JP6948137B2 - 難燃性を有する木質材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性を有する木質材料の製造方法に関する。特に、本発明は、難燃性が劣化しにくい木質材料を製造することのできる方法に関する。
現在主流の難燃性を有する木質材料(難燃化木質材料)は、水溶性の難燃化物質を使用し、高濃度の難燃化物質の水溶液を木質材料に接触させる工程を経て、木質材料中に難燃化物質を含有させたものである。水溶性の難燃化物質を使用した難燃化木材は、使用する難燃化物質が水に対して高い親和性を持つ物質であり、雨水や水蒸気によって難燃性を付与した木質材料中から難燃化物質が容易に排出されることから、難燃性能の低下が発生しやすいという問題点を持っている。
このため従来から、木質材料からの難燃化物質の溶出や析出(溶脱)が発生しないように、難燃化木質材料に雨水が接触することを防止する塗料を塗布するなどの対策がとられているが、難燃化物質の溶脱防止効果は完全ではなく、問題の根本的解決には至っていない。
このことから近年では、水に不溶性の難燃化物質を木質材料に含有させ、木質材料に難燃性能を付与する試みが行われている。
水に不溶性の難燃化物質の代表的なものとして、水酸化アルミニウムが挙げられる。特開2013−28042号公報には、この水酸化アルミニウムを木質材料に含有させるために、木質材料にアルミン酸ナトリウム水溶液を接触させてアルミン酸ナトリウム含有木材を作製し、これに二酸化炭素または酸を用いて木質材料中に水酸化アルミニウムを生成する方法が開示されている。
一般に、木質材料に薬液を浸透させて木質材料の改質を行う場合、木質材料を設置した処理容器に薬液を満たし、浸漬処理や注入処理等が行われる。特に、難燃性能のような高い性能を木質材料に付与する場合には、処理容器内を減圧及び加圧状態に保つ注入処理が一般的である。この減圧加圧注入処理法によれば、木質材料内部まで深く薬液を浸透させることができる。
減圧加圧注入処理を行う処理容器は、圧力容器であり、圧力容器の形状は通常円筒型である。円筒型の処理容器内に設置する木質材料の束は直方体であるため、木質材料の束の体積を最大化しても、処理容器と木質材料の束には大きな隙間が発生する。注入処理はこの大きな隙間に薬液を充満させなければならないため、大量の薬液が必要となる。また隙間の体積は、注入処理によって木質材料に浸透し消費される薬液の体積よりも大きいため、注入処理では大量の薬液を繰り返して使用することになる。
このため、注入処理に使用する薬液には、繰り返し使用しても、分離、析出、沈殿等が発生しない高い溶解安定性が求められる。
水酸化アルミニウム含有木材の作製に使用するアルミン酸ナトリウム水溶液は、経時的に水酸化アルミニウムと重炭酸ナトリウムの沈殿が発生する。このように沈殿した水酸化アルミニウムと重炭酸ナトリウムは、当該水溶液に再溶解させることができない。沈殿が発生したアルミン酸ナトリウム水溶液は、水溶液中に溶解しているアルミニウムとナトリウムの濃度やモル比が本来の値から変わってしまっており、再び使用することができないため、廃棄しなければならなくなる。
特開2013−28042号公報に開示されている発明では、アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミニウムとナトリウムのモル比(Al/NaOH)を調整することによって、水酸化アルミニウムと重炭酸ナトリウムの沈殿が発生しにくくなる工夫がされているものの、その効果は完全とはいえない。
水溶液中に存在する金属イオンの活性を抑えることにより、沈殿の発生を防止するための物質として用いられるものに、金属イオン封鎖剤を挙げることができる。金属イオン封鎖剤は、水溶液中の金属イオンと結合することによって、金属イオンが水溶液に安定して存在できるようになり、金属イオンに起因する析出や沈殿が発生しにくくなるものである。アルミン酸ナトリウム水溶液は、アルミニウムイオンとナトリウムイオンが存在する水溶液であり、金属イオン封鎖剤を添加することによって、水酸化アルミニウムと重炭酸ナトリウムの沈殿の発生を抑えることができると期待される。
金属イオン封鎖剤を代表するものとして、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)及びそのナトリウム塩を挙げることができる。しかしながら、EDTAに代表されるアミノカルボン酸系の金属イオン封鎖剤は、経口毒性が高くまた高価であるため、直接人が触れる機会の多い木質材料に対して高い含有量で用いるのには適していない。
