以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。本明細書においては、電気機器の一例として電池パックにて動作する電動工具を例示して説明するものとし、電動工具の本体側の前後左右の方向は図2に示す方向とし、電池パックの単体で見た際の前後左右、上下の方向は、電池パックの装着方向を基準として図3に示す方向であるとして説明する。尚、電池パックの装着方向は、説明の都合上、電動工具本体側を動かさずに電池パック側を移動させる状況を基準とした方向として説明する。
図1は本実施例に係る電池パックの電動工具への装着状況を説明するための図である。電気機器の一形態である電動工具は、電池パックを有し、モータによる回転駆動力を用いて先端工具や作業機器を駆動する。電動工具は種々の種類が実現されているが、図1で示す電動工具本体1、30はいずれもインパクト工具と呼ばれるものである。電動工具本体1、30は、図示しないビットやソケットレンチ等の先端工具に回転力や軸方向の打撃力を加えることにより締め付け作業を行う工具である。これらの電動工具本体1、30は、外形を形成する外枠たるハウジング2、32を備え、ハウジング2、32にはハンドル部3、33が形成される。ハンドル部3、33の一部であって作業者が把持した際に人差し指があたる付近には、トリガ状の動作スイッチ4、34が設けられ、ハンドル部3、33の下方には電池パック15、100を装着するための電池パック装着部10、40が形成される。
電動工具本体1は定格電圧18Vの電池パック15を用いる従来の電気機器である。電池パック15は従来の電池パックであり、矢印aの組み合わせのように18V対応の電気機器(電動工具本体1)の電池パック装着部10に装着できる。電池パック15の内部には、定格3.6Vのリチウムイオン電池のセル5本を直列接続してなるセルユニットが1組だけ収容されるか、又はこのようなセルユニットが2組収容されて互いに並列接続される。ここで「セルユニット」とは、複数の電池セルを電気的に接続したものであり、「セルユニット」の例として、電池セルを複数本直列接続させた連結体や、電池セルを複数本並列接続させた連結体や、複数の電池セルを直列かつ並列に接続させた連結体が含まれる。電圧18Vは、比較的低い電圧であるという意味で、ここでは低電圧と呼ぶことがある。同様に、定格電圧18Vの電動工具本体1または電気機器本体は、それぞれ低電圧電動工具本体または低電圧電気機器本体と呼ぶことがある。同様に、公称電圧18Vの電池パック15は、低電圧電池パックと呼ぶことがある。
電動工具本体30は、定格電圧36Vの電気機器本体であり、矢印b1に示すように36Vの出力が可能な電池パック100を電池パック装着部40に装着する。電圧36Vは、比較的高い電圧であるという意味で、ここでは高電圧と呼ぶことがある。同様に、定格電圧36Vの電動工具本体30または電気機器本体は、それぞれ高電圧電動工具本体または高電圧電気機器本体と呼ぶことがある。電池パック100の内部には、3.6Vのリチウムイオン電池のセルが5本直列接続されたセルユニットが2組収容され、2組のセルユニットの接続方法の変更により、18V出力と36V出力の双方を切り換えることができるようにした。本実施例では電池パック100を2電圧対応に構成して、低電圧と高電圧の出力を可能とすることにより、矢印b2で示すように電池パック100を18V対応の電動工具本体1にも装着できるし、矢印b2のように36V対応の電動工具本体30にも装着できるようにした。このように、低電圧と高電圧の出力を可能とした電池パック100は、ここでは電圧可変電池パックと呼ぶことがある。電池パック100を矢印b1、b2のように異なる電圧の電動工具本体1、30に装着するためには、電池パック装着部10、40のレール部や端子部の形状をほぼ同じ形状にすることと、電池パック100の出力電圧を切り替え可能にすることが重要である。この際、電池パック100の出力電圧が、装着される電気機器本体や電動工具本体の定格電圧と確実に対応させて、電圧設定ミスが生じないようにすることが重要である。
図2は電動工具本体1の電池パック装着部10の形状を示す斜視図である。ここで示す電動工具本体1はインパクトドライバであって、ハウジング2の胴体部分から下方に延びるハンドル部が設けられ、ハンドル部の下側に電池パック装着部10が形成される。ハンドル部にはトリガスイッチ4が設けられる。ハウジング2の前方側には出力軸たるアンビル(図示せず)が設けられ、アンビルの先端には先端工具9を装着するための先端工具保持部8が設けられる。ここでは先端工具9としてプラスのドライバービットが装着されている。電動工具だけに限られずに、電池パックを用いた電気機器全般では、装着される電池パックの形状に対応させた電池パック装着部10が形成され、電池パック装着部10に適合しない電池パックを装着できないように構成する。電池パック装着部10には、左右両側の内壁部分に前後方向に平行に延びるレール溝11a、11bが形成され、それらの間にターミナル部20が設けられる。ターミナル部20は、合成樹脂等の不導体材料の一体成形により製造され、そこに金属製の複数の端子、例えば正極入力端子22、負極入力端子27、LD端子(異常信号端子)28が鋳込まれる。ターミナル部20は、装着方向(前後方向)の突き当て面となる垂直面20aと、水平面20bが形成され、水平面20bは電池パック100の装着時に、上段面115(図3にて後述)と隣接、対向する面となる。水平面20bの前方側には、電池パック100の隆起部132(図3にて後述)と当接する湾曲部12が形成され、湾曲部12の左右中央付近には突起部14が形成される。突起部14は左右方向に2分割で形成される電動工具本体1のハウジングのネジ止め用のボスを兼ねると共に、電池パック100の装着方向への相対移動を制限するストッパの役目も果たす。
図3は本発明の実施例に係る電池パック100の斜視図である。電池パック100は電池パック装着部10、40(図1参照)に対して取り付け及び取り外しが可能であって、電動工具本体1又は30側のターミナル形状に応じて、低電圧(ここでは18V)と高電圧(ここでは36V)の出力が自動で切り替わるようにしたものである。また、従来の定格18V用の電池パック15(図1参照)と取り付け上の互換性を持たせるために、電池パック100の装着部分の形状は従来の電池パック15と同じとしている。電池パック100の筐体は、上下方向に分割可能な下ケース101と上ケース110により形成される。下ケース101と上ケース110は電気を通さない部材、例えば合成樹脂製であって4本の図示しないネジによってお互いが固定される。上ケース110は、電池パック装着部10に取り付けるために2本のレール138a、138bが形成された装着機構が形成される。レール138a、138bは、長手方向が電池パック100の装着方向と平行になるように、且つ、上ケース110の左右側面から左右方向に突出するように形成される。レール138a、138bの前方側端部は開放端となり、後方側端部は隆起部132の前側壁面と接続された閉鎖端となる。レール138a、138bは、電動工具本体1の電池パック装着部10に形成されたレール溝11a、11b(図2参照)と対応した形状に形成され、レール138a、138bがレール溝11a、11bと嵌合した状態で、ラッチの爪となる係止部142a(右側の係止部であり図3では見えない)、142bにて係止することにより電池パック100が電動工具本体30に固定される。電池パック100を電動工具本体1から取り外すときは、左右両側にあるラッチ141を押すことにより、係止部142a、142bが内側に移動して係止状態が解除されるので、その状態で電池パック100を装着方向と反対側に移動させる。
上ケース110の前方側には平らな下段面111が形成され、中央付近は下段面111よりも高く形成された上段面115が形成される。下段面111と上段面115は階段状に形成され、それらの接続部分は鉛直面となる段差部114となっている。段差部114から上段面115の前方側部分がスロット群配置領域120になる。スロット群配置領域120には、前方の段差部114から後方側に延びる複数のスロット121〜128が形成される。スロット121〜128は電池パック装着方向に所定の長さを有するように切り欠かれた部分であって、この切り欠かれた部分の内部には、電動工具本体1、30又は外部の充電装置(図示せず)の機器側端子と嵌合可能な複数の接続端子(図4で後述)が配設される。スロット121〜128は下段面111側から電動工具本体側のターミナルを挿入可能なように、装着方向と平行な上面と鉛直面にそれぞれ切り欠きが形成されたものである。また、スロット121〜128の下側であって、下段面111との間は、横方向に連続して開口する開口部113が形成される。開口部113は、中央に配置された鉛直方向に延びるリブ状の鉛直壁部185aの左右両側が、平面状に形成されるもので、平面状の部分は基板カバー180によって形成される。基板カバー180は上ケース110と別体に製造される部品であるが、その詳細形状は図17〜図21にて後述する。
スロット121〜128は、電池パック100の右側のレール138aに近い側のスロット121が充電用正極端子(C+端子)の挿入口となり、スロット122が放電用正極端子(+端子)の挿入口となる。また、電池パック100の左側のレール138bに近い側のスロット127が負極端子(−端子)の挿入口となる。電池パック100では通常、電力を伝達するための電力端子の正極側と負極側を十分離すようにして配置するもので、左右中心に位置する鉛直仮想面からみて、右側の十分離した位置に正極端子を設けて、左側の十分離した位置に負極端子を設けている。正極端子と負極端子の間には、電池パック100と電動工具本体1、30や外部の充電装置(図示せず)への制御に用いる信号伝達用の複数の信号端子が配置され、ここでは信号端子用の4つのスロット123〜126が電力端子群の間に設けられる。スロット123は予備の端子挿入口であり、本実施例では端子は設けられない。スロット124は電池パック100の識別情報となる信号を電動工具本体又は充電装置に出力するためのT端子用の挿入口である。スロット125は外部の充電装置(図示せず)からの制御信号が入力されるためのV端子用の挿入口である。スロット126はセルに接触して設けられた図示しないサーミスタ(感温素子)による電池の温度情報を出力するためのLS端子用の挿入口である。負極端子(−端子)の挿入口となるスロット127の左側には、さらに電池パック100内に含まれる後述する電池保護回路による異常停止信号を出力するLD端子用のスロット128が設けられる。
上段面115の後方側には、隆起するように形成された隆起部132が形成される。隆起部132はその外形が上段面115より上側に隆起する形状である、その中央付近に窪み状のストッパ部131が形成される。ストッパ部131は、電池パック100を、電池パック装着部10に装着した際に、突起部14(図2参照)の突き当て面となるもので、電動工具本体1側の突起部14がストッパ部131に当接するまで挿入されると、電動工具本体1に配設された複数の端子(機器側端子)と電池パック100に配設された複数の接続端子(図4にて後述)が接触して導通状態となる。また、電池パック100のラッチ141の係止部142a(右側の係止部であり図3では見えない)、142bがばねの作用によりレール138a、138bの下部で左右方向に飛び出して、電動工具本体30のレール溝11a、11bに形成された図示しない凹部と係合することにより、電池パック100の脱落が防止される。ストッパ部131の内側には、電池パック100の内部とつながる冷却風取入口たるスリット134が設けられる。また、この電池パック100が電動工具本体1に装着された状態では、スリット134が外部から視認できないように覆われて閉鎖状態になる。スリット134は、電池パック100を図示せぬ充電装置に連結して充電を行う際に、電池パック100の内部に冷却用の空気を強制的に流すために用いられる風窓であって、電池パック100内に取り込まれた冷却風は下ケース101の前方壁に設けられた排気用の風窓たるスリット104から外部に排出される。
図4は図3の電池パック100の展開斜視図である。電池パック100の筐体は、上下方向に分離可能な上ケース110と下ケース101によって形成され、下ケース101の内部空間には、10本の電池セルが収容される。下ケース101の前方側壁面には、上ケース110とのネジ止め用に2つのネジ穴103a、103bが形成され、下から上方向にネジ穴103a、103bを貫通するようにして図示しないネジが通される。下ケース101の後方側壁面にも2つのネジ穴103c(図では見えない)、103dが形成される。複数の電池セル(図示せず)は、5本ずつ2段にスタックさせた状態で、合成樹脂等の不導体で構成されたセパレータ445にて固定される。セパレータ445は電池セルの両端部となる左右両側だけが開口するようにして複数の電池セルを保持する。
セパレータ445の上側には、回路基板150が固定される。回路基板150は複数の接続端子(161、162、164〜168、171、172、177)を半田付けによって固定すると共に、これら接続端子と図示しない回路パターンとの電気的な接続を行う。回路基板150にはさらに、電池保護ICやマイクロコンピュータ、PTCサーミスタ、抵抗、コンデンサ、ヒューズ、発光ダイオード等の様々な電子素子(ここでは図示していない)を搭載する。回路基板150の材質は、素材に対して絶縁性のある樹脂を含浸した基板上に、銅箔など導電体によってパターン配線を印刷したプリント基板と呼ばれるものであり、単層基板、両面基板、多層基板を用いることができる。本実施例では、両面基板を用いて回路基板150の上面(表面であって図4から見える上側の面)と下面(裏面)に配線パターンが形成される。回路基板150の前後方向の中央よりもやや前側には、スロット群配置領域160が設けられ、そこに複数の接続端子(161、162、164〜168、171、172、177)が横方向に並べて固定される。
