〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、図1〜9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
本実施の形態では、通常時の運転のほとんどが自動化され、種々のセンサおよび種々の制御対象部を備えている設備としてごみ焼却施設を例示し、該ごみ焼却施設の運転に適用される情報処理装置について説明する。なお、本発明の一態様における情報処理装置は、必ずしもこれに限定されず、例えば、自動運転化された、他の廃棄物処理施設、工場(プラント)、および発電所等、通常時の運転のほとんどが自動化されており、オペレータが、手動介入が必要であると判断した場合に手動による制御を実行するような設備に適用することができる。
本発明の一態様における情報処理装置についての理解を容易にするために、先ず始めに、図2を用いて、情報処理装置200Aを含む運転支援システム1について概略的に説明する。
<運転支援システム1>
図2は、本実施の形態における情報処理装置200Aを含む運転支援システム1の概要を示すブロック図である。運転支援システム1は、ごみ焼却施設(プロセス制御を行う設備)10と管理センター20とを備え、これらが通信ネットワーク30を介して通信可能に接続されている。
なお、運転支援システム1は一例であって、情報処理装置200Aを含む運転支援システムの構成はこれに限定されない。例えば、情報処理装置200Aは、ごみ焼却施設10の中に設けられ、施設内で完結してシステムがなっていてもよい。また、本発明の一態様における運転支援システムは、通信ネットワーク30と通信可能に接続されたデータセンターを含んでいてよく、該データセンターに後述する各種のデータが格納および蓄積されるようになっていてもよい。
(ごみ焼却施設10)
ごみ焼却施設10は、ごみを焼却する焼却炉11、およびそれを制御する中央制御室12を備えている。
焼却炉11は、例えば、前後動する、火格子によって構成されたストーカを備えるストーカ炉であり、多数のセンサ13および多数の制御対象部14を含んでいる。各センサ13および各制御対象部14はそれぞれシステムバス15に接続されている。センサ13および制御対象部14については、様々な種類があることから、説明の便宜上、詳細な説明は省略する。
中央制御室12は、運転制御装置120を備え、該運転制御装置120を必要に応じて操作するオペレータ121が待機している。
運転制御装置120は、システムバス15を通じて、複数のセンサ13からの情報を受信し、複数の制御対象部14をそれぞれ制御する。運転制御装置120は、焼却炉11が通常の運転状態である場合、焼却炉11の自動運転を行う。運転制御装置120は、多数のモニタおよびコンソールを備え、オペレータ121は、それらのモニタの表示に基づいて運転状態を監視し、異常状態または異常の前兆状態であると判断した場合に、手動操作を行う。
なお、一般に、ごみ焼却施設10は、例えば発電、熱利用、および水循環等のその他のシステム(図示せず)も備えており、それらのシステムも各種のセンサおよび制御対象部を含む。これらの各システムは互いに独立するものではなく、或るシステムに対する操作は他のシステムの運転状態に影響を及ぼし得る。オペレータ121は、これらの各システムについて、様々な情報に基づいて運転状態の監視および手動操作を行う。ごみ焼却施設10のような設備の運転には様々なパラメータがあり、設備の運転状態を適切に判断し、適切な操作を選択することは困難である。ここで、ごみ焼却施設10において、運転状態の監視および制御が最も重要となるのは焼却炉11であることから、本実施の形態では、説明の簡略化のため、焼却炉11の自動制御を主な対象とする。本発明の一態様における情報処理装置は、ごみ焼却施設10の全体を制御対象としてもよい。
また、ごみ焼却施設10は、従来用いられている各種の形式の施設であってよい。焼却炉11は、流動床式、ガス化溶融式、またはその他の形式であってもよい。
(管理センター20)
管理センター20は、情報処理装置200Aを備え、該情報処理装置200Aを操作するオペレータ21が待機している。
情報処理装置200Aは、制御部210、記録処理部220、および記憶部230を備えている。これらの各部について、詳しくは後述する。情報処理装置200Aは、通信ネットワーク30を介して、運転制御装置120からプロセスデータを受信する。このプロセスデータとは、運転制御装置120がシステムバス15を通じて各センサ13から受信した、焼却炉11の運転状態に関する各種の時系列データである。つまり、プロセスデータは、焼却炉11の状態を示す時系列データであり、センサ13の数に対応して複数のプロセスデータが存在する。
(システムによる運転支援の概略的な説明)
従来、焼却炉11におけるごみの燃焼制御は、自動燃焼制御(ACC)により行われている。一般に、自動燃焼制御では、(i)焼却炉11の上方に設けられた廃熱ボイラにおける発生蒸気量、(ii)ストーカによってごみを搬送しながら燃焼する燃焼室のガス温度、および(iii)排ガスの成分分析値、等の値を基にして、給じん量および燃焼空気量等をコンピュータ制御している。これにより、ごみの燃焼を均一化および安定化している。
しかしながら、通常、ごみは様々なものが混ざっており、水分量が異なる、金属を多く含む、または燃えやすいプラスチック等を多く含む等、様々な要因によって、ごみの燃焼制御は複雑なものとなり得る。そのため、コンピュータによる燃焼制御が困難となる場合がある。自動燃焼制御においては、例えば、或るセンサの計測値が所定の閾値を超える、または下回ると警報が発報して、人による手動操作を要求するようになっている。
一方、中央制御室12に待機しているオペレータ121は、複数のセンサ13からの情報、および燃焼室の映像を表示するモニタからの情報等に基づいて、焼却炉11の状態を判断する。
そして、オペレータ121は、警報が発報した場合、または異常の前兆であると判断した場合、運転制御装置120に対して手動操作(手動介入)を行う。例えば、ごみの成分が急変して、ごみの燃焼の様子が変化した場合等に、手動介入を行うことがある。なお、警報が発報したとしても、必ずしも操作を要するとは限らず、単に瞬間的に俳ガスの成分が多くなったような場合もある。この場合、オペレータ121は、経験および勘に基づいて、手動介入を行わないという判断を行うこともある。
{プロセスデータ}
ここで、焼却炉11の状態を示す各種のプロセスデータには時系列の変動がある。オペレータはその変動の様子をみて、異常の前兆状態であるか否かを判断している。このプロセスデータの一例について、図3を参照して説明する。図3は、プロセスデータの一例としての、廃熱ボイラに設けられた制御対象部の操作量の時系列データである。横軸は時間(単位は分)、縦軸は任意単位にて示し、時系列の値の変化を示している。この操作量は、運転制御装置120による自動操作と手動操作とが混ざっている。なお、ここでいう「操作量」とは、或る操作を行った前後の差を意味するのではなく、例えば制御対象部への出力値を意味している。
