JP6946396B2 - 水性組成物(に) - Google Patents

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本発明は、水性組成物等に関する。
以下の構造式:
Figure 0006946396
で表されるリパスジル(化学名:4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン)や、以下の構造式:
Figure 0006946396
で表される4−ブロモ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリンなどのハロゲン化イソキノリン誘導体は、Rhoキナーゼ阻害作用等の薬理作用(例えば、特許文献1、2)を有し、眼疾患の予防や治療に有用であることが知られている。具体的には例えば、高眼圧症や緑内障等の予防又は治療(例えば、特許文献3)、あるいは加齢黄斑変性等の眼底疾患の予防又は治療(例えば、特許文献4)に有用であることが報告されている。
そのため、これらのハロゲン化イソキノリン誘導体を、例えば眼科用剤等として安定的に製剤化する技術を確立することは、極めて有用である。眼科用剤は通常、水を含有する組成物(水性組成物)であり、しばしば低温保存時の経時的な結晶析出などが問題となる。この点に関連し、特許文献5には、リパスジル((S)−(−)−1−(4−フルオロ−5−イソキノリンスルフォニル)−2−メチル−1,4−ホモピペラジン)若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、リン酸又はその塩、及びグリセリン0.5〜5重量%を含有する、結晶の析出が抑制された水性点眼剤用組成物が開示されている。
ところで、特許文献6には、リパスジル((S)−(−)−1−(4−フルオロ−5−イソキノリンスルフォニル)−2−メチル−1,4−ホモピペラジン)又はその塩、水溶性フィルム形成剤及びカルボキシビニルポリマーを含有するフィルム製剤が開示されている。しかしながら、特許文献6に開示のフィルム製剤は、リパスジル、フィルム形成剤及びカルボキシビニルポリマーをメタノール等の揮発性の溶媒に溶解・分散させた後、溶媒を乾燥により揮発させて固形成分を析出・フィルム形成させることによって得られる非水系の製剤である。
従って、特許文献6に開示のフィルム製剤は水性組成物とは全く異なるものであり、また、乾燥させた固形製剤であることから経時的な結晶析出が問題となることも無い。
特許第4212149号公報 国際公開第2006/115244号パンフレット 国際公開第2006/068208号パンフレット 特許第5557408号公報 特許第4168071号公報 特開2013−129604号公報 国際公開第94/23750号パンフレット
本発明は、ハロゲン化イソキノリン誘導体含有水性組成物の、低温保存時の結晶析出を抑制する技術を提供することを課題とする。
そこで本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討したところ、リパスジル等のハロゲン化イソキノリン誘導体を含有する水性組成物に、さらにメチルセルロース等のセルロースエーテル誘導体を含有せしめることにより、低温保存時の結晶の析出を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の一般式(1)
Figure 0006946396
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及びセルロースエーテル誘導体を含有する、水性組成物を提供するものである。
また、本発明は、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物に、セルロースエーテル誘導体を含有せしめる工程を含む、水性組成物の結晶析出の抑制方法を提供するものである。
本発明によれば、リパスジル等のハロゲン化イソキノリン誘導体を含有する水性組成物の低温保存時の結晶析出を抑制できる。
本明細書は、これらに何ら限定されるものではないが、例えば以下の態様の発明を開示する。
[1] 次の一般式(1)
Figure 0006946396
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及びセルロースエーテル誘導体を含有する、水性組成物。
[2] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[1]記載の水性組成物。
[3] 前記セルロースエーテル誘導体が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキル(ヒドロキシアルキル)セルロース、カルボキシアルキルセルロース及びその塩並びにカルボキシアルキル(アルキル)セルロース及びその塩よりなる群から選ばれる1種以上である、[1]又は[2]記載の水性組成物。
[4] 前記セルロースエーテル誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上である、[1]又は[2]記載の水性組成物。
[5] 前記セルロースエーテル誘導体が、メチルセルロースである、[1]又は[2]記載の水性組成物。
[6] 眼科用剤である、[1]〜[5]のいずれか記載の水性組成物。
[7] 点眼剤である、[6]記載の水性組成物。
[8] 高眼圧症、緑内障及び眼底疾患よりなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療剤である、[1]〜[7]のいずれか記載の水性組成物。
[9] さらに、α1受容体遮断薬、α2受容体作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、交感神経作動薬、副交感神経作動薬、カルシウム拮抗剤及びコリンエステラーゼ阻害剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[1]〜[8]のいずれか記載の水性組成物。
[10] さらに、ラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[1]〜[8]のいずれか記載の水性組成物。
