以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
<システムの全体構成>
図1は、実施の形態1に従う監視システム1000の全体構成を示す図である。図1を参照して、監視システム1000は、被検者を監視するための監視装置100と、端末装置200とを含む。端末装置200は、監視(見守り)対象者である被検者を見守る側の端末であり、例えば、スマートフォンである。ただし、端末装置200は、折り畳み式携帯電話、タブレット端末装置、PC(personal computer)等のような他の機器であってもよい。
監視装置100と、端末装置200とを互いに接続するためのネットワーク55は、インターネット、移動体端末通信網などの各種ネットワークを含む。ネットワーク55は、これに限られず、有線通信方式を採用してもよいし、無線LAN(local area network)等のその他の無線通信方式を採用してもよい。
監視装置100は、主な構成要素として、制御回路152と、メモリ154と、スピーカ156と、通信インターフェイス158と、マイクロ波ドップラセンサ160とを含む。なお、監視装置100は、各種情報を表示するためのディスプレイと、ユーザからの各種入力を受け付けるボタン等の入力装置とを含んでいてもよい。
制御回路152は、典型的には、CPU等を含むマイクロプロセッサと、マイクロ波ドップラセンサ160からのアナログ信号を処理するアナログ信号処理回路と、ADコンバータとを含む。制御回路152の詳細な構成については後述する。マイクロプロセッサは、メモリ154に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、監視装置100の各部の動作を制御する制御部として機能する。例えば、マイクロプロセッサは、当該プログラムを実行することによって、後述する制御回路152の処理を実現する。
メモリ154は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)などによって実現される。メモリ154は、マイクロプロセッサによって実行されるプログラム、またはマイクロプロセッサによって用いられるデータなどを記憶する。
スピーカ156は、マイクロプロセッサから与えられる音声信号を音声に変換して監視装置100の外部へ出力する。通信インターフェイス158は、マイクロプロセッサからの通信データを符号化し通信信号に変換し、通信信号を端末装置200へ送信する。また、端末装置200から受信信号を復号化して通信データに変換しマイクロプロセッサに出力する。通信方式は、無線LANなどによる無線通信方式であってもよいし、USB(Universal Serial Bus)などを利用した有線通信方式であってもよい。
マイクロ波ドップラセンサ160は、被検者にマイクロ波を放射し、反射してきたマイクロ波から、被検者の身体の動き等を反映する信号を制御回路152に出力する。また、マイクロ波ドップラセンサ160は、入力された反射波(反射信号)から、互いに直交するIチャネル信号およびQチャネル信号を生成する。
具体的には、マイクロ波ドップラセンサ160は、発振回路21と、増幅器22A,22Bと、送信アンテナ25と、受信アンテナ30と、ミキサ32I,32Qと、ローパスフィルタ(LPF)33I,33Qと、90度移相器38とを含む。送信アンテナ25および受信アンテナ30は、平面アンテナで構成されている。なお、送信アンテナ25および受信アンテナ30は、導波管アンテナ、あるいは、誘電体アンテナで構成されていてもよい。
発振回路21から出力されたマイクロ波正弦波信号は、増幅器22Aによって増幅され、送信アンテナ25から放射される。空間に放射されたマイクロ波Mtは、対象物である被検者の体表(例えば、胸部)で反射される。放射されたマイクロ波の反射波Mrには、被検者の身体の動き(体動)と、呼吸動作および心拍動作とに対応したドップラシフトが生じている。そのため、受信アンテナ30に入力される反射波Mrの信号(反射信号)は、被検者の体動、呼吸動作および心拍動作に対応した信号となる。
受信アンテナ30により受信された反射信号は、増幅器22Bによって増幅される。当該増幅後の信号Drは、Iチャネル側のミキサ32IおよびQチャネル側のミキサ32Qに入力される。ここでは、Iチャネル側に入力される信号Drを便宜上「Dri」と称し、Qチャネル側に入力される信号Drを便宜上「Drq」と称する。
増幅器22Aによって増幅された信号Dtは、Iチャネル側のミキサ32Iと、90度移相器38を介してミキサ32Qとに入力される。ここでは、Iチャネル側に入力される信号Dtを便宜上「Dti」と称し、Qチャネル側に入力される信号Dtを便宜上「Dtq」と称する。なお、本実施の形態では、90度移相器38を用いることにより、信号Dtiに対する信号Dtqの位相を90度ずらす構成について説明するが、当該構成に限られない。例えば、ミキサ32Qの入力側に90度移相器38を用いることにより、信号Driに対する信号Drqの位相を90度ずらす構成であってもよい。
ミキサ32Iにより周波数変換(ダウンコンバージョン)された信号は、LPF33Iに入力される。LPF33Iは、当該信号から比較的高い周波数成分を除去した信号を、Iチャネル側のベースバンド信号Dbiとして制御回路152に出力する。また、ミキサ32Qにより周波数変換された信号は、LPF33Qに入力される。LPF33Qは、当該信号から比較的高い周波数成分を除去した信号を、Qチャネル側のベースバンド信号Dbqとして制御回路152に出力する。当該ベースバンド信号Dbi,Dbqは、それぞれ、被検者の体動によって、ドップラシフトを受けたマイクロ波ドップラシフト信号として出力される。
受信アンテナ30に入力される反射信号の速度および振幅は、時間とともに変化する。そのため、Iチャネル側の信号およびQチャネル側の信号は、瞬時的には90度位相が異なっているものの、信号の速度および方向に応じて、ベースバンド信号Dbiに対するベースバンド信号Dbqの位相の進み方は、一定でなく常に時間変動することになる。
図2は、実施の形態1に従う監視装置100における平面アンテナの構成を示す平面図である。図3は、実施の形態1に従う平面アンテナの指向特性を示す図である。具体的には、図3(a)は、方位角(水平)方向の指向特性(パターン)を示す図であり、図3(b)は、仰角(垂直)方向の指向性パターンを示す図である。
図2を参照して、監視装置100における平面アンテナは、送信アンテナ25および受信アンテナ30を含む。送信アンテナ25および受信アンテナ30の各々は、8つのアンテナ素子を有する。
図3を参照して、平面アンテナの指向性パターンは、方位角方向および仰角方向の各々について、メインローブと2つのサイドローブとを有する。例えば、方位角方向におけるメインローブの3dBビーム幅(半値幅)は±20度であり、仰角方向におけるメインローブの半値幅は±15度である。
<監視装置の設置方式>
被検者を監視する監視装置100の設置方式について説明する。以下では、寝具がベッドである構成について説明するが、これに限られず、寝具が布団等であってもよい。
図4は、実施の形態1に従う監視装置100の設置方式を説明するための図である。具体的には、図4(a)は、ベッド上の被検者を部屋の天井側から見た場合の概略図(平面図)である。図4(b)は、ベッド上の被検者を部屋の側面側から見た場合の概略図(側面図)である。
図4を参照して、監視装置100は、部屋201の入口部203周辺に設置される。入口部203は、例えば、ドアまたは引き戸等である。部屋201の面積は、例えば、最大で16畳(例えば、3.8m×7.6m)までの大きさである。部屋201には、照明206、収納台205、テレビ210が設けられている。
監視装置100の平面アンテナ(送信アンテナ25および受信アンテナ30)のメインローブのピーク方向は水平である。監視装置100の向きは、メインローブのピーク方向線121(仮想的な線)が被検者の主な動線に沿うように設定される。監視装置100は、ピーク方向線121上に、被検者が立位姿勢である場合の胴体部が存在するような高さに設置される。例えば、監視装置100は、床部から高さH(例えば、60cm〜150cm)付近に水平に設置される。これにより、立位姿勢時の被検者に対して垂直に電波が当たり反射されるため、反射信号に対する反射断面積が一定となり、検出精度が高くなる。なお、被検者がベッド300に臥床している(横たわっている)場合には、ピーク方向線121上には当該被検者は存在しない(図4(b)参照)。
