JP6951051B2 - 吸着剤の生産方法 - Google Patents

吸着剤の生産方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6951051B2
JP6951051B2 JP2020520855A JP2020520855A JP6951051B2 JP 6951051 B2 JP6951051 B2 JP 6951051B2 JP 2020520855 A JP2020520855 A JP 2020520855A JP 2020520855 A JP2020520855 A JP 2020520855A JP 6951051 B2 JP6951051 B2 JP 6951051B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
adsorbent
solution
protein
buffer solution
storage
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020520855A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2019224660A1 (ja
Inventor
朋彦 吉武
朋彦 吉武
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hoya Technosurgical Corp
Original Assignee
Hoya Technosurgical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hoya Technosurgical Corp filed Critical Hoya Technosurgical Corp
Publication of JPWO2019224660A1 publication Critical patent/JPWO2019224660A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6951051B2 publication Critical patent/JP6951051B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J20/00Solid sorbent compositions or filter aid compositions; Sorbents for chromatography; Processes for preparing, regenerating or reactivating thereof
    • B01J20/02Solid sorbent compositions or filter aid compositions; Sorbents for chromatography; Processes for preparing, regenerating or reactivating thereof comprising inorganic material
    • B01J20/04Solid sorbent compositions or filter aid compositions; Sorbents for chromatography; Processes for preparing, regenerating or reactivating thereof comprising inorganic material comprising compounds of alkali metals, alkaline earth metals or magnesium
    • B01J20/048Solid sorbent compositions or filter aid compositions; Sorbents for chromatography; Processes for preparing, regenerating or reactivating thereof comprising inorganic material comprising compounds of alkali metals, alkaline earth metals or magnesium containing phosphorus, e.g. phosphates, apatites, hydroxyapatites
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J20/00Solid sorbent compositions or filter aid compositions; Sorbents for chromatography; Processes for preparing, regenerating or reactivating thereof
    • B01J20/281Sorbents specially adapted for preparative, analytical or investigative chromatography
    • B01J20/282Porous sorbents
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01BNON-METALLIC ELEMENTS; COMPOUNDS THEREOF; METALLOIDS OR COMPOUNDS THEREOF NOT COVERED BY SUBCLASS C01C
    • C01B25/00Phosphorus; Compounds thereof
    • C01B25/16Oxyacids of phosphorus; Salts thereof
    • C01B25/26Phosphates
    • C01B25/32Phosphates of magnesium, calcium, strontium, or barium
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K1/00General methods for the preparation of peptides, i.e. processes for the organic chemical preparation of peptides or proteins of any length
    • C07K1/14Extraction; Separation; Purification
    • C07K1/16Extraction; Separation; Purification by chromatography
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N30/00Investigating or analysing materials by separation into components using adsorption, absorption or similar phenomena or using ion-exchange, e.g. chromatography or field flow fractionation
    • G01N30/02Column chromatography
    • G01N30/26Conditioning of the fluid carrier; Flow patterns
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N30/00Investigating or analysing materials by separation into components using adsorption, absorption or similar phenomena or using ion-exchange, e.g. chromatography or field flow fractionation
    • G01N30/02Column chromatography
    • G01N30/50Conditioning of the sorbent material or stationary liquid
    • G01N30/56Packing methods or coating methods

