JP6933613B2 - 温度分布計測装置及び温度分布計測方法 - Google Patents
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Description
応力分布計測においては、温度画像の解析を行う際に、ロックイン処理を用いてノイズを除去して温度変動値を算出するロックイン解析法、あるいは、フーリエ変換処理を用いてノイズを除去して温度変動値を算出する方法(例えば、特許文献2参照)等が適用されている。
ここでロックイン解析法は、繰り返し応力の周波数に基づく同期検波処理を行うものであり、繰り返し応力の周波数とは無相関のノイズを抑えて、応力変動による温度変動値を算出することができる。さらに、求めた温度変動値に熱弾性係数を乗算し応力変動値に換算することで、繰り返し作用する応力に対する応力変動の幅を算出することができる。
本発明は、上記未解決の問題に着目してなされたものであり、ランダムに発生する温度変動分布を的確に解析することの可能な、温度分布計測装置及び温度分布計測方法を提供することを目的としている。
なお、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかである。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
まず、本発明の第一実施形態を説明する。
なお、記憶装置13と記憶装置17とは共通の記憶装置で構成してもよい。
画像処理装置16は、切り出した部分温度データ毎にロックイン解析法を用いて応力分布解析を行い、解析結果を表示装置に表示する。
そのため、本実施形態においては、前者の課題に対しては、画像処理装置16では、ユーザによる入力装置での操作により設定された、周波数固定ロックイン法と自己相関ロックイン法とのいずれかの方法を用いて参照信号を作成し、作成した参照信号を用いてロックイン処理を行うことで対応する。
周波数固定ロックイン法とは、周波数一定の正弦波信号と余弦波信号とを参照信号として用いる方法であり、特定周波数でのフーリエ変換と同一の処理である。つまり、正弦波によるサイン変換と余弦波によるコサイン変換により、振幅値から応力変動幅を、位相値から応力変動の正負を解析するものである。被計測物に生じる応力変動が正弦波状でありその変動周期が一定と予測されるときに有効な方法である。周波数固定ロックイン法は、後述の自己相関ロックイン法のように参照エリアを設定する必要がない、参照信号にノイズが含まれない、応力変動の位相(正負)を判断することができる、応力変動の位相の異なる部材が混在していても解析できる、等の利点があるが、同一の被計測物において部位ごとの応力変動の周波数が大きく異ならないこと、応力変動が正弦波状であること、等が求められる。
ただし、短時間フーリエ変換の場合には、基本的に周波数情報を取り出すことを目的とするため、複数の周波数の基底関数を用いて変換することが必要であったり、窓関数により短時間に切り出した基底関数が広がりを持つ周波数特性が問題となったりする。つまり、窓幅を狭めることで時間分解能を高めた分、周波数分解能が低下する。しかしながら、周波数固定ロックイン法は、非定常の温度変化、又は非定常の応力変化を計測するという点では、後述の図11に示すように、周波数分解能の低下に伴い広がりを持つ周波数特性が逆に有利に働き、厳密に決定しなくても一つの周波数で解析が可能になるという特徴がある。
記憶装置17に格納されているデータベースは、例えば表1に示すように、測定対象である被計測物を特定する情報と、測定対象毎の切り出し窓幅、解析ステップ及び解析周波数等を含む。
画像処理装置16では、被計測物がデータベースに登録されている場合には、登録された切り出し窓幅、解析ステップ、解析周波数を用いて応力分布解析を行う。また、被計測物がデータベースに登録されていないとき、また、ユーザの操作により入力装置からこれらパラメータの値が入力設定されたときには、設定された各種パラメータ値を用いて応力分布解析を行う。
応力分布計測装置1aでは、赤外線カメラ11により予め設定されたフレームレートで被計測物を撮影し(ステップS1)、温度画像データ取得装置12は、赤外線カメラ11で撮影した温度画像データを記憶装置13に時系列に格納する(ステップS2)。
画像処理装置16は、記憶装置13に格納された時系列温度データを読み込み(ステップS11)、画像処理装置16の入力装置により、ロックイン解析法として周波数固定ロックイン法と自己相関ロックイン法のいずれかが設定されると(ステップS12)、周波数固定ロックイン法が設定されたときにはステップS21に移行し、自己相関ロックイン法が設定されたときにはステップS31に移行する。
