JP6925003B2 - 非相同末端連結欠損細胞及びその利用 - Google Patents

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本発明は、非相同末端連結の機能が阻害された細胞、特には、非相同末端連結及びポリメラーゼθの機能が阻害された細胞、及びポリメラーゼθ阻害剤のスクリーニング等における該細胞の利用に関する。
ポリメラーゼθ(POLθ、POLQとも呼ばれる)は、細胞に存在するDNAポリメラーゼのうちのひとつであり、損傷乗り越えDNA合成活性を持つ。乳がん(特にトリプルネガティブ乳がん)、非小細胞肺がん、胃がん、大腸がん、口腔扁平上皮がん、卵巣がん等の多くのがんでポリメラーゼθの発現レベルが上昇しており、悪性度、予後と高い相関がみられることが近年報告されている(非特許文献1〜5)。また、ポリメラーゼθの発現抑制はがん細胞特異的に放射線増感作用を発揮するとの報告もある(非特許文献6)。これらの知見より、ポリメラーゼθの阻害が各種のがんの治療等に有効であると期待されている。
マウスではポリメラーゼθ遺伝子のノックアウトマウスが樹立されている(特許文献1)。特許文献1には、ポリメラーゼθ遺伝子の抑制と免疫疾患との関係が開示されているが、ポリメラーゼθ特異的阻害剤のスクリーニングに有用なツールは開示されていない。
一方、ベクターDNAのゲノム中へのランダムな挿入を効率的に抑制し、遺伝子ターゲティング効率を上昇させる技術として、アカパンカビ(ニューロスポラ属)等の糸状菌細胞において所定の遺伝子の機能を喪失させることにより非相同末端連結(non-homologous end joining; NHEJ)を抑制する手法が開示されている(特許文献2)。しかしながら、ヒトなどの哺乳動物細胞においては、相同組換えによらないランダム挿入の頻度が糸状菌細胞と比べてはるかに高く、またNHEJとは異なるさらなる非相同的組換え経路が存在することがわかっており、特許文献2と同様の手法を動物細胞に適用しても遺伝子ターゲティングの効率を上げることはできない。また、近年の研究から、ポリメラーゼθがNHEJとは異なる非相同的組換え経路に関わっている可能性が示唆されているが(非特許文献5)、遺伝子ターゲティングとの関連についての報告はなされていない。
特開2006−141329号公報 特許第4050712号
Lemee F et al. (2010) Proc Natl Acad Sci USA 107(30):13390-13395 Kawamura K et al. (2004) Int J Cancer 109(1):9-16 Allera-Moreau C et al. (2012) Oncogenesis 1:e30 Pillaire MJ et al. (2010) Oncogene 29(6):876-887 Ceccaldi R et al. (2015) Nature 518(7538):258-262 Higgins GS et al. (2010) Cancer Res. 70(7):2984-2993
本発明は、ポリメラーゼθの特異的阻害剤のスクリーニングに有用な手段を提供することを目的とする。また、ランダム挿入頻度が極めて高く、遺伝子ターゲティングが困難なヒトなどの動物細胞においても、ランダム挿入を抑制し、遺伝子ターゲティングの効率を大幅に向上させることができる手段を提供することをさらなる目的とする。
本願発明者は、鋭意研究の結果、NHEJの欠損に加えてポリメラーゼθ遺伝子を欠損させることにより、ヒトなどの哺乳動物細胞においてもランダム挿入の発生を抑制し、極めて高い効率で遺伝子ターゲティングを達成できることを見出した。さらに、NHEJが阻害された動物細胞、とりわけNHEJが欠損し且つポリメラーゼθ遺伝子をヘテロで欠損した動物細胞が、ポリメラーゼθのノックダウンによるランダム挿入頻度の低下を観察しやすく、またNHEJ欠損細胞にさらにポリメラーゼθ欠損を組み合わせることでDNA二本鎖切断誘発剤エトポシドに対する感受性が増大することから、これらの特性を利用してポリメラーゼθ阻害剤をスクリーニングできることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、DNAリガーゼIV及びXRCC4から選択される少なくとも1種の非相同末端連結関連遺伝子の機能が阻害され、かつ、ポリメラーゼθ遺伝子がホモで破壊されている動物培養細胞を含む、相同組換え実験用、ゲノム改変実験用、又は遺伝子ターゲティング実験用の細胞を提供する。
また、本発明は、化合物の共存下及び非共存下において、動物培養細胞にマーカー遺伝子を含むDNA構築物を導入し、該細胞のゲノムへのDNA構築物のランダムな挿入を生じさせる工程;マーカー遺伝子の発現を指標として、化合物共存下でのDNA構築物の挿入頻度、及び化合物非共存下でのDNA構築物の挿入頻度を調べる工程; 化合物共存下の挿入頻度が化合物非共存下の挿入頻度よりも低下した化合物を、ポリメラーゼθ阻害剤候補化合物として選択する工程を含む、ポリメラーゼθ阻害剤のスクリーニング方法であって、前記動物培養細胞は、DNAリガーゼIV及びXRCC4から選択される少なくとも1種の非相同末端連結関連遺伝子の機能が阻害されている細胞である、方法を提供する。
