JP6944183B2 - 麻酔補助プログラム、麻酔補助装置、麻酔補助システム及び麻酔補助方法 - Google Patents

麻酔補助プログラム、麻酔補助装置、麻酔補助システム及び麻酔補助方法 Download PDF

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Description

本発明は、麻酔補助プログラム、麻酔補助装置、麻酔補助システム及び麻酔補助方法に関する。
医学の分野において、麻酔によって手術中の鎮静及び鎮痛を施すこと及び麻酔科医が鎮静及び鎮痛の程度を把握することは、術中の覚醒や鎮静薬及び鎮痛薬の過剰投与を防ぐために非常に重要である。なお、ここで鎮静とは患者の意識や記憶がないことを指し、鎮痛とは患者に痛みを感じさせないことを指す。鎮静については、BIS(Bispectral Index)モニタの情報に基づいて、鎮静の程度を測るものが知られているが、鎮痛については定性的な評価にとどまり、定量的な評価ができず、鎮痛の程度を直接測る機器及び指標がなかった。全身麻酔時に使用される鎮痛薬の必要量は個体差が大きいこともあり、鎮痛の程度を測る必要性が非常に高い。
そこで、鎮痛の程度を推定する従来の技術として、鎮痛薬を投与されている患者の鎮痛薬血中濃度を代理マーカーによりモニタリングする麻酔補助方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示された麻酔補助方法は、オピオイド鎮痛薬を患者に投与する際、瞳孔の大きさ、光刺激に対する瞳孔反応、トラッキングパフォーマンス等の複数の代理マーカーを測定し、当該複数の代理マーカーと患者の鎮痛レベルに相関関係があること利用して、当該複数の代理マーカーから予め定めた計算方法でオピオイド鎮痛薬の血中濃度を推定する。
上記した特許文献1の麻酔補助装置は、複数の代理マーカーから予め定めた計算方法でオピオイド鎮痛薬の血中濃度を推定するものの、全身麻酔を行う場合はオピオイド鎮痛薬と合わせて鎮静薬及び筋弛緩剤を使用するのが一般であって、オピオイド鎮痛薬と鎮静薬には相乗作用があるため、患者の鎮痛及び鎮静の状態はオピオイド鎮痛薬の血中濃度だけでは十分に測ることができない、という問題がある。
そこで、オピオイド鎮痛薬の血中濃度以外も考慮した従来の技術として、患者の現在のオピオイド鎮痛薬の効果部位濃度と、鎮静薬の効果部位濃度とを表示装置の画面上にプロットする麻酔補助装置が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
非特許文献1に開示された麻酔補助装置は、表示装置の画面上に、オピオイド鎮痛薬と鎮静薬との相乗作用を示すアイソボログラムを示し、当該アイソボログラム上に現在のオピオイド鎮痛薬の効果部位濃度と、鎮静薬としてのプロポフォールの投与速度の情報から統計学的に算出された鎮静薬の効果部位濃度とをプロットして示すことで患者の現在の状態を示すとともに、さらに数分後のオピオイド鎮痛薬の効果部位濃度と、鎮静薬の効果部位濃度とをプロットして示すことで将来の状態も合わせて示す。なお、アイソボログラムは患者の薬効を示す指標のレベル別に領域分けされており、麻酔科医はプロットされた点がいずれの領域に属するかによって患者の状態を判断する。また、使用する麻酔薬によって領域分けを変化させることで複数種類の麻酔薬に対応する。
特表2016‐520821号公報
小板橋俊哉、"術中覚醒のモニタとその予後SmartPilot View"、日臨麻会誌、日本、2012年9月、Vol.32、No.5、709‐715頁
しかし、上記した非特許文献1の麻酔補助装置は、平均的な患者について薬効を示す領域に分けられたアイソボログラム上に、オピオイド鎮痛薬の効果部位濃度と、鎮静薬の効果部位濃度とをプロットして示し、年齢、身長、体重、性別等の個体差によるばらつき(個体間変動)及び同一個体の体温、体水分量、心拍出量等の薬物動態のばらつき(個体内変動)について統計学的に平均的な患者について薬効の目安を示すものである。
従って、本発明の目的は、個体間変動及び個体内変動を考慮して、患者に投与する鎮静薬及び鎮痛薬の量的指標を推定する麻酔補助プログラム、麻酔補助装置、麻酔補助システム及び麻酔補助方法を提供することにある。
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の麻酔補助プログラム、麻酔補助装置、麻酔補助システム及び麻酔補助方法を提供する。
[1]コンピュータを、
経時的に得られた患者の鎮静度を示す値と、経時的に得られた当該患者の鎮静薬の効果部位濃度の値とに基づいて、目標とする鎮静度を示す値に対応する鎮静薬の効果部位濃度の値を前記患者に対する鎮静薬の濃度指標として推定する鎮静薬指標推定手段と、
前記鎮静薬の濃度指標と、経時的に得られた前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度とに基づいて、前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度を増加させても前記鎮静薬の濃度指標が予め定めた幅以上に変動しない前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限を鎮痛薬の濃度指標として推定する鎮痛薬指標推定手段として機能させるための麻酔補助プログラム。
[2]鎮痛薬指標推定手段は、前記鎮静薬の濃度指標と、前記経時的に得られた前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度とに対する回帰曲線を求めて、当該回帰曲線において前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度を増加させても前記鎮静薬の濃度指標が予め定めた幅以上に変動しない前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限を前記鎮痛薬の濃度指標とする前記[1]に記載の麻酔補助プログラム。
