以下、添付図面を参照して、本願の開示する接合装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.接合システムの構成>
まず、実施形態に係る接合システムの構成について、図1および図2を参照して説明する。図1は、実施形態に係る接合システムの構成を示す模式平面図であり、図2は、同模式側面図である。また、図3は、第1基板および第2基板の模式側面図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。また、図1〜3を含む各図面では、説明に必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略する場合がある。
図1に示す本実施形態に係る接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合基板Tを形成する(図3参照)。
第1基板W1は、たとえばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、たとえば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。
なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。また、上述した化合物半導体ウェハとしては、たとえばヒ化ガリウム、炭化シリコン、窒化ガリウムおよびリン化インジウムなどを含むウェハを用いることができるが、これに限定されるものではない。
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」、重合基板Tを「重合ウェハT」と記載する場合がある。
また、以下では、図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(たとえば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1,C2,C3がそれぞれ載置される。カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウェハTを収容するカセットである。なお、カセットC1,C2において、上ウェハW1および下ウェハW2は、それぞれ接合面W1j,W2jを上面にした状態で向きを揃えて収容される。
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置板11に載置されたカセットC1〜C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送を行う。
なお、載置板11に載置されるカセットC1〜C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1,C2,C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数たとえば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。たとえば処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
また、第1処理ブロックG1〜第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。なお、搬送装置61の詳細な構成については、図6A,6Bを用いて後述する。
搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
ここで、搬送装置61による上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送は、常圧雰囲気にて行われる。なお、常圧とは、たとえば大気圧であるが、大気圧と全く同一であることを要さず、大気圧に対し、たとえば±10kPaの圧力範囲を含んでいてもよい。また、搬送装置61は、基板搬送装置の一例である。
第1処理ブロックG1には、ロードロック室31と、搬送室32と、表面改質装置33と、表面親水化装置34(図2参照)とが配置される。
ロードロック室31は、第1処理ブロックG1において搬入出ステーション2から最も離間した位置に位置され、搬送領域60のY軸正方向側にゲートバルブ36aを介して隣接して配置される。また、搬送室32は、ロードロック室31のX軸負方向側にゲートバルブ36bを介して隣接して配置され、表面改質装置33は、第1処理ブロックG1において搬入出ステーション2に最も近接した位置に位置され、搬送室32のX軸負方向側にゲートバルブ36cを介して隣接して配置される。
ロードロック室31は、室内において搬送装置61と表面改質装置33との間での上ウェハW1および下ウェハW2の受け渡しが行われる。詳しくは、ロードロック室31の内部には、複数のトランジション31a1,31a2が設けられる(図2参照)。複数のトランジション31a1,31a2は、上ウェハW1または下ウェハW2を載置する。なお、ここではたとえば、トランジション31a1は、搬送装置61から表面改質装置33へ搬入される上ウェハW1または下ウェハW2を載置し、トランジション31a2は、表面改質装置33から搬送装置61へ搬出される上ウェハW1または下ウェハW2を載置する。
なお、図2に示すように、トランジション31a1,31a2は、鉛直方向に積層されて配置されるが、これに限定されるものではなく、たとえば平面視において隣接するように配置されてもよい。なお、トランジション31a1,31a2は、基板載置台の一例である。
また、ロードロック室31には、吸引管31bを介して真空ポンプ31c(図2参照)が接続される。これにより、ロードロック室31は、たとえばゲートバルブ36a,36bが閉鎖され、真空ポンプ31cが作動すると、室内が減圧されて減圧雰囲気となる。一方、ロードロック室31は、たとえばゲートバルブ36aが開放されると、室内が大気雰囲気下にある搬送領域60と連通することから、室内の雰囲気は大気雰囲気となる。このように、ロードロック室31は、室内の雰囲気を大気雰囲気と減圧雰囲気との間で切り替え可能に構成される。
搬送室32には、表面改質装置用搬送装置(以下、「改質用搬送装置」という)32aが配置される。改質用搬送装置32aは、たとえば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる改質用搬送装置32aは、たとえば、ロードロック室31のトランジション31a1に載置された改質前の上ウェハW1等を受け取って表面改質装置33へ搬送したり、表面改質装置33内で改質された上ウェハW1等をロードロック室31へ搬送してトランジション31a2(図2参照)に載置したりする。
また、搬送室32には、吸引管32bを介して真空ポンプ32c(図2参照)が接続される。搬送室32は、真空ポンプ31cが作動すると、室内が減圧されて減圧雰囲気となる。なお、ゲートバルブ36bは、ロードロック室31が減圧雰囲気下にある場合に開放されるものとする。ゲートバルブ36cも同様に、表面改質装置33が減圧雰囲気下にある場合に開放されるものとする。
そのため、搬送室32は、真空ポンプ32cによって常時減圧雰囲気とされる。このように、搬送室32の改質用搬送装置32aは、ロードロック室31に隣接して配置され、ロードロック室31と表面改質装置33との間で上ウェハW1および下ウェハW2を減圧雰囲気にて搬送する。
表面改質装置33は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを改質する。また、表面改質装置33には、吸引管33bを介して真空ポンプ33c(図2参照)が接続される。表面改質装置33は、真空ポンプ33cが作動すると、室内が減圧されて減圧雰囲気となる。なお、表面改質装置33も、搬送室32と同様、常時減圧雰囲気とされる。
従って、表面改質装置33は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを減圧雰囲気にて改質する。詳しくは、表面改質装置33は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jにおけるSiO2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j,W2jを改質する。
なお、表面改質装置33では、減圧雰囲気にて処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
なお、上記したロードロック室31は、室内の容積が表面改質装置33や搬送室32の室内の容積よりも小さくなるように設定されるが、これに限定されるものではない。