また、方位角方向のメインローブの半値幅の広がりを示す2つの領域線123Aが図4(a)に示す範囲となるように、監視装置100は設置される。これにより、監視装置100は、部屋201の水平面内を検出対象とすることができる。また、仰角方向のメインローブの半値幅の広がりを示す2つの領域線123Bが図4(b)に示す範囲となるように、監視装置100は設置される。これにより、部屋201の垂直面内を検出対象とすることができる。
なお、図4を参照すると、監視装置100付近は、領域線123A,123Bで規定される領域の範囲外となっている。しかしながら、平面アンテナの指向性パターンは、方位角方向および仰角方向の各々について、2つのサイドローブを有するため、人の検出は可能である。
図5は、実施の形態1に従う監視装置100の設置方式を説明するための図である。具体的には、図5(a)は、立位姿勢の被検者を部屋の天井側から見た場合の概略図(平面図)である。図5(b)は、立位姿勢の被検者を部屋の側面側から見た場合の概略図(側面図)である。
詳細は後述するが、監視装置100は、反射波MrのIチャネル信号およびQチャネル信号を用いて、所定周期ごとに被検者が監視装置100に接近しているのか、離反しているのかを検出できるように構成されている。
図5の例では、被検者がベッド300から離床して、入口部203から部屋201の外に出ようとする場面を示している。被検者は、監視装置100から照射されるメインローブのピーク方向線121に沿って矢印209の方向へ進み、監視装置100に近づいている。この場合、領域線123A,123Bを横切るような動作となり、監視装置100は、被検者が自装置に接近する動作(以下、「接近動作」とも称する。)を検出する。一方、矢印209と反対方向(入口部203からベッド300への方向)に被検者が進む場合には、監視装置100は、被検者が自装置から遠ざかる動作(すなわち、離反動作)を検出する。
図4および図5の例では、監視装置100は、ピーク方向線121が床部と水平となるように設けられる構成について説明したが、当該構成に限られず、図6に示すように設けられていてもよい。
図6は、実施の形態1に従う監視装置100の設置方式の変形例を説明するための図である。図6を参照して、監視装置100は、仰角方向において、ベッド300側(すなわち、床部側)に角度θaほど傾けて設置され(図6(a)参照)、方位角方向において、ベッド300側(すなわち、被検者側)に角度θbほど傾けて設置される(図6(b)参照)。この場合、被検者がベッド300に臥床している場合であっても、ピーク方向線121上に当該被検者は存在することとなる。これにより、ベッド300周辺部、ベッド300に臥床している被検者を、領域線123A,123Bにより検出対象とできる。このように、入口部203の配置、ベッド300の位置、高さ等に応じて、監視装置100の設置方式を適宜変更してもよい。
<制御回路の構成>
図7は、実施の形態1に従う制御回路の詳細な構成を説明するためのブロック図である。図7を参照して、制御回路152は、アナログ信号処理回路41と、ADコンバータ43と、マイクロプロセッサ45とを含む。典型的には、マイクロプロセッサ45は、ディジタル信号処理に特化したディジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor:DSP)、あるいはマイクロコントローラユニット(MCU)である。ADコンバータ43は、マイクロプロセッサ45中のAD変換機能を用いても構わない。
アナログ信号処理回路41は、マイクロ波ドップラセンサ160から入力された信号のうちの不要な周波数帯域の成分を除去して、ADコンバータ43に出力する。具体的には、アナログ信号処理回路41は、心拍成分の帯域(例えば、0.7Hz〜20Hz)を含む周波数帯域のIチャネルのアナログ信号ShiおよびQチャネルのアナログ信号Shqを出力し、体動成分の帯域(例えば、0.1Hz〜200Hz)のIチャネルのアナログ信号StiおよびQチャネルのアナログ信号Stqを出力する。体動成分の帯域には、呼吸成分の帯域も含まれる。
図8は、実施の形態1に従うアナログ信号処理回路41の詳細な構成を説明するためのブロック図である。図8を参照して、アナログ信号処理回路41は、マイクロ波ドップラセンサ160から出力されるIチャネル側のベースバンド信号Dbiと、マイクロ波ドップラセンサ160から出力されるQチャネル側のベースバンド信号Dbqとの入力を受け付ける。ベースバンド信号Dbiは、アナログ信号Dbia,Dbibに分配される。ベースバンド信号Dbqは、アナログ信号Dbqa,Dbqbに分配される。
アナログ信号処理回路41は、信号処理回路149A〜149Dを含む。アナログ信号Dbiaは、心拍計測用の信号処理回路149Aに出力される。信号処理回路149Aは、ハイパスフィルタであるHPF143Aと、ローパスフィルタであるLPF144Aと、増幅器145Aとを含む。
HPF143Aは、アナログ信号Dbiaの低周波成分を除去する。一例として、HPF143Aは、0.7Hz以下の信号成分を除去する。除去後の信号は、LPF144Aに出力される。LPF144Aは、HPF143Aから出力されたアナログ信号Dbiaの高周波成分を除去する。一例として、LPF144Aは、200Hz以上の信号成分を除去する。除去後の信号は、増幅器145Aに出力される。増幅器145Aは、LPF144Aから出力されるアナログ信号Dbiaを所定倍(たとえば、400倍)に増幅し、アナログ信号Shiを生成する。アナログ信号Shiは、ADコンバータ43(図7参照)に出力される。
アナログ信号Dbibは、呼吸計測用の信号処理回路149Bに出力される。信号処理回路149Bは、HPF143Bと、LPF144Bと、増幅器145Bとを含む。
HPF143Bは、アナログ信号Dbibの低周波成分を除去する。一例として、HPF143Bは、0.1Hz以下の信号成分を除去する。除去後の信号は、LPF144Bに出力される。LPF144Bは、HPF143Bから出力されたアナログ信号Dbibの高周波成分を除去する。一例として、LPF144Bは、200Hz以上の信号成分を除去する。除去後の信号は、増幅器145Bに出力される。増幅器145Bは、LPF144Bから出力されるアナログ信号Dbibを所定倍(たとえば、100倍)に増幅し、アナログ信号Stiを生成する。アナログ信号Stiは、ADコンバータ43(図7参照)に出力される。
心拍信号の振幅は、呼吸信号の振幅と比べて約1/10以下であるので、心拍計測用の増幅器145Aの増幅率が、呼吸計測用の増幅器145Bの増幅率よりも大きくなるように、増幅器145A,145Bが設計される。一例として、増幅器145Aの増幅率は400倍であり、増幅器145Bの増幅率は100倍である。
アナログ信号Dbqaは、心拍計測用の信号処理回路149Cに出力される。信号処理回路149Cは、HPF143Cと、LPF144Cと、増幅器145Cとを含む。
HPF143Cは、アナログ信号Dbqaの低周波成分を除去する。一例として、HPF143Cは、0.7Hz以下の信号成分を除去する。除去後の信号は、LPF144Cに出力される。LPF144Cは、HPF143Cから出力されたアナログ信号Dbqaの高周波成分を除去する。一例として、LPF144Cは、200Hz以上の信号成分を除去する。除去後の信号は、増幅器145Cに出力される。増幅器145Cは、LPF144Cから出力されるアナログ信号Dbqaを所定倍(たとえば、400倍)に増幅し、アナログ信号Shqを生成する。アナログ信号Shqは、ADコンバータ43(図7参照)に出力される。
アナログ信号Dbqbは、呼吸計測用の信号処理回路149Dに出力される。信号処理回路149Dは、HPF143Dと、LPF144Dと、増幅器145Dとを含む。
HPF143Dは、アナログ信号Dbqbの低周波成分を除去する。一例として、HPF143Dは、0.1Hz以下の信号成分を除去する。除去後の信号は、LPF144Dに出力される。LPF144Dは、HPF143Dから出力されたアナログ信号Dbqbの高周波成分を除去する。一例として、LPF144Dは、200Hz以上の信号成分を除去する。除去後の信号は、増幅器145Dに出力される。増幅器145Dは、LPF144Dから出力されるアナログ信号Dbqbを所定倍(たとえば、100倍)に増幅し、アナログ信号Stqを生成する。アナログ信号Stqは、ADコンバータ43(図7参照)に出力される。
