しかしながら、特許文献1〜3に記載に記載の発明は、エンジンから排出された排ガスをDOCに供給するための排ガス管を流れる際の排ガスの放熱損失を補填するものではない。すなわち、特許文献1に記載の発明は、上述した排ガス管を流れる排ガスの放熱損失を補填することを課題とするような発明ではない。特許文献2に記載の発明は、排ガス管が長い場合にはその分だけ排ガスの放熱損失が大きくなることを考慮して、排ガスの放熱損失を抑制するために排ガス管が短い構成になっている。例えば、第1酸化触媒装置と第2酸化触媒装置とを直接的に突き合わせて接続したり、エンジンの近くに、流路切換弁、第1酸化触媒装置、第2酸化触媒装置及びDPFを配置したりしている。特許文献3に記載の発明は、排ガスの放熱損失を抑制するために排ガス管が短い構成になっている。このように特許文献2及び3に記載の発明は、排ガス管の長さを短くする発明であり、排ガス管を流れる際の排ガスの放熱による温度低下を解消するものではない。
このため、特許文献1〜3に記載に記載の発明は、DOCに包含される酸化触媒が活性化するような温度になるように、エンジンから排出される排ガスの温度を調整していても、排ガス管を流れる際の排ガスの放熱による温度低下によって、DOCに供給される排ガスの温度が、DOCに包含される酸化触媒の活性温度未満になるような、DPFの再生機能を発揮できない運転領域が広くなる虞がある。換言すると、DPFの再生機能を発揮できる運転領域が狭くなる虞がある。
なお、特許文献2及び3に記載の発明は、上述したように排ガス管の長さを短くする必要があるので、DOCやDPFのレイアウト性に欠けるという問題がある。特許文献2に記載の発明は、エンジンの沿うように第1酸化触媒装置、第2酸化触媒装置及びDPFを配置することを必要とし、また、特許文献3に記載の発明は、エンジンを収納するエンジンルームの内部にDPFを配置することを必要とするが、例えば荷役車両(フォークリフト等)のある種の車両は、エンジンルームの内部に十分なスペースがなく、エンジンルームの内部にDOCやDPFを配置することができない虞がある。
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、排ガス管を流れる排ガスの放熱損失を補填でき、DPFの強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなることを防止することができる車両、荷役車両、及び排ガス処理システムを提供することにある。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る車両は、
エンジンと、
前記エンジンを収納するエンジンルームを有する車両本体と、
前記車両本体における前記エンジンルームの外部に配置された排ガス処理装置であって、前記エンジンから排出された排ガス中のPMを捕集可能なDPF、及び前記DPFよりも前記排ガスの流れ方向における上流側に配置される第1DOCを含む排ガス処理装置と、
前記エンジンから排出された前記排ガスを前記第1DOCに流すための排ガス管と、
前記排ガス管に設けられ、前記排ガス管を流れる前記排ガスを加熱するための少なくとも1つの加熱装置と、を備える。
上記(1)の構成によれば、車両は、車両本体のエンジンルームの内部にエンジンを収納し、車両本体のエンジンルームの外部に第1DOC及びDPFを含む排ガス処理装置が設置されている。そして、車両は、エンジンから排出された排ガスを排ガス処理装置の第1DOCに流すための排ガス管と、排ガス管に設けられ、排ガス管を流れる排ガスを加熱するための少なくとも1つの加熱装置と、を備えている。
排ガス処理装置は、エンジンルームの外部に配置されているので、エンジンルームの内部に配置されている場合に比べて、排ガス管が長くなり、排ガス管を流れる際の排ガスの放熱損失が大きくなる。このため、第1DOCに供給される排ガスの温度が、第1DOCに包含される酸化触媒の活性温度未満になるような、DPFの強制再生機能を発揮できない運転領域が広くなる虞がある。換言すると、DPFの強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなる虞がある。しかし、車両は、加熱装置により排ガス管を流れる排ガスを加熱することで、上述した排ガス管を流れる際の排ガスの放熱損失を補填することができ、DPFの強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなることを防止することができる。
また、このような加熱装置を備える車両は、排ガス処理装置の機能を低下させずに排ガス管の長さを長くすることが可能なので、排ガス処理装置の車両におけるレイアウト性を向上させることができる。また、排ガス処理装置は、エンジンを収納するエンジンルームの外部に配置されているので、エンジンの振動による第1DOCやDPFの摩耗や損傷を低減することができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記少なくとも1つの加熱装置は、複数の加熱装置を含む。
上記(2)の構成によれば、少なくとも1つの加熱装置は、複数の加熱装置を含むので、排ガス管を流れる排ガスを複数の加熱装置により段階的に加熱することができる。複数の加熱装置で排ガスの加熱を分担できるので、各加熱装置は加熱性能が低い小型のものでもよい。このため、各加熱装置の大型化を防止することができ、複数の加熱装置の車両本体におけるレイアウト性を向上させることができる。また、1つの加熱装置で排ガスを高温にする必要がないので、加熱装置の熱による劣化を抑制することができる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記少なくとも1つの加熱装置は、前記エンジンルームの内部に配置された少なくとも1つの第2DOCを含む。
上記(3)の構成によれば、加熱装置は、エンジンルームの内部に配置された少なくとも1つの第2DOCを含んでいるので、エンジンにおける燃焼に寄与しないタイミングで燃焼室内に燃料を噴射(レイトポスト噴射)して未燃燃料を第2DOCに供給することで、第2DOCにより排ガス管を流れる排ガスを加熱することができる。排ガスの流れ方向における上流側に位置する、エンジンルームの内部の排ガス管を流れる排ガスは、放熱による温度低下が少なく、第2DOCに包含される酸化触媒を活性化させることができる。このため、第2DOCは、必要な未燃燃料を添加(レイトポスト噴射)することで酸化触媒による排ガスの酸化反応によって生じた熱によって、第2DOC内を通る排ガスを加熱することができ、排ガスの排ガス管を流れる際の放熱損失を補填することができる。
