JP6944686B2 - 生分解性複合材料とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、バイオマス/生分解性樹脂複合材料、及びその製造方法に関する。更に詳しくは、複合材料の物性を改善するために、前処理したバイオマスを原料とする、バイオマス/生分解性樹脂複合材料、及びその製造方法に関する。
化石資源の枯渇化や地球環境問題が深刻な近年、廃棄物や炭酸ガスの削減による地球温暖化防止や循環型社会形成などを狙いとして、バイオマスの活用が世界的に推進されている。バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)のことで、動植物から生まれた再生可能な有機性資源で化石資源を除いたものである。バイオマスはもともと、大気中に存在するCOを光合成によって有機物化したものであり、これを利用する過程でCOが排出されてもトータルの収支はゼロ(カーボンニュートラル)となることから、化石資源の代替として期待されている。
一方、近年、持続可能な循環型社会を目指して植物由来プラスチックや生分解性プラスチックの普及に向けての取組みも行われている。これらプラスチックは、自然界で分解される長所を有するが、コストが高く、強度が低いという欠点を有するために、利用分野が限られ、広くは普及していない。
そこで、生分解の機能を失わせずに、生分解性樹脂を低コスト、高強度化する試みとして、生分解性樹脂に植物由来のバイオマスを混合したグリーンコンポジットと呼ばれる生分解性複合材料に関する研究に注目が集まっている。さらに、この食物繊維との複合材料は、射出成形品、プレス成形品、シート成形品、押出成形品など様々な分野の製品に利用されようとしている。
生分解性樹脂に植物性由来のバイオマスを混合した複合材料の例として、生分解性樹脂と竹繊維の生分解性複合材料が開示されている(例えば、特許文献1)。この複合材料は、植物繊維として強度の強い竹繊維を用い、直径7〜15μmの竹繊維もしくは繊維束で、その長さを繊維もしくは繊維束直径の100倍以上に規定し、生分解性樹脂として脂肪族ポリエステルを規定することで十分高い性能を出すことができるとされている。しかしながら、すべての脂肪族ポリエステルに適応できず、また成形条件により植物繊維が分解し、安定的に十分な性能を引き出すことが困難という問題がある。
他の例として、植物繊維とポリ乳酸との射出成形体が開示されている(例えば、特許文献2)。この技術においては、植物繊維とポリ乳酸を150〜200℃の雰囲気下で混合することを規定して射出成形している。しかしながら、この方法では十分強度のある成型物を得ることは難しく、製造条件の特定無しではかえって植物繊維が分解し、補強材の効果としては利用できないという問題がある。
上記先行技術に加えて、近年、生分解性樹脂に植物由来のバイオマスを混合するにとどまらず、生分解性を有する植物繊維との複合化により、繊維補強効果を生かして強度を上げることが検討されている。植物繊維として、竹(例えば、非特許文献1〜7)、麻(例えば、非特許文献8、9)、ケナフ(例えば、非特許文献10)、バガス、サトウキビの絞り滓(例えば、非特許文献11、12)などの天然植物繊維を用いて、生分解性樹脂との複合化が試みられている。しかし、それらの多くはプレス成形で作製されており、実用化を考えた場合には、押出連続成形や射出成形で作製できることが必要である。さらに、現在でも生分解性プラスチックの価格が同じ性能の汎用プラスチックより高く、それに環境問題やコストの面を考えた場合には、これらの高価な有機繊維より、林業廃棄物や農業廃棄物から排出された植物性廃棄物を添加することが望ましい。
特開2000−160034号公報 特開2002−069303号公報
高木 均;生分解性プラスチック−竹粉複合ボードの試作とその強度評価、材料、52(4)、pp357−361(2003) 藤井 透;竹繊維を用いた生分解性複合材料の開発とその強度特性、強化プラスチック、45(9)、pp.365−371(1999) 藤井 透;ミクロフィブリル化セルロースの添加による竹繊維強化複合材料の曲げ強度、破壊じん性および衝撃強度の向上、Bamboo Journal、(21)、pp35−45(2004) 藤井 透;竹繊維を用いた低環境負荷型複合材料の開発とその強度特性、Bamboo Journal、(19)、pp15−23(2002) 高橋 宣也;ミクロフィブリル化した竹繊維を用いたグリーンコンポジットの開発、Bamboo Journal、(22)、pp81−92(2005) 北川 和男;産学公連携による竹利用新技術 −竹繊維・生分解性プラスチックの界面制御型複合材料の研究開発−、現代林業、(450)、pp26−31(2003) 北川 和男;バイオマス(ミクロ及びナノ)ファイバーを用いた高植物度複合材料の開発、科学と工業、80(5)、pp219−224(2006) 合田 公一;プレス成形法によるラミー麻/生分解性樹脂複合材料の創製と化学処理効果、材料、52(10)、pp1245−1252(2003) 高木 均;竹繊維および麻繊維で強化した生分解性複合材料の力学的特性に及ぼす加熱処理の影響、材料、53(6)、pp673−677(2004) 柴田 信一;プレス成形によるケナフ繊維と生分解性樹脂の複合材料作製と曲げ弾性率の検討、日本機械学会論文集(C編)、72(714)、pp676−681(2006) 柴田 信一;ガバス繊維と生分解性樹脂による複合材料の作製と強度の検討、日本機械学会論文集(C編)、71(704)、pp1400−1405(2005) 柴田 信一;ガバス繊維と生分解性樹脂による複合材料の曲げ弾性係数について、日本機械学会論文集(C編)、71(707)、pp2414−2419(2005)
バイオマス/生分解性樹脂複合材料の強度が低い原因のひとつは、バイオマスと生分解性樹脂という異相の界面における相溶性が低いことにある。
本発明の目的は、上記のような異相界面相溶性の問題による力学特性の不足、および高コストなどの問題を解決し、コスト、加工性に優れた良好な力学特性を有するバイオマス/生分解性樹脂複合材料、及びその製造方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、得られた複合材料の成形方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、かねてよりバイオマスと生分解性樹脂の物性や製造条件について研究を行っていたところ、バイオマスは、適切な温度、時間で水処理することで、繊維としての強度を保ちつつ、フリーのヒドロキシ基が大幅に増大して、異相界面相溶性も改善し、複合材料に良好な力学特性が備わることを見出した。さらに、バイオマスとして、農業廃棄物(或いは副産物)を利用しても、良好な力学特性が得られ、バイオマス/生分解性樹脂複合材料のコストが下げられることを見出した。加えて、製造した複合材料に対し適切な圧延加工を行うことなどにより、製品に必要な力学特性を有する複合材料が得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の通りである。
1.フリーのヒドロキシ基量が2.79×1021/g〜3.15×1021/gである植物性バイオマス粉砕物と、熱可塑性生分解性樹脂を含有してなり、それらの比が、乾燥重量で、10:90〜90:10であり、引張強度が58MPa以上である、生分解性複合材料。
2.20℃以上沸点未満の水中で処理した植物性バイオマス粉砕物と熱可塑性生分解性樹脂よりなる生分解性複合材料。
3.20℃以上沸点未満の水中で処理した植物性バイオマス粉砕物と熱可塑性生分解性樹脂を混合することを特徴とする、生分解性複合材料の製造方法。
4.植物性バイオマス粉砕物:水=1:5〜1:15の重量割合で混合し、1分間〜24時間攪拌した後、乾燥させ、ついで熱可塑性生分解性樹脂と混合する前記3の生分解性複合材料の製造方法。
5.植物性バイオマス粉砕物がアセチル化処理されてなる、前記3又4の生分解性複合材料の製造方法。
6.植物性バイオマス粉砕物の乾燥重量が、原料の総重量に対し、10〜90重量%である、前記3乃至5のいずれか1項の生分解性複合材料の製造方法。
7.植物性バイオマス粉砕物の粒径が1mm以下である前記3乃至6のいずれか1項の生分解性複合材料の製造方法。
8.植物性バイオマス粉砕物の粒径範囲が、0〜10μm、10〜100μm、100〜300μm、300〜500μm、500〜1000μmの、何れか一つに、90%以上含まれる、前記3乃至7のいずれか1項の生分解性複合材料の製造方法。
9.原料に無機系微粒子充填剤を加えた、前記3乃至8のいずれか1項の、生分解性複合材料の製造方法。
10.前記3乃至9のいずれか1項の方法で製造した生分解性複合材料を、さらに、シート成形し、これを20℃から150℃で圧延率90%以下に圧延加工する、生分解性複合材料の板材の製造方法。
11.前記3乃至9のいずれか1項の生分解性複合材料を、さらに、溶融成形時の最高温度を、原料の植物性バイオマス粉砕物および生分解性樹脂の分解開始温度の―25℃〜+30℃として成形加工する、生分解性複合材料の成形加工方法。
本発明によれば、生分解性樹脂に混合する植物性バイオマス粉砕物を水処理することで、バイオマス/生分解性樹脂複合材料の強度を向上させることができる。混合する植物性バイオマスに農業廃棄物を使用すれば、コスト削減を図ることができる。さらに、充填剤を加えること等により様々な成形法に応用可能な加工性に優れた生分解性複合材料を提供することができる。
水中攪拌処理した稲わらのSEM写真を示す図である。(a)は水中撹拌していない(未処理の)稲わら粉砕物、(b)は水中攪拌処理した稲わら粉砕物である。 24時間の水中撹拌処理による熱分解挙動(TGA曲線)の変化を示す図である。 熱分解温度(5%重量減少時の温度)の変化を示す図である。 分子間水素結合強度の変化を示す図である。 フリーのヒドロキシ基の数の変化を示す図である。 水中撹拌処理によるアセチル化度の変化を示す図である。 稲わら添加量30wt%をもつポリ乳酸(PLA)基複合材料の熱分解特性を示す図である。(a)が熱重量(TGA)曲線、(b)が(a)の一次微分(DTG)曲線、(c)が示差熱(DTA)曲線を示している。 稲わら添加量30wt%をもつPLA基複合材料の熱分解温度の変化を示す図である。(a)が水中撹拌処理温度の影響、(b)が水中撹拌処理時間の影響であり、(b)の横軸のWT timeは水中撹拌処理時間である。 稲わら添加量30wt%をもつPLA基複合材料の流動方向の線膨張係数の変化を示す図である。 稲わら添加量30wt%をもつPLA基複合材料の厚さ方向の線膨張係数の変化を示す図である。 稲わら添加量30wt%をもつPLA基複合材料の幅方向の線膨張係数の変化を示す図である。 稲わら添加量30wt%をもつPLA基複合材料の稲わら添加量30wt%をもつPLA基複合材料の吸水率を示す図である。 稲わら添加量30wt%をもつPLA基複合材料の吸水寸法安定性の変化を示す図である。 稲わら/PLA複合材料の生分解性特性を示す図である。 稲わら添加量5wt%の複合材料の引張特性を示す図である。 稲わら添加量10wt%の複合材料の引張特性を示す図である。 稲わら添加量20wt%の複合材料の引張特性を示す図である。 稲わら添加量30wt%の複合材料の引張特性を示す図である。 処理時間10hでの内部構造と処理温度の関係を示す図である。 処理時間24hでの内部構造と処理温度の関係を示す図である。 温度80℃での内部構造と処理時間の関係を示す図である。 RS/PLA複合材料の引張特性に及ぼす添加量の影響を示す図である。 温度80℃で処理時間10hでのWTRS/PLA複合材料の引張特性に及ぼす添加量の影響を示す図である。 温度RTでのWTRS/PLA複合材料の引張特性に及ぼす添加量の影響を示す図である。 温度60℃でのWTRS/PLA複合材料の引張特性に及ぼす添加量の影響を示す図である。 