上記では、LPF144A、LPF144B、LPF144C、およびLPF144Dは、200Hz未満を通すローパスフィルタを用いたが、サンプリング周波数の1/2未満の周波数を通すローパスフィルタであればよい。例えば、本実施の形態においては、マイクロプロセッサ45の性能により、サンプリング周波数に400Hzを用いるが、例えば、1kHz程度の高速サンプリングであってもよい。この場合、身体の動きや、歩くときの速い動作を体動の動きとして検出することができる。
心拍信号の振幅は、呼吸信号の振幅と比較べて約1/10以下であるので、心拍計測用の増幅器145Cの増幅率が、呼吸計測用の増幅器145Dの増幅率よりも大きくなるように、増幅器145C,145Dが設計される。一例として、増幅器145Cの増幅率は400倍であり、増幅器145Dの増幅率は100倍である。
HPF143A〜143DおよびLPF144A〜144Dは、たとえば、オペアンプを用いたアクティブフィルタである。あるいは、HPF143A〜143Dは、コイル、コンデンサ、抵抗を用いた受動素子であってもよい。
以上のようにして、心拍計測用と、体動計測(呼吸計測を含む)用とに独立して帯域制限および増幅を行うことにより、心拍域と呼吸域とでSN(Signal Noise)比の高い良質なアナログ信号が抽出される。なお、LPF144A〜144Dは、ADコンバータ43のためのアンチエイリアスフィルタとしても機能している。
再び、図7を参照して、ADコンバータ43は、入力された信号を16ビット(または、12ビット)AD変換する。具体的には、ADコンバータ43は、アナログ信号Shi,Shq,Sti,Stqの入力を受け付け、所定のサンプリングレート(例えば、10msec)にて、アナログ信号Shi,Shq,Sti,Stqをディジタル信号に変換してマイクロプロセッサ45に出力する。なお、各ディジタル信号Shi,Shq,Sti,Stqは、電圧振幅に応じた±の信号として、適宜オフセット調整される。
マイクロプロセッサ45は、各ディジタル信号Shi,Shq,Sti,Stqを用いて各種の処理を実行する。具体的には、マイクロプロセッサ45は、主な機能構成として、出力制御部54と、心拍演算部60と、呼吸演算部70と、動作監視部80とを含む。なお、HPF64I,64QおよびLPF65I,65Qは、ディジタル信号処理により実現されるディジタルフィルタである。
心拍演算部60は、各ディジタル信号Shi,Shqの入力を受け付けて、各種処理を実行する。具体的には、心拍演算部60は、Iチャネル側のHPF64Iと、Qチャネル側のHPF64Qと、Iチャネル側のLPF65Iと、Qチャネル側のLPF65Qと、Iチャネル側の基本波検出部66Iと、Qチャネル側の基本波検出部66Qと、心拍平均処理部67とを含む。
HPF64I,64Qは、それぞれディジタル信号Shi,Shqの低周波成分(特に、呼吸成分の帯域)を除去することにより、ディジタル信号Hai,Haqを生成する。HPF64Iは、ディジタル信号HaiをLPF65Iに出力し、HPF64Qは、ディジタル信号HaqをLPF65Qに出力する。典型的には、HPF64I,64Qは、0.7Hz(すなわち、42bpmに相当)以下の周波数成分を除去する。
LPF65I,65Qは、それぞれディジタル信号Hai,Haqの高周波成分を除去することにより、ディジタル信号Hbi,Hbqを生成する。LPF65Iは、ディジタル信号Hbiを基本波検出部66Iに出力し、LPF65Qは、ディジタル信号Hbqを基本波検出部66Qに出力する。典型的には、LPF65I,65Qは、20Hz以上の周波数成分を除去する。なお、LPF65I,65Qは、4Hz(すなわち、240bpmに相当)以上の周波数成分を除去するように構成されていてもよい。
基本波検出部66I,66Qは、それぞれディジタル信号Hbi,Hbqを用いて心拍数を演算する。具体的には、基本波検出部66Iは、所定時間(例えば、5秒)蓄積されたディジタル信号Hbiを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)し、個々の信号成分に分解した後、各成分を周波数スペクトラム上に表す処理を行ない、周波数分布データを作成する。基本波検出部66Iは、周波数分布データのうち、心拍に係る所定の範囲の周波数分布(例えば、0.7Hz〜20Hz)を選択し、その中から最も強度(ピーク)の高い周波数成分を基本波データ(すなわち、基本周波数)として検出する。基本波検出部66I,66Qは、自己相関関数、ウェーブレット変換等を用いて基本波データを検出してもよい。
基本波検出部66Iは、基本周波数を所定倍(例えば、60倍)することで、単位時間(例えば、1分間)当りの心拍の数である心拍数Hiを算出する。同様に、基本波検出部66Qは、ディジタル信号Hbqを用いて心拍数Hqを算出する。
心拍平均処理部67は、心拍数Hiおよび心拍数Hqを平均化して心拍数Hnを算出する。なお、心拍平均処理部67は、ディジタル信号Hbi,Hbqを統合して、適宜閾値を設けることにより、ノイズレベルの強度の小さい信号や周期性の乏しい信号を除去してもよい。
呼吸演算部70は、各ディジタル信号Sti,Stqの入力を受け付けて、各種処理を実行する。具体的には、呼吸演算部70は、Iチャネル側のLPF71Iと、Qチャネル側のLPF71Qと、Iチャネル側の基本波検出部72Iと、Qチャネル側の基本波検出部72Qと、呼吸平均処理部73とを含む。
LPF71I,71Qは、それぞれディジタル信号Sti,Stqの高周波成分を除去することにより、ディジタル信号Bai,Baqを生成する。LPF71Iは、ディジタル信号Baiを基本波検出部72Iに出力し、LPF71Qは、ディジタル信号Baqを基本波検出部72Qに出力する。典型的には、LPF71I,71Qは、0.75Hz以上(すなわち、45bpmに相当)の周波数成分を除去する。
基本波検出部72I,72Qは、それぞれディジタル信号Bai,Baqを用いて呼吸数を演算する。基本波検出部72Iは、基本波検出部66Iによる演算方式と同様の演算方式により呼吸数を算出する。具体的には、基本波検出部72Iは、所定時間(例えば、10秒)蓄積されたディジタル信号Baiを高速フーリエ変換することにより、周波数分布データを作成する。基本波検出部72Iは、周波数分布データのうち、呼吸に係る所定の範囲の周波数分布(例えば、0Hz〜0.75Hz)の中から最も強度の高い周波数成分を基本波データ(すなわち、基本周波数)として検出する。基本波検出部72Iは、基本波データの周波数を所定倍(例えば、60倍)することで、単位時間(例えば、1分間)当りの呼吸の数である呼吸数Biを算出する。同様に、基本波検出部72Qは、ディジタル信号Baqを用いて呼吸数Bqを算出する。
呼吸平均処理部73は、呼吸数Biおよび呼吸数Bqを平均化して呼吸数Bnを算出する。なお、呼吸平均処理部73は、ディジタル信号Bai,Baqを統合して、適宜閾値を設けることにより、ノイズレベルの強度の小さい信号や周期性の乏しい信号を除去してもよい。
動作監視部80は、反射波Mrの信号から抽出された体動信号(具体的には、各ディジタル信号Sti,Stq)に基づいて、被検者の動作を監視する。動作監視部80は、検出部81と、振幅演算部82と、距離推定部83と、比率演算部84と、判定部85とを含む。以下の説明では、Iチャネルに対応するディジタル信号を単に「I信号」とも称し、Qチャネルに対応するディジタル信号を単に「Q信号」とも称する。
検出部81は、I信号StiとQ信号Stqとに基づいて、所定周期毎に被検者の接近動作および離反動作を検出する。具体的には、検出部81は、I信号StiおよびQ信号StqのIQ平面上における軌跡に基づいて、当該接近動作および離反動作を検出する。
図9は、実施の形態1に従う反射波のIQ平面の一例を示す図である。複素平面であるIQ平面は、横軸であるI軸(同相軸)と、縦軸であるQ軸(直角位相軸)とから構成される。図9(a)は、被検者が監視装置100に接近する場合を示しており、図9(b)は、被検者が監視装置100から離反する場合を示している。図9(a)の各点および図9(b)の各点は、サンプリング時間ごとのI信号StiおよびQ信号Stqをプロットしたものである。
図9(a)を参照して、反時計回り方向の矢印601は、被検者が監視装置100に接近した場合におけるI信号StiおよびQ信号StqのIQ平面上の座標の軌跡の方向を示している。図9(b)を参照して、時計回り方向の矢印602は、被検者が監視装置100から離反した場合におけるIQ平面上の座標の軌跡の方向を示している。