さらに、本発明は、DNA二本鎖切断処理を施した動物培養細胞を化合物の共存下及び非共存下で培養し、細胞の生存率を調べる工程;化合物共存下の細胞生存率が化合物非共存下の細胞生存率よりも低下した化合物を、ポリメラーゼθ阻害剤候補化合物として選択する工程を含む、ポリメラーゼθ阻害剤のスクリーニング方法であって、前記動物培養細胞は、DNAリガーゼIV及びXRCC4から選択される少なくとも1種の非相同末端連結関連遺伝子の機能が阻害されている細胞である、方法を提供する。
さらに、本発明は、DNAリガーゼIV及びXRCC4から選択される少なくとも1種の非相同末端連結関連遺伝子の機能が阻害され、かつ、ポリメラーゼθ遺伝子がホモで破壊されている動物培養細胞にターゲティングベクターを導入し、該細胞内で相同組換えを生じさせることを含む、ゲノムが改変された動物培養細胞の製造方法を提供する。
本発明により、生細胞を利用してDNAポリメラーゼθを阻害する物質を効果的にスクリーニングできる手段が提供される。本発明のスクリーニング方法を活用することで、特異性の高い阻害剤の開発の加速化も期待できる。相同組換えに異常のある細胞はポリメラーゼθを失うと致死となることから、ポリメラーゼθの活性を阻害する化合物は、相同組換えに異常を持つ様々ながんに対して殺細胞効果が期待でき、効果的で副作用の小さい抗がん剤として非常に有望である。ポリメラーゼθ阻害剤は単独でも十分な抗がん効果を期待できるが、ポリメラーゼθ発現抑制によりがん細胞に特異的に放射線増感作用がみられることが知られていることから、放射線やエトポシド、ブレオマイシン、PARP阻害剤(例えばオラパリブ)等との併用によりさらに高い抗がん効果を得ることができると期待される。また、NHEJとポリメラーゼθの両者を欠損させることで遺伝子ターゲティングの効率を格段に向上できることから、本発明はゲノム改変(ゲノム編集)技術にも応用可能である。
ポリメラーゼθ(POLθ/POLQ)遺伝子破壊用ターゲティングベクターの構成、及び該ベクターによるPOLQホモ欠損株の作出の概要を説明する図である。 野生型のNalm-6細胞(●)、LIG4-/-POLQ+/+細胞(■)、LIG4-/-POLQ-/-細胞(▲)の細胞増殖能を調べた結果である。 野生型のNalm-6細胞(●)、LIG4-/-POLQ+/+細胞(■)、LIG4-/-POLQ-/-細胞(▲)のエトポシド感受性を調べた結果である。 野生型のNalm-6細胞(WT)、LIG4-/-細胞、LIG4-/-POLQ+/-細胞及びLIG4-/-POLQ-/-細胞を用いてインテグレーションアッセイを行ない、インテグレーション頻度を調べた結果である。 野生型のNalm-6細胞(WT)、LIG4-/-細胞、LIG4-/-POLQ+/-細胞及びLIG4-/-POLQ-/-細胞において、siRNAによるPOLQのノックダウンがインテグレーション頻度に与える影響を調べた結果である。 実施例で構築したハイスループットのインテグレーションアッセイ系において使用する、ルシフェラーゼ遺伝子を含む2種類の非ターゲティングベクター(左)と、薬剤選択用プラスミド(右)の構造模式図である。 ルシフェラーゼ遺伝子を含む非ターゲティングベクターを細胞内に導入した野生型Nalm-6細胞とLIG4-/-POLQ-/-細胞を培養し、経時的にルシフェラーゼ活性を測定した結果である。
本発明において、培養細胞とは、生物体から分離された細胞を意味する。動物培養細胞には、各種の動物から分離された細胞が包含される。具体例としては、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、サル、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ等から分離された哺乳動物培養細胞を挙げることができ、最も典型的な例としてヒト培養細胞を挙げることができるが、これらに限定されない。細胞はいかなる組織の由来であってもよい。典型的には体細胞由来であり、胚性幹細胞や人工多能性幹細胞などの幹細胞や、幹細胞を分化させた細胞も包含される。
本発明において、非相同末端連結(non-homologous end joining; NHEJ)の機能の阻害とは、NHEJにおいて機能するタンパク質又は遺伝子の機能の阻害をいう。以下、NHEJで機能するタンパク質を「NHEJ関連タンパク質」、NHEJで機能する遺伝子を「NHEJ関連遺伝子」ということがある。
遺伝子の機能を阻害するとは、その遺伝子が本来コードしているmRNA又はタンパク質の生成若しくは蓄積を低下若しくは消失させること、又は、対象とする動物培養細胞において、その遺伝子が本来コードしているmRNA若しくはタンパク質の生成が消失若しくは低下するように、ゲノム上の対象遺伝子領域の少なくとも一部を改変することをいう。変異又は遺伝的改変によるNHEJの機能の阻害といった場合には、上記した遺伝子の機能の阻害のうちの後者を意味する。特定の遺伝子の機能を阻害するための遺伝的改変方法はこの分野で広く知られており、当業者であれば適宜選択して実行できる。アンチセンス法やRNA干渉法などによるノックダウンでもよいし、遺伝子破壊(ノックアウト)でもよい。