[3]鎮痛薬指標推定手段は、前記回帰曲線を双曲線とし、当該回帰曲線において、双曲線の漸近線から前記予め定めた幅だけ鎮静薬の濃度指標を増加させた値に対応する鎮痛薬の効果部位濃度を前記鎮痛薬指標として決定する前記[2]に記載の麻酔補助プログラム。
[4]前記鎮静度を示す値、前記鎮静薬の効果部位濃度の値、前記鎮痛薬の効果部位濃度の値、前記鎮静薬の濃度指標及び前記鎮痛薬の濃度指標の一部又はすべてを表示処理する表示処理手段としてさらに機能させる前記[1]〜[3]のいずれかに記載の麻酔補助プログラム。
[5]前記鎮静薬の投与量指標及び/又は前記鎮痛薬の濃度指標に基づいて、前記鎮静薬及び前記鎮痛薬を前記患者に投与する麻酔器の前記鎮静薬の投与量及び前記鎮痛薬の投与量を制御する麻酔器制御手段としてさらに機能させる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の麻酔補助プログラム。
[6]鎮静薬指標推定手段は、経時的に得られた前記鎮静度を示す値と、経時的に得られた前記鎮静薬の効果部位濃度の値とに対する回帰曲線を求めて、当該回帰曲線において目標とする鎮静度を示す値に対応する鎮静薬の効果部位濃度の値を前記患者に対する鎮静薬の濃度指標とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の麻酔補助プログラム。
[7]経時的に得られた患者の鎮静度を示す値と、経時的に得られた当該患者の鎮静薬の効果部位濃度の値とに基づいて、目標とする鎮静度を示す値に対応する鎮静薬の効果部位濃度の値を前記患者に対する鎮静薬の濃度指標として推定する鎮静薬指標推定手段と、
前記鎮静薬の濃度指標と、経時的に得られた前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度とに基づいて、前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度を増加させても前記鎮静薬の濃度指標が予め定めた幅以上に変動しない前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限を鎮痛薬の濃度指標として推定する鎮痛薬指標推定手段とを有する麻酔補助装置。
[8]前記[7]に記載の麻酔補助装置と、
前記麻酔補助装置に制御されて前記鎮静薬及び前記鎮痛薬を前記患者に投与する麻酔器とを有する麻酔補助システム
請求項1、7又は8に係る発明によれば、個体間変動及び個体内変動を考慮して、患者に投与する鎮静薬及び鎮痛薬の量的指標を推定することができる。
請求項2に係る発明によれば、鎮静薬の濃度指標と、経時的に得られた患者の鎮痛薬の効果部位濃度とに対する回帰曲線を求めて、当該回帰曲線において患者の鎮痛薬の効果部位濃度を増加させても鎮静薬の濃度指標が予め定めた幅以上に変動しない患者の鎮痛薬の効果部位濃度の下限を前記鎮痛薬の濃度指標とすることができる。
請求項3に係る発明によれば、回帰曲線を双曲線とし、当該回帰曲線において、双曲線の漸近線から予め定めた幅だけ鎮静薬の濃度指標を増加させた値に対応する鎮痛薬の効果部位濃度を鎮痛薬指標として決定することができる。
請求項4に係る発明によれば、鎮静度を示す値、鎮静薬の効果部位濃度の値、鎮痛薬の効果部位濃度の値、鎮静薬の濃度指標及び鎮痛薬の濃度指標の一部又はすべてを表示処理することができる。
請求項5に係る発明によれば、鎮静薬の投与量指標及び/又は鎮痛薬の濃度指標に基づいて、鎮静薬及び鎮痛薬を前記患者に投与する麻酔器の鎮静薬の投与量及び前記鎮痛薬の投与量を制御することができる。
請求項6に係る発明によれば、経時的に得られた鎮静度を示す値と、経時的に得られた鎮静薬の効果部位濃度の値とに対する回帰曲線を求めて、当該回帰曲線において目標とする鎮静度を示す値に対応する鎮静薬の効果部位濃度の値を患者に対する鎮静薬の濃度指標とすることができる
図1は、実施の形態に係る麻酔補助システムの構成の一例を示す概略図である。 図2は、実施の形態に係る麻酔補助装置の構成例を示すブロック図である。 図3は、esTEC用データセットの構成の一例を示す概略図である。 図4は、esMIC用データセットの構成の一例を示す概略図である。 図5は、設定値の構成の一例を示す概略図である。 図6は、esTEC算出動作を説明するためのグラフ図である。 図7は、esMIC算出動作の概要を説明するためのグラフ図である。 図8は、esMIC算出動作の詳細を説明するためのグラフ図である。 図9は、esMIC算出動作の詳細を説明するためのグラフ図である。 図10は、個体内変動とesMICとの関係を説明するためのグラフ図である。 図11は、個体間変動とesMICとの関係を説明するためのグラフ図である。 図12は、個体間変動とesMICとの関係を説明するためのグラフ図である。 図13は、複数の患者についてesMICの分布の一例を示すグラフ図である。 図14は、麻酔補助システムの動作を説明するためのフローチャートである。
[実施の形態]
(麻酔補助システムの構成)
図1は、実施の形態に係る麻酔補助システムの構成の一例を示す概略図である。
この麻酔補助システム7は、全身麻酔のために患者6に麻酔薬を投与する際に、年齢、身長、体重、性別等の個体差によるばらつき(個体間変動)や、同一個体の体温、体水分量、心拍出量等の薬物動態のばらつき(個体内変動)を考慮して、患者6に適した投与量を推定し、提示するためのものである。また、患者6に適した投与量の麻酔薬を投与するのを補助するため、又は患者6に適した投与量の麻酔薬を投与するために用いられるものである。