特に、加熱装置がエンジンルームの内部に配置された複数の第2DOCを含む場合には、それぞれの第2DOCの入口において流れが乱れた排ガスが、第2DOCに流れるので、第2DOC全体として排ガスの反応性を高めることができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記エンジンを制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1DOC及び前記第2DOCに対して未燃燃料を供給するためのポスト噴射の実行を制御するポスト噴射制御部を含み、
前記ポスト噴射制御部は、前記DPFの強制再生時において、
前記エンジンの燃焼室内への燃料噴射により前記エンジンの出口における前記排ガスの温度を昇温することで前記第2DOCを活性温度まで上昇させる第1ステップ、
前記第1ステップの後に、前記第2DOCに対して所定量の未燃燃料を供給することで前記第1DOCを活性温度まで上昇させる第2ステップ、及び
前記第2ステップの後に、前記第1DOCに対して前記所定量より多くの未燃燃料を供給することで前記DPFの強制再生を行う第3ステップ、
を実行するように構成される。
上記(4)の構成によれば、制御装置のポスト噴射制御部は、DPFの強制再生時において、第1ステップ、第2ステップ及び第3ステップを実行するように構成されている。このため、第1ステップにより第2DOCを活性温度まで上昇させた後に、第2ステップにより第1DOCを活性温度まで上昇させることで、第2DOC及び第1DOCにおける酸化反応を効率的に行うことができる。また、第2ステップにより第1DOCを活性温度まで上昇させた後に、第3ステップで第1DOCに対して第2ステップにおいて第2DOCに対して供給される未燃燃料よりも多くの未燃燃料を供給することで、未燃燃料が排ガス管に付着すること等を抑制しつつ、第1DOCにおける酸化反応によって第1DOCの出口及びDPFの入口における排ガス温度を上昇させることができる。このため、DPFによる強制再生を効率的に行うことができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、
前記第2DOCに含まれる貴金属触媒量は、前記第1DOCに含まれる貴金属触媒量の1/50以上1/5以下である。
上記(5)の構成によれば、第1DOC及び第2DOCは、貴金属触媒を含んでいるので、エンジンが低負荷運転であり、エンジンから排出される排ガスが低温であっても排ガス中に含まれる炭化水素(HC)等を酸化して除去することができる。また、第2DOCに含まれる貴金属触媒量は、第1DOCに含まれる貴金属触媒量の1/50以上であるので、第1DOCに供給される排ガスが第1DOCに包含される酸化触媒を活性化できる温度になるように、第2DOCにより排ガスを加熱することができる。また、第2DOCに含まれる貴金属触媒量は、第1DOCに含まれる貴金属触媒量の1/5以下であるので、第2DOCにおける酸化反応による発熱を抑えて第2DOCにおいて排ガスが高温になりすぎるのを防止することができる。ここで、第2DOCに含まれる貴金属触媒量が第1DOCに含まれる貴金属触媒量の1/50以上1/5以下という条件は発明者らの鋭意検討の結果導き出されたものであり、これらの条件を満たさない場合には以下のような虞がある。すなわち、第2DOCにおいて排ガスが高温になりすぎると、第2DOCの触媒が熱により劣化する虞がある。また、排ガス管からの放熱量の増大によって更に未燃燃料の噴射量(レイトポスト噴射の噴射量)を増大させる必要があり燃費が悪くなる虞がある。このため、上述した条件を満たす第2DOCは、熱による触媒劣化を抑制するとともにエンジンの燃焼効率の悪化を抑制することができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(3)〜(5)の構成において、
前記第1DOCの軸線に直交する方向における外形寸法をD0とした場合に、前記第2DOCの軸線に直交する方向における外形寸法DはD≦D0を満たす。
上記(6)の構成によれば、第1DOCの軸線に直交する方向における外形寸法をD0とした場合に、第2DOCは、軸線に直交する方向における外形寸法DがD≦D0を満たすので、第2DOCや第2DOCが設けられる排ガス管の、エンジンルームの内部におけるレイアウト性を向上させることができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の構成において、
前記エンジンを制御する制御装置と、
前記第1DOCに供給される前記排ガスの温度を検出する第2排ガス温度検出装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2排ガス温度検出装置の検出結果に応じて、前記少なくとも1つの加熱装置により前記排ガスに加えられる熱量を制御する熱量制御部を含む。
上記(7)の構成によれば、制御装置の熱量制御部は、第2排ガス温度検出装置の検出結果に応じて、加熱装置により排ガスに加えられる熱量を制御する。このため、第2排ガス温度検出装置が所定の温度、例えば第1DOCが活性を有する温度を検出するように、加熱装置により排ガスを加熱することができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の構成において、
前記エンジンを制御する制御装置と、
前記エンジンから排出される前記排ガスの温度を検出する第1排ガス温度検出装置と、
前記第1DOCに供給される前記排ガスの温度を検出する第2排ガス温度検出装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第1排ガス温度検出装置及び前記第2排ガス温度検出装置の検出結果に応じて、前記少なくとも1つの加熱装置により前記排ガスに加えられる熱量を制御する熱量制御部を含む。
上記(8)の構成によれば、エンジンから排出される排ガスの温度を検出する第1排ガス温度検出装置と、第1DOCに供給される排ガスの温度を検出する第2排ガス温度検出装置と、を備えるので、制御装置は、第1排ガス温度検出装置で検出された排ガスの温度と第2排ガス温度検出装置で検出された排ガスの温度との差から排ガス管における放熱によって低下した温度を算出することができる。そして、制御装置の熱量制御部は、第1排ガス温度検出装置及び第2排ガス温度検出装置の検出結果に応じて、加熱装置により排ガスに加えられる熱量を制御することにより、第1排ガス温度検出装置で検出された排ガスの温度と第2排ガス温度検出装置で検出された排ガスの温度との差がなくなるように、加熱装置により排ガスを加熱することができる。
