JP6962541B2 - タンパク質の発現量を増加させる機能を有するdna、および変異型ハイグロマイシンbホスホトランスフェラーゼ - Google Patents

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Description

本発明は、タンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNAに関する。本発明はまた、上記のDNAによりコードされるアミノ酸配列を含む変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼに関する。
遺伝子組み換え技術においては、目的の遺伝子が導入された形質転換細胞を選別するために、薬剤耐性遺伝子が利用されている。薬剤耐性遺伝子のうち、ハイグロマイシンB耐性遺伝子がコードするハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼについては、野生型に対し高い耐熱性を有する変異体を得たことが特許文献1で報告されている。しかし、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼの機能改変の報告例は少ない。
タンパク質の変異体の探索において、より高活性の変異体が得られる場合、タンパク質の立体構造等の変化等に基づく場合のほか、タンパク質の発現量が増加する場合があると考えられる。遺伝子の発現量には、翻訳後のタンパク質の性質や、転写や翻訳段階の要因が関与し得、例えば、特許文献2では、遺伝子の高発現能を有する5’−非翻訳領域DNA配列について開示されている。
特開2005−245261号公報 特開2003−79372号公報
本発明は、タンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNAを提供することを課題とする。本発明は、また、タンパク質の発現量を増加させる機能を有するベクターを提供することを課題とする。
別の観点からは、本発明は、高い薬剤耐性の形質転換体を与えるハイグロマイシンB耐性遺伝子およびそれにコードされる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼの探索の過程で得られた高薬剤耐性のクローンがハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼを高発現していることを見出した。さらに検討を重ね、これらのクローンで発現している変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼのC末端をコードする塩基配列として共通する配列を見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明は以下<1>〜<13>を提供するものである。
<1>配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むペプチドをコードする、タンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNA。
<2>上記ペプチドが26個以下のアミノ酸からなる請求項1に記載のDNA。
<3>配列表の配列番号1、2、3、または4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードする<1>に記載のDNA。
<4>配列表の配列番号5で表される塩基配列を含む<1>または<2>に記載のDNA。
<5>配列表の配列番号5、6、7、または8で表される塩基配列からなる<1>に記載のDNA。
<6>配列表の配列番号5で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつタンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNA。
<7><1>〜<6>のいずれか一項に記載のDNAでコードされるアミノ酸配列をC末端に有する変異型タンパク質。
<8><1>〜<6>のいずれか一項に記載のDNAでコードされるアミノ酸配列をC末端に含む、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ。
<9>下記(A)〜(H)からなる群より選ばれる<8>に記載の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ:
(A)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(B)配列番号9で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(C)配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(D)配列番号10で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(E)配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(F)配列番号11で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(G)配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(H)配列番号12で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ。
<10><8>または<9>に記載の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼをコードする遺伝子。
<11>配列表の配列番号13、14、15、または16で表される塩基配列からなる<10>に記載の遺伝子。
<12><10>または<11>に記載の遺伝子を含むベクター。
<13><12>に記載のベクターを含む形質転換体。