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Description

本発明は、リン酸カルシウム系化合物を含む吸着剤(充填剤)の生産方法に関する。より詳しくは、リン酸カルシウム系化合物を含む吸着剤の生産方法であって、得られる吸着剤が有する分解能が変動するのを抑制又は防止した生産方法に関する。
ハイドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウム系化合物は、生体親和性に優れることから、従来から、試料液中に含まれるタンパク質等の帯電物質を吸着・分離する液体クロマトグラフィー用カラム(吸着装置)に使用する吸着剤として広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。
この液体クロマトグラフィー用カラムでは、試料液中に含まれる帯電物質を、リン酸カルシウム系化合物で構成される吸着剤に吸着させた後に、吸着剤から離脱させることにより分離させ、この吸着・分離を繰り返して実施することにより、試料液中に含まれる帯電物質の分離を複数回に亘って行うことができる。
ところで、リン酸カルシウム系化合物を含む吸着剤を用いた帯電物質の分離は、期間を空けることなく繰り返して実施されることもあるし、又は、分離の実施から7日間以上のような一定期間(保存期間)を空けた後に実施されることもある。帯電物質の分離を行うまでの一定期間においては、吸着剤は、高濃度の水酸化ナトリウム溶液(例えば、約1.0M)又はリン酸緩衝液(例えば、約0.4M)等の保存液中に保存されることがある。
本発明者は、このような一定期間に亘る保存液中での保存の後に、リン酸カルシウム系化合物を含む吸着剤を用いて帯電物質の分離を実施すると、リン酸サイトに結合する塩基性タンパク質のような正帯電物質は、吸着剤から分離する正帯電物質の分離位置(溶出時間)が変化しないが、カルシウムサイトに結合する酸性タンパク質のような負帯電物質は、吸着剤から分離する分離位置(溶出時間)が変化することを発見した。
液体クロマトグラフィー用カラムから流出する流出液を、所定量ずつ分画することによって、分画された各画分の流出液中に、負帯電物質を分離しようとする際には、負帯電物質が分離される画分が、保存期間の前後において変化してしまう。従って、所望の負帯電物質を回収するためには、保存期間の前後で、回収すべき画分を再設定する必要が生じるため、時間と手間とを要するという問題が生じる。本発明者は、そのような問題があることを発見した。
特表2013−534252号公報
本発明の目的は、リン酸カルシウム系化合物を含む吸着剤の生産において、得られる吸着剤が有する分解能が変動するのを抑制又は防止することである。
本発明は好ましい一実施態様において下記のいずれかの態様を有する。
(A1)少なくとも一部分にリン酸カルシウム系化合物を含み、分離能を有する吸着剤を得るための吸着剤の生産方法であって、前記生産方法は、
吸着剤を準備する工程と、
第1の溶媒と第1の添加物とを含む第1の溶液中に前記吸着剤を浸漬する第1の工程と、
第2の溶媒と第2の添加物とを含む第2の溶液に前記吸着剤を接触させる第2の工程と、
を含み、
前記第1の添加物は、前記第1の溶媒に加えられた際に、前記吸着剤を構成するカルシウム元素の、被吸着剤に対する吸着力に影響を与える能力を有し、
前記第2の溶液中の前記第2の添加物のモル濃度は、前記第1の溶液中の前記第1の添加物のモル濃度よりも低く、
前記第2の工程は、前記第1の工程よりも後に行われる、生産方法。
(A2)
前記第2の溶液が、pH緩衝剤を含む、A1に記載の生産方法。
(A3)
前記第1の添加物が、塩基、塩およびアルコールからなる群より選択される1つ以上を含む、A1又はA2記載の生産方法。
(A4)
前記帯電物質が、負に帯電した部分を有する、A1〜A3のいずれかに記載の生産方法。
(A5)
前記第1の添加物の濃度が、約0.01M以上約2.0M以下である、A1〜A4のいずれかに記載の生産方法。
(A6)
前記第2の添加物の濃度をA[M]とし、前記第1の添加物の濃度をB[M]としたとき、A/Bが、約0.001以上約0.1以下である、A1〜A5のいずれかに記載の生産方法。
(A7)
前記第2の工程は、前記第2の溶液中に前記吸着剤を静置させる静置工程を含み、
前記静置工程は、約0.1時間以上約24時間以下である、A1〜A6のいずれかに記載の生産方法。
(A8)
前記リン酸カルシウム系化合物は、ハイドロキシアパタイトを主成分とする、A1〜A7のいずれかに記載の生産方法。
(A9)
前記第1の添加物が、水酸化ナトリウムを含み、
前記第2の添加物が、リン酸緩衝剤を含む、A1〜A8のいずれかに記載の生産方法。
(A10)
前記第1の添加物および前記第2の添加物が、リン酸緩衝剤を含む、A1〜A8のいずれかに記載の生産方法。
(A11)
前記第1の添加物が、水酸基含有化合物とpH緩衝剤との組み合わせを含む、A1〜A8のいずれかに記載の生産方法。
(A12)
前記第1の添加物が、水酸基含有化合物とスルホ基を有する緩衝剤との組み合わせを含む、A1〜A8のいずれかに記載の生産方法。
(A13)
少なくとも一部分にリン酸カルシウム系化合物を含み、分離能を有する吸着剤を得るための吸着剤の生産方法に用いるための溶液セットであって、
前記溶液セットは、第1の溶媒と第1の添加物とを含む第1の溶液と、第2の溶媒と第2の添加物とを含む第2の溶液とを含み、
前記第1の添加物は、前記第1の溶媒に加えられた際に、前記吸着剤を構成するカルシウム元素の、被吸着剤に対する吸着力に影響を与える能力を有し、
前記第2の溶液中の前記第2の添加物のモル濃度は、前記第1の溶液中の前記第1の添加物のモル濃度よりも低く、
前記生産方法が、A1〜A13のいずれかに記載の生産方法である、溶液セット。
(A14)
少なくとも一部分にリン酸カルシウム系化合物を含み、分離能を有する吸着剤を得るための吸着剤の生産方法における溶液セットの使用であって、
前記溶液セットは、第1の溶媒と第1の添加物とを含む第1の溶液と、第2の溶媒と第2の添加物とを含む第2の溶液とを含み、
前記第1の添加物は、前記第1の溶媒に加えられた際に、前記吸着剤を構成するカルシウム元素の、被吸着剤に対する吸着力に影響を与える能力を有し、
前記第2の溶液中の前記第2の添加物のモル濃度は、前記第1の溶液中の前記第1の添加物のモル濃度よりも低く、
前記生産方法が、A1〜A13のいずれかに記載の生産方法である、使用。
(A15)
A1〜A13のいずれかに記載の生産方法によって生産された吸着剤。
(A16)
A1〜A13のいずれかに記載の生産方法によって生産された吸着剤が充填された液体クロマトグラフィー用カラム。
本発明の生産方法の技術は、吸着剤の吸着能の変化を抑制又は防止して安定化させることができるので、安定化方法としても使用することができる。本発明の安定化方法は、好ましくは下記の態様を有する。以下の安定化方法の記載は、本発明の生産方法にも適用可能である。
(1) 水と、塩基、塩およびアルコールのうちの少なくとも1種の添加物とを含む保存液中に保存された、少なくとも表面がリン酸カルシウム系化合物で構成された吸着剤の分離能を安定させる安定化方法であって、
前記吸着剤は、前記保存液中に保存することで、前記吸着剤に吸着した負帯電物質の溶出時間が、保存前の前記負帯電物質の溶出時間よりも短くなっており、
前記保存液中における前記添加物の含有量よりも低い含有量となっている前記添加物を含む処理液に前記吸着剤を接触させる処理工程を有することを特徴とする安定化方法。
これにより、吸着剤の分離能の安定化が図られ、吸着剤から負帯電物質が分離する溶出時間が長くなり、結果として、保存液により保存する前とほぼ同一の溶出時間に復帰させることができる。そのため、保存液中における保存の前後において、正帯電物質と同様に、負帯電物質についても、分離位置(溶出時間)に変化が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
したがって、吸着剤が充填された吸着装置から流出する流出液を、所定量ずつ分画することで、分画された各画分の流出液中に、負帯電物質を分離する際に、負帯電物質が分離される画分に、保存液による保存の前後において、ズレが生じるのを的確に抑制または防止することができる。よって、負帯電物質を回収すべき画分を再設定する必要がなくなることから、時間と手間とを要することなく、試料液中からの負帯電物質の分離(精製)を行うことができる。
(2) 前記保存液において、前記添加物は前記塩基であり、前記塩基は、水酸化ナトリウムである上記(1)に記載の安定化方法。
これにより、吸着剤に残存する夾雑タンパク質のような他の物質のさらなる溶出を図ることができる他、さらに、吸着剤における保存時のバクテリア等の発生を的確に抑制または防止することができる。
(3) 前記保存液における、前記添加物の濃度は約0.01M以上約2.0M以下である上記(1)または(2)に記載の安定化方法。
これにより、吸着剤に残存する夾雑タンパク質のような他の物質のさらなる溶出を図ることができる。
(4) 前記処理液における前記添加物の濃度をA[M]とし、前記保存液における前記添加物の濃度をB[M]としたとき、A/Bは、約0.001以上約0.1以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の安定化方法。
これにより、吸着剤による負帯電物質の溶出時間を、保存液により保存する前とほぼ同一の時間により確実に復帰させることができる。
(5) 前記処理工程において、前記処理液中に前記吸着剤を静置させ、前記処理剤を静置する時間は、約0.1時間以上約24時間以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の安定化方法。
これにより、吸着剤による負帯電物質の溶出時間を、保存液により保存する前とほぼ同一の時間により確実に復帰させることができる。
(6) 前記処理液において、前記添加物は前記塩であり、前記処理液は、リン酸緩衝液である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の安定化方法。
これにより、吸着剤による負帯電物質の溶出時間を、保存液により保存する前とほぼ同一の時間により確実に復帰させることができる。
(7) 前記リン酸緩衝液は、そのpHが約6.0以上約7.5以下である上記(6)に記載の安定化方法。
これにより、吸着剤による負帯電物質の溶出時間を、保存液により保存する前とほぼ同一の時間により確実に復帰させることができる。