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る荷役車両は、
上記(1)〜(8)の構成を有する車両を含む荷役車両であって、
前記荷役車両は、
前記エンジンルームより前方に設けられる荷役装置と、
前記荷役車両の重心移動を制限するために前記エンジンルームより後方に設けられるカウンターウェイトと、を備え、
前記排ガス処理装置は前記カウンターウェイトにより画定される内部空間に配置される。
上記(9)の構成によれば、荷役車両は、エンジンルームの前方に設けられる荷役装置と、荷役車両の重心移動を制限するためにエンジンルームの後方に設けられるカウンターウェイトと、を備えているので、エンジンルームを大きくできない。よって、エンジンルームの内部には、排ガス処理装置を設置できない虞がある。そこで、排ガス処理装置をエンジンルームの内部ではなく、カウンターウェイトにより画定される内部空間に配置することで、荷役車両における特にエンジンルーム内部のレイアウト性を向上させることができる。
また、排ガス処理装置はカウンターウェイトにより画定される内部空間に配置されているので、エンジンルームの内部に配置されている場合に比べて、排ガス管が長くなり、排ガス管を流れる際の排ガスの放熱損失が大きくなる。しかし、加熱装置を備える荷役車両は、排ガス処理装置の機能を低下させずに排ガス管の長さを長くすることが可能なので、排ガス処理装置のカウンターウェイトにより画定される内部空間におけるレイアウト性を向上させることができる。また、排ガス処理装置は、エンジンルームではなく、上述した内部空間に配置されているので、エンジンの振動による第1DOCやDPFの摩耗や損傷を低減することができる。
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記荷役車両は、前記カウンターウェイトにより画定される内部空間と前記エンジンルームとの間に配置されて、前記内部空間と前記エンジンルームとを区画するラジエータをさらに備える。
上記(10)の構成によれば、荷役車両は、ラジエータによりカウンターウェイトにより画定される内部空間とエンジンルームとが区画されるので、ラジエータを上述した内部空間やエンジンルームの他の場所に設置しないでよいため、上述した内部空間やエンジンルームのレイアウト性を向上させることができる。
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る排ガス処理システムは、
エンジンから排出される排ガスを処理するための排ガス処理装置であって、前記排ガス中のPMを捕集可能なDPF及び前記DPFよりも前記排ガスの流れ方向における上流側に配置される第1DOCを含む排ガス処理装置と、
前記エンジンから排出された前記排ガスを前記第1DOCに流すための排ガス管と、
前記排ガス管に設けられ、前記排ガス管を流れる前記排ガスの放熱損失を補填するために前記排ガス管を流れる前記排ガスを加熱する加熱装置と、を備える。
上記(11)の構成によれば、排ガス処理システムは、エンジンから排出される排ガスを処理するための排ガス処理装置であって、第1DOC及びDPFを含む排ガス処理装置と、エンジンから排出された排ガスを排ガス処理装置の第1DOCに流すための排ガス管と、排ガス管に設けられ、排ガス管を流れる排ガスの放熱損失を補填するために排ガス管を流れる排ガスを加熱する加熱装置と、を備えている。このような排ガス処理システムは、排ガス管が長いとその分だけ排ガス管を流れる際の排ガスの放熱損失が大きくなる。このため、第1DOCに供給される排ガスの温度が第1DOCに包含される酸化触媒の活性温度未満になるような、DPFの強制再生機能を発揮できない運転領域が広くなる虞がある。換言すると、DPFの強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなる虞がある。しかし、排ガス処理システムは、加熱装置により排ガス管を流れる排ガスを加熱することで、上述した排ガス管を流れる際の排ガスの放熱損失を補填することができ、DPFの強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなることを防止することができる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、排ガス管を流れる排ガスの放熱損失を補填でき、DPFの強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなることを防止することができる車両、荷役車両、及び排ガス処理システムが提供される。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、本発明の一実施形態にかかる車両を説明するための図であって、車両の一例としてフォークリフトの全体構成を概略的に示す概略側面図である。図1に示されるように、幾つかの実施形態にかかる車両1は、車両1を駆動させるための動力源としてのディーゼルエンジン等を含むエンジン3と、エンジン3を収納するエンジンルーム21を有する車両本体2と、を備えている。以下、図1〜8にかかる実施形態では、車両1の一例としてフォークリフト10A(荷役車両10)について説明する。
フォークリフト10A(荷役車両10)は、図1に示されるように、搭乗者が座る座席の下方にエンジンルーム21が設けられ、エンジンルーム21の内部にエンジン3を収納している。ここで、エンジン3は、シリンダヘッド及びシリンダブロックにより画定される燃焼室311を少なくとも有するものである。エンジンルーム21は、上述したエンジン3を収納可能な空間であって、車両本体2の一部により仕切られる空間、または、車両本体2の一部と他の部材とにより仕切られる空間である。図1に示される実施形態では、エンジンルーム21は、車両本体2の一部である上壁部211、前壁部212、側壁部213、214及び底部215等により画定された空間である。なお、側壁部214は、図1中に示される側壁部213とは反対側(図中紙面奥側)に設けられている。
図1に示されるように、フォークリフト10A(荷役車両10)は、車両本体2におけるエンジンルーム21より前方に設けられるフォークなどの荷役装置11と、車両本体2におけるエンジンルーム21より後方に設けられるカウンターウェイト12と、を備えている。カウンターウェイト12は、荷役装置11に荷物を載置、運搬する際に荷役装置11やフォークリフト10Aの重心移動を制限し、フォークリフト10Aの挙動を安定させるための重しの役割を果たすものである。
