着者の脛骨に対して係合するためのカフ３３を含む本体３１を有する。本実施形態では、カフ３３は、装着者の脛の前面の輪郭に従うように寸法決めおよび成形された実質的に剛性の湾曲部材である。カフ３３は、装着者の脛を部分的に取り囲むように構成されており、内側と外側との間で、その前側に沿って延在している。他の実施形態では、カフ３３は装着者の脛を完全にまたは部分的に取り囲むことができ、および／または装着者のニーズに応じて、剛性または可撓性部分、またはそれらの組み合わせを有するように構成可能であることが理解されよう。本明細書では「カフ」という用語が使用されているが、この部材は、装着者の脛骨に対して係合するように構成された任意の形状に対応し得ることが理解されよう。

脛骨セクション５の本体３１は、更に、膝装具１において関節の一部を形成するためのヒンジ３５を含む。本実施形態では、脛骨ヒンジ３５は、内側ヒンジ７の一部を形成するための内側コンポーネント３５ａと、外側ヒンジ９の一部を形成するための外側コンポーネント３５ｂとを含む。脛骨ヒンジ３５の内側コンポーネント３５ａおよび外側コンポーネント３５ｂはそれぞれ、大腿骨ヒンジ１５の対応する間隔またはスロット２１ｃに係合するように寸法決めおよび成形されたシェル４１を含む。

本実施形態では、ヒンジ３５は、カフ３３に対して近位に離間されており、剛性の支持部材３７を介してカフ３３に固定されている。より具体的には、カフ３３の内側端は、装着者の脛骨に沿って内側に延在する支持部材３７ａの内側コンポーネントを介して、脛骨ヒンジの内側コンポーネント３５ａに固定される。同様に、カフ３３の外側端は、装着者の大腿骨に沿って外側に延在する支持部材３７ｂの外側コンポーネントを介して、脛骨ヒンジの外側コンポーネント３５ｂに対して固定される。理解され得るように、支持部材コンポーネント３７ａ、３７ｂは、装着者の大腿の内側表面および外側表面の輪郭に適合するように成形および構成され得る。更に、理解され得るように、支持部材コンポーネント３７ａ、３７ｂは、装着者の要件に応じて変化する剛性を有するように構成されてもよい。例えば、剛性構造３９は、支持部材３７および／またはカフ３３の所望のセクションにおける不撓性／剛性を増加または減少させるために提供され得る。本実施形態において、剛性構造３９は、脛骨セクションの本体３１の一部として成形された追加の材料を有する隆起構造等の補強部を備える。しかしながら、剛性を増加または減少させるために他の形状および構造が可能であることが理解されよう。例えば、剛性構造３９は、格子および／またはボイドを含むことができる。いくつかの実施形態では、剛性構造３９は、本体３１に取り付けられた追加の部材または支持体を含むことができる。

本実施形態では、脛骨セクション５の本体３１は、単一片として形成されるという点で単一体である。換言すると、カフ３３、ヒンジ３５および支持部材３７は、これらのコンポーネントを一緒に固定するジョイント、留め具、溶接、接着剤等なしに、全て同じ部品の一部として一体的に形成される。以下でより詳細に説明するように、この単一体３１は、３Ｄプリント等の付加製造技術を使用して形成することができる。本体３１は、プラスチックまたは金属および／またはそれらの組み合わせ等の異なる材料を使用して形成することができる。同様に、本体は、剛性および／または重量の要件に応じて、様々な内部構造を有するように形成可能である。

上述したように、大腿骨セクション３および脛骨セクション５は、大腿骨ヒンジ１５および脛骨ヒンジ３５を介して互いに係合している。大腿骨ヒンジ１５および脛骨ヒンジ３５はそれぞれ、互いに重ね合わされ、係合されて、装具１の関節を画定する内側ヒンジ７および外側ヒンジ９を形成するシェル２１、４１を含む。シェル２１、４１は、内側ヒンジ７および外側ヒンジ９のそれぞれが、それぞれの第１および第２のピボットを中心に動くように、所定の経路に従って、互いに対して回転するように構成可能である。このようにして、装具１は、自然な膝の動きの回転軸を模倣するピボット軸に従って関節運動することができる。理解され得るように、内側ヒンジ７および外側ヒンジ９は対称的に設計可能であるが、それらのシェル２１、４１は異なる形状を有するように構成することができ、装着者の膝の両側のピボットの異なる（即ち、非対称的な）経路を可能にし、最終的には装具１の関節が、６自由度（即ち、前頭面、矢状面、および横断面を介する）を移動可能なピボット軸に従うことを可能にする。

図１５Ａおよび図１５Ｂを参照すると、一実施形態による、脛骨ヒンジ３５の外側コンポーネント３５ｂの詳細図が示されている。同様の構成が脛骨ヒンジ３５の内側コンポーネント３５ａに設けられ得ることが理解されよう。脛骨ヒンジ３５ｂは、外面４３ｂに対向する内面４３ａを有する実質的に平坦な本体を有する脛骨シェル４１を備える。以下でより詳細に説明するように、表面４３ａ、４３ｂは、大腿骨シェル２１の対応する表面とインタフェースし、それに当接するように構成されており、それらと摺動関係を有する。従って、表面４３ａ、４３ｂは、摩擦を低減するために実質的に滑らかである。しかしながら、必要に応じて摩擦を低減または増加させるために、例えば表面テクスチャまたはベアリング要素を介した、表面４３ａ、４３ｂの他の構成も可能であることが理解されよう。脛骨シェル４１は、一定の直径を有する球のセグメントに対応する形状を有し、内面４３ａは実質的に凹状であり、外面４３ｂは実質的に凸状であるが、他の構成も可能であることが理解されよう。大腿骨シェル２１に対する脛骨シェル４１の動きを誘導する誘導要素が設けられている。本実施形態では、誘導要素は、内面４３ａおよび外面４３ｂに開口する開口部に対応しており、それぞれが対応する幅を有し、所定の長さおよび経路に沿って延在している３つの誘導チャネル４５を含む。理解され得るように、誘導要素の長さは、特定の方向の動きを制限するように調整することができる。

