JP6958061B2 - 高分子材料の表面改質方法 - Google Patents
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Description
項1.生体適合性を有する機能性モノマーが溶解され、且つ重合開始剤を含んでいない溶液を、無酸素条件下で光重合し、機能性ポリマーまたは機能性オリゴマーを生成する第1工程と、
前記溶液に、表面改質の対象となる高分子材料を浸漬させ、前記機能性ポリマーまたは機能性オリゴマーを、前記高分子材料の表面に吸着させる第2工程と、
を備え、
前記機能性モノマーは、以下の一般式(1)に示す化合物を含む、高分子材料の表面改質方法。
前記溶液において、無酸素条件下で、光重合により、機能性ポリマーまたは機能性オリゴマーを生成するとともに、当該機能性ポリマーまたは機能性オリゴマーを、前記高分子材料の表面に吸着させる第2工程と、
を備え、
前記機能性モノマーは、以下の一般式(1)に示す化合物を含む、高分子材料の表面改質方法。
(2)第1工程で生成した溶液に、表面改質の対象となる高分子材料を浸漬させ、機能性ポリマーまたは機能性オリゴマーを、高分子材料の表面に吸着させる(第2工程)。
以下、これらの工程について詳細に説明する。
<1−1.表面改質を行う高分子材料>
本実施形態で表面改質を行う高分子材料は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、加硫ゴム、熱硬化性樹脂などから適宜選択することができる。具体的な用途としては、例えば、上述したように、血球計数測定機などの医療機器に用いられる血液フィルタ、チューブなどに対して、表面改質を行うことができる。
第1工程で用いられる機能性モノマーは、これらが重合して得られる機能性ポリマーまたは機能性オリゴマーが、血小板などの血球成分に対して吸着を抑制するものであれば特に限定されるものではないが、以下の一般式(1)で示される化合物が含まれるモノマーを用いることができる。
上記機能性モノマーが溶解される溶媒は、機能性モノマーを溶解できる限りは特には限定されないが、例えば、表面改質を行う高分子の耐溶剤性も考慮して、アルコール、アルコール/水混合溶媒、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどを用いることができる。また、この溶媒に対する上記機能性モノマーの溶解濃度は、例えば、5〜30Vol%とすることができる。なお、上記機能性モノマーを溶解した溶液中には、重合開始剤は含まれない。したがって、高分子材料にも、重合開始剤は含まれない。
本実施形態において、上記溶液に照射する光は、紫外線、電子線などを用いることができるが、紫外線であるUV光を用いることが好ましい。UV光の波長は、例えば、300〜400nmとすることができる。これは、波長が300nm未満であると、モノマー分子を切断する可能性がある一方、400nmより長い波長であると、モノマーの重合が進行しない可能性があることによる。UV光の照射光量は、重合時間・反応の均一性などを考慮して、適宜設定すればよく、特には限定されない。例えば、UV光の照射時間は、30〜600秒であることが好ましく60〜300秒であることがさらに好ましい。UV光の光源については、特に制限はないが、高圧水銀ランプ、メタルはライドランプ、LEDランプなどを使用することができる。
第2工程では、第1工程で生成した溶液に、上記高分子材料を浸漬させる。これにより、高分子材料の表面に、機能性ポリマーまたは機能性オリゴマーがコーティングされる。高分子材料を浸漬させる時間は、特には限定されないが、例えば、30〜600秒であることが好ましく、60〜300秒であることがさらに好ましい。
上記表面改質方法によれば、次の効果を得ることができる。すなわち、従来は、生体適合性ポリマーを得るために長時間を要していたが、本実施形態によれば、そのような生成のプロセスが不要であり、単に、溶液に高分子材料を浸漬させるだけで、短時間で表面改質を行うことができる。また、高分子材料が複雑な形状をしていても、溶液が接触すればよいため、例えば、UV光が透過しない管路の壁面に対しても表面改質を行うことができる。
各実施例・比較例で得られた基材を純水に1時間浸漬し、その後、水中接触角を測定した。接触角は、Kruss社製、DSA25を用いて測定した。
各実施例・比較例で得られた基材に吸着した血小板の数を計測した。まず、血液を遠心分離し、その上澄みをサンプリングすることで血小板溶液を得た。遠心分離は、久保田商事株式会社製 テーブルトップ遠心機 Model 4000を用いて、1600g、10minの条件で行った。そして、得られた血小板溶液100μLを基材上に滴下し、37℃でオーブンに1時間配置した。次に、この基材をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、1%グルタルアルデヒド水溶液に浸漬し、基材表面に吸着した血小板を固定した。その後、基材表面を加速電圧15kV、1000倍でSEM観察を行い、観察視野中の吸着血小板の数をカウントした。そして、観察視野中の血小板吸着数が5個以下であれば、抗血栓性良好、血小板吸着数が6個以上であれば、抗血栓性不良と判定した。
機能性モノマーとして、東京化成工業株式会社製の2−Methoxyethyl Acrylate(MEA)を溶媒である50vol%エタノール水溶液に溶解させて、10vol%になるように調製した。この溶液をガラス容器に入れ、ゴム栓で蓋をした状態でアルゴンガスを導入して、120分間バブリングを行った。こうして、容器内部の酸素を追い出した。その後、LEDにより、365nmの波長のUV光をガラス容器の溶液に60秒照射を行った。その後、ガラス容器のゴム栓を開け、容器内に空気が導入された状態でポリカーボネート(PC)の基板(10mm×10mm)を溶液に60秒浸漬した。その後、基板を取り出し、50vol%エタノール水溶液に浸漬し、10分間超音波洗浄機にかけた。その作業を3回繰り返した後、基材を取り出し、30℃にて真空乾燥を行った。
実施例1において、基材の溶液への浸漬時間を30秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は48.2°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、3個であった。
実施例1において、基材の溶液への浸漬時間を180秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は42.3°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、4個であった。
実施例1において、基材の溶液への浸漬時間を600秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は43.7°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、1個であった。
実施例1において、基板の溶液への浸漬時間を180秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は44.6°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、3個であった。
実施例1において、基板の溶液への浸漬時間を600秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は44.2°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、2個であった。
機能性モノマーとして、東京化成工業株式会社製の2−Methoxyethyl Acrylate(MEA)を溶媒である50vol%エタノール水溶液に溶解させて、10vol%になるように調製した。この溶液とポリカーボネート基板(10mm×10mm)をガラス容器に入れ、ゴム栓で蓋をした状態でアルゴンガスを導入して、120分間バブリングを行い、容器内部の酸素を追い出した。その後、365nmの波長のUV光をガラス容器の溶液中にある基材に60秒照射を行った。続いて、ガラス容器のゴム栓を開け、基板を取り出した後、50vol%エタノール水溶液に浸漬し、10分間超音波洗浄機にかけた。その作業を3回繰り返したのち、基材を取り出し、30℃にて真空乾燥を行った。すなわち、実施例7では、上述した第1工程と第2工程とを同時に行った。