また、麻酔補助システム7は、表示部12と操作部13とを備えた専用に設計された機器又はPCやタブレット端末等の情報処理装置であって情報を処理する麻酔補助装置1と、患者6の静脈内に麻酔薬を投与するとともに人工呼吸等を施して麻酔状態の患者6を補助するための麻酔器2と、患者6の鎮静度を示すBIS(Bispectral Index)値を測定するBISモニタ3と、心電図や血圧計、パルスオキシメータ等の生体情報を測定する生体モニタ4とを有する。麻酔補助装置1、麻酔器2、BISモニタ3、生体モニタ4は、麻酔科の医師5によって操作される。
なお、麻酔薬には、鎮静薬、鎮痛薬及び筋弛緩剤が含まれる。鎮静薬は、一例として、静脈麻酔薬プロポフォールを用いるが、吸入麻酔薬(セボフルラン,デスフルラン等)であってもよい。鎮痛薬は、一例として、オピオイド鎮痛薬レミフェンタニルを用いるが、フェンタニル・モルヒネ等であってもよい。筋弛緩剤は、一例として、非脱分極性筋弛緩薬ロクロニウムを用いるが、ベクロニウム等であってもよい。
麻酔補助装置1は、麻酔薬の効果部位濃度及びBIS3から得られる情報に基づいて、手術等のために麻酔薬を投与される患者6に適した投与量を計算して表示部12に提示し、又は患者6に適した投与量の麻酔薬を投与するように麻酔器2を制御するものであって、本体内に情報を処理するための機能を有するCPU(Central Processing Unit)やHDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の電子部品を備える。なお、麻酔補助装置1は、サーバ装置として構成してもよく、その場合は端末装置の要求に応じて動作する。また、麻酔補助装置1は、患者6の手術を行う手術室に配置されるものであるが、サーバ装置として構成する場合は遠隔地に配置されるものであってもよい。
麻酔器2は、患者6に対する鎮静薬の投与流量を制御可能なシリンジポンプである鎮静薬ポンプ20と、患者6に対する鎮痛薬の投与流量を制御可能なシリンジポンプである鎮痛薬ポンプ21と、患者6の呼吸を補助する人工呼吸器22とを有する。なお、鎮静薬ポンプ20は麻酔補助装置1の制御に基づいて、目標血中濃度に応じてシリンジポンプの流量を調整して患者6に対する鎮静薬のTCI(Target‐Controlled Infusion)投与を行う。
なお、麻酔補助装置1の制御に基づいて鎮静薬ポンプ20及び鎮痛薬ポンプ21を動作させる代わりに、鎮静薬ポンプ20にTCI投与が可能なTCIポンプを用いても良い。この場合、鎮静薬ポンプ20は、麻酔補助装置1に対して鎮静薬の効果部位濃度の情報を定期的に送信するようにする。また、鎮痛薬ポンプ21は、麻酔補助装置1に対して鎮痛薬の投与流量の情報を定期的に送信するようにする。
各機器は、専用線により相互に通信可能に接続されるが、有線又は無線の通信ネットワークにより接続されてもよいし、イントラネットやLAN(Local Area Network)等の通信網を用いてもよい。
麻酔補助装置1は、上記構成において、BISモニタ3及び生体モニタ4からそれぞれ情報を受信し、受信した情報と鎮静薬及び鎮痛薬の効果部位濃度に基づいて、まず、鎮静薬を投与する濃度指標として、目標とするBIS値を得るための鎮静薬の効果部位濃度(estimated target effect‐site concentration、以下「esTEC」という。)を算出する。次に、麻酔補助装置1は、鎮痛薬の効果部位濃度とesTECの相互作用をリアルタイム解析することで、鎮痛薬の濃度指標として、鎮静薬の必要濃度を低下させるのに十分な鎮痛薬濃度(予測最大個体濃度:estimated maximal individual concentration、以下「esMIC」という。)を算出し、鎮静薬の効果部位濃度、鎮痛薬の効果部位濃度、esTEC及びesMIC等の情報を適宜組み合わせて表示部12に表示するものである。医師5は、表示部12に表示された情報を確認し、麻酔薬の投与量等を調整する。また、麻酔補助装置1は、必要に応じ、算出したesTEC及びesMICに基づいて鎮静薬ポンプ20及び鎮痛薬ポンプ21を制御し、患者6に対する麻酔薬の投与量を制御するものであってもよい。
なお、麻酔補助装置1、麻酔器2、BISモニタ3及び生体モニタ4の機能の全部又は一部を一体に構成してもよいし、各装置の機能の一部又は全部を他の装置に含めてもよい。また、麻酔補助装置1、麻酔器2、BISモニタ3及び生体モニタ4の機能の全部又は一部を遠隔地に配置された機器で動作させるように構成してもよい。また、麻酔補助装置1に対して複数の麻酔器2、BISモニタ3及び生体モニタ4を対応させ、麻酔補助装置1に同時に複数の麻酔補助動作を行わせるものであってもよい。
(麻酔補助装置の構成)
図2は、実施の形態に係る麻酔補助装置1の構成例を示すブロック図である。
麻酔補助装置1は、CPU等から構成され、各部を制御するとともに、各種のプログラムを実行する制御部10と、HDDやフラッシュメモリ等の記憶媒体から構成され情報を記憶する記憶部11と、画像及び文字により情報を表示する表示部12と、操作内容に応じて制御部10に対して操作信号を出力する操作部13と、外部装置と通信する通信部14とを備える。
制御部10は、後述する麻酔補助プログラム110を実行することで、麻酔器制御手段100、効果部位濃度算出手段101、BIS値取得手段102、esTEC算出手段103、esMIC算出手段104及び表示処理手段105等として機能する。