フォークリフト10Aは、図1に示されるように、カウンターウェイト12により画定される内部空間120を有している。ここで、カウンターウェイト12により画定される内部空間120とは、カウンターウェイト12の一部により仕切られる空間、または、カウンターウェイト12の一部と他の部材とにより仕切られる空間をいう。図1に示される実施形態では、カウンターウェイト12や車両本体2の一部である上壁部121、後壁部122、側壁部123、124及び底部125等により画定された空間である。なお、側壁部124は、図1中に示される側壁部123とは反対側(図中紙面奥側)に設けられている。
フォークリフト10Aは、図1に示されるように、車両本体2におけるエンジンルーム21の外部である、カウンターウェイト12により画定される内部空間120に配置される排ガス処理装置5を備えている。
図2は、本発明の一実施形態にかかる排ガス処理システムを説明するための概略構成図である。図3は、本発明の一実施形態にかかる排ガス処理システムにおける制御装置を説明するための図であって、制御装置を含む排ガス処理システムを示した概略構成図である。図4は、本発明の他の一実施形態にかかる排ガス処理システムを説明するための概略構成図であって、複数の加熱装置と断熱装置とを備える排ガス処理システムを説明するための図である。図5は、図1に示すフォークリフトにおけるエンジンや排ガス処理装置の上方から視た配置を説明するための図であって、エンジンルームやカウンターウェイトにより画定される内部空間の内部の主要な構成要素を示す概略断面図である。図6は、図5に示す加熱装置の固定を説明するための図であって、エンジンルーム内を側方から視た場合の加熱装置近傍の主要な構成要素を示す概略図である。
図2〜5に示されるように、排ガス処理装置5は、エンジン3から排出された排ガスを処理するためのものであり、エンジン3より排ガスの流れ方向における下流側に配置される。排ガス処理装置5は、図2〜5に示されるように、エンジン3から排出された排ガス中に含まれるスス等のPM(粒子状物質)を捕集可能なDPF52(微粒子捕集フィルタ装置,ディーゼルパティキュレートフィルタ)と、DPF52よりも排ガスの流れ方向における上流側に配置される第1DOC51(酸化触媒装置,ディーゼル酸化触媒)と、を含んでいる。
図3に示されるように、エンジン3の上流側には、吸気マニホールド26を介して吸気管25が接続されている。図2〜5に示されるように、排ガスの流れ方向における、エンジン3の下流側には、排ガス管6が接続されている。排ガス管6は、排ガス処理装置5の第1DOC51の上流側に接続されており、エンジン3から排出された排ガスを第1DOC51に流すようになっている。
図3に示される実施形態では、吸気管25と排ガス管6との間には、ターボチャージャ35が設けられている。ターボチャージャ35は、排ガス管6に配置された排気タービン351と、吸気管25に配置されたコンプレッサ352と、を有しており、排気タービン351とコンプレッサ352とが同軸駆動されるようになっている。吸気管25には、制御装置8により開度が制御される吸気スロットルバルブ27が設けられている。コンプレッサ352により過給された圧縮空気は、吸気スロットルバルブ27により流量が制御された後、エンジン3の燃焼室311に流入する。なお、図3に示される実施形態では、吸気スロットルバルブ27及び後述する排気スロットルバルブ34の両方により流量が制御されているが、吸気スロットルバルブ27又は排気スロットルバルブ34の何れか一方のみにより流量が制御されていてもよい。また、他の幾つかの実施形態では、ターボチャージャ35を設けない構成にしてもよい。
エンジン3には、図3に示されるように、燃焼室311に未燃燃料を噴射するための燃料噴射弁28が設けられている。燃料噴射弁28は、制御装置8により未燃燃料の噴射タイミング及び未燃燃料噴射量が制御されるようになっている。メイン噴射時に燃焼室311に噴射された未燃燃料は、上述した圧縮空気に混合された後、燃焼室311内で燃焼する。
エンジン3から排出された排ガスは、上述した排気タービン351を駆動させる。上述した排気タービン351を駆動させた排ガスは、図2、4〜6に示されるように、制御装置8により開度が制御される排気スロットルバルブ34により流量が制御された後、排ガス処理装置5に流入する。なお、排気スロットルバルブ34は、排ガスの流れ方向におけるターボチャージャ35の上流側に設けられてもよいし、ターボチャージャ35の下流側に設けられてもよい。
上述した排ガス処理装置5の第1DOC51は、ハニカム状の多数の通気孔が貫通するとともに、外形が円筒形状又は直方体状に成形して構成されたセラミックや金属等の本体と、本体の内側表面に担持された酸化触媒511と、を含んでいる。第1DOC51は、酸化触媒511により酸化反応を促進させることで、第1DOC51を通過する排ガス中の未燃燃料(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化除去するとともに、排ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化してDPF52に捕集されたPMとの反応によりPMを燃焼除去できる二酸化窒素(NO2)を生成する機能を有している。また、第1DOC51は、排ガス中に含まれる未燃燃料の酸化反応による生じる熱によって、第1DOC51を通過する排ガスを昇温し、DPF52の入口温度を昇温する。
排ガス処理装置5のDPF52は、ハニカム状に多数の通気孔を有するとともに、外形が円筒形状又は直方体状に成形して構成されている。DPF52は、多数の通気孔のうち、互いに隣り合う通気孔が入口側と出口側で交互に閉じられて排ガスがろ過壁(フィルタ)を通過するように構成されている。このため、排ガスは、DPF52のろ過壁を通過する際にPMが除去される。なお、DPF52は、内側表面に酸化触媒を担持していてもよい。
また、図2〜5に示されるように、排ガスの流れ方向における、第1DOC51の下流側には、排ガス管53が接続されている。排ガス管53は、DPF52の上流側に接続されており、第1DOC51における酸化反応により生じた熱により昇温した排ガスをDPF52に流すようになっている。
また、図2〜5に示されるように、排ガスの流れ方向における、DPF52の下流側には、排ガス排出管54(マフラー)が接続されている。排ガス排出管54は、出口開口541がカウンターウェイト12の内部空間120の外部に設けられている。このため、排ガスは、第1DOC51において排ガス中に含まれる未燃燃料(HC)や一酸化炭素(CO)が除去され、DPF52において排ガス中に含まれるPMが除去された後に、排ガス排出管54の出口開口541より車両本体2の外部に排出される。
