JP6949321B2 - 経皮吸収促進剤 - Google Patents

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Description

本発明は、薬物の経皮吸収を促進させる経皮吸収促進剤に関する。より具体的には、本発明は、皮膚の表皮における顆粒層に対する薬物の透過性を高めることにより、薬物の経皮吸収を促進させる経皮吸収促進剤に関する。更に、本発明は、当該経皮吸収促進剤を利用した経皮吸収製剤に関する。
薬物の経皮投与は、消化酵素による分解の回避、初回通過効果の回避、投与簡便性、非侵襲性、低刺激性、投与の開始及び中断の容易性等の利点があり、皮膚及びその近傍部位での局所濃度を高めることや、全身循環系に薬物をデリバリーするシステムとして注目されている。
皮膚の表皮は、表面側から角層、顆粒層、有棘層及び基底層から構成され、異物の侵入や体の水分の蒸散を防ぐバリア機能を担っている。この表皮のバリア機能は、薬物の経皮吸収を抑制するため、単に薬物を皮膚に塗布、又は貼付しても、薬効を生じるのに十分な量の薬物を体内に送達させることが困難である。特に、バイオ医薬に使用されている親水性の薬物や高分子量の薬物は経皮吸収され難く、従来、疎水性の薬物や分子量が500Da以下の低分子薬物しか経皮投与に適用できないと考えられている。
皮膚の表皮のバリア機能は、主に角層及び顆粒層が担っていることが分かっており、従来、角層の透過性に着目して薬物の経皮吸収を促進させる製剤技術について種々検討されている。例えば、特許文献1には、特定の脂質ペプチド型化合物と、炭素原子数8乃至20の脂肪酸のエステル、スクワラン、オリーブ油、プロピレングリコールジカプリレート及び/又は流動パラフィンと、水とを含有する経皮吸収基材が、親水性薬物であっても皮膚への浸透性を向上できることが報告されている。また、特許文献2には、特定のポリオキシアルキレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体アルキルエーテル誘導体には、親水性薬剤の経皮吸収を促進する作用があることが報告されている。しかしながら、前述したように、表皮のバリア機能は、角層だけでなく顆粒層も担っており、特許文献1及び2のように、薬物の角層の浸透性を向上させる製剤技術では、薬物の経皮吸収性を十分に向上させることができない。特に、親水性の薬物や分子量が500Da以上の薬物は、経皮吸収され難いため、経皮投与を実現するには、角層及び顆粒層の双方における透過性を向上させることが不可欠といえる。
一方、顆粒層には、タイトジャンクション(TJ、Tight Junction)と呼ばれる細胞間接着構造体が形成されており、隣り合った細胞同士を密着させて隙間を塞ぐと共に連続的に細胞を繋ぎ止めて、薬物の透過性を低下させる要因になっている。従来、クローディン1が顆粒層におけるタイトジャンクションを形成している接着分子の一つであることが同定されており、クローディン1をノックアウトしたマウスでは顆粒層のタイトジャンクションによる皮膚バリア機能が破綻すること(非特許文献1)が報告されている。また、抗クローディン1抗体の投与(非特許文献2)やクローディン1のノックダウン(非特許文献3)によって経皮吸収性が向上することも報告されている。更には、クローディン4、オクルジン、及びZO−1もヒトケラチノサイトでのタイトジャンクションにおけるバリア機能に関与することが報告されており(非特許文献3)、複数のタイトジャンクション構成分子により顆粒層におけるタイトジャンクションが形成されると考えられている。しかしながら、抗クローディン1抗体以外で、顆粒層における薬物の透過性を向上させる技術については十分な検討がなされていない。
このように薬物の経皮吸収性を向上させるには、角層のみならず顆粒層における薬物の透過性を高めることが必要であるが、従来検討されている薬物の経皮吸収を促進させる製剤技術は、薬物の各層の浸透性に着目しているのが殆どであり、顆粒層における薬物の透過性を高める製剤技術については十分な検討がなされていないのが現状である。
また、タイトジャンクションは、皮膚の表皮の他に、消化管の上皮組織にも形成されている。しかしながら、表皮と消化管の上皮組織では、タイトジャンクションを構成する接着分子の種類や発現量が異なり、更にタイトジャンクションの構造自体も相違することが報告されており(非特許文献4)、消化管の上皮組織における薬物吸収性の向上技術を、皮膚の表皮における薬物吸収にそのまま適用できるものではない。
特開2015−51961号公報 国際公開第2007/136067号
Mikio Furuse et al., The Journal of Cell Biology, Volume 156, Number 6, March 18, 2002 1099-1111 Nakajima M et al., JPET, 354(3) 2015 440-447 Kirschneret et al., J Invest Dermatol., 133(5) 2013 1161-1169 Brandner JM and Schulzke JD, Cell Tissue Res., 360(3) 2015 723-748.