麻酔器制御手段100は、麻酔器2の鎮静薬ポンプ20及び鎮痛薬ポンプ21それぞれの投与流量を制御する。本実施の形態では、鎮静薬ポンプ20はシリンジポンプであるため、麻酔器制御手段100は、鎮静薬の目標血中濃度が指定されると、指定された目標血中濃度に応じてシリンジポンプの流量を推定し、調整して患者6に対する鎮静薬のTCI投与を行う。また、鎮痛薬ポンプ21はシリンジポンプであるため、麻酔器制御手段100は鎮痛薬の目標血中濃度から薬物動態シミュレーションにより投与流量を推定し、当該投与流量を指定することで鎮痛薬の投与流量を制御する。なお、鎮痛薬ポンプ21が目標血中濃度から投与流量を決定する機能を有している場合は、麻酔器制御手段100は鎮痛薬の目標血中濃度を指定するようにし、いずれの構成を用いてもよい。
効果部位濃度算出手段101は、麻酔器2の鎮静薬ポンプ20で投与中の鎮静薬の投与流量から鎮静薬の効果部位濃度の値Cmを算出し、算出した効果部位濃度の値Cmを時刻とともにesTEC用データセット111に記録する。
また、効果部位濃度算出手段101は、麻酔器2の鎮痛薬ポンプ21で投与中の鎮痛薬の投与流量から薬物動態シミュレーションにより鎮痛薬の効果部位濃度の値Cnを算出する。また、効果部位濃度算出手段101は、鎮痛薬の効果部位濃度の値Cnを時刻とともにesMIC用データセット112に記録する。
BIS値取得手段102は、BISモニタ3からBIS値を定期的に、一例として、6秒間隔で取得する。BIS値取得手段102は、BIS値を取得時刻とともにesTEC用データセット111に記録する。
鎮静薬指標推定手段としてのesTEC算出手段103は、esTEC用データセット111の各時刻の鎮静薬の効果部位濃度の値Cmと、BIS値とを経時的にプロットし、回帰曲線を求めるとともに、当該回帰曲線から目標とするBIS値(例えば、BIS=40)を得られると推定される鎮静薬の効果部位濃度esTECを算出する。具体的な算出方法については後述する。esTEC算出手段103は、算出した時刻におけるesTECをesMIC用データセット112に記録する。
鎮痛薬指標推定手段としてのesMIC算出手段104は、esMIC用データセット112の各時刻の鎮痛薬の効果部位濃度の値Cnと、esTECとを経時的にプロットし、回帰曲線を求めるとともに、当該回帰曲線から鎮静薬の必要濃度を低下させるのに十分と推定される鎮痛薬濃度esMICを算出する。具体的な算出方法及び「十分」の定義については後述する。
表示処理手段105は、効果部位濃度算出手段101が算出した鎮静薬の効果部位濃度の値Cm及び鎮痛薬の効果部位濃度の値Cn、BIS値取得手段102が取得したBIS値、esTEC算出手段103が計算したesTEC並びにesMIC算出手段104が計算したesMICの全部又は適宜選択した一部を、リアルタイムに又は履歴や予測値を含めて表示部12に表示処理する。表示方法は数値によるもの、グラフによるもの、色によるもの等、その方法は限定されない。
記憶部11は、制御部10を上述した各手段100‐105として動作させる麻酔補助プログラム110、esTEC用データセット111、esMIC用データセット112及び設定値113等を記憶する。
図3は、esTEC用データセット111の構成の一例を示す概略図である。
esTEC用データセット111は、esTECの値を求めるための情報であって、値を算出又は取得した時刻と、効果部位濃度算出手段101が算出した鎮静薬の効果部位濃度Cmと、BIS値取得手段102が取得したBIS値とを有する。
図4は、esMIC用データセット112の構成の一例を示す概略図である。
esMIC用データセット112は、esMICの値を求めるための情報であって、値を算出又は取得した時刻と、効果部位濃度算出手段101が算出した鎮痛薬の効果部位濃度Cnと、esTEC算出手段103が算出したesTECとを有する。
図5は、設定値113の構成の一例を示す概略図である。
設定値113は、麻酔器制御手段100が麻酔器2を制御するための設定値に関する情報であって、例えば、目標鎮静薬効果部位濃度Cmt、目標鎮痛薬効果部位濃度Cnt、目標BIS値BISt等を有する。一例として示した、目標鎮静薬効果部位濃度Cmtの値「Auto」とは、最新のesTECで逐次更新するものである。また、目標鎮痛薬効果部位濃度Cntの値「‐」とは、値が設定されていない状態を示す。また、目標BIS値BIStの値「40」とは、BIS値の目標値を40とするものであり、目標BIS値BIStに基づいてesTECが算出される。この場合のesTECを「esTEC40」と記載することがある。
(麻酔補助システムの動作)
次に、本実施の形態の作用を上記に説明した構成を前提とし、図1〜図14を参照しつつ、(1)基本動作、(2)esTEC算出動作及び(3)esMIC算出動作に分けて説明する。
(1)基本動作
図14は、麻酔補助システムの動作を説明するためのフローチャートである。
まず、患者6が手術室に入室した後、患者6に対しBISモニタ3の一部としてのBISクワトロセンサ(ゴヴィディエンジャパン製、登録商標)を装着し、生体モニタ4として心電図、非観血的血圧計、パルスオキシメータを装着する。なお、BISクワトロセンサはBISモニタ3の他部としてのBISモニタ(日本光電製AE‐900P)に接続されてBIS値が計測される。
次に、患者6の静脈に静脈留置針の刺入を行い、鎮静薬ポンプ20及び鎮痛薬ポンプ21をそれぞれ接続する。また、人工呼吸器22を患者6に取り付ける。
次に、麻酔器制御手段100は、設定値113に基づいて麻酔器2を制御し、鎮静薬及び鎮痛薬を投与して全身麻酔を開始する(ステップS10)。具体的には、まず、麻酔器制御手段100は、麻酔器2を制御して人工呼吸器22のマスクから酸素6l/minを投与して酸素化を行う。次に、麻酔器制御手段100は、鎮痛薬ポンプ21を制御し、鎮痛薬としてレミフェンタニルを0.3〜0.5μg/kg・minで投与を開始し、その後、鎮静薬ポンプ20を制御し、鎮静薬としてプロポフォールを目標血中濃度4μg/mlで投与する。
次に、医師5は、患者6の呼名反応が消失してBIS値が70未満になったことを確認した後、筋弛緩剤としてロクロニウム0.6kg/kgを投与する。
