以下、図面を参照して、本発明の実施の形態における静圧型主軸軸受装置および水力機械について説明する。
(第1の実施の形態)
図1〜図8を用いて、本実施の形態における静圧型主軸軸受装置および水力機械について説明する。ここでは、まず、図1を用いて、水力機械の一例としてのフランシス水車について説明する。
図1に示すように、フランシス水車1は、上池から水圧管(いずれも図示せず)を通って、水頭エネルギを持った水が流入する渦巻き状のケーシング2と、ケーシング2の内周側に設けられた複数のステーベーン3と、ステーベーン3の内周側に設けられた複数のガイドベーン4と、ガイドベーン4の内周側に設けられたランナ5と、を備えている。このうちステーベーン3は、ケーシング2から流入する水をガイドベーン4に導き、ガイドベーン4は、ステーベーン3からの水をランナ5に導くようになっている。
ガイドベーン4は、上カバー6と下カバー7との間に設けられており、上カバー6および下カバー7に対して回動可能になっている。このことにより、ガイドベーン4は、水の流量を調整し、後述する発電機9の発電出力が調整可能になっている。
図1に示すように、ランナ5は、ガイドベーン4からの水流によって、回転軸線Xを中心に回転駆動するように構成されている。すなわち、ランナ5は、上カバー6の下方に設けられて後述する主軸8に連結されたクラウン5aと、クラウン5aの外周側に設けられたバンド5bと、クラウン5aとバンド5bとの間に設けられた複数のランナ羽根5cと、を有している。ランナ羽根5cが水流から受ける圧力によって、水頭エネルギが回転エネルギに変換される。
ランナ5のクラウン5aには、主軸8を介して発電機9が連結されている。主軸8は、回転軸線Xを中心に回転可能になっている。また、ランナ5の下流側には、吸出し管10が設けられている。吸出し管10は、図示しない下池(または放水路)に連結されており、ランナ5を回転駆動させた水が下池に放出されるようになっている。
上カバー6の上方には、静圧型主軸軸受装置20が設けられている。この静圧型主軸軸受装置20は、主軸8を回転可能に支持しており、主軸8のラジアル荷重を受けるようになっている。すなわち、上述したようにランナ羽根5cが水流から圧力を受けるため、ランナ5にラジアル荷重が与えられる。このラジアル荷重は主軸8を介して静圧型主軸軸受装置20で受けられる。
次に、本実施の形態による静圧型主軸軸受装置20について、図1〜図8を用いて説明する。ここで、静圧型主軸軸受装置20は、フランシス水車1のランナ5に連結された主軸8を、静圧軸受構造をなす加圧された潤滑流体(以下、流体Fと記す)を介して支持するための装置である。
図1および図2に示すように、静圧型主軸軸受装置20は、主軸8の周囲に設けられた軸受槽21と、軸受槽21内に設けられた軸受30と、を備えている。このうち、軸受槽21は、主軸8を支持するための流体F(例えば水や油)が貯留される槽本体22と、槽本体22の上方に設けられたカバー23と、を含んでいる。カバー23は、槽本体22の上端開口部を覆っている。軸受30の少なくとも一部は、槽本体22に貯留された流体Fに浸漬されている。
軸受槽21は、上カバー6に固定されている。より具体的には、軸受槽21から下方に固定部材24が延びており、この固定部材24が上カバー6に固定されている。
軸受槽21の下方には、上カバー6とランナ5との間の隙間から流出した水を排出するための排出空間25が形成されている。この排出空間25は、上述した固定部材24によって画定されている。このような構成により、静圧型主軸軸受装置20の流体Fは、上カバー6とランナ5との間の隙間から流出した水と混合しないように隔離されている。
軸受30は、主軸8の周囲に設けられており、主軸8のラジアル荷重を受けて主軸8を回転可能に支持している。図2に示すように、軸受30は、主軸8の外周側に設けられた複数の軸受セグメント31を含んでいる。軸受セグメント31は、主軸8の周方向に配列されており、互いに離間している。図2に示す例では、8つの軸受セグメント31によって軸受30が構成されているが、軸受セグメント31の個数はこれに限られることはない。
図1および図2に示すように、主軸8は、その外周面に設けられた主軸スカート40を含んでいる。主軸スカート40の外周側に、軸受セグメント31が配置されている。