(8) 前記負帯電物質は、酸性タンパク質である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の安定化方法。
これにより、吸着剤による酸性タンパク質の溶出時間を、保存液により保存する前とほぼ同一の時間により確実に復帰させることができる。
(9) 前記リン酸カルシウム系化合物は、ハイドロキシアパタイトである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の安定化方法。
ハイドロキシアパタイトは、生体を構成する成分に近いため、帯電物質として特にタンパク質を吸着・分離する際に、かかるタンパク質が変質(変性)するのを好適に防止することができる。
本発明の生産方法は、リン酸カルシウム系化合物を含むで構成される吸着剤の生産において、得られる吸着剤が有する分解能が変動するのを抑制又は防止することができる。
本発明の安定化方法を適用し得る吸着剤を備える吸着装置の一例を示す縦断面図である。 実施例1における、保存液による保存前後での溶出時間と吸光度との関係を示すグラフである。 実施例2における、保存液による保存前後での溶出時間と吸光度との関係を示すグラフである。 実施例3における、保存液による保存前後での溶出時間と吸光度との関係を示すグラフである。 比較例1における、保存液による保存前後での溶出時間と吸光度との関係を示すグラフである。 比較例2における、保存液による保存前後での溶出時間と吸光度との関係を示すグラフである。 実施例4において、それぞれ異なる濃度のリン酸緩衝液を、それぞれ保存液として用いた後の溶出時間と該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を示すグラフである。 それぞれ異なるpHのリン酸緩衝液を、それぞれ保存液として用いた後の溶出時間と該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を示すグラフである。 比較例3において、20%エタノールを保存液として用いた後の溶出時間と該保存液を用いる前の溶出時間との差を示すグラフである。 実施例6において、20%エタノールを含む10mM リン酸ナトリウム緩衝剤(pH6.5)を保存液として用いた後の溶出時間と該保存液を用いる前の溶出時間との差を示すグラフである。 実施例7において、20%エタノールを含み、それぞれ濃度が異なるリン酸緩衝液を、それぞれ保存液として用いた後の溶出時間と該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を示すグラフである。 実施例8において、20%エタノールを含み、それぞれ異なるpHのリン酸緩衝液を、それぞれ保存液として用いた後の溶出時間と該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を示すグラフである。 実施例9において、20%エタノールを含み、それぞれpH値が異なるリン酸緩衝液を、それぞれ保存液として用いた後の溶出時間と該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を示すグラフである。 本発明の生産方法の各工程を示すフローチャートである。
以下、本発明の生産方法及び安定化方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。まず、本発明の生産方法及び安定化方法について説明するのに先立って、本発明の生産方法及び安定化方法を適用し得る吸着剤を備える吸着装置の一例について説明する。
なお、以下では、吸着装置を用いて分離する帯電物質がタンパク質である場合、すなわち、負帯電物質が酸性タンパク質であり、正帯電物質が塩基性タンパク質である場合を一例として説明する。
<吸着装置>
図1は、本発明の生産方法及び安定化方法を適用し得る吸着剤を備える吸着装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「流入側」、下側を「流出側」と言う。
ここで、流入側とは、目的とするタンパク質を分離(精製)する際に、例えば、試料液(試料を含む液体)、溶出液であるリン酸系緩衝液等の液体を、吸着装置内に供給する側のことを言い、一方、流出側とは、前記流入側と反対側、すなわち、前記液体が吸着装置内から流出する側のことを言う。
タンパク質を試料液から分離(精製)する、図1に示す吸着装置1は、カラム2と、粒状の吸着剤(充填剤)3と、2枚のフィルタ部材4、5とを有している。
カラム2は、カラム本体21と、このカラム本体21の流入側端部および流出側端部に、それぞれ装着されるキャップ(蓋体)22、23とで構成されている。
カラム本体21は、例えば、円筒状の部材で構成されている。カラム本体21を含めカラム2を構成する各部(各部材)の構成材料は、例えば、各種ガラス材料、各種樹脂材料、各種金属材料、若しくは、各種セラミックス材料等であってもよいし、又は、これらの任意の組み合わせであってもよい。
カラム本体21には、その流入側開口および流出側開口を、それぞれ塞ぐようにフィルタ部材4、5を配置した状態で、その流入側端部および流出側端部に、それぞれキャップ22、23が螺合により装着される。
このような構成のカラム2では、カラム本体21と各フィルタ部材4、5とにより、吸着剤充填空間20が画成されている。そして、この吸着剤充填空間20の少なくとも一部に(本実施形態では、ほぼ満量で)、吸着剤3が充填されている。
吸着剤充填空間20の容積は、試料液の容量に応じて適宜設定され、特に限定されないが、試料液1mLに対して、約0.1mL以上約100mL以下が好ましく、約1mL以上約50mL以下がより好ましい。
また、カラム本体21に各キャップ22、23を装着した状態で、これらの間の液密性が確保されるように構成されている。
各キャップ22、23のほぼ中央には、それぞれ、流入管24および流出管25が液密に固着(固定)されている。この流入管24およびフィルタ部材4を介して吸着剤3に、前記液体が供給される。また、吸着剤3に供給された液体は、吸着剤3同士の間(間隙)を通過して、フィルタ部材5および流出管25を介して、カラム2外へ流出する。このとき、試料液(試料)に含まれる分離すべきタンパク質(以下、単に「タンパク質」と言うこともある)と、分離すべきタンパク質以外の物質(分離すべきタンパク質以外の夾雑タンパク質(以下、単に「夾雑タンパク質」と言うこともある)が含まれていてもよい)とは、吸着剤3に対する吸着性の差異およびリン酸系緩衝液に対する親和性の差異に基づいて分離される。
各フィルタ部材4、5は、それぞれ、吸着剤充填空間20から吸着剤3が流出するのを防止する機能を有するものである。これらのフィルタ部材4、5は、それぞれ、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエーテルポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂からなる不織布、発泡体(連通孔を有するスポンジ状多孔質体)、織布、メッシュ等で構成されている。
吸着剤3は、少なくとも一部分にリン酸カルシウム系化合物を含む。吸着剤3は、より好ましくは、その少なくとも表面が、リン酸カルシウム系化合物で構成されている。かかる吸着剤3には、分離すべきタンパク質が、このタンパク質固有の吸着(担持)力で特異的に吸着し、この吸着力の差に応じて、分離すべきタンパク質以外の他の物質(夾雑タンパク質を含む)と分離・精製される。
リン酸カルシウム系化合物は、例えば、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))、TCP(Ca(PO)、Ca、Ca(PO、DCPD(CaHPO・2HO)、CaO(PO、若しくは、これらの一部が他の原子または原子団で置換されたもの等であってもよいし、又は、これらのうちの1種または2種以上の組み合わせであってもよい。
ここで、タンパク質は、一般的に、その構成アミノ酸として酸性アミノ酸を比較的多く含み負に帯電する酸性タンパク質と、塩基性アミノ酸を比較的多く含み正に帯電する塩基性タンパク質とに分類される。
リン酸カルシウム系化合物は、その結晶構造中に、正に帯電するCaサイトと、負に帯電するリン酸サイトとを有している。
したがって、酸性タンパク質は、リン酸カルシウム系化合物が有するCaサイトと、該酸性タンパク質の酸性アミノ酸残基との間でイオン結合が形成されることにより、リン酸カルシウム系化合物に吸着される。塩基性タンパク質は、リン酸カルシウム系化合物が有するリン酸サイトと、塩基性アミノ酸残基との間でイオン結合が形成されることにより、リン酸カルシウム系化合物に吸着される。タンパク質のリン酸カルシウム系化合物に対する結合(吸着)の強度は、各タンパク質(酸性タンパク質および塩基性タンパク質)の帯電量に応じて異なる。
このため、その少なくとも表面がリン酸カルシウム系化合物で構成される吸着剤3を用いれば、タンパク質(酸性タンパク質および塩基性タンパク質)と、他の物質(例えば、夾雑タンパク質等)とを、これらの吸着剤3に対する吸着力の差を利用して分離することが可能となる。
リン酸カルシウム系化合物は、上述したものの中でも、ハイドロキシアパタイトを主成分とするものが好ましい。特に、ハイドロキシアパタイトは、生体を構成する成分に近いため、タンパク質を吸着・分離する際に、かかるタンパク質が変質(変性)するのを好適に防止することができる。また、溶出液として、リン酸系緩衝液の塩濃度を変えて用いることで、タンパク質を、吸着剤3から特異的に取り外すことができるという利点も有する。
ここで、リン酸カルシウム系化合物がハイドロキシアパタイトを「主成分とする」とは、リン酸カルシウム系化合物の全質量を100質量%としたとき、ハイドロキシアパタイトの質量が約50%以上であることを意味する。この質量は、より好ましくは約60%以上であり、さらに好ましくは約70%以上であり、さらにより好ましくは約80%以上であり、最も好ましくは約90%以上である。
さらに、ハイドロキシアパタイトは、それが有する水酸基の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたものであってもよい。フッ素原子で置換されたハイドロキシアパタイト(以下、「フッ素アパタイト」と言う)は、その結晶構造中にフッ素原子(フッ素イオン)が存在することにより、カルシウム原子(カルシウムイオン)のフッ素アパタイトからの離脱をより確実に防止することができる。
なお、以下では、ハイドロキシアパタイトおよびフッ素原子で置換されたハイドロキシアパタイトを、総称して「アパタイト」と言うこともある。
