JP6951371B2 - 生物学的適用のための制御系および方法 - Google Patents

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Description

分野
本教示の分野は、熱サイクルシステム中のサンプル容器のアレイとともに使用する、トレイアッセンブリーを対象とする。
背景
熱不均一性(TNU)の分析は、熱ブロックアッセンブリーの性能を特徴付ける、当技術分野の確立された特性であり、様々な生物分析装置において用いられ得る。TNUは通常、熱ブロックアッセンブリーのサンプルブロック部分において測定され、このサンプルブロックは、サンプル支持デバイスと係合し得る。TNUは、サンプルブロック中の最も高温の場所と最も低温の場所との間の、差または平均の差のいずれかとして、表され得る。たとえば、TNUは、サンプルブロック中の最も高温のサンプル温度もしくは位置と最も低温のサンプル温度もしくは位置との間の、差または平均の差として求められ得る。ゲルデータと比較して設定される業界標準では、約1.0℃の差として、または0.5℃の平均の差として定義されるように、TNUを表し得る。これまでは、TNUを低減することについては、サンプルブロックに注目が向けられてきた。たとえば、通常サンプルブロックの縁部は中心部よりも低温であり、この温度の差が、サンプル支持デバイスにおいて処理されている生物学的サンプルに伝えられるのが観測されている。
特にウェルのアレイに配置された場合の、複数のサンプルにわたる不均一性の一般的な理由の1つは、エッジ効果と当技術分野では呼ばれる。エッジ効果は通常、マイクロタイタープレートの外縁部にあるウェルが、たとえば、マイクロタイタープレートの中心部に位置するウェルよりも高速に熱を周囲に放散する構成において、発生する。これにより、中心のウェルと外側のウェルとの間に、温度差が生じる。この効果は、ウェルの内部から蒸発し生物学的サンプルの上部のウェルの内壁に凝縮する、生物学的サンプル中の水によって、悪化する。生物学的サンプルにおける水分の喪失は、生物学的サンプル中の反応物の濃度を変化させ、また反応のpHにも影響を与えることを、当業者は理解するだろう。濃度の変化とpHの変化はともに、反応の効率に影響を与え、マイクロタイタープレートの複数のウェル、ひいては複数の生物学的サンプルにわたって、反応の効率が不均一となる。
サンプルブロックの様々な実施形態は、マイクロタイタープレートのような様々なサンプル収容デバイスを受容するように適合され得る。加えて、サンプルブロックの様々な実施形態は、マイクロカードのような実質的に平面的なサンプル収容デバイスを受容するように適合された、実質的な平面的な表面を有し得る。マイクロタイタープレートまたはマイクロカードまたはヌクレオチドの処理に適した任意の他の容器を受容することができるサンプルブロックでは、容器中に置かれた生物学的サンプルは、熱サイクルプロファイルに従って熱サイクルを受け得る。たとえば、二設定点の熱サイクルプロファイルは、変性ステップに対する設定点温度と、アニーリング/伸長ステップに対する設定点温度とを含み得る。変性ステップに対する設定点温度は、約94〜98℃であり得るが、アニーリング/伸長ステップに対する設定点温度は、約50〜65℃であり得る。あるいは、アニーリングステップと伸長ステップが別々のステップである、三設定点の温度プロトコルを用いることができる。様々な試験計画によれば、伸長ステップに対する設定点温度は、約75〜80℃であり得る。熱サイクルの定義されたステップの間、そのステップにおける化学処理のための時間を与えるために、設定点温度に対する指定の待機時間が定義され得る。熱サイクルの様々なステップに対する待機時間の長さは異なり得ることを、当業者は理解する。使われる設定点温度の試験計画に関係なく、すべての試験計画に対して、試験計画の成功または失敗は、熱サイクラーが各設定点の所望の温度を達成すること、および生物学的サンプルを収容する各ウェルが、上で言及された待機時間を通してその設定点温度にさらされることによって少なくとも一部決まることを、当業者は理解するであろう。
