以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の全体概略斜視図である。図2は、空気入りタイヤ10の一部拡大斜視図である。なお、図1及び図2では、トレッド20に形成されるパターン(トレッドパターン)の一部の図示は省略されている。図3は、トレッド20の一部平面展開図である。
図1〜図3に示すように、空気入りタイヤ10は、氷雪路、特に氷上路面の走行に対応したタイヤ、いわゆるスタッドレスタイヤである。空気入りタイヤ10は、回転方向の指定はないが、車両装着時に内側(車両ハブ側)及び外側に位置すべきショルダー陸部列が規定されている(図2参照)。
空気入りタイヤ10のトレッド20は、路面と接する複数の陸部列が設けられる。具体的には、トレッド20には、V形陸部列100、中央陸部列200及びショルダー陸部列300in, 300outが設けられる。
V形陸部列100は、タイヤ赤道線CL(図1及び図2において不図示、図3参照)の位置からオフセットして設けられる。具体的には、V形陸部列100は、タイヤ赤道線CLよりトレッド端側に位置するように設けられる。
中央陸部列200は、V形陸部列100と隣接し、タイヤ赤道線CLを含む位置に設けられる。
ショルダー陸部列300outは、中央陸部列200と隣接し、中央陸部列200よりも車両装着時外側に位置するように設けられる。
ショルダー陸部列300inは、V形陸部列100と隣接し、V形陸部列100よりも車両装着時内側に位置するように設けられる。
トレッド20には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝が形成される。具体的には、V形陸部列100と中央陸部列200との間には、周方向溝30が形成される。
V形陸部列100とショルダー陸部列300inとの間には、周方向溝40が形成され、中央陸部列200とショルダー陸部列300outとの間には、周方向溝50が形成される。
また、中央陸部列200を構成する陸部列201と陸部列202との間には、周方向溝60が形成される。
また、ショルダー陸部列300outには、タイヤ幅方向に延びるラグ溝70が形成され、ショルダー陸部列300inには、タイヤ幅方向に延びるラグ溝80が形成される。
なお、上述した陸部列を構成し、路面と接地し得る陸部の要素を陸部ブロック(または、単にブロック)と表現する。
このようなトレッド20を構成するゴム(トレッドゴム)は、発泡ゴムとすることが好ましい。発泡ゴムが好ましい理由は、発泡ゴム中に空気孔が含まれていることにより、ゴム固相部分が空気相部分に置換された効果による圧縮変形のし易さである。
これにより、柔軟性による接地面積の向上、トレッド表面の発泡の孔によって氷上路面における摩擦係数μを大幅に低下させる水膜の除去、及びブロック発泡の孔の引っ掻きによるミクロなエッジによるサイプエッジ成分やブロックエッジ成分と同様なエッジ効果の向上が著しい。
トレッドゴムは、表面ゴムと内部ゴムの2層構造以上とし、発泡ゴムを表面ゴムに使用し、内部ゴムを表面ゴムよりも、弾性率が大きい非発泡ゴムまたは発泡ゴムとすることが好ましい。また、摩耗による使用限界を示すスノープラットフォームの径方向深さ位置まで表面ゴムを使用し、スノープラットフォームよりも径方向内側位置に内部ゴムを使用することが好ましい。
発泡ゴムは、内部に空気孔を含んでおり、低弾性であるため、陸部ブロック(陸部ブロック)全体の剛性を内部ゴムの剛性によって確保するためである。発泡率は3〜40%がよい。発泡率が40%のとき発泡ゴムの弾性率は非発泡ゴムの弾性率に対して60%であり、これよりも発泡率が大きいと、発泡ゴムの弾性率が低すぎて陸部ブロック全体の剛性の確保が陸部ブロックの形状をもってしても維持できなくなるからである。
発泡率が3%のとき、発泡ゴムの弾性率は非発泡ゴムの弾性率に対して97%であり、ブロック剛性は確保できるが、これよりも発泡率が小さいと、発泡の空気孔による柔軟性、水膜の除去、エッジ効果が発揮できなくなるからである。最適には12%〜32%がよい。ブロック剛性確保、柔軟性による接地面積、水膜除去、エッジ効果が高い水準で両立するからである。
また、スタッドレスタイヤなどのウィンタータイヤにおいては、氷上路面の摩擦係数μの向上、柔軟性による接地面積の向上などのために路面と接するトレッドゴムの弾性率を柔らかくするが、非発泡ゴムにおいては、トレッドゴムの配合において、カーボン添加量を少なくしたり、ポリマーを使用温度域で低弾性なものにしたり、加硫剤添加量を少なくして架橋を抑制したりすると、摩耗性能を低下させてしまう。
また、オイル添加量を増加して低弾性にすると、加硫後の製品タイヤにおいて、オイルがトレッドゴム外に移行して、半年〜1年の経年変化で弾性率が高くなって硬くなり、柔軟性を失ってしまう。ところが発泡ゴムにおいては、内部の空気孔で柔軟性を確保しているため、経年変化によってオイルのように内部の発泡孔が失われてゆくことがない。
さらに、ゴム以外のゴム固相部分の配合について、カーボン添加量を多く、ポリマー使用温度域の弾性率を高く、及び加硫剤添加量を多くすることができる。これにより、オイル添加量を増加させず、摩耗性能に優れた非常に高弾性なものとすることができる。高弾性としても、発泡率を20%とすれば、空気孔で置換されて、発泡ゴムの弾性率は、非発泡ゴムの弾性率に対して80%の低弾性なゴムにできるからである。
空気入りタイヤ10では、通常の非発泡ゴムの弾性率に対して発泡させるほど弾性率を低くできる発泡ゴムの柔軟性、圧縮変形のし易さを利用することによって、陸部ブロックの形状を大幅に高い剛性とすることができる。
ゴムの弾性率は、2.0MPa〜5.0MPaであり、好ましくは、2.3MPa〜3.5MPaである。ゴムは発泡ゴムが好ましい。発泡率は、3%〜40%であり、12%〜32%であることが好ましい。
ゴムの弾性率(単位MPa)はJIS規格に定める23℃における測定値である。弾性率は、上島製作所(株)製スペクトロメーターを用いて、初期歪2%、動歪1%、周波数52Hzの条件下で、23℃における動的引張貯蔵弾性率E´を弾性率として測定した。
弾性率の数値が大きい程、高弾性であることを示す。
ここで、測定した弾性率は、動的引張粘弾性試験における動的引張貯蔵弾性率E´である。しかしながら、上記以外の試験、例えば動的圧縮粘弾性試験及び動的せん断粘弾性試験、その他の動的粘弾性試験においても、それらの結果は、動的引張粘弾性試験の結果と同様に、発泡率を大きくする程、低弾性となる傾向を示す。
従って、本実施形態に記載されているタイヤの弾性率の構成は、上述した測定条件またはそれに準ずる測定条件における動的粘弾性試験において、全て成立する。その理由は、タイヤのトレッド部に使用されているゴムは、ポアソン比が0.5に近く、変形しても、体積変化がきわめて少ないため、引張の弾性率と、圧縮の弾性率と、せん断の弾性率とは比例するからである。
(2)トレッド20の構成
次に、トレッド20の構成ついて説明する。具体的には、トレッド20に設けられるV形陸部列100、中央陸部列200及びショルダー陸部列300outの形状について説明する。
(2.1)V形陸部列100
図4は、V形陸部列100の一部拡大平面図である。V形陸部列100は、周方向溝30及び周方向溝40と、幅方向傾斜溝160(ラグ溝)とによって区画された陸部ブロックを備える。具体的には、V形陸部列100は、タイヤ周方向に沿った複数のV形陸部ブロック101によって構成される。
V形陸部ブロック101は、タイヤ周方向の一方に向けて凸となる凸部と、同じくタイヤ周方向の一方に向けて凹となる凹部とを有し、トレッド面視においてV字状である。具体的には、V形陸部ブロック101は、凸部110と凹部120とを有するV形陸部ブロックである。なお、V形陸部ブロック101は、トレッド面視の形状がV字状または矢羽状であるブロックを意味する。
トレッド面視において、凸部110を構成するV形陸部ブロック101の凸部側壁部111のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1(傾斜方向)は、凹部120を構成する凹部側壁部121のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2と同じ(同一方向)である。同様に、V形陸部ブロック101の凸部側壁部112のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ3(傾斜方向)は、凹部120を構成する凹部側壁部122のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ4と同じ(同一方向)である。なお、当該傾斜角度は、必ずしも同じでなくてもよく、「同じ」または「同一方向」とは、両方の傾斜角度の差分が20度以内であることを意味する(以下、傾斜角度の記載については同様である)。
タイヤ赤道線CL側の凸部側壁部111、サイプ130、終端傾斜溝150の傾斜角度、及びトレッド端部側の凸部側壁部112、サイプ140の傾斜角度は、それぞれタイヤ幅方向に対し一方側を15°〜35°、他方側を7°〜25°の範囲内とすることが好ましい。本実施形態では、図4に示すθ1,2,5,6(一方側)の角度は同じであり、θ3,4,7,8,9(他方側)の角度が同じである。
V形陸部ブロック101の凸部110側に位置する2つの側壁部分のタイヤ幅方向に対する傾斜角度を、このような範囲内にすれば、タイヤ周方向のブロックエッジ及びサイプエッジによるエッジ効果を特に高めることができるからである。
V形陸部ブロック101には、タイヤ幅方向に対して傾斜する複数のサイプが形成される。具体的には、サイプ130及びサイプ140が形成される。サイプ130及びサイプ140は、何れもタイヤ幅方向に対して傾斜しているが、サイプ130は、タイヤ幅方向に対して、サイプ140と逆方向に傾斜する。
本実施形態では、サイプ130及びサイプ140は、ジグザグ状である。具体的には、サイプ130及びサイプ140は、トレッド面視において、その延在方向に屈曲(一つまたは複数)し、かつタイヤ径方向において直線状になるように形成される。或いは、サイプ130及びサイプ140は、その延在方向及びタイヤ径方向の両方において屈曲するように形成されてもよい。或いは、サイプ130及びサイプ140は、タイヤ径方向に屈曲し、かつその延在方向に直線状になるように形成されてもよい。或いは、サイプ130及びサイプ140は、タイヤ径方向に直線状、かつその延在方向に直線状になるように形成されてもよい。また、サイプとは、陸部ブロックの接地面内では閉じる細溝であり、非接地時におけるサイプの開口幅は、特に限定されないが、0.1mm〜1.5mmであることが好ましい。
また、V形陸部ブロック101には、タイヤ幅方向に対して傾斜する終端傾斜溝が形成される。具体的には、V形陸部ブロック101のタイヤ赤道線CL側には、終端傾斜溝150が形成される。
なお、タイヤ幅方向に対して傾斜するとは、タイヤ幅方向と平行でなく、タイヤ幅方向に対して所定の角度を有していることを意味するが、タイヤ周方向と平行となる(すなわち、タイヤ幅方向との角度が90度となる)状態は含まない。
終端傾斜溝150のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ5(傾斜方向)は、凸部側壁部111のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1(傾斜角度θ2)と同じ、つまり、当該傾斜方向は同一方向である。同様に、サイプ130のタイヤ幅方向に対する傾斜角度も、凸部側壁部111タイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1(傾斜角度θ2)と同じ(同一方向)である。なお、凹部側壁部121とサイプ130、凸部側壁部112とサイプ140、及び凹部側壁部122とサイプ140の関係も同様である。