図3に示すように、所定の時間間隔にて取得された操作量のデータは、設定値と計測値との差に基づいて、自動運転制御および手動操作されることにより変化する時系列データとなる。また、焼却炉11の運転状態および所定の設定値に基づいて、操作量の限界値は若干変動する。図中に、該限界値を破線にて示す。この操作量は、廃熱ボイラにおける発生蒸気量が安定する(設定値に近づく)ように、センサの計測値に基づいて自動的に、およびオペレータ121による手動にて変更されている。
図中、領域A1では急激に操作量が増大し、限界値に達しているが、その後すぐに操作量は減少した。このような状態は、異常状態には該当しない。オペレータ121の熟練度が高い場合、各種のセンサからの情報を総合的に判断して手動介入を行わないケースであるといえる。
領域A2では、操作量が全体的な傾向として増加して、その後、限界値に達している。このような状態の変化は、例えば燃えにくいごみがあることにより生じる。そして、領域A3では、操作量が限界値である状態が続き、このような状態は異常状態に該当する。
その後、領域A4では、操作量が全体的な傾向として減少した。このような状態の変化は、例えば燃焼室に燃えやすいごみが増えたことにより生じる。また、領域A5では、操作量は限界値に達することなく、安定な状態(通常の運転状態)であるといえる。安定な状態においても、少なからず操作量の増加および減少があることがわかる。
このようなプロセスデータにおいて、例えば、(i)領域A2のような段階にて異常の前兆状態であると判断して、その段階にて適切な操作(手動介入)を行うことは非常に難しいことがわかる。そして、(ii)領域A1のような操作量が急激に増加する、すなわちセンサ値(計測値)が急激に変動した時点において異常状態ではないと判断すること、および、(iii)領域A5における、操作量が増加しつつある時点において異常の前兆状態には該当しないと判断すること、等の判断を適切に行うこともまた難しい。
ここで、オペレータ121の熟練度が高い場合、該オペレータ121は、各種の他のセンサからの情報も参照しながら、上記(i)〜(iii)の判断を適切に行い、適切な操作を行うことができる。また、この「適切な操作」には、例えば或る制御値を、どのようなタイミングにて、どれぐらいの時間をかけて、どのような割合で変化させたか、といった要素も含まれる。一方で、オペレータ121の経験が不足している場合、該オペレータ121は、運転状態の判断が不適切であったり、不適切な操作を行ったりしてしまうことがある。
このような運転状態の判断のタイミング、並びに手動操作の選択および操作割合といった、熟練度の高いオペレータ121が有する技量は、定量化することは困難である。それゆえ、従来の自動燃焼制御のようなコンピュータ制御にて、例えば閾値のような所定のルールに基づいて、焼却炉11の状態を適切に判断して、適切な操作を選択すること(更なる自動化を図ること)は非常に困難であった。
{本発明の一態様における運転支援}
ここで、ごみ焼却施設10における過去の運転の結果として、以下のような介入ログ(手動操作履歴データ)が数多く存在する。すなわち、オペレータ121が手動制御を行った時点より少し前から該時点までの焼却炉11の各種のプロセスデータ、その手動制御の内容、および手動制御してから少し後までの焼却炉11の各種のプロセスデータの一連の組合せを「介入ログ」とすると、多数の該介入ログが蓄積され、保存されている。この「各種のプロセスデータ」は、様々な制御対象部14およびセンサ13から得られる時系列データを含む。
上記のような蓄積された過去の多数の介入ログ(数値情報)を、そのままデータベースに記録して利用することは困難である。これは、データベースの情報量が莫大なものとなってしまうとともに、そのようなプロセスデータの束を参照して適切な情報を抽出するための処理時間が長くなりすぎることから、現実的では無いためである。また、数値データは、参照することが本質的に難しい。これは、プロセスデータには数値の変動がある、および、数値の絶対値よりも時系列の変化の傾向が重要な場合がある、等のためである。
そこで、本実施の形態における情報処理装置200Aが行う運転支援は、概略的には以下のようなものである。すなわち、情報処理装置200Aは、上記のような蓄積された過去の多数の介入ログのそれぞれについて、焼却炉11の運転状態(各種のプロセスデータ)を概念化して言語化情報(言語化データ)とするとともに、該言語化情報と制御内容とを対応付けてデータベースに記録する。ここで、プロセスデータは時系列データであることから、その言語化においては時間的な変化の傾向を反映させることが好ましい。なお、上記介入ログを概念化する方法は言語化に限定されない。
例えば言語化のように概念化をすることによって、データベースに記録した情報を実際的に参照することが可能なものとすることができる。このような言語化は、設備の運転におけるオペレータの感覚を反映して運転状態を表現するように行うことができる。言語の持つ曖昧さを活用して設備の運転状態を表現することができる。また、言語化することによって、データベースに格納されるデータ量を節約することができる。また、後々、データベースの修正を行う場合に、修正を比較的容易にすることができる。
そして、現在の焼却炉11の運転状態(各種のプロセスデータ)を同様に概念化して言語化情報とし、その言語化情報に該当する過去の言語化した介入ログを参照し、焼却炉11に対して行うべき制御内容の候補を特定する。これにより、情報処理装置200Aは、過去にオペレータ121が経験および勘に基づいて行った判断および操作(過去の手動介入操作)の情報を利用して、現在の焼却炉11の運転状態について適切な制御内容を選択することができる。
なお、上述した介入ログにおける「少し前から」および「少し後まで」といった時間の幅については、ユーザが適宜設定することができる。好ましくは、時間的な変化の傾向(トレンド)に基づいて上記時間の幅を決定してもよく、このことについて詳しくは後述する。
なお、詳しくは後述するが、情報処理装置200Aは、過去の履歴データだけでなく、各種の仕様書および学術論文等の文書データ等の言語化された情報を参照して、制御内容を選択してもよい。また、過去の履歴データを用いてデータベースを予め構築しなくともよく、情報処理装置200Aは、運転支援システム1を運用しながら適切な状態判断および操作を学習してもよい。
<情報処理装置200A>
以上に概要を説明した、本発明の一態様における運転支援システム1が含む情報処理装置200Aについて、図1を参照して、以下に詳細を説明する。図1は、本実施の形態における情報処理装置200Aの要部構成を示すブロック図である。
図1に示すように、情報処理装置200Aは、制御部210、記録処理部220、記憶部(データベース)230、表示部240、および入力部250を備えている。また、情報処理装置200Aは、上述したように運転制御装置120と通信可能に接続されている。
この運転制御装置120は、運転制御部120a、表示部120b、入力部120c、およびデータ記憶部120dを備えている。運転制御部120aは、上述したシステムバス15と接続して、焼却炉11の自動運転を行う。表示部120bは、各種センサ13の計測値等を表示する複数のモニタである。入力部120cは、オペレータ121(図2参照)の手動操作等の入力を受け付ける。データ記憶部120dは、焼却炉11から受信した各種のデータおよびオペレータ121の手動操作の内容等を記憶する。運転制御装置120は、焼却炉11から受信した各種のプロセスデータ、およびオペレータ121が手動介入した旨の手動介入情報を、情報処理装置200Aへ送信する。
