[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態について適宜図面を参照しつつ詳説する。
図1及び図2に示す研磨材1は、基材10と、この基材10の表面側に積層される研磨層20と、上記基材10の裏面側に積層される接着層30とを備える。当該研磨材1は、例えば基板加工のための固定砥粒研磨材として用いられる。
〔基材〕
基材10は、研磨層20を支持するための板状又はシート状の部材である。
基材10の主成分としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アラミド、アルミニウム、銅等が挙げられる。中でも研磨層20との接着性が良好なPET、及びアルミニウムが好ましい。また、基材10の表面に化学処理、コロナ処理、プライマー処理等の接着性を高める処理が行われてもよい。
基材10の形状及び大きさとしては、特に制限されないが、例えば一辺が140mm以上160mm以下の正方形状や外径200mm以上2100mm以下及び内径100mm以上660mm以下の円環状とすることができる。また、平面上に並置した複数の基材10が単一の支持体により支持される構成であってもよい。
基材10の平均厚さとしては、特に制限されないが、基材10の平均厚さの下限としては、50μmが好ましく、100μmがより好ましい。一方、基材10の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、500μmがより好ましい。基材10の平均厚さが上記下限未満であると、当該研磨材1の強度や平坦性が不足するおそれがある。逆に、基材10の平均厚さが上記上限を超えると、当該研磨材1が不要に厚くなり取扱いが困難になるおそれがある。
〔研磨層〕
研磨層20は、複数の研磨部21と、平面視で上記研磨部21を取り囲む充填部22とを有する。また、研磨層20は、研磨部21とこれを取り囲む充填部22との間に溝23を有する。
<研磨部>
複数の研磨部21は、複数の砥粒21a及び第1バインダー21bを含む。研磨部21の平面視形状としては、特に限定されないが、方形状や円形状とできる。また、複数の研磨部21は、規則的なブロックパターン状に配列されている。
(砥粒)
研磨部21の砥粒21aとしては、ダイヤモンド砥粒、アルミナ砥粒、シリカ砥粒、セリア砥粒、シリコンカーバイド砥粒、ボロンカーバイド砥粒等を挙げることができる。
研磨部21における砥粒21aの含有量の下限としては、50体積%が好ましく、60体積%がより好ましい。一方、上記砥粒21aの含有量の上限としては、85体積%が好ましく、80体積%がより好ましい。上記砥粒21aの含有量が上記下限未満であると、相対的に第1バインダー21bの含有量が大きくなるため、砥粒21aが強固に固定され目こぼれし難くなる。このため、研磨部21の表面に露出している砥粒21aの目つぶれが進行し易くなり、研磨レートが低下するおそれがある。逆に、上記砥粒21aの含有量が上記上限を超えると、相対的に第1バインダー21bの含有量が小さくなるため、砥粒21aが目こぼれし易くなる。この目こぼれにより研磨レートが低下するおそれがある。
砥粒21aの平均粒子径は、研磨レートと研磨後の被削体の表面粗さとの観点から適宜選択される。砥粒21aの平均粒子径の下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。一方、砥粒21aの平均粒子径の上限としては、45μmが好ましく、40μmがより好ましい。砥粒21aの平均粒子径が上記下限未満であると、当該研磨材1の研削力が不足し、加工効率が低下するおそれがある。逆に、砥粒21aの平均粒子径が上記上限を超えると、研磨精度が低下するおそれがある。ここで、「平均粒子径」とは、レーザー回折法等により測定された体積基準の累積粒度分布曲線の50%値(50%粒子径、D50)をいう。
研磨部21の複数の砥粒21aは、1種類の砥粒としてもよいが、複数種の砥粒を含むことが好ましい。このように複数の砥粒21aに複数種の砥粒を含めることで、当該研磨材1の製造コストの増加を抑止しつつ、研削力を向上させることができる。
砥粒21aが複数種の砥粒を含む場合、砥粒21aは、ダイヤモンド砥粒を含むことが好ましく、特に砥粒21aがダイヤモンド砥粒とアルミナ砥粒とを含むことが好ましい。ダイヤモンド砥粒は他の砥粒に比べて研削力が高いが高価である。このため、複数種の砥粒の1種をダイヤモンド砥粒とすることで、製造コストの増加を抑止しつつ、研削力をさらに向上できる。また、アルミナ砥粒は比較的安価であるので、砥粒21aにダイヤモンド砥石とアルミナ砥粒とを含ませることで、製造コストの削減効果が高められる。
なお、ダイヤモンド砥粒のダイヤモンドとしては、単結晶でも多結晶でもよく、またNiコーティング等の処理がされたダイヤモンドであってもよい。中でも単結晶ダイヤモンド及び多結晶ダイヤモンドが好ましい。単結晶ダイヤモンドはダイヤモンドの中でも硬質であり研削力が高い。また、多結晶ダイヤモンドは多結晶を構成する微結晶単位で劈開し易く目つぶれが進行し難いので、研磨レートの低下が小さい。
