JP6944690B2 - グルタチオン−s−トランスフェラーゼ(gst)の発現増強剤 - Google Patents

グルタチオン−s−トランスフェラーゼ(gst)の発現増強剤 Download PDF

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本発明は、脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤に関する。
脳血管障害は脳血管疾患とも称され、脳出血(出血性脳血管障害)と脳梗塞(虚血性脳血管障害)との2つに大別される。これらのうち、脳梗塞(虚血性脳血管障害)は、血管を詰まらせる原因によってさらに脳血栓および脳塞栓に分類される。脳の血管において生じた血の塊(血栓)が血管を詰まらせるのが脳血栓である。一方、脳塞栓は、心臓など脳以外の血管において生じた血栓が血流に乗って脳へと運ばれた後に脳の血管を詰まらせることに起因する。
現在、急性期の脳梗塞に対する薬物治療としては、フリーラジカル(ヒドロキシラジカル)を捕捉するエダラボン(商品名:ラジカット(登録商標))のみが、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症の治療に臨床応用されている(非特許文献1)ものの、さらなる新規治療薬の登場は見られていない。さらに、エダラボンは治療可能時間が14日以内と短く、劇症肝炎や腎障害(急性腎不全、ネフローゼ症候群)などの重篤な副作用も問題となっている。このため、脳梗塞等の脳血管障害の治療薬の開発は喫緊の課題である。
また、高齢社会の到来を迎えつつある本邦においては特に、「未病」の観点から少量を長期にわたって服用することで脳梗塞等の脳血管障害や認知症の発症を未然に防止するための予防薬やいわゆるサプリメントに対するニーズもきわめて強い。このことからも、長期服用を前提とした副作用の少ない予防薬の開発は非常に優先度の高い課題である。
ところで、アクロレインは、生体内ではアミノ酸およびポリアミンの代謝過程や膜脂質の過酸化過程において生成されることが知られており、また、組織障害時にはポリアミン(特にスペルミン)から主に生産される(非特許文献2、3)。スペルミンは細胞中に数mMから数十mMオーダーの濃度で存在し、その大半はポリアミン−RNA複合体の形態で存在する(非特許文献4)。組織が障害を受けると、スペルミンがRNAから遊離し、スペルミンオキシダーゼによって酸化分解を受け、アクロレインおよび過酸化水素(H)を生じるが、本発明者らは、脳梗塞による細胞障害の発生にはこのアクロレインの毒性が関与していることを報告しており(非特許文献3)、無症候性脳梗塞(かくれ脳梗塞)の保有者は脳血管障害および認知症を発症するリスクがそれぞれ8.8倍および2倍に高まることも見出している。なお、アクロレインは、細胞障害の原因と考えられているスーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、およびヒドロキシルラジカルなどの活性酸素種(ROS)(非特許文献5)と比較しても、細胞毒性が非常に強いことが報告されている(非特許文献6、7)。また、アルデヒド基を有するアクロレインは反応性が高く、タンパク質のシステイン、リジン、ヒスチジン等の残基と選択的に反応してタンパク質抱合アクロレイン(PC−Acro)を生成することによりタンパク質を不活化することから、脳梗塞による細胞障害の発生にはこのPC−Acroの発生も関与していると考えられている(非特許文献3)。
アクロレインは、チオール基(SH基)との相互作用がアミノ基(NH基)との相互作用よりもはるかに速いことが報告されており(非特許文献7)、SH基を有するグルタチオン(GSH)などのチオール化合物と結合することや、その代謝がアルデヒドデヒドロゲナーゼなどの酵素により行われていることが知られている。GSHは細胞中で最も豊富に存在するチオール化合物であることが知られており、細胞中に数mMから数十mMオーダーの濃度で存在する(非特許文献8、9)。すなわち、アクロレインは、GSHと結合してアクロレイン−GSH抱合体を形成し、酵素による代謝を受けて無毒化され、尿中代謝物として排泄される。このため、GSHレベルが低下するとアクロレインの代謝が低下し、その結果としてアクロレインがタンパク質や核酸と相互作用することでこれらの物質を不活性化させ、これによって細胞障害等が発生し、ひいては脳梗塞等の障害が顕在化することとなる。
なお、アクロレインをGSHと反応させることによりアクロレイン−GSH抱合体へと変換する反応は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)という酵素により触媒されるが、このGSTを作用点として脳保護作用が発現する現象や、GSTに作用して脳保護作用を発現しうる物質はこれまで知られていない。
The Edaravone Acute Brain Infarction Study Group. Effect of novel free radical scavenger, Edaravone (MCI-186), on acute brain infarction. Randomized, placebo-controlled, double-blind study at multicenter. Cerebrovasc Dis 2003;15:222-229 Uchida K, Kanematsu M, Morimitsu Y, Osawa T, Noguchi N, Niki E (1998) Acrolein is a product of lipid peroxidation reaction. Formation of free acrolein and its conjugate with lysine residues in oxidized low density lipoproteins. J Biol Chem 273, 16058-16066 Igarashi K, Kashiwagi K (2011) Protein-conjugated acrolein as a biochemical marker of brain infarction. Mol Nutr Food Res 55, 1332-1341 Igarashi K, Kashiwagi K (2010) Modulation of cellular function by polyamines. Int J Biochem Cell Biol 42, 39-51 Giorgio M, Trinei M, Migliaccio E, Pelicci PG (2007) Hydrogen peroxide: a metabolic by-product or a common mediator of ageing signals? Nat Rev Mol Cell Biol 8, 722-728 Yoshida M, Tomitori H, Machi Y, Hagihara M, Higashi K, Goda H, Ohya T, Niitsu M, Kashiwagi K, Igarashi K (2009) Acrolein toxicity: Comparison with reactive oxygen species. Biochem Biophys Res Commun 378, 313-318 Sharmin S, Sakata K, Kashiwagi K, Ueda S, Iwasaki S, Shirahata A, Igarashi K (2001) Polyamine cytotoxicity in the presence of bovine serum amine oxidase. Biochem Biophys Res Commun 282, 228-235 Perry TL, Berry K, Hansen S, Diamond S, Mok C (1971) Regional distribution of amino acids in human brain obtained at autopsy. J Neurochem 18, 513-519 Tomitori H, Nakamura M, Sakamoto A, Terui Y, Yoshida M, Igarashi K, Kashiwagi K (2012) Augmented glutathione synthesis decreases acrolein toxicity. Biochem Biophys Res Commun 418, 110-115
本発明は、従来公知の脳保護薬に代替しうる新規な脳血管障害および/または認知症の予防・治療・症状進展抑制薬を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述したような従来技術の現状に鑑み、鋭意検討を行なった。その過程で、数多くの化合物について脳血管障害に対する予防・治療効果を確認した。そうしたところ、驚くべきことに、N−アセチルシステイン(本明細書中、「NAC」とも称する)およびそのエステル誘導体が、脳梗塞モデルマウスにおける脳梗塞に対して予防・治療効果を示すことを見出した。
上記の知見に基づき、本発明者らは、NACおよびそのエステル誘導体が脳梗塞に対して予防効果を示すメカニズムについて、上記化合物がアクロレインの産生を阻害することによるのではないかとの仮説を設定した。しかしながら、上記化合物投与群とコントロール群との間で脳梗塞モデルマウスの脳の梗塞部位におけるポリアミン量に変化は見られなかったことから、上記仮説は棄却された。
このため、本発明者らは、別のメカニズム仮説として、NACおよびそのエステル誘導体が有するチオール基(−SH基)がアルデヒドであるアクロレインと直接的に反応することでアクロレインの解毒に寄与しているのではないかと考えた。しかしながら、この仮説も棄却されることとなった。すなわち、本発明者らは、脳梗塞モデルマウスの脳の正常部位および梗塞部位におけるGSH量およびPC−Acro量を調べたところ、梗塞部位においてはGSH量が減少傾向にあり、また、PC−Acro量は減少していた。これらの知見に基づき、本発明者らは、GSTの発現量の増加が脳梗塞モデルマウスにおける脳梗塞への予防・治療効果をもたらしているのではないかとの仮説を設定した。そして実際にGSTの発現量が増加していることを確認することで当該仮説を実証して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、下記一般式(1):
Figure 0006944690