温度80℃でのWTRS/PLA複合材料の引張特性に及ぼす添加量の影響を示す図である。 添加量50wt%でのPLA基複合材料の引張特性を示す図である。 アルカリ処理との比較を示す図である。 稲わら5wt%の添加量におけるPLA基複合材料の曲げ特性に及ぼす処理時間の影響を示す図である。 稲わら10wt%の添加量におけるPLA基複合材料の曲げ特性に及ぼす処理時間の影響を示す図である。 稲わら20wt%の添加量におけるPLA基複合材料の曲げ特性に及ぼす処理時間の影響を示す図である。 稲わら30wt%の添加量におけるPLA基複合材料の曲げ特性に及ぼす処理時間の影響を示す図である。 稲わら添加量とWTRS/PLA複合材料の曲げ特性の関係(処理温度RT)を示す図である。 稲わら添加量とWTRS/PLA複合材料の曲げ特性の関係(処理温度60℃)のを示す図である。 稲わら添加量とWTRS/PLA複合材料の曲げ特性の関係(処理温度80℃)を示す図である。 添加量50wt%での曲げ特性を示す図である。 温度80℃で10hでのWTRS添加量と衝撃特性の関係を示す図である。 稲わら30wt%の添加量をもつPLA基複合材料の衝撃強さを示す図である。 24h処理したWTRS30wt%を添加したPLA基複合材料の動的粘弾性特性を示す図である。 無水酢酸および酢酸の蒸気圧の温度変化を示す図である。 水中撹拌処理条件とアセチル化度の関係を示す図である。 フリーのヒドロキシ基数とアセチル化度の関係を示す図である。 化学修飾効果と熱分解温度の関係を示す図である。 アセチル化処理後の稲わら粉末のSEM写真を示す図である。 添加量30wt%での水中撹拌処理による化学修飾が引張強さに及ぼす影響を示す図である。 添加量30wt%をもつWTRS/PLA複合材料の引張強さと化学修飾効果の関係を示す図である。 化学修飾効果と破断ひずみ、引張弾性率の関係を示す図である。 WTRSを30wt%添加したPLA基複合材料の引張特性に及ぼす無機ナノ繊維状アタパルジャイトの添加量の影響を示す図である。 押出成形で得られたPLAシートを室温で圧延加工したときの圧延率と材料の引張特性の関係を示す図である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する植物性バイオマスは、植物由来のバイオマスであれば、特に限定されないが、コスト削減や循環型社会形成の観点から、林業・農業廃棄物を使用することが好ましい。植物由来のバイオマスとしては例えば、木質系である廃木材、及び木粉など、草本系である稲わら、籾殻、小麦・トウモロコシの茎、ケナフ繊維、ジュート、葦繊維、竹繊維、バガス、シサル麻、マニラ麻、亜麻、ラミー、笹繊維、バナナの茎、及び椰子の果実皮など、食品副産物であるおからなどを挙げることができる。これらの中で農業廃棄物としては、例えば、廃木材、稲わら、籾殻、小麦・トウモロコシの茎などがあげられる。
植物性バイオマス粉砕物の最大粒径は、好ましくは1mm以下で、より好ましくは0.3mm以下である。粒径は1mmより大きいと成形加工しにくいなどやや不都合がある。
粒径範囲は、揃っていることが好ましい。例えば、0〜10μm、又は10〜100μm、又は100〜300μm、又は300〜500μm、又は500〜1000μmのいずれかの範囲に収まっていることが好ましい。粒径分布が揃っていないと内部構造が不均質となるなどやや不都合がある。なお、不純物といえる範囲で、範囲外の粒径が含まれることは構わない。
粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布計で測定する。
植物性バイオマス粉砕物のフリーのヒドロキシ基量は、2.79×1021/g〜3.15×1021/gであれば好ましい。フリーのヒドロキシ基量が多いほど、ヒドロキシ基を介して生分解性樹脂と強く結びつくことが可能となる。すなわち、バイオマスと生分解性樹脂の間の異相界面相溶性が改善する。しかしながら、フリーのヒドロキシ基量を多くしようと、強い処理を施すと、逆に、植物性バイオマス粉砕物自体の強度が低下する。その最適なバランスが、この範囲となる。
フリーのヒドロキシ基量は、アセチル化による重量差分から計算する。具体的には、アセチル化が飽和に達するように、例えば、植物性バイオマス粉砕物:無水酢酸=1:1(重量比)として密閉容器中に各々を静置し、120℃で24h加熱する。処理前と処理後の重量差分を、ヒドロキシ基1個がアセチル基に置き換わる際の重量変化「7.031648086 x 10−23g」で割ってフリーのヒドロキシ基量を計算する。
植物性バイオマス粉砕物のフリーのヒドロキシ基は、その一部あるいは全部がアセチル化されていてもよい。この場合、フリーのヒドロキシ量には、アセチル化されたヒドロキシ基の数も含むものとする。
本発明の熱可塑性生分解性樹脂は、特に限定されないが、例えば、グリコールと脂肪族ジカルボン酸との重縮合などにより得られるポリエチレンサクシネ−ト、ポリブチレンサクシネ−ト、ポリヘキサメチレンサクシネ−ト、ポリエチレンアジペ−ト、ポリヘキサメチレンアジペ−ト、ポリブチレンアジペ−ト、ポリエチレンオキザレ−ト、ポリブチレンオキザレ−ト、ポリネオペンチルオキザレ−ト、ポリエチレンセバケ−ト、ポリブチレンセバケ−ト、ポリヘキサメチレンセバケ−ト、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート等の脂肪族ポリエステル系樹脂などが挙げられる。また、ポリグリコ−ル酸やポリ乳酸などのようなポリ(α−ヒドロキシ酸)またはこれらの共重合体、ポリ(ε−カプロラクトン)やポリ(β−プロピオラクトン)のようなポリ(ω−ヒドロキシアルカノエ−ト)、ポリ(3−ヒドロキシブチレ−ト)、ポリ(3−ヒドロキシバリレ−ト)、ポリ(3−ヒドロキシカプロレ−ト)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエ−ト)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエ−ト)のようなポリ(β−ヒドロキシアルカノエ−ト)とポリ(4−ヒドロキシブチレ−ト)などの脂肪族ポリエステルを用いることも可能である。さらに、セルロース系としては酢酸セルロース、澱粉脂肪酸エステル、澱粉/ポリカプロラクトン、澱粉/ポリブチレンアジペートテレフタレート等があげられる。これらは2種類あるいはそれ以上を混合して用いても良い。
また、生分解性樹脂の融点はバイオマスの分解開始温度+30℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは+20℃〜−50℃からの間にあることである。樹脂の融点が、バイオマスの分解開始温度+30℃を超えると、両者を溶融混合する際に、バイオマスが熱により大きく分解し、変色し、強度も大きく低下してしまうので、得られたバイオマス/生分解性樹脂複合材料の強度が低くなり、外観も悪くなる。例えば、稲わらの分解開始温度は200℃であるので、融点が230℃以下の生分解性樹脂を使用するのが好ましい。
ここで、バイオマスの分解開始温度、及び生分解性樹脂の融点は、以下の方法で測定する。
分解開始温度:島津製作所(株)製のDTG−60により、昇速温度10℃/minで加熱したときの重量減量を測定し、100℃以上で第1の変曲温度の開始温度を分解開始温度とする。
生分解性樹脂の融点:島津製作所(株)製のDTG−60により、昇速温度10℃/min、窒素雰囲気下で最大吸熱ピークの温度より求める。
なお、非結晶性生分解性樹脂の場合は融点がないため、流動性が高まる樹脂の混練・成形温度が、バイオマスと樹脂の分解開始温度以下であることが必要である。
混合割合は、重量比で、植物性バイオマス粉砕物:生分解性樹脂=10:90〜90:10が好ましく、より好ましくは20:80〜70:30である。植物性バイオマス粉砕物の重量比が10未満であるとバイオマスの添加効果は少なく、90を超えると植物性バイオマス粉砕物と生分解性樹脂の分散が不良で、複合材料の機械的特性が低下する。
なお、重量比は、乾燥重量比である。植物性バイオマス粉砕物を水中攪拌処理、吸引ろ過しこれを乾燥させたものの重量を計算に使用する。
本発明の生分解性複合材料には、無機系微粒子充填剤を含有してもよい。含有することで、複合材料の溶融流動性、バイオマスの分散性および複合材料の力学特性の改善、さらに材料コストの低下が期待できる。無機系微粒子充填剤として、例えば、モンモリロナイト(片状)、アタパルジャイト(繊維状)、CaCO3(粒子状)などの、汎用樹脂に用いられる無機物が挙げられる。
本発明の生分解性複合材料には、相溶化材例えば、シランカップリング剤を少量、含有してもよい。シランカップリング剤などの少量添加はバイオマスと樹脂の相溶性を改善する。必要に応じて、対象材料の種類によって、シランカップリング剤の種類を選択し、適量に添加するとより効果的である。シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
本発明の生分解性複合材料の各種特性は以下であることが好ましい。
本発明の生分解性複合材料の流動方向の熱膨張係数は、流動方向で、5.0×10−5−1〜7.5×10−5−1が好ましく、さらに好ましくは5.0×10−5−1〜7.0×10−5−1である。熱膨張係数が小さいほど、寸法安定性が向上する。熱膨張係数はJIS K 7197に準じて測定する。
引張強度は、58.0MPa〜66.0MPaが好ましく、さらに好ましくは60.0MPa〜66.0MPaである。引張特性は、JIS K 7161に準じて測定する。
シャルピー衝撃強度は、2.0kJ/m〜2.7kJ/mが好ましく、さらに好ましくは2.5kJ/m〜2.7kJ/mである。シャルピー衝撃強度はJIS K 7111に準じて測定する。
本発明の複合材料は以下のように製造する。
1.バイオマスの粉砕
バイオマスはどのような方法で粉砕しても構わない。例えば、カッター式、ハンマ式、ディスク式の粉砕機で、乾式あるいは湿式に粉砕し、微細化・繊維化する。
対象製品の要求により、粉砕物をそのまま使用してもよいし、或いは必要に応じて、ふるいなどで様々な粒径・繊維長に分級し、複合材料の特性の要求に応じて混合してもよい。例えば、強度の向上が必要とされる場合は、ディスク式での湿式粉砕により得られた繊維状の有機物を混合するのが好ましい。
例えば、豆腐の副産物であるおからは乾燥処理後、粉砕加工により約300μm以下の粒度に粉砕した。
例えば、稲わらは、その内部構造として、10μm前後の繊維束となっており、その引張強度は最大400MPaにも達している。粉砕処理した後、繊維状のものを取り出し、強化材として生分解性樹脂に添加すれば、複合材料の強度を向上させることが可能である。
例えば籾殻は、稲刈り後、脱穀・籾摺りの過程を経て、1mm以下に粉砕した。また、籾殻はセルロース35%、ヘミセルロース25%、リグニン20%、灰分17%(内、94%シリカ)を含んでいるため、強化材として利用できる。
2.水中攪拌処理
植物性バイオマス粉砕物1gに対して水(湯を含む、以下同じ)を好ましくは5mL〜100mL、より好ましくは5mL〜15mLの比率で混合して、スラリーにし、20℃以上沸点未満、2〜24時間の範囲で攪拌する。水中撹拌処理後、バイオマスと水の混合液をろ紙などで吸引濾過した後、好ましくは30℃〜80℃、より好ましくは45℃〜65℃、さらに好ましくは60℃で、好ましくは24〜72時間、より好ましくは40〜56時間、さらに好ましくは48時間乾燥させ、その後の操作に供する。
3.表面化学修飾
必要に応じて、表面化学修飾を行う。
表面化学修飾は、例えばアセチル化が挙げられる。アセチル化すると、疎水性の高い樹脂に対して相溶性が高くなり、生分解性複合材料の強度がより強くなる可能性がある。
アセチル化には、無水酢酸を用いることが好ましく、汎用処理である気相アセチル化、又は液相アセチル化を実施するのが好ましい(例えば、参考文献13〜15参照)。