正極端子(161、162、171、172)と負極端子(167、177)は、左右方向に大きく離れた箇所に配置され、それらの間には3つの信号端子(T端子164、V端子165、LS端子166)が設けられる。本実施例では電力端子用の部品として、水平方向に延びる腕部が上側の左右に1組、下側の左右に1組の合計2組設けられたものを用いるが、その詳細形状は図11にて後述する。尚、信号端子(164〜166、168)に関しては、従来から用いられるような腕部が上下方向に1つの信号端子部品をそのまま用いることも可能である。しかしながら、本実施例では正極端子(161、162、171、172)と負極端子(167、177)における機器側端子との嵌合状態と同等にするために、信号端子側においても上下に2つの腕部を有する信号端子部品(図11にて後述)を用いるようにした。
負極端子対(167、177)の左側にはLD端子168が設けられる。LD端子168も上側と下側の2組の腕部を有するように形成される。すべての信号端子(164〜166、168)は、回路基板150の形成された複数の取付孔151にそれぞれの脚部を表面から裏面にまで貫通させて、裏面側で半田付けにより固定される。本実施例では3つの信号端子(164〜166)の固定方法にも特徴を有するが、その詳細は図11及び図12にて後述する。以上のように、回路基板150上に図示しない電子素子が搭載され、複数の接続端子が半田付けにより固定されたあとに、図17にて後述する基板カバー180が設けられ、回路基板150の表面を樹脂にて固めた後に図示しないネジによってセパレータ445に固定される。尚、図4では基板カバー180の図示を省略している。
下ケース101は、上面が開口された略直方体の形状であって、底面と、底面に対して鉛直方向に延びる前面壁101a、後面壁101b、右側側壁101c、左側側壁101dにより構成される。下ケース101の内部空間はセパレータ445を収容するのに好適な形状とされ、セパレータ445を安定して保持するために底面内側に形成される多数の固定用リブ102や、壁面を補強ために鉛直方向に連続するように形成される多数のリブ105が形成される。前面壁101aのほぼ中央には、スリット104が設けられる。上ケース110のスリット134は、充電装置にて充電を行う際に電池パック100の内部空間に充電装置側から送出される冷却風を流入させるための流入口として用いられ、下ケース101のスリット104は冷却風の排出口として用いられる。
電池セル側からの出力の回路基板150との接続は、上方向に板状に延びる接続用の引出しタブ461a、466a、471a、476aを介して行われる。また直列接続された電池セルの中間接続点からのリード線の端部494b、496b〜499bが上方向に延びるように配置され、回路基板上に半田付けされる。さらに、直列接続された電池セルの中間接続点からの中間引出しタブ462a、463aが回路基板150に接続されるべく、上方向に延びるように配置される。セパレータ445の上側には、回路基板150を固定する為のネジボス447a、447bが形成される。
次に図5の展開斜視図を用いてセパレータ445を用いた電池セルのスタック状況および配線方法を説明する。セパレータ445は10本の電池セル146a〜146e、147a〜147eを5本ずつ、上下2段にスタックしたものである。図5では電池セル146a〜146e、147a〜147eがセパレータ445から引き出された状態を示しているが、組立時にはセパレータ445の円筒状の空間446内に挿入され、セパレータの左右両側に露出した端子間に、接続板462〜465、472〜475にて相互に接続され、引出し板461、466、471、476が電池セルに接続される。その後に、絶縁のために絶縁シート482a、482bが接続板462〜465、472〜475や引出し板461、466、471、476の上に貼り付けられる。
各電池セルの軸線はそれぞれ平行になるように積み重ねられ、隣接するセルの向きを交互に逆になるように配置して、隣接する電池セルの正極端子と負極端子を金属製の接続板462〜465、472〜475を用いて接続される。電池セルの両側端子と接続板462〜465、472〜475は、複数箇所のスポット溶接によって固定される。ここでは上段に設置された5本の直列接続された電池セルが上側セルユニット146(図8にて後述)を形成し、下側に設置された5本の直列接続された電池セルが下側セルユニット147(図8にて後述)を形成する。尚、ここでいうセルユニットの上側、下側とは、電池セルが下ケース101内の上段にあるか下段にあるかという物理的な位置を指すのでは無くて、2つのセルユニットを直列接続した際に、グランド側に位置する方のセルユニットを“下側セルユニット”と呼び、直列接続した際に高い電圧側に位置する方のセルユニットを“上側セルユニット”と呼ぶものであり、電気的な電位を基準としている。本実施例の電池パックでは上側セルユニット146が上段に配置され、下側セルユニット147が下段に配置されているが、この配置に限られず、電池セルの配置方法は上段と下段に分けずに前側と後側に分けるようにしても良い。
電池セル146a〜146e、147a〜147eは、18650サイズと呼ばれる直径18mm、長さ65mmの複数回充放電可能なリチウムイオン電池セル(図示せず)が用いられる。本実施例では電池パック100からの出力電圧を切り替え可能とするために、複数のセルユニットの直列接続電圧(高電圧側出力)と、並列接続電圧(低電圧側出力)の形態が選択可能とされる。従って、本発明の思想に従えば、各セルユニットにおいて直列に接続されるセルの本数を等しくすれば、セルユニットの数は任意である。使用する電池セルは18650サイズだけに限られずに、いわゆる21700サイズの電池セルや、その他のサイズの電池セルであっても良い。また電池セルの形状は円筒形だけに限られずに、直方体のもの、ラミネート形状のもの、その他の形状であっても良い。電池セルの種類はリチウムイオン電池だけに限られずに、ニッケル水素電池セル、リチウムイオンポリマー電池セル、ニッケルカドミウム電池セル等の任意の種類の二次電池を用いても良い。電池セルの長さ方向の両端には2つの電極が設けられている。2つの電極のうち、一方は正極であり他方は負極であるが、電極を設ける位置は両端側だけに限定されるもので無く、電池パック内で容易にセルユニットが形成できるならば任意の電極配置で良い。
上側セルユニット146の正極は、引出しタブ461aが形成された引出し板461を用いて回路基板150に接続され、上側セルユニット146の負極は、引出しタブ466aが形成された引出し板466を用いて回路基板150に接続される。同様にして下側セルユニット147の正極は、引出しタブ471aが形成された引出し板471を用いて回路基板150に接続され、下側セルユニット147の負極は、引出しタブ476aが形成された引出し板476を用いて回路基板150に接続される。セパレータ445の上面には、金属の薄板を折り曲げた形状の引出し板461、466、471、476のタブを保持するためのタブホルダ450〜452、455〜457が形成される。タブホルダ450〜452、455〜457は、L字状に折り曲げられた引出しタブ461a、462a、463a、466a、471a、476aを保持するために形成されるタブ保持部であり、セパレータ445の成形時に座面、背面、両側側面を有する凹部として一体成形され、この凹部に引出しタブ461a、462a、463a、466a、471a、476aがそれぞれ嵌め込まれる。セパレータ445の上部には回路基板150をネジ止めするための2つのネジボス447a、447bが形成される。引出し板461、471と接続板463、465、473、475の右側は絶縁シート482aにて覆われ、引出し板466、476と接続板462、464、472、474の左側は絶縁シート482bにて覆われる。絶縁シート482aは電気を通さない材質であって、その内側部分はシール材が塗布されている。
次に図6を用いて、2組の電力端子の形状を説明する。図6は図4に示した回路基板150の部分図であり、回路基板150に固定された正極端子対(上側正極端子162と下側正極端子172)と、負極端子対(上側負極端子167と下側負極端子177)だけを図示したものである。出力用の正極端子は、電気的に独立した上側正極端子162と下側正極端子172が、回路基板150の取り付け位置で見て前後方向に並ぶように配置される。これらは互いに近接して配置される複数の端子(162、172)であって、
電圧の切替え用に使用される切替端子群として機能する。上側正極端子162と下側正極端子172は、それぞれが前方側に延在する腕部組(腕部162aと162b、腕部172aと172b)を有する。ここでは腕部162a、162bと腕部172a、172bが上下方向に離れた位置であって、その嵌合部の前後方向位置がほぼ同一となるような形状とされる。これら正極端子対(162、172)は、単一のスロット122内に配置される。負極端子対も、正極端子対の形状と同じであって、上側負極端子167と下側負極端子177により構成され、これら負極端子対(167、177)が単一のスロット127の内部に配置される。これらは互いに近接して配置される複数の端子(167、177)であって、電圧の切替え用に使用される切替端子群として機能する。スロット127の内部では、上側に上側負極端子167の腕部組が配置され、上側負極端子167の腕部組の下側に下側負極端子177の腕部組が配置される。尚、図6では図示していないが、放電用の正極端子対(上側正極端子162と下側正極端子172)の右側には、充電用の正極端子対(上側正極端子161と下側正極端子171:図4参照)が配置される。充電用の正極端子対(161、171)の形状は、上側正極端子162と下側正極端子172と同形状である。
図7(1)は、上側端子部品260と下側端子部品280の部品単体を示す斜視図である。上側端子部品260は上側正極端子161、162、及び上側負極端子167として用いられる共通部品であり、下側端子部品280は下側正極端子171、172、及び下側負極端子177として用いられる共通部品である。上側端子部品260と下側端子部品280は、導電性の金属からなる平板をプレス加工によって切り抜いたのちに、U字形に曲げて形成したものである。上側端子部品260は、U字状の底部となる面、即ちブリッジ部262が後側になるように折り曲げられ、下側端子部品280においては、ブリッジ部282が後側になるように折り曲げられる。上側端子部品260には、下側端子部品280の上側に延びるような長い腕部265、266が形成される。腕部265、266の延びる前後方向から見て、ブリッジ部262は直交する面を有し、その面は鉛直方向に延びる鉛直面となる。
上側端子部品260は、U字状に折り曲げて平行になるように形成された右側側面263、左側側面264と、それらを接続するものであって後面となるブリッジ部262を有する。右側側面263と左側側面264の前方側には、左右両側から内側に向けて機器側端子を挟み込む腕部265、266がそれぞれ設けられる。左側側面264の前方辺部のうち下側から上端に近い位置までは鉛直方向に平面状に延び、上端に近い付近から腕部265、266が前方側に延びるように形成される。右側側面263の形状は、左側側面264と面対称に形成される。腕部265は右側側面263の上側前方辺から前側に延びるように配置され、腕部266は左側側面264の上側前方辺から前側に延びるように配置される。このように腕部265、266は、基体部261の前側辺部の上側部分から前方側、即ち電池パック100の装着方向と平行方向に延びるように形成される。腕部265、266は、左右方向にみるとお互いが対向して、最小間隔部分、即ち機器接続端子と嵌合する嵌合部がほとんど接触する位置まで近接するようにプレス加工されることによりバネ性を持たせている。ここでプレス加工とは、プレス機械を用いて行う塑性加工のことであり、板金などの素材を型に対して高い圧力で押しつけて、切断、打抜き、穴あけなどの剪断加工を施し、さらに必要に応じて曲げ加工や絞り加工を行うことにより、所要の形状に剪断、成形する。本実施例において、上側端子部品260と下側端子部品280は、例えば厚み0.8mmの平板にて形成される。これにより、上側正極端子161、162及び上側負極端子167は高い機械強度を備え、機器側端子と嵌合する際の嵌合圧力が高くなる。尚、プレス加工の後に熱処理やメッキ処理等を施すようにしても良い。
下側端子部品280も同様にして製造されるもので、U字状に折り曲げて平行なるように形成された右側側面283、左側側面284と、それらを接続するブリッジ部282からなる基体部281を有し、右側側面283と左側側面284の細長い上部付近から前方側に、腕部285、286が形成される。腕部285、286は、左右両側から内側に向けて機器側端子を挟み込むような形状とされる。上側の腕部組(265、266)の上端位置と、下側の腕部組(285、286)の下端位置の距離Sは、従来の18V用の電池パックに設けられる電力端子の幅とほぼ同等になるように構成する。一方、上側の腕部組(265、266)と、下側の腕部組(285、286)はそれぞれ上下方向に所定の距離S1を隔てるように配置される。下側の腕部組(285、286)の下方には、前方側から大きく切り欠かれた切欠き部291が形成される。下側端子部品280の後方側は、上側端子部品260の右側側面263、左側側面264と所定の隙間を隔てて互いに接触しないように前後方向に並べて固定される。
