JP6953953B2 - 斜角超音波探傷の健全性評価方法、及びこれを用いた斜角超音波探傷方法 - Google Patents
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Description
例えば、被探傷材が管である場合、管の周方向に延びるきずを検出するには、超音波探触子から管の軸方向に沿って超音波を送信して管に斜角入射させる斜角超音波探傷を行うのが一般的である。この際、超音波探触子が管の端部に位置して管の端面に近づくと、管の軸方向に沿って送信した超音波が管の端面で反射して端面エコーが生じ、この端面エコーが超音波探触子に受信されることになる。管の端面は空気等と接しており、いわば管に巨大な欠陥が存在しているのと同等の状態であるため、端面エコーの強度は非常に大きく、超音波探傷において一般的に設定される探傷感度であれば、端面エコーの強度は飽和するレベルである。このため、管の製造ラインにおける自動超音波探傷では、端部の超音波探傷を行わずに、未探傷領域として切り下げたり、磁粉探傷や渦流探傷などの他の探傷方法を用いるのが一般的である。
本発明者は、この端面エコーが生じるまで敢えて超音波探傷を行い、この端面エコーを積極的に利用することで、被探傷材の内部での超音波の減衰に関わる健全性を適切に評価できることを見出し、本発明を完成した。
(1)配置ステップ:前記被探傷材の入射面に第1超音波探触子を対向配置する。
(2)送信ステップ:前記第1超音波探触子から超音波を送信して、前記被探傷材の入射面から超音波を斜角入射させる。
(3)受信ステップ:前記第1超音波探触子から送信され斜角入射した超音波が前記被探傷材の入射面と交差する前記被探傷材の端面で反射して生じたエコーである端面エコーを前記第1超音波探触子で受信する。
(4)健全性評価ステップ:前記受信した端面エコーの強度が第1しきい値を超える場合、前記被探傷材に対する斜角超音波探傷は健全であると判定し、前記受信した端面エコーの強度が前記第1しきい値以下である場合、前記被探傷材に対する斜角超音波探傷は不健全であると判定する。
一方、端面エコーの強度が第1しきい値以下である場合、被探傷材に対する斜角超音波探傷は不健全であると判定する。すなわち、端面エコーの強度が所定値よりも小さい(第1しきい値以下である)ということは、被探傷材を形成する材料組織の粗密等に応じて横波超音波が過度に減衰していることを示しているので、実際には被探傷材にきずが存在していたとしてもその検出に支障を生じるおそれがあるため、斜角超音波探傷は不健全であると判定可能である。
以上のように、本発明に係る斜角超音波探傷の健全性評価方法によれば、被探傷材の内部での超音波の減衰に関わる健全性を適切に評価することが可能である。
すなわち、本発明に係る斜角超音波探傷方法によれば、前述の斜角超音波探傷の健全性評価方法を用いることで、きずの見逃しを抑制して、探傷結果の信頼性を高めることが可能である。
なお、端面エコーの強度は非常に大きいため、端面エコーを検出するための第1しきい値は、きずを検出するための第2しきい値よりも大きな値に設定することが好ましい。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えば、第1しきい値と第2しきい値とを同じ値に設定することも可能である。
しかしながら、本発明に係る斜角超音波探傷方法において、前記第1超音波探触子と前記第2超音波探触子とは同一の超音波探触子であり、前記被探傷材に対する前記超音波探触子の相対位置に基づき、前記健全性評価ステップ及び前記きず検出ステップのうち実行するステップを切り替えることが好ましい。
なお、被探傷材に対する超音波探触子(第1超音波探触子兼第2超音波探触子)の相対位置は、例えば、被探傷材又は超音波探触子の移動速度を測定することで算出可能である。そして、超音波探触子が被探傷材の端面に近づいて被探傷材の端面で反射した端面エコーを受信するようになる相対位置は、超音波の入射角や被探傷材の厚み等によって幾何学的に予め算出可能であるため、この相対位置に到達する前にはきず検出ステップを実行し、到達後には健全性評価ステップを実行するように、実行するステップを切り替えればよい。
ただし、好ましくは、管に適用される。
すなわち、本発明に係る斜角超音波探傷の健全性評価方法において、好ましくは、前記被探傷材は管であり、前記配置ステップにおいて、前記第1超音波探触子を前記管の外面に対向配置し、前記送信ステップにおいて、前記第1超音波探触子から前記管の軸方向に沿って超音波を送信し、前記受信ステップにおいて、前記管の端面で反射した前記端面エコーを前記第1超音波探触子で受信する。