本発明により、タンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNAが提供される。このDNAを用いて、タンパク質の発現量を増加させる機能を有するベクターを提供することができる。また、このDNAを構造遺伝子の一部として導入することにより、この構造遺伝子にコードされる変異型タンパク質の発現量を増加させることができる。例えば、本発明により、高い薬剤耐性の形質転換体を与えるハイグロマイシンB耐性遺伝子を提供することができる。
ハイグロマイシンB高耐性コロニー(mut1〜mut20)から回収されたプラスミドDNAを保持する大腸菌のハイグロマイシンB耐性試験結果を示す図である。 ハイグロマイシンB高耐性コロニー(mut1〜mut8、mut10、mut12、mut18)から回収されたプラスミドDNAを保持する大腸菌のハイグロマイシンB耐性試験結果を示す図である。 mut8由来のプラスミドDNAを保持する大腸菌由来のタンパク質のSDS−PAGEの結果を示す図である。 mut8由来のプラスミドDNAを保持する大腸菌のmRNA量を示す図である。 mut8由来のプラスミドDNAを保持する大腸菌のmRNA量の経時変化を示す図である。 免疫ブロットによるハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ検出(A)とその量(B)を示す図である。 ペプチドタグ一部欠損型プラスミドを含む大腸菌のハイグロマイシンB耐性試験結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[タンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNA]
本発明のDNAは、配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むペプチドをコードし、タンパク質の発現量を増加させる機能を有する。本発明のDNAが発現系において、構造遺伝子の一部として導入されていることにより、上記の遺伝子を発現させて得られるタンパク質の量を増大させることができる。
後述の実施例で示すように、本発明のDNAを導入することにより、構造遺伝子に基づくmRNA量が増加することから、タンパク質発現の過程においてmRNAの安定性が増加していると考えられ、このことに由来してタンパク質の量が増大すると考えられる。
本明細書において、発現量の増加は、本発明のDNAが導入されていない構造遺伝子でコードされるタンパク質の発現量と比較した増加であり、例えば、対応する天然型のタンパク質の発現量と比較した増加であればよい。
本発明のDNAは、発現系において、構造遺伝子の一部として導入されていればよい。本明細書において、「導入」は「挿入」または「付加」を意味する。特に、本発明のDNAは、天然型のタンパク質をコードする塩基配列の下流にあり、かつ、翻訳される領域の塩基配列として存在していることが好ましい。本発明のDNAは、さらに構造遺伝子の末端に導入されていることが好ましい。特に、発現するタンパク質のC末端のアミノ酸配列をコードするように導入されていることが好ましい。
本発明のDNAは、30個以下のアミノ酸からなるペプチドをコードしていることが好ましく、26個以下のアミノ酸からなるペプチドをコードしていることがより好ましい。特に、本発明のDNAが、構造遺伝子の一部として導入される場合、当該構造遺伝子でコードされるタンパク質のC末端の11〜30個のアミノ酸配列をコードしていることが好ましく、11〜26個のアミノ酸配列をコードしていることがより好ましい。
本発明のDNAの例としては、配列表の配列番号1、2、3、または4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードするDNAを挙げることができる。
具体的な塩基配列として、配列表の配列番号5で表される塩基配列を含むDNAを挙げることができる。また、配列表の配列番号1、2、3、または4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードするDNAとしては、それぞれ具体的に配列表の配列番号5、6、7、または8で表される塩基配列からなるDNAが挙げられる。
タンパク質の発現量を増加させる機能を有する配列表の配列番号5で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも本発明の一態様である。「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、その塩基配列あるいはその相補配列を有するDNAとBLAST解析で90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列を含むDNA等が挙げられる。また、ストリンジェントな条件下のハイブリダイゼーションとは、通常のハイブリダイゼーション緩衝液中で、温度が40〜70℃、好ましくは60〜65℃等で反応を行い、塩濃度が15mM〜300mM、好ましくは15mM〜60mM等の洗浄液中で洗浄を行う方法に従って行うことができる。
本発明のDNAの取得方法については特に制限はなく、例えばホスホアミダイト法などにより合成してもよく、特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって製造してもよい。
[タンパク質の製造]
本発明のDNAは発現系において、タンパク質を高発現させるために用いることができる。
本発明のDNAを用いたタンパク質の製造は、本発明のDNAを挿入または付加した遺伝子を用いればよい。
(遺伝子の取得)
本発明のDNAを用いたタンパク質の製造の際は、まず、タンパク質をコードする遺伝子を取得する。例えば天然型の遺伝子を大腸菌由来のcDNAライブラリーなどから取得すればよい。適当なプライマーを設計し、それらを用いて取得した遺伝子を鋳型にしてPCRを行えばよい。遺伝子の一部の断片をPCR等により得た場合には、作製した断片を順番に遺伝子組み換え技術により連結することにより、所望のタンパク質をコードする遺伝子を得ることもできる。