検出部81は、各点について軌跡方向を算出する。具体的には、検出部81は、サンプリング時間毎に、反射波のIQ平面上における位相θを算出する。位相θは、arctan(Q信号Stq/I信号Sti)により算出される。検出部81は、各点における位相θが増加していくのか(すなわち、増加方向なのか)、位相θが減少していくのか(すなわち、減少方向なのか)を判断し(すなわち、位相θの進み方を判断し)、軌跡方向を算出する。
例えば、検出部81は、位相θの増加方向および減少方向を40回(すなわち、0.1秒間のサンプリング回数に相当)計算し、位相θが10回以上連続して増加方向である場合には、単位期間(すなわち、0.1秒間)における被検者の動作を接近動作として検出する。検出部81は、例えば、位相θが10回以上連続して減少方向であると判断した場合には、単位期間における被検者の動作を離反動作として検出する。なお、検出部81は、位相θが10回以上連続して増加方向にもならず減少方向にもならない場合には、接近動作および離反動作は検出されなかった(すなわち、未判定)と判断する。
ここでは、位相θの増加(あるいは、減少)方向が40回中10回以上連続した場合に、接近動作(あるいは、離反動作)として検出する構成について説明したが、40回中20回以上連続した場合に当該動作の検出を行なう構成であってもよい。また、接近回数と離反回数との差が40回中10回以上(あるいは、20回以上)である場合に、回数が多い方に対応する動作を被検者の動作として検出する構成であってもよい。これらの構成は、監視装置100のマイクロ波ドップラセンサ160の性能や、設置位置や設置環境に応じて、適宜選択しても構わない。
さらに、監視装置100では、上記IQ平面の旋回の方向で、接近および離反を判定する構成について説明したが、これに限られない。例えば、Iチャネル信号の位相およびQチャネル信号の位相の進み方の反転(ここで、Iチャンネルの位相およびQチャンネルの位相の進み方が反転し、Qチャネルの位相が速くなる場合の反転時を接近、Qチャネルの位相が遅くなる場合の反転時を離反とする)を用いて接近および離反を判定する構成であってもよい。また、上記IQ平面での位相の旋回、およびIQ位相の進行反転の両者を組み合わせる構成であってもよい。
再び、図7を参照して、振幅演算部82は、体動信号(I信号Sti,Q信号Stq)の振幅(以下、「体動振幅」とも称する。)を演算する。典型的には、体動振幅としては、I信号Stiの振幅とQ信号Stqの振幅との合成振幅(すなわち、図9中のIQ平面の”0”点からの距離)が用いられる。合成振幅は、SQRT{(I信号Stiの振幅)^2+(Q信号Stqの振幅)^2}で表される。
ある局面では、振幅演算部82は、所定時間Ts(例えば、1秒)ごとに体動振幅の平均化処理を実行する。例えば、サンプリングレートが400Hz(すなわち、2.5ミリ秒毎のサンプリング)の場合、振幅演算部82は、400個(すなわち、1秒間のサンプリング回数)の体動振幅を平均化する処理を実行する。
他の局面では、振幅演算部82は、被検者の接近動作および離反動作の少なくとも一方を含む動作が継続している継続期間における体動振幅の積算値を算出する。積算値は、所定の時間(例えば、1秒)毎の体動振幅の平均値を継続期間で積分(積算)した値である。例えば、継続期間が4秒である場合には、積算値は4回分の体動振幅の平均値を加算した値となる。継続期間の開始時点は、被検者の動作(接近動作および離反動作の少なくとも一方)が検出された時点である。ただし、当該時点から過去の所定時間Tx(例えば、数秒)内に被検者の動作は検出されていないとする。継続期間の終了時点は、直近の動作が検出されてから所定時間Tx経過しても次の動作が検出されない場合における、当該直近の動作が検出された時点である。
また、マイクロプロセッサ45は、検出部81および振幅演算部82の機能により、被検者の接近動作および離反動作と、体動振幅とを時系列に算出することができる。
図10は、実施の形態1に従う接近動作、離反動作および体動振幅の時間変化を示す図である。ここでは、被検者が監視装置100に接近した後、監視装置100から離反する場面を想定する。
具体的には、図10(a)は、検出部81により検出される接近動作および離反動作の時間変化を示す図である。図10(a)の横軸は時間であり、縦軸は接近動作または離反動作の検出回数を示している。図10(b)は、振幅演算部82により算出される体動振幅の時間変化を示す図である。図10(b)の横軸は時間であり、縦軸は体動振幅の大きさを示している。振幅の大きさの単位は任意単位(a.u.)であり、被検者からの反射信号の強度振幅(電圧成分に相当)を示している。なお、体動振幅は、所定時間Ts(例えば、1秒)毎に平均化されている。
上述したように、検出部81は、位相θが10回以上連続して増加方向である場合には、単位期間(例えば、0.1秒間)における被検者の動作を接近動作として検出し、位相θが10回以上連続して減少方向である場合には、単位期間における被検者の動作を離反動作として検出するものとする。
図10(a)を参照して、時刻t1から時刻t2までの間(すなわち、継続期間T1n=3×Ts)、検出部81は接近動作を検出している。このとき検出された接近動作の回数は、N1回である。時刻t3から時刻t4までの間、検出部81は離反動作を検出している。このとき検出された離反動作の回数はA1回である。なお、時刻t2から時刻t3までの期間は、検出部81により接近動作および離反動作が検出されていない未判定区間である。この未判定区間では、位相θが10回以上連続して増加あるいは減少していないため、接近動作および離反動作として検出されない。
検出部81は、時刻t1に被検者の接近動作を検出しているため、動作の継続期間の開始時点として時刻t1を認識する。また、時刻t2から所定時間Tx経過しても接近動作および離反動作を検出していないため、時刻t2を継続期間の終了時点として認識する。これにより、継続期間T1nは時刻t1から時刻t2までの期間となる。また、検出部81は、時刻t3に被検者の接近動作を検出しているため、動作の継続期間の開始時点として時刻t3を認識する。また、時刻t4から所定時間Tx経過しても接近動作および離反動作を検出していないため、時刻t4を継続期間の終了時点として認識する。これにより、継続期間T1aは時刻t3から時刻t4までの期間となる。
振幅演算部82は、継続期間T1nにおける体動振幅の積算値Q1を算出する。具体的には、積算値Q1は、所定時間Ts毎の体動振幅の平均値を継続期間T1nで積分した値である。振幅演算部82は、継続期間T1aにおける体動振幅の積算値Q2を算出する。積算値Q2は、所定時間Ts毎の体動振幅の平均値を継続期間T1aで積分した値である。
同様に、検出部81は、継続期間T2nにおいてN2回の接近動作を検出し、継続期間T2aにおいてA2回の離反動作を検出する(図10(a)参照)。振幅演算部82は、継続期間T2nにおける体動振幅の積算値Q3を算出し、継続期間T2aにおける体動振幅の積算値Q4を算出する(図10(b)参照)。
再び、図7を参照して、距離推定部83は、検出部81により検出された動作解析結果と、振幅演算部82により算出された体動振幅の平均値と、メモリ154に記憶された関係情報Jとに基づいて、被検者と監視装置100との距離を推定する。上述したように、検出部81では、単位期間(例えば、0.1秒間)ごとに、被検者の動作(接近動作あるいは離反動作)が検出されている。また、振幅演算部82では、所定時間Ts(例えば、1秒)ごとに体動振幅の平均値が算出されている。
距離推定部83は、所定時間Tsにおける、接近動作の回数および離反動作の回数を比較する。距離推定部83は、接近動作の回数が離反動作の回数よりも多い場合には、振幅演算部82により算出された体動振幅の平均値を、接近動作に伴う体動振幅値であると判断し、離反動作の回数が接近動作の回数よりも多い場合には、当該体動振幅の平均値を、離反動作に伴う体動振幅であると判断する。
ここで、監視装置100から被検者までの距離に応じて、体動振幅がどのように変化するのかを説明する。図11は、監視装置100および被検者間の距離と体動振幅との関係を示す図である。縦軸は、所定時間Tsにおける体動振幅の平均値を示している。縦軸の値は、体動振幅のアナログ値であるアナログ信号Sti,Stqの振幅(電圧0V〜3.3V)をAD変換した場合のディジタル値である。横軸は、監視装置100と被検者との距離を示している。ここでは、距離が0m〜8mである区間で、監視装置100に被検者が接近している場面を想定している。また、被検者は老人であり、当該被検者の部屋の中での歩行は、0.5m/s(すなわち、1.8km/h)程度の速度であるとする。