図7(2)では脚部267、268の部分にハッチングを付して、その範囲が明確になるように図示している。本明細書でいう基体部261とは、取り付けられる回路基板150の表面から上側に露出する部分であって、腕部265と266を除いた部分である。上側端子部品260の基体部261は右側側面263と左側側面264とブリッジ部262により構成される。基体部261の下辺部より下方には、脚部267、268が接続される。右側側面263と左側側面264は鉛直方向に延びる略長方形であって、上端に近い部分で前方側に腕部265、266が延びるように形成される。腕部265、266の後方側根元付近、即ち鎖線B2付近では幅(上下方向の長さ)が大きく、前方に行くに従ってその幅が徐々に小さくなり、仮想線B1よりさらに前方側では幅が一定なる。嵌合部265d、266dでは、上面視で内側に所定の曲率半径R1を有する曲面状に曲げられる。このようにU字形の基体部の上方前辺部から前方に延びるようにして腕部265、266が形成され、腕部265、266が互いに非接触状態にてバネ性を持たせるように形成される。
脚部267、268は回路基板150の取付孔(貫通孔)に挿入して、回路基板150の取付面(表面)から取付面と反対側の面(裏面)まで脚部267、268を突出させ、裏面において脚部267、268が回路基板150に半田付けされる。また、半田付けによって腕部265、266と回路基板150に搭載される電池セルや電子素子等と電気的に接続される。ここで脚部267、268の高さH1は、回路基板150の厚さよりも大きく、2倍よりも小さい程度に形成される。右側側面263と左側側面264の後辺の下側部分には、矢印262aで示すように、ブリッジ部262が後方側に湾曲するように突出するので、この突出部分が上側端子部品260と下側端子部品280の回路基板150への取り付け時の上下方向位置決め用に用いられる。右側側面263と左側側面264の下側部分の前方側には、水平方向に凸状に延ばした部分を形成して、その凸状部分を内側に折り曲げた折曲部263a(図では見えない)、264aが形成される。折曲部263a、264aの曲げ部の上側と下側には、折り曲げ加工を容易にするために略円形の切抜部が形成される。折曲部263a、264aと段差部262aは、回路基板150の取付孔近傍の上面に接するようにして、上側端子部品260の上下方向の位置決めをするために形成されるものである。
基体部261は側面視で倒立させた略L字状とされる。腕部265、266の後方部分は、後方側の接続部付近から前方に向けて右側側面263、左側側面264が同一面状に延びた平面部265a、266aが形成される。腕部265、266の先端部分は大きめの曲率半径R1にて外側に広がるように曲げられた嵌合部265d、266dが形成される。嵌合部265d、266dの内側の曲面部分が、電動工具本体1、30の端子と接触することにより、上側端子部品260が電動工具本体1、30側の接続端子と電気的に導通することになる。嵌合部265d、266dの内側は、電池パック100が電動工具本体1、30から取り外された状態ではわずかな隙間を有するような形状とされる。嵌合部265d、266dの前方側は前方に行くにつれて間隔が急激に広がるように形成され、電動工具本体1、30側の端子を案内する。
下側端子部品280は、U字状に折り曲げて平行なるように形成された右側側面283、左側側面284と、それらを接続するブリッジ部282を有し、右側側面283と左側側面284の細長い上部から、前方かつ斜め上側に向けて腕部285、286が延びるように設けられる。腕部285、286の上下方向の幅は前後方向においてほぼ一定であり、仮想線B1よりも前方側では水平方向に延びるように形成されるが、仮想線B1より後方側は斜めに配置される。下側端子部品280の腕部組(285、286)の下方には、前方側から大きく切り欠かれた切欠き部291が形成される。このように形成した結果、上側端子部品260の腕部265、266の長さ(前後方向長さであってB2よりも前方)は、下側端子部品280の腕部285、286の長さ(前後方向長さであって、矢印291位置よりも前方側)よりも長くなる。このような前後方向の長さが異なる腕部組であっても、上側端子部品260の嵌合部における嵌合圧が、下側端子部品280の嵌合圧と同一になることが好ましい。嵌合圧を均等にしないと電動工具本体1、30側の平板状の機器側端子との接触抵抗が変わって、わずかな発熱の違いが発生したり、長期にわたる使用による摩耗状況が異なる虞があるからである。本変形例では、上側端子部品260と下側端子部品280による嵌合圧のバランスをとるために、電池パックの非装着状態における初期隙間間隔が異なるようにした。即ち、電池パック100が電動工具本体1又は30に装着されていない状態(取り外し状態)において、左右の腕部265、266の最小間隔が、腕部285、286の間隔と異なる。ここでは上側端子部品260の腕部265と266の間隔が0.2mmであるのに対して、下側端子部品280の腕部285と286の最小間隔が0.5mmとなるようにした。
嵌合圧を均一にするために、上側端子部品260と下側端子部品280の形状にも工夫を施した。即ち、図7(2)に示すように、本来なら上側端子部品260では点線264bのようなほぼ直角の内角を形成すべきところ、ここでは点線264bの輪郭を矢印264eの方向に延ばして、側面視で二等辺三角形状の補強面264cが追加されるような形状とした。この結果、この内角部分の輪郭は矢印264dのように斜めになり、この形状変更によって上側端子部品の腕部265、266の取り付け剛性が向上する。上側端子部品260の内角部分の形状変更に合わせて、下側端子部品280の外角部分の形状を点線284bの部分から矢印284eの方向に切り落とすことにより、側面視で二等辺三角形状の切り落とし部284cを設けたような形状とした。この結果、この外角部分の輪郭は矢印284dのようになり、下側端子部品の腕部285、286の剛性を低下させた。矢印264dと矢印284dに示す輪郭部分は、側面視で互いにほぼ平行となるように一定の間隔を離すようにそれら輪郭が決定される。尚、切り落とし部284cを形成するとブリッジ部282の上下方向の長さが短くなってしまう。しかしながら、下側端子部品280は小さいため、上側端子部品260に比べて強度的にも十分強いので、これらの形状変更でちょうど強度的なバランスがとれる。このように上側端子部品260には補強面264cの追加をするという内角部分の形状を変更し、下側端子部品280には切り落とし部284cの形成による強度調整をするという外角部分の形状を変更することで、両者の強度のバランスをとり、腕部265と266、285と286による本体側端子への嵌合圧をほぼ同等にすることができた。
図7(3)は上側端子部品260と下側端子部品280を正面から見た図である。電池パック100の非装着時の状態では、上下の腕部組の最小間隔が異なるようにした。つまり上側の腕部265と266の左右方向の間隔に比べて、下側の腕部285と286の左右方向の間隔が大きいように構成した。これは上下に並べて配置される腕部265と266、腕部285と286の、装着方向(前後方向)の長さとは逆比例させたような関係としたものである。長い腕部265と266は初期状態において狭い間隔で対向する。逆に短い腕部285と286は広い間隔で対向する。
以上のように電力端子は、0.8mmの厚めの板厚の上側端子部品260と下側端子部品280を用いるようにした。信号端子部品に関しては微小電流しか流れないので、従来の電池パック15と同様に0.3mm程度の厚さの金属板にて製造すれば良い。本変形例では大電流が流れる電力端子の剛性が一層向上し、作業中だけでなく長期の使用にわたって嵌合状況を良好に維持することができた。尚、上下の腕部組の嵌合圧をほぼ同じとするには、嵌合部の隙間の調整と、取り付け元付近の形状の変更だけに限定されずに、その他の変更、特に板厚の調整、端子部品の材料の選択等によっても達成可能である。
次に図8を用いて電池パック100を電動工具本体1、30に装着した際の、電動工具本体1、30側のターミナル部20の形状と、電池パック100の接続端子との接続状態を説明する。図8(1)は、電池パック100を36V用の電動工具本体30に装着した状態を示す図である。前述したように電池パック100の内部には10本の電池セルが収容され、そのうちの5本が上側セルユニット146を構成し、残りの5本が下側セルユニット147を構成する。電動工具本体30は上側正極端子162と上側負極端子167と嵌合することによって駆動部35を動作させる。この際、電動工具本体30に設けられているショートバーが、点線59で示す電気的接続回路を形成するので、上側セルユニット146と下側セルユニット147は直列接続状態となる。つまり、上側セルユニット146の負極が下側セルユニット147の正極と接続され、電池パック100の正極出力として上側セルユニット146の正極が接続され、負極出力として下側セルユニット147の負極が接続される。このようにして、上側セルユニット146と下側セルユニット147の直列出力、即ち定格36Vが出力されることになる。
図8(2)は、電池パック100を18V用の電動工具本体1に装着した状態を示す図である。18V用の電動工具本体1には、上側正極端子162と下側正極端子172と同時に嵌合させる大きさの正極入力端子(図10にて後述)が設けられる。同様にして、上側負極端子167と下側負極端子177と同時に嵌合させる大きさの負極入力端子(図10にて後述)が設けられる。つまり、上側セルユニット146と下側セルユニット147の正極どうしが接続された状態にて正極出力とされ、上側セルユニット146とが下側セルユニット147の負極どうしが接続された状態にて負極出力とされる並列接続状態となる。この結果、電動工具本体1に接続されると自動的に定格18Vが出力されることになる。このように電池パック100の電圧の切替をおこなう切替端子群(162、167、172、174)との接続関係を変更することにより、電池パック100から得られる出力電圧を切り替えることが可能となった。
図9は(1)は本実施例の電動工具本体30のターミナル部50の斜視図であり、(2)はショートバー59単体の斜視図であり、(3)はターミナル部50と電池パック100の電力端子との接続方法を示す図である。定格36Vの電動工具本体30のターミナル部には、電力用の入力端子として、受電用の正極入力端子52の端子部52aと、負極入力端子57の端子部57aが小さく形成されて上側に設けられる。装着時において、正極入力端子52の端子部52aは上側正極端子162だけに嵌合し、負極入力端子57の端子部57aは上側負極端子167だけに嵌合する。一方、電動工具本体30のターミナル部には、下側正極端子172と下側負極端子177を短絡させるショートバー59(59a。59b)が設けられる。図9(2)に図示されるように、ショートバー59は金属製の導電部材からなる短絡子であって、コの字形状に曲げられた部材である。ショートバー59の接続部59aの一端側に端子部59bが形成され、端子部52aの下側に配置される。ショートバー59の接続部59aの他端側に端子部59cが形成され、端子部59cは端子部57aの下側に配置される。端子部59bは下側正極端子172と嵌合し、端子部59cは下側負極端子177と嵌合する。ショートバー59は、正極入力端子52や負極入力端子57等の他の機器側端子と共に合成樹脂製の基台51(図7にて後述)に鋳込まれるようにして固定される。この際、ショートバー59は他の金属端子(52、54〜58)とは接触しない。また、ショートバー59は、下側正極端子172と下側負極端子177を短絡させるためだけに用いられるため、電動工具本体の制御回路等への配線をする必要はない。
正極入力端子52は、上側負極端子167と嵌合する部分であって平板状に形成された端子部52aと、電動工具本体30側の回路基板側との結線を行うリード線を半田付けするための配線部52cと、端子部52aと配線部52cとの間を接続すると共に合成樹脂製の基台51に鋳込まれる連結部(図では見えない)により形成される。負極入力端子57も正極入力端子52と同様であって、端子部57aの高さが、他の端子部(54a〜56a、58a)に比べて半分程度又は半分より小さい程度の大きさとされる。他の端子部(54a〜56a、58a)は信号伝達用の端子であって、配線部54c〜56c、58cを介してリード線(図示せず)により電動工具本体30側の制御回路基板に接続される。ターミナル部50の合成樹脂製の基台51の前側と後側には、ハウジングによって挟持されるための凹部51bと51cが設けられる。
図9(3)において、電池パック100を装着する際には、電池パック100を電動工具本体30に対して差し込み方向に沿って相対移動させると、正極入力端子52と端子部59bが同一のスロット122(図3参照)を通って内部まで挿入され、上側正極端子162と下側正極端子172にそれぞれ嵌合される。このとき、正極入力端子52が上側正極端子162の嵌合部間を押し広げるようにして上側正極端子162の腕部162aと162bの間に圧入され、ショートバー59の端子部59bが下側正極端子172の腕部172aと172bの間を押し広げるようにして圧入される。同様にして、負極入力端子57と端子部59cが同一のスロット127(図3参照)を通って内部まで挿入され、それぞれ上側負極端子167と下側負極端子177に嵌合される。この際、負極入力端子57の端子部57aが嵌合部間を押し広げるようにして上側負極端子167の腕部167aと167bの間に圧入される。さらに、ショートバー59の端子部59cが下側負極端子177の腕部177aと177bの間を押し広げるようにして圧入される。
