以下、図面を参照して本発明の一実施形態における情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム及び記録媒体について詳細に説明する。
先ず、図1を用いて、情報処理装置を用いるプラントの概要を説明する。図1は、実施形態の情報処理装置を用いるプラントの構成例を示す図である。図1において、プラント100は、情報処理装置1、基幹業務システム2、製造実行システム3、運転制御装置4、操作盤5、保全機器6、フィールドオペレータ端末7、プラント機器P0を有する。プラント機器P0は、反応器P1、センサS1を有する。プラント機器P0は、所定の生成物(生産物)を生成する。図1においては、プラントにおいて複数設置されるセンサの一例としてセンサS1を保全作業の対象とする場合を例示する。
反応器P1は、例えば投入された材料を化学反応させて生成物を生成させる装置である。センサS1は、反応器P1の運転状態を示す測定データを測定する。反応器P1の運転状態を示す測定データとは、例えば、反応器P1内部における圧力、温度、pH、生成物の流量等の物理量のデータである。センサS1は、パラメータ1、パラメータ2及びパラメータ3の3種類の測定値を運転制御装置4に入力する。
センサS1は使用状況によって経年的に劣化し又は故障する。プラントを保全する保全作業者は、センサS1の測定値等の状態を定期的又は不定期にチェックして、必要に応じてセンサS1の保全作業を実施する。本実施形態においてセンサS1に実施する保全作業は、センサの清掃、センサのゼロ点調整、及びセンサの交換の3種類であるものとして説明する。
例えば、センサの検知部(測定素子)に汚れが付着した場合、センサS1が出力するパラメータ1からパラメータ3の測定値に異常が生じる場合がある。保全作業者は、センサS1の洗浄の保全作業を行った結果測定値が正常に戻った場合、測定値の異常が検知部に汚れが付着していたことが原因であることを確認することができる。
また、センサS1は経年変化によってゼロ点(スパンを含む)がずれて測定値に異常が生じる場合がある。保全作業者は、ゼロ点調整の保全作業を実施して、測定値が正常に戻った場合、測定値の異常がゼロ点調整の不良が原因であることを確認することができる。
また、センサS1は、劣化等によって回復不能な故障状態となって測定値に異常が生じる場合がある。保全作業者は、センサを交換する保全作業を実施して、測定値が正常に戻った場合、測定値の異常は故障が原因であることを確認することができる。
センサS1の測定値の異常のこれらの原因は、作業者の経験によって推測されて、保全作業によって確認される。測定値の異常の原因の推測力は、保全作業者の経験レベルによって異なる。従って、例えばセンサS1の現在の測定値のみを測定しても異常の原因の特定が困難な場合がある。また、センサS1のようにパラメータ1〜パラメータ3のような複数の測定値を出力するセンサにおいては、異常の原因によってパラメータ毎の測定値に対する影響が異なる場合がある。複数の測定値(測定データ)を出力するセンサS1においては、測定値間の関係から異常の原因を判断するためには、保全作業者の高い経験レベルが要求される。保全作業者は、保全作業を実施して測定値が正常に戻ることにより異常の原因を確認して、その結果を記録する。例えば、保全機器6を使用して保全作業を行った場合には保全機器6に保全作業の履歴(実績)が記録される。すなわち、保全機器6には、保全作業の内容と、保全作業の実施前後における測定値の変化が記録される。また、保全作業者は、実施した保全内容を点検簿等に記入して記録する。すなわち、保全機器6や点検簿には、センサS1の故障判断におけるノウハウが記録される場合がある。
一方、センサS1が経年変化する前にセンサS1のゼロ点調整や交換が行われる場合がある。センサS1の異常によるプラントの操業への影響が大きい場合、まだ経年変化や劣化していないセンサを予め定められた期間毎に定期的に調整又は交換する予防的な保全が行われる。センサは使用状況等によって劣化の進行等が異なるため、保全作業を定期的に一律に実施した場合、保全作業がまた不要である正常なセンサに対しても保全作業が実施されることになる。
本実施形態においては、測定値に異常が発生する前に行われる予防的な保全と、異常が発生してから行われる事後的な保全が混在する場合を例示する。また、センサS1に対して実施される保全作業として、上述した、(1)ゼロ点調整、(2)センサ洗浄、及び(3)センサ交換の3つを例示して後述する。
情報処理装置1は、運転制御装置4を介してセンサS1で測定された、パラメータ1〜パラメータ3の測定データを時系列で取得する。情報処理装置1は、取得した測定データを教師データとして学習して判定モデルを生成し、生成した判定モデルを利用して、取得した測定データに基づきセンサS1の保全時期を判定する。情報処理装置1は、判定した判定結果を製造実行システム3、保全機器6、及びフィールドオペレータ端末7に出力するようにしてもよい。情報処理装置1の動作の詳細は後述する。
なお、保全作業を行う作業者は、プラントを操作するフィールドオペレータであってもよい。また、図1においてはプラント機器P0は、反応器P1、センサS1を有する場合を説明したが、プラント機器P0の機器構成はこれに限定されるものではない、例えば、プラント機器P0がタンク、バルブ、ポンプ、他のセンサ等の機器を有するものであってもよい。プラント機器P0が有するセンサS1、バルブ又はポンプ等を、以下「フィールド機器」という。また、図1で図示する各機器を接続する線は、有線又は無線の通信線を示している。有線通信又は無線通信は、図示しない通信機器及びネットワークを介して行われるようにしてもよい。