図11を参照して、体動振幅の閾値Th1(例えば、12000)は、監視装置100に被検者が正面から1m程度に近づいた場合の値である。体動振幅の閾値Th2(例えば、370)は、部屋201に被検者が存在せず、人の動きがない場合の値である。
図11のグラフ800によると、距離が短くなるほど体動振幅は増加していくことがわかる。具体的には、被検者が監視装置100から比較的遠い位置に存在する場合(例えば、距離が8m〜4m)には、距離が短くなるにつれて体動振幅は緩やかに増加する。一方、被検者が監視装置100から比較的近い位置に存在する場合(例えば、距離が4m〜0m)には、距離が短くなるにつれて体動振幅は急激に増加する。これは、監視装置100の平面アンテナの性能を含むマイクロ波ドップラセンサの特性に依存している。
距離推定部83は、接近動作に伴う体動振幅と、関係情報Jとしてメモリ154に記憶されているグラフ800とを用いて、監視装置100および被検者間の距離を推定する。例えば、距離推定部83は、体動振幅が8000程度である場合には、当該距離が2mで接近中であると推定する。
なお、関係情報Jとして、被検者が監視装置100から離反する場合における、監視装置100および被検者の距離と体動振幅との関係を示すグラフGRをメモリ154に記憶しておいてもよい。これにより、距離推定部83は、離反動作に伴う体動振幅とグラフGRとを用いて、監視装置100および被検者間の距離と動作方向(離反)を推定できる。
また、グラフ800およびグラフGRの特性がほぼ一致する場合には、距離推定部83は、接近動作に伴う体動振幅値であるのか、離反動作に伴う体動振幅であるのかを判断しなくともよい。この場合、距離推定部83は、振幅演算部82により算出された体動振幅と、グラフ800またはグラフGRとに基づいて、監視装置100および被検者間の距離と、接近および離反の方向とを推定する。このように、被検者が立位姿勢の状態で一定速度で歩行する場合には、体動振幅を利用して被検者と監視装置100との距離と、接近および離反の動作方向とを推定することができる。
なお、上記では、距離を推定する際に、体動振幅として合成振幅を用いる構成について説明したが、I信号Stiの振幅の絶対値またはQ信号Stqの振幅の絶対値を用いてもよい。また、体動振幅として、I信号Stiの振幅の絶対値と、Q信号Stqの振幅の絶対値との和を用いてもよい。
再び、図7を参照して、比率演算部84は、所定時間Tsごとに、体動信号(I信号Sti,Q信号Stq)の振幅と、呼吸演算部70により算出された呼吸信号(I信号Bai,Q信号Baq)の振幅(以下、「呼吸振幅」とも称する。)との振幅比率BBRATIOを算出する。なお、心拍信号(I信号Hbi,Q信号Hbq)の振幅は、「心拍振幅」とも称する。
典型的には、比率演算部84は、所定時間Tsにおいて、I信号Stiの振幅(絶対値)の平均値と、Q信号Stqの振幅(絶対値)の平均値との合成振幅A1を算出する。比率演算部84は、I信号Baiの振幅(絶対値)の平均値と、Q信号Baqの振幅(絶対値)の平均値との合成振幅A2を算出する。そして、比率演算部84は、呼吸信号に関する合成振幅A2に対する、体動信号に関する合成振幅A1の比率を振幅比率BBRATIOとして算出する。
なお、振幅比率BBRATIOは、I信号Baiの振幅(絶対値)の平均値に対する、I信号Stiの振幅(絶対値)の比率であってもよいし、Q信号Baqの振幅(絶対値)の平均値に対する、Q信号Stqの振幅(絶対値)の比率であってもよい。あるいは、比率演算部84は、体動信号および呼吸信号の各々について、予め定められた期間の振幅の積算値を算出し、呼吸信号の振幅の積算値に対する、体動信号の振幅の積算値を振幅比率BBRATIOとして算出してもよい。説明の容易化のため、以下の説明では、比率演算部84は、体動振幅として合成振幅A1を算出し、呼吸振幅として合成振幅A2を算出するものとする。
なお、所定時間Tsは、サンプリング周波数が400Hzの場合には、0.1秒から1秒までの間に設定されていればよい。所定時間Tsは、サンプリング速度と、監視対象となる被検者の動きの速さに応じて適宜決定すればよい。一般的には、人の動きを考慮すると、所定時間Tsは1秒以下であることが好ましい。
判定部85は、被検者の体動信号に基づいて、被検者の各種動作を判定する。ある局面では、判定部85は、体動振幅の閾値Th1(例えば、12000)を用いて(図10(b)、図11参照)、所定時間Tsごとに監視装置100と被検者とが接近しているか否かを判定する。具体的には、判定部85は、所定時間Tsの体動振幅(平均値)が閾値Th1以上である場合には、監視装置100と被検者とが接近していると判定し、当該体動振幅が閾値Th1未満である場合には、監視装置100と被検者とが接近していないと判定する。また、判定部85は、所定期間内(例えば、1日、午前中、午後等)において、当該体動振幅が閾値Th1以上となった回数を算出する。
他の局面では、判定部85は、振幅比率BBRATIOを用いて、呼吸数Bnが、被検者の本来(例えば、平静時)の呼吸数を示しているのか、低周波領域である周波数領域Fbにおける被検者の体動数を示しているのかを判定する。周波数領域Fbは、人体の呼吸に対応する周波数領域を含んでおり、呼吸演算部70におけるLPF71I,71Iを通過した周波数帯域である。振幅比率BBRATIOは1以上の正規化された値となるが、判定部85において判定指標として用いられる際には、例えば、1000倍して1000以上の数値に正規化されてもよい。
ここで、被検者が静止状態の場合には、呼吸動作を反映した体動信号(I信号Sti,Q信号Stq)が動作監視部80に入力される。そのため、振幅演算部82により算出される体動振幅は、呼吸動作に対応する振幅となる。一方、呼吸演算部70により算出される呼吸振幅は、呼吸動作に対応する振幅である。したがって、被検者が静止状態の場合には、体動振幅と呼吸振幅とが概ね同一となり、振幅比率BBRATIOは1.0付近(1000倍している場合には、1000付近)の値となる。
そこで、判定部85は、振幅比率BBRATIOが閾値Thx1(例えば、1100)未満である場合(すなわち、被検者が静止状態である場合)には、基本周波数に基づいて算出される呼吸数Bnが、被検者の平静時の呼吸数を示していると判定する。一方、判定部85は、振幅比率BBRATIOが閾値Thx1以上である場合(すなわち、被検者が静止状態ではない場合)には、基本周波数に基づいて算出される呼吸数Bnが、呼吸領域を含む周波数領域Fbにおける被検者の体動数を示していると判定する。
同様に、判定部85は、振幅比率BBRATIOを用いて、心拍数Hnが、被検者の平静時の心拍数を示しているのか、高周波領域である周波数領域Fhにおける被検者の体動数を示しているのかを判定する。周波数領域Fhは、人体の心拍に対応する周波数領域を含んでおり、心拍演算部60におけるHPF64I,64QおよびLPF65I,65Qを通過した周波数帯域である。具体的には、判定部85は、振幅比率BBRATIOが閾値Thx1未満である場合(すなわち、被検者が静止状態である場合)には、心拍数Hnが、被検者の平静時の心拍数を示していると判定する。一方、判定部85は、振幅比率BBRATIOが閾値Thx1以上である場合(すなわち、被検者が静止状態ではない場合)には、心拍数Hnが、心拍領域を含む周波数領域Fhにおける被検者の体動数を示していると判定する。
出力制御部54は、動作監視部80により監視される被検者の動作に基づく活動情報を出力する。具体的には、出力制御部54は、体動振幅、距離推定部83により推定された推定距離、振幅比率BBRATIO、判定部85の判定結果、体動振幅が閾値Th1以上となった回数等を動作監視部80から受信する。ある局面では、出力制御部54は、判定部85の判定結果に応じて、呼吸数Bnを、被検者の平静時の呼吸数、または周波数領域Fbにおける被検者の体動数として出力する。出力制御部54は、判定部85の判定結果に応じて、呼吸数Bnを、被検者の呼吸数、または周波数領域Fhにおける被検者の体動数として出力する。
活動情報は、体動振幅、推定距離、振幅比率BBRATIO、判定結果、体動振幅が閾値Th1以上となった回数、呼吸数、心拍数、周波数領域Fbにおける被検者の体動数、および周波数領域Fhにおける被検者の体動数を含む。なお、出力制御部54は、活動情報として、上記の全てを出力する必要はなく、任意に選択された情報を出力してもよい。