サイプ130の一端は、タイヤ幅方向におけるV形陸部ブロック101の側壁100aに開口する。一方、サイプ130の他端は、V形陸部ブロック101内で終端する。具体的には、サイプ130の端部131は、V形陸部ブロック101内で終端する。
同様に、終端傾斜溝150の一端は、タイヤ赤道線CL側の側壁100aに開口する。一方、終端傾斜溝150の端部151は、V形陸部ブロック101内で終端する。
V形陸部ブロック101のタイヤ周方向に沿った周方向寸法は、V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向に沿った幅方向寸法よりも大きい。なお、V形陸部ブロック101の周方向寸法とは、タイヤ周方向におけるV形陸部ブロック101の最長部分の長さを意味し、具体的には、後述する図10に示す「周方向寸法」である。V形陸部ブロック101の幅方向寸法とは、側壁100aと側壁100bとの間の長さを意味し、図10に示す「幅方向寸法」と同じである。
V形陸部ブロック101に複数形成されるサイプ140には、終端傾斜溝150に連通する連通サイプが含まれる。具体的には、サイプ140には、連通サイプ141が含まれる。
連通サイプ141の一端、具体的には、端部141aは、終端傾斜溝150の終端部分である端部151に連通する。連通サイプ141の他端は、V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向における側壁100bに開口する。側壁100bは、V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向におけるトレッド端側の側壁である。
トレッド面視において、連通サイプ141の延長線上には、終端傾斜溝150の終端部分(端部151)を構成するV形陸部ブロック101の側壁100cが連なる。終端傾斜溝150の終端部分の位置は、タイヤ幅方向において、凸部110の最凸部分110aの位置と異なる。
また、終端傾斜溝150は、凹部120の最凹部分120aよりも終端傾斜溝150の開口端側に形成されるサイプ130と同方向に延びる。サイプ130は、最凹部分120aよりも終端傾斜溝150の開口端側に形成される。サイプ140は、最凹部分120aよりも終端傾斜溝150の終端(端部151)側に形成される。
凸部110の最凸部分及び凹部120の最凹部分とは、凸部110及び凹部120の屈曲点である最大凸点及び最大凹点の意味である。凸部110及び凹部120の屈曲点が2箇所の台形状であったり、複数個所であったり、凸部110及び凹部120が台形状に湾曲して最大凸点及び最大凹点がタイヤ幅方向に範囲を有する場合には、その範囲のタイヤ幅方向における中心位置を意味する。
本実施形態では、最凸部分110aは、最凹部分120aよりもトレッド端側に位置する。
終端傾斜溝150の長さは、終端傾斜溝150の開口端側に形成されるサイプ130の長さと同一である。終端傾斜溝150の長さとは、終端傾斜溝150の延在方向に沿った終端傾斜溝150の寸法である。サイプ130の長さとは、サイプ130の延在方向に沿ったサイプ130の寸法である。
終端傾斜溝150は、V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向における中心よりもタイヤ赤道線CL側に形成されるサイプ130と同方向に傾斜して延びる。
V形陸部ブロック101は、タイヤ周方向において隣接するV形陸部ブロック101A(第1ブロック)と、V形陸部ブロック101B(第2ブロック)とを含む。このように、V形陸部ブロック101は、タイヤ周方向に沿って複数設けられる。
V形陸部ブロック101Aと、V形陸部ブロック101Bとの間には、タイヤ幅方向に対して傾斜する幅方向傾斜溝が形成される。具体的には、V形陸部ブロック101Aと、V形陸部ブロック101Bとの間には、一つの屈曲部を有する幅方向傾斜溝160が形成される。
具体的には、幅方向傾斜溝160は、屈曲部163を基準としたタイヤ幅方向の一方側に位置する傾斜溝部161(第1傾斜溝部)と、屈曲部163を基準としたタイヤ幅方向の他方側に位置する傾斜溝部162(第2傾斜溝部)とを有する。傾斜溝部161は、屈曲部163よりも終端傾斜溝150の開口端側、つまり、タイヤ赤道線CL側に位置する。傾斜溝部162は、屈曲部163よりも終端傾斜溝150の終端(端部151)側に位置する。
屈曲部163は、V形陸部ブロック101Aの凸部110と、V形陸部ブロック101Bの凹部120との位置で屈曲する。つまり、屈曲部163は、タイヤ幅方向においてオフセットしている凸部110と凹部120との位置で屈曲し、この結果、幅方向傾斜溝160のタイヤ周方向に沿った周方向寸法(溝長さ)が、タイヤ幅方向において異なっている。具体的には、傾斜溝部161と傾斜溝部162とは、当該寸法が異なっており、傾斜溝部161の当該寸法は、傾斜溝部162の当該寸法よりも大きい。
また、最凸部分110aと最凹部分120aとを結んだ直線が傾斜溝部161と傾斜溝部162との境界となる。この境界線上のタイヤ周方向おける中心点と、傾斜溝部161の境界と逆側の端部のタイヤ周方向における中心点とを結んだ線分、及びこの境界と傾斜溝部162の境界と逆側の端部のタイヤ周方向における中心点とを結んだ線分を幅方向寸法という。
終端傾斜溝150は、傾斜溝部161と同方向に傾斜して延びる。サイプ130も、傾斜溝部161と同方向に延びる。サイプ140は、傾斜溝部162と同方向に延びる。
V形陸部ブロック101は、タイヤ赤道線CLを含むセンター領域またはセンター領域のタイヤ幅方向外側に位置するセカンド領域に設けられる。
本実施形態では、周方向溝とラグ溝とによって区画される陸部ブロックのうち、接地端にあるものをショルダー部陸部ブロック、ショルダー部陸部ブロックのタイヤ幅方向内側に隣接位置するものをセカンド部陸部ブロック、セカンド部陸部ブロックのタイヤ幅方向内側に隣接位置し、タイヤ赤道線CLの位置を含むものをセンター部陸部ブロック、という。
また、センター部陸部ブロック、セカンド部陸部ブロック、ショルダー部陸部ブロックそれぞれに含まれる領域を、センター領域、セカンド領域、ショルダー領域という。
センター部陸部ブロックがタイヤ幅方向に1列の場合は、センター領域とは、タイヤ赤道線CL、つまり、空気入りタイヤ10の接地幅(W)の半分であるタイヤ幅方向における接地中心から16%領域(W/2×0.16)をいい、ショルダー領域とは、接地端から42%領域(W/2×0.42)をいい、セカンド領域とは、ショルダー領域のタイヤ幅方向内側に位置し、接地幅(W)の42%領域(W/2×0.42)である。
センター部陸部ブロック列がタイヤ幅方向に隣接して2列以上の場合は、センター領域とは、タイヤ赤道線CL、つまり、空気入りタイヤ10の接地幅(W)の半分であるタイヤ幅方向における接地中心から22%領域(W/2×0.22)をいい、ショルダー領域とは、接地端から39%領域(W/2×0.39)をいい、セカンド領域とは、ショルダー領域のタイヤ幅方向内側に位置し、接地幅(W)の39%領域(W/2×0.39)である。
センター領域、セカンド領域、ショルダー領域の複数の領域に跨がる陸部ブロックの場合、存在する面積が大きい方の領域の陸部ブロックとする。例えば、セカンド領域よりもセンター領域に存在する面積が大きい場合はセンター部陸部ブロックとする。
また、周方向溝(陸部ブロック)の形状などによって、センター部陸部ブロック、セカンド部陸部ブロック、ショルダー部陸部ブロックの周方向溝による区画位置が判別困難な場合には、センター領域に存在する陸部ブロックはセンター部陸部ブロック、セカンド領域に存在する陸部ブロックはセカンド部陸部ブロック、ショルダー領域に存在する陸部ブロックはショルダー部陸部ブロックの範囲となる。
また、接地幅(W)は、正規内圧に設定された空気入りタイヤ10に正規荷重が掛けられた場合に路面に接地するトレッド20のタイヤ幅方向における寸法をいう。同様に、接地面(接地面積)は、正規内圧に設定された空気入りタイヤ10に正規荷重が掛けられた場合に路面に接地するトレッド20の部分を意味する。
正規内圧とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYearBookにおける最大負荷能力に対応する空気圧であり、正規荷重とは、JATMA YearBookにおける最大負荷能力に対応する最大負荷能力(最大荷重)である。
V形陸部ブロック101のネガティブ率は、2.5%以上、30%以下である。なお、当該ネガティブ率は、2.5%〜12.5%であることが好ましい。
V形陸部ブロック101のネガティブ率とは、V形陸部ブロック101の面積を、V形陸部ブロック101内に存在する終端傾斜溝150及び切欠き凹部170を含んだ面積(以下同)とし、この面積に対する、終端傾斜溝150及び切欠き凹部170の面積の和の比率である。つまり、空気入りタイヤ10全体のネガティブ率、溝部分の面積を含んだタイヤの接地面積に対する溝部分の合計面積の比率である溝面積比率を、陸部ブロック1つについて算出したものである。なお、サイプは接地面内で閉じるので面積は零となる。
また、V形陸部列100のネガティブ率は、6%以上、36%%以下である。なお、当該ネガティブ率は、8%〜23%であることが好ましい。
V形陸部列100のネガティブ率とは、V形陸部列100のタイヤ幅方向の両側の側壁(側壁100a〜側壁100b)間の面積を、V形陸部列100内に存在する終端傾斜溝150及び切欠き凹部170と、幅方向傾斜溝160とを含んだ面積とし、この面積に対する、終端傾斜溝150及び切欠き凹部170と、幅方向傾斜溝160との面積と合計の面積の比率である。お、サイプは接地面内で閉じるので面積は零となる。
V形陸部ブロック101の幅方向寸法(図10参照)に対する終端傾斜溝150の幅方向寸法の比率は、24%以上、64%以下である。なお、当該比率は、34%〜54%であることが好ましい。また、タイヤのトレッド幅に対するV形陸部ブロック101の幅方向寸法の比率は、8%以上、38%以下である。なお、当該比率は、10%〜25%であることが好ましい。
V形陸部ブロック101の周方向寸法(図10参照)に対する終端傾斜溝150の周方向寸法の比率は、7%以上、37%以下である。なお、当該比率は、9%〜29%であることが好ましい。終端傾斜溝150の周方向寸法とは、タイヤ周方向に沿った終端傾斜溝150の長さ(図10参照)を意味する。また、終端傾斜溝150の幅方向寸法とは、タイヤ幅方向に沿った終端傾斜溝150の長さ(図10参照)を意味する。なお、以下、他の溝部分についても同様である。
終端傾斜溝150の幅方向寸法に対する、終端傾斜溝150の周方向寸法の比率は、2.5%以上、20%以下である。なお、当該比率は、3%〜10%であることが好ましい。
V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向端に位置する側壁100bには、V形陸部ブロック101を切り欠いたように凹む切欠き凹部が形成される。具体的には、V形陸部ブロック101には、切欠き凹部170が形成される。
V形陸部ブロック101に形成されるサイプ140には、切欠き凹部170に連通する連通サイプ(連通サイプ142)が含まれる。
切欠き凹部170のタイヤ周方向に沿った周方向寸法(図10参照)は、タイヤ幅方向におけるV形陸部ブロック101の端部、具体的には、側壁100bに行くに連れて大きくなる。
本実施形態では、切欠き凹部170は、楔形の楔形溝である。但し、切欠き凹部170の形状は、トレッド面視において、V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向における中心に向かって先細りになる楔形(三角形)に限定されない。例えば、切欠き凹部170は、トレッド面視において半円状(扇型)や、角部が面取りされている四角形状など、連通サイプ142のエッジが鋭角とならない形状であればよい。