図3および図4に示すように、軸受セグメント31と主軸スカート40との間には、加圧された流体Fが供給される軸受隙間Gが形成されている。すなわち、軸受セグメント31の軸受面(内周面)は、主軸スカート40の外周面に対向しており、軸受隙間Gは、軸受セグメント31の軸受面と主軸スカート40の外周面との間に形成されている。
図1および図2に示すように軸受30の外周側に、軸受30を支持するリング状の軸受支持台41が設けられている。軸受支持台41は、主軸8の半径方向に延びる複数の連結部材42(図1参照)を介して軸受槽21に固定されている。
図1〜図4に示すように、軸受支持台41には、軸受セグメント31をピボット支持する複数のピボット支持部50が設けられている。これにより、主軸8の傾きに追従して、軸受セグメント31がピボット支持部50に対してピボット運動が可能になっている。ここでピボット運動とは、回転軸線Xに対する主軸8の傾きに追従するように、軸受セグメント31が、傾斜するように揺動運動することをいう。
各ピボット支持部50は、対応する軸受セグメント31の外周側に配置されており、主軸8の半径方向に延びる中心軸線Cに沿うように形成されている。ピボット支持部50にはおねじ部(図示せず)が形成されており、軸受支持台41には、ピボット支持部50のおねじ部に螺合するめねじ部(図示せず)が形成されている。これにより、軸受セグメント31と主軸スカート40との間の軸受隙間Gの寸法が調整可能になっている。ピボット支持部50には軸受支持台41の外周側からナット43が螺合されており、ピボット支持部50は調整後の位置で固定されている。なお、軸受支持台41の下部から内周側に支持板44(図1参照)が延びており、軸受セグメント31を半径方向移動可能に下方から支持している。
図5に示すように、ピボット支持部50は、軸受セグメント31が当接する湾曲状(あるいは球面状)の内周端面51を含んでいる。軸受セグメント31は、ピボット支持部50に当接する平坦状の被当接面32(セグメント本体35の外周側面35a)を含んでいる。ピボット支持部50の内周端面51が、軸受セグメント31の被当接面32に当接している。より詳細には、ピボット支持部50の内周端面51のうち中央部に位置する当接領域52が、軸受セグメント31の被当接面32のうちの当接領域33に点接触している。ピボット運動する軸受セグメント31の姿勢に追従して、ピボット支持部50の当接領域52のうちのいずれかの位置と、軸受セグメント31の当接領域33のうちのいずれかの位置が、点接触する。すなわち、ピボット支持部50の当接領域52と軸受セグメント31の当接領域33は、ピボット運動する軸受セグメント31とピボット支持部50とが当接し得る領域となっている。各当接領域52、33は、軸受セグメント31のピボット運動範囲によって画定される。なお、被当接面32(より詳細には、当接領域33)は、表面硬化処理されていてもよい。この場合、ピボット支持部50が当接する被当接面32の硬度を高めることができ、被当接面32の変形を抑制できる。
図3〜図5に示すように、軸受セグメント31は、ピボット支持部50を受容する受容部34を含んでいる。より詳細には、ピボット支持部50のうち内周端面51を含む内周端部が受容部34に挿入されて受容されている。
本実施の形態においては、軸受セグメント31は、軸受面および被当接面32を含むセグメント本体35と、セグメント本体35の外周側に設けられた円筒状のボス36(受容部画定部材)と、を含んでいる。本実施の形態では、軸受セグメント31の上述した被当接面32は、セグメント本体35の外周側面35aによって構成されている。
ボス36は、ピボット支持部50の周囲に形成されている。これにより、軸受セグメント31の被当接面32とボス36の内周面37とによって受容部34が画定されている。軸受セグメント31のピボット運動範囲は、ピボット支持部50の外周面53とボス36の内周面37(言い換えると、受容部34の壁面)との間の隙間によって規定されている。図3および図4に示す例では、ボス36の直径は、セグメント本体35の高さ方向(図4における上下方向)の寸法よりも小さく、セグメント本体35の幅方向(図3における上下方向)の寸法よりも小さくなっている。しかしながら、ボス36の直径は、セグメント本体35の高さ方向の寸法や幅方向の寸法よりも大きくなっていてもよい。ボス36は、例えば、セグメント本体35とは別体に作製され、セグメント本体35の外周側面35aに当接させて、セグメント本体35に図示しないボルトで締結されていてもよい。