端子部52a、57a、59b、59cの板厚は、各腕部の嵌合部の初期隙間(電池パック100が装着されていない時の隙間)よりもわずかに大きいので、端子部52a、57a、59b、59cの各々と上側正極端子162、下側正極端子172、上側負極端子167、下側負極端子177との嵌合点に所定の嵌合圧力が作用する。このような接続の結果、電動工具本体30の機器側端子(端子部52a、57a、59b、59c)と、電池パックの電力端子(上側正極端子162、下側正極端子172、上側負極端子167、下側負極端子177)は電気的な接触抵抗が小さくなるような状態にて良好に接触する。このようにして電動工具本体30は、単一のスロット(122に挿入されて第1及び第2の端子(162、172)のうち第1の端子(162)のみに接続される第3の端子(52a)と、単一のスロット(122)に挿入されて第2の端子(172)のみに接続される第4の端子(59b)と、を有し、電池パック100が電動工具本体30に接続されると、単一のスロット121内で、第1及び第3の端子(162と52a)が互いに接続されてともに第1の電位となり、第2及び第4の端子(172と59b)が互いに接続されてともに第1の電位とは異なる第2の電位となる。負極端子対(167、177)側でも同様に接続状態となるため、図9(3)の接続形態の実現によって、上側セルユニット146と下側セルユニット147の直列接続の出力、即ち定格36Vが電池パック100から出力されることになる。
一方、従来の18V用の電動工具本体1に電池パック100が装着された際には、図10のような接続関係となる。電池パック100が電動工具本体1に取り付けられるときは、正極入力端子22の端子部22aは、上側正極端子162と下側正極端子172の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、正極入力端子22の端子部22aの上側一部の領域が上側正極端子162と接触し、下側一部の領域が下側正極端子172と接触する。このように端子部22aを上側正極端子162の腕部162a、162bと下側正極端子172の腕部172a、172bに同時に嵌合させることによって、2つの正極端子(162と172)が短絡状態となる。同様にして負極入力端子27の端子部27aは、上側負極端子167と下側負極端子177の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、負極入力端子27の端子部27aの上側一部の領域が上側負極端子167と接触し、下側一部の領域が下側負極端子177と接触する。このように端子部27aを上側負極端子167の腕部167a、167bと下側負極端子177の腕部177a、177bに同時に嵌合させることによって、2つの負極端子(167と177)が短絡状態となり、電動工具本体1には上側セルユニット146と下側セルユニット147の並列接続の出力、即ち定格18Vが出力される。正極入力端子22の端子部22aと負極入力端子27の端子部27aは一定の厚みを有する金属板からなる。従って、上側正極端子162、上側負極端子167の腕部による嵌合圧と、下側正極端子172、下側負極端子177の腕部による嵌合圧を同等とすることが重要である。
以上のように本実施例の電池パック100は、18V用の電動工具本体1か36V用の電動工具本体30のいずれかに装着することにより、電池パック100の出力が自動的に切り替わるので、複数電圧に対応した使い勝手の良い電池パック100を実現できた。この電圧切り替えは電池パック100側にておこなうのではなくて、電動工具本体1、30側のターミナル部の形状によって自動的に行われるので、電圧設定ミスが生ずる虞が全くない。また、電池パック100側には、機械的なスイッチのような専用の電圧切替機構を設ける必要が無いので、構造が単純で故障の虞が低く、長寿命の電池パックを実現できる。この下側正極端子172と下側負極端子177を短絡させるショートバー59は、18V用電池パックの既存のターミナル部20と同スペース内に実装できるため、従来と互換性のある大きさで電圧切替式の電池パックが実現できる。さらに、外部の充電装置を用いて充電を行う際には、図10(2)のような接続方法にて充電することが可能なので、高電圧/低電圧の双方の充電をおこなうような充電装置を準備する必要が無い。
電池パック100を外部充電装置(図示せず)を用いて充電する場合は、従来の18V用電池パックと同じ充電装置にて充電が可能である。その場合の充電装置のターミナルは図10(1)と同等の形状となるが、放電用の正極端子(162、172)の代わりに、充電用の正極端子(上側正極端子161、下側正極端子171)が充電装置(図示せず)の正極端子に接続されることになる。その際の接続状況も図10(2)に示す接続関係とほぼ同等である。このように、上側セルユニット146と下側セルユニット147を並列接続させた状態として18V用の充電装置を用いて充電を行うので、本実施例の電池パック100を充電するにあたって、新しい充電装置を準備しなくて済むという利点がある。
次に図11を用いて3つの端子(164〜166)に用いられる部品、即ち信号端子部品240の形状を説明する。信号端子部品240は、1枚の金属板のプレス加工に製造されるものであって、金属の薄板をU字状の底部分となるブリッジ部242が後側の鉛直面となるように曲げられた基体部241から、腕部組(腕部基部245、246)が前方側に延在し、腕部基部245は上下の腕部組(腕部251、253)に分離するように形成され、腕部基部246は水平方向に延びる切欠き溝246b上下の腕部組(252、254)に分離するように形成される。プレス加工に用いる金属板は、厚み0.3mmの平板であって、電力端子に用いられる上側端子部品260、下側端子部品280の板厚0.5mmに比べて薄くて良い。上側及び下側の腕部組は、同一形状に形成され、前後方向の長さ、上下方向の幅、板厚等が同じである。上側の腕部組(腕部251と252)、及び、下側の腕部組(腕部253と254)にはそれぞれ嵌合部(251d、253d等)が形成されるが、嵌合部のために湾曲させた形状も上下で同一であり、左右の腕部が面対称の形状とされる。一方、脚部249、250の取り付け位置が前後方向に大きくずらすように配置される。基体部241の下辺部分の形状は左右で異なり、右側側面243と左側側面244の形状が非対称となる。脚部249は、従前の脚部250の位置に比べて前側に大きくずらして配置され、脚部249と250は前後方向に大きく距離を隔てる。このように脚部249と脚部250が左右方向に隣接して並ぶのでは無く、前後にずらすように配置したため、右側側面243の下辺付近には前方に大きく延ばされた延在部243aが形成され、その前端部分から下方向に脚部249が延びるように形成される。脚部249と脚部250はそれぞれ回路基板150に形成された貫通孔(図示せず)を、表面から裏面側まで貫通させて、裏面側に突出した部分が半田付けされることにより回路基板150に固定され、上側の腕部組(腕部251と252)と下側の腕部組(腕部253と254)が回路基板150に搭載される電子素子と電気的に接続されることになる。
脚部249の上方には、回路基板150の取付孔151(図4参照)への挿入量を制限するための、左方向に折り曲げた折曲部243bが形成される。折曲部243bの曲げた部分の上側と下側には、折り曲げ加工を容易にするために半円形に切り抜いた切抜部243c、249aが形成される。後方側の脚部250の回路基板150への位置決めには、脚部250の前方側と後方側に形成された段差部250a、250bを用いるようにした。段差部250aは左側側面244の下辺部分を前方側に延ばすことで形成し、段差部250bはU字状に湾曲するブリッジ部242の下側辺部を利用して形成される。このように段差部250a、250bが回路基板150の表面に当接することにより脚部250の上下方向の取り付け位置を決定することができる。脚部249と250の前後方向の取り付け位置は、回路基板150の取付孔151(図4参照)の位置によって規定される。
図11(2)は信号端子部品240単体を前方下側から見た図である。この図からわかるように腕部基部245の前方側には水平方向に延びる切欠き溝245bが形成されることにより上下の腕部組(腕部251、253)に分離される。また、右側の脚部249は左側の脚部250に比べて大きく前方側にずれるように配置される。この結果、4つの腕部251、252、253、254に対して上方向又は下方向に対する力が加わったとしても信号端子部品240を回路基板にしっかりと保持することができる。腕部251、252、253、254に対して加わる外力は、電動工具本体1、30に電池パック100を装着する時に腕部組を後方側に押すように加わり、この力は信号端子部品240を後方に倒す方向となる。逆に、電動工具本体1、30から電池パック100を取り外す時には、腕部組を前方側に押すような力となり、この力は信号端子部品240を前方に倒す方向となる。このように電池パック100の装着時と取り外し時に加わる外力を、脚部249、250の位置を前後方向にずらしたことにより効果的に受け止めることができ、信号端子部品240の取り付け剛性を大幅に強化できるので、電池パック100の耐久性を高めることができた。さらには、腕部組も上側と下側の2段に分けて形成したので、電動工具の動作中に様々な振動を受けたり外力を受けたりしても、腕部の4つの接触領域によって電動工具本体側端子との良好な接触状態を維持できる。ここで「接触領域」とは、電池パック100を電動工具本体に装着した際に、信号端子部品240の腕部251、252、253、254と、入力端子(例えば正極入力端子52と負極入力端子57)の接触する領域を指している。一方、この信号端子部品240を製造する際に必要な、回路基板150の取付孔の数や半田付け箇所の数は従来と同じであるため、製造コストの上昇は抑制できる。
本実施例の信号端子部品240は剛性向上だけでなく別の効果も奏する。従来の信号端子部品(図示せず)は、回路基板に半田付して電気的・機械的に取付ける脚部を2箇所設けているが、その脚部は左右方向に並設しており、脚部の間が狭い上に半田付け部分がつながっていることが多く、左右の脚部の間に信号用のパターンを通すような配線ができなかった。本実施例の電池パック100では、信号端子部品240の一方の脚部249を前側に配置し、他方の脚部250を後側にして両方の脚部を離して配置した。これにより、信号端子部品240の各脚部の距離が広くなり複数の配線、又は、主電流を流す太いパターンを配線することが容易になる。このような信号端子部品240は、本実施例の電池パック100、即ち、従来の電池パックに対して高機能化を図り、電圧比でみた小型化を促進したい場合には好適である。特に、電圧を高めた上に電圧切り替え機能を実現すると、回路基板150に搭載される電子素子が増加する。そこで、パターン配線の効率化を図ると共に、主電流を流す配線を太くする必要が生じた。本実施例では回路基板150を従来用いられるものよりも大型のものを用い、接続端子群の後側だけでなく前側領域にも電子素子を搭載するようになった。その際、信号端子部品240の下側にも配線パターンを配置するようにした。その配置のしかたを図12を用いて説明する。
図12は複数の信号端子部品240の回路基板150への固定状況を示す図であり、(1)は前方から見た図であり、(2)は信号端子部品240を左から見た図である。信号端子部品240は共通部品であって、T端子164、V端子165、LS端子166として回路基板150において左右方向に並べて固定される。信号端子部品240は腕部の中央付近に間隔S2を生ずるように切り欠き部が形成されるため、上側の腕部組(251、252)と下側の腕部組(253、254)が上下に2段存在するような形状となる。機器側端子が装着されていない状態においては、上側の腕部組(251、252)と下側の腕部組(253、254)の最も接近する部分(嵌合部)は、わずかに隙間を隔てるか、又は当接するように配置される。それぞれの脚部249、250は、回路基板150の取付孔(図4参照)を貫通して下側まで突出し、回路基板150の下側(裏面)にて半田256により固定される。