式中、Rは、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2〜30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30のヘテロアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数4〜30のヘテロアリールアルキル基である、
で表される化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する、脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤が提供される。
ここで、前記一般式(1)におけるRは、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜30のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数7〜30のアリールアルキル基であることが好ましい。また、前記一般式(1)におけるRは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数7〜14のアリールアルキル基であることがより好ましい。さらに、前記一般式(1)におけるRは、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基であることがさらに好ましい。
また、本発明の他の形態によれば、GSTの発現または活性を増強する物質を有効成分として含有する、脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤もまた、提供される。
ここで、前記GSTは、GST−π、GST−θおよび/またはGST−μであることが好ましい。また、前記GSTの発現または活性を増強する物質は、上述した一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。さらに、上述した予防、治療および/または症状進展抑制剤は、脳梗塞の予防、治療および/または症状進展抑制剤であることが好ましい。
なお、上述した形態に係る脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤については、連続した投与日数が15日以上であることが好ましい。
さらに、本発明のさらに他の形態によれば、GSTの発現または活性を増強する物質を有効成分として含有する、脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制用飲食品もまた、提供される。
ここで、前記GSTの発現または活性を増強する物質は、上述した一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。また、上述した予防、治療および/または症状進展抑制用飲食品は、脳梗塞の予防、治療および/または症状進展抑制用飲食品であることが好ましい。さらに、当該形態に係る飲食品は、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、疾病リスク低減表示が付された食品、または病者用食品であることが好ましい。
また、本発明のさらに他の形態によれば、GSTの発現または活性を増強する物質の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、脳血管障害および/または認知症を予防し、治療し、および/またはその症状の進展を抑制する方法もまた、提供される。ここで、前記GSTの発現または活性を増強する物質は、上述した一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
本発明によれば、従来公知の脳保護薬に代替しうる新規な脳血管障害および/または認知症の予防・治療・症状進展抑制薬が提供される。
実施例において、NACおよびそのエステル誘導体(3種)の脳梗塞に対する治療効果について脳梗塞モデルマウスを用いて検討した結果を示す脳切片の写真(図1の上段)、および各サンプルにおける梗塞体積を算出した結果を示すグラフ(図1の下段)である。 実施例において、NACおよびそのエステル誘導体(2種)の脳梗塞に対する予防効果について脳梗塞モデルマウスを用いて検討した結果を示す脳切片の写真(図2の上段)、および各サンプルにおける梗塞体積を算出した結果を示すグラフ(図2の下段)である。 実施例において、NACおよびそのエステル誘導体(2種)のいずれかを投与した脳梗塞モデルマウスの梗塞部位における各種ポリアミンの量を測定した結果を示すグラフである。 実施例において、NACおよびそのエステル誘導体(2種)のいずれかを投与した脳梗塞モデルマウスの梗塞部位における総グルタチオン(tGSH)の量を測定した結果を示すグラフである。 実施例において、NACおよびそのエステル誘導体(2種)のいずれかを投与した脳梗塞モデルマウスの梗塞部位におけるPC−Acro量を測定した結果を示すウエスタンブロッティングのバンドの写真(図5のA)、および各サンプルにおけるPC−Acro量の相対値を測定した結果を示すグラフ(図5のB)である。 実施例において、NACおよびそのエステル誘導体(2種)のいずれかを投与した脳梗塞モデルマウスの梗塞部位におけるGST−πの発現量を測定した結果を示すウエスタンブロッティングのバンドの写真(図6のA)、および各サンプルにおけるGST−πの発現量の相対値を測定した結果を示すグラフ(図6のB)である。 実施例において、NACおよびそのエステル誘導体(2種)のいずれかを投与した脳梗塞モデルマウスの梗塞部位におけるGST−θの発現量を測定した結果を示すウエスタンブロッティングのバンドの写真(図7のA)、および各サンプルにおけるGST−θの発現量の相対値を測定した結果を示すグラフ(図7のB)である。 実施例において、NACおよびそのエステル誘導体(2種)のいずれかを投与した脳梗塞モデルマウスの梗塞部位におけるGST−μの発現量を測定した結果を示すウエスタンブロッティングのバンドの写真(図8のA)、および各サンプルにおけるGST−μの発現量の相対値を測定した結果を示すグラフ(図8のB)である。 実施例において、GST−πの存在下または非存在下における遊離アクロレイン量の経時的な変化をAlarconらの方法により測定した結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための具体的な形態について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の具体的な形態のみに限定されるわけではない。
本発明の一形態は、下記一般式(1):
Figure 0006944690
で表される化合物(NACまたはそのエステル誘導体)の少なくとも1種を有効成分として含有する、脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤である。
一般式(1)において、Rは、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2〜30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30のヘテロアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数4〜30のヘテロアリールアルキル基である。
上記「アルキル基」は、炭素数1〜30の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、3-メチルブチル基、2−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、オクチル基、1−メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、ノナニル基、またはデシル基等が挙げられる。
上記「シクロアルキル基」は、炭素数3〜30のシクロアルキル基であり、好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル基であり、より好ましくは炭素数3〜8の単環性のシクロアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数4〜6の単環性のシクロアルキル基である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、またはシクロオクチル基が挙げられる。
上記「アルケニル基」は、炭素数2〜30の直鎖状または分枝状のアルケニル基であり、好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基であり、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基であり、さらに好ましくは炭素数2〜4のアルケニル基である。アルケニル基の例としては、エテニル基、プロペニル基、1−メチルエテニル基、ブテニル基、2−メチルプロペニル基、1−メチルプロペニル基、ペンテニル基、3−メチルブテニル基、2−メチルブテニル基、1−エチルプロペニル基、ヘキセニル基、4−メチルペンテニル基、3−メチルペンテニル基、2−メチルペンテニル基、1−メチルペンテニル基、3,3−ジメチルブテニル基、1,2−ジメチルブテニル基、ヘプテニル基、1−メチルヘキセニル基、1−エチルペンテニル基、オクテニル基、1−メチルヘプテニル基、2−エチルヘキセニル基、ノネニル基、またはデセニル基等が挙げられる。
上記「アルキニル基」は、炭素数2〜30の直鎖状または分枝状のアルキニル基であり、好ましくは炭素数2〜10のアルキニル基であり、より好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基であり、さらに好ましくは炭素数2〜4のアルキニル基である。アルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、3−メチルブチニル基、ヘキシニル基、4−メチルペンチニル基、3−メチルペンチニル基、3,3−ジメチルブチニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、3−メチルヘプチニル基、3−エチルヘキシニル基、ノニニル基、またはデシニル基等が挙げられる。
上記「アリール基」は、炭素数6〜30のアリール基であり、好ましくは炭素数6〜14のアリール基であり、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。アリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、または2−アントラセニル基が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