情報処理装置200Aの制御部210は、言語化処理部(概念化処理部)211および制御候補特定部212を備えている。また、制御候補特定部212は、判定部212aおよび評価部212bを備えている。そして、記憶部230は、言語化規則データ231、履歴言語化データベース232、およびプロセスデータ記憶部233を備えている。履歴言語化データベース232には、言語化状態情報232aと、制御情報232bと、評価情報232cとが対応付けられて記憶されている。これらの各部の詳細な説明は、情報処理装置200Aの動作の説明と合わせて後述するが、以下に概略的に説明する。
上記制御部210は、情報処理装置200Aの各部材を統括的に制御する。制御部210は、運転制御装置120から送信された各種のプロセスデータ(状態情報)を受信する。受信した各種のプロセスデータに基づいて、言語化処理部211は、言語化規則データ231を用いて、焼却炉11の運転状態を言語化(概念化)し、現在の運転状態に関する言語化状態情報(概念化情報、言語化データ)を生成する。
そして、制御候補特定部212の判定部212aは、言語化処理部211が生成した現在の運転状態に関する言語化状態情報を用いて、先ず、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かを判定する。本実施の形態では、判定部212aは、ニューラルネットワーク処理を行うことにより焼却炉11の運転状態を判定する、ニューラルネットワーク処理部となっている。このニューラルネットワーク処理については後述する。
判定部212aによって焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合、制御候補特定部212は、その判定に用いた言語化状態情報に基づいて履歴言語化データベース232を参照して、適切な制御内容の候補を特定する。具体的には、その判定に用いた現在の運転状態に関する言語化状態情報と一致または類似する焼却炉11の運転状態を、履歴言語化データベース232の言語化状態情報232aの中から検索する。そして、該当する言語化状態情報に対応付けられている制御内容を制御候補として特定する。
制御候補特定部212が特定した制御内容の候補は、表示部240に表示される。換言すれば、焼却炉11の運転状況に基づいて、行うべき制御内容の候補が、オペレータ21(図2参照)に提案される。オペレータ21は、表示部240に表示された候補の中から、入力部250を用いて、適切な制御内容を選択する。
制御部210は、オペレータ21が選択した制御内容に基づいて、運転制御装置120に介入制御指示を送信する。運転制御装置120は、受信した介入制御指示に基づいて、焼却炉11に対して介入制御を行う。
プロセスデータ記憶部233には、過去の運転において蓄積された既存の制御履歴データの一部が格納されていてよく、運転制御装置120から受信したプロセスデータが格納されていてよい。
記録処理部220は、制御部210が運転制御装置120から手動介入情報を受信すると、その制御内容と運転状況と後述する評価情報とを対応付けて履歴言語化データベース232に格納する。ここで、記録処理部220は、制御部210の言語化処理部211を用いて、言語化処理を行う構成であってよい。
また、記録処理部220は、プロセスデータ記憶部233に格納されたデータを用いてよい。プロセスデータ記憶部233には、運転制御装置120から送信されたプロセスデータが格納されている。なお、プロセスデータ記憶部233は必須の構成ではなく、記録処理部220は、運転制御装置120のデータ記憶部120dなどからデータを取得する構成であってもよい。
ここで、本実施の形態の情報処理装置200Aは、表示部240およびユーザに制御内容を選択させる入力部(選択部)250を備え、選択された制御内容を実行する制御部(制御処理部)210を備える制御装置であるといえる。また、情報処理装置200Aは、入力部250を備えていなくてもよい。この場合、情報処理装置200Aは、ユーザ(オペレータ21またはオペレータ121)に適切な制御内容の候補を表示して、焼却炉11の運転を支援することができる。
(運転状態の言語化)
ここで、上述した言語化処理部211が行う、受信したプロセスデータに基づく言語化処理について、図4を参照して説明する。図4は、時系列データの変化の傾向を言語化する方法を説明するための図である。
言語化処理部211は、焼却炉11の複数のセンサ13のそれぞれについての複数種類のプロセスデータを受信する。この複数のセンサ13は画像センサを含んでいてよく、例えば、該センサ13からの情報として、ごみの燃焼の様子を撮像した画像データが含まれていてよい。
以下に、プロセスデータの言語化について模式的に説明するが、言語化の方式はこれに限らない。焼却炉11にどのようなセンサ13が設けられているかによって、プロセスデータの種類は変化する。また、どのプロセスデータを言語化するか、および、言語化の規則をどのように設定するか、はユーザによって適宜設定されてよい。このような設定された規則が、言語化規則データ231となる。
なお、言語化に用いるアルゴリズムは公知の技術を適用することが可能であるので、その説明については省略する。
(1)計測値の単純言語化
プロセスデータを形成する各時刻における、各センサの計測値を用いて単純に言語化することができる。例えば、「炉内温度が950℃」、「給水流量が13t/h」、および「給じん速度が3.3m/h」のように言語化することができる。このような言語化は比較的容易であるが、その一方で、後にデータベースを参照する際のテキストマッチングには不向きである。これは、例えば、データベースに格納されたデータが500℃である場合、設備の運転状態が501℃であれば、マッチングしないためである。
(2)プロセスの状態言語化
焼却炉11の運転状態を、例えば、「蒸気重量は安定している」、「COのピークが発生している」、「火格子温度が少し不安定である」、「蒸気温度が異常高である」、「燃焼火格子速度が上限に達している」のように、予め設定した範囲に基づいて計測値を評価して、色々な角度から言語化することができる。ここで、「蒸気重量は安定している」とは、例えば蒸気重量の変動が±2.5%以内の範囲に収まっている場合にそのように判定するようになっていてよく、変動の範囲は適宜設定されてよい。各種のプロセスデータのそれぞれについて、判定を行うための数値範囲(変動範囲)が適宜設定されてよい。
また、このような判定を行うための時間的範囲についても、適宜設定されてよい。設定された言語化の規則は、言語化規則データ231となる。作成された言語化規則データ231は、運転支援システム1にて一貫して用いられる。予め設定した言語化規則を、運転支援システム1の運用中に変更する場合、履歴言語化データベース232を再構築することになる。
なお、このようなプロセスの状態言語化は、ファジィ測度・積分、またはその他の公知の方法を用いて行ってもよい。
(3)診断結果の言語化
例えば、上記(1)、(2)のような言語化した結果、および予め設定した規則に基づいて、設備の運転状態を診断してもよい。例えば、「焼却炉負荷にかなり余裕がある」、「蒸気量制御に余裕がない」、「ごみ質が安定している」のように、言語化することができる。