その後、麻酔補助装置1の効果部位濃度算出手段101は、鎮静薬ポンプ20の投与速度を麻酔器制御手段100から取得して鎮静薬の効果部位濃度Cmを算出し(ステップS20)、算出した効果部位濃度の値Cmを時刻とともにesTEC用データセット111に記録する。
また、効果部位濃度算出手段101は、麻酔器2の鎮痛薬ポンプ21で投与中の鎮痛薬の投与流量から薬物動態シミュレーションにより鎮痛薬の効果部位濃度の値Cnを算出し(ステップS30)、鎮痛薬の効果部位濃度の値Cnを時刻とともにesMIC用データセット112に記録する。
また、BIS値取得手段102は、BISモニタ3からBIS値を定期的に、一例として、6秒間隔で取得し(ステップS40)、BIS値を取得時刻とともにesTEC用データセット111に記録する。
(2)esTEC算出動作
次に、esTEC算出手段103は、esTEC用データセット111の各時刻の鎮静薬の効果部位濃度の値Cmと、BIS値とを次に説明する図6に説明するように経時的にプロットし、回帰曲線を求めるとともに、当該回帰曲線から目標とするBIS値(例えば、BIS=40)を得るための鎮静薬の効果部位濃度esTECを算出する(ステップS50)。この計算方法は発明者らが既に開発したものを利用して行うことができ(長田、畔柳、尾崎、“目標BIS値が得られるプロポフォール効果部位濃度esTECの開発”、麻酔・集中治療とテクノロジー、2012年、1‐5頁参照)、例えば、以下に説明するように計算される。
図6は、esTEC算出動作を説明するためのグラフ図である。
図6に示すように、BIS値と鎮静薬の効果部位濃度はS字状曲線を描くことが知られているため、esTEC算出手段103は、ロジスティック関数を利用して、経時的にプロットした鎮静薬の効果部位濃度の値CmとBIS値に対する回帰曲線g(x)を求める。なお、回帰曲線g(x)には個体内変動があるため経時的に再計算されるものとする。
esTEC算出手段103は、回帰曲線g(x)が求まると、図6に示した例の場合、BIS値=40である鎮静薬の効果部位濃度をesTEC40(=3.0μg/ml)として算出する。なお、BIS値=45である鎮静薬の効果部位濃度はesTEC45(=2.7μg/ml)であり、BIS値=50である鎮静薬の効果部位濃度はesTEC50(=2.5μg/ml)である。
なお、esTEC算出手段103は、算出した時刻におけるesTECをesMIC用データセット112に記録する。
次に、esMIC算出手段104は、esMIC用データセット112の各時刻の鎮痛薬の効果部位濃度の値Cnと、esTECとを経時的にプロットし、回帰曲線を求めるとともに、当該回帰曲線から鎮静薬の必要濃度を低下させるのに十分な鎮痛薬濃度esMICを算出する(ステップS60、S70、S80)。以下にesMIC算出の概要及び各ステップの詳細について具体的に説明する。
(3)esMIC算出動作
図7は、esMIC算出動作の概要を説明するためのグラフ図である。
図7に示すように、鎮痛薬の効果部位濃度Cnと、esTECには相互関係があり、鎮痛薬の効果部位濃度を増加させていってもesTECは漸近線y=a以下には減少しないことを発明者らは確認している(畔柳綾、長田、松永、寺師、上村、“全身麻酔中のレミフェンタニルがプロポフォールesTECに及ぼす影響”、麻酔、2016年4月15日、第64巻2号別刷、116‐122頁参照)。これは鎮痛薬が十分投与された状況では鎮静に必要な鎮静薬の必要濃度は減少するものの、鎮痛薬の投与速度に関わらず、最低でもaを必要としていたと解釈される。また、上記文献において鎮痛薬の効果部位濃度をある値(10ng/ml)より増加させていってもesTECの分布幅が一定であることを発明者らは確認しており、このことから安定したesTECを得る上で鎮痛薬の効果部位濃度を当該値(10ng/ml)以上に増加させる必要性が低いと解釈される。
以上の特性を利用し、esMIC算出手段104は、経時的にプロットした鎮痛薬の効果部位濃度Cnと、esTECに対する回帰曲線f(x)を求める。次に、esMIC算出手段104は、鎮痛薬の効果部位濃度を増加させてもesTECが幅δ以上に変動しない鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限を求める。当該下限を求める方法の一例として、esMIC算出手段104は、f(x)の漸近線y=aに予め定めた幅δを加算したy=a+δと、f(x)との交点の鎮痛薬の効果部位濃度Cnを、鎮静薬の必要濃度を低下させるのに十分な(最大の)鎮痛薬濃度(esMIC)として定める。また、当該下限を求める方法の他の例として、鎮痛薬の効果部位濃度をある値から数倍に、例えば、5倍に引き上げてもesTECの分布が幅δ以内に収まるような場合に、この値を鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限値(esMIC)に相当するものとしてもよい。
なお、回帰曲線y=f(x)の傾きが‐1となる点pを、鎮静薬の効果部位濃度Cmの増減量と鎮痛薬の効果部位濃度Cnの増減量が釣り合う点として「中立点」と呼ぶこととする。後述するように中立点pを利用してesMICを定義してもよい。
図8及び図9は、esMIC算出動作の詳細を説明するためのグラフ図である。
esMIC算出手段104は、回帰曲線y=f(x)を求めるのに要する時間を短縮するため、得られたesMIC用データセット112のみから回帰曲線を求めるのではなく、図8に示すように予めデフォルト値(defCn、defesTEC)、(defCn、defesTEC)、(defCn、defesTEC)、…を用意しておく。デフォルト値は、例えば、統計的に主要な値に基づいて定めるものとする。