ただし、好ましくは、管に適用される。
すなわち、本発明に係る斜角超音波探傷方法において、好ましくは、前記被探傷材は管であり、前記配置ステップにおいて、前記第1超音波探触子及び前記第2超音波探触子を前記管の外面に対向配置し、前記送信ステップにおいて、前記第1超音波探触子及び前記第2超音波探触子から前記管の軸方向に沿って超音波を送信し、前記受信ステップにおいて、前記管の端面で反射した前記端面エコーを前記第1超音波探触子で受信し、前記管の端面以外の部位で反射した前記きず検出用エコーを前記第2超音波探触子で受信し、前記きず検出ステップにおいて、前記受信したきず検出用エコーの強度が前記第2しきい値を超える場合、前記管に前記管の周方向に延びるきずが存在すると判定する。
なお、上記の好ましい方法は、管の中でも、アルミニウム管、銅管、鋼管などの金属管に対してより好ましく適用される。特に、鋼管に最も好ましく適用される。
図1は、本実施形態に係る斜角超音波探傷方法で実行するステップの概要を示すフロー図である。図2は、本実施形態に係る斜角超音波探傷方法の概要を説明する説明図である。図2(a)は、本実施形態に係る斜角超音波探傷方法に用いる超音波探触子の配置状態を示す断面図である。図2(b)及び(c)は、超音波探触子で受信したエコー強度(後述の1.0スキップの探傷ゲートで受信したエコー強度)の例を模式的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る斜角超音波探傷方法は、主として、配置ステップS1、送信ステップS2、受信ステップS3、きず検出ステップS5及び健全性評価ステップS6を含んでいる。以下、各ステップについて、順に説明する。
なお、超音波探触子1は、管Pに対して、管Pの軸方向及び周方向に相対的に移動しながら超音波を送信する。この超音波探触子1の相対的な移動は、これに限るものではないが、例えば、超音波探触子1を固定位置に静止させる一方、スクイズローラ等を用いて管Pを周方向に回転させながら軸方向に搬送することで実現可能である。
なお、本実施形態の受信ステップS3では、一般的な斜角超音波探傷の場合と同じように、エコーを受信する時間域である探傷ゲートを設定しており、設定した探傷ゲート内にあるエコーのみを受信する。具体的には、本実施形態では、いわゆる0.5スキップ(管Pに斜角入射した超音波が初めて管Pの内面PIに到達したときに生じるエコーに相当する時点)近傍の探傷ゲートと、いわゆる1.0スキップ(管Pに斜角入射した超音波が初めて管Pの内面PIで反射した後、管Pの外面POに初めて到達したときに生じるエコーに相当する時点)近傍の探傷ゲートとが設定されており、各探傷ゲート内でエコー(端面エコー及びきず検出用エコー)を受信する。
管Pに対する超音波探触子1の相対位置は、例えば、管Pの軸方向(X方向)についての管P又は超音波探触子1の移動速度をレーザドップラ速度計等の公知の測定装置を用いて測定し、測定した速度を積分することで算出可能である。そして、超音波探触子1が管Pの端面PEに近づいて端面エコーを受信するようになる相対位置は、超音波の入射角や管Pの厚み等によって幾何学的に予め算出可能である。
きず検出ステップS5では、超音波探触子1で受信したきず検出用エコー(超音波探触子1が管Pの端部X1よりも中央側の部位X2に位置するときに受信したエコー)の強度が第2しきい値Th2を超える場合、管Pにきずが存在すると判定する。図2(b)に示す例では、部位X2において、F1及びF2の2箇所でエコーの強度が第2しきい値Th2を超えており、管Pの外面にきず(管Pの周方向に延びるきず)が存在すると判定される。一方、図2(c)に示す例では、部位X2において、第2しきい値Th2を超える強度のエコーは存在しないため、管Pにきずが存在するとは判定されない。
きず検出ステップS5は、超音波探触子1が管Pの端面PEに近づくまで(図1のS4において「Yes」になるまで)、繰り返し実行される。
健全性評価ステップS6では、超音波探触子1で受信した端面エコー(超音波探触子1が管Pの端部X1に位置するときに受信したエコー)の強度が第1しきい値Th1を超える場合、管Pに対する斜角超音波探傷は健全であると判定し、受信した端面エコーの強度が第1しきい値Th1以下である場合、管Pに対する斜角超音波探傷は不健全であると判定する。図2(b)に示す例では、部位X1において、エコーの強度が第1しきい値Th1を超えており、管Pに対する斜角超音波探傷は健全であると判定される。一方、図2(c)に示す例では、部位X1において、第1しきい値Th1を超える強度のエコーは存在しないため、管Pに対する斜角超音波探傷は不健全であると判定される。
