JP6954204B2 - 搬送部材、その搬送部材の補修方法及びその搬送部材の製造方法 - Google Patents

搬送部材、その搬送部材の補修方法及びその搬送部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、搬送部材、その搬送部材の補修方法及びその搬送部材の製造方法に関し、特に、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材、その搬送部材の補修方法及びその搬送部材の製造方法に関する。
鋼管(炭素鋼、ステンレス鋼及び合金鋼等の鋼管を含む)の製造プロセスにおいて、加熱炉は不可欠である。加熱炉は、焼入れ、焼戻し又はその他の熱処理のために鋼管を加熱する。このような鋼管用加熱炉として、ウォーキングビーム式加熱炉が用いられる場合がある。鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉(以下、単に「加熱炉」ともいう。)では、複数のウォーキングビームによって、被加熱材(すなわち鋼管)が被加熱材の軸方向と垂直な方向(横方向)に搬送される。
ここで、ウォーキングビームは、被加熱材と接触して被加熱材を支持する複数の搬送部材を含む。加熱炉内において、被加熱材が高温になることに伴って、被加熱材の表面で酸化スケールが発生する。酸化スケールはしばしば搬送部材の上面に付着して堆積する。酸化スケールの付着及び堆積が繰り返されると、搬送部材の上面に固い突起物が形成される。この突起物が形成される現象はビルドアップと称される。ビルドアップが過剰になれば、被加熱材の搬送中に突起物が被加熱材の外面に接触する。その結果、被加熱材の外面に凹み疵が発生する。被加熱材の凹み疵は製品管に残存し、製品管の外面品質が損なわれる。そのため、ビルドアップの抑制が望まれる。
特開2010−13698号公報(特許文献1)は、長尺の被加熱材(鋼管)を被加熱材の軸方向に搬送しながら加熱する技術を開示する。特許文献1に開示された技術では、被加熱材はローラによって搬送される。ローラの耐ビルドアップ性を高めるため、プラズマ粉体肉盛法により、ローラの表面に皮膜が形成される。この皮膜は、Co基合金又はNi基合金をマトリクスとし、Cr炭化物粒子を分散相とする複合皮膜である。
また、特開2000−319720号公報(特許文献2)は、長尺の被加熱材(鋼管)をウォーキングビームによって搬送しながら加熱する技術を開示する。特許文献2に開示された技術では、ウォーキングビームの搬送部材(ポケットと称される被加熱材と接触する部分)に、ハンド溶射により3つの層が順に形成される。1層目はCoCrAlY系の溶射皮膜であり、その厚みは50±20μmとされる。2層目はCoCrAlY+Al系の溶射皮膜であり、その厚みは100±20μmとされる。3層目はZrO+25(Al−ZrO)系の溶射皮膜であり、その厚みは150±30μmとされる。そして、グラインダーバフ処理等の表面仕上げ処理により、3層目の溶射皮膜の表面粗さはRaで7〜9μmとされる。
特許文献1に開示された技術では、ビルドアップが過剰になった場合、ローラを補修する。この場合、ローラを加熱炉から取り出して、プラズマ粉体肉盛法により複合皮膜を再生する。プラズマ粉体肉盛法に使用される装置は、容易に運搬できない大規模な装置だからである。また、ローラは大きな部品ではないため、ローラを加熱炉から取り出すことは容易い。
しかしながら、ウォーキングビームは、ローラと比較して、遙かに長くて大きな部品である。そのため、かなりの時間と労力をかけなければ、ウォーキングビームを加熱炉から取り出すことはできない。したがって、特許文献1に開示されるプラズマ粉体肉盛法は、ウォーキングビームの補修に適さない。
これに対して、特許文献2に開示された技術では、ビルドアップが過剰になった場合、ウォーキングビームを加熱炉内に設置したままの状態で補修を行って、3層構造の溶射皮膜を再生する。特許文献2に開示された溶射に使用される装置は、容易に運搬できるコンパクトな装置だからである。
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、各々の材質及び厚みが制限された3つの溶射皮膜を形成する必要がある。そのため、溶射そのものに要する時間及び皮膜の厚み測定に要する時間は計り知れない。さらに3層構造の溶射皮膜を形成するために、溶射施工の工数が多い。また、1層目及び2層目の皮膜の合計厚みが同じレベルで、且つ3層目の皮膜の厚みが同じレベルであっても、ビルドアップの抑制効果が認められない場合があった。要するに、特許文献2に開示される技術では、ビルドアップの抑制を十分に図れない。
特開2010−13698号公報 特開2000−319720号公報
