以下、本発明の実施の形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<一般的な技術に関する説明>
<1.第1の実施の形態>
<2.第2の実施の形態>
<3.第3の実施の形態>
<4.第4の実施の形態>
<5.第5の実施の形態>
<6.第6の実施の形態>
<7.第7の実施の形態>
<8.第8の実施の形態>
<9.変形例>
以下に説明する実施の形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施の形態等に限定されるものではない。
<一般的な技術に関する説明>
始めに、本発明の理解を容易とするために、一般的な技術について説明する。二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池の放電終止電圧と劣化の進行との間には相関関係があることが知られている。図1は、その相関関係を説明するための図である。図1における横軸はサイクル数を示し、縦軸はリチウムイオン二次電池の内部インピーダンスを示している。なお、充電及び放電を1回ずつ行うことを1サイクルとした。また、図1に示す例では、正極にニッケル系正極材(NCA正極剤)を、負極にシリコンを使用したリチウムイオン二次電池を10セル直列に接続したものにより電池部を構成した。
図1に示すように、放電終止電圧を28V(単セル当たり2.8V)より高い値、例えば30V(単セル当たり3.0V)に設定した場合には、サイクル数の増加に対する内部インピーダンスの増加が抑制されている。即ち、放電終止電圧を高くすることにより、電池部の劣化を抑制できることがわかる。
一方で、上述したように、電池部が低温の際に、電圧ドロップにより放電終止電圧を早く検出してしまい、その結果、放電容量を確保できなくなるという問題があった。かかる問題について、図2を参照して説明する。
図2に示すグラフの横軸は放電容量を示し、縦軸は電圧を示す。グラフにおけるラインL1〜L7は、温度毎のリチウムイオン二次電池の放電温度特性を示している。ラインL1は、温度が60℃の場合のリチウムイオン二次電池の放電温度特性を示している。ラインL2は、温度が45℃の場合のリチウムイオン二次電池の放電温度特性を示している。ラインL3は、温度が23℃の場合のリチウムイオン二次電池の放電温度特性を示している。ラインL4は、温度が0℃の場合のリチウムイオン二次電池の放電温度特性を示している。ラインL5は、温度が−10℃の場合のリチウムイオン二次電池の放電温度特性を示している。ラインL6は、温度が−15℃の場合のリチウムイオン二次電池の放電温度特性を示している。ラインL7は、温度が−20℃の場合のリチウムイオン二次電池の放電温度特性を示している。
図2に示すグラフからもわかるように、リチウムイオン二次電池は、低温でハイレート(大電流)放電、例えば定格最大負荷が接続された場合に初期の電圧(例えば、満充電電圧4.2V)から電圧ドロップが大きくなる特性がある。その後、リチウムイオン二次電池の発熱に伴って電池セルの温度が上昇し、電圧が回復する。
かかるリチウムイオン二次電池の特性を考慮した場合に、例えば電池部の温度が−20℃のときに電池部の劣化を抑制するために放電終止電圧を3.0Vに設定してしまうと、電圧ドロップによって電池セルの電圧が放電終止電圧3.0Vを下回ってしまう。このため、電池部の容量に余裕がある場合でも放電が行われないという問題が生じる。以上を踏まえ、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<1.第1の実施の形態>
[電池パックの回路構成例]
第1の実施の形態は、本発明を電池パックに適用した例である。図3は、第1の実施の形態にかかる電池パック(電池パック1)の回路構成例を示す。電池パック1は、例えば、電池部101と、MPU(Micro Processing Unit)102と、充電制御FET(Field Effect Transistor)103aと、放電制御FET103bと、保護回路104と、サーミスタ等の温度素子105と、不揮発性メモリ106とを有している。電池部101の正極側からは、電力ラインPL1を介して端子t1が導出されている。また、電池部101の負極側からは、電力ラインPL2を介して端子t2が導出されている。
電池部101は、例えば単セル当たりの満充電電圧が4.2Vのリチウムイオン二次電池により構成されている。本実施の形態では、電池部101は、10個の電池セル(電池セル101a)が直列に接続された構成を有しており、満充電電圧は42V程度となる。なお、図2では電池セル101aの図示を簡略化して2個の電池セル101aのみを示している。なお、電池部101の構成は一例に過ぎず、複数の電池セルを並列に接続した構成でも良いし、電池セルが並列に接続されたユニットをさらに直列に接続した直並列接続の構成であっても良い。
MPU102は、例えば、マルチプレクサ102aと、FET制御部102bと、電流測定部102cと、電圧測定部102dと、温度測定部102eと、制御部102fと、タイマ102gとを有している。
マルチプレクサ102aは、電圧を測定する対象の電池セル101aを選択する。電池部101全体の電圧が測定対象として選択されても良い。選択した電池セル101aの電圧が電圧測定部102dに供給され、電圧測定部102dによって電圧が検出される。
FET制御部102bは、充電制御FET103a及び放電制御FET103bのオン/オフを制御する。
電流測定部102cは、例えば電力ラインPL2に設けられた電流検出抵抗107を用いて電池部101に流れる電流を測定する。
温度測定部102eは、電池部101の近傍に配置された温度素子105により検出される結果に基づいて、電池部101全体若しくは電池セル毎の温度を検出する。本実施の形態では、温度測定部102eは、電池セル毎の温度を検出可能に構成されている。
制御部102fは、例えばCPU(Central Processing Unit)から構成されており、電池パック1の動作を制御する。制御部102fの具体的な動作については後述する。なお、MPU102は、制御部102fが実行するプログラムが格納されるROM(Read Only Memory)や、制御部102fがプログラムを実行する際のワークメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)を有している。図1では、これらのメモリの図示を省略している。
タイマ102gは、クロック回路等から構成されており、制御部102fが動作するためのクロックを提供する。また、タイマ102gは、計時機能やカウント機能を有する。タイマ102gが有する計時機能等により、電池パック1のサイクル数、使用時間(例えば製造された日からの経過期間)、放置時間(未使用状態が継続した時間)等が計測され、その結果が不揮発性メモリ106に記憶される。
MPU102には、クロック端子t3及びデータ端子t4が接続され、これらの端子を介して、MPU102と電池パック1に接続される外部機器との間で通信が行われる。
充電制御FET103a及び放電制御FET103bのドレイン及びソース間には、それぞれ寄生ダイオード103c及び寄生ダイオード103dが接続されている。寄生ダイオード103cは、充電電流に対して逆方向で、放電電流に対して順方向極性を有する。寄生ダイオード103dは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。
充電制御FET103a及び放電制御FET103bのゲートには、FET制御部102bからの制御信号がそれぞれ供給される。充電制御FET103a及び放電制御FET103bは、例えばPチャンネル型であるので、ソース電位よりも所定値以上低いゲート電位によってオン状態となる。
充放電時には、充電制御FET103a及び放電制御FET103bがオン状態とされる。
なお、充電制御FET103a及び放電制御FET103bとしてNチャンネル型のFETが用いられてもよい。Nチャンネル型のFETを用いる場合には、充電制御FET103a及び放電制御FET103bがソース電位よりも所定値以上高いゲート電位によってオン状態となる。
保護回路104は、電池部101若しくは個々の電池セルの電圧を測定し、その測定電圧が所定電圧を越える場合には、ヒューズ104aを溶断する。図1に示す構成では、保護回路104は過電圧時にヒータ抵抗104bに電圧をかけて温度を上昇させることにより、ヒューズ104aを溶断させるものである。保護回路104は、MPU102の制御を受けずにヒューズ104aの溶断を行う。このため、MPU102で何らかの問題が生じ、所定電圧以上となっても充電制御FET103aの制御が行われない場合であっても、電流を遮断することができる。
なお、保護回路104による保護動作とは別に、電池パック1ではMPU102による保護動作が行われる。MPU102は、充電制御FET103a及び放電制御FET103bのそれぞれのゲートに対して制御信号を供給して、充電制御FET103a及び放電制御FET103bのオン/オフを制御することにより、保護動作を行う。これらの保護動作は公知であるので概略的な説明に留める。MPU102は、電圧測定部102dによる測定結果に基づいて、電池部101に過充電や過放電が生じた場合には、充電制御FET103a及び放電制御FET103bを適宜、オン/オフすることにより回路を遮断する。これらの保護動作は、電流測定部102cにより過電流が測定された場合や、温度測定部102eによる測定された温度が閾値より大きい場合等にも行われる。