上記「アリールアルキル基」は、上記「アルキル基」の少なくとも1つの水素原子が上記「アリール基」で置換された構造を有する基であり、炭素数7〜30のアリールアルキル基であり、好ましくは炭素数7〜14のアリールアルキル基である。アリールアルキル基の例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基、3−(1−ナフチル)プロピル基、3−(2−ナフチル)プロピル基が挙げられ、なかでもベンジル基が好ましい。
上記「ヘテロアリール基」は、炭素数1〜30のヘテロアリール基であり、好ましくは0〜2個の窒素原子、0〜1個の酸素原子および0〜1個の硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員の単環性または2環性のヘテロアリール基である。ヘテロアリール基の例としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、またはオキサゾリル基等が挙げられる。結合位置は特に限定されず、化学的に安定であれば任意の炭素原子または窒素原子上で結合してよい。なかでも、ヘテロアリール基は、好ましくは単環性の5または6員のヘテロアリール基である。
上記「ヘテロアリールアルキル基」は、上記「アルキル基」の少なくとも1つの水素原子が上記「ヘテロアリール基」で置換された構造を有する基である。ヘテロアリールアルキル基の例としては、2−ピロリルメチル基、2−ピリジルメチル基、3−ピリジルメチル基、4−ピリジルメチル基、2−チエニルメチル基、2−(2−ピリジル)エチル基、2−(3−ピリジル)エチル基、2−(4−ピリジル)エチル基、3−(2−ピロリル)プロピル基が挙げられる。
一般式(1)におけるRを示すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、またはヘテロアリールアルキル基は、置換基によって置換されていてもよい。すなわち、これらの基の水素原子の少なくとも1つが置換基によって置換されている形態もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものとする。なお、上記の基が置換されている場合の「置換基」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基などのアルキル基;フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、p−トリルオキシ基などのアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基などのアシル基;メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基などのアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基などのアリールスルファニル基;メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基などのジアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基などの他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基などが挙げられる。なお、上記で置換基として列挙されたもののうち、置換後も置換前の定義に含まれる置換(例えば、エチル基で置換されたメチル基(=n−プロピル基))はここでは除外するものとする。
本形態の好ましい実施形態において、前記一般式(1)におけるRは、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜30のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数7〜30のアリールアルキル基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数7〜14のアリールアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基であることがさらに好ましく、メチル基、エチル基またはベンジル基であることが特に好ましく、エチル基またはベンジル基であることが最も好ましい。
なお、一般式(1)においてRが水素原子である化合物はN−アセチルシステインであり、アミノ酸であるシステインのN−アセチル化誘導体である。また、一般式(1)においてRが水素原子以外の基である化合物はN−アセチルシステインのエステル誘導体である。ここで、システインは1個の不斉炭素を有するアミノ酸であることから、L−鏡像異性体、D−鏡像異性体またはこれらのラセミ混合物の形態で存在するが、天然にはほとんどがL−鏡像異性体として存在している。同様に、N−アセチルシステインおよびそのエステル誘導体もまた、L−鏡像異性体、D−鏡像異性体、これらのラセミ混合物、または鏡像異性体の一方が鏡像異性的に富化された組成物の形態で存在し、本発明においてはこれらのいずれもが採用されうる。なかでも、L−鏡像異性体が好ましく用いられる。ここで、一般式(1)で表される化合物のL−鏡像異性体は、下記一般式(2)で表される。
Figure 0006944690
また、一般式(2)のRがそれぞれ水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基である化合物(すべてL−鏡像異性体である)の構造は以下の通りであり、これらは本形態に係る化合物のなかでも特に好ましい化合物群である。
Figure 0006944690
本形態に係る脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤の有効成分である一般式(1)で表される化合物は、脳血管障害および/または認知症に対する予防・治療・症状進展抑制といった効果を発現するためには脳血管内皮細胞膜(いわゆる「血液−脳関門」)を通過しやすい化合物であることが好ましい。このような観点から、一般式(1)で表される化合物は、Rが水素原子である化合物(N−アセチルシステイン)よりも親油性の高い化合物であることが好ましい。ここで、本明細書では、化合物の親油性の指標として「logP値」を用いることができる。ここで、「logP値」とは、「オクタノール−水分配係数」や「logPow」とも称され、n−オクタノールおよび水からなる二相溶媒系の各相へのある物質の分配濃度の比の値の常用対数として定義され、値が大きいほど親油性が高い(親水性が低い)ことを意味する。なお、本明細書において、logP値の値としては、JIS Z−7260−107:2000に記載のフラスコ振盪法により測定が可能である。また、logP値については、実測に代わって、計算化学的手法または経験的方法により見積もることも可能である。
計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))、Viswanadhan’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,29巻、p163(1989年))、Broto’s fragmentation法(“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p71(1984年))、CLogP法(“Leo,A.,Jow,P.Y.C.,Silipo,C.,Hansch,C.,J.Med.Chem.,18,865 1975年”)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))がより好ましい。ただし、上述したフラスコ振盪法による測定値と計算化学的手法または経験的方法によって見積もられた値とが有意に異なる場合には、フラスコ振盪法による測定値が優先するものとする。
また、やはり血液−脳関門を通過しやすいという観点から、一般式(1)で表される化合物の分子量は比較的小さいことが好ましい。具体的に、一般式(1)で表される化合物の分子量は、好ましくは1000以下であり、より好ましくは800以下であり、さらに好ましくは500以下であり、特に好ましくは400以下であり、最も好ましくは300以下である。
本形態に係る脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤の有効成分である一般式(1)で表される化合物については、市販品が存在する場合には当該市販品を入手したものを用いてもよいし、自ら合成したものを用いてもよい。また、場合によっては、天然物から抽出・精製したものを用いてもよい。
上述した一般式(1)で表される化合物は、化合物自体であってもよいし、適用可能である限り、当該化合物の製薬上許容されうる塩、プロドラッグおよび溶媒和物を含む。例えば、カチオンと、上記化合物上の負荷電基との間で塩が形成されうる。適当なカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびテトラメチルアンモニウムイオン等のアンモニウムカチオンが挙げられる。本化合物には、第4級窒素原子を含むこれらの塩もまた含まれる。プロドラッグの例としては、エステルや他の製薬上許容されうる誘導体が挙げられ、これらは対象への投与によって活性な化合物を提供することができる。溶媒和物とは、活性化合物と製薬上許容されうる溶媒との間で形成される複合体を意味する。製薬上許容されうる溶媒としては、水、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンが挙げられる。
上述したように、本発明者らは、数多くの化合物について脳血管障害に対する予防・治療効果を確認する過程において、NACおよびそのエステル誘導体が、脳梗塞モデルマウスにおける脳梗塞に対して予防・治療効果を示すことを見出した。
上記の知見に基づき、本発明者らは、NACおよびそのエステル誘導体が脳梗塞に対して予防効果を示すメカニズムについて、上記化合物がアクロレインの産生を阻害することによるのではないかとの仮説を設定した。しかしながら、上記化合物投与群とコントロール群との間で脳梗塞モデルマウスの脳の梗塞部位におけるポリアミン量に変化は見られなかった(後述する実施例を参照)ことから、上記仮説は棄却された。