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものである。本発明の1つの目的は、ビルドアップを十分に抑制できる、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような特性を有する搬送部材の補修を容易に行える、搬送部材の補修方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような特性を有する搬送部材を容易に製造できる、搬送部材の製造方法を提供することである。
本発明の実施形態による搬送部材は、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材である。搬送部材は、基台と、基台の上面を覆う第1の溶射皮膜と、第1の溶射皮膜の表面を覆う第2の溶射皮膜と、を備える。第1の溶射皮膜は、MCrAlY合金(ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する)からなる。第2の溶射皮膜は、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる。第1の溶射皮膜の表面粗さRaが12μm以上である。第2の溶射皮膜の厚みが200μm以下である。
本発明の実施形態による搬送部材の補修方法は、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材の補修方法である。搬送部材の補修方法は、加熱炉内で搬送部材の上面にショットブラストを施すショットブラスト工程と、加熱炉内で搬送部材の基台の上面に、MCrAlY合金(ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する)からなる粉末を溶射する第1の溶射工程と、加熱炉内で第1の溶射皮膜の表面に、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる粉末を溶射する第2の溶射工程と、を含む。ショットブラスト工程では、搬送部材の基台の上面を露出させる。第1の溶射工程では、基台の上面に、自己の表面粗さRaが12μm以上で、MCrAlY合金からなる第1の溶射皮膜を形成する。第2の溶射工程では、第1の溶射皮膜の表面に、自己の厚みが200μm以下で、複合酸化物からなる第2の溶射皮膜を形成する。
本発明の実施形態による搬送部材の製造方法は、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材の製造方法である。搬送部材の製造方法は、搬送部材の基台を準備する工程と、基台の上面に、MCrAlY合金(ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する)からなる粉末を溶射する第1の溶射工程と、第1の溶射皮膜の表面に、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる粉末を溶射する第2の溶射工程と、を含む。第1の溶射工程では、基台の上面に、自己の表面粗さRaが12μm以上で、MCrAlY合金からなる第1の溶射皮膜を形成する。第2の溶射工程では、第1の溶射皮膜の表面に、自己の厚みが200μm以下で、複合酸化物からなる第2の溶射皮膜を形成する。
本発明の実施形態による搬送部材は、ビルドアップを十分に抑制できる。また、本発明の実施形態による搬送部材の補修方法は、そのような特性を有する搬送部材の補修を容易に行える。また、本発明の実施形態による搬送部材の製造方法は、そのような特性を有する搬送部材を容易に製造できる。
図1Aは、暴露試験で用いた試験体ユニットの組立て前の状態を示す模式図である。 図1Bは、暴露試験で用いた試験体ユニットの組立て後の状態を示す模式図である。 図2Aは、暴露試験後のZrO系の溶射皮膜と酸化スケールとの間の界面付近の断面を示す模式図である。 図2Bは、暴露試験後のAlの溶射皮膜と酸化スケールとの間の界面付近の断面を示す模式図である。 図2Cは、暴露試験後のCrの溶射皮膜と酸化スケールとの間の界面付近の断面を示す模式図である。 図3は、高温摩擦試験装置の模式図である。 図4は、高温摩擦試験の結果を示す図である。 図5は、衝突試験で用いた試験片の模式図である。 図6は、本実施形態の搬送部材の模式図である。 図7は、本実施形態の搬送部材の補修方法を示すフロー図である。 図8は、本実施形態の搬送部材の製造方法を示すフロー図である。
上記の課題を解決するため、本発明者らは種々の試験を実施し、鋭意検討を重ねた。その結果、下記の知見を得た。
鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉では、複数のウォーキングビームによって、長尺の被加熱材(すなわち鋼管)が搬送される。具体的には、被加熱材を支持する複数のウォーキングビームが、加熱炉の床に相互に平行に配置される。ウォーキングビームは被加熱材の搬送方向に延びている。ウォーキングビームは、上昇、前進、下降及び後退というサイクル運動を繰り返す。ウォーキングビームの繰り返しのサイクル運動によって、被加熱材が被加熱材の軸方向と垂直な方向(横方向)に搬送される。