タンパク質の機能を阻害するという語には、該タンパク質をコードする遺伝子の機能を阻害することの他、そのタンパク質の阻害剤で対象細胞を処理することが包含される。遺伝子の機能の阻害とは、上記定義の通りである。例えば、NHEJ関連タンパク質の機能の阻害という語には、該NHEJ関連タンパク質を阻害する阻害剤による処理、及び該NHEJ関連タンパク質をコードする遺伝子の機能の阻害が包含される。また、ポリメラーゼθの機能の阻害とは、ポリメラーゼθ阻害剤による処理、及びポリメラーゼθ遺伝子の機能の阻害が包含され、変異又は遺伝的改変によるポリメラーゼθの阻害といった場合には、ポリメラーゼθ若しくはそれをコードするmRNAの生成が消失若しくは低下するように、ゲノム上のポリメラーゼθ遺伝子領域の少なくとも一部を改変することをいう。
NHEJとは、DNA二本鎖切断(DNA double-strand break; DSB)の修復機構の1つである。動物細胞のDSB修復機構には、相同組換えによる修復と相同組換えによらない末端結合による修復という、2つの主要な経路が存在する。NHEJは、後者の相同組換えによらない修復機構である。近年では、後者のさらなる経路として、alternative end-joiningの存在も報告されており、ポリメラーゼθがNHEJには関与しておらずalternative end-joining経路で働いている可能性が示唆されているが(非特許文献5)、その詳細はわかっていない。
NHEJで機能する遺伝子として、以下の遺伝子が知られている(それぞれ、ヒト遺伝子のNCBI Gene IDと、Accession No.の一例を併記する)。本発明において機能を阻害すべきNHEJ関連遺伝子の具体例としては、これらから選択される遺伝子を挙げることができる。
DNAリガーゼIV(LIG4)(Gene ID: 3981, Accession No. NM_206937)
Ku70/XRCC6(Gene ID: 2547, Accession No. NM_001469)
Ku80/XRCC5(Gene ID: 7520, Accession No. NM_021141)
DNA-PKcs(Gene ID: 5591, Accession No. NM_006904)
Artemis(Gene ID: 64421, Accession No. NM_001289079)
XLF(Gene ID: 79840, Accession No. NM_024782)
XRCC4(Gene ID: 7518, Accession No. NM_001318012)
PAXX(Gene ID: 286257, Accession No. NM_183241)
DNAポリメラーゼλ(Gene ID: 27343, Accession No. NM_001174084)
DNAポリメラーゼμ(Gene ID: 27434, Accession No. NM_013284)
53BP1(Gene ID: 7158, Accession No. NM_005657)
PNKP(Gene ID: 11284, Accession No. NM_007254)
PALF(Gene ID: 200558, Accession No. NM_173545)
TDP1(Gene ID: 55775, Accession No. NM_018319)
TDP2(Gene ID: 51567, Accession No. NM_016614)
Aprataxin(Gene ID: 54840, Accession No. NM_001195249)
WRN(Gene ID: 7486, Accession No. NM_000553)
NHEJは、DSBの末端にKu70及びKu80からなるKuヘテロ二量体が結合することにより開始される。この反応は53BP1によって正に制御されている。Kuヘテロ二量体がDSB末端に結合すると、さまざまなNHEJ関連タンパク質がリクルートされる。各末端にXRCC4とXLFからなるフィラメントが形成されるとともに、DNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA-dependent protein kinase catalytic subunit; DNA-PKcs)やArtemisヌクレアーゼ、ポリヌクレオチドキナーゼフォスファターゼ(PNKP)、DNAポリメラーゼλ/μなどによって末端のプロセシングが行われる。損傷の種類によってはPALFやTDP1、TDP2、Aprataxin、WRNなどの因子もこの反応に関与しうる。末端プロセシングが行われた後、LIG4/XRCC4複合体により末端が再連結され、修復が完了する。XLFとPAXXは再連結反応の促進に関わる(Lieber MR. (2010) Annu Rev Biochem 79:181-211; 黒沢及び足立、Isotope News, 2014年5月号, No.721, p.8-14; Saito S et al. (2016) J Hum Genet, in press.)。
