以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。本明細書においては、電気機器の一例として電池パックにて動作する電動工具を例示して説明するものとし、電動工具の本体側の前後左右の方向は図2に示す方向とし、電池パックの単体で見た際の前後左右、上下の方向は、電池パックの装着方向を基準として図3に示す方向であるとして説明する。尚、電池パックの装着方向は、説明の都合上、電動工具本体側を動かさずに電池パック側を移動させる状況を基準とした方向として説明する。
図1は本実施例に係る電池パックの電動工具への装着状況を説明するための図である。電気機器の一形態である電動工具は、電池パックを有し、モータによる回転駆動力を用いて先端工具や作業機器を駆動する。電動工具は種々の種類が実現されているが、図1で示す電動工具本体1、30はいずれもインパクト工具と呼ばれるものである。電動工具本体1、30は、図示しないビットやソケットレンチ等の先端工具に回転力や軸方向の打撃力を加えることにより締め付け作業を行う工具である。これらの電動工具本体1、30は、外形を形成する外枠たるハウジング2、32を備え、ハウジング2にはハンドル部3、33が形成される。ハンドル部3、33の一部であって作業者が把持した際に人差し指があたる付近には、トリガ状の動作スイッチ4、34が設けられ、ハンドル部3、33の下方には電池パック15、100を装着するための電池パック装着部10、40が形成される。
電動工具本体1は定格電圧18Vの電池パック15を用いる従来の電気機器である。電池パック15は従来の電池パックであり、矢印aの組み合わせのように18V対応の電気機器(電動工具本体1)の電池パック装着部10に装着できる。電池パック15の内部には、定格3.6Vのリチウムイオン電池のセル5本を直列接続してなるセルユニットが1組だけ収容されるか、又はこのようなセルユニットが2組収容されて互いに並列接続される。電圧18Vは、比較的低い電圧であるという意味で、ここでは低電圧と呼ぶことがある。同様に、定格電圧18Vの電動工具本体1または電気機器本体は、それぞれ低電圧電動工具本体または低電圧電気機器本体と呼ぶことがある。同様に、公称電圧18Vの電池パック15は、低電圧電池パックと呼ぶことがある。
電動工具本体30は、定格電圧36Vの電気機器本体であり、矢印b1に示すように36Vの出力が可能な電池パック100を電池パック装着部40に装着する。電圧36Vは、比較的高い電圧であるという意味で、ここでは高電圧と呼ぶことがある。同様に、定格電圧36Vの電動工具本体30または電気機器本体は、それぞれ高電圧電動工具本体または高電圧電気機器本体と呼ぶことがある。電池パック100の内部には、3.6Vのリチウムイオン電池のセルが5本直列接続されたセルユニットが2組収容され、2組のセルユニットの接続方法の変更により、18V出力と36V出力の双方を切り換えることができるようにした。本実施例では電池パック100を2電圧対応に構成して、低電圧と高電圧の出力を可能とすることにより、矢印b2で示すように電池パック100を18V対応の電動工具本体1にも装着できるし、矢印b2のように36V対応の電動工具本体30にも装着できるようにした。このように、低電圧と高電圧の出力を可能とした電池パック100は、ここでは電圧可変電池パックと呼ぶことがある。電池パック100を矢印b1、b2のように異なる電圧の電動工具本体1、30に装着するためには、電池パック装着部10、40のレール部や端子部の形状をほぼ同じ形状にすることと、電池パック100の出力電圧を切り替え可能にすることが重要である。この際、電池パック100の出力電圧が、装着される電気機器本体や電動工具本体の定格電圧と確実に対応させて、電圧設定ミスが生じないようにすることが重要である。
図2は電動工具本体1の電池パック装着部10の形状を示す斜視図である。ここで示す電動工具本体1はインパクトドライバであって、ハウジング2の胴体部分から下方に延びるハンドル部が設けられ、ハンドル部の下側に電池パック装着部10が形成される。ハンドル部にはトリガスイッチ4が設けられる。ハウジング2の前方側には出力軸たるアンビル(図示せず)が設けられ、アンビルの先端には先端工具9を装着するための先端工具保持部8が設けられる。ここでは先端工具9としてプラスのドライバービットが装着されている。電動工具だけに限られずに、電池パックを用いた電気機器全般では、装着される電池パックの形状に対応させた電池パック装着部10が形成され、電池パック装着部10に適合しない電池パックを装着できないように構成する。電池パック装着部10には、左右両側の内壁部分に前後方向に平行に延びるレール溝11a、11bが形成され、それらの間にターミナル部20が設けられる。ターミナル部20は、合成樹脂等の不導体材料の一体成形により製造され、そこに金属製の複数の端子、例えば正極入力端子22、負極入力端子27、LD端子(異常信号端子)28が鋳込まれる。ターミナル部20は、装着方向(前後方向)の突き当て面となる垂直面20aと、水平面20bが形成され、水平面20bは電池パック100の装着時に、上段面115(図3にて後述)と隣接、対向する面となる。水平面20bの前方側には、電池パック100の隆起部132(図3にて後述)と当接する湾曲部12が形成され、湾曲部12の左右中央付近には突起部14が形成される。突起部14は左右方向に2分割で形成される電動工具本体1のハウジングのネジ止め用のボスを兼ねると共に、電池パック100の装着方向への相対移動を制限するストッパの役目も果たす。
図3は本発明の実施例に係る電池パック100の斜視図である。電池パック100は電池パック装着部10、40(図1参照)に対して取り付け及び取り外しが可能であって、電動工具本体1又は30側のターミナル形状に応じて、低電圧(ここでは18V)と高電圧(ここでは36V)の出力が自動で切り替わるようにしたものである。従来の定格18V用の電池パック15(図1参照)と取り付け上の互換性を持たせるために、電池パック100の装着部分の形状は従来の電池パック15と同じとしている。電池パック100の筐体は、上下方向に分割可能な下ケース101と上ケース110により形成される。下ケース101と上ケース110は電気を通さない部材、例えば合成樹脂製であって4本のネジによってお互いが固定される。上ケース110は、電池パック装着部10に取り付けるために2本のレール138a、138bが形成された装着機構が形成される。レール138a、138bは、電池パック100の装着方向と平行な方向に延びるように、且つ、上ケース110の左右側面に突出するように形成される。レール138a、138bの前方側端部は開放端となり、後方側端部は隆起部132の前側壁面と接続された閉鎖端となる。レール138a、138bは、電動工具本体1の電池パック装着部10に形成されたレール溝11a、11b(図2参照)と対応した形状に形成され、レール138a、138bがレール溝11a、11bと嵌合した状態で、ラッチの爪となる係止部142a(右側の係止部であり図3では見えない)、142bにて係止することにより電池パック100が電動工具本体30に固定される。電池パック100を電動工具本体1から取り外すときは、左右両側にあるラッチ141を押すことにより、係止部142a、142bが内側に移動して係止状態が解除されるので、その状態で電池パック100を装着方向と反対側に移動させる。
上ケース110の前方側には平らな下段面111が形成され、中央付近は下段面111よりも高く形成された上段面115が形成される。下段面111と上段面115は階段状に形成され、それらの接続部分は鉛直面となる段差部114となっている。段差部114から上段面115の前方側部分がスロット群配置領域120になる。スロット群配置領域120には、前方の段差部114から後方側に延びる複数のスロット121〜128が形成される。スロット121〜128は電池パック装着方向に所定の長さを有するように切り欠かれた部分であって、この切り欠かれた部分の内部には、電動工具本体1、30又は外部の充電装置(図示せず)の機器側端子と嵌合可能な複数の接続端子(図4で後述)が配設される。スロット121〜128は下段面111側から電動工具本体側のターミナルを挿入可能なように、装着方向と平行な上面だけで無く鉛直面にも切り欠きが形成される。また、スロット121〜128の下側であって、下段面111との間は、横方向に連続して開口する開口部113が形成される。
スロット121〜128は、電池パック100の右側のレール138aに近い側のスロット121が充電用正極端子(C+端子)の挿入口となり、スロット122が放電用正極端子(+端子)の挿入口となる。また、電池パック100の左側のレール138bに近い側のスロット127が負極端子(−端子)の挿入口となる。電池パック100では通常、電力端子の正極側と負極側を十分離すようにして配置するもので、左右中心に位置する鉛直仮想面からみて、右側の十分離した位置に正極端子を設けて、左側の十分離した位置に負極端子を設けている。正極端子と負極端子の間には、電池パック100と電動工具本体1、30や外部の充電装置(図示せず)への信号伝達用の複数の信号端子が配置され、ここでは信号端子用の4つのスロット123〜126が電力端子群の間に設けられる。スロット123は予備の端子挿入口であり、本実施例では端子は設けられない。スロット124は電池パック100の識別情報となる信号を電動工具本体又は充電装置に出力するためのT端子用の挿入口である。スロット125は外部の充電装置(図示せず)からの制御信号が入力されるためのV端子用の挿入口である。スロット126はセルに接触して設けられた図示しないサーミスタ(感温素子)による電池の温度情報を出力するためのLS端子用の挿入口である。負極端子(−端子)の挿入口となるスロット127の左側には、さらに電池パック100内に含まれる後述する電池保護回路による異常停止信号を出力するLD端子用のスロット128が設けられる。
上段面115の後方側には、隆起するように形成された隆起部132が形成される。隆起部132はその外形が上段面115より上側に隆起する形状である、その中央付近に窪み状のストッパ部131が形成される。ストッパ部131は、電池パック100を、電池パック装着部10に装着した際に、突起部14(図2参照)の突き当て面となるもので、電動工具本体1側の突起部14がストッパ部131に当接するまで挿入されると、電動工具本体1に配設された複数の端子(機器側端子)と電池パック100に配設された複数の接続端子(図4にて後述)が接触して導通状態となる。また、電池パック100のラッチ141の係止部142a(右側の係止部であり図3では見えない)、142bがばねの作用によりレール138a、138bの下部で垂直方向外側に飛び出して、電動工具本体30のレール溝11a、11bに形成された図示しない凹部と係合することにより、電池パック100の脱落が防止される。ストッパ部131の内側には、電池パック100の内部とつながる冷却風取入口たるスリット134が設けられる。また、この電池パック100が電動工具本体1に装着された状態では、スリット134が外部から視認できないように覆われて閉鎖状態になる。スリット134は、電池パック100を図示せぬ充電装置に連結して充電を行う際に、電池パック100の内部に冷却用の空気を強制的に流すために用いられる風窓であって、電池パック100内に取り込まれた冷却風は下ケース101の前方壁に設けられた排気用の風窓たるスリット104から外部に排出される。
図4は図3の電池パック100の上ケース110を取り外した状態の斜視図である。下ケース101の内部空間には、10本の電池セルが収容される。下ケース101の前方側壁面には、上ケース110とのネジ止め用に2つのネジ穴103a、103bが形成され、下から上方向にネジ穴103a、103bを貫通するようにして図示しないネジが通される。この図では見えないが、下ケース101の後方側壁面にも2つのネジ穴が形成される。複数の電池セル(図示せず)は、5本ずつ2段にスタックさせた状態でセパレータ145にて固定される。セパレータ145は合成樹脂製であって、電池セルの両端部となる左右両側だけが開口するように形成される。セパレータ145内においては、各電池セルの軸線がそれぞれ平行になるように積み重ねられ、隣接するセルの向きを交互に逆になるように配置して、隣接する電池セルの正極端子と負極端子を金属の接続タブ(図示せず)により接続することにより電池セル5本を直列接続とする。ここでは上段に設置された5本の直列接続された電池セルによる上側セルユニット146(図6にて後述)を形成し、下側に設置された5本の直列接続された電池セルが下側セルユニット147(図6にて後述)を形成する。尚、ここでいうセルユニットの上側、下側とは、電池セルが下ケース101内の上段にあるか下段にあるかを指すのでは無くて、2つのセルユニットを直列接続した際に、グランド側に位置する方のセルユニットを“下側セルユニット”呼び、直列接続した際に高い電圧側に位置する方のセルユニットを“上側セルユニット”と呼ぶものとする。
電池セルは、18650サイズと呼ばれる直径18mm、長さ65mmの複数回充放電可能なリチウムイオン電池セル(図示せず)が用いられる。本実施例では電池パック100からの出力電圧を切り替え可能とするために、複数のセルユニットの直列接続電圧(高電圧側出力)と、並列接続電圧(低電圧側出力)の形態が選択可能とされる。従って、本実施例の思想に従えば、各セルユニットに含まれるセルの本数を等しくすれば、セルユニットの数は任意である。但しセルユニットの数は2つ又は4つのように偶数とする。使用する電池セルは18650サイズだけに限られずに、いわゆる21700サイズの電池セルや、その他のサイズの電池セルであっても良い。また電池セルの形状は円筒形だけに限られずに、直方体のもの、ラミネート形状のもの、その他の形状であっても良い。電池セルの種類はリチウムイオン電池だけに限られずに、ニッケル水素電池セル、リチウムイオンポリマー電池セル、ニッケルカドミウム電池セル等の任意の種類の二次電池を用いても良い。電池セルの長さ方向の両端には2つの電極が設けられている。2つの電極のうち、一方は正極であり他方は負極であるが、電極を設ける位置は両端側だけに限定されるもので無く、電池パック内で容易にセルユニットが形成できるならば任意の電極配置で良い。
電池セルを保持するセパレータ145の上側には、回路基板150が配置される。回路基板150は複数の接続端子(161、162、164〜168、171、172、177)を半田付けによって固定すると共に、回路パターンと接続端子との電気的な接続を行う。回路基板150にはさらに、電池保護ICやマイクロコンピュータ、PTCサーミスタ、抵抗、コンデンサ、ヒューズ、発光ダイオード等の様々な電子素子(ここでは図示していない)を搭載する。回路基板150は、合成樹脂等の不導体のセパレータ145の上側にて水平方向に延在するように固定される。回路基板150の材質は、素材に対して絶縁性のある樹脂を含浸した基板上に、銅箔など導電体によってパターン配線を印刷したプリント基板と呼ばれるものであり、単層基板、両面基板、多層基板を用いることができる。本実施例では、両面基板を用いて回路基板150の上面(表面であって図4から見える上側の面)と下面(裏面)を有する。回路基板150の前後方向の中央よりもやや前側には、複数の接続端子(161、162、164〜168、171、172、177)を配置する。ここでは複数の接続端子は横方向にほぼ並べて配置される。
各接続端子は、図3で示すように上ケース110の上段面に刻印にて示されるとおりであり、回路基板150の右側から左側にかけて、順にC+端子(161、171:充電用の正極端子)、+端子(162、172:放電用の正極端子)、T端子164、V端子165、LS端子166、−端子(167、177:負極端子)、LD端子168が並んで配置される。ここでは、電池パックからの電力供給ライン用の接続端子、即ち電力端子を、分離させた2つの端子部品にて構成した。即ち、C+端子(充電用の正極端子)は上側正極端子161と下側正極端子171により構成され、これら正極端子対(161、171)が単一のスロット121に対応する箇所に配置される。スロット121の内側部分の上側に上側正極端子161の腕部組が配置され、上側正極端子161の腕部組の下側に下側正極端子171の腕部組が配置される。同様にして、上ケース110に刻印で示される+端子(放電用の正極端子)は、上側正極端子162と下側正極端子172により構成され、これら正極端子対(162、172)が単一のスロット122に対応する箇所に配置される。スロット122部分の上側に上側正極端子162の腕部組が配置され、上側正極端子162の腕部組の下側に下側正極端子172の腕部組が配置される。上ケース110に刻印で示される−端子(負極端子)は、上側負極端子167と下側負極端子177により構成され、これら負極端子対(167、177)が単一のスロット127に対応する箇所に配置される。スロット127部分の上側に上側負極端子167の腕部組が配置され、上側負極端子167の腕部組の下側に下側負極端子177の腕部組が配置される。