(参考文献13)長谷川祐、“アセチル化木材の実用化への取り組み“、林産試だより2010年8月号、(2010)
(参考文献14)花ヶ崎裕洋、“林業技術センター情報、木材材料の化学処理・アセチル化処理“、http: //www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/157095.pdf (2016)
(参考文献15)則元京、“アセチル化木材“、木材研究資料vol24、(1988)、pp.13−30
気相アセチル化は、重量比が、無水酢酸/植物性バイオマス粉砕物=0.1〜1となるように、それぞれを容器の中に配置し、この容器を減圧して、温度60〜140℃、0を超えて72時間までの範囲で、処理することで行う。
液相アセチル化は、無水酢酸溶液に、植物性バイオマス粉砕物を浸すことで行う。例えば、ビーカーなどのいれものに無水酢酸を入れ、30℃の無水酢酸に30分間以上ドブ漬けすることで行う。
アセチル化処理後、必要に応じて洗浄、濾過し、一定の温度と時間で乾燥させ、次の工程に供する。
4.生分解性複合材料の製造
本発明の生分解性複合材料を作製するには、乾燥した各構成材料を、前述の範囲(「0021」)において、一定の重量割合で混合する。一軸、或いは二軸混練押出機を使って、複合材料のペレットを製造することができる。生分解性樹脂の流動性およびバイオマスの添加量により一軸或いは二軸混練押出機で複合材料のペレットを製造することができない場合は、別の混練機械(例えば、加圧式ニーダ(トーシン製、TD3−10M型)など)で混練して、粉砕機で粉砕加工して、ペレットを製造してもよい。成形は、ペレットを使って、通常の熱可塑性樹脂と同様な方法で成形してもよいし、必要に応じて直接成形或いは予備圧延加工した後に二次成形加工を行ってもよい。
さらには、相溶性及び分散性が優れ、或いは混練しなくても製品性能の要求に満足できる場合は、ペレットを介さず、直接溶融成形してもよい。
また、バイオマスの種類により、揮発成分量が多い場合は、バイオマスの分解が促進され、変色・強度低下がおこりやすい。そのため、特に高温成形の場合、バイオマスと生分解性樹脂との溶融混練に際しては、揮発成分を飛ばしておくことが望ましい。揮発量は、バイオマスの揮発に起因する揮発成分量が130℃において、10重量%以下となるように予め調整するのが好ましく、より好ましくは3重量%以下となるように調整する。実際の操作としては、例えば、製品の要求、成形温度などにより、予め、恒温炉などで130℃、5〜15分間、加熱し、その揮発成分を調整する。
なお、揮発成分量の測定は熱分析装置DTGで行う。
さらに、溶融混練或いは射出成形加工の際に、植物性バイオマス粉砕物を、予め、予備乾燥することが好ましい。バイオマス、特に稲わらなどは吸水性があり、水分の揮発により複合材料内部に気泡などの欠陥が発生しやすいためである。予備乾燥は、80〜100℃で5〜10時間を行うことが好ましい。
バイオマスと生分解性樹脂を溶融混練する温度は、バイオマスの分解開始温度−25〜+30℃が好ましく、より好ましくは−15〜+25℃である。溶融混練温度がバイオマスの分解開始温度−25℃未満であると、バイオマスは生分解性樹脂中に均一に分散されるが、生分解性樹脂とバイオマスの密着性が悪く、強度がやや低い。また、溶融混練温度がバイオマスの分解開始温度の+30℃を超えると、バイオマスと生分解性樹脂の密着性は良いが、バイオマスが分解し、バイオマスの強度が繊維補強材として寄与しない。
また、本発明の生分解性複合材料からの成形体の成形においても、溶融成形時の最大温度は、バイオマスの分解開始温度−25〜+30℃であることが好ましい。
5.相溶化剤の添加
シランカップリング剤等の相溶化剤の添加は、必要に応じてバイオマスの表面処理、混練或いは成形の各段階で行うことができる。
6.無機物の添加
無機物の添加は必要に応じてバイオマスの表面処理、混練或いは成形の各段階で行うことができる。
7.生分解性複合材料の圧延加工
本発明の生分解性複合材料に対し、圧延加工を行ってもよい。圧延加工は、20℃〜150℃付近で、最大圧延率90%以下になるように行うのが好ましい。圧延率は、(圧延後の厚さ―圧延前の厚さ)/圧延前の厚さ)×100、で計算する。
ここで、押出成形加工などで得られた複合材料シートを製品化するために、更に材料特性の改善、或いは深絞り、プレス成形などの二次加工の要求により、圧延加工を行う場合がある。これまでの検討では、圧延加工は材料の内部微細構造を変化させ、力学特性の改善が期待されることが分かった。特に圧延方向における強度の大幅向上および適当な圧延率で、材料の延性特性も大きく改善される。したがって、上記の通り、圧延加工を行うことで複合材料の力学特性の向上および二次加工性の改善により製品化の分野を広げ、新しい製品の開発も期待される。
8.生分解性複合材料の製品化
上記のようにして得られた本発明の生分解性複合材料は、低コストで、バイオマスの種類・粒度・形状・添加量によって複合材料の物性などを調整できるとともにバイオマスと生分解性樹脂として環境に負荷を与えることが少ないので、様々な成型品として好適に使用できる。特に圧縮強度を必要とする構造部材(例えば、コンテナ・トラック用下敷き板材)、建築材料はもちろんのこと、建具材料、建設仮設材、看板、ディスプレー用台板、家具(板材)、家電製品筐体および花火の玉皮、農業用材、園芸用ポット、テントを固定する際に使用するペグ、さらには使い捨ての各種容器などに好適である。
以下に、本発明を実施例で説明する。
実施例1
[稲わらの粉砕及び水処理]
稲わらをカッターミルで粉砕した。このうちを、網目の間隔300μmのふるいを通過し、106μmは通過できない粉砕物を、分級した。
この分級した稲わら粉砕物50gを500mlの三口フラスコに入れ、蒸留水500mLに浸漬させた後、三口フラスコを密閉し、オイルバス(ASONE製、SM‐101)に入れて所定の温度と時間で撹拌することで、稲わらを水中攪拌処理に供した。この際、稲わらは吸水し、ドロドロしたスラリー状であった。撹拌にはトルネード撹拌機(ASONE製、SM‐101)を用いた。処理条件は、室温(23±2℃、以下RTと記載)60℃、80℃で、0、10、24時間である。水中撹拌処理後、稲わらに水を加えながら4回、脱脂綿での吸引濾過を繰り返し、温度60℃で48時間乾燥させ、その後の操作に供した。
比較として、未処理(RS、比較対照1)、汎用的な脱脂法であるアルカリ処理(比較対照2)と煮沸処理(比較対照3)を行った。
アルカリ処理(比較対照2)は、セルロースナノファイバーやエタノール製造の際に多く行われている(例えば、参考文献22〜25参照)。また、植物繊維強化複合材料の作製の際の前処理検討や和紙の製造でも用いられている(例えば、非特許文献26〜28参照)。アルカリ処理には、まず、三口フラスコに稲わら粉砕物30gを入れ、水酸化ナトリウム水溶液300mLを加えた。水酸化ナトリウムの濃度は1、5、10、20重量%に振った。その際も水中撹拌処理同様に水酸化ナトリウム水溶液を吸水し、ドロドロしたスラリー状となり、稲わらが黄銅色になった。これをオイルバスに入れ、温度60℃で時間0.5h撹拌した。処理後、酢酸で中和することでアルカリの反応を止め、蒸留水加水での脱脂綿吸引濾過を5回行い、温度60℃で48時間乾燥させた。
(参考文献22):Mohdrafein Zakaria,Satoshi hirata, Mohd ali Hassan, “Combined pretreatment using alkaline hydrothermal and ballmilling to enhamce enzymatic hydrolysis of oil palm mesocarp fiber“, Bioresource Technolongy Vol.169、(2014)、 pp236−243
(参考文献23):“セルロースナノファイバーの新規紡糸法による 高強度繊維の開発”、 http://www.khc.or.jp/enquiry/result/pdf/26/10.pdf (2016)
(参考文献24):辻志穂、深澤雅彦、宮脇正一、飯森武志、“セルロースナノファイバーの製造方法”、WO2013047218A1、(2013)
(参考文献25):大島義徳、千野裕之、“稲わらの糖化処理のためのアルカリ処理条件の検討” 、土木学会第64回年次学術講演会集、(2009)、pp77
(参考文献26):花田朋美、安藤穣、“アルカリ溶液による綿繊維の収縮性“、東京家政学院大学紀要大43号、(2003)、pp55−58
(参考文献27):“和紙の製造工程“、http://www.awagami.or.jp/awawashi/koutei.html (2016)
(参考文献28):“越前和紙の製造工程“、www.megaeg/g.ne.jp/〜mizu/makiwasi/makewasi.html (2016)
煮沸処理(比較対照3)は主に、グルコースを主成分とする糖類の製造過程で前処理として用いられている。本比較対象において、小型ナベをIHヒーターにて強火で加熱することで沸騰した蒸留水3Lに、稲わら粉砕物50gを投入して行った。処理時間は、5、10、20、30minとした。処理後、蒸留水加水での脱脂綿吸引濾過を4回実施し、温度60℃で48時間乾燥させた。
提案した水中撹拌処理の有効性および優位性の評価として、稲わら粉末の性状に及ぼす影響、水中撹拌処理による成分変化、水中攪拌処理のメカニズムを評価した。
(成分変化)
未処理の稲わら粉砕物(RS、比較対象1)を粒度分布測定に供した。粒度分布測定はレーザー回折・散乱式粒子径粒度分布測定装置(日機装(株)製、MicrotracMT2000II)で行った。稲わら粉砕物を水道水20mLに泡立てないように加え、界面活性剤を数滴加えた後、超音波振動を10分印加し、湿式測定に供した。測定条件は、サンプル希釈濃度0.1〜1、粒子屈折率1.33とし、平均粒径は50%粒子径で計算した。
その結果、頻度分布において、粒子径区間400μm付近に大きなピークがあり、600μm以上の稲わらも多く見られた(データ省略)。これは、ふるい分けした際の粒度106〜300μmに対応しない結果である。カッターミルで粉砕すると、粒子の先端部が刃物で切断されたような形状を多々観察でき、元々の繊維形状を維持しつつ、短繊維化するものが多くなる。試験篩による粒度の分級では、繊維の長さと幅のどちらか一つが該当の粒度範囲を満足すれば通過するため、長さ方向に分級した範囲よりも大きな粒径の稲わらが存在してしまう。このためこれらの結果につながったものと考えられる。
水中撹拌処理した稲わら(WTRS、本発明)の粒度分布測定結果では、粒径200μm付近に新たなピークが現れており、処理時間を長くするとそれが大きくなった。また、600μm以上のピークは明確に低下した(データ省略)。
平均粒径は、未処理の稲わら粉砕物(RS、比較対照1)で最も高く、約360μmであった。つまり、水中撹拌処理により平均粒径が低下することは明らかである。また、水中撹拌処理した稲わら粉砕物(WTRS、本発明)については、処理時間を長くすると基本的に低下する様子が認められ、処理温度の上昇でも同様の傾向であった。しかし、60℃、80℃では24hのみで増大し、それぞれ340μm、330μmを示した(データ省略)。
(性状変化)
これら稲わら粉砕物のSEM写真を図1(a)(b)に示した。未処理の稲わら粉砕物(RS、比較対照1)はカッターミルの特徴である稲わら粉砕物の先端部が刃物で切断されたような形状が見られ、表面が滑らかで外皮が大きく破壊されているものも少ない(図1(a))。
