JP6960973B2 - 時計のテンプ - Google Patents

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Description

本発明は、時計のテンプ、及び時計の速度を調整するための方法に関する。
時計において、共振器は古典的にぜんまい‐テンプを含む。上記ぜんまい‐テンプはまさに、時計の機械式ムーブメントの心臓部である。というのは、上記ぜんまい‐テンプはその発振によって時間の速度を調速し、機械式ムーブメントの精度を担うものであるためである。ぜんまい‐テンプの発振周期は特に、テンプの慣性と、ひげぜんまいの剛性とに依存する。上記周期は、多数の副次的現象、特に温度によるひげぜんまいの剛性の変動、テンプに対する空気の摩擦の変動、テンプ上の不均衡の存在、又はぜんまい‐テンプの真のホゾに存在する間隙にさえ、影響される。数秒/日程度の偏差は、機械式ムーブメントを備えた時計に関しては一般的に許容されるものの、共振器の製造中に、又は時計ムーブメントのケースへの組み込み中にも、上述の副次的現象の全てを慎重に制御する必要がある。
従来、テンプの慣性及び不均衡は、共振器の等時性曲線を最大限に厳密にするために、複数の連続した測定及び機械加工ステップ中に機械加工を行うことによって、材料を除去することにより、調整される。それにもかかわらず、ケースへの組み込みによってムーブメントに対して生成される応力によって、又はケースの密閉環境によって誘発される空気力学的な変化によっても、速度はケースへの組み込み時に大きく変化することが認められてきた。従って、ムーブメントのケースへの組み込み後に、上記ムーブメントの速度を正確に調整するための最終調整を実施する必要がある。上記最終調整は、様々な方法で、特に:テンプ上に配設された慣性ブロックの位置の調整によって;インデックス組み付けシステムを用いたひげぜんまいの有効長の調整によって;レーザ源を用いたテンプからの材料のアブレーションによって;又はテンプ上での射出による材料の追加によっても、実施できる。
しかしながら、上記最終調整を実施する上記様々な方法は、多くの欠点を有する。
例えば、慣性ブロックの位置又はひげぜんまいの有効長の調整は、作業者にとって繊細な作業であり、自動化が困難である。更に、インデックス組み付けシステムは、時間と共に、特に衝撃を受けた場合に、機能が低下する可能性がある。レーザによる材料のアブレーションは、テンプの美的外観を劣化させ、ムーブメントに炭化材料の堆積を引き起こす場合がある。最後に、特にエアロゾルジェットタイプのプリンタによって生成される、自動化された方法による液体形態の材料の射出による材料の追加は、テンプに材料が衝突することによって発生する跳ねを引き起こす場合があり、これが広がって時計ムーブメントを汚染する場合がある。
従って、本発明の1つの目的は、材料の射出によるムーブメントの速度の正確な調整に好適であり、かつ特にムーブメント内に広がり得る跳ねの問題を緩和するために最適化された、ぜんまい‐テンプタイプの共振器のテンプを提案することである。
本発明の別の目的は、本発明によるテンプを備える共振器を備える時計を調整するための方法を提案することである。
このような意図で、本発明は、時計のテンプに関し、上記テンプは調整面を含み、上記調整面は、特に上記テンプの慣性及び不均衡の修正による上記時計の速度の調整の実装のために、射出された材料を受承するよう設けられた、少なくとも1つの凹部を備え、上記凹部は、開口と、後部、特に中実後部、又は全体若しくは一部がオリフィスを形成する後部とを含み、上記テンプにおいて:
‐上記後部は、特に上記開口の中心軸上の、上記開口の上方のある定義された位置から、最大でも一部が視認可能であり;又は
‐上記後部は、上記後部の最大幾何学的寸法より大きな又は大幅に大きな、上記開口との間隙を有する。
他の実施形態では:
‐上記開口は、上記調整面内に、上記後部が上記位置から最大でも一部が視認可能となるように、上記凹部の上記後部に対して構成され;
‐上記開口は、上記凹部の上記後部の表面より小さな又は大幅に小さな表面を画定する、縁部を含み;
‐上記凹部は、上記開口の上記中心軸と鋭角を形成する方向に延在し;
‐上記凹部は、基本的にフレア形状、長方形、又は円形の垂直断面を有し;