[11] 前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物に、セルロースエーテル誘導体を含有せしめる工程を含む、水性組成物の結晶析出の抑制方法。
[12] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[11]記載の方法。
[13] 前記セルロースエーテル誘導体が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキル(ヒドロキシアルキル)セルロース、カルボキシアルキルセルロース及びその塩並びにカルボキシアルキル(アルキル)セルロース及びその塩よりなる群から選ばれる1種以上である、[11]又は[12]記載の方法。
[14] 前記セルロースエーテル誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上である、[11]又は[12]記載の方法。
[15] 前記セルロースエーテル誘導体が、メチルセルロースである、[11]又は[12]記載の方法。
[16] 前記水性組成物が、眼科用剤である、[11]〜[15]のいずれか記載の方法。
[17] 前記眼科用剤が、点眼剤である、[16]記載の方法。
[18] 前記水性組成物が、高眼圧症、緑内障及び眼底疾患よりなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療剤である、[11]〜[17]のいずれか記載の方法。
[19] 前記水性組成物が、さらにα1受容体遮断薬、α2受容体作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、交感神経作動薬、副交感神経作動薬、カルシウム拮抗剤及びコリンエステラーゼ阻害剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[11]〜[18]のいずれか記載の方法。
[20] 前記水性組成物が、さらにラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[11]〜[18]のいずれか記載の方法。
[21] 前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物に、メチルセルロースを含有せしめる工程を含む、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の眼組織への移行の促進方法。
[22] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[21]記載の方法。
[23] 前記水性組成物が、眼科用剤である、[21]又は[22]記載の方法。
[24] 前記眼科用剤が、点眼剤である、[23]記載の方法。
[25] 前記水性組成物が、高眼圧症、緑内障及び眼底疾患よりなる群から選ばれる疾患の予防及び/又は治療剤である、[21]〜[24]のいずれか記載の方法。
[26] 前記水性組成物が、さらにα1受容体遮断薬、α2受容体作動薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害剤、プロスタグランジン類、交感神経作動薬、副交感神経作動薬、カルシウム拮抗剤及びコリンエステラーゼ阻害剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[21]〜[25]のいずれか記載の方法。
[27] 前記水性組成物が、さらにラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、[21]〜[25]のいずれか記載の方法。
前記一般式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記一般式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
また、前記一般式(1)において、メチル基の置換したホモピペラジン環を構成する炭素原子は不斉炭素である。そのため、立体異性が生じるが、一般式(1)で表される化合物にはいずれの立体異性体も包含され、単一の立体異性体でもよく、各種立体異性体の任意の割合の混合物でもよい。前記一般式(1)で表される化合物としては、絶対配置がS配置である化合物が好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物の塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されず、具体的には例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、カンファ―スルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、塩酸塩が好ましい。
さらに、前記一般式(1)で表される化合物又はその塩は、水和物やアルコール和物等の溶媒和物であってもよく、水和物であるのが好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、具体的には例えば、
リパスジル(化学名:4−フルオロ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン)若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
4−ブロモ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
等が挙げられる。
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、4−ブロモ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が好ましく、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がより好ましく、リパスジル若しくはその塩酸塩又はそれらの水和物がさらに好ましく、以下の構造式:
Figure 0006946396