接続端子(161、162、164〜168)は、図3で示したスロット121〜128に対応する位置に配置される。そのため、回路基板150から上方及び前方側に向けて接続端子の嵌合部分が開口するように配置される。但し、上側正極端子162とT端子164との間の部分は、従来の電池パック1(図1参照)と同様に本実施例の電池パック100では使われない空きスペースになる。
充電用の正極端子対(161、171)は、隣接して配置された正極端子対(162、172)よりも前方側にオフセットされて構成される。これはスペース的な制約によるものであって、正極端子対(161、171)のすぐ後方の図示しないラッチ機構の移動範囲を回避するためである。従って、スペース的な制約がないならば正極端子対(161、171)は、正極端子対(162、172)及び負極端子対(167、177)の前端位置が並ぶように配置すると良い。
正極端子(161、162、171、172)と負極端子(167、177)は、左右方向に大きく離れた箇所に配置され、それらの間には3つの信号端子(T端子164、V端子165、LS端子166)が設けられる。本実施例では信号端子用の部品として、水平方向に延びる腕部が上側の左右に1組、下側の左右に1組の合計2組設けられたものを用いるが、その詳細形状は図9にて後述する。尚、信号端子(164〜166、168)に関しては、従来から用いられるような腕部が上下方向に1つの信号端子部品をそのまま用いることも可能である。しかしながら、本実施例では正極端子(161、162、171、172)と負極端子(167、177)における機器側端子との嵌合状態と同等にするために、信号端子側においても上下に2つの腕部を有する信号端子部品(図9にて後述)を用いるようにした。
負極端子対(167、177)の左側には更なる信号端子、即ち、LD端子168が設けられる。LD端子168も上側と下側の2組の腕部を有するように形成される。しかしながら、LD端子168はその他の信号端子(T端子164、V端子165、LS端子166)とはサイズ的に異なる。これはスペース的な制約によるものであって、LD端子168のすぐ後方に、図示しないラッチ機構が到達するために、それを回避するために他の信号端子よりも小さく形成した。すべての信号端子(164〜166、168)は、回路基板150の形成された取付孔151にその脚部を表面から裏面にまで貫通させて、裏面側で半田付けにより固定される。本実施例では3つの信号端子(164〜166)の固定方法にも特徴を有するが、その詳細は図9及び図10にて後述する。以上のように、回路基板150上に図示しない電子素子が搭載され、複数の接続端子が半田付けにより固定されたあとに、回路基板150はネジ止めまたは接着等によってセパレータ145に固定される。
回路基板150の後辺付近には4つのLED(図示せず)が設けられ、そのLEDの上側には、上下方向に細長い直方体状のプリズム191〜194が設けられる。プリズム191〜194は、底面が上向きに照射するLED (発光ダイオード、図示せず)の点灯面に対向するように配置され、斜めにカットされた上面が上ケース110に形成されたスリット(図示せず)から外部に露出するように設けられる。プリズム191〜194は、光を拡散させて上ケース110の外部に照射させるために設けられる。図示しない4つのLEDは、電池パック100の残量表示を行うために用いられるもので、作業者がスイッチ190を押したときに、電池セルの電圧に応じた数のLEDが一定時間だけ点灯される(詳細は図24、図25にて後述する)。スイッチ190を操作するための操作レバー(図示せず)は、作業者によって操作可能な上ケース110の外面部分に設けられる。下ケース101は、上面が開口された略直方体の形状であって、底面と、底面に対して鉛直方向に延びる前面壁101a、後面壁101b、右側側壁101c、左側側壁101dにより構成される。前面壁101aのほぼ中央には、スリット104が設けられる。スリット104は、充電装置にて充電を行う際に、電池パック100の内部空間に充電装置側から送出される冷却風を排出するための排出口として用いられる。
次に図5を用いて電力端子に用いられる部品(200、220)の形状を説明する。図5(1)は、上側端子部品200と下側端子部品220の部品単体を示す斜視図である。上側端子部品200は上側正極端子161、162、及び上側負極端子167に用いられる共通部品であり、下側端子部品220は下側正極端子171、172、及び下側負極端子177に用いられる共通部品である。上側端子部品200と下側端子部品220は、導電性の金属からなる平板をプレス加工によって切り抜いたのちに、U字形に曲げて形成したものである。上側端子部品200は、U字状の底部となる面、即ちブリッジ部202が上側になるように折り曲げられ、下側端子部品220においては、ブリッジ部222が後側になるように折り曲げられる。このように、U字状に折り曲げて形成されたブリッジ部202と222がほぼ直角に交差するように配置したのは、前方側のブリッジ部222は側壁面の面積が前後方向に十分確保できないため、上側にブリッジ部を配置するとブリッジ部の大きさが小さくなってしまうためである。本実施例の下側端子部品220ではブリッジ部222が鉛直面方向になるようにしたので、配置に要する前後方向の長さを短くすることができるうえに、ブリッジ部の大きさ、特に上下方向の長さを十分確保できるので、下側端子部品220の剛性を高めることができた。一方、上側端子部品200においては、下側端子部品220を跨ぐような長い腕部205、206を形成できる上に、腕部205、206の延びる前後方向と同じ方向に延びる面となるブリッジ部202としたので、腕部205、206の取り付け剛性を高めることができた。
上側端子部品200は、U字状に折り曲げて平行なるように形成された右側側面203、左側側面204と、それらを接続するものであって上面となるブリッジ部202を有する。右側側面203と左側側面204の前方側には、左右両側から内側に向けて機器側端子を挟み込む腕部205、206がそれぞれ設けられる。左側側面204の前方辺部のうち下側から上端に近い位置までは鉛直方向に直線状に延び、上端に近い矢印204d付近から大きな曲率半径のカーブを描くようにして前方側に延びるように形成される。右側側面203の形状は、左側側面204と面対称に形成される。腕部205は右側側面203の上側前方辺から前側に延びるように配置され、腕部206は左側側面204の上側前方辺から前側に延びるように配置される。このように腕部205、206は、基体部201の前側辺部の上側部分から前方側、即ち電池パック100の装着方向と平行方向に延びるように形成される。腕部205、206は、左右方向にみるとお互いが対向して、最小間隔部分、即ち機器接続端子と嵌合する嵌合部がほとんど接触する位置まで近接するようにプレス加工されることによりバネ性を持たせている。ここでプレス加工とは、プレス機械を用いて行う塑性加工のことであり、板金などの素材を型に対して高い圧力で押しつけて、切断、打抜き、穴あけなどの剪断加工を施し、さらに必要に応じて曲げ加工や絞り加工を行うことにより、所要の形状に剪断、成形する。本実施例において、上側端子部品200と下側端子部品220は、例えば厚み0.5〜0.8mm程度の平板にて形成される。これにより、上側正極端子161、162、171、172及び上側負極端子167、177は高い機械強度を備え、機器側端子と嵌合する際の嵌合圧力が高くなる。尚、プレス加工の後に熱処理やメッキ処理等を施すようにしても良い。
下側端子部品220も同様にして製造されるもので、U字状に折り曲げて平行なるように形成された右側側面223、左側側面224と、それらを接続するブリッジ部222からなる基体部221を有し、右側側面223と左側側面224の細長い上部付近から前方側に、腕部225、226が形成される。腕部225、226は、左右両側から内側に向けて機器側端子を挟み込むような形状とされる。上側の腕部組(205、206)の上端位置と、下側の腕部組(225、226)の下端位置の距離Sは、従来の18V用の電池パックに設けられる電力端子の幅とほぼ同等になるように構成する。一方、上側の腕部組(205、206)と、下側の腕部組(225、226)はそれぞれ上下方向に所定の距離S1を隔てるように配置される。下側の腕部組(225、226)の下方には、前方側から大きく切り欠かれた切欠き部231が形成される。下側端子部品220の後方側は、上側端子部品200の右側側面203、左側側面204と所定の隙間211を隔てて互いに接触しないように前後方向に並べて固定される。
図5(2)は上側端子部品200単体の斜視図であり、ここではブリッジ部202の領域と、脚部207、208の部分にハッチングを付して、その範囲が明確になるように図示している。本明細書でいう基体部201とは、取り付けられる回路基板150の表面から上側に露出する部分であって、腕部205と206を除いた部分である。上側端子部品200の基体部201は右側側面203と左側側面204とブリッジ部202により構成される。基体部201の下辺部より下方には、脚部207、208が接続される。脚部207、208は回路基板150の取付孔(貫通孔)に挿入して、回路基板150の取付面(表面)から取付面と反対側の面(裏面)まで脚部207、208を突出させ、裏面において脚部207、208が回路基板150に半田付けされる。また、半田付けによって腕部205、206と回路基板150に搭載される電池セルや電子素子等と電気的に接続される。ここで脚部207、208の高さH1は、回路基板150の厚さよりも大きく、2倍よりも小さい程度に形成される。また、左側側面204の後辺の下側部分には、後方側に突出する凸部204bが形成される。図5では見えないが右側側面203の後辺の下側部分にも同様の凸部が形成される。右側側面203と左側側面204の下側部分の前方側には、水平方向に凸状に延ばした部分を形成して、その凸状部分を内側に折り曲げた折曲部203a、204aが形成される。折曲部203a、204aの曲げ部の上側と下側には、折り曲げ加工を容易にするために切抜部203c、204c、207a、208aが形成される。折曲部203a、204aと凸部203b、204bは、回路基板150の取付孔近傍の上面に接するようにして、上側端子部品200の上下方向の位置決めをするために形成されるものである。
基体部201は側面視で倒立させた略L字状とされる。腕部205、206の後方部分は、後方側の接続部付近から前方に向けて右側側面203、左側側面204が同一面状に延びた平面部205a、206aが形成される。平面部205a、206aの左右方向の間隔は一定であり平行である。平面部205a、206aの前方には左右方向にみて内側に曲げられる曲げ部205b、206bが形成される。曲げ部205b、206bの前方側には再び平面部205c、206cが形成される。対向する平面部205cと平面部206cは後方側の間隔が広くて、前方側にいくにつれて徐々に狭まる先絞りの形状とされ、それぞれが鉛直方向に延在する面である。平面部205c、206cの先端部分は大きめの曲率半径R1にて外側に広がるように曲げられた嵌合部205d、206dが形成される。嵌合部205d、206dの内側の曲面部分が、電動工具本体1、30の端子と接触することにより、上側端子部品200が電動工具本体1、30側の接続端子と電気的に導通することになる。嵌合部205d、206dの内側は、電池パック100が電動工具本体1、30から取り外された状態ではわずかな隙間209を有するような形状とされる。嵌合部205d、206dの前方側は前方に行くにつれて間隔が急激に広がるように形成された案内部205e、206eに接続され、電動工具本体1、30側の端子を案内する。案内部205e、206eの内側の面は、ここでは平面状としているが、曲面状としても良い。曲げ部205bから案内部205eまで、及び、曲げ部206bから案内部206eまでは上下方向の高さが一定であるように形成される。一方、平面部205a、206aは後方側に行くにつれて高さが低くなるように下方向への切欠き部205f、206fが形成される。切欠き部205f、206fを形成したのは、プレス加工時に腕部205、206の折り曲げを容易にするという製造上の理由と、一組の嵌合部205d、206dにおける挟み荷重(又は嵌合圧)を調整するためである。以上のように形成することにより、耐久性に優れて使いやすい上側端子部品200を実現できた。尚、腕部205、206のうち嵌合部205d、206dの高さ方向はなるべく大きくする方が好ましいが、曲げ部205b、206b、平面部205c、206c、案内部205e、206eの上下方向の高さは、必ずしも一定である必要は無く前後方向にいくにつれて変化するような形状に形成しても良い。
図5(3)は下側端子部品220単体の斜視図であり、ここでもブリッジ部222の領域と、脚部227、228の部分にハッチングを付して、その範囲が明確になるように図示している。この図にてわかるように下側端子部品220はU字状に曲げる方向が、上側端子部品200と異なる。ここでは基体部221は側面視で正立させた略L字状とされ、右側側面223と左側側面224の上方前辺よりも前側に腕部225、226が接続される。腕部225、226のうち基体部221との接続部付近は、右側側面223と左側側面と同一面であって、対向する面が平行となる平面部225a、226aが形成される。平面部225a、226aの前方には左右方向にみて内側に曲げられる曲げ部225b、226bが形成される。曲げ部225b、226bの前方側には再び平面部225c、226cが形成される。対向する平面部225cと平面部226cは後方側の間隔が広くて、前方側にいくにつれて徐々に狭まる先絞りの形状とされる。平面部225c、226cの先端部分は大きめの曲率半径にて曲げられた嵌合部225d、226dが形成される。嵌合部225d、226dの内側の曲面が、電動工具本体1、30の端子と接触することにより、電気的に導通することになる。嵌合部225d、226dの内側は、電池パック100が電動工具本体1、30から取り外された状態ではわずかな隙間を有するような形状とされる。嵌合部225d、226dの前方側は前方に行くにつれて間隔が急激に広がるように形成され、電動工具本体1、30側の端子を案内するための案内部225e、226eが形成される。案内部225e、226eの内側の面は、平面状としても良いし、曲面状としても良い。平面部225aから案内部225eまで、及び、平面部226aから案内部226eまでは上下方向の高さが一定であるように形成される。しかしながら、上側端子部品200の腕部205、206と同様に、嵌合部225d、226dを除いて上下方向の高さが変化するように形成しても良い。以上のように形成することにより、本実施例では耐久性に優れて使いやすい下側端子部品220を実現できた。
下側端子部品220の腕部225、226の下側には、前方側から後方側に向けて、側面視でU字状に切りかかれた切欠き部231(図5(1)参照)が形成される。切欠き部231を形成したのは、この部分に上側端子部品200と下側端子部品220を区画するための基板カバー180(図11にて後述)が設けられるためである。基体部221の下側には、脚部227、228が接続される。脚部227、228は、回路基板150の取付孔に挿入され、回路基板150の取付面(表面)から反対側の面(裏面)において脚部227、228を突出させ、突出部分を半田付けする。また、半田付けによって腕部225、226から回路基板150に搭載される電池セルや電子素子等への電気的な接続状態が確立される。ここで脚部227、228の組は、上側端子部品200の脚部207、208の組とは短絡しない状態で独立して配線される。脚部227、228の寸法や形状は脚部207、208とほぼ同じであり、前側には折曲部223a、224aが形成される。折曲部223a、224aの曲げ部の上側と下側には、切抜部223c、224c、227a、228aが形成されるが、切抜部を形成するのはプレス加工時の曲げ加工を精度良くするためであるので、必ずしも切抜部が必要なわけではない。