‐上記凹部は、基本的に長方形、正方形、円形、又は台形の垂直断面を有し;
‐上記凹部は内壁を含み、上記内壁には、上記壁の表面の一部分にわたって、略水平に、又は全体若しくは一部が水平に延在する、突起が設けられ;
‐上記テンプは、テンワ、天真上で枢動するように設置されるよう構成されたハブ、及び上記テンワを上記ハブに接続する少なくとも1つのアームを含み、上記テンプの上記テンワは、上記少なくとも1つの凹部を備え;
‐上記テンプは、複数の上記アームを含み、上記アームのうちの少なくとも1つは、上記少なくとも1つの凹部を含み;
‐上記複数の凹部は、上記テンワの外周上に均等又は不均等に分布し;
‐少なくとも3つの上記凹部が、上記テンワの上記外周上に均等に分布し、各上記凹部は、20°〜90°、好ましくは40°〜60°で変動する角度の円弧に延在する。
本発明はまた、上記テンプを含む時計の速度を調整するための方法にも関し、上記方法は以下のステップを含む:
‐上記時計の上記速度を測定するステップ;
‐上記時計の補正済み速度を得るために、上記テンプの慣性及び/又は不均衡に対して適用する補正値を決定するステップ;並びに
‐上記補正値に従って上記テンプの上記慣性を修正するために、上記テンプに配設された1つ以上の凹部内に材料を適用するステップ。
有利には、上記適用するステップは、上記材料を、これらの凹部のうちの1つ以上の中に射出するサブステップを含む。
特に、上記射出するサブステップは、これらの凹部のうちの1つ以上の中に上記材料を選択的に射出するための段階を含む。
また有利には、上記射出するサブステップ中に、1つ以上のタイプの材料を上記テンプ上に射出する。
更に、上記方法は、上記テンプを含む時計ムーブメントを上記時計のミドルケース内に配設するステップを含む。
本発明はまた、上述のようなテンプを備える時計にも関する。
その他の具体的特徴及び利点は、添付の図面を参照した、例示的かつ非限定的な例としての以下の説明から明らかになるだろう。
図1は、本発明の一実施形態による、3つの凹部を備えるテンプの上面図である。 図2は、本発明の上記実施形態による、4つの凹部を備えるテンプの上面図である。 図3は、本発明の上記実施形態による、上記凹部の第1の変形例を示し、上記凹部はそれぞれ、上記凹部の開口の上方のある定義された位置から最大でも一部が視認可能な、後部を含む。 図4は、本発明の上記実施形態による、上記凹部の第1の変形例を示し、上記凹部はそれぞれ、上記凹部の開口の上方のある定義された位置から最大でも一部が視認可能な、後部を含む。 図5は、本発明の上記実施形態による、上記凹部の第1の変形例を示し、上記凹部はそれぞれ、上記凹部の開口の上方のある定義された位置から最大でも一部が視認可能な、後部を含む。 図6は、本発明の上記実施形態による、上記凹部の第1の変形例を示し、上記凹部はそれぞれ、上記凹部の開口の上方のある定義された位置から最大でも一部が視認可能な、後部を含む。 図7は、本発明の上記実施形態による、上記凹部の第1の変形例を示し、上記凹部はそれぞれ、上記凹部の開口の上方のある定義された位置から最大でも一部が視認可能な、後部を含む。 図8は、本発明の上記実施形態による、上記凹部の第1の変形例を示し、上記凹部はそれぞれ、上記凹部の開口の上方のある定義された位置から最大でも一部が視認可能な、後部を含む。 図9は、本発明の上記実施形態による、上記凹部の第2の変形例を示し、上記凹部はそれぞれ後部を含み、上記後部は、上記後部の最大幾何学的寸法より大きな又は大幅に大きな、上記開口との間隙を有する。 図10は、本発明の上記実施形態による、上記凹部の第2の変形例を示し、上記凹部はそれぞれ後部を含み、上記後部は、上記後部の最大幾何学的寸法より大きな又は大幅に大きな、上記開口との間隙を有する。 図11は、本発明の上記実施形態による、上述のようなテンプを含む時計を示す。 図12は、本発明の上記実施形態による、時計の速度を調整するための方法に関するフローチャートを示す。 図13は、本発明の上記実施形態による、2つのアーム及び4つの凹部を備えるテンプの上面図である。