本発明の目的は、皮膚の表皮における顆粒層に対する薬物の透過性を高め、薬物の経皮吸収を促進できる経皮吸収促進剤を提供することである。また、本発明の他の目的は、当該経皮吸収促進剤を利用した経皮吸収製剤を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、セファロタキシン及び/又はその誘導体には、皮膚の表皮における顆粒層のタイトジャンクションによるバリア機能を減弱させる作用があり、薬物の顆粒層の透過性を向上させる作用があることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. セファロタキシン及び/又はその誘導体を有効成分とする、経皮吸収促進剤。
項2. 前記有効成分が、下記一般式(1)に示す化合物である、項1に記載の経皮吸収促進剤。
Figure 0006949321
[一般式(1)中、Xは水素原子又は水酸基を示し、R1は炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、R2は、一般式(2)〜(5)に示す基、又は水酸基を示す。]
Figure 0006949321
項3. 前記有効成分が、ホモハリントニン、イソハリントニン、ハリントニン、アセチルファロタキシン、セファロタキシン、及び4−ヒドロキシセファロタキシンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の経皮吸収促進剤。
項4. 親水性の薬物、及び/又は分子量500Da以上の薬物の経皮吸収の促進のために使用される、項1〜3のいずれかに記載の経皮吸収促進剤。
項5. ペプチド、タンパク質、及び/又は核酸の経皮吸収の促進のために使用される、項1〜4のいずれかに記載の経皮吸収促進剤。
項6. 皮膚表皮の顆粒層における薬物の透過性を向上させるために使用される、項1〜5のいずれかに記載の経皮吸収促進剤。
項7. 項1〜6のいずれかに記載の経皮吸収促進剤、及び薬物を含有する、経皮吸収製剤。
項8. 前記薬物が、親水性の薬物、及び/又は分子量500Da以上の薬物である、項7に記載の経皮吸収製剤。
項9. 前記薬物が、ペプチド、タンパク質、及び/又は核酸である、項7又は8に記載の経皮吸収製剤。
本発明の経皮吸収促進剤によれば、皮膚の表皮における顆粒層に対する薬物の透過性を高め、薬物の経皮吸収性を向上させることができる。特に、本発明の経皮吸収促進剤は、親水性の薬物や高分子量(500Da以上)の薬物であっても、顆粒層に対する薬物の透過性を向上させることができるので、従来技術では経皮吸収が困難であった親水性の低分子薬のみならず、タンパク質や核酸等のバイオ医薬に対しても経皮吸収させることが可能になるので、バイオ医薬の投与において、初回通過効果の回避、投与簡便性、非侵襲性、低刺激性、投与の開始及び中断の容易性等を実現することができる。
試験例1において、タイトジャンクションバリアを形成したNHEK細胞に対してホモハリントニンを添加して培養し、膜電気抵抗(TER)値を測定した結果を示す図である。 試験例1において、タイトジャンクションバリアを形成したNHEK細胞に対してホモハリントニンを添加して培養した後に、FITC標識デキストランの透過性を評価した結果を示す図である。 試験例2において、タイトジャンクションバリアを形成したNHEK細胞に対してホモハリントニンを添加して培養した後に、クローディン-1、クローディン-4、オクルジン、ZO-1、E-カドヘリン、及びβ-アクチンの発現量を測定した結果を示す図である。 試験例3において、1 mMのホモハリントニンと分子量4,000のFITC標識デキストランを併用してマウスに経皮投与し、血漿中のFITC標識デキストラン濃度を経時的に測定した結果を示す図である。 試験例3において、1 mMのホモハリントニンと分子量4,000のFITC標識デキストランを併用してマウスに経皮投与し、FITC標識デキストランのAUCを求めた結果を示す図である。 試験例3において、各濃度のホモハリントニンと分子量4,000のFITC標識デキストランを併用してマウスに経皮投与し、投与24時間後の皮膚状態を観察した結果を示す図である。 試験例3において、1 mMのホモハリントニンと各分子量のFITC標識デキストランを併用してマウスに経皮投与し、各FITC標識デキストランのAUCを求めた結果を示す図である。 試験例4において、ホモハリントニンとα−トコフェロール結合ヘテロ核酸(Toc-HDO)を併用してマウスに経皮投与し、肝移行したToc-HDOを蛍光観察した結果を示す図である。
1.経皮吸収促進剤
本発明の経皮吸収促進剤は、セファロタキシン及び/又はその誘導体を有効成分とすることを特徴とする。以下、本発明の経皮吸収促進剤について詳述する。
[有効成分]
本発明の経皮吸収促進剤において有効成分として使用される化合物は、セファロタキシン及び/又はその誘導体である。セファロタキシン及びその誘導体としては、具体的には、以下の一般式(1)に示す化合物が挙げられる。
Figure 0006949321
一般式1において、Xは水素原子又は水酸基を示す。Xとして、好ましくは水素原子が挙げられる。
一般式1において、R1は、炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。炭素数1〜5のアルコキシ基として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。R1として、好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、更に好ましくは炭素数1又は2のアルコキシ基、特に好ましくはメトキシ基が挙げられる。
一般式1において、R2は、一般式(2)〜(5)に示す基、又は水酸基が挙げられる。R2として、好ましくは一般式(2)〜(5)に示す基、更に好ましくは一般式(2)〜(4)に示す基、更に好ましくは一般式(2)に示す基が挙げられる。
Figure 0006949321