NHEJの機能の阻害は、NHEJによる最終的な連結反応が生じなければよく、いずれのステップを阻害するものであってもよい。NHEJ関連遺伝子の中でも、非相同末端連結の機能の阻害をもたらす好ましい例として、LIG4、KU70、KU80、XRCC4、及びDNA-PKcsから選択される遺伝子、又はLIG4、XRCC4、及びDNA-PKcsから選択される遺伝子を挙げることができる。LIG4はNHEJに必要不可欠な遺伝子であり、LIG4欠損によりNHEJが欠損することが知られている(上掲の黒沢及び足立、Isotope News, 2014年など)。KU70、KU80、XRCC4は、これらの少なくとも1つを欠損することで糸状菌細胞のNHEJ能が大幅に失われることが知られており(特許文献2)、ヒトなどの動物細胞においても同様にNHEJの阻害に有用である。DNA-PKcsは下等生物には存在しないが、ヒトなどの高等生物においては重要なNHEJ因子として知られており、NU7026などのDNA-PKcs阻害剤も広く用いられている。なお、KU70及びKU80はヒト細胞では必須遺伝子であり、ノックアウト細胞は致死となるため、ヒト細胞でKU70又はKU80の機能を阻害する場合には、コンディショナルノックアウトやノックダウンにより機能を阻害することが望ましい。
NHEJ関連遺伝子の少なくとも1種の機能を阻害することにより、細胞におけるNHEJの機能を阻害することができる。本発明の動物培養細胞において、NHEJ関連遺伝子の阻害の態様としては、ゲノム上の全てのアレルの破壊が特に好ましい。
本発明の動物培養細胞は、NHEJの機能の阻害に加えて、ポリメラーゼθ(POLθ、POLQとも呼ばれる。Gene ID: 10721)の機能が変異又は遺伝的改変により阻害されていてもよい。配列番号30に示す塩基配列は、GenBankにアクセッション番号NM_199420で登録されているPOLθのmRNA(cDNA)配列である。
Figure 0006925003
POLθの機能の阻害の態様としては、POLθ遺伝子の少なくとも一部のアレルの破壊が好ましい。POLθ遺伝子の一部のアレルのみが破壊されていてもよいし、全てのアレルが破壊されていてもよい。NHEJの機能の阻害に加えてPOLθ遺伝子の一部のアレルが破壊されている動物培養細胞は、後述する通り、POLθ阻害剤のスクリーニングのためのツールとして特に有用である。また、NHEJの機能の阻害に加えてPOLθの全てのアレルが破壊されている動物培養細胞は、遺伝子ターゲティングの効率が極めて高く、相同組換え実験用、ゲノム改変実験用、又は遺伝子ターゲティング実験用の細胞として非常に有用である。
なお、本発明において、「ホモ欠損」、「ホモノックアウト」、「ホモで破壊された」という語は、全てのアレルにおいて遺伝子が破壊されていることをいい、「ヘテロ欠損」、「ヘテロノックアウト」、「ヘテロで破壊された」という語は、一部のアレルにおいて遺伝子が破壊されていることをいう。株化された動物細胞の中には、染色体の一部を3コピー以上有するものも存在することが知られている。例えば、NHEJ関連遺伝子を含む染色体を3コピー有する動物培養細胞を用いる場合には、NHEJ関連遺伝子ヘテロ欠損細胞という語は、1つ又は2つのアレルにおいて遺伝子が破壊されていることをいい、NHEJ関連遺伝子ホモ欠損細胞という語は、3つのアレルにおいて遺伝子が破壊されていることをいう。
遺伝子の破壊は、例えば、コード領域の一部やプロモーター領域の一部又は全部を欠失させたり、あるいは、正常な遺伝子産物を産生できないようにストップコドンを挿入する若しくはアミノ酸を置換・挿入する等の変異を導入することにより実施できる。コード領域の欠失は、破壊対象の遺伝子のコード領域のサイズによっては全領域を欠失させてもよいが、通常、コード領域の一部を欠失させれば十分であり、少なくとも1つのエクソンの全部又は一部(例えば1つのエクソンの半分以上の領域)を欠失させればよい。例えば、NHEJ関連遺伝子の一例であるLIG4遺伝子の場合には、エクソン3の半分以上の領域を欠失させることでLIG4遺伝子をノックアウトできることが知られている(Iiizumi et al. (2006) Simple one-week method to construct gene-targeting vectors: application to production of human knockout cell lines. Biotechniques 41: 311-316)。POLθの場合には、例えば下記実施例に記載される通り、エクソン15のほぼ全長を欠失させることでPOLθ遺伝子をノックアウトすることができる。その他のエクソンでも同様に一部又は全部を欠失させることでPOLθ遺伝子のノックアウトが可能である。破壊株のスクリーニングの便宜のため、欠失させる領域に薬剤耐性や蛍光タンパク質等のマーカー遺伝子配列を挿入してよい。