(4)画像センサによる判定結果の言語化
焼却炉11の燃焼室に設けられたセンサ13としての画像センサからの画像データについて、既知の画像解析アルゴリズムを用いることによりごみの燃焼状態を判定することができる。判定した結果について、例えば、「燃え切りが35%、未燃塊が50%、正常が15%」のように言語化することができる。この燃焼状態を言語化した情報に基づいて、設備の運転状態を、例えば「ごみ質がやや悪い」のようにさらに概念化して言語化してもよい。
(5)時系列変化の言語化
時系列データをクラスタ化して、傾向(トレンド)を言語化することが好ましい。このトレンド言語化は、例えば以下のように行うことができる。すなわち、図4に示すように、或るプロセスデータとしての時系列データについて、先ず、該時系列データを傾向が似ている部分にて適切なクラスタに分割する。この分割は、クラスタ間の類似度の判定に基づいて行うことができる。このクラスタ間の類似度の判定は、例えば、クラスタの値、クラスタの変化量、およびクラスタの振動具合の3つの要素を用いて行うことができる。時系列データを適切なクラスタに分割するアルゴリズムは、既知のアルゴリズムを用いることができる。
次に、クラスタ化された時系列データの特徴を抽出して言語化する。これにより、例えば、或るクラスタ化された時系列データの傾向について「凸が30%、凹が10%、△が60%」のように言語化することができる。この結果に基づいて、例えば「タイプB」のように記号化してもよい。また、例えば「大きく増加」、「少し増加」のように言語化することもできる。このトレンド言語化は、クラスタの全体的傾向、並びに、前期、中期、および後期の傾向、等のカテゴリ別に言語化することもできる。
また、時系列データの傾向を言語化したデータに基づいて、図形(例えば、棒グラフ)を作成してデータベースに格納してもよい。例えば、「中くらい上昇」が80%、「下に凸」が20%のトレンドであるクラスタについて、各種の評価項目を横軸とし、縦軸を割合として棒グラフを作成することができる。また、図形としては、数値の変化を示す時系列データの傾向(大きさなど)、および画像の変化を示す時系列データの傾向(面積、色など)を表現することができればよく、具体的な態様は特に限定されない。
以上のような言語化の規則は、言語化規則データ231として記憶部230に記憶されている。なお、上記は一例であって、言語化の規則は予め適宜設定することができる。
(履歴言語化データベース232)
次に、図5を参照して、ごみ焼却施設10の過去の運転において蓄積された既存の制御履歴データを用いた、履歴言語化データベース232を構築する処理の流れについて説明する。制御履歴データは、ごみ焼却施設10の過去の運転におけるプロセスデータが保存されたデータであり、前述した介入ログを少なくとも含む。図5は、既存の制御履歴データを用いて履歴言語化データベース232を構築する処理の流れを示すフローチャート図である。
図5に示すように、先ず、蓄積された既存の制御履歴データを用意する(ステップ1:以下S1のように略記する)。情報処理装置200Aは、この制御履歴データを読み込む。
制御部210は、制御履歴データが含む複数の介入ログの情報の中から、1つの介入ログについての情報を抽出する(S2)。
言語化処理部211は、上記抽出した介入ログについて、以下のように言語化処理を行う。すなわち、言語化処理部211は、言語化規則データ231を用いて、過去に制御を行った時点から第1の所定時間前までのごみ焼却施設10の各種プロセスデータに基づいて運転状態を言語化して言語化状態情報とする(S3:概念化処理ステップ)。また、言語化処理部211は、各種プロセスデータのそれぞれについて個別に言語化を行い、言語化状態情報(概念化情報)として、複数種類の種別言語化状態情報(種別概念化情報)を生成してもよい。
また、言語化処理部211は、過去に制御を行った時点から第2の所定時間後までのごみ焼却施設10の各種プロセスデータに基づいて運転状態を言語化して言語化制御結果情報とする(S4)。この言語化制御結果情報も、複数種類の種別言語化制御結果情報を含んでいてもよい。
上記第1の所定時間および第2の所定時間はそれぞれ、適宜設定されてよい。また、各種のプロセスデータのそれぞれについて、異なる第1の所定時間が設定されてもよい。同様に、各種のプロセスデータのそれぞれについて、異なる第2の所定時間が設定されてよい。各プロセスデータの特性に合わせて、第1の所定時間および第2の所定時間をそれぞれ、適宜設定してもよい。
その後、記録処理部220は、言語化状態情報232aと、言語化制御結果情報および制御内容とを対応付けて履歴言語化データベース232に記録する(S5:記録処理ステップ)。ここで、制御内容と言語化制御結果情報とを組み合わせて、制御情報232bとする。
上記S2〜S5の処理を、制御履歴データが含む複数の介入ログのそれぞれについて行い、履歴言語化データベース232を構築することができる。
このように、履歴言語化データベース232を、統一した言語化規則にて構築することができる。このような言語化においては、センサ13の計測値の変動範囲、その変動の仕方、および、正常時と異常時との間の計測値の存在する領域、等についてのオペレータ121の感覚を反映して言語化することができる。また、言語化することにより、言葉の類似関係を考慮して、類似度を含めて参照することが可能となる。
なお、本実施の形態では、情報処理装置200Aが制御履歴データに基づいて、言語化処理を行い、履歴言語化データベース232を構築する構成となっているが、本発明の一態様では、情報処理装置200Aの外部に設けられた言語化装置にて履歴言語化データベース232を構築してもよい。その構築した履歴言語化データベース232を、情報処理装置200Aの記憶部に転送してもよい。
また、履歴言語化データベース232は、言語化状態情報232aとして、オペレータ121の発言および会話の情報を含んでいてもよい。設備の運転状態には、センサ13の計測値に明確には現れない調子のようなものが有り得る。これにより、オペレータ121の感覚をより反映した言語化状態情報232aとすることができる。
(評価部212b)
ここで、上記履歴言語化データベース232の構築と関連して、評価部212bについて説明する。上述のように、ごみ焼却施設10の過去の運転における制御履歴データに基づいて履歴言語化データベース232を構築した結果、言語化状態情報232aと制御情報232bとの対応関係には以下のような場合が生じ得る。
すなわち、或る言語化状態情報232aについて、複数の制御情報232bが対応付けられ得る。これは、ごみ焼却施設10の或る運転状態において、運転制御装置120に入力される制御内容は、常に同じではなく、その時々によって異なり得るからである。
特に、オペレータが異なる場合、オペレータの熟練度等の要因によって、運転状態の判断およびその判断に基づく手動操作の内容が異なることがある。そのため、或る言語化状態情報232aについて、より効果的な制御内容に関する制御情報と、比較的効果の小さい制御内容に関する制御情報との両方が対応付けられることがある。