出力制御部54は、スピーカ156を介して、活動情報を音声出力してもよいし、ディスプレイに活動情報を表示してもよい。また、出力制御部54は、通信インターフェイス158を介して、端末装置200に活動情報を送信してもよい。
また、出力制御部54は、活動情報が所定の条件を満たした場合には、警告情報を出力してもよい。例えば、体動振幅が閾値Th1以上となった場合であって、かつ、振幅比率BBRATIOが閾値Thx2(例えば、2500)以上となった場合には、被検者が部屋201から退室しようとしている状況が想定される。この場合、出力制御部54は、警告情報として「部屋から出ないでください」、「介護者が来るまでそのままで待つように」といったメッセージを音声出力して、注意喚起を促す。出力制御部54は、警告情報として被検者が部屋から退室しようとしていることを示す情報を端末装置200に送信してもよい。
また、予め定められた期間において、体動信号が有るか否かを示す閾値Th2(例えば、Th2<370)以下であり、振幅比率BBRATIOが1(1000倍している場合は1000)であり、周波数領域Fhの体動数、周波数領域Fbの体動数がともに0bpmである場合には、部屋201内で被検者が倒れている可能性がある。この場合、出力制御部54は、警告情報として、被検者が部屋内に倒れている可能性があることを示す情報を端末装置200に送信してもよい。
なお、閾値Th2は、事前に人が誰も居ない状態で監視装置100を動作させることにより算出される。さらに、マイクロプロセッサ45は、体動振幅値が閾値Th2以上の場合には「体動あり」を示す信号を出力し、体動振幅値が閾値Th2未満の場合には「体動なし」を示す信号を出力してもよい。
<処理手順>
監視装置100が実行する各種処理の手順について説明する。以下の各処理のステップは、主に、制御回路152のマイクロプロセッサ45がメモリ154に格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、以下の図12〜図14の各処理を実行する前に、マイクロプロセッサ45は、呼吸成分、心拍成分および体動成分について、環境キャリブレーションを実行する。
具体的には、監視装置100は、監視装置100が設置される空間(例えば、部屋201)に人体等の移動体が存在しない状態において、一定時間(例えば、1分)センシングし、呼吸振幅、心拍振幅、体動振幅の平均値を算出する。そして、呼吸振幅に関して、ノイズ成分と信号成分とを区別する閾値として、呼吸振幅の平均値よりも少し大きい値(例えば、1.2倍)である閾値K1を設定する。同様に、心拍振幅に関して、ノイズ成分と信号成分とを区別する閾値として、心拍振幅の平均値よりも少し大きい値である閾値K2を設定する。体動振幅に関して、ノイズ成分と信号成分とを区別する閾値として、体動振幅の平均値よりも少し大きい値である閾値K3を設定する。
典型的には、呼吸振幅、心拍振幅および体動振幅としては、合成振幅が用いられるが、I信号およびQ信号の各振幅の絶対値を平均してもよいし、I信号の振幅の絶対値またはQ信号の振幅の絶対値を平均してもよい。
監視装置100による計測が開始されると、図12に示す呼吸領域演算処理、図13に示す心拍領域演算処理、および図14に示す体動演算処理の3つに分岐する。
(呼吸領域演算処理)
図12は、実施の形態1に従う監視装置100の呼吸領域演算処理の一例を示す図である。
図12を参照して、マイクロプロセッサ45は、ADコンバータ43からI信号StiおよびQ信号Stqの入力を受け付け、I信号BaiおよびQ信号Baqを生成して、I信号BaiおよびQ信号Baqの合成振幅を算出し、当該合成振幅が閾値K1よりも大きいか否かを判断する(ステップS12)。
合成振幅が閾値K1以下である場合(ステップS12においてNO)、マイクロプロセッサ45は、呼吸信号は存在せず振幅がノイズレベルであると(すなわち、被検者の呼吸は検出されず、呼吸数が0bpmである)判断し(ステップS18)、処理を終了する。
一方、合成振幅が閾値K1よりも大きい場合(ステップS12においてYES)、マイクロプロセッサ45は、I信号BaiおよびQ信号Baqの各々について周波数分布データを生成し、当該周波数分布データから信号強度(ピーク)の高い周波数成分を基本周波数として検出する(ステップS14)。具体的には、上述した基本波検出部72I,72Qによる処理が実行される。続いて、マイクロプロセッサ45は、基本周波数から1分間の呼吸数を求めた呼吸数Biおよび呼吸数Bqを平均化した呼吸数Bnを算出する(ステップS16)。なお、マイクロプロセッサ45は、過去のm個(例えば、m=2)の呼吸数を記憶しておき、今回平均して算出した呼吸数を含めた(m+1)個の呼吸数からメディアン値を算出することにより、呼吸数Bnを算出してもよい。
次に、マイクロプロセッサ45は、後述する図14のステップS74で算出される振幅比率BBRATIOが閾値Thx1(例えば、1100)未満であるか否かを判断する(ステップS20)。振幅比率BBRATIOが閾値Thx1未満である場合には(ステップS20においてYES)、マイクロプロセッサ45は、呼吸数Bnを被検者の平静時の呼吸数として出力して(ステップS22)、処理を終了する。
一方、振幅比率BBRATIOが閾値Thx1以上である場合には(ステップS22においてNO)、マイクロプロセッサ45は、呼吸数Bnを、呼吸領域を含む周波数領域Fbにおける体動数として出力して(ステップS24)、処理を終了する。
マイクロプロセッサ45は、処理が終了した後、再度ステップS10に戻り連続的に繰り返し呼吸領域演算処理を実行する。
なお、身体の動きが加わった場合(例えば、振幅比率BBRATIOが1200以上である場合)、通常、体の動きは、1秒間に1動作、つまり1Hz以上の動きが支配的である。そのため、呼吸領域のゆっくりとした動きは劣勢になり、周波数領域Fbの体動数は小さくなる傾向となる。
(心拍領域演算処理)
図13は、実施の形態1に従う監視装置100の心拍領域演算処理の一例を示す図である。
図13を参照して、マイクロプロセッサ45は、ADコンバータ43からI信号ShiおよびQ信号Shqの入力を受け付け、HPF64I,64Qによりハイパスフィルタ処理を実行する(ステップS40)。具体的には、マイクロプロセッサ45は、HPF64IによりI信号Stiの低周波成分(例えば、0.7Hz以下)を除去してI信号Haiを生成し、HPF64QによりQ信号Shqの低周波成分を除去してQ信号Haqを生成する。
マイクロプロセッサ45は、LPF65I,65Qによりローパスフィルタ処理を実行する(ステップS42)。具体的には、マイクロプロセッサ45は、LPF65IによりI信号Haiの高周波成分(例えば、20Hz以上)を除去してI信号Hbiを生成し、LPF65QによりQ信号Haqの高周波成分を除去してQ信号Hbqを生成する。なお、LPF65I,LPF65Qのカットオフ周波数は、7Hz、10Hz程度の低い周波数であってもよいし、200Hz程度の比較的高い周波数であってもよい。
マイクロプロセッサ45は、I信号HbiおよびQ信号Hbqの合成振幅を算出し、当該合成振幅が閾値K2よりも大きいか否かを判断する(ステップS44)。
合成振幅が閾値K2以下である場合(ステップS44においてNO)、マイクロプロセッサ45は、心拍信号は存在せず振幅がノイズレベルであると(すなわち、被検者の心拍は検出されず、心拍数が0bpmであると)判断して(ステップS50)、処理を終了する。
一方、合成振幅が閾値K2よりも大きい場合(ステップS44においてYES)、マイクロプロセッサ45は、I信号HbiおよびQ信号Hbqの各々について周波数分布データを生成し、当該周波数分布データから信号強度(ピーク)の高い周波数成分を基本周波数として検出する(ステップS46)。具体的には、上述した基本波検出部66I,66Qによる処理が実行される。続いて、マイクロプロセッサ45は、基本周波数から1分間の心拍数を求めた心拍数Hiおよび心拍数Hqを平均化して心拍数Hnを算出する(ステップS48)。なお、マイクロプロセッサ45は、過去のm個(例えば、m=2)の心拍数を記憶しておき、今回平均して算出した心拍数を含めた(m+1)個の心拍数からメディアン値を算出することにより、心拍数Hnを算出してもよい。