記憶部の一例である不揮発性メモリ106としては、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)が用いられる。不揮発性メモリ106には、電池部101の使用履歴に関する使用履歴情報や、図2に示したような電池部101の温度毎の放電温度特性、電池パック1の各種設定値等が記憶されている。
[電池セルについて]
次に、電池部101を構成する電池セルについて説明する。図4は、電池セル101aの断面構造の一例を示す断面図である。図4に示すように、電池セル101aは、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶131の内部に、帯状の正極141と帯状の負極142とがセパレータ143を介して巻回された巻回電極体140を有している。電池缶131は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶131の内部には、巻回電極体140を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板132、133がそれぞれ配置されている。
電池缶131の開放端部には、電池蓋134と、この電池蓋134の内側に設けられた安全弁機構135及び熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient:PTC素子)136とが、ガスケット137を介してかしめられることにより取り付けられている。かかる構造により電池缶131の内部が密閉されている。電池蓋134は、例えば、電池缶131と同様の材料により構成されている。
安全弁機構135は、熱感抵抗素子136を介して電池蓋134と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板135Aが反転して電池蓋134と巻回電極体140との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子136は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット137は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体140は、例えば、センターピン144を中心に巻回されている。巻回電極体140の正極141にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード145が接続されており、負極142にはニッケル(Ni)などよりなる負極リード146が接続されている。正極リード145は、安全弁機構135に溶接されることにより電池蓋134と電気的に接続されている。負極リード146は、電池缶131に溶接され電気的に接続されている。
図5は、図4に示した巻回電極体140の一部を拡大して表すものである。
(正極)
正極141は、例えば、正極集電体141aと、正極集電体141aの両面に設けられた正極活物質層141bとを有している。なお、正極集電体141aの片面のみに正極活物質層141bが存在する領域を有するようにしてもよい。正極集電体141aは、例えば、アルミニウム(Al)箔などの金属箔により構成されている。
正極活物質層141bは、例えば、正極活物質と、繊維状炭素やカーボンブラック等の導電剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の結着剤とを含む。正極活物質としては、正極活物質は、電極反応物質であるリチウムを吸蔵及び放出することが可能であり、その反応電位が対リチウムで例えば3〜4.5Vにある正極材料の何れか1種又は2種以上を含んでいる。このような正極材料としては、例えば、リチウムを含む複合酸化物が挙げられる。具体的には、リチウムと遷移金属との複合酸化物として、層状構造を有するコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)あるいはこれらを含む固溶体(LiNixCoyMnzO2;式中、x、y及びzの値はそれぞれ0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1である。)を用いることができる。
そして、正極材料として、スピネル構造を有するマンガン酸リチウム(LiMn2O4)あるいはその固溶体(Li(Mn2-vNiv)O4;式中、vの値はv<2である。)などを用いることもできる。さらに、正極材料として、例えば、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO4)などのリン酸化合物を用いることもできる。なお、正極材料は、上述の材料の他、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化鉄、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、硫黄や、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子であってもよい。
導電剤としては、正極活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限はないが、例えばカーボンブラックあるいはグラファイトなどの炭素材料等が用いられる。結着剤としては、通常この種の電池の正極合剤に用いられている公知の結着剤を用いることができるが、好ましくはポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂が用いられる。
(負極)
負極142は、例えば、負極集電体142aと、負極集電体142aの両面に設けられた負極活物質層142bとを有している。なお、負極集電体142aの片面のみに負極活物質層142bが存在する領域を有するようにしてもよい。負極集電体142aは、例えば銅(Cu)箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層142bは、例えば、負極活物質を含んでおり、必要に応じて導電剤、結着剤あるいは粘度調整剤などの充電に寄与しない他の材料を含んでいてもよい。導電剤としては、黒鉛繊維、金属繊維あるいは金属粉末などが挙げられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などのフッ素系高分子化合物、又はスチレンブタジエンゴム(SBR)あるいはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDR)などの合成ゴムなどが挙げられる。
負極活物質としては、対リチウム金属2.0V以下の電位で電気化学的にリチウム(Li)を吸蔵及び放出することが可能な負極材料の何れか1種又は2種以上を含んで構成されている。
リチウム(Li)を吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料、金属化合物、酸化物、硫化物、LiN3などのリチウム窒化物、リチウム金属、リチウムと合金を形成する金属、あるいは高分子材料などが挙げられる。
炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素又は易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
このようなリチウム(Li)を吸蔵及び離脱可能な負極材料のなかでも、充放電電位が比較的リチウム金属に近いものが好ましい。負極142の充放電電位が低いほど電池の高エネルギー密度化が容易となるからである。なかでも炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性を得ることができるので好ましい。
リチウム(Li)を吸蔵及び離脱可能な負極材料としては、また、リチウム金属単体、リチウム(Li)と合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金又は化合物が挙げられる。これらは高いエネルギー密度を得ることができるので好ましく、特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。なお、本明細書において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうち2種以上が共存するものがある。
このような金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)又はハフニウム(Hf)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式MafMbgLih、あるいは化学式MasMctMduで表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金を形成可能な金属元素及び半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mbはリチウム及びMa以外の金属元素及び半金属元素のうちの少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素及び半金属元素のうちの少なくとも1種を表す。また、f、g、h、s、t及びuの値はそれぞれf>0、g≧0、h≧0、s>0、t>0、u≧0である。