基幹業務システム2は、例えば、会計処理、生産管理、販売管理等の経営資源を管理するためのプロセス製造業向けERP(Enterprise Resource Planning:経営資源統合)システムである。基幹業務システム2は、プラントの運転状態の情報を経営資源の管理情報として利用してもよい。また、基幹業務システム2は、プラントの保全や修理の業務情報を管理する保全管理システム等を含んでいてもよい。基幹業務システム2は、例えば、サーバ装置、デスクトップ型PC等の汎用コンピュータである。
製造実行システム3は、例えば、基幹業務システム2と運転制御装置4との間に位置するMES(Manufacturing Execution System)であり、運転制御装置4が取得したプラント機器P0の動作状態や作業者の作業状況等を監視し、又は管理する。製造実行システム3は、例えば、サーバ装置、デスクトップ型PC等の汎用コンピュータである。製造実行システムには、PIMS(Plant Information Management System:プラント情報管理システム)、又はCMMS(Computerised Maintenance Management System:プラント保全管理システム)等の機能を有しているものとする。
PIMSは、運転制御装置4から、センサS1の測定データ等のプラントの状態情報を収集して記録する。PIMSは、センサS1の測定データを時系列で収集してヒストリーデータ(履歴データ)として記録する。本実施形態では、PIMSは情報処理装置1に対して測定データの履歴データを提供する。情報処理装置1は、後述する機械学習において判定したセンサS1の保全予測時期をPIMSに対して提供する。
CMMSは、プラント機器P0の保全履歴を記録し、保全計画を管理する。CMMSは、例えば、保全機器6で実施されて記録されたフィールド機器に対する保全操作の操作履歴を、複数の保全機器6から取得して保全情報として記録する。また、CMMSは、フィールドオペレータによって実施された保全作業を手動で入力可能として保全情報として記録してもよい。CMMSは、情報処理装置1に対して記録したセンサS1の保全情報の履歴を提供する。保全情報の詳細は後述する。
運転制御装置4は、センサS1から取得した測定データに基づき、図示しないポンプやバルブを制御して、反応器P1における生成物の生成を制御する。また、運転制御装置4は、センサS1から取得した測定データを情報処理装置1に対して提供する。運転制御装置4は、情報処理装置1において判定されたセンサS1の測定値の判定結果を取得して、判定結果に基づいてプラント機器P0を制御してもよい。運転制御装置4は、例えば、FA(Factory Automation)コンピュータ、PLC(Programmable Logic Controller)等の装置である。
操作盤5は、プラントのフィールドオペレータがフィールド機器の動作状態を監視し、フィールド機器を操作するための装置である。操作盤5は、例えば、ランプ、ディスプレイ等の表示機器、又は押しボタンスイッチ、キーボード等の操作機器を有する。本実施形態において操作盤5は、情報処理装置1において判定されたセンサS1の測定値の判定結果を取得して、判定結果をフィールドオペレータに対して報知してもよい。
保全機器6は、フィールドオペレータがフィールド機器の保全を行うための機器である。フィールド機器の保全とは、例えば、フィールド機器に設定された機器情報を読み出して確認する処理、フィールド機器に対して新たな機器情報(パラメータ)を設定する処理、フィールド機器に設定された機器情報を調整又は変更する処理、ならびにフィールド機器に機器情報を設定して所定の動作を実行させる処理等である。保全機器6は、保全機器6において実行されたフィールド機器に対する保全を機器操作履歴として記録する。保全機器6は、情報処理装置1に対して記録した機器操作履歴の情報を提供する。保全機器6は、情報処理装置1において判定されたセンサS1の測定値の判定結果に基づく保全計画を取得して、取得した保全計画に基づきフィールドオペレータに対してセンサS1の保全作業を指示してもよい。保全機器6は、ノート型又はタブレット型のコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、又はスマートフォン等である。
フィールドオペレータ端末7は、フィールドオペレータが所持する端末装置である。フィールドオペレータ端末7は、情報処理装置1において判定されたセンサS1の測定値の判定結果を取得して、判定結果に基づきフィールドオペレータに対してセンサS1の保全作業を指示してもよい。フィールドオペレータ端末7は、ノート型又はタブレット型のコンピュータ、PDA、又はスマートフォン等である。
情報処理装置1は、製造実行システム3、運転制御装置4、操作盤5、保全機器6及びフィールドオペレータ端末7と通信して、センサS1の保全に係る機械学習に必要な情報を入力情報として取得して、機械学習の判定結果に基づく情報を出力情報として運転制御装置4等に提供する。
次に、図2を用いて、情報処理装置1が取得する入力情報と情報処理装置1が提供する出力情報を説明する。図2は、実施形態の情報処理装置の入力情報と出力情報の一例を示す図である。
<入力情報>
図2において、情報処理装置1は、入力情報としてPIMS3Aから、センサS1の測定データの履歴(測定データ履歴)を取得する。測定データ履歴は、センサS1のパラメータ1〜パラメータ3の測定値とその測定値が測定された測定日時を、測定日時に順に記憶したヒストリーデータである。測定データ履歴に含まれる測定日時が記録された測定データの一部は、後述する保全情報と対応付けられて機械学習の教師データとされる。すなわち、測定データ履歴には、教師データとなる測定データと教師データとしない測定データが含まれる。