次に図6を用いて電池パック100を電動工具本体1、30に装着した際の、電動工具本体1、30側のターミナル部20の形状と、電池パック100の接続端子との接続状態を説明する。ここでは電池パック100の接続端子のうち、放電用の正極端子(上側正極端子162、下側正極端子172)と負極端子(上側負極端子167と下側負極端子177)を図示している。電動工具本体1、30のターミナル部20、50には、さらにLD端子28、58が設けられるが、ここでは図示していない。図6(1)は、電池パック100を36V用の電動工具本体30に装着した状態を示す図である。前述したように電池パック100の内部には10本の電池セルが収容され、そのうちの5本が上側セルユニット146を構成し、残りの5本が下側セルユニット147を構成する。ここでターミナル部は、従来の電動工具本体1のターミナル部20に比べて正極入力端子52と負極入力端子57の端子部52a、57aが小さい。つまり、上側に配置された上側正極端子162と上側負極端子167にだけ接触するように、上下方向の幅が小さく形成される。上側セルユニット146の正極側出力端子は上側正極端子162に接続され、負極側出力端子は下側負極端子177に接続される。一方、下側セルユニット147の正極側出力端子は下側正極端子172に接続され、負極側出力端子は上側負極端子167に接続される。つまり、正極端子と負極端子がそれぞれ独立して2組設けられ、左右方向且つ上下にクロスする一方の端子組(上側正極端子162と下側負極端子177)が上側セルユニット146に接続され、他方の端子組(下側正極端子172と上側負極端子167)が下側セルユニット147に接続される。上側正極端子161と下側正極端子172は電気的に接続されていないため、電池パック100が電気機器本体に装着されていない状態(電池パック100の取り外された状態)では、電気的に独立した状態にある。同様に、上側負極端子167と下側負極端子177は、電池パック100の内部では電気的に接続されていないため、電池パック100が電気機器本体に装着されていない状態(電池パック100の取り外された状態)では、電気的に独立した状態にある。
図6(1)に示すように、定格36Vの電動工具本体30のターミナル部には、受電用の正極入力端子52と負極入力端子57が設けられる。装着時において、正極入力端子52は上側正極端子162だけに嵌合し、負極入力端子57は上側負極端子167だけに嵌合するような位置関係とされる。一方、電動工具本体30のターミナル部には、下側正極端子172と下側負極端子177を短絡させるように接続するショートバー59がさらに設けられる。ショートバー59は金属製の導電部材からなる短絡子であって、コの字形状に曲げられた金属部材の一端側が下側正極端子172と嵌合する端子部59bとなり、他端側が下側負極端子177と嵌合する端子部59cとなる。端子部59bと端子部59cは接続部59aにて接続される。ショートバー59は、正極入力端子52や負極入力端子57等の他の機器側端子と共に合成樹脂製の基台51(図7にて後述)に鋳込まれるようにして固定される。ショートバー59は、下側正極端子172と下側負極端子177を短絡させるためだけに用いられるため、電動工具本体の制御回路等への配線をする必要はない。
正極入力端子52は、上側負極端子167と嵌合する部分であって平板状に形成された端子部52aと、電動工具本体30側の回路基板側との結線を行うリード線を半田付けするための配線部52cと、端子部52aと配線部52cとの間を接続すると共に合成樹脂製の基台51に鋳込まれる部分となる連結部52bにより形成される。ここで配線部52cの位置は、端子部52aの左右方向位置に比べて内側にずれるように配置されるが、これは、配線部52cの間隔を調整するためと、連結部52bが鋳込みにより基台51に安定して保持されるようにするためである。さらに端子部52aの前方側の左右角部は斜めに面取りされ、端子部52aが腕部162aと腕部162bの間に入り込みやすいように構成した。負極入力端子57は正極入力端子52と共通部品とすることができ、鉛直軸を中心に180度回転させた状態で配置することにより、負極入力端子57としても正極入力端子52としても用いることができる。従って、負極入力端子57も、端子部57aと配線部57cと、これらを接続する連結部57bにより形成される。端子部57aの前方側角部(この部品を正極入力端子52として使う場合は後方側の角部)にも斜めに面取りして、端子部52aが腕部162aと腕部162bの間に入り込みやすくするようにした。
図6(1)において、電池パック100を装着する際には、電池パック100を電動工具本体30に対して差し込み方向に沿って相対移動させると、正極入力端子52と端子部59bが同一のスロット122(図3参照)を通って内部まで挿入され、それぞれ上側正極端子162と下側正極端子172に嵌合される。このとき、正極入力端子52が上側正極端子162の嵌合部間を押し広げるようにして上側正極端子162の腕部162aと162bの間に圧入される。また、負極入力端子57と端子部59cが同一のスロット127(図3参照)を通って内部まで挿入され、それぞれ上側負極端子167と下側負極端子177に嵌合される。この際、負極入力端子57が上側負極端子167の嵌合部間を押し広げるようにして上側負極端子167の腕部167aと167bの間に圧入される。さらに、ショートバー59の端子部59b、59cが下側正極端子172と下側負極端子177の腕部172aと172bの間、腕部177aと177bの間の間を押し広げるようにして圧入される。端子部52a、54a〜58a、59c、59dの前側角部は、矢印52d、54d〜59d、59eのように斜めに面取りされ、電池パック100側の接続端子の腕部の間にスムーズに挿入できるようにしている。
端子部52a、端子部57a、端子部59b、59cの板厚は、各腕部の嵌合部の初期隙間(電池パック100が装着されていない時の隙間)よりも大きいので、端子部52a、端子部57a、端子部59b、59cの各々と上側正極端子162、下側正極端子172、上側負極端子167、下側負極端子177との嵌合点に所定の嵌合圧力が作用する。このような接続の結果、電動工具本体30の機器側端子(端子部52a、端子部57a、端子部59b、59c)と、電池パックの電力端子(上側正極端子162、下側正極端子172、上側負極端子167、下側負極端子177)は電気的な接触抵抗が小さくなるような状態にて良好に接触する。このようにして電気機器本体30は、単一のスロット(122に挿入されて第1及び第2の端子(162、172)のうち第1の端子(162)のみに接続される第3の端子(52a)と、単一のスロット(122)に挿入されて第2の端子(172)のみに接続される第4の端子(59b)と、を有し、電池パック100が電気機器本体30に接続されると、単一のスロット121内で、第1及び第3の端子(162と52a)が互いに接続されてともに第1の電位となり、第2及び第4の端子(172と59b)が互いに接続されてともに第1の電位とは異なる第2の電位となる。負極端子対(167、177)側でも同様に接続状態となるため、図6(1)の接続形態の実現によって、上側セルユニット146と下側セルユニット147の直列接続の出力、即ち定格36Vが電池パック100から出力されることになる。
一方、従来の18V用の電動工具本体1に電池パック100が装着された際には、図6(2)のような接続関係となる。電池パック100が電動工具本体1に取り付けられるときは、正極入力端子22は、上側正極端子162と下側正極端子172の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、正極入力端子22の上側の一部の領域が上側正極端子162と接触し、下側の領域の一部が下側正極端子172と接触する。このように上側正極端子162の腕部162a、162bと下側正極端子172の腕部172a、172bに同時に嵌合することによって、正極端子162と172が短絡状態となり、電動工具本体1には上側セルユニット146と下側セルユニット147の並列接続の出力、即ち定格18Vが出力されることになる。正極入力端子22と負極入力端子27は一定の厚みを有する金属板からなる。従って、上側正極端子162、上側負極端子167の腕部による嵌合圧と、下側正極端子172、下側負極端子177の腕部による嵌合圧は同等とすることが重要である。また、これらの嵌合圧を一定とするために、図(1)に示した36V用の電動工具本体30の正極入力端子52、負極入力端子57、ショートバー59の端子部59b、59cの厚さを、従来の18V用の電動工具本体1の正極入力端子22と負極入力端子27の厚さと同じとする。
以上のように本実施例の電池パック100は、18V用の電動工具本体1か、36V用の電動工具本体30に装着することにより、電池パック100の出力が自動的に切り替わるので、複数電圧に対応した使い勝手の良い電池パック100を実現できた。この電圧切り替えは電池パック100側にておこなうのではなくて、電動工具本体1、30側のターミナル部の形状によって自動的に行われるので、電圧設定ミスが生ずる虞が全くない。また、電池パック100側には、機械的なスイッチのような専用の電圧切替機構を設ける必要が無いので、構造が単純で故障の虞が低く、長寿命の電池パックを実現できる。この下側正極端子172と下側負極端子177を短絡させるショートバー59は、18V用電池パックの既存のターミナル部20と同スペース内に実装できるため、従来と互換性のある大きさで電圧切替式の電池パックが実現できる。さらに、外部の充電装置を用いて充電を行う際には、図6(2)のような接続方法にて充電することが可能なので、高電圧/低電圧の双方の充電をおこなうような充電装置を準備する必要が無い。尚、電池パック100を外部充電装置(図示せず)を用いて充電する場合は、従来の18V用電池パックと同じ充電装置にて充電が可能である。その場合の充電装置のターミナルは図6(2)と同等の形状となるが、放電用の正極端子(162、172)の代わりに、充電用の正極端子(上側正極端子161、下側正極端子171)が充電装置(図示せず)の正極端子に接続されることになる。その際の接続状況も図6(2)に示す接続関係とほぼ同等である。このように、上側セルユニット146と下側セルユニット147を並列接続させた状態として18V用の充電装置を用いて充電を行うので、本実施例の電池パック100を充電するにあたって、新しい充電装置を準備しなくて済む。
図7(1)は本実施例の電動工具本体30のターミナル部50の斜視図である。ターミナル部50は、図6(1)で示した正極入力端子52、負極入力端子57、ショートバー59に加えて、4つの金属製の接続端子54〜56、58が合成樹脂製の基台51に鋳込まれて製造されるものである。接続端子54〜56の形状は、図6(1)の正極入力端子52、負極入力端子57の連結部52b、57bの部分を直線状に形成したものであり、電池パック100側の接続端子に嵌合される端子部54a〜56aが一方側に形成され、他方側に穴が形成されリード線が半田付けされるための配線部54c〜56cが形成され、端子部と配線部の間を接続するもので合成樹脂内に鋳込まれる接続部54b〜56bが形成される。基台51は端子部52a、54a〜58aの上側辺部全体と、後側辺部全体を鋳込むようにして、端子部52a、54a〜56a、58aを強固に保持した。また、端子部54a〜56a、58aについては下側辺部の後方の一部を鋳込むようにした。図6(1)にてその形状を示したショートバー59は、左右方向に延びる接続部59a(図6参照)が基台51内にすべて鋳込まれ、基台51から前方側に端子部59bと59cの前方部分が露出する。また、端子部59b、59cの外部に露出している部分の後方側の下方が基台51内に鋳込まれることにより、端子部59b、59cが左右方向に動かないように強固に保持される。このようにして複数の板形状の機器側端子がターミナル部50に並べて配置される。ここで、端子部52aと端子部59bは、上下方向に一定の隙間53aを隔てるように配置される。同様にして端子部57aと端子部59cは、上下方向に一定の隙間53bを隔てるように配置される。
図7(2)はターミナル部50と電池パック100の電力端子(162、172、167、177)との接続状況を示す図である。上側正極端子162は2つの腕部162a、162b(図5(1)の腕部205、206に相当)を有し、正極の下側正極端子172は2つの腕部172a、172b(図5(1)の腕部225、226に相当)を有する。上側正極端子162の腕部162a、162bは板状に形成された端子部52aを左右から挟み込むように接続される。この接合の際には、腕部162a、162bが左右方向に離れるように曲げられることによりバネ作用の復元力によって所定の挟み荷重(嵌合圧)を端子部52aに付与することになる。この結果、腕部162a、162bと端子部52aが良好に面接触又は線接触することになるので、接触抵抗がきわめて小さい良好な導電性を実現できた。同様にして、上側負極端子167の腕部167a、167bは板状に形成された端子部57aを左右から挟み込むようにして嵌合する。
下側正極端子172の腕部172a、172bは板状に形成された端子部59bを左右から挟み込むようにして嵌合する。この嵌合の際には、腕部172a、172bが左右方向に離れるように曲げられることによりバネ作用の復元力によって所定の挟み荷重(嵌合圧)を端子部59bに付与することになる。この結果、腕部172a、172bと端子部59bが良好に面接触又は線接触することになるので、接触抵抗をなくして良好な導電性を実現できた。同様にして、下側負極端子177の腕部177a、177bは板状に形成された端子部59cを左右から挟み込むようにして嵌合する。
本実施例で重要なことは、端子部52aと上側正極端子162の接続部分と、端子部59bと下側正極端子172の接続部分の非接触状態が保たれて、電気的な絶縁状態を維持することにある。また、端子部57aと上側負極端子167の接続部分と、端子部59cと下側負極端子177の接続部分の非接触状態が保たれて、電気的な絶縁状態を維持することにある。このように構成すれば、電動工具の使用時における様々な振動や衝撃によって、電池パック100が電動工具本体30とは異なる共振周波数で振動したような場合であっても、上側正極端子162と下側正極端子172との短絡が起こることを阻止でき、上側負極端子167と下側負極端子177との短絡が起こること阻止できる。尚、図7(2)では、端子部54a〜56a、58aに嵌合される電池パック側の接続端子の図示を省略しているが、正極側の電力端子(上側正極端子162と下側正極端子172)、負極側の電力端子(上側負極端子167と下側負極端子177)が接続された際には、信号端子(図4で示すT端子164、V端子165、LS端子166、LD端子168)も端子部54a〜56a、58aに同様に嵌合されるものである。
図8(1)は従来の電動工具本体1のターミナル部20の斜視図であり、(2)は電池パック100の電力端子との接続状況を示す図である。ターミナル部20は6つの金属製の端子22、24〜28が合成樹脂製の基台21に鋳込まれて製造されるものである。端子22、24〜28の形状は、図6にて鋳込み前の端子22、27の一部を示したように、電池パック100側の接続端子に嵌合される端子部22a、24a〜28aが一方側に形成され、他方側に穴が形成されリード線が半田付けされるための配線部が形成され、端子部と配線部の間を接続すると共に基台21の合成樹脂内に鋳込まれる接続部が形成される。基台21は端子部22a、24a〜28aの上側辺部全体と、後側辺部全体と、下側辺部の後方の一部を鋳込むようにして、端子部22a、24a〜28aを強固に保持した。端子部22a、24a〜28aの前側角部は、矢印22d、24d〜28dのように斜めに面取りされ、電池パック100側の接続端子の腕部の間にスムーズに挿入できるようにしている。ターミナル部20の形状は、基台21の前側に左右方向に延びる溝部21bが形成され、後側にも同様に左右方向に延びる溝部21bが形成される。これら溝部21b、21cはターミナル部20におけるハウジングの開口部分にて挟持される。
図8(2)は ターミナル部20と電池パック100の電力端子(162、172、167、177)との接続状況を示す図である。ここでは電池パック100側の信号端子(T端子164、V端子165、LS端子166、LD端子168)の図示を省略している。上側正極端子162の腕部162a、162bは板状に形成された端子部22aの上側領域を左右から挟み込むようにして嵌合する。この嵌合の際には、腕部162a、162bが左右方向に離れるように曲げられることによりバネ作用の復元力によって所定の挟み荷重(嵌合圧)を端子部22aに付与することになる。また、下側正極端子172の腕部172a、172bは板状に形成された端子部22aの下側部分左右から挟み込むようにして嵌合する。電力端子の上側負極端子167と下側負極端子177の各腕部は同様の嵌合状態となる。このようにして、1枚の端子部22aに対して4つの腕部162a、162b、172a、172bが接触する。同様にして負極側においても、上側負極端子167の腕部167a、167bは板状に形成された端子部27aの上側領域を左右から挟み込むようにして嵌合し、下側負極端子177の腕部177a、177bは端子部27aの下側部分を左右から挟み込むようにして嵌合する。このようにして、1枚の端子部22aに対して4つの腕部162a、162b、172a、172bが接触し、同様にして端子部27aに対して4つの腕部167a、167b、177a、177bと接触するので、これらが良好に面接触又は線接触することができ、接触抵抗をなくして良好な導電性を実現できた。