なかでも、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素の単体、合金又は化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)あるいはスズ(Sn)、又はこれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
リチウムを吸蔵・放出可能な負極材料としては、さらに、酸化物、硫化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物などの他の金属化合物が挙げられる。酸化物としては、MnO2、V2O5及びV6O13などが挙げられる。その他、比較的電位が卑でリチウムを吸蔵及び放出することが可能な酸化物として、例えば酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズなどが挙げられる。硫化物としてはNiS、MoSなどが挙げられる。
(セパレータ)
セパレータ143としては、例えば、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム、合成樹脂製不織布などを用いることができる。セパレータ143には、液状の電解質である非水電解液が含浸されている。
(非水電解液)
非水電解液は、液状の溶媒、例えば有機溶媒などの非水溶媒と、この非水溶媒に溶解された電解質塩とを含むものである。
非水溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)及びプロピレンカーボネート(PC)などの環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。特に、エチレンカーボネート(EC)と、プロピレンカーボネート(PC)とを混合して含むようにすれば、よりサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
非水溶媒は、また、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)あるいはメチルプロピルカーボネート(MPC)などの鎖状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。サイクル特性をより向上させることができるからである。
非水溶媒は、さらに、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、これら化合物の水素基の一部又は全部をフッ素基で置換したもの、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチルなどの何れか1種又は2種以上を含んでいてもよい。
組み合わせる電極によっては、上記非水溶媒群に含まれる物質の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換したものを用いることにより、電極反応の可逆性が向上する場合がある。従って、これらの物質を適宜用いることも可能である。
電解質塩としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、リチウム塩としては、例えば六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4)などの無機リチウム塩や、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiN(C2F5SO2)2)、及びリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3SO2)3)などのパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体などが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することも可能である。中でも、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)は、高いイオン伝導性を得ることができると共に、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
一方、非水電解液の変わりに固体電解質を用いるようにしてもよい。固体電解質としては、リチウムイオン導電性を有する材料であれば無機固体電解質及び高分子固体電解質のいずれも用いることができる。無機固体電解質としては、窒化リチウム(Li3N)、よう化リチウム(LiI)等が挙げられる。高分子固体電解質は電解質塩と、電解質塩を溶解する高分子化合物とからなり、その高分子化合物はポリ(エチレンオキサイド)や同架橋体などのエーテル系高分子、ポリ(メタクリレート)エステル系、アクリレート系などを単独あるいは分子中に共重合、又は混合して用いることができる。
さらに、ゲル状電解質を用いてもよい。ゲル状電解質のマトリクスポリマとしては、上述の非水電解液を吸収してゲル化するものであれば種々の高分子が利用できる。例えば、ポリビニリデンフルオロライドや、ビニリデンフルオロライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子、ポリエチレンオキサイドや同架橋体などのエーテル系高分子、またポリアクリロニトリルなどを使用できる。特に酸化還元安定性から、フッ素系高分子を用いることが望ましい。電解質塩を含有させることによりイオン導電性を付与する。
(電池セルの作製方法)
この電池セルは、例えば以下に説明するようにして製造することができる。
(正極の製造方法)
例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを正極集電体141aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層141bを形成し、正極141を作製する。
(負極の製造方法)
また、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチルピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体142aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層142bを形成し、負極142を作製する。
(電池セルの組み立て)
次いで、正極集電体141aに正極リード145を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体142aに負極リード146を溶接などにより取り付ける。その後、正極141と負極142とをセパレータ143を介して巻回し、正極リード145の先端部を安全弁機構45に溶接する。そして、負極リード146の先端部を電池缶131に溶接して、巻回した正極141及び負極142を一対の絶縁板132、133で挟んだ後に電池缶131の内部に収納する。
正極141及び負極142を電池缶131の内部に収納したのち、上述した電解液を電池缶131の内部に注入し、セパレータ143に含浸させる。そののち、電池缶131の開口端部に電池蓋134、安全弁機構135及び熱感抵抗素子136を、ガスケット137を介してかしめることにより固定する。以上により、電池セル101aを製造できる。
[電池パックの全体構成例]
図6は、電池部101の全体的構成を説明するための分解斜視図である。上述したように、電池セルとして、円筒形状のリチウムイオン二次電池が使用される。複数の電池セル101aがセルホルダ151L及び151Rによって保持される。
セルホルダ151L、151Rは、それぞれ収納する電池セルの個数以上の円筒状のセル収納部152L、152Rがベース部としてのベース部153L、153Rから突出するように形成されている。セルホルダ151L、151Rは、樹脂成型品であり、セル収納部152L、152R及びベース部153L、153Rが一体に構成されている。
セルホルダ151L、151Rの材料としては、例えば、プラスチックなどの絶縁材料が挙げられる。セルホルダ151L、151Rの材料は、金属粉又は炭素を含有し、熱伝導性が高い熱伝導性材料でもよい。このような材料を使用することにより、電池セル101aからの発熱を効率よく外部に放熱できる。セルホルダ151L、151Rの材料は、ガラス繊維又は炭素繊維を含有し、機械的強度に優れる強化プラスチックでもよい。このような材料を使用することにより、外部からの衝撃に対するセルホルダ151L、151Rの機械的な強度を高めることができる。
セル収納部152L、152Rは、同様な形状とされており、セルホルダ151L、151Rを対向させたときに、セル収納部152L、152Rの対応するものの開口が一致するようになされる。セル収納部152L、152Rは、電池セル101aを収納するのに必要な径と深さとを有している。即ち、セル収納部152L、152Rの内部空間の合計の長さは、電池セル101aの高さとほぼ等しいものとされる。セル収納部152L、152Rに電池セル101aを収納した状態で、対向するセルホルダ151L、151Rがネジ155によって保持される。