上記吸着剤3は、図1に示すように、粒状(顆粒状)の形態(形状)を有することが好ましい。上記吸着剤3の形態は、例えば、ペレット状(小塊状)、ブロック状(例えば、隣接する空孔同士が互いに連通する多孔質体、ハニカム形状)等であってもよい。吸着剤3を粒状とすることにより、その表面積を増大させることができ、タンパク質の分離特性の向上を図ることができる。
粒状の吸着剤3の平均粒径は、特に限定されないが、約0.5μm〜約150μmであるのが好ましく、約10μm〜約80μmであるのがより好ましい。このような平均粒径の吸着剤3を用いることにより、前記フィルタ部材5の目詰まりを確実に防止しつつ、吸着剤3の表面積を十分に確保することができる。
吸着剤3は、その全体がリン酸カルシウム系化合物で構成されたものであってもよく、又は、担体(基体)の表面をリン酸カルシウム系化合物で被覆したものであってもよい。これらの中でも、その全体がリン酸カルシウム系化合物で構成されたものであるのが好ましい。これにより、吸着剤3の強度をさらに向上することができる。また、多量のタンパク質を分離する際の使用に適したカラム2を得ることができる。
その全体がリン酸カルシウム系化合物で構成された吸着剤3は、例えば、湿式合成法や乾式合成法を用いて、リン酸カルシウム系化合物粒子(一次粒子)を得、かかるリン酸カルシウム系化合物粒子を含有するスラリーを、乾燥や造粒することにより、乾燥粒子を得、さらに、この乾燥粒子を焼成する等して得ることができる。
一方、担体の表面をリン酸カルシウム系化合物で被覆した吸着剤3は、例えば、樹脂等で構成される担体に、前記乾燥粒子を衝突(ハイブリダイズ)させる方法等により得ることができる。
本実施形態のように、吸着剤3を吸着剤充填空間20にほぼ満量充填する場合には、吸着剤3は、吸着剤充填空間20の各部において、ほぼ同一の組成を有していることが好ましい。これにより、吸着装置1は、タンパク質の分離(精製)能が特に優れたものとなる。
なお、吸着剤充填空間20の一部(例えば流入管24側の一部)に吸着剤3を充填し、その他の部分には他の吸着剤を充填してもよい。
<分離方法>
次に、このような吸着装置1を用いたタンパク質の分離方法について説明する。
[1A] 調製工程
まず、分離(精製)すべきタンパク質と、分離すべきタンパク質以外の物質(混合物)とを含有する試料液を用意する。
タンパク質が遺伝子組み換えタンパク質(モノクローナル抗体等)である場合、試料液は、タンパク質をコードする遺伝子を含む核酸を導入したヒツジ、ウサギ、ニワトリ等の哺乳動物、カイコ等の昆虫のような動物、チャイニーズハムスター卵巣細胞由来のCHO細胞のような動物細胞、大腸菌のような微生物等からの分泌物、それらの細胞質成分等、又は、それらの任意の組み合わせであってもよい。
タンパク質が天然のタンパク質である場合、試料液は、例えば、各種動物由来の血液(血漿)、リンパ液、唾液、鼻汁のような体液等であってもよい。
タンパク質のうち酸性タンパク質は、例えば、BSA、HSA、フィブリノゲン、ペプシノーゲン、α−グロブリン、β−グロブリン、又は、γ−グロブリン等であってもよい。また、塩基性タンパク質は、例えば、リゾチーム、ソーマチン、チトクロムC、リボヌクレアーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、α−キモトリプシン、ヒストン、プロタミン、ポリリジン、又は、モネリン等であってもよい。
なお、これらのタンパク質(酸性タンパク質および塩基性タンパク質)は、そのアミノ酸配列の一部のアミノ酸が他のアミノ酸に置き換えられた改変体であってもよい。
試料液としては、前記微生物等からの分泌物や、動物由来の体液をそのまま用いてもよい。あるいは、試料液は、これらを水や生理食塩水のような中性緩衝液中で希釈したもの、およびフィルタ等の濾過膜で濾過したものであってもよい。また、試料液には、複数種のタンパク質が含まれていてもよい。
[2A] 供給工程
次に、得られた試料液を、流入管24およびフィルタ部材4を介して吸着剤3に供給して、カラム2(吸着装置1)内を通過させて、吸着剤3に接触させる。
これにより、吸着剤3に対して吸着能が高いタンパク質や、分離(精製)すべきタンパク質以外の混入物(夾雑タンパク質等)の中でも吸着剤3に対して比較的吸着能の高いもの(タンパク質)は、カラム2内に保持される。そして、吸着剤3に対して吸着能の低い混入物は、フィルタ部材5および流出管25を介してカラム2内から流出する。
[3A] 分画工程
次に、流入管24からカラム2内に、タンパク質を溶出させるための溶出液として例えばリン酸系緩衝液を供給する。そして、カラム2内から流出管25を介して流出する流出液を、所定量ずつ分画(採取)する。これにより、吸着剤3に吸着しているタンパク質および混入物は、それぞれが有する吸着剤3に対する吸着力の差に応じて異なるタイミングでそれぞれ流出し、それぞれが、各分画内に溶解した状態で回収(分離・精製)される。
すなわち、吸着剤3には、タンパク質および混入物が、それぞれに固有の吸着(担持)力で特異的に吸着している。つまり、それらには、吸着剤3に対する吸着力に差がある。この吸着力の差に応じて、タンパク質と混入物とが分離、精製される。分離(精製)すべきタンパク質が溶解している分画を選択的に回収することによって、精製されたタンパク質を得ることができる。
溶出液において用いられる緩衝剤は、HEPES及びMES等のGoodバッファ、硫酸塩、又は、リン酸塩であることが好ましい。これらの中でも、スルホ基を有する緩衝剤及びリン酸塩がより好ましい。スルホ基を有する緩衝剤は、MOPS、MES、HEPESであることが好ましい。リン酸塩は、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、又は、リン酸アンモニウム等であってもよい。これらの中でも、リン酸ナトリウムが最も好ましい。
上記Goodバッファを含む溶出液のpHは、各GoodバッファのpH緩衝機能を発揮し得る範囲であればよいが、下記表に記載の「Preferred pH」であることがより好ましい。
Figure 0006951051
リン酸系緩衝液(リン酸塩を溶解させた溶液)のpHは、好ましくは約5.5〜8.5、より好ましくは約6.5〜7.5に設定される。これにより、タンパク質を確実に溶出させることができ、その精製率の向上を図ることができる。
緩衝液(溶出液)の温度は、好ましくは約10〜50℃であり、より好ましくは約20〜35℃である。これにより、分離するタンパク質の変質(変成)を防止することができる。
したがって、かかるpH範囲および温度範囲の緩衝液を用いることにより、目的とするタンパク質の回収率を向上できる。
緩衝液の塩濃度は、500mM以下であるのが好ましく、400mM以下であるのがより好ましい。このような塩濃度の緩衝液を用いて、タンパク質の分離を行うことにより、リ衝液中の金属イオンによるタンパク質への悪影響を防止することができる。
塩濃度が約1〜400mMの緩衝液がさらに好ましく用いられる。また、緩衝液の塩濃度は、タンパク質の分離操作の際に、連続的または段階的に変化させるのが好ましい。これにより、タンパク質の分離操作を効率化できる。
緩衝液の流速は、0.1〜10mL/分程度であるのが好ましく、1〜5mL/分程度であるのがより好ましい。このような流速で、タンパク質の分離を行うことにより、分離操作に長時間を要することなく、目的とするタンパク質を確実に分離すること、すなわち、高純度なタンパク質を得ることができる。
以上のような操作により、所定の画分に、タンパク質が回収される。これにより、分離すべき精製されたタンパク質が、所定の画分中に得られる。
上記溶出液は、上記緩衝剤に加えてアルコールをさらに含んでいてもよい。上記溶出液が緩衝剤に加えてアルコールを含む場合、アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、又は、イソプロパノールであってもよい。これらの中でも、エタノールが特に好ましい。
上記溶出液中のアルコールの濃度は、例えば、溶出液の全質量を100%としたとき、1%以上であってもよい。より好ましくは2%〜50%であり、さらに好ましくは5%〜40%であり、さらにより好ましくは10%〜30%であり、最も好ましくは15%〜25%である。上記溶出液中のアルコールの濃度が上記範囲であることにより、他の物質のさらなる溶出および/またはバクテリア等の発生の抑制という効果がより顕著に発揮されると共に、吸着剤の吸着能への悪影響を最小限にできる。
次いで、上記工程1A〜3Aを行ったカラムには、以下で述べるように、本発明の安定化方法が適用される。従って、上記工程1A〜3Aは、本発明の安定化方法を適用するためのカラムを用意する工程であると理解することができる。また、本発明を生産方法においては、上記工程1A〜3Aは、本発明の生産方法の材料となるカラムを用意する工程であると理解することができる。本発明の生産方法の「材料となるカラム」は、すでに使用されることにより、吸着剤の吸着能を変化させる物質が含まれている(可能性がある)カラム、又は、未使用であっても、不純物の存在等の何らかの理由により、吸着能が変化した吸着剤を有するカラムである。この工程は、図14におけるS101に該当する。
<安定化方法>[4A] 保存工程
ここで、この吸着装置1を用いたタンパク質の分離方法では、一般的に、上述したタンパク質の分離(精製)の後に、期間を空けることなく、高濃度の緩衝液(リン酸系緩衝液等)を用いて、吸着剤3に吸着する他の物質(夾雑タンパク質等)を溶出させて洗浄し、その後、再度、タンパク質の分離に吸着装置1を供することで、タンパク質の分離が繰り返して実施される。
あるいは、吸着剤3は、1〜7日間程度のような一定期間(保存期間)を空けた後に、吸着装置1においてタンパク質の分離に用いられることもある。この場合、帯電物質の分離までの一定期間において、他の物質のさらなる溶出および/またはバクテリア等の発生の抑制を目的に、通常、高濃度の水酸化ナトリウム溶液(例えば、1.0M程度)やリン酸緩衝液(例えば0.4M程度)、さらにはエタノール水溶液(例えば20%(0.3M)程度)等の保存液中に吸着剤3が保存される。すなわち、吸着剤3は、一定期間において、水と、塩基、塩およびアルコールのうちの少なくとも1種の添加物(本明細書において「第1の添加物」ともいう)とを含む保存液(本明細書において「第1の溶液」ともいう)中に保存される。保存工程(4A工程)は、吸着剤を保存液に浸漬する工程であり、図14におけるS102に該当する。