このため、本発明者らは、別のメカニズム仮説として、NACおよびそのエステル誘導体が有するチオール基(−SH基)がアルデヒドであるアクロレインと直接的に反応することでアクロレインの解毒に寄与しているのではないかと考えた。しかしながら、この仮説も棄却されることとなった。すなわち、本発明者らは、脳梗塞モデルマウスの脳の正常部位および梗塞部位におけるGSH量およびPC−Acro量を調べたところ、梗塞部位においてはGSH量が減少傾向にあり、また、PC−Acro量は減少していた。これらの知見に基づき、本発明者らは、GSTの発現量の増加が脳梗塞モデルマウスにおける脳梗塞への予防・治療効果をもたらしているのではないかとの仮説を設定した。そして実際にGSTの発現量が増加していることを確認することで当該仮説を実証して、本発明を完成させるに至ったのである(後述する実施例を参照)。
この知見に基づくことで、本発明の他の形態によれば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)の発現または活性を増強する物質を有効成分として含有する、脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤もまた、提供される。
ここで、本形態において、発現または活性が増強されるGSTは、GST−π、GST−θおよび/またはGST−μであることが好ましい。これらのGSTは哺乳動物の脳において発現しており、アクロレインが基質となることが知られている。
上述したように、本発明者らの検討によれば、上述した本発明の一形態に係る剤の有効成分である上記一般式(1)で表される化合物は、GSTの発現を増強する物質の1つである。このため、一般式(1)で表される化合物は、「GSTの発現または活性を増強する物質」として用いられうる。ただし、一般式(1)で表される化合物以外の物質が「GSTの発現または活性を増強する物質」として用いられてももちろんよい。上述したのと同様の理由から、「GSTの発現または活性を増強する物質」は、一般式(1)においてRが水素原子である化合物(N−アセチルシステイン)よりも脂溶性の高い化合物であることが好ましい。また、やはり同様の理由から、「GSTの発現または活性を増強する物質」の分子量は、好ましくは1000以下であり、より好ましくは800以下であり、さらに好ましくは500以下であり、特に好ましくは400以下であり、最も好ましくは300以下である。なお、「GSTの発現または活性を増強する物質」の他の例としては、例えば、フェノバルビタール、アフラトキシンB1、3−メチルコラントレン、オルチプラズなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
上述したように、本発明の一形態によれば脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤が提供されるが、「脳血管障害」との語は最も広義に解釈され、脳出血(出血性脳血管障害)および脳梗塞(虚血性脳血管障害)の双方を包含する概念である。なかでも、脳血管障害は脳梗塞(虚血性脳血管障害)であることが好ましい。また、認知症とは、いったん発達した、あるいは獲得された知的機能が低下する状態をいい、知能障害の一つとされるが(上島国利、丹羽真一編、NANKODO’s ESSENTIAL WELL−ADVANCED SERIES New精神医学、p69−70、2008年)、広い意味においては知能障害および/または記憶障害を呈する疾患と考えられる。この認知症は、主に脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症とに大別されるが、本発明においては、認知症は脳血管性認知症であることが好ましい。
本形態に係る剤による脳血管疾患および/または認知症に対する予防・治療・症状進展抑制といった効果は、例えば、脳梗塞等の脳血管疾患や認知症を発症しているか将来的に発症しうるモデル動物(例えば、モデルマウス)に対して本形態に係る剤を投与し、コントロールと比較することにより評価することができる。ここで、例えば脳梗塞モデル動物に対する効果については、梗塞体積を指標として評価することが可能である。また、認知症モデル動物に対する効果については、学習能を指標として評価することが可能である。
なお、本明細書において、「有効成分として含有する」とは、本形態に係る剤が、脳血管障害および/または認知症に対する所望の予防・治療・症状進展抑制といった効果を発揮するのに充分な量(すなわち、有効量)で、一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種、またはGSTの発現または活性を増強する物質を含有することを意味する。
したがって、一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質を、そのまま脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤として用いてもよいが、このような有効量で有効成分を含み、かつ上述した効果を損なわない限りにおいて、本形態に係る剤は、一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質を、所望の製品形態に応じた製薬上許容されうる担体や、他の添加剤などと一緒に含有する組成物の形態であってもよい。また、本形態に係る剤は、賦形剤などの添加剤と混合して非経口投与、経口投与または外部投与に適した、医薬品、医薬部外品などの薬剤組成物のほか、飲食品などの形で使用することができる。
本発明に係る一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質を医薬品(例えば、上述した種々の疾患に対する予防・治療・症状進展抑制剤)として利用する場合の投与量は、対象疾患、投与対象、投与経路、有効量などにより差異はあるが、用量は対象となる者の体重等の条件によって容易に変動しうるため、当業者によって適宜選択されうる。なお、本明細書において「有効量」とは、いずれの医療にも適用可能な妥当な便益/リスク比で、何らかの所望の治療効果を生じるために有効な作用物質または組成物の量を意味する。一般には、経口投与の場合、本発明に係る一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質の乾燥重量として1〜2000mg/日の範囲であることが望ましい。また、飲食品に配合する場合は、その効果や添加した際の香り、色調の点から考え、本発明に係る一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質の濃度範囲を0.01〜50質量%程度とすることが好ましい。投与日数についても特に制限はなく、上述した各種の要因を考慮して適宜設定することが可能である。ただし、特に本発明に係る一般式(1)で表される化合物はアミノ酸誘導体であることから、副作用が発生する虞がきわめて小さいという利点がある。このため、治療可能時間が14日以内と非常に短いエダラボンのような従来公知の化合物と比較して、長期間にわたって投与された際の安全性が非常に高い。このような観点から、本発明に係る脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤については、連続した投与日数が15日以上であることが好ましく、30日以上であることがより好ましく、45日以上であることがさらに好ましく、60日以上であることが特に好ましく、90日以上であることが最も好ましい。
背景技術の欄においても述べたように、高齢社会の到来を迎えつつある本邦においては特に、「未病」の観点から少量を長期にわたって服用することで脳梗塞等の脳血管障害や認知症の発症を未然に防止するための予防薬やいわゆるサプリメントに対するニーズもきわめて強い。この点、長期間にわたって投与された際の安全性が非常に高い(副作用が発生する虞がきわめて小さい)本発明に係る脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制剤は、長期服用を前提とした副作用の少ない医薬として非常に有望である。
医薬品に使用する場合、有効量の上記有効成分(一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質)が、1つまたは複数の製薬上許容されうる担体(添加剤)および/または希釈剤とともに処方される。以下で詳細に説明するように、本発明に係る医薬品は固体または液体での投与のために具体的に処方することができる。経口投与として、例えば、水薬(水溶液もしくは非水溶液または懸濁液)、錠剤、巨丸剤、粉末薬、顆粒剤、舌に塗布するためのペーストが例示される。非経口投与としては、例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液として例えば皮下、筋内もしくは静脈内注射のための製剤、あるいは、局所用として、または、膣内または直腸内へ投与するための剤形へと製剤化されうる。
「製薬上許容されうる」とは、正しい医学的判断の範囲内で、妥当な便益/リスク比に見合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応等の問題や合併症なしに、ヒトおよび動物の組織に接触しての使用に好適な、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すために使用される。
「製薬上許容されうる担体」とは、体の一器官または一部から体の別の器官または一部へ本発明に係る細胞増殖抑制剤を運搬または輸送することに関与する液体または固体の充填剤、希釈剤、補形薬、溶剤またはカプセル化材料のような、製薬上許容されうる材料、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、剤形の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で「許容されうる」ものでなければならない。製薬上許容されうる担体として機能しうる材料のいくつかを以下に例示すると、ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンのようなデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのようなセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐薬ワックスのような補形薬;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油のような油脂;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩液;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに薬物処方で使用される他の非毒性の適合物質を含む。いくつかの実施形態では、薬物製剤は非発熱性である。すなわち、患者の体温を上昇させないものが好ましい。