次に、静圧軸受構造をなす流体Fの供給系統について説明する。
図3および図4に示すように、ピボット支持部50は、軸受隙間Gに供給される加圧された流体Fが通過する支持部流路60を含んでいる。支持部流路60には、軸受槽21の槽本体22に貯留された流体Fが加圧されて供給されるようになっている。
すなわち、支持部流路60には、図1および図2に示す供給配管61が連結されており、この供給配管61によって支持部流路60に加圧された流体Fが供給される。供給配管61は、剛性を有しており、軸受槽21の槽本体22のうち連結部材42よりも下方の部分に連結されている。そして、供給配管61には、供給配管61を通過する流体Fを加圧して、軸受隙間Gに送り込むポンプ62(加圧部)が設けられている。このような構成により、槽本体22に貯留されている流体Fが供給配管61に取り込まれ、ポンプ62によって加圧されて支持部流路60に供給される。ポンプ62は、図示しない制御装置によって制御されることで、各支持部流路60に供給される流体Fの圧力を自動的に調整可能にしてもよい。なお、供給配管61は、槽本体22に連結されることに限られることはない。流体Fとして水を用いる場合には、ケーシング2等のランナ5よりも上流の位置から水を取り込んで支持部流路60に供給するようにしてもよい。また、図2においては、図面を明瞭にするために、供給配管61がピボット支持部50の外周端部に接続されている例が示されている。
図2に示すように、供給配管61は途中で分岐するようにしてもよい。すなわち、図2に示す例では、供給配管61は、槽本体22の側に設けられた1つの共通配管部分61aと、支持部流路60の側に設けられ、共通配管部分61aから分岐した複数の分岐配管部分61bと、を含んでいる。槽本体22から取り込まれた流体Fは、共通配管部分61aを通過して各分岐配管部分61bに分配されるようになっている。
各分岐配管部分61bには、対応する支持部流路60に供給される流体Fの流量を調整可能な絞り弁63(流量調整部)が設けられていてもよい。絞り弁63は、手動操作式でもよく、電動操作式でもよい。後者の場合には、図示しない制御装置によって絞り弁63を制御することで、各支持部流路60に供給される流体Fの流量を自動的に調整することが可能になる。なお、図1においては、図面を明瞭にするために、絞り弁63は省略されている。
図3および図4に示すように、軸受セグメント31は、軸受隙間Gに供給される加圧された流体Fが通過するセグメント流路64を含んでいる。本実施の形態では、セグメント流路64は、上述したセグメント本体35に形成されている。
受容部34内には、支持部流路60とセグメント流路64とを連通する連通空間65が形成されている。この連通空間65は、軸受セグメント31の被当接面32と、ボス36の内周面37と、ピボット支持部50の内周端面51とによって画定されている。支持部流路60から流出した流体Fは、連通空間65を通過してセグメント流路64に流入する。セグメント流路64内の流体Fは、軸受隙間Gに流入する。
図5および図6に示すように、支持部流路60の出口60bは、ピボット支持部50の内周端面51のうち軸受セグメント31が当接し得る当接領域52以外の領域に配置されている。支持部流路60は、供給配管61に連結された1つの入口60a(図4参照)と、連通空間65に露出された複数の出口60bと、を含んでいてもよい。この場合、これらの出口60bは、ピボット支持部50の中心軸線Cに沿って見たときに、当接領域52の周囲で、ピボット支持部50の周方向に均等に配置されている。そして、支持部流路60の各出口60bは、ピボット支持部50の中心軸線Cから等しい距離で配置されている。図3〜図5に示すように、支持部流路60は、入口60aの側に設けられた共通流路60cと、出口60bの側に設けられ、共通流路60cから分岐した複数の分岐流路60dとを含んでおり、途中から複数の供給路に分岐されている。このようにして、1つの入口60aに供給された流体Fを複数の出口60bに分配するようになっている。