しかしながら、このような一定期間をおいた後に、吸着装置1を用いたタンパク質の分離を実施すると、タンパク質のうち、リン酸サイトに結合する塩基性タンパク質は、塩基性タンパク質の分離位置(溶出時間)に変化がしないが、カルシウムサイトに結合する酸性タンパク質は、吸着剤3から分離する分離位置(溶出時間)が変化することがある。より具体的には、吸着剤3から酸性タンパク質が分離する溶出時間が、保存液中における保存前の溶出時間よりも短くなる。
前記保存液中の添加物(第1の溶液中の第1の添加物)の濃度は、好ましくは約0.01M以上約2.0M以下、より好ましくは約0.1M以上約1.0M以下である。例えば、添加物が塩基としての水酸化ナトリウムである場合、水酸化ナトリウムの濃度は、約0.1M以上約1.0M以下であってもよい。また、保存液が添加物として塩基を含むリン酸緩衝液である場合、塩基の濃度は、約0.1M以上約0.5M以下であってもよい。さらに、添加物がアルコールである場合、アルコールの濃度は、約0.2M以上約0.6M以下であってもよい。水酸化ナトリウムの濃度をかかる濃度範囲に設定することで、他の物質(夾雑タンパク質)のさらなる溶出およびバクテリア等の発生の抑制の双方をより高めることができる。また、リン酸緩衝液の濃度をかかる濃度範囲に設定することで、他の物質をさらに溶出させることができる。さらに、アルコールの濃度をかかる濃度範囲に設定することで、バクテリア等の発生をより抑制できる。
保存液中含まれる添加物は、塩基、塩、又は、アルコールであってもよい。これらのうちでも塩基であることが好ましい。塩基であるため、水酸化ナトリウムであることが特に好ましい。これにより、他の物質(夾雑タンパク質)のさらなる溶出を図ることができる。さらに、吸着剤3におけるバクテリア等の発生をより強く抑制することができる。
本発明の安定化方法は、以上のような一定期間をおいた後の吸着剤3において、この吸着剤3が備えるカルシウムサイトに吸着する酸性タンパク質の吸着能(分離能)の変化を抑制又は防止する。これにより、吸着剤3から酸性タンパク質が分離する溶出時間が短くなるのを抑制または防止する。本発明の安定化方法は、下記[1B]に示す処理工程を有する。
[1B] 処理工程
処理工程は、第2の添加物を含む第2の溶液(本明細書において「処理液」ともいう)中に吸着剤3を接触させる(好ましくは、該第2の溶液中に静置する)工程である。前記第2の溶液中の第2の添加物のモル濃度は、前記第1の溶液中の第1の添加物のモル濃度よりも低い。工程1B(処理工程)は、図14におけるS103に該当する。
より具体的には、カラム2内において、保存液中に保存されている吸着剤3に対して、流入管24からカラム2内に、処理液を供給する。そして、流出管25から保存液が流出し、カラム2内の全体が、保存液から処理液に置換された時点で、流入管24からの処理液の供給を停止する。このようにカラム2内への処理液の供給が停止されることで、処理液中に吸着剤3が静置される。
前述の通り、本工程[1B]による処理の以前では、保存液中における保存により吸着剤3から酸性タンパク質が分離する溶出時間が短くなっているが、本工程[1B]において、吸着剤3を処理液中に静置することで、その作用機序は明らかではないが、吸着剤3の分離能の安定化が図られ、吸着剤3から酸性タンパク質が分離する溶出時間が長くなる。この結果として、該溶出時間を、保存液により保存する前とほぼ同一の溶出時間に復帰させることができる。すなわち、酸性タンパク質の分離位置(溶出時間)が、保存液中における保存の前後において変化するのを抑制または防止することができる。
したがって、保存期間の前後において、酸性タンパクの溶出のタイミングにズレが生じるのを抑制または防止することができる。よって、酸性タンパク質を回収すべき画分を再設定する必要がなくなることから、時間と手間とを要することなく、試料液中からの酸性タンパク質の分離(精製)を行うことができる。
本明細書中において、処理液中における吸着剤3の静置とは、吸着剤3を処理液中に浸漬した状態で、流入管24からの処理液の供給、および流出管25からの処理液の排出が停止されている状態のことをいう。静置は、例えば、超音波による振動や、シェーカーを用いた揺動が付与されていてもよい。
処理液は、保存液中における添加物のモル濃度よりも、添加物のモル濃度が低いことが好ましい。保存液中に含まれる添加物(第1の添加物)の種類と、処理液中に含まれる添加物(第2の添加物)の種類は同一であっても異なっていてもよい。第1の添加物及び第2の添加物は、塩基、塩およびアルコールのうちの少なくとも1種を含むものであれば、1種類又はそれらのいかなる組み合わせのものであってもよい。第1の添加物及び第2の添加物は、添加物として塩を含むリン酸緩衝液であることが好ましい。これにより、保存液により保存する前とほぼ同一の溶出時間により近く復帰させることができる。また、後述する次工程[2B]における、吸着剤3の緩衝液による置換を省略することができるため、工程の簡略化を図ることができる。なお、リン酸緩衝液としては、前記工程[3A]と、同様のものを用いることができる。
処理液としてリン酸緩衝液を用いる場合、リン酸緩衝液のpHは、約6.0以上約7.5以下であることが好ましく、約6.5であることがより好ましい。これにより、保存液により保存する前とほぼ同一の溶出時間により復帰させることができる。
処理液における添加物の濃度をA[M]とし、保存液における添加物の濃度をB[M]としたとき、A/Bは、約0.001以上約0.1以下であることが好ましく、約0.01以上約0.05以下であることがより好ましい。
処理液中に吸着剤3を静置する時間は、約0.1時間以上約24時間以下であることが好ましく、約0.5時間以上約2時間以下であることがより好ましい。
処理液における添加物の濃度および処理液中に吸着剤3を静置する時間を、それぞれ、前述した範囲内に設定することにより、保存液により保存する前の溶出時間により近く復帰させることができる。
上記説明では、本工程[1B]において、処理液中に吸着剤3を静置する場合について説明したが、本工程[1B]では、処理液に吸着剤3が接触していればよい。流入管24からカラム2内に対する処理液の供給を継続して、吸着剤3に処理液が通液された状態を維持することによっても、吸着剤3を処理することができる。ただし、処理液中に吸着剤3を静置する方法を選択することで、無駄となる処理液を減少させることができる。また、吸着剤3に処理液を通液する方法を選択した場合、処理液の流速は、好ましくは約0.1mL/分以上約10mL/分以下であり、より好ましくは約1mL/分以上約5mL/分以下である。さらに、処理液を通液する時間は、好ましくは約0.1時間以上約24時間以下であり、より好ましくは約0.5時間以上約2時間以下である。
[2B] 置換工程
次に、流入管24からカラム2内に、緩衝液を供給することで、カラム2内をこの緩衝液に置換する。
これにより、吸着剤3を緩衝液で浸漬された状態とされ、再度、吸着装置1を、前述した分離方法に供することが可能なものとして準備することができる。使用不能になった吸着剤3を分離方法に再び供することができるようにするという観点では、これらの処理は、吸着剤3の生産方法である。これらの処理の後に、吸着剤3を再び分離方法に供する工程は、図14のS104に該当する。
この緩衝液は、例えば、リン酸緩衝液であってもよい。このリン酸緩衝液としては、例えば、前記工程[3A]と同様のものを用いることができる。
前記処理工程[1B]において処理液としてリン酸緩衝液を用いた場合には、本工程[2B]を省略することもできる。
以上のような操作により、吸着剤3が備えるカルシウムサイトに結合する酸性タンパク質の分離能の変化が抑制又は防止される。、これにより、吸着剤3は、上述した分離(精製)に供することができる。
以上の説明では、タンパク質を帯電物質の一例としたが、負帯電物質は、酸性タンパク質の他、酸性アミノ酸、DNA、RNA、又は、負電荷リポソーム等であってもよい。正帯電物質は、塩基性タンパク質の他、塩基性アミノ酸、正電荷コレステロール、又は、正電荷リポソーム等であってもよい。
以上、本発明の安定化方法及び生産方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
本発明の安定化方法及び生産方法においては、任意の目的で、1以上の工程が追加されてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.吸着装置の製造
吸着剤(充填剤)としてハイドロキシアパタイト(BIO−RAD社製、CHT 40μm Type I)を、ステンレスカラム(内径4.0mm×長さ100mm)の充填空間にほぼ満量となるように充填することにより、吸着装置を製造した。
2.吸着装置によるタンパク質(酸性タンパク質および塩基性タンパク質)の分離
(実施例1)
2−1.保存液による保存前の吸着装置によるタンパク質の分離
<1A> まず、酸性タンパク質としてのBSA(牛血清アルブミン)の含有量が10mg/mL、塩基性タンパク質としてのα−キモトリプシノーゲンAの含有量が5mg/mLとなるように、BSAおよびα−キモトリプシノーゲンAを、それぞれ、1.0mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に溶解させて混合液を得た。その後、混合液を0.22μmのフィルタで濾過することで試料液を得た。
<2A> 次に、吸着装置を、クロマト装置に装着した。その後、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5、温度25℃)を、通液速度1.0mL/minで吸着装置に通液することで、吸着装置を平衡化した。
<3A> 次に、試料液50μLを、流速1mL/minで、吸着装置内に供給した後、リン酸緩衝液(pH6.5)を15分で10mM〜400mM(75%)となるようにグラジエントをかけ、吸着装置内から流出する流出液(溶出液)の吸光度(280nm)を、測定した。
2−2.保存液による保存後の吸着装置によるタンパク質の分離
<1B> まず、1.0M水酸化ナトリウム溶液(温度25℃)の保存液を、通液速度1.0mL/minで吸着装置に通液することで、吸着装置に充填された吸着剤を水酸化ナトリウム水溶液(保存液)中に浸漬させた。そして、この状態で、充填剤を7日間保存した。
<2B> 次に、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(温度25℃)の処理液を、通液速度1.0mL/minで吸着装置に通液することで、吸着装置に充填された吸着剤をリン酸ナトリウム緩衝液(処理液)中に浸漬させた。そして、この状態で、充填剤を1時間保存(静置)した。
