JP6939607B2 - 組成物およびその用途 - Google Patents

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本発明は、組成物およびその用途に関する。
軟骨および骨等の生体組織の一部が損なわれた場合、その損なわれた箇所にハイドロゲルを用いた人工の医療用器具への置き換えが行われている。このようなハイドロゲルとしては、以下の高分子ネットワーク(ゲル)が知られている。すなわち、西洋わさびペルオキシダーゼ等の酵素および過酸化水素を触媒として用い、多糖にヒドロキシフェニル基が導入された変性多糖をヒドロキシフェニル基において酸化カップリングさせることで形成される高分子ネットワーク(ゲル)である(特許文献1〜4参照)。
米国特許第8287906号公報 米国特許第6982298号公報 米国公開特許第2012/301441号公報 米国特許第9132201号公報
多糖にヒドロキシフェニル基が導入された変性多糖から形成されるゲルは、ゲル化の際、硬化収縮が小さい。このため、生体組織の置き換えに前記ゲルを人工の医療用器具として用いる際、前記ゲルは非常に取り扱いやすい。しかしながら、本発明者の検討によれば、前記ゲルは脆く、機械的強度が充分ではない。
本発明は、ゲル化の際の硬化収縮が小さく、機械的強度に優れたゲルを形成することが可能な組成物を提供することを目的とする。また、前記組成物から形成されるゲル、前記ゲルから形成される成形体、および前記成形体を有する医療用器具を提供することを目的とする。さらに、ゲルの製造方法および溶液キットを提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、以下の構成を有する組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば以下の[1]〜[15]に関する。
[1]架橋性基として、ヒドロキシアリール基または不飽和二重結合含有基を有する変性多糖(A)と、前記変性多糖(A)の架橋促進剤(B)と、カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)とを含有することを特徴とする組成物。
[2]変性多糖(A)が、ヒドロキシアリール基を有する変性多糖(A1)であり、架橋促進剤(B)が、酵素(B1)と過酸化物(B2)との組み合わせである前記[1]に記載の組成物。
[3]前記ヒドロキシアリール基を有する変性多糖(A1)が、フェノール性水酸基変性ヒアルロン酸、フェノール性水酸基変性デキストラン、およびフェノール性水酸基変性プルランから選ばれる少なくとも1種である前記[2]に記載の組成物。
[4]前記多糖(C)が、アルギン酸、ペクチンおよびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種である前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5]水(E)をさらに含有する前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6]金属塩(D)をさらに含有する前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7]金属塩(D)が、周期表第2族金属塩である前記[6]に記載の組成物。
[8]第1の網目状構造と第2の網目状構造とが、相互に絡み合った状態で存在する構造を有するゲルであり、前記第1の網目状構造は、架橋性基として、ヒドロキシアリール基または不飽和二重結合含有基を有する変性多糖(A)が架橋して形成された網目状構造であり、前記第2の網目状構造は、カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)と、金属カチオン(D')とにより形成された網目状構造であることを特徴とするゲル。
[9]水分を50〜99.9質量%含有するハイドロゲルである前記[8]に記載のゲル。
[10]前記[8]または[9]に記載のゲルを50質量%以上含有することを特徴とする成形体。
[11]前記[10]に記載の成形体を有することを特徴とする医療用器具。
[12]前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物を生体組織の損傷部に適用し、前記組成物をゲル化させる工程と、得られたゲルと金属カチオン(D')を含む水溶液とを接触させて、前記ゲルを硬化させる工程とを有することを特徴とする、相互侵入網目構造型ゲルの製造方法。
[13]前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物をゲル化させ、得られたゲルと金属カチオン(D’)を含む水溶液とを接触させて、前記ゲルを硬化させることによって形成された相互侵入網目構造型ゲル。
[14]カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)を含み、ヒドロキシアリール基または不飽和二重結合含有基を有する変性多糖(A)および前記変性多糖(A)の架橋促進剤(B)のいずれかを含むが両方は含まない第1の溶液と、前記変性多糖(A)および架橋促進剤(B)のうち第1の溶液中で含まれない方を含む第2の溶液と、金属塩(D)を含む第3の溶液と、を有することを特徴とする溶液キット。
[15]ヒドロキシアリール基または不飽和二重結合含有基を有する変性多糖(A)と、カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)とを含み、酵素(B1)および過酸化物(B2)のいずれかを含むが両方は含まない第11の溶液と、前記酵素(B1)および前記過酸化物(B2)のうち第11の溶液中で含まれない方を含む第21の溶液と、金属塩(D)を含む第31の溶液と、を有することを特徴とする溶液キット。
本発明によれば、ゲル化の際の硬化収縮が小さく、機械的強度に優れたゲルを形成することが可能な組成物、前記組成物から形成されるゲル、前記ゲルから形成される成形体、および前記成形体を有する医療用器具を提供することができ、さらに、ゲルの製造方法および溶液キットを提供することができる。