ウォーキングビームの全長は数メートルから十数メートル程度であり、極めて長い。ウォーキングビームは、被加熱材と接触して被加熱材を支持する複数の搬送部材を含む。複数の搬送部材はウォーキングビームの長手方向に配列される。搬送部材は、耐熱鋼からなる基台を含む。
[基礎となる調査及び検討]
本発明者らは、加熱炉における搬送部材上の堆積物を分析した。その結果、その堆積物は、主にFe酸化物で構成されており、そのFe酸化物は、加熱中の被加熱材に発生した酸化スケールに由来することが判明した。そこで本発明者らは、ビルドアップを抑制するためには、搬送部材へのFe酸化物の付着を阻害すれば良いと考えた。つまり、本発明者らは、被加熱材と接触する搬送部材(基台)の上面に、Fe酸化物が付着し難い皮膜を配置すれば良いと考えた。Fe酸化物が付着し難い皮膜は、Fe酸化物と反応生成物を形成し難い皮膜、すなわちFe酸化物と固溶し難い皮膜に相当する。
ここで、上記したFe酸化物と反応生成物を形成し難い皮膜をウォーキングビームの搬送部材上に形成する手法について検討する。そのような特性を有する皮膜は、溶射又はプラズマ粉体肉盛法により形成することができる。
しかしながら、プラズマ粉体肉盛法による皮膜の形成は、加熱炉の外でしか行えない。上記のとおり、プラズマ粉体肉盛法に使用される装置は、容易に運搬できない大規模な装置だからである。また、ウォーキングビームは大きな部品であるため、補修の際に加熱炉から容易に取り出すことはできない。
これに対して、溶射による皮膜の形成は、加熱炉の中でも外でも行える。上記のとおり、溶射に使用される装置は、容易に運搬できるコンパクトな装置だからである。したがって、最初の製造のみならず、メンテナンスをも考慮すれば、搬送部材上に皮膜を形成するための適切な手法は溶射である。ウォーキングビームを加熱炉内に設置したままの状態で皮膜の補修を容易に行えるからである。また、溶射は容易な手法である。
[皮膜の材質]
次に、溶射によって形成される皮膜であって、上記したFe酸化物と反応生成物を形成し難いという特性を有する皮膜の材質について検討した。溶射が可能で、且つ高温酸化環境下でも使用が可能な材質としては、ZrO(ジルコニア)、Al(アルミナ)及びCr(クロミア)といった酸化物系セラミックスが挙げられる。
ZrO、Al及びCrのそれぞれとFe酸化物との平衡状態図より、ZrO系が特にFe酸化物と固溶し難いという特性を有する。そのため、本発明者らは、ZrO系が耐ビルドアップ性に優れた材質であり、皮膜に最適である、との仮説を立てた。ここで「ZrO系」とは、ZrOを主成分とし、他の酸化物(例:Y(イットリア)、CaO(カルシア)、MgO(マグネシア)及びCeO(セリア))を副成分とする複合酸化物(複合セラミックス)である。この複合酸化物は、副成分を含むことによりZrOの結晶構造の安定化が図られたものであり、その代表はYSZ(イットリア安定化ジルコニア)である。
[暴露試験]
上記の仮説を実証するため、加熱炉内環境での暴露試験を実施した。図1A及び図1Bは、暴露試験で用いた試験体ユニットの模式図である。これらの図のうち、図1Aは組立て前の状態を示す。図1Bは組立て後の状態、すなわち暴露試験時の状態を示す。図1A及び図1Bのいずれにも、試験体ユニットを側方から見た図が示される。
図1Aを参照して、ウォーキングビームの搬送部材(基台)を想定した試験片11、及び被加熱材(鋼管)を想定した試験片51をそれぞれ複数準備した。以下では、試験片11を搬送部材用試験片11ともいう。試験片51を被加熱材用試験片51ともいう。搬送部材用試験片11の材質は耐熱用オーステナイト系ステンレス鋼(SUS310S)であった。搬送部材用試験片11のサイズは縦40mm×横40mm×厚み10mmであった。被加熱材用試験片51の材質は炭素鋼であった。被加熱材用試験片51のサイズは縦40mm×横40mm×厚み5mmであった。
被加熱材用試験片51を単体で950℃×50時間加熱し、その表面及び裏面の両方の面に酸化スケール52の皮膜を形成した。プラズマ溶射によって、搬送部材用試験片11の表面又は裏面に溶射皮膜13を形成した。溶射皮膜13の材質は、YSZ(ZrO系:ZrO+8mol%Y)、Al及びCrの3種類とした。つまり、YSZの粉末、Alの粉末及びCrの粉末を準備し、それぞれの粉末を用いて搬送部材用試験片11に溶射を行った。
なお、搬送部材用試験片11に上記3種類の溶射皮膜13を形成する前に、上記3種類の溶射皮膜13の下地として、プラズマ溶射により皮膜を形成した。この下地の溶射皮膜の材質は、CoNiCrAlY合金であった。つまり、上記3種類の溶射皮膜13の下地として、CoNiCrAlY合金の粉末を準備し、その粉末を用いて搬送部材用試験片11に溶射を行った。
図1Bを参照して、1つの被加熱材用試験片51を上下から2つの搬送部材用試験片11で挟むように、被加熱材用試験片51及び2つの搬送部材用試験片11を積み重ねた。さらに、それらの3つの試験片11、51及び11の上下にそれぞれブロック55A、55Bを宛がい、ボルト56とナット57によってそれらの3つの試験片11、51及び11を締め付けた。締付け圧力は、実際の搬送部材に与えられる鋼管の自重を想定して、試験片11、51及び11に作用する面圧で15MPaとした。これにより、3種類の溶射皮膜13ごとに、酸化スケール52が溶射皮膜13に押し付けられた状態の試験体ユニット50を得た。