ここで、上記のように構成されたロードロック室31、搬送室32および表面改質装置33における上ウェハW1の搬送について詳しく説明する。なお、下ウェハW2の搬送は、上ウェハW1の搬送と同様であるため、以下の説明は、下ウェハW2の搬送についても概ね妥当する。また、ゲートバルブ36a,36b,36cは、いずれも閉鎖しているものとする。
具体的には、まず、改質前の上ウェハW1が、搬送装置61によってロードロック室31の前まで搬送されると、ゲートバルブ36aが開放され、ロードロック室31のトランジション31a1に載置される。なお、改質前の上ウェハW1が、トランジション31a1に載置される際、前回の処理で既に改質された上ウェハW1または下ウェハW2がトランジション31a2に載置されている場合がある。かかる場合、搬送装置61は、改質前の上ウェハW1をトランジション31a1に載置した後、トランジション31a2上の上ウェハW1または下ウェハW2を受け取って、ロードロック室31から退出するようにしてもよい。
次いで、ゲートバルブ36aが閉鎖され、真空ポンプ31cが作動し、ロードロック室31は減圧されて減圧雰囲気となる。
次いで、ゲートバルブ36b,36cが開放され、改質用搬送装置32aがトランジション31a1に載置された上ウェハW1を表面改質装置33へ搬送する。続いて、ゲートバルブ36b,36cが閉鎖され、表面改質装置33にて上ウェハW1の改質処理が行われる。
改質処理が完了すると、ゲートバルブ36b,36cが開放され、改質用搬送装置32aが表面改質装置33から上ウェハW1を取り出し、ロードロック室31のトランジション31a2へ搬送する。次いで、ゲートバルブ36b,36cが閉鎖された後、ゲートバルブ36aが開放されることで、ロードロック室31の室内の雰囲気は、減圧雰囲気から大気雰囲気へ切り替えられる。
そして、搬送装置61は、ロードロック室31のトランジション31a2から、改質された上ウェハW1を取り出して、次の処理が行われる表面親水化装置34へ搬送する。
このように、本実施形態に係る接合システム1にあっては、室内において搬送装置61と表面改質装置33との間での上ウェハW1および下ウェハW2の受け渡しが行われるとともに、室内の雰囲気を大気雰囲気と減圧雰囲気との間で切り替え可能なロードロック室31を備える。
これにより、接合システム1にあっては、上ウェハW1および下ウェハW2の処理時間の短縮を図ることができる。すなわち、上ウェハW1や下ウェハW2を表面改質装置33に搬入出する際、ロードロック室31の室内圧を切り替えるように構成すれば、表面改質装置33にあっては、減圧雰囲気を維持したまま改質処理を行うことが可能となる。従って、表面改質装置33においては、大気雰囲気から減圧雰囲気へ切り替える処理を要さないため、上ウェハW1や下ウェハW2の改質処理の時間を短縮することができる。
また、ロードロック室31は、室内の容積が表面改質装置33や搬送室32の室内の容積よりも小さくなるように設定される。これにより、ロードロック室31の室内圧を切り替える時間を、表面改質装置33の室内圧を切り替える場合の時間に比べて短くすることができる。
さらに、改質用搬送装置32aは、ロードロック室31に配置されず、ロードロック室31に隣接して配置される。これにより、ロードロック室31を、改質用搬送装置32aが配置される場合に比べて小型化することができ、結果として室内圧を切り替える時間をより一層短縮することができる。
表面親水化装置34(図2参照)は、たとえば純水などの親水化処理液によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。表面親水化装置34では、たとえばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。
図2に示すように、第1処理ブロックG1において、ロードロック室31と、搬送室32と、表面改質装置33と、表面親水化装置34とは、積層されて配置される。具体的には、たとえば、第1処理ブロックG1において、Z軸負方向側の下段には、ロードロック室31、搬送室32および表面改質装置33が配置される一方、Z軸正方向側の上段には、表面親水化装置34が配置される。
このように、本実施形態にあっては、ロードロック室31、搬送室32および表面改質装置33は、表面親水化装置34の下方に配置される。これにより、たとえば、ロードロック室31、搬送室32および表面改質装置33に接続される真空ポンプ31c,32c,33cや吸引管31b,32b,33bを接合システム1の下方にまとめて配設することができ、システム全体を小型化することが可能となる。
また、ロードロック室31、搬送室32および表面改質装置33の付近に真空ポンプ31c,32c,33cが配置されるため、吸引管31b,32b,33bを短くすることもでき、よって減圧する時間を最小限にすることが可能となる。
なお、図1で示したロードロック室31や表面改質装置33、表面親水化装置34の配置位置は、例示であって限定されるものではない。すなわち、ロードロック室31や表面改質装置33が、表面親水化装置34の上方に配置されてもよい。また、たとえば第2処理ブロックG2や第3処理ブロックG3にロードロック室31や表面改質装置33を配置してもよい。さらには、たとえば処理ステーション3のX軸正方向側の位置や、搬入出ステーション2と処理ステーション3との間に新たなステーションを設け、その新たなステーションにロードロック室31や表面改質装置33を配置するようにしてもよい。
第2処理ブロックG2には、接合装置41と、基板温調装置42と、排気口43とが配置される。接合装置41は、第2処理ブロックG1において搬入出ステーション2に最も近接した位置に位置される。また、基板温調装置42は、接合装置41に対してX正方向側に隣接して配置される。基板温調装置42は、排気口43に対してX負方向側に隣接して配置される。
接合装置41は、親水化された上ウェハW1と下ウェハW2とを分子間力によって接合する。なお、かかる接合装置41の詳細な構成については、図8〜17Hを用いて後述する。
基板温調装置42は、接合前の上ウェハW1および接合前の下ウェハW2をそれぞれ温度調節する。なお、基板温調装置42の詳しい構成については、図7を用いて後述する。
排気口43は、温度調節された気体(以下「温調エア」という)を排出する。すなわち、処理ステーション3は、図示は省略するが、たとえば搬入出ステーション2側の天井部などの適宜位置に配置されて温調エアを供給する給気口を備え、排気口43は、かかる給気口から供給されて処理ステーション3内を通った温調エアを処理ステーション3の外部へ排出する。
従って、処理ステーション3にあっては、温調エアの流れ方向(X軸正方向)において、接合装置41、基板温調装置42、排気口の順で配置される。言い換えると、基板温調装置42は、温調エアの流れ方向において接合装置41の下流側に配置される。
なお、排気口43の配置位置は、図示の例に限定されるものではなく、たとえばロードロック室31付近や搬送領域60付近などその他の位置にも配置されてもよい。また、給気口の位置も、上記に限られず、処理ステーション3の床部や壁部などその他の位置に配置されてもよい。
図2に示すように、第3処理ブロックG3には、上方から順に、位置調節装置51、トランジション53,54および反転用トランジション55が積層されて配置される。なお、第3処理ブロックG3における各装置の配置場所は、あくまでも例示であって限定されるものではない。
図4は、位置調節装置51の構成を示す模式側面図である。位置調節装置51は、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。位置調節装置51は、図4に示すように基台51aと、上ウェハW1および下ウェハW2を吸着保持して回転させる保持部51bと、上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出する検出部51cと、基台51aを反転させる基台反転部51dとを有する。
かかる位置調節装置51では、保持部51bに吸着保持された上ウェハW1および下ウェハW2を回転させながら検出部51cで上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出することで、当該ノッチ部の位置を調節して上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。
また、検出部51cには、たとえば、図示しないカメラが設けられ、上ウェハW1および下ウェハW2の周縁を撮像するようにしてもよい。検出部51cは、たとえば、保持部51bに保持された上ウェハW1等を1回転させながら、上ウェハW1等の周縁を撮像し、撮像した画像に基づいて上ウェハW1等の周縁をプロットする。そして、検出部51cは、プロットした上ウェハW1等の周縁の情報に基づいて上ウェハW1および下ウェハW2の半径を検出するようにしてもよい。