図1〜10、13を参照すると、本発明は、図11で確認できる時計100の時計ムーブメント110のぜんまい‐テンプタイプの共振器120のテンプ10に関する。このようなテンプ10は少なくとも1つの凹部15を備え、これは、時計100の、従って時計100のムーブメント110の速度の調整の実装のために、射出された材料を受承するために設けられる。このようなテンプ10の凹部15は、溝又はキャビティとしても知られるが、これは、以下で説明される上記時計100の速度を調整するための方法の間に、材料の射出を受承するために好適なものである。
この目的のために、図1、2、13では、テンプ10は:テンワ11;天真16上で枢動するように設置されるよう構成されたハブ12;テンワ11をハブ12に接続する、1つ以上のアーム13、例えば2つ、3つ又は4つのアーム13を備える。テンプ10は調整面14を含み、これは平坦又は略平坦であり、また天真16に対して垂直な平面内に延在する。上記調整面14は、上記ケース内に設置された時計ムーブメント110にテンプ10が含まれている場合に、時計100のケースの後部に向かって配向される。上記調整面14は、テンプ10のテンワ11内に含まれる/画定される第1の部分14aと、上記テンプ10のアーム13内の第2の部分14bとを含む。
上述したように、テンプ10は少なくとも1つの凹部15を含む。このような凹部15は、溝、キャビティ、又は凹状構造であってもよく、開口15aと、略平坦な表面を有してよい中実の後部15bと、上記開口15aを上記後部15bに接続する内壁15cとを有する。「中実の(solid)」後部はここでは、開口/オリフィスを有しない後部であるものと理解されるものとする。一変形例では、上記凹部15は、貫通孔を形成する通路であってよく、開口と、全体又は一部がオリフィス/開口を形成する/含む後部とを含む。凹部15は、テンプ10のテンワ11内、又はアーム13のうちの1つの中に画定され得る。テンプ10が複数の凹部15を備える場合、これらは、上記テンプ10のアーム13内のみ、又はテンワ11内のみ、又は上記テンプ10のアーム13及びテンワ11内に分布してよい。あるいは、テンプ10が1つの凹部15を含む場合、これは、テンワ11の輪郭全体を巡る調整面14内に画定されていてよい。上述の最後の構成は特に、この文脈においてムーブメントが既に速度測定のための垂直位置にあり、従って操作の数が少なくなるという事実により、テンプの不均衡がより効果的に補正されることによって、ムーブメントの速度の調整の提供を可能とする。更に、1つ以上の凹部がテンワ11の調整面14の他の部分に画定されているテンプに比べて、実施される補正の効果は強化される。というのは、この選択肢では、材料の堆積が、テンプの回転軸から更に離れた位置で実施され、更に、同一の補正のために追加される材料がより少なく、又は同一量の材料の追加で得られる補正がより大きくなるためである。
このような凹部15は、掘削及び/又は深掘りレーザ彫刻作業によって、テンプ10内に形成してよい。上記凹部15はまた、(例えばDRIEエッチング若しくは印刷、又はレーザ照射及びウェットエッチングによって)テンプ10又はこれを構成するテンワ若しくはアームの3次元製造作業中に、あるいは一方が貫通孔を備える2つの部品の層を組み立てるための作業によって、形成してもよい。上記組み立て作業は、「ウェハ接着(wafer bonding)」タイプの技法、又は両側深掘り反応性イオンエッチング、超音波接着、又はピン打ち抜き、又は螺合法等によって実施できる。
図1、2に示されている、凹部15がテンプ10の調整面14の一部分14a内にのみ、即ちテンワ11内にのみ画定されている例では、テンワ11は複数の開口15aを備え、これらは、対応する凹部15の内部容積へのアクセスを提供する。上記構成では、各凹部15、従って対応する各内部容積は、テンプ10の慣性を修正するための材料の射出を受承するよう構成される。限定するものではないが、上記射出される材料は、液体、ペースト状、又は固体状態であってよく、接着剤、塗料、又は金属懸濁液を含んでよい。このような材料は、本実施形態では、液体状態/形態の材料であることが好ましい。更に、上記材料は、例えば換気デバイスと相互作用するのに適当な冷却源又は加熱源に曝露された場合に、硬化できるものであってよい。あるいは、上記射出される材料が、例えばフレーク状又は破片状の銀、タングステン又は炭化タングステンを含むインクを含む、固体状態である場合、上記材料は、テンプ10上への射出後に、いずれの特定の後処理を必要としない。