砥粒21aが複数種の砥粒を含み、かつその1種がダイヤモンド砥粒である場合、研磨部21におけるダイヤモンド砥粒の含有量の下限としては、1体積%が好ましく、2体積%がより好ましい。一方、上記ダイヤモンド砥粒の含有量の上限としては、20体積%が好ましく、8体積%がより好ましい。上記ダイヤモンド砥粒の含有量が上記下限未満であると、当該研磨材1の研削力が不足するおそれがある。逆に、上記ダイヤモンド砥粒の含有量が上記上限を超えると、当該研磨材1の製造コストの削減効果が不十分となるおそれがある。
また、砥粒21aが複数種の砥粒を含み、かつその1種がダイヤモンド砥粒である場合、ダイヤモンド砥粒の平均粒子径は、ダイヤモンド砥粒を除く他の砥粒の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。ダイヤモンド砥粒を除く他の砥粒の平均粒子径に対するダイヤモンド砥粒の平均粒子径の比の下限としては、1.3が好ましく、1.5がより好ましい。一方、上記平均粒子径の比の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。上記平均粒子径の比が上記下限未満であると、ダイヤモンド砥粒以外の砥粒に加わる研磨圧力が大きくなり、研削力の高いダイヤモンド砥粒にかかる研磨圧力が相対的に小さくなる。このため、研磨レートが低下するおそれがある。逆に、上記平均粒子径の比が上記上限を超えると、ダイヤモンド砥粒以外の砥粒の目こぼれが発生し過ぎるため、この目こぼれにより研磨部21の摩耗が早く進み、当該研磨材1の寿命が短くなるおそれがある。
(第1バインダー)
研磨部21の第1バインダー21bの主成分としては、特に限定されないが、樹脂又は無機物が挙げられる。
上記樹脂としては、ポリウレタン、ポリフェノール、エポキシ、ポリエステル、セルロース、エチレン共重合体、ポリビニルアセタール、ポリアクリル、アクリルエステル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド等の樹脂を挙げることができる。なお、上記樹脂は、少なくとも一部が架橋していてもよい。
また、上記無機物としては、ケイ酸塩、リン酸塩、多価金属アルコキシド等を挙げることができる。
第1バインダー21bの主成分は、無機物であるとよい。このように第1バインダー21bの主成分を無機物とすることで、砥粒21aの保持力を高め、砥粒21aの脱粒を抑止できる。このため、研削力がさらに高められる。中でも砥粒保持力が高いケイ酸塩が好ましい。このようなケイ酸塩としてはケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム等を挙げることができる。
なお、第1バインダー21bには、分散剤、カップリング剤、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、着色剤等の各種助剤及び添加剤などを目的に応じて適宜含有させてもよい。
研磨部21の平均厚さの下限としては、25μmが好ましく、30μmがより好ましく、50μmがさらに好ましい。一方、研磨部21の平均厚さの上限としては、4000μmが好ましく、3500μmがより好ましく、3000μmがさらに好ましい。研磨部21の平均厚さが上記下限未満であると、当該研磨材1の耐久性が不足するおそれがある。逆に、研磨部21の平均厚さが上記上限を超えると、複数の研磨部21間の均質性が低下するため、安定した研削力の発揮が困難となるおそれがある。また、当該研磨材1が不要に厚くなり取扱いが困難になるおそれや製造コストが増大するおそれがある。
個々の研磨部21の平均面積の下限としては、1mm2が好ましく、2mm2がより好ましい。一方、上記研磨部21の平均面積の上限としては、150mm2が好ましく、130mm2がより好ましい。上記研磨部21の平均面積が上記下限未満であると、研磨部21が基材10から剥離するおそれがある。逆に、上記研磨部21の平均面積が上記上限を超えると、研磨時に被削体に接触する研磨部21の個数が少なくなる。例えば被削体の周縁が研磨部21上に位置する場合と溝23上に位置する場合とでは被削体と研磨部21との接触面積に差異が生じることがあるが、被削体に接触する研磨部21の個数が少なくなると、この差異が大きくなり易い。このため、研磨時に個々の砥粒21aにかかる研磨圧力が変動し易くなり、研磨精度が低下するおそれがある。
研磨層20における研磨部21の占有面積率の下限としては、3%が好ましく、4%がより好ましい。一方、上記研磨部21の占有面積率の上限としては、16%が好ましく、10%がより好ましく、9.5%がさらに好ましい。上記研磨部21の占有面積率が上記下限未満であると、研磨時に研磨部21にかかる研磨圧力が高まり過ぎ、砥粒21aが脱落し易くなるため、研磨レートが低下するおそれがある。逆に、上記研磨部21の占有面積率が上記上限を超えると、研磨部21の研磨圧力が高められることによる研磨レート改善効果が不十分となるおそれがある。