本発明の経皮吸収促進剤において使用されるセファロタキシン及びその誘導体として、具体的には、下記一般式(11)〜(16)に示される化合物が挙げられる。一般式(11)に示す化合物は、一般式(1)において、Xが水素原子、R1がメトキシ基、R2が一般式(2)に示す基であり、ホモハリントニンと称される化合物である。一般式(12)に示す化合物は、一般式(1)において、Xが水素原子、R1がメトキシ基、R2が一般式(3)に示す基であり、イソハリントニンと称される化合物である。一般式(13)に示す化合物は、一般式(1)において、Xが水素原子、R1がメトキシ基、R2が一般式(4)に示す基であり、ハリントニンと称される化合物である。一般式(14)に示す化合物は、一般式(1)において、Xが水素原子、R1がメトキシ基、R2が一般式(5)に示す基であり、アセチルファロタキシンと称される化合物である。一般式(15)に示す化合物は、一般式(1)において、Xが水素原子、R1がメトキシ基、R2が水酸基であり、セファロタキシンと称される化合物である。一般式(16)に示す化合物は、一般式(1)において、Xが水酸基、R1がメトキシ基、R2が水酸基であり、4−ヒドロキシセファロタキシンと称される化合物である。これらの一般式(11)〜(16)に示される化合物は、光学異性体であってもよい。
Figure 0006949321
一般式(11)〜(16)に示される化合物の中でも、薬物の顆粒層の透過性をより一層向上させるという観点から、好ましくは一般式(11)〜(14)に示す化合物、更に好ましくは一般式(11)〜(13)に示す化合物、特に好ましくは一般式(11)に示す化合物が挙げられる。
本発明の経皮吸収促進剤において使用されるセファロタキシン及びその誘導体の製造方法は公知であり、天然物から抽出して得られたもの、微生物培養によって得られたもの、化学合成法によって得られたもの等のいずれであってもよい。
本発明の経皮吸収促進剤では、セファロタキシン及びその誘導体の中から1種の化合物を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
[用途・使用方法]
本発明の経皮吸収促進剤は、皮膚の表皮における顆粒層のタイトジャンクションによるバリア機能を減弱させ、薬物の顆粒層の透過性を向上させる作用があり、経皮適用される薬物の経皮吸収促進の用途に使用される。具体的には、本発明の経皮吸収促進剤は、経皮吸収させる薬物と共に、経皮吸収製剤に配合して使用される。
本発明の経皮吸収促進剤の経皮吸収製剤における配合量については、使用する有効成分の構造、経皮吸収促進の対象となる薬物の種類、経皮吸収製剤の剤型等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%が挙げられる。
本発明の経皮吸収促進剤によって経皮吸収を促進させる薬物の種類については、特に制限されないが、皮膚及びその近傍部位において局所的に作用する薬物、或は全身循環系へのデリバリーが求められるものであることが好ましい。
また、本発明の経皮吸収促進剤によって経皮吸収を促進させる薬物は、疎水性又は親水性のいずれであってもよいが、親水性であることが好ましい。親水性の薬物は、経皮吸収され難いという欠点があるが、本発明の経皮吸収促進剤によれば、かかる欠点を克服し、効果的に親水性の薬物を経皮吸収させることができる。なお、本明細書において、「親水性の薬物」とは、100gの水(20℃)に1g以上溶解するもの、好ましくは30gの水(20℃)に1g以上溶解するもの、更に好ましくは10gの水(20℃)に1g以上溶解するものが挙げられる。
また、本発明の経皮吸収促進剤によって経皮吸収を促進させる薬物の分子量については、特に制限されず、低分子量又は高分子量のいずれであってもよいが、高分子量であることが好ましい。高分子量の薬物は、経皮吸収され難いという欠点があるが、本発明の経皮吸収促進剤によれば、かかる欠点を克服し、効果的に高分子量の薬物を経皮吸収させることができる。高分子量の薬物としては、具体的には、分子量が500Da以上、好ましくは500〜30,000Da、更に好ましくは1,000〜25,000Da、より好ましくは4,000〜20,000Da、特に好ましくは4,000〜10,000Daの薬物が挙げられる。
特に、親水性且つ高分子量(500Da以上)の薬物は、従来技術では、経皮吸収性が極めて低いという特質があるが、本発明の経皮吸収促進剤によれば、このような薬物に対しても、効果的に経皮吸収させることが可能になる。このような本発明の効果に鑑みれば、経皮吸収を促進させる対象薬物の好適な例として、親水性且つ分子量が500Da以上の薬物が挙げられる。
親水性且つ分子量が500Da以下の薬物としては、例えば、アンピシリン、セフォタキシム、アレンドロン酸ナトリウム、等が挙げられる。
親水性且つ分子量が500Da以上の薬物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、核酸等が挙げられる。ペプチド又はタンパク質としては、具体的には、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)、性腺刺激ホルモン放出因子(GnRF)、甲状腺刺激ホルモン放出因子(TRF)、成長ホルモン放出因子(GRF)、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、成長ホルモン(GH、ソマトトロピン)、エンケファリン,bエンドルフィン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、バソプレッシン、オキシトシン、絨毛性性腺刺激ホルモン(CG)、グルカゴン、インシュリン、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン(CCK)、胃抑制ペプチド(GIP)、副甲状腺ホルモン、ソマトメジン等のペプチドホルモン;サイトカイン;抗体;Fab、scFv、VHH等の抗体フラグメント;diabody;トリプシン、塩化リゾチーム、キモトリプシン、セミアルカリプロテナーゼ、セラペプターゼ、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ等の酵素;siRNA(センス鎖とアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA)、DNA/RNA2本鎖ヘテロ核酸(標的mRNAに結合するアンチセンスgapmerとこれと相補的なcRNAを含む二本鎖核酸;Nature Communications, Volume 6, id. 7969 (2015)及び国際公開第2013/089283号)、shRNA、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、アンタゴミア、核酸アプタマー、リボザイム、DNAデコイ、プラスミド等の核酸等が挙げられる。