で表されるリパスジル塩酸塩水和物(リパスジル1塩酸塩2水和物)が特に好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は公知であり、公知の方法により製造できる。具体的には例えば、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公開第1999/020620号パンフレット、国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法等により製造することが出来る。また、4−ブロモ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公開第2006/115244号パンフレット記載の方法等により製造することが出来る。
水性組成物中の前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は特に限定されず、適用疾患や患者の性別、年齢、症状等に応じて適宜検討して決定すればよいが、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算して0.01〜10w/v%含有するのが好ましく、0.02〜8w/v%含有するのがより好ましく、0.04〜6w/v%含有するのが特に好ましい。中でも、一般式(1)で表される化合物としてリパスジルを用いる場合においては、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を、フリー体に換算して0.05〜5w/v%含有するのが好ましく、0.1〜3w/v%含有するのがより好ましく、0.1〜2w/v%含有するのが特に好ましい。
本明細書において「セルロースエーテル誘導体」とは、セルロースのヒドロキシ基の全部又は一部がエーテル結合を形成した誘導体を意味し、具体的には例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のアルキル(ヒドロキシアルキル)セルロース(セルロースのアルキル及びヒドロキシアルキルの混合エーテル);カルボキシメチルエチルセルロース等のカルボキシアルキル(アルキル)セルロース(セルロースのアルキル及びカルボキシアルキルの混合エーテル)又はその塩(具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等);カルボキシメチルセルロースナトリウム等のカルボキシアルキルセルロース又はその塩(具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等)などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
なお、セルロースエーテル誘導体は公知であり、公知の方法により製造しても良いし、市販のものを使用しても良い。
セルロースエーテル誘導体のエーテル化率(%)(アルキル基、ヒドロキシアルキル基等のエーテル結合を形成する置換基の置換率)は特に制限されないが、結晶析出抑制作用の観点から、10〜90%が好ましく、20〜80%が特に好ましい。なお、エーテル化率(%)は各セルロースエーテル誘導体につき第十六改正日本薬局方に記載された方法、又はこれに準じた方法により測定する。
水性組成物中のセルロースエーテル誘導体の含有量は特に限定されないが、結晶析出抑制作用の観点から、水性組成物全容量に対して0.1〜15w/v%含有するのが好ましく、0.5〜10w/v%含有するのがより好ましく、1〜5w/v%含有するのが特に好ましい。
また、水性組成物中の前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物とセルロースエーテル誘導体の含有質量比率は特に限定されないが、結晶析出抑制作用の観点から、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算して1質量部に対し、セルロースエーテル誘導体を0.25〜12質量部含有するのが好ましく、0.75〜8質量部含有するのがより好ましく、2〜5質量部含有するのが特に好ましい。中でも、一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である場合においては、結晶析出抑制作用の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、セルロースエーテル誘導体を0.1〜20質量部含有するのが好ましく、0.5〜15質量部含有するのがより好ましく、1〜10質量部含有するのが特に好ましい。
セルロースエーテル誘導体としては、結晶析出抑制作用の観点から、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキル(ヒドロキシアルキル)セルロース、並びにカルボキシアルキルセルロース及びその塩よりなる群から選ばれる1種以上が好ましく、C1−C6アルキルセルロース、ヒドロキシC1−C6アルキルセルロース、C1−C6アルキル(ヒドロキシC1−C6アルキル)セルロース、並びにカルボキシC1−C6アルキルセルロース及びその塩よりなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム及びカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルメロースナトリウムよりなる群から選ばれる1種以上がさらにより好ましく、メチルセルロースが特に好ましい。
また、別の観点から、セルロースエーテル誘導体としてはメチルセルロースが好ましい。試験例4に具体的に開示されるとおり、水性組成物を点眼剤として投与した場合において、メチルセルロースを含有せしめることにより、一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の眼組織への移行が促進され、特許文献7の開示からは予測し得ない速吸収化と生物学的利用率の向上が達成できることが明らかとなった。一般式(1)で表される化合物はRhoキナーゼ阻害作用等の薬理作用を有し、眼疾患(好適には、高眼圧症、緑内障及び眼底疾患から選ばれる疾患)の予防や治療に有用であることが知られている。そのため、セルロースエーテル誘導体としてメチルセルロースを含有する水性組成物は、低温保存時の結晶析出が抑制されるのみならず、眼疾患の予防や治療に有用な一般式(1)で表される化合物の眼組織への移行が促進されることで、より速やかに、かつより優れた眼疾患の予防・治療効果が奏されることとなり、眼科用剤(好適には点眼剤、眼軟膏剤)として好適に利用できるというメリットを有する。