図1では、テンワ11は、調整面14の一部分14aに画定されたテンワ11の外周上に分布する複数の凹部15、例えば3つの凹部15を備える。各凹部15は、例えば5°〜120°、好ましくは30°〜60°の角度の円弧に延在する。図2では、テンワ11は、上記テンワ11の外周上に分布する複数の凹部15、例えば4つ以上の凹部15を備える。上記凹部15は、90°未満、好ましくは5°未満の角度の円弧に延在する。
これら2つの実施形態では、凹部15は例えば、テンプ10のテンワ11の上記外周上に等間隔に分布してよく、これにより、凹部の全体又は一部における、射出された材料の対称な分布が得られ、これにより、最終調整中にテンプ10の重心を修正することなく、テンプ10の慣性が修正され、従ってムーブメント110の速度の正確な調整に寄与する。上述の2つの実施形態による凹部15は、別の例によると、テンワ11の外周上に非対称に分布してよく、これにより、テンプ10の慣性及びテンプ10の重心が、上記非対称の凹部の全て又は一部への材料の射出によって修正される。別の例では、テンプ10の凹部15は、テンプ10のテンワ11上に対称に分布し、上記凹部15のうちの、互いに対して非対称な構成を有する一部のもののみに、材料を射出してよい。
有利には、凹部15は、ある特定の形状を有し、これにより、ムーブメントを時計100のミドルケース内に配設して駆動させた後での、ムーブメントの速度を正確に調整するために必要な最終調整中に、射出された材料が凹部15の後部15bに衝突することによって発生する可能性がある跳ねを、凹部15の内部容積内に内包し、これによって時計ムーブメント110の汚染を防止する。
上記テンプ10の凹部15は、全体として凹状の形状を有し、また、これが凹部15の第1の代替的な変形例又は第2の代替的な変形例のいずれに属するかに応じて、2つのタイプのものとなり得る。図3〜8で確認できる凹部の第1の変形例では、凹部15の後部15bは、凹部の開口15aの上方に画定されたある位置から、最大でも一部が視認可能である。上記位置はここでは、テンプ10の調整面14の上方、かつ好ましくは図3で確認できる開口15aの中心軸17a上に配設された、「視点(viewpoint)」である。上記位置は、上記凹部15に材料を射出するために設けられたデバイスの出力オリフィスの位置と同様である。従って、このような凹部15は、凹部15の対応する後部15bに対して開口15aを構成すると考えることができることを理解されたい。
図3〜6に示す凹部15の上記第1の変形例の第1の副次的変形例では、上記凹部15の開口15aは、凹部15の後部15bの表面よりも小さな又は大幅に小さな表面を含むアクセス空間を画定する、縁部を含んでよい。上記構成では、後部15b及び開口15aの、従ってこれらそれぞれの表面の、中心軸17a、17bは、好ましくは一致する。よって、凹部15の後部15bのある程度の部分が、開口15aの縁部によって隠される。図7に示す第2の副次的変形例では、凹部15は、開口15aの中心軸17aと鋭角αを形成する方向18に延在する。換言すれば、上記凹部15の開口15aは後部15bに対してオフセットされて配設され、従って上記後部15bは、上記開口15aの上方に画定された上記位置から最大でも一部が視認可能となる。上記構成では、後部15b及び開口15aの、従ってこれらそれぞれの表面の、中心軸17a、17bは、一致しない。図8で確認できる第3の副次的変形例では、凹部15は内壁15cを含み、これは、上記壁15cの表面の一部分の上に略水平に又は全体若しくは一部が水平に延在する、突起19を備える。上記突起19は、内壁15cと一体として形成されていてよく、又は凹部15の内部容積内に配設されたインサート(例えばねじ)であってよい。上記突起19は、上記後部15bが、上記開口15aの上方に定義された上記位置から最大でも一部が視認可能となるように、凹部15の後部15bを部分的に覆う/隠すよう、定義されることが理解される。
上記第1の変形例では、凹部15は、基本的に長方形、正方形、円形、又は台形の断面を有する。上記断面は、垂直断面としても知られ、テンプ10の調整面14に対して垂直な垂直横断平面内にある。