次に、esMIC算出手段104は、図9に示すように、鎮痛薬効果部位濃度の範囲を、例えば、R、R、Rのように分け、esMIC用データセット112のそれぞれの範囲中のデータが得られたら当該範囲のデータをデフォルト値から得られた値に置き換える。例えば、範囲Rのデータが得られたらデフォルト値(defCn、defesTEC)、(defCn、defesTEC)、(defCn、defesTEC)を、得られた値(Cn、esTEC)、(Cn、esTEC)、(Cn、esTEC)で置き換えて更新する(ステップS60)。
次に、データの更新が行われると、esMIC算出手段104は、例えば、双曲線を利用して、プロットに対して回帰曲線y=f(x)を求める(ステップS70)。
次に、esMIC算出手段104は、f(x)の漸近線y=aに予め定められた幅δを加算したy=a+δと、f(x)との交点の鎮痛薬の効果部位濃度Cnを鎮静薬の必要濃度を低下させるのに十分な鎮痛薬濃度(esMIC)として定める(ステップS80)。これは、麻酔科医が鎮痛薬の効果部位濃度を引き上げても鎮静状態が変化しない状況を経験的に「十分な鎮痛が確保された状態」(すなわち、この時点で鎮静薬の効果部位濃度を変化させても鎮静度に差がみられない状態。)と判断しているからであり、このような定性的な判断を定量的に実現したものである。そして、麻酔科医の経験や感覚と一致する「十分な鎮痛が確保された状態」で鎮静効果に差の出ない鎮静薬の効果部位濃度の変化幅を幅δとし、鎮痛薬の種類に応じて定める。なお、幅δは、鎮痛及び鎮静の安定性並びに患者6の覚醒防止等の安全性を考慮して定め、一例として、鎮痛薬がプロポフォールの場合は幅δ=0.2μg/mlとする。また、aの5%、のように割合で定義してもよい。
なお、回帰曲線y=f(x)は、術中の侵襲や体温、体水分量、心拍出量等によりばらつき(個体内変動)を生じる。
ここで、ステップS60及びS70において、麻酔の導入時は、患者6に対して鎮痛薬の効果部位濃度を徐々に増加させていくのではなく、一時的に、鎮静薬の必要濃度を低下させるのに十分な鎮痛薬濃度(esMICとなるであろう値)以上に過量に投与し、効果部位濃度を徐々に減少させていくという手法を用いる。これにより、手術中の初期段階で範囲R〜Rを含むすべての範囲において、デフォルト値を得られた値で置き換えて更新することができるため、患者6に応じてリアルタイム性の高い回帰曲線を求めることができる。なお、必ずしも範囲R〜Rを含むすべての範囲について更新してからesMICを求める必要はなく、一部の範囲、例えば、鎮痛薬の効果部位濃度が0からesMICに達しない(であろう)範囲まで更新された時点でesMICを推定してもよいことはもちろんである。つまり、esMICに達しない(であろう)鎮痛薬の効果部位濃度から、さらに効果部位濃度を増加させたとしてもesTECが予め定めた幅δ以上に変動しない患者の鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限を鎮痛薬の濃度指標として推定してもよい。
図10は、個体内変動とesMICとの関係を説明するためのグラフ図である。
図10に示すように、手術侵襲等により、回帰曲線はy=f(x)やy=f’(x)のようにばらつきが生じるが、y=a+δとy=f(x)及びy=f’(x)との交点となるesMICのばらつきは微小である。言い換えれば、esMICの個体内変動によるばらつきが微小となるような幅δを設定することが望ましい。
図11及び図12は、個体間変動とesMICとの関係を説明するためのグラフ図である。
図11は、患者AのケースにおけるesMIC算出動作を示すグラフ図であって、双曲線y=a+c/(x‐b)の(a、b、c)はそれぞれ(2.88、-1.36、0.105)である。δ=√c/5=0.0648であり、患者AのケースにおいてesMIC=2.98ng/mlである。
また、図12は、患者BのケースにおけるesMIC算出動作を示すグラフ図であって、双曲線y=a+c/(x‐b)の(a、b、c)はそれぞれ(2.64、-0.116、2.45)である。δ=0.313であり、患者AのケースにおいてesMIC=7.94ng/mlである。
図11及び図12に示すように、患者A及び患者BのケースにおけるesMICが異なり、個体間変動があることが確認できる。
図13は、複数の患者についてesMICの分布の一例を示すグラフ図である。
44人の患者においてesMICを算出したところ、esMICは、個体間変動により図13に示すように分布することを確認した。鎮痛薬の必要濃度(esMIC)が高い患者は感受性が高く、つまり痛みに弱いことを示している。また、鎮痛薬の必要濃度(esMIC)が低い患者は感受性が低く、つまり痛みに強いことを示している。なお、esMICが2〜4ng/mlの患者が大数を占めていた。
(実施の形態の効果)
上記した実施の形態によれば、鎮痛薬の効果部位濃度Cnと、esTECに相互関係があることを利用し、esMIC算出手段104により、経時的にプロットした鎮痛薬の効果部位濃度Cnと、esTECに対する回帰曲線f(x)を求めて、f(x)の漸近線y=aに予め定められた幅δを加算したy=a+δと、f(x)との交点の鎮痛薬の効果部位濃度Cnを鎮静薬の必要濃度を低下させるのに十分な鎮痛薬濃度(esMIC)として定めるようにしたため、患者6に合わせたesMICをリアルタイムに推定でき、個体間変動及び個体内変動を考慮して、患者6に投与する鎮静薬及び鎮痛薬の量的指標を推定することができる。