上述した脛骨ヒンジの外側コンポーネント３５ｂと係合するための大腿骨ヒンジ１５の外側コンポーネント１５ｂの詳細図が、図１５Ｃおよび図１５Ｄに示されている。大腿骨ヒンジ１５の内側コンポーネント１５ａに対して同様の構成を設けることができることが理解されよう。大腿骨ヒンジ１５ｂは、内側シェル２１ａおよび外側シェル２１ｂを含む、一対の離間したシェル２１を備える。シェル２１ａ、２１ｂは、実質的に平坦な本体を有し、それぞれが互いに面するインタフェース面２３ｃを有する。理解され得るように、各シェル２１ａ、２１ｂのインタフェース面２３ｃは、脛骨シェル４１の対応する内面４３ａまたは外面４３ｂとインタフェースし、それらに当接するように構成されており、それらと滑動関係を有する。従って、各シェル２１ａ、２１ｂのインタフェース面２３ｃは、摩擦を低減するために実質的に滑らかにすることができる。しかしながら、例えば、表面テクスチャまたはベアリング要素を介して、必要に応じて、摩擦を減少または増加させるために、インタフェース面２３ｃの他の構成も可能であることが理解されよう。大腿骨シェル２１ａ、２１ｂは、一定の直径を有する球のセグメントに対応する形状を有する。本実施形態では、内側シェル２１ａのインタフェース面２３ｃは、脛骨シェル４３の内面４３ａの凹面形状を補完するように実質的に凸状であり、外側シェル２１ｂのインタフェース面２３ｃは、脛骨シェルの外面４３ｂの凸面形状を補完するように実質的に凹面である。理解され得るように、大腿骨２１および脛骨４１のシェルは、全て同じ球径を有することができ、それらの球面曲線は互いに平行に配置される。脛骨シェル４１に対する大腿骨シェル２１の動きを誘導するための誘導要素が設けられている。本実施形態では、誘導要素は、内側シェル２１ａの内面２３ａおよびヒンジインタフェース面２３ｃにて開口し、外側シェル２１ｂの外面２３ｂおよびヒンジインタフェース面２３ｃにて開口しているシェル２１ａ、２１ｂのそれぞれに３つの開口部２５を含む。理解され得るように、開口部２５は、脛骨シェル４１の対応する誘導チャネル４５に整列して配置され、ピン等の対応する留め具２７を収容するように寸法決めおよび成形されている。従って、ピン／留め具２７は、大腿骨シェル２１に対して固定することができ、チャネル４５によって誘導しつつ、脛骨シェル４１がそこに対して移動することを可能にする。本実施形態では、図１４および図１４Ａに示すように、ピン／留め具２７は、対応するナット２８を介して固定されている。更に、開口部２５の周りに凹部またはセット２６が設けられており、留め具ヘッド２７および／またはナット２８が表面２３ａ、２３ｂと同一平面を維持することを可能にしている。他の構成も可能であることが理解されよう。

特定の構成の大腿骨シェル２１および脛骨シェル４１が上に示されているが、他の構成も可能であることが理解されよう。例えば、大腿骨シェル２１および脛骨シェル４１の代替的な実施形態が図１６Ａ〜図１６Ｄに示されている。図示の実施形態では、脛骨シェル４１には２つの誘導チャネル４５が設けられている。脛骨シェル４１は、更に、内面４３ａおよび外面４３ｂの両方から延在するピン部材４７を含む。本実施形態では、ピン部材４７は、脛骨セクション５の単一体３１の一部として成形され、内面４３ａおよび外面４３ｂに形成された丸い突起である。ピン部材３７の他の構成も可能である。例えば、ピン部材は、脛骨シェル４１の開口部を貫通する別個の要素であってもよい。大腿骨シェル２１は、脛骨シェル４１と係合するように相補的に構成されている。より具体的には、大腿骨シェル２１ａ、２１ｂはそれぞれ、脛骨シェル４１の対応する誘導チャネル４５に係合するための留め具／ピンを収容するための２つの開口部２５を備える。大腿骨シェル２１ａ、２１ｂは、更に、ピン部材４７を収容し、所定の経路に沿ってそれを誘導するための誘導チャネル４９を備える。本実施形態では、誘導チャネル４９は、シェル２１ａ、２１ｂのインタフェース面２３ｃに開口し、ピン部材４７を収容する深さを有する凹状の溝である。しかしながら、他の構成も可能であることが理解されよう。例えば、誘導チャネル４９は、インタフェース面２３ｃ上並びに内面４３ａおよび外面４３ｂ上にて開口する開口部であり得る。

理解され得るように、装具１の要件に応じて、ピン要素２７、４７、および誘導チャネル２５、４５の異なる組み合わせが可能である。本実施形態では、６自由度に沿ったヒンジの動きを制御するために３つの誘導要素が設けられている。しかしながら、装具１の関節の特定の動きを制限するために、より多くの誘導要素を設けることが可能であることが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態では、４つまたは５つの誘導要素を、４つまたは５つのピンと組み合わせて、４つまたは５つのチャネルの形態で設けることができる。更に、誘導要素は、必要に応じて、大腿骨シェル２１および／または脛骨シェル４１上に配置されたピン２７、４７およびチャネル２５、４５の異なる組み合わせを含み得ることが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態では、全ての誘導要素は、脛骨シェルに成形されたピンおよび大腿骨シェルの対応するチャネルを含むことができるが、他の実施形態では、異なる数の誘導要素が成形ピンを含むこともできる。更に、他のタイプの誘導要素も可能であることが理解されよう。

いくつかの実施形態では、必要に応じて、チャネル２５、４５を補強することができる。例えば、図１７Ａおよび図１７Ｂに示されるように、脛骨シェル４１は、誘導チャネル４５の周りに凹部５１を備えることができる。金属等の剛性材料から製造された補強板５３は、表面４３ｂと同一平面を維持するように、誘導チャネルの周りの凹部５１に配置することができる。本実施形態では、補強板５３は、チャネル４５のサイズおよび形状に対応し、チャネル４５に整列して配置された開口部５５を備える。

シェルの構成は、いくつかの制約を尊重するように設計可能であることが理解されよう。例えば、審美的制約を尊重するために、外側および内側ヒンジは異なる形状を有することができ、脛骨ヒンジの溝は、最大限に被覆されるように構成可能である。同様に、機能的制約を尊重するために、ヒンジとカフとの間の接続はカフの幅を尊重することができ、脛骨シェルの溝間に十分なスペースを確保することで、脛骨シェルの堅牢性を確保し、ヒンジのサイズを最小化して負担を避けることができる。