セルホルダ151L、151Rを使用することで電池セル間を確実に絶縁できる。このため、貼り付け位置のずれが生じやすい絶縁テープ等を使用する従来の構造に比べて、高い安全性を得ることができる。さらに、セルホルダ151L、151Rのセル収納部152L、152Rに電池セル101aが安定して固定されるため、外部からの衝撃によって電池セル101aの位置がずれてしまうことを防止できる。
セルホルダ151L、151Rのベース部153L、153Rには、セル収納部152L、152Rと連通する円形の開口が形成されている。開口を通じて電池セル101aの正極端子又は負極端子が露出している。電池セル101aの端子に対して接続板156L、156Rが溶着されて、複数の電池セル101aの接続関係が規定される。セルホルダ151L、151Rは、分割された接続板156L、156Rのそれぞれの設置位置を規定するリブを有する。接続板156L、156Rは、導電性が優れ、電池セル101aの端子部との溶接性が良好な材料からなる。
電池セル101aの電極と接続板156L、156Rの接続のために、例えば、抵抗溶接、レーザ溶接等が使用される。本実施の形態では、板状の接続板156L、156Rを使用しているが、板状のものに限らず、帯状の金属板を複数使用しても良い。
セルホルダ151L、151Rに収納された電池セル101aを接続板156L、156Rと溶着する場合、複数の絶縁クッション157L、157Rが使用される。絶縁クッション157L、157Rは、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロレンゴムなどのゴム系材料が使用される。弾性を有し、圧力によって変形するものであれば、ゴム系材料に限られることはない。
絶縁クッション157L、157Rは、電池セル101aの集合体において、縦方向に並ぶ電池セル101aの正極端子と対応して開口が形成されたものである。開口を通じて正極端子が接続板156L、156Rの端子接触部と溶着される。絶縁クッション157L、157Rは、電池セル101aの正極端子部付近の端面と接続板156L、156Rの内面とによって、押し潰された状態で狭着(挟みこまれるようにして支持される)される。
上述した電池セル101aの構造では、一端面(負極)側が閉塞され、他端面(正極)側が開放されている金属の円筒状の電池容器が使用される。従って、電池セル101aの負極側よりも正極側から水分が浸入する虞がある。このため、絶縁クッション157L、157Rは、正極側にのみ配されている。さらに、絶縁クッション157L、157Rは弾性を有するので、防水性だけでなく、外部からの衝撃を吸収する効果も有する。
電池セル101a、セルホルダ151L、151R、接続板156L、156R及び絶縁クッション157L、157Rを組み立てた状態で、プリント基板158がセルホルダ151Lの例えば上部にネジによって取り付けられる。本実施の形態では、セルホルダ151Lのセル収納部152Lの長さに比してセルホルダ151Rのセル収納部152Rの長さが短いものとされている。プリント基板158を二つのセルホルダ151L、151Rに跨がって固定すると、取り付けが不安定となるおそれがあるので、より長いセル収納部152Lの上面に対してプリント基板158が取り付けられる。
プリント基板158には、上述したMPU102、保護回路104等が実装されている。さらに、電池セル101aとプリント基板158とは、接続板156L、156Rを介して接続される。さらに、図示しないがプリント基板158からリード線が導出され、リード線が出力コネクタ(図示しない)に接続されている。
[制御部が実行する処理]
次に、電池パック1の制御部102fが実行する処理について説明する。制御部102fは、概略、電池部101の劣化度合いが所定より大きいと判断される場合に、電池部101の温度が閾値より大きい場合には、基準電圧より大きい第1の電圧を放電終止電圧に設定し、電池部101の温度が閾値より小さい場合には、基準電圧より小さい第2の電圧を放電終止電圧に設定する。
(電池部の劣化度合いを判断する処理)
始めに、制御部102fが電池部101の劣化度合いを判断する処理について説明する。制御部102fは、例えば、不揮発性メモリ106に格納される電池パック1の使用履歴情報を参照して電池部101の劣化度合いが所定より大きいか否かを判断する。具体的には、制御部102fは、不揮発性メモリ106に記憶されるサイクル数、使用時間、放置時間及び内部抵抗の少なくとも一つに基づいて、電池部101の劣化度合いを判断する。サイクル数等の使用履歴に基づく判断を行うことにより、電池部101の劣化度合いを正確に判断することが可能となる。
本実施の形態では、制御部102fは、サイクル数に基づいて電池部101の劣化度合いを判断する。具体的には、制御部102fは、サイクル数が閾値(例えば50サイクル)より小さい場合には電池部101の劣化度合いが小さいと判断し、サイクル数が閾値以上である場合には、電池部101の劣化度合いが大きいと判断する。なお、内部抵抗に基づいて電池部101の劣化度合いを判断する場合は、制御部102fは、例えば、一定のSOC(例えば50%)と一定の温度(例えば25℃)になったときに内部抵抗を測定し、内部抵抗の増加量が閾値を超えた場合に劣化度合いが大きいと判断する。
なお、電池部101の使用履歴情報は、不揮発性メモリ106とは異なる記憶部に記憶されていても良い。例えば、電池パック1とは異なる外部装置が有する記憶部に記憶されていても良い。そして、MPU102が当該外部装置と通信を行うことにより、電池部101の使用履歴情報を電池パック1が外部機器から取得するようにしても良い。外部装置としては、電池パック1が装着される本体側の機器やクラウドサーバを例示することができる。
(放電終止電圧を設定する処理)
次に、制御部102fが行う放電終止電圧を設定する処理の一例について、図7のフローチャートを参照して説明する。放電禁止電圧を設定する処理は、例えば、タイマ102gの計測時間に基づいて周期的に行われる。
ステップST101では、電池セルの電圧が測定される。例えば、MPU102がマルチプレクサ102aによって測定対象の電池セル101aを切り替え、各電池セルの電圧を電圧測定部102dが測定する。電圧測定部102dから制御部102fに対して測定結果が通知される。制御部102fは、各電池セルの電圧測定結果をRAM等に一時的に記憶する。そして、処理がステップST102に進む。
ステップST102では、制御部102fが、不揮発性メモリ106に記憶されている電池部101の使用履歴情報を参照して、現在の電池部101のサイクル数と閾値(例えば、50サイクル)とを比較する。比較の結果、現在の電池部101のサイクル数が50サイクル未満であれば、処理がステップST103に進む。
ステップST102の判断処理の結果、制御部102fは、劣化度合いが所定未満であるので電池部101の劣化が進行していないと判断する。そして、制御部102fは、放電終止電圧を定格放電終止電圧(例えば、2.8V)に設定する。なお、定格放電終止電圧は、基準電圧の一例である。定格放電終止電圧は、放電禁止電圧であっても良いが、放電禁止電圧とした場合には電池セル101aの継続した使用が困難となる虞がある。従って、定格放電終止電圧は、放電禁止電圧よりも過放電が起きない程度に余裕を持たせた電圧であることが好ましい。
ステップST103では、制御部102fが、電圧測定部102dの測定結果を参照して、複数の電池セルの電圧うち最も低い電圧(以下、最低電圧と適宜称する。)が放電終止電圧である2.8V以下になったか否かを判断する。最低電圧が2.8V以下になった場合は、処理がステップST104に進む。
ステップST104では、制御部102fが、放電停止信号を出力する。放電停止信号は、例えば、SoC(State of Charge)が0%であることを示す信号である。なお、放電を停止させる処理を行うためにSoCを0%にしたものであって、最低電圧である電池セル101aの実際のSoCが0%であるとは限らない。また、放電停止信号は、放電を停止させる信号であれば良く、DoD(Depth of Discharge)等で規定された信号でも良い。そして、処理がステップST105に進む。
ステップST103において、最低電圧が2.8V以上である場合には、制御部102fは、当該最低電圧である電池セル101aのSoCを求めた上で、当該SoCを示す信号を出力する。そして、処理がステップST105に進む。
ステップST105では、SoCを示す信号に基づくSoCが0%であるか否かが判断される。この判断は、本実施の形態ではFET制御部102bにより行われる。SoCが0%である場合は、処理がステップST106に進む。ステップST106では、FET制御部102bが少なくとも放電制御FET103bをオフさせる制御を行うことにより放電を停止する。ステップST105の判断処理において、SoCが0%でない場合は、処理がステップST107に進み、放電が継続(放電の開始の場合もある。)される。
上述したステップST102の判断処理の結果、現在の電池部101のサイクル数が50サイクル以上の場合は、処理がステップST108に進む。ステップST102の判断処理の結果、制御部102fは、劣化度合いが所定以上であるので電池部101の劣化が進行していると判断する。
ステップST108では、電池部101の温度が閾値(例えば、0℃)未満であるか否かが判断される。本実施の形態における電池部101の温度とは、例えば、電池セル毎の温度のうち最も低い温度(以下、最低温度と適宜称する。)を意味する。なお、電池部101の温度は、電池部101の全体の温度でも良いし、電池セル毎の温度の平均値等であっても良い。