図5は、連通サイプ142を含むV形陸部ブロック101の一部拡大平面図である。図5に示すように、連通サイプ142を形成するV形陸部ブロック101の一方の側壁(側壁100d)は、切欠き凹部170(楔形溝)を形成するV形陸部ブロック101の一方の側壁(側壁100e)に連なる。側壁100dは、連通サイプ142と同方向に延びる。
また、連通サイプ142を形成するV形陸部ブロック101の他方の側壁(側壁100f)は、楔形溝を形成するV形陸部ブロック101の他方の側壁(側壁100g)に連なる。側壁100gは、タイヤ幅方向に対して、つまり、タイヤ幅方向を基準として、連通サイプ142と逆方向に延在する。
切欠き凹部170の面積を含むV形陸部ブロック101の面積に対する切欠き凹部170の面積の比率は、0.3%以上、15%以下である。なお、当該比率は、0.3%〜7%であることが好ましい。
V形陸部ブロック101の幅方向寸法に対する切欠き凹部170の幅方向寸法(図10参照)の比率は、9%以上、38%以下である。なお、当該比率は、9,2%〜30%であることが好ましく、11%〜26%であることがさらに好ましい。また、V形陸部ブロック101の周方向寸法に対する切欠き凹部170の周方向寸法の比率は、3%以上、23%以下である。なお、当該比率は、3%〜13%であることが好ましい。
また、切欠き凹部170の周方向寸法に対する、切欠き凹部170の幅方向寸法の比率は、130%以上、270%以下である。なお、当該比率は、150%〜230%であること。
切欠き凹部170は、V形陸部ブロック101のトレッド端部側の側壁100bに形成される。切欠き凹部170は、タイヤ赤道線CL側に凹んでおり、切欠き凹部170の周方向寸法は、トレッド端部側に行くに連れて大きくなる。
V形陸部ブロック101は、凸部110の最凸部分110aよりもタイヤ幅方向における一方側に形成され、タイヤ幅方向に対して傾斜する凸部側壁部111(凸部第1側壁部)と、凸部110の最凸部分110aよりもタイヤ幅方向における他方側に形成され、タイヤ幅方向に対して傾斜する凸部側壁部112(凸部第2側壁部)とを含む。
タイヤ幅方向における一方側、具体的には、タイヤ赤道線CL側に形成されるサイプ130は、凸部側壁部111と同方向に延びる。一方、タイヤ幅方向における他方側、具体的には、トレッド端部側に形成されるサイプ140は、凸部側壁部112と同方向に延びる。
凸部側壁部111は、凸部側壁部112よりも長い。具体的には、凸部側壁部111のトレッド面視における側壁面に沿った長さは、凸部側壁部112のトレッド面視における側壁面に沿った長さよりも長い。また、サイプ130は、サイプ140よりも短い。具体的には、サイプ130の延在方向に沿った長さ(ジグザグ部分による振幅は含まない)は、サイプ140の延在方向に沿った長さ(ジグザグ部分による振幅は含まない)よりも短い。
V形陸部ブロック101は、最凹部分120aよりもタイヤ幅方向における一方側、具体的には、タイヤ赤道線CL側に形成され、タイヤ幅方向に対して傾斜する凹部側壁部121(凹部第1側壁部)と、最凹部分120aよりもタイヤ幅方向における他方側、具体的には、トレッド端部側に形成され、タイヤ幅方向に対して傾斜する凹部側壁部122(凹部第2側壁部)とを含む。
凹部側壁部121は、凹部側壁部122よりも長い。具体的には、凹部側壁部121のトレッド面視における側壁面に沿った長さは、凹部側壁部122のトレッド面視における側壁面に沿った長さよりも長い。また、凸部側壁部111は、凹部側壁部121よりも長い。さらに、凹部側壁部122は、凹部側壁部121よりも長い。具体的には、凹部側壁部122のトレッド面視における側壁面に沿った長さは、凹部側壁部121のトレッド面視における側壁面に沿った長さよりも長い。
本実施形態では、凸部側壁部111の傾斜角度(傾斜方向)と、凹部側壁部121の傾斜角度(傾斜方向)とは、同じ(同一方向)である。
V形陸部ブロック101の最凸部分110aは、V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向における中心からタイヤ幅方向にオフセットしている。オフセット量は、V形陸部ブロック101の幅方向寸法の2.5%〜22.5%とすることが好ましい。
最凸部分110aをV形陸部ブロック101幅の2.5%〜22.5%だけ、中心からずれて配置すれば、トレッド端側の幅方向傾斜溝160の周方向寸法を小さくし、V形陸部ブロック101の周方向寸法を大きくすることによって、トレッド端側におけるブロック剛性を向上させる。また、タイヤ赤道線CL側の幅方向傾斜溝160の周方向寸法を大きくし、V形陸部ブロック101の周方向寸法を小さくすることによって、ブロック剛性を低下させて、トレッド端側よりもV形陸部ブロック101が適度に倒れ込み、タイヤ赤道線CL側でブロックエッジ及びサイプエッジによるエッジ効果を向上させる。これにより、V形陸部ブロック101のブロック剛性をバランス良く構成でき、氷上性能と耐摩耗性性能との両立に寄与する。
屈曲部163よりもタイヤ幅方向における一方側に位置する傾斜溝部161のタイヤ周方向に沿った周方向寸法W1は、屈曲部163よりもタイヤ幅方向における他方側に位置する傾斜溝部162のタイヤ周方向に沿った周方向寸法W2よりも大きい。周方向寸法W1及び周方向寸法W2とは、他の溝部分の周方向寸法と同様に、タイヤ周方向に沿った傾斜溝部161及び傾斜溝部162の長さを意味する。
屈曲部163よりもタイヤ幅方向における一方側、具体的には、タイヤ赤道線CL側に形成されるサイプ130は、傾斜溝部161と同方向に延びる。一方、屈曲部163よりもタイヤ幅方向における他方側、具体的には、トレッド端部側に形成されるサイプ140は、傾斜溝部162と同方向に延びる。
また、サイプ140は、サイプ130よりもタイヤ幅方向における幅が広いサイプを含む。具体的には、図4に示すサイプ140及び連通サイプ141は、サイプ130よりもタイヤ幅方向における幅が広い。
タイヤ幅方向における傾斜溝部161の寸法である幅方向寸法は、傾斜溝部162の幅方向寸法よりも大きい。また、サイプ130の端部131は、凸部110の最凸部分110aよりもタイヤ幅方向における端部側、具体的には、側壁100a側において終端する。
傾斜溝部161の周方向寸法W1は、傾斜溝部162の周方向寸法W2の1.32倍以上、2.17倍以下である。なお、W1は、W2の1.64倍〜1.96倍であることが好ましい。
V形陸部ブロック101の面積に対する幅方向傾斜溝160の面積の比率は、10%以上、40%以下である。なお、当該比率は、12%〜32%であることが好ましい。また、空気入りタイヤ10の接地面積に対するV形陸部ブロック101の面積の比率は、10%以上、31%以下である。なお、当該比率は、9%〜12%であることが好ましい。
V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向における幅(側壁100a〜側壁100b間)に対する傾斜溝部161の幅方向寸法の比率は、50%以上、78%以下である。なお、当該比率は、52%〜68%であることが好ましい。
また、傾斜溝部161の周方向寸法は、例えば2.7〜6.1mm程度、傾斜溝部162の周方向寸法は、例えば1.4〜3.9mm程度とすることが好ましい。
(2.2)中央陸部列200
図6は、中央陸部列200の一部拡大平面図である。中央陸部列200は、タイヤ周方向に沿って設けられる(陸部列201(第1陸部列)及び陸部列202(第2陸部列)によって構成される複合陸部列である。陸部列201と陸部列202とは、タイヤ幅方向において隣接する。
本実施形態では、陸部列201は、陸部列202よりもタイヤ赤道線CL寄りに設けられる。また、中央陸部列200の少なくとも一部は、タイヤ赤道線CLを含むセンター領域に設けられる。なお、センター領域の定義は、上述したとおりである。
陸部列201は、タイヤ周方向に沿って形成される複数の陸部ブロック210(第1陸部ブロック)によって構成される。また、陸部列202は、タイヤ周方向に沿って形成される複数の陸部ブロック260(第2陸部ブロック)によって構成される。
陸部ブロック210には、タイヤ幅方向に対して傾斜し、陸部列202側の側壁210aに開口する終端傾斜溝220(第1終端傾斜溝)が形成される。また、陸部ブロック210には、陸部列202側と逆側の側壁210bに開口する楔形の切欠き溝240が形成される。
なお、切欠き溝240は、楔形に限定されず、切欠き溝240の先端に行くに連れて先細状になるような形状であればよい。
終端傾斜溝220の一端、具体的には、端部221は、陸部ブロック210内で終端する。また、切欠き溝240の先端241も陸部ブロック210内で終端する。
隣接する陸部ブロック260間には、隣接する陸部ブロック260を分断する横断傾斜溝が形成される。具体的には、隣接する陸部ブロック260間には、横断傾斜溝270が形成される。
横断傾斜溝270は、終端傾斜溝220と同じ方向に傾斜する。つまり、トレッド面視において、横断傾斜溝270の延在方向と、終端傾斜溝220の延在方向とは、同一方向である。
陸部ブロック210には、横断傾斜溝270の延在方向と異なる方向であってタイヤ幅方向に対して傾斜して延びるサイプ230が複数形成される。また、陸部ブロック260にも、横断傾斜溝270の延在方向と異なる方向であってタイヤ幅方向に対して傾斜して延びるサイプ290が複数形成される。本実施形態では、サイプ230及びサイプ290は、トレッド面視においてジグザグ状である。
横断傾斜溝270に沿った延長線上には、終端傾斜溝220及び切欠き溝240が位置する。
陸部ブロック260には、終端傾斜溝220と同じ方向に傾斜し、第1陸部列側と逆側の側壁に開口する(終端傾斜溝280(第2終端傾斜溝)が形成される。終端傾斜溝280の一端、具体的には、端部281は、陸部ブロック260内で終端する。
サイプ230には、終端傾斜溝220に連通する連通サイプ231が含まれる。連通サイプ231の一端は、終端傾斜溝220の終端部分(端部221)に連通する。一方、連通サイプ231の他端は、陸部列202側と逆側の側壁210bに開口する。
終端傾斜溝220及び横断傾斜溝270は、タイヤ幅方向に対して、サイプ230及びサイプ290と逆方向に傾斜する。
横断傾斜溝270は、終端傾斜溝220と同一の周方向寸法(溝幅)を有する第1溝幅部271(第1溝部)と、第1溝幅部271よりも周方向寸法(溝幅)が広い第2溝幅部272(第2溝部)とを有する。第1溝幅部271は、陸部ブロック210側に形成される。
また、陸部列201側と逆側の横断傾斜溝270の端部には、鉤状溝部が形成される。具体的には、横断傾斜溝270の端部には、鉤状溝部273が形成される。鉤状溝部273は、サイプ290と同じ方向に傾斜するとともに、終端傾斜溝280とタイヤ幅方向を基準として逆方向に傾斜する。鉤状溝部273は、第2溝幅部272に連通する。
また、陸部列201と陸部列202との間には、タイヤ周方向に延びる周方向溝60(列内周方向溝)が形成される。周方向溝60は、タイヤ周方向に直線的に延びていない。周方向溝60は、周方向溝部と、傾斜ラグ溝部とを有する。
具体的には、周方向溝60は、タイヤ周方向に延びるとともにタイヤ周方向に対して傾斜する周方向溝部61と、タイヤ周方向において隣接する周方向溝部61に連通し、タイヤ幅方向に延びるとともに、タイヤ幅方向に対して終端傾斜溝220と同じ方向に傾斜する傾斜ラグ溝部62とを有する。
陸部ブロック210のタイヤ周方向の端部に位置する側壁、具体的には、(側壁210c, 210dは、タイヤ幅方向に対して傾斜する。同様に、陸部ブロック260のタイヤ周方向の端部に位置する側壁、具体的には、側壁220c, 220dも、タイヤ幅方向に対して傾斜する。
また、これらの側壁は、タイヤ幅方向に対して、つまり、タイヤ幅方向を基準として、サイプ230及びサイプ290と逆方向に傾斜する。さらに、タイヤ幅方向に対するサイプ230及びサイプ290の傾斜角度は、タイヤ幅方向に対する側壁(側壁210c, 210d, 220c, 220d)の傾斜角度よりも大きい。