それに対して、水中攪拌処理した稲わら粉砕物(WTRS、本発明)では、処理温度RTでの2hの処理で、表面の滑らかさ(表皮層)が失われ、シリカと思われる粒上の組織(恐らくは油脂を含む)が露出しており、一部でガラス質に変化した植物珪酸体と考えられる組織も認められる。これらをシリカ層と呼ぶこととする。処理時間を長くすると、10hでこのシリカ層(粒状の構造)の破壊が進行しており、24hでほとんどなくなり、内部の維管束(骨抜きの構造)が油脂(接着層、稲わら表面上の滑らかな部分)で覆われている構造を認めることができる(図1(b))。
これより高い処理温度60℃では、2hでシリカ層の露出と破壊が既に大きく進行しており、接着層で覆われた維管束の構造が見えてきている。時間を長くすると破壊が大きくなる傾向は同様であり、24hになると、それまでは表面から剥がれていくような破壊だったものが、内部から割れるように分離しており、RTよりも内部の維管束が大きく露出するようにもなっている。最も高い処理温度80℃では、わずか2hでシリカ層が既にほとんど分離してしまっており、10hで接着層が消失していき、24hで内部からの割れにより、繊維が分離している。
(メカニズム及び効果)
すなわち、水中撹拌処理は、稲わらの内部構造を露出、分離させていく効果があり、これに伴い粒径を低下させていく処理である。特に処理温度60℃、80℃の24hでは、繊維の分離も発生するため、それまでよりも大きく粒径を低下させ、一方でアスペクト比を高くする。平均粒径では60℃、80℃の24hでのみ粒径が上昇していたが、本来はこのように低下しており、逆にこの低下により自己凝集性が増して粒度分布測定結果に反映されなかったものと考えられる。あるいは、アスペクト比の増大により、非球形近似で対応できなかった可能性もあるだろう。
実施例2
[水中攪拌処理後の熱分解挙動の変化]
熱分解による重量変化は「0019」と同様に島津製作所(株)製のDTG−60を用いて計測した。図2に示した水中撹拌処理(24時間)による熱分解挙動(TGA曲線)の変化において、RS(未処理の稲わら粉砕物、比較対照1)、WTRS(それぞれの温度で水処理した稲わら粉砕物、RT(室温)、60℃、80℃、本発明)ともに、温度80℃付近から重量減少が生じている。これは水分の蒸発が生じたためと考えられる。RSは、250℃付近で熱分解を開始しており、熱分解開始温度付近は緩やかであるが、270℃付近から重量が急激に減少し、それが温度380℃付近まで進行している。しかし、400℃以上の高温域では、分解量が少なくなり、600℃で約30%の残留物が確認できる。
一方、WTRS(本発明)では270℃付近から熱分解が開始し、熱分解開始時はRS(比較対照1)と同様緩やかに減少し、300℃付近から380℃まで急激に減少している。
図3に示した、水中攪拌処理時間に対する熱分解温度(5%重量減少時の温度)の変化において、RS(比較対象1)では熱分解温度が238℃であるのに対し、WTRS(RT、60℃、80℃、本発明)は272℃〜277℃であり、熱に対する耐性が、水中攪拌処理することで、大幅に向上している。これは、洗浄作用による稲わらの表面に付着している不純物の除去によるものと考えられる。
水中撹拌処理条件で比較すると、処理温度と処理時間が増えるにつれ、熱分解温度が向上している。特に、WTRS(RT)では約273℃〜274℃、60℃では274℃〜275℃をであったが、80℃では276℃〜277℃を示し、80℃で最も熱分解温度が向上している。これは、水分子の活性化により、稲わらの熱分解しやすい成分が除去されたからと思われる。処理時間が増大すると、WTRS(RT)とWTRS(60℃)では、10hまでは向上し、10hと24hでほとんど熱分解温度が変化しないが、WTRS(80℃)では熱分解温度が長時間処理によって向上している。
実施例3
[稲わら粉砕物内部の分子間水素結合強度の測定]
図4に、水中攪拌処理温度及び時間と稲わら内部の分子間水素結合強度の関係を示した。稲わら内部の分子間水素結合強度は、FT−IRにより、IRスペクトルを測定し、水素結合を検出するIRスペクトルの3400cm−1(A3400)と内部標準を検出する2940cm−1(A2920)の吸光度比から計算した。
水中撹拌処理の温度と時間増大に伴い、分子間水素結合強度の低下傾向がみられる(図4)。一般的に稲わらなどのリグノセルロース系バイオマスはセルロースやヘミセルロース、リグニンの主成分や副成分、不純物等が水素結合しており、水素結合量が多く、活性部位が閉じている。このため、水素結合強度は高くなる傾向があり、水素結合が切断された場合には水素結合強度が低下する。このことから、稲わら内部のセルロース、ヘミセルロースやリグニンなどの分子間水素結合が活性化水分子の侵入によって、水素結合が切断され、開裂していると言える。
図5に、水中攪拌処理時間とフリーのヒドロキシ機量の関係を示した。「0016」と同様の方法で、飽和に達するまでアセチル化して、フリーのヒドロキシ基量を計算した。
フリーのヒドロキシ基の数の変化において、RS(Time0、比較対照1)ではフリーのヒドロキシ基の数は約2.3×1021/gであるのに対し、2hでの水中撹拌処理(WTRS、(RT、60℃、80℃)の2h)により大幅に増大し、処理時間が長くなるにつれ、フリーのヒドロキシ記も増大している傾向が得られている。特に、2hよりも24hの方がフリーのヒドロキシ基の数は多く、WTRS(本発明、RT)で約2.9×1021/g、WTRS(本発明、60℃)で3.0×1021/g、WTRS(本発明、80℃)では約3.2×1021/gにまで増大している。
すなわち、未処理(RS(比較対照1))と比べてRT(WTRS、RT、本発明)では約30%、60℃(WTRS、60℃、本発明)では約35%、特に80℃(WTRS、80℃、本発明)では約40%のフリーのヒドロキシ基量の増加が見られる。また、水中攪拌処理時の処理温度が高くなるにつれ、フリーのヒドロキシ基量は増大しており、特に、温度80℃(WTRS、80℃、本発明)では全ての処理時間でフリーのヒドロキシ基の数が多い。
汎用活性化前処理であるアルカリ処理(比較対照2)と比較したところ、水中撹拌処理では2.8×1021〜3.2×1021/gであるのに対し、アルカリ処理では3.0×1021〜3.5×1021/gとなり、アルカリ処理(比較対照2)とほぼ同程度の露出量であった。このことから表面化学修飾前処理として大きな効果を示していると言える(データ省略)。
実施例4
[稲わら粉砕物のアセチル化処理]
図6に、80℃で24時間、水中撹拌処理した稲わら粉砕物(WTRS、本発明)のアセチル化度と、未処理の稲わら粉砕物(RS、比較対照1)のアセチル化度とを比較した。
気相アセチル化は、耐熱ガラス製のデシケータ内にバイオマスとシャーレなどに入れた無水酢酸を配置し、到達真空度−0.1MPaまで真空ポンプで減圧した後にこれを恒温炉に入れ、120℃で24時間静置することにより実施した。
アセチル化度は、化学修飾前後の重量変化から式(1)で算出した。なお、Wbeforeは化学修飾前の重量、Wafterは化学修飾後の重量である。
アセチル化度=(Wafter−Wbefore/Wbefore)×100 (1)

水中撹拌処理しないと(RS、比較対照1)、無水酢酸量(g)(AA)/稲わら粉砕物(g)(RS)=0.5、1.0では、それぞれ、11.69、17.01%のアセチル化度であり、無水酢酸量増大による効果も小さい。
水中撹拌処理すると(WTRS、本発明)、アセチル化度が大幅に向上し、AA/RS=0.5、1.0ではそれぞれ、15.84、24.28%のアセチル化度を示しており、無水酢酸量増大による効果も大きい。少量の無水酢酸量でも反応量が大きくみられる。つまり、水中撹拌処理によって、反応の起点となるフリーのヒドロキシ基が増大したため、反応がより進行し、化学修飾効果が約50%も向上したものと考えられる。
実施例1〜4より、水中撹拌処理の有効性および優位性などについて、次のように纏められる。1.水中撹拌処理により、平均粒径の低下が見られ、処理温度と処理時間が増大するにつれ、滑らかな表面(表皮)の消失、シリカ層の分離、内部の表面を覆う油脂層の破壊により維管束が見られていた。水中撹拌処理を60℃、80℃で行うと、繊維の分離も発生するため、それまでよりも大きく粒径を低下させ、一方でアスペクト比を高くする。2.水中撹拌処理すると、熱分解しやすい成分の脱離によって、熱分解温度が大幅に向上し、熱分解温度は約270〜276℃となった。3.水中撹拌処理のメカニズムを検討したところ、不純物および外皮(油脂膜など)の除去する洗浄・脱脂作用、内部の分子間水素結合の開裂による破壊・微細化、一部のリグニンの溶出とそれに伴うヘミセルロースの脱離が生じる脱リグニン・脱ヘミセルロース作用であった。4.脱脂、脱ヘミセルロース、脱リグニン作用による成分の分離により、フリーのヒドロキシ基が大幅に増大し、水中撹拌処理を80℃で24h行ったとき(本発明、WTRS(80℃、24h))、3.2×1021/gになり、未処理と比べ、フリーのヒドロキシ量が、約40%も向上した。これは、アルカリ処理したとき同等の量である。また、表面化学修飾(アセチル化)程度が、未処理の場合と比べ、約50%向上した。
実施例5
[稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料の製造]
フリーのヒドロキシ基は、極性部位と水素結合する特性を持つことから、極性をもつプラスチックとであれば、表面化学修飾がなくても、植物性バイオマス粉砕物のフィラーとしての補強作用により、製造した生分解性複合材料は、強度などの特性が向上する可能性がある。極性をもつ高分子としてポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネート(PBS)などの生分解性プラスチックなどが挙げられる。PLAは、末端にヒドロキシ基とカルボニル基を有しており、稲わらのフリーのヒドロキシ基と水素結合のような分子間相互作用が可能である。稲わらのヒドロキシ基とPLAのカルボニル基との水素結合は主にヒドロキシ基のHとカルボニル基のOで起こる。
そこで、水中撹拌処理した稲わらをフィラーとしてポリ乳酸に添加した稲わら/PLA複合材料を作製し、基本物性、力学特性と内部構造の関係、さらにはそれらに及ぼす水中撹拌処理条件の影響を調査し、高特性を有する稲わら/PLA複合材料の開発を検討した。
実施例1で製造した、水中攪拌処理した稲わら粉砕物(以下、水処理稲わら粉砕物)と、PLA(ポリ乳酸)を混合して、WTRS/PLA(ポリ乳酸)複合材料を製造した。
稲わら粉砕物の水中攪拌処理の条件は、RT(室温)、60℃、80℃、反応時間は、2、10、24時間に振った。水処理した稲わら粉砕物の混合重量は、全体重量に対して、10wt%、20wt%、30wt%とした。
比較対照として、上記同様の条件で製造した未処理の稲わらとPLA(ポリ乳酸)よりなる、RS/PLA複合材料(RS、比較対照4)、また、純粋なポリ乳酸樹脂(PurePLA、比較対照5)を設定した。
実施例6
[稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料の熱分解特性]
図7(a)〜(c)に各種材料の熱分解特性を示した。(b)はTGA曲線の一次微分でDTG曲線である。熱分解特性は「0019」と同様の方法で測定した。
WTRSは、80℃で24時間、水中攪拌処理した稲わら粉砕物を、30wt%混合したときの、WTRS/PLA複合材料の熱分解特性である。比較対照として、未処理の稲わらを30wt%添加した、RS/PLA複合材料(RS、比較対照4)、純粋なポリ乳酸樹脂(PurePLA、比較対照5)の値も示した。
60℃付近にはガラス転移による吸熱ピーク、110℃付近には再結晶化による発熱ピーク、170℃付近には融解による吸熱ピークが見られる。特に、再結晶化のピーク温度がRS、WTRS、PurePLAの順に高温側にシフトしており、RSでは約100℃、WTRSでは約103℃、PurePLAは約115℃である。