図1(1)、(2)および(3)は、それぞれ実施例1、比較例1および比較例2のハイドロゲルの写真である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本明細書で例示する各化学物質、例えば、組成物中に含まれるまたは各工程で用いられる化学物質は、特に言及しない限り、それぞれ1種単独で用いることができ、または2種以上を併用して用いることができる。
[組成物]
本発明の組成物は、架橋性基として、ヒドロキシアリール基または不飽和二重結合含有基(以下これらをまとめて「架橋性基(a1)」ともいう)を有する変性多糖(A)と、前記変性多糖(A)の架橋促進剤(B)と、カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)とを含有し、好ましくは、金属塩(D)をさらに含有する。
変性多糖(A)、架橋促進剤(B)および多糖(C)を含有する組成物において、変性多糖(A)を、架橋促進剤(B)を用いて架橋することにより、変性多糖(A)が架橋して形成された第1の網目状構造が得られる。この段階で、第1の網目状構造に対して、多糖(C)が絡み合って存在するゲル(セミ相互侵入高分子網目構造型ゲル)を形成することができる。第1の網目状構造と多糖(C)とは、共有結合等の化学的結合を有しておらず、分子間力等の物理的結合で、相互に絡み合った状態で存在すると考えられる。
また、前記セミ相互侵入高分子網目構造型ゲルを金属塩(D)の金属カチオン(D')と接触させることにより、多糖(C)が架橋して形成された第2の網目状構造が得られる。この段階で、第1の網目状構造と第2の網目状構造とが、相互に絡み合った状態で存在する構造を有するゲル(相互侵入高分子網目構造型ゲル)を形成することができる。第1の網目状構造と第2の網目状構造とは、相互の構造を結合する、共有結合等の化学的結合を有しておらず、分子間力等の物理的結合で、相互に絡み合った状態で存在すると考えられる。
ゲル構造の詳細については後述する。
多糖(C)は、カルシウムカチオン等の金属カチオンにより架橋する性質がある。例えば、アルギン酸とカルシウムカチオンとから得られるゲルは、高い機械的強度を有するが、ゲル化の際の硬化収縮が大きく、得られるゲルは人工軟骨等の医療用器具として使用しづらい。一方、架橋性基(a1)を有する変性多糖(A)から形成されるゲルは、ゲル化の際、硬化収縮が小さい。
このため、上述した相互侵入高分子網目構造型ゲル(IPNゲル)は、高い機械的強度を有するとともに、当該ゲル製造時におけるゲル化の際の硬化収縮も小さいという優れた効果を有する。例えば複数種のゲルを混ぜると、それぞれの長所が互いに打ち消されることが多いが、本発明のIPNゲルは、それぞれの長所を打ち消さずに優れた効果を発揮するゲルである。
<変性多糖(A)>
変性多糖(A)は、通常、多糖(a)に、架橋性基(a1)、すなわちヒドロキシアリール基または不飽和二重結合含有基が導入された化合物である。
変性多糖(A)を構成する多糖(a)としては、例えば、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンタンガム、セルロース、グアーガム、プルラン、デキストラン、フルクタン、マンナン、カラギーナン、キチン、キトサン、ペクチン、デンプン、グリコーゲン、デキストリン、ゲランガム、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、ヒアルロン酸、デキストランおよびプルランから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前記多糖(a)の誘導体としては、各種変性物が挙げられ、変性される箇所および変性基(ただし、前記架橋性基(a1)は除く)は本発明の作用効果を大きく損なうものでなければ特に制限はない。例えば、前記例示の多糖(a)がメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシエチルメチル基、ヒドロキシプロピルメチル基、カルボキシメチル基、アセチル基、ステアロキシ基などの置換基を有する誘導体が挙げられる。誘導体は、前記置換基を単独で又は複数の組合せで有してもよい。
前記置換基を有する多糖(a)としては、具体的には、アセチル化ヒアルロン酸、ヒアルロン酸プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルグアーガム、エチルグアーガム、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルグアーガムが挙げられる。
多糖(a)は、塩であってもよく、例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。例えば、カルボキシル基を有する多糖の金属塩が挙げられる。また、カルボキシル基を有する多糖は、そのエステルであってもよい。
変性多糖(A)は、ヒドロキシアリール基または不飽和二重結合含有基を有する。ヒドロキシアリール基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基が挙げられ、不飽和二重結合含有基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、ゲル化の際の硬化収縮がより小さいことから、好ましくはヒドロキシアリール基である。
架橋性基(a1)は、架橋促進剤(B)との組み合わせによって決まり、その組み合わせとしては、例えば、ヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基と酵素(B1)および必要に応じて過酸化物(B2)との組み合わせ;ならびに(メタ)アクリロイル基等の不飽和二重結合含有基とラジカル重合開始剤(B3)との組み合わせ;が挙げられる。これらのなかでも、ヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基と酵素(B1)および必要に応じて過酸化物(B2)との組み合わせが好ましい。