DPF52で除去されたPMは、運転中にエンジン3から排出される高温の排ガスによって一部が燃焼するが(連続再生)、残りはDPF52のろ過壁に蓄積される。このため、DPF52を備える排ガス処理装置5は、DPF52のろ過壁に蓄積されたPMを強制的に燃焼させてろ過壁を再生させる強制再生機能を発揮させる必要がある。ここで、強制再生機能は、所定の強制再生実施条件を満たすことで制御装置8により自動的に実施される自動再生機能と、フォークリフト10Aの操縦者等の手動操作により実施される手動再生機能と、を含んでいる。所定の強制再生実施条件には、DPF52のろ過壁に蓄積されたPMの堆積量の推定値が規定値を超える場合、エンジン3の運転時間が規定時間を超える場合、及び、エンジン3の燃料噴射量の累計値が規定値を超える場合等が挙げられる。
図3に示されるように、排ガス管6には、エンジン3から排出される排ガスの温度として、第2DOC71の入口温度を検出する第2DOC入口温度センサ41と、第1DOC51の入口温度を検出する第1DOC入口温度センサ42と、が配置されている。排ガス管53には、DPF52の入口温度を検出するDPF入口温度センサ43が配置されている。排ガス排出管54には、DPF52の出口温度を検出するDPF出口温度センサ44が配置されている。DPF52には、DPF入口圧力センサ45、DPF出口圧力センサ46及びDPF差圧センサ47が配置されている。これらのセンサ類で測定された第2DOC71の入口温度、第1DOC51の入口温度、DPF52の入口温度、DPF52の出口温度及びDPF52の差圧などに関する信号が制御装置8に入力されるようになっている。
制御装置8は、エンジン3を制御するためのものであり、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、及びI/Oインターフェイスなどからなるマイクロコンピュータとして構成される。また、制御装置8は、上述したセンサ類で測定された信号に基づく制御を行うことができるようになっている。
図7は、図3に示す制御装置の機能を説明するためのブロック図である。図8は、制御装置による燃料の噴射制御の一例を示すフロー図である。図7に示されるように、制御装置8は、噴射の実行を制御する噴射制御部80を有している。噴射制御部80は、図7に示されるように、メイン噴射の実行を制御するメイン噴射制御部81と、ポスト噴射の実行を制御するポスト噴射制御部82と、を含んでいる。ここで、ポスト噴射とは、図8に示されるように、メイン噴射(ステップS10)よりも遅れて行われる燃料噴射弁28による燃料の噴射(ステップS20、S30)である。図8に示される実施形態では、ポスト噴射は、エンジン3における燃焼に寄与するタイミングで燃焼室311内に燃料を噴射するアーリーポスト噴射(ステップS20)と、エンジン3における燃焼に寄与しないタイミングで燃焼室311内に燃料を噴射するレイトポスト噴射(ステップS30)と、を含んでいる。レイトポスト噴射では、エンジン3の燃焼室311内への燃料噴射によりエンジン3の出口における排ガスの温度を昇温したり、排ガス処理装置5の第1DOC51に対して未燃燃料を供給することが行われる。なお、他の幾つかの実施形態では、ポスト噴射は、アーリーポスト噴射を含んでいなくてもよい。以下、特に言及しない限り、ポスト噴射はレイトポスト噴射を意味している。
メイン噴射制御部81は、メイン噴射時に燃料噴射弁28(図3参照)より噴出される未燃燃料の噴射タイミング及び未燃燃料の噴射量を制御可能に構成されている。ポスト噴射制御部82は、アーリーポスト噴射及びレイトポスト噴射を含むポスト噴射時に燃料噴射弁28より噴出される未燃燃料の噴射タイミング及び未燃燃料の噴射量を制御可能に構成されている。また、メイン噴射制御部81やポスト噴射制御部82は、吸気スロットルバルブ27(図3参照)や排気スロットルバルブ34(図2、5〜7参照)の開度を制御可能に構成されていてもよく、エンジン3に供給される圧縮空気の流量やエンジン3から排出される排ガスの流量を制御するようになっていてもよい。
DPF52の強制再生時には、燃料噴射弁28のポスト噴射により第1DOC51に流入した未燃燃料を第1DOC51において酸化発熱させることで、DPF52の入口温度を強制的に昇温して、PMを強制的に燃焼させるようになっている。なお、燃料噴射弁28のポスト噴射に変えて、またはこれと併せて排ガス管6に配置された排ガス管噴射弁29(図3参照)から未燃燃料を噴射してもよい。この場合には、上述した噴射制御部80は、図7に示されるように、排ガス管噴射弁29による未燃燃料の噴射の実行を制御する排ガス管噴射制御部83を含んでいてもよい。排ガス管噴射制御部83は、排ガス管噴射弁29より噴出される未燃燃料の噴射タイミング及び未燃燃料の噴射量を制御可能に構成されている。
図1、2、4及び5に示されるように、排ガス処理装置5は、エンジンルーム21の外部に配置されているので、エンジンルーム21の内部に配置されている場合に比べて、排ガス管6が長くなり、排ガス管6を流れる際の排ガスの放熱損失が大きくなる。フォークリフト10Aは、排ガス管6を流れる際の排ガスの放熱損失を補填可能に構成されている。すなわち、フォークリフト10Aは、図2〜5に示されるように、上述した排ガス管6の途中に設けられ、排ガス管6を流れる排ガスを加熱するための少なくとも1つの加熱装置7を備えている。
図2〜5に示される実施形態では、加熱装置7は、エンジンルーム21の内部に配置された第2DOC71を含んでいる。第2DOC71は、上述した排ガス処理装置5の第1DOC51と同様の構成を有している。すなわち、第2DOC71は、ハニカム状に多数の微細孔が貫通した円筒形状又は直方体状に成形して構成されたセラミックや金属等の本体と、本体の内側表面に担持された酸化触媒711と、を含んでいる。
そして、加熱装置7の第2DOC71は、酸化触媒711により酸化反応を促進させることで、排ガス中に含まれる未燃燃料の酸化反応による生じる熱によって、第2DOC71を通過する排ガスを昇温し、第2DOC71の出口温度や第1DOC51の入口温度を昇温する。DPF52の強制再生時には、燃料噴射弁28のポスト噴射により第2DOC71に流入した未燃燃料を第2DOC71において酸化発熱させることで、第2DOC71の出口温度や第1DOC51の入口温度を強制的に昇温するようになっている。なお、第2DOC71は、酸化触媒711により酸化反応を促進させることで、第2DOC71を通過する排ガス中の未燃燃料(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化除去するとともに、排ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化してDPF52に捕集されたPMとの反応によりPMを燃焼除去できる二酸化窒素(NO2)を生成する機能を有している。