同様にして、図5に示すように、セグメント流路64の入口64aは、軸受セグメント31の被当接面32のうちピボット支持部50に当接し得る当接領域33以外の領域に配置されている。図3〜図5に示すように、軸受セグメント31には複数のセグメント流路64が設けられていてもよい。この場合、各セグメント流路64は、連通空間65に露出された入口64aと、軸受隙間Gに露出された出口64bと、を含む。これらの入口64aは、ピボット支持部50の中心軸線Cに沿って見たときに、当接領域33の周囲で、ピボット支持部50の周方向に均等に配置されている。そして、各セグメント流路64の入口64aは、ピボット支持部50の中心軸線Cから等しい距離で配置されている。セグメント流路64の入口64aは、ピボット支持部50の中心軸線Cに沿って見たときに、支持部流路60の出口60bと重なるように配置されていてもよいが、重ならない位置に配置されていてもよい。また、セグメント流路64は、ピボット支持部50の中心軸線Cに沿う方向に延びるように形成されていてもよい。この場合、セグメント流路64の出口64bは、ピボット支持部50の中心軸線Cに沿って見たときに、セグメント流路64の入口64aと重なる位置に配置される。しかしながら、セグメント流路64の形状やセグメント流路64の出口64bの位置は、これに限られることはない。
図3〜図5に示すように、ピボット支持部50の外周面53とボス36の内周面37(言い換えると、受容部34の壁面)との間に、連通空間65を密封するシール部66が設けられている。本実施の形態では、シール部66は、弾力性を有する弾性シールリング67で構成されている。より具体的には、ボス36の内周面37に、ピボット支持部50の周方向に延びる溝68が設けられており、この溝68内に、弾性シールリング67が挿入されている。そして、弾性シールリング67は、ピボット支持部50の外周面53に当接するとともに溝68の底面68a(ピボット支持部50の外周面53に対向する面)に当接している。例えば、弾性シールリング67は、ニトリルゴム(NBR)製のOリングとしてもよい。なお、シール部66は、弾性シールリング67で構成されることに限られず、例えば、軸受セグメント31がピボット運動可能であれば、剛体とみなすことができるシールリングで構成されていてもよい。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
フランシス水車1の運転時、ランナ5と発電機9を連結する主軸8が回転する。
この間、供給配管61に設けられたポンプ62が駆動される。このことにより、軸受槽21の槽本体22に貯留されている流体Fが供給配管61に取り込まれて、加圧してピボット支持部50の支持部流路60に供給される。主軸8が偏心している場合には、各分岐配管部分61bに設けられた絞り弁63の開度を調整して、各支持部流路60に供給される流体Fの流量を調整してもよい。例えば、絞り弁63の開度を大きくして支持部流路60に供給される流体Fの流量が増大し、絞り弁63の下流側における流体Fの圧力が高められ、その結果、軸受隙間Gにおける流体Fの圧力が高まる。あるいは、ポンプ62によって流体Fの加圧力を調整してもよい。例えば、ポンプ62の吐出力を高めることにより、ポンプ62の下流側における流体Fの圧力が高められ、その結果、軸受隙間Gにおける流体Fの圧力が高まる。このことにより、軸受隙間Gにおける流体Fの圧力が高められて、後述する流体膜の反力を高めることができ、主軸8の偏心を効果的に抑制することができる。
支持部流路60に供給された流体Fは、支持部流路60の各出口60bから流出し連通空間65に流入する。連通空間65は支持部流路60およびセグメント流路64に比べると大きな容積を有しているため、連通空間65に流入した流体Fは連通空間65に貯留(保持)される。連通空間65内では、流体Fは加圧下で貯留される。
その後、連通空間65内の流体Fは、軸受セグメント31の各入口64aから対応するセグメント流路64に流入する。各セグメント流路64に流入した流体Fは出口64bから流出して、軸受セグメント31と主軸8との間の軸受隙間Gに流入する。
軸受隙間Gに流入した流体Fで、軸受隙間Gに、主軸8を軸受の中心に戻そうとする流体膜が形成され、この流体膜によって主軸8が支持される。すなわち、流体Fによって軸受隙間G内の流体Fの圧力が高められ、静圧軸受構造として主軸8が支持される。
