JP6946063B2 - ポリプロピレン組成物および成形品 - Google Patents

ポリプロピレン組成物および成形品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリプロピレン組成物および成形品、より詳しくは射出成形用ポリプロピレン組成物および射出成形品に関する。
ポリプロピレンは、優れた物理的特性を有しかつ衛生面にも優れているため食品容器として有用である。しかしポリプロピレン容器は低温で使用する場合に耐衝撃性が低下するという問題がある。さらにポリプロピレン容器には、高い剛性、および内容物を確認できるように透明性が求められており、すなわち透明性、剛性、低温での耐衝撃性(耐寒衝撃性)のバランスが求められている。透明性と耐寒衝撃性の改善を目的として、特許文献1にはエチレン単位が2.0〜4.0重量%のエチレン−プロピレン共重合体の存在下、エチレン単位が74〜86重量%のエチレン−1−ブテン共重合体を重合させた組成物であって、エチレン−1−ブテン共重合体の含有量が10〜20重量%である組成物が提案されている。また特許文献2には、エチレン単位が1.2重量%以下のエチレン−プロピレン共重合体またはホモポリプロピレンの存在下、エチレン単位が74〜86重量%のエチレン−1−ブテン共重合体を重合させた組成物であって、エチレン−1−ブテン共重合体の含有量が22〜32重量%である組成物が提案されている。さらに、特許文献3には耐寒衝撃性を改善することを目的とした、エチレン単位が2.0〜4.0重量%のエチレン−プロピレン共重合体の存在下、エチレン単位が74〜86重量%のエチレン−1−ブテン共重合体を重合させた組成物であって、エチレン−1−ブテン共重合体の含有量が25〜35重量%である組成物が提案されている。
特開2012−126829号公報 特開2012−107136号公報 特開2012−126828号公報
しかしながら、前記特許文献に記載の組成物は、透明性と剛性と耐寒衝撃性のバランスが未だ十分ではなかった。かかる事情を鑑み、本発明は透明性と剛性と耐寒衝撃性のバランスに優れたポリプロピレン組成物を提供することを課題とする。
発明者らは、プロピレン−エチレンコポリマー中のエチレン由来単位含有量およびエチレン−1−ブテンコポリマー中の1−ブテン由来単位含有量を特定の範囲とすることにより前記課題が解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]成分(1)として、1.5〜2.5重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン−エチレンコポリマー、
成分(2)として、14〜18重量%の1−ブテン由来単位を含むエチレン−1−ブテンコポリマー、および
核剤を含むポリプロピレン組成物であって、
以下の要件:
1)成分(1)と成分(2)の重量比が75〜83:25〜17である
2)当該組成物のキシレン可溶分の極限粘度が0.8〜1.2dl/gである
3)当該組成物のメルトフローレート(230℃、荷重2.16kg)が15〜40g/10分である
を満たす、ポリプロピレン組成物。
[2]成分(1)および成分(2)の合計100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の核剤を含む、[1]に記載のポリプロピレン組成物。
[3]前記[1]または[2]に記載のポリプロピレン組成物の射出成形品。
[4]前記[3]に記載の成形品を含む、容器。
[5]前記[3]に記載の成形品を含む、蓋。
本発明により、透明性と剛性と耐寒衝撃性のバランスに優れたポリプロピレン組成物を提供できる。
発明の実施するための形態
以下、本発明を詳細に説明する。「X〜Y」はその端値であるXおよびYを含む。
1.ポリプロピレン組成物
本発明のポリプロピレンは、以下の成分(1)および(2)を含む。
成分(1):1.5〜2.5重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン−エチレンコポリマー
成分(2):14〜18重量%の1−ブテン由来単位を含むエチレン−1−ブテンコポリマー
(1)成分(1)
成分(1)はプロピレン−エチレンコポリマーであり、1.5〜2.5重量%のエチレン由来単位を含む。1.5重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン−エチレンコポリマーとは、エチレン由来単位とプロピレン由来単位との重量比が1.5:98.5であるコポリマーである。他のコポリマーについても同様である。エチレン由来単位の含有量の上限値は2.5重量%以下であるが、2.3重量%以下が好ましい。当該量が上限値を超えると剛性と透明性が低下する。エチレン由来単位の下限値は1.5重量%以上であるが、1.7重量%以上が好ましい。当該量が下限値未満であると透明性が低下する。成分(1)には、成分(2)を含む重合体の製造時に発生するリサイクルガス等により、1重量%未満の1−ブテン単位が含まれていてもよい。成分(1)はランダムコポリマーであることが好ましい。
(2)成分(2)