サンプルブロックアッセンブリーの熱不均一性を判定できることが、当業者には重要である。一般的な手法は、たとえば、熱電対、サーミスタ、PRT、または当技術分野で周知の他の種類の熱センサを使うことである。センサは、サンプル容器のアレイにわたる様々な点の温度を検出するために使われる。測定された温度は次いで、温度不均一性を計算し、その結果を上で論じられた許容される値と比較するために使われる。
本教示において、生物学的サンプルの水性成分の凝縮および蒸発の影響が、生物分析研究の業界で現在利用可能であり使われている熱ブロックアッセンブリーの温度不均一性に寄与する、重要な因子であることが発見された。本教示は、生物学的サンプル中の水性成分の凝縮および蒸発を制御する、革新的な手法を提示し、本教示による実施形態は、当技術分野の確立された様々な教示とは大きく異なる。
発明の要旨
本発明のある実施形態では、複数の容器にわたる雰囲気温度の不均一性を制御するためのトレイアッセンブリーが提示される。トレイアッセンブリーは、第1の熱伝導率を有する第1の材料から作製される本体を備える。本体はまた、1つまたは複数のヌクレオチドサンプルを収容する複数の容器を受容するように構成される、複数の開口を有する。トレイアッセンブリーはさらに、第2の熱伝導率を有する第2の材料から作製されるアダプタを含む。さらに、アダプタの熱伝導率は、本体の熱伝導率よりも大きい。
別の実施形態では、トレイアッセンブリーの本体は、少なくとも1つのシールを受容するように適合される。
別の実施形態では、少なくとも1つのシールは、本体と熱カバーとの間に配置された上部シール、本体とサンプルブロックとの間に配置された1つまたは複数の底部シール、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
別の実施形態では、第1の材料は、2W/(m・K)未満の熱伝導率を有し、第2の材料は、200W/(m・K)より高い熱伝導率を有する。
別の実施形態では、第1の材料はポリマー材料を含み、第2の材料は金属を含む。
別の実施形態では、第1の材料はポリカーボネートを含み、第2の材料は、アルミニウム、銅、および鋼鉄からなる群から選択される金属を含む。
別の実施形態では、第2の材料は銅を含む。
別の実施形態では、第2の材料はステンレス鋼合金を含む。
別の実施形態では、アダプタは、本体の複数の開口に対応する、複数の開口を含む。
別の実施形態では、アダプタは、複数の熱伝導要素を含む。
本発明のある実施形態では、熱サイクラーが提供される。熱サイクラーは、トレイアッセンブリーを備える。トレイアッセンブリーは、第1の熱伝導率を有する第1の材料から作製される本体を備える。トレイアッセンブリーはさらに、第1の材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する第2の材料から作製される、アダプタを備える。熱サイクラーはまた、1つまたは複数のヌクレオチドサンプルの温度を制御するように構成される、制御ブロックを含む。熱サイクラーはさらに、複数の容器を少なくとも部分的にカバーするようにサイズ決定され、かつ配置される、熱カバーを備える。熱サイクラーはさらに、1つまたは複数のヌクレオチドサンプルを収容する複数の容器を受容するように構成される1つまたは複数の凹みを備える、サンプルブロックを備える。
別の実施形態では、本体は、少なくとも1つのシールを受容するように適合される。
別の実施形態では、アダプタは、本体と1つまたは複数のヌクレオチドサンプルとの間に配置される。
別の実施形態では、熱カバーおよびトレイアッセンブリーは、複数の容器が熱サイクラーの動作の間にサンプルブロック内に位置する場合に、複数の温度ゾーンを生成するように構成される。
別の実施形態では、容器内の複数の温度ゾーンは、所定の温度範囲内で互いに異なっている。
別の実施形態では、複数の温度は、摂氏0.6度以下の量まで、互いに異なっている。
別の実施形態では、複数の温度は、摂氏0.5度以下の量まで、互いに異なっている。
別の実施形態では、複数の温度は、摂氏0.3度以下の量まで、互いに異なっている。