そこで、評価部212bは、所定の基準に基づいて、或る言語化状態情報232aに対応付けられた複数の制御情報232bを順位付けする。この所定の基準に基づく順位付けとは、例えば、上記言語化制御結果情報を用いて行うことができる。或る制御内容を行った結果、運転状態が安定な状態に戻るまでの所要時間等により、制御内容の評価を行うことができる。また、各介入ログの具体的な状態に応じて、優先すべき事柄が変わる(優先度が異なる)ことから、評価部212bは、状態に応じて重みづけを変えて順位付けを行うことが好ましい。
そして、この評価部212bにより評価された結果についての情報は、評価情報232cとして履歴言語化データベース232に格納される。つまり、履歴言語化データベース232には、言語化状態情報232aと制御情報232bと評価情報232cとが対応付けられて格納されている。
なお、この評価情報232cは、ユーザによって適宜調整されてよい。また、後述するように、設備の運転中にオペレータに操作の候補を複数提示して、オペレータが選択した操作の評価値を高くするようになっていてよい。
(判定部212a)
次に、図6および図7を参照して、ごみ焼却施設10の現時点の運転において、運転状態が正常であるか否かを判定する判定部212aが行う動作について説明する。図6の(a)は、プロセスデータにおける正常データおよび前兆データを説明するための図である。図6の(b)は、上記前兆データ部分を言語化した結果、および各言葉のメンバシップ値を示す表である。図7は、ニューラルネットワーク処理について説明するための図である。
図6の(a)に示すプロセスデータにおいて、領域A11は正常データであり、領域A12は異常の前兆状態を示す前兆データである。この前兆データ部分について、クラスタの変化の傾向(トレンド)を言語化したものの一例を図6の(b)に示している。
ここでは、図6の(b)に示すように、全体的傾向、局所的特徴の期間、局所的特徴の値、後期の位置、各期間の振動といった5個のカテゴリにて、言語化を行う規則としている。さらに、各カテゴリにおいて用いる表現として、以下のように規定する。全体的傾向は、11種類(大きく増加、下に凸、等)。局所的特徴の期間は、3種類(前期、中期、後期)。局所的特徴の値は、7種類(中ぐらい増加、少し減少、等)。後期の位置は、4種類(ほぼゼロ、低い、中ぐらい、高い)。各期間の振動は、前期、中期、後期のそれぞれについて16種類(標準偏差の表現4種類と振動回数の表現4種類の組み合わせ)。すなわち、言葉の種類の総数としては、11+3+7+4+16×3=73種類であるとする。
図7に示すように、判定部212aは、ニューラルネットワーク処理を行って、焼却炉11の運転状態を判定することができる。このようなニューラルネットワーク処理としては、既知の技術を用いることができ、詳細な説明は省略する。概略的に説明すれば、入力層に、上記73種類の言葉のメンバシップ値を入力する。そして、ニューラルネットワーク処理が実行され、出力値が得られる。この出力値を用いて、運転状態が正常であるか否かを判定することができる。
このような処理を行うニューラルネットワークは、予め機械学習をさせることにより構築することができる。例えば、出力値が(1,0)の場合を前兆データとし、(0,1)の場合を正常データとして教師有り学習を行い、構築することができる。図7では、結果としての出力値が(0.548,0.452)であることから、この場合、前兆データであると判定する。正常データおよび前兆データを多数用意して、教師有り学習を行うことにより、ニューラルネットワークによる判定の精度が向上する。
なお、情報処理装置200Aは、このような判定部212aを備えていなくてもよい。その場合、現時点の焼却炉11の運転状態について、言語化処理部211は所定の時間間隔にて言語化を行い、制御候補特定部212は、該言語化した情報に基づいて、履歴言語化データベース232を所定の時間間隔にて参照すればよい。
判定部212aおよび評価部212bを備える制御候補特定部212の動作の詳細については、以下の情報処理装置200Aが実行する情報処理の流れの説明と合わせて説明する。
<情報処理装置200Aが実行する操作選択処理>
図8を参照して、情報処理装置200Aによる情報処理の流れを説明する。図8は、情報処理装置200Aによる情報処理の流れを示すフローチャート図である。
図8に示すように、先ず、通常の状態において、ごみ焼却施設10は自動運転され、情報処理装置200Aは、運転制御装置120からプロセスデータを受信する(S11)。
所定の時間が経過していない場合(S12でNO)、S11の処理を繰り返す。所定の時間が経過した場合(S12でYES)、言語化処理部211は、各種のプロセスデータを用いて、現時点の焼却炉11の運転状態を言語化し、言語化状態情報を生成する(S13)。
判定部212aは、言語化処理部211が生成した言語化状態情報に基づいて、焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であるか否かを判定する。ここで、本実施の形態の判定部212aは、ニューラルネットワークを用いて、焼却炉11の運転状態を判定する(S14)。
焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態ではないと判定された場合(S15でNO)、S11からの処理を再び繰り返す。焼却炉11の運転状態が異常の前兆状態であると判定された場合(S15でYES)、制御候補特定部212は、S13にて生成した言語化状態情報に基づいて、履歴言語化データベース232を参照する(制御候補特定ステップ)。ここで、制御候補特定部212が履歴言語化データベース232を参照する手法は特に限定されないが、一例としてはテキストマッチングであってよい。また、履歴言語化データベース232にグラフまたは画像データが格納されていてもよく、この場合、パターンマッチングを行ってもよい。このような検索を行うアルゴリズムは、公知のものを用いてよく、特に限定されない。
履歴言語化データベース232に該当する言語化状態情報232aがない場合(S16でNO)、制御候補特定部212は、表示部240または表示部120bに、オペレータによる操作が必要である旨の通知を行う(図8の(A))。該当する言語化状態情報が有る場合(S16でYES)、制御候補特定部212は、該当する言語化状態情報に基づいて、制御内容の候補を評価順に表示部240に表示する。
ここで、「該当する言語化状態情報」は、一致または類似したものであってよい。制御候補特定部212は、言語の類似度に基づいて、履歴言語化データベース232を参照してよい。また、S13にて生成した言語化状態情報が複数の種別言語化状態情報を含む場合、制御候補特定部212は、S13にて生成した複数の種別言語化状態情報の組合せと一致または類似する種別言語化状態情報の組合せを履歴言語化データベース232から特定し、該組合せに対応する前記制御内容の候補を特定してもよい。
また、制御候補特定部212は、履歴言語化データベース232を参照して類似数の多い言語化状態情報232aに基づいて、制御内容の候補を特定してもよい。
また、制御候補特定部212は、表示部240に、制御内容の候補を提示するとともに、その候補の選択および評価の理由を表示させるようになっていることが好ましい。これにより、オペレータ21は、その理由を考慮した上で、適切な制御内容を選択することができる。