つまり、本願発明を用いない場合は、患者ごと(個体ごと)に鎮痛薬の必要濃度が不明であったため,過少投与であれば強い疼痛反応を認めることがある一方、過量投与であれば徐脈など不利益な反応が出現するとともに、手術終了後の鎮痛薬投与終了から効果消失(麻酔からの回復)に長時間を要することもあったが、本願発明を利用することで、過量投与による副作用出現及び過少投与による鎮痛効果不足を回避することができ、定性的ではなく定量的に、適切な全身麻酔管理を客観的な指標に基づいて実現することができる。また、得られた情報を利用して術後の鎮痛薬投与量(投与速度)を調節することで、鎮痛薬必要濃度の高い患者であっても低い患者であっても鎮痛効果を適切に得ることが可能となる。つまり、患者への負担が減少し、手術終了後の鎮痛薬投与終了から効果消失(麻酔からの回復)に要する時間が減少し(時間的メリット)、麻酔薬の必要量が減少する(経済的メリット)。
また、鎮痛薬の目標効果部位濃度をesMICに、鎮静薬の目標効果部位濃度をesTECにして患者6に麻酔薬を投与することで、手術侵襲を遮断しつつ安定した鎮静状態が得られるため、血圧、脈拍、体温、心拍出量等の生体情報に基づいて麻酔薬の投与量の調節を行う必要がなくなる。
また、経時的に情報が更新されていくため、手術侵襲の程度の異なる術前、術中、術後の状況を問わず、患者6の個体内変動を考慮してそれぞれの状況におけるesMICをリアルタイムに推定することができる。なお、術後疼痛の強度に応じて鎮痛薬を全身投与する場合、esMICを指標に個体の感受性を推定して鎮痛薬の投与速度を調節すればよい。
また、esMICを得るために必要な情報は、鎮静薬の効果部位濃度Cm、BIS値及び鎮痛薬の効果部位濃度Cnであり、いずれも非侵襲で得られる情報であるから、非侵襲的にesMICを推定することができる。
また、表示処理手段105により、表示部12にBIS値、鎮静薬の効果部位濃度Cm、鎮痛薬の効果部位濃度Cn、esTEC及びesMICの一部又はすべてを表示処理するようにしたため、医師5に対して患者6の鎮痛薬の感受性に関する情報を提示でき、表示手法をアレンジすることで鎮痛薬感受性モニタ機器の開発が可能となる。
また、従来麻酔科医の経験に頼って定めていた麻酔薬の投与量の指標を示すことで、又は指標に応じて自動で患者6に投与することで、経験の豊富な麻酔科医でなくとも鎮痛薬の過不足を回避した安全な全身麻酔を実施することができ、ひいては医療業界の人材不足解消に貢献することができる。
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。
例えば、esMIC算出手段104は、鎮痛薬の効果部位濃度を引き上げても鎮静状態が変化しないような下限としてesMICを定められれば、中立点pからesMICを推定してもよい。一例として、中立点pにおける接線とy=aとの交点における値に予め定めた定数を乗じた値をesMICとしてもよい。この場合、予め定めた定数はesMICが下限値と一致するように定めればよい。なお、回帰曲線を求めずにesMICを求めるアルゴリズムとしてもよい。
ここで、esMIC算出手段104のesMICの算出方法を総括すると、以下のようになる。まず、麻酔科医は、鎮痛薬の効果部位濃度を引き上げても鎮静状態が変化しない状況を経験的に「十分な鎮痛が確保された状態」(すなわち、この時点で鎮静薬の効果部位濃度を増加させても鎮静度に差がみられない状態。)と判断している。esMICは、このような定性的な判断を定量的に実現したものであり、「十分な鎮痛が確保された状態」として、患者の鎮痛薬の効果部位濃度を増加させてもesTECが予め定めた幅δ以上に変動しない患者の鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限、が指標として定義される。しかし、幅δの値を変化させることで下限値が変化することもあり、「十分な鎮痛が確保された状態」が意味するところは範囲の下限値でのみ厳密に定められるものではない。つまり、esMICは「十分な鎮痛が確保された状態」を示すための一つの指標である。従って、esMICを定める方法は1つに限定されるものではなく、y=a+δと、f(x)との交点の鎮痛薬の効果部位濃度から算出してもよいし、鎮痛薬の効果部位濃度をある値から数倍に引き上げてもesTECの分布が幅δ以内に収まるような場合に、この値から求めてもよいし、上記したように中立点から求めてもよい。また、これらの算出方法によって定まるesMICの値がそれぞれ完全一致する必要はなく、患者の鎮痛薬の効果部位濃度を定まったesMICの値とすれば、患者の「十分な鎮痛が確保された状態」となればよい。
また、esTECと、鎮痛薬の効果部位濃度との関係において、鎮痛薬の効果部位濃度を増加させてもesTECがある値以下に低下せずに収束する特性を用いて、当該ある値を達成できる鎮痛薬の効果部位濃度の範囲を「鎮痛が確保された状態」と表現することができる。「鎮痛が確保された状態」である鎮痛薬の効果部位濃度の範囲のうち、(鎮痛薬が多すぎると麻酔からの回復が遅れることから)鎮痛薬効果部位濃度の低い下限値付近を「『十分に』鎮痛が確保された状態」とする。
上記した実施の形態では、鎮静度を示す値としてBISを用いたが、他のモニタから得られる生体情報に基づいて鎮静度を定めてもよい。なお、BISを用いた場合はBIS値と鎮静度とが1対1で対応しているが、他の生体情報に基づいた場合は鎮静度と1対1で対応していない可能性もあるため、esTECを定めるための回帰曲線及びesMICを定めるための回帰曲線が異なるものとなる場合がある。鎮静度と鎮静薬の効果部位濃度が一意に定まる関係が存在する鎮静度モニタであれば、BISと同様に当該鎮静度を用いることができる。
また、上記した実施の形態では、esTEC算出手段103はBISからリアルタイムにesTECを定めるものであったが、患者(個体)から事前の麻酔時に取得した情報からesTECを算出してもよいし、複数の患者から統計的に得られた情報からesTECを算出してもよい。
なお、オピオイド鎮痛薬を例に挙げて説明したが、他の種類の鎮痛薬にも応用してもよい。この場合、esTECを定めるための回帰曲線及びesMICを定めるための回帰曲線が異なるものとなる場合がある。