<3B> 次に、吸着装置を、クロマト装置に装着した。その後、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5、温度25℃)を、通液速度1.0mL/minで吸着装置に通液することで、吸着装置を平衡化した。
<4B> 次に、前記工程<1A>で調製したのと同様の試料液50μLを、流速1mL/minで、吸着装置内に供給した後、リン酸緩衝液(pH6.5)を15分で10mM〜400mM(75%)となるようにグラジエントをかけ、吸着装置内から流出する流出液(溶出液)の吸光度(280nm)を、測定した。
(実施例2)
保存液による保存後の吸着装置によるタンパク質の分離(前記2−2.)の検討において、前記工程<1B>で、1.0M水酸化ナトリウム溶液(温度25℃)に代えて、0.4Mリン酸ナトリウム緩衝液(温度25℃)中に吸着剤を浸漬させたこと以外は、前記実施例1と同様にして、保存液による保存前後の吸着装置によるタンパク質の分離(前記2−1.および前記2−2.)の検討を行った。
(実施例3)
保存液による保存後の吸着装置によるタンパク質の分離(前記2−2.)の検討において、前記工程<1B>の後、0.4Mリン酸ナトリウム緩衝液(温度25℃)で置換してpHを6.5にした後、さらに、前記工程<2B>で、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(温度25℃;処理液)による吸着装置の充填の後、この処理液の通液速度1.0mL/minでの供給を1時間継続することで、充填材に処理液を接触させたこと以外は、前記実施例1と同様にして、保存液による保存前後の吸着装置によるタンパク質の分離(前記2−1.および前記2−2.)の検討を行った。
(比較例1)
保存液による保存後の吸着装置によるタンパク質の分離(前記2−2.)の検討において、前記工程<2B>を省略したこと以外は、前記実施例1と同様にして、保存液による保存前後の吸着装置によるタンパク質の分離(前記2−1.および前記2−2.)の検討を行った。
(比較例2)
保存液による保存後の吸着装置によるタンパク質の分離(前記2−2.)の検討において、前記工程<1B>で、1.0M水酸化ナトリウム溶液(温度25℃)に代えて、0.4Mリン酸ナトリウム緩衝液(温度25℃)中に吸着剤を浸漬させ、さらに、前記工程<2B>を省略したこと以外は、前記実施例1と同様にして、保存液による保存前後の吸着装置によるタンパク質の分離(前記2−1.および前記2−2.)の検討を行った。
(実施例4)
前記工程<1B>の後に、前記<2B>工程において、5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mMとそれぞれ異なる濃度のリン酸緩衝液(処理液)中に浸漬させた。そして、この状態で、充填剤を1時間保存(静置)した以外は、実施例1と同様に試験を行った。これらの保存液を用いた後の溶出時間と、該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を測定した。結果を図7に示す。
(実施例5)
前記工程<1B>の後に、前記<2B>工程において、pH6.0、pH6.5、pH7.0、pH7.5とそれぞれ異なるpH値を有する10mMリン酸緩衝液(処理液)中に浸漬させた。そして、この状態で、充填剤を1時間保存(静置)した以外は、実施例1と同様に試験を行った。これらの保存液を用いた後の溶出時間と、該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を測定した。結果を図8に示す。
(比較例3)
前記工程<1B>において、1.0M水酸化ナトリウム溶液に代えて、20%エタノールを保存液として用いた以外は、実施例1と同様に試験を行った。20%エタノールを保存液として用いた後の溶出時間と該保存液を用いる前の溶出時間との差を測定した。結果を図9に示す。「Run−1」と実線で示されているのが保存前の溶出時間である。「Run−2」と破線で示されているのが保存後の溶出時間である。
(実施例6)
前記工程<1B>において、1.0M水酸化ナトリウム溶液に代えて、20%エタノールを含む10mM NaP溶液(pH6.5)を保存液として用い、7日間保存した以外は、実施例1と同様に試験を行った。この保存液を用いた後の溶出時間と、該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を測定した。結果を図10に示す。「Run−1」と実線で示されているのが保存前の溶出時間である。「Run−2」と破線で示されているのが保存後の溶出時間である。
(実施例7)
前記工程<1B>において、1.0M水酸化ナトリウム溶液に代えて、5mM、10mM、15mM、20mMのそれぞれ異なる濃度のリン酸緩衝液を、それぞれ保存液として用いた以外は、実施例1と同様に試験を行った。これらの保存液を用いた後の溶出時間と、該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を測定した。結果を図11に示す。
(実施例8)
前記工程<1B>において、1.0M水酸化ナトリウム溶液に代えて、20%エタノールを含む10mMリン酸緩衝液であって、、pH6.0、pH6.5、pH7.0、pH7.5、のそれぞれ異なるpH値を有するものを、それぞれ保存液として用いた以外は、実施例1と同様に試験を行った。これらの保存液を用いた後の溶出時間と、該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を測定した。結果を図12に示す。
(実施例9)
前記工程<1B>において、1.0M水酸化ナトリウム溶液に代えて、20%エタノールを含む10mMHEPES(pH7.5およびpH8.0)、並びに、20%エタノールを含むMES緩衝液(pH6.5およびpH7.0)を、それぞれ保存液として用いた以外は、実施例1と同様に試験を行った。これらの保存液を用いた後の溶出時間と、該保存液を用いる前の溶出時間とのそれぞれの差を測定した。結果を図13に示す。
3.評価
実施例1、2、3および比較例1、2において、保存液による保存の前後で測定した溶出液の吸光度について、それぞれ、溶出液の溶出時間と前記吸光度との関係を示すグラフを作成し、これらのグラフを図2、3、4および図5、6に示した。
図2、3から明らかなように、実施例1、2では、保存液による吸着剤の保存の後に、処理液による吸着剤の保存(静置)を実施することで、保存液による保存の前後において、塩基性タンパク質としてのα−キモトリプシノーゲンAの溶出時間、および、酸性タンパク質としてのBSAの溶出時間がともにほぼ一致していた。従って、塩基性タンパク質および酸性タンパク質の吸着剤の分離能が変化していないことが判った。
また、図4から明らかなように、処理液による吸着剤に対する接触を、吸着剤に対する処理液の通液に代えた実施例3においても、吸着剤を処理液中に保存(静置)した実施例1、2と同様の結果が得られた。
これに対して、比較例1、2では、保存液による吸着剤の保存の後において、処理液による吸着剤の保存(静置)が省略された。図5、6から明らかなように、保存液による保存の前後において、塩基性タンパク質としてのα−キモトリプシノーゲンAの溶出時間がほぼ一致しているものの、酸性タンパク質であるBSAの溶出時間が保存後において短くなっていた。つまり、比較例1、2では、酸性タンパク質の吸着剤の分離能が、吸着剤の保存の後に変化していた。
図7に示されている実施例4においては、リン酸緩衝液が10mMの濃度であるときに、吸着剤の吸着能の変化が最も小さかった。図8に示されている実施例5においては、10mMリン酸緩衝液がpH6.0又は6.5であるときに、吸着剤の吸着能の変化が最も小さかった。図9に示されている比較例3においては、20%エタノールに7日間保存された後の吸着剤は、酸性タンパク質であるBSAの溶出時間が保存後に短くなっていた。
図10に示されている実施例6においては、20%エタノールを含む10mM NaP溶液(pH6.5)中に7日間保存された後の吸着剤は、酸性タンパク質であるBSAの溶出時間が保存後にもほとんど変化していなかった。図11に示されている実施例7においては、0〜15mMのそれぞれ異なる濃度のリン酸緩衝液中に保存された後の吸着剤は、10mMの濃度のときにBSAの溶出時間の変化が最も小さかった。
図12に示されている実施例8において、20%エタノールを含み、それぞれ異なるpH値を有する10mMリン酸緩衝液中に保存された後の吸着剤は、pHが6.5のときにBSAの溶出時間の変化が最も小さかった。図13に示されている実施例9において、20%エタノールを含み、それぞれ異なるpH値を有する10mM HEPES緩衝液中に保存された後の吸着剤は、pHが7.5又は8.0のときに、BSAの溶出時間の変化が最も小さかった。
本発明の生産方法安及び定化方法によれば、例えば、高濃度の水酸化ナトリウム溶液(例えば、1.0M程度)やリン酸緩衝液(リン酸系緩衝液、(例えば0.4M程度))等の保存液中に保存した後のリン酸カルシウム系化合物で構成される吸着剤について、このリン酸カルシウム系化合物(吸着剤)が備えるカルシウムサイトに結合する負帯電物質の分離能の安定化が図られることとなる。
そのため、吸着剤から分離する分離位置(溶出時間)を、前記保存液による保存の前後において、ほぼ一定に保つことができる。したがって、吸着剤が充填された液体クロマトグラフィー用カラムから流出する流出液を、所定量ずつ分画することで、分画された各画分の流出液中に、負帯電物質を分離する際に、負帯電物質が分離される画分に、前記保存液による保存の前後において、ズレが生じるのを的確に抑制または防止することができる。よって、回収すべき画分を再設定する必要がなくなることから、時間と手間とを要することなく、試料液中からの負帯電物質の分離を行うことができる。
本明細書において、「約」が付された数値は、矛盾が生じない範囲内で当該数値が異なっていてもよいことを示している。「約」が付された数値は、例えば、プラスマイナス10%の誤差を含む範囲であってもよい。この範囲は、より好ましくはプラスマイナス5%の範囲であり、さらに好ましくはプラスマイナス1%の範囲であり、最も好ましくは誤差がないこと(当該数値そのもの)の範囲である。
1 吸着装置
2 カラム
3 吸着剤
4 フィルタ部材
5 フィルタ部材
20 吸着剤充填空間
21 カラム本体
22 キャップ
23 キャップ
24 流入管
25 流出管