このように本実施の形態によれば、ピボット支持部50を受容する受容部34に、ピボット支持部50の支持部流路60と軸受セグメント31のセグメント流路64とを連通する連通空間65が設けられている。このことにより、軸受セグメント31がピボット運動した場合であっても、連通空間65によって支持部流路60とセグメント流路64との連通状態を維持することができる。このため、支持部流路60に供給された加圧された流体Fを、セグメント流路64を介して、主軸8と軸受セグメント31との間の軸受隙間Gに供給することができる。この結果、ピボット運動可能な軸受セグメント31で静圧軸受構造を構成してフランシス水車1の主軸8を支持することができる。
また、本実施の形態によれば、主軸8と軸受セグメント31との間の軸受隙間Gに、ピボット支持部50の支持部流路60および軸受セグメント31のセグメント流路64を介して加圧された流体Fを供給することができる。このことにより、軸受隙間Gに供給された加圧された流体Fで、静圧軸受構造として主軸8を支持することができる。この場合、主軸8の回転速度によらずに、主軸8を軸受の中心に戻そうとする流体膜の反力を安定化させることができる。このため、主軸8の振れ回りを安定化させて主軸8と軸受30との接触を防止できる。とりわけ、流体Fが油よりも粘度が低い水であっても、流体膜の反力を高めることができ、主軸8と軸受30との接触を効果的に防止できる。
また、本実施の形態によれば、支持部流路60とセグメント流路64とを連通する連通空間65に加圧された流体Fを貯留することができる。このことにより、軸受隙間Gに供給される流体Fの圧力を維持することができ、流体膜による主軸8の支持を安定化させることができる。すなわち、軸受隙間Gに供給される流体Fの圧力が、軸受隙間G内の流体Fの圧力の変動の影響を受けることを抑制できる。
また、本実施の形態によれば、主軸8と軸受セグメント31との間の軸受隙間Gに供給される流体Fは、ピボット支持部50の支持部流路60と、連通空間65と、軸受セグメント31のセグメント流路64とを通過する。このことにより、既設の動圧型主軸軸受装置を、静圧型主軸軸受装置20に容易に改修することができる。すなわち、既設の動圧型主軸軸受装置が、支持部流路60が設けられていないピボット支持部50と、セグメント流路64が設けられていない軸受セグメント31とを備えている場合には、ピボット支持部50に支持部流路60を形成するとともに軸受セグメント31にセグメント流路64を形成する。そして、支持部流路60に流体Fを供給する供給配管61を連結する。このことにより、本実施の形態による静圧型主軸軸受装置20を得ることができる。このため、動圧型主軸軸受装置から静圧型主軸軸受装置20への改修の際に、ピボット支持部50や軸受セグメント31の周囲の他の部材の改造を最小限に留めることができ、静圧型主軸軸受装置20への改修作業を容易化させることができる。
また、本実施の形態によれば、軸受セグメント31のセグメント本体35の外周側に、セグメント本体35と共に受容部34を画定するボス36が設けられている。このことにより、受容部34を容易に形成することができる。また、受容部34の周囲がボス36で構成されるため、セグメント本体35とボス36とで構成される軸受セグメント31の全体としての材料の使用量を少なくして質量を低減することができる。
また、本実施の形態によれば、支持部流路60の出口60bが、ピボット支持部50の内周端面51のうち軸受セグメント31が当接し得る当接領域52以外の領域に配置されている。このことにより、支持部流路60の出口60bが、軸受セグメント31によって塞がれることを防止できる。このため、軸受セグメント31がピボット運動した場合であっても、支持部流路60と連通空間65との連通状態を維持することができる。また、当接領域52に支持部流路60の出口60bが形成されることを防止でき、当接領域52におけるピボット支持部50の強度を確保することができる。さらには、ピボット支持部50の当接領域52を連続状の滑らかな面で形成することができ、軸受セグメント31をスムースにピボット運動させることができる。
また、本実施の形態によれば、セグメント流路64の入口64aが、軸受セグメント31の被当接面32のうちピボット支持部50に当接し得る当接領域33以外の領域に配置されている。このことにより、セグメント流路64の入口64aが、ピボット支持部50によって塞がれることを防止できる。このため、軸受セグメント31がピボット運動した場合であっても、連通空間65とセグメント流路64との連通状態を維持することができる。また、当接領域33にセグメント流路64の入口64aが形成されることを防止でき、当接領域33におけるセグメント本体35の強度を確保することができる。さらには、軸受セグメント31の当接領域33を連続状の滑らかな面で形成することができ、スムースにピボット運動することができる。