ヒドロキシアリール基の炭素数は、通常、6〜50、好ましくは6〜30である。前記ヒドロキシアリール基において、ベンゼン核に結合する水酸基数は通常、1以上、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2である。このように、ヒドロキシアリール基は、モノヒドロキシアリール基に限定されるわけではなく、同様にヒドロキシフェニル基も、モノヒドロキシフェニル基に限定されるわけではない。
ヒドロキシアリール基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシアントラセニル基が挙げられる。ヒドロキシアリール基は、アルキル基等の置換基を有してもよい。ヒドロキシアリール基において、水酸基に対して少なくとも1つのオルト位置の炭素原子には水素原子が結合していることが好ましい。
不飽和二重結合含有基における不飽和二重結合は、好ましくは炭素−炭素二重結合である。不飽和二重結合含有基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。
変性多糖(A)は、好ましくは、ヒドロキシアリール基が、直接または有機基を介して、エステル結合、ウレタン結合またはアミド結合により多糖(a)に結合した化合物である。エステル結合およびウレタン結合は、多糖(a)に含まれうる水酸基またはカルボキシル基が結合していた炭素原子と結合していることが好ましく、アミド結合は、多糖(a)に含まれうるカルボキシル基が結合していた炭素原子と結合していることが好ましい。前記カルボキシル基は、塩またはエステルであってもよい。
前記有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルカンジイル基、前記アルカンジイル基にエーテル結合および2価のアミノ基(−NH−等)から選ばれる少なくとも1種が付加又は挿入された置換アルカンジイル基、ペプチド結合を有する有機基、具体的には、ジペプチド等のオリゴペプチドまたはそのエステル体に由来する基が挙げられる。
多糖(a)にヒドロキシアリール基を導入する方法としては、例えば、アミノ基、アルコール性水酸基およびカルボキシル基等の官能基を有する多糖(a)と、前記官能基と反応しうる官能基(例:カルボキシル基、その酸ハロゲン化物、アミノ基、アルコール性水酸基、エポキシ基、オキセタニル基)およびヒドロキシアリール基を有する化合物とを、反応させる方法が挙げられる。
多糖(a)中のアルコール性水酸基と反応可能なカルボキシル基またはその酸ハロゲン化物と、ヒドロキシアリール基とを有する化合物としては、例えば、4−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、4−ヒドロキシフェニルブタン酸、2−(2,5−ジヒドロキシフェニル)酢酸、およびこれらの酸ハロゲン化物が挙げられる。
多糖(a)がカルボキシル基、その塩またはエステルを有する場合、当該基と反応可能なアミノ基と、ヒドロキシアリール基とを有する化合物としては、例えば、チラミンが挙げられる。
変性多糖(A)は、フェノール性水酸基変性多糖(A1)が好ましく、フェノール性水酸基変性ヒアルロン酸、フェノール性水酸基変性デキストラン、およびフェノール性水酸基変性プルランから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。具体的には、多糖(a)にヒドロキシフェニル基が導入された変性多糖が好ましく、ヒドロキシフェニル基変性ヒアルロン酸、ヒドロキシフェニル基変性デキストラン、およびヒドロキシフェニル基変性プルランから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
以下、変性多糖(A)の一実施態様について説明する。
例えば、多糖(a)が多く有するアルコール性水酸基を、カルボニル化試薬を用いて、炭酸エステル誘導体基に変換した後、得られた多糖(a)の炭酸エステル誘導体と、ヒドロキシアリール基を有するアミン化合物とを反応させる。
カルボニル化試薬としては、例えば、クロロギ酸ニトロフェニル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸トリクロロメチル、炭酸ビス(トリクロロメチル)が挙げられる。カルボニル化試薬の量は、通常、多糖(a)100質量部に対して1〜100質量部である。中間体である炭酸エステル誘導体が安定である場合は、一旦単離した後に次の反応を行うことができる。
ヒドロキシアリール基を有するアミン化合物としては、例えば、チラミンが挙げられる。前記アミン化合物の量は、通常、多糖(a)の炭酸エステル誘導体100質量部に対して1〜100質量部である。
前記反応は、塩基性化合物の存在下で行うことが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピペリジンが挙げられる。
前記反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテルが挙げられる。多糖(a)の溶媒中への溶解性を向上させるため、塩化リチウム等のアルカリ金属塩を用いることができる。
前記反応の反応温度は、それぞれの工程において、通常、−10〜50℃、好ましくは−5〜30℃であり、反応時間は、通常、0.1〜24時間である。
前記多糖(a)に不飽和二重結合含有基を導入する方法としては、例えば、アミノ基、アルコール性水酸基およびカルボキシル基等の官能基を有する多糖(a)と、前記官能基と反応しうる官能基(例:カルボキシル基、その酸ハロゲン化物、アミノ基、アルコール性水酸基、エポキシ基、オキセタニル基)および不飽和二重結合を有する化合物(以下「二重結合含有化合物」ともいう)とを、反応させる方法が挙げられる。
前記二重結合含有化合物としては、多糖(a)が多く有するアルコール性水酸基と反応しうるカルボキシル基またはその酸ハロゲン化物(−COX(Xは塩素原子等のハロゲン原子)で表される基)を有する化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;前記不飽和ジカルボン酸の無水物;コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、およびフタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル;ならびにこれらの酸ハロゲン化物、例えば塩化(メタ)アクリロイル;等が挙げられる。