図9、10で確認できる凹部15の第2の変形例では、後部15bは、凹部15の後部15bの最大幾何学的寸法より大きな又は大幅に大きな、上記開口15aとの間隙を有する。この間隙は、凹部15の深さに対応し、上記最大幾何学的寸法はここでは、上記後部15bが基本的に長方形である場合には長さ、又は上記後部15bの形状が略円形である場合には直径であってよい。上記第2の変形例では、凹部15は、基本的にフレア形状、長方形、又は円形の垂直断面を有する。
凹部15の上記2つの変形例の断面の形状は特に、以下に関与することに留意されたい:
‐材料の射出後に発生し得る跳ねの閉じ込め;
‐調整面14上の材料堆積物の位置の幾何学的定義;
‐調整面14上の材料堆積物の美観の改善;
‐調整面14の準備とは独立した、調整面14上の材料堆積物の接着性の改善;
‐時計ムーブメント110の操作中に発生し得る、使用され得るエアピンセットに対する材料堆積物の保護。
この文脈において、凹部15は、テンプ10の調整面14へと続き、上記面14は、時計ムーブメント110が上記ケース内に設置されたときに、時計100のケースの後部に対向して配設されるよう構成される。上記構成によると、結果として、自動タイプのムーブメントに関して、上記時計100の発振錘がムーブメント110の共振器から解放されることを保証しながら、テンプ10の上方の材料射出デバイスを調整することによって、ケースの裏蓋であるケースバックをケースの胴部である上記ミドルケースと組み立てる前に、時計ムーブメント110を時計100のミドルケース内に設置したときの、時計ムーブメント110の速度の最終調整が可能となる。上記材料射出デバイスは、極めて少量の材料を極めて正確に射出できる、エアロゾルジェットタイプのプリンタであってよい。
図12を参照すると、本発明はまた、時計ムーブメント110の速度を調整するための方法にも関する。上記方法は、テンプ10を含む時計ムーブメント110を時計100のミドルケース内に配設するステップ20を含む。続いて上記方法は、上述のようにして上記ミドルケースに入れられた上記時計ムーブメント110の速度を測定するステップ21を提供する。上記測定は好ましくは、共振器へのアクセスが特に狭い場合に、接触なしに実施してよい。上記ムーブメントの速度の上記測定は、例えば光学式又は音波式の、公知の方法で実施してよい。上記測定するステップ21により、測定された速度を所望の速度と比較できる。更に、上記測定するステップ21により、テンプ10の拍動を知ることもでき、これにより、上記拍動を、テンプ10の凹部15又は各凹部15内に材料を正確に堆積させるための材料射出と同期させることができる。
続いて上記方法は、補正済み速度を得るためにテンプ10の慣性に対して適用するべき補正値を決定するステップ22を含む。上記補正値は、以下の公知の式によって決定される。
ぜんまい‐テンプタイプの共振器に関して、テンプの慣性モーメントは、以下の式:
I=mr2 (1)
に対応し、ここでmはテンプ10の質量であり、rはテンプ10の回転半径であり、これはまた、テンプの熱膨張率によって、温度にも左右される。
更に、一定の断面を有するひげぜんまいの弾性トルクCは、式:
Figure 0006960973
に対応し、ここでEは使用される材料の弾性率であり、hはひげぜんまいの高さであり、eはひげぜんまいの厚さであり、Lはひげぜんまいの展開長さである。
最後に、上記ぜんまい‐テンプを含む共振器120の周波数fは、式:
Figure 0006960973
に対応する。
続いて、上記方法は、上記補正値に従ってテンプ10の慣性を修正するために、テンプ10の1つ以上の凹部に材料を適用するステップ23を含む。1つ以上の凹部15は、テンワ11若しくは少なくとも1つのアーム13上のみに、又はテンプ10のテンワ11及び1つ以上のアーム13上に、又は調整面内に画定されるテンワ11の輪郭内に、配置できる。このようなステップ23は、上記材料を、テンプ10に1つ以上の凹部内に射出するサブステップ24を含む。上記サブステップ24により、速度の調整の文脈において、テンプ10とのいずれの機械的接触を回避できる。