次に図9を用いて3つの端子(164〜166)に用いられる部品、即ち信号端子部品240の形状を説明する。信号端子部品240は、1枚の金属板のプレス加工に製造されるものであって、金属の薄板をU字状の底部分となるブリッジ部242が後側の鉛直面となるように曲げられた基体部241から、腕部組(腕部基部245、246)が前方側に延在し、腕部基部245は上下の腕部組(腕部251、253)に分離するように形成され、腕部基部246は水平方向に延びる切欠き溝246b上下の腕部組(252、254)に分離するように形成される。プレス加工に用いる金属板は、厚み0.3mmの平板であって、電力端子に用いられる上側端子部品200、下側端子部品220の板厚0.5mmに比べて薄くて良い。上側及び下側の腕部組は、同一形状に形成され、前後方向の長さ、上下方向の幅、板厚等が同じである。上側の腕部組(腕部251と252)、及び、下側の腕部組(腕部253と254)にはそれぞれ嵌合部(251d、253d等)が形成されるが、嵌合部のために湾曲させた形状も上下で同一であり、左右の腕部が面対称の形状とされる。一方、脚部249、250の取り付け位置が前後方向に大きくずらすように配置される。基体部241の下辺部分の形状は左右で異なり、右側側面243と左側側面244の形状が非対称となる。脚部249は、従前の脚部250の位置に比べて前側に大きくずらして配置され、脚部249と250は前後方向に大きく距離を隔てる。このように脚部249と脚部250が左右方向に隣接して並ぶのでは無く、前後にずらすように配置したため、右側側面243の下辺付近には前方に大きく延ばされた延在部243aが形成され、その前端部分から下方向に脚部249が延びるように形成される。脚部249と脚部250はそれぞれ回路基板150に形成された貫通孔(図示せず)を、表面から裏面側まで貫通させて、裏面側に突出した部分が半田付けされることにより回路基板150に固定され、上側の腕部組(腕部251と252)と下側の腕部組(腕部253と254)が回路基板150に搭載される電子素子と電気的に接続されることになる。
脚部249の上方には、回路基板150の取付孔151(図4参照)への挿入量を制限するための、左方向に折り曲げた折曲部243bが形成される。折曲部243bの曲げた部分の上側と下側には、折り曲げ加工を容易にするために半円形に切り抜いた切抜部243c、249aが形成される。後方側の脚部250の回路基板150への位置決めには、脚部250の前方側と後方側に形成された段差部250a、250bを用いるようにした。段差部250aは左側側面244の下辺部分を前方側に延ばすことで形成し、段差部250bはU字状に湾曲するブリッジ部242の下側辺部を利用して形成される。このように段差部250a、250bが回路基板150の表面に当接することにより脚部250の上下方向の取り付け位置を決定することができる。脚部249と250の前後方向の取り付け位置は、回路基板150の取付孔151(図4参照)の位置によって規定される。
図9(2)は信号端子部品240単体を前方下側から見た図である。この図からわかるように腕部基部245の前方側には水平方向に延びる切欠き溝245bが形成されることにより上下の腕部組(腕部251、253)に分離される。また、右側の脚部249は左側の脚部250に比べて大きく前方側にずれるように配置される。この結果、4つの腕部251、252、253、254に対して上方向又は下方向に対する力が加わったとしても信号端子部品240を回路基板にしっかりと保持することができる。腕部251、252、253、254に対して加わる外力は、電動工具本体1、30に電池パック100を装着する時に腕部組を後方側に押すように加わり、この力は信号端子部品240を後方に倒す方向となる。逆に、電動工具本体1、30から電池パック100を取り外す時には、腕部組を前方側に押すような力となり、この力は信号端子部品240を前方に倒す方向となる。このように電池パック100の装着時と取り外し時に加わる外力を、脚部249、250の位置を前後方向にずらしたことにより効果的に受け止めることができ、信号端子部品240の取り付け剛性を大幅に強化できるので、電池パック100の耐久性を高めることができた。さらには、腕部組も上側と下側の2段に分けて形成したので、電動工具の動作中に様々な振動を受けたり外力を受けたりしても、腕部の4つの接触領域によって電動工具本体側端子との良好な接触状態を維持できる。一方、この信号端子部品240を製造する際に必要な、回路基板150の取付孔の数や半田付け箇所の数は従来と同じであるため、製造コストの上昇は抑制できる。
本実施例の信号端子部品240は剛性向上だけでなく別の効果も奏する。従来の信号端子部品(図示せず)は、回路基板に半田付して電気的・機械的に取付ける脚部を2箇所設けているが、その脚部は左右方向に並設しており、脚部の間が狭い上に半田付け部分がつながっていることが多く、左右の脚部の間に信号用のパターンを通すような配線ができなかった。本実施例の電池パック100では、信号端子部品240の一方の脚部249を前側に配置し、他方の脚部250を後側にして両方の脚部を離して配置した。これにより、信号端子部品240の各脚部の距離が広くなり複数の配線、又は、主電流を流す太いパターンを配線することが容易になる。このような信号端子部品240は、本実施例の電池パック100、即ち、従来の電池パックに対して高機能化を図り、電圧比でみた小型化を促進したい場合には好適である。特に、電圧を高めた上に電圧切り替え機能を実現すると、回路基板150に搭載される電子素子が増加する。そこで、パターン配線の効率化を図ると共に、主電流を流す配線を太くする必要が生じた。本実施例では回路基板150を従来用いられるものよりも大型のものを用い、接続端子群の後側だけでなく前側領域にも電子素子を搭載するようになった。その際、信号端子部品240の下側にも配線パターンを配置するようにした。その配置の仕方を図10を用いて説明する。
図10は複数の信号端子部品240の回路基板150への固定状況を示す図であり、(1)は前方から見た図であり、(2)は信号端子部品240を左から見た図である。信号端子部品240は共通部品であって、T端子164、V端子165、LS端子166として回路基板150において左右方向に並べて固定される。信号端子部品240は腕部の中央付近に間隔S2を生ずるように切り欠き部が形成されるため、上側の腕部組(251、252)と下側の腕部組(253、254)が上下に2段存在するような形状となる。機器側端子が装着されていない状態においては、上側の腕部組(251、252)と下側の腕部組(253、254)の最も接近する部分(嵌合部)は、わずかに隙間を隔てるか、又は当接するように配置される。それぞれの脚部249、250は、回路基板150の取付孔(図4参照)を貫通して下側まで突出し、回路基板150の下側(裏面)にて半田256により固定される。
図10(2)の側面図において、前方に位置する脚部249と後方に位置する脚部250の間は距離S3だけ隔てるように構成される。距離S3は、脚部249と250との間隔(左右方向の距離)よりも大きくなるようにすると良い。このように矢印257のような隙間を形成することによって、この隙間部分に回路パターンを配線することが容易となる。図10(3)は、図10(1)の回路基板150を下側から見た底面図である。回路基板150の裏面には、信号端子部品240を半田付けするために中央に貫通孔が形成され、貫通孔の周囲に略四角形の半田付け用の銅箔を配置したランド153a〜155a、153b〜155bが形成される。ランド153a〜155a、153b〜155bから上側セルユニット146又は下側セルユニット147への接続用の配線パターンは、回路基板150の表面側にあり、(3)の図では見えない。左側の脚部用のランド153a〜155aと右側の脚部用のランド153b〜155bは前後にずれるように配置される。この結果、ランド153a〜155aとランド153b〜155bの間に、図のように複数のパターン157〜159を配置することが可能となる。配線パターン157〜159はここでは、各3本ずつ設けるように図示しているが、1本の太い配線としたり、その他の本数の組み合わせとしても良い。このように前後方向にずらして配置した脚部249、250の間に配線パターンを配置させたので、隣接する信号端子164と165、165と166の間隔を従来と同じに保ったままで、信号端子164〜166の後方側と前方側を接続する複数の配線パターン157〜159を設けることが可能となった。尚、信号端子164〜166の後方側と前方側を接続する配線パターン数を増やす別の方法として、図10(2)において点線で示すような切抜部243cを設ける方法を併用しても良い。右側側面243の下辺付近であって回路基板150と接する部分に、点線で示すような上向きに切り欠いた切抜部243cを形成する。すると、矢印257に示す部分が回路基板150と距離を隔てる隙間となる。この隙間と回路基板150の間に、図10(3)の配線パターン157〜159と同様に回路パターンを配置することが可能となる。このように回路基板の裏面側150bだけでなく表面側150aにも信号端子164〜166の後方側と前方側を接続する複数の配線パターンを配置することができるので、回路基板150の実行効率を向上させることが可能となる。
図11は、接続端子群(161〜162、164〜168)とその周囲に配置される基板カバー180の形状を示す図であり、(1)は斜視図であり、(2)は正面図である。ここでは発明の理解のために回路基板150の図示を省略したものであり、実際の製品では回路基板150に複数の接続端子群(161〜162、164〜168、171、172、177)が半田付けにより固定された後に、基板カバー180が接続端子の周囲に取り付けられる。電力端子(161、162、167)は信号端子(164〜166、168)よりも上方向に距離Hだけ高くなるように形成される。基板カバー180は、不導体、例えば合成樹脂の成形品によって製造され、隣接する接続端子の脚部の周囲を覆うようにした部材であって、前方側に平面状の上面181aを有する連結部181を有し、連結部181の後方側に複数の仕切り壁182、183、184〜189が接続される。仕切り壁182、183、184〜189は平面部181aよりも後方側、即ち接続端子群の左右部分に配置されることにより接続端子間の電気的な短絡を起こりにくくする機能を果たす。また、連結部181の上面181aは、上ケース110の上段面115(図3参照)と同一面になるように形成されており、上段面115から連結部181までに至る本体側ターミナル部の相対移動を容易としている。また、基板カバー180には、使われていない領域(図3のスロット123)の開口を塞ぐような覆い部184を設けて、スロット123から電池パック100のケース内部にゴミや粉塵が入りにくくする。
基板カバー180には横方向に水平な上面181aを有する連結部181と、その上方に延びる複数の仕切り壁部によって、主に形成される。仕切り壁部のうち信号端子間に配置される仕切り壁185、186、189は高さH2の低い壁部とされ、その上端位置は信号端子(164〜166)や、LD端子168の下側の腕部より低い位置になる。これに対して電力端子用に隣接する仕切り壁182、183、184a、187、188は、上面181aからの高さがH3の高い壁部となり、その上端位置は、下側端子部品の上端位置よりも上側に位置し、上側端子部品の腕部の下側に位置するように構成される。
接続端子群のうち電力端子は、図5〜図8で説明したように、上側正極端子161、162と下側正極端子171、172の脚部が前後方向に並び、それぞれの腕部組が上下方向に並べて配置される。同様にして上側負極端子167と下側負極端子177の脚部が前後方向に並び、それぞれの腕部組が上下方向に並べて配置される。定格18Vの電気機器本体に電池パック100を装着した際には、上側正極端子161、162、上側負極端子167の腕部の電位と、下側正極端子171、172、下側負極端子177の電位は同じとなるため、上側端子部品と下側端子部品が接触しても問題ない。しかしながら、定格36Vの電気機器本体に電池パック100を装着した際には、上側正極端子161、162、上側負極端子167の電位と、下側正極端子171、172、下側負極端子177の電位がそれぞれ異なるため、上下の腕部間の接触による短絡状態が発生しないようにすることが重要である。また、異物の挿入による短絡が起こりにくいような形状とすると良い。そこで、本実施例の基板カバー180は、連結部181から上方向に延びるように形成される仕切り壁部のうち、仕切り壁182、183、184a、187、188に関しては、高さH3となるように上端位置を上方にまで大きく形成した。また、上方に向けて鉛直方向に延びる壁部だけでなく、鉛直壁部の上端位置から左右方向にも延びる水平壁部も形成した。
図11(3)は、(2)の基板カバー180の一部拡大図であり、接続端子部分の図示を除いた図である。仕切り壁182は鉛直壁部182aと水平壁部182bを有するもので、その断面形状がL字形となる。水平壁部182bは鉛直壁部182aの上端付近から隣接する電力端子(上側正極端子161、下側正極端子171)の腕部の間の空間内にまで到達するように水平方向に延びる形状とされる。また、仕切り壁183はT字形の断面形状を有し、鉛直壁部183aと、鉛直壁部183aの上端部から両方向に延びる水平壁部183b、183cにより形成される。水平壁部183bは隣接する水平壁部182bと近接する側に延びて、上側正極端子161と下側正極端子171の腕部の間の空間内に先端が到達する長さとされる。同様にして水平壁部183cは、隣接する水平壁部184bと近接する側に延びて、上側正極端子162と下側正極端子172の腕部の間の空間内に先端が到達する長さとされる。この腕部の間の空間内にまで水平壁部182b、183b、183cが延びる状況は、図11(2)のように前方から正極端子群を見ることにより明らかであろう。たとえば、上側正極端子161の右側側面位置と、下側正極端子171の右側側面位置は同一位置にある。しかしながら、水平壁部182bの左端位置182cは、上側正極端子161と下側正極端子171の右側側面位置よりも左側にのびるように、上側正極端子161の腕部161aの下側部分にまで入り込む程度の長さになる。尚、水平壁部182bは、下側正極端子171の腕部171aの上側に位置することになる。
鉛直壁部182aと水平壁部182bの前後方向の長さは、下側正極端子171の前後方向の長さよりも長く形成され、その前端位置は下側正極端子171の腕部の先端とほぼ同じ位置にあり、後端位置は下側正極端子171の後端位置よりも後方側にある。このようにして、鉛直壁部182aは下側正極端子171の右側側面全体と、左側側面全体を覆いつつ、上側部分も左右中央付近(距離S5の部分)を除いて覆うようにした。ここでは、下側正極端子171部分の鉛直壁部182aと水平壁部182bの形状だけに言及したが、下側正極端子172についても、右側側面全体と左側側面全体と、中央部分を除く上側部分が覆われるような仕切り壁184が設けられるので、下側正極端子171、172に外力が加わって、これらを曲げるような力が加わったとしても、基板カバー180によって効果的に保持させることができ、送電用の下側の端子部品と上側の端子部品が意図せずに短絡してしまう虞を大幅に低減させることができる。
負極端子側(167、177)についても、正極端子側(161、162、171、172)と同様の考えであって、負極端子の左右両側には大きな仕切り壁187、188を設けた。仕切り壁187は、仕切り壁182と同様の形状であって、鉛直壁部187aと水平壁部187bにより形成され、その断面形状がL字状とされる。水平壁部187bは鉛直壁部187aの上端部分から負極端子側に延びるように形成される。仕切り壁188は、仕切り壁187と左右対称に形成されたもので、鉛直壁部188aと水平壁部188bにより形成される。水平壁部187bと188bは、上側負極端子167の腕部組と下側負極端子177の腕部組の間の空間に先端部分が入り込む程度の大きさとされるが、所定の間隔S5を有して電動工具本体1、30等の機器側端子が入り込むことを阻害しないようにする。このように電力端子たる負極端子(167、177)の周囲を覆うように仕切り壁187、188を形成したので、上側負極端子167又は下側負極端子177に強い外圧がかかって前後方向に動いた(曲げられた)としても、水平壁部187bと188b等の壁部の存在によって短絡現象の発生する可能性を大幅に削減することができる。
信号端子群(164〜166)の間の仕切り壁185、186は上方向に低い高さH2しか有しない、これは、信号端子群(164〜166)には、小電力の信号が流れるだけであるので、短絡時の危険度合いが電力端子側に比べて大幅に小さい為である。また、信号端子群(164〜166)はそれぞれが1部品であって、上側の腕部と下側の腕部が同電位であるので、短絡の心配をする必要性が低い為である。仕切り壁184は、鉛直壁部184a、184dを含み、これらの間を塞ぎ板184cに接続したものである。塞ぎ板184cは鉛直及び左右方向に延在する平板であって、上側正極端子162とT端子164との間の空きスペース(図3の空きスロット123の内部空間)を閉鎖する作用を奏する。鉛直壁部184aの上端付近には、正極端子側に延びる水平壁部184bが形成される。