また、本実施の形態によれば、ピボット支持部50の外周面53と受容部34の壁面(ボス36の内周面37)との間に、連通空間65を密封するシール部66が設けられている。このことにより、連通空間65の密封性を向上させることができ、連通空間65内の流体Fの圧力を維持することができる。このため、軸受隙間G内の流体Fの圧力を維持することができ、主軸8の支持を安定化させることができる。
また、本実施の形態によれば、シール部66は弾性シールリング67で構成されている。このことにより、シール部66の市場性を高めることができ、コストの低減を図ることができるとともにメンテナンス性を向上させることができる。また、弾性シールリング67を採用することにより、シール部66の構造を簡素化させることができる。さらに、弾性シールリング67が弾力性を有していることにより、軸受セグメント31がピボット運動する際に弾性シールリング67が弾性変形することができる。このため、軸受セグメント31のピボット運動の範囲を広げることができ、主軸8に対する追従性を向上させることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、軸受セグメント31が、セグメント本体35と、ボス36とを含んでいる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、軸受セグメント31は、ボス36を含まないように構成されていてもよい。例えば、受容部34は、軸受セグメント31のセグメント本体35の外周側面35aに凹状に形成されるようにしてもよい。この場合、軸受セグメント31を構成する部品点数を低減することができる。
また、上述した本実施の形態においては、軸受セグメント31の被当接面32が、セグメント本体35の外周側面35aによって構成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、図7および図8に示すように、軸受セグメント31の被当接面32は、ボス36のボス被当接面36a(画定部材被当接面)によって構成されていてもよい。図7に示す例では、受容部34は、ボス36の外周側面36bに凹状に形成されている。ボス被当接面36aは、この受容部34の内側端面(図7における左側端面)をなしている。ピボット支持部50の内周端面51が、軸受セグメント31の被当接面32(ここでは、ボス被当接面36a)に当接している。より詳細には、ピボット支持部50の内周端面51のうちの当接領域52が、軸受セグメント31の被当接面32のうちの当接領域33に点接触している。
ボス36は、支持部流路60とセグメント流路64とを連通する複数のボス流路38(画定部材流路)と、セグメント流路64とボス流路38との間に設けられた第2の連通空間39と、を有している。図8に示すように、各ボス流路38は、連通空間65に露出された入口38aと、第2の連通空間39に露出された出口38bと、を含む。ボス流路38の入口38aは、軸受セグメント31の被当接面32のうちピボット支持部50に当接し得る当接領域33以外の領域に配置されている。ボス流路38の入口38aは、ピボット支持部50の中心軸線Cに沿って見たときに、当接領域33の周囲で、ピボット支持部50の周方向に均等に配置されている。そして、ボス流路38の各入口38aは、ピボット支持部50の中心軸線Cから等しい距離で配置されている。ボス流路38の入口38aは、ピボット支持部50の中心軸線Cに沿って見たときに、支持部流路60の出口60bと重なるように配置されていてもよいが、重ならない位置に配置されていてもよい。また、ボス流路38は、ピボット支持部50の中心軸線Cに沿う方向に延びるように形成されていてもよい。この場合、ボス流路38の出口38bは、ピボット支持部50の中心軸線Cに沿って見たときに、ボス流路38の入口38aと重なる位置に配置される。しかしながら、ボス流路38の形状やボス流路38の出口38bの位置は、これに限られることはない。