本発明のある実施形態では、ヌクレオチド処理のための方法が提供される。この処理は、1つまたは複数のヌクレオチドサンプルを収容する複数の容器を受容するように構成される、サンプルブロックを提供するステップを含む。この処理はまた、複数の容器を少なくとも部分的にカバーするように構成される、熱カバーを提供するステップを含む。この処理はさらに、熱カバーとサンプルブロックの間に本体およびアダプタを配置することによって、1つまたは複数のヌクレオチドサンプルの温度を制御するステップを含む。本体およびアダプタは、ヌクレオチド処理の間、複数の容器にわたって蒸発および/または凝縮を低減する。
別の実施形態では、制御するステップは、ヌクレオチド処理の間、複数の容器にわたって周囲の熱を分配するステップをさらに含む。
本発明の追加の態様、特徴、および利点は、以下の説明および特許請求の範囲において、特に、同様の部分が同様の参照番号を有する添付の図面とともに検討される場合に述べられる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(請求項1)
複数の容器にわたる雰囲気温度均一性を制御するためのトレイアッセンブリーであって、
第1の熱伝導率を有する少なくとも第1の材料から作製された本体であって、前記本体は、1つまたは複数のヌクレオチドサンプルを収容する複数の容器を受容するように構成される複数の開口を備える、本体と、
前記第1の材料の前記熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する第2の材料から作製されたアダプタと
を備える、トレイアッセンブリー。
(請求項2)
前記本体が、少なくとも1つのシールを受容するように適合される、請求項1に記載のトレイアッセンブリー。
(請求項3)
前記少なくとも1つのシールが、前記本体と熱カバーとの間に配置された上部シール、前記本体とサンプルブロックとの間に配置された1つまたは複数の底部シール、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載のトレイアッセンブリー。
(請求項4)
前記第1の材料が、2W/(m・K)未満の熱伝導率を有し、前記第2の材料が、200W/(m・K)より高い熱伝導率を有する、請求項1に記載のトレイアッセンブリー。(請求項5)
前記第1の材料がポリマー材料を含み、前記第2の材料が金属を含む、請求項1に記載のトレイアッセンブリー。
(請求項6)
前記第1の材料がポリカーボネートを含み、前記第2の材料が、アルミニウム、銅、および鋼鉄からなる群から選択された金属を含む、請求項1に記載のトレイアッセンブリー。
(請求項7)
前記第2の材料が銅を含む、請求項1に記載のトレイアッセンブリー。
(請求項8)
前記第2の材料がステンレス鋼合金を含む、請求項1に記載のトレイアッセンブリー。(請求項9)
前記アダプタが、前記本体の前記複数の開口に対応する複数の開口を備える、請求項1に記載のトレイアッセンブリー。
(請求項10)
前記アダプタが、複数の熱伝導要素を含む、請求項1に記載のトレイアッセンブリー。(請求項11)
熱サイクラーであって、前記熱サイクラーは、
トレイアッセンブリーであって、前記トレイアッセンブリーは、
第1の熱伝導率を有する少なくとも第1の材料で作製された本体と、
前記第1の材料の前記熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する第2の材料で作製されたアダプタと
を備えるトレイアッセンブリーと、
1つまたは複数のヌクレオチドサンプルの温度を制御するように構成される制御ブロックと、
複数の容器を少なくとも部分的にカバーするようにサイズ決定され、かつ配置される熱カバーと、
1つまたは複数のヌクレオチドサンプルを収容する複数の容器を受容するように構成される1つまたは複数の凹みを備えるサンプルブロックと
を備える、熱サイクラー。
(請求項12)
前記本体が、少なくとも1つのシールを受容するように適合される、請求項11に記載の熱サイクラー。