前記二重結合含有化合物としては、その他、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロへキシルメチル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;o,m又はp−ビニルベンジルグリシジルエーテル、o,m又はp−イソプロペニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル化合物;3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン等のオキセタニル基含有(メタ)アクリレート;3−(p−ビニルフェニルオキシメチル)−3−メチルオキセタン等のオキセタニル基含有ビニル化合物;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキアルキルが挙げられる。
前記反応において、二重結合含有化合物は、多糖(a)100質量部に対して、通常、1〜500質量部、好ましくは5〜300質量部、より好ましくは10〜100質量部の量で用いることができる。
前記反応は、塩基性化合物の存在下で行うことが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、およびピペリジンが挙げられる。
前記反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドが挙げられる。
前記反応の反応温度は、通常、−10〜50℃、好ましくは−5〜30℃であり、反応時間は、通常、0.1〜24時間である。
変性多糖(A)は、多糖(a)に(メタ)アクリロイル基が導入された変性多糖((メタ)アクリロイル変性多糖)が好ましく、(メタ)アクリロイル変性ヒアルロン酸、(メタ)アクリロイル変性デキストラン、および(メタ)アクリロイル変性プルランから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
変性多糖(A)における前記架橋性基(a1)による置換度(DS)は、通常、0.1〜300であり、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜30である。置換度は、1H NMRより求めることができる。変性多糖(A)の置換度とは、変性多糖の構成単糖100単位あたりに導入された架橋性基(a1)の平均数を示す。変性多糖はこのような置換度を有することにより、変性多糖のゲル化速度が向上する。
変性多糖(A)の多角度光散乱検出器を用いた絶対分子量測定による数平均分子量は、通常、1,000〜10,000,000、好ましくは3,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000である。また、変性多糖(A)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量;いずれも前記絶対分子量測定による)は、通常、1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
変性多糖(A)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物中の変性多糖(A)の含有割合は、通常、0.05〜49質量%、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは3〜15質量%である。このような態様であると、ゲルの機械的強度および取扱い性の観点から好ましい。
<架橋促進剤(B)>
架橋促進剤(B)は、変性多糖(A)の架橋性基(a1)の架橋を促進するために用いられる。
変性多糖(A)が架橋性基(a1)としてヒドロキシアリール基を有する場合の架橋促進剤(B)としては、例えば、ヒドロキシアリール基の架橋を直接的または間接的に促進する、酵素(B1)が挙げられる。
酵素(B1)としては、例えば、ラッカーゼ、チロシナーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼが挙げられる。ラッカーゼおよびチロシナーゼは、ゲルの構成要素とならない他の薬品を加える必要がないので、ゲル化の際に機能発現物質が変性するおそれが全くない点で優れる。ペルオキシダーゼは、過酸化水素等の過酸化物と併用することで瞬時にゲル化させることができる。ラッカーゼ、チロシナーゼ(フェノールオキシダーゼ)等の銅酵素類の起源は、例えばウルシ、キノコ(ツチカブリ、マッシュルーム)、カビ(Polyporus vericolor)が挙げられる。カタラーゼ、ペルオキシダーゼ等のヒドロペルオキシダーゼ類の起源は、例えば、ウシ肝臓、ウマ血球、ヒト血球、M. lysodeikticus、西洋ワサビ(ホースラディッシュ)、大豆、ダイコン、カブ、甲状腺、牛乳、腸、白血球、赤血球、酵母、Caldariomyces fumago、Steptococcus faecalisが挙げられる。これらの中でも、チロシナーゼとしてはマッシュルーム由来、ペルオキシダーゼとしては西洋ワサビ由来のものが好ましい。酵素(B1)としては、ペルオキシダーゼおよびカタラーゼが好ましく、ペルオキシダーゼがより好ましい。
酵素(B1)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物において、酵素(B1)の量は、変性多糖(A)中のヒドロキシアリール基1モルに対して、通常、0.01〜10000U、好ましくは0.1〜2000U、より好ましくは1〜1000Uである。また、一実施態様において、本発明の組成物中の酵素(B1)の量は、反応性の点から、好ましくは0.01〜10U/mL、より好ましくは0.1〜5U/mLである。なお、Uとは酵素活性の単位を示し、至適条件下、温度30℃で毎分1マイクロモルの基質を変化させることができる酵素量を示す。