このように、位置調節装置51は、上ウェハW1および下ウェハW2の半径を検出する半径検出装置としても機能する。なお、上記では、位置調節装置51において、上ウェハW1等の半径を検出するようにしたが、これに限られず、たとえば、上ウェハW1等に半径などを示す識別情報(ID)を付しておき、かかる識別情報を読み込むことで、半径を検出するなどしてもよい。
基台反転部51dは、たとえばモータなどを備えるとともに、基台51aに接続され、基台51aを保持部51bに保持された上ウェハW1ごと反転させる。これにより、保持部51bに保持された上ウェハW1は、表裏面が反転することとなる。従って、たとえば、水平方向の向きが調節された上ウェハW1は、上記した反転によって接合面W1jを下面にした状態(図2参照)とされ、かかる状態で、位置調節装置51から搬出される。なお、位置調節装置51から搬出された上ウェハW1および下ウェハW2は、基板温調装置42へ搬送されて温度調節される。
図2の説明に戻ると、トランジション53には、搬送装置22や搬送装置61によって搬送された上ウェハW1が一時的に載置される。また、トランジション54には、搬送装置22や搬送装置61によって搬送された下ウェハW2や重合ウェハTが一時的に載置される。
反転用トランジション55は、何らかの理由で接合装置41において接合が行われず、たとえば接合面W1j,W2jを下面にした状態で接合装置41から戻ってきた上ウェハW1や下ウェハW2を一時的に保持する装置である。なお、反転用トランジション55は、基板受け渡し装置の一例である。
図5Aは、反転用トランジション55の構成を示す模式平面図であり、図5Bは、反転用トランジション55の構成を示す模式側面図である。図5Bに示すように、反転用トランジション55は、保持部56と、反転機構57とを備える。保持部56は、下面56a1側にて、接合面W1j,W2jを下面にした上ウェハW1や下ウェハW2を保持する。
具体的には、保持部56は、下面56a1側に吸着部56a2が設けられる。吸着部56a2には、吸引管56a3を介して真空ポンプ56a4が接続される。従って、保持部56の下面56a1は、真空ポンプ56a4の作動によって上ウェハW1や下ウェハW2を真空吸着により保持する。これにより、保持部56は、上ウェハW1等を確実に保持することができる。
また、保持部56は、上面56b1側にも吸着部56b2が設けられる。吸着部56b2には、吸引管56b3を介して真空ポンプ56b4が接続される。従って、保持部56の上面56b1は、真空ポンプ56b4の作動によって上ウェハW1等を吸着可能に構成される。
反転機構57は、たとえばモータなどを備えるとともに、保持部56に接続され、保持部56によって保持された上ウェハW1等の表裏面を反転させる。ここで、反転用トランジション55の反転機構57は、たとえば接合装置41によって接合されなかった上ウェハW1を反転させる。
具体的には、たとえば、何らかの理由で接合装置41において上ウェハW1と下ウェハW2とが接合されず、接合面W1jを下面にした状態の上ウェハW1が、第3処理ブロックG3に戻ってくる場合がある。かかる場合、接合面W1jを下面にした上ウェハW1は、搬送装置61によって反転用トランジション55に搬送され、吸着部56a2によって非接合面W1n側から保持される。次に、反転機構57は、保持部56を反転させ、よって上ウェハW1は、接合面W1jを上面にした状態とされる。かかる状態の上ウェハW1を、図5A,5Bにおいて想像線で示した。
これにより、たとえば、接合装置41において接合されずに戻ってきた上ウェハW1を、カセットC1に収容されるときと同じ状態、すなわち図5Bに想像線で示すように、接合面W1jを上面にした状態とすることができる。このように、反転用トランジション55にあっては、たとえば、接合面W1jを下面にした状態の上ウェハW1の表裏面を容易に反転させることができる。そして、接合面W1jを上面にした上ウェハW1にあっては、搬送装置22によってカセットC1へ搬送されて、そのまま収容することができる。
次に、搬送装置61の構成について図6A,6Bを参照しつつ説明する。図6Aは、搬送装置61の構成を示す模式平面図であり、図6Bは、搬送装置61の構成を示す模式側面図である。
図6Bに示すように、搬送装置61は、第1保持部62aと、第1保持部62aの下方に対向して設けられる第2保持部62bと、第1駆動部64とを備える。なお、第1保持部62aおよび第2保持部62bとしては、上ウェハW1等の径よりも横幅が小さい二股形状のフォークを用いることができるが、これに限られない。
本実施形態において、第1保持部62aは、接合面W1jを下面にした上ウェハW1の保持に用いられる。一方、第2保持部62bは、接合面W2jを上面にした下ウェハW2、接合面W1jを上面にした上ウェハW1、および重合ウェハTなどの保持に用いられる。なお、上記した第1保持部62aおよび第2保持部62bによって保持される各ウェハの種類は、例示であって限定されるものではなく、たとえば、第1保持部62aが重合ウェハTを保持してもよい。
第1保持部62aは、下面62a1側に吸着部62a2(図6Aにおいて破線で示す)が複数設けられる。吸着部62a2には、吸引管62a3を介して真空ポンプ62a4が接続される。従って、第1保持部62aは、真空ポンプ62a4の作動によって上ウェハW1を真空吸着により保持する。詳しくは、第1保持部62aは、接合面W1jを下面にした上ウェハW1を非接合面W1n側(上面側)から真空吸着により保持する。
第2保持部62bは、上面62b1側に吸着部(図6A,6Bで見えず)が複数設けられる。かかる吸着部には、吸引管62b3(図6B参照)を介して真空ポンプ62b4が接続される。従って、第2保持部62bは、真空ポンプ62b4の作動によって下ウェハW2等を真空吸着により保持する。
詳しくは、第2保持部62bは、接合面W2jを上面にした下ウェハW2を上ウェハW1に対向させて非接合面W2n側(下面側)から真空吸着により保持する。また、図示は省略するが、第2保持部62bは、上記したように重合ウェハTも真空吸着により保持する。
このように、第1保持部62aは、上ウェハW1を真空吸着により保持し、第2保持部62bは、下ウェハW2を真空吸着により保持する。これにより、第1、第2保持部62a,62bは、上ウェハW1や下ウェハW2を確実に保持することができる。
第1駆動部64は、第1保持部62aおよび第2保持部62bに接続される。第1駆動部64は、第1保持部62aおよび第2保持部62bをともに駆動し、基台65に対して鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに一体的に移動させる。なお、第1駆動部64は、図示は省略するが、モータなどの駆動源やベルトなどの動力伝達機構を含んでいる。
搬送装置61は、上記のように構成されることで、小型化することができる。すなわち、たとえば第1保持部62aおよび第2保持部62bに対してそれぞれ駆動部が接続されると、駆動部が2つとなり、搬送装置61が大型化する。しかしながら、本実施形態に係る搬送装置61にあっては、第1、第2保持部62a,62bが1つの第1駆動部64でともに駆動されることから、搬送装置61を小型化することができる。
また、搬送装置61は、接合装置41に対して上ウェハW1および下ウェハW2を搬送する場合、第1保持部62aによって上ウェハW1を保持し、第2保持部62bによって下ウェハW2を保持し、上ウェハW1および下ウェハW2を2枚一緒に搬送する。
詳しくは、図6Bに示すように、第1保持部62aは、接合面W1jを下面にした上ウェハW1を上面側から保持するとともに、第2保持部62bは、接合面W2jを上面にした下ウェハW2を上ウェハW1に対向させて下面側から保持する。
これにより、接合装置41にあっては、上ウェハW1および下ウェハW2が接合処理を行うときと同じ向きで搬送されることとなる。そのため、接合装置41にあっては、たとえば上ウェハW1の向きを反転させる処理を要しないことから、結果として接合装置41における接合処理の時間を短縮することができる。
さらに、搬送装置61は、複数(ここでは4つ)の位置検出部70a〜70dを備える。位置検出部70a〜70dは、たとえば基台65に固定されるものとする。位置検出部70a〜70dは、第1保持部62aや第2保持部62bに保持された上ウェハW1や下ウェハW2の周縁の位置をそれぞれ異なる位置で検出する。
具体的には、位置検出部70a〜70dは、投光部71と受光部72とをそれぞれ備える。投光部71および受光部72は、第1保持部62aや第2保持部62bに保持された上ウェハW1や下ウェハW2を上下から挟む位置に配置される。すなわち、位置検出部70a〜70dは、第1保持部62aや第2保持部62bに保持された上ウェハW1や下ウェハW2の面(たとえば接合面W1j,W2jや非接合面W1n,W2n)に対して垂直な方向に配置される。
なお、投光部71および受光部72の配置は、上記の例に限定されない。たとえば、投光部71が上ウェハW1等の上方に配置され、受光部72が上ウェハW1等の下方に配置されてもよい。なお、受光部72としては、複数の受光素子が直線状に配列されたラインセンサを用いることができるが、これに限定されるものではない。