(請求項13)
前記アダプタが、前記本体と前記1つまたは複数のヌクレオチドサンプルとの間に配置される、請求項11に記載の熱サイクラー。
(請求項14)
前記複数の容器が前記熱サイクラーの動作の間に前記サンプルブロック内に位置する場合に、前記熱カバーおよびトレイアッセンブリーが、複数の温度ゾーンを生成するように構成される、請求項11に記載の熱サイクラー。
(請求項15)
前記容器内の前記温度ゾーンが、所定の温度範囲内で互いに異なる、請求項14に記載の熱サイクラー。
(請求項16)
前記温度ゾーンが、摂氏0.6度以下まで互いに異なる、請求項15に記載の熱サイクラー。
(請求項17)
前記温度ゾーンが、摂氏0.5度以下まで互いに異なる、請求項15に記載の熱サイクラー。
(請求項18)
前記温度ゾーンが、摂氏0.3度以下まで互いに異なる、請求項15に記載の熱サイクラー。
(請求項19)
サンプルブロックを提供するステップであって、前記サンプルブロックは、1つまたは複数のヌクレオチドサンプルを収容する複数の容器を受容するように構成されるステップと、
熱カバーを提供するステップであって、前記熱カバーは、前記複数の容器を少なくとも部分的にカバーするように構成される、ステップと、
前記熱カバーと前記サンプルブロックとの間に本体およびアダプタを配置することによって前記1つまたは複数のヌクレオチドサンプルの温度を制御するステップであって、前記本体およびアダプタが、ヌクレオチド処理の間に、前記複数の容器にわたって蒸発および/または凝縮を低減する、ステップとを含む、ヌクレオチド処理のための方法。
(請求項20)
前記制御するステップが、ヌクレオチド処理の間に、前記複数の容器にわたって周囲の熱を分配するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
本発明の実施形態は、添付の図面とともに読めば、以下の詳細な説明からさらに理解され得る。例示のみを目的とするそのような実施形態は、本発明の新規の自明ではない態様を示す。図面は、以下の図を含む。
図1は、本教示の様々な実施形態による、熱サイクラーアッセンブリーの斜視図である。 図2は、本教示の様々な実施形態による、トレイアッセンブリーの第1の図である。 図3は、本教示の様々な実施形態による、トレイアッセンブリーの第2の図である。 図4は、ポリマーから構築されるトレイアッセンブリーを利用するシステム構成における、容器のアレイの中心にあるウェルの温度と、容器のアレイの角(corner)にあるウェルの温度とを示すグラフである。 図5は、本教示によるトレイアッセンブリーを利用するシステム構成における、容器のアレイの中心にあるウェルの温度と、容器のアレイの角にあるウェルの温度とを示すグラフである。 図6は、ポリマーから構築されるトレイアッセンブリーを使用した場合の、マイクロタイタープレートにわたって得られるCt値を示す、3次元グラフである。 図7は、本教示の様々な実施形態によるトレイアッセンブリーを使用した場合の、マイクロタイタープレートにわたって得られるCt値を示す、3次元グラフである。
詳細な説明
本教示は、アッセンブリー全体で熱不均一性の低いトレイアッセンブリーの、様々な実施形態を開示する。以下でより詳細に論じられるように、そのような低い熱不均一性を有する熱アッセンブリーの様々な実施形態は、そのような熱アッセンブリーを利用する生物分析装置の所望の性能を実現する。
本教示の態様を理解するために、図面の検討が有益である。図1に示されるように、たとえば、熱サイクラーシステム100は、熱カバー130、サンプルブロック132、制御ブロック135、およびトレイアッセンブリー110を含んでよく、トレイアッセンブリー110は、熱カバー130とサンプルブロック132との間に配置され得る。トレイアッセンブリー110はさらに、本体の第1の面120A、本体の第2の面120B(図3参照)、第1のシール112、第2のシール116、第3のシール115(図3参照)、およびアダプタ125を含む、本体を含む。トレイアッセンブリー110は、以下でより詳細に論じられる。