架橋促進剤(B)として酵素(B1)を用いる場合、特にペルオキシダーゼおよび/またはカタラーゼを用いる場合、過酸化物(B2)を更に用いることが好ましい。すなわち、酵素(B1)と過酸化物(B2)との組み合わせが好ましい。
過酸化物(B2)としては、例えば、過酸化水素が挙げられる。
本発明の組成物において、過酸化物(B2)の量は、変性多糖(A)中のヒドロキシアリール基1モルに対して、通常、0.01〜1000モル、好ましくは0.1〜500モル、より好ましくは0.5〜200モルである。また、一実施態様において、本発明の組成物中の過酸化物(B2)の量は、反応性の点から、好ましくは0.1〜10mM、より好ましくは0.5〜5mMである。
変性多糖(A)が架橋性基(a1)として不飽和二重結合含有基を有する場合の架橋促進剤(B)としては、例えば、ラジカル重合開始剤(B3)が挙げられる。ラジカル重合開始剤(B3)としては、例えば、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、ビイミダゾール化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、ベンゾイン化合物、及びベンゾフェノン化合物等の光ラジカル重合開始剤;過酸化物、アゾ化合物等の熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。
ラジカル重合開始剤(B3)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物において、ラジカル重合開始剤(B3)の量は、変性多糖(A)100質量部に対して、通常、1〜100質量部である。
<多糖(C)>
多糖(C)は、カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖であり、例えば、アルギン酸、ペクチンおよびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種が好ましい。ただし、前記(C)からは、前述した変性多糖(A)を除く。カルボキシル基の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。
アルギン酸およびペクチンの誘導体としては、例えば、塩またはエステルが挙げられる。前記塩としては、例えば、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。前記エステルとしては、例えば、アルキルエステル、アルケニルエステル、アルキニルエステル、アリールエステル、アリールアルキルエステル、アルカノイルオキシアルキルエステル、アルコキシカルボニルオキシアルキルエステルが挙げられる。金属塩、アンモニウム塩およびエステルは、例えばアルギン酸およびペクチンが有するカルボキシル基の、前記塩およびエステルである。
なお、多糖(C)は、相互侵入高分子網目構造型ゲルを形成する観点から、変性多糖(A)と同一の架橋性基、例えばヒドロキシアリール基を、有さないことが好ましい。
多糖(C)の多角度光散乱検出器を用いた絶対分子量測定による数平均分子量は、通常、10,000〜10,000,000、好ましくは20,000〜5,000,000、より好ましくは50,000〜2,000,000である。また、多糖(C)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量;いずれも前記絶対分子量測定による)は、通常、1〜20、好ましくは1.5〜10、より好ましくは2〜8である。
多糖(C)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物中の多糖(C)の含有量は、変性多糖(A)1gに対して、通常、0.01〜2g、好ましくは0.05〜1g、より好ましくは0.1〜0.4gである。このような態様であると、ゲルの機械的強度および取扱い性の観点から好ましい。
<金属塩(D)>
本発明の組成物は、金属塩(D)をさらに含有することが好ましい。ただし、金属塩(D)からは、前述した変性多糖(A)および多糖(C)を除く。金属塩(D)は、多糖(C)の架橋剤として作用する。
金属塩(D)としては、多価金属の塩が好ましく、周期表第2族金属塩がより好ましく、アルカリ土類金属の塩がさらに好ましい。多価金属カチオンとしては、例えば、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、Cu2+等の二価金属カチオン、Al3+、Fe3+等の三価金属カチオンが挙げられる。金属塩(D)は、多価金属のハロゲン化物、硫酸塩および硝酸塩が好ましく、例えば、CaCl2、MgCl2、CaSO4、BaCl2、AlCl3、Fe(NO33が挙げられる。
金属塩(D)は1種または2種以上用いることができる。
本発明の組成物中の金属塩(D)または多価金属カチオンの含有割合は、多糖(C)のカルボキシル基およびその塩の合計1モルに対して、通常、0.01〜1000モル、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは1〜50モルである。このような態様であると、ゲルの機械的強度および取扱い性の観点から好ましい。
<水(E)>
本発明の組成物は、水(E)を含有することが好ましい。
本発明の組成物中の水(E)の含有量は、通常、50〜99.9質量%、好ましくは65〜99質量%、より好ましくは80〜96質量%である。このような態様であると、ゲルの機械的強度および取扱い性に優れる傾向にある。
<その他の成分>
本発明の組成物は、ゲルの用途に応じた機能発現物質を含有してもよい。これにより、得られるゲル中に機能発現物質を含ませることができる。機能発現物質としては、例えば、薬剤、細胞、および細胞増殖因子が挙げられる。機能発現物質を含有するゲルは、医学用器具等の幅広い分野で用いることができる。
本発明の組成物は、前述した変性多糖(A)および多糖(C)以外の多糖をさらに含有してもよい。この多糖としては、例えば、<変性多糖(A)>の欄に記載した多糖(a)が挙げられる。
<組成物の態様>
本発明の組成物の一実施態様は、多液型溶液キットである。