理解され得るように、内側ヒンジ７および外側ヒンジ９と、対応するシェル２１、４１との形状、並びに誘導要素の構成（誘導チャネル２５、４５の形状および位置を含む）は、装着者の自然な膝の動きにぴったりと適合するよう関節運動させるために、膝装具１を制約するように選択することができる。ヒンジ形状の例示的な実施形態を図１８に示す。図示の実施形態では、内側ヒンジ７のシェル２１、４１は、第１の直径を有する球の弧として成形されており、外側ヒンジ９のシェル２１、４１は、第２の直径を有する球の弧として成形されている。第１および第２の直径は、ヒンジ７、９のそれぞれが異なる幾何学的中心５７、５９を有するように異なる。更に、理解され得るように、幾何学的中心５７、５９は、互いに独立して３Ｄ空間にて変位するであろう。本実施形態では、ヒンジ７、９は、内側ヒンジ７の幾何学的中心５７および外側ヒンジ９の幾何学的中心５９が、装具１の完全なる関節運動全体を通じて互いに一致しないように構成される。換言すると、装具１の屈曲および伸長中のどの時点でも、幾何学的中心５７および５９は３Ｄ空間にてオーバーラップしない。より具体的には、本実施形態では、装具１の完全なる関節運動全体にわたって、幾何学的中心５７および５９は、更に、共通の矢状面と一致しないが、共通の横断面６５および／または前頭面６７と交差することができる。例えば、正面から見ると（即ち、図１８に示されるように）、中心５７および５９は共通の線６１に沿った異なる点で交差しているように見えるが、装具６１の完全なる関節運動にわたって前記線６１に沿った単一の点では一致しない。

理解され得るように、装具関節のピボット軸は、幾何学的中心５７、５９ｎの間に引かれた線６１に対応することができる。換言すると、ヒンジ７、９は、幾何学的中心５７、５９が共通のピボット軸６１と一致するように構成される。理解され得るように、ヒンジ７、９が伸長位置と屈曲位置との間で関節運動すると、幾何学的中心５７、５９は変位し、ピボット軸６１も同様に移動する。しかしながら、ピボット軸６１の動きが、例えば、横断面６５、正頭面６７、および矢状面６９を通る６自由度にわたって所定の経路に従うように、ヒンジ７、９の動きは、シェル２１、４１を介して、それらのピボットの周りを移動するように制約することができる。図１９に示すように、ヒンジ７、９は、共通のピボット軸６１が装着者の膝の動きの非対称的な螺旋軸に対応するように構成可能であり、ピボット軸６１の各末端６１ａ、６１ｂは、例えば、６自由度を介して、３Ｄ空間における異なる独立した円弧状の経路に従う。このようにして、ピボット軸は、装着者の膝の瞬間的な運動軸に従うように構成可能である。理解され得るように、ピボット軸６１の中心６３は、例えば、幾何学的中心５７、５９の間の中点にて定義することができ、またヒンジ７、９は、ヒンジ７、９の動きが装着者の膝の内側外側変位を誘導するよう、中心６３が矢状面６９内の所定の範囲７０内にて動くよう制約されるように構成することが可能である。

更に、理解され得るように、図２２に示すように、ヒンジ７、９およびそれらの対応するピボットは、ピボット軸６１が装着者の膝の完全なる関節運動にわたって内側顆および外側顆を貫通するように構成することができる。例えば、内側ヒンジ７は、完全な膝伸長時に内側顆に整列するように配置することができ、外側ヒンジ９は、完全な膝伸長時に外側顆に整列するように配置することができ、ヒンジ７、９は、それらが屈曲および後続する伸長（即ち、完全な関節運動）を通じて、それぞれの顆と整列した状態を維持するように、膝の螺旋状の運動軸に追従するピボット軸６１を有するように構成することができる。例えば、ピボット軸６１は、装着者の膝の大腿骨上顆軸に対応するように構成することができる。上述したように、ヒンジ７、９はそれぞれ、各々のピボットの周りで互いに独立して動くように構成することができる。従って、各ヒンジ７、９は、それぞれの顆の動きに別々に追従するように構成することができる。図４に示すように、内側ヒンジ７は、それが第１の弓状経路を介してその対応する内側の解剖学的関節（内側顆）に従うことを可能にする第１のピボットを有するように構成することができ、また、外側ヒンジ９は、それが第１の弓状経路とは異なる第２の弓状経路を介してその対応する外側の解剖学的関節（外側顆）に従うことを可能にする第２のピボットを有するように構成することができる。装具１のピボット軸が装着者の膝の螺旋状の運動軸と同期するように、内側ヒンジ７および外側ヒンジ９の動きは、装着者の内側および外側顆の動きと同期させることが可能である。

理解され得るように、膝の螺旋状の回転軸を使用して、シェル内の誘導チャネルの形状を決定して、自然な膝の動きに対応するピボット軸６１を定義することができる。図２０Ａおよび図２０Ｂを参照すると、本実施形態では、内側および外側脛骨ヒンジのシェル２１に対して固定された対応するピンを誘導する３つの誘導チャネル４５に対応する３つの誘導要素が、内側および外側大腿骨ヒンジのシェル４１にわたって配置されている。誘導要素は、その中心がピボット軸６１の末端６１ａ、６１ｂに対応可能な三角形７１を形成する。この構成では、３つの誘導要素によって形成される三角形７１の結果として生じる移動は、ピボット軸６１の各末端６１ａ、６１ｂの変位に対応する。このようにして、三角形７１の所望の変位を予め決定することができ、三角形の頂点の変位を使用して、内側および外側脛骨ヒンジにおける溝を画定することができる。理解され得るように、内側ヒンジ７は、装着者の膝の螺旋状の回転軸の内側端の経路に従う三角形７１の変位に基づいて構成することができる。同様に、外側ヒンジ９は、装着者の膝の螺旋状の回転軸の外側端の経路に従う三角形７１の変位に基づいて構成することができる。このように、内側ヒンジは、装着者の膝の螺旋状の回転軸の内側端に対応する第１のピボットの周りを移動するように構成される一方で、外側ヒンジは、装着者の膝の螺旋状の回転軸の外側端に対応する第２のピボットの周りを移動するように構成される。