いくつかの実施形態では、熱カバー130は、サンプルブロック132に設けられる複数のウェルの中に配置される、生物学的サンプルを収容する複数の容器を、少なくとも部分的にカバーするように構成され得る。別の実施形態では、熱カバー130は、サンプルブロック132において受容される複数の容器の上部かつその周辺部分に沿って配置され得るように、突き出た部分(図示せず)を有し得る。組み合わされると、熱カバー130、トレイアッセンブリー110、およびサンプルブロック132は、生物学的サンプルを伴う容器を収容する、チャンバーを提供することができる。チャンバーは、説明されるようなトレイアッセンブリー110を組み込まない熱サイクラーと比較して、周辺の状態から容器をより良好に隔離することができる。熱カバー130はまた、チャンバー内で定められた温度を維持するのを助けるために、制御された独立の熱源(図示せず)を収容してよい。
いくつかの実施形態では、制御ブロック135は、1つまたは複数の熱電デバイス(TEC)、熱交換器、ヒートシンク、コールドシンク(cold sink)、またはこれらの任意の組合せから作製されていてよく、これらのすべてが、様々なサプライヤから入手可能であり、かつ当技術分野において周知である。制御ブロック135は、サンプルブロックの温度、さらには、複数の容器または複数の容器に収容される生物学的サンプルの温度を、制御するようにも構成され得る。他の実施形態では、制御ブロック135およびサンプルブロック132は、単一の要素を形成するように組み合わされ得る。単一の要素を形成するために組み合わせることは、たとえば、接着剤、エポキシ樹脂、または締め具を使うことによって、実現され得る。締め具は、たとえば、ねじ、ボルト、およびクランプを含み得る。
図2は、トレイアッセンブリー110、本体、および特に、本体の第1の面120Aを示す。本体は、たとえば、ポリカーボネート、PC−ABS、Ultem 1000またはUltem 2000のような、ポリマータイプの材料で構築され得る。いくつかの実施形態では、本体の材料は、2W/(m・K)未満の熱伝導率を有し得る。本体はまた、1つまたは複数の容器を受容するのに適した、1つまたは複数の開口部114を含んでよく、そのような容器は、たとえば、ヌクレオチド処理のために生物学的サンプルを受容するのに適し得る。開口部114は、アレイとして構成され得るので、容器はマイクロタイタープレートを構成し得る。様々な形式のマイクロタイタープレートが当技術分野で周知であり、たとえば、24個、96個、384個、および1536個のウェルのような多くの開口部形式で、様々な調達元から入手可能である。
図2はさらに、いくつかの実施形態では、本体の第1の面120Aが第1のシール112を受容するように適合され得ることを示す。この適合部は、溝、スロット、凹み、または第1のシール112を受容するのに適した任意の形状であってよい。この適合部は、機械加工、成形、または本体120の材料に適した他の処理によって形成され得る。第1のシール112は、たとえば、シリコンラバー、エラストマー、またはporonのような、ポリマーで構築され得る。第1のシール112は、限定はされないが、円筒形、長方形、または楕円体形を含む、任意の適切な形であってよく、シールは、本体の第1の面120Aに設けられた適合部内で受容されるのに必要なものとして、形作られる。第1のシール112は、たとえば、既製の要素であってよく、または、外部成形もしくは押出し成形されてよい。第1のシール112はまた、たとえば、接着テープ、圧入、熱硬化エポキシ、室温硬化エポキシ、熱硬化接着剤、室温硬化接着剤、RTV、超音波溶接、または当業者に公知である他の技法のような、任意の数の手段によって、本体に固定され得る。