本発明の溶液キットの一態様は、多糖(C)を含み、変性多糖(A)および架橋促進剤(B)のいずれかを含むが両方は含まない第1の溶液と、前述の変性多糖(A)および架橋促進剤(B)のうち第1の溶液中で含まれない方を含む第2の溶液と、金属塩(D)を含む第3の溶液とを有する。第1〜第3の溶液は、それぞれ水溶液であることが好ましい。
あるいは、本発明の溶液キットの一態様は、変性多糖(A)および多糖(C)を含み、酵素(B1)および過酸化物(B2)のいずれかを含むが両方は含まない第11の溶液と、前述の酵素(B1)および過酸化物(B2)のうち第11の溶液中で含まれない方を含む第21の溶液と、金属塩(D)を含む第31の溶液とを有する。第11〜第31の溶液は、それぞれ水溶液であることが好ましい。
それぞれの溶液は、例えば、マイクロチューブや、特表2014−501570号公報に記載のトリプルシリンジなどを用いて、例えばゲル形成の直前や治療の直前に3液を混合する。
本発明の組成物は、以下に説明するゲルの原料組成物として好適に用いることができる。また、本発明の組成物は、例えば、変形性関節症の治療に用いられる関節腔内の潤滑剤や、損傷被覆材として用いることができる。変形性関節症は膝、肩、股、腰、足首、手首、および指などの体の各関節に発生しうるが、本発明の組成物はいずれの関節にも適用しうる。
[ゲル]
本発明のゲルは、第1の網目状構造と第2の網目状構造とが、相互に絡み合った状態で存在する構造を有するゲルであり、いわゆる相互侵入高分子網目構造型ゲル(IPNゲル)である。
網目状構造とは、例えば、高分子同士を架橋することにより得られた、三次元に張り巡らされた網の目のような構造を有する架橋構造を意味する。
第1の網目状構造は、架橋性基として、ヒドロキシアリール基または不飽和二重結合含有基を有する変性多糖(A)が架橋して形成された網目状構造である。一実施態様では、変性多糖(A)のヒドロキシアリール基を酵素(B1)の存在下で過酸化物(B2)と反応させると、フェノール性水酸基において水素原子が引き抜かれてフリーラジカル種となり、これが異性化してオルト位置の炭素上に不対電子が存在するフリーラジカル種となり、次に2つのフリーラジカル種が結合して、続いてエノール化することにより、網目状構造(架橋構造)が形成されると考えられる。
第2の網目状構造は、カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)と、金属カチオン(D')とにより形成される網目状構造である。多糖(C)は、カルシウムカチオン等の金属カチオンにより架橋する性質がある。したがって、多糖(C)と金属カチオン(D')とにより、網目状構造(架橋構造)が形成されると考えられる。金属カチオン(D')は、好ましくは、前述した金属塩(D)に由来する金属カチオンである。
第1の網目状構造と第2の網目状構造とを含むIPNゲルの形成時に硬化収縮が小さいことから、前記IPNゲルは、取扱い性に優れている。また、前記IPNは、高い機械的強度を有する。このため、患者の患部に応じた形状を有し、患部への定着率が高く、かつ機械的強度に優れた、前記IPNゲルからなる医療用器具を、容易に作製することができる。
本発明のゲルの形状は特に限定されず、円柱状、円筒状、円盤状、球状、角型状、楕円状、繊維状、および棒状等、ゲルを適用する対象の形状に即した形状に形成することができる。
一実施態様において、前記ゲルは、水分を通常、50〜99.9質量%、好ましくは70〜96質量%含有するハイドロゲルである。ハイドロゲルは、相互侵入高分子網目構造中に水を保持する。前記ハイドロゲルは、第1の網目状構造(高分子)と第2の網目状構造(高分子)とを合計で、通常、50〜0.1質量%、好ましくは30〜4質量%含有する。前記ハイドロゲルは、機械的強度および柔軟性に優れる。
本発明のハイドロゲルは、例えば圧縮弾性率、破断応力および破断歪が大きく、機械的強度に優れている。これらの物性は、実施例に記載する測定方法により算出した値である。
本発明のハイドロゲルは、人工軟骨に用いる場合、その硬化収縮率は10%以下が好ましい。硬化収縮率は、実施例に記載する測定方法により算出した値である。
本発明のハイドロゲルは、後述する製造方法により得ることができる。また、前記ハイドロゲルを適宜乾燥するなどして水分を除去することにより、キセロゲルを得ることができる。
本発明のゲルおよびハイドロゲルは、例えば、軟骨および骨等の生体組織の一部が損なわれた場合の、人工軟骨および人口骨等として好適に用いることができる。
[ゲルの製造方法]
本発明の相互侵入網目構造型ゲルは、例えば、架橋性基として、ヒドロキシアリール基または不飽和二重結合含有基を有する変性多糖(A)と、変性多糖(A)の架橋促進剤(B)と、カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)とを含有する組成物をゲル化させる工程(以下、「ゲル化工程」ともいう)と、得られたゲルと金属カチオン(D')を含む水溶液とを接触させて、前記ゲルを硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう)とを有する製造方法により得ることができる。
<ゲル化工程>
ゲル化工程は、第1の網目状構造を形成する工程である。多糖(C)存在下に、架橋性基(a1)を有する変性多糖(A)を架橋促進剤(B)により架橋させることで、第1の網目状構造に対して、多糖(C)が絡み合って存在する、セミ相互侵入高分子網目構造型ゲルが形成される。
例えば、多糖(C)を含み、変性多糖(A)および架橋促進剤(B)のいずれかを含むが両方は含まない第1の溶液と、変性多糖(A)および架橋促進剤(B)のうち第1の溶液中で含まれない方を含む第2の溶液とを混合して;あるいは、変性多糖(A)および多糖(C)を含み、酵素(B1)および過酸化物(B2)のいずれかを含むが両方は含まない第11の溶液と、前述の酵素(B1)および過酸化物(B2)のうち第11の溶液中で含まれない方を含む第21の溶液とを混合して、変性多糖(A)を架橋させて、セミ相互侵入高分子網目構造型ゲルを得る。第1、第2、第11、第21の溶液は、いずれも水溶液であることが好ましい。