実施例7において、UV照射時間を600秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は45.3°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、3個であった。
実施例1において、使用する基板をポリメチルメタクリレート(PMMA)としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は43.1°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、4個であった。
実施例7において、UV光の照射時間を600秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は42.6°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、2個であった。
実施例7において、基板の溶液への浸漬時間を180秒としたほかは、同じである。
得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は42.8°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、3個であった。
実施例7において、基材の溶液への浸漬時間を600秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は41.5°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、2個であった。
実施例1において、使用する基板をEPDMゴムとした他は、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は42.2°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、1個であった。
実施例13において、UV光の照射時間を600秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は42.9°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、2個であった。
実施例13において、基板の溶液への浸漬時間を180秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は43.6°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、2個であった。
実施例13において、基板の溶液への浸漬時間を600秒としたほかは、同じである。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は42.6°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、1個であった。
ポリカーボネート(PC)基材(10mm×10mm)を特に溶液への浸漬などをせずに、上記評価試験1,2を行った。その結果、評価試験1では、水中接触角が82.2°であった。また、評価試験2では、基材に吸着している血小板数は28個であった。
比較例1において、基材をポリメチルメタクリレート(PMMA)基材としたほかは、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は65.3°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、19個であった。
比較例1において、基材をEPDM加硫ゴムとした他は、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は67.1°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、26個であった。
実施例1において、UV光の照射時間を0秒としたほかは、同じである。すなわち、UV光を照射しなかった。得られた基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接角は81.6°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、30個であった。
比較例4において、基材の溶液への浸漬時間を180秒としたほかは、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は80.7°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、24個であった。
比較例4において、基材の溶液への浸漬時間を600秒としたほかは、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は81.3°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、35個であった。
比較例4において、基材をポリメチルメタクリレート(PMMA)としたほかは、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は66.1°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、22個であった。
比較例7において、基材の溶液への浸漬時間を180秒としたほかは、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は65.8°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、26個であった。
比較例7において、基材の溶液への浸漬時間を600秒としたほかは、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は65.3°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、18個であった。
比較例4において、基材をEPMDゴムとしたほかは、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は66.8°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、24個であった。
比較例10において、基材の溶液への浸漬時間を180秒としたほかは、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は67.6°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、29個であった。
比較例10において、基材の溶液への浸漬時間を600秒としたほかは、同じである。この基材に対し、評価試験1を行ったところ、水中接触角は66.4°であった。また、評価試験2を行ったところ、基材に吸着している血小板数は、25個であった。
上記各実施例で得られる基材では、比較例に比べ、水中接触角が大幅に小さいことが分かった。また、各実施例では、基材に吸着した血小板の数が、比較例に比べ格段に小さいため、生体適合性の機能性ポリマーが適切にコーティングされ、血小板の付着を防止できることが分かった。
Claims (5)
- 前記溶液に、300〜400nmの波長のUV光を照射することで前記光重合を行う、請求項1に記載の高分子材料の表面改質方法。
- 前記UV光の照射時間が、30〜600秒である、請求項1または2に記載の高分子材料の表面改質方法。
- 前記高分子材料を前記溶液に、30〜600秒間浸漬する、請求項1から3のいずれかに記載の高分子材料の表面改質方法。
- 前記機能性モノマーが、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートである、請求項1から4のいずれかに記載の高分子材料の表面改質方法。
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