一方、被計測物がデータベースに登録されていなければ(ステップS22)、画像処理装置16は、入力装置により設定された切り出し窓幅、解析ステップ及び解析周波数を、応力分布解析用のパラメータ値として設定する(ステップS24 特許請求の範囲のパラメータ設定部、解析周波数設定部に対応)。なお、ここでいう応力分布解析用のパラメータ値は、後述するように、実際には温度分布解析用のパラメータ値である。
そして、切り出した部分温度データそれぞれについて周波数固定ロックイン法を用いて解析を行い、温度変動分布の振幅及び位相を求める。そして、求めた温度変動分布の振幅に熱弾性係数を乗算することで、応力変動分布の振幅に換算し、これによって温度変動分布を応力変動分布に変換する。応力変動の正負は、位相によって判断する(ステップS26 特許請求の範囲に記載の解析部に対応)。具体的には、温度分布解析用のパラメータ値として設定された解析周波数の正弦波信号と余弦波信号とを参照信号として、切り出した部分温度データ信号との同期検波処理を行う。このとき、入力装置からパラメータ値が再度設定されたならばステップS24からステップS26の処理を再度行い、例えば確定操作が行われたとき、このときのパラメータ値を応力分布解析用のパラメータ値としてデータベースに記憶する。さらに、部分温度データ毎の周波数固定ロックイン法による温度分布解析結果について、振幅を温度変動値とし、位相から温度変動の正負を判断する。
そして、記憶した温度分布解析用のパラメータ値を用いて、一つの画素の温度分布解析を行い、温度分布解析の結果、つまり、温度変動分布に基づき応力変動分布を取得し、一つの画素に対する応力分布解析が終了したならば、次の画素について同様に処理を行う。そして、全ての画素について応力分布解析を行ったならば、次の部分温度データについて同様に応力分布解析を行い。全ての部分温度データについて応力分布解析を行ったならば、ステップS27に移行し、解析結果の表示処理を行う。
一方、被計測物がデータベースに登録されていなければ(ステップS32)、画像処理装置16は、入力装置により設定された切り出し窓幅及び解析ステップを、応力分布解析用のパラメータ値、つまり、温度分布解析用のパラメータ値として設定する(ステップS34 特許請求の範囲のパラメータ設定部に対応)。
そして、部分温度データ毎に、ロックイン処理において参照信号として用いる温度データを設定する(ステップS36)。すなわち、部分温度データ内の任意領域(以後、参照エリアともいう。)の温度変化を求め、参照エリア内画素の平均の温度変化を正規化することで参照信号とする。参照信号は部分温度データごとに求めるが、参照エリアは同一の領域とする。有効な参照信号を得るためには、応力が集中している領域を参照エリアとすることが望ましい。
具体的には、参照エリア内の温度データから求めた参照信号に基づき、切り出した部分温度データ信号との同期検波処理を行う。このとき、入力装置から応力分布解析用のパラメータ値が再度設定されたならばステップS34からステップS37の処理を再度行う。また、参照エリアが再度設定されたならば、ステップS35からステップS37の処理を再度行う。そして、例えば確定操作が行われたとき、このときの切り出し窓幅及び解析ステップの値を応力分布解析用のパラメータ値として被計測物と対応付けてデータベースに記憶する。さらに、部分温度データ毎の同期検波処理結果を応力変動値とする。
ステップS27の解析結果の表示処理は、例えば、図6に示すように、赤外線カメラ11による温度画像における各画素について同一時点における部分温度データから得た、各画素の応力変動値からなる応力変動値画像を、応力変動値の大きさに応じて表示形態を変える等して、応力分布を表す解析結果として表示装置に表示する。図6に示すように、各部分温度データから得た応力変動値画像を時系列に表示することによって、応力変化の有無や、応力変化が生じている箇所、及び応力値の大きさを検出することができる。なお、図6は、被計測物としての鉄板に、負荷として鉄球を落下させた場合の応力分布の一例を示す。
まず、応力分布計測装置1aにより、被計測物の温度画像データを取得する。ユーザは、被計測物の応力分布計測の対象領域が視野内に含まれるように、赤外線カメラ11を固定する。そして、赤外線カメラ11により予め設定したフレームレートで所定期間継続して撮影を行い、所定期間分の温度画像データを得る。この温度画像データは温度画像データ取得装置12を介して記憶装置13に時系列に格納される。
ユーザは少なくとも記憶装置13を、応力分布計測装置1bが設置されている場所に持ち帰り、応力分布計測装置1bにより解析を行う。まず、記憶装置13の時系列の温度画像データを画像処理装置16に取り込む。