次に、表示部240に表示された制御内容の候補の中から、オペレータ21が、入力部250を用いて制御内容の選択を行った場合(S18でYES)、制御部210は、選択された制御内容に基づいて、運転制御装置120に介入制御指示を送信する。すなわち、制御部210は、運転制御装置120における自動運転制御への介入制御を実行する(S19)。その後、評価部212bは、履歴言語化データベース232における、言語化状態情報232aに対応付けられた複数の制御情報について、上記選択された制御内容に関する制御情報の評価付けを高くする(S20)。
一方で、S18において、表示部240に表示された制御内容の候補の中から、オペレータ21が、入力部250を用いて制御内容の選択を行わなかった場合(S18でNO)、表示部240または表示部120bに、オペレータによる操作が必要である旨の通知を行う(図8の(A))。
(履歴言語化データベースの情報追加処理)
図9を参照して、オペレータによる手動操作が実行された場合の情報処理装置200Aの記録処理部220が実行する処理の流れを説明する。図9は、情報処理装置200Aの記録処理部220が実行する処理の流れを示すフローチャート図である。
上記S16(図8参照)において該当する言語化状態情報がない場合(S16でNO)、または、オペレータ21が、入力部250を用いて制御内容の選択を行わなかった場合(S18でNO)、図9に示すように、表示部240または表示部120bに、オペレータによる手動操作を要求する旨が表示される(S31)。
オペレータが手動にて操作を実行した場合(S32でYES)、該操作を実行した時点から第2の所定時間後までのプロセスデータを取得する。ここで、運転制御装置120からのプロセスデータは、プロセスデータ記憶部233(図1参照)に送信され、記憶されている。記録処理部220は、このプロセスデータ記憶部233からプロセスデータを取得する。或いは、運転制御装置120のデータ記憶部120dからプロセスデータを取得する構成であってもよい。
記録処理部220は、取得したプロセスデータを言語化して、言語化制御結果情報とする(S33)。その後、記録処理部220は、言語化状態情報と、制御内容と、言語化制御結果情報とを対応付けて履歴言語化データベース232に記録する(S34)。
上記S32において、オペレータが手動にて操作を実行しなかった場合には、そのまま自動運転を継続する、運転を停止する、または警報が発報する等の処理が行われる(S35)。
(主たる効果)
一般に、焼却炉11の制御において、オペレータ121がどのセンサ13の情報に基づいて判断を行って操作を行ったのかということについて、過去の制御履歴データから読み取ることは難しい。また、オペレータ121の操作は、単純なものではなく、或る制御対象部14の操作量を少し変更し、その後、他の制御対象部14の操作量をさらに変更することがある。さらには、その操作量の変更には、時間的な要素があり、一気に変更したり、小刻みに変更したり、といった場合もある。このような操作の理由、すなわち人間の思考および判断は、データ出力することができない。つまり、過去の制御履歴データを活用して、焼却炉11の自動運転化を促進することは、過去の制御履歴データにおける手動操作の理由が明らかでなく、困難であった。
そこで、本発明の一態様における情報処理装置200Aでは、過去の制御履歴データにおける、焼却炉11の運転状態を、所定の規則に基づいて、統一した規則にて概念化(言語化)する。言語化することによって、様々なセンサ13の計測値およびその時間的な変化について、言語の曖昧さを活用して表現することができる。このような言語化は、オペレータの感覚に近いような表現(ニュアンス)にて行うことができる。また、例えば画像センサより得られる画像データに関しても、見た目を言語化して表現することができる。
また、センサ13の計測値は自動制御によって振動していることから、言語化によってそのような振動をうまく表現することもできる。また、各種のセンサ13の計測値の時系列的な傾向を総合的に利用して、焼却炉11の運転状態を言語化状態情報232aとして表すことができる。そして、言語化状態情報232aおよび制御情報232bを対応付けて、履歴言語化データベース232を構築する。ここで、言語化状態情報232aおよび制御情報232bとして、オペレータが、どのようなタイミングで、どの制御値を、どれぐらいの時間を掛けてどのような割合で変化させたか、というようなオペレータの技量に関わる制御内容を、履歴言語化データベース232に記録することができる。
現在の焼却炉11の運転状態を言語化し、その言語化状態情報に基づいて、履歴言語化データベース232を参照することにより、過去の同様の運転状態を照会することができる。ここで、言語の類似性を活用して、類似する過去の運転状態を参照することができる。そのため、現在の言語化状態情報に一致する過去の運転状態が無い場合であっても、類似数の近いものを適用して、制御内容の候補を提案することができる。また、後から履歴言語化データベース232を修正し易いようにすることができる。
履歴言語化データベース232を参照した結果、制御候補特定部212が、表示部240に制御内容の候補を提示する。このとき、その候補の選択理由を表示部240に合わせて表示することができる。これにより、オペレータ21は、その選択理由を考慮して、適切な制御内容を選択することができる。
このように、本実施の形態の情報処理装置200Aは、設備の運転状態が異常の前兆状態であることを捉え、適切な制御内容を選択することができる。
これに対して、例えば、現在の焼却炉11の運転状態における複数のセンサ13の計測値に基づいて、過去の運転状態を数値的に蓄積したデータベースを参照する場合には、そのデータベースのデータ量は膨大なものとなり、かつ参照するために多大な時間を要し得る。そのため、そのような構成の装置は実用に供することができない。
(他の構成および作用効果のまとめ)
本発明の一態様における情報処理装置200Aは、制御候補特定部212が、現時点における複数種類の種別概念化情報(種別言語化状態情報)の組合せと一致または類似する種別概念化情報の組合せをデータベース(履歴言語化データベース232)から特定し、該組合せに対応する制御内容の候補を特定してもよい。
上記の構成によれば、複数種類の種別概念化情報の組合せに基づいて、前記データベースを参照することができ、過去の設備の運転状態と現時点の設備の運転状態とを、より正確に照会することができる。
本発明の一態様における情報処理装置200Aは、制御候補特定部212が、現時点における前記複数種類の種別概念化情報(種別言語化状態情報)の組合せを多入力情報として入力するニューラルネットワーク処理部(判定部212a)を備え、該ニューラルネットワーク処理部の出力結果に基づき、該組合せに対応する前記制御内容の候補を特定してもよい。
一般的に、多数の入力情報に基づいて何らかの判断を行う場合、アルゴリズムによって判断処理を実現することは困難であり、また処理に多大な負荷がかかるケースが多い。すなわち、上記のように、複数種類の種別概念化情報の組合せを多入力情報として入力し、処理を行うアルゴリズムを構築することは困難であることが多い。