本明細書において「メチルセルロース」は特に限定されず、メトキシ基の置換率、分子量、粘度等が異なるいずれのメチルセルロースを使用してもよく、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。メチルセルロースのメトキシ基の置換率は、結晶析出抑制作用及び/又は一般式(1)で表される化合物の眼組織への移行促進作用の観点から、26〜33%の範囲が好ましく、27.5〜31.5%の範囲がより好ましい。なお、メチルセルロースのメトキシ基の置換率の定量は、第十六改正日本薬局方に記載のメチルセルロースのメトキシ基の定量方法に従って行う。また、メチルセルロースの粘度は、結晶析出抑制作用及び/又は一般式(1)で表される化合物の眼組織への移行促進作用の観点から、1〜10000mPa・sが好ましく、3〜6000mPa・sがより好ましく、5〜2000mPa・sがさらに好ましく、7〜600mPa・sがさらにより好ましく、10〜150mPa・sが特に好ましい。なお、メチルセルロースの粘度測定は、第十六改正日本薬局方に記載のメチルセルロースの粘度測定法に従って行う。このようなメチルセルロースとしては、市販品としては例えば、メトローズSM−4、メトローズSM−15、メトローズSM−25、SM−100、SM−400、メトローズSM−1500、SM−4000(以上、信越化学工業(株))等が挙げられ、結晶析出抑制作用及び/又は一般式(1)で表される化合物の眼組織への移行促進作用の観点から、メトローズSM−15、メトローズSM−25、メトローズSM−100、メトローズSM−400が好ましい。なお、これらは適宜組み合わせて使用してもよい。
水性組成物中のメチルセルロースの含有量は特に限定されないが、結晶析出抑制作用及び/又は一般式(1)で表される化合物の眼組織への移行促進作用の観点から、水性組成物全容量に対して0.75〜8w/v%含有するのが好ましく、1.5〜7w/v%含有するのがより好ましく、2〜4w/v%含有するのが特に好ましい。
また、水性組成物中の前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物とメチルセルロースの含有質量比率は特に限定されないが、結晶析出抑制作用及び/又は一般式(1)で表される化合物の眼組織への移行促進作用の観点から、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算して1質量部に対し、メチルセルロースを0.6〜14質量部含有するのが好ましく、1.35〜11質量部含有するのがより好ましく、2.5〜7質量部含有するのが特に好ましい。中でも、一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である場合においては、結晶析出抑制作用及び/又はリパスジルの眼組織への移行促進作用の観点から、リパスジルのフリー体に換算して1質量部に対し、メチルセルロースを0.8〜13質量部含有するのが好ましく、1.6〜9質量部含有するのがより好ましく、3〜6質量部含有するのが特に好ましい。
本明細書において「水性組成物」とは、少なくとも水を含有する組成物を意味し、その性状としては、液状(溶液又は懸濁液)、半固形状(軟膏)が挙げられ、液状が好ましい。なお、組成物中の水としては例えば、精製水、注射用水、滅菌精製水等を用いることができる。
水性組成物に含まれる水の含有量は特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、90〜99.8質量%が特に好ましい。
水性組成物は、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、種々の剤形とすることができる。剤形としては、例えば、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤、シロップ剤等が挙げられる。剤形としては、一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用を有利に利用する観点から、眼科用剤、具体的には点眼剤、眼軟膏剤が好ましく、点眼剤が特に好ましい。
水性組成物には、上記した以外に、剤形に応じて、医薬品や医薬部外品等で利用される添加物を含んでいても良い。このような添加物としては、例えば、無機塩類、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、清涼化剤、分散剤、保存剤、油性基剤、乳剤性基剤、水溶性基剤等が挙げられる。
こうした添加物としては、具体的には例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルギン酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、イプシロン−アミノカプロン酸、ウイキョウ油、エタノール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エデト酸ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、カルボキシビニルポリマー、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、d−カンフル、dl−カンフル、キシリトール、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、グリセリン、グルコン酸、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、クレアチニン、クロルヘキシジングルコン酸塩液、クロロブタノール、結晶リン酸二水素ナトリウム、ゲラニオール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酸化チタン、ジェランガム、ジブチルヒドロキシトルエン、臭化カリウム、臭化べンゾドデシニウム、酒石酸、水酸化ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル45、精製ラノリン、D−ソルビトール、ソルビトール液、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、タウリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、チメロサール、チロキサポール、デヒドロ酢酸ナトリウム、トロメタモール、濃グリセリン、濃縮混合トコフェロール、白色ワセリン、ハッカ水、ハッカ油、濃ベンザルコニウム塩化物液50、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒアルロン酸ナトリウム、人血清アルブミン、氷酢酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェニルエチルアルコール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ベルガモット油、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物液、ベンジルアルコール、ベンゼトニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物液、ホウ砂、ホウ酸、ポビドン、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングルコール(70)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、d−ボルネオール、マクロゴール4000、マクロゴール6000、D−マンニトール、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メタンスルホン酸、l-メントール、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ユーカリ油、ヨウ化カリウム、硫酸、硫酸オキシキノリン、流動パラフィン、リュウノウ、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リンゴ酸、ワセリン等が例示される。
添加物としては、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、グリセリン、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、濃グリセリン、ホウ砂、ホウ酸、ポビドン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、マクロゴール4000、マクロゴール6000、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、ヒアルロン酸ナトリウム、ブドウ糖、l-メントール等が好ましい。
水性組成物は、さらに、上記した以外に、適用疾患等に応じて、他の薬効成分を含んでいても良い。このような薬効成分としては、例えば、ブナゾシン塩酸塩などのブナゾシン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα1受容体遮断薬;ブリモニジン酒石酸塩などのブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アプラクロニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα2受容体作動薬;カルテオロール塩酸塩などのカルテオロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ニプラジロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、チモロールマレイン酸塩などのチモロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベタキソロール塩酸塩などのベタキソロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、レボブノロール塩酸塩などのレボブノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベフノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メチプラノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むβ遮断薬;ドルゾラミド塩酸塩などのドルゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ブリンゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アセタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ジクロルフェナミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む炭酸脱水酵素阻害剤;イソプロピルウノプロストン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、タフルプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、トラボプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ビマトプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ラタノプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むプロスタグランジン類;ジピべフリン塩酸塩などのジピべフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エピネフリン、エピネフリンホウ酸塩、エピネフリン塩酸塩などのエピネフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む交感神経作動薬;ジスチグミン臭化物