図12(2)の側面図において、前方に位置する脚部249と後方に位置する脚部250の間は距離S3だけ隔てるように構成される。距離S3は、脚部249と250との間隔(左右方向の距離)よりも大きくなるようにすると良い。このように矢印257のような隙間を形成することによって、この隙間部分に回路パターンを配線することが容易となる。図12(3)は、図12(1)の回路基板150を下側から見た底面図である。回路基板150の裏面には、信号端子部品240を半田付けするために中央に貫通孔が形成され、貫通孔の周囲に略四角形の半田付け用の銅箔を配置したランド153a〜155a、153b〜155bが形成される。ランド153a〜155a、153b〜155bから上側セルユニット146又は下側セルユニット147への接続用の配線パターンは、回路基板150の表面側にあり、(3)の図では見えない。左側の脚部用のランド153a〜155aと右側の脚部用のランド153b〜155bは前後にずれるように配置される。この結果、ランド153a〜155aとランド153b〜155bの間に、図のように複数の配線パターン157〜159を配置することが可能となる。配線パターン157〜159はここでは、各3本ずつ設けるように図示しているが、1本の太い配線としたり、その他の本数の組み合わせとしても良い。このように前後方向にずらして配置した脚部249、250の間に配線パターンを配置させたので、隣接する信号端子164と165、165と166の間隔を従来と同じに保ったままで、信号端子164〜166の後方側と前方側を接続する複数の配線パターン157〜159を設けることが可能となった。尚、信号端子164〜166の後方側と前方側を接続する配線パターン数を増やす別の方法として、図12(2)において点線で示すような切抜部243cを設ける方法を併用しても良い。右側側面243の下辺付近であって回路基板150と接する部分に、点線で示すような上向きに切り欠いた切抜部243cを形成する。すると、矢印257に示す部分が回路基板150と距離を隔てる隙間となる。この隙間と回路基板150の間に、図12(3)の配線パターン157〜159と同様に回路パターンを配置することが可能となる。このように回路基板の裏面側150bだけでなく表面側150aにも信号端子164〜166の後方側と前方側を接続する複数の配線パターンを配置することができるので、回路基板150の実行効率を向上させることが可能となる。
図13は図5に示した部品を組み立てた後のセパレータ445の側面図であり、(1)は右側面であり、(2)は左側面図である。ここでは説明上の容易さから、接続端子群は、放電用の正極端子(162、177)と、負極端子(167、177)の2組だけを図示し、その他の接続端子(161、164〜166,168、171)の図示を省略している。上側セルユニット146は上段側に配置された電池セル146a〜146eにより構成され、正極側の引出し板461から上方に延びる引出しタブ461aと、負極側の引出し板466から上方に延びる引出しタブ466aにて回路基板150に接続される。回路基板150にはスリット状の貫通孔(図示せず)が開けられ、その貫通孔を下側から上側まで貫通させて、引出しタブ461a、466aの上部が回路基板150の表面から上側に露出する。その部分を半田付けすることにより、回路基板150と引出しタブ461a、466aとの電気的な接続が行われる。同様にして、下側セルユニット147は下段側に配置された電池セル147a〜147eにより構成され、両端に設けられた引出し板471、476から上方に延びる接続用の引出しタブ471a、476aにて回路基板150に接続される。回路基板150にはスリット状の貫通孔(図示せず)が開けられ、その貫通孔を下側から上側まで貫通させて、引出しタブ471a、476aの上部が回路基板150の表面から上側に露出する。その部分を半田付けすることにより、回路基板150と引出しタブ471a、476aとの電気的な接続が行われる。
図13(1)に示す接続板463には上方に延びる中間引出しタブ463aが設けられ、図13(2)に示す接続板462には上方に延びる中間引出しタブ462aが設けられる。中間引出し462a、463aは、上段側に配置される接続板462、463から上側に板状部材を延ばして、回路基板150に沿って内側に折り曲げ、再度上側に折り曲げることによって中間引出しタブ462a、463aを形成した金属の薄板の折曲体である。回路基板150にはスリット状の貫通孔(図示せず)が開けられ、その貫通孔を下側から上側まで貫通させて、中間引出しタブ462a、463aの上部が回路基板150の表面から上側に露出する。中間引出しタブ462a、463aは回路基板150に半田付けすることにより固定される。中間引出しタブ462a、463aの幅(前後方向の距離)は、図13(1)の引出しタブ461aや図13の引出しタブ466aの幅(前後方向長さ)よりも小さく形成される。これは引出しタブ461a、466a、471a、476aは電力の出力用の端子であって大電流が流れる端子であるのに対して、中間引出しタブ462a、463aは中間電位の測定用に接続される端子であり、わずかな電流しか流れないためである。上段側に設けられるその他の接続板464と接続板465にも中間引出しタブを形成することも可能である。しかしながら、ここでは配線パターンの形成の関係から、接続端子464a、465aを設けて図示しないリード線にて回路基板150と接続することにした。下段側に設けられる接続板472〜475については、引出しタブによる回路基板150との接続が困難であるため、接続端子472a〜475aを設けてリード線496〜499にて回路基板150と接続するようにした。
図14はセパレータ445に回路基板150を固定した状態を示す斜視図であって、左前上方より見た状態を示す。回路基板150にはスリット状の貫通孔152c、152bの上部が回路基板150の表面から上側に露出する。その部分を半田付けすることにより、回路基板150と引出しタブ471a、476aとの電気的な接続が行われる。以上のようにして上側セルユニット146の電池セル146a〜146eは直接接続され、下側セルユニット147の電池セル147a〜147eは直列接続されるが、接続板462〜464及び接続板472〜474の電位を測定するためのリード線496〜499(但し図14では497、499は見えない)が接続される。図4に示したリード線の端部494b、496b、497b、498b、499bは回路基板150に半田付けされる。これらリード線は、回路基板側の半田付けを先にして、回路基板150をセパレータ445に固定した後にリード線の端部494b、496b、497b、498b、499bとは反対側の端部を、接続板464、465、472〜475に半田付けをする。一方、回路基板150に近接している接続板462、463は、リード線を用いて回路基板150に接続するのでは無くて、L字状に折り曲げられ、垂直板部分が上方に延びる中間引出しタブ462a、463aを用いて直接接続される。
上側セルユニット146の出力(+出力、−出力)用の引出しタブ461a、466aは正面視又は後面視で略L形形状となるような形状とされ、その長手方向は略長方形の回路基板150の長辺と平行になるように配置される。引出しタブ461a、466aは、引出し板461、466の電池セルの端子に固定された面を上側に延ばして内側に折り曲げ、セパレータの上面を水平方向内側に少し延ばして、適当な箇所で上方向にL字状に折り曲げることにより、折り曲げた鉛直壁部分を引出しタブ461a、466aとした、金属の薄板の折曲体である。しかしながら、下段に配置した電池セルからは、上段に電池セル用の電極が位置するため、同様の引き出し方法は採用できない。採用することも不可能ではないが、上側セル部分の電極に配置される接続タブの上に引出板を重ねることになり、十分な絶縁性を確保する必要があるからである。そこで、本実施例では下側セルの端子面471b(図13(1)も参照)からの引出し板471を前方側に延ばしてから左側に直角に折り曲げて側面部471cを形成し、側面部471cを上側に延ばす。つまり、引出し板471をセパレータ445の上面視で短辺側となる側面を這わせて上方向に延ばし、セパレータ445の前側側面から後方側に折り曲げて水平面部471dを形成し、水平面部471dを上側に直角にタブ状に延ばして引出し板471aを形成した。引出し板471aは回路基板150に形成されたスリット状の貫通孔152cを裏面から表面まで貫通させ、半田付けされる。引出しタブ471a、476aの長手方向は略長方形の短辺と平行になるように配置される。このように形成することによって、下段側の電池セルからの引出し板471を、上段側の電池セルの引出し板に干渉することなく配置することができる。
下段のマイナス端子からの引出し板476も同様の方法で引き出され、引出しタブ476aまで引き出される。このように、セパレータを左右両側側面だけでなく、前側側面及び後側側面を利用して上方向に引き出すことによって、下段に配置された電池セルからの出力を、上段の電池セルの上側部分、即ちセパレータの上面部にまで効率良く引き出すことができる。本実施例では引出し板471には、点線にて示す部分から左側に延びるようにして表面積を拡大した面とした放熱部471hがさらに形成される。これは、引出し板471が金属の薄板にて形成されるため、これを利用して温度上昇した電池セルを冷やすために形成したものである。放熱部471hの設けられる位置は、ちょうど下ケース101のスリット104(図4参照)に対向する位置であるので放熱面では有利である。尚、電池セルの温度上昇が問題にならない場合は、引出し板471の点線よりも左側部分(放熱部471h)を設ける必要はない。引出し板471にはさらに、接続経路の幅を大きく絞った部分、即ちヒューズ部471eを形成した。ヒューズ部471eは、引出し板471の右側から切り抜き部471fを形成し、左側から切り抜き部471gを形成して残りの部分の幅(左右方向幅)を十分狭くしたもので、この部分によって引出し板471に電力ヒューズとしての機能を持たせた。ヒューズ部471eに規定電流以上が所定時間以上流れた場合は、ヒューズ部471eが最初に溶断することにより電池パック100からの出力経路の一方(下段のセルユニットからの出力)を遮断する。同様のヒューズ機能は、上側セルユニット146のプラス端子からの引出し板461(図13(1)参照)の引出しタブ461aの近傍にも同様に設けられる。隣接する電池セルの電極間を接続するための長円状の接続板462、464、473、474は、ステンレス等の金属の薄板にて形成され、電池セルに対してスポット溶接をすることで固定される。
上側セルユニット146は、プラス出力用として引出しタブ461aが設けられ、マイナス出力用として引出しタブ466aが設けられる。また、下側セルユニット147は、プラス出力用として引出しタブ471aが設けられ、マイナス出力用として引出しタブ476aが設けられる。本実施例では引出しタブ461a、466a、471a、476aの設置位置も工夫した。回路基板150の左右中心線又は正極端子対(162、172)と負極端子対(167、177)の中心線を点線で示す左右中心線A1とする。また、上側正極端子162と下側正極端子172の脚部間の中心位置と、上側負極端子167と下側負極端子177の脚部間の中心位置の2つの中心位置を結んだ線を点線で示す仮想線A2とする。これら左右中心線A1と前後方向の脚部中心線A2を引いた際に、上側正極端子162の脚部がある領域内に上側セルユニット146の正極の引出しタブ461aが存在し、下側正極端子172の脚部がある領域内に下側セルユニット147の正極の引出し板471aが存在するようにした。このように引出しタブ461a、471aを配置することによって引出しタブ461aと上側正極端子162、引出し板471aと下側正極端子172を回路基板150上に配置する配線パターンにて効率良く接続できる。同様にして、上側負極端子167の脚部がある領域内に下側セルユニット147の負極の引出しタブ476aが存在し、下側負極端子177の脚部がある領域内に上側セルユニット146の負極の引出しタブ466aが存在するようにした。このように引出しタブ476a、466aを配置することによって上側負極端子167、下側負極端子177と回路基板150上に配置する配線パターンにて効率良く接続できる。
図15は、セパレータ445に回路基板150を固定した状態を示す斜視図であって、右後上方より見た状態を示す。ここでは、図14では見えなかったリード線497、498(図14参照)の端部497b、498bへの半田付け箇所をも確認できるであろう。回路基板150の前後方向にみて中央付近の左右縁部には、回路基板150のセパレータ445に対する位置決めのための凹部150c、150dが形成され、それらにセパレータ445に形成された凸部445c、445dが係合する。また、セパレータ445の前方側には、回路基板150の前端を保持する突当て部445eが形成され、回路基板150の前縁部に当接する。尚、引出し板461には電池セルの電極と平行に延在する端子面461bと、端子面461bからセパレータ445の上側に直角方向に折り曲げられた水平面部461cが形成され、水平面部461cを上側に直角にタブ状に延ばして引出しタブ461aを形成した。ヒューズ部461dは水平面の一部を前方側から大きく切り抜いた切り抜き部461eを形成することによって、ヒューズ部461dの幅(前後方向の距離)を小さくしたものである。引出し板461だけでなく、その他の引出し板466、471、476や、接続板462〜465、472〜475はステンレス等の薄板をプレス加工することにより形成される。従って、上側セルユニット146と下側セルユニット147に別体式のヒューズ素子を付加する必要が無い。
図16は電池パック100の 引出し板461、466、471、476と正極端子(162、172)及び負極端子(167、177)への接続方法を説明するための図である。(1)が前方側から見た図であり、(2)が後方側から見た図である。接続端子群のうち、放電用の正極端子(162、172)と負極端子(167、177)以外の接続端子の図示は省略している。上側セルユニット146の+出力となる引出しタブ461aは上側正極端子162の後方側の領域丸2にて回路基板150に接続される。従って点線で示すように引出しタブ461aと上側正極端子162は直線的に短い距離にて接続できる。上側セルユニット146の−出力となる引出しタブ466aは下側負極端子177の前方側の領域丸3にて回路基板150に接続される。従って点線で示すように引出しタブ466aと下側負極端子177は直線的に短い距離にて接続できる。下側セルユニット147の+出力となる引出しタブ471aは下側正極端子172の前方側の領域丸1にて回路基板150に接続される。従って点線で示すように引出しタブ471aと下側正極端子172は直線的に短い距離にて接続できる。下側セルユニット147の−出力となる引出しタブ476aは上側負極端子167の後方側の領域丸4にて回路基板150に接続される。従って点線で示すように引出しタブ476aと上側負極端子167は直線的に短い距離にて接続できる。以上のように、回路基板150上に示した点線のように電力用の接続端子(162、167、172、177)へ直線的に接続できるので、それらの配線パターンが交差すること無く太い配線パターンを効率良く配置できる。