上述したように、幾つかの実施形態にかかる車両1は、上述したエンジン3と、上述したエンジンルーム21を有する車両本体2と、上述した第1DOC51及びDPF52を含む排ガス処理装置5と、上述した排ガス管6と、上述した加熱装置7と、を備えている。
上記の構成によれば、車両1は、車両本体2のエンジンルーム21の内部にエンジン3を収納し、車両本体2のエンジンルーム21の外部に排ガス処理装置5が設置されている。排ガス処理装置5は、エンジン3から排出された排ガス中のPMを捕集可能なDPF52、及びDPF52よりも排ガスの流れ方向における上流側に配置される第1DOC51を含む。そして、車両1は、エンジン3から排出された排ガスを排ガス処理装置5の第1DOC51に供給するための排ガス管6と、排ガス管6に設けられ、排ガス管6を流れる排ガスを加熱するための少なくとも1つの加熱装置7と、を備えている。
排ガス処理装置5は、エンジンルーム21の外部に配置されているので、エンジンルーム21の内部に配置されている場合に比べて、排ガス管6が長くなり、排ガス管6を流れる際の排ガスの放熱損失が大きくなる。このため、第1DOC51に供給される排ガスの温度が、第1DOC51に包含される酸化触媒511の活性温度未満になるような、DPF52の強制再生機能を発揮できない運転領域が広くなる虞がある。換言すると、DPF52の強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなる虞がある。しかし、車両1は、加熱装置7により排ガス管6を流れる排ガスを加熱することで、上述した排ガス管6を流れる際の排ガスの放熱損失を補填することができ、DPF52の強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなることを防止することができる。
また、このような加熱装置7を備える車両1は、排ガス処理装置5の機能を低下させずに排ガス管6の長さを長くすることが可能なので、排ガス処理装置5の車両1におけるレイアウト性を向上させることができる。また、排ガス処理装置5は、エンジン3を収納するエンジンルーム21の外部に配置されているので、エンジン3の振動による第1DOC51やDPF52の摩耗や損傷を低減することができる。
幾つかの実施形態では、図4に示されるように、上述した少なくとも1つの加熱装置7は、複数の加熱装置7(加熱装置7A、7B)を含んでいる。この場合には、排ガス管6を流れる排ガスを複数の加熱装置7により段階的に加熱することができる。複数の加熱装置7で排ガスの加熱を分担できるので、各加熱装置7は加熱性能が低い小型のものでもよい。このため、各加熱装置7の大型化を防止することができ、複数の加熱装置7の車両本体2におけるレイアウト性を向上させることができる。また、1つの加熱装置7で排ガスを高温にする必要がないので、加熱装置7の熱による劣化を抑制することができる。
幾つかの実施形態では、図2〜5に示されるように、上述した加熱装置7は、エンジンルーム21の内部に配置された少なくとも1つの上述した第2DOC71を含んでいる。この場合には、エンジン3における燃焼に寄与しないタイミングで燃焼室311内に燃料を噴射(レイトポスト噴射)して未燃燃料を第2DOC71に供給することで、第2DOC71により排ガス管6を流れる排ガスを加熱することができる。排ガスの流れ方向における上流側に位置する、エンジンルーム21の内部の排ガス管6を流れる排ガスは、放熱による温度低下が少なく、第2DOC71に包含される酸化触媒711を活性化させることができる。このため、第2DOC71は、必要な未燃燃料を添加(レイトポスト噴射)することで酸化触媒711による排ガスの酸化反応によって生じた熱によって、第2DOC71内を通る排ガスを加熱することができ、排ガス管6を流れる際の排ガスの放熱損失を補填することができる。
特に、図4に示されるように、加熱装置7がエンジンルーム21の内部に配置された複数の第2DOC71(第2DOC71A、71B)を含む場合には、それぞれの第2DOC71の入口において流れが乱れた排ガスが第2DOC71に流れるので、第2DOC71全体として排ガスの反応性を高めることができる。なお、第2DOC71A及び71Bは、上述した第2DOC71と同様の構成を有しているため、具体的な構成については割愛する。
幾つかの実施形態では、上述した車両1は、上述したポスト噴射制御部82を含む上述した制御装置8をさらに備えている。上述したポスト噴射制御部82は、上述した第1DOC51及び第2DOC71に対して未燃燃料を供給するためのポスト噴射の実行を制御可能に構成されている。そして、ポスト噴射制御部82は、図8に示されるように、DPF52の強制再生時、すなわち、ポスト噴射時(ステップS30)において、第1ステップS301、第2ステップS302、及び第3ステップS303を実行するように構成されている。
第1ステップS301では、エンジン3の燃焼室311内への燃料噴射によりエンジン3の出口における排ガスの温度を昇温することで、第2DOCを活性温度まで上昇させることが行われる。第2ステップS302では、第1ステップS301の後に、第2DOC71に対して所定量の未燃燃料を供給することで、第1DOC51を活性温度まで上昇させることが行われる。第3ステップS303では、第2ステップS302の後に、第1DOC51に対して第2ステップS302の所定量より多くの未燃燃料を供給することでDPF52の強制再生が行われる。一例としては、第1DOC51及び第2DOC71の活性温度は250〜260℃であり、強制再生時のDPF52の入口温度は600〜610℃である。
上記の構成によれば、制御装置8のポスト噴射制御部82は、DPF52の強制再生時において、第1ステップS301、第2ステップS302及び第3ステップS303を実行するように構成されている。このため、第1ステップS301により第2DOC71を活性温度まで上昇させた後に、第2ステップS302により第1DOC51を活性温度まで上昇させることで、第2DOC71及び第1DOC51における酸化反応を効率的に行うことができる。また、第2ステップS302により第1DOC51を活性温度まで上昇させた後に、第3ステップS303で第1DOC51に対して第2ステップS302において第2DOC71に対して供給される未燃燃料よりも多くの未燃燃料を供給することで、未燃燃料が排ガス管6に付着すること等を抑制しつつ、第1DOC51における酸化反応によって第1DOC51の出口及びDPF52の入口における排ガス温度を上昇させることができる。このため、DPF52による強制再生を効率的に行うことができる。