遺伝子破壊用ターゲティングベクターの5'相同領域及び3'相同領域として用いるDNA断片は、遺伝子破壊の対象の動物培養細胞、ないしはこれと同種の動物に由来する細胞から抽出したゲノムDNAを鋳型としたPCRにより増幅して得ることができる。哺乳動物細胞の遺伝子破壊においては、一般に用いられる相同領域のサイズは数kb程度である。ヒトをはじめ各種の動物において全ゲノム配列情報(BAC配列やショットガンシークエンス等)が同定され、データベースに登録されているので、相同領域の調製に必要な配列情報はそのようなデータベースから入手することができる。増幅させた相同領域及びマーカー遺伝子を順次適当なプラスミドベクターに挿入して、[5'相同領域]−[マーカー遺伝子]−[3'相同領域]の順に並んだ遺伝子破壊用DNAコンストラクトを含むターゲティングベクターを構築し、これをエレクトロポレーション等の常法により動物培養細胞に導入すればよい。このようなターゲティングベクターを細胞に導入すると、相同組換えにより遺伝子破壊用コンストラクトがゲノム上の所期の位置に挿入され、目的遺伝子の一部又は全部がマーカー遺伝子に置き換えられた変異アレルが生じる。
特に哺乳動物細胞においては、相同組換えによる遺伝子破壊用コンストラクトのゲノムへの挿入頻度は、相同組換えによらないランダムな挿入の頻度に比べて非常に低いことから、ターゲティングベクターで遺伝子破壊を行なう場合には、薬剤耐性を与えるポジティブ選択マーカーと薬剤感受性を与えるネガティブ選択マーカーを併用してもよい。上記の遺伝子破壊用コンストラクトにおいて、2つの相同領域の間に連結するマーカー遺伝子をポジティブ選択マーカー遺伝子とし、2つの相同領域の外側(5'相同領域の5'上流側、又は3'相同領域の3'下流側)にネガティブ選択マーカー遺伝子を連結しておけばよい。該コンストラクトが相同組換えによりゲノムに挿入されていれば、コンストラクトのうち相同領域の外側の領域はゲノムに挿入されないので、ネガティブ選択マーカー遺伝子により薬剤感受性が付与されることはない。一方、該コンストラクトが相同組換えによらずランダムにゲノムに挿入された場合、ネガティブ選択マーカー遺伝子もゲノムに挿入されるため、そのような形質転換細胞には薬剤感受性が付与されることになる。よって、遺伝子破壊用コンストラクトを細胞に導入後、ポジティブ選択マーカーとネガティブ選択マーカーによるスクリーニングを行えば、相同組換えにより適切な位置にコンストラクトが挿入され目的遺伝子が破壊された細胞を効率よく選抜することができる。
一般に使用されるマーカー遺伝子の具体例を挙げると、ポジティブ選択マーカーとしては、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子(ネオマイシンの他G418に耐性となる)、ピューロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子等が挙げられ、ネガティブ選択マーカーとしてはチミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素Aフラグメント(DT-A)等が挙げられるが、これらに限定されない。それぞれ適当なプロモーターとの組み合わせで用いられるが、当業者であればマーカー遺伝子の種類に応じて適宜選択することができる。
マーカーによるスクリーニングの後、PCRやサザンブロッティングによる遺伝子破壊の確認を行ない、目的遺伝子が破壊されたアレルを有する細胞を取得する。PCRに使用するプライマーやサザンブロッティングに使用するプローブは、当業者であれば、遺伝子破壊用DNAコンストラクトの構造に応じて適宜設計することができる。
上述した通り、動物細胞、特に哺乳動物細胞における相同組換えの頻度は非常に低いため、全てのアレルで同時に相同組換えが生じる可能性は極めて低く、通常はヘテロのノックアウトとなる。ホモでノックアウトされた細胞を得るためには、ヘテロノックアウトであることを確認した細胞株を用いて、上述した遺伝子破壊用コンストラクトの導入とスクリーニングを再度繰り返せばよい。ヘテロノックアウト細胞の調製に使用する遺伝子破壊用DNAコンストラクトと、ホモノックアウト細胞の調製に使用する遺伝子破壊用DNAコンストラクトとで、異なる薬剤耐性ポジティブ選択マーカーを用いれば、ホモノックアウト細胞を適切に選抜することができる。
作出したノックアウト細胞において、ゲノム上のマーカー遺伝子の存在が望ましくない場合には、例えばCre-loxPシステムを利用してマーカー遺伝子を除去することができる。具体的には、あらかじめマーカー遺伝子の3’末端および5’末端の位置にloxP配列を挿入したマーカー遺伝子を使用してターゲティングベクターを構築し、ノックアウト細胞株を作出する。このノックアウト細胞株に対して、Cre組換え酵素を発現するウイルスベクターやプラスミドベクターを感染ないしは導入し、ノックアウト細胞内でCre酵素を一過的に発現させることにより、loxP配列で挟まれたマーカー遺伝子領域をノックアウト細胞のゲノム中から除去することができる。あるいは、ゲノム上にマーカー遺伝子が残らない遺伝子改変方法、例えばTALENやCRISPR/Cas9を利用した方法や、後述するRNA干渉によるノックダウン等によって、遺伝子の機能の阻害を行なえばよい。