次に、マイクロプロセッサ45は、後述する図14のステップS74で算出される振幅比率BBRATIOが閾値Thx1(例えば、1100)未満であるか否かを判断する(ステップS52)。振幅比率BBRATIOが閾値Thx1未満である場合には(ステップS52においてYES)、マイクロプロセッサ45は、心拍数Hnを被検者の平静時の呼吸数として出力して(ステップS54)、処理を終了する。
一方、振幅比率BBRATIOが閾値Thx1以上である場合には(ステップS52においてNO)、マイクロプロセッサ45は、心拍数Hnを、心拍領域を含む周波数領域Fhにおける体動数として出力して(ステップS56)、処理を終了する。
マイクロプロセッサ45は、処理が終了した後、再度ステップS40に戻り連続的に繰り返し心拍領域演算処理を実行する。
なお、身体の動きが加わった場合(例えば、振幅比率BBRATIOが1200以上である場合)、通常、体の動きは、1秒間に1動作、つまり1Hz以上の動きが支配的である。この場合、心拍領域の速い動きが優勢となるため、微弱な動きの心拍数ではなく、身体の動きを示す体動数が出力される。
(体動演算処理)
図14は、実施の形態1に従う監視装置100による体動演算処理の一例を示す図である。
図14を参照して、マイクロプロセッサ45は、ADコンバータ43からI信号StiおよびQ信号Stqの入力を受け付け、体動振幅を算出する(ステップS70)。具体的には、マイクロプロセッサ45は、I信号StiおよびQ信号Stqの合成振幅を算出する。続いて、マイクロプロセッサ45は、算出した合成振幅と閾値K3とに基づいて、体動の有無を判定する(ステップS72)。具体的には、体動振幅が閾値K3以下である場合には、マイクロプロセッサ45は、体動信号は存在せず振幅がノイズレベルであると(すなわち、被検者の体動はなしと)判定する。一方、体動振幅が閾値K3よりも大きい場合には、マイクロプロセッサ45は、被検者の体動はありと判定する。
マイクロプロセッサ45は、呼吸領域演算処理において求められた呼吸振幅に対する体動振幅の比率を示す振幅比率BBRATIOを算出する(ステップS74)。続いて、マイクロプロセッサ45は、被検者の接近動作および離反動作を検出する(ステップS76)。
マイクロプロセッサ45は、ステップS70〜ステップS76において算出された情報に基づいて、各種の活動情報を出力する(ステップS78)。具体的には、マイクロプロセッサ45は、所定時間Ts毎に、ステップS70において算出した体動振幅(例えば、最大値、最小値、平均値)、ステップS72において算出した体動の有無の判定結果、ステップS74において算出した振幅比率BBRATIO、ステップS76における被検者の接近動作および離反動作の検出結果(例えば、接近回数、離反回数)を出力する。また、マイクロプロセッサ45は、所定時間Ts内に、体動振幅と閾値Th1とを比較して、監視装置100に被検者が接近しているか否かを判定し、当該判定結果に基づく接近の頻度を出力してもよい。さらに、マイクロプロセッサ45は、体動振幅の平均値と、関係情報Jとに基づいて推定した被検者および監視装置100間の距離を出力してもよい。
<実施例>
3m×3.6mの部屋に監視装置100を設置して実測された活動情報の実測結果について説明する。
図15は、実施例に従う監視装置100の設置方式を説明するための図である。図15を参照して、図4(または図5)と同様に、監視装置100は、部屋201bの入口部(図15中のドア)付近に水平に設置される。この実施例では、被検者は、机の前に配置されている椅子に座って(座位姿勢の状態で)、テレビ210を視聴したり机での作業を行なったり、ベッド300に臥床したりする。これらの被検者の動作を監視装置100により監視して、活動情報を出力する。
図16および図17は、活動情報の実測結果を示す図である。具体的には、図16には、心拍領域を含む周波数領域Fhの体動数(以下、単に「心拍領域の体動数」とも称する。)、呼吸領域を含む周波数領域Fb(以下、単に「呼吸領域の体動数」とも称する。)の体動数、および体動振幅(合成振幅)が示されている。図17には、所定範囲(0〜1500)の体動振幅、振幅比率BBRATIO(正規化値)が示されている。図16および図17の横軸は、時間(分)であり、約30分間の実測結果が示されている。図16および図17中の各活動情報は、いずれも1秒間隔の平均値を示している。
図16および図17を参照して、被検者は、期間Tk1において座位姿勢でテレビ210等の視聴を行い、期間Tk2において立位姿勢で動作し、期間Tk3において部屋201から退室しており、期間Tk4において立位姿勢/座位姿勢/立位姿勢での動作を繰り返し、期間Tk5において臥床動作を行ない、期間Tk6において起き上がり動作を行なうという一連の動作を行っている。
期間Tk1における座位姿勢での動作時の体動振幅と比較して、期間Tk2あるいは期間Tk4における立位姿勢での動作時の体動振幅は非常に大きい。また、ドアから退室するために、立位姿勢で監視装置100に接近した場合(ここでは、監視装置100と被検者との距離は数cmである)には、体動振幅は閾値Th1(例えば、12000)を大幅超えている(図16中の領域Rm1参照)。被検者が部屋201から退室している期間Tk3においては、体動振幅は閾値Th2(例えば、370)付近となっており、ノイズフロアとなっている(図17中の領域Rm3参照)。続いて、被検者が部屋201に入室して、監視装置100から離反すると(図16中の領域Rm2参照)、体動振幅は閾値Th1を徐々に下回っていく。
呼吸領域の体動数は、座位姿勢時(例えば、期間Tk1)の場合には被検者の平静時の呼吸数である基準値(例えば、17bpm)に近いが(図16中の領域Rb1参照)、立位姿勢時(例えば、期間Tk2,Tk4)の場合には基準値を下回っている(図16中の領域Rb2,Rb3参照)。これは、座位姿勢の場合には呼吸領域の遅い動作が検出され易く、立位姿勢の場合には呼吸領域の遅い動作が検出され難いためである。
心拍領域の体動数は、座位姿勢時(例えば、期間Tk1)の場合には被検者の平静時の心拍数である基準値(例えば、55bpm)に近いが(図16中の領域Rh2参照)、立位姿勢時(例えば、期間Tk2)の場合には基準値を上回っている(図16中の領域Rh3参照)。
なお、座位姿勢時(例えば、期間Tk1)において、一部体動数が大きくなっている領域Rh1は、心拍数の2倍波成分を検出している領域である。これは、心拍信号の振幅が小さくなり、心拍信号の基本波成分を検出できず2倍波成分を検出したためである。このような2倍波成分は、除去することが好ましい。例えば、心拍領域の体動数レンジの48bpm〜250bpmを、2倍波成分以下(例えば、50bpm〜99bpm)へ制限する等により、2倍波(あるいは3倍波等)の高調波成分を除去すればよい。期間Tk1において、図16中の領域Rh1で示される2倍波を除去すれば、概ね、平静時の被検者の心拍数を反映すると考えられる。
また、被検者が部屋201から退室しており、呼吸数がゼロで、人の動きが検出されない場合には、正規化された振幅比率は約1000と定義されている。そのため、期間Tk3においては、振幅比率は約1000となる。座位姿勢時の期間Tk1においては、振幅比率は1500以下で小さく(図17中の領域Ra1)、2倍波を除去した場合の心拍領域の体動数は、概ね基準値(例えば、55bpm)に近くなっている。特に、振幅比率が1100以下である場合には(図17中の領域Ra2参照)、心拍領域の体動数は55bpmであり(図16中のRh2参照)、被検者の平静時の心拍数(すなわち、基準値)とほぼ一致する。
また、立位姿勢で動作している期間Tk2,Tk3においては、振幅比率は1500以上となる頻度が多い(図17中の領域Ra3参照)。特に、監視装置100に接近した場合には、振幅比率は急激に大きくなっている。
また、臥床動作を行なっている期間Tk5のうち、被検者の動きが検出できる期間において振幅比率は1500程度となっているが、被検者の呼吸を検出できなくなると、振幅比率は1000となっている(図17中の領域Ra4参照)。しかし、期間Tk5の体動振幅(図17中の領域Rm4参照)は、被検者が退室している期間Tk3の体動振幅(図17中の領域Rm3参照)と比較してばらつきがある。そのため、各期間における体動振幅の平均値および標準偏差を算出して比較することにより、被検者が退室しているのか、被検者が臥床動作を行っているのかを判定できる。なお、期間Tk5のうち、被検者の動きが検出できる期間において呼吸領域の体動数および心拍領域の体動数は、基準値付近となっているが、被検者の動きが微小になると、呼吸領域の体動数および心拍領域の体動数は0bpmとなっている(図16中の領域Rb4,Rh4参照)。