また、食品添加物として利用される安全性の高い金属イオン封鎖剤として、グルコン酸ナトリウムを挙げることができる。しかしながら、グルコン酸ナトリウムは可燃性を持つ物質であるため、難燃化を目的とした木質材料の薬剤処理の添加剤としては不向きである。
特開2013−28042号公報
従って、本発明の目的は、水酸化アルミニウム含有木材を製造する際にアルミン酸ナトリウム含有木質材料を得る工程で使用するアルミン酸ナトリウム水溶液のように、木質材料に難燃性を付与する場合に用いられる水溶液の、析出や沈殿等による劣化を抑制し、これにより、製造時の廃棄物の発生が少なく、低コストで十分な難燃性能を具備する木質材料を製造することが可能となる方法を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究を行った結果、アルミン酸ナトリウムを水に溶解する際、溶解安定化剤としてホウ酸塩を使用することにより、上記目的を達成することができるとの知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、アルミン酸ナトリウムと溶解安定化剤とを水に溶解して、アルミン酸ナトリウム水溶液を得る工程であって、溶解安定化剤がホウ酸塩である工程、アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に注入する工程、及び、アルミン酸ナトリウム水溶液を注入した木質材料に二酸化炭素又は酸を接触させて、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成することにより、木質材料に難燃性を付与する工程を含む、難燃性を有する木質材料の製造方法である。
上記木質材料の製造方法において、ホウ酸塩が、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウムであることが好ましい。
上記木質材料の製造方法において、溶解安定化剤が、アルミン酸ナトリウム水溶液中、0.1〜15重量%の割合で溶解されていることが好ましい。
上記木質材料の製造方法において、溶解安定化剤が、アルミン酸ナトリウム水溶液中、アルミン酸ナトリウムと溶解安定化剤との合計が55重量%以下となるような割合で溶解されていることが好ましい。
上記木質材料の製造方法において、溶解安定化剤が、アルミン酸ナトリウム水溶液中、アルミン酸ナトリウム中の酸化アルミニウム量(重量%)>溶解安定化剤量(重量%)となるような量で溶解されていることが好ましい。
上記木質材料の製造方法において、アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に注入する工程に先立ち、防腐剤、防蟻剤、又は防黴剤を、木質材料に塗布、吹付け、浸漬、又は注入することによって木質材料中に含有させる工程を含むことが好ましい。
その際、防腐剤、防蟻剤、又は防黴剤が、非水溶性有機化合物であることが好ましい。
本発明において提供される、難燃性を有する木質材料の製造方法によれば、木質材料に難燃性を付与する場合に用いられる水溶液の析出や沈殿等による劣化を抑制することができるので、水溶液の長期間の保存が可能になり、製造時の廃棄物の発生が少なく、低コストで十分な難燃性能を具備する木質材料を得ることができる。
本発明に係る木質材料の製造方法は、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成させることを目的にアルミン酸ナトリウム含有木質材料を作製する際、ホウ酸塩から成る溶解安定化剤が添加されたアルミン酸ナトリウム水溶液を用意し、これを木質材料に注入し、その後、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に二酸化炭素又は酸を接触させることを特徴としている。
本発明において、アルミン酸ナトリウム水溶液に溶解される溶解安定化剤であるホウ酸塩は、アルミン酸ナトリウムとともに水に溶解して、アルミン酸ナトリウム水溶液におけるアルミニウムイオン及びナトリウムイオンの溶解を安定化させるものであれば、とくに限定されないが、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸カリウムであることが好ましい。ホウ酸ナトリウム及びホウ酸カリウムは、アルミン酸ナトリウム水溶液への溶解安定性が高いため、アルミン酸ナトリウム水溶液中で反応生成物の沈殿や分解ガスの発生が無く、アルミン酸ナトリウム水溶液に溶解された状態で長期間安定して存在し、アルミニウムイオンに対する溶解安定化剤としての効果を長期間発現することができる。