ゲル化工程は、例えば、前記組成物を生体組織の損傷部に適用し、前記組成物をゲル化させる。生体組織の損傷部としては、例えば、軟骨および骨における欠損部が挙げられる。または、ゲル化工程は、所望の形状のキャビティーを有する金型を用意し、前記組成物の各成分を前記キャビティー中で混合して反応させることにより、前記形状を有するゲル化させる。
ゲルを形成する際の温度は、通常、4〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは20〜40℃であり、その時間は、通常、0.01〜10時間、好ましくは0.1〜5時間である。
<硬化工程>
硬化工程は、第2の網目状構造を形成する工程である。多糖(C)は、第1の網目状構造に対して、絡み合って存在すると考えられ、この状態で多糖(C)を金属カチオン(D')により架橋することで、いわゆる相互侵入高分子網目構造型ゲル(IPNゲル)を形成することができる。
金属カチオン(D')としては、多価金属カチオンが好ましい。金属カチオン(D')を含む水溶液は、例えば、金属塩(D)と水(E)とを混合することで得られる。
硬化工程は、例えば、ゲル化工程で得られたゲルと、金属塩(D)を含む第3または第31の溶液とを接触させて、例えば、前記ゲルを第3または第31の溶液に浸漬して、前記ゲルを硬化させる。第3または第31の溶液は、水溶液であることが好ましい。第3または第31の溶液における金属塩(D)の含有量は、通常、1〜1000mM、好ましくは10〜500mMである。
硬化工程の前記ゲルを第3または第31の溶液に浸漬する際の温度は、通常、4〜70℃、好ましくは10〜50℃であり、その時間は、通常、1〜100時間、好ましくは5〜50時間である。
[成形体および医療用器具]
本発明の成形体は、上述したゲルを含有する。例えば、本発明のゲルが、所望の形状に成形された成形体である。前記成形体において、ゲルの量は、通常、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
本発明の医療用器具は、前記成形体を有する。前記医療用器具は、機械的強度および柔軟性に優れる前記成形体を有することから、医療用器具の中でも特にインプラント材料に好適に用いることができる。インプラント材料としては、例えば、軟骨および骨等の生体組織の一部が損なわれた場合に用いられるインプラント材料が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
<組成物およびハイドロゲルの製造>
[合成例]ヒドロキシフェニル基で変性したデキストラン(A1−1)
フラスコにデキストラン(商品名「デキストラン40」、名糖工業株式会社製)を40g、ジメチルホルムアミド1600ml、および塩化リチウム30.9gを加え、窒素雰囲気下、90℃で90分間撹拌した。攪拌後の溶液を氷冷し、ピリジン9.2mlとクロロギ酸ニトロフェニル23.8gとを加え、0℃で60分間撹拌した。攪拌後の溶液に冷エタノールを2000ml加え、再沈殿を行い、沈殿物を濾過および洗浄し、粗精製物を得た。
フラスコに、前記粗精製物と、ジメチルホルムアミド740mlとを加え、窒素雰囲気下、23℃で30分間撹拌した後に、チラミン9.1gを加え、23℃で180分間撹拌した。攪拌後の溶液に冷エタノール800mlを加え、再沈殿を行い、沈殿物を濾過した後に、純水に溶解させ、透析にて不純物の除去し、ヒドロキシフェニル基で変性したデキストラン(A1−1)の水溶液を得た。
得られたヒドロキシフェニル基で変性したデキストラン(A1−1)を1H NMRにて、置換度(DS)を算出したところ、DS=14であった。
1H NMR(400MHz、D2O):δ 2.75 and 3.05 (m,-CH2-CH2-), 3.3-4.1 (m, dextran glucosidic protons), 4.2-5.6 (s, dextran anomeric protons), and 6.86 and 7.17 (d, tyramine aromatic protons).
[調製例1〜10]変性多糖(A)および多糖(C)の水溶液(多糖類水溶液)
前記ヒドロキシフェニル基で変性したデキストラン(A1−1)の水溶液と、下記表1に示すアルギン酸類水溶液とを、デキストラン(A1−1)とアルギン酸類とが下記表1に示す割合になるよう混合し、純水にて下記表1に示す濃度の多糖水溶液となるよう調製した。
アルギン酸類水溶液の詳細は以下の通りである。
IL−2:株式会社キミカ製アルギン酸ナトリウム、商品名「IL−2」
IL−6:株式会社キミカ製アルギン酸ナトリウム、商品名「IL−6」
IL−6G:株式会社キミカ製アルギン酸ナトリウム、商品名「IL−6G」
IL−6M:株式会社キミカ製アルギン酸ナトリウム、商品名「IL−6M」
ULV−20:株式会社キミカ製アルギン酸ナトリウム、商品名「ULV−20」
Figure 0006939607
[実施例1〜8]組成物およびハイドロゲルの製造
下記表2に示す含有量で、調製例1〜8で調製した多糖水溶液、西洋ワサビペルオキシダーゼ水溶液(濃度:150U/ml)、および純水をマイクロチューブ(直径17mmの円柱状の穴を有するチューブ)に入れ均一に混合し、次いで、ボルテックスミキサーで攪拌しながら、混合液に過酸化水素水(濃度:88.2mM)を一度に入れ、常温で30分間攪拌し、セミ相互侵入高分子網目構造型ゲル(セミIPNゲル)を形成した。
続いて、前記マイクロチューブに塩化カルシウム水溶液(濃度:100mM)を注ぎ、前記セミIPNゲルを23℃で12時間浸漬して、ハイドロゲル(相互侵入高分子網目構造型ゲル)を製造した。前記ハイドロゲルは、円柱状で透明であった。
図1(1)は実施例1のハイドロゲルの写真である。
Figure 0006939607
[比較例1]組成物およびハイドロゲルの製造
調製例9で調製した多糖水溶液600μl、西洋ワサビペルオキシダーゼ水溶液(濃度:150U/ml)6.66μl、および純水359μlをマイクロチューブ(直径17mmの円柱状の穴を有するチューブ)に入れ均一に混合し、次いで、ボルテックスミキサーで攪拌しながら、混合液に過酸化水素水(濃度:88.2mM)34μlを一度に入れ、常温で30分間攪拌し、ハイドロゲル(水分を92.5質量%含有)を製造した。前記ハイドロゲルは、円柱状で透明であった。