受光部72は、投光部71から照射される光を受光素子によって受光するが、投光部71と受光部72との間に上ウェハW1等が存在すると、光が上ウェハW1等によって部分的に遮られる。
これにより、受光部72においては、受光する受光素子と受光しない受光素子とで受光量に差が生じる。位置検出部70a〜70dは、かかる受光量の差に基づいて上ウェハW1等の周縁の位置を検出する。位置検出部70a〜70dは、検出結果を示す信号を、後述する制御装置100(図1参照)へ送出する。なお、上ウェハW1等の周縁の位置を、位置検出部70a〜70dによって検出する処理については後述する。
図1の説明に戻ると、接合システム1は、制御装置100を備える。制御装置100は、接合システム1の動作を制御する。かかる制御装置100は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部および記憶部を備える。記憶部には、接合処理等の各種処理を制御するプログラムや各種処理で用いられるデータなどが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムなどを読み出して実行することによって接合システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置100の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
ここで、上記した基板温調装置42について、図7を参照して詳しく説明する。図7は、基板温調装置42の構成を示す模式側面図である。
基板温調装置42には、搬送装置61によって、接合面W1jを下面にした上ウェハW1および接合面W2jを上面にした下ウェハW2が搬送され、上ウェハW1および下ウェハW2をそれぞれ温度調節する。具体的には、図7に示すように、基板温調装置42は、第1温調保持プレート42aと、第2温調保持プレート42bとを備える。
第1温調保持プレート42aは、接合前の上ウェハW1、詳しくは、親水化後で接合される前の上ウェハW1を保持する。具体的には、第1温調保持プレート42aは、上ウェハW1を保持する保持面42a1に、複数の保持ピン42a2が設けられる。保持ピン42a2は、第1温調保持プレート42aの保持面42a1に対して昇降自在に構成される。
また、保持ピン42a2には、吸引管42a3を介して真空ポンプ42a4が接続される。従って、第1温調保持プレート42aは、真空ポンプ42a4の作動によって上ウェハW1を真空吸着により保持する。なお、上ウェハW1は、第1温調保持プレート42aの保持ピン42a2にその非接合面W1nが吸着保持されるものとする。
さらに、第1温調保持プレート42aには、第1温調機構42a5が内蔵される。第1温調機構42a5には、たとえば、温度調節された冷却水などの冷媒が流通している。従って、第1温調保持プレート42aは、第1温調機構42a5の冷却温度を調節したり、保持ピン42a2を昇降させて上ウェハW1との離間距離を調節したりすることで、上ウェハW1の温度を調節する。
第2温調保持プレート42bは、保持面42b1が第1温調保持プレート42aの保持面42a1に対向するように配置され、接合前の下ウェハW2、詳しくは、親水化後で接合される前の下ウェハW2を保持する。具体的には、第2温調保持プレート42bは、下ウェハW2を保持する保持面42b1に、複数の保持ピン42b2が設けられる。保持ピン42b2は、第2温調保持プレート42bの保持面42b1に対して昇降自在に構成される。
また、保持ピン42b2には、吸引管42b3を介して真空ポンプ42b4が接続される。従って、第2温調保持プレート42bは、真空ポンプ42b4の作動によって下ウェハW2を真空吸着により保持する。なお、下ウェハW2は、保持ピン42b2にその非接合面W2nが吸着保持されるものとする。また、上記では、第2温調保持プレート42bは、下ウェハW2を吸着により保持するようにしたが、これに限られず、たとえば真空ポンプ42b4や吸引管42b3を除去し、載置により下ウェハW2を保持するようにしてもよい。
第2温調保持プレート42bには、第2温調機構42b5が内蔵される。第2温調機構42b5には、たとえば冷媒が流通している。また、第2温調保持プレート42bの保持面42b1には、下ウェハW2を支持可能な複数のプロキシミティピン42b7が設けられる。
上記のように構成された第2温調保持プレート42bにあっては、搬送された下ウェハW2を保持ピン42b2で保持し、続いて保持ピン42b2の先端がプロキシミティピン42b7よりも低くなるまで、保持ピン42b2を下降させる。これにより、下ウェハW2がプロキシミティピン42b7に支持され、下ウェハW2と第2温調保持プレート42bの保持面42b1との間に適宜な空隙が確保される。このように、第2温調保持プレート42bは、下ウェハW2と適宜な離間距離を保った状態で、下ウェハW2の温度を調節する。
なお、上記した第2温調保持プレート42bでは、プロキシミティピン42b7を用いたが、これに限られず、たとえばプロキシミティピン42b7を除去し、保持ピン42b2を下ウェハW2と適宜な離間距離となる位置まで下降させて維持することで、下ウェハW2の温度を調節してもよい。
なお、上記した第1、第2温調機構42a5,42b5としては、冷却ジャケットなどを用いることができるが、これに限定されるものではなく、たとえばヒータなどその他の種類の温調機構であってもよい。
上記のように構成された基板温調装置42は、接合前の下ウェハW2が接合前の上ウェハW1の温度よりも高い温度となるように温度調節する。これにより、スケーリングを抑制することができる。
スケーリングとは、たとえば接合された重合ウェハTにおいて、上ウェハW1と下ウェハW2の中心部が合致していても、その周縁部では水平方向に位置ずれが生じる現象である。かかる現象は、後述するように、上ウェハW1と下ウェハW2を接合する際、押動部材250(図17D参照)によって上ウェハW1の中心部W1aを下ウェハW2の中心部W2a側に下降させるので、上ウェハW1が下方に凸状に反って伸びるために発生する。
そこで、本実施形態に係る基板温調装置42にあっては、接合前の下ウェハW2が接合前の上ウェハW1の温度よりも高い温度となるように温度調節し、下ウェハW2を膨張させる。これにより、上ウェハW1と下ウェハW2の周縁部の水平方向の位置ずれ(スケーリング)を効果的に抑制することができる。
なお、上記では、基板温調装置42は、接合前の下ウェハW2が接合前の上ウェハW1の温度よりも高い温度となるように温度調節したが、これは例示であって限定されるものではなく、たとえば下ウェハW2と上ウェハW1とで同じ温度となるようにしてもよい。
なお、上記では、基板温調装置42は、上ウェハW1および下ウェハW2の両方を温度調節するようにしたが、これに限られず、上ウェハW1および下ウェハW2のうちいずれか一方を温度調節するようにしてもよい。
また、上記したように、基板温調装置42は、温調エアの流れ方向において接合装置41の下流側に配置される(図1参照)。従って、基板温調装置42および接合装置41の周辺の温度環境は、同様なものとなる。これにより、基板温調装置42によって温度調節された上ウェハW1および下ウェハW2が接合装置41へ搬送される際、温度環境によってウェハ温度が下がるなどの影響を可及的に抑制することができ、よって上ウェハW1および下ウェハW2の温度管理を容易に行うことが可能となる。
<2.接合装置の構成>
次に、接合装置41の構成について図8〜図13を参照して説明する。図8は、接合装置41の構成を示す模式平面図であり、図9は、同模式側面図である。また、図10は、接合装置41の内部構成を示す模式側面図である。
図8に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器190を有する。処理容器190の搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口191が形成され、当該搬入出口191には開閉シャッタ192が設けられる。
図9に示すように、処理容器190の内部には、上チャック230と下チャック231とが設けられる。上チャック230は、上ウェハW1を上方から吸着保持する。また、下チャック231は、上チャック230の下方に設けられ、下ウェハW2を下方から吸着保持する。なお、上チャック230は、上側保持部の一例であり、下チャック231は、下側保持部の一例である。
上チャック230は、図9に示すように、処理容器190の天井面に設けられた支持部材280に支持される。
支持部材280には、下チャック231に保持された下ウェハW2の接合面W2jを撮像する上部撮像部281(図10参照)が設けられる。上部撮像部281は、上チャック230に隣接して設けられる。