その他、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、香味剤および香料、保存料および酸化防止剤もまた組成物中に存在してもよい。
製薬上許容されうる酸化防止剤の例には以下のものがある:アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等のような油溶性酸化防止剤;ならびにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤も必要に応じて含有させることができる。
経口投与に好適な本発明の剤形は、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、ロゼンジ(味付けされた主薬、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント、を用いる)、粉末、顆粒、の形態でもよく、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水液体乳剤として、またはエリキシルもしくはシロップとして、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムのような不活性基剤を用いる)および/または含嗽剤等としてでもよく、それぞれ有効成分として所定量の本発明に係る一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質を含む。本発明の有効成分は、巨丸剤、舐剤、またはペーストとして投与されてもよい。
経口投与のための本発明の固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末薬、顆粒剤等)では、活性成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような1つまたは複数の製薬上許容されうる担体、および/または以下のもののいずれかと混合される:デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸のような充填剤または増量剤;例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴムのような粘結剤;グリセロールのような保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;パラフィンのような溶解遅延剤;4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物のような潤滑剤;ならびに着色剤。カプセル、錠剤および丸薬の場合、薬物組成物は緩衝剤を含んでもよい。同様の種類の固体組成物が、ラクトースまたは乳糖のような補形薬と、高分子量ポリエチレングリコール等とを用いたソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル内の充填剤としても使用可能である。
錠剤は、圧縮または成形によって、随意に1つまたは複数の副成分とともに、作製されうる。圧縮された錠剤は、粘結剤(例えば、ゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムデンプンもしくは架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を用いて調製されうる。成形タブレットは、不活性液体希釈剤で湿潤化された粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製されうる。
糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒剤のような、本発明に係る薬剤組成物の錠剤等の固体投薬形態は、随意に、刻み目を付けられ、または薬物調剤分野において周知の腸溶性被膜等の被膜および殻を用いて調製されてもよい。それらは、例えば、所望の放出プロファイルを提供するための種々の比率でのヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて、内部の活性成分の緩徐なまたは制御された放出を提供するように調剤されてもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用直前に滅菌水等の滅菌注射可能媒質に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌してもよい。これらの組成物は、随意に乳白剤を含んでもよく、胃腸管のある特定の部分のみで、またはそこで優先的に、随意に遅延したやり方で、1つまたは複数の活性成分を放出する組成であってもよい。使用可能な埋込み組成物の例として、ポリマー物質およびワックスがある。活性成分は、適当であれば1つまたは複数の上記の補形薬とともに、マイクロカプセル化された形態であってもよい。
本発明に係る一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質の経口投与のための液体投薬形態としては、製薬上許容されうる乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルがある。液体投薬形態は、活性成分に加えて、例えば水や他の溶媒のような当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1、3−ブタジエングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルのような可溶化剤および乳化剤、およびそれらの混合物を含んでもよい。
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味剤、着色剤、香料および保存剤のような補助薬を含んでもよい。
懸濁液は、有効成分に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物のような懸濁剤を含んでもよい。
直腸または膣投与のための本発明に係る医薬品の剤形は、坐薬として提示されうる。この坐薬は、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐薬ワックスまたはサリチル酸塩を含む1つまたは複数の好適な非刺激性補形薬または担体と、本発明の1つまたは複数の作用物質を混合することによって調製することが可能であり、室温で固体であるが、体温では液体であるため、直腸または膣腔で融解し、活性化合物を放出することになる。
膣投与に好適な本発明の剤形はまた、当技術分野で適当であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡またはスプレー剤形も含む。
本発明に係る脳血管疾患の予防、治療および/または症状進展抑制剤を局所的または経皮的投与するための投薬形態は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入薬を含む。活性作用物質は、薬学的に許容し得る基材と、および必要であれば保存料、緩衝液、または推進剤と、滅菌条件下で混合してもよい。
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の化合物に加えて、動物脂または植物脂、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物のような補形薬を含んでもよい。
粉末およびスプレーは、本発明に係る有効成分に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物のような補形薬を含んでもよい。スプレーは、塩化フッ化炭化水素や、ブタンおよびプロパンのような揮発性非置換炭化水素のような通例の高圧ガスをさらに含んでもよい。
経皮的パッチは、本発明の細胞増殖抑制剤を、体に制御して配送するというさらなる利点を有する。このような投薬形態は、適当な媒質に本発明の細胞増殖抑制剤を溶解または分散させることによってなされうる。吸収増進剤を用いて、皮膚を横切る本発明の細胞増殖抑制剤を含有する物質のフラックスを上昇させることも可能である。このようなフラックスの速さは、速さ制御膜を設けるか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させるかのいずれかによって制御することができる。
非経口投与に好適な本発明に係る剤を含有する薬剤組成物は、本発明の有効成分とともに、1つまたは複数の製薬上許容されうる滅菌等張水溶液または非水溶液、分散剤、懸濁液もしくは乳剤、または使用直前に滅菌注射可能溶液または分散剤中で戻すことが可能な滅菌粉末を含み、これは酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、調剤を目的レシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは濃縮剤を含みうる。
本発明に係る剤を含有する薬剤組成物において使用可能な好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルがある。固有の流動性は、例えば、レシチンのような被覆材料の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
これらの組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤のような補助薬を含んでもよい。微生物の活動の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール等の種々の抗菌剤および抗真菌剤の含有によって確保し得る。糖、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含めると好ましい。さらに、注射可能薬物形態の持続性吸収が、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる作用物質の含有により引き起こされうる。
なお、本発明によれば、上述した一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、脳血管障害および/または認知症を予防し、治療し、および/またはその症状の進展を抑制する方法もまた、提供される。