その後、上記のように得られる遺伝子に本発明のDNAを挿入または付加することができる。挿入または付加は上記タンパク質をコードする遺伝子の下流側に行うことが好ましい。DNAを挿入または付加する方法としては、公知の方法をいずれも用いることができる。特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてもよく、制限酵素を利用してもよい。
(ベクター)
得られた遺伝子はベクターに挿入して増幅することができる。用いることができるベクターの種類は特に限定されず、宿主中で複製可能なものであれば特に制限されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNAなどが挙げられる。
遺伝子をベクターに挿入するには、まず、精製された遺伝子を適当な制限酵素で切断し、適宜末端を平滑化、脱リン酸化等した後、公知のベクターDNAの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などをとることができる。
ベクターは、プロモータが機能的に連結された発現ベクターであることが好ましい。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜することができる。例えば、大腸菌で作動可能なプロモータとして、lac、trp若しくはtacプロモータなどを用いてもよい。
ベクターはターミネータを含むことが好ましい。ベクターは更に、ポリアデニレーションシグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5E1b領域由来のもの)、転写エンハンサ配列(例えばSV40エンハンサ)および翻訳エンハンサ配列(例えばアデノウイルス VA RNA をコードするもの)のような要素を有していてもよい。その他、スプライシングシグナル、リボソーム結合配列(シャイン・ダルガノ配列)などを含むように調製することもできる。ベクターは宿主細胞内で複製することを可能にするDNA配列を具備してもよい。
ベクターはさらに選択マーカーを含有していてもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のようなその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、または例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、スペクチノマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン若しくはハイグロマイシンBのような薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。
DNA、プロモータ、ならびに所望によりターミネータおよび/または分泌シグナル配列をそれぞれ連結し、これらを適切なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。
プラスミドとしては、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pET21、pET28、pGEX-4T、pQE-30、pQE-60などの大腸菌宿主用プラスミド、pUB110、pTP5などの枯草菌用プラスミド、YEp13、YEp24、YCp50などの酵母宿主用プラスミド、pBI221、pBI121などの植物細胞宿主用プラスミドなどを用いてもよい。ファージDNAとしてはλファージなどが挙げられる。更に、レトロウイルスまたはワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
(形質転換体)
タンパク質をコードする遺伝子または組み換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。
上記遺伝子またはベクターを導入する宿主細胞は、上記遺伝子を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌細胞、および昆虫、植物、または動物の細胞などの高等真核細胞等が挙げられる。
細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌または大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行なえばよい。
哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞またはCHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換し、該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法も公知であり、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられる。例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevis1ae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
他の真菌細胞の例としては、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞が挙げられる。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、公知の方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、タンパク質を発現させることができる(例えば、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manua1;及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Bio/Technology, 6, 47(1988)等に記載)。
バキュロウイルスとしては、例えば、ヨトウガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHiFive(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法またはリポフェクション法等を挙げることができる。