具体的には、サイプ230及びサイプ290の当該傾斜角度は、9度以上、39度以下である。なお、当該傾斜角度は、12度〜24度であることが好ましい。また、側壁(側壁210c, 210d, 220c, 220d)の当該傾斜角度は、6度以上、36度以下である。なお、当該傾斜角度は、11度〜31度であることが好ましい。
横断傾斜溝270の延在方向は、タイヤ幅方向に対してサイプ230及びサイプ290と異なる方向に傾斜する。具体的には、トレッド面視において、横断傾斜溝270に沿った延長線の延在方向は、右上がりに傾斜する。一方、サイプ230及びサイプ290の延在方向は、左上がりに傾斜する。
空気入りタイヤ10の路面との接地面内における終端傾斜溝220、終端傾斜溝280及び横断傾斜溝270の合計面積を溝合計面積S1とし、中央陸部列200のタイヤ幅方向における一方の端部から、中央陸部列200のタイヤ幅方向における他方の端部までの陸部と溝部との合計面積を複合陸部列合計面積S2とした場合、S1/S2は、0.05以上、0.25以下である。なお、S1/S2は、0.05〜0.15であることが好ましい。
また、陸部ブロック210において隣接するサイプ230の周方向における間隔は、3.3mm以上、10.0mm以下である。なお、当該サイプ間隔は、3.7mm〜5.6mmであることが好ましい。また、陸部ブロック260において隣接するサイプ290の周方向における間隔は、4.4mm以上、10.0mm以下である。なお、当該サイプ間隔は、5.5mm〜8.3mmであることが好ましい。
サイプ230の周方向における間隔は、図11に示す「サイプ間隔」であり、タイヤ周方向に平行な直線と交差する、隣接サイプ230間の間隔(距離)である。
陸部ブロック210のネガティブ率は、8.9%以上、20.7%以下である。なお、当該ネガティブ率は、11.8%〜17.8%であることが好ましい。また、陸部ブロック260のネガティブ率は、11.8%以上、27.4%以下である。なお、当該ネガティブ率は、15.7%〜23.5%であることが好ましい。
さらに、陸部ブロック210、及び陸部ブロック210に隣接する陸部ブロック260の平均ネガティブ率は、13.2%以上、30.8%以下である。なお、当該ネガティブ率は、17.6%〜26.4%であることが好ましい。
陸部ブロック210のネガティブ率とは、陸部ブロック210の陸部(接地中の閉じるサイプを含まない)と、陸部ブロック210に形成される終端傾斜溝220及び切欠き溝240との合計面積に対する、終端傾斜溝220及び切欠き溝240との合計面積の比(パーセンテージ)である。また、陸部ブロック260のネガティブ率とは、陸部ブロック260の陸部(接地中の閉じるサイプを含まない)と陸部ブロック260に形成される終端傾斜溝280との合計面積に対する、終端傾斜溝280の面積の比である。
本実施形態では、タイヤ幅方向に対するサイプ290の傾斜角度、タイヤ幅方向に対する終端傾斜溝220、第2終端傾斜溝及び横断傾斜溝270の傾斜角度は、陸部ブロック210におけるタイヤ幅方向に対するサイプ230の傾斜角度及び終端傾斜溝220の傾斜角度以上である。
また、終端傾斜溝220、第2終端傾斜溝及び横断傾斜溝270は、タイヤ幅方向に対して、サイプ230, サイプ290と逆方向に傾斜する。
図7(a)及び(b)は、陸部ブロック210に生じる回転モーメントと、従来の陸部ブロック210Pに生じる回転モーメントとの説明図である。
図7(a)及び(b)に示すように、タイヤ周方向端の側壁に沿ったベクトル方向の力は、陸部ブロック210及び陸部ブロック210Pを回転させようとしないが、タイヤ周方向端の側壁に垂直なベクトル方向の入力は、当該陸部ブロックを回転させようとするモーメントを発生させる(図7(a)及び(b)では、左回転方向)。
陸部ブロック210では、タイヤ周方向の入力に対して、陸部ブロック210のタイヤ周方向端の側壁位置と、サイプ230が形成されている位置とに発生する回転モーメントが互いに逆方向に回転しようと発生するため、回転モーメント同士が打消し合うことで、陸部ブロック210の変形が抑制される。
(2.3)ショルダー陸部列300in及びショルダー陸部列300out
図8は、ショルダー陸部列300inの一部拡大平面図である。図9は、ショルダー陸部列300inを構成する陸部ブロック310の拡大斜視図である。
ショルダー陸部列300inとショルダー陸部列300outとは、タイヤ赤道線CLを基準とした対称の形状を有している。ここでは、ショルダー陸部列300inの形状について説明する。
ショルダー陸部列300inを構成する陸部ブロック310は、周方向溝50とラグ溝70とによって区画された陸部ブロックである。本実施形態では、陸部ブロック310は、タイヤ幅方向における路面との接地端を含むトレッド端部に設けられる。
陸部ブロック310には、タイヤ周方向に延びるジグザグ状の周方向サイプ320と、タイヤ幅方向に延びるジグザグ状の幅方向サイプ330(赤道側幅方向サイプ)、幅方向サイプ340(トレッド端側幅方向サイプ)とが形成される。
幅方向サイプ330は、周方向サイプ320よりもタイヤ赤道線CL側に位置する。幅方向サイプ340は、周方向サイプ320よりもタイヤ幅方向におけるトレッド端側に位置する。
タイヤ周方向に延びるジグザグ状の周方向サイプとは、トレッド面における延在方向がタイヤ周方向であって、その延在方向において、ジグザグ状に屈曲しているサイプをいう。タイヤ幅方向に延びるジグザグ状の幅方向サイプとは、トレッド面における延在方向がタイヤ幅方向であって、その延在方向において、ジグザグ状に屈曲しているサイプをいう。
陸部ブロック310において、周方向サイプ320によってタイヤ幅方向におけるエッジ成分となる幅方向エッジ成分の合計L1と、幅方向サイプ330, 幅方向サイプ340によってタイヤ周方向におけるエッジ成分となる周方向エッジ成分の合計L2との比L1/L2は、16.0%以上、37.4%以下である。なお、L1/L2は、21.4%〜32.0%であることが好ましい。
なお、エッジ成分とは、空気入りタイヤ10が溝またはサイプなどで路面を引っ掻く際に、溝またはサイプなどの空気入りタイヤ10への路面からの入力方向に対して直角方向に働くエッジ効果を発揮するものであり、路面からの入力方向と垂直な方向にサイプが延在している寸法(長さ)をいう。
陸部ブロック内の幅方向サイプ1本のエッジ成分は、トレッド表面で幅方向サイプが直線状に延在しても、ジグザグ波形などの振幅を有するものでも、サイプをタイヤ赤道線CLに対して90度傾斜した直線上、つまり、タイヤ幅方向と平行な直線上に投影した寸法である。
また、上述のように特に断りのない場合、エッジ成分とは、タイヤ周方向に対して力が働く陸部ブロックのタイヤ幅方向に沿った、いわゆる周方向エッジ成分のことをエッジ成分という。エッジ成分には、ブロックのエッジによるブロックエッジ成分と、サイプのエッジによるサイプエッジ成分などがある。
また、陸部ブロック310のタイヤ周方向における平均寸法L3に対する、合計L1及び合計L2の合計の比(L1+L2)/L3は、3.4以上、7.8以下である。なお、当該比は、3.9〜5.9であることが好ましい。平均寸法L3とは、タイヤ周方向に沿って複数形成される陸部ブロック310の周方向寸法のバリエーションが複数存在する場合、つまり、ショルダー陸部列300inが複数のピッチを有する場合、当該複数の陸部ブロック310の周方向寸法の平均値を意味する。
本実施形態では、周方向サイプ320のジグザグ状の繰り返し周期Tは、互いにタイヤ周方向に隣接する幅方向サイプ340の間隔hと等しい。なお、周期Tは、間隔hよりも小さくてもよい。
また、周方向サイプ320のタイヤ幅方向における振幅である幅方向振幅(振幅A1)は、幅方向サイプ340のタイヤ周方向における振幅である周方向振幅(振幅A2, A3)よりも大きい。
陸部ブロック310には、タイヤ周方向に延びる周方向副サイプが形成される。具体的には、陸部ブロック310には、直線状の周方向直線サイプ351及び周方向直線サイプ352が形成される。なお、周方向副サイプは、周方向直線サイプ351及び周方向直線サイプ352のような直線状でなくてもよく、角度が浅い一つの屈曲部などを有していても構わない。
周方向直線サイプ351及び周方向直線サイプ352の一端は、幅方向サイプ340に連通する。一方、周方向直線サイプ351及び周方向直線サイプ352の他端は、陸部ブロック310のタイヤ周方向端側に位置する側壁310a, 310bに開口する。
周方向サイプ320は、タイヤ周方向と平行に直線状に延びる直線状部を含む。具体的には、周方向サイプ320は、直線状部321及び直線状部322)を含む。
直線状部321及び直線状部322は、陸部ブロック310のタイヤ周方向における端部に形成される。具体的には、直線状部321は、陸部ブロック310のタイヤ周方向端の側壁310a側に形成され、直線状部322は、側壁310b側に形成される。
直線状部321及び直線状部322は、周方向サイプ320のタイヤ幅方向における振幅A1の中心位置CTからオフセットした位置に形成される。つまり、直線状部321及び直線状部322は、タイヤ幅方向において中心位置CTからずれた位置に形成される。
幅方向サイプ330のトレッド端側の端部332は、周方向サイプ320と連通する。一方、幅方向サイプ340のタイヤ赤道線CL側の端部341は、周方向サイプ320と連通せずに、周方向サイプ320よりもトレッド端側において陸部ブロック310内で終端する。
また、幅方向サイプ330のタイヤ赤道線CL側の端部331は、陸部ブロック310に隣接する周方向溝、具体的には、タイヤ赤道線CL側に形成されている周方向溝50に連通する。一方、幅方向サイプ340のトレッド端側の端部341は、陸部ブロック310内で終端する。
さらに、幅方向サイプ330のトレッド端側の端部332は、ジグザグ状の周方向サイプ320の頂部323に連通する。幅方向サイプ340は、ジグザグ状の周方向サイプ320の頂部323に連通する幅方向サイプ330の延長線上に位置する。
周方向サイプ320は、タイヤ幅方向における所定の振幅(振幅A1)を有する。幅方向サイプ340の端部341は、振幅A1内に位置する。
陸部ブロック310のタイヤ周方向端側に位置する側壁310bには、陸部ブロック310を切り欠いたような切欠き状の段差部が形成される。具体的には、陸部ブロック310のタイヤ幅方向におけるトレッド端側の端部に、段差部360が形成される。
段差部360は、陸部ブロック310のタイヤ周方向端側の一方の側壁のみ、具体的には、側壁310bのみに形成される。
図9に示すように、段差部360は、ラグ溝70の溝底70bよりもタイヤ径方向外側に位置する上げ底面を有する。具体的には、段差部360は、タイヤ幅方向に延びる長方形状の上げ底面361を有する。
本実施形態では、上げ底面361は、タイヤ側面視において、タイヤ径方向に対して傾斜する。上げ底面361のタイヤ径方向における位置は、特に限定されないが、陸部ブロック310のブロック剛性を確保する観点から、陸部ブロック310の高さ(タイヤ径方向における長さ)の25%〜50%とすることが好ましい。
周方向直線サイプ352の一端部、具体的には、側壁310b側の端部352aは、陸部ブロック310の段差部360側のタイヤ周方向端の側壁310bに開口する。つまり、端部352aは、段差部360のタイヤ赤道線CL側の端部362に開口する。一方、周方向直線サイプ352の他端部、具体的には、幅方向サイプ340側の端部352bは、幅方向サイプ340に連通する。
上げ底面361は、陸部ブロック310のタイヤ周方向端、つまり、側壁310bに向かうに連れて、タイヤ径方向における高さが低くなるように傾斜する。
陸部ブロック310のタイヤ周方向端側の側壁には、タイヤ周方向において所定の振幅を有するジグザグ面が形成される。具体的には、側壁310a及び側壁310bには、ジグザグ面380がそれぞれ形成される。ジグザグ面380は、側壁310a及び側壁310bのタイヤ赤道線CL側の端部に形成される。ジグザグ面380の形状は、トレッド面視において、幅方向サイプ340と同形状である。