誘導要素によって形成される三角形の初期構成は、次の要素、即ち、互いに交差しない溝をトレースすることと、可能な限り最小のサイズのシェルを取得しながら、ピンへの制約の集中を回避するために、可能な限り最大のサイズの三角形を取得することと、移動中のヒンジの閉塞を避けることと、溝の湾曲を減少させて、溝内のピンの流体移動を確実にし、溝内のピンの閉塞を回避することとを考慮しながら確立することができる。例えば、図２１を参照すると、誘導要素は、完全に伸長したピボット軸の初期位置にて（即ち、屈曲の開始時に）、誘導要素の初期方向の接線によって形成される角度が、三角形の中心を基準にして、可能な限り９０°に近付くように構成することができる。これは、膝の運動中にヒンジが閉塞するのを防ぐのに役立つ。

上述したヒンジの構成に加えて、装具１は、健康なおよび／または自然な膝の動きを更に誘導するのを助けるために、装着者の脚を再調整するのを支援するように構成可能であることが理解されよう。本実施形態では、図２３を参照すると、大腿骨セクション３および脛骨セクション５は、前頭面において大腿骨（即ち、大腿）に対する装着者の脛骨（即ち、脛）の整列を変更するために、装着者の脚に沿った戦略的エリアまたは領域に力を印加するように構成されている。このようにして、装着者の脚の整列は、健康的な整列に対応するように矯正することができ、および／または、整列を調整して、例えば、装着者の膝の摩耗領域を解放する（即ち、接触点をより摩耗の少ないエリアに移動する、および／または、装着者の膝に力を再分配する）ことができる。いくつかの実施形態では、以下でより詳細に説明するように、装具１は、内側にシフトした脛骨大腿骨接触点が、屈曲および伸長を通して健康な患者の接触点に対応するよう外側に変位されるように、変形性関節症患者の脚を再調整するよう構成することができる。

本実施形態では、図２３に示すように、大腿骨セクション３は、装着者の大腿に関して２つの領域の力、即ち、大腿骨セクション３の近位領域上の第１の領域の力７３ａと、例えば、ヒンジに近接した大腿骨セクション３の遠位領域上の第２の領域の力７３ｂとを印加するように構成されている。同様に、脛骨セクション５は、装着者の脛に関して２つの領域の力、即ち、脛骨セクション５の近位領域上の第１の領域の力７５ａと、脛骨セクションの遠位領域上の第２の領域の力７５ｂとを印加するように構成されている。理解され得るように、これらの領域の力は、装着者の脚の所望の領域に圧力を加えるように、カフ１３、２３、支持部材１７、２７および／またはヒンジ７、９を成形することによって、および／または、装着者の脚の運動中にその変形を防止または許可するように、所定の領域におけるカフ１３、２３、支持部材１７、２７および／またはヒンジ７、９の剛性を増加または減少させることによって、印加することができる。更に、理解され得るように、圧力／力の領域の数および場所は、装着者の脚がどれ程再調整を必要としているかに応じて異なり得る。例えば、本実施形態では、力７３ａおよび７５ｂは、装着者の脚の外側に印加されている一方、力７３ｂおよび７５ａは、装着者の脚の内側に印加されているが、力を印加する位置は逆でもよいことが理解されよう。同様に、本実施形態では、力７３ｂおよび７５ａは、例えば支持部材１７ａ、１７ｂを介して、ヒンジ７、９に隣接する領域に印加される。この構成では、力は装着者の顆に印加されるのではなく、装着者の脛骨および大腿骨の近位／遠位領域に印加される。

他の実施形態では、異なる領域に力を加えることで、例えば、矢状面および／または横断面において脚を再調整することができることが理解されよう。更に、理解され得るように、印加される力の領域の位置は、装具設計に潜在し得る。例えば、装具は、装着者の脚の実際の整列ではなく、装着者の脚の所望の整列および対応するその動きに適合するように設計することができる。このように、装具を着用すると、装具の剛性により、自然に装着者の脚が設計どおりに再調整して動くようになる。

更に、より多くのまたはより少ない圧力／力の適用領域が提供され得ることが理解されよう。例えば、本実施形態では合計４つの領域の力が印加されているが、他の実施形態では、装着者の脚の再整列を促進するために３つの領域の力が印加され得る。例えば、必要な再調整に応じて、力７３ｂ、７５ａを単一の力としてヒンジ７または９を介して装着者の顆のうちの１つに印加することができ、力７３ａおよび７５ｂはそれに対する対向力として働くことで、３ポイントレバレッジシステム（three-point leverage system）を定義する。理解され得るように、これは、装着者の脛骨および大腿骨の整列角度を矯正／調整して、例えば、脛骨に対する大腿骨の角度を調整することによって、患者の膝の負荷を軽減する（即ち、関節の片側から別の側に力を再分配する）のに役立ち得る。この方法により大腿骨および脛骨を再調整することにより、膝の外反変形および内反変形を矯正するのに役立つ。例えば、外反変形の場合、力７３ｂ、７５ａは内側ヒンジ７を介して装着者の内側顆に印加され、反力７３ａおよび７５ｂは装着者の大腿骨および脛骨の外側に印加される。同様に、内反変形の場合、力７３ｂ、７５ａは外側ヒンジ９を介して装着者の外側顆に印加され、反力７３ａおよび７５ｂは装着者の大腿骨および脛骨の内側に印加される。

いくつかの実施形態では、圧力／力の適用領域は、例えば変形性関節症患者において、脛骨に対する大腿骨のメディアリゼーションを矯正するように構成することができる。図２８に概略的に示されているように、変形性関節症患者（外反変形および内反変形の両方）において、患者の大腿骨が脛骨でメディアリゼーションする（即ち、内側方向に移動する）故、図１１に示すように、屈曲および伸長を通じて脛骨大腿骨接触点に内側シフトが生じる。装具１は、メディアリゼーションを矯正し、変形性関節症患者の脛骨大腿骨接触点を、変形性関節症のない元の状態に近付けるために、大腿骨に外側への移動を適用することによってこれを矯正するように設計可能である。理解され得るように、特定の領域に力および反力を印加することにより、膝の負荷を低減する、および／または内反変形／外反変形を矯正するように、大腿骨に対する脛骨の角度を調整することに加えて、脛骨に対する大腿骨の並進を適用することができる。