ここで、図3を見ると、トレイアッセンブリー110および本体の第2の面120Bが、アダプタ125の例とともに示される。いくつかの実施形態では、アダプタ125は、本体の第1の面120A上に位置し得る。他の実施形態では、アダプタ125は、本体の第2の面120B上に位置し得る。アダプタ125は、本体とは異なる特性を有する材料で構築され得る。たとえば、アダプタ125の材料は、200W/(m・K)を超える熱伝導率を有し得る。アダプタ125の材料は、たとえば、アルミニウム、銅、鋼鉄、またはステンレス鋼合金のような、金属であってよい。アダプタ125のそのような特性は、アダプタ125の温度均一性に寄与し得る。アダプタ125の温度均一性はまた、上で説明されたチャンバーの温度均一性にも影響を与え得る。いくつかの実施形態では、アダプタ125の温度均一性は、0.6℃以下であってよい。別の実施形態では、アダプタ125の温度均一性は、0.5℃以下であってよい。さらに別の実施形態では、アダプタ125の温度均一性は、0.3℃以下であってよい。
図3に示されるように、アダプタ125は、図2において上で前に論じられたような本体の開口部114と同様の、1つまたは複数の開口部118を有し得る。アダプタ125の開口部118は、本体の開口部114と位置合わせされ得る。開口部114を開口部118と位置合わせすることで、トレイアッセンブリー110を1つまたは複数の容器の受容に適したものにすることができ、そのような容器は、ヌクレオチド処理のために生物学的サンプルを受容するのに適し得る。
図3のアダプタ125は、本体に固定され得る。アダプタ125は、たとえば、本体の第1の面120Aまたは本体の第2の面120Bに固定され、または埋め込まれ得る。他の実施形態では、アダプタ125は、たとえば、1つまたは複数の締め具、接着剤、またはエポキシ樹脂(図示せず)によって本体に固定され得る。さらに他の実施形態では、アダプタ125は、本体に超音波溶接され得る。
図3はまた、アダプタ125の周辺部の周囲に位置する第2のシール116および/または第3のシール115を受容するための1つまたは複数の適合部を有する、本体の第2の面120Bを示す。図2に示される第1のシール112に関して上で論じられたように、適合部はたとえば、溝、スロット、凹み、または所望のシールを受容するのに適した任意の形状であってよい。適合部は、機械加工、成形、または本体の材料に適した他の処理によって形成され得る。第2のシール116および/または第3のシール115は、たとえば、シリコンラバー、エラストマー、またはporonのようなポリマーで構築され得る。第2のシール116および/または第3のシール115は、第1のシール112のように、本体の面120Aに設けられた適合部の中で受容されるのに必要な、任意の適切な形であってよい。この形は、たとえば、円筒形、長方形、または楕円体形を含む。シール116および/または115は、たとえば、既製のコンポーネントであってよく、または、専用に成形もしくは押出成形されてよい。シール116および/または115はまた、たとえば、接着テープ、圧入、熱硬化エポキシ、室温硬化エポキシ、熱硬化接着剤、室温硬化接着剤、RTV、超音波溶接、または当業者に公知である他の技法のような、任意の数の手段によって、本体に固定され得る。
トレイアッセンブリー110の温度による性能の検証は、たとえば、容器のアレイの中の選択された容器の測定された温度を評価することによって実現され得る。加えて、トレイアッセンブリー110の有効性は、複数の温度実験の結果を比較することによって、判定され得る。ある温度実験では、本教示のトレイアッセンブリー110を使うことができる。別の温度実験では、ポリマーにより構築されアダプタ125を伴わずに構成された、トレイアッセンブリーを使うことができる。
温度実験は、熱センサ、および、たとえばAgilent 3490Aデータロガーのような適切なコンピュータ制御されたデータ取得システムを、データ取得のためのBenchLink Softwareと共に使用して行われた。測定の間、熱センサは、中心のウェルと角のウェルに配置されていた。それは、当業者には周知のように、サイクル中の複数のウェルにわたる最大の温度差は、エッジ効果によって、中心の領域と角の領域との間に存在するからである。