3種類の試験体ユニット50を実際の加熱炉内のウォーキングビームの脇に置き、実操業の熱処理条件(950℃でLNG燃焼雰囲気)の下で2か月間暴露した。暴露の後、試験体ユニット50を加熱炉から取り出して解体した。そして、3種類の溶射皮膜13ごとに、溶射皮膜13と酸化スケール52との間の界面付近の断面ミクロ観察及び断面EPMAを行った。
図2A〜図2Cは、暴露試験後の溶射皮膜と酸化スケールとの間の界面付近の断面を示す模式図である。これらの図のうち、図2Aは、溶射皮膜がYSZ(ZrO系)の場合を示す。図2Bは、溶射皮膜がAlの場合を示す。図2Cは、溶射皮膜がCrの場合を示す。
図2B及び図2Cを参照して、溶射皮膜13がAl又はCrの場合、溶射皮膜13と酸化スケール52との間の界面に反応生成物54の層が認められた。つまり、Alの溶射皮膜13、及びCrの溶射皮膜13は、酸化スケール52に由来するFe酸化物と反応生成物を形成し易く、Fe酸化物が付着し易いといえる。なお、図2Cを参照して、溶射皮膜13がCrの場合、反応生成物54の層に割れが発生した。
これに対して、図2Aを参照して、溶射皮膜13がYSZ(ZrO系)の場合、溶射皮膜13と酸化スケール52との間の界面に反応生成物が全く認められなかった。つまり、ZrO系の溶射皮膜13は、酸化スケール52に由来するFe酸化物と反応生成物を形成し難く、Fe酸化物が付着し難いといえる。したがって、ビルドアップを抑制するには、ZrO系の溶射皮膜13が最適であることが実証された。
[溶射皮膜の特性]
引き続き、溶射施工の工数を抑えつつ、ウォーキングビームの搬送部材でビルドアップの抑制を十分に図るため、溶射皮膜に必要な特性を検討した。ここでは、実用性を踏まえ、溶射皮膜を2層構造とすることを前提にして検討した。具体的には、上記3種類の溶射皮膜について、ウォーキングビームの搬送部材への適合性を見極めるため、被加熱材から搬送部材への酸化スケール(Fe酸化物)の付着性、及び溶射皮膜の密着強度を調査した。
[酸化スケールの付着性を確認する試験(高温摩擦試験)]
図3は、酸化スケールの付着性を確認する試験で用いた高温摩擦試験装置の模式図である。図3には、試験装置を側方から見た図が示される。図3を参照して、高温摩擦試験装置60は、2つの試験片21及び61をそれぞれ支持するために、固定の下支持具65Bと、昇降が可能で且つ回転が可能な上支持具65Aと、を備える。下支持具65Bの上面に試験片61が取り付けられる。上支持具65Aの下面に試験片21が取り付けられる。下支持具65Bには高周波加熱用コイル66Bが設けられ、高周波加熱用コイル66Bによって試験片61を加熱することが可能である。上支持具65Aには高周波加熱用コイル66Aが設けられ、高周波加熱用コイル66Aによって試験片21を加熱することが可能である。
この試験では、ウォーキングビームの搬送部材(基台)を想定した試験片21、及び被加熱材(鋼管)を想定した試験片61をそれぞれ複数準備した。以下では、試験片21を搬送部材用試験片21ともいう。試験片61を被加熱材用試験片61ともいう。搬送部材用試験片21の材質は耐熱用オーステナイト系ステンレス鋼(SUS310S)であった。搬送部材用試験片21の形状は直径20mmの円柱状であった。被加熱材用試験片61の材質は二相ステンレス鋼(DP3W)であった。被加熱材用試験片61の形状は直径20mmの円柱状であった。
被加熱材用試験片61を単体で950℃×50時間加熱し、その1つの端面に酸化スケール62の皮膜を形成した。プラズマ溶射によって、搬送部材用試験片21の1つの端面に溶射皮膜23を形成した。溶射皮膜23の材質は、YSZ(ZrO系:ZrO+8mol%Y)、Al及びCrの3種類とした。つまり、YSZの粉末、Alの粉末及びCrの粉末を準備し、それぞれの粉末を用いて搬送部材用試験片21に溶射を行った。
なお、搬送部材用試験片21に上記3種類の溶射皮膜23を形成する前に、上記3種類の溶射皮膜23の下地として、プラズマ溶射により皮膜を形成した。この下地の溶射皮膜の材質は、CoNiCrAlY合金であった。つまり、上記3種類の溶射皮膜23の下地として、CoNiCrAlY合金の粉末を準備し、その粉末を用いて搬送部材用試験片21に溶射を行った。
図3を参照して、酸化スケール62の皮膜が形成された面を上向きにした状態で、被加熱材用試験片61を下支持具65Bに取り付けた。溶射皮膜23が形成された面を下向きにした状態で、搬送部材用試験片21を上支持具65Aに取り付けた。高周波加熱用コイル66A及び66Bに通電し、被加熱材用試験片61及び搬送部材用試験片21を大気雰囲気中で1100℃に加熱した。この状態を維持したまま、上支持具65Aを下降させ、搬送部材用試験片21における溶射皮膜23が形成された面を、被加熱材用試験片61における酸化スケール62の皮膜が形成された面に押し付けた(図3中の白抜き矢印参照)。このとき、押付け圧力は、試験片21及び61に作用する面圧で3MPaとした。さらに上支持具65Aを一方向に回転数5rpmで1分間回転させた。これにより、相互に押圧接触する試験片21及び61の面を摺動させた。そして、上支持具65Aを上昇させて、1分間待機した。このようなサイクルを最大10回繰り返した。このような高温摩擦試験を3種類の溶射皮膜23ごとに行った。