成分(2)はエチレン−1−ブテンコポリマーであり、14〜18重量%の1−ブテン由来単位を含む。1−ブテン由来単位の含有量の上限値は18重量%以下であるが、17重量%以下が好ましい。当該量が上限値を超えると透明性が低下する。1−ブテン由来単位の下限値は14重量%以上であるが、15重量%以上が好ましい。当該量が下限値未満であると耐寒衝撃性が低下する。成分(2)には、成分(1)を含む重合体の製造時に発生するリサイクルガス等により、1重量%未満のプロピレン単位が含まれていてもよい。
(3)組成比
成分(1)と成分(2)の組成比(重量比)は75〜83:25〜17であるが、76〜80:24〜20が好ましい。成分(1)の量が上限値を超えると耐寒衝撃性が低下する。成分(1)の量が下限値未満であると、剛性が低下し、かつ重合パウダーが互着し易くなって貯蔵または輸送経路内での閉塞リスクが増してポリプロピレン組成物の製造が困難になる傾向がある。
(4)核剤
本発明のポリプロピレン組成物は核剤を含む。核剤とは樹脂中の結晶成分のサイズを小さく制御して特に透明性を高めるために用いられる添加剤(透明核剤)である。核剤の量は、成分(1)と(2)の合計量(以下「樹脂成分」ともいう)100重量部に対して0.01〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜0.4重量部、さらに好ましくは0.01〜0.04重量部である。核剤を含まないと満足する透明性と耐衝撃性が得られない。前記上限値を超えて核剤を含有させても、結晶核形成の促進効果は頭打ちとなり、単純に製造コスト増となるため、産業上大量安価に製造する場合においては現実的でない。
核剤は特に限定されず、当該分野で通常使用されるものを使用してよいが、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、およびキシリトール系核剤等の有機系核剤から選択されることが好ましい。ノニトール系核剤として、例えば、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールが挙げられる。ソルビトール系核剤として、例えば、1,3:2,4−ビス−o−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールが挙げられる。リン酸エステル系核剤として、例えば、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム塩、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)アルミニウム塩、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リチウム塩等の芳香族リン酸エステル系核剤が挙げられる。トリアミノベンゼン誘導体系核剤として、例えば、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロパンアミド)ベンゼン等が挙げられる。カルボン酸金属塩核剤としては、例えば、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム、アジピン酸アルミニウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、セバシン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム、ジ−パラ−t−ブチル安息香酸アルミニウム、ジ−パラ−t−ブチル安息香酸チタン、ジ−パラ−t−ブチル安息香酸クロム、ヒドロキシ−ジ−t−ブチル安息香酸アルミニウムなどが挙げられる。キシリトール系核剤として、例えば、ビス−1,3:2,4−(5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−2−ナフトアルデヒドベンジリデン)1−アリルキシリトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1−プロピルキシリトールが挙げられる。上記核剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂成分と前記核剤とを混合し、溶融混練することによって核剤を含有するポリプロピレン組成物を調製できる。この際、必要に応じて、前記樹脂成分以外の樹脂またはゴム、あるいは後述する添加剤をさらに混合してもよい。各成分を添加する順序は限定されない。混合方法も限定されず、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等のミキサーを用いる方法が挙げられる。混合した後、得られた混合物を溶融混練し、さらにペレット化してもよい。溶融混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等を用いることができる。
(4)特性
1)XSIV
本発明のポリプロピレン組成物のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)は、当該組成物における結晶性を持たない成分の分子量の指標である。XSIVは25℃のキシレンに可溶な成分を得て、当該成分の極限粘度を定法にて測定することで求められる。本発明においてXSIVは0.8〜1.2dl/gである。XSIVが上限値を超えると透明性が低下し、下限値未満であるとポリプロピレン組成物の製造が困難となる。この観点から、前記極限粘度は好ましくは0.9〜1.1dl/gである。
2)メルトフローレート