また、本発明によれば、上述した一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質を含有する飲食品もまた、提供される。ここで、当該飲食品は、上記有効成分を有効量含むことにより、脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制の用途に用いられる。すなわち、本発明の他の形態によれば、上述した一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質を有効成分として含有する、脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制用飲食品もまた、提供される。また、本発明のさらに他の形態によれば、「脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制の用途に用いられる、上述した一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質」という発明が提供され、さらには、「脳血管障害および/または認知症の予防、治療および/または症状進展抑制に用いられる医薬の製造における、上述した一般式(1)で表される化合物、またはGSTの発現または活性を増強する物質の使用」という発明もまた、提供される。
なお、「有効成分を有効量含む」とは、個々の飲食品を通常喫食される量摂取した結果、有効成分としての効果を発揮しうるような量で有効成分を含有することを意味する。
本発明に係る飲食品には、本発明に係る有効成分をそのまま、または必要に応じて他の添加剤と混合されてなる組成物の形態で、飲食品に配合してもよい。例えば、本発明に係る飲食品は、本発明に係る有効成分に安定剤等の慣用の添加成分を加えて飲食品として調製したもの、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等を、それらにさらに配合して調製したもの、液状、半液体状もしくは固体状にしたもの、ペースト状にしたもの、または、一般の飲食品へ有効成分を添加したものであってもよい。
本発明において、「飲食品」は、医薬以外のものであって、哺乳動物が経口摂取可能な形態のものであれば特に制限はなく、その形態も液状物(溶液、懸濁液、乳濁液など)、半液体状物、粉末、または固体成形物のいずれのものであってもよい。このため飲食品は、例えば飲料の形態であってもよく、また、いわゆるサプリメントのような栄養補助食品の錠剤形態であってもよい。
飲食品として具体的には、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料などの飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉などの小麦粉製品;飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子などの菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズなどの油脂類;乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類などの乳製品;魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品などの水産加工品;畜肉ハム・ソーセージなどの畜産加工品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアルなどの農産加工品;冷凍食品;栄養食品などが挙げられる。
本発明に係る飲食品は、上述したような脳梗塞等の脳血管障害や認知症の予防/治療/症状進展抑制を欲している者に対して好適に使用することができる。
本発明において「飲食品」には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、疾病リスク低減表示が付された食品、または、病者用食品のような分類のものも包含される。さらに「飲食品」という用語は、ヒト以外の哺乳動物を対象として使用される場合には、飼料を含む意味で用いられうる。ここでいう特定保健用食品とは、所望の効果の発現を目的として食品の製造または販売等を行う場合に、保健上の観点から、各国(例えば我が国)において法上の何らかの制限を受けることがある食品をいう。このような食品は、食品が疾病リスクを低減する可能性があることを表示した食品、すなわち、疾病リスク低減表示を付した食品であってもよい。ここで、疾病リスク低減表示とは、疾病リスクを低減する可能性のある食品の表示であって、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)の定める規格に基づいて、またはその規格を参考にして、定められた表示または認められた表示でありうる。
本発明の飲食品においては、上述した有効成分に加えて、他の機能を有する成分をさらに添加してもよい。また例えば、日常生活で摂取する食品、健康食品、機能性食品、サプリメント(例えば、カルシウム、マグネシウム等のミネラル類、ビタミンK等のビタミン類を1種以上含有する食品)に本発明の有効成分を配合することにより、本発明による効果に加えて、他の成分に基づく機能を併せ持つ飲食品を提供することができる。
本発明に係る飲食品の製造にあたっては、通常の飲食品の処方設計に用いられている糖類、香料、果汁、食品添加剤、安定剤などを適宜添加することができる。飲食品の製造は、当該技術分野に公知の製造技術を参照して実施することができる。本発明に係る飲食品は様々な形態を取ることができ、公知の医薬品の製造技術に準じて本発明に係る飲食品を製造してもよい。その場合には、本発明に係る剤や医薬品の製造の項目において述べたような担体や添加剤を用いて製造することができる。また、製造段階において、本発明における機能以外の機能を発揮する他の成分または他の機能性食品と組み合わせることによって、多機能性の飲食品としてもよい。
以下、実施例を用いて本発明の好適な実施形態についてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の実施例のみに限定して解釈されるべきではない。
≪統計計算≫
以下に示す実験により得られた全てのデータは平均値±標準誤差の値として示した。また、治療効果の評価では、分散分析を行った後、多重比較検定についてはTukeyの検定により行った。また、予防効果の評価では、分散分析を行った後、多重比較検定についてはDunnettの検定により行った。なお、危険率5%以下の場合に統計的に有意差があるものとして*印を付した。同様に、危険率1%以下および0.1%以下の場合にはそれぞれ**印および***印を付した。また、統計処理ソフトとしてはGraph pad Prism 5を使用した
≪NACおよびそのエステル誘導体の準備とこれらを含む溶液の調製≫
NACおよびNACMeについては、Sigma社より購入したものを用いた。一方、NACEtおよびNACBnについては、以下の手法により合成したものを用いた。なお、すべての試薬および溶剤としては市販のものを用いた。
(NACEtの合成例)
文献(Mechanistic proposal for the formation of specific immunogenic complexes via a radical pathway: a key step in allergic contact dermatitis to olefinic hydroperoxides. Johansson S., Redeby T., Altamore T.M., Nilsson U., Borje A., Chem. Res. Toxicol., 22, 1774−1781, (2009))に記載の手法を改変した手法により、N−アセチルシステインエチルエステル(NACEt)を合成した。
具体的には、N−アセチルシステイン(1.0当量)の乾燥エタノール溶液(4mL/mmol)に、0℃にて塩化チオニル(1.1当量)を滴下し、反応系を室温まで昇温させた。この際、N−アセチルシステインの消失を、シリカゲルプレート(シリカゲル60 F−254(メルク))を用いたTLCによりモニターし、紫外線を用いて可視化した。次いで、エバポレーションにより溶液を除去し、水およびクロロホルムを用いて残渣を抽出し、クロロホルム層をエバポレーションした後にシリカゲルカラム(Wakogel C−200(和光純薬工業))を用いたクロマトグラフィーに供した。この際、クロマトグラフィーの溶剤系としてはn−ヘキサン:酢酸エチル(体積比で2:1)を用いた。目的化合物は白色固体であり、収率は45%、融点(Yanagimoto micro−hot stageにより測定後、未補正)は44〜45℃(文献値:44.1〜44.5℃(GC−MS analysis of S−nitrosothiols after conversion to S−nitroso−N−acetyl cysteine ethyl ester and in−injector nitrosation of ethyl acetate. Tsikas D., Dehnert S., Urban K., Surdacki A., Meyer H.H., J. Chromatogr. B Analyt. Technol. Biomed. Life Sci., 877, 3442−3455, (2009)))であった。
H−NMR測定(NMR装置Varian 400-MRを用い400MHzにて測定、内部標準はテトラメチルシラン)および質量分析(質量分析計JEOL JMS−700を用いて測定)の結果は以下の通りであり、既報による値と類似の結果が得られた。H−NMR(CDCl,400MHz) δ:1.32(3H,t,J=7.1Hz,CH),1.34(1H,t,J=9.1Hz,SH),2.07(3H,s,CHCO),3.03(2H,dd,J=9.1,4.0Hz,CH−S),4.20−4.33(2H,m,OCH),4.87(1H,dt,J=7.7,4.0Hz,4Hz;NCH),6.38(1H,brs,NH).
MS m/z:191(M)
(NACBnの合成例)
ベンジルアルコール(2.0mL、19.3mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(3.0mL、19.5mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温にて15時間、CuCl(42.0mg、0.42mmol)の存在下で撹拌した。粗生成物をAlオープンカラムクロマトグラフィー(溶剤系は30%酢酸エチル/n−ヘキサン)により精製して、O−ベンジルN,N’−ジイソプロピルイソウレア(4.25g)を得た。
H−NMR測定および13C−NMR測定の結果は以下の通りであった。H−NMR(CDCl,400MHz) a:7.39−7.27(5H,m),5.12(2H,s),3.70(1H,m),3.45(1H,br−s),3.20(1H,m),1.12(12H,d,J=6.9 Hz).