TGA曲線における熱分開始温度はRSで最も低く、WTRS、PurePLAの順に高温側にシフトしている。その際のTGA曲線の一次微分であるDTG曲線のピークは、RSで250℃付近、320℃付近、340℃付近の3点で確認される。320℃付近のピークはPLAの熱分解によるピーク、250℃付近、340℃付近のピークは稲わらの熱分解に伴うピークであると考えられる。しかし、WTRSでは稲わらの熱分解に伴うピークが見られなくなっており、350℃付近に大きなピークが見られることから、PLAと相互作用している可能性がある。
図8に、稲わらを30wt%混合した稲わら/PLA複合材料の熱分解温度の変化を示した。(a)が水中撹拌処理時間(WT time)の影響、(b)が水中撹拌処理温度の影響である。RSは、水中攪拌処理しない稲わらを混合した複合材料(比較対照4)、PurePLAは、純粋なポリ乳酸樹脂(比較対照5)である。
熱分解温度は「0019」と同様の方法で測定した。
PurePLA(比較対照5)では、熱分解温度は332℃であった。RS/PLA複合材料(RS、比較対照4)の熱分解温度は、276℃を示しており、大幅に低下している。しかし、水中撹拌処理すると、PurePLAよりは低いものの、どの条件でも約300℃付近となり、RS/PLA複合材料(RS、比較対照4)よりも大幅に向上している(図8(a))。
特に、水中撹拌処理時間24hでの、水中撹拌温度の影響を見ると、温度RT、60℃では、複合材料の分解温度が301℃、302℃であるのに対し、温度80℃では305℃であり、未処理(RS、RS/PLA複合材料)と比べて約11%上昇している(図8(b))。これは、稲わら粉末の熱分解温度の向上に起因するものと考えられる。
実施例7
[稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料の熱膨張係数変化の測定]
図9〜図11に流動方向、厚さ方向、幅方向の線膨張係数の変化を示した。24時間水中攪拌処理した稲わら粉砕物を30Wt%混合した、WTRS/PLA(ポリ乳酸)複合材料を測定に供した。
熱膨張係数は、試料寸法4×4×4mm、荷重4kPa、測定温度範囲30℃〜120℃、昇温速度5.0℃/minの条件で、熱機械分析装置((株)島津製作所製、TMA−50H)に供することより測定した。
PurePLAでは流動方向、厚さ方向、幅方向の線膨張係数がそれぞれ、17.40×10−5−1、18.87×10−5−1、17.15×10−5−1であり、3方向の線膨張係数がほぼ変化がないことから、等方性材料であることがわかった(図9〜図11)。
一方で、未処理の稲わらを添加したRS/PLA複合材料(RS)は、流動方向、厚さ方向、幅方向はそれぞれ、6.36×10−5−1、17.34×10−5−1、16.11×10−5−1となっており、全方向で、上昇が見られ、特に流動方向に関しては約50%も向上した(図9〜図11)。
水中攪拌処理したWTRS/PLA複合材料(WTRS)でもほぼ同等であり、流動方向では処理温度RTで5.71×10−5−1、60℃で6.45×10−5−1、80℃で6.81×10−5−1であった。厚さ方向に関しても未処理とほぼ同等であるが、処理温度80℃では厚さ方向でも10.63×10−5−1と約45%も向上した。幅方向はRTで約17.97×10−5−1とPLA単体(PurePLA)よりも悪くなっているが、60℃、80℃では、約15×10−5−1と改善された(図9〜図11)。流動方向の大幅な寸法安定性の向上は、繊維による補強作用によるものだと考えられる。
実施例8
[稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料の吸水率、吸水寸法安定性]
図12に吸水率、図13に吸水寸法安定性の変化を示した。図12(a)、図13(a)では、24h水中攪拌処理した稲わら粉砕物を30Wt%混合した、WTRS/PLA(ポリ乳酸)複合材料を測定に供した。図12(b)、図13(b)も同様の複合材料を測定に供した。
測定は試料を5×5×2mmに加工し、これを50℃で熱風乾燥器により試料重量の変化が±0.1mg以内になるまで乾燥させた後に重量と厚さを測定し、23℃の精製水中に24時間静置した後の重量と寸法の変化を調べることで行った。
24hでの吸水率、及び吸水寸法安定性は、PLA単体(PurePLA、比較対照5)でそれぞれ、0.63%、0.39%であった(図12(a)、図13(a))。PLAは疎水性であるため、吸水量が少なく、吸水寸法安定性が良い高分子である。しかし、RS/PLA複合材料(0hのときの、RT、60℃、80℃、RS、比較対照4)では吸水率が約4.8%、吸水寸法安定性は約4.0%を示し、耐水性が大幅に低下した(図12(a)、図13(a))。これは、稲わらが親水性であることに由来する。また、複合材料内部の稲わら‐PLA界面に水分子が入り込んだ可能性もある。
しかし、WTRS/PLA複合材料(WTRS,本発明)では、PLA単体(PurePLA)よりは向上しなかったものの、吸水性は約3.5〜3%となり(図12(a))、吸水寸法安定性も約2.5〜2%(図13(a))と未処理(0hのときの、RT、60℃、80℃、RS、比較対照4)よりも耐水性が向上している(図12(a)、図13(a))。また、24hでのRT、60℃、80℃の吸水率はそれぞれ、2.93、2.91、2.85%(図12(b))、吸水寸法安定性は2.16、2.02、1.96%を示しており(図13(b))、処理温度への依存性が見られる。これは、稲わら‐PLA界面の接着性向上により、水が複合材料の内部に浸透しなかったためである。
実施例9
[稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料の流動性]
表1に、温度80℃で10h水中撹拌処理した稲わら粉砕物を混合した、稲わら/PLA複合材料の、溶融密度とMFR(メルトマスフローレート)値を示した。表2に温度80℃で水中撹拌処理した稲わら粉砕物を30wt%混合した、稲わら/PLA複合材料の、溶融密度とMFR値を示した。
溶融密度とMFR値は複合材料のペレット4.0gを180℃に設定したメルトインデクサ((株)東洋精機製作所製、G−01)に供することで測定した。
PLA単体(PurePLA)はMFR値5.57を示しているが、稲わらの添加量増大に伴い低下が見られ、流動性が悪くなっている(表1)。また、水中攪拌処理時間が長いほど流動性が低かった(表2)。これは、水中撹拌処理による稲わらの粒径低下と稲わら‐PLA間の相互作用増大に起因するものと考えられる。
Figure 0006944686
Figure 0006944686
実施例10
[稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料の分解特性]
図14に、稲わら/PLA複合材料の生分解性特性を調べるために、屋外暴露および土壌埋設試験を行った結果を示した。比較のため汎用結晶性プラスチックであるPPと非結晶性エンジニアリングプラスチックであるPCも同様な試験を行った。
これらの試験は、任意の期間試験した試料を回収し、引張試験、表面構造を実体顕微鏡観察に供することで、分解性を評価した。
その結果、RS/PLA(ポリ乳酸)複合材料の外観と物性は、屋外暴露試験の結果から、PPより優れた引張強度を維持できることがわかった(データ省略)。一方、土壌による埋設試験においてはPP(データ省略)とPCは殆ど変化がなかったが、生分解性ポリ乳酸およびその複合材料は明らかに劣化が進み、特に稲わらを添加すると、その劣化(分解性)がより激しくなることが確認された(図14埋設試験)。つまり、バイオマスの添加は複合材料の生分解速度を促進することがわかる。
実施例11
[稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料の引張特性の、水中撹拌処理時間、処理温度による変化]
稲わら/PLA複合材料のペレットを射出成形機により射出温度180℃、射出速度17.6mm/s、金型温度40℃でJIS K 7161基準の試験片に成形し、引張試験に供した。
図15〜図18に、WTRS/PLA複合材料の引張特性の変化を示した。図15が稲わらを5wt%、図16が10wt%、図17が20wt%、図18が30wt%混合した複合材料である。(a)では引張強度、(b)では引張破断ひずみ強度、(c)では引張弾性率を示した。
これら引張特性は、JISK−7113に準拠して測定した。
PLA単体(PurePLA)の引張強さは66.7MPaであった。添加量5wt%において、処理温度RT、60℃の場合で2hでは(WTRS/PLA複合材料)、未処理(処理時間(WT time)0h、つまりRS/PLA複合材料)よりも低下しているが、それ以降、処理時間増大に伴い、上昇傾向が見られ、24hでは未処理とほぼ同等となっている(図15(a))。80℃では全ての条件で未処理よりも引張強さが高く、処理時間の増大に伴い上昇し、24hでは約64MPaを示しており、その強度上昇率は約3.0%である。添加量10〜30wt%では、どの条件でもWTRS/PLA複合材料(80℃)は未処理よりも強くなっている(図15(a))。
24hでのRT、60℃、80℃の引張強さを比較すると、どの稲わら混合量でも、80℃の場合が最も高く、10wt%で約60MPa、20wt%で61MPa、30wt%では約62MPaである(図16(a)〜図18(a))。処理時間の影響を見ると、処理温度RT、60℃では、10wt%の場合でのみ時間の増大に伴う強度上昇がみられるが(図16(a))、20wt%、30wt%の場合10hと24hでほとんど変化していない(図17(a),18(a))。処理温度80℃では、30wt%において10hで最大を示しており、24hでは低下している(図18(a))。それぞれの添加量で処理温度80℃での、未処理と比較した強度上昇率を算出すると、10wt%では約3.9〜7.8%、20wt%では、約12.4〜15.0%、30wt%では約14.9〜24.8%であり(図16(a)〜図18(a))、30wt%で最も効果が見られる。
PLA単体(PurePLA)の破断ひずみは10.29%であったのに対し、RS(未処理、処理時間0)を添加すると、すべての添加量で、RS/PLA複合材料の引張破断ひずみは大幅に低くなり(図15(b)〜図18(b))、稲わら添加量30wt%では約3.2%である(図18(b))。しかし、WTRS/PLA複合材料の破断ひずみは、すべての添加量でRS/PLA複合材料(処理時間0)よりも高い(図15(b)〜図18(b))。添加量5〜10wt%のときの24hでのRT、60℃、80℃の破断ひずみを比較すると、どの添加量でも、RTの場合が最も高く、80℃の方が低い(図15(b)、図16(b))。
引張弾性率は、PLA単体(PurePLA)が1.53GPaであるのに対し、RS/PLA複合材料(処理時間0)は添加量5〜30wt%でそれぞれ、1.64GPa、1.91GPa、2.21GPa、2.38GPaである(図15(c)〜図18(c))。WTRS/PLA複合材料は、5wt%では、RS/PLA複合材料(処理時間0)と比べて、ほぼ変化がなく、10wt%〜30wt%では低下傾向を示す(図15(c)〜図18(c))。
実施例12
[稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察]
図19〜21に、引張試験で破断された後の、稲わら/PLA複合材料のSEM写真を示した。図19は水中攪拌処理時間10h、図20は処理時間24h、図21は、水中攪拌処理時の温度が80℃のものである。
水中撹拌処理後のWTRS/PLA複合材料(RT、60℃、80℃)の破断面は、すべての条件で、RS(処理時間0、RS/PLA複合材料)と比較し、稲わらが抜けた後であるボイドが少なくなっていた(図19〜21 特に図19の×100の矢印)。SEM写真で、内部構造を見ると、RT10hでは界面で、稲わらとPLAが密着している様子が確認できた(図19 ×500の写真で、矢印で示したものが稲わら、それ以外がPLA)。温度60℃、80℃、時間10h、24hでは、界面でPLAが塑性変形している様子やフィブリルを多数形成している様子が確認できた(図19、図20)。温度80℃、時間2h、10hでは稲わらとPLAが密着しているが、80℃、24hでは稲わらが凝集している様子が認められた(図21)。