図２８Ａを参照すると、メディアリゼーションおよび外反変形を矯正するための一実施形態による、力の印加の例示的な構成が示されている。図示の実施形態では、第１の領域の力７３ａは、例えば大腿骨カフを介して、大腿骨セクション３の近位領域を介して装着者の大腿骨の外側に印加される。第２の領域の力７３ｂは、例えば内側支持部材を介して、大腿骨セクション３の内側を介して装着者の大腿骨の内側に沿って印加される。第３の領域の力７５ｂは、例えば脛骨カフを介して、脛骨セクション５の遠位領域を介して装着者の脛骨の外側に印加される。理解され得るように、この力の構成は、大腿骨の外側への移動を適用してメディアリゼーションを矯正することができる一方、脛骨に対する大腿骨の角度を調整して外反変形を矯正し、膝の負荷を低減することができる。この構成において、力７３ｂおよび７５ｂは反外反力として作用する一方、力７３ａは反力として作用する。理解され得るように、力７３ｂは、力７３ａ、７５ｂよりも大きくなるように構成することができ、装着者の脚に沿ってより長い領域にわたって延在するように構成することも可能である。例えば、力７３ａおよび７５ｂは大腿骨および脛骨のカフに制限できるが、力７３ｂは内側支持部材のより長い領域に沿って延在し、内側ヒンジ７を介して装着者の内側顆に力を印加するよう更に延在させてもよい。

図２８Ｂを参照すると、メディアリゼーションおよび内反変形を矯正するための一実施形態による、力の印加の例示的な構成が示されている。図示の実施形態では、第１の領域の力７３ａは、例えば、大腿骨カフを介して、大腿骨セクション３の近位領域を介して装着者の大腿骨の外側に印加される。第２の領域の力７３ｂは、例えば、内側支持部材を介して、大腿骨セクション３の内側を介して装着者の大腿骨の内側に沿って印加される。第３の領域の力７５ｂは、脛骨セクション５を介して装着者の脛骨の外側に印加される。理解され得るように、この力の構成は、内反変形を矯正し、膝への負荷を軽減するように、脛骨に対する大腿骨の角度を調整しつつ、メディアリゼーションを矯正するように、大腿骨の外側への移動を適用することができる。この構成では、力７３ｂは反外反力として作用し、力７５ｂは反内反力として作用し、力７３ａは反力として作用する。理解され得るように、力７３ｂは、力７３ａよりも大きくなるように構成することができ、装着者の脚に沿ってより長い領域にわたって延在するように構成することも可能である。例えば、力７３ａは大腿骨カフに制限され得るが、力７３ｂは、内側支持部材のより長い領域に沿って延在してもよく、内側ヒンジ７を介して装着者の内側顆に力を印加するよう更に延在してもよい。更に、理解され得るように、力７５ｂは力７３ｂよりも大きくなるように構成することができ、装着者の脚に沿ってより長い領域にわたって延在するように構成することも可能である。例えば、力７５ｂは、外側支持部材に沿って延在するように構成することができ、脛骨カフを介して力を印加するように更に延在させてもよい。いくつかの実施形態では、力７５ｂは、外側ヒンジ９を介して装着者の外側顆に力を印加するように、更に延在させてもよい。

上述したように、膝装具は、装着者の特定の解剖学的構造に適合するように調整することができる。より具体的には、大腿骨および脛骨セクションの形状および輪郭は、装着者の脚の実際の表面輪郭に適合するように構成可能である。同様に、上述したように、所望の螺旋状の回転軸に従って、装具が膝を自然かつ健康的な方法で動かすよう誘導するように、ヒンジは装着者の脚の特定の解剖学的構造に応じて構成可能である。

図２６を参照すると、オーダーメイドの膝装具製造のための例示的なプロセスが示されている。大まかに説明すると、このプロセスは、ａ）装着者の脚をスキャンして、その３Ｄモデルを取得するステップと、ｂ）３Ｄモデルを使用してオーダーメイドの膝装具をモデル化するステップと、ｃ）オーダーメイドの膝装具の個々のコンポーネントを製造するステップと、ｄ）個々のコンポーネントを組み立てて、完成した膝装具を形成するステップと、を含む。

より詳細には、装着者の脚をスキャンするステップは、既知のイメージング／スキャン技術を使用して、装着者の脚の形状の３Ｄモデルを取得することにより達成可能である。例えば、スキャナを使用して装着者の脚をデジタル化することができる。デジタル化の間、柔らかい構造を含むように、装着者の脚を伸縮性のある生地から製造したチューブで被覆してもよい。３Ｄモデルを生成する際に、膝装具の配置および設計を支援するために、その上に目印を特定することができる。例えば、図２７Ａ〜図２７Ｄに示すように、目印には、特に、大内転筋の小結節７９ａ、外脛骨プラトーの中央７９ｂ、大腿の上部の半分７９ｃ、ふくらはぎの筋肉の頂点における脚の半分７９ｄ、脛骨粗面７９ｅ、前内側脛骨プラトー７９ｆ、前外側脛骨プラトー７９ｇ、大腿の上部の半分７９ｈ、大腿骨の遠位部分における大腿の下部の半分かつ膝蓋骨よりも上７９ｉ、ふくらはぎの筋肉の頂点における脚の半分７９ｊ、膝窩の中央７９ｋ、大腿の上部の半分７９ｌ、および、ふくらはぎの筋肉の頂点における脚の半分７９ｍを含めることができる。理解され得るように、これらの目印は、イメージング／スキャンの前に装着者の脚にマーカーを配置することによって（例えば、伸縮可能なチューブにマーカーを配置することによって）位置付けることができ、および／または３Ｄモデルを取得した後に実質的に配置することができる。