図8、図9および図10に示すように、下チャック231は、当該下チャック231の下方に設けられた第1下チャック移動部290に支持される。第1下チャック移動部290は、後述するように下チャック231を水平方向(Y軸方向)に移動させる。また、第1下チャック移動部290は、下チャック231を鉛直方向に移動自在、かつ鉛直軸回りに回転可能に構成される。
第1下チャック移動部290には、上チャック230に保持された上ウェハW1の接合面W1jを撮像する下部撮像部291が設けられている。下部撮像部291は、下チャック231に隣接して設けられる。
図8、図9および図10に示すように、第1下チャック移動部290は、当該第1下チャック移動部290の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール295,295に取り付けられる。第1下チャック移動部290は、レール295に沿って移動自在に構成される。
一対のレール295,295は、第2下チャック移動部296に設けられる。第2下チャック移動部296は、当該第2下チャック移動部296の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール297,297に取り付けられる。そして、第2下チャック移動部296は、レール297に沿って移動自在に、すなわち下チャック231を水平方向(X軸方向)に移動させるように構成される。なお、一対のレール297,297は、処理容器190の底面に設けられた載置台298上に設けられる。
次に、上チャック230と下チャック231の構成について図11〜図14を参照して説明する。図11は、上チャック230および下チャック231の構成を示す模式側面図である。また、図12は、上チャック230を下方から見た場合の模式平面図であり、図13は、下チャック231を上方から見た場合の模式平面図である。
図11に示すように、上チャック230は、複数、たとえば3つの領域230a,230b,230cに区画される。これら領域230a,230b,230cは、図12に示すように、上チャック230の中心部から周縁部(外周部)に向けてこの順で設けられる。領域230aは平面視において円形状を有し、領域230b,230cは平面視において環状形状を有する。
各領域230a,230b,230cには、図11に示すように上ウェハW1を吸着保持するための吸引管240a,240b,240cがそれぞれ独立して設けられる。各吸引管240a,240b,240cには、異なる真空ポンプ241a,241b,241cがそれぞれ接続される。このように、上チャック230は、各領域230a,230b,230c毎に上ウェハW1の真空引きを設定可能に構成されている。
上チャック230には、上記した吸引管240a,240b,240cの他にも、上ウェハW1を吸着により保持する吸着保持部300が設けられる。詳しくは、搬送装置61によって搬送された上ウェハW1は、まず吸着保持部300によって吸着された後、上チャック230の吸引管240a,240b,240cによって吸着される。
具体的に説明すると、上チャック230の中心部には、当該上チャック230を厚み方向に貫通する貫通孔243が形成され、かかる貫通孔243に、吸着保持部300と、押動部材250とが設けられる。
図14は、上チャック230における吸着保持部300および押動部材250付近を拡大して示す拡大模式側面図である。図14に示すように、吸着保持部300は、基部310と、挿通孔320と、吸気流路330と、吸着部材340とを備える。また、押動部材250は、押動ピン251を備える。なお、押動ピン251は、押動部の一例である。
基部310は、図12および図14に示すように、たとえば円筒状に形成された部材であり、上チャック230の貫通孔243に挿通される。なお、基部310は、たとえば樹脂部材を含むが、これに限定されるものではない。
図14は、吸着保持部300が上ウェハW1を保持する直前の状態を示しており、図示のように、基部310は、上ウェハW1を保持する前、下面310aが上チャック230の下面(保持面)230eよりも下方となるように位置される。なお、基部310の下面310aは、後述するように、上ウェハW1を保持する面でもあることから、以下では下面310aを「保持面310a」という場合がある。
また、基部310の保持面310aは、図11から分かるように、上ウェハW1の非接合面W1nに比べて面積が十分に小さい。従って、吸着保持部300にあっては、上ウェハW1における上面(非接合面W1n)の一部を吸着により保持することとなる。
挿通孔320は、基部310の中央付近に長手方向に沿って貫通する孔である。かかる挿通孔320には、押動ピン251が挿通される。このように、吸着保持部300は、押動ピン251が挿通される挿通孔320を備えるため、吸着保持部300と押動ピン251とを、上チャック230の中心部にまとめて1箇所に配置することができ、吸着保持部300等の省スペース化を図ることができる。
吸気流路330は、基部310の長手方向に沿って形成され、基部310の保持面310aに開口される孔である。吸気流路330には、真空ポンプ331が接続される。従って、真空ポンプ331が作動すると、吸気流路330には、上ウェハW1を吸着する吸気が流通する。
吸気流路330は、図12に示すように、押動ピン251を中心に押動ピン251の外周側に複数個形成される。なお、図示の例では、吸気流路330は押動ピン251を中心に90度間隔で4個形成されるようにしたが、たとえば120度間隔の3個であっても、上ウェハW1を安定して吸着することができる。また、吸気流路330の個数は例示であって、限定されるものではない。
吸着部材340は、吸気流路330に設けられる。詳しくは、吸着部材340は、吸気流路330において、上ウェハW1を吸着する吸気の流れ方向の上流側であって、基部310の保持面310aの開口付近に設けられる。
吸着部材340は、上ウェハW1と接触する前の状態において、端部340a側が基部310の保持面310aから突出するように位置されている。吸着部材340は、たとえば、弾性部材を含み、具体的には蛇腹状に形成されたゴムパッドを用いることができるが、これに限定されるものではない。また、吸着部材340は、たとえば筒状に形成され、後述するように、上チャック230によって保持される前の上ウェハW1と接触して吸着する。
上記のように構成された吸着保持部300は、上チャック230に対して昇降自在に設けられる。詳しくは、吸着保持部300には、第1直動機構401が接続され、吸着保持部300は、Z軸方向に沿って直動自在とされる。なお、第1直動機構401は、たとえば複動式のエアシリンダである。
第1直動機構401は、基台部401aと、固定部401bと、可動部401cと、第1エア給排部401dと、第2エア給排部401eとを備える。基台部401aは、上チャック230に取り付けられて固定される。固定部401bは、基台部401aに設けられる。
可動部401cは、固定部401bに対し、Z軸方向に沿って直動可能に設けられる。そして、可動部401cは、第1、第2エア給排部401d,401eによって駆動される。
具体的に、第1直動機構401は、真空ポンプ401fおよびバルブ401gを介して第1エア給排部401dから給排されるエアと、真空ポンプ401iおよびバルブ401jを介して第2エア給排部401eから給排されるエアとの圧力差によって可動部401cをZ軸方向沿いに直動させる(図中の矢印410参照)。
なお、可動部401cには、直動案内部402が取り付けられる。これにより、可動部401cは、直動案内部402によってZ軸方向に案内されつつ駆動される。また、可動部401cには、吸着保持部300の基部310が取り付けられ、よって吸着保持部300もZ軸方向に沿って直動する、言い換えると、上チャック230に対して昇降自在とされる。
また、第1直動機構401は、第1エア給排部401dおよび第2エア給排部401eにそれぞれ接続され、排出されるエアの流量を可変可能に設けられた速度制御弁401h,401kを備える。第1直動機構401は、かかる速度制御弁401h,401kによって排出されるエアの流量を可変させることで吸着保持部300の速度を制御する。
なお、図14に示すように、基台部401aの、第1直動機構401の可動領域の下側には排気部401mが設けられている。かかる排気部401mは、たとえば吸引装置401nに接続されており、可動部401cの可動等によって可動領域に生じるパーティクルを吸引して外部へ排出することができる。
また、詳細な図示は省略するが、押動ピン251にも、第1直動機構401と同様に構成された、第2直動機構501が接続され、押動ピン251もZ軸方向に沿って直動自在とされる(図中の矢印510参照)。なお、押動ピン251には、直動案内部502が取り付けられ、よって押動ピン251も直動案内部502によってZ軸方向に案内されつつ駆動される。