これらの薬物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の経皮吸収促進剤によって経皮吸収を促進させる薬物が核酸である場合、当該核酸は、脂溶性物質が結合している状態で使用してもよい。また、核酸に結合させた脂溶性物質は、経皮吸収された後に、血中やリンパ球中のリポタンパク質等のタンパク質と結合して、当該タンパク質が分布する臓器に送達されるので、核酸を選択的に送達することも期待できる。
脂溶性物質を結合させた核酸を薬物として使用する場合、当該脂溶性物質としては、疎水性を示す基を有し、薬学的に許容されることを限度として特に制限されず、核酸を送達させるべき部位に応じて適宜選定すればよいが、例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK等の脂溶性ビタミン;コレステロール、グリセリド、糖脂質、脂肪酸等の脂質;アシルカルニチン、アシルCoA等の中間代謝物等が挙げられる。これらの脂溶性物質は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、好ましくは脂溶性ビタミン、脂質、更に好ましくはビタミンE、コレステロールが挙げられる。特に、ビタミンE及び/又はコレステロールを使用する場合であれば、核酸を肝臓に選択的に送達させることが可能になる。
核酸に結合させる脂溶性物質としてビタミンEを使用する場合、その種類については、特に制限されないが、例えば、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエール、及びこれらのエステル誘導体(例えば、酢酸エステル、コハク酸エステル等)が挙げられる。これらのビタミンEは、d体、l体、又はdl体のいずれであってもよい。これらのビタミンEの中でも、好ましくはα−トコフェロールが挙げられる。
核酸と脂溶性物質との結合は、核酸と脂溶性物質が共有結合、イオン結合、水素結合等によって直接結合している状態であってもよく、また、他の物質(リンカー)を介して結合された状態であってもよい。核酸と脂溶性物質との結合を安定化させるという観点から、好ましくは核酸と脂溶性物質が共有結合により直接結合していることが望ましい。
核酸と脂溶性物質とを直接的に共有結合させる方法については、特に制限されないが、例えば、脂溶性物質が、ビタミンE、ビタミンA、コレステロール等の水酸基を有している脂溶性物質の場合であれば、当該水酸基と核酸の5'末端側に存在するヌクレオチドのリン酸残基とをリン酸エステル結合によって結合させればよい。例えば、α−トコフェロールを核酸の5'末端側に存在するヌクレオチドのリン酸残基とリン酸エステル結合によって結合させた場合、以下の一般式(A)に示す構造式になる。
Figure 0006949321
このように、水酸基を有している脂溶性物質と核酸とをリン酸エステル結合によって結合させる方法は、Tetrahedron Letters 33; 2729-2732. 1992等の記載に基づいて行うことができる。
また、核酸と脂溶性物質とをイオン結合や水素結合等によって結合させる方法については、特に制限されないが、例えば、正電荷を有する物質(例えば、アルギニン残基を含むペプチド等)を脂溶性物質に結合させ、当該物質の正電荷と、核酸が有する負電荷とのイオン結合や水素結合を利用して結合させる方法が挙げられる。なお、正電荷を有する物質としてアルギニン残基を含むペプチドを使用する場合、当該ペプチドにおけるアルギニン残基の数としては、核酸とのより安定的な結合を得る観点から、通常2以上、好ましくは3以上、更に好ましくは4以上が挙げられる。
また、核酸と脂溶性物質とを他の物質(リンカー)を介して結合させる方法については、特に制限されないが、例えば、脂溶性物質が、ビタミンE、ビタミンA、コレステロール等の水酸基を有している脂溶性物質の場合であれば、当該水酸基と反応する官能基と、核酸が有する水酸基又はリン酸残基と反応する官能基とを有する2官能性のリンカー分子を用いて、核酸と脂溶性物質とを連結させればよい。
経皮吸収製剤における薬物の配合量については、その種類、経皮吸収製剤の適用対象疾患、経皮吸収製剤の剤型等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5〜8重量%が挙げられる。
2.経皮吸収製剤
本発明の経皮吸収製剤は、前記経皮吸収促進剤を利用した外用医薬製剤であり、前記経皮吸収促進剤、及び薬物を含有する。本発明の経皮吸収製剤は、前記経皮吸収促進剤の作用によって、皮膚の表皮における顆粒層に対する薬物の透過性が向上しており、薬物の経皮吸収を促進することができる。
[経皮吸収促進剤及び薬物]
本発明の経皮吸収製剤において、前記経皮吸収促進剤の配合量、配合する薬物の種類、薬物の配合量等については、前記「1.経皮吸収促進剤」の欄に記載の通りである。
[角層透過促進剤]
本発明の経皮吸収製剤は、前記経皮吸収促進剤に加えて、薬物の角層の透過性を向上させる角層透過促進剤(薬物の角層の透過性を向上させる経皮吸収促進剤)が含まれていることが好ましい。本発明の経皮吸収製剤に角層透過促進剤が含まれる場合、前記経皮吸収促進剤による顆粒層の透過性の向上と角層透過促進剤による角層の透過性の向上が図られ、より一層効果的に薬物を経皮吸収させることが可能になる。
本発明の経皮吸収製剤に配合される角層透過促進剤の種類については、特に制限されないが、例えば、1価アルコール、多価アルコール、脂肪酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、エステル類、界面活性剤、炭化水素、モノテルペン、その他の特定の化合物又は成分等が挙げられる。
前記1価アルコールとしては、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール等の炭素数1〜18のアルコールが挙げられる。
前記多価アルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