隣接する研磨部21間の距離(研磨部21の中心間の距離)の下限としては、3mmが好ましく、5mmがより好ましい。一方、上記研磨部21間の距離の上限としては、50mmが好ましく、40mmがより好ましい。上記研磨部21間の距離が上記下限未満であると、個々の研磨部21の面積を、基材10からの剥離を抑止しつつ小さくすることが困難となるため、研磨部21の占有面積率を十分に下げることができず、研磨レート改善効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記研磨部21間の距離が上記上限を超えると、研磨部21の占有面積率が下がり過ぎ、研磨部21の摩耗が早く進み、当該研磨材1の寿命が短くなるおそれがある。
研磨層20の表面側から測定した研磨部21のアスカーD硬度の下限としては、80°が好ましく、85°がより好ましく、90°がさらに好ましい。上記研磨部21のアスカーD硬度が上記下限未満であると、研磨部21に研磨圧力が十分に加わらず、研磨レートが低下するおそれがある。一方、上記研磨部21のアスカーD硬度の上限としては、特に限定されないが、研磨部21のアスカーD硬度は通常100°以下である。なお、研磨部21の硬度は、主に研磨部21の砥粒21aの含有量及び第1バインダー21bの種類により制御することができる。また、砥粒21aが複数種の砥粒を含む場合は、複数種の砥粒間の平均粒子径の比及び含有量の比で制御することもできる。
テーバー摩耗試験における研磨部21の摩耗量の下限としては、0.05gが好ましく、0.08gがより好ましい。一方、上記研磨部21の摩耗量の上限としては、0.15gが好ましく、0.13gがより好ましい。上記研磨部21の摩耗量が上記下限未満であると、砥粒21aが目こぼれし難くなる。このため、研磨部21の表面に露出している砥粒21aの目つぶれが進行し易くなり、研磨レートが低下するおそれがある。逆に、上記研磨部21の摩耗量が上記上限を超えると、当該研磨材1の寿命が短くなるおそれがある。ここで「テーバー摩耗試験における摩耗量」は、試験片(平均直径104mm、平均厚さ300μm)を用意し、テーバー摩耗試験機を用いて摩耗輪H−18、荷重4.9N(500gf)の条件で上記試験片を320回転し、320回転前後の試験片の質量差を測定した値である。
<充填部>
充填部22は、複数のフィラー粒子22a及び第2バインダー22bを含む。充填部22の平面視形状としては、研磨部21を取り囲む限り特に限定されないが、図1の研磨材1では、充填部22は格子状であり、格子により形成される空隙の内側に研磨部21が1つずつ包含されている。上記格子の空隙の中心は、研磨部21の中心と一致することが好ましい。
(フィラー粒子)
充填部22のフィラー粒子22aとしては、アクリルやウレタン等の樹脂ビーズ、アルミナ、シリカ、グリーンカーボナイト、酸化セリウム、酸化マグネシウム、ジルコニア、酸化チタンなどを挙げることができる。
充填部22におけるフィラー粒子22aの含有量の下限としては、50体積%が好ましく、55体積%がより好ましく、75体積%がさらに好ましい。一方、上記フィラー粒子22aの含有量は、90体積%未満が好ましく、88体積%未満がより好ましい。上記フィラー粒子22aの含有量が上記下限未満であると、相対的に第2バインダー22bの含有量が大きくなるため、充填部22の硬度が高まり易くなる。このため、充填部22にも研磨圧力が加わるようになり、研磨部21の研磨圧力が低下するため、研磨レートが低下するおそれがある。逆に、上記フィラー粒子22aの含有量が上記上限以上であると、充填部22が崩壊し易くなり、充填部22の形成が困難となるおそれがある。
フィラー粒子22aの平均粒子径は、充填部22の硬度の観点から適宜選択される。フィラー粒子22aの平均粒子径の下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、フィラー粒子22aの平均粒子径の上限としては、40μmが好ましく、35μmがより好ましい。フィラー粒子22aの平均粒子径が上記下限未満であると、充填部22が摩耗し易くなり、研磨が進むにつれ、研磨部21の表面と充填部22の表面との間に段差が生じ易くなる。このため、被削体が基材10側へ傾くことを充填部22によって抑止できず、被削体の溝23等への落ち込みによる損傷の抑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、フィラー粒子22aの平均粒子径が上記上限を超えると、充填部22の硬度の制御性が低下するおそれがある。
なお、充填部22の複数のフィラー粒子22aは、1種類のフィラー粒子としてもよいが、複数種のフィラー粒子を含めてもよい。複数のフィラー粒子を含めることで、硬度の制御性を高めることができる。
(第2バインダー)
充填部22の第2バインダー22bの主成分としては、特に限定されないが、樹脂又は無機物が挙げられる。上記樹脂及び無機物としては、第1バインダー21bと同様のものが挙げられる。