連結部181は、接続端子間に位置する鉛直壁部182a、183a、184a、184d、185a、186a、187a、188aの前面に接続するようにしてこれらを固定するものである。連結部181の上面181aの壁部は、回路基板181よりも浮いた状態になるように形成される。連結部181の内側部分には、空間を有するように形成され、その後方側に鉛直壁部184a、185a、187aが配置される。ここでは前方壁面181bに隠れて見えないが、鉛直壁部182a、183a、184d、188aも同様に下側まで延びて回路基板150に接触するように形成される。この連結部181の内側部分にも図13にて後述するような回路基板150の上面を覆う液体状の硬化性樹脂が満たされた後に固められる。硬化性樹脂の固化によって、複数の鉛直壁部182a、183a、184a、184d、185a、186a、187a、188aの下端付近と回路基板150が強固に固定される。連結部181の前方壁面181bには3つの切欠き部181c〜181eが形成される。切欠き部181c〜181eは、図13にて後述する液体状の樹脂が回路基板150の後方部分と前方部分に均等に行き渡るようにするために形成されるものであり、液体状の樹脂は粘度が比較的低いため、切欠き部181c〜181eを通って樹脂が前後方向に流れる(詳細は後述する)。
図12は図3の上ケース110だけを抜き出した図であり、上ケース110の上段面115の形状を説明するための図である。図12(1)は上ケース110の斜視図であり、(2)は(1)の矢印B方向から見た矢視図である。(1)においては段差状になっている部分に、ハッチングを付して、その範囲が明確になるように図示している。図11にて説明したように、電力端子(161、162、167)は信号端子(164〜166、168)よりも上方向に距離Hだけ高くなるように形成される。これは信号端子より電力端子が厚い板材で形成されるからである。従って従来の上ケースの上段面の形状では、電力端子(161、162、167)の上端部が上段面の内壁に干渉してしまう。そこで、本実施例では電力端子(161、162、167)の上部のクリアランスを稼ぐように、上ケース110の上段面115の上下方向にみた内側壁面の位置を、部分的に上側にずらすように構成した。内側壁面の位置だけを上方向に窪む凹部とする方法も考えられるが、上段面115の画面形状をそのままとすると、上ケース110の上段面115の一部分の厚さが不足して、局所的に強度が低下する虞がある。そこで、本実施例では上段面115の外側面であって、電力端子(161、162、167)が位置する付近の上部を、外側に向けて突出する凸部115a、115bを形成した。このように上段面115の壁面の一部を上側にずらすように構成したので、内側部分には収容スペースを拡大させることができ、壁面強度の低下も防ぐことができる。本実施例では、上段面115の外壁面の突出高さH4が、内壁面の窪み高さH5よりも小さくなるように構成したので、上段面115に凸部115a、115bのサイズを小さく抑えることができ、従来の電動工具本体1に支障なく装着できる範囲内に収まった。また、上段面115が同一面ではなくて、部分的な段差部が形成されて網掛け部の高さが高くなるように段差が形成されることにより、従来の同一平面状の上ケースに比べて強度的には同等又は同等以上とすることができた。
次に、図13を用いて回路基板150への樹脂の塗布方法を説明する。図13は回路基板150の斜視図であり、ここでは図示を省略しているが、回路基板150の上面(表面)には、電子素子を搭載するための主領域156aと副領域156bが設けられる。主領域156aは、接続端子群よりも後方側にあって、そこにはマイコンを含む保護管理IC(後述)が搭載される。副領域156bは接続端子群よりも前方側の領域である。ここでは、搭載される電子素子の全体を硬化性樹脂にて覆うようにした。硬化性樹脂は、液体状態から硬化するもので、例えばウレタン樹脂を用いることができる。回路基板150の上面に均等に液体のウレタン樹脂を満たすために、最初に回路基板150に搭載される素子群の外縁部分に、液体状の樹脂の流出を防ぐ堤防の役割をする接着樹脂155を付着する。接着樹脂155は、例えばチューブ状の容器内から細い抽出口を通して円柱状に抽出された接着剤を、ウレタン樹脂を満たしたい領域の外縁に沿って連続的に付着させる。この際、外縁部分にそって接着剤が切れ目無く付着されることが重要であり、一方の端部と他方の端部が基板カバー180に接するように形成する。このように樹脂を流し込む外縁部分のほぼ一周分に、外枠となる接着樹脂155を付着させたら、その後に回路基板150の上面内側に液体状態にあるウレタン樹脂を流し込む。
流し込むウレタン樹脂の量は接着樹脂155にて囲まれた範囲を十分満たす量とする。この際、樹脂にて覆いたくない箇所には、該当箇所の外縁を接着樹脂155a〜155cで囲むようにし、それらの外側に流し込まれた樹脂が、接着樹脂155a〜155cで囲まれた範囲内には届かないようにした。尚、ウレタン樹脂を流し込む位置は主領域の矢印156aにて示す付近とすれば、接着樹脂155aで囲まれた範囲内には樹脂が流れ込まない。また、基板カバー180は上面181aを形成する連結部181の壁面が浮いている状態で、その下側部分の後方側壁面が開口状態にあり、前方側が壁面となって、その一部に切欠き部181c〜181eが形成されることにより、主領域156aから副領域156bに良好に樹脂が流れ込むことが可能となる。このようにして、回路基板150の素子搭載面全体を樹脂にて覆ったのちに効果させることにより、回路基板150の表面側に均一の高さで、対象範囲内を隙間無く樹脂で覆い、搭載された電子素子を水や埃の影響から守ることができる。尚、回路基板150として両面基板を用いる場合には、裏面側にも同様の手順で樹脂にて覆うようにしても良い。また、接着樹脂155にて樹脂の充填を除外させた部分、例えばネジ穴付近や、リード線の半田付け部も、ねじ締めが完了した後工程時、半田付けが完了した後工程時に樹脂を塗布するようにしても良い。
以上、図1〜図13を用いて本発明の第一の実施例を説明したが、第一の実施例にて示した電池パック100は種々の変形が可能である。図14は、本実施例の第1の変形例に係る上側端子部品260と下側端子部品280の形状を示す図である。図14(1)は斜視図であり、(2)は左側面図であり、(3)は正面図である。上側端子部品260と下側端子部品280がそれぞれ左右方向に2つの腕部組(265と266、285と286)を有し、2つの腕部組が上下方向に整列する点は第一の実施例と同じである。上側端子部品260の脚部組(267、268)が、下側端子部品280の脚部組(287、288)と前後方向に並ぶように配置されることは第一の実施例と同じである。右側側面263と左側側面264の後辺の下側部分には、(2)にて矢印262a、282aとして示すように、ブリッジ部262、282が後方側に湾曲するように突出するので、この突出部分が上側端子部品260と下側端子部品280の回路基板150への取り付け時の上下方向位置決め用に用いられる。脚部267と268の前辺上部には、凸状に延ばした部分を内側に折り曲げた折曲部263a、264a、283a、284a(但し263aは図14では見えない)が形成されるが、これらの形状は図5で示した第一の実施例の構成と同様である。
上側端子部品260はU字状の折り曲げる方向が図5で示した方向と異なる。ここでは、U字状に折り曲げた際に底部となる部分、即ちブリッジ部262が鉛直面となるように形成される。下側端子部品280の折り曲げ形状は図5で示した下側端子部品220とU字状の折り曲げる方向が同じであり、ブリッジ部282が鉛直面となる。ブリッジ部262と282は前後方向にほぼ一定の間隔を有するように平行に配置され、これらは回路基板150の表面に対してほぼ垂直方向に延びるように配置される。上側端子部品260と下側端子部品280は金属の平板をプレス加工して製造する点は第一の実施例と同様であるが、その平板の厚さをさらに厚くしたものである。
右側側面263と左側側面264は鉛直方向に延びる略長方形であって、上端に近い部分で前方側に腕部265、266が延びるように形成される。腕部265、266の後方側根元付近、即ち鎖線B2付近では幅(上下方向の長さ)が大きく、前方に行くに従ってその幅が徐々に小さくなり、仮想線B1よりさらに前方側では幅が一定なる。嵌合部265d、266dでは、上面視で内側に所定の曲率半径R1を有する曲面状に曲げられる点は、図5で示す第一の実施例と同様である。このようにU字形の基体部の上方前辺部から前方に延びるようにして腕部265、266が形成され、腕部265、266が互いに非接触状態にてバネ性を持たせるように形成される。
下側端子部品280は、U字状に折り曲げて平行なるように形成された右側側面283、左側側面284と、それらを接続するブリッジ部282を有し、右側側面283と左側側面284の細長い上部から、前方かつ斜め上側に向けて腕部285、286が延びるように設けられる。腕部285、286の上下方向の幅は前後方向においてほぼ一定であり、仮想線B1よりも前方側では水平方向に延びるように形成されるが、仮想線B1より後方側は斜めに配置される。下側端子部品280の腕部組(285、286)の下方には、前方側から大きく切り欠かれた切欠き部291が形成される。このように形成した結果、上側端子部品260の腕部265、266の長さ(前後方向長さであってB2よりも前方)は、下側端子部品280の腕部285、286の長さ(前後方向長さであって、矢印291位置よりも前方側)よりも長くなる。このような前後方向の長さが異なる腕部組であっても、上側端子部品260の嵌合部における嵌合圧が、下側端子部品280の嵌合圧と同一になることが好ましい。嵌合圧を均等にしないと電動工具本体1、30側の平板状の機器側端子との接触抵抗が変わって、わずかな発熱の違いが発生したり、長期にわたる使用による摩耗状況が異なる虞があるからである。本変形例では、上側端子部品260と下側端子部品280による嵌合圧のバランスをとるために、電池パックの非装着状態における初期隙間間隔が異なるようにした。即ち、電池パック100が電動工具本体1又は30に装着されていない状態(取り外し状態)において、左右の腕部265、266の最小間隔が、腕部285、286の間隔と異なる。ここでは上側端子部品260の腕部265と266の間隔が0.2mmであるのに対して、下側端子部品280の腕部285と286の最小間隔が0.5mmとなるようにした。
嵌合圧を均一にするために、上側端子部品260と下側端子部品280の形状にも工夫を施した。即ち、図14(2)に示すように、本来なら上側端子部品260では点線264bのようなほぼ直角の内角を形成すべきところ、ここでは点線264bの輪郭を矢印264eの方向に延ばして、側面視で二等辺三角形状の補強面264cが追加されるような形状とした。この結果、この内角部分の輪郭は矢印264dのように斜めになり、この形状変更によって上側端子部品の腕部265、266の取り付け剛性が向上する。上側端子部品260の内角部分の形状変更に合わせて、下側端子部品280の外角部分の形状を点線284bの部分から矢印284eの方向に切り落とすことにより、側面視で二等辺三角形状の切り落とし部284cを設けたような形状とした。この結果、この外角部分の輪郭は矢印284dのようになり、下側端子部品の腕部285、286の剛性を低下させた。矢印264dと矢印284dに示す輪郭部分は、側面視で互いにほぼ平行となるように一定の間隔を離すようにそれら輪郭が決定される。尚、切り落とし部284cを形成するとブリッジ部282の上下方向の長さが短くなってしまう。しかしながら、下側端子部品280は小さいため、上側端子部品260に比べて強度的にも十分強いので、これらの形状変更でちょうど強度的なバランスがとれる。このように上側端子部品260には補強面264cの追加をするという内角部分の形状を変更し、下側端子部品280には切り落とし部284cの形成による強度調整をするという外角部分の形状を変更することで、両者の強度のバランスをとり、腕部265と266、285と286による本体側端子への嵌合圧をほぼ同等にすることができた。
図14(3)は上側端子部品260と下側端子部品280を正面から見た図である。腕部265と266の上下方向の高さや取り付け位置、及び、腕部285と286の上下方向の高さや取り付け位置は、図5に示した第一の実施例の上側端子部品200と下側端子部品220の腕部群と同じ形状、同じ位置関係となる。但し、本変形例では使用する金属板材の厚さが異なり、図5で示す第一の実施例の端子部品よりも厚板を用いて製造される。さらには、電池パック100の非装着時の状態では、上下の腕部組の最小間隔が異なるようにした。つまり上側の腕部265と266の左右方向の間隔に比べて、下側の腕部285と286の左右方向の間隔が大きいように構成した。これは上下に並べて配置される腕部265と266、腕部285と286の、装着方向(前後方向)の長さとは逆比例させたような関係としたものである。長い腕部265と266は初期状態において狭い間隔で対向する。逆に短い腕部285と286は広い間隔で対向する。
以上のように、第1の変形例では、0.8mmの厚めの板厚の上側端子部品260と下側端子部品280を電力端子として用いるようにした。信号端子部品に関しては微小電流しか流れないので、従来の電池パック15と同様に0.3mm程度の厚さの金属板にて製造すれば良い。本変形例では大電流が流れる電力端子の剛性が一層向上し、作業中だけでなく長期の使用にわたって嵌合状況を良好に維持することができた。尚、上下の腕部組の嵌合圧をほぼ同じとするには、嵌合部の隙間の調整と、取り付け元付近の形状の変更だけに限定されずに、その他の変更、特に板厚の調整、端子部品の材料の選択等によっても達成可能である。
図15は本実施例の第2の変形例の上側端子部品260と下側端子部品280Aを示す斜視図である。第2の変形例では、図14で示した第1の変形例に対して上側端子部品260は同一であるが、下側端子部品280は板厚と腕部の初期間隔が異なる。即ち、下側端子部品280Aの板厚を、図14で示した下側端子部品280の0.8mmから0.6mmと薄くした上で、嵌合部285dと286dの間隔を図14で示した下側端子部品280の0.5mmから0.2mmと狭くした。上側端子部品260の嵌合部265d、266dの間隔は第1の変形例と同様に0.2mmである。このように、バネ性を有する腕部285、286の板厚と間隔を調整することによって、上側端子部品260の嵌合部265d、266dによる嵌合圧とほぼ同等にすることができる。ここでは、嵌合部265d、265dの形状は、半円筒面としたもので、円筒面の中心軸が鉛直方向に位置し、嵌合部265d、265dの内側の壁面は、曲率半径R1となる円筒面となる。下側端子部品280の嵌合部285dと286dの内側の壁面も、曲率半径R1となる円筒面となるように形成される。これら嵌合部265dと266d、及び、嵌合部285dと286dの嵌合面の円筒形状は、線状又は矩形状の接触部分の大きさや形状がほぼ同じとなるように、等しい曲率半径R1にて形成すると良い。このように接触部分や接触領域の大きさをも均一にしたことにより、挟み込む圧力(嵌合圧)をほぼ同等にするようにして、電気的な接触抵抗もほぼ同一とすると好ましい。
図16は本実施例の第3の変形例に係る上側端子部品200Aと下側端子部品220を示す斜視図であり、(1)はこれらが定格36Vの電動工具本体30Aの本体側端子に接続された状態を示す図である。第3の変形例では、上側端子部品200Aの形状、特に腕部205A、206Aの形状だけが第一の実施例と異なり、上側端子部品200Aの基体部と脚部の構成は第一の実施例と同一である。上側端子部品200Aは、上側正極端子161、162、上側負極端子167として用いられる。上側端子部品200Aは腕部205A、206Aを前方側に大きく延ばすようにして、上側の腕部205A、206Aの嵌合部の位置が、下側の腕部225、226の嵌合部の位置よりも前側に位置するようにした。対向する嵌合部の形状は、等しい曲率半径R1を有する半円筒面であって、腕部205A、206Aの嵌合部の形状と、腕部225、226の嵌合部の形状は同じである。腕部205A、206Aを延ばす場合は、この形状変更に対応させて36V側電動工具本体の正極端子72Aも従来よりも短めにする。短絡手段としてのショートバー79の大きさや板厚は、図6で示したショートバー59と同じである。しかしながら、ショートバー79の端子部79bの上部に半円形の切り欠き79dを形成した。この切り欠き79dは、何らかの理由で機器側端子の正極端子72Aと端子部79bが矢印45aのように円弧状に、又は水平方向に相対移動した場合に、端子部79bが上側の腕部205A、206Aに接触することを防止する為である。このようにショートバー79の端子部79bに切り欠き79dを形成したので、電池パック100が装着されて電動工具が動作している際に、電動工具本体30と電池パック100の共振周波数の違いに起因する相対的な位置ずれが生じたとしても、上側端子部品200Aと下側端子部品220の短絡が起こる虞を大幅に減らすことができる。