前記脂肪酸としては、具体的には、カプリン酸、ノナン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の炭素数8〜24の脂肪酸が挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
前記ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、乳酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。
前記エステル類としては、前記1価アルコール又は前記多価アルコールと、前記脂肪酸、前記ジカルボン酸又は前記ヒドロキシカルボン酸とのエステルが挙げられ、具体的には、カプリン酸メチル、カプリン酸エチル、カプリン酸プロピル、カプリン酸イソプロピル、カプリン酸ブチル、ノナン酸メチル、ノナン酸エチル、ノナン酸プロピル、ノナン酸イソプロピル、ノナン酸ブチル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、カプリル酸イソプロピル、カプリル酸ブチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸プロピル、リノール酸イソプロピル、リノール酸ブチル、リノレン酸メチル、リノレン酸エチル、リノレン酸プロピル、リノレン酸イソプロピル、リノレン酸ブチル、乳酸ミリスチル、乳酸ラウリル、乳酸エチル等が挙げられる。
前記界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアミンオキシド、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤;脂肪酸石鹸、エーテルカルボン酸(塩)、アミノ酸と脂肪酸との縮合物、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸、エステルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩、硫酸化油、エステル硫酸塩、エーテル硫酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩、アミド硫酸塩、アルキルリン酸塩、アミドリン酸塩、エーテルリン酸塩、アルキルアリルリン酸塩等の陰イオン性界面活性剤;脂肪酸アミン、アルキル四級アンモニウム塩、芳香族四級アンモニウム塩、ピリジウム塩、イミダゾリウム塩等の陽イオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸塩、N−ステアロイルサルコシン塩、N−オレオイルサルコシン塩、N−パルミトイルサルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシン塩等の両イオン性界面活性剤が挙げられる。
前記炭化水素としては、具体的には、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン等が挙げられる。
前記モノテルペンとしては、具体的には、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオロール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル等が挙げられる。
前記ピロリドン誘導体としては、具体的には、1−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1,5−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ゲラニルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ファルネシルアザシクロヘプタン−2−オン2−ピロリドン、2−ピロリドン−5−カルボン酸等が挙げられる。
前記その他の特定の化合物又は成分としては、具体的には、尿素、アラントイン、パンテノール、トコフェロール、トコフェリルアセテート、トコフェリルリノレート、クロタミトン、ピロチオデカン、ポリビニルピロリドン、エデト酸四ナトリウム、動物油、植物油等が挙げられる。
これらの角層透過促進剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の経皮吸収製剤において、角層透過促進剤を含有させる場合、その配合量については、角層透過促進剤の種類、薬物の種類、経皮吸収製剤の適用対象疾患、経皮吸収製剤の剤型等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜30重量%、更に好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは0.1〜20重量%が挙げられる。
[その他の成分]
本発明の経皮吸収製剤には、前述する成分の他に、各種の製剤形態に調製するために必要とされる基剤や添加剤が含まれていてもよい。
このような基剤や添加剤の種類については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水性基剤(水、生理食塩水等)、防腐剤、着香剤、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。
[製剤形態・剤型・用法]
本発明の経皮吸収製剤の製剤形態については、特に制限されないが、マイクロエマルジョン製剤(油中水型又は水中油型)、リポソーム製剤、又はナノパーティクル製剤であってもよい。このよう製剤形態の場合には、薬物の角層の透過性を向上させることができ、前記経皮吸収促進剤による顆粒層の透過性の向上と相俟って、より一層効果的に薬物を経皮吸収させることが可能になる。本発明の経皮吸収製剤をこれらの製剤形態にする場合、公知の製剤化技術を利用することにより製剤化すればよい。
本発明の経皮吸収製剤の剤型については、経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)のいずれであってもよい。本発明の経皮吸収製剤の剤型として、具体的には、ゲル剤、クリーム剤、液剤、貼付剤、エアゾール剤、水性軟膏剤、パック剤等が挙げられる。