また、情報処理装置1は、入力情報としてCMMS3Bから、センサS1の保全作業を記録した保全情報の履歴(保全履歴)を取得する。保全履歴は、センサS1に対して実施した保全作業の内容と、その実施日時の情報を含む。図1において説明したように、センサS1に対して実施される保全作業は、(1)ゼロ点調整、(2)センサ洗浄、及び(3)センサ交換の3つである。保全履歴には、これらの保全作業のいずれかの保全情報が含まれる。
また、情報処理装置1は、入力情報として運転制御装置4からセンサS1の測定データを取得する。運転制御装置4から取得するセンサS1の測定データは、例えば、略リアルタイムで取得されたデータである。運転制御装置4から取得された測定データは、機械学習の実行フェーズで判定の対象として用いられる。但し、運転制御装置4から取得された測定データを教師データとして用いてもよい。
また、情報処理装置1は、入力情報として保全機器6から機器操作履歴の保全情報を取得する。保全機器6の機器操作履歴は、CMMS3Bを介して取得されるが、情報処理装置1は、保全機器6から直接機器操作履歴を取得するようにしてもよい。
また、情報処理装置1は、保全作業者が記録した点検簿に記入された作業履歴を保全情報として取得する。例えば、情報処理装置1は、点検簿に記入された作業履歴の画像を図3で後述する入力装置16の一例であるスキャナ16Aを光学的に読取り、読み取った画像に対してOCR(Optical Character Recognition)処理して文字情報を電子データに変換して、保全情報を取得する。点検簿は所定の書式を有し、保全作業者は実施した保全作業を所定の書式に従って記入する。なお、点検簿から取得された保全情報と保全機器6から取得された保全情報はいずれか一方を使用するものであってもよい。
<出力情報>
情報処理装置1は、PIMS3Aに対して、機械学習の判定に基づき、センサS1の保全予測時期の情報を提供する。保全予測時期は、例えば、センサS1の測定値に異常が発生する時期、又は、センサS1に対する保全作業を次回に実施するべき時期等である。フィールドオペレータは、提供された保全予測時期の情報に基づき、センサS1の保全計画をすることが可能となる。
また、情報処理装置1は、運転制御装置4に対して、機械学習の判定結果を提供する。運転制御装置4は、提供された判定結果に基づき、プラントの運転を制御する。例えば、運転制御装置4は、判定結果がセンサ交換であった場合、プラントの運転を中止又は中断する制御を行う。
また、情報処理装置1は、保全機器6に対して、機械学習の判定結果に基づき、保全計画の情報を提供する。保全計画の情報は、例えば、センサS1の保全作業を含む実施すべき保全作業をToDoリストとした情報である。保全作業者は保全機器6を携行し、保全機器6に表示されたToDoリストを確認しながら保全作業を実施する。
また、情報処理装置1は、フィールドオペレータ端末7に対して、機械学習の判定結果を提供する。保全作業者はフィールドオペレータ端末7を携行し、フィールドオペレータ端末7に表示された、例えばセンサ交換等の判定結果に基づき保全作業を実施する。
また、情報処理装置1は、フィールドオペレータ端末7同様に、操作盤5に対して、機械学習の判定結果を提供する。保全作業者は、操作盤5に表示された、例えばセンサ交換等の判定結果に基づき保全作業を実施する。
なお、情報処理装置1が出力する判定結果と上述したいずれかの出力の内容を、以下、「保全計画」という。保全計画は保全作業者に報知する保全に関する情報を含むものであればよく、その内容は任意である。保全計画には、例えば判定結果のみを含むものであってもよい。
次に、図3を用いて、情報処理装置1のハードウェア構成を説明する。図3は、実施形態における情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3において、情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、HDD(Hard Disk Drive)14、表示装置15、入力装置16、通信I/F(Interface)17、通信I/F18及びこれらを接続するバス19を有する。
情報処理装置1は、例えば、サーバ装置、デスクトップ型PC等の汎用コンピュータ、FAコンピュータ、PLC等の装置、ノート型又はタブレット型のコンピュータ、PDA、又はスマートフォン等である。情報処理装置1のハードウェアは、単体装置として構成されてもよく、また、複数の装置の組合せで構成されるシステムであってもよい。また、情報処理装置1は、他の装置とハードウェアを共用するものであってもよい。
CPU11は、RAM12、ROM13又はHDD14に記憶されたプログラムを実行することにより、情報処理装置1の制御を行う。CPU11は、後述する情報処理装置1の動作を実現するための情報処理プログラムを実行する。情報処理プログラムは、例えば、情報処理プログラムを記録した記録媒体、又はネットワークを介した情報処理プログラムを提供するサーバ等から取得されて、HDD14にインストールされ、CPU11から読出し可能にRAM12に記憶される。
表示装置15は、表示機能を有する例えば液晶ディスプレイである。表示装置15は、ヘッドマウント型ディスプレイ、メガネ型ディスプレイ、腕時計型ディスプレイ等の種々の形態によって実現されてもよい。入力装置16は、入力機能を有する例えばキーボード又はマウスである。入力装置16は、音声情報を入力するマイク、画像情報を入力するカメラ又はスキャナ等であってもよい。本実施形態では、入力装置16としてスキャナ16Aを用いるものとする。なお、表示装置15と入力装置16は、タッチパネル等、表示機能と入力機能を有する装置によって実現されてもよい。