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ピロカルピン、ピロカルピン塩酸塩、ピロカルピン硝酸塩などのピロカルピン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、カルバコール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む副交感神経作動薬;ロメリジン塩酸塩などのロメリジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むカルシウム拮抗薬;デメカリウム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エコチオフェート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フィゾスチグミン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むコリンエステラーゼ阻害剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。
他の薬効成分としては、ラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びそれらの塩並びにそれらの溶媒和物よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
水性組成物のpHは特に限定されないが、4〜9が好ましく、4.5〜8.5がより好ましく、5〜8がさらにより好ましく、5.5〜7.5が特に好ましい。また、生理食塩水に対する浸透圧比は特に限定されないが、0.6〜3が好ましく、0.6〜2が特に好ましい。
水性組成物は、保存安定性、携帯性等の観点から、容器に収容されるのが好ましい。容器の形態は、水性組成物を収容可能であることを限度として特に限定されず、剤形等に応じて適宜選択、設定すればよい。このような容器の形態としては、具体的には例えば、注射剤用容器、吸入剤用容器、スプレー剤用容器、ボトル状容器、チューブ状容器、点眼剤用容器、点鼻剤用容器、点耳剤用容器、バッグ容器等が挙げられる。また、これらの容器はさらに箱、袋等によって包装されていてもよい。
容器の材質(材料)は特に限定されず、容器の形態に応じて適宜選択すればよい。具体的には例えば、ガラス、プラスチック、セルロース、パルプ、ゴム、金属等が挙げられる。加工性、スクイズ性や耐久性の観点から、プラスチック製であるのが好ましい。プラスチック製容器の樹脂としては、熱可塑性樹脂であるのが好ましく、例えば、低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレナフタレート)等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;スチレン系樹脂などが挙げられ、これらの混合体(ポリマーアロイ)であってもよい。容器としては、結晶析出抑制の観点から、ポリオレフィン系樹脂製の容器が好ましく、ポリプロピレン製の容器が好ましい。
水性組成物の適用疾患は特に限定されず、前記一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用等に応じて適宜選択すればよい。
具体的には例えば、一般式(1)で表される化合物の有するRhoキナーゼ阻害作用や眼圧低下作用に基づき、高眼圧症や緑内障の予防又は治療剤として利用できる。ここで、緑内障としては、より詳細には例えば、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、plateau iris syndrome、混合型緑内障、ステロイド緑内障、水晶体の嚢性緑内障、色素緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障などが挙げられる。
また、日本国特許第5557408号公報に開示されるように、眼底疾患(主として網膜及び/又は脈絡膜に発現する病変。具体的には例えば、高血圧と動脈硬化による眼底変化、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion)や網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion)等の網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病黄斑症、イールズ病(Eales disease)、コーツ病(Coats disease)等の網膜血管先天異常、ヒッペル病(von Hippel disease)、脈なし病(pulseless disease)、黄斑疾患(中心性網脈絡膜症(central serous chorioretinopathy)、嚢胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema)、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration)、黄斑円孔(macular hole)、近視性黄斑萎縮(myopic macular degeneration)、網膜硝子体界面黄斑変性症、薬物毒性黄斑変性症、遺伝性黄斑変性等)、(裂孔原性、牽引性、滲出性等の)網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症等が挙げられる。)の予防又は治療剤、より好適には糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫又は加齢黄斑変性の予防又は治療剤として利用できる。
なお、水性組成物を眼疾患(好適には、高眼圧症、緑内障及び眼底疾患から選ばれる疾患;特に好適には、高眼圧症及び緑内障から選ばれる疾患)の予防及び/又は治療剤として利用する場合においては、1日1〜3回程度、投与すればよい。
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の試験例において、リパスジル1塩酸塩2水和物は、例えば国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法により製造することが出来る。