本発明の経皮吸収製剤は、その剤型に応じて、皮膚に塗布、貼付又は噴霧して経皮投与することにより、薬物を経皮吸収させることができる。また、本発明の経皮吸収製剤は、イオントフォレーシス法、エレクトロポレーション法、フォノフォレーシス法等の物理的に薬物の角層の透過性を高める手法を用いて経皮投与してもよい。このような経皮投与手法を採用することによって、前記経皮吸収促進剤による薬物の顆粒層の透過性の向上と相俟って、より一層効果的に薬物を経皮吸収させることが可能になる。
[好適な態様]
本発明の経皮吸収製剤の薬物の経皮吸収性をより一層向上させるという観点から、本発明の経皮吸収製剤において、(i)前記角層透過促進剤を含有させる、(ii)マイクロエマルジョン製剤、リポソーム製剤、又はナノパーティクル製剤の製剤形態にする、(iii)物理的に薬物の角層の透過性を高める手法を用いて経皮投与する、のいずれか少なくとも1つを採用していることが好ましい。このように、本発明の経皮吸収製剤において、(i)〜(iii)の少なくとも1つの態様を採用することによって、顆粒層及び角層の双方に対して薬物の透過性を向上させることができ、より一層効果的に薬物を経皮吸収させることが可能になる。
3.表皮の顆粒層のタイトジャンクションのバリア機能減弱による経皮吸収促進技術
本発明によって、表皮の顆粒層のタイトジャンクションのバリア機能を減弱させることにより、薬物の経皮吸収性を向上できることが見出されている。即ち、本発明は、表皮の顆粒層のタイトジャンクションのバリア機能を減弱できる物質を有効成分とする、経皮吸収促進剤をも提供する。更に、本発明は、表皮の顆粒層のタイトジャンクションのバリア機能を減弱させることにより、薬物の経皮吸収を促進させる経皮吸収促進方法をも提供する。
表皮の顆粒層のタイトジャンクションのバリア機能を減弱させるには、例えば、クローディン1、クローディン3、クローディン4、クローディン6、クローディン7、クローディン11、クローディン14、クローディン18、オクルジン、トリセルリン、ZO−1、ZO−2、MUPP-1、及びCingulin等の表皮タイトジャンクションバリア機能を担うタンパク質の発現抑制、当該タンパク質の機能阻害等を行えばよい。また、表皮の顆粒層のタイトジャンクションのバリア機能を減弱できる物質としては、具体的には、前述するセファロタキシン及びその誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、経皮吸収の促進対象となる薬物については、前記「1.経皮吸収促進剤」の欄に記載の通りである。
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
試験例1:ホモハリントニンによる表皮タイトジャンクションバリア制御活性への影響
ホモハリントニンのヒト表皮細胞(NHEK細胞)におけるタイトジャンクションバリア制御活性を評価するため、以下の実験を行った。
[試験方法]
TJバリア機能評価法として汎用されている膜電気抵抗値(Transepithelial Electric Resistance:TER)測定、及びTracer Flux assayを行った。具体的試験方法は、以下の通りである。
(膜電気抵抗値の測定)
NHEK細胞を15×104 cells/mlとなるように培地(Keratinocyte Basal Medium 2)に懸濁した細胞液を、200μl/well となるように6.5 mm Transwell(0.3 cm2,Corning)に播種し、37℃で培養した。培養2日後にCaCl2をCa2+濃度が最終1.8 mM(Keratinocyte Basal Medium 2には既に0.15 mMのCa2+が含まれている)になるように加えた培地(Keratinocyte Basal Medium 2)に交換し、更に2日間37℃で培養を行い、タイトジャンクションを形成させた。その後、ホモハリントニン(和光純薬工業)を0.05μM、及び0.1μMとなるように添加して、24時間37℃で培養した。その後、TER値をMillicell -ERS(Millipore)により測定した。また、比較のために、ホモハリントニンを添加しなかったこと以外は前記と同条件で試験を行い、TER値を測定した(Mock)。
(Tracer Flux assay)
NHEK細胞を15×104 cells/mlとなるように培地(Keratinocyte Basal Medium 2)に懸濁した細胞液を、200μl/well となるように6.5 mm Transwell(0.3 cm2,Corning)に播種し、37℃で培養した。培養2日後にCaCl2をCa2+濃度が最終1.8 mM(Keratinocyte Basal Medium 2には既に0.15 mMのCa2+が含まれている)になるように加えた培地(Keratinocyte Basal Medium 2)に交換し、更に2日間37℃で培養を行い、タイトジャンクションを形成させた。その後、ホモハリントニン(和光純薬工業)を0.05μM、及び0.1μMとなるように添加して、24時間37℃で培養した。培養後、P buffer (10 mM HEPES(pH 7.4)、1 mMピルビン酸ナトリウム、10 mMグルコース、3 mM CaCl2、134 mM NaCl)をtop wellに200 μL、bottom wellに700 μL添加し、37℃で40分間平衡化を行った。P bufferで100 μmol/Lに調整した4 kDa FITC標識デキストランをtop wellに100 μL添加し、37℃で1時間培養した。Bottom wellから培養液200 μL回収し、蛍光値(励起485 nm/蛍光535 nm)を測定し、Bottom wellに透過したFITC標識デキストラン濃度を求めた。また、比較のために、ホモハリントニンを添加しなかったこと以外は前記と同条件で試験を行い、Bottom wellに透過したFITC標識デキストラン濃度を求めた(Mock)。
[試験結果]
得られた結果を図1及び2に示す。タイトジャンクションバリアを形成したNHEK細胞にホモハリントニンを作用させた結果、作用濃度依存的なTER値の低下が確認された(図1)。次に、細胞間隙透過性への影響を評価するためtracer flux assayを行った結果、ホモハリントニン濃度依存的な透過性亢進作用が確認された(図2)。以上の結果から、ホモハリントニンは、表皮タイトジャンクションバリアに対する減弱作用を示すことが明らかとなった。