Claims (5)

  1. 少なくとも一部分にリン酸カルシウム系化合物を含み、前記リン酸カルシウム系化合物の主成分がハイドロキシアパタイト又はハイドロキシアパタイトの水酸基の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ素アパタイトである吸着剤が、帯電物質の分離に適した本来の分離能を有するようにするための処理方法であって、前記処理方法は、
    吸着剤の吸着能を変化させる物質又は不純物の存在により本来の分離能から変化した分離能を有する可能性がある吸着剤を準備する工程と、
    5mM〜20mMであるリン酸緩衝剤溶液中に前記吸着剤を0.5時間以上24時間以下に亘って静置する静置工程を含み、
    前記静置工程で用いられるリン酸緩衝剤溶液のpH値が6〜6.5である、処理方法。
  2. 前記静置工程において用いられるリン酸緩衝剤溶液がさらにアルコールを含む、請求項1に記載の処理方法。
  3. 少なくとも一部分にリン酸カルシウム系化合物を含み、前記リン酸カルシウム系化合物の主成分がハイドロキシアパタイト又はハイドロキシアパタイトの水酸基の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ素アパタイトであるである吸着剤が、帯電物質の分離に適した本来の分離能を有するようにするための処理方法であって、前記処理方法は、
    吸着剤の吸着能を変化させる物質又は不純物の存在により本来の分離能から変化した分離能を有する可能性がある吸着剤を準備する工程と、
    HEPES緩衝剤溶液又はMES緩衝剤溶液中に前記吸着剤を1日以上に亘って静置する静置工程を含み、
    前記静置工程で用いられるHEPES緩衝剤溶液又はMES緩衝剤溶液は、アルコールを含み、
    前記HEPES緩衝剤溶液のpHが7.5〜8.0であり、
    前記MES緩衝剤溶液のpHが6.5〜7.0である、
    吸着剤の処理方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の静置工程の後に、フレッシュなリン酸緩衝剤溶液をカラムに通液させて該カラムを平衡化する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の処理方法を行うことによって、帯電物質の分離に適した分離能を有する吸着剤を得る、吸着剤の生産方法。
JP2020520855A 2018-05-24 2019-05-15 吸着剤の生産方法 Active JP6951051B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018099472 2018-05-24
JP2018099472 2018-05-24
PCT/IB2019/054007 WO2019224660A1 (ja) 2018-05-24 2019-05-15 吸着剤の生産方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2019224660A1 JPWO2019224660A1 (ja) 2021-03-11
JP6951051B2 true JP6951051B2 (ja) 2021-10-20