NHEJ関連遺伝子の全てのアレルが破壊され、かつ、POLθ遺伝子の少なくとも一部のアレルが破壊された哺乳動物細胞を作出する場合には、上記の手順でNHEJ関連遺伝子が破壊された細胞株を用いて、さらに上記の手順を繰り返してPOLθ遺伝子のノックアウトを行なえばよい。上記のようにCre-loxPシステムを利用するなどして、NHEJ関連遺伝子の破壊の際に用いたマーカー遺伝子をゲノムから除去しておけば、POLθ遺伝子の破壊においても同じマーカー遺伝子を使用することができる。
RNA干渉(RNAi)による目的遺伝子のノックダウン方法も周知であり、確立した技術となっている。RNAiにより恒常的に目的遺伝子をノックダウンした細胞株を得るためには、プラスミドベクターやウイルスベクター等の発現ベクターを用いて細胞内でsiRNAを生産させればよい。一般には、ヘアピン型RNA(shRNA)を発現するベクターを調製し、該ベクターを細胞に導入し、細胞内でRNAiを生じさせる方法が用いられる。細胞内で発現したshRNAは、細胞内のダイサーにより認識・切断されてsiRNAが生じる。あるいは、恒常的なノックダウンではなく一定期間以上のノックダウンでよい場合には、センス鎖及びアンチセンス鎖を化学合成してアニーリングさせたsiRNAを細胞内に導入してもよい。siRNAの安定性を向上させる技術として、特許3803318号に開示される、DNAとRNAのキメラの2本鎖ポリヌクレオチドからなるsiRNAが知られており、このような技術を採用してもよい。siRNA・shRNAの設計のためのソフトウェアが公知であり、またこれらの設計やRNAi用発現ベクターの作製、RNAiによるノックダウン細胞株の調製等の受託サービスを提供する業者も多数存在するので、そのような業者を利用してもよい。
POLθ阻害剤のスクリーニング
NHEJの機能が阻害された動物培養細胞を利用して、ポリメラーゼθを特異的に阻害するポリメラーゼθ阻害剤をスクリーニングすることができる。ポリメラーゼθ阻害剤のスクリーニング方法としては、ランダム挿入頻度の低下を指標として化合物を選択する方法(第1のスクリーニング方法)と、エトポシド等によるDNA二本鎖切断(double-strand break; DSB)処理に対する感受性を指標として化合物を選択する方法(第2のスクリーニング方法)の二つの態様がある。以下、第1及び第2のスクリーニング方法の各工程をより詳細に説明する。
第1のスクリーニング方法
使用する細胞は、変異又は遺伝的改変によりNHEJの機能が阻害された動物培養細胞である。NHEJの機能の阻害、NHEJ関連遺伝子の具体例、該動物培養細胞の作製方法等は上述した通りである。当該スクリーニング方法においては、とりわけ、LIG4遺伝子の全てのアレルが破壊され、かつ、POLθ遺伝子の一部のアレルが破壊されたゲノムを有する動物培養細胞を特に好ましく用いることができる。
インテグレーションアッセイは、ゲノムへのランダム挿入頻度を調べるアッセイである。マーカー遺伝子を含むDNA構築物を上記した動物培養細胞に導入し、ランダム挿入を生じさせる。このDNA構築物は、対象とする動物培養細胞のゲノム配列と相同な配列からなる相同領域を含まない非ターゲティングベクターである。マーカー遺伝子としては、各種の薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光タンパク質遺伝子など、細胞の形質転換実験等に一般的に使用される各種のマーカー遺伝子を使用することができる。マーカーの検出の簡便さから、薬剤耐性遺伝子を好ましく用いることができる。この際に利用可能な薬剤耐性遺伝子の具体例は、遺伝子破壊株の作出において利用可能なポジティブ選択マーカー遺伝子と同様であり、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子(ネオマイシンの他G418に耐性となる)、ピューロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子等を挙げることができる。また、発光反応を触媒するルシフェラーゼ等の酵素タンパク質遺伝子も好ましく用いることができる。
マーカー遺伝子を含むDNA構築物の細胞への導入は、エレクトロポレーション法等の周知の方法により行なうことができる。DNA構築物がプラスミドDNAの形態の場合、適当な制限酵素で切断してリニア化してから細胞内に導入する。
POLθ阻害活性を評価すべき化合物は、細胞のゲノム中にDNA構築物のランダム挿入が行われる過程において共存させる必要がある。従って、化合物の共存下でDNA構築物を細胞に導入し、該化合物の共存下で一定時間(一般には24〜48時間程度)培養した後、引き続き、該化合物の共存下もしくは非共存下で、ゲノムへのランダム挿入を生じさせるべく培養(コロニー形成)を行なえばよい。