図16(2)は従来の電動工具本体1の本体側端子に接続された状態を示す図である。定格18Vの電動工具本体1側に装着する際には、正極入力端子22に2組の腕部205A、206Aと腕部225、226が嵌合する。この際、腕部205A、206Aの嵌合部による正極入力端子22への接触位置が、腕部225、226の嵌合部による正極入力端子22への接触位置よりも前方側にずれるようになる。しかしながらそれぞれの接触位置を含む近傍の正極入力端子22の厚さは均一であるので、接触部または接触領域の大きさが腕部205A、206Aによるものと、腕部225、226の嵌合部によるもので均等になるならば、良好な導通状態を実現できるので、接触位置の移動は何ら問題を生じないものである。
図17は本実施例の第4の変形例の上側端子部品200と下側端子部品220Aを示す斜視図であり、(1)はこれらが電動工具本体30Bの本体側端子に接続された状態を示す図である。第4の変形例では、下側端子部品220Aの腕部225A、226Aの形状だけが第一の実施例と異なり、その他の構成は第一の実施例と同じである。ここでは腕部225A、226Aを前方側に延ばすようにして、下側の腕部225A、226Aの嵌合部の位置が、上側の腕部205、206の嵌合部の位置よりも前方に位置するようにした。これに対応させてショートバー79の後端位置も従来よりも前方側にした。さらに、正極端子72Bの下部に半円形の切り欠き72dを形成した。この切り欠き72dは、何らかの理由で機器側端子の正極端子72Bと端子部79bが矢印45bに移動した場合に、切り欠き72dを設けたことによって正極端子72Bが腕部225A、226Aに接触する虞を大幅に減らすためである。
図17(2)は従来の電動工具本体1の本体側端子に接続された状態を示す図である。電動工具本体30側の正極入力端子22に2組の腕部205、206と腕部225A、226Aが嵌合する。ここでは腕部205、206による接触部位の位置と、腕部225A、226Aによる接触部位の位置の前後方向に距離Lだけ隔てることになる。しかしながら、接触部または接触領域の大きさが腕部205、206によるものと、腕部225A、226Aの嵌合部によるもので均等にしたので、第一の実施例と同様に良好な導通状態を実現できる。
図18は本実施例の第5の変形例に係る電動工具本体30A側のターミナル部の形状を示す斜視図である。第5の変形例では第一の実施例の正極端子及び負極端子の位置と、ショートバーの位置を上下逆にしたものである。ここでは、上側正極端子162と上側負極端子167がショートバー89によって短絡されるようにした。ショートバー89は、第一の実施例のショートバー59(図6参照)と同一部品を用いることができ、電動工具本体のターミナル部の合成樹脂製の基台に鋳込まれるようにすれば良い。正極入力端子82は、端子部82aと、接続部82bと、配線用端子部82cからなる点では、第一の実施例の正極入力端子52(図6参照)と同様であるが、配線用端子部82cを設ける位置が、ターミナル部の上面でなく後面側にせざるを得ないので、接続部82bと、配線用端子部82cの形状が変更されている。同様にして、負極入力端子87も配線用端子部87cの位置が異なる。ターミナル部における正極入力端子82と負極入力端子87の位置をずらしたことに合わせて、上位セルユニット146と下側セルユニット147との接続状態も変更される。即ち、下側正極端子172と上側負極端子167に上側セルユニット146に接続され、上側正極端子162と下側負極端子177に下側セルユニット147に接続される。
以上のようにショートバー89を設ける位置を変えても、本実施例の電圧自動切り替え機構付きの電池パックを実現できる。この構成に採用することにより、配線用端子部82c、87cの取り付け位置を、ターミナル部の上側に引き出す(図7参照)のではなくて、後側に引き出すことが可能となるので、電動工具本体側のターミナル部の設計の自由度が増すことになる。尚、ショートバー89の機能は、端子部89bと端子部89cを有し、これらを短絡させれば達成できるので、接続部89aの部分を金属の板で連結する必要性は無く、導電性部材にて電気的な接続関係を形成できるような方法、例えばリード線で接続する、ヒューズ素子によって接続する等の他の任意の方法で実現しても良い。
図19は本実施例の電池パック100を従来の電動工具本体1に接続した状態を示す回路図である。従来の電動工具本体1は、機器側の正極入力端子22と、負極入力端子27と、LD端子28を含んで構成される。正極入力端子22と負極入力端子27の間には、トリガスイッチ4と直流式のモータ5が接続される。モータ5と負極入力端子27の間には半導体によるスイッチング素子M101が設けられる。スイッチング素子M101のドレイン−ソースがモータ5の電力供給経路に接続され、ゲートが、抵抗R101を介して正極入力端子22に接続される。また、スイッチング素子M101のゲートは、抵抗R102を介してLD端子28に接続される。通常、電池パック100側のLD端子28はハイインピーダンス状態にある。その際には、スイッチング素子M101のゲートには、抵抗R101を介して正極電圧が掛かることになり、スイッチング素子M101は導通状態にある。この際、電池パック100側から、放電禁止信号341によってLD端子168がグランド電位に落とされると、スイッチング素子M101のゲート電位は、正極入力端子22の電圧を抵抗R101、R102で分圧した電圧となり、この分圧電位はスイッチング素子M101のソース−ドレイン間を遮断させる電位となる。この結果、モータ5への電力供給経路が遮断されるためモータ5の回転が停止する。このLD端子168の電位の切替えは、電池パック100側の制御部350の制御によって行われるもので、電池セルの電圧が所定値まで下がった状態、いわゆる過放電の状態の時や、電池セルに流れる電流が規定された上限値を越えた場合、電池セルの温度が上限値を超えた場合等に実行される。
電池パック100は、図4にて示したように上側正極端子(上+)162と、下側正極端子(下+)172と、上側負極端子(上−)167と、下側負極端子(下+)177を有して構成される。また、信号端子としてLD端子168を有する。電池パック100にはこれら以外に、その他の信号端子群(T端子164、V端子165、LS端子166)が設けられるが、ここではそれらの図示を省略している。上側正極端子162と下側負極端子177には、上側セルユニット146の出力が接続される。即ち、上側セルユニット146の正極(+出力)が上側正極端子162に接続され、上側セルユニット146の負極(−出力)が下側負極端子177に接続される。同様にして、下側セルユニット147の正極(+出力)が下側正極端子172に接続され、下側セルユニット147の負極(−出力)が上側負極端子167に接続される。
上側セルユニット146と下側セルユニット147は、リチウムイオン式の電池セルが直列に5本接続されたものである。上側セルユニット146と下側セルユニット147には、電池セルの電圧を監視するための保護IC300と制御部350が接続される。保護IC300は、上側セルユニット146の各電池セルの両端電圧を入力することにより、過充電保護機能、過放電保護機能の他、セルバランス機能、カスケード接続機能、断線検出機能を実行するもので、“リチウムイオン電池用保護IC”として市販されている集積回路である。保護IC300は上側セルユニット146の電圧から、保護ICの動作電源を得る電源回路を内蔵している。また、保護IC300は、上側セルユニット146の電池セルの電圧が所定値未満に低下して過放電状態になった場合は、過放電を示す信号(ハイ信号)305を制御部350に出力し、上側セルユニット146の電池セルの電圧が充電時に所定値以上に到達して過充電状態でなった場合は、過充電を示す信号(ハイ信号)306を制御部350に出力する。
下側セルユニット147には保護IC320が接続される。こここでは、下側セルユニット147の回路中、即ち下側正極端子172と上側負極端子167の間の回路中には、制御部350がさらに設けられる。つまり、上側セルユニット146と並列に設けられる保護回路が保護IC300だけで構成されるのに対して、下側セルユニット147と並列に設けられる保護回路は、保護IC320と制御部350により構成される。制御部350は、MCU(Micro Controller Unit、いわゆる「マイコン」)を含む。制御部350には、保護IC300からの出力(過放電信号305、過充電信号306)と、保護IC320からの出力(過放電信号325、過充電信号326)と、セル温度検出手段331からの信号が入力される。制御部350のマイコンには、例えばアナログ・フロント・エンド(AFE)と呼ばれる電圧検出回路を含み、電流検出回路327の出力電圧から下側セルユニット147に流れる電流値を測定する。制御部350の駆動用の電源は、下側セルユニット147に接続される電源回路321によって生成され、電源電源(VDD1)が制御部350に供給される。
下側セルユニット147のグランド側にはシャント抵抗329が設けられるが、上側セルユニット146側にはシャント抵抗を設けていない。これは、上側セルユニット146と下側セルユニット147が直列接続される場合は、シャント抵抗329だけで電流値が測定できるからである。一方、上側セルユニット146と下側セルユニット147が並列接続される場合は、上側セルユニット146側の実測電流値は測定できないことになる。しかしながら、制御部350は上側セルユニット146の電流値は、下側セルユニット147と同等であるとして監視を行えば良い。尚、上側セルユニット146のグランド側にシャント抵抗と電圧検出回路を設けて、制御部350のマイコンによって下側セルユニット147側の電流値も直接監視するように構成しても良い。
制御部350は、電流値やセル温度の監視を行うと共に、上側セルユニット146と下側セルユニット147の状態を監視して双方の動作状況を統合して制御する。また、電動工具本体1の緊急的な停止が必要となった場合には、放電禁止信号341を発してLD端子168の電位を変えることによって、LD端子28を介して電動工具本体1側に動作を停止させる。これらの制御部350による監視として最も重要なものは、上側セルユニット146、下側セルユニット147に含まれる電池セルに流れる電流量である。近年の電動工具においては、電池セルの性能向上、容量増大に伴い、電池パック100から大電流を取り出すことが可能となった。しかしながら寿命や発熱の面から、電池セルは所定の電流量(電流上限値以下)に制限することが好ましい。そこで制御部350は、電池セルに流れる電流を特に監視するために、下側セルユニット147の電力供給ラインの途中に介在されたシャント抵抗329と電流検出回路327を用いて、電流値を監視する。
保護IC320、制御部350、電源回路321、電流検出回路327等からなる下側セルユニット147の管理用の保護回路は、1チップ内に集積化して“電池管理IC”として構成されたものを用いても良い。一方、上側セルユニット146用の保護IC300は、従来の電池パック15(図1参照)にて広く用いられていると同じものを用いることができ、5セル用の“電池保護IC”として市販されているものである。保護IC320の動作は保護IC300とほぼ同様であり、下側セルユニット147内の電池セルの電圧が所定の下限値まで低下した状態(過放電状態)を検出した場合に過放電信号325を制御部350に送出する。また、図示しない外部の充電装置に電池パック100が装着されて、充電が行われている際に、保護IC320は電池セルの電圧が所定の上限値を越えたことを検出した場合に、過充電状態を示す過充電信号326を制御部350に送出する。制御部350は、LS端子166(図4参照)を介して図示しない充電装置に充電停止信号を送出する。以上説明したように、上側セルユニット146と下側セルユニット147にはそれぞれ電池セル用の保護回路が搭載されているので、きめ細かい電池監視による電池の保護が実現できる。
本実施例では上側セルユニット146の保護回路は保護IC300だけでマイコンを含まないのに対して、下側セルユニット147の保護回路には、保護IC300に加えてマイコンを含む制御部350を設けた。そして、電源回路321が下側セルユニット147を電力によって制御部350の動作用の電源を生成する。本実施例の電池パック100は、18Vと36Vの電圧切替式なので、上側セルユニット146側の保護回路にマイコンを搭載すると、2つのセルユニットの直列接続時と並列接続時において、制御部350のグランド電位が変わってしまう。一方、下段側に電源回路321を設けるのであれば電源回路321のグランド電位は変化しない。そこで、本実施例ではマイコンを搭載した制御部350を上側セルユニット146の回路中では無くて、下側セルユニット147の回路中に設けた。このマイコンの配置により、出力電圧を定格18Vと36Vの切替式としても安定してマイコンを含む制御部350を稼働させることできる。
マイコンを含む制御部350を、一方のセルユニット側の回路中にだけ設けることは、2つのセルユニット間の消費電力のアンバランスの問題が生ずる。制御部350による消費電力はきわめてわずかであるが、下側セルユニット147側の消費電力が、上側セルユニット146側の消費電力よりも大きいことになる。消費電力のアンバランス状態が長く続くことは、下側セルユニット147側の電位が上側セルユニットに対して低くなるので好ましくない。特に、上側セルユニット146と下側セルユニット147を並列接続させて定格18Vの出力をする際に、並列接続状態になった直後にセルユニット間の電圧不均衡により循環電流が流れるためである。そこで本実施例では、消費電力が少ない上側セルユニット146の回路中に下側セルユニット147との消費電流量を調整する機能をもたせた、消費電流制御手段310を設けた。消費電流制御手段310は、2つのセルユニットのうち消費電力の少ない側、ここでは上側セルユニット146と並列に介在させるものであって、集積化された保護IC300とは別の負荷回路として回路基板150(図4参照)に搭載される。
消費電流制御手段310は制御部350の稼働と連動して動作するように制御される。制御部350に含まれるマイコンは、自身にかかる電源電圧(VDD1)の保持と、解除を切替えることができ、通常動作状態(ノーマルモード)と動作停止状態(いわゆるスリープ状態)を有する。制御部350のマイコンが、電源電圧VDD1を保持している間は、制御信号として利用する起動端子301の状態を切り替えることによって保護IC300も動作状態にする。本実施例では消費電流制御手段310の回路を工夫して、制御部350のマイコンが、電源電圧VDD1を保持した状態になったら、連動して消費電流制御手段310に消費電力調整用の電流が流れるように構成し、さらに消費電流制御手段310が起動端子301の状態を切り替えるようにした。この結果、制御部350が起動すると同時に保護IC300も連動して起動する。制御部350の電源回路321は保護IC320と共用であるため、マイコンが起動すると保護IC320も同時に起動する。消費電流制御手段310によって制御部350が接続されるセル組(下側セルユニット147)と、その他のセル組(上側セルユニット146)で消費される消費電流が同じになる。