周波数固定ロックイン法の場合には、ユーザは被計測物を特定する情報を入力し、初めて解析を行う被計測物であるものとすると、切り出し窓幅、解析ステップ、解析周波数を入力設定する。
画像処理装置16は、記憶装置13から温度画像データを読み込むと、設定された解析ステップだけ切り出し領域をずらしながら、設定された切り出し窓幅で切り出して、部分温度データを得る。
そして、設定された解析周波数を参照信号として部分温度データの同期検波処理を行う。ここで、解析周波数や、切り出し窓幅、解析ステップを調整する。
この被計測物に対して、別の時点で取得した温度画像データに対して応力分布解析を行う場合には、データベースに記憶されている被計測物のパラメータを読み出し、読み出した切り出し窓幅、解析ステップで温度画像データから検出した時系列温度データから部分温度データを切り出し、部分温度データに対して読み出した解析周波数を用いて応力分布解析を行い、得られた解析画像を表示する。
一方、参照エリアの測定温度そのものを参照信号とするときには、ユーザは、解析法として自己相関ロックイン法を指定し、被計測物を特定する情報を入力し、初めて解析を行う被計測物である場合は、切り出し窓幅、解析ステップを設定する。
そして、ユーザによって設定される参照エリアの温度データをもとに参照信号を作成し、部分温度データ毎に参照信号と部分温度データとの同期検波処理を行う。この場合も、切り出し窓幅、解析ステップを調整し、良好な部分温度データを切り出すことの可能なパラメータを探索する。そして、良好な部分温度データを切り出すことができたとみなすことができるときの、部分温度データを用いて、応力分布解析を行い、解析画像を表示装置に表示する。
なお、上記第一実施形態において、衝撃的な応力を検出対象とする場合には、その衝撃応力によって測定対象物の位置が、赤外線カメラ11の視野からぶれる可能性がある。そのため、より精度の高い応力分布解析を行うためには、応力分布解析を行う前に、位置ぶれを補正するようにしてもよい。
また、上記第一実施形態において、例えば、損傷検出時等、応力変動の有無を検知する目的であれば、切り出した部分温度データ全てに対して応力分布解析を行わずとも、何れかの時点の部分温度データにおいて、しきい値以上の温度差が得られた時点で、損傷ありと判断するようにしてもよい。また、複数又は一つの部分温度データにおいて、しきい値以上の温度差が複数回得られた時点で損傷ありと判断するようにしてもよい。
第二実施形態に係る応力分布計測装置は、図1に示す応力計測時の応力分布計測装置1aにおいて、応力計測時の処理手順が異なる。また、応力分布計測装置1aにおいて、温度画像データ取得装置12は、マウスやキーボード等の入力装置を備える。
第一実施形態に係る応力分布計測装置では、赤外線カメラ11により温度画像データを取得して記憶装置13に時系列に格納し、記憶装置13に格納した時系列の温度画像データをもとに、応力分布解析時の応力分布計測装置1bで、応力分布の解析を行っている。この第一実施形態に係る応力分布の計測方法を「通常ロックイン法」と呼ぶこととし、リアルタイムで応力分布を取得する計測方法を「リアルタイムロックイン法」と呼ぶこととすると、第二実施形態に係る応力分布計測装置では、応力分布の計測を、通常ロックイン法と、リアルタイムで応力分布を取得するリアルタイムロックイン法とのいずれかの方法で計測できるようになっている。
そこで、リアルタイムロックイン法では、同期検波処理を行う代りに、デジタルフィルタとしてバンドパスフィルタ処理を行うことで、処理時間の短縮を図り、リアルタイムでの応力変動解析を可能にしている。バンドパスフィルタとしては、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いる。さらに、予め温度変動に同期した外部信号を測定し、瞬時周波数を求めることで、バンドパスフィルタのパラメータの最適化を図る。
したがって、温度画像データの取得間隔を0.01秒とすると、温度画像データの取得間隔のタイミングで温度画像データから応力変動画像を十分得ることができる。そのため、温度画像データとともに応力変動画像を同時にリアルタイムで表示することが可能になる。
a0=1+α
a1=−2×cos(ω)
a2=1−α
b0=α
b1=0
b2=−α
なお、ω=2.0×π×中心周波数/サンプリングレート
α
=sin(ω)×sinh{(log(2)/2)×帯域幅×ω/sin(ω)}
……(1)
出力画像=(b0/a0)×入力画像
+(b1/a0)×1つ前の入力画像
+(b2/a0)×2つ前の入力画像