本発明のポリプロピレン組成物の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(以下「MFR」ともいう)は15〜40g/10分である。MFRが上限値を超えると耐寒衝撃性および透明性が低下し、下限値未満であると成形が困難となる。この観点から、MFRは好ましくは20〜40g/10分、より好ましくは25〜35g/10分である。
(5)他の成分
本発明のポリプロピレン組成物には、酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展および他の有機および無機顔料などの当該分野で通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。また本発明のポリプロピレン組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記樹脂成分以外の樹脂またはゴムを1種以上含有してもよい。
2.製造方法
本発明のポリプロピレン組成物は公知の方法に従って製造できるが、成分(1)の原料モノマーおよび成分(2)の原料モノマーを、2つ以上の反応器を用いて重合することが好ましい。特に成分(1)の原料モノマーを重合して成分(1)のコポリマーを製造し、当該コポリマーの存在下において成分(2)の原料モノマーを重合する方法が好ましい。重合は液相中、気相中または液−気相中で実施できる。重合温度は常温〜150℃が好ましく、40℃〜100℃がより好ましい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは33〜60barの範囲であり、気相中で行われる場合には5〜30barの範囲である。連鎖移動剤(例えば水素またはZnEt)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
重合には、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を含有する固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、ならびに(C)外部電子供与体化合物を含むZN型触媒や、メタロセン触媒を使用できる。成分(A)中の電子供与体化合物(「内部電子供与体化合物」ともいう)としては、フタレート系化合物、スクシネート系化合物、ジエーテル系化合物が挙げられ、本発明ではいずれの内部電子供与体化合物も使用できる。
3.用途
本発明のポリプロピレン組成物は射出成形用樹脂組成物として最適である。本発明のポリプロピレン組成物は流動性に優れるので、射出成形によって厚さ0.5〜3mmの成形体とすることができる。ポリプロピレン組成物は以下の物性を備えることが好ましい。
1)ヘーズ:JIS K7136
厚さ0.5mmの平板で測定した場合に、9%以下であることが好ましく、8.5%以下であることがより好ましい。下限値は限定されないが、通常は1%以上程度である。ヘーズの値が小さい程、透明性に優れる。
2)ホワイトインデックス(WI)
ホワイトインデックス(以下「WI」という)は、ヘーズでは評価できない「白っぽさ」に起因する不透明度の指標であり、この値が高いほど見た目が白っぽいことを意味する。WIはASTM E313に記載されたTaubeの式(下記の(1)式)によって算出される。具体的には以下の工程によって求められる。
i)JIS Z8722における幾何条件bかつ標準Cの測色用イルミナントで、サンプルを測色してXYZ表色系の三刺激値X、Y、Zを求め、
ii)前記三刺激値X、Y、Zの内YおよびZを下記式(1)に代入し、WIを算出する。
WI=3.388Z−3Y (1)
本発明のポリプロピレン組成物のWIは、0.5mmの平板で測定した場合に、4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましい。下限値は限定されないが、通常は0.4以上程度である。
3)剛性
本発明のポリプロピレン組成物は、900〜1300MPaの曲げ弾性率(JIS K6921−2)を有することが好ましい。
4)耐寒衝撃性
本発明のポリプロピレン組成物は、10J以上の面衝撃強度(−20℃)を有することが好ましい。
本発明のポリプロピレン組成物は前記物性を有するので、飲料容器およびその蓋として有用であり、特に−20℃等の低温状態で用いられる容器およびその蓋として有用である。本発明のポリプロピレン組成物を射出成形して、直接、容器および蓋とすることもできるが、押出成形または射出成形してシート等の薄肉成形体とし、さらにこれを真空成型等の二次加工に供することによって容器および蓋とすることもできる。容器および蓋は、当該ポリプロピレン組成物以外の部材を有していてもよい。容器または蓋の形状は公知のとおりとしてよいが、0.1〜0.7mmの厚さを有することが好ましい。しかしながら本発明のポリプロピレン組成物の用途は上記に限定されず、一般雑貨用途等にも有用である。
[実施例1]