(3)空気入りタイヤ10における陸部ブロックのピッチとサイプとの関係
次に、図10〜図13も参照しつつ、空気入りタイヤ10におけるピッチとサイプの関係についてさらに説明する。
図10は、V形陸部列100の各種寸法の規定を示す図である。図11は、中央陸部列200の各種寸法の規定を示す図である。図12は、ショルダー陸部列300inの各種寸法の規定を示す図である。図13は、図1〜図12に示した空気入りタイヤ10と異なるピッチが設定された空気入りタイヤ10Aの一部平面展開図である。
上述したように、空気入りタイヤ10(及び空気入りタイヤ10A、以下同)には、複数の陸部ブロックのうち、少なくとも一部の陸部ブロックにおいて、タイヤ幅方向に延びる一つまたは複数のサイプが形成される。
タイヤ周方向において隣接するサイプの平均間隔である平均サイプ間隔をhとし、タイヤ周方向における陸部ブロックの繰り返し単位の平均寸法である平均ピッチ長をLとした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
0.130≦(h/L)≦0.400
なお、(h/L)は、0.137〜0.197の範囲がより好ましく、0.144〜0.19の範囲がさらに好ましい。
ここで、平均サイプ間隔h(単位mm)とは、陸部ブロック内のサイプとタイヤ周方向に隣接するサイプとの平均の周方向寸法である。但し、サイプとタイヤ周方向に隣接するサイプが存在しない場合には、陸部ブロックのタイヤ周方向端と、サイプとの周方向寸法とする。
また、サイプが全く形成されていない場合(0本の場合)には、陸部ブロックの一方のタイヤ周方向端と、他方のタイヤ周方向端との周方向寸法となる。通常、陸部ブロックは、タイヤ周方向にほぼ均等にサイプによって分断されるが、均等でない場合もある。ここでは、特に断りのない限り、平均サイプ間隔hは、陸部ブロック列の周上に設けられる全ての陸部ブロックにおける平均値である。
また、ピッチとは、1種類または複数の種類の長さでタイヤ周方向に連続して繰り返される模様で構成されているトレッドパターンの1つの基本単位である。平均ピッチ長L(単位mm)とは、ピッチのタイヤ周方向における距離をいう。特に断りのない限り、平均ピッチ長Lは、陸部ブロック列内での平均のピッチの周方向寸法をいう。
また、平均サイプ間隔hと、平均ピッチ長Lとは、以下の関係を満たすことが好ましい。
140(mm)2≦(h*L)≦350(mm)2(以下、単位(mm)2は省略)
なお(h*L)は、148〜250の範囲がより好ましく、150〜220の範囲がさらに好ましい。
センター部陸部ブロックの平均サイプ間隔hは、3.0mm≦h≦7.1mmの関係を満たすことが好ましい。なお、センター部陸部ブロックの平均サイプ間隔hは、3.5mm≦h≦6.6mmの関係を満たすことがより好ましく、3.7mm≦h≦5.6mmの関係を満たすことがさらに好ましい。
セカンド部陸部ブロックの平均サイプ間隔hは、3.3mm≦h≦7.7mmの関係を満たすことが好ましい。なお、セカンド部陸部ブロックの平均サイプ間隔hは、3.8mm≦h≦7.2mmの関係を満たすことがより好ましく、4.1mm≦h≦6.1mmの関係を満たすことがさらに好ましい。
また、ショルダー部陸部ブロックの平均サイプ間隔hは、3.7mm≦h≦8.5mmの関係を満たすことが好ましい。なお、ショルダー部陸部ブロックの平均サイプ間隔hは、4.2mm≦h≦8.0mmの関係を満たすことがより好ましく、4.5mm≦h≦6.8mmの関係を満たすことがさらに好ましい。
なお、センター部、セカンド部及びショルダー部の定義は、上述したとおりである。
本実施形態に係る空気入りタイヤ10の陸部ブロックには、タイヤ幅方向に延びるサイプが複数形成される。この場合、平均サイプ間隔hは、3.4mm≦h≦7.9mmの関係を満たすことが好ましい。なお、この場合、平均サイプ間隔hは、3.9mm≦h≦7.4mmの関係を満たすことがより好ましく、4.2mm≦h≦6.3mmの関係を満たすことがさらに好ましい。
また、この場合、平均ピッチ長Lは、19.2mm≦L≦44.6mmの関係を満たすことが好ましい。なお、平均ピッチ長Lは、22.0mm≦L≦41.6mmの関係を満たすことがより好ましく、23.6mm≦L≦35.4mmの関係を満たすことがさらに好ましい。
また、全ての陸部ブロックのタイヤ周方向に対するエッジ成分の平均である平均ブロックエッジ成分をDballとし、全てのサイプのタイヤ周方向に対するエッジ成分の平均である平均サイプエッジ成分をDsallとし、全ての陸部ブロックの剛性値の平均である平均ブロック剛性をGとした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
2.20(mm)3/N≦(Dball/Dsall)/G≦4.00(mm)3/N(以下、単位(mm)3/Nは省略)
なお、エッジ成分の定義については、上述したとおりである。また、平均ブロック剛性Gの元となるブロック剛性とは、タイヤ周方向におけるせん断変形を与えたときの値である。具体的には、単位面積当たりのブロック剛性は、以下の式によって算出される。
せん断応力(N/mm)/陸部ブロック接地面積(mm2)
実際には、特許4615983号明細書に記載されているようなアムスラー試験機を用いた測定をFEMによって算出したものである。
センター部陸部ブロックを対象とした(Dballc/Dsallc)/GcをRcとし、セカンド部陸部ブロックを対象とした(Dball2/Dsall2)/G2をR2とした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
2.20≦(Dball/Dsall)/G≦4.00
1.10≦(R2/Rc)≦5.88
なお、2.40≦(R2/Rc)≦3.55を満たすことがより好ましく、2.50≦(R2/Rc)≦3.50を満たすことがさらに好ましい。
また、セカンド部陸部ブロックを対象とした(Dball2/Dsall2)/G2をR2とし、ショルダー部陸部ブロックを対象とした(Dballs/Dsalls)/GsをRsとした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
1.10≦(Rs/R2)≦2.90
なお、1.10≦(Rs/R2)≦2.35を満たすことがより好ましく、1.20≦(Rs/R2)≦1.80を満たすことがさらに好ましい。
さらに、全ての陸部ブロックのタイヤ周方向に対するエッジ成分の平均である平均ブロックエッジ成分をDballとし、全てのサイプのタイヤ周方向に対するエッジ成分の平均である平均サイプエッジ成分をDsallとした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
0.15≦(Dball/Dsall)≦0.48
なお、0.21≦(Dball/Dsall)≦0.31を満足することがより好ましく、0.23≦(Dball/Dsall)≦0.29を満足することがさらに好ましい。
また、センター部陸部ブロックを対象とした(Dballc/Dsallc)をPcとし、セカンド部陸部ブロックを対象とした(Dball2/Dsall2)をP2とした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
1.12≦(P2/Pc)≦5.88
なお、1.15≦(P2/Pc)≦4.00を満足することがより好ましく、1.17≦(P2/Pc)≦2.50を満足することがさらに好ましい。
さらに、センター部陸部ブロックを対象とした(Dballc/Dsallc)をPcとし、セカンド部陸部ブロックを対象とした(Dball2/Dsall2)をP2とし、ショルダー部陸部ブロックを対象とした(Dballs/Dsalls)をPsとした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
0.81≦{(Ps/P2)/(P2/Pc)}≦3.70
なお、0.94≦{(Ps/P2)/(P2/Pc)}≦3.00を満足することがより好ましく、0.96≦{(Ps/P2)/(P2/Pc)}≦2.80を満足することがさらに好ましい。
また、センター部陸部ブロックにおいて、タイヤ周方向において隣接するサイプの平均間隔である平均サイプ間隔をhcとし、セカンド部陸部ブロックにおける平均サイプ間隔をh2とした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
1.00≦(h2/hc)≦7.00
なお、1.12≦(h2/hc)≦4.00を満足することがより好ましく、1.12≦(h2/hc)≦2.00を満足することがさらに好ましい。
さらに、ショルダー部陸部ブロックにおける平均サイプ間隔をhsとした場合、以下の関係を満たすことが好ましい。
1.05≦(hs/hc)≦4.00
なお、1.05≦(hs/hc)≦3.00を満足することがより好ましく、1.82≦(hs/hc)≦2.33を満足することがさらに好ましい。
さらに、以下の関係を満たすことが好ましい。
0.97<≦(hs/h2)≦2.15
なお、0.97≦(hs/h2)≦1.71を満足することがより好ましく、0.98≦(hs/h2)≦1.27を満足することがさらに好ましい。
(4)作用・効果
次に、上述した空気入りタイヤ10の作用・効果について説明する。具体的には、空気入りタイヤ10全体としての作用・効果、及びV形陸部列100、中央陸部列200、ショルダー陸部列300in, ショルダー陸部列300outの作用・効果について説明する。
(4.1)V形陸部列100
V形陸部ブロック101は、タイヤ周方向の一方の側壁に凸部110を、他方の側壁に凹部120を有し、その両側の側壁の傾斜角度が同じであり、V形陸部ブロック101内部のサイプ130, 140または終端傾斜溝150を側壁と同じ傾斜角度である。このため、凸部110の頂点がある最凸部分110a(中央部)で屈曲部を有することで、屈曲部のない長方形状の陸部ブロックに比べて、中央部の剛性が高くなり、V形陸部ブロック101全体の剛性が高くなる。これにより、V形陸部ブロック101の倒れ込みや、路面からの浮き上がりが抑制され、接地面積が向上する。
また、V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向における両端部は、中央部よりも、ブロック剛性が低いため、制動時のタイヤ周方向入力に対して、タイヤ周方向に大きく変形しエッジ効果を向上させる。
従来、V形陸部ブロックは、中央部で剛性が向上するので、V形陸部ブロックの周方向寸法に対して、幅方向寸法を大きくすることによって、中央部で接地面積を確保し、両端部の幅方向寸法を大きくしてタイヤ周方向に対するエッジの長さを長くしていた。また、V形陸部ブロックの周方向寸法を小さくして、トレッドの中にできるだけ多くのV形陸部ブロックを入れ込むことによって、接地面積が確保できる程度にV形陸部ブロックを適度に変形させながら、ブロックエッジとサイプエッジとによるエッジ効果を向上させていた。
本実施形態では、V形陸部ブロック101の周方向寸法は、V形陸部ブロック101の幅方向寸法よりも大きい。このため、V形陸部ブロック101のタイヤ周方向のブロック剛性が高くなる。V形陸部ブロック101の周方向寸法が大きくなるため、タイヤ幅方向における中央部のタイヤ周方向におけるブロック剛性が高くなり、タイヤ幅方向における両端部のタイヤ周方向のブロック剛性も高くなる。さらに中央部は両端部に対してブロック剛性の高さを維持している。
また、V形陸部ブロック101の中央部は、より接地面積が向上し、ブロック剛性の増大によって、ブロックエッジとサイプエッジが路面に強く押し付けられてエッジ効果も向上する。V形陸部ブロック101の両端部も、大きな変形が抑制され、接地面積が向上するため、変形によるエッジ効果の代わりに、ブロック剛性の増大による路面に強く押し付けられるエッジ効果が向上する。さらに、ブロック剛性が高くなることによって、耐摩耗性能が向上する。