第2バインダー22bの主成分としては、樹脂であるとよく、特に第1バインダー21bの主成分を無機物とし、第2バインダー22bの主成分を樹脂とすることが好ましい。このように第1バインダー21bの主成分を無機物とし、第2バインダー22bの主成分を樹脂とすることで、充填部22のアスカーD硬度に対する研磨部21のアスカーD硬度の比を容易に0.8以下に調整することができる。中でも、硬度の制御性の観点から、第2バインダー22bの主成分としては、エポキシ及びポリアクリルが好ましい。
第2バインダー22bの主成分を樹脂とする場合、硬化剤を含有させるとよい。硬化剤を用いることで、充填部22の硬度の制御性がさらに高められる。
なお、第2バインダー22bには、分散剤、カップリング剤、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、着色剤等の各種助剤及び添加剤などを目的に応じて適宜含有させてもよい。
充填部22の平均厚さは、研磨部21の平均厚さと同様とできるが、充填部22の平均厚さは、研磨部21の平均厚さ以下であることが好ましい。充填部22の平均厚さが研磨部21の平均厚さを超えると、研磨部21に研磨圧力が十分に加わらず、研磨レートが低下するおそれがある。
研磨部21と充填部22との平均厚さの差の上限としては、100μmが好ましく、60μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。上記平均厚さの差が上記上限を超えると、被削体の溝23等への落ち込みによる損傷の抑止効果が不十分となるおそれがある。一方、上記平均厚さの差の下限としては、特に限定されず、0μmであってもよい。
研磨層20における充填部22の占有面積率の下限としては、25%が好ましく、30%がより好ましく、35%がさらに好ましい。上記充填部22の占有面積率が上記下限未満であると、被削体の溝23等への落ち込みによる損傷の抑止効果が不十分となるおそれや、研磨部21の占有面積率を十分に下げることができないため研磨部21に研磨圧力が十分に加わらず、研磨レートが低下するおそれがある。一方、上記充填部22の占有面積率の上限としては、特に限定されず、充填部22は研磨部21を除く全面積を占有してもよい。なお、充填部22が研磨部21を除く全面積を占有する場合、当該研磨材1は、溝23を有さない構成となる。
研磨層20における研磨部21と充填部22との占有面積率の和の下限としては、30%が好ましく、35%がより好ましく、40%がさらに好ましい。上記占有面積率の和が上記下限未満であると、被削体の溝23等への落ち込みによる損傷の抑止効果が不十分となるおそれがある。一方、上記占有面積率の和の上限は特に限定されず、100%であってもよい。
充填部22の格子の平均幅は、研磨部21の中心間距離や充填部22の占有面積率等に応じて適宜決定される。充填部22の格子の平均幅の下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。一方、充填部22の格子の平均幅の上限としては、20mmが好ましく、15mmがより好ましい。充填部22の格子の平均幅が上記下限未満であると、研磨時の被削体との接触により充填部22が損傷するおそれがある。逆に、充填部22の格子の平均幅が上記上限を超えると、研磨部21の中心間距離が大きくなり過ぎるため、研磨ムラが発生し易くなるおそれがある。
研磨層20の表面側から測定した充填部22のアスカーD硬度の上限としては、75°が好ましく、70°がより好ましい。上記充填部22のアスカーD硬度が上記上限を超えると、研磨部21に研磨圧力が十分に加わらず、研磨レートが低下するおそれがある。一方、上記充填部22のアスカーD硬度の下限としては、特に限定されないが、上記充填部22のアスカーD硬度は通常55°以上である。
上記研磨層20の表面側から測定した研磨部21のアスカーD硬度に対する充填部22のアスカーD硬度の比の上限としては、0.8であり、0.77がより好ましく、0.75がさらに好ましい。上記硬度比が上記上限を超えると、研磨部21に研磨圧力が十分に加わらず、研磨レートが低下するおそれがある。一方、上記硬度比の下限としては、特に限定されないが、上記硬度比は通常0.6以上である。
テーバー摩耗試験における充填部22の摩耗量は、研磨部21の摩耗量と同等であることが好ましい。具体的には、テーバー摩耗試験における研磨部21の摩耗量に対する充填部22の摩耗量の比の下限としては、0.99が好ましく、1がより好ましい。一方、上記摩耗量の比の上限としては、1.05が好ましく、1.03がより好ましい。上記摩耗量の比が上記下限未満であると、研磨が進むにつれ、充填部22の表面が研磨部21の表面よりも高くなり、研磨部21に研磨圧力が十分に加わらず、研磨レートが低下するおそれがある。逆に、上記摩耗量の比が上記上限を超えると、研磨が進むにつれ、充填部22の表面と研磨部21の表面との間に充填部22の表面を低高さとする段差が生じ、被削体の溝等への落ち込みによる損傷の抑止効果が不十分となるおそれがある。
<溝>
溝23は、研磨部21と充填部22との間に研磨部21を取り囲むように帯状に配設されている。また、上記溝23の底面は、基材10の表面で構成されている。当該研磨材1は、この溝23により研削屑が研磨部21の表面から除去され、目詰まりを生じ難くすることができる。