次に、活動情報の出力例について説明する。図18は、実施の形態1に従う活動情報の出力例を示す図である。なお、監視装置100は、図15に示すように設置されているとする。図18を参照して、2日分(48時間分)の活動情報が示されている。具体的には、9月10日の午前7時から午後10時までの時間帯Tu1、9月10日の午後10時から9月11日の午前7時までの時間帯Tu2、9月11日の午前7時から午後10時までの時間帯Tu3、9月11日の午後10時から9月12日の午前7時までの時間帯Tu4の4つの時間帯の各々について、活動情報が示されている。
また、活動情報として、振幅比率の最大値および平均値、体動振幅の平均値、監視装置100から1m以内に接近した接近回数、心拍領域体動数の平均値、心拍数の平均値、呼吸領域体動数の平均値、呼吸数の平均値が示されている。
例えば、9月10日の活動時間帯である時間帯Tu1と比較して、9月11日の活動時間帯である時間帯Tu3では、振幅比率が高く体動振幅が大きいことから、被検者は前日よりも活発に活動していると推定される。このことは、時間帯Tu1に対して時間帯Tu3では、心拍領域の体動数が多く、呼吸領域の体動数が少ない(すなわち、呼吸領域の遅い動作の検出が少ない)ことからも推定できる。
また、心拍領域の体動数と心拍数との比較、呼吸領域の体動数と呼吸数との比較により、被検者の平静時の心拍数および呼吸数に対して、心拍領域の身体の動き(比較的速い動き)、呼吸領域の身体の動き(比較的遅い動き)がどのような関係にあるのかを把握することができる。
さらに、時間帯Tu1に対して時間帯Tu3では、接近回数が多いため、部屋201への入退室が前日よりも多いと推定される。このような場合、図18に示す出力例を見た介護者は、被検者に対してその理由等を確認することができる。
また、例えば、9月10日から9月11日の睡眠時間帯である時間帯Tu2と比較して、9月11日から9月12日の睡眠時間帯である時間帯Tu4では、振幅比率の平均値および最大値がともに低く、体動振幅も低い。このことは、時間帯Tu2に対して時間帯Tu4では、被検者の眠りが深く熟睡できていたと推定される。これは、時間帯Tu3において、被検者が活発に動いていたためであると想定することもできる。
このように、日々の生活の中で被検者が活発に活動しているのか、元気がなくなってきているのか、部屋の入退室の頻度、睡眠状態等を推定し、被検者の活動状態を把握することができる。
<利点>
実施の形態1によると、被検者の体動に関する情報を監視することにより、当該被検者の活動状態を把握することができる。例えば、部屋の中で、被検者が活発に動いているのか、安静にしているのか、それとも退室中なのかを把握することができる。また、被検者が立位姿勢で歩行している状況であれば監視装置100との距離を推定することができる。さらに、呼吸領域の体動数および心拍領域の体動数に基づいて、比較的遅い動作が多いのか、比較的速い動作が多いのかを推定することもできる。
[実施の形態2]
実施の形態2では、実施の形態1とは異なる監視装置100の設置方式について説明する。実施の形態1では、監視装置100を部屋201の入口部203周辺に設置する構成について説明したが、実施の形態2では、被検者が部屋201内で普段過ごしている場所周辺に設置する構成について説明する。例えば、被検者は介護が必要な老人であり、概ね、部屋201内のベッド300上で過ごしているとする。
図19は、実施の形態2に従う監視装置100の設置方式を説明するための図である。具体的には、図19(a)は、ベッド上の被検者を部屋の天井側から見た場合の概略図(平面図)である。図19(b)は、ベッド上の被検者を部屋の側面側から見た場合の概略図(側面図)である。ここでは、被検者は、ベッド300上で、座位状態あるいは臥床状態で、収納台205に載置されたテレビ210を視聴しているものとする。
監視装置100は、ベッド300付近の収納台205に設置されている。ベッド300と監視装置100との距離は、例えば、数十センチ〜1.5m程度と近く、被検者と監視装置100との距離も近い。被検者がベッド300に臥床している場合であっても、ピーク方向線121上に当該被検者は存在している。これにより、ベッド300周辺部、ベッド300に臥床している被検者の動作を、領域線123A,123Bにより精度よく検出できる。
また、図19の例では、被検者がベッド300から起き上がった場合には、ピーク方向線121上に当該被検者が存在し、かつ監視装置100から被検者が接近する動作(すなわち、接近動作)を主に行なっている。一方、被検者がベッド300に臥床する場合には、ピーク方向線121上に当該被検者が存在し、かつ監視装置100に被検者が離反する動作(すなわち、離反動作)を主に行なっている。
被検者が介護者である場合には、手をついて起き上がったり、ベッドサイドの手すりを持って起き上がったりするため、接近動作および離反動作の両方が検出される。そこで、監視装置100は、動作の継続期間において、被検者の接近動作の回数が離反動作の回数よりも多いと判断した場合には被検者が起き上がったと判定し、被検者の離反動作の回数が接近動作の回数よりも多いと判断した場合には被検者が臥床したと判定してもよい。
また、被検者が立位姿勢で監視装置100に近づくと、体動振幅および振幅比率が急激に上昇する。そのため、監視装置100は、体動振幅(または振幅比率)が所定の閾値以上になった場合に、被検者が離床したと判定してもよい。監視装置100は、被検者が起き上がったと判定した場合、警告情報として、例えば「まだ、ベッドから降りないで下さい」といったメッセージを音声出力してもよい。
図19に示す監視装置100の設置例において、心拍領域の体動数が0bpm、呼吸領域の体動数が0bpm、体動振幅が閾値Th2付近であり、振幅比率が1000である場合には、被検者が退室したと考えられる。
なお、実施の形態2では、監視装置100と被検者との距離が近いため、心拍信号の振幅が大きく、基本周波数を精度よく検出できると考えられる。例えば、他の監視装置100を図4に示すように入口部203付近にさらに設置した場合には、2つの監視装置100により心拍領域の体動数が取得されるが、精度を考慮して、収納台205に設置された監視装置100により取得された心拍領域を採用すればよい。
実施の形態2によると、ベッド300から被検者が起き上がり動作が行なわれた場合に警告情報を出力できる。その他の利点は、実施の形態1と同様である。
[実施の形態3]
実施の形態3では、実施の形態1および2とは異なる監視装置100の設置方式について説明する。実施の形態3では、監視装置100は、店内(例えば、コンビニエンスストア内)のレジ台に設置される。特に、夜中のコンビニエンスストアでは、店員は、常時レジ台に居ることはなく、顧客が買い物と済ませたら、レジに向かうことが多い。そのため、監視装置100によりレジに向かう顧客を検出する構成について説明する。
図20は、実施の形態3に従う監視装置100の設置方式を説明するための図である。図20を参照して、監視装置100は、店211内において、レジ212が載置されたレジ台213に取り付けられている。買い物を済ませた被検者は、立位姿勢で歩行して、レジ台213に近づいてくる。監視装置100は、被検者の接近動作を検出し、被検者との距離が所定距離未満になった場合(例えば、体動振幅が所定閾値以上となった場合)には、警告情報を音声等で出力することができる。
実施の形態3によると、店内においてレジ第213に近づいてくる被検者を検出し、警告情報を出力できる。その他の利点は、実施の形態1と同様である。
[その他の実施の形態]
その他の実施の形態として、コンピュータを機能させて、上述の実施の形態で説明したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
プログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
また、本実施の形態にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
また、上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。
さらに、上述した実施の形態において、他の実施の形態で説明した処理や構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。