これにより、空気入りタイヤ10を装着した車両のブレーキング時におけるV形陸部ブロック101の倒れ込み、特にタイヤ周方向における倒れ込みが抑制され、V形陸部ブロック101の摩耗を効果的に抑制し得る。なお、V形陸部ブロック101の周方向寸法は、発揮し得る効果を考慮すると、幅方向寸法と同一でもよい。従来のように陸部ブロックの周方向寸法に対して、幅方向寸法を大きくしなければ効果があるからである。
また、V形陸部ブロック101は、タイヤ周方向の剛性が中央部でも両端部でも高いため、ブレーキング時におけるV形陸部ブロック101の接地面積が大幅に向上する。
V形陸部ブロック101では、凸部側壁部111(112)のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1は、凹部側壁部121(122)のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2と同じである。また、サイプ130及び終端傾斜溝150のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ5は、凸部側壁部111(凹部側壁部121)のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1(傾斜角度θ2)と同じである。
このため、V形陸部ブロック101の凸部側壁部111(112)とサイプ130(140)とに発生するモーメントが同一方向に回転しようとするため、ブロックエッジとサイプエッジのエッジ効果が同一の方向に発揮される。これにより、V形陸部ブロック101の形状によるブロックエッジ成分と、サイプ130によるサイプエッジ成分とによる路面を引っ掻く能力を向上し得る。
また、サイプ130の端部131及び終端傾斜溝150の端部151は、V形陸部ブロック101内で終端する。さらに、連通サイプ141の延長線上には、終端傾斜溝150の端部151を構成するV形陸部ブロック101の側壁100cが連なる。
このため、V形陸部ブロック101の端から端までサイプや傾斜溝で分断した場合に比べて、V形陸部ブロック101の周方向寸法を、幅方向寸法に対して、大きくすることができる。これにより、上述したように、V形陸部ブロック101のブロック剛性が高くなり、接地面積が増大し、ブロック剛性によるブロックエッジ及びサイプエッジが増大する。結果的に、V形陸部列100によれば、氷上性能を向上しつつ、耐摩耗性能を向上させ得る。
V形陸部列100では、ブロック剛性の低下によるブロックエッジ及びサイプエッジが低下することを回避するために、傾斜溝(終端傾斜溝150)を終端させて、その一部を連通サイプ141で置き換えたものである。
V形陸部ブロック101の端から端まで傾斜溝で分断したいけれども、分断した場合には、陸部ブロックの周方向寸法が、幅方向寸法に対して小さくなるため、ブロック剛性が低下して、接地面積が減少する。
サイプを連通サイプ141として終端傾斜溝150と連通させているのは、連通サイプ141の存在する部分は、本来、傾斜溝で分断してブロックエッジを発生させたかった部分であり、傾斜溝をサイプに置換したのは、ブロック剛性を低下させないようにしながら、サイプを形成することによってできるだけエッジを減少させないためである。
また、V形陸部ブロック101は、終端傾斜溝150と連通サイプ141とによって分断されているため、分断されていないで繋がった部分よりも、ブロック剛性が低くなっており、終端傾斜溝150にサイプを連通させずにサイプを離間させると、その離間させた部分のV形陸部ブロック101のブロック剛性だけが高くなり、V形陸部ブロック101のタイヤ幅方向におけるブロック剛性の分布がなだらかに変化せず剛性段差が発生してしまう。
V形陸部ブロック101では、連通サイプ141と終端傾斜溝150とを連通させることによって、傾斜溝がV形陸部ブロック101を横断するような形状と比較して、V形陸部ブロック101のブロック剛性が大幅に向上する。これにより、接地面積の向上とエッジ効果の向上とが図れ、氷上性能を向上しつつ、耐摩耗性能を向上させ得る。
V形陸部列100では、切欠き凹部170に連通する連通サイプ142が形成され、切欠き凹部170のタイヤ周方向における幅は、V形陸部ブロック101の側壁100bに行くに連れて広がる。このため、切欠き凹部170によってV形陸部ブロック101のブロックエッジ成分が増大する。
また、本実施形態では、楔形(三角形状)の楔形溝である切欠き凹部170を形成することによって、単に連通サイプ142を側壁100bに開口する場合と比較して、連通サイプ142の開口端付近におけるV形陸部ブロック101のサイプ開口端と、V形陸部ブロック101の側壁との角度が鋭角となっている本来ブロック剛性が低い部分のブロック剛性が高くなる。
このため、連通サイプ142を路面に押し付ける力が大きくなり、サイプエッジのエッジ効果が向上する。また、このようにブロック剛性が高くなることによって、サイプ形成部分がブレーキング時にめくれるように路面から浮き上がってしまい、耐摩耗性能が低下することを防止し得る。
一般的にウィンタータイヤは、タイヤ赤道線付近の接地長が長く、タイヤ幅方向外側の接地長が短いため、陸部ブロックにおいては、接地長の長いタイヤ赤道線付近でタイヤ周方向に対するサイプエッジやブロックエッジを積極的に増加させてエッジ効果を向上させつつ、タイヤ幅方向外側の部分でブロック剛性を確保する。
そこで、ブロックエッジの増加のため、V形陸部ブロックのタイヤ周方向端の側壁をタイヤ赤道付近で長くし、タイヤ幅方向外側で短くしている。しかしながら、サイプまで、同様の構成とすると、V形陸部ブロックのタイヤ赤道線側のブロック剛性が低下し過ぎて、V形陸部ブロックのタイヤ幅方向における剛性バランスが悪くなる。
つまり、長い凸部側壁部111側には短いサイプ130が形成され、短い凸部側壁部112には長いサイプ140が形成されているが、これを逆にすると、V形陸部列100のタイヤ幅方向における剛性バランスが大きく崩れてしまう。
V形陸部ブロック101では、タイヤ赤道線付近を短いサイプ130とし、タイヤ幅方向外側を長いサイプ140とすることによって、タイヤ幅方向におけるブロック剛性を均衡させて、タイヤ赤道線CL側でもブロック剛性を確保している。
また、タイヤ幅方向外側のサイプ140を長くすることによって、屈曲部(凸部110及び凹部120)によるブロック剛性を高くするだけでなく、サイプエッジを増大させている。さらに、タイヤ幅方向外側のブロック剛性が高くなるため、サイプ140を含むV形陸部ブロック101を路面に押し付ける力が大きくなり、サイプエッジが増大する。また、従来のV形陸部ブロックのように中央部のブロック剛性が高いだけなく、屈曲部を有する中央部、及びV形陸部ブロック101のタイヤ赤道線CL側及びタイヤ幅方向外側でも、ブロック剛性が向上しているため、V形陸部ブロック101の耐摩耗性能も向上する。
V形陸部ブロック101では、屈曲部163よりもタイヤ幅方向における一方側(タイヤ赤道線側)に位置する傾斜溝部161の周方向寸法W1は、屈曲部163よりもタイヤ幅方向における他方側(トレッド端部側)に位置する傾斜溝部162の周方向寸法W2よりも広い。
そこで、V形陸部ブロック101では、トレッド端側では、陸部ブロックが倒れ込まないように、つまり、ブロック剛性が大きくなるように、周方向に隣接するV形陸部ブロック101間のタイヤ幅方向片側のみ、陸部ブロックの周方向寸法を大きくして、傾斜溝部162の周方向寸法を傾斜溝部161よりも小さくしている。このため、最凸部分110aと、最凹部分120aとが異なる位置になっている。
(4.2)中央陸部列200
中央陸部列200に形成されている陸部ブロック210及び陸部ブロック260のようなタイヤ幅方向に対して傾斜する傾斜陸部ブロックの周方向の側壁が、タイヤ周方向の入力を受けると、図7(a)及び(b)に示したように、タイヤ周方向端の側壁に沿ったベクトル方向の力は、陸部ブロック210(及び陸部ブロック210P)を回転させようとしないが、タイヤ周方向端の側壁に垂直なベクトル方向に沿った陸部ブロック210への入力は、陸部ブロック210を回転させようとするモーメントを発生させる(図7(a)及び(b)では、左回転方向)。
横断傾斜溝270と終端傾斜溝220とに発生する回転モーメントが同一方向に回転しようとするので、横断傾斜溝270と終端傾斜溝220との溝壁部分による陸部ブロックのエッジ効果が同一の方向に発揮される。このため、中央陸部列200全体としてのブロックエッジ成分が増大する。
図7(a)に示したように、陸部ブロック210のタイヤ周方向の入力に対して、陸部ブロック210とサイプ230とに発生する回転モーメントが互いに逆方向に回転しようと発生するので、回転モーメント同士が打消し合うことで、陸部ブロック210の変形が抑制される。
このため、サイプ230(及びサイプ290)が横断傾斜溝270と同一方向に延びる場合と比較して、中央陸部列200としてのブロック剛性を大幅に向上させる。このように、中央陸部列200全体としてのブロック剛性が高くなることによって、接地面積が向上し、陸部ブロック210(及び陸部ブロック260)とサイプ230(及びサイプ290)を路面に押し付ける力が増大する。これにより、エッジ効果の増大により氷上性能を向上しつつ、耐摩耗性能を向上させ得る。
また、横断傾斜溝270に沿った延長線上には、終端傾斜溝220及び切欠き溝240が位置する。さらに横断傾斜溝270の端部には、鉤状溝部273が形成される。このため、ブロック剛性を確保しつつ、中央陸部列200を横断する一つのラグ溝のように振る舞うことよってブロックエッジ成分が増大する。
また、周方向溝60は、タイヤ周方向に延びるとともにタイヤ周方向に対して傾斜する周方向溝部61と、タイヤ幅方向に対して終端傾斜溝220と同じ方向に傾斜する傾斜ラグ溝部62とを有する。このようなタイヤ周方向に直線的に延びていない周方向溝60によって、さらにブロックエッジ成分が増大する。
中央陸部列200では、陸部ブロック210及び陸部ブロック260のタイヤ周方向の端部に位置する側壁210c, 210d, 220c, 220dは、タイヤ幅方向に対して傾斜する。また、これらの側壁は、タイヤ幅方向に対して、サイプ230及びサイプ290と逆方向に傾斜する。
このため、サイプ230及びサイプ290がこれらの側壁と同一方向に延びる場合と比較して、中央陸部列200としてのブロック剛性の低下を抑制し得る。これにより、氷上性能を確保しつつ、耐摩耗性能を改善し得る。
上述したように、比S1/S2は、中央陸部列200のネガティブ率であり、中央陸部列200における溝面積の割合を示す。ネガティブ率が大きいと、溝部分の面積が増加して溝によるブロックエッジ成分によるエッジ効果が向上するが、陸部ブロックの面積が減少するため、ブロック剛性が低下して、接地面積の低下や、耐摩耗性能が低下する。
一方、ネガティブ率が小さいと、溝部分の面積が減少して、陸部ブロックの面積が増加するため、ブロック剛性が増大して、接地面積の向上や、耐摩耗性能が向上するが、溝によるブロックエッジ成分によるエッジ効果が減少する。
このため、終端傾斜溝220、終端傾斜溝280、及び横断傾斜溝270によって、中央陸部列200のブロック剛性を最適に向上させる。このように、中央陸部列200全体としてネガティブ率を最適に設定することで、ブロック剛性が高くなり、接地面積が向上する。また、陸部ブロック210及び陸部ブロック260と、サイプ230及びサイプ290とを路面に押し付ける力が増大する。これにより、エッジ効果の増大により氷上性能を向上しつつ、耐摩耗性能を向上させ得る。
なお、上述したように、S1/S2は、0.05以上、0.25以下であることが好ましく、S1/S2が0.25を超えると、ネガティブ率が大きくなり、陸部ブロックの面積が大幅に減少し、ブロック剛性が低下し過ぎる。このため、接地面積の大幅な低下や、耐摩耗性能が大幅に低下してしまう。