通信I/F17は、有線通信又は無線通信を介して、図1で説明した、製造実行システム3、運転制御装置4、保全機器6、フィールドオペレータ端末7等の他の装置との通信を制御する。通信I/F17は、接続された他の装置と、データ送受信、音声通話又はメール送受信等の通信制御を行う。通信I/F17は、例えば、無線LAN通信、有線LAN通信、赤外線通信、近距離無線通信等の汎用通信規格に対応した通信制御を行う。
通信I/F18は、有線通信又は無線通信を介して、運転制御装置4、操作盤5、保全機器6、図示しないフィールド機器等の他の装置との通信を制御する。通信I/F18は、例えば、ISA(International Society of Automation:国際計測制御学会)の無線通信規格であるISA100、HART(Highway Addressable Remote Transducer)(登録商標)、BRAIN(登録商標)、FOUNDATION Fieldbus、PROFIBUS等の工業計器専用の通信規格に対応した通信制御を行う。
次に、図4を用いて、情報処理装置1のソフトウェア構成を説明する。図4は、実施形態における情報処理装置1のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4において、情報処理装置1は、測定データ取得部101、保全情報取得部102、OCR処理部103、学習部104、判定モデル記憶部105、保全計画生成部106及び保全計画報知部107の各機能を有する。情報処理装置1の上記各機能は、情報処理装置1を制御する情報処理プログラムによって実現される機能モジュールである。情報処理プログラムは、プログラムを提供するサーバから提供され、又は記録媒体から提供されてもよい。
測定データ取得部101は、運転制御装置4からセンサS1の測定データを取得する。また、測定データ取得部101は、PIMS3AからセンサS1の測定データ履歴を取得する。運転制御装置4から取得される測定データは、センサS1から略リアルタイムで取得される。略リアルタイムで取得されるとは、センサS1で測定された後直ちに取得される場合、又は所定の遅延時間後に取得される場合である。略リアルタイムには、数秒間等の短時間の周期毎に測定データを取得する場合を含む。一方、PIMS3Aから取得される測定データ履歴は、例えば1時間、1日、1週間等、所定の期間記録された複数の測定データの履歴である。測定データ履歴は、後述する学習フェーズで利用される。一方、測定データは、実行フェーズ(又は学習フェーズ)で利用される。
なお、測定データ取得部101は、プリプロセッサの機能を有するものであってもよい。プリプロセッサは、取得された測定データの中から教師データを選択及び調整して、生成される判定モデルの精度を高める。プリプロセッサは、例えば、外れ値除外処理とノーマライズ処理を行う。外れ値除外処理とは、取得された測定データの中で学習に適さない外れ値を除外する処理である。測定データが外れ値であるか否かは、例えば測定データを標本とした場合の標準偏差や所定の検定方法によって判断することができる。プリプロセッサは、例えば、プラントの立ち上げ時、立下げ時又は休止時等、異常な測定データが取得されることが見込まれるときの測定データを外れ値として除外するようにしてもよい。ノーマライズ処理とは、取得した測定データを分析して測定データの振幅を調整(正規化)する処理である。ノーマライズは、例えば測定データの振幅を取得された振幅の最大値に揃えることにより行う。
保全情報取得部102は、保全情報を取得する。保全情報は、保全作業の実績を記録した情報であり、保全作業の実施日時の情報を含む。保全情報取得部102は、CMMS3Bから、CMMS3Bが有する保全情報を取得する。また、保全情報取得部102は、保全機器6から機器操作履歴の保全情報を取得する。OCR処理部103は、スキャナ16Aにおいて光学的に読込まれた点検簿の作業履歴の画像情報を文字情報に変換する。保全情報取得部102は、文字情報に変換された作業履歴の保全情報を取得する。保全情報取得部102は、これらの保全情報のいずれかを取得するものでもよく、また、これらの保全情報の中から複数の保全情報を取得するものであってもよい。
学習部104は、測定データ取得部101において取得された測定データに対して、保全情報取得部102において取得された保全情報をラベル情報として対応付けた教師データを機械学習して判定モデルを生成する。
学習部104は、機械学習の手法として、例えば、SVM(Support Vector Machine)等の非線形分類手法を用いることができる。SVMは、測定データを入力データとして、測定データをクラスタリングするための判定線(判定モデル)を生成して、生成した判定モデルを用いて測定データのクラスを判定する。判定線とは、測定データをクラスタリングするための境界線である。判定線は測定データを教師データとして学習することによって生成される。
学習部104は、分類するクラスがnクラス(マルチクラス)であるマルチクラスSVM(MMSVM)の手法を用いる。MMSVMにおいては、nクラスに対して「nC2」個のSVMが用意される。クラスは対応付けられるラベルによって分類される。ラベルとは、入力された入力データをクラスタリングするためのフラグである。教師データを用いた機械学習においては、入力データの中から教師データとして学習させるデータに対してラベルを対応付けて、ラベル付きの教師データを学習させる。学習部104は、教師データを学習して、入力データをどのラベルにクラスタリングするかを判定するための判定モデルを生成する。本実施形態において学習部104は、測定データに対して、予め用意された、(1)ゼロ点調整要、(2)センサ洗浄要、(3)センサ交換要、及び(0)問題なしの4つのラベルの中からいずれかのラベルが対応付けられた教師データを学習する。