さらに、処理時間10h、24hでの処理温度が内部構造に与える影響と界面接着性の評価として、はく離とPLAフィブリルの形成とPLA被覆、凝集の有無をSEM写真から評価した。上述の通り図19、図20に処理時間10h、24hでの処理温度が内部構造に与える影響、図21に温度80℃における処理時間が内部構造に与える影響を示した。図19、図20において、温度が上昇するのにつれ、界面でPLAが塑性変形している割合が多くなり、80℃では表面にPLAが多く被覆している。すなわち、80℃で最も界面接着性が高いものと考えられる。それに伴い、強度が向上していることから、強度の上昇は界面接着性の向上に起因するものと考えられ、80℃で最も界面接着性が高いものと考えられる。
以上から、稲わら−PLA界面でヒドロキシ基を介して水素結合していることが示唆される。図21において、処理時間が増大するにつれ、PLAの被覆量が多くなり、10hで多くのPLAが被覆されており、界面接着性の向上によって強度が向上したものと思われる。しかし、24hではPLAでほぼすべて被覆されており、界面接着性が良いにもかかわらず強度が低下した。図21より、複合材料内で稲わらが凝集体を形成していることから、過度のOH基の露出は、自己凝集の原因となり、強度が低下したものと考えられる。
実施例13
[稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料引張特性の、稲わら添加量による変化]
図22にRS(未処理稲わら粉砕物)/PLA複合材料の引張特性に及ぼす稲わら粉砕物添加量の影響を示した。図23に温度80℃で処理時間10hでの、WTRS(水処理稲わら粉砕物)/PLA複合材料の引張特性に及ぼす稲わら粉砕物添加量の影響を示した。また、図24〜図26に、処理温度RT、60℃、80℃WTRS/PLA複合材料の引張特性に及ぼす稲わら粉砕物添加量の影響を処理時間、2、10、24hごとに示した。なお、それぞれの稲わら添加量0wt%はPLA単体(PurePLA)である。
RS/PLA複合材料では、添加量増大に伴い、引張弾性率(Tensile modulus)が向上しているが、引張強さ(Tensile strength)と破断ひずみ(Fraction strain)は大幅に低下した(図22)。すなわち、界面接着性が小さいため、繊維による補強作用が低いことが示唆された。しかし、WTRS/PLA複合材料では、添加量増大に伴い、引張弾性率と破断ひずみは未処理(RS/PLA複合材料)同様の傾向であるが、引張強さは10wt%まで低下し、その後、向上している(図23)。引張弾性率は添加量増大に伴い向上している。これは、稲わらとPLAが相互作用したため、10wt%以上で繊維による補強作用が見られたためであると考えられる。
すべての処理条件で上記同様の傾向が得られているが(図24〜図26)、温度RT、60℃で処理時間2hでは、引張強度が30wt%で低下している(図24(a)、図25(a))。これらの条件は、水中撹拌処理効果が低いため、稲わらとPLAの相互作用程度が他条件よりも低いためであると考えられる。そこで、温度80℃では、稲わら添加量が10wt%以上のすべての条件で、稲わらを添加するにつれ引張強さが向上したため(図26(a))、より水処理時間との関係を調べるべく、5h、15hでのWTRS/PLA複合材料を作製し、さらに高添加量である50wt%の複合材料も作製して、添加量50%の複合材料と、添加量30wt%の複合材料との、引張強度の比較を行った。
図27に添加量50wt%と30wt%のWTRS/PLA複合材料の引張特性を示した。なお、図の横軸は水中撹拌処理時間で、0hはRS(RS/PLA複合材料)の結果である。処理時間増大に伴い、引張強度は、30wt%、50wt%ともに向上し、80℃15hでの複合材料で、最も高くなり、24hで低下した(図27(a))。30wt%と50wt%を比較すると、RS(0h、RS/PLA複合材料)では51MPaから42MPaとなり、大幅に強度が低下したが、WTRS/PLA複合材料では引張強さが若干向上し、稲わら添加量50wt%、処理温度80℃、処理時間15hでのWTRS/PLA複合材料で最大強度66MPaを示し、PLA単体(PurePLA)とほぼ同等にまで強度が向上している(図27(a))。この水中撹拌処理条件での強度上昇率を算出したところ稲わら添加量30wt%では約29%、稲わら添加量50wt%では約57%も、未処理(RS、処理時間0h、RS/PLA複合材料)よりも強度の向上が見られている(図27(a))。すなわち、添加量が多いほど処理効果が増大したものと考えられる。
また、図28に、アルカリ処理した稲わらを添加した複合材料(比較対照2)との比較を示した。なお、図中のRS、WTRS、ALTRSはそれぞれ、「未処理」、「温度80度、処理時間15hでの水中撹拌処理」、「NaOH濃度1%、温度60℃、処理時間0.5hでアルカリ処理」した際の稲わら粉砕物とのPLA基複合材料である。
WTRS/PLA複合材料では、10wt%では61MPa、20wt%では64MPa、30wt%で65MPaを示し、稲わら粉砕物添加量増大に伴い、引張強度が向上している(図28(a))。一方で、ALTRS(アルカリ処理した稲わら粉砕物)/PLA複合材料では10wt%では60MPa、20wt%では61MPa、30wt%で63MPaを示し、添加量増大に伴い、強度向上が見られ、未処理(RS(RS/PLA複合材料))よりも上昇している(図28(a))。
しかし、どの添加量においても、ALTRS/PLA複合材料の引張強度は、WTRS/PLA複合材料よりも低い。ALTRS(アルカリ処理した稲わら粉砕物)では、フリーのヒドロキシ基が多く露出していたが、強度の向上率が低い。アルカリ処理によって稲わらの主成分の多くがアルカリ溶液に溶解し、繊維にダメージが生じたことによるものと考えられ、引張強さの向上率が低下したものと考えられる。
実施例14
[曲げ特性:稲わら/PLA(ポリ乳酸)複合材料の曲げ特性における、稲わらの水中攪拌処理時間及び処理温度の影響]
図29〜図32に、稲わら5wt%、10wt%、20wt%、30wt%の添加量におけるPLA基複合材料曲げ特性に及ぼす処理時間の影響を示した。
曲げ特性の測定は、JISK−7171に準拠して行った。
PLA単体(PurePLA)では99MPaで曲げ強さ(Bending Strength)が非常に高い。RS(未処理(処理時間0))との複合材料(RS/PLA複合材料)は、すべての添加量でWTRSとの複合材料(WTRS/PLA複合材料)よりも曲げ強さが低く、5wt%で約90MPa、10wt%で82MPa、20wt%で約74MPa、30wt%で約68MPaとなり、添加量増大により、曲げ強さは、大幅に低下している。すべての添加量で、曲げ強さは、WTRS/PLA複合材料ではRS(RS/PLA複合材料)よりも高い(図29(a)〜図32(a))。添加量5wt%で処理温度を比較すると、水中撹拌処理時間24hでは温度RTの方が温度60℃、80℃よりも高い。特にその傾向は、処理時間2hで強くみられ、温度RT、時間2hで最も高く、約95MPaを示している。その際のRS/PLA複合材料と比べた強度上昇率は、約4%であった(図29(a))。
処理時間についても同様の傾向が見られているが、温度80℃では、時間10hで向上傾向が見られている(図29(a))。しかし、添加量10wt%〜30wt%では処理温度と処理時間が増大するにつれ、曲げ強さが強くなる傾向が得られている。特に、添加量30wt%でのWTRSとの複合材料(WTRS/PLA複合材料)は曲げ強さ約87〜93MPaを示している(図32(a)80℃)。処理時間24hでの温度について比較すると、RTでは89MPa、60℃では91MPa、80℃では93MPaを示し、処理温度が上昇するにつれ、曲げ強さが向上する傾向がみられる(図32(a)24h)。
処理時間による影響を見ると、RTでは、2h、10hでは約88MPaを示し、変化がほぼ見られないが、24hで90MPaまで上昇している(図32(a))。60℃では2hでは88MPaを示し、処理時間増大に伴い、曲げ強さが上昇し、24hで91MPaを示した(図32(a))。80℃でも同様な傾向が得られ、90〜93MPaである(図32(a))。その際の強度上昇率は、10wt%で約7%、20wt%で約22%、30wt%で約38%であり、添加量が多い方が水中撹拌処理による効果が高い。これは、複合材料の表面付近の稲わら−PLA界面接着性の向上に起因するものと考えられる。
また、曲げ破断ひずみ(Bending fraction strain)は、PLA単体(PurePLA)で6.45%であったのに対しRS/PLA複合材料(処理時間0)では、5wt%で約3.9%、10wt%で約3.0%、20wt%で約2.2%、30wt%で約1.7%であった(図29(b)〜図32(b))。添加量5wt%では、WTRS/PLA複合材料は、RS/PLA複合材料(処理時間0)よりも低下しているが、特に、処理温度と処理時間が増大するにつれ、低下程度が大きいという傾向が見られている(図29(b))。添加量10wt%〜30wt%では、RS/PLA複合材料(処理時間0)よりも上昇傾向が見られており、処理時間と処理温度が増大するにつれ、上昇程度が大きい(図30(b)〜図32(b))。これは、PLAと稲わらが相互作用したためであると考えられる。
曲げ弾性率(Bending modulus)は、添加量5wt%でRSの添加により(RS/PLA複合材料)、1.6GPa付近まで大幅に低下している(図29(c)処理時間(WT time)0)。WTRS/PLA複合材料はRS/PLA複合材料よりも高いものの、PLA単体(PurePLA)よりも低い(図29(c))。24hでの処理温度による影響を見ると、RT、60℃ではほぼ変化が見られないが、80℃では大幅に低下しており、約1.8GPaである(図29(c))。処理時間による影響を見ると、RT、60℃では低下傾向がみられているものの、低下程度は小さい。しかし、80℃では2hから大幅に低下している(図29(c))。すなわち、この曲げ弾性率の低下は、PLA部分の結晶化度の低下に起因しているものと考えられる。
曲げ弾性率は、添加量10wt%、20wt%ともに、WTRS/PLA複合材料はRS/PLA複合材料(処理時間(WT time)0)よりも低く、処理温度、処理時間が増大するにつれ、低下傾向が見られている(図30(c)、図31(c))。しかし、20wt%では、処理温度80℃では10hまで低下しているものの24hで上昇に転じている(図31(c))。この上昇は、複合材料の内での稲わらの凝集によるものだと考えられる。
添加量30wt%の場合はRT、60℃ではRS/PLA複合材料(処理時間(WT time)0)よりも上昇しており、処理時間増大にともない、上昇程度が大きい(図32(c))。しかし、処理温度80℃では、約4.3GPaと2hで大幅に低下し、処理時間増大に伴い、上昇傾向がみられている(図32(c))。すなわち、繊維による補強作用により、曲げ弾性率が向上したと思われる。
実施例15
[曲げ特性:稲わら添加量とWTRS/PLA複合材料の曲げ特性の関係]
図33〜図35に稲わら添加量とWTRS/PLA複合材料の曲げ特性の関係を示す。図33がRT、図34が60℃、図35が80℃での水中撹拌処理したWTRS/PLA複合材料の曲げ特性である。それぞれの図中の0wt%はPLA単体(PurePLA)である。
曲げ特性の測定は、JISK−7171に準拠して行った。