このように、吸着保持部300は第1直動機構401に、押動ピン251は第2直動機構501にそれぞれ接続されることから、吸着保持部300と押動ピン251とは、互いに独立して駆動することができる。
また、図11に示すように、上記した吸着保持部300の挿通孔320は、上チャック230に吸着保持される上ウェハW1の中心部W1aに対応している。従って、挿通孔320に挿通される押動ピン251は、第2直動機構501によって下方へ移動させられると、後述する上ウェハW1および下ウェハW2の接合時に、上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aとを当接させて押圧することができる。
下チャック231は、図13に示すように、複数、たとえば2つの領域231a、231bに区画される。これら領域231a、231bは、下チャック231の中心部から周縁部に向けてこの順で設けられる。そして、領域231aは平面視において円形状を有し、領域231bは平面視において環状形状を有する。
各領域231a、231bには、図11に示すように下ウェハW2を吸着保持するための吸引管260a、260bがそれぞれ独立して設けられる。各吸引管260a、260bには、異なる真空ポンプ261a、261bがそれぞれ接続される。このように、下チャック231は、各領域231a、231b毎に下ウェハW2の真空引きを設定可能に構成されている。
また、下チャック231は、鉛直方向に昇降自在な複数の保持ピン265を備える。下チャック231にあっては、たとえば、保持ピン265が保持面から突出された状態で下ウェハW2を載置して受け取り、その後保持ピン265が下降して下ウェハW2を保持面に接触させる。続いて下チャック231にあっては、真空ポンプ261a,261bが作動し、図11に示すように、各領域231a,231bにおいて下ウェハW2を吸着保持する。なお、上記では、保持ピン265は、載置により下ウェハW2を保持するようにしたが、これに限られず、吸着により下ウェハW2を保持してもよい。
また、下チャック231の周縁部には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTが当該下チャック231から飛び出したり、滑落したりすることを防止するストッパ部材263が複数箇所、たとえば5箇所に設けられる。
ここで、上記のように構成された上チャック230に対して、搬送装置61が上ウェハW1を搬送し、受け渡すまでの動作について、図15A〜図15Fを参照して説明する。図15A〜図15Fは、接合装置41における上ウェハW1の受け渡し動作の説明図である。なお、図15A〜図15Fにあっては、説明に必要な構成要素以外の図示を省略する場合がある。また、吸着保持部300や搬送装置61は、制御装置100の制御部によって制御される。
図15Aは、上ウェハW1が搬送装置61によって搬送される前の状態を示している。図15Aに示すように、吸着保持部300は、基部310の保持面310aが、上チャック230の下面230eよりも上方となるように位置される。以下、かかる吸着保持部300の位置を「退避位置」という場合がある。
図15Bに示すように、接合面W1jを下面に、非接合面W1nを上面にした上ウェハW1が、搬送装置61の第1保持部62aによって非接合面W1nを吸着保持されつつ搬送される。
上ウェハW1が搬送されると、吸着保持部300は下降させられ、基部310の保持面310aが、上チャック230の下面230eよりも下方となるように位置される。以下、かかる吸着保持部300の位置を「進出位置」という場合がある。
続いて、図15Cに示すように、吸着保持部300にあっては、真空ポンプ331(図11参照)を作動させ、吸気流路330および吸着部材340での吸気を開始するとともに、上ウェハW1は、第1保持部62aによって上昇させられる。
上記したように、吸着部材340は、上ウェハW1と接触する前の状態において、端部340a側が基部310の保持面310aから突出するように位置されていることから、上昇した上ウェハW1は、最初に吸着部材340と当接することとなる。これにより、吸着保持部300にあっては、上ウェハW1を吸着部材340を介して確実に吸着を開始することが可能となる。
また、吸着部材340は、上記したように、弾性部材を含むように構成されるため、上ウェハW1の傾きによる影響を吸収することができる。図16は、水平方向に対して傾いた状態で搬送された上ウェハW1が吸着部材340に受け渡されるときの様子を示す模式拡大図である。なお、図16では、理解の便宜のため、上ウェハW1の傾きを誇張して示している。
図16に示すように、傾いた状態の上ウェハW1が吸着部材340に接触すると、吸着部材340は、傾いた上ウェハW1の形状に倣うように弾性変形する。図16に示す例では、上ウェハW1が紙面において左下がりに傾斜している場合、吸着部材340は、紙面左側が伸びつつ、右側が縮まるように変形するが、端部340aは上ウェハW1に当接して上ウェハW1を吸着することができる。このように、吸着部材340は、弾性部材であることから、上ウェハW1の傾きによる影響を弾性変形して吸収することができる。
次に、図15Dに示すように、上ウェハW1が吸気流路330および吸着部材340によって吸着され、基部310の保持面310aで保持されると、第1保持部62aは、上ウェハW1の吸着を解除して接合装置41から退出する。
続いて、図15Eに示すように、上チャック230にあっては、真空ポンプ241a,241b,241c(図11参照)を作動させ、各吸引管240a,240b,240cでの吸気を開始する。また、進出位置にあった吸着保持部300は上昇させられ、基部310の保持面310aが、上チャック230の下面230eに対して同一面あるいは僅かに上方となるように位置される。以下、かかる吸着保持部300の位置を「受渡し位置」という場合がある。
なお、吸着保持部300は、受渡し位置において、基部310の保持面310aが、上チャック230の下面230eよりも僅かに上方となった場合であっても、吸着部材340は、伸びるように弾性変形することから、上ウェハW1の吸着は継続される。
また、吸着保持部300は、受渡し位置において、たとえば、吸着力が、上チャック230の吸着力以下に設定されるようにしてもよい。これにより、上ウェハW1の変形を抑制することができる。
すなわち、たとえば、受渡し位置にある吸着保持部300において、吸着力が、上チャック230の吸着力よりも大きいと、上ウェハW1は中央部分が上方に引っ張られて、変形するおそれがある。しかしながら、上記のように、吸着保持部300の吸着力が上チャック230の吸着力以下に設定されることで、かかる上ウェハW1の変形を抑制することができる。
続いて、図15Fに示すように、上ウェハW1が吸着保持部300から上チャック230へ受け渡され、上チャック230が上ウェハW1の非接合面W1nを全面にわたって吸着して保持すると、吸着保持部300は真空ポンプ331を停止して退避位置まで上昇させられる。このようにして、接合装置41における上ウェハW1の受け渡し動作が完了する。
このように、本実施形態にあっては、吸着保持部300は、上ウェハW1における上面(非接合面W1n)の一部(たとえば中央付近)を吸着により保持することから、第2保持部62bは、上ウェハW1を吸着保持部300によって保持される部分以外を吸着保持しつつ搬送することが可能となる。
これにより、接合装置41においては、上ウェハW1の接合面W1jが搬送装置61の第1保持部62aによって保持されないため、パーティクルの発生を抑制することができる。
<3.接合装置におけるウェハの位置調節および接合動作>
次に、上述のようにして上ウェハW1が受け渡された接合装置41における上ウェハW1および下ウェハW2の位置調節、および、上ウェハW1と下ウェハW2との接合動作について、具体的に説明する。図17A〜図17Hは、接合装置41の動作説明図である。なお、図17A〜図17Hにあっては、図の簡略化のため、吸着保持部300の図示を省略した。
ここで、図17A〜図17Hに示す上ウェハW1および下ウェハW2は、接合面W1j,W2jに対してそれぞれ改質処理および親水化処理が施されているものとする。また、上ウェハW1は、上チャック230にその非接合面W1nが吸着保持され、下ウェハW2は、下チャック231にその非接合面W2nが吸着保持されているものとする。
そして、上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調節が行われる。
図17Aに示すように、上ウェハW1の接合面W1jには予め定められた複数、たとえば3点の基準点A1〜A3が形成され、同様に下ウェハW2の接合面W2jには予め定められた複数、たとえば3点の基準点B1〜B3が形成される。これら基準点A1〜A3,B1〜B3としては、たとえば上ウェハW1および下ウェハW2上に形成された所定のパターンがそれぞれ用いられる。なお、基準点の数は任意に設定可能である。