最低温度が0℃以上の場合には、処理がステップST109に進む。電池部101の劣化度合いが大きいことから、制御部102fは、劣化の進行を抑制するために、放電終止電圧を定格放電終止電圧(例えば、2.8V)より大きい3.0V(第1の電圧の一例)に設定する。かかる制御により、一時的に放電容量は低下するが、劣化(例えば、内部インピーダンスの増加)を抑制できるので長期にわたる電池パック1の使用が可能となる。
そして、ステップST109では、制御部102fが、電圧測定部102dの測定結果を参照して、最低電圧が放電終止電圧である3.0V以下になったか否かを判断する。最低電圧が3.0V以下になった場合は、処理がステップST110に進む。
ステップST110では、制御部102fが、放電停止信号を出力する。そして、処理がステップST105に進む。
ステップST109において、最低電圧が3.0Vより大きい場合には、制御部102fは、当該最低電圧である電池セル101aのSoCを求めた上で、当該SoCを示す信号を出力する。そして、処理がステップST105に進む。
ステップST105では、SoCが0%であるか否かが判断される。SoCが0%である場合は、処理がステップST106に進む。ステップST106では、FET制御部102bが少なくとも放電制御FET103bをオフさせる制御を行うことにより放電を停止する。ステップST105の判断処理において、SoCが0%でない場合は、処理がステップST107に進み、放電が継続される。
ステップST108の判断処理において、最低温度が閾値(例えば、0℃)未満である場合には、処理がステップST111に進む。
ステップST111では、放電終止電圧を定格放電終止電圧(例えば、2.8V)より小さい2.6V(第2の電圧の一例)に設定する。本実施の形態における第2の電圧の一例である2.6Vは、予め設定された値であり、例えば、不揮発性メモリ106に記憶されている。2.6Vは、電圧ドロップにより生じ得る最小電圧(図2に示した例では、−20℃における電圧ドロップで生じ得る2.9V付近)より小さい電圧であり、且つ放電容量をある程度確保できる電圧である。一般に、電池部101が使用される低温環境の下限は−20℃程度である。従って、−20℃における電圧ドロップで生じ得る2.9V付近よりも低い電圧を放電終止電圧として設定すれば、電圧ドロップにより低下した際の電圧を放電終止電圧として検出してしまうことを確実に防止することができる。
そして、ステップST111では、制御部102fが、電圧測定部102dの測定結果を参照して、最低電圧が放電終止電圧である2.6V以下になったか否かを判断する。最低電圧が2.6V以下になった場合は、処理がステップST112に進む。
ステップST112では、制御部102fが、放電停止信号を出力する。そして、処理がステップST105に進む。
ステップST111において、最低電圧が2.6Vより大きい場合には、制御部102fは、当該最低電圧である電池セル101aのSoCを求めた上で、当該SoCを示す信号を出力する。そして、処理がステップST105に進む。
ステップST105では、SoCが0%であるか否かが判断される。SoCが0%である場合は、処理がステップST106に進む。ステップST106では、FET制御部102bが少なくとも放電制御FET103bをオフさせる制御を行うことにより放電を停止する。ステップST105の判断処理において、SoCが0%でない場合は、処理がステップST107に進み、放電が継続される。
以上の第1の実施の形態によれば、電池部101の温度が閾値以上の場合には、放電禁止電圧を基準電圧より小さく設定しているので、電池部101の劣化の進行を抑制することができる。また、電池部101の温度が閾値未満の場合には、放電禁止電圧を基準電圧より大きく設定しているので、放電(特に、放電開始直後)時に生じる電圧ドロップにより電池パック1からの放電が停止してしまうことを防止することができる。
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態における放電終止電圧を設定する処理の内容が一部異なる。以下、第1の実施の形態における放電終止電圧を設定する処理と異なる点を中心に説明する。なお、各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2の実施の形態以降では第1の実施の形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施の形態毎には逐次言及しない。
図8は、第2の実施の形態にかかる放電終止電圧を設定する処理の流れを示すフローチャートである。第2の実施の形態にかかる放電終止電圧を設定する処理では、ステップST121の処理が追加されている。即ち、ステップST108の判断処理において、最低温度が0℃未満である場合には、処理がステップST121に進む。
ステップST121では、最小温度である電池セル101aの残容量が閾値より小さいか否かが判断される。本実施の形態では残容量としてSoCを使用する。即ち、ステップST121では、SoCが閾値(例えば、50%)より小さいか否かが判断される。当該電池セル101aのSoCが50%以上であれば、処理がステップST111に進む。当該電池セル101aのSoCが50%未満であれば、処理がステップST109に進む。
図2に示した放電温度特性を参照すると、低温時(例えば、−15℃)の場合、SoC50%に対応する電池セル101aの電圧は、3.1V程度である。この場合には、低温時に起こり得る1V程度の電圧ドロップにより電池セル101aの電圧が第2の電圧の一例である2.6Vを下回ってしまう。場合によっては、放電禁止電圧を下回る。そこで、最小電圧を有する電池セル101aのSoCが50%未満である場合は、処理がステップST109に進む。ステップST109の判断処理では、電圧ドロップにより電池セル101aの電圧が3.0V以下と判断されることになるので、処理がステップST110に進む。ステップST110では、制御部102fは、放電停止信号を出力し、放電を停止する若しくは行わないようにする。
以上の第2の実施の形態にかかる処理は、電池部101が放電末期である場合において電池部101が放電を開始する際に行われることが好ましい。放電開始に処理を行うことにより、放電開始時の電圧ドロップにより電池部101の電圧が放電禁止電圧を下回ることを防止することができ、電池部101を保護することができる。なお、低温時において、最小温度である電池セル101aのSoCが50%未満である場合には、充電を促す報知がなされるようにしても良い。
<3.第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、上述した制御部102fの機能を有する電子機器の例である。電子機器としては、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、ウェアラブル機器、ロボット機器等を挙げることができる。
図9は、第3の実施の形態にかかる電子機器(電子機器3)の構成例を示すブロック図である。電子機器3は、電池ユニット301と、制御ユニット302と、充放電制御回路303と、電子機器3の本体の電子回路304とを有している。
電池ユニット301と制御ユニット302とが、接続用のコネクタ311a及びコネクタ311bを介して接続されている。コネクタ311aは電池ユニット301の正極に接続されている。コネクタ311bは電池ユニット301の負極に接続されている。
制御ユニット302と充放電制御回路303とが接続されている。制御ユニット302と充放電制御回路303との間では電力の供給が可能なように構成されていると共に、通信が可能とされている。
充放電制御回路303と電子回路304とが接続されている。充放電制御回路303から電子回路304に対しては、電池ユニット301からの電力の供給が可能なように構成されている。
電池ユニット301は、例えば、電池部301aと温度素子301bとを有している。電池部301aとして上述した電池部101を適用することができる。また、温度素子301bとして上述した温度素子105を適用することができる。
制御ユニット302は、例えば、制御部305と電流検出抵抗306とを有している。制御部305は、例えば、アナログフロントエンド(AFE)305aと、CPU305bと、RAM305cと、ROM305dと、入出力ポートであるI/O305eとを有している。電流検出抵抗306として、上述した電流検出抵抗107を適用することができる。
アナログフロントエンド305aは、電池部301aの電圧、電流、温度等に関するアナログデータをデジタルデータに変換する。CPU305bは、上述した電流測定部102c、電圧測定部102d、温度測定部102e、制御部102f及びタイマ102gの機能を有している。RAM305cは、CPU305bのワークメモリとして使用されると共に、上述した不揮発性メモリ106に記憶されている履歴情報等を記憶する。ROM305dは、CPU305bが実行するプログラムを格納する。I/O305eは、制御ユニット302と充放電制御回路303との間のインターフェースをとる。
充放電制御回路303は、上述したFET制御部102b、充電制御FET103a及び放電制御FET103bを有する。