すべての水中撹拌処理条件で、曲げ強さは稲わらの添加により、添加量10wt%で低下傾向が見られているが、20wt%、30wt%で上昇に転じている(図33〜図35)。破断ひずみは低下傾向、曲げ弾性率は5wt%で低下したものの、10wt%〜30wt%で上昇に転じている(図33〜図35)。この曲げ強さの上昇は、稲わら‐PLAの相互作用により、繊維による補強作用によるものと考えられる。また、曲げ強さの10wt%での低下程度は特にRTで大きく(図33(a))、80℃の方が小さい(図35(a))。
弾性率が5wt%で低下したのはフィラーの添加によって結晶化度が低下したためであると思われるが、それよりも添加量を増大させると、引張弾性率が向上したのは、繊維による補強作用が強くみられたためであると考えられる。
図36に稲わら高添加量50wt%でのWTRS/PLA複合材料の曲げ特性を示す。添加量30wt%では80℃、15hで曲げ強さは約95MPaを示し(図36(a))、最大となり、PLA単体(PurePLA)とほぼ同程度となっている。そのときの向上率は約40%である。破断ひずみや曲げ弾性率はそれぞれ約2.0%、4〜5GPaであったのに対し(図36(b)、(c)30wt%)、50wt%では約1.0%、6GPaとなり、破断ひずみが低下し、曲げ弾性率は大幅に向上している(図36(b)、(c)50wt%)。曲げ強さは、水中撹拌処理による効果は見られなく、ほぼ一定の約90MPaとなっている(図36(a))。曲げ強さが向上しなかった要因として、高添加のため、稲わらの凝集があるものと考えられる。しかし、水中撹拌処理の高添加は曲げ強さの低下はほとんど見られなく、曲げ弾性率が向上したため、低コストで高性能な材料であるものと考えられる。
実施例16
[衝撃特性]
図37に、温度80℃で10h処理したWTRS添加量と、WTRS/PLA複合材料の衝撃特性の関係を示した。図38に、稲わら30wt%の添加量をもつPLA基複合材料(WTRS/PLA複合材料)の衝撃強さを示した。
衝撃特性はJISK−7111に準拠して測定した。
PLA単体(PurePLA、稲わら0wt%)は衝撃強さが低く、1.73kJ/mであった。WTRSの添加量5wt%で、衝撃強さはさらに低下し(1.63kJ/m2)、10wt%以降で上昇に転じている(図37)。特に、10wt%で1.87kJ/m、20wt%で2.42kJ/mと大幅に上昇しているのに対し、30wt%では2.50kJ/mとほぼ上昇量が低い。5wt%では補強作用が見られないため、衝撃強さ低下し、10wt%以上では繊維による補強作用見られたため、衝撃強さが上昇したものと考えられる。
RS(未処理)との複合材料(RS/PLA複合材料、60℃、80℃、WT time 0)は、繊維による補強作用がなく、PLA単体(PurePLA、破線)よりも、衝撃強さは低下したが、WTRSとの複合材料は(WTRS/PLA複合材料)は、衝撃強さが大幅に向上し(図38)、PLAよりも最大で50%以上の向上が見られた(図38)。
24h処理、水中攪拌時の温度RT(室温)では2.48kJ/m、60℃では2.48kJ/m、80℃では2.61kJ/mとなり、処理温度上昇により、衝撃強さが上昇した(図38)。処理時間による影響を見ると、RT、60℃ではほぼ変化が見られなかったが、80℃では上昇傾向が見られた(図38)。すなわち、稲わら‐PLA界面の接着性の向上によって、繊維の補強作用が生じ、衝撃を吸収したことと複合材料の剛性が増大したことが要因と考えられる。
実施例17
[動的粘弾性特性]
図39に24h水中撹拌処理した稲わら(WTRS)30wt%を添加したPLA基複合材料(WTRS/PLA複合材料)の動的粘弾性特性を示した。
測定は動的粘弾性測定装置により実施し、条件は周波数1Hz、ひずみ振幅0.1%、昇温速度2℃/min、温度範囲30〜100℃、負荷方式を3点曲げモードとした。
まず、約60℃付近で貯蔵弾性係数の急激低下というPLAのガラス転移に関連した緩和がPLA単体(PurePLA)、および各温度で稲わらを水処理したWTRS/PLA複合材料(60℃、80℃)で確認できる(図39(a))。損失係数tanδについてはRS(RS/PLA複合材料)では、PLA単体(PurePLA)よりも低温で軟化が始まったが、軟化程度が大幅に改善されている(図39(b))。WTRS(WTRS/PLA複合材料)では、RS(RS/PLA複合材料)よりも高温で軟化が始まっているものの、PLA単体(PurePLA)よりは低い。しかし、軟化に伴う貯蔵弾性率の低下程度は、WTRS(60℃、80℃、WTRS/PLA複合材料)では、RS(RS/PLA複合材料)よりも、さらに小さくなっていることから、耐熱性が向上したものと考えられる。
(7)30wt%稲わら添加した複合材料の物性(まとめ)
表3に示した30wt%稲わら添加PLA基複合材料(WTRS/PLA複合材料)の物性値は次のように纏められる。
1.RS/PLA複合材料では、比重が1.35とPLA単体よりも向上したものの、水中撹拌処理した場合では、比重は1.30〜1.27を示し、RSよりも軽量である。2.RS/PLA複合材料では、熱分解温度が276℃であったが、水中撹拌処理により、WTRS/PLA複合材料では熱分解温度が302℃〜305℃にまで向上し、最大で約11%の向上が見られた。融解温度、ガラス転移温度は若干の低下が見られたものの、ほとんど変化していない。3.熱的寸法安定性(線膨張係数)は、流動方向では5.71×10−5−1〜6.81×10−5−1となり、約50%も改善している。特に、処理温度80℃、時間24hでの複合材料では幅方向、厚さ方向ともに改善され、厚さ方向では約45%、幅方向約13%も改善がみられている。4.RS/PLA複合材料では、吸水率が4.8%を示し、吸水寸法安定性は約4.0%であったのに対し、水中撹拌処理により、大幅に吸水特性が向上し、吸水率約3.5〜3%となり、吸水寸法安定性も約2.5〜2%である。5.流動性は、RS/PLA複合材料でMFR値が4.24であったのに対し、WTRS/PLA複合材料では2.37〜2.81と流動性が低下した。
6.水中撹拌処理(80℃、10h)での稲わらを30wt%添加したときのPLA基複合材料ではRSよりも引張強さが約25%の向上が見られている。引張弾性率は、PLA単体よりも大幅に向上し、約2.2〜2.4GPaである。7.高添加量50wt%では、水中撹拌処理(80℃、15h)で66MPaを示し、PLA単体と同程度となっている。その際、引張強さがRSよりも約57%も向上している。8.曲げ特性に関しては水中撹拌処理(80℃、15h)での稲わらを30wt%添加したときのPLA基複合材料で約95MPaを示し、RSよりも曲げ強さが約40%も向上している。引張弾性率は、PLA単体よりも大幅に向上し、約4〜5GPaである。高添加量50wt%では、すべての水中撹拌処理条件で約90MPaを示している。9.稲わら添加量30wt%での衝撃特性は、RSではPLAよりも低下しているが、水中撹拌処理した場合では、最大で約50%の向上が見られている。
以上のように、水中撹拌処理した稲わらとのPLA基複合材料では未処理よりも最大で引張強さが約29%、曲げ強さは約40%、衝撃強さはPLA単体よりも約50%も向上していた。その強度向上のメカニズムはフリーのヒドロキシ基と強度の関係の評価や稲わら‐PLA界面での水素結合形成の評価、PLAの高次構造への影響の調査、シリカと強度の関係、破壊機構の特定を行った結果、次のように考えられる。
1.フリーのヒドロキシ基と強度には密接な関係がある。フリーのヒドロキシ基数3.2×1021/g未満では強度と比例関係にあり、それ以上では稲わらの自己凝集が要因となり、強度が低下する。2.RSではPLAとの界面での水素結合量が少ないが、WTRSでは、処理温度、処理時間を増大するにつれ、水素結合量が大幅に向上している。3.稲わらの添加により、結晶化度の向上が見られている。水中撹拌処理温度、時間が増大するにつれ、結晶化度は低下傾向が得られている。これはフリーのヒドロキシ基による相互作用に起因するものと考えられる。4.水中撹拌処理した場合では、スキン層とコア層の間に中間層が形成されており、3相構造になっており、比較的スキン層に稲わらの集中が認められた。
5.シリカ層は界面接着性が良くなく、破壊が大きい部分には、シリカ層の残留が見られていた。シリカの残留は破壊の要因の一つとなっていることが推測される。シリカ量と強度には密接な関係があり、シリカが減少するにつれ、強度の向上が認められた。6.破断面全体をシリカマッピングしたところ、RSではシリカの分布に偏りがあり、シリカが残留している部位には大きな破壊の形跡が認められ、シリカに応力集中が集中し破壊が進行したことが示唆される。WTRSではシリカが細かくなり、均一に分散しており、シリカを起点の破壊の進行を抑制していた。
Figure 0006944686
以下では、気相アセチル化の最適化と稲わら/PLA複合材料に与える影響について説明する。
実施例18
[水中撹拌処理条件とアセチル化度の関係]
図41に水中撹拌処理条件とアセチル化度の関係を示す。アセチルの方法は実施例4に従った。アセチル化処理条件は無水酢酸添加量1、処理温度120℃、処理時間24hとした。
アセチル化度は、水中撹拌処理によって大幅に向上し、最大でアセチル化度が約24%にまで向上している。そのとき、未処理(水中撹拌処理しないもの、WT time 0)と比べ、化学修飾効果(アセチル化度)に約45%の向上が見られている。特に、水中撹拌処理時間24hでの水中撹拌処理温度について比較すると、アセチル化度はRT(室温で水中攪拌処理した稲わら粉砕物のアセチル化度)で22%、60℃(60℃で処理したときのアセチル化度)で23%、80℃(80℃で処理したときのアセチル化度)で24%であり、水中撹拌処理温度が増大するにつれ、アセチル化度が上昇している(図41)。処理時間についても同様の傾向が見られ、RTでは21〜22%、60℃では、22〜23%、80℃では23〜24%のアセチル化度を示している(図41)。
すなわち、図42に示すように、WTRS/PLA複合材料(RT、60℃、80℃)はRS/PLA複合材料(RS)よりフリーのOH基が多く、水中撹拌処理によって反応の起点となるフリーのヒドロキシ基が増大したことに起因するものと考えられる。
フリーのヒドロキシ基量は、「0016」と同様の方法で、飽和に達するまでアセチル化して、フリーのヒドロキシ基量を計算した。
表5にアセチル化気相処理と液相処理でのアセチル化度の変化を示す。なお、水中攪拌処理無は、水中攪拌処理しない稲わら粉砕物(RS)をアセチル化に供し、水中攪拌処理有は、80℃、24hで水中撹拌処理した稲わら粉砕物(WTRS)をアセチル化に供した。
アセチル化処理の気相処理は実施例4に従った。液相処理は、ビーカーなどに無水酢酸入れ、稲わらを30℃で30分間ドブ漬けしすることで実施した。処理後の操作は気相処理と同様である(「0029、0030」)。
液相処理でのRSでは、アセチル化されず、分解の進行が見られ、アセチル化度が−10.45%となった。しかし、水中撹拌処理した稲わらでは、気相処理よりも大幅に効果が低いものの、アセチル化度が約1%であり、アセチル化され、酸分解の影響がRSに比べて明らかに小さい。気相処理はRS、WTRSともに、液相処理よりもアセチル化度が高く、酸分解による影響が小さいことから、気相処理の方が液相処理よりも優位性があると言える。
Figure 0006944686
実施例19
[アセチル化度と熱分解温度の関係]
図43に化学修飾効果(アセチル化度)と熱分解温度の関係を示した。RS(未処理稲わら、unpretreated)をアセチル化した際には、RS/PLA複合材料の熱分解温度が290℃〜295℃付近となり、アセチル化していないRSを使用したRS/PLA複合材料(アセチル化0%)と比べ熱分解温度が大幅に向上しているものの、WTRS(WTRS/PLA複合材料、80℃、120℃)よりは熱分解温度が低い(図43)。とくにアセチル化度が増大すると、RSではあまり、向上していなく、WTRS(WTRS/PLA複合材料)では、300℃から320℃にまで向上している。水中撹拌処理によって化学修飾効果が増大したことによるものと思われる。