ランダム挿入を生じさせた後、マーカー遺伝子の発現を指標として、化合物共存下でのDNA構築物の挿入頻度、及び化合物非共存下でのDNA構築物の挿入頻度を調べる。マーカー遺伝子として薬剤耐性遺伝子、例えばハイグロマイシン(Hyg)耐性遺伝子を用いた場合には、Hyg含有寒天培地上のHyg耐性コロニー数を計測すればよい。耐性コロニー数がランダム挿入頻度(インテグレーション頻度)を反映する。ランダム挿入頻度の評価においては、ランダム挿入を生じさせた後の細胞を薬剤含有寒天培地及び薬剤非含有寒天培地にそれぞれ播種し、両培地のコロニー数を計測し、薬剤含有培地上の耐性コロニー数を薬剤非含有培地上のコロニー数で除した数値をランダム挿入頻度としてもよい。あるいは、マーカー遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いた場合には、細胞のルシフェラーゼ活性をモニタリングすればよい。ルシフェラーゼ活性の測定値(発光量)がランダム挿入反応の有無や大まかなランダム挿入量の指標となる。ルシフェラーゼ遺伝子をマーカーとするスクリーニングアッセイ系の具体例も下記実施例に記載されている。化合物共存下でランダム挿入を生じさせた場合のランダム挿入頻度と、化合物非共存下でランダム挿入を生じさせた場合のランダム挿入頻度を対比し、化合物共存下の挿入頻度が非共存下の挿入頻度よりも低下した場合には、その化合物をPOLθ阻害剤候補化合物として選択することができる。
第2のスクリーニング方法
使用する細胞は、第1のスクリーニング方法と同様に、変異又は遺伝的改変によりNHEJの機能が阻害された動物培養細胞である。第2の方法においても、LIG4遺伝子の全てのアレルが破壊された動物培養細胞の他、LIG4遺伝子の全てのアレルが破壊され、かつ、POLθ遺伝子の一部のアレルが破壊された動物培養細胞も好ましく用いることができる。
DSB誘発処理としては、電離放射線(X線、ガンマ線)の照射や、DSB誘発剤による処理を挙げることができる。DSB誘発剤としては、エトポシド等のトポイソメラーゼ2阻害剤;ブレオマイシン及びネオカルチノスタチン等の放射線類似作用物質;ZFN、TALEN、CRISPR/Cas等の人工ヌクレアーゼを挙げることができるが、これらに限定されない。電離放射線の照射強度や、DSB誘発剤の培地への添加濃度は、当業者であれば適宜設定できる。例えばエトポシドの場合は、数nM〜数十nM程度の濃度で培地に添加すればよい。
第2のスクリーニング方法では、DSB誘発処理を施した上記の動物培養細胞を化合物の共存下及び非共存下で培養し、細胞の生存率を調べる。細胞を化合物添加群と化合物非添加群に分けてからDSB誘発処理(電離放射線の照射、培地へのDSB誘発剤の添加など)を行ない、引き続き化合物共存下及び非共存下でそれぞれの細胞を培養することとしてもよいし、DSB誘発処理を行なってから細胞を化合物添加群と化合物非添加群に分けて培養してもよいが、後者の場合には、DSB誘発処理後速やかに化合物添加群と非添加群に分けることが望ましい。特に限定されないが、通常は、化合物の共存下及び非共存下で動物培養細胞をDSB誘発処理し、引き続き化合物の共存下及び非共存下で細胞を培養する。
DSB誘発処理後の培養時間は1日間〜5日間程度でよいが、これに限定されず、DSB誘発処理の強度に応じて適宜設定してよい。一定期間培養した後、細胞生存率を調べ、化合物共存下と化合物非共存下で細胞生存率を比較する。該化合物にPOLθ阻害活性がある場合には、化合物共存下での細胞生存率が非共存下での生存率よりも低くなる。従って、細胞生存率の低下を示した化合物をPOLθ阻害剤の候補物質として選択することができる。
第1及び第2のスクリーニング方法のいずれも、スクリーニングに供する化合物は特に限定されない。各種の化合物ライブラリーをスクリーニングに供することができる。また、POLθ阻害剤候補として取得した化合物をリード化合物とし、このリード化合物に各種の修飾・改変を加えた化合物ライブラリーを調製し、これらをさらに上記スクリーニング方法に供して、より強いPOLθ阻害活性を有する阻害剤を取得することも可能である。
POLθ阻害剤として同定された化合物は、化学合成分野で公知の常法により製造することができる。
上記スクリーニング方法により得られるPOLθ阻害剤は、乳がん、非小細胞肺がん、胃がん、大腸がん、口腔扁平上皮がん、卵巣がん等を包含する各種のがんの予防や治療、再発抑制、転移抑制のための医薬として有用である。また、動物培養細胞のゲノム改変における遺伝子ターゲティングの効率を向上させる試薬としても有用である。
動物細胞のゲノム改変方法
NHEJの機能及びPOLθの機能が阻害された条件下では、相同組換えによらないランダム挿入が大幅に抑制され、ターゲティング効率が飛躍的に高まる。下記実施例では、280万個に及ぶ細胞でターゲティングベクターによる部位特異的遺伝子導入実験を行なった結果、NHEJ欠損かつPOLθ欠損の二重欠損細胞におけるターゲティングの効率が100%となることが確認されている。従って、NHEJの機能及びPOLθの機能が阻害された条件下において、相同組換えによる遺伝子導入を行なうことで、標的部位に所望の遺伝子が挿入されたゲノム改変細胞を極めて高い効率で取得することができる。以下、当該ゲノム改変方法(ゲノムが改変された動物培養細胞の製造方法)の各工程をより詳細に説明する。