これに対して、前記の構成によれば、ニューラルネットワーク処理部によって、前記複数種類の種別概念化情報の組合せに基づいて、現時点における設備の運転状態が異常の前兆状態であるか否かが判定される。ニューラルネットワークは、学習によって判断処理部を一旦構築してしまえば、その後の判断処理は高速に実行することができる。また、複雑なアルゴリズムを構築することなく、学習によって判断処理部を構築することができる。すなわち、前記の構成によれば、上記のような判断を行う処理部を適切に実現することができる。
(変形例1)
本発明の他の一態様では、情報処理装置は、制御候補特定部212が特定した制御内容に基づいて、オペレータに提示することなく、そのまま焼却炉11の制御を行う制御装置となっていてもよい。これにより、ごみ焼却施設10の運転の更なる自動化を図ることができる。
(変形例2)
本発明の実施形態1における情報処理装置200Aは、オペレータが手動介入を行った結果を言語化した言語化制御結果情報を履歴言語化データベース232に記録していた。この結果は、必ずしも言語化しなくてよい。本発明の変形例では、設備の運転が正常化するまでの時間、または定常状態に近づいた度合い、等を、オペレータが手動介入を行った結果としての制御結果情報とする。この制御結果情報を、履歴言語化データベース232に記録し、評価部212bによって評価する。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図10〜13に基づいて説明する。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前期実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前期実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
前記実施の形態1の情報処理装置200Aでは、判定部212aがニューラルネットワーク処理を行い、焼却炉11の現時点の運転状態が異常の前兆状態であるか否かを判定し、前兆状態であると判定された場合に、制御候補特定部212は、履歴言語化データベース232を参照して制御内容の候補を特定していた。これに対して、本実施の形態の情報処理装置200Bは、以下の点で異なっている。すなわち、言語化処理部211が、判定辞書234を用いて、焼却炉11の運転状態に関する複数種類の状態情報を統合して言語化し、言語化状態統合情報232dを生成する。本実施の形態の判定部212cは、この言語化状態統合情報232dに基づいて、履歴言語化データベース232のテキストマッチング(またはテキストマイニング)を行うようになっている。
<情報処理装置200B>
図10を参照して、本実施の形態の情報処理装置200Bについて説明する。図10は、本実施の形態の情報処理装置200Bの要部構成を示すブロック図である。
図10に示すように、情報処理装置200Bは、制御候補特定部212に判定部212cを備え、記憶部230に判定辞書234を備えている。また、履歴言語化データベース232に、言語化状態統合情報232dが記録されている。情報処理装置200Bにおける、その他の構成は、情報処理装置200Aと同様である。
本実施の形態における言語化処理部211は、言語化規則データ231を用いて、各種のプロセスデータに基づいて、焼却炉11の運転状態を言語化して言語化状態情報を生成する。そして、生成した複数種類の言語化状態情報に基づいて、判定辞書234を用いて、それらの言語化状態情報を統合した言語化状態統合情報(上位概念化情報)232dを生成する。
(運転状態の言語化)
上述した言語化処理部211が行う、受信したプロセスデータに基づく言語化処理について、図11を参照して説明する。図11は、プロセスデータに基づく言語化状態統合情報232dの生成について説明するための図である。
図11に示すように、言語化処理部211は、先ず、或るプロセスデータについて、例えば、「動作点レベル」、「制御余裕度」、および「安定性」等のカテゴリ別に判定して、言語化を行う。
例えば、上記動作点レベルは、「非常に高い」、「高い」、「真ん中」、「低い」のように言語化することができる。また、例えば、上記制御余裕度は、「余裕で有る」、「有る」、「半分」、「あまり無い」のように言語化することができ、上記安定性は、「すごく安定」、「安定」、「普通」、「不安定」のように言語化することができる。
そして、これらのカテゴリ別の言語化した結果を結合して、例えば「通常の状態よりも高いところにあり、制御に余裕がなく不安定である」のように文章化する。このような文章化を、他の各種のプロセスデータについても行う。
そして、言語化処理部211は、各種のプロセスデータについて文章化した結果から、判定辞書234を用いて、焼却炉11の運転状態を総合的に判断し、結論としての、例えば「みかけ比重が小さすぎ、ごみが過供給されている」との言語化状態統合情報232dを生成する。
この判定辞書234の具体的な態様は特に限定されないが、例えば、判定辞書234は、各種のプロセスデータについて文章化した結果の組合せとそれに対応する結論との一覧表であり得る。このような一覧表は、予め作成することができる。
このような言語化状態統合情報232dは、複数生成されてもよい。一般に、人が焼却炉11の運転状態を判断する場合には、各種のセンサ13の情報に基づいて、いくつかの仮説を立てることがある。同様に、判定辞書234を用いて、焼却炉11の運転状態を総合的に判断した場合においても、複数種類の言語化状態統合情報232dが生成することが自然である。
つまり、例えば、ある時点の焼却炉11の運転状態から、以下のようにして複数種類の言語化状態統合情報232dが生成することがある。すなわち、各種のプロセスデータのうちの例えば3種類のプロセスデータを用いて、判定辞書234に基づいて、言語化状態統合情報232dが生成され得る。そして、各種のプロセスデータのうちの例えば他の5種類のプロセスデータを用いて、判定辞書234に基づいて、他の種類の言語化状態統合情報232dが生成され得る。
(履歴言語化データベース232の構築)
図12を参照して、ごみ焼却施設10の過去の運転において蓄積された既存の制御履歴データを用いた、本実施の形態の履歴言語化データベース232を構築する処理の流れについて説明する。図12は、既存の制御履歴データを用いて履歴言語化データベース232を構築する処理の流れを示すフローチャート図である。
図12に示すように、先ず、蓄積された既存の制御履歴データを用意する(S41)。情報処理装置200Bは、この制御履歴データを読み込む。
制御部210は、制御履歴データが含む複数の介入ログの情報の中から、1つの介入ログについての情報を抽出する(S42)。
言語化処理部211は、上記抽出した介入ログについて、以下のように言語化処理を行う。すなわち、言語化規則データ231を用いて、過去に制御を行った時点から第1の所定時間前までのごみ焼却施設10の各種プロセスデータに基づいて運転状態を言語化して言語化状態情報とする(S43)。この言語化状態情報は、プロセスデータ毎に生成され、複数種類の種別概念化情報となっている。言語化処理部211は、該複数種類の種別概念化情報に基づいて、判定辞書を用いて、言語化状態統合情報232dを生成する(S44)。言語化状態統合情報232dは複数種類生成されてもよい。