まず、図17Aに示すように、上部撮像部281および下部撮像部291の水平方向位置の調節を行う。具体的には、下部撮像部291が上部撮像部281の略下方に位置するように、第1下チャック移動部290と第2下チャック移動部296によって下チャック231を水平方向に移動させる。そして、上部撮像部281と下部撮像部291とで共通のターゲットXを確認し、上部撮像部281と下部撮像部291の水平方向位置が一致するように、下部撮像部291の水平方向位置が微調節される。
次に、図17Bに示すように、第1下チャック移動部290によって下チャック231を鉛直上方に移動させた後、上チャック230と下チャック231の水平方向位置の調節が行われる。
具体的には、第1下チャック移動部290と第2下チャック移動部296によって下チャック231を水平方向に移動させながら、上部撮像部281を用いて下ウェハW2の接合面W2jの基準点B1〜B3を順次撮像する。同時に、下チャック231を水平方向に移動させながら、下部撮像部291を用いて上ウェハW1の接合面W1jの基準点A1〜A3を順次撮像する。なお、図17Bは上部撮像部281によって下ウェハW2の基準点B1を撮像するとともに、下部撮像部291によって上ウェハW1の基準点A1を撮像する様子を示している。
撮像された画像データは、制御装置100に出力される。制御装置100では、上部撮像部281で撮像された画像データと下部撮像部291で撮像された画像データとに基づいて、上ウェハW1の基準点A1〜A3と下ウェハW2の基準点B1〜B3とがそれぞれ合致するように、第1、第2下チャック移動部290,296によって下チャック231の水平方向位置を調節させる。こうして上チャック230と下チャック231の水平方向位置が調節され、上ウェハW1と下ウェハW2の水平方向位置が調節される。
次に、図17Cに示すように、第1下チャック移動部290によって下チャック231を鉛直上方に移動させて、上チャック230と下チャック231の鉛直方向位置の調節が行われ、当該上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調節が行われる。このとき、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間隔は所定の距離、たとえば80μm〜200μmになっている。
このように構成することで、上ウェハW1と下ウェハW2とに対し、水平方向位置および鉛直方向位置の調節を高精度に行うことが可能となる。
図17Dは、上述した水平方向位置および鉛直方向位置の調節が終わった後の上チャック230、上ウェハW1、下チャック231および下ウェハW2の様子を示している。図17Dに示すように、上ウェハW1は、上チャック230のすべての領域230a、230b、230cにおいて真空引きされて保持され、下ウェハW2も下チャック231のすべての領域231a、231bにおいて真空引きされて保持されている。
次に、上ウェハW1と下ウェハW2とを分子間力により接合する接合処理が行われる。接合処理では、具体的には、真空ポンプ241aの作動を停止して、図17Eに示すように、領域230aにおける吸引管240aからの上ウェハW1の真空引きを停止する。このとき、領域230b,230cでは、上ウェハW1が真空引きされて吸着保持されている。その後、押動部材250の押動ピン251を下降させることによって、上ウェハW1の中心部W1aを押圧しながら当該上ウェハW1を下降させる。このとき、押動ピン251には、上ウェハW1がない状態で当該押動ピン251が70μm移動するような荷重、たとえば200gがかけられる。そして、押動部材250によって、上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aを当接させて押圧する。
これにより、押圧された上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aとの間で接合が開始する(図17E中の太線部)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれ改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれ親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。
その後、図17Fに示すように、押動部材250によって上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aを押圧した状態で、真空ポンプ241bの作動を停止して、領域230bにおける吸引管240bからの上ウェハW1の真空引きを停止する。
これにより、領域230bに保持されていた上ウェハW1が下ウェハW2上に落下する。さらにその後、真空ポンプ241cの作動を停止して、領域230cにおける吸引管240cからの上ウェハW1の真空引きを停止する。このように上ウェハW1の中心部W1aから周縁部W1bに向けて、上ウェハW1の真空引きを段階的に停止し、上ウェハW1が下ウェハW2上に段階的に落下して当接する。そして、上述した接合面W1j,W2j間のファンデルワールス力と水素結合による接合が中心部W1aから周縁部W1bに向けて順次拡がる。
こうして、図17Gに示すように上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jとが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2とが接合される。
その後、図17Hに示すように、押動部材250を上チャック230まで上昇させる。また、下チャック231において吸引管260a、260bからの下ウェハW2の真空引きを停止して、下チャック231による下ウェハW2の吸着保持を解除する。これにより、接合装置41での接合処理が終了する。
<4.接合システムの具体的動作>
次に、以上のように構成された接合システム1の具体的な動作について図18を参照して説明する。図18は、接合システム1が実行する処理の処理手順の一部を示すフローチャートである。なお、図18に示す各種の処理は、制御装置100による制御に基づいて実行される。
まず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション53へ搬送される。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1のロードロック室31へ搬送され、トランジション31a1に載置されて受け渡しが行われる(ステップS101)。次いで、ロードロック室31は、ゲートバルブ36aが閉鎖された後、真空ポンプ31cが作動して減圧されて減圧雰囲気となる(ステップS102)。
次に、上ウェハW1は、搬送室32の改質用搬送装置32aによってロードロック室31から表面改質装置33へ搬送される。表面改質装置33では、減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、上ウェハW1の接合面W1jは改質される(ステップS103)。
次に、上ウェハW1は、改質用搬送装置32aによって表面改質装置33からロードロック室31へ搬送され、トランジション31a2に載置される。そして、ロードロック室31は、ゲートバルブ36aが開放されることで、減圧雰囲気から大気雰囲気へ切り替えられ、上ウェハW1の受け渡しが行われる(ステップS104)。なお、ロードロック室31は、上記のように、大気雰囲気とされるが、搬送室32や表面改質装置33は、減圧雰囲気のままとされる。
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によってロードロック室31から表面親水化装置34へ搬送される。表面親水化装置34では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置33において改質された上ウェハW1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される。また、当該純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される(ステップS105)。
次に、親水化された上ウェハW1は、搬送装置61によって位置調節装置51へ搬送される。そして、位置調節装置51によって、上ウェハW1の水平方向の向きが調節される(ステップS106)。
その後、上ウェハW1は、位置調節装置51の基台反転部51dによって表裏面を反転させられ、接合面W1jを下面にした状態とされる(ステップS107)。次に、接合面W1jを下面にした上ウェハW1は、搬送装置61によって基板温調装置42へ搬送され、基板温調装置42の第1温調保持プレート42aに吸着保持される。これにより、上ウェハW1の温度が調節される(ステップS108)。