摺動の1サイクルを終える度に、3種類の溶射皮膜23ごとに、搬送部材用試験片21における溶射皮膜23が形成された面の性状を調査した。具体的には、溶射皮膜23が形成された面を外観観察した。さらに、蛍光X線分析により、溶射皮膜23が形成された面に付着したFeの増加量を測定した。この増加分のFeは被加熱材用試験片61の酸化スケール62に由来するものであり、ビルドアップの指標となる。
図4は、高温摩擦試験の結果を示す図である。図4の横軸に、摺動のサイクル数が示される。図4の縦軸に、溶射皮膜23が形成された面に付着したFeの増加量が示される。外観観察の結果、及び図4に示される結果より、溶射皮膜23がYSZ(ZrO系)の場合、溶射皮膜23上でFeの増加は全く認められなかった。またこの場合、溶射皮膜23に凹凸の変化は認められなかった。要するに、溶射皮膜23がYSZ(ZrO系)の場合、溶射皮膜23に酸化スケール62が付着せず、ビルドアップの兆候は全く認められなかった。
これに対し、溶射皮膜23がAlの場合、溶射皮膜23上でFeが激しく増加した。またこの場合、溶射皮膜23の一部が剥離した。要するに、溶射皮膜23がAlの場合、溶射皮膜23に酸化スケール62が付着し、ビルドアップの兆候が認められた。溶射皮膜23がCrの場合、摺動の1サイクル目で溶射皮膜23が全て剥離し、被加熱材用試験片61に転写された。そのため、評価不能となった。
したがって、溶射皮膜を2層構造としても、上層の溶射皮膜23をZrO系にすれば、ビルドアップを抑制できることが実証された。
[溶射皮膜の密着強度を確認する試験(衝突試験)]
図5は、衝突試験で用いた試験片の模式図である。図5には、試験片を側方から見た図が示される。図5を参照して、ウォーキングビームの搬送部材(基台)を想定した試験片31を複数準備した。以下では、試験片31を搬送部材用試験片31ともいう。搬送部材用試験片31の材質は耐熱用オーステナイト系ステンレス鋼(SUS310S)であった。搬送部材用試験片31の形状は縦100mm×横100mm×厚み6mmの板状であった。
プラズマ溶射によって、搬送部材用試験片31の1つの表面に、下地として、CoNiCrAlY合金の溶射皮膜32を形成した。つまり、CoNiCrAlY合金の粉末を準備し、その粉末を用いて搬送部材用試験片31に溶射を行った。以下では、この下地の溶射皮膜32を下層皮膜32又は第1の溶射皮膜ともいう。この溶射の際、下層皮膜32の表面粗さRaを種々変更した。下層皮膜32の厚みは100〜200μmであった。本明細書において、表面粗さRaはJIS B 0601(2001年)で規定される中心線平均粗さを意味する。
さらにプラズマ溶射によって、下層皮膜32の上に溶射皮膜33を形成した。溶射皮膜33の材質は、YSZ(ZrO系:ZrO+8mol%Y)、Al及びCrの3種類とした。つまり、YSZの粉末、Alの粉末及びCrの粉末を準備し、それぞれの粉末を用いて搬送部材用試験片31に溶射を行った。以下では、下層皮膜32の上に形成された溶射皮膜33を上層皮膜33又は第2の溶射皮膜ともいう。この溶射の際、上層皮膜33の厚みを種々変更した。
2層構造の下層皮膜32及び上層皮膜33が形成された面を上向きにした状態で、搬送部材用試験片31を定盤の上に固定した。この搬送部材用試験片31の上方1mの位置から鋼球を落下させて、その鋼球を上層皮膜33に衝突させた。鋼球の直径は38mmであり、その材質はSUJ2であった。鋼球の落下を繰り返し、上層皮膜33が剥離するまでの鋼球の衝突回数を計測した。このような衝突試験を全ての搬送部材用試験片31で行った。
下記の表1に、衝突試験の結果を示す。この表1には、上記高温摩擦試験の結果も合わせて示す。
Figure 0006954204
表1中の「総合評価」の欄に示される記号の意味は以下のとおりである。
・○(優):高温摩擦試験において、溶射皮膜にスケールの付着がなく、且つ衝突試験において、上層皮膜が剥離するまでの鋼球の衝突回数が50回以上である。
・×(不可):高温摩擦試験において、溶射皮膜にスケールの付着がある、又は衝突試験において、上層皮膜が剥離するまでの鋼球の衝突回数が50回未満である。
表1に示される結果より、上層皮膜33がYSZ(ZrO系)であって、下層皮膜32の表面粗さRaが12μm以上であり、且つ上層皮膜33の厚みが200μm以下であるという独特な条件(試験No.7〜9)を満たせば、上層皮膜33に酸化スケールが付着せず、上層皮膜33の密着強度が高いことが実証された。要するに、上記の独特な条件を満たす2層構造の溶射皮膜は、ビルドアップを十分に抑制でき、ウォーキングビームの搬送部材に適合することが実証された。