幾つかの実施形態では、上述した第2DOC71に含まれる貴金属触媒量は、上述した第1DOC51に含まれる貴金属触媒量の1/50以上1/5以下である。貴金属触媒としては、白金やパラジウム、ロジウム等が挙げられる。この場合には、第1DOC51及び第2DOC71は、貴金属触媒を含んでいるので、エンジン3が低負荷運転であり、エンジン3から排出される排ガスが低温であっても排ガス中に含まれる炭化水素(HC)等を酸化して除去することができる。
また、第2DOC71に含まれる貴金属触媒量は、第1DOC51に含まれる貴金属触媒量の1/50以上であるので、第1DOC51に供給される排ガスが第1DOC51に包含される酸化触媒を活性化できる温度になるように、第2DOC71により排ガスを加熱することができる。また、第2DOC71に含まれる貴金属触媒量は、第1DOC51に含まれる貴金属触媒量の1/5以下であるので、第2DOC71における酸化反応による発熱を抑えて第2DOC71において排ガスが高温になりすぎるのを防止することができる。ここで、第2DOC71に含まれる貴金属触媒量が第1DOC51に含まれる貴金属触媒量の1/50以上1/5以下という条件は発明者らの鋭意検討の結果導き出されたものであり、これらの条件を満たさない場合には以下のような虞がある。すなわち、第2DOC71において排ガスが高温になりすぎると、第2DOC71の触媒が熱により劣化する虞がある。また、排ガス管6からの放熱量の増大によって更に未燃燃料の噴射量(レイトポスト噴射の噴射量)を増大させる必要があり燃費が悪くなる虞がある。このため、上述した条件を満たす第2DOC71は、熱による触媒劣化を抑制するとともにエンジン3の燃焼効率の悪化を抑制することができる。
幾つかの実施形態では、図4に示されるように、上述した第1DOC51の軸線に直交する方向における外形寸法をD0とした場合に、上述した第2DOC71の軸線に直交する方向における外形寸法DはD≦D0を満たすようになっている。この場合には、第1DOC51の軸線に直交する方向における外形寸法をD0とした場合に、第2DOC71は、軸線に直交する方向における外形寸法DがD≦D0を満たすので、第2DOC71や第2DOC71が設けられる排ガス管6の、エンジンルーム21の内部におけるレイアウト性を向上させることができる。
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、上述した車両1は、第1DOC51に供給される排ガスの温度を検出する上述した第1DOC入口温度センサ42(第2排ガス温度検出装置)をさらに備えている。上述した制御装置8は、図7に示されるように、第1DOC入口温度センサ42の検出結果に応じて、加熱装置7により排ガスに加えられる熱量を制御する熱量制御部84Aを含んでいる。この場合には、制御装置8の熱量制御部84Aは、第1DOC入口温度センサ42の検出結果に応じて、加熱装置7により排ガスに加えられる熱量を制御する。このため、第1DOC入口温度センサ42が所定の温度、例えば第1DOC51が活性を有する温度を検出するように、加熱装置7により排ガスを加熱することができる。
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、上述した車両1は、上述した第1DOC入口温度センサ42を備えるだけでなく、エンジン3から排出される排ガスの温度を検出する上述した第2DOC入口温度センサ41(第1排ガス温度検出装置)をさらに備えている。上述した制御装置8は、図7に示されるように、第2DOC入口温度センサ41及び第1DOC入口温度センサ42の検出結果に応じて、加熱装置7により排ガスに加えられる熱量を制御する熱量制御部84Bを含んでいる。
上記の構成によれば、制御装置8は、エンジン3から排出される排ガスの温度を検出する第2DOC入口温度センサ41(第1排ガス温度検出装置)と、第1DOC51に供給される排ガスの温度を検出する第1DOC入口温度センサ42(第2排ガス温度検出装置)で検出された排ガスの温度との差から排ガス管6における放熱によって低下した温度を算出することができる。そして、制御装置8の熱量制御部84Bは、第2DOC入口温度センサ41及び第1DOC入口温度センサ42の検出結果に応じて、加熱装置7により排ガスに加えられる熱量を制御することにより、第2DOC入口温度センサ41で検出された排ガスの温度と第1DOC入口温度センサ42で検出された排ガスの温度との差がなくなるように、加熱装置7により排ガスを加熱することができる。
幾つかの実施形態にかかる荷役車両10は、上述した幾つかの実施形態にかかる車両1の構成を備えている。すなわち、荷役車両10は、図2〜5に示されるように、上述したエンジン3と、上述したエンジンルーム21を有する車両本体2と、上述した第1DOC51及びDPF52を含む排ガス処理装置5と、上述した排ガス管6と、上述した加熱装置7と、を少なくとも備えている。そして、荷役車両10は、図1に示されるように、エンジンルーム21より前方に設けられる荷役装置11と、荷役車両10の重心移動を制限するためにエンジンルーム21より後方に設けられるカウンターウェイト12と、をさらに備えている。排ガス処理装置5は、カウンターウェイト12により画定される内部空間120に配置される。
上記の構成によれば、荷役車両10は、エンジンルーム21の前方に設けられる荷役装置11と、荷役車両10の重心移動を制限するためにエンジンルーム21の後方に設けられるカウンターウェイト12と、を備えているので、エンジンルーム21を大きくできない。よって、エンジンルーム21の内部には、排ガス処理装置5を設置できない虞がある。そこで、排ガス処理装置5をエンジンルーム21の内部ではなく、カウンターウェイト12により画定される内部空間120に配置することで、荷役車両10における特にエンジンルーム21内部のレイアウト性を向上させることができる。