MgCl上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入し、液相状態のプロピレンにエチレンをフィードして成分(1)であるプロピレン−エチレンランダムコポリマーを製造し、二段目の気相重合反応器で成分(2)であるエチレン−1−ブテンコポリマーを製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度、エチレン濃度が、それぞれ70℃、0.80モル%、0.53モル%、二段目の反応器では、重合温度、H2/C2、C4/(C2+C4)が、それぞれ80℃、0.30モル比、0.35モル比であった。また、成分(2)の量が21.6重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られた樹脂成分100重量部に対し、核剤としてBASF社製のIRGACLEAR XT386(トリアミノベンゼン誘導体系核剤)を0.018重量部、酸化防止剤として、BASF社製B225を0.2重量部、中和剤として、淡南化学株式会社製カルシウムステアレートを0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌、混合した。ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いてシリンダ温度230℃で当該混合物を押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状のポリプロピレン組成物を得た。当該組成物について、後述する方法により評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]
二段目の反応器のC4/(C2+C4)を0.32モル比に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン組成物を製造し評価した。
[実施例3]
二段目の反応器のC4/(C2+C4)を0.31モル比に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン組成物を製造し評価した。
[実施例4]
核剤として、BASF社製のIRGACLEAR XT386の代わりに、ミリケン社製のMillad NX8000J(ノニトール系核剤)0.3重量部を用いた以外は、実施例3と同様にしてポリプロピレン組成物を製造し評価した。
[比較例1]
二段目の反応器のC4/(C2+C4)を0.41モル比に変更すると共に、エチレン−1−ブテンコポリマーの量が21.7重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、実施例1と同様にして表1に示す比較用ポリプロピレン組成物を得た。当該組成物について、実施例1と同様にして評価した。
[比較例2]
一段目の反応器において、エチレンをフィードせず、水素濃度を0.97モル%に変更して、プロピレン単独重合体を重合し、二段目の反応器では、H2/C2を0.27モル比に変更すると共に、エチレン−1−ブテンコポリマーの量が27.0重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、比較例1と同様にして比較用ポリプロピレン組成物を製造し評価した。
[比較例3]
重合に用いる固体触媒を、欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。当該固体触媒は、MgCl上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。当該固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、−5℃で5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を重合反応器に導入した後、水素とプロピレン、エチレンをフィードし、重合温度、水素濃度、エチレン濃度を、それぞれ75℃、1.09モル%、0.60モル%とし、圧力を調整することよって、2.3重量%のエチレン由来単位を含み、MFRが36g/10分のプロピレンーエチレンランダムコポリマーを製造した。
上記プロピレン−エチレンランダムコポリマー100重量部に対し、核剤として、BASF社製のIRGACLEAR XT386の代わりに株式会社ADEKA製アデカスタブNA−21(リン酸エステル系核剤)を0.23重量部、さらにLLDPE(JIS K7210−1に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定したMFRが3.5g/10分、JIS K 7112によって測定された密度が0.91g/cm)を10重量部添加し、実施例1と同様にしてMFRが30g/10分の比較用ポリプロピレン組成物を製造し評価した。
[比較例4]
核剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして比較用ポリプロピレン組成物を製造し評価した。
[測定条件]
1)MFR
MFRは、JIS K7210−1に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
2)成分(1)中のエチレン由来単位量および成分(2)中の1−ブテン由来単位量
1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子株式会社製JNM LA−400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C−NMR法で測定した。
3)ポリプロピレン組成物のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)