13C−NMR(CDCl,100MHz) a:151.5,138.0,128.2,127.6,127.3,66.6,46.3,43.4,24.3,24.0。
一方、N−アセチルシステイン(1.33g、8.15mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液に、上記で得られたO−ベンジルN,N’−ジイソプロピルイソウレア(1.92g、8.18mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温にて1.5時間撹拌した。反応混合物をセライトを用いて濾過し、エバポレーションにより溶剤を除去した。シリカフラッシュクロマトグラフィー(溶剤系は30%酢酸エチル/n−ヘキサン)により粗生成物を精製して、N−アセチル−O−ベンジルシステイン(1.21g)を得た。この生成物を酢酸エチル/n−ヘキサンからの再結晶によりさらに精製した。
H−NMR測定の結果は以下の通りであった。H−NMR(CDCl,400MHz) a:7.39−7.35(5H,m),6.37(1H,br−s),5.27(1H,d,J=12.2Hz),5.18(1H,d,J=12.2Hz),4.93(1H,ddd,J=8.2,4.1,4.1Hz),3.08−2.95(2H,m),2.06(3H,s)1.20(1H,dd,J=9.2,9.2Hz)。
≪Photochemically induced thrombosis(PIT)法による脳梗塞モデルマウスの作製≫
本実施例において、全ての動物実験は千葉大学動物実験委員会による許可を受け、千葉大学動物実験実施規定に基づいて実施した。
C57BL/6系統の雄マウスを日本SLC社より購入し、2ヶ月齢になるまでマウス室にて飼育した後、Watsonらにより開発された光化学反応による血栓性中大脳動脈閉塞モデルの作製に供した。なお、このモデルは光増感反応を応用したものである。具体的には、光増感剤であるローズベンガルを540nmの波長の緑色光で励起させると一重項酸素が生成される。この一重項酸素が血管内皮細胞を傷害し、内皮下組織が露出されることで血小板が活性化され、血栓を形成して血管を閉塞するのである。このモデルは血管結紮による脳梗塞モデルや塞栓子の挿入による脳梗塞モデルに比べて再現性がよく、術中の個体死が少ない点で優れている。
モデルマウスの作製にあたり、まず、マウスを密閉容器に入れて3%のイソフルラン(Abbott Japan)を用いて麻酔を導入し、手術中は1.5%のイソフルランで麻酔維持を行った。麻酔導入後、マウスの左眼窩側縁に沿って側頭部に向かい皮膚および側頭筋を切開し、次に硬膜下を通過する中大脳動脈が確認できるまで硬膜を露出させた。さらにマウス胸部の皮膚および筋肉を切開して大静脈を露出させ、ローズベンガル(和光純薬工業)を投与(20mg/kg)した。その後、キセノンランプ(浜松フォトニクス)を用いて緑色光を中大脳動脈に10分間照射し、中大脳動脈を血栓により閉塞した。
≪NACおよびそのエステル誘導体の脳梗塞に対する治療効果≫
上記で準備したNACおよびそのエステル誘導体3種(NACMe、NACEtおよびNACBn)の脳梗塞に対する治療効果について、上記で作製した脳梗塞モデルマウスを用い、以下の手法により検討した。
具体的には、脳梗塞に対する治療効果を確認することを目的として、各化合物を脳梗塞の誘導直後に腹腔内に150mg/kgで投与した。なお、化合物を投与する際の溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)を用いたため、コントロール(陰性対照)群ではDMSOのみを投与した。また、本実験において、NAC、NACMe、NACEtについては15mg/mLの濃度になるように50%DMSOで希釈したものを投与した。また、NACBnについては30mg/mLの濃度になるように99.5%DMSOでいったん希釈し、投与直前に精製水で15mg/mL(50%DMSO)の濃度になるようにさらに希釈したものを投与した。
その後、脳梗塞の誘導から24時間後に胸部の皮膚を切開し、剣状軟骨の両側から横隔膜および肋骨を切断して開胸した。心臓採血を行った後に脳を摘出し、ブレインスライサーを用いて2mmの厚さの脳切片を作製した。このようにして作製した脳切片を、5%TTC(2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド)(東京化成工業)を含む生理食塩水中で30分間、37℃にてインキュベーションした。インキュベーション中に、無色のTTCはミトコンドリア内で発生した水素により還元されて濃い赤色のTPF(トリフェニルホルマザン)となるため、生きている細胞の部分のみが赤く染まり、梗塞により死滅した脳細胞は染色されず白く抜け落ちる。このことを利用して、上記で作製した脳切片をTTC染色したサンプルをデジタルカメラにより撮影し、白い梗塞部分を画像加工プログラムであるNational Institute of Health Imageプログラムを用いて解析することにより、脳梗塞体積を定量した。
結果を図1に示す。図1に示すように、上記の4種の化合物をそれぞれ投与した群では、コントロール群と比較して梗塞体積が有意に減少していた。なお、NACの投与によって縮小した平均梗塞体積は46.7mmであり、NACMeの投与では46.8mmであり、NACEtの投与では46.7mmであり、NACBnの投与では51.4mmであった。
≪NACおよびそのエステル誘導体の脳梗塞に対する予防効果≫
上記で準備したNACおよびそのエステル誘導体2種(NACEtおよびNACBn)の脳梗塞に対する予防効果について、上記で作製した脳梗塞モデルマウスを用い、以下の手法により検討した。
具体的には、脳梗塞に対する予防効果を確認することを目的として、各化合物を脳梗塞の誘導の3日前から脳梗塞の誘導の直前まで1日1回(計4回)、腹腔内に50mg/kg/回で投与した(計200mg/kg)。ここでも、化合物を投与する際の溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)を用いたため、コントロール(陰性対照)群ではDMSOのみを投与した。また、本実験において、NAC、NACEtについては5mg/mLの濃度になるように50%DMSOで希釈したものを投与した。また、NACBnについては、10mg/mLの濃度になるように99.5%DMSOでいったん希釈し、投与直前に精製水で5mg/mL(50%DMSO)の濃度になるようにさらに希釈したものを投与した。
その後、脳梗塞の誘導から24時間後に脳を摘出し、上記と同様の手法により梗塞体積を測定した。
結果を図2に示す。図2に示すように、NAC予防投与群およびNACEt予防投与群では梗塞体積が減少傾向にあり、また、NACBn投与群においては梗塞体積が有意に減少していた。なお、NACの予防投与によって縮小した平均梗塞体積は約29.5mmであり、NACEtの予防投与では約30.2mmであり、NACBnの予防投与では約33.7mmであった。
≪NACエステル誘導体の予防投与による梗塞体積の減少のメカニズムの検討≫
続いて、上述したNACエステル誘導体の予防投与によって梗塞体積が減少したメカニズムについて検討を行った。
(脳組織におけるポリアミン量の変化)
まず、脳組織におけるポリアミン量の変化について検討した。ここでは、NACおよびそのエステル誘導体2種(NACEtおよびNACBn)のそれぞれを予防投与したマウスについて、脳梗塞を誘導してから24時間後に脳を摘出し、正常部位および梗塞部位のポリアミンを抽出してHPLCによって定量した。
より具体的に、脳組織からポリアミンを抽出するにあたり、まず脳組織のタンパク質分画を調製した。脳組織のタンパク質分画の調製においては、脳梗塞モデルマウスの脳組織からタンパク質を抽出するために、バイオマッシャー(nippi)を用いて組織を破砕した。この際、組織破砕用バッファーの組成は10mmol/L トリス/HCl(pH7.5)、10%グリセロール、0.2mM EDTA、150mM NaCl、0.02mmol/L FUT−175とした。そして、組織破砕により調製した脳組織ホモジネートを、4℃において10,000rpmで10分間遠心し、その上清をタンパク質画分とした。なお、タンパク質濃度はBCA Assay kit(ナカライ)を用いて定量し、この際、タンパク量のスタンダードとしてはタンパク質定量用ウシ血清アルブミン(ナカライ)を用いた。
続いて、上記の方法で調製した脳組織のタンパク質分画100μL当たりに5μLの100%トリクロロ酢酸を加え終濃度約5%とし、40℃において10,000rpmで10分間遠心し、その上清を10μL分取した。その後、分取した上清に190μLの5%トリクロロ酢酸を加え、4℃において10,000rpmで10分間遠心し、その上清の10μLをHPLCによって測定した。