第2の連通空間39は、ボス36の内周側面36cに凹状に形成されており、各セグメント流路64に連通するとともに各ボス流路38に連通している。すなわち、各セグメント流路64の入口64aは、第2の連通空間39に露出している。このことにより、軸受セグメント31とボス36とを組み合わせる際に、セグメント流路64と第2の連通空間39とを容易に位置合わせすることができる。また、第2の連通空間39が設けられていることにより、軸受隙間Gに供給される流体Fの圧力が、軸受隙間G内の流体Fの圧力の変動の影響を受けることを抑制できる。
図7に示す例では、ボス36の硬度が、軸受セグメント31の硬度よりも高くなっている。このことにより、ピボット支持部50が当接するボス被当接面36aの硬度を高めることができ、ボス被当接面36aの変形を抑制できる。また、ボス被当接面36aは、表面硬化処理が施されていてもよい。この場合には、ボス被当接面36aの硬度をより一層高めることができ、ボス被当接面36aの変形をより一層抑制できる。
また、上述した本実施の形態においては、供給配管61が、槽本体22に貯留されている流体Fが1つの共通配管部分61aから各支持部流路60に対応する分岐配管部分61bに分配されるように構成されている例について説明した。しかしながら、供給配管61の構成はこれに限られることはない。例えば、各支持部流路60に流体Fを供給する系統は、支持部流路60毎に別々に構成されていてもよい。すなわち、各支持部流路60に、別々の供給配管61によって槽本体22から取り込まれた流体Fが供給されるようにしてもよい。この場合、各供給配管61にポンプ62が設けられる。また、複数の共通配管部分61aを設けて、各共通配管部分61aが、いくつかの分岐配管部分61bに流体Fを分配するようにしてもよい。例えば、2つの共通配管部分61aを設けて、各共通配管部分61aが4つの分岐配管部分61bに流体Fをそれぞれ分配するようにしてもよい。
また、上述した本実施の形態では、水力機械の一例としてフランシス水車を例にとって説明したが、このことに限られることはなく、フランシス水車以外の水力機械にも、本実施の形態による静圧型主軸軸受装置20および水力機械を適用することができる。
(第2の実施の形態)
次に、図9および図10を用いて、本発明の第2の実施の形態における静圧型主軸軸受装置および水力機械について説明する。
図9および図10に示す第2の実施の形態においては、シール部が、シール内周側部分とシール外周側部分とを含む点が主に異なり、他の構成は、図1〜図8に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図9および図10において、図1〜図8に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態においては、図9および図10に示すように、シール部66は、シール本体部分70と、シール内周側部分71と、シール外周側部分72と、を含んでいる。シール内周側部分71は、シール本体部分70よりもピボット支持部50の内周側に配置されており、シール外周側部分72は、シール本体部分70よりもピボット支持部50の外周側に配置されている。
シール内周側部分71は、シール本体部分70の連通空間65の側の端部からピボット支持部50の内周側かつ連通空間65の側に延びている。すなわち、シール内周側部分71は、シール本体部分70の当該端部を通るピボット支持部50の中心軸線Cに垂直な面よりも、連通空間65の側に延びるように形成されている。シール内周側部分71は、ピボット支持部50の外周面53に当接している。
シール外周側部分72は、シール本体部分70の連通空間65の側の端部からピボット支持部50の外周側かつ連通空間65の側に延びている。すなわち、シール外周側部分72は、シール本体部分70の当該端部を通るピボット支持部50の中心軸線Cに垂直な面よりも、連通空間65の側に延びるように形成されている。シール外周側部分72は、ボス36の内周面37に設けられた溝68の底面68aに当接している。
これらのシール内周側部分71とシール外周側部分72とによって、シール凹部73が形成されている。シール凹部73は、連通空間65の側に開口している。
図10に示すように、本実施の形態によるシール部66は全体としてY字状に形成されている。しかしながら、シール本体部分70の中心軸線Cに沿う方向の長さを短くして、シール部66を全体としてV字状またはU字状に形成してもよい。