試験例2:ホモハリントニンによる表皮タイトジャンクション構成分子への影響
ヒト表皮細胞(NHEK細胞)のタイトジャンクションバリア構成分子発現に対するホモハリントニンの影響を評価するため、以下の実験を行った。
[試験方法]
NHEK細胞を15×104 cells/mlとなるように培地(Keratinocyte Basal Medium 2)に懸濁した細胞液を、500μl/wellとなるように12 mm Transwell(1.12 cm2,Corning)に播種し、37℃で培養した。培養2日後にCaCl2をCa2+濃度が最終1.8 mM(Keratinocyte Basal Medium 2には既に0.15 mMのCa2+が含まれている)になるように加えた培地(Keratinocyte Basal Medium 2)に交換し、更に2日間37℃で培養を行い、タイトジャンクションを形成させた。その後、ホモハリントニン(和光純薬工業)を50nMとなるように添加して、24時間37℃で培養した。次いで、細胞をPBSで洗浄した後、RIPAバッファーにて細胞を溶解させた。得られた細胞溶解液にSDSサンプルバッファーを加え、100℃で5分間加熱した。次いで、10% ポリアクリルアミドゲルに、調整した細胞溶解液をアプライし、20 mAで電気泳動(SDS-PAGE)を行った。TRANS-BLOT SD SEMI-DRY TRANSFER CELL (Bio-Rad Laboratories)を用いてポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜上に120 mA/メンブレンで30分間、タンパク質を転写した。転写後、PVDF膜を2% BSA-T-TBS溶液にてブロッキング操作を行った。続いて、2% BSA-T-TBS溶液により1000倍に希釈した一次抗体(抗クローディン-1、抗クローディン-4、抗オクルジン、抗ZO-1、抗E-カドヘリン、抗β-アクチン)を添加して終夜反応させた。T-TBSで3回洗浄し、2% BSA-T-TBS溶液により5000倍に希釈した二次抗体(ホースラディッシュペルオキシダーゼをコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG又はヤギ抗ウサギIgG)と1時間反応させた。次にT-TBSで3回洗浄した後、ECL Western Blotting Detection Reagents (ナカライテスク)を用いて発光させ、ImageQuant LAS 4000(GEヘルスケア・パパン)により各種タンパク質発現を検出した。また、比較のために、ホモハリントニンを添加しなかったこと以外は前記と同条件で試験を行い、各種タンパク質発現を検出した(Vehicle)。
[試験結果]
得られた結果を図3に示す。タイトジャンクションを形成したNHEK細胞にホモハリントニンを24時間作用させた結果、表皮タイトジャンクションバリア機能を担う、クローディン-1(CLDN-1)、クローディン-4(CLDN-4)、及びオクルジン(OCLN)のタンパク質発現の低下が確認された。一方、タイトジャンクションにおいて裏打ちタンパク質として機能するZO-1やアドヘレンスジャンクションの主要分子であるE-カドヘリンのタンパク質発現の低下は確認されなかった。以上の結果から、ホモハリントニンは表皮タイトジャンクションバリアの主要構成因子である、クローディン-1、クローディン-4、及びオクルジンの発現低下により表皮タイトジャンクションバリア機能を低下させることが示唆された。
試験例3:ホモハリントニンによるマウス皮膚での吸収促進効果に関する検討
マウス皮膚に貼付したモデル薬物(FITC標識デキストラン)のホモハリントニンによる経皮吸収促進効果を評価するために、以下の実験を行った。
マウス皮膚に、分子量4,000、10,000、及び20,000のFITC標識デキストラン(Sigma-Aldrich)とホモハリントニンの混合液を染みこませた濾紙を貼付し、経時的にFITC標識デキストランの血中移行量を測定した。具体的な実験手法については、以下の通りである。
[試験方法]
(投与薬液の調製)
分子量4,000、10,000、及び20,000のFITC標識デキストラン10mg/mL)とホモハリントニン(0.1、0.5、及び1 mM)をリン酸緩衝液(PBS;20 mM Na2HPO4、47 mM KH2PO4、100mM NaCl)に溶解させ、総容量45 μLに調整した。なお、対照実験には分子量4,000, 10,000, 20,000のFITC-dextranのみをPBSに溶解したものを用いた。
(マウス経皮透過試験)
除毛クリームにて除毛したマウス(C57BL/6 J Jms Slc、オス、6-7週齢)に5 mg/mlペントバルビタールナトリウム溶液(ナカライテスク)を250 μL/30g-マウス体重となるように腹腔内に投与し、5〜10分後に麻酔下においてテープストリッピングを10回行い、角層を取り除いて顆粒層が露出した状態にした。次いで、薬液をそれぞれ45 μLずつ貼付デバイスの濾紙に染み込ませ、マウス背中の除毛部分に貼り付けた。貼付時間1、3、6、12、及び24時間後に、マウスより血液を回収し、12,000 rpm、4℃、15分間の条件で遠心分離を行い、血漿を回収した。20 μLの血漿を96 wellプレートに移し、励起波長485 nm、蛍光波長538 nmで蛍光強度を測定した。
[試験結果]