−(a1/a0)×1つ前の出力画像
−(a2/a0)×2つ前の出力画像
……(2)
このように、リアルタイムロックイン法を用いることで、簡易的な応力変動画像を得ることができる。
そこで、第二実施形態に係る応力分布計測装置では、応力分布の計測を、通常ロックイン法と、リアルタイムロックイン法とのいずれの方法で行うかを選択可能に構成し、簡易的ではあるがリアルタイムでの応力分布の計測と、リアルタイムでの演算処理は困難ではあるがより詳細な応力分布を得ることのできる通常ロックイン法を用いた応力分布の計測とを、切り替え可能としている。
なお、ここでは、測定対象の被計測物として、橋梁に適用した場合について説明するが、橋梁に限るものではない。
応力分布計測装置1aでは、温度画像データ取得装置12の入力装置により、ロックイン解析法として通常ロックイン法とリアルタイムロックイン法とのいずれかが設定されると(ステップS41 特許請求の範囲に記載の選択部に対応)、通常ロックイン法が設定されたときには、ステップS42に移行し、図4に示す第一実施形態に係る応力計測時の処理手順と同様の処理を行い、通常ロックイン法による計測処理を行って温度画像データを記憶装置13に格納する。
このように、上記第二実施形態では、ロックイン解析法として、通常ロックイン法とリアルタイムロックイン法とをユーザが選択できるようになっている。そのため、例えば、被計測物が橋梁等、足場の悪い場所である場合等には、リアルタイムロックイン法を選択することによって、温度画像データを取得しつつその場で、応力変動画像を表示することができる。そのため、被計測物に亀裂等が生じているか否かをその場で判定することができ、使い勝手を向上させることができる。
第三実施形態に係る応力分布計測装置は、第二実施形態において、ロックイン解析法としてリアルタイムロックイン法のみを備えたものである。この場合には、赤外線カメラ11から入力される温度画像データを記憶しなくともよいため、図9に示すように、応力分布計測装置21は、赤外線カメラ11と、赤外線カメラ11からの温度画像データの取得及びフィルタ処理を行う演算処理装置22と、を備えていればよい。なお、図9は、試験片23を被計測物とした場合を示している。
なお、上記第二及び第三実施形態において、リアルタイムロックイン法では、リアルタイムで応力変動画像を取得するようにしているが、所定時間分の連続した温度画像データを一旦記憶装置に格納し、記憶装置に格納した連続した温度画像データに対してバンドパスフィルタ処理を行うことによって、簡易的な応力変動画像を取得するようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、被計測物として例えば、橋梁やクレーンやアンローダ等の大型の荷役機械等に適用することが可能である。
[実施例1]
本発明の第一実施形態に係る応力分布計測装置1aを用いて、応力分布を計測した。ここでは、図10に示すように、被計測物として鉄板Lを用い、この鉄板Lに負荷として鉄球Mを落下させることで衝撃応力を発生させた。
鉄板Lの大きさは、700mm×100mm、厚みは1mmとし、反射の影響を軽減するため、黒色スプレーで黒体化処理を施して赤外線放射率を向上させた。
鉄球Mは直径30mmであり、電磁石Nで高さ200mmの位置に保持しており、電磁石NをOFFとすることで鉄球Mを鉄板Lに自由落下させた。
そして、赤外線カメラ11により、鉄板Lの、鉄球Mの落下する面とは逆側の面を撮影した。赤外線カメラ11は、鉄球Mの落下位置が、温度画像のほぼ中央部となるように配置した。
また、赤外線カメラ11は、冷却型(素子InSb)を用いた。赤外線カメラ11の温度画像の画素数は、640×512画素である。
そして、図10に示す鉄球Mを落下させたときの温度画像データを記憶装置13(図示せず)に時系列に記憶し、次に、応力分布計測装置1bにより応力分布解析を行った。
なお、位置補正演算は、基準となる画像に対する四隅に貼った反射テープ位置のずれ量を、画像相関演算によって求めることで行った。
切り出しの窓幅は約31msec(12フレーム)とした。自己相関の参照エリアは矩形とし、鉄球Mの落下位置である画像の中央部(X方向:276画素以上422画素以下、Y方向:213画素以上337画素以下)に設定した。切り出し窓の解析ステップは1フレーム毎(2.8msec)とした。
次に、周波数固定ロックイン法を適用した。周波数固定ロックイン法は、ロックイン解析の参照信号の周波数を予め決めておく方法である。
切り出しの窓幅は約31msec(12点)とし、解析の周波数は約22Hz(約45msec、17フレーム)とした。切り出し窓の解析ステップは1フレーム毎(2.8msec)とした。