またホウ酸ナトリウム及びホウ酸カリウムは不燃性であるため、当該ホウ酸塩を溶解させたアルミン酸ナトリウム水溶液を使用して作製された水酸化アルミニウム含有木質材料は、難燃性能の低下の影響が無い。
本発明において、アルミン酸ナトリウム水溶液に溶解される溶解安定化剤(ホウ酸塩)の割合は、0.1〜15重量%であることが好ましい。アルミン酸ナトリウム水溶液に溶解される溶解安定化剤(ホウ酸塩)の割合が0.1重量%以上であれば、アルミン酸ナトリウム水溶液中のアルミニウムイオンに対し金属イオン封鎖効果が現れるため、アルミン酸ナトリウム水溶液中で水酸化アルミニウムと重炭酸ナトリウムの沈殿が発生しにくくなり、アルミン酸ナトリウム水溶液の長期間の保存が可能になる。アルミン酸ナトリウム水溶液に溶解される溶解安定化剤(ホウ酸塩)の割合が15重量%以下であれば、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に二酸化炭素又は酸に接触させて木質材料中に水酸化アルミニウムを生成する工程において、アルミン酸ナトリウムと二酸化炭素又は酸との反応が順当に進み、水酸化アルミニウムが木質材料中に効率的に生成され、耐候性の高い難燃化木質材料を得ることができる。
本発明において、アルミン酸ナトリウム水溶液に溶解されるアルミン酸ナトリウムと溶解安定化剤(ホウ酸塩)との合計の割合は、55重量%以下であることが好ましい。アルミン酸ナトリウム水溶液のアルミン酸ナトリウムと溶解安定化剤(ホウ酸塩)の合計の割合が55重量%以下であれば、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に二酸化炭素又は酸に接触させて木質材料中に水酸化アルミニウムを生成する工程において、反応生成物である水酸化アルミニウム及びホウ酸塩由来固形物が木質材料表面に排出されず、木質材料内部に保持されるため、難燃化有効成分である固形物の排出による難燃性能の低下が無く、これによって木質材料中のアルミン酸ナトリウム含有量から推定される難燃性能をバラツキ無く得ることができる。
本発明において、アルミン酸ナトリウム水溶液に溶解される溶解安定化剤(ホウ酸塩)は、アルミン酸ナトリウム中の酸化アルミニウム量(重量%)>溶解安定化剤量(重量%)で溶解されていることが好ましい。溶解安定化剤(ホウ酸塩)がアルミン酸ナトリウム水溶液に、アルミン酸ナトリウム中の酸化アルミニウム量(重量%)>溶解安定化剤量(重量%)で溶解された場合、当該アルミン酸ナトリウ水溶液によって得られた水酸化アルミニウム含有木質材料中の水溶性固形物の生成量を低く抑えることができるので、屋外で使用された際に発生する木質材料表面の干割れが少なく、これによって外観が損なわれること無く、また高い耐候性の難燃化木質材料を得ることができる。アルミン酸ナトリウム含有木質材料に二酸化炭素又は酸を接触させ、木質材料中で生成される固形物のうち、非水溶性の水酸化アルミニウムに対してその他の水溶性固形物が多量になると、屋外で使用され雨水に接触することによって、この水溶性固形物のみが雨水に溶解し木質材料外部に大量に排出され、この水溶性固形物の多量の溶脱の影響によって木質材料表面に微細な干割れが生じる。木質材料表面に発生した微細な干割れは、さらに木質材料内部への雨水の浸入を招き、深部の水溶性固形物の溶脱が発生して、干割れの幅や深さが大きくなる。この悪循環によって、徐々に表面割れが大きくなった木質材料は、外観が大きく損なわれ、また木質材料の表面積が増大することによって、難燃性能が低下し、さらに燃焼によって引き起こされる貫通割れが発生しやすくなる。
本発明において使用されるホウ酸塩の具体例として、ホウ酸ナトリウムとしては、メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等が挙げられ、ホウ酸カリウムとしては、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等が挙げられる。
本発明に係る木質材料の製造方法では、上記のように調製したアルミン酸ナトリウム水溶液を、木質材料に注入する。アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に注入する方法としては、JIS A 9002「木質材料の加圧式保存処理方法」に準拠した加圧注入処理方法を採用することができる。