なお、学習部104で用いられる機械学習の手法は、SVMに限定されるものではなく、例えば、Deep Learning等のニューラルネットワークの手法を用いるものであってもよい。
判定モデル記憶部105は、学習部104において生成された判定モデルを、例えば、図3のROM13又はHDD14に読出し可能に記憶する。判定モデル記憶部105は、センサS1に対して複数の判定モデルを記憶してもよい。
保全計画生成部106は、機械学習の実行フェーズにおいて判定モデル記憶部105に記憶された判定モデルを読み出し、読み出した判定モデルを用いて、測定データ取得部101で取得された測定データを判定する。判定結果は、測定データが上記4つのラベルのいずれかに対応付けられるか(クラスタリングされるか)である。保全計画生成部106は、判定結果に基づき、センサS1の保全計画を生成する。
例えば、判定結果は、(0)問題なし、(1)ゼロ点調整要、(2)センサ洗浄要及び(3)センサ交換要の4種類である。判定結果が(0)問題なしの場合、保全計画生成部106は、保全計画を生成しない又は保全不要の保全計画を生成する。判定結果が(1)ゼロ点調整要の場合、保全計画生成部106は、ゼロ点調整の保全計画を生成する。判定結果が(2)センサ洗浄要の場合、保全計画生成部106は、センサ洗浄の保全計画を生成する。また、判定結果が(3)センサ交換要の場合、保全計画生成部106は、センサ交換の保全計画を生成する。
なお、保全計画生成部106が生成する保全計画には、例えば保全が必要となる保全予測時期(予測日時)を含む。保全予測時期は、例えば、測定データと判定モデルの判定線との距離の経時的変化から算出することができる。また、保全計画には、例えば、センサS1の保全作業を含む実施すべき保全作業をToDoリストとした情報を含んでいてもよい。ToDoリストは、例えば、CMMS3Bから取得したToDoリストの情報に対して判定結果に基づくセンサS1の保全項目を追加することで生成することができる。また、保全計画生成部106が生成する保全計画には、劣化レベル、緊急度等の情報を含んでいてもよい。劣化レベルは、例えば、判定モデルにおけるクラスタリングに用いる判定線との距離から算出することができる。また、緊急度は測定データを取得したセンサのプラントにおける予め定められた重要度等によって決定することができる。重要度は、例えば、プラントの安全性、プラントで生成される製品の品質への影響の大きさ等において定めてもよい。
保全計画報知部107は、保全計画生成部106において生成された保全計画を、PIMS3A、運転制御装置4、操作盤5、保全機器6、フィールドオペレータ端末7、表示装置15等に対して提供することにより、保全作業者に対して保全計画を報知する。
保全計画報知部107は、例えば、PIMS3Aに対して、保全計画として、判定結果(ラベル)とセンサS1の保全予測時期の情報を提供する。保全作業者は、PIMS3Aに提供された保全予測時期の情報の報知に基づき、センサS1を保全する計画を立案することができる。
また、保全計画報知部107は、例えば、運転制御装置4に対して、保全計画として、判定結果のみを提供する。運転制御装置4は、提供された判定結果に基づき、プラントの運転を制御する。
また、保全計画報知部107は、例えば、保全機器6に対して、保全計画として、判定結果とセンサS1の保全作業を含むToDoリストを提供する。保全作業者は、保全機器6に提供されたToDoリストを確認しながら保全作業を実施することができる。
また、保全計画報知部107は、例えば、操作盤5又はフィールドオペレータ端末7に対して、保全計画として、判定結果のみを提供する。保全作業者は、操作盤5又はフィールドオペレータ端末7に提供された判定結果に基づきセンサS1の保全作業を実施することができる。
なお、図4における情報処理装置1の、測定データ取得部101、保全情報取得部102、OCR処理部103、学習部104、判定モデル記憶部105、保全計画生成部106及び保全計画報知部107の各機能は、ソフトウェアによって実現される場合を説明した。しかし、上記各機能の中の1つ以上の機能は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。また、上記各機能は、1つの機能を複数の機能に分割して実施してもよい。また、上記各機能は、2つ以上の機能を1つの機能に集約して実施してもよい。
次に、図5を用いて情報処理装置1における学習フェーズの動作を説明する。図5は、実施形態の情報処理装置1における学習フェーズの動作の一例を示すフローチャートである。
学習フェーズは、測定データに基づき判定モデルを生成して登録するまでの処理である。図5に示すフローチャートの動作は、図4で説明した。情報処理装置1の各機能において実行されるものとする。従って、以下の処理の動作主体は情報処理装置1であるものとして説明する。
図5において、情報処理装置1は、測定データを取得したか否かを判断する(ステップS11)。測定データを取得したか否かの判断は、例えば、測定データ取得部101がセンサS1から測定データを取得したか否かで判断することができる。測定データは、例えばプラントの運転中において毎正時のように定期的に取得される。また、測定データは、不定期に実施される保全作業実施時に保全情報とともに取得される。例えば、PIMS3Aから取得される測定データ履歴又はCMMS3Bから保全履歴とともに取得される測定データには、これら定期的に取得された測定データと不定期に取得された測定データを含む。測定データを取得していないと判断した場合(ステップS11:NO)、情報処理装置1は、ステップS11の処理を繰り返して、測定データが取得されるのを待機する。