また、表示部12、操作部13、通信部14は、麻酔補助装置1の必須の構成でないことはもちろんであり、省略してもよいし、別装置としてもよい。同様に生体モニタ4、麻酔器2の人工呼吸器22は、麻酔補助システム7に必須の構成ではなく、省略してもよいし、別システムとして用意してもよい。
上記実施の形態では制御部10の各手段100〜105の機能をプログラムで実現したが、各手段の全て又は一部をASIC等のハードウエアによって実現してもよい。また、上記実施の形態で用いたプログラムをCD‐ROM等の記録媒体に記憶して提供してもよいし、インターネットを介して配信することで提供することもできる。また、クラウド上で動作するプログラムであってもよい。また、上記実施の形態で説明した上記動作の順序の入れ替え、削除、追加等は本発明の要旨を変更しない範囲内で可能である。
1 :麻酔補助装置
2 :麻酔器
3 :BISモニタ
4 :生体モニタ
5 :医師
6 :患者
7 :麻酔補助システム
10 :制御部
11 :記憶部
12 :表示部
13 :操作部
14 :通信部
20 :鎮静薬ポンプ
21 :鎮痛薬ポンプ
22 :人工呼吸器
100 :麻酔器制御手段
101 :効果部位濃度算出手段
102 :BIS値取得手段
103 :esTEC算出手段
104 :esMIC算出手段
105 :表示処理手段
110 :麻酔補助プログラム
111 :esTEC用データセット
112 :esMIC用データセット
113 :設定値

Claims (8)

  1. コンピュータを、
    経時的に得られた患者の鎮静度を示す値と、経時的に得られた当該患者の鎮静薬の効果部位濃度の値とに基づいて、目標とする鎮静度を示す値に対応する鎮静薬の効果部位濃度の値を前記患者に対する鎮静薬の濃度指標として推定する鎮静薬指標推定手段と、
    前記鎮静薬の濃度指標と、経時的に得られた前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度とに基づいて、前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度を増加させても前記鎮静薬の濃度指標が予め定めた幅以上に変動しない前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限を鎮痛薬の濃度指標として推定する鎮痛薬指標推定手段として機能させるための麻酔補助プログラム。
  2. 鎮痛薬指標推定手段は、前記鎮静薬の濃度指標と、前記経時的に得られた前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度とに対する回帰曲線を求めて、当該回帰曲線において前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度を増加させても前記鎮静薬の濃度指標が予め定めた幅以上に変動しない前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限を前記鎮痛薬の濃度指標とする請求項1に記載の麻酔補助プログラム。
  3. 鎮痛薬指標推定手段は、前記回帰曲線を双曲線とし、当該回帰曲線において、双曲線の漸近線から前記予め定めた幅だけ鎮静薬の濃度指標を増加させた値に対応する鎮痛薬の効果部位濃度を前記鎮痛薬指標として決定する請求項2に記載の麻酔補助プログラム。
  4. 前記鎮静度を示す値、前記鎮静薬の効果部位濃度の値、前記鎮痛薬の効果部位濃度の値、前記鎮静薬の濃度指標及び前記鎮痛薬の濃度指標の一部又はすべてを表示処理する表示処理手段としてさらに機能させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の麻酔補助プログラム。
  5. 前記鎮静薬の投与量指標及び/又は前記鎮痛薬の濃度指標に基づいて、前記鎮静薬及び前記鎮痛薬を前記患者に投与する麻酔器の前記鎮静薬の投与量及び前記鎮痛薬の投与量を制御する麻酔器制御手段としてさらに機能させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の麻酔補助プログラム。
  6. 鎮静薬指標推定手段は、経時的に得られた前記鎮静度を示す値と、経時的に得られた前記鎮静薬の効果部位濃度の値とに対する回帰曲線を求めて、当該回帰曲線において目標とする鎮静度を示す値に対応する鎮静薬の効果部位濃度の値を前記患者に対する鎮静薬の濃度指標とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の麻酔補助プログラム。
  7. 経時的に得られた患者の鎮静度を示す値と、経時的に得られた当該患者の鎮静薬の効果部位濃度の値とに基づいて、目標とする鎮静度を示す値に対応する鎮静薬の効果部位濃度の値を前記患者に対する鎮静薬の濃度指標として推定する鎮静薬指標推定手段と、
    前記鎮静薬の濃度指標と、経時的に得られた前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度とに基づいて、前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度を増加させても前記鎮静薬の濃度指標が予め定めた幅以上に変動しない前記患者の鎮痛薬の効果部位濃度の範囲の下限を鎮痛薬の濃度指標として推定する鎮痛薬指標推定手段とを有する麻酔補助装置。
  8. 前記請求項7に記載の麻酔補助装置と、
    前記麻酔補助装置に制御されて前記鎮静薬及び前記鎮痛薬を前記患者に投与する麻酔器とを有する麻酔補助システム
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