電子回路304は、電子機器3に応じた構成を有する。電子機器3が例えばスマートフォンである場合には、電子回路304は、映像処理回路や音声処理回路、通信回路等を有する。
電子機器3の動作は、上述した電池パック1と略同様であるので、概略的な説明に留める。制御部305は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態において説明した処理を行い、処理の結果、SoCを示す信号を充放電制御回路303に出力する。充放電制御回路303がSoCを示す信号が0%である場合、即ち、放電停止信号である場合には、放電を停止する制御を行う。
以上説明したように、本発明は、制御部102fの機能を有する電子機器として構成することも可能である。
<4.第4の実施の形態>
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、上述した電池パック1を電動工具の一例である電動ドライバ(電動ドライバ4)に適用した例である。
図10は、電動ドライバ4の構成例を示す図である。電動ドライバ4は、本体内にDCモータ等のモータ401が収納されている。モータ401の回転がシャフト402に伝達され、シャフト402によって被対象物にネジが打ち込まれる。電動ドライバ4には、ユーザが操作するトリガースイッチ403が設けられている。
電動ドライバ4の把手の下部筐体内に、上述した電池パック1及びモータ制御部404が収納されている。モータ制御部404は、モータ401を制御する。モータ401以外の電動ドライバ4の各部が、モータ制御部404によって制御されてもよい。電池パック1と電動ドライバ4とはそれぞれに設けられた係合部材によって係合されている。電池パック1が電動ドライバ4に着脱自在とされていても良い。
電池パック1からモータ制御部404に対して電力が供給されると共に、両者の間で通信可能とされている。
トリガースイッチ403は、例えば、モータ401とモータ制御部404との間に挿入され、ユーザがトリガースイッチ403を押し込むと、モータ401に電池パック1からの電力が供給され、モータ401が回転する。ユーザがトリガースイッチ403を戻すと、モータ401の回転が停止する。モータ制御部404は、例えば、モータ401の回転/停止、並びに回転方向を制御する。
電池パック1は、上述した処理を行う。なお、電池パック1からモータ制御部404に対して放電停止信号が供給されるようにしても良い。放電停止信号を受信したモータ制御部404は、トリガースイッチ403の操作を無効にする制御を行うようにしても良い。
以上説明したように、本発明は、電池パック1を有する電動工具、より具体的には制御部102fの機能を有する電動工具として構成することも可能である。なお、電池パック1を有するとは電池パック1が着脱自在である場合を含み、必ずしも電池パック1が物理的に固定されている(着脱自在でない)場合に限定されるものではない。他の実施の形態についても同様である。
<5.第5の実施の形態>
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、上述した電池パック1を電動車両の一例である電動自転車(電動自転車5)に適用した例である。図11は、電動自転車5の構成の一例を概略的に示したものである。
電動自転車5は、補助駆動力faを供給する補助駆動装置501を有する。補助駆動装置501は、補助駆動力faを発生させるモータ502と、減速機503と、補助駆動力faをチェーン510に出力する駆動部504と、ペダル512に作用する踏力fhを検出するトルクセンサ506と、本体制御部507とを有している。トルクセンサ506はクランク軸505にかかるトルクから踏力fhを検出するものであり、例えば磁歪センサ等が用いられる。
クランク軸505の両端には、踏力fhが加えられる左右のペダル512が取付けられている。また、後輪511はチェーン510を介してクランク軸505に連動連結されており、踏力fh及び補助駆動力faはチェーン510を介して後輪511に伝達される。
本体制御部507は、マイクロコンピュータを含む電気回路等により構成されており、不揮発性メモリからなる記憶部等を備える。本体制御部507は、トルクセンサ506から随時入力される検出信号に基づいてモータ502を制御している。
電動自転車5の車体に対して、上述した電池パック1が着脱自在とされる。電池パック1は、電動自転車5に装着された状態で補助駆動装置501に給電する。即ち、電池パック1は、モータ502に電力を供給する。電池パック1からの電力が、電動自転車5のライトや表示のための電力として使用されても良い。
補助駆動装置501の本体制御部507と電池パック1におけるMPU102との間で通信が行われる。
電池パック1は、上述した処理と同様の処理を行う。なお、電池パック1の制御部102fが出力するSoCを示す信号が本体制御部507に供給されても良い。そして、本体制御部507の制御により電池パック1の放電が制御されても良い。
例えば、図12に示すフローチャートにおいて、上述した処理に加えて、ステップST511及びステップST512の処理が追加されても良い。ステップST511では、電池パック1の制御部102fから本体制御部507に対してSoCを示す信号が送信される。そして、ステップST512で、SoCを示す信号が本体制御部507により受信される。
ステップST105の処理は本体制御部507により行われる。本体制御部507は、受信した信号が放電停止信号でない(SoC≠0%)の場合は、放電を継続させる。また、本体制御部507は、受信した信号が放電停止信号である場合は、放電を停止させる。例えば、本体制御部507は、放電を停止させる信号を電池パック1に送信する。当該信号を受信した電池パック1が放電を停止させる制御を行う。
また、例えば、電池パック1と補助駆動装置501との間にスイッチを設けても良い。そして、電池パック1から放電停止信号を受信した本体制御部507が、スイッチをオフすることにより電力供給経路を遮断するようにしても良い。
以上説明したように、本発明は、電池パック1を有する電動車両、より具体的には制御部102fの機能を有する電動車両として構成することも可能である。
<6.第6の実施の形態>
次に、第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態は、本発明を電源システムに適用した例である。
図13は、第6の実施の形態にかかる電源システム(電源システム6)の構成例を示す。始めに、電源システム6について概略的に説明する。電源システム6は、例えば、定置型の蓄電モジュールである。電源システム6は、電池部601と、第1の装置の一例であるモジュールコントローラCNTと、第2の装置の一例であるメインコントローラICNTとを有している。
モジュールコントローラCNTは、正極端子602aと負極端子602bとを有している。正極端子602aは電池部601の正極側に接続されており、負極端子602bは電池部601の負極側に接続されている。
メインコントローラICNTは、端子603aと端子603bとを有している。端子603aがモジュールコントローラCNTの正極端子602aと接続され、端子603bがモジュールコントローラCNTの負極端子602bと接続されている。また、メインコントローラICNTは、正極側の端子604aと負極側の端子604bとを有している。端子604a及び端子604bが負荷に接続されることにより、負荷に対して電池部601の電力が供給される。
なお、図13に示す例では、1個のメインコントローラICNTに対して1個のモジュールコントローラCNTが接続されている例が示されているが、1個のメインコントローラICNTに対して複数のモジュールコントローラCNTが接続されていても構わない。
モジュールコントローラCNTとメインコントローラICNTとがデータ伝送路(バス)を介して接続され、両者の間で通信がなされる。メインコントローラICNTが充電管理、放電管理、劣化抑制等のための管理を行う。
バスとしては、シリアルインターフェースが使用される。シリアルインターフェースとしては、具体的には、I2C(Inter-Integrated Circuit)方式、SMバス(System Management Bus)、CAN(Controller Area Network)、SPI(Serial Peripheral Interface)
等が使用される。
一例として、I2C方式の通信が使用される。この方式は、比較的近距離で直結したデバイスとの間で、シリアル通信を行うものである。1台のマスタと1台又は複数台のスレーブとの間が2本の線で接続される。一方の線を通じて伝送されるクロストークを基準としてデータ信号が他方の線上で転送される。個々のスレーブがアドレスを持っていてデータの中にアドレスが含まれ、1バイト毎に受信側からアクノリッジを返送して互いに確認をとりながらデータの転送がなされる。電源システム6の場合には、メインマイクロコントローラユニットがマスタとなり、サブマイクロコントローラユニットがスレーブとなる。
モジュールコントローラCNTからメインコントローラICNTに対してデータが送信される。例えば、電池部601の内部状態の情報がモジュールコントローラCNTからメインコントローラICNTに伝送される。メインコントローラICNTは、当該情報に基づいて、電池部601の充電処理及び放電処理を管理する。なお、メインコントローラICNTがより上位のコントローラと通信を行うようにしても良い。