[試験例1]保存試験
表1に示す成分及び分量を100mL当たりに含有する実施例1及び比較例1の水性組成物を常法により調製した。
得られた各水性組成物を−5℃で保存しつつ定期的に結晶析出の有無を目視により評価し、いずれの水性組成物に先に結晶析出が認められるかを確認した。先に結晶析出が認められなかったものを○、先に結晶析出が認められたものを×とした。
結果を表1に示す。
Figure 0006946396
表1記載の結果の通り、リパスジルを含有する水性組成物にさらにメチルセルロースを含有せしめた場合、メチルセルロースを含有しない場合と比較して低温保存時における結晶析出が抑制されることが明らかとなった。
[試験例2]保存試験 その2
表2に示す成分及び分量を100mL当たりに含有する実施例2及び比較例2の水性組成物を常法により調製した。
得られた各水性組成物を、試験例1と同様、−5℃で保存しつつ定期的に結晶析出の有無を目視により評価し、いずれの水性組成物に先に結晶析出が認められるかを確認した。先に結晶析出が認められなかったものを〇、先に結晶析出が認められたものを×とした。
結果を表2に示す。
Figure 0006946396
表2記載の結果の通り、リパスジルを倍量とし、かつグリセリンを無配合とした場合においても、試験例1と同様に、メチルセルロースを含有せしめることでメチルセルロースを含有しない場合と比較して低温保存時における結晶析出が抑制されることが明らかとなった。
[試験例3]保存試験 その3
表3に示す成分及び分量を100mL当たりに含有する実施例3〜6の水性組成物を常法により調製した。
得られた各水性組成物を−5℃で3ヶ月間保存した後、結晶析出の有無を目視により評価した。なお、結晶析出が認められない場合を○、結晶析出が認められた場合を×とした。
結果を表3に示す。
Figure 0006946396
表3記載の結果の通り、メチルセルロースの含有量あるいは種類(グレード)の異なる4種の水性組成物のいずれもが−5℃で3ヶ月保存後も結晶析出が認められず、保存安定性に優れることが明らかとなった。
以上の試験例1〜3の結果から、リパスジルに代表される一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物にさらにメチルセルロースを含有せしめた場合、低温で保存した場合でも相対的に結晶が析出し難く、保存安定性に優れることが明らかとなった。
[試験例4]眼組織移行試験
水性組成物を眼科用剤(好適には点眼剤;より好適には、高眼圧症、緑内障及び眼底疾患から選ばれる疾患の予防及び/又は治療用点眼剤)として利用する場合の有用性を評価するため、水性組成物を眼組織に適用した場合における、組織移行性を評価した。
具体的には、表4に示す成分及び分量を100mL当たりに含有する実施例7及び比較例3の水性組成物を常法により調製した。得られた各水性組成物を白色家兎の眼に50μlずつ点眼し、投与の0.25時間、0.5時間、1時間、2時間及び4時間後に眼房水及び虹彩・毛様体を採取し、眼房水中あるいは虹彩・毛様体中のリパスジルの濃度を測定した。なお、組織中のリパスジルの濃度は、LC−MS/MSを用いて濃度既知の標準物質とピーク面積を比較することにより算出した。
得られた各時間の各組織中リパスジル濃度より、薬剤投与の0〜4時間のAUC(AUC0-4)を算出した。また、リパスジルの組織中最高濃度到達時間をTmaxとして評価した。
結果を表4に示す。
Figure 0006946396
表4記載の結果の通り、眼房水及び虹彩・毛様体の両組織において、実施例7の水性組成物の方が組織中最高濃度到達時間(Tmax)が短くなっており、眼組織への移行速度の向上(速吸収化)が確認された。また、両組織において、メチルセルロースを含有する実施例7の水性組成物の方が、メチルセルロースを含有しない比較例3の水性組成物と比較して、AUCの増加が認められた。
なお、メチルセルロースを含有する点眼剤は、点眼時にゲル化することにより薬物を眼表面に滞留せしめ、薬効成分の生物学的利用能を増加させることが知られている(特許文献7)。斯かる薬物の滞留による生物学的利用能の増加は、薬物の眼表面での高濃度化によるものと理解されており、AUC自体は向上させるものの組織中最高濃度到達時間に変化はないはずである。にもかかわらず、本試験においては、驚くべきことに組織中最高濃度到達時間自体の短縮が認められた。
このことから、本試験において認められたリパスジルの眼組織への移行速度の向上(速吸収化)は、単に眼表面でのゲル化のみによるものではなく、リパスジル等の一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物とメチルセルロースを組み合わせたことによる作用であると推察された。
以上の試験結果から、メチルセルロースは、リパスジルに代表される一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の眼組織への移行を促進する作用を有することが明らかとなった。
[製造例1〜27]
表5〜表7に記載の成分及び分量(水性組成物100mL当たりの量(g))を含有する水性組成物を常法により製造できる。
Figure 0006946396
Figure 0006946396
Figure 0006946396
[製造例28〜54]
製造例1〜27において、リパスジル1塩酸塩2水和物の代わりに同量の4−ブロモ−5−{[(2S)−2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル]スルホニル}イソキノリンを用いたものを、製造例28〜54の水性組成物として、常法により製造できる。
本発明によれば、保存安定性に優れた水性組成物を提供でき、医薬品産業等において好適に利用できる。

Claims (1)

  1. リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物に、メチルセルロースを含有せしめる工程を含む、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の眼組織への移行の促進方法。
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