ポリアミンの定量はIgarashiらの方法に従って行った。試料の分離にはTSKgel polyaminepak(4.6mm×50mm)を用い、流速0.42mL/分、カラム温度50℃で行った。溶離液としてはBufferII(0.35Mクエン酸ナトリウム、2M NaCl、20%メタノール、1%Briji−35、0.01%ヘキサン酸)を用いた。ポストカラム試薬であるオルトフタルアルデヒド溶液(0.4Mホウ酸、0.35M KOH、0.06%オルトフタノレアルデヒド、37mM 2−メルカプトエタノール、0.1%Briji−35)は流速0.4mL/分で送液した。反応後は励起波長336nm、蛍光波長470nmの条件でポリアミンを検出した。
結果を図3に示す。なお、図3に記載の「PUT」はプトレスシン量、「SPD」はスペルミジン量、「SPM」はスペルミン量をそれぞれ示す。図3に示すように、NAC、NACEt、NACBnの各予防投与群のいずれにおいても、コントロール群と比較して、梗塞部位におけるポリアミン量に変化は見られなかった。この結果から、NACまたはそのエステル誘導体の予防投与による梗塞体積の減少は、アクロレイン産生の阻害によるものではないことが示唆された。
(脳組織におけるグルタチオン量の変化)
続いて、アクロレインの毒性解除を担う生体内物質であるグルタチオン(GSH)量の脳組織における変化について検討した。ここで、グルタチオンには酸化型グルタチオンおよび還元型グルタチオンの2種類が存在するが、脳においては還元型グルタチオンの割合が99%を超えることから、両者をまとめて総グルタチオン(tGSH)として測定を行った。
具体的に、脳組織からグルタチオンを抽出する際には、上記の方法で作製した脳組織のタンパク質分画100μL当たりに5μLの100%トリクロロ酢酸を加え、40℃において10,000rpmで10分間遠心し、その上清をサンプルとした。そして、グルタチオンの定量は、Northwest NWLSSTMG1utathione Assay Product NWK−GSH01を用いて行った。
結果を図4に示す。図4に示す結果からわかるように、梗塞部位においては、NACの予防投与群においてグルタチオン量が減少傾向にあり、NACEtまたはNACBnの予防投与群においてはグルタチオン量が有意に減少していた。
(脳組織におけるPC−Acro量の変化)
続いて、脳組織におけるPC−Acro量の変化について検討した。上述したように、PC−Acroはタンパク質抱合アクロレインを意味し、この量の増加は、アクロレインのシステイン残基等への結合によってタンパク質が不活性化されている程度が大きいことを示唆する。
PC−Acro量の測定は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびそれに続くウエスタンブロッティング(ECL Western Blotting)により行った。なお、SDS−PAGEはe−PAGEL(アトー)を用いて行い、ゲル1枚当たり20mAの定電流で90分間行った。20μgのタンパク質(上記の方法で作製した脳組織のタンパク質分画)をSDS−PAGEによって分離した後、クマシーブリリアントブルーR250(CBB)を用いて染色した。ウエスタンブロットで解析するサンプルは、SDS−PAGEを行ったゲルからタンパク質をPVDF(ミリポア)メンブレンに30Vの定電圧で16〜18時間かけて転写した。PVDFはBlocking One(ナカライ)により室温で30分間ブロッキングした後、PC−Acroを特異的に認識する一次抗体(抗アクロレインモノクローナル抗体(マウスIgG)(日油))を1時間反応させ、その後、HRP標識された二次抗体を1時間反応させた。なお、内部標準としてはβ−アクチンを抗β−アクチンモノクローナル抗体(マウスIgG)(Santa Cruz)を用いて定量した。また、抗体の希釈にはCan get signal(東洋紡)を用いた。反応後のメンブレンをChemi−Lumi One(ナカライ)と反応させて、Amersham Imager 600(GE healthcare)により目的のタンパク質を検出した。バンドの濃度はImage QuantTM TL(GE healthcare)によって測定した。
結果を図5に示す。図5に示す結果からわかるように、梗塞部位においては、NACの予防投与群においてPC−Acro量が減少傾向にあり、NACEtまたはNACBnの予防投与群においてはPC−Acro量が有意に減少していた。
以上の結果から、本発明者らは、NACやそのエステル誘導体の予防投与群の梗塞部位においては、アクロレインに対するグルタチオン抱合反応を触媒するGSTの発現量が増加しているものと考えた。
(脳組織における各種GSTの発現量の変化)
そこで本発明者らは、哺乳動物の脳において発現してアクロレインを基質とするGST種であるGST−π、GST−θおよびGST−μに着目し、脳組織におけるこれらの発現量を検討した。
これらのGST種の発現量の測定は、上記と同様の手法により、SDS−PAGEおよびそれに続くウエスタンブロッティングにより行った。なお、一次抗体としては抗GST−π抗体、抗GST−θ抗体および抗GST−μ抗体(いずれもabcam)をそれぞれ用いた。
結果を図6〜図8に示す。図6〜図8に示す結果からわかるように、梗塞部位においては、NACおよびそのエステル誘導体の予防投与群において上記3つのGST種の発現量が増加傾向にあった。このことから、上述したNACおよびそのエステル誘導体による脳梗塞の予防効果は、これらの化合物がGSTの発現を誘導することでアクロレインのグルタチオン抱合による解毒が促進されることによるものと考えられる。
(アクロレインのグルタチオン抱合に対するGST−πの影響)
なお、GST−πはアクロレインの基質特異性が高いことや、脳卒中患者において血中GST−π農度と脳卒中の開始時間に関係があることが報告されている。そこで本発明者らはGST−πに着目し、アクロレインのグルタチオン抱合に対するGST−πの影響について検討した。
具体的には、GST−πの存在下または非存在下における遊離アクロレイン量の経時的な変化をAlarconらの方法により測定した。反応系は全量を300μLとし、0.5mM GSH、10μMアクロレイン、PBS(pH7.5)に1μgのGST−π(abcam)を加えた。そして、GST−πを加えてから0、20、40、60、80、100、120秒後に反応系をそれぞれ50μL分取し、同量の反応液(92mM m−アミノフェノール、172mM ヒドロキシルアミン塩酸塩、3M HCl)に加え、10分間ボイルした後、40℃において10,000rpmで10分間遠心した。上清中の蛍光物質(7−ヒドロキシキノリン)をHPLCにより測定した。この際、溶離液(0.5%リン酸−アセトニトリル[96:4(v/v)])で平衡化したMightysil RP−8GP(4.6mm×150mm)カラムに上清をアプライし、流速0.4mL/分の条件下で分離し、励起波長358nm、蛍光波長510nmの条件で蛍光強度を測定した。
結果を図9に示す。図9に示すように、GST−πを添加した群ではコントロール群(GST−π非添加群)と比較して遊離アクロレイン量の減少が促進された。このことから、GST−πはアクロレインに対するグルタチオン抱合を促進することによりアクロレインの毒性を減弱するのに寄与していることが示唆された。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 0006944690

    式中、Rは、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3〜30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2〜30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1〜30のヘテロアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2〜30のヘテロアリールアルキル基である、
    で表される化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)の発現増強剤。
  2. 前記一般式(1)におけるRが、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1〜30のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数7〜30のアリールアルキル基である、請求項1に記載の発現増強剤。
  3. 前記一般式(1)におけるRが、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数7〜14のアリールアルキル基である、請求項2に記載の発現増強剤。
  4. 前記一般式(1)におけるRが、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基である、請求項3に記載の発現増強剤。
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