一方、測定データを取得したと判断した場合(ステップS11:YES)、情報処理装置1は、保全情報を取得する(ステップS12)。保全情報の取得は、例えば、保全情報取得部102が、CMMS3Bから取得してHDD14等に記憶した保全履歴の保全情報を読み出すことにより取得することができる。
ステップS12の処理を実行後、情報処理装置1は、OCR処理を実行する(ステップS13)。OCR処理は、例えば、OCR処理部103が、スキャナ16Aによって光学的に読取られた点検簿の保全記録の画像情報を文字情報に変換することにより実行される。OCR処理によって点検簿の保全記録を取得することにより、CMMS3B等から取得される保全履歴等の電子的な情報と、紙等に記録された保全記録の情報の一元化をすることができる。
ステップS13の処理を実行後、情報処理装置1は、教師データを生成する(ステップS14)。教師データの生成は、保全の実施状況に基づき、測定データに対して保全情報のラベル情報を対応付けて教師データとする。ここで、保全の実施状況とは、例えば、保全が実施されたか否か(保全の実施の有無)、又は保全が実施された時間等である。
<保全の実施の有無に基づく教師データの生成>
学習部104は、保全の実施の有無に基づき、測定データに対して保全情報のラベル情報を対応付けて教師データとすることができる。教師データは、測定データと測定データに対応付けられたラベルを含む。測定データに対応付けられるラベルは、(0)問題なし、(1)ゼロ点調整要、(2)センサ洗浄要及び(3)センサ交換要の4種類である。例えば、学習部104は、保全が実施されていないときに取得された測定データに対して、(0)問題なしのラベルを対応付けて教師データとする。一方、学習部104は、保全が実施されたときには実施された保全の内容に基づき、(1)ゼロ点調整要、(2)センサ洗浄要又は(3)センサ交換要のいずれかのラベルを対応付けて教師データとする。対応付けるラベルの種類や数は保全の内容に応じて任意に設定してもよい。
<保全が実施された時間に基づく教師データの生成>
学習部104は、保全が実施された時間に基づき、測定データに対して保全情報のラベル情報を対応付けて教師データとすることができる。測定データに対応付けられるラベルは、同様に、(0)問題なし、(1)ゼロ点調整要、(2)センサ洗浄要及び(3)センサ交換要の4種類である。学習部104は、保全が実施された時間と測定データが測定された時間とを対比して、保全が実施された時間と測定データが測定された時間が一致していない場合、(0)問題なしのラベルを対応付けて教師データとする。時間の一致とは、例えば測定データが測定された時刻が保全が実施された時間帯に含まれる場合、又は近接している場合等である。一方、学習部104は、保全が実施された時間と測定データが測定された時間が一致している場合、時間が一致している保全の内容に応じて(1)ゼロ点調整要、(2)センサ洗浄要又は(3)センサ交換要のいずれかのラベルを対応付けて教師データとする。
また、学習部104は、取得された測定データを教師データとするか否かを選択し、選択した教師データを学習するようにしてもよい。測定データの選択については図8を用いて後述する。
測定データとラベルの対応付けを保全の実施状況によって行うことにより、図2に示したように個別の装置等から取得される入力情報の対応付けを自動的に行うことが可能となる。但し、測定データとラベルの対応付けは、他の方法によって行われるものであってもよい。例えば、測定データとラベルの対応付けを手動で実施するようにしてもよい。また、測定データの保全場所と保全情報の保存場所(ファイルシステムにおけるフォルダ等)を一致させることにより対応付けを実施するようにしてもよい。
ステップS14の処理を実行後、情報処理装置1は、ステップS14において生成された学習データを機械学習する(ステップS15)。機械学習は、例えば学習部104がSVMの手法を用いて行う。学習部104は、ラベルが対応付けられた測定データを機械学習することにより、判定モデルを生成する(ステップS16)。判定モデルは、(0)問題なしの測定データを、(1)ゼロ点調整要、(2)センサ洗浄要又は(3)センサ交換要の測定データと分類する判定線を定めるものである。
ステップS16の処理を実行後、情報処理装置1は、生成した判定モデルを記憶する(ステップS17)。判定モデルの記憶は、例えば、判定モデル記憶部105が学習部104が生成した判定モデルをHDD14等に記憶することによって実行される。
ステップS17の処理を実行後、情報処理装置1は、図5に示すフローチャートにおける学習フェーズの動作を終了する。
次に、図6を用いて、情報処理装置1における実行フェーズの動作を説明する。図6は、実施形態の情報処理装置1における実行フェーズの動作の一例を示すフローチャートである。
実行フェーズは、図5で説明した学習フェーズにおいて生成された判定モデルに基づき、取得した測定データを判定する処理である。図6に示すフローチャートの動作においても、図5で説明した情報処理装置1の各機能において実行されるものとし、以下の処理の動作主体は情報処理装置1であるとする。
図6において、情報処理装置1は、測定データを取得したか否かを判断する(ステップS21)。測定データを取得したか否かの判断は、図5のステップS11処理と同様に行うことができる。測定データを取得していないと判断した場合(ステップS21:NO)、情報処理装置1は、ステップS21の処理を繰り返して、測定データが取得されるのを待機する。