すなわち、窓幅(時間分解能)と周波数分解能とは相反する関係にあり、一方を向上させようとすると、他方が低下する。つまり、時間分解能を向上させると(窓幅を狭めると)周波数分解能が低下し、時間分解能を低下させると(窓幅を広げると)、周波数分解能が向上する。
周波数固定ロックイン法を用いた場合も、自己相関ロックイン法を適用した場合と同様に、応力変動画像の中央部の鉄球Mの衝突位置で、応力変動が大きいと解析されていることが確認できた。
第一に、自己相関ロックイン法では参照エリアとの相関演算に基づくため、作用する応力の正負を判断できないが、周波数固定ロックイン法では、作用する応力の正負が解析できる。そのため、周波数固定ロックイン法では、鉄板L全体に作用する応力を正しく評価することができる。
第二に、自己相関ロックイン法では、応力が作用するエリアが狭い場合や、応力の位相が反転するエリアが隣接する場合(引張と圧縮の作用するエリアが隣接する場合)、参照エリアを適切に設定しないと有効にロックイン演算が行えないことがある。
次に、本発明の第三実施形態に係る応力分布計測装置21を用いて、応力分布を計測した。
ここでは、図9に示すように、被計測物として疲労亀裂つき試験片23を用い、疲労試験器24により、試験片23を繰り返し3点曲げすることで、亀裂先端部に応力を発生させ、応力変動に伴う温度変動を測定した。
試験片23は、SS材であり、大きさは55mm×12mm、厚みは6mmとした。反射の影響を軽減するため、黒色スプレーで黒体化処理を施して赤外線放射率を向上させた。
撮影フレームレートは97Hzとし、露光時間は2000μsec.とした。
試験片23へ、繰り返し周波数0.3Hzで、1500kNの荷重を与えた。3点曲げの支点のスパンは50mmとした。
バンドパスフィルタには、IIRフィルタの一種である双二次フィルタを用いた。フィルタ係数は(1)式に示す通りであり、バンドパスフィルタのフィルタ処理は(2)式に示す通りである。なお、中心周波数(カットオフ周波数)は0.3Hz、サンプリングレートは97Hz、帯域幅は中心周波数を中心として2Hzとした。
図12(b)は亀裂先端が圧縮されている時、つまり試験器の荷重は除荷側であるときの応力変動画像であり、亀裂先端で温度が増加していることがわかる。図13(b)は亀裂先端が引っ張り状態である時、つまり試験器の荷重は負荷側であるときの応力変動画像であり、亀裂先端で温度が低下していることがわかる。
例えば、リアルタイムロックイン法による解析結果は、図12及び図13に示すように、赤外線カメラ11により取得した温度画像と応力変動画像とを並べて表示装置に表示するようにしてもよく、また、別途可視カメラで撮影した可視画像と、応力変動画像とを並べて表示することで、応力変動画像が実際にどの領域を撮影しているのかを認識しやすくするようにしてもよく、これらのいずれかを選択的に表示可能に構成してもよい。
また、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
11 赤外線カメラ
12 温度画像データ取得装置
13 記憶装置
16 画像処理装置
17 記憶装置
21 応力分布計測装置
22 演算処理装置
23 試験片
24 疲労試験器
L 鉄板
M 鉄球
Claims (16)
- 被計測物を撮影するカメラと、
当該カメラで所定期間撮影した前記被計測物の温度画像データから一定期間の温度データを、一定の解析ステップずつ時間方向にずらして切り出して部分温度データを生成する切り出し処理部と、
前記切り出し処理部で切り出した部分温度データ毎に参照信号を用いて同期検波処理を行い、当該同期検波処理後の解析結果に基づき、前記一定期間毎の温度変動の分布を検出する解析部と、を備えることを特徴とする温度分布計測装置。 - 前記参照信号は、予め設定された解析周波数の正弦波信号及び余弦波信号のうちの少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の温度分布計測装置。
- 前記参照信号は、前記温度データのうち前記カメラで撮影された前記被計測物の温度画像において予め設定された領域における、所定期間の温度データに基づくことを特徴とする請求項1に記載の温度分布計測装置。
- 前記一定期間の期間幅と、前記解析ステップのステップ幅の少なくとも一方を設定するパラメータ設定部を備え、
前記切り出し処理部は、前記パラメータ設定部で設定された設定値を用いて前記部分温度データを生成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の温度分布計測装置。 - 前記解析周波数を設定する解析周波数設定部を備え、