図17は、接続端子群(161〜162、164〜168)とその周囲に配置される基板カバー180の形状を示す図であり、(1)は左前上方から見た斜視図であり、(2)は右後上方から見た斜視図である。ここでは回路基板150の図示を省略しているが、複数の接続端子群(161〜162、164〜168、171、172、177)の脚部が回路基板150に半田付けにより固定された後に、基板カバー180が接続端子の周囲に取り付けられる。基板カバー180は、不導体、例えば合成樹脂の一体成形によって製造され、接続端子の周囲、特に脚部の周囲を覆うようにして隣接する接続端子間で電気的な短絡を起こさないように保護する。基板カバー180を設ける目的は、接続端子間を絶縁体にて仕切るためである。従って、複数の鉛直方向に延びる仕切り壁182〜189が配置され、それらが前方側にて連結部材181によって連結される。連結部材181の平坦な上面181aは、上ケース110の下段面111(図3参照)と同一面になるように形成されており、下段面111から連結部材181までに至る本体側ターミナル部の相対移動を容易としている。連結部材181の水平壁は回路基板150から浮いた状態にて保持され、連結部材181の水平壁下面と回路基板150と間に隙間が生じるように複数の脚部181b〜181fが形成される。また、連結部材181の左右両端には、回路基板150の左右両辺を挟むように嵌合させる位置合わせ用の嵌合リブ191a(図17(2)参照)、191bが形成される。また、連結部材181の左右中央付近には鉛直壁部185aが前方側にまで伸びるようにして、上面181aの中央を仕切るようにしている。この鉛直壁部185aの先端は、図示しない外部充電装置の装着時の位置合わせ用に使用される。
基板カバー180は、使われていない領域(図3のスロット123)の開口を塞ぐような覆い部としての機能も果たす。図17(1)、(2)にて示すように、スロット123に対応する部分には鉛直壁部184a、184dと、後方側にてそれらを連結する塞ぎ板184cが形成される。このようにして基板カバー180は、使われていない領域(図3のスロット123)部分を塞ぎ、空きスロットから電池パック100のケース内部にゴミや粉塵が入りにくくしている。
図17(2)にて理解できるように、複数の仕切り壁182〜189の後方位置は、それぞれの接続端子(161〜168)の後方位置よりもさらに後側に位置する。ここでは回路基板150の図示を省略しているが、それぞれの仕切り壁182〜189の下辺部分は、回路基板150の表面に当接する位置まで延びる。仕切り壁188の左側(図17(1)参照)と、仕切り壁182の右側部分には、段差部192a、192bが形成される。段差部192a、192bは図29にて説明するターミナル部の突出部516a、516bが接触する当接部になる。電力を送電するための電力端子(161、162、167)は、信号を伝達するだけの信号端子(164〜166、168)に比べて厚い金属板にて形成される。本実施例の電力端子は、電気的に独立した上側端子(161、162、167)と下側端子(171、172、177:ともに図14参照)を有し、それぞれが左右方向に隣接する腕部組を有する。基板カバー180は、電力端子が、左右方向に隣接する端子(電力端子又は信号端子)と短絡しないように保護する共に、上下方向に隣接する上側端子(161、162、167)の腕部組と下側端子(171、172、177:ともに図14参照)の腕部組との短絡発生を防止する。従って、基板カバー180のうち、電力端子に隣接する仕切り壁(182,183,184、187,188)は上方向に高い壁とするとともに、図17(1)に示すように水平方向にも延びる水平壁部182b、183b、183c、184b、187b、188bがさらに形成される。
図17(3)は、接続端子群(161〜162、164〜168)と基板カバー180の正面図である。仕切り壁部のうち信号端子間に配置される仕切り壁185、186は上面181aからの高さH2の低い壁部とされ、その上端位置は信号端子(164〜166)や、LD端子168の下側の腕部よりも低い位置になる。これに対して電力端子用に隣接する仕切り壁182〜184、187〜189は、上面181aからの高さがH3の高い壁部となり、その上端位置は、下側正極端子171、172や下側負極端子177の上端位置よりも上側に位置し、上側正極端子161、162や上側負極端子167の腕部よりも下側に位置する。
接続端子群のうち電力端子は、図6〜図12で説明したように、上側正極端子161、162と下側正極端子171、172の脚部が前後方向に並び、それぞれの腕部組が上下方向に離間するように配置される。同様にして上側負極端子167と下側負極端子177の脚部が前後方向に並び、それぞれの腕部組が上下方向に離間するように配置される。定格18Vの電気機器本体に電池パック100を装着した際には、上側正極端子161、162、上側負極端子167の腕部の電位と、下側正極端子171、172、下側負極端子177の電位は同じとなるため、上側端子部品と下側端子部品が接触しても問題ない。しかしながら、定格36Vの電気機器本体に電池パック100を装着した際には、上側正極端子161、162と下側正極端子171、172の電位は異なり、上側負極端子167と下側負極端子177の電位も異なるため、上下の腕部間の接触による短絡を防ぐことが重要である。また、異物の挿入による短絡が起こりにくいような形状とすることも重要である。そこで、本実施例の基板カバー180は、上方向に延びるように形成される複数の仕切り壁182〜189のうち、電力端子(正極端子、負極端子)に隣接する仕切り壁182〜184、187、188に関しては、高さH3となるように上端位置を上方にまで大きく形成し、後方側にも大きく延在させた。さらに、仕切り壁182〜184、187、188の鉛直壁部182a、183a、184a、187a、188aの上端位置から左右水平方向にも延びる水平壁部182b、183b、183c、184b、187b、188bも形成した。
仕切り壁182は鉛直壁部182aと水平壁部182bを有するもので、その断面形状がL字形となる。水平壁部182bは鉛直壁部182aの上端付近から隣接する電力端子(上側正極端子161、下側正極端子171)の腕部の間の空間内にまで到達するように水平方向に延びる形状とされる。また、仕切り壁183はT字形の断面形状を有し、鉛直壁部183aと、鉛直壁部183aの上端部から両方向に延びる水平壁部183b、183cにより形成される。水平壁部183bは隣接する水平壁部182bと近接する側に延びて、上側正極端子161と下側正極端子171の腕部の間の空間内に先端が到達する。同様にして水平壁部183cは、隣接する水平壁部184bと近接する側に延びて、上側正極端子162と下側正極端子172の腕部の間の空間内に先端が到達する。図17(3)のように前方から正極端子群を見ると、上側正極端子161の右側側面位置と、下側正極端子171の右側側面位置は同一位置にある。水平壁部182bの左端位置182cは、上側正極端子161と下側正極端子171の右側側面位置よりも左側になるように、即ち、上側正極端子161の腕部161aの下側部分にまで入り込む程度の長さまで延ばされる。この際、水平壁部182bは下側正極端子171の腕部171aの上側に位置することになる。
鉛直壁部182aと水平壁部182bの前後方向の長さは、図17(2)からわかるように、下側正極端子171の前後方向の長さよりも長く形成され、その前端位置は下側正極端子171の腕部の先端とほぼ同じ位置にあり、後端位置は下側正極端子171の後端位置よりも後方側にある。このようにして、鉛直壁部182aは下側正極端子171の右側側面全体と、左側側面全体を覆いつつ、上側部分も左右中央付近の機器側端子が挿入される空間を除いて覆うようにした。ここでは、下側正極端子171部分の鉛直壁部182aと水平壁部182bの形状だけに言及したが、下側正極端子172についても、右側側面全体と左側側面全体と、中央部分を除く上側部分が覆われるような仕切り壁183、184が設けられるので、下側正極端子171、172に外力が加わって、これらを曲げるような力が加わったとしても、基板カバー180によって効果的に保持させることができ、送電用の下側の端子部品と上側の端子部品が意図せずに短絡してしまう虞を大幅に低減できる。
負極端子側(167、177)についても、正極端子側(161、162、171、172)と同様の考えであって、負極端子の左右両側には大きな仕切り壁187、188を設けた。仕切り壁187は、仕切り壁182と同様の形状であって、鉛直壁部187aと水平壁部187bにより形成され、その断面形状がL字状とされる。水平壁部187bは鉛直壁部187aの上端部分から負極端子側に延びるように形成される。仕切り壁188は、仕切り壁187と左右対称に形成されたもので、鉛直壁部188aと水平壁部188bにより形成される。水平壁部187bと188bは、上側負極端子167の腕部組と下側負極端子177の腕部組の間の空間に先端部分が入り込む程度の大きさとされる、このように電力端子たる負極端子(167、177)の周囲を覆うように仕切り壁187、188を形成したので、上側負極端子167又は下側負極端子177に強い外圧がかかって前後方向に動いた(曲げられた)としても、水平壁部187bと188b等の壁部の存在によって短絡現象の発生する可能性を大幅に低減できる。
信号端子群(164〜166)の間の仕切り壁185、186は上方向に低い高さH2しか有しない、これは、信号端子群(164〜166)には、小電力の信号が流れるだけであるので、短絡時の危険度合いが電力端子側に比べて小さいため、絶縁の必要性が低いためである。また、信号端子群(164〜166)はそれぞれが1部品であって、上側の腕部と下側の腕部が同電位であるので、上下の腕部間での短絡の心配をする必要性が低いためである。仕切り壁184は、鉛直壁部184a、184dを含み、これらの間を塞ぎ板184cと後方接続板184eにて接続したものである。塞ぎ板184cは鉛直及び左右方向に延在する平板であって、上側正極端子162とT端子164との間の空きスペース(図3の空きスロット123の内部空間)を閉鎖する作用を奏する。鉛直壁部184aの上端付近には、正極端子側に延びる水平壁部184bが形成される。
連結部材181は、接続端子間に位置する鉛直壁部182a、183a、184a、184d、185、186、187a、188aの前辺部分を接続する。連結部材181の上面181aを形成する水平壁は、回路基板150よりも浮いた状態になる。鉛直壁部182a、183a、184d、185、186、187a、188a、189の下側縁部は図示しない回路基板150に接触するように位置づけられる。この連結部材181の下側部分にも図23にて後述するような回路基板150の上面を覆う液体状の硬化性樹脂が満たされた後に固められる。硬化性樹脂の固化によって、複数の鉛直壁部182a、183a、184a、184d、185、186、187a、188a、189の下端付近と回路基板150が強固に固定される。連結部材181の前方壁面には複数の脚部181b〜181fが形成され、それら脚部181b〜181fの間が切欠き部となる。このように脚部181b〜181fを左右方向に連続する壁部とするのではなくて、切欠き部が形成するのは液体状の樹脂が回路基板150の後方部分と前方部分に均等に行き渡るようにするためである。液体状の樹脂は粘度が比較的低いため、脚部181b〜181fの間を通って樹脂が前後方向に流れる(詳細は後述する)。
図18は、基板カバー180単体の図であり、(1)は左前上方から見た斜視図である。(1)において、水平壁部182b、183b、183c、184b、187b、188bの前後方向の長さL1は、図7にて示した上側端子部品260の腕部265、266と、下側端子部品280の腕部285、286の長さに対応した程度とされる。ここでは水平壁部183b、183c、184b、187b、188bの前端が、図7にて示した上側端子部品260の腕部265、266と、下側端子部品280の腕部285、286の前端位置よりも前方に位置するようにして、後端が図7にて示した上側端子部品260の右側側面263と左側側面264よりも後方側に位置する程度の長さとする。仕切り壁184には鉛直方向に延びる塞ぎ板184cとその後側にも後方接続板184eが形成される。後方接続板184eと塞ぎ板184cの間には空間184fが形成される。
図18(2)は、基板カバー180単体を右前下方から見た斜視図である。この図からわかるように、仕切り壁182〜189の底辺位置は脚部181b〜181fの底辺位置と同じとされ、これらは底辺部分が回路基板150の表面に接触するように基板カバー180が載置される。脚部181b及び181fにはさらに下方向に突出する2つの嵌合リブ191a、191bが形成され、対向する嵌合リブ191a、191bの間の空間内に回路基板150が位置することにより基板カバー180の左右方向の位置決めがなされる。鉛直壁部184a、184dの間には底板184gが設けられ、使われていないスロット123(図3参照)の下面を閉鎖している。