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。
本発明の実施形態による搬送部材は、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材である。搬送部材は、基台と、基台の上面を覆う第1の溶射皮膜と、第1の溶射皮膜の表面を覆う第2の溶射皮膜と、を備える。第1の溶射皮膜は、MCrAlY合金(ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する)からなる。第2の溶射皮膜は、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる。第1の溶射皮膜の表面粗さRaが12μm以上である。第2の溶射皮膜の厚みが200μm以下である。
本実施形態の搬送部材によれば、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉において、ビルドアップを十分に抑制できる。そのため、製品管の外面疵を低減でき、製品歩留を向上させることができる。
本発明の実施形態による搬送部材の補修方法は、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材の補修方法である。搬送部材の補修方法は、加熱炉内で搬送部材の上面にショットブラストを施すショットブラスト工程と、加熱炉内で搬送部材の基台の上面に、MCrAlY合金(ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する)からなる粉末を溶射する第1の溶射工程と、加熱炉内で第1の溶射皮膜の表面に、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる粉末を溶射する第2の溶射工程と、を含む。ショットブラスト工程では、搬送部材の基台の上面を露出させる。第1の溶射工程では、基台の上面にMCrAlY合金からなる第1の溶射皮膜を形成する。第1の溶射皮膜の表面粗さRaは12μm以上である。第2の溶射工程では、第1の溶射皮膜の表面に複合酸化物からなる第2の溶射皮膜を形成する。第2の溶射皮膜の厚みは200μm以下である。
本実施形態の搬送部材の補修方法によれば、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉において、ビルドアップを十分に抑制できるという特性を有する搬送部材の補修を容易に行える。
本発明の実施形態による搬送部材の製造方法は、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材の製造方法である。搬送部材の製造方法は、搬送部材の基台を準備する工程と、基台の上面に、MCrAlY合金(ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する)からなる粉末を溶射する第1の溶射工程と、第1の溶射皮膜の表面に、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる粉末を溶射する第2の溶射工程と、を含む。第1の溶射工程では、基台の上面にMCrAlY合金からなる第1の溶射皮膜を形成する。第1の溶射皮膜の表面粗さRaは12μm以上である。第2の溶射工程では、第1の溶射皮膜の表面に複合酸化物からなる第2の溶射皮膜を形成する。第2の溶射皮膜の厚みは200μm以下である。
本実施形態の搬送部材の製造方法によれば、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉において、ビルドアップを十分に抑制できるという特性を有する搬送部材を容易に製造できる。
本実施形態の搬送部材及びその補修方法において、第1の溶射皮膜(下層皮膜)及び第2の溶射皮膜(上層皮膜)を形成するための典型的な溶射は、プラズマ溶射である。ただし、高速フレーム溶射であってもよい。特許文献1に開示されるプラズマ粉体肉盛法は溶射ではない。
ここで、溶射によって形成された溶射皮膜は、以下の手法により認識できる。皮膜の断面を顕微鏡によって観察する。例えば、皮膜組織に、数μmから数10μmサイズ程度の扁平粒子の堆積構造が見られる場合、その皮膜は溶射皮膜と言える。また、基台と皮膜との間の界面に希釈層(基台に含まれる合金成分と皮膜に含まれる合金成分とが混ざり合った層)が存在しない場合、その皮膜は溶射皮膜と言える。プラズマ粉体肉盛法による皮膜では、酸化物主体の皮膜は形成できないし、必ず希釈層が形成されるからである。
本実施形態の搬送部材及びその補修方法では、第1の溶射皮膜(下層皮膜)の表面粗さRaは12μm以上である。より好適には、第1の溶射皮膜の表面粗さRaは15μm以上である。第1の溶射皮膜の表面粗さRaの上限は特に限定されない。ただし、工業的に実現できる範囲を考慮すれば、第1の溶射皮膜の表面粗さRaの上限は30μm程度である。