前記解析部は、前記解析周波数設定部で設定された周波数の前記参照信号を用いて前記同期検波処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の温度分布計測装置。 - 前記パラメータ設定部で設定された設定値を、前記被計測物と対応付けて記憶する記憶部を備え、
前記切り出し処理部は、前記記憶部に記憶されている被計測物について前記温度データから前記部分温度データを切り出すときには、前記記憶部に記憶されている前記設定値を用いて切り出すことを特徴とする請求項4に記載の温度分布計測装置。 - 前記解析周波数設定部で設定された解析周波数設定値を、前記被計測物と対応付けて記憶する記憶部を備え、
前記解析部は、前記記憶部に記憶されている被計測物について前記同期検波処理を行うときには、前記記憶部に記憶されている前記解析周波数設定値を用いて同期検波処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の温度分布計測装置。 - 前記解析部は、前記温度変動を応力変動に変換することで、前記温度変動の分布から応力変動の分布を計測するようになっている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の温度分布計測装置。
- 前記カメラで撮影した前記被計測物の温度画像データに対してバンドパスフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、
当該フィルタ処理部での処理後の温度画像データで表される画像を、温度変動の分布を表す画像として表示装置に表示する表示処理部と、
前記解析部により前記温度変動の分布を検出する第一の検出処理と、前記フィルタ処理部で前記バンドパスフィルタ処理を行うことにより前記温度変動の分布を検出する第二の検出処理と、のうちのいずれかを選択する選択部と、
を備え、
前記選択部で選択された検出処理により前記温度変動の分布を検出することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の温度分布計測装置。 - 前記フィルタ処理部は、前記カメラから前記温度画像データが入力される毎に前記バンドパスフィルタ処理を行い、
前記表示処理部は、前記フィルタ処理部で前記バンドパスフィルタ処理が行われる毎に、処理後の温度画像データで表される画像を表示することを特徴とする請求項9に記載の温度分布計測装置。 - 被計測物を撮影するカメラと、
当該カメラで撮影した前記被計測物の温度画像データに対して時間領域でバンドパスフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、
当該フィルタ処理部での処理後の温度画像データで表される画像を、温度変動の分布を表す画像として表示装置に表示する表示処理部と、
を備え、
前記フィルタ処理部は、前記カメラから前記温度画像データが入力される毎に前記バンドパスフィルタ処理を行い、
前記表示処理部は、前記フィルタ処理部で前記バンドパスフィルタ処理が行われる毎に、処理後の温度画像データで表される画像を表示することを特徴とする温度分布計測装置。 - 前記バンドパスフィルタ処理における中心周波数は選択可能であることを特徴する請求項9又は請求項11に記載の温度分布計測装置。
- 前記フィルタ処理部は、IIRフィルタを用いて前記バンドパスフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の温度分布計測装置。
- 前記表示処理部は、前記温度変動を応力変動に変換することで、前記温度変動の分布から応力変動の分布を計測して表示するようになっている請求項9から請求項13のいずれか一項に記載の温度分布計測装置。
- カメラにより所定期間被計測物を撮影した温度画像データから一定期間の温度データを時間方向に一定の解析ステップずつずらして切り出して部分温度データを生成し、
当該部分温度データ毎に参照信号を用いて同期検波処理を行い、
同期検波処理後の解析結果に基づき前記一定期間毎の温度変動の分布を検出することを特徴とする温度分布計測方法。 - カメラにより被計測物を撮影した温度画像データに対して、当該温度画像データが取得される毎に時間領域でバンドパスフィルタ処理を行い、
前記バンドパスフィルタ処理が行われる毎に、当該バンドパスフィルタ処理後の温度画像データで表される画像を温度変動の分布を表す画像として表示することを特徴とする温度分布計測方法。
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