本発明に係る木質材料の製造方法ではさらに、アルミン酸ナトリウム水溶液を注入した木質材料に、二酸化炭素又は酸を接触させて、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成する。
アルミン酸ナトリウム水溶液は二酸化炭素に接触すると、水酸化アルミニウムと重炭酸ナトリウムが生成される。この反応を木質材料中で行うことにより、木質材料中に目的物である水酸化アルミニウムが生成され、その結果、耐候性の高い難燃性木質材料を得ることができる。木質材料中に生成された水酸化アルミニウムは水に難溶性であり、屋外に暴露され雨水に接触しても水酸化アルミニウムは容易に溶出せず長期間木質材料中に留まる。
本発明において、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素の温度は、10〜100℃とすることができ、より好ましくは30〜80℃である。
本発明において、アルミン酸ナトリウム含有木質材料に接触させる二酸化炭素は、ゲージ圧0〜1.0MPaとすることができる。
本発明に係る木質材料の製造方法において、アルミン酸ナトリウム水溶液を注入した木質材料に酸を接触させて、木質材料中に水酸化アルミニウムを生成する場合、炭酸又は酢酸、クエン酸などのカルボン酸から成る酸性水溶液を好適に使用することができる。十分に乾燥させたアルミン酸ナトリウム含有木質材料に酸性水溶液を注入処理すると、木質材料中で塩基であるアルミン酸ナトリウムと酸が中和して水酸化アルミニウムとナトリウム塩が生成する。このとき酸性水溶液は、注入処理装置に損傷を与えず取り扱いが容易であることや、木質材料のセルロースを分解しないことが求められるため、塩酸や硫酸などの強酸を用いることはできない。難燃性木質材料の使用される環境は、住居など人が直接触れることが想定されることから、酸性水溶液には食品に利用される炭酸又はカルボン酸を用いるのが適している。
酸性水溶液に用いるカルボン酸は、酸解離定数がpKa=4以下であるものから単独または複数を選択して使用することができる。このようなカルボン酸に、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸、フマル酸を挙げることができる。
本発明において使用される木質材料の木材種は、特に限定されず、種々の木材を用いることができる。例えば、スギ、ヒノキ、スプルースなどの針葉樹、ブナ、ナラ、キリなどの広葉樹、ラワン、黒檀、チークなどの南洋材等の心材や辺材の他に、集成材、CLT(Cross Laminated Timber:直交積層材)、LVL(Laminated Veneer Lumber:単板積層材)、合板、MDF(Medium Density Fiberboard:中質繊維板)、パーティクルボード、OSB(Oriented Strand Board:配向性ストランドボード)などの木質接着製品、木材と合成樹脂を複合し成形したWPC(Wood Plastic Composite:木材・プラスチック複合材)も、本発明において木質材料として用いることができる。
本発明において、アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に注入する工程に先立ち、アルミン酸ナトリウム水溶液を接触させる木質材料に、予め防腐剤、防蟻剤、防黴剤を単独または複数選択して注入してもよい。このように処理された木質材料(保存処理木質材料)を使用することで、防腐性、防蟻性、防黴性を付加した難燃化木質材料を得ることが可能となる。
保存処理木質材料を得るために使用する防腐剤、防蟻剤、防黴剤は、非水溶性有機化合物であることが好適である。木質材料に含有された防腐剤、防蟻剤、防黴剤が非水溶性有機化合物である場合、アルミン酸ナトリウム水溶液が保存処理木質材料に接触する際に、木質材料中から防腐剤、防蟻剤、防黴剤がアルミン酸ナトリウム水溶液に溶出することが無く、アルミン酸ナトリウム水溶液が汚染しpHや濃度の変動が発生することがないためである。このように、アルミン酸ナトリウム水溶液が、防腐剤、防蟻剤、防黴剤の溶出による影響を受けないため、アルミン酸ナトリウム水溶液は高い溶解安定性を保ち、長期間の保存が可能になる。
また、有機化合物による防腐剤、防蟻剤、防黴剤は、銅や亜鉛を使用した重金属系、AACやBKCを使用した界面活性剤系の木材保存剤と比較して、木質材料中に含有される有効成分量を約1/10程度に低く抑えることができるため、木質材料中の木材保存剤有効成分が、アルミン酸ナトリウム水溶液の木質材料内部への浸透を阻害せず、注入処理によって得られる木質材料中のアルミン酸ナトリウム水溶液の含有量に影響を与えず有用である。