植物細胞を宿主として用いる場合には、特開2003−79372号公報の段落0034〜0036の記載を参照することができる。
本発明において、宿主細胞としては、大腸菌が好ましい。
上記の形質転換体は、導入された遺伝子の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。形質転換体の培養物から、タンパク質を単離精製するには、通常のタンパク質の単離、精製法を用いればよい。
例えば、タンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得ればよい。この無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製品を得ることができる。
[本発明のDNAでコードされるアミノ酸配列を含む変異型タンパク質]
本発明のDNAを含むベクターまたは本発明のDNAを含む遺伝子を利用して、所望のタンパク質を高い濃度で得ることができる。そのため、本発明のDNAを用いてタンパク質を高い効率で生産できる。
得られるタンパク質は、本発明のDNAでコードされるアミノ酸配列を含む変異型タンパク質である。本発明のDNAでコードされるアミノ酸配列は、変異型タンパク質のいずれの位置に含まれていてもよいが、末端に含まれることが好ましく、C末端に含まれることがさらに好ましい。
[変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ]
上記のタンパク質の製造方法で得られるタンパク質として、変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼが挙げられる。本発明の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼは、本発明のDNAでコードされるアミノ酸配列をC末端に含み、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する。ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性とは、ハイグロマイシンBをリン酸化することにより、ハイグロマイシンBの抗菌活性を失わせる活性を意味する。
本発明の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼは、以下A)〜(H)からなる群より選ばれるものであればよい。
(A)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(B)配列番号9で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(C)配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(D)配列番号10で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(E)配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(F)配列番号11で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(G)配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
(H)配列番号12で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ。
配列番号9、10、11、12で表されるアミノ酸配列それぞれの1位〜342位は、天然型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼのアミノ酸配列において、N末端のメチオニンに隣接するC末側にグリシンが付加されて、Met−がMet−Glyとなり、かつ、312位のアルギニンがシステインとなった配列に該当している。
本明細書において「1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
配列番号9、10、11、12で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列の好ましい例としては、312位のシステインがアルギニンに置換した配列、および287位のアラニンがバリンに置換した配列が挙げられる。
本発明の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼを作製する場合には、例えば天然型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼの情報を利用すればよい。所望の変異を導入するための遺伝子の操作方法は当業者に公知である。例えば、部位特異的変異誘発法、縮重オリゴヌクレオチドを用いるPCR、核酸を含む細胞の変異誘発剤または放射線への露出等の公知の技術を適宜使用することによって、変異を有するDNAを構築することができる。このような公知の技術は、例えば、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989、並びにCurrent Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987-1997)に記載されている。
発現量を増加させる機能を有する本発明のDNAでコードされるアミノ酸配列をコードする塩基配列は上述のように、挿入または付加すればよい。
得られる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子の例としては、配列表の配列番号13、14、15、または16で表される塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。