溝23の平均幅の上限としては、10mmが好ましく、8mmがより好ましい。溝23の平均幅が上記上限を超えると、研磨時に被削体が溝23に落ち込み易くなるため、被削体に傷が生じるおそれがある。一方、溝23の平均幅の下限としては、特に限定されず、0mm、すなわち当該研磨材1が溝23を有さない構成であってもよい。
〔接着層〕
接着層30は、当該研磨材1を支持し研磨装置に装着するための支持体に当該研磨材1を固定する層である。
この接着層30に用いられる接着剤としては、特に限定されないが、例えば反応型接着剤、瞬間接着剤、ホットメルト接着剤、貼り替え可能な接着剤である粘着剤等を挙げることができる。
この接着層30に用いられる接着剤としては、粘着剤が好ましい。接着層30に用いられる接着剤として粘着剤を用いることで、支持体から当該研磨材1を剥がして貼り替えることができるため当該研磨材1及び支持体の再利用が容易になる。このような粘着剤としては、特に限定されないが、例えばアクリル系粘着剤、アクリル−ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ブチルゴム系等の合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤等が挙げられる。
接着層30の平均厚さの下限としては、0.05mmが好ましく、0.1mmがより好ましい。また、接着層30の平均厚さの上限としては、0.3mmが好ましく、0.2mmがより好ましい。接着層30の平均厚さが上記下限未満である場合、接着力が不足し、当該研磨材1が支持体から剥離するおそれがある。一方、接着層30の平均厚さが上記上限を超える場合、例えば接着層30の厚みのため当該研磨材1を所望する形状に切る際に支障をきたすなど、作業性が低下するおそれがある。
〔研磨材の製造方法〕
当該研磨材1は、研磨部用組成物を準備する工程と、充填部用組成物を準備する工程と、研磨部21を研磨部用組成物の印刷により形成する工程と、充填部22を充填部用組成物の印刷により形成する工程と、基材10の裏面側に接着層30を積層する工程とにより製造できる。
まず、研磨部用組成物準備工程において、研磨部用組成物(研磨部21の砥粒21a及び第1バインダー21bの形成材料)を溶剤に分散させた溶液を塗工液として準備する。上記溶剤としては、第1バインダー21bの形成材料が可溶であれば特に限定されない。具体的には、メチルエチルケトン(MEK)、イソホロン、テルピネオール、Nメチルピロリドン、シクロヘキサノン、プロピレンカーボネート等を用いることができる。塗工液の粘度や流動性を制御するために、水、アルコール、ケトン、酢酸エステル、芳香族化合物等の希釈剤などを添加してもよい。
次に、充填部用組成物準備工程において、研磨部用組成物準備工程の塗工液と同様にして、充填部用組成物(充填部22のフィラー粒子22a及び第2バインダー22bの形成材料)を溶剤に分散させた溶液を塗工液として準備する。なお、この充填部用組成物準備工程は、研磨部用組成物準備工程の前、又は研磨部形成工程の後に行ってもよい。
次に、研磨部形成工程において、上記研磨部用組成物準備工程で準備した塗工液を用い、基材10表面に印刷法により複数の研磨部21を形成する。具体的には、この研磨部21の反転形状に対応する形状を有するマスクを用意し、このマスクを介して上記塗工液を印刷する。この印刷方式としては、例えばスクリーン印刷、メタルマスク印刷等を用いることができる。
この印刷した塗工液を加熱脱水及び加熱硬化させることで研磨部21を形成する。具体的には、上記塗工液を室温(25℃)で乾燥及び加熱脱水させた後、加熱硬化させて、研磨部21を形成する。
次に、充填部形成工程において、上記充填部用組成物準備工程で準備した塗工液を用い、印刷法により研磨部21を取り囲む充填部22を形成する。具体的には、この充填部22の反転形状に対応する形状を有するマスクを用意し、このマスクを介して上記塗工液を印刷する。この印刷方式としては、例えばスキージ印刷、バーコーター印刷、アプリケーター印刷等を用いることができる。なお、充填部形成工程は、上記研磨部形成工程の前や、研磨部形成工程と同時に行うこともできる。
この印刷した塗工液を加熱硬化させることで充填部22を形成する。具体的には、上記塗工液を加熱硬化させて、充填部22を形成する。
最後に、接着層積層工程において、基材10の裏面側に接着層30を積層する。具体的には、例えば予め形成されたテープ状の接着層30を基材10の裏面に貼り付ける。
〔利点〕
当該研磨材1は、充填部22が研磨部21を取り囲むので、研磨部21の面積を小さくしても、研磨時に被削体の端部が研磨部21間を移動する際、被削体が基材10側へ傾くことを充填部22によって抑止できる。従って、当該研磨材1は、被削体の溝23等への落ち込みによる損傷を抑止できる。また、当該研磨材1は、研磨部21のアスカーD硬度に対する充填部22のアスカーD硬度の比を0.8以下とするので、研磨時に加えられる研磨荷重を主として研磨部21が受けるため、研磨部21の研磨圧力が高められ、これにより当該研磨材1の研削力が高められる。