オーダーメイドの膝装具をモデル化するステップには、いくつかのサブステップを含めることができる。例えば、一実施形態では、第１のサブステップは、装着者の脚の生成された３Ｄモデルをインポートするステップと、上述したように、例えば、健康で自然な膝の整列に対応するように、および／または膝の力を解放または再分配するように、前頭面における装着者の大腿および脛の整列を実質的に調整するステップとを含み得る。理解され得るように、整列は患者のニーズに応じて調整可能であり、最終的に装具を介して力の領域が装着者の脚にどのように印加されるかを決定する。例えば、変形性関節症でない患者においては、３Ｄモデルを調整して、脛骨に対する大腿骨の角度を調整し、外反／内反変形を矯正することができる。変形性関節症の患者においては、３Ｄモデルを調整して、大腿骨を外側に変位／移動させて、脛骨に対する大腿骨のメディアリゼーションを矯正することができる。更に、３Ｄモデルを調整して、脛骨に対する大腿骨の角度を調整して、外反／内反変形を矯正することができる。一旦調整されると、再調整された３Ｄモデルを使用して、ヒンジおよびカフを設計および配置することができる。

図２５Ａに示されるように、第２のサブステップは、３Ｄモデルを使用して、内側ヒンジ７および外側ヒンジ９を３Ｄモデル上のそれらの対応する内側および外側顆に実質的に配置するステップを含むことができる。ヒンジの配置は、例えば、膝のデジタル化中に識別された目印を使用して支援することができる。いくつかの実施形態では、ヒンジの内面は、ヒンジが配置されている場所における装着者の脚の外形に適合するように調整することができる。更に、内側ヒンジ７および外側ヒンジ９並びにそれらに対応するシェルのサイズは、装着者の内側および外側顆のサイズに対応するように選択することができる。

次に、図２５Ｂに示すように、第３のサブステップは、大腿骨カフ１３および脛骨カフ３３を装着者の大腿および脛の外面に実質的にモデル化するステップを含み得る。カフ１３、３３およびそこから延在する支持部材は、例えば、装着者の皮膚上に存在する何らかの変形を含む、装着者の脚の外面に適合するように成形することができる。しかしながら、カフおよび／または支持部材の他のパラメータ、例えば、カフの厚さ、剛性構造の位置または形状（カフ／支持部材上の補強具またはリブの位置または形状等、および／または、カフ／支持部材上の開口部の数、形状および／または位置）、ストラップの数および位置も調整可能であることが理解されよう。理解され得るように、カフのモデリングおよび／またはその調整は、専用ソフトウェアを使用して達成することができる。

次に、図２５Ｃに示すように、第４のサブステップには、カフをそれぞれのヒンジと一体化するステップを含めることができる。このステップでは、大腿骨カフおよび大腿骨ヒンジを単一片、即ち、大腿骨セクション３として形成することができる。同様に、脛骨カフおよび脛骨ヒンジを単一片、即ち、脛骨セクション５として形成することができる。この２つの片は互いに連結することができ、例えば、片３、５のそれぞれについて、ＳＴＬまたはＳＴＰ形式で３Ｄモデルを生成することができる。これは、例えば、専用のソフトウェアを使用して実現可能である。

装具をモデル化した後、その個々のコンポーネントを製造することができる。理解され得るように、大腿骨セクション３および脛骨セクション５の３Ｄモデルは、３Ｄプリント等の付加製造技術を使用して製造することができる。製造は、例えば歩行中の柔らかい構造の変形等、運動中に装着者の手足に順応するように、適切な弾性および剛性特性を可能にする任意の適切な材料を使用して実現することができる。例えば、片はプラスチックから製造することができる。装着者の好みに応じて、様々な色を片に適用することができる。本実施形態では、大腿骨セクション３および脛骨セクション５は単一片として製造されているが、いくつかの実施形態では、大腿骨セクションおよび／または脛骨セクション５の異なるコンポーネントを別々に製造し、その後組み立てることも可能である。例えば、大腿骨セクション３および／または脛骨セクション５のヒンジは、カフとは別の第１の剛性材料から製造することができる。カフを個別に製造し、例えば留め具、接着剤、溶接／融合等を介してヒンジに組み付けることが可能である。

最後に、装具の片が製造された後、それらを組み立てることができる。理解され得るように、一旦、製造された大腿骨３および脛骨５の片が受け取られると、図２５Ｄおよび図２４に示すように、それらを精製し（必要な場合）、固定し、追加のコンポーネントを設けて、完成した装具１を形成することができる。より具体的には、脛骨および／または大腿骨ヒンジの溝および／または表面を研磨して、ピンおよび／または当接表面の滑らかな滑動を可能にすることができる。本実施形態では、ヒンジは、大腿骨ヒンジのシェルの間に脛骨ヒンジのシェルを挿入することによって組み立てることができ、ピンは、大腿骨ヒンジに挿入して、脛骨ヒンジのそれぞれの溝を通過させることができる。次に、ピンを対向端にねじ込んでナットで固定することで、溝内を容易にスライドさせることが可能となる。しかしながら、他の実施形態で使用される誘導機構に応じて、他の組立てステップが適用可能であることが理解されよう。いくつかの実施形態では、バックルおよびストラップ７７を追加し（例えば、大腿骨セクションおよび／または脛骨セクションにて事前定義された特定の領域に固定し）、患者の大腿および脛のサイズを参照して調整することができる。最後に、クッション付きライナーを大腿骨セクション３および／または脛骨セクション５の内面に追加して、装具１の製造を完了させることができる。

要約すると、本開示では、膝の動きの測定は画像化によって達成される。膝の動きは３つの平面を参照して表され、６自由度で考慮される。関節は、実質的に解剖学的目印に従って配置され、他の装具部品がそれに接続されて、例えば硬膏材料に頼ることなく、付加製造技術によって単一の一体型コンポーネントを形成する。

説明される実施形態では、膝の骨は適切な軸に留まる。上述したように、膝の動きは螺旋軸を定義し、その膝の動きは内側大腿顆と外側大腿顆との間で異なる。従って、装具の実施形態は、軸方向回転システムを用いて、即ち、矢状面に加えて実施することができる。装具は、外部の軟骨に比べて内部の軟骨の長期間の摩耗を考慮に入れることができる。これにより、装具による並進を生成することができ、また、内側顆をクリアにすることができる。