電源システム6の構成例について具体的に説明する。電池部601としては、上述した電池部101を適用することができる。勿論、電池部601は、より大出力に対応した構成であっても良い。本実施の形態では、電池部601は、16個の電池ブロック(B1、B2・・・B16)が直列に接続された構成を有する。1個の電池ブロックは、例えば、8本の円筒状のリチウムイオン二次電池を並列接続することにより構成されたものである。
モジュールコントローラCNTは、例えば、バランス制御回路610と、マルチプレクサ(MUX)611と、A/D612と、監視回路613と、温度測定部614と、温度測定部615と、温度マルチプレクサ616と、電流検出抵抗617と、電流検出アンプ618と、A/D619と、第1の制御部の一例であるサブマイクロコントロールユニット(SUBMCU)620と、通信部621とを有している。
バランス制御回路610は、各電池ブロック間の電圧を均一化する制御、所謂、バランス制御を行う。バランス制御の方式としては、パッシブ方式に限らず、アクティブ方式や他の様々な公知の方式を適用することができる。
マルチプレクサ611は、例えば、サブマイクロコントロールユニット620からの制御信号に応じてチャネルを切り替え、16個のアナログ電圧データの中から一のアナログ電圧データを選択する。マルチプレクサ611によって選択された一のアナログ電圧データがA/D612に供給される。
A/D612は、マルチプレクサ611から供給されるアナログ電圧データをデジタル電圧データに変換して監視回路613に供給する。
監視回路613は、A/D612及びA/D619と接続されており、各A/Dから供給されたデジタルデータをサブマイクロコントロールユニット620に供給する。
温度測定部614は、電池ブロック単位の温度を測定する。温度測定部615は、電池部601全体の温度を測定する。温度測定部614及び温度測定部615による温度測定結果は温度マルチプレクサ616により適宜、選択された後、A/D612に供給される。A/D612によりアナログ温度データがアナログデジタルデータに変換され、変換後のアナログデジタルデータが監視回路613に供給される。
電流検出抵抗617は、電池部601に流れる電流を検出する。電流検出アンプ618は、電流検出抵抗617により検出されたアナログ電流データを所定の増幅率でもって増幅する。増幅されたアナログ電流データがA/D619に供給される。
A/D619は、アナログ電流データをデジタル電流データに変換し、変換したデジタル電流データを監視回路613に供給する。
サブマイクロコントロールユニット620は、監視回路613から供給されるデータに基づいてモジュールコントローラCNTの診断を行う。また、サブマイクロコントロールユニット620は、上述した制御部102fが行う処理と同様の処理を行うことにより、SoCを示す信号を生成し、生成した信号を通信部621に供給する。なお、本実施の形態では、サブマイクロコントロールユニット620は、上述した制御部102fが行う処理と同様の処理を電池ブロック単位で行う。
通信部621は、通信を行うための構成、例えば、通信方式に対応した変復調回路、エラー訂正回路等を含む構成を有している。通信部621は、サブマイクロコントロールユニット620の制御に従って、メインコントローラICNTと通信を行う。
メインコントローラICNTは、第2の制御部の一例であるメインマイクロコントロールユニット(MAINMCU)630と、通信部631と、レギュレータ632と、充電制御FET633と、放電制御FET634とを有している。
メインマイクロコントロールユニット630は、メインコントローラICNTの各部を制御する。例えば、メインマイクロコントロールユニット630は、充電制御FET633及び放電制御FET634のオン/オフを制御する。
通信部631は、通信を行うための構成、例えば、通信方式に対応した変復調回路、エラー訂正回路等を含む構成を有している。通信部631は、メインマイクロコントロールユニット630の制御に従って、モジュールコントローラCNTと通信を行う。
レギュレータ632は、電池部601から供給される電力を使用して、メインマイクロコントロールユニット630が動作するための動作電圧を生成する。レギュレータ632により生成された動作電圧がメインマイクロコントロールユニット630に供給される。
電源システム6の動作例について説明する。メインマイクロコントロールユニット630は、モジュールコントローラCNTから放電停止信号を、通信部631を介して受信した場合は、放電を停止する制御を行う。具体的には、メインマイクロコントロールユニット630は放電制御FET634をオフする。
なお、モジュールコントローラCNTから各電池ブロックの電圧や温度のデータがメインコントローラICNTに供給されるようにしても良い。そして、各電池ブロックの電圧や温度のデータを取得したメインマイクロコントロールユニット630が上述した制御部102fが行う処理と同様の処理を行うようにしても良い。そして、放電を停止させる必要がある場合には、メインマイクロコントロールユニット630が放電制御FET634をオフするようにしても良い。さらに、サブマイクロコントロールユニット620及びメインマイクロコントロールユニット630が、制御部102fが行う処理と同様の処理を行うようにしても良い。これにより、サブマイクロコントロールユニット620及びメインマイクロコントロールユニット630の一方に不具合が生じた場合でも処理を継続することができる。
以上説明したように、本発明は、制御部102fの機能を有する電源システムとして構成することも可能である。
<7.第7の実施の形態>
次に、第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態は、本発明を車両用の蓄電システムに適用した例である。図14に、本発明が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
このハイブリッド車両7200には、エンジン7201、発電機7202、電力駆動力変換装置7203、駆動輪7204a、駆動輪7204b、車輪7205a、車輪7205b、バッテリー7208、車両制御装置7209、各種センサ7210、充電口7211が搭載されている。
ハイブリッド車両7200は、電力駆動力変換装置7203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置7203の一例は、モータである。バッテリー7208の電力によって電力駆動力変換装置7203が作動し、この電力駆動力変換装置7203の回転力が駆動輪7204a、7204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置7203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ7210は、車両制御装置7209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ7210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
エンジン7201の回転力は発電機7202に伝えられ、その回転力によって発電機7202により生成された電力をバッテリー7208に蓄積することが可能である。
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置7203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置7203により生成された回生電力がバッテリー7208に蓄積される。
バッテリー7208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口7211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
図示しないが、二次電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本発明は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本発明は有効に適用可能である。
以上、本発明に係る技術が適用され得るハイブリッド車両7200の一例について説明した。本発明の制御部102fが実行する機能は、例えば、車両制御装置7209に適用することができる。
<8.第8の実施の形態>
次に、第8の実施の形態について説明する。第8の実施の形態は、本発明を住宅用の蓄電システムに適用した例である。図15は、蓄電システムの構成例を示す。例えば住宅9001用の蓄電システム9100においては、火力発電9002a、原子力発電9002b、水力発電9002c等の集中型電力系統9002から電力網9009、情報網9012、スマートメータ9007、パワーハブ9008等を介し、電力が蓄電装置9003に供給される。これと共に、家庭内発電装置9004等の独立電源から電力が蓄電装置9003に供給される。蓄電装置9003に供給された電力が蓄電される。蓄電装置9003を使用して、住宅9001で使用する電力が給電される。住宅9001に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