また、当該研磨材1は、研磨部21とこれを取り囲む充填部22との間に溝23を有する。このように溝23を配設すると、同じ面積占有率であっても研磨部21に隣接して隙間なく充填部22を配設する場合に比べて、溝23の幅が狭くなる。従って、当該研磨材1は、被削体の溝23等への落ち込みによる損傷をさらに効果的に抑止できる。
[第二実施形態]
以下、本発明の第二実施形態について適宜図面を参照しつつ詳説する。
図3及び図4に示す研磨材2は、基材10と、この基材10の表面側に積層される研磨層20と、上記基材10の裏面側に積層される接着層30とを備える。
当該研磨材2の研磨層20は、複数の研磨部21と、平面視で上記研磨部21を取り囲む複数の充填部24とを有する。また、複数の充填部24は互いに独立し、溝25により区分されている。充填部24は、それぞれ1つの研磨部21を取り囲み、研磨部21と充填部24とは、その間に隙間がない。つまり、研磨部21と充填部24とにより凸状部が構成されている。
当該研磨材2は、充填部24及び溝25の平面視形状以外は、図1に示す研磨材1と同様であるので、図1の研磨材1と同符号を付して説明を省略する。以下、充填部24及び溝25の形状について説明する。
<充填部>
充填部24は、フィラー粒子24a及び第2バインダー24bを含む。充填部24は、研磨部21の全周を帯状に取り囲み、その内周が研磨部21の周と一致する。つまり、充填部24の内周により構成される形状は、研磨部21の平面視形状と同じ形状である。また、充填部24の外周により構成される形状(凸状部の平面視形状)としては、特に限定されないが、図3のように研磨部21と重心が一致し、かつ相似な形状とすることができる。
フィラー粒子24a及び第2バインダー24bは、図1に示す研磨材1と同様とできるので、説明を省略する。
研磨層20における充填部24の平均厚さ、及び研磨部21と充填部22との平均厚さの差は、図1に示す研磨材1と同様とできる。なお、当該研磨材2においては、研磨部21と充填部24とは、図4に示すように表面が面一で段差がないことが特に好ましい。
研磨層20における充填部24の占有面積率、及び研磨部21と充填部24との占有面積率の和は、図1に示す研磨材1と同様とできるので、説明を省略する。
研磨部21を帯状に取り囲む充填部24の平均幅は、研磨部21や充填部24の占有面積率等に応じて適宜決定される。充填部24の平均幅の下限としては、2mmが好ましく、3mmがより好ましい。一方、充填部24平均幅の上限としては、20mmが好ましく、15mmがより好ましい。充填部24の平均幅が上記下限未満であると、相対的に研磨部21の面積が大きくなるため、研磨部21加わる研磨圧力が低下し易く、研磨レートが低下するおそれがある。逆に、充填部24の平均幅が上記上限を超えると、研磨部21の中心間距離が大きくなり過ぎるため、研磨ムラが発生し易くなるおそれがある。
研磨層20の表面側から測定した充填部24のアスカーD硬度、及び研磨部21のアスカーD硬度に対する充填部24のアスカーD硬度の比は、図1に示す研磨材1と同様とできるので、説明を省略する。
<溝>
溝25は、研磨層20の表面に等間隔の格子状に配設されている。また、上記溝25の底面は、基材10の表面で構成されている。
溝25の平均幅は、図1に示す研磨材1と同様とできる。なお、図1に示す研磨材1と同様に当該研磨材2も溝25を有さない構成であってもよい。
〔研磨材の製造方法〕
当該研磨材2は、研磨部用組成物を準備する工程と、充填部用組成物を準備する工程と、研磨部21を研磨部用組成物の印刷により形成する工程と、充填部22を充填部用組成物の印刷により形成する工程と、基材10の裏面側に接着層30を積層する工程とにより製造できる。各工程は、図1に示す研磨材1と同様であるので、詳細説明を省略する。
〔利点〕
当該研磨材2は、研磨部21と充填部24とにより凸状部が構成されている。このため、研磨部とこれを取り囲む充填部との間に溝を設ける構成よりも研磨部21及び充填部24が剥離し難い。従って、当該研磨材2に高い研磨圧力を加えることができるので、研削力をさらに向上することができる。
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
上記実施形態では、複数の研磨部がブロックパターン状に規則的に配列されている場合を説明したが、複数の研磨部の配列はこれに限定されない。例えば複数の研磨部は、直交するX方向とY方向とで異なる間隔で配列されていてもよい。この場合、充填部は、研磨部の配列に合わせて、これを取り囲むように構成される。
上記第一実施形態では充填部の内周により構成される形状が研磨部と相似な形状であり、第二実施形態では充填部の外周により構成される形状が研磨部と相似な形状である場合を説明したが、これらの形状は研磨部と相似な形状に限定されない。例えば図5に示すように、第二実施形態において研磨部21を円形状とし、充填部24の外周により構成される形状を方形状とすることもできる。
上記第一実施形態では、充填部が1つの研磨部を取り囲む場合を説明したが、図6に示す研磨材3のように充填部22が複数の研磨部21を取り囲んでもよい。