一方、測定データを取得したと判断した場合(ステップS21:YES)、情報処理装置1は、判定処理を実行する(ステップS22)。判定処理は、ステップS21において取得した測定データが、学習フェーズで作成された判定モデルを適用したときにいずれの判定領域に含まれるかを判定する処理である。判定処理は、複数のラベルで判定される判定領域が複数ある場合、いずれの領域に含まれるかの判定を行う。判定処理は、例えば、保全計画生成部106が実行する。保全計画生成部106は、測定データが(0)問題なし、(1)ゼロ点調整要、(2)センサ洗浄要及び(3)センサ交換要の4つのラベルのいずれかに対応付けられるかを判定する。
ステップS22の処理を実行後、情報処理装置1は、判定結果に基づき、センサS1の保全計画を生成する(ステップS23)。保全計画の生成は、例えば保全計画生成部106が実行する。保全計画生成部106は、(1)ゼロ点調整要、(2)センサ洗浄要及び(3)センサ交換要の判定結果に基づき、それぞれに対応した保全計画を生成する。なお、保全計画の内容は任意であり、例えば、判定結果が(0)問題なしの場合、判定結果の情報のみを含むものであってもよい。
ステップS23の処理を実行後、情報処理装置1は、ステップS23の処理で生成した保全計画を報知する(ステップS24)。保全計画の報知は、例えば、保全計画報知部107が実行する。保全計画報知部107は、保全計画生成部106で生成された保全計画を、PIMS3A、運転制御装置4、操作盤5、保全機器6、フィールドオペレータ端末7、表示装置15等に対して提供することにより、保全作業者に対して保全計画の内容を報知する。
なお、保全計画報知部107は、PIMS3A等の提供先に応じて保全計画の内容、データ形式等を変更するようにしてもよい。保全計画報知部107は、例えば、PIMS3A等に対しては、保全予測時期等の予防保全が可能な内容の情報を提供したり、操作盤5等に対しては、直ちに保全作業を実施することを促す内容の情報を提供する。保全計画報知部107は、保全計画の内容等を提供先に応じて変更することにより、保全作業の効率とプラントの可用性を向上させることが可能となる。
ステップS24の処理を実行後、情報処理装置1は、図6に示すフローチャートにおける実行フェーズの動作を終了する。
次に、図7を用いて、情報処理装置1が保全情報を取得する点検簿について説明する。図7は、実施形態の情報処理装置1が保全情報を取得する点検簿の一例を示す図である。
図7において、点検簿は、作業者が必要事項を記入するフォーマットを有している。点検簿は、作業履歴として、通し番号、実施日時、担当者、実施場所、点検対象、点検項目の事項を有している。実施日時は測定データを教師データにするために、保全作業開始直前の日時を記入する。点検項目は、該当する箇所に保全作業者がチェックするチェックボックスを有する。本実施形態において測定データを教師データとするのはこの点検簿においては「センサ検知部が汚れている」に関するものであるため、この項目にチェックがある点検簿が情報処理装置1において取得される保全情報となる。備考欄には、保全作業者が手書きで任意な内容を記入する。
点検簿は、保全作業者が保全機器6等を用いて保全作業を実施する毎に作成される。点検簿は、保全機器6によって自動的に作成される電子的な点検簿であっても、保全作業者が手書きで作成する紙面を用いたものであってもよい。作成された点検簿は、スキャナ16Aによって光学的に読取られ、OCR処理部で文字情報に変換される。ここで、点検項目の「センサ検知部が汚れている」にチェックがあるか否かが判別されて、チェックがある点検簿の作業履歴が保全情報として情報処理装置1に取得される。その際に備考欄に手書きされた内容も文字情報に変換されて取得される。
なお、図7では保全作業者が保全作業毎に1枚の点検簿を作成する場合を示したが、点検簿は、例えば複数の保全項目がリスト化されたものであってもよい。また、点検簿は、タッチパネル等から直接文字等を入力するものであってもよい。また、点検簿には、フィールド機器等を撮影した画像、保全作業実施時の録音データ、又は測定器等から出力される印字紙等の付随的な情報を含んでいてもよい。付随的な情報は、例えば通し番号で管理され、情報処理装置1が取得してもよい。
次に、図8を用いて、情報処理装置1が取得した保全情報に基づき生成される教師データを説明する。図8は、実施形態の情報処理装置1が生成する教師データの一例を示す図である。教師データは、例えばCMMS3Bから取得された保全履歴に基づき、図5のステップS14において生成される。
図8において、教師データは、測定日時、パラメータ1〜パラメータ3の測定値、保全内容、教師データ選択、ラベル(判定値)及び備考の項目を有する。測定日時、パラメータ1〜パラメータ3の測定値及び保全内容は、例えばCMMS3Bから取得された保全履歴に基づく測定データである。教師データ選択は、取得した測定データの中で教師データとするか否かを選択するものである。教師データ選択にチェックがある測定データが教師データとして選択されている。教師データの選択は、学習部104において自動的に行うことができ、また手動で修正が可能であるものとする。ラベルは測定データに対応付けるラベルである。備考はそれぞれの測定データに任意に付加される情報である。
例えば、1行目の測定日時が「2016/10/10 08:00:00」の測定データは、毎正時に取得された測定データであって、測定値が保全作業の必要でない正常な状態であったとする。この測定データは学習部104によって(0)問題なしのラベルが対応付けられて、教師データとして選択されている。このデータのように測定値が正常であって定期的に取得される測定データは自動的に教師データとして選択してもよい。同様に、2行目及び3行目の測定データについても(0)問題なしのラベルが対応付けられて教師データとして選択されている。