記載された実施形態において、力の適用領域は４つあり、前頭面に関して下肢セグメントを再調整するために、脛骨上に２つの領域および大腿骨上に２つの領域が存在する。脛骨の並進および回転により、前頭面における関節の修正を可能にすることで、変形性膝関節症に対処することができる。このようにして、脛骨の矯正的な並進を達成することができる。

装具は１つのユニットとして組み立てることができるが、装具の３つの弓形の溝に係合する３つの真鍮ねじを含むことができる。膝の動きの３次元測定を達成することにより、装具関節における通常の膝の動きの瞬間的な軸の表現を取得することができる。２つの大腿骨顆は、脛骨プラトーに当接するようになり、サイズ、形状、および機能が異なる。従って、２つの顆における膝の動きの違いを考慮する必要がある場合がある。屈曲および伸長、外転および内転、並びに、内部および外部の回転が実現される。

本明細書に記載の装具の実施形態は、膝の屈曲および伸長時の大腿骨のロールバック（内側顆に関する外側顆の摺動運動）と、スクリューホーム（内側顆の周りの外側顆の旋回作用）メカニズムとによって特徴付けることができ、これらは、２つの大腿顆の非対称性によって可能となる。装具は凹面を有しており、従来技術における装具において使用されているコネクタ機構が不要になる。

いくつかの実施形態では、下肢の再配置は、主に前頭面（内反膝／外反膝状態）および矢状面（屈曲変形膝／前反膝状態）における、大腿に対する脚の不整列を矯正するために達成可能である。何故なら、この不整列がしばしば膝関節の特定の部分に対する過度の摩耗、および／または、空間内の動きおよび２つのセグメント間の力の伝達に関して非効率的な機能にリンクするからである。本明細書に記載される装具の実施形態は、カスタムメイドのソフトウェアおよび解剖学的目印を介して、これらのセグメントを実質的に再配置することを可能にすることができる。この再配置は、先行技術のプラスター技術よりも実質的に侵襲性が低く、費用がかからない可能性がある。

いくつかの実施形態では、機構の配置は、解剖学的目印の間の幾何学的関係によって可能にすることができ、これにより、大腿に対して脛を再調整するだけでなく、装具の内側関節および外側関節が中央に配置されている膝の内側および外側顆の位置を定義することもできる。続いて、装具関節の配置は、膝の回転軸経路の配置の決定を可能にすることができる。これは、装具をモデル化するソフトウェアによって自動的に行うことができるため、製造方法の信頼性が向上し、膝の動きの正常化が提供される。

いくつかの実施形態では、この包含は、装具と装着者の体表面との間の接触領域を含むことができ、脛骨カフおよび大腿骨カフからなることができる。カスタムメイドのソフトウェアは、下肢のデジタルシェイプ上でカフを実質的にスライドさせることにより、カフを定義および配置することができる。これにより、カフの個別化された形状が可能となり、個々の特徴（輪郭、隆起、皮膚表面の不一致等）が考慮される。カフのデザインが完成すると、上記のソフトウェアにより関節に自動的にリンクされる。このステップは、装具のカフまたはフレームとその関節との間の力の伝達を決定することができる。

いくつかの実施形態では、２つのカフコンポーネント（脛骨および大腿骨）を、製造のために付加製造サービスの供給業者に送ることができる。これらを受け取ると、関節のレベルでコンポーネントを組み立てることができ、仕上げのステップ、即ち、バックル、ストラップ、およびクッション付きライナーの追加等が完了する。

Claims (33)