ここで、第1の溶射皮膜の表面粗さRaは、以下の手法により認識できる。第2の溶射皮膜が形成される前であれば、触針式の表面粗さ計などによって第1の溶射皮膜の表面粗さを直接計測する。第2の溶射皮膜が形成された後であれば、第1及び第2の溶射皮膜の断面を顕微鏡によって観察する。その観察像をコンピュータに取り込み、その観察像に基づくコンピュータ上での画像処理で、第1の溶射皮膜と第2の溶射皮膜との間の界面形状を2値画像として抽出し、その形状をトレースした曲線を用いて粗さを評価する。
本実施形態において、第1の溶射皮膜(下層皮膜)の厚みは特に限定されない。ただし、第1の溶射皮膜に求められる主な性能は、熱処理炉内で使用時に搬送部材の基台を十分に被覆して高温酸化を抑制すること、及び自身の表面粗さを適正な範囲に制限して第2の溶射皮膜(上層皮膜)の密着強度を確保することである。これらを考慮すれば、第1の溶射皮膜の厚みは50μm以上であることが好ましく、より好ましくは70μm以上である。一方、溶射皮膜は厚みが大きいほど密着強度が低下する傾向がある。密着強度の観点から、第1の溶射皮膜の厚みは300μm以下であることが好ましく、より好ましくは200μm以下である。
本実施形態において、第2の溶射皮膜(上層皮膜)の厚みは200μm以下である。好ましくは、第2の溶射皮膜の厚みは150μm以下である。第2の溶射皮膜の厚みの下限は特に限定されない。ただし、第2の溶射皮膜の性能(耐ビルドアップ性の確保)の観点から、第2の溶射皮膜は、所定の表面粗さRaを持った第1の溶射皮膜の表面を十分に被覆している必要がある。そのため、第1の溶射皮膜の表面粗さRaを考慮すれば、第2の溶射皮膜の厚みは50μm以上であることが好ましく、より好ましくは70μm以上である。
ここで、第1の溶射皮膜の厚みは、以下の手法により認識できる。第1の溶射皮膜の断面の顕微鏡によって観察する。その観察像をコンピュータに取り込み、その観察像に基づき、評価視野面内の膜厚を複数点(例えば1mmの視野範囲内で5点以上)計測し、その平均値を第1の溶射皮膜の厚みとする。第2の溶射皮膜の厚みも、それと同様の手法により認識できる。
本実施形態において、第1の溶射皮膜は、MCrAlY合金からなる。ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する。MCrAlY合金の代表はCoCrAlY合金である。MCrAlY合金はNiCrAlY合金であってもよいし、FeCrAlY合金であってもよい。これらを混合したものであってもよい。
本実施形態において、第2の溶射皮膜は、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる。Y、CaO、MgO及びCeOはいずれも、主成分のZrOの結晶構造の安定化を図ることが可能な酸化物である。そのため、副成分は、Y、CaO、MgO及びCeOのいずれであってもよいし、これらを混合したものであってもよい。実用的には、第2の溶射皮膜が、ZrOを主成分とし、Yを副成分とする複合酸化物からなることが好ましい。
ここで、主成分であるZrOの含有量は、例えば70〜90重量%である。
以下に、図面を参照しながら、本実施形態の搬送部材及びその補修方法の具体例を説明する。
[搬送部材]
図6は、本実施形態の搬送部材の模式図である。図6には、搬送部材の断面が示される。図6を参照して、搬送部材1は、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる。具体的には、複数の搬送部材1がウォーキングビームの長手方向に配列される。搬送部材1は、基台4を含む。基台4の上面は第1の溶射皮膜2によって覆われる。第1の溶射皮膜2の表面は第2の溶射皮膜3によって覆われる。
第1の溶射皮膜2は、CoNiCrAlY合金からなる。第2の溶射皮膜3は、ZrOを主成分とし、Yを副成分とする複合酸化物(YSZ)からなる。第1の溶射皮膜2の表面粗さRaは12μm以上である。第2の溶射皮膜3の厚みは200μm以下である。第1の溶射皮膜2及び第2の溶射皮膜3のいずれもプラズマ溶射によって形成されたものである。
[搬送部材の補修方法]
図7は、本実施形態の搬送部材の補修方法を示すフロー図である。図7を参照して、本実施形態の搬送部材の補修方法は、ショットブラスト工程(ステップ#5)と、第1の溶射工程(ステップ#10)と、第2の溶射工程(ステップ#15)と、を含む。ステップ#5のショットブラスト工程では、加熱炉内で搬送部材の上面にショットブラストを施す。これにより、搬送部材の基台の上面を露出させる。ショットブラストは、例えば鋼のグリットを対象物に噴射する。
ステップ#10の第1の溶射工程では、加熱炉内で搬送部材の基台の上面に、MCrAlY合金からなる粉末を溶射する。これにより、基台の上面にMCrAlY合金からなる第1の溶射皮膜を形成する。第1の溶射皮膜の表面粗さRaは12μm以上である。溶射ままの状態で第1の溶射皮膜の表面粗さRaが12μm以上でない場合、ショットブラストによってその表面粗さRaを調整してもよい。