Family

ID=68616281

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020520855A Active JP6951051B2 (ja) 2018-05-24 2019-05-15 吸着剤の生産方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6951051B2 (ja)
WO (1) WO2019224660A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP4144749A4 (en) * 2020-05-01 2023-07-05 Hoya Technosurgical Corporation METHOD FOR PURIFYING A CHARGED SUBSTANCE

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08184587A (ja) * 1994-12-28 1996-07-16 Asahi Optical Co Ltd 液体クロマトグラフィー分離装置
CA2543193C (en) * 2003-10-27 2015-08-11 Wyeth Removal of high molecular weight aggregates using hydroxyapatite chromatography
MX2007011129A (es) * 2005-03-11 2007-11-06 Wyeth Corp Un metodo de cromatografia de particion debil.
JP2007238479A (ja) * 2006-03-07 2007-09-20 Denka Seiken Co Ltd ハイドロキシアパタイトに吸着された有機物の溶出方法及び該溶出方法を用いた有機物の精製方法
JP5624476B2 (ja) * 2008-01-18 2014-11-12 バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド アパタイトクロマトグラフィーによるリン酸化生体分子および非リン酸化生体分子の向上した精製法
US8951807B2 (en) * 2010-01-15 2015-02-10 Bio-Rad Laboratories, Inc. Surface neutralization of apatite
WO2018038243A1 (ja) * 2016-08-25 2018-03-01 Jcrファーマ株式会社 抗体融合蛋白質の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2019224660A1 (ja) 2019-11-28
JPWO2019224660A1 (ja) 2021-03-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Chase Affinity separations utilising immobilised monoclonal antibodies—a new tool for the biochemical engineer
JP5148484B2 (ja) クロマトグラフィーマトリックスの再生
US7834162B2 (en) Methods and systems for isolating target molecules from complex solutions by column-chromatography using eluants containing organic solvents
EP2524215B1 (en) Surface neutralization of apatite
US20110166332A1 (en) Enhanced antibody aggregate removal with capto adhere in the presence of protein-excluded zwitterions
JP2007136267A (ja) 吸着剤の製造方法、吸着剤および吸着装置
JP2006239660A (ja) 吸着剤、吸着装置および吸着装置の製造方法
JP6951051B2 (ja) 吸着剤の生産方法
JP6892563B1 (ja) 帯電物質の精製方法
US20070215548A1 (en) Systems and methods for packing chromatography columns
WO2021186750A1 (ja) 処理方法、生産方法およびハイドロキシアパタイト充填剤
JP3723806B2 (ja) 吸着装置および吸着装置の製造方法
JP3216436B2 (ja) 塩基性タンパク質吸着剤
JP6141256B2 (ja) フッ素アパタイト、吸着装置および分離方法
JP6736738B2 (ja) 分離方法
JP2013234154A (ja) 精製方法
JPH07103151B2 (ja) アフィニティクロマトグラフィーによる抗体の精製方法
JP6588784B2 (ja) 分離方法
JP3178261B2 (ja) 酸性タンパク質吸着剤
JP2013227254A (ja) 精製方法
JP2009025154A (ja) ヘムタンパク質分離法およびヘムタンパク質吸着剤

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201005

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201005

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20201005

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20210224

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210323

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210402

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210803

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210804

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210921

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210923

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6951051

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150