このように得られる遺伝子に基づき、タンパク質の製造として上述したように、変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼを製造すればよい。
本発明の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼは化学合成により製造してもよい。
[変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼの用途]
本発明の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼの遺伝子は、この遺伝子により形質転換された細胞株をハイグロマイシンB耐性にすることができる。従って、ハイグロマイシンBを添加した培地での培養では、上記遺伝子を有する細胞株のみが生育するため、本発明の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼの遺伝子は、発現系において選択マーカーとして使用することができる。
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
実施例において、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼをHPTという。
1.高活性(高発現)ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼの探索
(a)pET28b−HPTの作製
HPTのcDNA配列を鋳型DNA(Template 1)とし、プライマー1(5'- ATATCCATGGGCAAAAAGCCTGAACTCACCGCGAC -3')(配列番号17)およびプライマー2(5'- ATATGGATCCCGTTTCTTTGCCCTCGGACGAGTGC -3')(配列番号18)を用いてPCR法によりHPT遺伝子を増幅した。以下の反応溶液25μLにて行った。
5 x PrimeSTAR Buffer(Mg2+ plus) 10.0μL
dNTP Mixture(2.5 mM each) 4.0μL
プライマー1(10μM) 1.5μL
プライマー2(10μM) 1.5μL
PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(2.5 unit/μL) 1.0μL
Template 1 250 ng
滅菌蒸留水を加えて50 μLに調製
サーマルサイクラーは以下の通りプログラムした。
(1)98℃ 2分
(2)98℃ 10秒
(3)55℃ 15秒
(4)68℃ 1分
(5)68℃ 10分
(6) 4℃ 保持
(2)〜(4)を30サイクル行った。
PCR増幅産物は制限酵素Nco IおよびBam HIにより消化し、DNA Ligation kit<Mightty Mix>(TAKARA)を用いて、pET28bプラスミド(Novagen)のNco IおよびBam HIサイトに挿入して連結した。この連結したプラスミドDNA(pET28b−HPT)を用いて大腸菌コンピテントセル(DH5α)を形質転換した。形質転換した大腸菌細胞に、500μLのLB液体培地を加え、37℃で、1時間培養した。培養後の大腸菌細胞を50μg/mlのカナマイシンを含むLB固体培地で37℃にて12時間培養した。コロニーは50μg/mlのカナマイシン、0.1%のL−アラビノースを含むLB液体培地で37℃にて16時間培養し、回収した大腸菌細胞からHiYield Plasmid Mini Kit (RBC Bioscience)を用いてプラスミドDNAを回収した。
(b)変異型HPT遺伝子ライブラリーの作製
変異型HPT遺伝子の作製にはGeneMorph II random Mutagenesis Kit (Agilent)を使用した。pET28b−HPTを鋳型DNA(Template 2)としてプライマー3(5'- CGCGAAATTAATACGACTCACTATA -3')(配列番号19)およびプライマー4(5'- TTATGCTAGTTATTGCTCAGCG -3')(配列番号20)を用いて以下の反応溶液25μLを準備しPCR法によってHPT遺伝子を増幅した。

滅菌蒸留水 35μL
10 x Mutazyme II reaction buffer 5μL
40 mM dNTP mix (200μM each final) 1μL
プライマー3 1μL
プライマー4 1μL
Mutazyme II DNA polymerase (2.5 U/μL) 1μL
Template 2 (250ng/μL) 5μL
Total 50μL
サーマルサイクラーは以下の通りプログラムした。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 1分
(3)50℃ 1分
(4)72℃ 1分30秒
(5)72℃ 10分
(6) 4℃ 保持
(2)〜(4)を30サイクル行った。
前述の操作によって得たPCR増幅産物を制限酵素Xba IおよびBam HIにより消化し、DNA Ligation kit<Mightty Mix> (TAKARA)を用いてpET28bプラスミドのXba IおよびBam HIサイトに挿入して連結した。この連結したプラスミドDNAを用いて大腸菌コンピテントセル(DH5α)を形質転換した。形質転換した大腸菌細胞に、500μLのLB液体培地を加え、37℃で1時間培養した。培養後の大腸菌細胞を50μg/mlのカナマイシンを含むLB固体培地で37℃にて12時間培養した。全ての大腸菌コロニーをLB液体培地で回収し、QIAGEN Plasmid Plus Maxi Kit (QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを抽出した。このプラスミドDNA集団を変異型HPT遺伝子ライブラリーとして、これ以降の実験に用いた。
(c)ハイグロマイシンB耐性クローンの選抜