また、S1/S2が0.05未満だと、ネガティブ率が小さくなり、溝部分の面積が大幅減少して、排水性能が全く確保できなくなる。また溝によるブロックエッジのエッジ効果が大幅減少する。
(4.3)ショルダー陸部列300in及びショルダー陸部列300out
ショルダー陸部列300in(ショルダー陸部列300outも同様、以下同)では、周方向サイプ320の振幅A1は、互いに隣接する幅方向サイプ340の振幅A2の寸法よりも大きい。
サイプ間隔を大きくし、かつショルダー陸部列300inを構成する陸部ブロック310のピッチ長を小さくすることによって、陸部ブロック310の剛性が向上し、接地面積が向上する。また、ブロックエッジ、サイプエッジを路面に押し付ける力、及びブロックエッジの向上によるエッジ効果が向上し、耐摩耗性能が向上する。
しかしながら、陸部ブロック310のタイヤ周方向におけるブロック剛性が低下しないならば、エッジ効果は大きい方がよい。そこで、陸部ブロック310に、タイヤ周方向における剛性を殆ど低下させない、タイヤ幅方向のエッジ効果を発揮させる周方向サイプ320を形成することによって、そのジグザグ部分の振幅A1を大きくしている。これにより、タイヤ周方向のサイプエッジを発揮させてタイヤ周方向のエッジ効果を向上させ得る。
また、陸部ブロック310には、直線状の周方向直線サイプ351及び周方向直線サイプ352が形成される。このような周方向サイプ320、周方向直線サイプ351及び周方向直線サイプ352は、タイヤ幅方向のエッジ効果も増加させ得る。
ショルダー陸部列300inでは、陸部ブロック310のタイヤ赤道線CL側は、トレッド端側のようにトレッド端外側の側壁であるバットレス部の傾斜側壁によって剛性が高く変形を抑制されることもなく、またトレッド端側よりも接地長が長い。
そこで、サイプエッジを大きく発揮させるために、タイヤ赤道線CL側の幅方向サイプ330の端部332は、周方向サイプ320に連通する。また、幅方向サイプ330の端部331も周方向溝40に連通する。このため、陸部ブロック310のサイプエッジ成分を増大し得る。
一方、幅方向サイプ340のタイヤ赤道線CL側の端部341は、周方向サイプ320と連通せずに、陸部ブロック310内で終端する。陸部ブロック310のトレッド端外側の側壁は、タイヤ赤道線CL側と異なりトバットレス部の傾斜側壁によって剛性が高く変形が抑制されており、また、タイヤ赤道線CL側よりも接地長が短いため、タイヤ赤道線CL側でサイプエッジを大きく発揮させて陸部ブロック310のタイヤ周方向におけるブロック剛性が低下した代わりに、ブロック剛性を向上させるために、トレッド端外側における幅方向サイプ340は、周方向サイプ320と連通せずに、陸部ブロック310内で終端する。また、幅方向サイプ340の他端も主溝にもバットレス部にも連通せずに終端する。
このため、陸部ブロック310のタイヤ赤道線CL側のブロック剛性が低下しても、トレッド端外側のブロック剛性が向上するため、ショルダー陸部列300inのブロック剛性を維持し得る。また、ショルダー陸部列300inのブロック剛性を維持することによって、接地面積を確保しながら、サイプエッジ成分によるエッジ効果の向上によって氷上性能を向上しつつ、耐摩耗性能を維持させ得る。
また、幅方向サイプ340の端部341は、振幅A1内に位置する。さらに、幅方向サイプ340は、ジグザグ状の周方向サイプ320の頂部323に連通する幅方向サイプ330の延長線上に位置する。このような構成によって、サイプエッジ成分によるエッジ効果をさらに高め得る。
ショルダー陸部列300inでは、側壁310bには、切欠き状の段差部360が形成される。段差部360は、陸部ブロック310のタイヤ幅方向におけるトレッド端側の端部に形成され、上げ底面361を有する。上げ底面361は、タイヤ幅方向に延びる長方形状である。
このため、陸部ブロック310を切り欠いたような段差部360が形成されることによって、隣接する陸部ブロック310間に形成されるラグ溝70のボリュームが増大し、いわゆる雪柱せん断力が向上する。さらに、排水性能も向上する。
また、段差部360は、陸部ブロック310のトレッド端側の端部に形成されるため、氷雪を取り込みやすく、さらに、雪柱として固められた氷雪が排出され易い。
また、段差部360は、深い溝底部ではなく、トレッド端側の端部に形成される。具体的には、上げ底面361によって、雪柱として固められた氷雪が排出され易い。
さらに、段差部360が形成されることによって、陸部ブロック310の周方向端の側壁が段差部360の位置で屈曲するため、段差部360が形成されていない直線状の側壁よりも、陸部ブロック310の側壁310bによるブロックエッジ成分も増大する。
また、上げ底面361を有するため、上げ底面361の上側(タイヤ径方向外側)部分の陸部ブロック310のボリュームは減少するが、上げ底面361の下側(タイヤ径方向内側)は、タイヤ赤道線CL側と同じように、段差部360による陸部ブロックが形成される。さらに、陸部ブロック310のトレッド端側はバットレス部の傾斜側壁によって剛性が高く変形を抑制されているので、陸部ブロック310のブロック剛性を維持できる。
つまり、段差部360によって、氷上性能を向上しつつ、耐摩耗性能を維持し得る。また、雪上性能と排水性能とを向上させ得る。
(4.4)ピッチとサイプとの関係
上述したように、平均サイプ間隔h/平均ピッチ長Lは、0.130≦(h/L)≦0.400であることが好ましく、h/Lが0.130未満だと、ピッチ長は相対的に大きくなるが、サイプ間隔は著しく小さくなってしまう。これにより、サイプ枚数が非常に多くなるので、陸部ブロックのブロック剛性が著しく低くなってしまう。
一方、h/Lが0.400を超えると、サイプ間隔は相対的に大きくなるが、ピッチ長は著しく小さくなってしまう。これにより、例えば、サイプ枚数は1枚や2枚と非常に少ないのに、ピッチ長が著しく小さくなり、サイプ間隔を大きくしても、逆に陸部ブロックのブロック剛性が向上しなくなる。また、サイプエッジ成分も著しく減少してしまう。
また、上述したように、140≦(h*L)≦350であることが好ましく、平均サイプ間隔と平均ピッチ長との積(h*L)が140(mm)2未満だと、サイプ間隔も、ピッチ長も、小さくなり過ぎてしまう。サイプ間隔が小さくなると、陸部ブロックが小さく分断されて、ブロック剛性が低下する。さらに、ピッチ長が小さくなると、陸部ブロックのブロック剛性が低下する。この結果、ブロック剛性が低くなり過ぎてしまうからである。
一方、h*Lが350(mm)2を超えると、サイプ間隔及びピッチ長が、大きくなり過ぎてしまう。サイプ間隔が大きくなり過ぎると、陸部ブロックのブロック剛性は高くなるが、サイプ本数が少なくなり過ぎて、サイプエッジ効果が発揮できなくなる。ピッチ長が大きくなると、ブロック剛性は高くなるが、タイヤ全周当りのピッチ個数が減少するため、ブロックエッジ効果が大幅に低下する。この結果、エッジ効果が小さくなり過ぎてしまうからである。
また、スタッドレスタイヤなどのウィンタータイヤでは、接地長が、センター領域(センター部陸部ブロック)、セカンド領域(セカンド部陸部ブロック)、ショルダー領域(ショルダー部陸部ブロック)の順に高く、センター領域が、最も接地長が長い。このため、ブレーキング時におけるタイヤ周方向のサイプエッジ及びブロックエッジを長い接地長を使って発揮させることが有効である。センター領域のサイプ間隔をセカンド領域、ショルダー領域よりも小さくすることによって、周方向向きのエッジ効果を大きく発揮させる。
上述したように、センター部陸部ブロックでは、3.0mm≦h≦7.1mmであることが好ましく、hが3.0mm未満だと、陸部ブロックが小さく分断されて、ブロック剛性が低くなり過ぎてしまうからである。一方、hが7.1mmを超えると、ブロック剛性は高くなるが、サイプ本数が少なくなり過ぎて、サイプエッジが発揮できなくなり、サイプエッジ効果が小さくなり過ぎてしまうからである。
また、ショルダー領域、セカンド領域と、トレッド端側に近いほど、センター領域でサイプを増加させている代わりに、ブロック剛性を高める必要がある。また、横力の入力も、トレッド端側に近いほど大きく、ショルダー領域が、最も横力が大きい。そこで、ブロック剛性を高くするために、サイプ間隔を大きくする。
また、上述したように、ショルダー部陸部ブロックでは、3.7mm≦h≦8.5mmであることが好ましく、hが3.7mm未満だと、ブロックが小さく分断されて、ブロック剛性が低くなり過ぎてしまうからである。一方、hが8.5mmを超えると、サブロック剛性は高くなるが、サイプエッジ効果が小さくなり過ぎてしまうからである。なお、セカンド領域の平均サイプ間隔の数値範囲についても、ショルダー領域と同様のことがいえる。
さらに、セカンド領域は、接地長がセンター領域より短く、ショルダー領域よりも長い。そこで、サイプエッジ効果の向上と、ブロック剛性の向上とのため、サイプ間隔は、センター領域よりも大きく、ショルダー領域よりも小さい。また、センター領域及びショルダー領域と同様の理由から、セカンド領域の平均サイプ間隔は、上述の範囲とすることが好ましい。
また、上述したように、空気入りタイヤ10全体の陸部ブロックの平均サイプ間隔hは、3.4mm以上、7.9mmとしているが、これにより、サイプ間隔を大きくし、サイプ本数を減らすことによって、ブロック剛性を大きくし、1つの陸部ブロックについての1本のサイプエッジと1つのブロックエッジとを向上可能な最大の領域まで増加させている。
hが3.4mm未満だと、陸部ブロックが小さく分断されて、ブロック剛性が小さくなり過ぎてしまうからである。一方、hが7.9mmを超えると、ブロック剛性は高くなるが、サイプエッジ効果が小さくなり過ぎてしまうからである。
また、上述したように、空気入りタイヤ10全体の陸部ブロックの平均ピッチ長Lは、19.2mm≦L≦44.6mmであることが好ましく、ピッチ長が19.2mm未満だと、ピッチ長が小さくなり過ぎて、ブロック剛性が低くなり過ぎてしまい、ピッチ長が44.6mmを超えると、ピッチ長が大きくなり過ぎて、ブロック剛性は高くなるが、タイヤ全周当りのピッチ個数が減少する。このため、ブロックエッジ効果が大幅に低下し、ブロックエッジ効果が小さくなり過ぎてしまうからである。
より具体的には、平均サイプ間隔が3.4mmより小さい、または、平均ピッチ長が44.6mmより大きい場合、サイプ間隔が、小さくなりすぎて、ブロックが小さく分断されることで、ブロック剛性が小さくなり過ぎる。また、ピッチ長が大きくなり過ぎると、ピッチ個数が減少するので、ブロックエッジ効果が小さくなり過ぎる。また、どんなにピッチ長を大きくしても、サイプでブロックが小さく分断されてしまうと、ブロック剛性は向上しなくなる。
また、平均サイプ間隔が7.9mmより大きい、または、平均ピッチ長が19.2mmより小さい場合、サイプ間隔が、大きくなり、ブロックの剛性は大きくなるが、サイプ本数が少なくなり過ぎて、サイプエッジが発揮できなくなり、サイプエッジ効果が小さくなり過ぎる。また、ピッチ長が小さくなり、1つ1つのブロックの剛性が小さくなり過ぎてしまう。これらにより、トータルのエッジ効果が小さくなり、ブロック剛性も向上しなくなる。
また、平均サイプ間隔が3.4mmより小さい、または、平均ピッチ長19.2mmより小さい場合、サイプエッジ成分は増加するが、サイプ間隔が、小さくなり過ぎて、ブロックが小さく分断されることで、ブロック剛性が小さくなり過ぎる、また、ピッチ長が小さく、1つ1つのブロック剛性が小さくなり過ぎるため、ブロックエッジ効果が小さくなり過ぎる。そのため、ブロック剛性も小さくなり過ぎ、トータルのエッジも低下してしまう。