1. 膝装具であって、
   −装着者の大腿骨に対して係合するための大腿骨セクションと、
   −装着者の脛骨に対して係合するための脛骨セクションと、
   −装着者の膝に対して前記大腿骨および脛骨セクションを内側にて枢動可能に係合する内側ヒンジであって、第１の直径および前記内側ヒンジが関節運動するときに変位する第１の幾何学的中心を有する球形の弧に対応する形状を有する重ね合わせシェルを含む内側ヒンジと、
   −装着者の膝に対して前記大腿骨および脛骨セクションを外側にて枢動可能に係合する外側ヒンジであって、第２の直径および前記外側ヒンジが関節運動するときに変位する第２の幾何学的中心であって、前記第１の幾何学的中心から独立して変位する第２の幾何学的中心を有する球形の弧に対応する形状を有する重ね合わせ球形シェルを含む外側ヒンジと、
   を含み、
   前記第１の直径が前記第２の直径とは異なり、前記第１および第２の幾何学的中心が、前記内側および外側ヒンジの周りの膝装具の完全な関節運動全体にわたって、共通の矢状面に沿って互いに一致しない、膝装具。
2. 前記第１および第２の幾何学的中心は、前記内側および外側ヒンジの周りの膝装具の完全な関節運動全体にわたって矢状面に制約される中心を有する共通のピボット軸と一致する、請求項１に記載の膝装具。
3. 前記ピボット軸が、装着者の膝の大腿骨上顆軸に対応する、請求項２に記載の膝装具。
4. 前記ピボット軸が、装着者の膝の非対称的な螺旋状回転軸に対応する、請求項２または３に記載の膝装具。
5. 前記ピボット軸は、前記膝装具が関節運動するときに動くように構成され、前記ピボット軸は、装着者の膝の瞬間的な運動軸に追従するように非対称に動く第１および第２の末端を有する、請求項４に記載の膝装具。
6. 前記内側ヒンジは、装着者の膝の螺旋状回転軸の内側端に対応する第１のピボットの周りを動くように構成され、更に、前記外側ヒンジは、装着者の膝の螺旋状の回転軸の外側端に対応する第２のピボットの周りを動くように構成されている、請求項４または５に記載の膝装具。
7. 前記第１および第２のピボットは、前記膝装具が前記内側および外側ヒンジの周りを関節運動するときに、矢状面、前頭面および横断面において動くように構成されている、請求項６に記載の膝装具。
8. 前記第１および第２のピボットは、前記膝装具が前記内側および外側ヒンジの周りで関節運動するときに、それぞれの弓状経路に沿って動くように構成されている、請求項６または７に記載の膝装具。
9. 前記膝装具が前記内側および外側ヒンジの周りで関節運動するとき、前記第１および第２のピボットのうちの第１のピボットは、凸状の弓状経路に沿って動くように構成され、前記第１および第２のピボットのうちの第２のピボットは、凹状の弓状経路に沿って動くように構成されている、請求項８に記載の膝装具。
10. 前記内側および外側ヒンジを中心とした前記膝装具の完全な関節運動全体を通して、前記第１のピボットは、装着者の内側顆の回転軸に追従するように構成され、前記第２のピボットは、装着者の外側顆の回転軸に追従するように構成されている、請求項６〜９のいずれか一項に記載の膝装具。
11. 前記内側および外側ヒンジを中心とした前記膝装具の完全な関節運動全体にわたって、前記内側ヒンジは、装着者の内側顆に整列するように構成され、前記外側ヒンジは、装着者の外側顆に整列するように構成されている、請求項１〜１０のいずれか一項に記載の膝装具。
12. 前記内側および外側ヒンジのシェルのうち少なくとも１つが、対応するピンと係合し、所定の経路に沿って前記ピンを誘導するように成形された溝を含む、請求項１〜１１のいずれか一項に記載の膝装具。
13. 前記内側および外側ヒンジのシェルが、少なくとも３つの対応するピンと係合し、その動きを誘導するように成形された少なくとも３つの溝を含み、前記少なくとも３つのピンが、装具関節のピボット軸の末端に対応するピボットを定義する中心を有する幾何学的構成で配置されている、請求項１２に記載の膝装具。
14. 前記溝は、前記ピンが前記溝内のそれらの所定の経路に沿って移動するときに、弓状経路に沿って前記幾何学的構成の中心の変位を引き起こすように構成されている、請求項１３に記載の膝装具。
15. 前記大腿骨セクションは、装着者の大腿の特定の解剖学的構造に適合するように寸法決めおよび成形された大腿骨カフを含み、前記脛骨セクションは、装着者の脛の特定の解剖学的構造に適合するように寸法決めおよび成形された脛骨カフを含む、請求項１〜１４のいずれか一項に記載の膝装具。
16. 前記内側および外側ヒンジのそれぞれの重ね合わせシェルが、前記大腿骨カフに対して固定された大腿骨シェルと、前記脛骨カフに固定された脛骨シェルとを含む、請求項１５に記載の膝装具。
17. 前記大腿骨カフおよび前記大腿骨シェルは単一片の一部として一体的に形成され、前記脛骨カフおよび前記脛骨シェルは単一片として一体的に形成されている、請求項１６に記載の膝装具。
18. 前記大腿骨シェルは、前記脛骨シェルに対して固定された少なくとも１つの対応するピンを誘導するためにその中に形成された少なくとも１つの溝を含み、前記脛骨シェルは、前記大腿骨シェルに対して固定された少なくとも１つの対応するピンを誘導するためにその中に形成された少なくとも１つの溝を含む、請求項１６〜１７のいずれか一項に記載の膝装具。
19. 少なくとも１つのピンが前記大腿骨シェルまたは前記脛骨シェルの一部として一体的に形成されている、請求項１６〜１８のいずれか一項に記載の膝装具。
20. 前記少なくとも１つのピンが、前記大腿骨シェルまたは前記脛骨シェルの内面から延在している、請求項１９に記載の膝装具。
21. 前記大腿骨シェルおよび前記脛骨シェルのうち少なくとも一方が、互いに間隔を置いて配置された一対のシェルを含み、更に、少なくとも１つのピンが前記一対のシェル間を延在し、かつ、それに対して固定されている、請求項１６〜２０のいずれか一項に記載の膝装具。
22. 前記溝は、前記内側および外側ヒンジのシェルの外側および内側にて開口する開口部を含む、請求項１２〜１４および１８のいずれか一項に記載の膝装具。
23. 前記シェルは、装着者の顆のサイズおよび／または形状に適合するように寸法決めおよび／または成形されている、請求項１〜２２のいずれか一項に記載の膝装具。
24. 前頭面において装着者の大腿および脛を再調整するように、前記大腿骨セクションは、装着者の大腿に２つまたは３つの領域の力を印加するように構成され、前記脛骨セクションは、装着者の脛に２つまたは３つの領域の力を印加するように構成されている、請求項１〜２３のいずれか一項に記載の膝装具。
25. 前記大腿骨および脛骨セクションがそれぞれ、装着者の脚の外側に第１の領域の力を印加し、装着者の脚の内側に第２の領域の力を印加するように構成されている、請求項２４に記載の膝装具。
26. 前記大腿骨および脛骨セクションがそれぞれ、前記大腿骨または脛骨セクションのうち近位セクションを介して第１の領域の力を印加し、前記大腿骨または脛骨セクションのうち遠位セクションを介して第２の領域の力を印加するように構成されている、請求項２４または２５に記載の膝装具。
27. 前記大腿骨および脛骨セクションは、前記装具の関節運動全体にわたって前記脛骨に対する装着者の大腿骨の外側への並進を促進するように力を印加することで、メディアリゼーションを矯正するように構成されている、請求項１〜２６のいずれか一項に記載の膝装具。
28. 前記大腿骨および脛骨セクションは、前記装具の関節運動全体にわたって前記脛骨に対する大腿骨の角度を調整するように力を印加することで、外反または内反変形を矯正するように構成されている、請求項１〜２７のいずれか一項に記載の膝装具。
29. 前記大腿骨および脛骨カフがそれぞれ、装着者の脚の内側および外側に沿って延在する内側および外側支持部材を含む、請求項１５〜２８のいずれか一項に記載の膝装具。
30. 前記内側および外側支持部材は、前記外側支持部材の所定の領域における剛性を増加または減少させるための剛性構造を備える、請求項２９に記載の膝装具。
31. 前記大腿骨および脛骨セクションの内側脚接触面に取り外し可能に固定されたクッション付きライナーを更に含む、請求項１〜３０のいずれか一項に記載の膝装具。
32. 前記内側および外側ヒンジは、装着者の膝の過伸展を防止するように前記膝装具の完全な関節運動を制限するよう構成されている、請求項１〜３１のいずれか一項に記載の膝装具。
33. 前記内側および外側ヒンジは、装着者の膝の自然な完全なる伸長に対して少なくとも１０°だけ前記膝装具の伸展を制限するよう構成されている、請求項３２に記載の膝装具。

Images