4行目の「2016/10/10 11:03:00」の測定データは、定期調整によってゼロ点調整が行われたことを示している。保全作業においては、予防保全の観点から異常の有無に拘わらず保全作業を実施する場合がある。この場合、測定データの測定値は正常である場合もあるため、この測定データを教師データとしてゼロ点調整のラベルを対応付けると、ゼロ点調整の判定精度が低下してしまう。このように、定期調整で保全作業を実施した場合、学習部104は測定データを教師データに選択しないようにする。
一方、「2016/10/11 13:25:00」の測定データは、測定値(パラメータ)に異常が発見されてゼロ点調整が行われたことを示している。パラメータ異常は、例えば測定値が所定の閾値を越えたか否かで判断することができる。保全内容のゼロ点調整は、ゼロ点調整によってパラメータ異常が解消されたことを示す。すなわち、パラメータ異常の原因がゼロ点のずれであったことを示している。この場合、測定データ及びこの測定データの測定日時の所定時間前までの測定データに対して、手動で又は学習部104による自動で、(1)ゼロ点調整要のラベル対応付けて教師データとして学習させる。この測定データの測定日時の所定時間前までの測定データについてもゼロ点調整要の特徴を有する可能性が高いからである。なお、教師データとして選択する測定データの範囲(測定日時の所定時間前まで)は、生成される判定モデルの精度を検証することによって増減させてもよい。
「2016/10/13 15:45:20」の測定データは、保全作業によってセンサ検知部の汚れが確認されて、センサ洗浄の保全作業が実施されたことを示している。この場合においても、測定データ及びこの測定データの測定日時の所定時間前までの測定データに対して手動で又は学習部104による自動で、(2)センサ洗浄要のラベル対応付けて教師データとして学習させる。この測定データの測定日時の所定時間前までの測定データについてもセンサ洗浄要の特徴を有する可能性が高いからである。
「2016/10/25 11:03:45」の測定データは、パラメータ異常によって、センサ交換の保全作業が実施されたことを示している。この場合においても、測定データ及びこの測定データの測定日時の所定時間前までの測定データに対して手動で又は学習部104による自動で、(3)センサ交換要のラベル対応付けて教師データとして学習させる。この測定データの測定日時の所定時間前までの測定データについてもセンサ交換要の特徴を有する可能性が高いからである。
本実施形態においては、センサS1は、パラメータ1〜パラメータ3の3種類の測定値をそれぞれ教師データとして学習させる。上述のように、センサS1の異常の原因によってそれぞれの測定値に対して与える影響が異なるため、パラメータ1〜パラメータ3の測定値をそれぞれ教師データとすることにより、センサS1の異常の原因の判定の精度を向上させることが可能となる。
なお、図8において説明した教師データの選択方法は任意である。例えば、ラベルの対応付を自動で行うか手動で行うかは変更ができるようにしてもよい。また、教師データとして選択するか否かについて所定のアルゴリズムで決定するようにしてもよい。
次に、図9を用いて、情報処理装置1における測定データに対するラベルの対応付けを説明する。図9は、実施形態の情報処理装置における測定データに対するラベルの対応付けの一例を示す図である。
図9は、ガラス電極、比較電極及び温度の3つのパラメータを有するpHセンサの測定値の時間的な推移を示している。横軸に示す測定日時は、2016/1/30〜2016/2/9である。
日時T2においてパラメータ異常が検知されて日時T3においてセンサ交換の保全作業が実施された場合、日時T2から所定時間前の日時T1から日時T3の間の測定データに対して(3)センサ交換要のラベルを対応付けて教師データとする。日時T1は、例えば図9に示す測定値の推移を確認しながら手動で前後させることができる。測定値を確認しながら教師データの範囲を選択することにより、判定モデルの精度を向上させることが可能となる。
以上説明した様に、本実施形態の情報処理装置は、センサの測定データを取得する測定データ取得部と、作業者によって実施された前記センサの保全に係る保全情報を取得する保全情報取得部と、取得された前記測定データに対して、取得された前記保全情報をラベル情報として対応付けた教師データを学習して判定モデルを生成する学習部と、生成された前記判定モデルを記憶する判定モデル記憶部とを備えることにより、センサの保全時期を正しく判断して保全コストの低減を図ることができる。
なお、上述した情報処理装置1は、上述した機能を有する装置であればよく、例えば、複数の装置の組合せで構成されてそれぞれの装置を通信可能に接続したシステムで実現されるものであってもよい。また、情報処理装置1は、図1で説明した、製造実行システム3、運転制御装置4、保全機器6等の機能の一部として実現されるものであってもよい。
また、本実施形態の情報処理方法は、センサの測定データを取得する測定データ取得ステップと、作業者によって実施された前記センサの保全に係る保全情報を取得する保全情報取得ステップと、取得された前記測定データに対して、取得された前記保全情報をラベル情報として対応付けた教師データを学習して判定モデルを生成する学習ステップと、生成された前記判定モデルを記憶する判定モデル記憶ステップとを含むことにより、センサの保全時期を正しく判断して保全コストの低減を図ることができる。
なお、本実施形態の情報処理方法における各ステップの実行順序は上記ステップの記載順序に限定されるものではなく、任意の順序で実行されるものであってもよい。
また、本実施形態で説明した装置を構成する機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本実施形態の上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。