1 mMのホモハリントニンと分子量4,000のFITC標識デキストランを使用した場合について、血漿中のFITC標識デキストラン濃度を経時的に測定した結果を図4に示す。図4に示されているように、ホモハリントニンにより分子量4,000のFITC標識デキストランが貼付6時間後から経皮吸収され血中に移行することが明らかとなった。また、各濃度のホモハリントニンと分子量4,000のFITC標識デキストランを使用した場合について、FITC標識デキストランのAUC(Area Under the blood concentration-time Curve)を求めた結果を図5に示す。図5から分かるように、ホモハリントニンの濃度依存的にFITC標識デキストランの血中移行量が増大することが確認された。また、各濃度のホモハリントニンと分子量4,000のFITC標識デキストランを染み込ませた濾紙を24時間貼付した後に、当該貼付部位の皮膚状態を観察した結果を図6に示す。図6に示すように、いずれの条件でも、明らかな皮膚障害は観察されなかった。また、1 mMのホモハリントニンと各分子量のFITC標識デキストランを使用した場合について、FITC標識デキストランのAUCを求めた結果を図7に示す。図7から、ホモハリントニンによっていずれの分子量のFITC標識デキストランの経皮吸収が促進されており、とりわけ分子量4,000及び10,000のFITC標識デキストランの経皮吸収が格段顕著に促進されることが確認された。以上の結果から、ホモハリントニンは、特に、分子量10,000以下の親水性薬物の顆粒層における透過性の向上に有効であり、当該薬物の経皮吸収を促進させ得ることが明らかとなった。
試験例4:ホモハリントニンによるヘテロ核酸(HDO)の経皮吸収促進効果に関する検討
マウスにおいてホモハリントニンがα−トコフェロール結合DNA/RNA2本鎖ヘテロ核酸の経皮吸収に及ぼす効果を評価するために、以下の実験を行った。
[試験材料]
HDO
以下のDNA/LNA gapmer及びcRNAからなるマウスアポリポプロテインB(ApoB)mRNAに対するDNA/RNA2本鎖ヘテロ核酸。
DNA/LNA gapmer:5'-G*C*a*t*t*g*g*t*a*t*T*C*A-3'
前記DNA/LNA gapmerにおいて、小文字はDNA、大文字はLNA(CはLNAメチルシトシンを示す)を示す。*は、チオリン酸結合を示す。
cRNA:5'-u*g*a*AUACCAAU*g*c-3'
前記cRNAにおいて、大文字はRNA、小文字は2'-O-methyl化されたRNAを示す。*は、チオリン酸結合を示す。
Toc-HDO
前記DNA/RNA2本鎖ヘテロ核酸のcRNAの5’末端のリン酸残基が、α−トコフェロールの水酸基とリン酸エステル結合で共有結合している、α−トコフェロール結合ヘテロ核酸。
Toc-HDOにおけるα−トコフェロールとcRNAとの結合構造は、前記一般式(A)に示す構造である。
[試験方法]
マウス皮膚に蛍光標識したToc-HDOとホモハリントニンの混合液を染みこませた濾紙を貼付し、24時間後のマウス肝臓を回収した。次いで、回収した肝臓の組織切片を作製し、肝移行したToc-HDOを蛍光観察した。具体的な実験手法については、以下の通りである。
(投与薬液の調製)
Toc-HDO(10 mg/kg-マウス体重)とホモハリントニン(1 mM)をリン酸緩衝液(PBS;20 mM Na2HPO4、47 mM KH2PO4、100mM NaCl)に溶解させ、総容量45 μLに調整した。なお、対照実験にはToc-HDOのみをPBSに溶解したものを用いた。
(マウス経皮透過試験)
除毛クリームにて除毛したマウス(C57BL/6 J Jms Slc、雄、6-7週齢)に5 mg/mlペントバルビタールナトリウム溶液(ナカライテスク)を250 μL/30g-マウス体重となるように腹腔内に投与し、5〜10分後に麻酔下においてテープストリッピングを10回行い、角層を取り除いて顆粒層が露出した状態にした。次いで、薬液をそれぞれ45μLずつ貼付デバイスの濾紙に染み込ませ、マウス背中の除毛部分に貼り付けた。
貼付24時間後に、4℃の生理食塩水にて脱血還流を行い、マウスを犠牲にした後、肝臓の一部を切り出して4%パラホルムアルデヒド(和光純薬工業)にて固定した。翌日、パラホルムアルデヒド液を30%スクロース溶液(和光純薬工業)に置換した。翌日、肝臓組織をスクロース液から取り出し、OCTコンパウンド(サクラファインテックジャパン)にて包埋した。クリオスタット(ライカ)にて肝組織切片を作製し、Alexsa488-Phalloidin(Life Technologies)、及びDAPI(Sigma-Aldrich)にて組織染色を行った。染色を施した肝組織切片を蛍光顕微鏡にて観察し、肝移行したToc-HDOを蛍光観察した(Red: Cy3(Toc-HDO), Blue: DAPI(核染色)、Green: Alexa488-Phalloidin (アクチン染色))。
得られた結果を図8に示す。この結果から、ホモハリントニンと共にToc-HDOを貼付した場合、Toc-HDOを単独で投与した場合に比べて、肝臓内に送達されたToc-HDO量が格段に高まっていることが確認された。即ち、本実験結果から、ホモハリントニンによってHDOの顆粒層の透過性が向上しており、HDOの経皮吸収が促進されることが明らかとなった。

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)に示す化合物を有効成分とする、経皮吸収促進剤。
    Figure 0006949321
    [一般式(1)中、Xは水素原子又は水酸基を示し、R 1 は炭素数1〜5のアルコキシ基を示し、R 2 は、一般式(2)〜(5)に示す基、又は水酸基を示す。]
    Figure 0006949321
  2. 前記有効成分が、ホモハリントニン、イソハリントニン、ハリントニン、アセチルファロタキシン、セファロタキシン、及び4−ヒドロキシセファロタキシンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の経皮吸収促進剤。
  3. 親水性の薬物、及び/又は分子量500Da以上の薬物の経皮吸収の促進のために使用される、請求項1又は2に記載の経皮吸収促進剤。
  4. ペプチド、タンパク質、及び/又は核酸の経皮吸収の促進のために使用される、請求項1〜のいずれかに記載の経皮吸収促進剤。
  5. 皮膚表皮の顆粒層における薬物の透過性を向上させるために使用される、請求項1〜のいずれかに記載の経皮吸収促進剤。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の経皮吸収促進剤、及び薬物を含有する、経皮吸収製剤。
  7. 前記薬物が、親水性の薬物、及び/又は分子量500Da以上の薬物である、請求項に記載の経皮吸収製剤。
  8. 前記薬物が、ペプチド、タンパク質、及び/又は核酸である、請求項6又は7に記載の経皮吸収製剤。
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