次に、言語化処理部211は、過去に制御を行った時点から第2の所定時間後までのごみ焼却施設10の各種プロセスデータに基づいて運転状態を言語化して言語化制御結果情報とする(S45)。
記録処理部220は、言語化状態統合情報232dが複数種類生成されている場合、上記言語化制御結果情報に基づいて、複数種類の言語化状態統合情報232dの中から、もっとも改善された言語化状態統合情報232dを抽出する。すなわち、もっとも改善された言語化状態統合情報232dと、その時点の制御内容と、言語化制御結果情報とを対応付けて履歴言語化データベース232に記録する(S46)。
ここで、もっとも改善された言語化状態統合情報232dを抽出する方法としては、例えば、以下の(i)または(ii)であってよい。
(i)或る言語化状態統合情報232dと、その言語化状態統合情報232dに対応する、例えばセンサ13とを予め規定する。オペレータ121が行った手動制御に基づいて、どのセンサ13の計測値が変動したかを検出し、もっとも改善された(安定状態に近づいた)計測値を抽出する。その抽出した計測値を示すセンサ13に対応する言語化状態統合情報232dを、もっとも改善された言語化状態統合情報232dとして抽出することができる。
(ii)記録処理部220は、例えば表示部240に、複数種類の言語化状態統合情報232d、並びに、数値データとしての制御結果情報、若しくは言語化制御結果情報を提示する。そして、例えば熟練したオペレータ21が、この結果情報を見て、もっとも改善されたと予想される言語化状態統合情報232dを選択することができる。
上記S42〜S45の処理を、制御履歴データが含む複数の介入ログについてそれぞれ行い、履歴言語化データベース232を構築することができる。
<情報処理装置200Bが実行する操作選択処理>
図13を参照して、情報処理装置200Bによる情報処理の流れを説明する。図13は、情報処理装置200Bによる情報処理の流れを示すフローチャート図である。
図13に示すように、先ず、通常の状態において、S51およびS52として、それぞれ上記S11およびS12(図8参照)と同様の処理が行われる。
次に、所定の時間が経過した場合(S52でYES)、言語化処理部211は、各種のプロセスデータを用いて、現時点の焼却炉11の運転状態を言語化し、言語化状態情報を生成する(S53)。
さらに、言語化処理部211は、判定辞書234を用いて、各種の言語化状態情報を統合して、言語化状態統合情報232dを生成する(S54)。
判定部212aは、言語化処理部211が生成した言語化状態統合情報232dに基づいて、履歴言語化データベース232を参照し、テキストマッチングまたはテキストマイニングを行う(S55)。つまり、履歴言語化データベース232に記録された言語化状態統合情報232dに、S54にて生成した言語化状態統合情報232dに該当するものがあるか否かを照会する。
該当する言語化状態統合情報232dがない場合(S56でNO)、S51からの処理を再び繰り返す。該当する言語化状態統合情報232dがある場合(S56でYES)、制御候補特定部212は、該当する言語化状態統合情報に基づいて、制御内容の候補を評価順に表示部240に表示する(S57)。この該当する言語化状態統合情報は、一致または類似したものであってよい。
その後、S58〜S60として、それぞれ上記S18〜S20(図8参照)と同様の処理が行われる。
(他の構成および作用効果のまとめ)
本発明の一態様における情報処理装置200Bは、概念化処理部(言語化処理部211)が、前記概念化情報(言語化状態情報)として、複数種類の種別概念化情報(種別言語化状態情報)をまとめて1つの上位概念化情報(言語化状態統合情報232d)を生成してもよい。
前記の構成によれば、前記データベースに記録される情報を、複数種類の種別概念化情報をまとめた上位概念化情報とすることができる。そのため、制御候補特定部がデータベースを参照し易くすることができる。
本発明の一態様における情報処理装置200Bは、概念化処理部(言語化処理部211)が、前記複数種類の種別概念化情報(種別言語化状態情報)をまとめた上位概念化情報(言語化状態統合情報232d)の候補を複数種類生成してもよい。
前記の構成によれば、設備の状態を、複数種類の前記上位概念化情報にて表現することができる。ここで、人が設備の運転状態を判断する場合には、設備の状態をいくつか仮定する場合がある。そのような、人の判断に近い形にて、設備の状態を表現することができる。
本発明の一態様における情報処理装置200Bは、記録処理部220が、概念化処理部(言語化処理部211)によって生成された上位概念化情報(言語化状態統合情報232d)の候補のうち、該上位概念化情報に対応する制御情報が行われた結果が改善されたものを、該制御情報と対応づけてデータベース(履歴言語化データベース232)に記録してもよい。
前記の構成によれば、データベースに記録される上位概念化情報とそれに対応付けられた制御内容とは、該制御内容を行うことにより結果が改善する蓋然性が高い。そのため、制御候補特定部が特定する制御内容を、より適切なものとすることができる。
本発明の一態様における情報処理装置200Bは、前記制御候補特定部212が、現時点における前記上位概念化情報(言語化状態統合情報232d)と一致または類似する上位概念化情報を前記データベース(履歴言語化データベース232)から特定し、該上位概念化情報に対応する前記制御内容の候補を特定してもよい。
前記の構成によれば、制御候補特定部が特定した制御内容の候補は、該制御内容を行うことにより結果が改善する蓋然性が高いものとなっている。そのため、設備の運転における異常の前兆状態にて、より適切な制御内容を選択することができる情報処理装置を実現することができる。
(変形例)
実施形態2の情報処理装置200Bでは、履歴言語化データベース232を構築するにあたって、記録処理部220が、複数種類の言語化状態統合情報232dの中から、もっとも改善された言語化状態統合情報232dを抽出していた。これに対して、本発明の他の一態様では、以下のようにもっとも改善された言語化状態統合情報232dを選択する。すなわち、運転制御装置120の表示部120bに、そのときの焼却炉11の運転状態を判定した結果としての複数種類の言語化状態統合情報232dが逐次表示されるようになっている。そして、オペレータ121が手動介入を行った場合に、それと並行して、オペレータ121がもっとも適切と判断する言語化状態統合情報232dを選択する。これにより、もっとも適切と判断された言語化状態統合情報232dと制御内容と制御結果とを対応付けたデータの組み合わせが得られる。この組み合わせを格納することにより、履歴言語化データベース232を構築してもよい。
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置200Aおよび情報処理装置200Bの制御ブロック(特に制御部210)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、情報処理装置200Aおよび情報処理装置200Bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。