上記のことを考慮して、図4は、アダプタ125を伴わずに構成されポリマーで構築されたトレイアッセンブリーを組み込むシステムにおける、2つの熱センサからの温度測定結果のグラフを示す。縦軸は単位℃の温度を表し、横軸は単位秒の時間を表す。測定結果は、前に論じられたような典型的な温度試験計画の2つの温度サイクルの間に記録された。マイクロタイタープレートの中心のウェルに配置された第1の熱センサの測定結果は、プロット140によって示される。同じマイクロタイタープレートの角のウェルに配置された第2の熱センサの測定結果は、プロット145によって示される。プロット間の垂直方向の差は、マイクロタイタープレートの複数のウェルにわたる温度不均一性を表す。これらの2つの温度サイクルを通じて収集されたデータに基づくと、中心のウェルと角のウェルとの間の温度差は、約3.56℃であった。
図5も、2つの熱センサからの温度測定結果のグラフを示すが、本体およびアダプタ125を有する図3のトレイアッセンブリーのような、本発明のトレイアッセンブリーの熱特性を有するトレイアッセンブリーを組み込んだシステムにおけるものである。縦軸は単位℃の温度を表し、横軸は単位秒の時間を表す。このグラフの縦軸および横軸の目盛りは、図4に示される対応する軸と同一の温度および時間の範囲を表すことを認識するのが、重要である。測定結果は、図4に対して提示されたような典型的な温度試験計画と同じ時間の長さの間の、2つの温度サイクルの間に記録された。マイクロタイタープレートの中心のウェルに配置された第1の熱センサの測定結果は、プロット155によって示される。同じマイクロタイタープレートの角のウェルに配置された第2の熱センサの測定結果は、プロット150によって示される。ここでも、プロット間の垂直方向の差は、マイクロタイタープレートの複数のウェルにわたる温度不均一性を表す。これらの2つの温度サイクルを通じて収集されたデータに基づくと、中心のウェルと角のウェルとの間の温度差は、1.45℃のオーダーであった。上記の図4で提示されたデータと比較すると、これは、本教示のトレイアッセンブリーを組み込むことによって、温度不均一性が約60%改善したことを表す。
生物学的サンプルに対するヌクレオチド処理の結果を分析する際に、容器のアレイの中のすべてのウェルのCtすなわち閾値サイクル、およびCtの標準偏差を使うことも、生物分析の分野で公知である。閾値サイクルの分析は、たとえば、全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2007年6月5日に発行された、「Automatic Threshold Setting and Baseline Determination for Real−Time PCR」という表題の米国特許第7,228,237号において論じられるように、微生物学分野の当業者に周知である。ヌクレオチド処理の後の複数の容器にわたる、CtとCtの標準偏差との、3次元グラフを使って、熱サイクラーシステムの熱不均一性の程度についての知見を得ることができる。生物分析の分野で公知であるように、Ct値がマイクロタイタープレートにわたって安定的であるほど、また標準偏差が低くなるほど、熱サイクラーシステムの熱不均一性は低くなり得る。
上記を考慮して、本教示のさらなる検証が、ヌクレオチド処理のCtおよびCtの標準偏差の分析を利用しても行われた。2つのそのようなグラフおよびデータ点が、ここで提示される。グラフにおいて提示されるデータは、デュアルレポーター遺伝子発現実験の結果を表す。そのような実験は、生物分析の分野では周知である。図6は、適切な分析ソフトウェアから抽出されたCt値を表す。縦軸はCt値を表し、Ct軸に隣接する底部の軸はマイクロタイタープレートにわたるウェルの行を表し、第3の軸はマイクロタイタープレートにわたるウェルの列を表す。図6で提示されるデータは、アダプタ125を伴わずポリマーで構築されたトレイアッセンブリーを組み込んだシステムから収集された。図6に示されるグラフは、角のウェルおよび縁部のウェルが残りのウェルよりも高いCt値を有することを示す、デュアルレポーター実験の結果を示す。加えて、Ctの標準偏差は、0.234であると示される。