なお、上記射出サブステップ24は、例えば上記テンプ10が、貫通孔に対応する1つ以上の凹部15を含む場合に、時計ムーブメント100のテンプ10を取り外すサブステップによって進行できることに留意されたい。この文脈において、上記貫通孔内への材料の射出は、ムーブメント110の外側で、以下を用いて実施される:
‐例えばオリフィスを備えた上記凹部15の後部を備えるテンプ10の面に適用される、支持体;及び/又は
‐高い粘度を有する、射出される材料。
上記方法による速度の調整により、テンプ10の慣性を増大させることしかできないことを考えると、テンプ10は、質量が不足するように作製され、これにより、時計ムーブメント110の速度は速くなり、これは、材料を上記テンプ10の凹部15のうちの全て又は一部の中に射出する上記サブステップ24中に補正されることになる。
一実施形態によると、上記補正値は、テンプ10の重心を修正することなくテンプ10の慣性を修正するために、射出された材料の対称な分布を得るための、テンプ10の複数の凹部15内への材料の射出に対応していてよい。この場合、テンプ10の凹部は、特にテンプ10のテンワ11上に、対称に分布し、射出される材料の量は、各凹部15に関して同一となり、従って不均衡が生成されない。
一実施形態によると、上記補正値は、測定された速度と、共振器120に関して望ましい不均衡及び周波数とを比較することによって決定される。この場合、上記補正値は、テンプ10のテンワ11上に対称に分布したテンプ10の凹部15内への射出による、材料の追加の非対称な分布に対応する。あるいは、テンプ10の凹部15は、テンプ10のテンワ11上に対称に分布し、上記凹部15のうちの、互いに対して非対称な構成を有する一部のもののみに、材料を射出する。このような文脈では、射出サブステップ24は、上記凹部15のうちの1つ以上の中に上記材料を選択的に射出するための段階を含む。
更に、射出サブステップ24中に、1つ以上のタイプの材料がテンプ10上に射出されることに留意されたい。よって、1つのテンプ10の凹部15は:
‐同一の射出された材料を含んでよく;又は
‐それぞれ、上記テンプ10の他の全ての凹部の材料、若しくは上記テンプ10の他の凹部15のうちの少なくとも1つの材料とは異なる、射出された材料を含んでよい。
射出サブステップ24は有利には、エアロゾルジェットプリンタを用いて実施してよいが、他のいずれのマスク不使用印刷又は射出技術も可能である。上述のように、凹部15のうちの全て又は一部に堆積される材料は、接着剤、塗料、又は金属懸濁液を含んでよい。
好ましくは、材料射出サブステップ24の後に、射出された材料を固化するステップ25が続いてもよく、これは特に、材料が液体又はペースト状の状態である場合に当てはまる。上記サブステップ25は、使用される材料に応じて、溶媒を気化させるステップ、材料を熱硬化させるステップ、又は凹部内の材料を架橋させるステップを伴ってよい。テンプ10の凹部15又は各凹部15内にポリマーを堆積させた後、紫外線照射を用いて架橋させてもよい。
10 テンプ
11 テンワ
12 ハブ
13 アーム
14 調整面
15 凹部
15a 開口
15b 後部
15c 内壁
16 天真
17a 開口15aの中心軸
18 方向
19 突起
20 時計ムーブメントを時計のミドルケース内に配設するステップ
21 時計の速度を測定するステップ
22 補正値を決定するステップ
23 凹部内に材料を適用するステップ
24 材料を射出するサブステップ
26 材料を選択的に射出するための段階
100 時計
110 時計ムーブメント
α 鋭角

Claims (18)

  1. 時計(100)のテンプ(10)であって、
    前記テンプ(10)は調整面(14)を含み、
    前記調整面(14)は前記テンプ(10)の慣性及び不均衡の修正による前記時計(100)の速度の調整の実装のために、射出された材料を受承するよう設けられた、少なくとも1つの凹部(15)を備え、
    前記凹部(15)は、開口(15a)と、後部(15b)中実後部、又は全体若しくは一部がオリフィスを形成する後部とを含み、
    前記後部(15b)は前記開口(15a)の中心軸(17a)上の、前記開口(15a)の上方に定義された位置から、最大でも一部が視認可能である、テンプ(10)。