前述の操作によって変異型HPT遺伝子ライブラリーを大腸菌コンピテントセル(BL21−AI)に形質転換した。形質転換した大腸菌細胞に500μLのLB液体培地を加え、37℃で1時間培養した。培養後の大腸菌細胞を250μg/mlのハイグロマイシンB、50μg/mlのカナマイシンを含むLB固体培地で37℃にて12時間培養し、ハイグロマイシンB高耐性コロニー(mut1〜mut20)を単離した。ハイグロマイシンB高耐性コロニーは250μg/mlハイグロマイシンB、50μg/mlのカナマイシン、0.1%のL−アラビノースを含むLB液体培地で37℃にて16時間培養し、回収した大腸菌細胞からHiYield Plasmid Mini Kit(RBC Bioscience)を用いてプラスミドDNAを回収した。
(d)ハイグロマイシンB耐性試験
各コロニー(mut1〜mut20)由来の上記で回収した各プラスミドDNA、pET28bプラスミド(empty)、pET28b−HPT(HPT-c-His)、ならびにHisタグおよびリンカーが付かないHPTが発現するようにpET28bを用いて別途調製したプラスミド (HPT)をそれぞれ保持する大腸菌を50μg/mlのカナマイシンを含む25mlのLB培地に植菌し、OD600=0.5になるまで37℃で液体培養した。その培養液をOD600=0.1、0.01、0.001、0.0001、0.00001になるようにLB培地で希釈した。各希釈液 10μLを250μg/mlハイグロマイシンBを含むあるいは含まない、LB固体培地(カナマイシン 50μg/ml、L−アラビノース 0.1%)に滴下し、37℃で16時間培養した。結果を図1に示す。
さらに、mut1〜mut8、mut10、mut12、およびmut18由来のプラスミドDNA、pET28bプラスミド(empty)、pET28b−HPT(HPT-c-His)、ならびにHisタグおよびリンカーが付かないHPTが発現するようにpET28bを用いて別途調製したプラスミド(HPT)をそれぞれ保持する大腸菌を50μg/mlのカナマイシンを含む25mlのLB培地に植菌し、OD600=0.5になるまで37℃で液体培養した。その培養液をOD600=0.1、0.01、0.001、0.0001、0.00001になるようにLB培地で希釈した。各希釈液10μLを750μg/mlハイグロマイシンBを含むあるいは含まない、LB固体培地(カナマイシン 50μg/ml、L−アラビノース 0.1%)、および1000μg/mlハイグロマイシンBを含むあるいは含まない、LB固体培地(カナマイシン 50μg/ml、L−アラビノース 0.1%)に滴下し、37℃で16時間培養した。結果を図2に示す。図2より、mut8が最も高いハイグロマイシンB耐性を示していることがわかる。
(e)SDS−PAGE
mut8由来のプラスミドDNA(mut 8)、pET28bプラスミド(empty)、pET28b−HPT(HPT-c-His)、ならびにHisタグおよびリンカーが付かないHPTが発現するようにpET28bを用いて別途調製したプラスミド(HPT)をそれぞれ保持する大腸菌を、50μg/mlのカナマイシンを含む25mlのLB培地に植菌し、OD600=0.5になるまで37℃で液体培養した。その後、L−アラビノースを終濃度0.1%になるように添加し、さらに37℃で4時間培養した。その大腸菌の総タンパク質溶液を試料として、10%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEによりタンパク質を分離した。各レーンには10μgのタンパク質を供した。電気泳動後の10%ポリアクリルアミドゲルはCoomassie Brilliant Blue 染色することでタンパク質を検出した。
結果を図3に示す。
Emptyで観測されていないバンド(*)として、mut8において、pET28b−HPTで観測されたバンドよりも高分子量にバンドが確認された。
(f)mRNA量
Real-time PCRを用いて以下の手順で、mRNA量を測定した。
Real-time PCRは、FastStart Universal SYBR Green Master(ROX)(Roche)を用いた。また、Real-time PCRの解析は、LightCycler(登録商標)96 System(Roche)を用いて行った。
(f-i) mut8由来のプラスミドDNA(mut 8)ならびにHisタグおよびリンカーが付かないHPTが発現するようにpET28bを用いて別途調製したプラスミド(HPT)をそれぞれ保持する大腸菌を、50μg/mlのカナマイシンを含む25mlのLB培地に植菌し、OD600=0.5になるまで37℃で液体培養した。その後、L−アラビノースを終濃度0.1%になるように添加し、さらに37℃で4時間培養した。その大腸菌を試料としてホットフェノール法によるTotal RNAの粗精製、Rneasy(登録商標) Mini Kit(Qiagen)およびRNase-Free DNase Set(Qiagen)による再精製を行った。さらに、PrimeScript RT Master Mix (TAKARA)によってcDNA を合成した。HPT遺伝子の検出にはプライマー5(5'- ACATTGGGGAGTTTAGCGAGAG -3')(配列番号21)とプライマー6(5'- AGCGGGCAGTTCGGTTT -3')(配列番号22)また、NPTII遺伝子の検出にはプライマー7(5'- TCCCCGGGAAAACAGCA -3')(配列番号23)とプライマー8(5'- CAAAATCACTCGCATCAACCA -3')(配列番号24)を用いた。mRNA量はpET28bに含まれるNPTII遺伝子対応のmRNA量に基づいて標準化した。結果を図4に示す。
図4から、mut8由来のプラスミドDNAからは、Hisタグおよびリンカーが付かないHPTを発現するプラスミドからと比較して、約2倍のmRNAが転写されていることが分かる。