上記したステップS101〜S106,S108の処理は、下ウェハW2に対しても行われる。すなわち、まず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション54へ搬送される。
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によってロードロック室31へ搬送されて受け渡しが行われる(ステップS109)。次いで、ロードロック室31は、減圧されて減圧雰囲気となる(ステップS110)。
次に、下ウェハW2は、改質用搬送装置32aによってロードロック室31から表面改質装置33へ搬送され、接合面W2jが改質される(ステップS111)。次に、下ウェハW2は、改質用搬送装置32aによって表面改質装置33からロードロック室31へ搬送される。ロードロック室31は、減圧雰囲気から大気雰囲気へ切り替えられ、下ウェハW2の受け渡しが行われる(ステップS112)。
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によってロードロック室31から表面親水化装置34へ搬送され、接合面W2jが親水化されるとともに、洗浄される(ステップS113)。
次に、親水化された下ウェハW2は、搬送装置61によって位置調節装置51へ搬送され、水平方向の向きが調節される(ステップS114)。なお、このときの下ウェハW2は、接合面W2jを上面にした状態である。
次に、接合面W2jを上面にした下ウェハW2は、基板温調装置42へ搬送されて第2温調保持プレート42bに吸着保持され、温度が調節される(ステップS115)。なお、基板温調装置42では、たとえば、下ウェハW2が上ウェハW1よりも高い温度となるように調節される。
なお、上記したステップS101〜S106,S109〜S115において、搬送装置61による上ウェハW1および下ウェハW2の搬送は、第2保持部62bによって行われ、ステップS107,S108において、反転されて接合面W1jを下面にした上ウェハW1の搬送は、第1保持部62aによって行われるが、これに限定されるものではない。
接合システム1にあっては続いて、上ウェハW1および下ウェハW2が2枚とも、搬送装置61によって接合装置41へ搬送され、上ウェハW1は接合装置41の上チャック230に、下ウェハW2は下チャック231にそれぞれ受け渡される。このとき、制御装置100は、上ウェハW1および下ウェハW2を上チャック230および下チャック231に対して適切な位置で受け渡すため、保持している上ウェハW1および下ウェハW2の位置を位置検出部70a〜70dを用いて検出しておく。
しかしながら、位置検出部70a〜70dは、上記したように、保持された上ウェハW1や下ウェハW2の面に対して垂直な方向に配置される。そのため、たとえば上ウェハW1および下ウェハW2が2枚重なった状態で保持されている場合、検出された周縁の位置が、上ウェハW1のものであるか、下ウェハW2のものであるかを判定することは難しい。
そこで、本実施形態にあっては、上ウェハW1および下ウェハW2の2枚を搬送装置61によって接合装置41へ搬送する際、いずれか1枚が保持されるタイミングで、位置検出を行うようにした。これにより、制御装置100は、搬送装置61によって保持されている上ウェハW1および下ウェハW2の周縁の位置を正確に検出でき、上チャック230および下チャック231に対して適切な位置で受け渡すことができる。
具体的に説明すると、搬送装置61は、まず第1温調保持プレート42aに吸着保持されている上ウェハW1を第1保持部62aで受け取る(ステップS116)。このとき、搬送装置61は上ウェハW1を1枚保持した状態であるため、位置検出部70a〜70dは、上ウェハW1の周縁の位置を検出する。これにより、制御装置100は、検出された上ウェハW1の周縁の位置に基づき、保持されている上ウェハW1の位置を検出することができる。
続いて、搬送装置61は、第2温調保持プレート42bに吸着保持されている下ウェハW2を第2保持部62bで受け取る(ステップS117)。次に、搬送装置61は、上ウェハW1および下ウェハW2の2枚を接合装置41へ搬送する(ステップS118)。
次に、第1保持部62aは、先に検出された上ウェハW1の位置に基づいて上ウェハW1を上チャック230の下方の適切な位置に移動させ、そして上ウェハW1を上チャック230に吸着保持させる(ステップS119)。なお、ステップS119の処理において、上ウェハW1は、まず吸着保持部300によって吸着された後、上チャック230によって吸着保持されることは、上述した通りである。
ここで、搬送装置61にあっては、下ウェハW2の1枚を保持している状態となることから、位置検出部70a〜70dは、下ウェハW2の周縁の位置を検出する。これにより、制御装置100は、検出された下ウェハW2の周縁の位置に基づき、保持されている下ウェハW2の位置を検出することができる。
次に、第2保持部62bは、検出された下ウェハW2の位置に基づいて下ウェハW2を下チャック231の上方の適切な位置に移動させ、そして下ウェハW2を下チャック231に吸着保持させる(ステップS120)。
このように、本実施形態にあっては、搬送装置61が上ウェハW1および下ウェハW2のうちの1枚を保持するタイミングで、周縁の位置検出が行われるようにした。なお、上記では、上ウェハW1、下ウェハW2の順で位置を検出するようにしたが、これは例示であって限定されるものではなく、たとえば、ステップS116とステップS117の処理を入れ替え、ステップS119とステップS120の処理を入れ替えて、下ウェハW2、上ウェハW1の順で位置を検出するようにしてもよい。
続いて、接合装置41内において、上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS121)。次に、上チャック230に保持された上ウェハW1と下チャック231に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調節が行われる(ステップS122)。
次に、押動部材250によって、上ウェハW1の中心部W1aと下ウェハW2の中心部W2aとが、当接されて押圧される(ステップS123)。そして、上ウェハW1と下ウェハW2とが分子間力によって接合される(ステップS124)。
上ウェハW1と下ウェハW2とが接合された重合ウェハTは、たとえば、搬送装置61の第2保持部62bによってトランジション54に搬送される(ステップS125)。その後、搬入出ステーション2の搬送装置22によって所定の載置板11のカセットC3に搬送され、一連の処理が終了する。
上述してきたように、実施形態に係る接合装置41は、上チャック230と、下チャック231と、押動ピン251と、吸着保持部300とを備える。上チャック230は、上ウェハW1を非接合面W1nである上面側から保持する。下チャック231は、上チャック230の下方に設けられ、下ウェハW2を上ウェハW1に対向させて下面側から保持する。押動ピン251は、上ウェハW1の中心部W1aを上方から押圧して下ウェハW2に接触させる。吸着保持部300は、上チャック230に対して昇降自在に設けられ、上チャック230によって保持される前の上ウェハW1における上面の一部を吸着により保持する。これにより、接合装置41において、パーティクルの発生を抑制することができる。
なお、上述した第1、第3の実施形態では、ロードロック室31を1つとしたが、これに限られず、2つ以上であってもよい。また、ロードロック室31内のトランジション31a1,31a2は、1つまたは3つ以上であってもよい。
また、上記した接合システム1にあっては、基板温調装置42が接合装置41に隣接して配置されるようにしたが、これに限られず、たとえば、第3処理ブロックG3など他の場所に配置されるようにしてもよい。また、接合システム1においては、基板温調装置42が除去されるように構成してもよい。
また、上記では、上ウェハW1等は真空吸着や載置により保持されるが、これに限定されるものではなく、たとえば機械的な保持を行うメカチャックや静電吸着力で保持する静電チャックなどに適宜変更してもよい。
また、上記では、押動ピン251が、上ウェハW1を押圧するように構成したが、これに限定されるものではなく、たとえば、吸着保持部300の基部310が、上ウェハW1を押圧するように構成してもよい。これにより、押動ピン251や第2直動機構501を除去することができ、よって接合装置41の構成を簡素化させることができる。
また、上述してきた実施形態では、制御装置100が、接合装置41の吸着保持部300、搬送装置61等を制御することとしたが、接合装置41が吸着保持部300や搬送装置61等を制御する制御部を備えていてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。