図18(3)は、基板カバー180単体の正面図である。基板カバー180は、回路基板150に接続端子群を固定したあとに、即ち図14にて示すように回路基板150に接続端子群(161〜162、164〜168、171〜172、177)を固定したあとに、回路基板150を前側から接続端子群の方向にスライドさせることによって装着する。従って、基板カバー180は接続端子群の腕部や右側側面、左側側面には接触せずに装着が可能であるうえに、装着後も接続端子群の腕部や右側側面、左側側面には通常時には接触しないような位置関係とされる。嵌合リブ191a、191bの高さH7は、図示しない回路基板150の板厚と同等かそれ以上とする。
図19は、接続端子群とその周囲に配置される基板カバー180を示す図であり、(1)は上面図であり、(2)は背面図である。充電用の正極端子対(161、171)は、隣接して配置された正極端子対(162、172)よりも前方側にわずかにオフセットされて配置される。これはスペース的な制約によるものであって、正極端子対(161、171)のすぐ後方のラッチ機構(図示せず)の移動範囲を回避するためである。従って、スペース的な制約がないならば正極端子対(161、171)は、正極端子対(162、172)及び負極端子対(167、177)の前端位置が並ぶように配置すれば良い。また、LD端子168はその他の信号端子(T端子164、V端子165、LS端子166)とはサイズ的に異なり若干小型に形成される。これもスペース的な制約によるものであって、LD端子168のすぐ後方に、図示しないラッチ機構が到達するために、それを回避するためである。LD端子168を小さく構成した関係から、仕切り壁189も前後方向の長さが小さめに形成される。
図20(1)は、接続端子群とその周囲に配置される基板カバー180の右側面図である。ここで、基板カバー180部分には、左右中央付近の鉛直壁部185aを除いてハッチングを付して接続端子部と区別がつくように図示している。この図からわかりように、下側正極端子171の右側は、ほぼ全体が基板カバー180の仕切り壁182によって覆われることになる。また、上側正極端子161も後端部分を除いて、腕部組(161a、161b)よりも下側部分が覆われることになる。尚、図では回路基板150の図示を省略しているので、上側正極端子161の脚部と下側正極端子171が見えているが、実際にはこれら脚部は回路基板の貫通孔の内部に配置されることになる。図20(2)は、左側面図である。ここでもLD端子168の左側に仕切り壁189が設けられるので、ほとんどの部分が覆われることになる。また、図より仕切り壁188の上端位置が上側負極端子167の腕部167bと下側負極端子177の腕部177bの間まで上方位置が到達していることが理解できよう。
図21は、基板カバー180に機器側端子が挿入される状況を説明するための図であって、上側正極端子162と下側正極端子172の付近を示している。上側正極端子162の左右両側に位置する仕切り壁183と184において、上側正極端子162の腕部162a、162bと下側正極端子172の腕部172a、172bの間に入り込むように水平壁部183c、184bが形成される。水平壁部183c、184bの左右方向の間隔はL2である。点線で示すように正極入力端子52の端子部52aは水平壁部183c、184bの間において腕部組162a、162b間に挿入される。ここで端子部52aの厚さはTH1であるので、TH1<L2の関係となり、L2はTH1の2倍程度の間隔としている。この結果、端子部52aを乱暴に挿入したり、何らかの異物の挿入があったりしても腕部162a、162bの最小間隔部分及び腕部172a、172bの最小間隔部分が左右方向にL2以上離れる現象を効果的に抑制できる。また、腕部162a、162bとの前端位置に対して水平壁部183c、184bの前端位置が距離F1だけ前方に位置するように構成されるので、電気機器本体側の正極入力端子の端子部52aが挿入される際に、水平壁部183c、184bによって腕部162a、162bの間に確実に案内される。このように水平壁部183c、184bの間隔や前端位置を構成することにより腕部162a、162bと腕部172a、172bの損傷を防止し、上側正極端子162と下側正極端子172の嵌合状況を長期に渡り良好に保つことができる。
図22は図3の上ケース110だけを抜き出した図であり、上ケース110の上段面115の形状を説明するための図である。図21(1)は上ケース110の斜視図であり、(2)は(1)の矢印B方向から見た透視図である。(1)においては段差状になっている部分に、ハッチングを付して、その範囲が明確になるように図示している。図17(3)にて説明したように、電力端子(161、162、167)は信号端子(164〜166、168)よりも上方向に距離Hだけ高くなるように形成される。これは信号端子より電力端子が厚い板材で形成されるからである。従って従来の上ケースの上段面の形状では、電力端子(161、162、167)の上端部が上段面の内壁に干渉してしまう。そこで、本実施例では電力端子(161、162、167)の上部のクリアランスを稼ぐように、上ケース110の上段面115の上下方向にみた内側壁面の位置を、部分的に上側にずらすように構成した。内側壁面の位置だけを上方向に窪む凹部とする方法も考えられるが、上段面115の画面形状をそのままとすると、上ケース110の上段面115の一部分の厚さが不足して、局所的に強度が低下する虞がある。そこで、本実施例では上段面115の外側面であって、電力端子(161、162、167)が位置する付近の上部を、外側に向けて突出する凸部115a、115bを形成した。このように上段面115の壁面の一部を上側にずらすように構成したので、内側部分には収容スペースを拡大させることができ、壁面強度の低下も防ぐことができる。本実施例では、上段面115の外壁面の突出高さH4が、内壁面の窪み高さH5よりも小さくなるように構成したので、上段面115に凸部115a、115bのサイズを小さく抑えることができ、従来の電動工具本体1に支障なく装着できる範囲内に収まった。また、上段面115が同一面ではなくて、部分的な段差部が形成されて網掛け部の高さが高くなるように段差が形成されることにより、従来の同一平面状の上ケースに比べて強度的には同等又は同等以上とすることができた。
次に、図23を用いて回路基板150Aへの樹脂の塗布方法を説明する。図23は回路基板150Aの斜視図であり、ここでは回路基板150Aに搭載される接続端子群と基板カバー180Aの形状が、図4にて示した回路基板150の構造とやや違うが、樹脂の塗布方法に関してはその方法は同一である。回路基板150Aの上面(表面)には、図示しない多数の電子素子を搭載するための主領域156aと副領域156bが設けられる。主領域156aは、接続端子群よりも後方側にあって、そこにはマイコンを含む保護管理IC(後述)が搭載される。副領域156bは接続端子群よりも前方側の領域である。ここでは、搭載される電子素子の全体を硬化性樹脂にて覆うようにした。硬化性樹脂は、液体状態から硬化するもので、例えばウレタン樹脂を用いることができる。回路基板150Aの上面に均等に液体のウレタン樹脂を満たすために、最初に回路基板150Aに搭載される素子群の外縁部分に、液体状の樹脂の流出を防ぐ堤防の役割をする接着樹脂155を付着する。接着樹脂155は、例えばチューブ状の容器内から細い抽出口を通して円柱状に抽出された接着剤を、ウレタン樹脂を満たしたい領域の外縁に沿って連続的に付着させる。この際、外縁部分にそって接着剤を切れ目無く付着されることが重要であり、一方の端部と他方の端部が基板カバー180に接するように形成する。このように樹脂を流し込む外縁部分のほぼ一周分に、外枠となる接着樹脂155を付着させたら、その後に回路基板150Aの上面内側に液体状態にあるウレタン樹脂を流し込む。
流し込むウレタン樹脂の量は接着樹脂155にて囲まれた範囲を十分満たす量とする。この際、樹脂にて覆いたくない箇所には、該当箇所の外縁を接着樹脂155a〜155cで囲むようにし、それらの外側に流し込まれた樹脂が、接着樹脂155a〜155cで囲まれた範囲内には届かないようにした。尚、ウレタン樹脂を流し込む位置は主領域の矢印156aにて示す付近とすれば、接着樹脂155aで囲まれた範囲内には樹脂が流れ込まない。また、基板カバー180Aは上面の水平壁面が浮いている状態で、その下側部分の後方側壁面が開口状態にあり、前方側が壁面となって、その一部に切欠き部形成されることにより、主領域156aから副領域156bに良好に樹脂が流れ込むことが可能となる。このようにして、回路基板150Aの素子搭載面全体を樹脂にて覆ったのちに硬化させることにより、回路基板150Aの表面側に均一の高さで、対象範囲内を隙間無く樹脂で覆い、搭載された電子素子を水や埃の影響から守ることができる。尚、回路基板150Aとして両面基板を用いる場合には、裏面側にも同様の手順で樹脂にて覆うようにしても良い。また、接着樹脂155a〜155cにて樹脂の充填を除外させた部分、例えばネジ穴付近や、リード線の半田付け部は、ねじ締めが完了した後の工程時や、半田付けが完了した後工程時に樹脂を塗布するようにしても良い。
次に図40〜図45を用いて本発明の第6の実施例を説明する。第1の実施例においては 電力端子(正極端子と負極端子)として、それぞれ上側端子(162、167)と下側端子(172、177)を設けて、電池パックが低電圧電動工具本体に装着された際は、上側端子と下側端子が低電圧電動工具本体の電力端子に共通して接続される。また、電池パックが高電圧電動工具本体に装着された際は、上側端子と下側端子の一方のみが高電圧電動工具本体の電力端子に接続され、電力端子に接続されない他方の端子間はショートバーによって短絡される。これに対して第6の実施例では、電力端子の腕部の配置として上下方向に分離して配置するのではなく、前後方向に分離して配置するようにした。
図40は第6の実施例の電動工具の電池パック860の装着状況を説明するための斜視図である。電動工具は、電動工具本体801とそれに装着される電池パック860によって構成され、モータによる回転駆動力を用いて先端工具や作業機器を駆動する。電動工具本体801は、外形を形成する外枠たるハウジング802を備え、ハウジング802にはハンドル部803が形成され、ハンドル部803の上端付近には、作業者が操作するトリガスイッチ804が設けられ、ハンドル部803の下方には電池パック860を装着するための電池パック装着部810が形成される。
ここでは電池パック860の装着方向818を、第1の実施例と同様に電池パック860を電動工具本体801に近づける方向として説明している。これは説明の便宜上、そう定義しているだけで有り、実際には電池パック860を保持して、電動工具本体801を前方に移動させることで、矢印818の移動と同じ方向の相対移動が実現できる。尚、本明細書では電池パック860の前後左右方向は装着方向を基準に決定されている。一方、電動工具本体側は、作業者が把持した際の方向を基準に前後左右を定義している。従って、電気機器がインパクトドライバ等の電動工具本体の場合は、図40のようにお互いの前後方向の向きが、逆になることに注意されたい。
電池パック860の形状は第一の実施例で説明した電池パック15、100とは接続端子の配置と、ラッチ機構が異なる。電池パック860の左右両側にはレール864a、864b(図では864bは見えない)が形成される。ラッチボタン865は電池パック860の後面上部に形成され、1つの大きなボタンが左右中央に一つだけ設けられる。電池パック860が電動工具本体830に装着されている際に、ラッチボタン865を押してから電池パック860を矢印818と反対方向に移動させる(又は、電動工具本体830を電池パック860から離れるように移動させる)ことで、電池パック860を取り外すことができる。
図41は第6の実施例に係る電池パックの電動工具への装着状況を説明するための図である。電動工具本体801、830は、ハウジング802、832、ハンドル部803、833、トリガスイッチ804、834が設けられ、ハンドル部803、833の下方には電池パック860を装着するための電池パック装着部810、840が形成される。
電動工具本体801は定格電圧18Vで動作し、電動工具本体830は定格電圧36Vで動作する。電池パック860の内部には、3.6Vのリチウムイオン電池のセルが5本直列接続されたセルユニットが2組収容され、2組のセルユニットの接続を直列又は並列に変更することにより、低電圧(18V)と高電圧(36V)の出力の双方を切り換えることができる。電池パック860は2電圧対応に構成されることから、矢印d4のように36V対応の電動工具本体830にも装着できるし、矢印d3で示すように電動工具本体801にも装着できる。電動工具本体801の電池パック装着部810には、左右両側の内壁部分に前後方向に平行に延びるレール溝811a、811bが形成され、左右のレール溝811a、811bに囲まれる空間部分にターミナル部820が設けられる。ターミナル部820は、合成樹脂等の不導体材料の一体成形により製造され、装着方向(前後方向)の突き当て面となる垂直面820aと、水平面820bが形成され、水平面820bは電池パック860の装着時に、上段面862と隣接、対向する面となる。ターミナル部820には金属製の複数の端子、例えば正極入力端子822、負極入力端子827、LD端子(異常信号端子)828が設けられる。正極入力端子822、負極入力端子827は金属の平板にて形成され、装着方向の長さが第一の実施例のターミナル部20(図2参照)の2倍以上の長さを有する。LD端子828は負極入力端子827の右側に配置される。