図1(2)は比較例1のハイドロゲルの写真である。
[比較例2]組成物およびハイドロゲルの製造
調製例10で調製した多糖水溶液600μlをマイクロチューブ(直径17mmの円柱状の穴を有するチューブ)に入れ、次いで、塩化カルシウム水溶液(濃度:100mM)を注ぎ、ハイドロゲルを製造した。前記ハイドロゲルは、円柱状で表面にシワがあり且つ白色であった。
図1(3)は比較例2のハイドロゲルの写真である。
<評価>
[硬化収縮率]
実施例1〜8、比較例1〜2のハイドロゲルの製造において、ゲル化における硬化収縮率は以下の式にて算出した。評価結果を下記表3に示す。
[(マイクロチューブの穴の直径−ハイドロゲルの直径)/マイクロチューブの穴の直径]×100(%)
[機械的強度]
実施例1〜8、および比較例1〜2のハイドロゲルを、エッグスライサーにて、直径8mm、厚さ6mmの円柱状に切断し、評価用ゲルを準備した。評価用ゲルをインストロン(商品名「33R4204」、インストロン社製)と、ロードセルを用いて、圧縮弾性率、破断応力、破断歪を測定した。圧縮弾性率を10〜15%の応力−歪曲線から算出した。なお、前記圧縮は0.6mm/min(変位一定)で、加重は50Nで行った。評価結果を下記表3に示す。
Figure 0006939607

Claims (11)

  1. 架橋性基として、ヒドロキシアリール基を有する変性多糖(A)と、
    前記変性多糖(A)の架橋促進剤(B)と、
    カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)と
    金属塩(D)と、を含有し、
    前記ヒドロキシアリール基が、ヒドロキシフェニル基であり、
    前記架橋促進剤(B)が、酵素(B1)と過酸化物(B2)との組み合わせであり、
    前記酵素(B1)が西洋わさびペルオキシダーゼであり、
    前記過酸化物(B2)が過酸化水素であり、
    前記多糖(C)が、アルギン酸であり、
    前記金属塩(D)が、塩化カルシウムである、
    ことを特徴とする組成物。
  2. 前記ヒドロキシアリール基を有する変性多糖(A1)が、フェノール性水酸基変性ヒアルロン酸、フェノール性水酸基変性デキストラン、およびフェノール性水酸基変性プルランから選ばれる少なくとも1種である請求項に記載の組成物。
  3. 水(E)をさらに含有する請求項1または2に記載の組成物。
  4. 第1の網目状構造と第2の網目状構造とが、相互に絡み合った状態で存在する構造を有するゲルであり、
    前記第1の網目状構造は、架橋性基として、ヒドロキシアリール基を有する変性多糖(A)が架橋して形成された網目状構造であり、
    前記第2の網目状構造は、カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)と、金属カチオン(D')とにより形成された網目状構造であり、
    前記ヒドロキシアリール基が、ヒドロキシフェニル基であり、
    前記多糖(C)が、アルギン酸であり、
    前記金属カチオン(D')が、カルシウムイオンである、
    ことを特徴とするゲル。
  5. 水分を50〜99.9質量%含有するハイドロゲルである請求項に記載のゲル。
  6. 請求項またはに記載のゲルを50質量%以上含有することを特徴とする成形体。
  7. 請求項に記載の成形体を有することを特徴とする医療用器具。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を生体組織の損傷部に適用し、前記組成物
    をゲル化させる工程と、得られたゲルと金属カチオン(D')を含む水溶液とを接触させて、前記ゲルを硬化させる工程とを有し、
    前記金属カチオン(D')がカルシウムイオンであることを特徴とする、相互侵入網目構造型ゲルの製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物をゲル化させ、得られたゲルと金属カチオン(D')を含む水溶液とを接触させて、前記ゲルを硬化させることによって形成され、前記金属カチオン(D')がカルシウムイオンである、相互侵入網目構造型ゲル。
  10. カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)を含み、ヒドロキシアリール基を有する変性多糖(A)および前記変性多糖(A)の架橋促進剤(B)のいずれかを含むが両方は含まない第1の溶液と、
    前記変性多糖(A)および架橋促進剤(B)のうち第1の溶液中で含まれない方を含む第2の溶液と、
    金属塩(D)を含む第3の溶液と、
    を有し、
    前記ヒドロキシアリール基が、ヒドロキシフェニル基であり、
    前記架橋促進剤(B)が、酵素(B1)と過酸化物(B2)との組み合わせであり、
    前記酵素(B1)が西洋わさびペルオキシダーゼであり、
    前記過酸化物(B2)が過酸化水素であり、
    前記多糖(C)が、アルギン酸であり、
    前記金属塩(D)が、塩化カルシウムである、
    ことを特徴とする溶液キット。
  11. ヒドロキシアリール基を有する変性多糖(A)と、カルボキシル基およびその塩から選ばれる少なくとも1種の基を有する多糖(C)とを含み、酵素(B1)および過酸化物(B2)のいずれかを含むが両方は含まない第11の溶液と、
    前記酵素(B1)および前記過酸化物(B2)のうち第11の溶液中で含まれない方を含む第21の溶液と、
    金属塩(D)を含む第31の溶液と、
    を有し、
    前記前記ヒドロキシアリール基が、ヒドロキシフェニル基であり、
    前記酵素(B1)が、西洋わさびペルオキシダーゼであり、
    前記過酸化物(B2)が、過酸化水素であり、
    前記多糖(C)が、アルギン酸であり、
    前記金属塩(D)が、塩化カルシウムである、
    ことを特徴とする溶液キット。
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