消費電流制御手段310は、FET等の複数のスイッチング素子M31〜M33と、複数の抵抗器(抵抗R31〜R35)を含んで構成される電気回路である。基本的な回路構成は、2つの疑似負荷となる抵抗R31、R34の直列接続が、セルユニット146の両端子間に接続されており、その回路をスイッチング素子M32によってオン又はオフの切替が行われる。スイッチング素子M32のソース端子は上側セルユニット149の正極に接続され、ドレイン端子は抵抗R31に接続される。スイッチング素子M32のゲート端子は、抵抗器R32とR35の接続点に接続される。抵抗器R32の一端はスイッチング素子M32のソース端子に接続され、他端はゲート端子に接続される。抵抗R35は一端がスイッチング素子M32のゲート端子に接続され、他端がスイッチング素子M33のドレイン端子に接続される。スイッチング素子M33は、制御部350に含まれるマイコンの電源電圧(VDD1)をゲート信号に入力させて、電源電圧VDD1に連動してオン又はオフの切替をする。スイッチング素子M33のソース端子は接地され、ソース端子とゲート端子間には、抵抗R33が接続される。抵抗R33は、ゲート信号の電圧変化によって安定してスイッチング素子M33が切り替わるように設けられるものである。このような消費電流制御手段310は、マイコンの電源電圧VDD1がオフの時は、スイッチング素子M33のゲート電位が0Vである。するとスイッチング素子M33はOFF状態になる。スイッチング素子M33はOFF状態にあると、スイッチング素子M32もオフ状態であるため、抵抗R31、R34による疑似負荷側への電流経路が遮断されため、消費電流制御手段310による電力消費はゼロである。この状態の時に保護IC300もオフになるようにするため、抵抗R31とR32の接続点の電位をゲート信号(動作信号302)として入力するスイッチング素子M31をさらに設けた。スイッチング素子M31のドレイン端子は、保護IC300の内蔵電源(図示せず)の起動端子301に接続され、ソース端子は上側セルユニット146の負極に接続される。動作信号302は消費電流制御手段310の稼働状態を示す信号であって、ローレベルの時は、消費電流制御手段310が稼働している、つまり制御部350のマイコンも稼働していることを示す。一方、消費電流制御手段310が稼働していない、つまり制御部350のマイコンが停止中の時は、動作信号302がローとなり、起動端子301がハイインピーダンス状態となるので、保護IC300は停止する。
上側セルユニット146の負極の電位(基準電位A)は、上側セルユニット146と下側セルユニット147の並列接続時にはグランド電位であるが、直列接続時には下側セルユニット147の正極電位と等しい。この接続状態において、抵抗R31に上側セルユニット146の電位が掛からないことは、スイッチング素子M31はオフとなるので、起動端子301は接続されていないハイインピーダンス状態となる。一方、スイッチング素子M32がオンになって疑似負荷に電流が流れる際には、抵抗R31とR32の分圧電圧がスイッチング素子M31のゲート端子に流れるため、スイッチング素子M31がオンになる。すると起動端子301が基準電位Aに接続されることになるので、保護IC300内の内蔵電源に電源が供給されることになり、保護IC300が起動する。以上のような接続形態にすれば、消費電流制御手段310によって下側セルユニット147側のマイコンの電力消費分を上側セルユニット146の回路内でも消費させることができる。さらに、消費電流制御手段310の可動、停止の切り替えに応じて、保護IC300自体の起動と停止制御も併せて行うことができる。よって、制御部350のマイコンは、下側セルユニット147の保護回路と上側セルユニット146の保護回路を連動して起動又は停止の制御を行うことができる。
マイコンの状態には、ノーマル、スリープ、シャットダウンの3段階がある。ノーマルはマイコンが常時起動している状態である。スリープはマイコンが自ら間欠的に起動するモードであり、50ミリ秒の起動後に5秒停止するというような動作を繰り返す。シャットダウンは、電源電圧VDD1が全く供給されない状態であって、マイコンが完全に停止している状態である。マイコンは、電池パック100が電動工具本体1に装着されている時も、装着されていないときも動作する。但し、電池パック100が装着されていない時や、装着時であっても電動工具が一定時間以上使用されていない時、例えば、トリガ操作が終了してから2時間程度トリガ操作が行われなかった場合は、マイコンはスリープ状態になる。このスリープ状態時であっても、消費電流制御手段310は、マイコンの起動に連動して動作を行い、また、消費電流制御手段310を介して保護IC300も起動する。電動工具本体1のトリガスイッチ4が引かれてモータ5に電流が流れると、制御部350のマイコンは、電流検出回路327によって検出される電流値の増加を検知してノーマル状態に復帰する。
本実施例では、複数設けたセルユニットのうち一つの保護回路中にだけマイコンを含めた構成にした場合に、電池パックの取り外し状態で長期間放置することによる複数のセルユニット間の電位差の拡大を、マイコンが設けられない他のセルユニットの保護回路にマイコン分の電力消費を行う消費電流制御手段310を付加して解決したので、複数のセルユニット毎の消費電流のバランスを調整することができ、長期にわたる保管後であってもセルユニット毎の電圧バランスが悪化しない電池パックを実現できた。
電池パック100には、電池残量を表示する残容量表示手段335が設けられ、残量表示用のスイッチ190(図4参照)が押された際に電池残量が4つの発光ダイオード(図示せず)の発光個数によって表示される。ここでは図示していないが、残量表示用のスイッチ190の信号が制御部350に入力され、制御部350のマイコンは残容量表示手段335の発光ダイオードの点灯制御を行う。ここで残容量表示手段335によって表示される電池残量は、上側セルユニット146と下側セルユニット147のうち、一方のセルユニットの両端電圧を基準に表示しても良いし、又は、10本の電池セルのうち最低の電圧値に基づいて表示させるようにしても良い。
制御部350には、上側正極端子162に接続される上側電圧検出回路322の出力が入力される。この出力は、電池パック100が電動工具本体1、30や外部充電装置(図示せず)に装着されていない場合は、上側セルユニット146の電位を示す。一方、低電圧(18V)用の電動工具本体1に装着された場合、上側正極端子162と下側正極端子172が接続されるため、上側セルユニット146と下側セルユニット147の各々の正極が同電位となり、各々の負極が同電位となる。このことから制御部350に含まれるマイコンは、上側正極端子162の電位と、下側正極端子172の電位を比較することによって、電池パック100が非装着の状態であるか、低電圧機器本体に装着されているか、高電圧機器に装着されているかを判別することができる。尚、下側正極端子172の電位検出のためには、下側セルユニット147内の電池セルのうち最上位の電池セル147aの正極電位を制御部350が取得できるように構成すると良い。このように下側セルユニット147の回路中に設けたマイコンは、電池パック100の上側セルユニット146と下側セルユニット147が直列接続されている状態(36V機器に装着されている状態)にあるか、又は、並列接続されている状態(18V機器の装着されている状態)にあるかを判断することができる。このようにして、マイコンは電源電圧を取得している範囲(下側セルユニット147内の電圧)を越えた上側セルユニット146側の電圧値も監視できるようにしたので、電圧切替方式の電池パック100の接続状態の判定と、判定された接続状態に応じた最適な制御を行うことができる。
LD端子168は、電池パック100側からの電動工具本体1を停止させる信号、又は、図示しない電池パックを電源とする電気機器の動作を停止させる信号を伝達するための端子である。LD端子168の状態を変更させるために、制御部350は半導体のスイッチング素子M41に入力されるゲート信号(放電禁止信号341)を通常のロー状態(電池パック100からの“放電許可”)から、ハイ状態(電池パック100からの“放電禁止”)に切り替える。スイッチング素子M41は、例えばP型の電界効果トランジスタ(FET)であって、ドレイン側がLD端子168に接続され、ソース側が接地される。このため、スイッチング素子M41の通常時(放電禁止信号341がロー)では、LD端子28はハイインピーダンス状態にあって、LD端子28の電位は電動工具本体1側の正極入力端子22の電圧とほぼ等しい。一方、制御部350からの制御により、放電禁止信号341がハイに切り替えられると、スイッチング素子M41のソース−ドレイン間が導通により接地されるため、電動工具本体1側のLD端子28の電位がグランド電位に落ちることになる。この結果、電動工具本体1側のスイッチング素子M101のゲート電位、即ち分圧抵抗R101とR102による分圧電位の低下によって、スイッチング素子M101のソース−ドレイン間が非導通状態になって、電動工具本体1の電力回路が遮断され、モータ5の回転が阻止される。このように、電池パック100の制御部350が発する放電禁止信号341によって電動工具本体1のモータ5の回転を阻止できるので、制御部350は、電池パック100からの電力供給を止めなければならない事態、例えば、放電時の過大電流、放電時のセル電圧の低下(過放電)、セル温度の異常上昇(過温度)等が生じた際に電動工具や電気機器の動作を素早く停止させることができ、電池パック100だけでなく電動工具本体1の保護を図ることができる。
図20は本実施例の電池パック100の回路図であり、本体側マイコン付きの18V用の電動工具本体1Aに接続した状態を示す図である。ここでは電池パック100側の内部構成は、図19で示したものと完全同一であり、電動工具本体1A側の構成だけが異なる。図19で示す電動工具本体1側にはマイコンが含まれていない。しかしながら、近年の電動工具においては、モータ5の制御にマイコンを有する制御部60を用いることが増えてきた。電動工具本体1Aには、電源回路61が含まれ、電源回路61によって生成される一定の低電圧(基準電圧VDD2)によって制御部60が動作する。制御部60にはマイコンが含まれ、マイコンによって電動工具本体1A内の種々の状態の監視や制御を行う。制御部60には電池電圧検出回路62の出力と、トリガスイッチ34の接続状態に応じてハイ又はロー信号を出力するスイッチ状態検出回路63が接続される。本実施例では正極入力端子22と負極入力端子27との間の電源経路中に、直流式のモータ35が設けられ、その回路中にはモータ35の回転のオン又はオフをするための動作スイッチ34が設けられる。モータ35と負極入力端子27との間には、半導体のスイッチング素子M101とシャント抵抗R111が挿入される。スイッチング素子M101は、例えばFET(電界効果トランジスタ)であって、そのゲート信号が制御部60によって送出される。シャント抵抗R111の両端電圧は電流検出回路64によって検出され、その値が制御部60に出力される。この回路図においては、モータ35はブラシ付きの直流モータとして図示されているが、公知のインバータ回路を用いて3相ブラシレスモータを駆動する構成としても良い。その場合は、図示しないインバータ回路に入力される電力経路中にスイッチング素子M101を直列に接続するか、スイッチング素子M101の代わりに制御部60がインバータ回路に含まれる図示しないスイッチング素子を制御することによりモータ35の回転を停止させれば良い。
電動工具本体1AのLD端子28は、抵抗R112を介して制御部60に接続される。抵抗R112の制御部60側にはさらに、基準電圧VDD2が抵抗R113を介して接続される。従って、LD端子28がハイインピーダンス状態の場合は、制御部60の入力線65にはVDD2に近い電圧が加わることになり、LD端子28がグランド電位に落ちた場合は、抵抗R113とR112の分圧電圧、即ち基準電圧VDD2よりも大幅に低い電圧が入力線65により制御部60の入力ポートに伝達される。制御部60はこの入力線65の電位の変化を検出して、スイッチング素子M101のゲート信号を制御して、モータ35への電力供給を許容又は停止させるように制御する。
このように電動工具本体1A側において、LD端子168、28を介して入力される放電禁止信号に従って、モータ35を停止させるようにする回路が設けられるが、電動工具本体1A側に制御部60を有する場合は、電池パック100側の制御部350が過電流の監視を行って電動工具本体1A側のモータ5を停止させるのでは無くて、電動工具本体1A側の制御部60が電流検出回路64を用いて過電流の監視を直接行う方が好ましい。電池パック100側の制御部350が過電流の監視を行う場合には、複数の電動工具本体に適用できるような平均的な制御条件(過電流の閾値)を設定せざるを得ない。しかしながら、電動工具本体1A側の制御部60が過電流の監視を行う場合には、電動工具本体1Aに最適な制御条件(過電流の高めの閾値)を設定できるので、制御部350が平均的な制御条件(過電流の低めの閾値)を設定することによる電動工具の出力制限を回避できる。この出力制限の回避は、今後発売される新型の電動工具において特に有効であり、新型の電動工具本体1Aの能力を最大限に生かした制御を実現できる。
本実施例では電池パック100側の制御部350が、電池パック100が装着された電動工具本体1又は1A側にマイコンを有する制御部60が含まれているか否かを判定し、判定結果に応じて電池パック100側の過負荷保護のための条件を変更するようにした。具体的には、図19のように電動工具本体1側にマイコンが含まれない場合は、低電圧出力時の過電流制限値をマイコン無し電動工具本体1A用の閾値、例えば20A(デフォルト値)に設定する。このデフォルト値をどの程度にするかは、用いられる電池セルの容量や性能に応じて適宜設定すれば良い。この過電流制限値は、従来の電池パック15で設定されていた値と同等にするので、従来のマイコン無し電動工具本体1Aを、本実施例の電池パック100を用いて駆動させることができる。一方、電動工具本体1A側にマイコンが含まれる場合は、低電圧出力時の過電流制限値を電池パック100側では設定しないようにし、過電流値の監視を電動工具本体1A側の制御部60のマイコンに任せるようにした。この結果、制御部60は使用されているモータ5の特性や、電動工具本体1A等の構成上の特性に沿った最適な電流監視が可能となり、電池パック100側において過電流制限値を制限しすぎることによる電動工具本体1Aが有する能力を有効に発揮できないという問題を回避できる。また、電動工具本体1Aは電池パック100の能力を最大限生かして、高出力の電動工具を実現できる。このように電池パック100側の過負荷保護のための条件を、低電圧側と高電圧側において変更することは、今後新たに販売される低電圧用の電動工具本体の更なる高出力化、更なる改良の余地を残しつつ、電動工具本体1Aに最適な過負荷保護を、電動工具本体側の制御部60が行うことができることを意味する。
電動工具本体1又は1A側に、マイコンを有する制御部60が含まれているか否かの判定のために、LD端子28に印加されている電圧値を検出するためのLD端子電圧検出回路328が新たに設けられる。LD端子電圧検出回路328は、接続線342によってLD端子168に接続され、LD端子電圧検出回路328は端子電圧に応じた出力を制御部350に出力する。制御部350に含まれるマイコンは、電池パック100が装着された後であって、放電禁止信号341が発せられていないときのLD端子電圧を測定することにより、電動工具本体側にマイコンを含む制御部60が存在するか否かを判定する。マイコンを持たない電動工具本体1の場合は、図19の回路図からわかるように、LD端子28には正極入力端子22とほぼ等しい電圧が印加される状態にある。制御部350のマイコンは、上側電圧検出回路322によって上側正極端子162の電圧を検出しているので、上側正極端子162の電圧とLD端子電圧を比較することにより、電動工具本体1にマイコンが含まれているか否かを判別できる。一方、図20の回路図からわかるように、マイコンを持つ電動工具本体1Aの場合は、LD端子28には、マイコンの駆動用の基準電圧VDD2(例えば5V又は3.3V)にほぼ等しい電圧が印加されている。よって制御部350のマイコンは、上側電圧検出回路322によって上側正極端子162の電圧と比較するまでも無く、LD端子電圧を検出するだけで電動工具本体1にマイコンが含まれることを容易に判別できる。以上のように、接続線342とLD端子電圧検出回路328を設けたことにより、制御部350は電動工具本体、又は、電気機器本体側にマイコン等の低電圧駆動の制御部が含まれる電子制御対応工具か、非対応工具かを容易に判断することができる。また、判断結果に応じて制御部350は、電池セル監視のための制御パラメータ、例えば過負荷保護条件を変更することができる。ここで、変更する制御パラメータの値は、マイコンに含まれる不揮発性メモリ内に予め格納しておいて、判断結果に応じて格納された値のいずれかを読み出してセットするようにすれば良い。