ステップ#15の第2の溶射工程では、加熱炉内で第1の溶射皮膜の表面に、ZrOを主成分とし、Yを副成分とする複合酸化物(YSZ)からなる粉末を溶射する。これにより、第1の溶射皮膜の表面に複合酸化物からなる第2の溶射皮膜を形成する。第2の溶射皮膜の厚みは200μm以下である。
[搬送部材の製造方法]
図8は、本実施形態の搬送部材の製造方法を示すフロー図である。図8を参照して、本実施形態の搬送部材の製造方法は、準備工程(ステップ#5)と、第1の溶射工程(ステップ#10)と、第2の溶射工程(ステップ#15)と、を含む。ステップ#5の準備工程では、所定のサイズに成形された搬送部材の基台を準備する。
ステップ#10の第1の溶射工程では、搬送部材の基台の上面に、MCrAlY合金からなる粉末を溶射する。これにより、基台の上面にMCrAlY合金からなる第1の溶射皮膜を形成する。第1の溶射皮膜の表面粗さRaは12μm以上である。溶射ままの状態で第1の溶射皮膜の表面粗さRaが12μm以上でない場合、ショットブラストによってその表面粗さRaを調整してもよい。ショットブラストは、例えば鋼のグリットを対象物に噴射する。
ステップ#15の第2の溶射工程では、第1の溶射皮膜の表面に、ZrOを主成分とし、Yを副成分とする複合酸化物(YSZ)からなる粉末を溶射する。これにより、第1の溶射皮膜の表面に複合酸化物からなる第2の溶射皮膜を形成する。第2の溶射皮膜の厚みは200μm以下である。
その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
本発明は、鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉に有用である。
1 搬送部材
2 第1の溶射皮膜
3 第2の溶射皮膜
4 基台

Claims (5)

  1. 鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材であって、
    前記搬送部材は、
    基台と、
    前記基台の上面を覆う第1の溶射皮膜であって、MCrAlY合金(ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する)からなる第1の溶射皮膜と、
    前記第1の溶射皮膜の表面を覆う第2の溶射皮膜であって、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる第2の溶射皮膜と、を備え、
    前記第1の溶射皮膜の表面粗さRaが12μm以上であり、
    前記第2の溶射皮膜の厚みが200μm以下である、搬送部材。
  2. 請求項1に記載の搬送部材であって、
    前記第2の溶射皮膜の厚みが50μm以上である、搬送部材。
  3. 請求項1又は2に記載の搬送部材であって、
    前記第2の溶射皮膜が、ZrOを主成分とし、Yを副成分とする複合酸化物からなる、搬送部材。
  4. 鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材の補修方法であって、
    前記搬送部材の補修方法は、
    前記加熱炉内で前記搬送部材の上面にショットブラストを施して、前記搬送部材の基台の上面を露出させるショットブラスト工程と、
    前記加熱炉内で前記基台の前記上面に、MCrAlY合金(ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する)からなる粉末を溶射して、前記基台の前記上面に、自己の表面粗さRaが12μm以上で、前記MCrAlY合金からなる第1の溶射皮膜を形成する第1の溶射工程と、
    前記加熱炉内で前記第1の溶射皮膜の表面に、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる粉末を溶射して、前記第1の溶射皮膜の前記表面に、自己の厚みが200μm以下で、前記複合酸化物からなる第2の溶射皮膜を形成する第2の溶射工程と、を含む、搬送部材の補修方法。
  5. 鋼管用ウォーキングビーム式加熱炉で用いられる搬送部材の製造方法であって、
    前記搬送部材の製造方法は、
    前記搬送部材の基台を準備する工程と、
    前記基台の上面に、MCrAlY合金(ただし、Mは、Co、Ni及びFeから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を意味する)からなる粉末を溶射して、前記基台の前記上面に、自己の表面粗さRaが12μm以上で、前記MCrAlY合金からなる第1の溶射皮膜を形成する第1の溶射工程と、
    前記第1の溶射皮膜の表面に、ZrOを主成分とし、Y、CaO、MgO及びCeOから選ばれる1種又は2種以上を副成分とする複合酸化物からなる粉末を溶射して、前記第1の溶射皮膜の前記表面に、自己の厚みが200μm以下で、前記複合酸化物からなる第2の溶射皮膜を形成する第2の溶射工程と、を含む、搬送部材の製造方法。
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