また、充填部は、研磨部の全周を取り囲まなくともよく、図7に示すように一部に切り欠きがあってもよい。なお、被削体の切り欠き等への落ち込みによる損傷抑止の観点から、研磨部21の全周において充填部24と対向する部分の長さは90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
さらに、図9に示すように当該研磨材4は裏面側の接着層30を介して積層される支持体40及びその支持体40の裏面側に積層される第2接着層31を備えてもよい。当該研磨材4が支持体40を備えることにより、当該研磨材4の取扱いが容易となる。
支持体40の主成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性を有する樹脂やポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチックを挙げることができる。支持体40の主成分にこのような材料を用いることにより支持体40が可撓性を有し、当該研磨材4が被削体の表面形状に追従し、研磨面と被削体とが接触し易くなるため研磨レートがさらに向上する。
支持体40の平均厚さとしては、例えば0.5mm以上3mm以下とすることができる。支持体40の平均厚さが上記下限未満であると、当該研磨材4の強度が不足するおそれがある。一方、支持体40の平均厚さが上記上限を超えると、支持体40を研磨装置に取り付け難くなるおそれや支持体40の可撓性が不足するおそれがある。
第2接着層31は、接着層30と同様の接着剤を用いることができる。また、第2接着層31は、接着層30と同様の平均厚さとできる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、当該発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ダイヤモンド砥粒(ランズ社製の「LS605FN」、55質量%ニッケルコーティング処理ダイヤモンド、平均粒子径35μm)、アルミナ砥粒(太平洋ランダム株式会社製の「LA1200」、電融アルミナ、平均粒子径12μm)、及びバインダーとしてのケイ酸塩(富士化学株式会社製の「3号ケイ酸ソーダ」)を混合し、ダイヤモンド砥粒の研磨部における含有量が5体積%及びアルミナ砥粒の研磨部における含有量が71体積%となるよう調製し、研磨部用組成物の塗工液を得た。
また、フィラー粒子としてのアルミナ(株式会社フジミインコーポレッド社製の「WA#1000」、白色アルミナ、平均粒子径12μm)と、バインダーとしてのエポキシ(株式会社スリーボンドホールディングスの「TB2022」)、及びエポキシ硬化剤(株式会社スリーボンドホールディングスの「TB2105C」)とを混合し、アルミナの充填部における含有量が85体積%となるよう調製し、充填部用組成物の塗工液を得た。
基材として平均厚さ300μmのアルミニウム板を用意し、上記研磨部用組成物の塗工液を用いて、この基材の表面に複数の研磨部を印刷により形成した。上記複数の研磨部は規則的に配列されたブロックパターン状であり、隣接する研磨部の中心間の距離は10mmである。なお、印刷には、研磨部の反転形状に対応するパターンを有するマスクを用いた。個々の研磨部は、面積9mm2(平面視で1辺3mmの正方形状)とし、研磨部の平均厚さを500μmとした。なお、研磨部の研磨層における面積占有率は9%である。
なお、塗工液は、室温(25℃)で乾燥及び加熱脱水させた後、加熱硬化させた。
また、基材を支持し研磨装置に固定する支持体として平均厚さ1mmの硬質塩化ビニル樹脂板を用い、上記基材の裏面と上記支持体の表面とを平均厚さ130μmの粘着剤で貼り合わせた。上記粘着剤としては、両面テープ(積水化学株式会社の「#5605HGD」)を用いた。
次に、上記充填部用組成物の塗工液を用いて、研磨部を取り囲むように充填部を印刷により形成した。充填部は、図1に示す研磨材1のように格子状とした。格子の平均間隔は10mmとし、格子の平均幅は2mmとした。なお、印刷には、充填部の反転形状に対応するパターンを有するマスクを用いた。充填部の平均厚さは研磨部の平均厚さと同値とした。充填部の研磨層における面積占有率は36%、研磨層における研磨部及び充填部の面積占有率は45%とした。なお、研磨層の残部の55%は溝であり、上記溝は平均幅2.5mmで研磨部21を帯状に取り囲む。
なお、塗工液は、加熱乾燥させた。このようにして実施例1の研磨材を得た。
[実施例2]
フィラー粒子としての樹脂ビーズ(根上工業株式会社製の「アートパールGS−350T」、アクリルビーズ、平均粒子径30μm)と、バインダーとしてのエポキシ(株式会社スリーボンドホールディングスの「TB2022」)、及びエポキシ硬化剤(株式会社スリーボンドホールディングスの「TB2105C」)とを混合し、樹脂ビーズの充填部における含有量が65体積%となるよう調製し、充填部用組成物の塗工液を得た。
上記充填用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の研磨材を得た。
[実施例3]