(f-ii)mut8由来のプラスミドDNAおよびpET28b由来のHisタグの付かないHPT(HPT)をそれぞれ保持する大腸菌を、50μg/mlのカナマイシンを含む25mlのLB培地に植菌し、OD600=0.5になるまで37℃で液体培養した。その後、L−アラビノースを終濃度0.1%になるように添加し、さらに37℃で4時間培養した。L−アラビノース添加後、0、12、3、4時間後の各大腸菌を試料としてホットフェノール法によるTotal RNAの粗精製、Rneasy(登録商標) Mini Kit (Qiagen) およびRNase−Free DNase Set(Qiagen)による再精製を行った。さらに、PrimeScript RT Master Mix (TAKARA)によって cDNA を合成した。HPT遺伝子の検出にはプライマー5(配列番号21)とプライマー6(配列番号22)また、NPTII遺伝子の検出にはプライマー7(配列番号23)とプライマー8(配列番号24)を用いた。mRNA量はpET28bにコードされるNPTII遺伝子対応のmRNA量に基づいて標準化した。結果を図5に示す。
図5から、アラビノース添加から1時間後において、mut8由来のプラスミドDNAからは、天然型のHPTを発現するプラスミドからと比較して、約0.5倍のmRNAが転写されているが、4時間後では約3倍のmRNAが転写されていることが分かる。mRNAの安定性の増加により大腸菌内でmRNAが蓄積しやすくなり、時間の経過とともに、mut8由来のプラスミドDNAから転写されたmRNA量が相対的に増加したと考えられる。
(g)免疫ブロット
さらに、免疫ブロットを行った。
mut8由来のプラスミドDNAならびにHisタグおよびリンカーが付かないHPTが発現するようにpET28bを用いて別途調製したプラスミド(HPT)をそれぞれ保持する大腸菌を、50μg/mlのカナマイシンを含む25mlのLB培地に植菌し、OD600=0.5になるまで37℃で液体培養した。その後、L−アラビノースを終濃度0.1%になるように添加し、さらに37℃で4時間培養した。その大腸菌の総タンパク質溶液を試料として、10%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEによりタンパク質を分離した。各レーンには2.5μgのタンパク質を供した。電気泳動後のゲルからPVDF膜へタンパク質を転写した。HPTタンパク質の検出には、一次抗体として、抗HPT抗体(Anti−HPT: MBS)を10,000倍希釈で、二次抗体として、抗マウスIgG抗体(Anti−Mouse IgG: MBL)を10,000倍希釈で使用した。タンパク質の検出にはECL-select(GE-Healthcare)、冷却CCDカメラ(Light Capture: Gentaur Molecular Products)を使用した。また、定量のための画像解析にはImage J(http://imagej.nih.gov/ij/)を用いた。
結果を図6(A)、(B)に示す。
図6(A)、(B)から、mut8由来のプラスミドDNAを保持する大腸菌においては、Hisタグおよびリンカーが付かないHPTを発現するプラスミドを保持する大腸菌と比較して、1.5倍程度の高濃度でHPTが発現していることがわかる。
2.高発現ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼの配列
mut1〜mut20由来のそれぞれのプラスミドDNA溶液をシークエンス反応に用いた。以下の組成の反応溶液10μLを準備し、シークエンス反応を行った。

5 x sequence buffer 1.5μL
プライマー (3.2μM) 1.0μL
BigDye 1.0μL
プラスミドDNA 300 ng
水を加えて10μLに調製
サーマルサイクラーは以下の通りプログラムした。
(1)96℃ 1分
(2)95℃ 10秒
(3)50℃ 5秒
(4)60℃ 4分
(5) 4℃ 保持
(2)〜(4)を30サイクル行った。
3500 Genetic Analyzer (Applied Biosystems)を用いた解析によって、プラスミドDNAに含まれる塩基配列を同定した。
その結果、mut1〜mut8、mut10〜mut13、mut16、およびmut17由来のプラスミドDNAにおいては、天然型HPTをコードする塩基配列のHPTの下流側に26アミノ酸からなるペプチドタグアミノ酸配列(配列番号4)をコードする塩基配列が確認された。この配列は、pET28b由来のHisタグおよびリンカーをコードする塩基配列において、2塩基が欠失した配列に該当していた。さらに、mut4においては天然型HPTの286位(287位)のアラニンのバリンへの置換に該当する変異があり、mut8(配列番号13)においては天然型HPTの311位(312位)のアルギニンのシステインへの置換に該当する変異が見られた。(括弧内のアミノ酸の位置は、探索過程でNco I 制限酵素部位を設けるため、天然型HPTのN末端対応部分のATGのあとにGGCが付加されているために1位ずれた後の位置である。)
3.タンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNAの確認
(a)ペプチドタグ一部欠損型プラスミドの作製
最も高いハイグロマイシンB耐性を示したmut8から回収されたプラスミドDNA(pET28b−HPT−mut8)に基づき、ペプチドタグ一部欠損型プラスミドを作製した。上記26アミノ酸からなるペプチドタグを有する変異HPTに対し、C末端が5アミノ酸欠損したpET28b−HPT−mut8−21AA、C末端が10アミノ酸欠損したpET28b−HPT−mut8−16AA、C末端が15アミノ酸欠損したpET28b−HPT−mut8−11AAを調製した。
ペプチドタグ一部欠損型プラスミドDNAの作製には、Dpn Iを介した部位特異的変異導入法を用いた。pET28b−HPT−mut8を鋳型DNA(Template 3)として以下の反応溶液25μLを準備しPCR法によりペプチドタグ一部欠損型プラスミドを増幅した。pET28b−HPT−mut8−21AAの増幅にはプライマー9(5'- TAACAAAGCCCGAAAGGAAGCTGAGTTGGCTGCT -3'(配列番号25))およびプライマー10(5'- GTGGTGGTGGTGGTGGTGCTCGAG -3'(配列番号26))、pET28b−HPT−mut8−16AAの増幅にはプライマー9およびプライマー11(5'- CCTCAGCAAGCTTGTCGACGGAGCTCGAATTGATC -3'(配列番号27))、pET28b−HPT−mut8−11AAの増幅にはプライマー9およびプライマー12(5'- CCTCATGCTCGAGTGCGGCCGCAAGCTTGTC -3'(配列番号28)を使用した。