住宅9001には、家庭内発電装置9004、電力消費装置9005、蓄電装置9003、各装置を制御する制御装置9010、スマートメータ9007、各種情報を取得するセンサ9011が設けられている。各装置は、電力網9009及び情報網9012によって接続されている。家庭内発電装置9004として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置9005及び/又は蓄電装置9003に供給される。電力消費装置9005は、冷蔵庫9005a、空調装置9005b、テレビジョン受信機9005c、風呂9005d等である。さらに、電力消費装置9005には、電動車両9006が含まれる。電動車両9006は、電気自動車9006a、ハイブリッドカー9006b、電気バイク9006cである。
スマートメータ9007は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網9009は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つ又は複数を組み合わせても良い。
各種のセンサ9011は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種センサ9011により取得された情報は、制御装置9010に送信される。センサ9011からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置9005を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置9010は、住宅9001に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
パワーハブ9008によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置9010と接続される情報網9012の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信規格によるセンサネットワークを利用する方法がある。Bluetooth(登録商標)方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBee(登録商標)は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) 又はW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
制御装置9010は、外部のサーバ9013と接続されている。このサーバ9013は、住宅9001、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ9013が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
各部を制御する制御装置9010は、CPU、RAM、ROM等で構成され、この例では、蓄電装置9003に格納されている。制御装置9010は、蓄電装置9003、家庭内発電装置9004、電力消費装置9005、各種センサ9011、サーバ9013と情報網9012により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
以上のように、電力が火力発電9002a、原子力発電9002b、水力発電9002c等の集中型電力系統9002のみならず、家庭内発電装置9004(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置9003に蓄えることができる。従って、家庭内発電装置9004の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、又は、必要なだけ放電したりするといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置9003に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置9003に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置9003によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
なお、この例では、制御装置9010が蓄電装置9003内に格納される例を説明したが、スマートメータ9007内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム9100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
以上、本発明に係る技術が適用され得る蓄電システム9100の一例について説明した。上述した制御部102fが有する機能は、例えば、制御装置9010に適用することができる。
<9.変形例>
以上、本発明の複数の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した一実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
上述した実施の形態において、第2の電圧が一定の値ではなく、可変とされても良い。例えば、制御部は、電池部の温度に応じて第2の電圧を設定しても良く、より具体的には、電池部の温度毎に規定された、定格最大負荷が接続された場合に生じる電圧ドロップを参照して、第2の電圧を設定しても良い。
例えば、表1に示すように、電池部の温度Tが低下するにつれて第2の電圧が段階的に低下するように設定することができる。
[表1]
このように設定することにより、低温での放電開始時に電圧ドロップによって放電終止電圧に電圧が達してしまうことを防ぐことができる。劣化抑制のため放電終止電圧を高く設定した場合に、この制御はより効果的である。第2の電圧を可変とすることにより、必要以上に放電終止電圧を下げることがなくなるため、劣化をより効果的に抑制することができる。
例えば、温度測定部102eにより温度として−15℃と測定されたとする。この場合、図2に示したグラフにおけるラインL6を参照すると、電圧ドロップが生じたときの電圧の最小値は約3.1Vである。このような場合には、制御部102fは、第2の電圧の一例として2.6Vではなく2.7Vを設定しても良い。そして、温度が−20℃の場合には、第2の電圧として2.6Vが設定されても良い。これにより、放電終止電圧を低くし過ぎることによる電池部101の劣化の進行を防止することができると共に、電圧ドロップに起因する電池パック1の放電停止を防止することができる。
また、電池部101の温度を周期的に測定し、測定結果に応じて第2の電圧を変更するようにしても良い。また、電池部101の使用時間をタイマ102gにより計測し、電池部101が発熱して温まる程度の時間が経過した場合には、第2の電圧を3.0Vに設定して電池部101の劣化を抑制するようにしても良い。
温度計測結果に対応する温度がない場合は、当該温度に近い温度に対応する電圧ドロップを参照して、第2の電圧を設定しても良い。また、代表的な温度毎に電圧ドロップに関する情報を記憶しておき、それらを補間することにより、計測された温度に対応する電圧ドロップを求めても良い。また、第2の電圧は、基準電圧と同じ電圧でも良い。例えば、電池部101の温度が−10℃の場合には、電圧ドロップ後の電圧が3.4V程度である(図2参照)。従って、第2の電圧を基準電圧(例えば、2.8V)と同じ値に設定しても、電圧ドロップによる放電の停止を防止することができると共に、放電容量を確保することができる。
図2に示したグラフに対応するテーブルは、電池パック1とは異なる外部機器から電池パック1に対してネットワークを介して供給されるものであっても良い。また、上述した実施の形態において、第2の電圧は、基準電圧と同じ値であっても良い。また、上述した実施の形態において、充電制御FET及び放電制御FETは、電池部の負極側と負極端子との間に接続される構成でも良い。実施の形態における温度やサイクル数等に関する閾値は適宜、変更することができる。例えば、温度の閾値は0℃に限定されることはなく、二次電池の特性に応じて適宜、変更することができる。電池部の劣化度合いは、多段階でもって判断されても良い。劣化の進行度に応じて、第1の電圧として異なる値を設定するようにしても良い。
例えば、表2に示すようにサイクル数が増加するにつれて第1の電圧を段階的に高くするように設定しても良い。
[表2]
このように劣化状態に応じて段階的に放電終止電圧を変化させることで、放電終止電圧の上昇による急激な放電容量の低下を防ぐことができる。より細かく段階的に終止電圧を変化させると、使用者に制御を意識させることなく劣化を抑制することができる。
本発明は、制御部102fが実行する機能のみを有するIC(Integrated Circuit)やクラウドサーバ上の演算装置等の制御装置として構成することも可能である。また、上述した実施の形態で説明した機能は、方法、プログラム、プログラムを記録した記録媒体等、任意の形態で実現することが可能である。
上述の実施の形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて実施の形態と異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などが含まれてもよい。