処理時間についても同様の傾向が得られているが、アセチル化した稲わらを使用したWTRS/PLA複合材料は、80℃では、48hまで緩やかに向上し、約305℃にまで上昇し、72hまではほぼ変化量が非常に小さく、約308℃付近になっている。温度120℃では、8hまで大幅に向上し、8hで約308℃となっている。8h〜24hでは、若干緩やかになっているが、約320℃付近まで向上が見られた。24hまでは変化量が非常に小さくなり、72hで約322℃を示し、最大となった(データ省略)。
図44に、稲わら30wt%としたときの、アセチル化処理における各条件の比較図(SEM(走査型電子顕微鏡)画像)を示した。RSではアセチル化の進行により、外皮の破壊や繊維質のき裂の進行が見られる(図44ARS、アセチル化したRS/TLA複合材料)。処理温度80℃でのWTRSでは、アセチル化の進行によって、き裂が大幅に進行し、稲わらが分解している様子が見られているが、処理温度120℃では、処理温度80℃のようにアセチル化の進行によって分解している様子は見られなく、稲わらが膨張している(図44WTARS、アセチル化したWTRS/TLA複合材料)。
すなわち、RS(RS/PLA複合材料)では、フリーのヒドロキシ基が少なく、酸による分解がアセチル化とともに進行したと考えられる。処理温度80℃でのWTRS(WTRS/PLA複合材料)では、アセチル化反応速度が低く、アセチル化による副生成物が稲わらと接触し、酸分解が進行したものと思われる。しかし、処理温度120℃では、フリーのヒドロキシ基が多いのとアセチル化反応の進行が速いため、酸分解の進行が抑制されたものと考えられる。
実施例20
[稲わら/PLA複合材料の引張強度に対するアセチル化の影響]
図45に、稲わら添加量30wt%、水中撹拌処理した稲わら/PLA複合材料において、化学修飾(アセチル化)が引張強さに及ぼす影響を示した。水中撹拌処理がない場合では、アセチル化による強度の向上は見られたものの、引張強さは約60〜64MPaとなり、アセチル化の効果が低い(図45 ARS)。しかし、水中攪拌処理した場合では大幅に向上し、無水酢酸添加量1.0で約70MPaを示し、PLA単体(PurePLA)よりも高くなっている(図45 WTRS)。水中撹拌処理による効果によって、アセチル化の効果が高まったためであると考えられる。すなわち、水中撹拌処理は、表面化学修飾を行う上で有効である。
また、図46に、稲わら添加量30wt%をもつWTRS/PLA複合材料の引張強さと無水酢酸添加量の関係を示した。図47に無水酢酸添加量と破断ひずみ(a)、引張弾性率の関係(b)を示した図46の無水酢酸添加量、アセチル化度ともに0は、80℃で24hでのアセチル化していないWTRSである。処理温度80℃では、無水酢酸添加量0.1で61MPa、0.5で63MPa、1.0で64MPaを示し、無水酢酸添加量0.1で引張強さが低下したものの、無水酢酸添加量添加量増大に伴い、上昇している(図46(a))。120℃では、無水酢酸添加量0.1で62MPa、0.5で65MPa、1.0で69MPaを示し、無水酢酸添加量増大に伴い、上昇傾向がみられる(図46(a))。
また、アセチル化度と強度の関係ではACの5%で62MPa、10%で63MPa、15%で64MPa、20%で66MPa、25%で69MPaとなり、相関関係が見られている(図46(b))。一方で、破断ひずみは処理効果が低いものは、アセチル化効果による変化はほぼ見られていないものの、引張弾性率は、アセチル化によって向上している。
すなわち、この向上傾向はアセチル化の効果に起因するものと考えられる。処理温度80℃、無水酢酸添加量0.1でアセチル化度が2%であるにもかかわらず引張強さが低下したのは、稲わらの酸分解の進行とアセチル化の効果が低いためであると考えられる。
そこで、添加量30wt%をもつ所定の条件のRS(ARS)/PLA複合材料、WTRS(WTARS)/PLA複合材料の内部構造を調査したところ、RS(ARS)/PLA複合材料では破断面の左下に破壊が大きい部分が見られた(データ省略)。
また、WTRS(WTRS(WTARS)/PLA複合材料)では無水酢酸添加量0.5では、PLAが多く被覆している。しかし、無水酢酸添加量1.0では明らかにPLAが被覆しているだけでなく、PLAでの破断も見られ、明らかに界面接着性が向上している(データ省略)。この向上は、アセチル化により、エステル結合がより多く形成され、PLAと強く結合し、界面接着性が大幅に向上したため、繊維による補強作用により、PLA単体(PurePLA)よりも引張強さが上昇したものと考えられる。
[アセチル化により得られたWTRS(WTARS)/PLA複合材料の物性値のまとめ]
表面化学修飾法であるアセチル化により得られたWTRS/PLA複合材料の物性値を表6に示した。主な結果は次のように纏められる。1.無水酢酸添加量と処理温度、処理時間増大に伴い、アセチル化度が向上している。無水酢酸添加量1、処理温度120℃、処理時間24hでアセチル化度24.28%を示している。このとき、ヒドロキシ基がすべて反応し、飽和していることがわかる。2.水中撹拌処理温度RTで21〜22%、60℃では、22〜23%、80℃では23〜24%のアセチル化度を示し、水中撹拌処理効果増大に伴い、アセチル化度の向上が見られている。3.アセチル化度と熱分解温度の関係を調査したところ、ほぼ線形関係が見られ、アセチル化度の増大に伴い、熱分解温度が向上し、AC5%で約280℃、AC10%で285℃、AC15%で約295℃、AC20%で約310℃、AC25%で約325℃にまで向上している。すなわち、稲わらの耐熱性が大幅に向上している。
4.アセチル化度3.12%以上で、稲わらが疎水化し、飽和吸水量はほぼゼロである。また、飽和水分量は添加量増大とアセチル化度増大に伴い、若干低くなり、無水酢酸添加量1.0でAC24.28では0.1g/gである。5.無水酢酸添加量増大に伴い、稲わらの平均粒径が増大した。その際のアセチル化度の関係を見ると、アセチル化度が増大するにつれ、平均粒径が線形的に上昇している。6.処理温度80℃では、無水酢酸添加量増大に伴い、酸分解によって繊維質がボロボロとなっている様子が見られる。しかし、処理温度120℃では、酸による分解を起こさずに化学修飾できている。7.WTRS/PLA複合材料の熱特性とアセチル化度では線形関係が見られ、アセチル化度24.28%では約330℃にまで向上し、PLA単体と同等になっている。
8.WTRS/PLA複合材料の吸水率と吸水寸法安定性はアセチル化度増大に伴い、改善されAC25%でそれぞれ1.0%、0.7%となり、ACと相関関係が見られている。9.WTRS/PLA複合材料の引張特性を調査したところ、アセチル化度と引張強さは線形関係にあり、アセチル化度24.28%で引張強さ69MPaを示し、PLA単体よりもわずかに改善している。曲げ特性と衝撃特性は、WTRS/PLA複合材料よりも低下している。
Figure 0006944686
6.4無機粒子添加の影響
実施例21
[無機粒子添加の影響]
モンモリロナイト、アタパルジャイトなどの無機系微粒子充填材を添加することにより、バイオマスの分散性、混合特性、流動性および複合材料の機械的特性などを改善することが期待される。
図48にWTRSを30wt%添加したPLA基複合材料(WTRS/PLA複合材料)の引張特性に及ぼす無機ナノ繊維状アタパルジャイトの添加量の影響を示した。
アタパルジャイトは、粉砕した稲わらの表面に数重量%のアタパルジャイトを付着させた後、PLA樹脂に添加した。
アタパルジャイトの添加量の増加により、複合材料の引張強度と破断ひずみが向上することがわかった。アタパルジャイト2%まで添加すると、引張強度および破断ひずみともに約20%増加した。つまり、微量のナノ無機繊維を添加しても複合材料の機械特性が大きく改善されたと認められる。
6.5圧延加工の影響
実施例22
[圧延加工の影響]
圧延加工は材料の物性に大きな影響を与えることが知られている。押出成形で得られたPLAシートを室温で圧延加工したときの圧延率と材料の引張特性の関係を図49に示した。
圧延率が大きくなるにつれて、垂直方向における引張強度と破断ひずみの変化が比較的に少ないが、圧延方向では次第に大きく向上することが分かった(b)。圧延率60%では引張強度が85MPaになり、約70%向上した(b)。特にひずみ10%以内で破断した脆性的なPLAの破断ひずみが100%に達しており、著しく向上したことが認められる(b)。
このような延性特性の改善は深絞り、プレス成形による製品化に非常に有利である。また、各稲わら添加量のRS/PLA基複合材料も同様な傾向が確認されている。
本発明によれば、優れた力学的特性を有する生分解性複合材料を、コストをかけずに、生産することができる。さらに、この複合材料は、様々な成形法で成形可能である。これらにより、生分解性プラスチックを普及させ、循環型社会を形成していくのに有用である。

Claims (12)

  1. 植物性バイオマス粉砕物が、未処理の植物性バイオマス粉砕物を、20℃以上沸点未満の水中で1分間〜24時間攪拌処理した粒径10μm〜1mmの植物性バイオマス粉砕物であって、
    植物性バイオマス粉砕物:熱可塑性生分解樹脂の重量比が10:90〜90:10である、
    植物性バイオマス粉砕物と熱可塑性生分解樹脂よりなる生分解性複合材料。
  2. 植物性バイオマス粉砕物が、20℃以上沸点未満の水中で1分間〜24時間攪拌処理した粒径1mm以下の植物性バイオマス粉砕物で、かつ、維管束の構造が残る植物性バイオマス粉砕物であって、
    植物性バイオマス粉砕物:熱可塑性生分解樹脂の重量比が10:90〜90:10である、
    植物性バイオマス粉砕物と熱可塑性生分解樹脂よりなる生分解性複合材料。
  3. 植物性バイオマス粉砕物が、木質系又は草本系の植物由来である、請求項1又は2の生分解性複合材料。
  4. 植物性バイオマス粉砕物が、植物性バイオマスをカッター式、ハンマー式又はディスク式の粉砕機で粉砕してなる植物性バイオマス粉砕物である、請求項1〜3のいずれか1項の生分解性複合材料。
  5. 植物性バイオマス粉砕物が、攪拌処理前後でフリーのヒドロキシ基量が増加する植物性バイオマス粉砕物である、請求項1〜4のいずれか1項の生分解性複合材料。
  6. 未処理の植物性バイオマスを粒径1mm以下に粉砕し、20℃以上沸点未満の水中で1分間〜24時間攪拌処理(解繊処理を除く)した後、乾燥させ、ついで、植物性バイオマス粉砕物の乾燥重量が原料の総重量に対し10〜90重量%となるように熱可塑性生分解性樹脂と混合する、生分解性複合材料の製造方法。
  7. 植物性バイオマス粉砕物が、木質系又は草本系の植物由来である、請求項6の生分解性複合材料の製造方法。
  8. 粉砕をカッター式、ハンマー式又はディスク式の粉砕機で行う、請求項6又は7の生分解性複合材料の製造方法。
  9. 植物性バイオマス粉砕物がアセチル化処理されてなる請求項6〜8のいずれか1項の生分解性複合材料の製造方法。
  10. 原料に無機系微粒子充填剤を加えた、請求項6〜9のいずれか1項の生分解性複合材料の製造方法。
  11. 請求項6〜10のいずれか1項の方法で製造した生分解性複合材料を、さらに、シート成形し、これを20℃から150℃で圧延率90%以下に圧延加工する、生分解性複合材料の板材の製造方法。
  12. 請求項6〜10のいずれか1項の製造方法で製造した生分解性複合材料を、さらに、溶融成形時の最高温度を、原料の植物性バイオマス粉砕物および生分解性樹脂の分解開始温度の―25℃〜+30℃として成形加工する、生分解性複合材料の成形加工方法。
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