このような非水溶性有機化合物である防腐剤、防蟻剤、防黴剤を用いた木質材料の保存処理方法の代表的な例として、JIS A 9002「木質材料の加圧式保存処理方法」に記載の溶剤回収法による注入処理方法が挙げられる。
非水溶性有機化合物の防腐剤、防蟻剤、防黴剤の具体例として、IPBC、IF-1000等の有機ヨウ素系、2-オルトフェニルフェノール等のフェノール系、シプロコナゾール、テブコナゾール等のトリアゾール系、チアベンダゾール等のベンズイミダゾール系、チオシアノメチルチオベンゾチアゾール、ジクロルイソチアゾロン等のチアゾール系、メチレンビスチオシアネート等のチオシアネート系、フェニトロチオン等の有機リン系、フェノブカルブ等のカーバメイト系、ビフェントリン、ペルメトリン等のピレスロイド系、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等の非エステルピレスロイド系、イミダクロプリド、クロチアニジン等のネオニコチノイド系、フィプロニル等のフェニルピラゾール系、クロルフェナピル等のフェニルピロール系、S-421等の塩素化エーテル系、クロラントラニルプロール等のアントラニリックジアミド系、インドキサカルブ等のオキサジアジン系、メタフルミゾン等のセミカルバゾン系、ピレトリン、カプリン酸等の天然由来系、クロルフルアズロン等のベンゾイルウレア系を挙げることができる。
本発明において、アルミン酸ナトリウム水溶液に、防腐剤、防蟻剤、防黴剤を単独または複数選択して混合してもよい。本発明に係る製造方法において、この防腐剤、防蟻剤、防黴剤を単独または複数選択して混合したアルミン酸ナトリウム水溶液を用いることによって、木質材料に難燃性の他、防腐性、防蟻性、防黴性を追加することができる。この場合、使用する防腐剤、防蟻剤、防黴剤は、アルミン酸ナトリウム水溶液の溶解安定性への影響が小さいものを吟味し、選択するのが望ましい。
本発明の実施例について、以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
(実施例1)
[アルミン酸ナトリウム水溶液の調製]
アルミン酸ナトリウムは、アルミニウムとナトリウムのモル比がAl/NaOH=0.61であるものを使用した。
上記アルミン酸ナトリウム30重量部と、四ホウ酸カリウム6重量部、残部水を用いて、アルミン酸ナトリウム水溶液を調製した。すなわち、アルミン酸ナトリウム水溶液中の溶解安定化剤は6重量%、アルミン酸ナトリウムと溶解安定化剤との合計は36重量%であった。このとき、アルミン酸ナトリウム水溶液中の酸化アルミニウム濃度は15重量%であり、溶解安定化剤の濃度(6重量%)よりも高いものであった。
[アルミン酸ナトリウム水溶液の木質材料への加圧注入処理]
木質材料として15×105×105mmのスギ板を用いた。JIS A 9002「木質材料の加圧式保存処理方法」に準拠した加圧注入処理方法を用いて、スギ板に上で調製したアルミン酸ナトリウム水溶液を加圧注入処理することにより、アルミン酸ナトリウム含有スギ板が得られるよう、以下の方法を行った。
圧力容器内に上記スギ板を設置して圧力容器内を減圧し、30分間ゲージ圧−0.08MPaで保持した。減圧保持30分経過後、負圧の状態で上記アルミン酸ナトリウム水溶液を圧力容器内に入れ、圧力容器内をアルミン酸ナトリウム水溶液で満たした。アルミン酸ナトリウム水溶液で満たされた圧力容器に、ポンプを用いてアルミン酸ナトリウム水溶液をさらに送り込むことにより、圧力容器内をゲージ圧1.5MPaまで加圧して30分間圧力を保持した。加圧保持30分経過後、圧力容器内のアルミン酸ナトリウム水溶液を回収し、圧力容器内からアルミン酸ナトリウム含有スギ板を取り出した。
[アルミン酸ナトリウム水溶液の溶解安定性評価]
上記加圧注入処理後に回収したアルミン酸ナトリウム水溶液を容器に保管し、1週間後に、上記と同じ方法で、別に用意したスギ板に加圧注入処理を実施した。この操作を4回繰り返し、4回目の加圧注入処理後に回収したアルミン酸ナトリウム水溶液の状態を、1週間後に観察することによって、継続して同じアルミン酸ナトリウム水溶液を使用した場合の5週間経過後のアルミン酸ナトリウム水溶液の溶解安定性について評価を行った。
その結果、四ホウ酸カリウムを添加したアルミン酸ナトリウム水溶液は沈殿物の発生はほとんど無く、高い溶解安定性を確認することができた。
[水酸化アルミニウム含有木質材料の難燃性評価]