図7はまた、上で提示されたような分析ソフトウェアから抽出された、Ct値およびCtの標準偏差を表す。図7で提示されるデータは、図3にその両方が示されかつ前に説明された本体およびアダプタ125で構築された、本教示のトレイアッセンブリーを組み込むシステムから収集された。ここでもやはり縦軸はCt値を表し、Ct軸に隣接する底部の軸はマイクロタイタープレートにわたるウェルの行を表し、第3の軸はマイクロタイタープレートにわたるウェルの列を表す。グラフの縦軸のCtの目盛りおよびグラフの底部の2つの目盛りは、図6の対応する軸と同じ範囲のCt、行および列を表すことを認識するのが重要である。図6のグラフに提示されるデータと、図7のグラフに提示されるデータとの間で、視覚的な比較を行うことができる。図7の、角のウェルおよび縁部のCt値の低下は、図6と比較した場合に、デュアルレポーター遺伝子発現分析におけるCtの均一性の顕著な改善を表すことが、当業者には明らかであろう。さらに、上で図6において提示されるCtデータと比較すると、容器のアレイにわたるCtの標準偏差は0.077であり、すなわち標準偏差が約67%改善されており、これは本教示のトレイアッセンブリーの使用と直接関係がある。
本教示の様々な実装形態の以下の説明は、例示および説明を目的として提示されてきた。これは網羅的ではなく、本教示を開示された形態へと厳密に限定はしない。修正および変形が、上記の教示に照らして可能であり、または本教示の実施から得られ得る。加えて、説明された実装形態はソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組合せ、またはハードウェア単独で実装され得る。本教示は、オブジェクト指向プログラミングシステムと非オブジェクト指向プログラミングシステムの両方によって実装され得る。

Claims (5)

  1. 熱サイクラーであって、前記熱サイクラーは、
    トレイアッセンブリーであって、前記トレイアッセンブリーは、
    2W/(m・K)よりも低い第1の熱伝導率を有する少なくとも第1の材料で作製された本体であって、前記本体は、本体の第1の面と、対向する本体の第2の面と、複数の本体開口部とを含む、本体と、
    200W/(m・K)を超える熱伝導率を有する第2の材料で作製されたアダプタであって、前記アダプタは、アダプタ上面と、対向するアダプタ底面と、複数のアダプタ開口部と、を含むアダプタと、
    前記アダプタの周囲を取り囲むように、前記本体に取り付けられているシールと
    を含み、
    前記アダプタ上面は、各本体開口部がアダプタ開口部に夫々位置合わせされ、これにより、1つ以上のサンプル容器を受容するように前記トレイアッセンブリーを構成するように、前記本体の前記第2の面に固定されるように構成されており、
    前記本体は、前記シールを受容するための形状にされた、前記本体の前記第2の面に形成された溝、スロット、又は凹みをさらに含む、トレイアッセンブリーと、
    前記1以上のサンプル容器に含まれている1つ以上のヌクレオチドサンプルの温度を制御するように構成されている制御ブロックと、
    前記1つ以上のサンプル容器を少なくとも部分的にカバーするように大きさが決定され、かつ、前記トレイアッセンブリーの上に配置されている熱カバーと、
    前記トレイアッセンブリーの下に配置されているサンプルブロックであって、前記1つ以上のヌクレオチドサンプルを含む1つ以上のサンプル容器を受容するように構成されている1つ以上の凹みを含むサンプルブロックと
    を備える、熱サイクラー。
  2. 前記アダプタは、前記本体の第1の面に固定されるようにさらに構成されている、請求項に記載の熱サイクラー。
  3. 前記本体は、ポリマー材料から作製されており、前記アダプタは、金属材料から作製されている、請求項に記載の熱サイクラー。
  4. 前記ポリマー材料は、ポリカーボネートを含み、前記金属材料は、アルミニウム、銅、鋼合金からなる群から選択された金属を含む、請求項に記載の熱サイクラー。
  5. 前記シールは、ポリマー材料から構成されている、請求項1に記載の熱サイクラー。
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