また、平均サイプ間隔が7.9mmより大きい、または、平均ピッチ長が44.6mmより大きい場合、サイプ間隔が大きくなり、ブロックの剛性は大きくなるが、サイプ本数が少なくなり過ぎて、サイプエッジが発揮できなくなり、サイプエッジ効果が小さくなり過ぎる。また、ピッチ長が大きくなりすぎると、ピッチ個数が減少するので、ブロックエッジ効果が小さくなりすぎる。また、どんなにピッチ長を大きくしても、サイプでブロックが小さく分断されてしまうと、ブロック剛性は向上しなくなる。
また、JATAMAの規格(或いは、ETRTO, TRAなどの同様の規格)にある乗用車用タイヤ(Passenger car tire)のタイヤ幅SEC(以下同)が165, 175, 185, 195, 205, 215, 225, 235, 245, 255のような標準的なタイヤサイズ(以下、標準的タイヤサイズ)では、平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
4.2mm≦h≦6.3mm
23.6mm≦L≦35.4mm
とすることがより好ましい。なお、タイヤ幅SECとは、195/65R15であれば、195(mm)のことである。
標準的タイヤサイズでは、センター部陸部ブロックの平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
3.7mm≦h≦5.6mm
23.6mm≦L≦35.4mm
とすることが好ましい。
標準的タイヤサイズでは、ショルダー部陸部ブロックの平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
4.5mm≦h≦6.8mm
23.6mm≦L≦35.4mm
とすることが好ましい。
標準的タイヤサイズでは、セカンド部陸部ブロックの平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
4.1mm≦h≦6.1mm
23.6mm≦L≦35.4mm
とすることが好ましい。
このような関係を満たすことで、サイプ間隔と、ピッチ長が最適となり、サイプ本数を適度に減らすことで、ブロック剛性を大きくし、ピッチ長を適度に小さくすることで、ピッチ個数、ブロック個数を増加させて、ブロックエッジ効果を増大させることで、ブロック剛性を向上させつつ、トータルのエッジ効果を向上させることができる。なお、平均サイプ間隔及び平均ピッチ長が当該範囲を外れた場合の欠点については、上述したとおりである。
また、JATAMAの規格にあるタイヤ幅SECが265, 275, 285, 295, 305のようなタイヤ幅SECの大きいタイヤサイズ(以下、大SECタイヤサイズ)では、平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
6.3mm<h≦7.9mm
35.4mm<L≦44.6mm
とすることがより好ましい。
大SECタイヤサイズでは、センター部陸部ブロックの平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
5.6mm<h≦7.1mm
35.4mm<L≦44.6mm
とすることが好ましい。
大SECタイヤサイズでは、ショルダー部陸部ブロックの平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
6.8mm<h≦8.5mm
35.4mm<L≦44.6mm
とすることが好ましい。
大SECタイヤサイズでは、セカンド部陸部ブロックの平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
6.1mm<h≦7.7mm
35.4mm<L≦44.6mm
とすることが好ましい。
これにより当該タイヤサイズのタイヤにおいて、ブロック剛性を向上させつつ、トータルのエッジ効果を向上させることができる。
また、JATAMAの規格にあるタイヤ幅SECが135,145,155のようなタイヤ幅SECの小さいタイヤサイズ(以下、小SECタイヤサイズ)では、平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
3.4mm≦h<4.2mm
19.2mm≦L<23.6mm
とすることがより好ましい。
小SECタイヤサイズでは、センター部陸部ブロックの平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
3.0mm≦h<3.7mm
19.2mm≦L<23.6mm
とすることが好ましい。
小SECタイヤサイズでは、ショルダー部陸部ブロックの平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
3.7mm≦h<4.5mm
19.2mm≦L<23.6mm
とすることが好ましい。
小SECタイヤサイズでは、セカンド部陸部ブロックの平均サイプ間隔及び平均ピッチ長は、
3.3mm≦h<4.1mm
19.2mm≦L<23.6mm
とすることが好ましい。
これにより当該タイヤサイズのタイヤにおいて、ブロック剛性を向上させつつ、トータルのエッジ効果を向上させることができる。
上述したように、(平均ブロックエッジ成分Dball/平均サイプエッジ成分Dsall)/平均ブロック剛性Gは、2.20≦(Dball/Dsall)/G≦4.00であることが好ましい。(Dball/Dsall)/Gが2.20(mm)3/N未満だと、平均の陸部ブロックのブロック剛性に対して、サイプエッジ成分は非常に大きくなるが、ブロックエッジ成分は著しく低下してしまう。これは、サイプ枚数が多くなり、サイプ間隔が小さくなり、ブロック剛性が低くなり過ぎてしまうからである。
一方、(Dball/Dsall)/Gが4.00(mm)3/Nを超えると、平均の陸部ブロックのブロック剛性に対して、ブロックエッジ成分は非常に大きくなるが、サイプエッジ成分は著しく低下してしまう。これは、サイプ枚数が少なくなり、サイプ間隔が大きくなり、ブロック剛性が大きくなり過ぎてしまうからである。
なお、幅方向サイプは、タイヤ幅方向に延在していれば、タイヤ周方向(タイヤ赤道線CL)に対して傾斜していてもよい。タイヤ周方向のエッジ成分が発生するからである。
上述したように、平均ブロックエッジ成分Dball/平均サイプエッジ成分Dsallは、0.15≦(Dball/Dsall)≦0.48であることが好ましい。Dball/Dsallが0.15未満だと、サイプエッジ成分は非常に大きくなるが、ブロックエッジ成分は著しく低下してしまう。これは、サイプ枚数が多くなり、サイプ間隔が小さくなり、陸部ブロックのブロック剛性が小さくなり過ぎてしまうからである。
一方、Dball/Dsallが0.48を超えると、ブロックエッジ成分は非常に大きくなるが、サイプエッジ成分は著しく低下してしまう。これは、サイプ枚数が少なくなり、サイプ間隔が大きくなり、陸部ブロックのブロック剛性が大きくなり過ぎてしまうからである。
上述したように、ショルダー部陸部ブロックの平均サイプ間隔hs/センター部陸部ブロックの平均サイプ間隔hcは、1.05≦(hs/hc)≦4.00であることが好ましい。hs/hcが1.05未満だと、ショルダー部陸部ブロックのサイプ間隔が小さくなり、サイプ枚数が多くなり、陸部ブロックのブロック剛性が低くなり過ぎる。また、サイプエッジ成分は大きくなるが、ブロックエッジ成分は低下し過ぎてしまう。
一方、hs/hcが4.00を超えると、ショルダー部陸部ブロックのサイプ間隔が大きくなり、サイプ枚数が少なくなり過ぎ、ブロックエッジ成分は大きくなるが、サイプエッジ成分は小さくなり過ぎてしまう。
また、上述したピッチとサイプとに関する他の数値範囲についても、上述したように、陸部ブロックのブロック剛性と、エッジ成分との両立を図るために規定されており、これにより、氷上性能と耐摩耗性能とを高い次元で両立している。
(4.5)評価試験
次に、平均サイプ間隔及び平均ピッチ長の関係を確認するために実施した評価試験の方法及び結果について、さらに説明する。
表1は、比較例及び実施例に係る空気入りタイヤ(スタッドレスタイヤ)の諸元及び試験結果(氷上ブレーキ性能及び耐摩耗性能)を示す。表2は、従来例、比較例及び実施例に係る(スタッドレスタイヤ)の諸元及び試験結果(氷上ブレーキ性能及び耐摩耗性能)を示す。
(4.5.1)評価試験タイヤの基本構成及び試験条件
評価試験に用いた空気入りタイヤのサイズ及び試験条件は、以下のとおりである。
・タイヤサイズ: 195/65R15
・使用リムサイズ: 6J×15
・設定空気圧: 240kPa(前輪・後輪)
・装着車両: アンチロックブレーキ(ABS)装着車両
なお、トレッドパターンは、図3に示した形状を用いた。「氷上ブレーキ性能」については、氷上路面テストコースにおいて、タイヤ新品時及び慣らし走行後のそれぞれの段階において、速度20km/hから急ブレーキを掛け(ABS作動)、停止するまでの距離(制動距離)を7回計測し、その最大値と最小値とを除外した5つのデータを平均した値である。さらに、従来例(比較例1)に係るタイヤを100として指数化したものである。数値が大きいほど、制動距離が短く、氷上ブレーキ性能が高いことを示す。
「耐摩耗性能」については、乗員2名相当が搭載された車両に試験対象のタイヤを装着し、アスファルト舗装路面を10,000km走行させた後の残溝深さに基づいて評価した。具体的には、従来例(比較例1)に係るタイヤの残溝深さを100として指数化したものである。数値が大きいほど、残溝深さが深く、耐摩耗性能が高いことを示す。
(4.5.2)評価試験結果
表1に示すように、実施例に係るタイヤ(No.2〜No.8)では、「氷上ブレーキ性能」及び「耐摩耗性能」とも向上している。特に、No.4〜No.6では、両性能ともバランス良く、大幅に向上している。
また、表2に示すように、ショルダー部陸部ブロック(ショルダー部)とセンター部陸部ブロックとのサイプ間隔の関係(hs/hc)などを上述したような範囲とすることによって、実施例1〜5に係るタイヤは、従来例に係るタイヤと比較して、「氷上ブレーキ性能」及び「耐摩耗性能」とも向上している。
表1及び表2の試験結果が示すように、「耐摩耗性能」優位とする場合には、平均ピッチ長及び平均サイプ間隔を大きくすることが重要である。一方、耐摩耗性能を向上させつつ、「氷上ブレーキ性能」優位とする場合には、必ずしも単に平均ピッチ長及び平均サイプ間隔を大きくすればよい訳ではなく、平均ピッチ長と平均サイプ間隔とを両方をバランス良く設計することが肝要である。
これは、上述したように、近年の車両は、ABSがほぼ標準装着となり、タイヤが完全にロックして氷上路面を滑走するようなスリップ率が大きい領域よりも、ABSが作動するような比較的スリップ率が小さい領域(つまり、摩擦係数(μ)が高い領域)において制動が繰り返されることになり、このような場合には、サイプを多く形成するよりも、ある程度の陸部ブロックのブロック剛性を確保することによって、氷上ブレーキ性能も向上するためである。
(5)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
例えば、上述した実施形態では、タイヤ赤道線CLを含む位置に中央陸部列200が設けられ、中央陸部列200のタイヤ幅方向外側にV形陸部列100が設けられていたが、中央陸部列200は必ずしもこのような位置に設けられていなくても構わない。また、V形陸部列100がタイヤ赤道線CLを含む位置に設けられてもよい。
さらに、ショルダー陸部列300in及びショルダー陸部列300outの位置もショルダー領域に限定されず、セカンド領域などに設けられても構わない。
また、上述した実施形態では、サイプ130, 140と、終端傾斜溝150との両方がV形陸部ブロック101に形成されているが、サイプ130, 140または終端傾斜溝150の何れか一方のみが形成されていても構わない。
さらに、上述した実施形態では、V形陸部ブロック101の周方向寸法は、V形陸部ブロック101の幅方向寸法よりも大きかったが、当該周方向寸法は当該幅方向寸法と同一でもよい。
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。