電池パック860の上側は、前方側に平らな下段面861が形成され、中央付近は下段面861よりも高く形成された上段面862が形成される。下段面861と上段面862の接続部分は段差状に形成され、段差状部分に機器側端子を挿入するためのスロット群が配置される。スロット群は、前後方向に長い切り欠きのような大きなスロット872、877と、それらの半分程度の長さのスロット878が形成される。スロット872が正極端子用の第1のスロットになり、スロット877が負極端子用の第2のスロットになり、スロット878がLD端子用の第3のスロットになる。この切り欠かれたスロット872、877の内部には、電動工具本体801、830側の機器側端子と嵌合可能な複数の接続端子が設けられる。尚、ここではスロットが3つだけ設けられているが、さらにスロットを設けるように構成しても良い。上段面862の右側側面と左側側面には、レール864a、864bが形成される。レール864a、864bは右方向及び左方向に突出する凸部である。上段面862の後方側には隆起部863が設けられ、その後方側にはラッチボタン865が設けられる。
電動工具本体830は定格電圧36Vで動作する。電動工具本体830は第1の実施例と同様の思想により、正極側スロット872と負極側スロット877に挿入される2組の接続端子が、前後方向に離間させて設けられる。正極側スロット872に対応する接続端子は、前方側に配置されるショートバーの一方の端子部859bと、後方側に配置される正極入力端子852である。同様にして、負極側スロット877に対応する接続端子は、前方側に配置されるショートバーの一方の端子部859cと、後方側に配置される負極入力端子857である。第一の実施例では正極入力端子とショートバー、負極入力端子とショートバーを上下方向に距離を隔てて配置したが、本実施例においてはこれらを前後方向に配置、即ち電池パック860の装着方向と平行方向に、所定の距離を隔てるようにして配置した。
図42は、電力端子の電動工具本体への接続状態を示す斜視図であり、(1)は18V用の電動工具本体801に電池パック860を装着する状態を示し、(2)は36V用の電動工具本体830に電池パック860を装着する状態を示す。ここでは電池パック860の装着方向は、点線で示す2本の矢印方向である。電池パック860の正極側スロット872の内部には、電力の切替端子群として前側正極端子882と後側正極端子892が前後方向に離れるように配置される。同様にして負極側スロット877の内部には、電力の切替端子群として前側負極端子887と後側負極端子897が前後方向に離れるように配置される。電池パック860の内部には5本のリチウムイオン電池セルにより構成された上側セルユニット146と下側セルユニット147が収容される。上側セルユニット146の正極出力は後側正極端子892に接続され、負極出力は前側負極端子887に接続される。下側セルユニット147の正極出力は前側正極端子882に接続され、負極出力は後側負極端子897に接続される。
電動工具本体801の機器側端子は、正極入力端子852と、負極入力端子857と、ショートバー859によって構成される。これらの機能は第1の実施例の構成と基本的に同じであり、電動工具本体の端子群(852、857、859b、859c)が矢印855のように相対的に移動されて、点線矢印に示すように電池パック860の接続端子群(882、887、892、897)に装着されるように構成される。電動工具本体の端子群(852、857、859b、859c)については、ターミナル部850(図41参照)全体の図示では無くて金属端子部分だけの図示としている。正極入力端子852は、クランク状に折り曲げられた金属板材であり、前側正極端子882と嵌合する端子部852aが一端側に形成され、他端側にモータ836側への配線用端子部852cが形成される。端子部852aと配線用端子部852cの間は横方向に延びる接続部852bであって、接続部857b全体と、端子部852aの後方側一部と配線用端子部852cの前方側一部がターミナル部850(図41参照)の合成樹脂部分に鋳込まれることになる。負極入力端子857も同様の形状であって、前側負極端子887と嵌合する端子部857aが一端側に形成され、他端側にモータ836側への配線用端子部857cが形成される。正極入力端子852と負極入力端子857は面対称の形状とされる。端子部852aと配線用端子部852cの間は横方向に延びる接続部857bであって、接続部857b全体と、端子部852aの後方側一部と配線用端子部852cの前方側一部がターミナル部850の合成樹脂製の基台に鋳込まれることになる。ショートバー859の水平部分は、正極入力端子852の接続部852bと負極入力端子857の接続部857bと共にターミナル部850中に完全に鋳込まれるので、端子部852a、857a、859b、859cの相対的な位置、特に前後及び左右方向の位置は変わらない。
電池パック860の装着時には、ショートバー859の端子部859bは後側正極端子892と後側負極端子897に嵌合される。また、正極入力端子852は前側正極端子882と嵌合し、負極入力端子857は前側負極端子887と嵌合する。この結果、上側セルユニット146と下側セルユニット147との直列接続回路が形成され、電動工具本体830側には定格36Vの電圧が供給されることになる。
図42(2)は、低電圧の電動工具本体801に電池パック860が装着される状況を示している。正極入力端子822は、クランク状に折り曲げられた金属板材であり、前側正極端子882及び後側正極端子892と同時に嵌合する端子部822aが一端側に形成され、他端側にモータ806側への配線用端子部822cが形成される。端子部822aと配線用端子部822cの間は横方向に延びる接続部822bであって、接続部822b全体と、端子部822aの一部と配線用端子部822cの一部がターミナル部820の合成樹脂部分に鋳込まれることになる。同様にして、負極入力端子827もクランク状に形成され、前側負極端子887及び後側負極端子897と同時に嵌合する端子部827aと配線用端子部827cと接続部827bが形成される。この結果、電動工具本体801側には定格18Vの電圧が供給されることになる。ここでは端子部822aは前側正極端子882と後側正極端子892に同時に嵌合するような十分な長さに形成され、端子部827aは前側負極端子887と後側負極端子897に同時に嵌合するような十分な長さに形成される。
後側正極端子892は機器側端子挿入方向(点線矢印で示す方向)から見た形状が倒立したΩ形の形状とされる。ここでは回路基板に固定するための長方形の平板部892aが形成され、平板部892aの左右両側辺部から上方向に折り曲げられた2つの腕部892b、892dが形成される。2つの腕部892b、892dは上方向に行くにつれてお互いが接近するように曲げられて、腕部892b、892dの上端部分には接触端子部892c、892e(共に図45参照)が形成される。接触端子部892c、892eは平行になるように所定の間隔を隔てて配置される略長方形の電極であって、その前側及び後側が対向する接触端子部から離れるように曲げられており、機器側端子が前から後ろ方向に嵌合されやすいような形状とされる。後側正極端子892として用いられる金属端子部品は、前側正極端子882、前側負極端子887、後側負極端子897にも共通して用いられる共通部品であり、図示しないネジ、又は/及び、半田付けによって回路基板(図示せず)に固定される。
図43は、電池パック860を36V仕様の電動工具本体830に装着する際の状況を説明するための図である。図42(1)の状態からさらに電動工具本体830が電池パック860に近づくように相対移動させると、最初にショートバー859の端子部859b、859cが前側正極端子882と前側負極端子887と嵌合する。この時点では上側セルユニット146の正極と下側セルユニット147の負極が非接続の状態なので、電池パック860の電力は電気機器本体831側には伝達されない。
電動工具本体830と電池パック860が矢印855の方向にさらに相対移動されるとショートバー859は前側正極端子882と前側負極端子887を通り抜けて、後側正極端子892と後側負極端子897の方向に接近することになる。この際、ショートバー859はいずれの接続端子とも接触しておらず、正極入力端子852は前側正極端子882に当接しておらず、負極入力端子857は前側負極端子887に当接していない。従って、この時点でも上側セルユニット146と下側セルユニット147が非接続の状態なので、電池パック860の電力は電気機器本体831には伝達されない。
電動工具本体830と電池パック860が矢印855の方向にさらに相対移動されると、ショートバー859は後側正極端子892と後側負極端子897に嵌合することになる。同時に、正極入力端子852の端子部852aは前側正極端子882に嵌合し、負極入力端子857の端子部857aは前側負極端子887に嵌合する。この結果、上側セルユニット146と下側セルユニット147の直列接続状態が実現され、正極入力端子852と前側負極端子887間には定格36Vの直流が供給されることになる。
図44は、電池パック860を18V仕様の電動工具本体801に装着する際の状況を説明するための図である。図42(2)にて示した状態からさらに電動工具本体801が電池パック860に近づくように相対移動させると、図44(1)から(2)のように端子部822a、827aが前側正極端子882と前側負極端子887と嵌合する。この時点では上側セルユニット146の正極と下側セルユニット147の負極が非接続の状態なので、電池パック860の電力は電動工具本体801には伝達されない。
図44(2)において、電動工具本体801と電池パック860が矢印825の方向にさらに相対移動されると前後方向に長い端子部822a、827aは前側正極端子882と前側負極端子887に接触しながら、後側正極端子892と後側負極端子897の方向に接近することになる。図44(2)の状態では、端子部822a、827aが後側正極端子892と後側負極端子897に当接していない。従って、この時点でも上側セルユニット146の正極と下側セルユニット147の負極が非接続の状態なので、電池パック860の電力は電動工具本体801には伝達されない。
電動工具本体801と電池パック860が矢印825の方向にさらに相対移動されると、端子部822a、827aが後側正極端子892と後側負極端子897に当接する。この際、端子部822a、827aは前側正極端子882と前側負極端子887とも嵌合している状態であるので、上側セルユニット146と下側セルユニット147の並列接続回路が確立され、正極入力端子822と負極入力端子827間には定格18Vの直流が供給されることになる。
図45は、電池パック860側の端子配置と、電動工具本体830の端子形状の上面図である。各端子の大きさや配置を説明するために、各部品の縮尺率を合わせて図示している。前側正極端子882、後側正極端子892、前側負極端子887、後側負極端子897にはそれぞれ左右方向に離間して対向する接触端子部882c、882e、892c、892e、887c、887e、897c、897eが設けられる。接触端子部882c、892c、887c、897cは右側の腕部882b、891b、887b、897bに接続され、接触端子部882e、892e、887e、897eは左側の腕部882d、891d、887d、897dに接続される。これらの接触端子部の前後方向の長さL7は、前側正極端子882と後側正極端子892との間隔L8よりも十分小さくなるようにした。尚、すべての端子部品(882、892、887、897)は共通であるため、接触端子部882c、882e、892c、892e、887c、887e、897c、897eの前後方向長さはL7で同じである。前側負極端子887と後側負極端子897も同じ間隔L8である。ショートバー859の端子部の前後方向の長さL9は、前側端子(882、887)と後側端子(892、897)の間隔L8よりも十分小さくなるように構成される。このように形成すれば、電池パック860の装着時にショートバー859によって、前側端子(882、887)と後側端子(892、897)間を短絡させてしまう虞を効果的に防止できる。正極入力端子852の端子部852aと、負極入力端子857の端子部857aの長さは、少なくともL9以上とすると良い。
図45(2)は電池パック860が電動工具本体830に装着された時の状態を示す図である。ここではショートバー859の水平部分859aがむき出しになっているように見えるが、水平部分859aは図示しないターミナル部の樹脂部の内部に鋳込まれているので、外部には露出していない。以上のように、電力端子(正極端子と負極端子)として、前後方向に分けて配置するようにしたので、出力電圧を切り替えるための機械的なスイッチ機構に頼ること無く、電気機器本体に装着するだけで適切な出力電圧に自動的に得ることができる。また、異なる電圧の電気機器間で電池パックを共用することが可能となった。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では18Vと36Vの電圧切替式の電池パックで説明したが、切り替えられる電圧比はこれだけに限られずに、直列接続と並列接続の組み合わせにより切り替えられるその他の電圧比であっても良い。