以下の方法によってポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分を得て、キシレン可溶分の極限粘度(XSIV)を測定した。
ポリプロピレンのサンプル2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間撹拌し、組成物を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却した。これにより得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100mL採取し、アルミニウムカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置して、キシレン可溶分を得た。
極限粘度は、テトラヒドロナフタレン中、135℃において毛細管自動粘度測定装置(SS−780−H1、株式会社柴山科学器械製作所製)を用いて測定した。
4)ヘーズ
射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT α100C)を用い、溶融樹脂温度を250℃、金型温度40℃、平均射出速度35mm/秒、保圧時間5秒、全サイクル時間43秒の条件にて、ポリプロピレン組成物から100mm×100mm×0.5mmの平板を作製した。この試験片を用い、JIS K7136に従い、ヘーズ測定装置(株式会社村上色彩技術研究所製HM−150型)によりヘーズを測定した。
5)WI
測色計(日本電色工業株式会社製SE2000)を用い、JIS Z8722における幾何条件bかつ標準Cの測色用イルミナントで、方法bにてヘーズ測定に用いた平板状試験片を測色して、XYZ表色系の三刺激値X、Y、Zを求めた。次いで、下記式よりWIを算出した。
WI=3.388Z−3Y
6)面衝撃強度
射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT α100C)を用い、溶融樹脂温度を230℃、金型温度40℃、平均射出速度35mm/秒、保圧時間10秒、全サイクル時間45秒の条件にて、ポリプロピレン組成物から130mm×130mm×2.0mmの平板を作製した。株式会社島津製作所製ハイドロショットHITS−P10を用い、−20℃に調整した槽内で、内径40mmφの穴の開いた支持台に測定用試験片を置き、内径76mmφの試料押えを用いて固定した後、半球状の打撃面を持つ直径12.7mmφのストライカーで、1m/秒の衝撃速度で試験片を打撃し、JIS K7211−2に従いパンクチャーエネルギー(J)を求めた。4個の測定用試験片各々のパンクチャーエネルギーの平均値を面衝撃強度とした。
7)曲げ弾性率
JIS K6921−2に従い、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT S2000i)を用い、溶融樹脂温度を200℃、金型温度40℃、平均射出速度200mm/秒、保圧時間40秒、全サイクル時間60秒の条件にて、ポリプロピレン組成物からJIS K7139に規定する多目的試験片(タイプA1)を射出成形し、幅10mm、厚さ4mm、長さ80mmに加工して測定用試験片(タイプB2)を得た。株式会社島津製作所製全自動試験機(AG−X10kN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、支点間距離64mm、試験速度2mm/分の条件で、タイプB2測定用試験片の曲げ弾性率を測定した。
Figure 0006946063
表1に示すとおり、本発明のポリプロピレン組成物は、透明性と剛性と耐寒衝撃性のバランスに優れる。ヘーズでは評価できない白っぽさに起因する不透明性に関しても、本発明のポリプロピレン組成物は優れた透明性を有することも明らかである。

Claims (6)

  1. 成分(1)として、1.5〜2.5重量%のエチレン由来単位を含むプロピレン−エチレンコポリマー、
    成分(2)として、14〜18重量%の1−ブテン由来単位を含むエチレン−1−ブテンコポリマー、および
    核剤を含むポリプロピレン組成物であって、
    以下の要件:
    1)成分(1)と成分(2)の重量比が75〜83:25〜17である
    2)当該組成物のキシレン可溶分の極限粘度が0.8〜1.2dl/gである
    3)当該組成物のメルトフローレート(230℃、荷重2.16kg)が20〜40g/10分である
    を満たす、ポリプロピレン組成物。
  2. 成分(1)および成分(2)の合計100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の核剤を含む、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
  3. 前記成分(1)と成分(2)の重量比が75〜80:25〜20である、請求項1または2に記載のポリプロピレン組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン組成物の射出成形品。
  5. 請求項に記載の成形品を含む、容器。
  6. 請求項に記載の成形品を含む、蓋。
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