樹脂ビーズの充填部における含有量を85体積%とした以外は、実施例2と同様にして実施例3の研磨材を得た。
[実施例4]
アルミナの充填部における含有量を55体積%とした以外は、実施例1と同様にして実施例4の研磨材を得た。
[実施例5]
充填部の研磨層における面積占有率を91%とした以外は、実施例3と同様にして実施例5の研磨材を得た。なお、実施例5の研磨材は溝を有さない。
[実施例6]
フィラー粒子としてシリカ(デンカ株式会社製「FB12D」、溶融球状シリカ、平均粒子径11.2μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例5の研磨材を得た。
[実施例7]
フィラー粒子としてのアルミナ(株式会社フジミインコーポレッド社製の「WA#1000」、白色アルミナ、平均粒子径12μm)と、バインダーとしてのアクリル(三菱レイヨン株式会社の「ダイヤナールBR−80」)とを混合し、アルミナの充填部における含有量が65体積%となるよう調製し、充填部用組成物の塗工液を得た。
上記充填用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例7の研磨材を得た。
[実施例8]
充填部用組成物のバインダーとしてケイ酸塩(富士化学株式会社製の「3号ケイ酸ソーダ」)を用いた以外は、実施例3と同様にして実施例8の研磨材を得た。
[比較例1]
フィラー粒子としてのグリーンカーボナイト(株式会社フジミインコーポレッド社製の「GC#400」、平均粒子径30μm)及びアルミナ(株式会社フジミインコーポレッド社製の「WA#1000」、白色アルミナ、平均粒子径12μm)と、バインダーとしてのケイ酸塩(富士化学株式会社製の「3号ケイ酸ソーダ」)とを混合し、グリーンカーボナイトの充填部における含有量が40体積%、アルミナの充填部における含有量が30体積%となるよう調製し、充填部用組成物の塗工液を得た。
上記充填用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の研磨材を得た。
[比較例2]
樹脂ビーズの充填部における含有量を90体積%とした以外は、実施例2と同様にして比較例2の研磨材を得た。
[比較例3]
樹脂ビーズの充填部における含有量を45体積%とした以外は、実施例2と同様にして比較例3の研磨材を得た。
[比較例4]
フィラー粒子としてグリーンカーボナイト(株式会社フジミインコーポレッド社製の「GC#400」、平均粒子径30μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例4の研磨材を得た。
[研磨条件]
上記実施例1〜8及び比較例1〜4で得られた研磨材を用いて、サファイア基板の研磨を行った。上記サファイア基板には、直径5.08cm、比重3.97のc面のサファイア基板を用いた。上記研磨には、公知の両面研磨機を用いた。両面研磨機のキャリアは、厚さ0.4mmのエポキシガラスである。研磨は、研磨圧力を200g/cm2とし、上定盤回転数−25rpm、下定盤回転数50rpm及びSUNギア回転数8rpmの条件で行った。その際、クーラントとして、出光興産株式会社の「ダフニーカットGS50K」を毎分30cc供給した。
[評価方法]
実施例1〜8及び比較例1〜4の研磨材について、研磨層の表面側から測定した研磨部及び充填部のアスカーD硬度と、研磨レートとの測定を行った。結果を表1に示す。
<硬度の測定>
研磨前の研磨材を用いて研磨部及び充填部のアスカーD硬度を測定した。具体的には、研磨材を接着層を介して支持体に固定した状態でJIS−K−6253:2012に準拠してアスカーDゴム硬度計(高分子計器社製の「D型」)を用いて、研磨層の表面側から測定した。測定は、研磨部及び充填部それぞれについて、任意の10か所を測定し、その平均値を求めた。
<研磨レート>
研磨レートについて、サファイア基板の研磨を10分間行い、研磨前後の基板の重量変化(g)を、基板の表面積(cm2)、基板の比重(g/cm3)及び研磨時間(分)で除し、単位をμm/分に換算して算出した。
表1において、硬化剤及び2段目のフィラー粒子の「−」は、それぞれ硬化剤及び複数のフィラー粒子を使用していないことを意味する。また、硬度及び研磨レートの「−」は、充填部が崩壊により形成できず、測定できなかったことを意味する。
表1の結果から、実施例1〜7の研磨材は、比較例1〜4の研磨材に比べて研磨レートが高いことが分かる。また、研磨層の表面側から測定した研磨部のアスカーD硬度に対する充填部のアスカーD硬度の比と、研磨レートとの関係を見ると(図9)、上記硬度比が0.8以下で劇的に研磨レートが改善することが分かる。従って、比較例1〜4の研磨材では、上記硬度比が0.8を超えるため、研磨部の研磨圧力が高まらず、研磨レートが低かったと考えられる。
以上から、研磨材の研磨層が研磨部と平面視で上記研磨部を取り囲む充填部とを有し、上記研磨層の表面側から測定した研磨部のアスカーD硬度に対する充填部のアスカーD硬度の比が0.8以下とすることで、被削体の溝等への落ち込みによる損傷を抑止しつつ、高い加工効率を達成できることが分かる。