また、排ガス処理装置5はカウンターウェイト12により画定される内部空間120に配置されているので、エンジンルーム21の内部に配置されている場合に比べて、排ガス管6が長くなり、排ガス管6を流れる際の排ガスの放熱損失が大きくなる。しかし、加熱装置7を備える荷役車両10は、排ガス処理装置5の機能を低下させずに排ガス管6の長さを長くすることが可能なので、排ガス処理装置5のカウンターウェイト12により画定される内部空間120におけるレイアウト性を向上させることができる。また、排ガス処理装置5は、エンジンルーム21ではなく、カウンターウェイト12により画定される内部空間120に配置されているので、エンジン3の振動による第1DOC51やDPF52の摩耗や損傷を低減することができる。
幾つかの実施形態では、図5に示されるように、上述した荷役車両10は、カウンターウェイト12により画定される内部空間120とエンジンルーム21との間に配置されて、内部空間120とエンジンルーム21とを区画するラジエータ36をさらに備えている。エンジンルーム21は、図5に示されるように、車両本体2の前壁部212、側壁部213、側壁部214、底部215及び車両本体2の前後方向に直交方向に延在するように配置されたラジエータ36等により画定されている。また、カウンターウェイト12の内部空間120は、図5に示されるように、カウンターウェイト12の後壁部122、側壁部123、側壁部124、車両本体2の底部215及び上述したラジエータ36等により画定されている。
図5、6に示される実施形態では、エンジンルーム21に配置されたエンジン3は、エンジン本体部31と、エンジン本体部31に装着されてエンジン本体部31により回転されるオルタネータ32と、エンジン本体部31を支持するとともに底部215の上に設置されるエンジンブラケット33と、を含んでいる。そして、図5、6に示されるように、エンジン本体部31には排気スロットルバルブ34及びターボチャージャ35が固定されている。
カウンターウェイト12の内部空間120に配置された排ガス処理装置5の第1DOC51及びDPF52は、図5に示されるように、底部215に立設する支持ブラケット22及び支持ブラケット23によりオイルクーラー37と一緒に支持されている。第1DOC51は、排ガス管6を短くするためにDPF52よりも下側に配置されている。排ガス処理装置5は、オイルクーラー37を挟んでラジエータ36とは反対側に配置されており、ラジエータ36の延在方向(図5中上下方向)における一方に配管された排ガス管6によりエンジン3に接続されている。ラジエータ36の延在方向における他方にはプレクリーナ38及びエアクリーナ39が設置されている。プレクリーナ38は、内部空間120に、エアクリーナ39は、エンジンルーム21に設置されている。図6に示すように、第2DOC71は、エンジンブラケット33の上に載せられた状態で、エンジンブラケット33にボルト等により固定されている。
上記の構成によれば、荷役車両10は、ラジエータ36によりカウンターウェイト12の内部空間120とエンジンルーム21とが区画されるので、ラジエータ36を内部空間120やエンジンルーム21の他の場所に設置しないでよいため、内部空間120やエンジンルーム21のレイアウト性を向上させることができる。
幾つかの実施形態にかかる排ガス処理システム4は、図2〜5に示されるように、上述した第1DOC51及びDPF52を含む排ガス処理装置5と、上述した排ガス管6と、排ガス管6を流れる排ガスの放熱損失を補填するために排ガス管6を流れる排ガスを加熱する上述した加熱装置7と、を備えている。
上記の構成によれば、図2〜5に示されるように、排ガス処理システム4は、エンジン3から排出される排ガスを処理するための排ガス処理装置5であって、第1DOC51及びDPF52を含む排ガス処理装置5と、エンジン3から排出された排ガスを排ガス処理装置5の第1DOC51に供給するための排ガス管6と、排ガス管6に設けられ、排ガス管6を流れる排ガスの放熱損失を補填するために排ガス管6を流れる排ガスを加熱する加熱装置7と、を備えている。このような排ガス処理システム4は、排ガス管6が長いとその分だけ排ガス管6を流れる際の排ガスの放熱損失が大きくなる。このため、第1DOC51に供給される排ガスの温度が第1DOC51に包含される酸化触媒511の活性温度未満になるような、DPF52の強制再生機能を発揮できない運転領域が広くなる虞がある。換言すると、DPF52の強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなる虞がある。しかし、排ガス処理システム4は、加熱装置7により排ガス管6を流れる排ガスを加熱することで、上述した排ガス管6を流れる際の排ガスの放熱損失を補填することができ、DPF52の強制再生機能を発揮できる運転領域が狭くなることを防止することができる。
幾つかの実施形態では、図2、4及び5に示されるように、排ガス管6にベローズ61が設けられている。図2、4に示される実施形態では、排ガスの流れ方向における加熱装置7の上流側に設けられている。図5に示される実施形態では、排ガスの流れ方向における加熱装置7の下流側、且つ、排ガス処理装置5の上流側に設けられている。これらの場合には、ベローズ61は、エンジン3が駆動することにより生じる振動が、ベローズ61よりも排ガス管6の排ガスの流れ方向の下流側に伝達されるのを抑制し、ベローズ61よりも排ガス管6の排ガスの流れ方向の下流側に位置する例えば第1DOC51やDPF52などの装置がエンジン3の振動により摩耗や損傷を低減することができる。
幾つかの実施形態では、図4に示されるように、排ガス管6に断熱装置9が設けられている。図4に示される実施形態では、断熱装置9は、排ガス管6の外周を被覆する被覆管91を含んでいる。他の実施形態では、断熱装置9は、排ガス管6の外周に取り付けられる断熱材である。この場合には、断熱装置9により排ガス管6を流れる排ガスの温度低下を抑制することができるので、加熱装置7は加熱性能が低い小型のものでもよい。このため、加熱装置7の大型化を防止することができる。
上述した幾つかの実施形態では、加熱装置7は第2DOC71を含んでいたが、加熱装置7は、排ガス管6の外周に巻き付けられたヒータや、排ガス管6を加熱するためのバーナを含んでもよい。また、加熱装置7は、エンジンルーム21の外部に位置する排ガス管6に設けられてもよい。
上述した幾つかの実施形態では、フォークリフト10Aについて説明したが、車両1は、フォークリフト10A以外の例えばショベルローダー等の荷役車両10であってもよく、また、荷役車両10以外の他の車両であってもよい。また、排ガス処理システム4は、エンジン3を有するものであればよく、車両1に限定されるわけではない。例えば、エンジン3を有する施設等であってもよい。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。