図21は高負荷に対応できる電動工具本体30に電池パック100を装着した状態の回路図である。高負荷に対応できる電動工具本体30の特徴点として、電池パック100の正極端子(162、172)と負極端子(167、177)のそれぞれに対応する機器側の端子(正極入力端子52、負極入力端子87、ショートバーの端子部59b、59c)を有することである。ショートバー59は、一方に端子部59bを有し、他方に端子部59cを有する金属部品であり、電池パック100が電動工具本体30側に装着されるとショートバー59によって下側正極端子172と下側負極端子177が短絡される。また、電動工具本体30の正極入力端子52は上側正極端子162に接続され、負極入力端子87は上側負極端子167に接続される。このようにそれぞれ2分割された本体側端子の形状を用いて、上側セルユニット146と下側セルユニット147の直列接続による出力、即ち定格36Vを得ることができる。電動工具本体30側の構成は、図20で示した電動工具本体1Aの内部構成とほぼ同じである。モータ45は定格36V用のモータであるが、図20で示したモータ35と同様に、インバータ回路を用いてブラシレスDCモータを駆動しても良い。モータ45への電力回路と直列にスイッチング素子M101が設けられる。スイッチング素子M101は、制御部60から出力されるゲート信号によってオン又はオフが制御され、スイッチング素子M101をオフにすることによりモータ45の回転が停止される。高電圧用の電動工具本体30においても、電池パック100側からの放電禁止信号341の送出手順は、図19、図20で示す回路と全く同じである。即ち、電池パック100側の制御部350の制御によりスイッチング素子M41のソース−ドレイン間が導通し、LD端子168がグランド電位に落とされると、その状態が制御部60に含まれるマイコンの入力ポートに伝達されるので、制御部60は電池パック100側からの放電禁止信号として検知することができる。しかしながら、36Vの電動工具本体1では、過電流による放電禁止制御は工具本体側の制御部60が行うようにして、電池パック100側では過電流に関しての監視に関与しないか、又は、過電流による停止の閾値を電池セルの限界値付近まで十分高くしておいて、制御部350のマイコンが実質的に電流値の監視に関与しなくてすむように構成した。この結果、電池パック100の更なる高出力化と、従来の電池パック15との互換性維持を良好に両立できる。
次に図22を用いて電池パック100の制御部350による、放電禁止信号の出力手順を説明する。図22に示す一連の手順は、制御部350にあらかじめ格納されたプログラムを用いてマイコンによってソフトウェア的に実行可能であって、電池パック100が起動したら自動的に実行される。最初にマイコンは、接続された電動工具本体が、低電圧(18V)用機器か高電圧(36V)用機器かを判断することにより、電池パック100の上側セルユニット146と下側セルユニット147が並列接続とされているか、直列接続とされているかを判断する(ステップ371)。直列接続の場合は、制御部350の制御パラメータとして、直列接続用のものをセットする(ステップ372)。また、並列接続の場合は、並列接続用の制御パラメータをセットする(ステップ373)。ここで、制御パラメータとしては、例えば、電流制限値Imax、充電時のセル電圧上限値Vmax、放電時のセル電圧下限値Vmin、セル温度の上限値Tmax等が考えられる。ここでは、並列接続時の放電時電流制限値Imaxを20Aとし、直列接続時の放電時電流制限値Imaxを無設定(制限値無し)、又は並列接続時に比べて大幅に大きい値(例えば40〜80A程度)に設定する。放電時のセル温度の上限値Tmaxは、直列接続又は並列接続に関係なく80℃である。放電時のセル電圧下限値Vminは、直列接続又は並列接続に関係なく2.5V/セルである。
次にマイコンは、下側セルユニット147に含まれる電池セルの各電圧の監視結果から、所定値たるセル電圧下限値Vmin、以下になっている電池セルが存在するかどうかを判定する(ステップ374)。ここでいずれかの電池セルにおいて、セル電圧下限値Vmin以下が存在する場合はステップ378に進む。すべてのセル電圧が、セル電圧下限値Vminより大きい場合は、次に、保護IC300側からの過放電信号305がハイになっているか否かを判定する(ステップ375)。過放電信号がハイになっているとは、上側セルユニット146のいずれかの電池セルがセル電圧下限値Vmin以下にあるということであるので、その場合はステップ378に進む。ステップ375にてNoの場合は、電流検出回路327によって検出されたピーク電流値が、所定の閾値I1以上であるか否かを判定する(ステップ376)。ここでピーク電流値Iの検出は、純粋にピーク電流の瞬間値を監視しても良いし、ある程度の時間窓を区切ってその時間窓内の平均電流で検出することにより尖塔状に突出するような電流の影響を除外するようにしても良い。尚、上側セルユニット146と下側セルユニット147が直列接続されている状態であって、セル電流制限値Imaxを設定していない場合は、ステップ376はスキップしてステップ377に進む。
次に、セル温度検出手段331にて検出された電池温度が、所定の閾値T1以上であるかを判定する(ステップ377)。ここでは上側セルユニット146と下側セルユニット147の双方にそれぞれサーミスタTH1、TH2を設けて温度を測定し、いずれかの温度が閾値T1以上となったらステップ378に進む。ステップ377にて双方の温度が閾値T1未満の場合は、ステップ371に戻り、閾値T1以上の場合は、制御部350のマイコンは電動工具本体1、1A、30のモータ5、35、45を停止させるべく放電禁止信号341を送出して、スイッチング素子M41をオンにすることにより、LD端子168をグランド電位に落とした後で、ステップ371に戻る(ステップ378)。以上の手順を繰り返すことにより、制御部350は電池セルの状態を監視し、必要に応じて放電禁止信号341によって電池パック100が装着された電動工具や電気機器の稼働状態を停止させることができる。
次に、図23を用いて電池パック100の残容量表示手段335と上側電圧検出回路322の具体的な回路構成を説明する。図23は、残容量表示手段335の構成と上側電圧検出回路322の構成部分を詳細に記載したもので、電池パック100側のその他の構成は図19〜図21の電池パック100と同一である。制御部350のマイコンには入出力ポート(Input Output Port)群353を有し、それらのうち4つの入出力ポートが、残容量表示手段335内の発光ダイオードLD0〜LD3に接続される。また、残容量表示手段335内には電源電圧VDD1と各発光ダイオードLD0〜LD3の間にスイッチング素子M0が設けられ、4つの入出力ポートIO0〜IO3のうち1つの入出力ポートIO0がゲートに接続される。また、4つの入出力ポートのうち他の一つ(IO3)には、スイッチング素子M3のゲート端子に接続される。スイッチング素子M3は、スイッチング素子M4のソース−ドレイン間を接続又は遮断させる制御用に用いられる。
上側電圧検出回路322の基本構成は抵抗R6とR7によって構成され、これらの中間電位が、上位セルユニットの電圧(上位電圧検出)として、制御部350の入力ポートAN0に入力される。抵抗R6と上側正極端子162との間には、FETからなるスイッチング素子M4が介在される。スイッチング素子M4のゲート端子は、入出力ポートIO3によってオンオフ制御されるスイッチング素子M3のドレイン端子に接続される。つまり、発光ダイオードLD3が消灯時に、入出力ポートIO3がオフになるとスイッチング素子M3がオフになるため、M4のゲート電位がハイのままであるので、上位電圧検出がマイコンの入力ポートAN1に入力される。入力ポート群352(AN0、AN1等)は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換機能を有する。一方、発光ダイオードLD3を点灯させるべくIO3をハイにすると、スイッチング素子M3がオフになるため、スイッチング素子M4のゲート端子がグランド電位におちるため、ソースドレイン間が遮断される。以上のように接続することにより、制御部350は、入力ポートAN1を用いて上側正極端子162の電圧を検出することが可能となる。
以上のように、制御部350には上側正極端子162の電圧を入力する入力ポートAN0に加えて、セル温度検出手段331の出力を入力させる入力ポート2つの合計3つのポートAN1、AN2が必要となる。セル温度検出手段331には、上側セルユニット146の温度を測定するサーミスタと、下側セルユニット147の温度を測定するサーミスタの2つが含まれる。しかしながら、これら上側正極端子162の電圧、サーミスタTH1の出力、サーミスタTH3の出力の3つを入力させるために3つの入力ポートAN0〜AN3を有するマイコンを準備するには、マイコンのコストアップや、チップサイズの大型化に繋がってしまう。そこで、これら3つの入力を1つの入力ポートAN1で共用するように工夫したのが図24の構成である。
図24は制御部350内のマイコン351の入出力回路図である。図24において、マイコン351は、入力ポート群352と、入出力ポート群353を有する。入力ポート群352は入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有し、そのうちの一つの入力ポートAN1が、サーミスタTH1とTH2、上側電圧検出回路322Aからの信号入力用として接続される。入出力ポート(Input Output Port)群353は、入力ポートと出力ポートを兼用する入出力兼用ポートであって、ここでは入出力ポートIO0〜IO3の4つが発光ダイオード(LD0〜LD3)にそれぞれ接続される。入出力ポートIO0には、発光ダイオードLD0〜LD4への電源(VDD1)の供給のON/OFF制御を行うためのスイッチング素子M0が接続される。スイッチング素子M0のゲート−ソース間には、抵抗R5が接続され、スイッチング素子M0と抵抗R5が、発光ダイオードLD0〜LD4の点灯又は消灯を制御する切替手段364となる。入出力ポートIO1〜IO3は発光ダイオードLD1〜LD3に接続されると共に、スイッチング素子M1〜M3のゲート端子にそれぞれ接続される。
2つのサーミスタTH1、TH2は、一方の端子が共通の抵抗Raを介してマイコン351の基準電圧VDD1に接続され、他方がスイッチング素子M1、M2を介してグランドに接続される。サーミスタTH1、TH2は、例えば、温度が上がると抵抗値が下がる特性を有するNTCサーミスタであって、電池セルの近傍に配置することによりマイコン351が電池セルの温度を測定する。ここではサーミスタTH1を上側セルユニット146の近傍に配置し、サーミスタTH2を下側セルユニット147の近傍に配置すると良い。スイッチング素子M1、M2は電気的にオンまたはオフを切り換えることができる半導体スイッチであり、ドレイン端子がサーミスタTH1、TH2の一方の端子に接続され、ソース端子がグランドに接続される。スイッチング素子M3のドレイン端子は、抵抗Rbを介して上側電圧検出回路322Aに接続される。これらスイッチング素子M1〜M3のゲート端子はマイコン351の入出力ポートIO1〜IO3にそれぞれ接続され、
ソース端子は接地される。スイッチング素子M1〜M3のゲート端子とソース端子間には入出力ポートIO1〜IO3がオープンになった場合にゲート−ソース間を0ボルトにするために接地抵抗R6〜R8がそれぞれ設けられる。
4つの発光ダイオードLD0〜LD4は、任意の色のものを用いることができ、ここでは緑色又は赤色のものを用いる。発光ダイオードLD0〜LD4の回路中には、電流制限用の抵抗R0〜R3が直列に接続される。抵抗R0〜R3は同一抵抗値のものを用いることができる。ここで入出力ポートIO0は、スイッチング素子M0のゲート端子への接続と、発光ダイオードLD0への接続が共通に行われる。このように入出力ポートIO0へ、スイッチング素子M0と発光ダイオードLD0を並列接続したことにより、入出力ポートIO0をハイ又はローのいずれかに設定することができ、点線で囲む回路を発光ダイオードLD0〜LD3全体の点灯をさせるか否かを切り換える切替手段364として利用できる。その他の発光ダイオードLD1〜LD3を点灯させるには、発光ダイオードLD0を点灯させた状態で、さらに入出力ポートIO1〜IO3の出力をロー(グランド電位)にすることにより点灯できる。
入出力ポートIO1〜IO3は、発光ダイオードLD0〜LD3が消灯している際に、サーミスタTH1、TH2、上側電圧検出回路322Aのいずれかの信号の一つを選択して、入力ポートAN1に入力させる。即ち、入出力ポートIO0をローとして、その際に入出力ポートIO1〜IO3の出力のいずれか一つをハイに切り換えることにより、サーミスタTH1、TH2、上側電圧検出回路322Aの出力を入力ポートAN1に択一的に入力させることができる。また、発光ダイオードLD0〜LD3のいずれかが点灯している際であっても、サーミスタTH1、TH2、上側電圧検出回路322Aの出力をマイコン351が取得する期間だけ入出力ポートIO0の信号をハイインピーダンス状態とすれば、これらの出力を時系列に入力ポートAN1に順次入力させることができる。この入力ポートAN1への入力の際に、すべての発光ダイオードLD0〜LD3が消灯状態となるが、消灯中にサーミスタTH1、TH2による温度検出、又は、上側電圧検出回路322Aによる電圧検出を済ませて、再び発光ダイオードLD0〜LD3をもとの点灯状態に戻す。即ち、発光ダイオードの消灯→サーミスタTH1による検出→発光ダイオードを一定時間再点灯してから消灯→サーミスタTH2による検出→発光ダイオードを一定時間再点灯してから消灯→上側電圧検出回路322Aによる電圧検出→発光ダイオードの再点灯、のような手順が繰り返される。このサーミスタTH1、TH2による温度検出、上側電圧検出回路322Aによる電圧検出に要する時間は、例えば1ミリ秒であり、これらの検出を50ミリ秒間隔で順に行われるようにすれば、消灯した1ミリ秒の後に49ミリ秒点灯時間が存在するので、150ミリ秒の間に3つのサーミスタTH1、TH2による温度検出と、上側電圧検出回路322Aによる電圧検出を完了させることができる。この際に発光ダイオードLD0からLD3のいずれかの点灯を行っている際であると、50ミリ秒毎に発光ダイオードの1ミリ秒の消灯が含まれることになるが、この程度の消灯間隔であれば人間の目からは連続点灯と同じように感じるので、一時的な消灯は問題にならない。
図25は、図24における入出力ポートIO0〜IO3と、各出力機器による出力状態の対応関係を示す表である。縦軸は発光ダイオード(LED)の点灯状態と、サーミスタTH1、TH2による検出と上側電圧検出回路322Aによる電圧検出状態を示し、その際の入出力ポート群53の信号レベルを欄353a、353bにて示している。ここでは例えば、電池容量が25〜50%の場合は発光ダイオードLD0だけを点灯し、50%〜75%の場合は発光ダイオードLD0、LD1の2つを点灯し、75%から100%未満の場合は発光ダイオードLD0〜LD2の3つを点灯し、満充電状態の場合は発光ダイオードLD0〜LD3の4つを点灯する。まず発光ダイオードLD0〜LD3を点灯させる制御を説明する。発光ダイオードLD0だけを点灯(LD0:ON)させるには、欄353aの2行目に示すように入出力ポートIO0だけロー(グランド電位)にして、IO1〜IO3をハイインピーダンス状態にする。発光ダイオードLD0、1の2灯を点灯(LD0、1:ON)させるには、欄353aの3行目に示すように入出力ポートIO0、IO1をローにして、IO2、IO3をハイインピーダンス状態にする。発光ダイオードLD0〜2の3灯を点灯(LD0、1、2:ON)させるには、欄353aの3行目に示すように入出力ポートIO0〜IO2をローにして、IO3だけをハイインピーダンス状態にする。発光ダイオードLD0〜4のすべてを点灯(LD0、1、2、3:ON)させるには、欄353aの5行目に示すように入出力ポートIO0〜IO3をすべてローにする。このように制御することによって、発光ダイオードLD0〜LD3の点灯により電池電圧の残量表示を行うことができる。尚、欄353aにて示すように入出力ポートIO0をハイインピーダンスとすれば、発光ダイオードLD0〜LD3のすべてを消灯させることができる。
サーミスタTH1、TH2による温度検出の際には、欄353bに示すように入出力ポート群353のうち、入出力ポートIO0をハイにすると共に、対応するサーミスタTH1、TH2のいずれか一つの信号レベルをハイ(VDD電位)にすれば良い。例えば、サーミスタTH1による検出の際にはIO1をオンにすれば、スイッチング素子M1がオンになって、サーミスタTH1の両端に所定の電圧がかかり、マイコン351は入力ポートAN1からサーミスタTH1の電圧値を検出することができる。サーミスタTH2による検出の際にはIO2をオンにすればスイッチング素子M2がオンになって、マイコン351は入力ポートAN1からサーミスタTH2の電圧値を検出することができる。上側電圧検出回路322Aによる電圧検出の際には、入出力ポートIO0をハイにすると共にIO3をオンにすればスイッチング素子M3がオンになって、マイコン351は入力ポートAN1からサーミスタTH3の電圧値を検出することができる。この際、入出力ポートIO1とIO3はローとしておく必要がある。このようにIO0の信号はいずれの状態においてもハイのままとした状態で、IO1〜IO3の信号レベルをローからハイに順次切り替える。尚、入出力ポートIO0をハイではなくて、消灯状態たるハイインピーダンス状態にしても、サーミスタTH1、TH2による温度検出と、上側電圧検出回路322Aによる電圧検出を択一的に行うことができる。以上のように、入出力ポートIO1〜IO3の信号を用いて、入力ポートAN1に複数の入力信号を、切り替えながら入力させるので、必要とされる入力ポートAN1を1つで済ませることができ、入力ポート数を節約することができる。