上記のようにして得られたアルミン酸ナトリウム含有木質材料を、35〜50℃に加温した二酸化炭素雰囲気下に静置し、4週間の養生乾燥を実施した。二酸化炭素による養生乾燥後、木質材料表面に現れた重炭酸ナトリウムを除去し、水酸化アルミニウム含有木質材料を得た。
このようにして得られた水酸化アルミニウム含有木質材料について、ISO 5660-1に準拠しコーンカロリーメーター試験(発熱性試験)を実施したところ、実施例1の水酸化アルミニウム含有木質材料は、高い難燃性能(準不燃レベル(600秒))を有するものであることが確認された。
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
アルミン酸ナトリウム水溶液を調製する際に添加する添加剤を、四ホウ酸カリウムとは異なるものとしたことを除き、実施例1と同様に、アルミン酸ナトリウム水溶液の溶解安定性を評価するとともに、水酸化アルミニウム含有木質材料を製造し、その難燃性を評価した。
結果を表1に示す。
Figure 0006948137
結果から、本発明の方法によれば、アルミン酸ナトリウム水溶液の溶解安定性を向上させることが可能であるばかりでなく、高い難燃性を有する水酸化アルミニウム含有木質材料を製造することが可能であることが明らかである。
これに対して、アルミン酸ナトリウム水溶液を調製する際に添加剤を添加しない場合(比較例1)、アルミン酸ナトリウム水溶液中に沈殿が発生し、溶解安定性が低いことが認められた。また、金属イオン封鎖剤(キレート剤)として知られるグルコン酸ナトリウムを添加した場合(比較例2)、アルミン酸ナトリウム水溶液の溶解安定性は向上するものの、水酸化アルミニウム含有木質材料の難燃性が低下してしまう(準不燃レベルを満たさない)ことが確認された。さらに、難燃剤として使用されることもあるホウ酸を添加した場合(比較例3)、水酸化アルミニウム含有木質材料の難燃性は良好となるものの、アルミン酸ナトリウム水溶液中に沈殿が発生してしまうことが確認された。
本発明の製造方法によって得られる木質材料は、優れた耐候性と難燃性を持ち、低コストで大量に生産することができるため、住宅用外装材やウッドデッキ、木柵などの外構用部材等の難燃性が要求され、かつ価格競争力が求められる屋外用木製部材に極めて有用である。また、白華現象が発生しないため、住宅用内装材、家具用材にも有用である。また、原材料の木質材料に間伐材を利用することにより、自然環境の保護にも貢献することができる。

Claims (6)

  1. 難燃性を有する木質材料の製造方法であって、
    アルミン酸ナトリウムと溶解安定化剤とを水に溶解して、アルミン酸ナトリウム水溶液を得る工程であって、前記溶解安定化剤がホウ酸塩である、前記工程、
    前記アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に注入する工程、及び、
    前記アルミン酸ナトリウム水溶液を注入した木質材料に二酸化炭素又は酸を接触させて、前記木質材料中に水酸化アルミニウムを生成することにより、前記木質材料に難燃性を付与する工程、
    を含み、
    前記溶解安定化剤が、前記アルミン酸ナトリウム水溶液中、前記アルミン酸ナトリウム中の酸化アルミニウム量(重量%)>前記溶解安定化剤量(重量%)となるような量で溶解されていることを特徴とする、前記製造方法。
  2. 前記ホウ酸塩が、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記溶解安定化剤が、前記アルミン酸ナトリウム水溶液中、0.1〜15重量%の割合で溶解されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記溶解安定化剤が、前記アルミン酸ナトリウム水溶液中、前記アルミン酸ナトリウムと前記溶解安定化剤との合計が55重量%以下となるような割合で溶解されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記アルミン酸ナトリウム水溶液を木質材料に注入する工程に先立ち、防腐剤、防蟻剤、又は防黴剤を、前記木質材料に塗布、吹付け、浸漬、又は注入することによって木質材料中に含有させる工程を含むこと特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記防腐剤、防蟻剤、又は防黴剤が、非水溶性有機化合物であること特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
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