10 x PCR buffer for KOD -Plus- Neo 2.5μL
2 mM dNTPs 2.5μL
25 mM MgSO4 1.5μL
プライマー9(10μM) 0.75μL
プライマー10、11、または12(10μM) 0.75μL
Template 3 10 ng
滅菌蒸留水を加えて25μLに調製
サーマルサイクラーは以下の通りプログラムした。
(1)94℃ 2分
(2)98℃ 10秒
(3)55℃ 30秒
(4)68℃ 5分
(5) 4℃ 保持
(2)〜(4)を30サイクル行った。
PCR増幅産物はエタノール沈殿により精製後、制限酵素Dpn Iにより鋳型DNA(Template 3)を消化し、DNA Ligation kit<Mightty Mix> (TAKARA)を用いてセルフライゲーションにより環状化した。(1)と同様の方法により、環状化したプラスミドDNAを大腸菌コンピテントセル(DH5α)に形質転換し、目的のDNA配列を含むプラスミドDNAを得た。
(b)ハイグロマイシンB耐性試験
得られたペプチドタグ一部欠損型プラスミドを保持する大腸菌を50μg/mlのカナマイシンを含む25mlのLB培地に植菌し、OD600=0.5になるまで37℃で液体培養した。その培養液をOD600=0.1、0.01、0.001、0.0001、0.00001になるようにLB培地で希釈し、各希釈液 10μLを250μg/mlハイグロマイシンBを含むあるいは含まない、LB固体培地(カナマイシン 50μg/ml、L−アラビノース 0.1%)に滴下し、37℃で16時間培養した。結果を図7に示す。
図7よりわかるように、ペプチドタグ一部欠損型プラスミドを保持するいずれの大腸菌も高ハイグロマイシンB耐性を示していた。すなわち、11アミノ酸からなるペプチドタグを有する変異HPT、16アミノ酸からなるペプチドタグを有する変異HPT、および21アミノ酸からなるペプチドタグを有する変異HPTのいずれを発現した大腸菌も、26アミノ酸からなるペプチドタグを有する変異HPTと同等、またはそれ以上の薬剤耐性を示した。
4.タンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNAの応用
配列表の配列番号4で示されるアミノ酸配列をC末端側に有する変異型タンパク質を緑色蛍光タンパク質(GFP−S65T)について設計し、上記変異HPTと同様に細胞中での発現量を調べたところ、SDS−PAGEにおいて高い発現量を示すバンドが確認された。

Claims (11)

  1. 配列表の配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む26個以下のアミノ酸からなるペプチドをコードする、タンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNA。
  2. 配列表の配列番号1、2、3、または4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードする請求項1に記載のDNA。
  3. 配列表の配列番号5で表される塩基配列を含む請求項1に記載のDNA。
  4. 配列表の配列番号5、6、7、または8で表される塩基配列からなる請求項1に記載のDNA。
  5. 配列表の配列番号5で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ26個以下のアミノ酸からなるペプチドをコードするDNAである、タンパク質の発現量を増加させる機能を有するDNA。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のDNAでコードされるアミノ酸配列をC末端に含む、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ。
  7. 下記(A)〜(H)からなる群より選ばれる、請求項6に記載の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ:
    (A)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
    (B)配列番号9で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
    (C)配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
    (D)配列番号10で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
    (E)配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
    (F)配列番号11で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
    (G)配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ;
    (H)配列番号12で表されるアミノ酸配列の1位〜342位において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ活性を有する変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ。
  8. 請求項6または7に記載の変異型ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼをコードする遺伝子。
  9. 配列表の配列番号13、14、15、または16で表される塩基配列からなる請求項8に記載の遺伝子。
  10. 請求項8または9に記載の遺伝子を含むベクター。
  11. 請求項10に記載のベクターを含む形質転換体。
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