また、図2(b)に示す例のように、健全性評価ステップS6で管Pの斜角超音波探傷が健全であると判定され、なお且つ、きず検出ステップS5できずが存在すると判定された場合(図1のS7及びS9で「Yes」の場合)、きずが存在する部位を手入れするか、或いは、管Pを廃棄処分にする処置をとる(図1のS10)。
なお、健全性評価ステップS6で管Pの斜角超音波探傷が健全であると判定され、なお且つ、きず検出ステップS5できずが存在すると判定されなかった場合(図1のS7で「Yes」、S9で「No」の場合)、処置をとることなく探傷を終了する。
以上のように、本実施形態に係る斜角超音波探傷方法によれば、管Pの内部での超音波の減衰に関わる健全性を適切に評価することが可能である。
すなわち、本実施形態に係る斜角超音波探傷方法によれば、きずの見逃しを抑制して、探傷結果の信頼性を高めることが可能である。
P・・・管(被探傷材)
PO・・・管の外面(被探傷材の入射面)
PE・・・管の端面(被探傷材の端面)
Claims (5)
- 被探傷材に対する斜角超音波探傷の健全性のうち、前記被探傷材の内部での超音波の減衰に関わる健全性を評価する方法であって、
前記被探傷材の入射面に第1超音波探触子を対向配置する配置ステップと、
前記第1超音波探触子から超音波を送信して、前記被探傷材の入射面から超音波を斜角入射させる送信ステップと、
前記第1超音波探触子から送信され斜角入射した超音波が前記被探傷材の入射面と交差する前記被探傷材の端面で反射して生じたエコーである端面エコーを前記第1超音波探触子で受信する受信ステップと、
前記受信した端面エコーの強度が第1しきい値を超える場合、前記被探傷材に対する斜角超音波探傷は健全であると判定し、前記受信した端面エコーの強度が前記第1しきい値以下である場合、前記被探傷材に対する斜角超音波探傷は不健全であると判定する健全性評価ステップと、
を含むことを特徴とする斜角超音波探傷の健全性評価方法。 - 請求項1に記載の斜角超音波探傷の健全性評価方法を用いた斜角超音波探傷方法であって、
前記配置ステップにおいて、前記被探傷材の入射面に第2超音波探触子を対向配置し、
前記送信ステップにおいて、前記第2超音波探触子から超音波を送信して、前記被探傷材の入射面から超音波を斜角入射させ、
前記受信ステップにおいて、前記第2超音波探触子から送信され斜角入射した超音波が前記被探傷材の端面以外の部位で反射して生じたエコーであるきず検出用エコーを前記第2超音波探触子で受信し、
前記受信したきず検出用エコーの強度が第2しきい値を超える場合、前記被探傷材にきずが存在すると判定するきず検出ステップを含む、
ことを特徴とする斜角超音波探傷方法。 - 前記第1超音波探触子と前記第2超音波探触子とは同一の超音波探触子であり、
前記被探傷材に対する前記超音波探触子の相対位置に基づき、前記健全性評価ステップ及び前記きず検出ステップのうち実行するステップを切り替える、
ことを特徴とする請求項2に記載の斜角超音波探傷方法。 - 前記被探傷材は管であり、
前記配置ステップにおいて、前記第1超音波探触子を前記管の外面に対向配置し、
前記送信ステップにおいて、前記第1超音波探触子から前記管の軸方向に沿って超音波を送信し、
前記受信ステップにおいて、前記管の端面で反射した前記端面エコーを前記第1超音波探触子で受信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の斜角超音波探傷の健全性評価方法。 - 前記被探傷材は管であり、
前記配置ステップにおいて、前記第1超音波探触子及び前記第2超音波探触子を前記管の外面に対向配置し、
前記送信ステップにおいて、前記第1超音波探触子及び前記第2超音波探触子から前記管の軸方向に沿って超音波を送信し、
前記受信ステップにおいて、前記管の端面で反射した前記端面エコーを前記第1超音波探触子で受信し、前記管の端面以外の部位で反射した前記きず検出用エコーを前記第2超音波探触子で受信し、
前記きず検出ステップにおいて、前記受信したきず検出用エコーの強度が前記第2しきい値を超える場合、前記管に前記管の周方向に延びるきずが存在すると判定する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の斜角超音波探傷方法。
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