  2. 前記開口(15a)は、前記調整面(14)内に、前記後部(15b)が前記位置から最大でも一部が視認可能となるように、前記凹部(15)の前記後部(15b)に対して構成される、請求項1に記載のテンプ(10)。
  3. 前記開口(15a)は、前記凹部の前記後部(15b)の表面より小さな又は大幅に小さな表面を画定する、縁部を含む、請求項1又はに記載のテンプ(10)。
  4. 前記凹部(15)は、前記開口(15a)の前記中心軸(17a)と鋭角(α)を形成する方向(18)に延在する、請求項1又はに記載のテンプ(10)。
  5. 前記凹部(15)は、基本的にフレア形状の垂直断面を有する、請求項に記載のテンプ(10)。
  6. 前記凹部(15)は、基本的に長方形、正方形、円形、又は台形の垂直断面を有することを特徴とする、請求項1−3のいずれか1項に記載のテンプ(10)。
  7. 前記凹部(15)は内壁(15c)を含み、前記内壁(15c)には、前記壁(15c)の表面の一部分にわたって、略水平に、又は全体若しくは一部が水平に延在する、突起(19)が設けられる、請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載のテンプ(10)。
  8. 前記テンプは、テンワ(11)、天真(16)上で枢動するように設置されるよう構成されたハブ(12)、及び前記テンワ(11)を前記ハブ(12)に接続する少なくとも1つのアーム(13)を含み、
    前記テンプ(10)の前記テンワ(11)は、前記少なくとも1つの凹部(15)を備える、請求項1〜のいずれか1項に記載のテンプ。
  9. 前記テンプ(10)は、複数の前記アーム(13)を含み、
    前記アーム(13)のうちの少なくとも1つは、前記少なくとも1つの凹部を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のテンプ(10)。
  10. 前記複数の凹部(15)は、前記テンワ(11)の外周上に均等又は不均等に分布する、請求項8に記載のテンプ(10)。
  11. 少なくとも3つの前記凹部(15)は、前記テンワ(11)の前記外周上に均等に分布し、
    各前記凹部(15)は、20°〜90°で変動する角度の円弧に延在する、請求項8又は10に記載のテンプ(10)。
  12. 少なくとも3つの前記凹部(15)は、前記テンワ(11)の前記外周上に均等に分布し、
    各前記凹部(15)は、40°〜60°で変動する角度の円弧に延在する、請求項8又は10に記載のテンプ(10)。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のテンプ(10)を含む時計(100)の速度を調整するための方法であって、
    前記方法は以下のステップ:
    ‐前記時計の前記速度を測定するステップ(21);
    ‐前記時計(100)の補正済み速度を得るために、前記テンプ(10)の慣性及び/又は不均衡に対して適用する補正値を決定するステップ(22);並びに
    ‐前記補正値に従って前記テンプ(10)の前記慣性を修正するために、前記テンプ(10)に配設された1つ以上の凹部内に材料を適用するステップ(23)
    を含む、方法。
  14. 前記適用するステップは、前記材料を、前記凹部のうちの1つ以上の中に射出するサブステップ(24)を含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記射出するサブステップ(24)は、前記凹部(15)のうちの1つ以上の中に前記材料を選択的に射出するための段階(26)を含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記射出するサブステップ(24)中に、1つ以上のタイプの材料を前記テンプ(10)上に射出する、請求項14又は15に記載の方法。
  17. 前記方法は、前記テンプ(10)を含む時計ムーブメント(110)を前記時計(100)のミドルケース内に配設するステップ(20)を含む、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のテンプ(10)を備える、時計(100)。
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