図9および図10に示すように、軸受セグメント31のボス36に対して主軸8の外周側には、シール部66を連通空間65の側に押圧する押圧カバー74(押圧部材)が設けられている。押圧カバー74は、突出部74aを含み、ボス36に取り付けられると突出部74aが溝68に入り込み、シール部66を押圧するようになっている。
このように本実施の形態によれば、シール内周側部分71とシール外周側部分72とを含むシール部66が、押圧カバー74によって、連通空間65の側に押圧されている。このことにより、シール部66は連通空間65の側への力を受けて、シール内周側部分71の先端部およびシール外周側部分72の先端部が互いに離れる方向(ピボット支持部50の半径方向、図10に示す上下方向)に広がるように弾性変形することができる。このため、シール内周側部分71がピボット支持部50の外周面53に押し付けられる力を強めることができるとともに、シール外周側部分72が溝68の底面68aに押し付けられる力を強めることができ、シール部66の密封性能を向上させることができる。また、シール内周側部分71の先端部およびシール外周側部分72の先端部が互いに離れる方向に弾性変形できるため、ピボット支持部50の外周面53とボス36の内周面37との隙間を大きくすることができる。この場合、軸受セグメント31のピボット運動の範囲を広げることができ、主軸8に対する追従性を向上させることができる。
(第3の実施の形態)
次に、図11および図12を用いて、本発明の第3の実施の形態における静圧型主軸軸受装置および水力機械について説明する。
図11および図12に示す第3の実施の形態においては、シール部が、ピボット支持部の外周面に当接した低摩擦リングと、低摩擦リングと受容部の壁面との間に設けられた弾力性を有する弾性シールリングと、を含む点が主に異なり、他の構成は、図1〜図8に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図11および図12において、図1〜図8に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態においては、図11および図12に示すように、シール部66は、ピボット支持部50の外周面53に当接した低摩擦リング80と、低摩擦リング80と受容部34の壁面との間に設けられた弾性シールリング67(例えば、Oリング)と、を含んでいる。
低摩擦リング80は、リング状に形成されており、弾性シールリング67とピボット支持部50との摩擦を低減するための部材である。このような摩擦を低減することができれば、低摩擦リング80は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの任意の材料で形成することができる。
弾性シールリング67は、低摩擦リング80の外周面に当接するとともに溝68の底面68aに当接している。弾性シールリング67の弾力性によって、低摩擦リング80は、ピボット支持部50の外周面53に当接している。
このように本実施の形態によれば、ピボット支持部50の外周面53に低摩擦リング80が当接し、低摩擦リング80と受容部34の壁面との間に弾力性を有する弾性シールリング67が設けられている。このことにより、弾性シールリング67とピボット支持部50との摩擦を低減することができる。このため、軸受セグメント31のピボット運動をスムースにさせることができる。また、弾性シールリング67とピボット支持部50の外周面53との間に低摩擦リング80が介在されることにより、ピボット支持部50の外周面53および弾性シールリング67更には低摩擦リング80自体の摩耗を低減することができる。例えば、土砂摩耗させるような水がランナ5に流入すること等により主軸8の偏心が大きい場合には、ピボット支持部50の外周面53、弾性シールリング67、低摩擦リング80の摩耗を効果的に低減することができる。このため、ピボット支持部50、弾性シールリング67および低摩擦リング80の交換周期を長くすることができ、メンテナンス上有利である。
以上述べた実施の形態によれば、ピボット運動可能な軸受セグメントで静圧軸受構造を構成して水力機械の主軸を支持することができる。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。