使用する動物細胞は、変異又は遺伝的改変によってNHEJの機能及びPOLθの機能のいずれか一方、又は両者が阻害された細胞であってもよいし、あるいは、これらの機能が阻害されていない、NHEJの機能及びPOLθの機能が正常な細胞であってもよい。NHEJの機能が正常な細胞において、該機能を阻害する場合には、NHEJ関連タンパク質の阻害剤で細胞を処理する、NHEJ関連遺伝子に対するsiRNAを細胞に導入し、RNAiによりNHEJ関連遺伝子をノックダウンする、などの方法を挙げることができる。POLθの機能が正常な細胞においてPOLθを阻害する場合も同様である。
NHEJ関連タンパク質の阻害剤の具体例として、例えばDNA-PKcsを阻害する化合物ではNU7026(Willmore E et al., Blood. 2004 Jun 15;103(12):4659-65)等が公知であり、DNA-PKcs阻害剤として広く用いられている。また、DNAリガーゼIVを阻害する化合物では、SCR7(Srivastava M et al., Cell. 2012 Dec 21;151(7):1474-87)が知られている。その他のNHEJ関連タンパク質阻害剤の例としては、ワートマニン(wortmannin)やバニリン(vanillin)なども知られている。もっとも、これらの具体例に限定されるものではない。POLθ阻害剤は、上記したスクリーニング方法により得ることができる。
ターゲティングベクターの2つの相同領域は、対象細胞、ないしは対象細胞と同一の動物種に由来する細胞から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、適当なプライマーを用いたPCRにより増幅して得ることができる。相同領域の間に所望の遺伝子を挟み込んだ構成のターゲティングベクターを構築すればよい。ここでいう所望の遺伝子とは、タンパク質をコードする遺伝子に限定されず、さまざまな所望のDNA配列が包含される。
ターゲティングベクターの動物培養細胞への導入自体は、常法のエレクトロポレーション法等により実施できる。相同組換えが生じる過程において、NHEJの機能及びPOLθの機能が阻害された状態におく必要があるため、例えば阻害剤処理によってこれらの機能を阻害する場合には、阻害剤の共存下において、ターゲティングベクターを細胞内に導入し、引き続き阻害剤の共存下で十分な時間培養して相同組換えを生じさせればよい。これにより、標的部位に所望の遺伝子が挿入されたゲノム改変細胞を極めて高い効率で得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
1.ヒトPOLQ遺伝子破壊のためのターゲティングベクターの構築
ヒトPOLQ遺伝子破壊用ターゲティングベクターに使用する2つの相同領域(3.0-kbの5'相同領域(配列番号26)、5.3-kbの3'相同領域(配列番号27))は、Nalm-6細胞から抽出したゲノムDNAを鋳型としたPCRにより増幅して得た。PCRのポリメラーゼにはTks Gflex(商品名) DNA polymerase (タカラバイオ、日本国大津)を使用した。使用したプライマーを下記表2に示す。5'相同領域の増幅にはPOLQ 5’ Fw及びPOLQ 5’ Rvを、3'相同領域の増幅にはPOLQ 3’ Fw及びPOLQ 3’ Rvを用いた。MultiSite Gateway system (Life Technologies、米国MD州Rockville)を用いて、2Aペプチドに結合したハイグロマイシン耐性遺伝子(HygR)又はピューロマイシン耐性遺伝子(PuroR)(文献1)を5'相同領域及び3'相同領域の間に配置し、エクソントラッピング(プロモーターレス)ターゲティングベクターpPOLQ 2A-Hyg及びpPOLQ 2A-Puroを得た(図1)。これらのプラスミドは、Qiagen Plasmid Plus Midi Kit (Qiagen K.K., 日本国東京) を用いて精製し、I-SceI (New England Biolabs, 米国MA州Ipswich)で切断してリニア化してからトランスフェクションに用いた。
Figure 0006925003
2.Nalm-6細胞を用いた遺伝子導入(トランスフェクション)
ヒトpre-B細胞株Nalm-6及びその派生細胞は、5%CO2インキュベーター内で37℃で培養した(文献2)。Nalm-6細胞のトランスフェクションは既報(文献3、4)に従って行なった。簡潔に記載すると、4×106個の細胞を4μgのリニア化プラスミドとともにエレクトロポレーションに付し、24時間培養した後、0.3 mg/mlハイグロマイシンB (和光純薬工業、日本国大阪)、0.15〜0.4μg/mlピューロマイシン (和光純薬工業) 又は1.0 mg/ml G418 (和光純薬工業)を含む寒天培地に90 mm培養皿あたり0.5〜1×106個の細胞密度で再播種した。
3.LIG4-/-POLQ+/-細胞及びLIG4-/-POLQ-/-細胞の作製
(1) LIG4-/-細胞株の作製
LIG4ホモ欠損(LIG4-/-)のNalm-6細胞は、既報(文献5)の通りに下記の手順で作製した。Nalm-6細胞より抽出したゲノムDNAを鋳型とし、下記表3に示すプライマーを用いたPCRにより(ポリメラーゼはタカラバイオのExTaq(商品名) DNAポリメラーゼを使用)、LIG4遺伝子破壊用ターゲティングベクターの5'相同領域(2.2kb)及び3'相同領域(2.0kb)を調製した。5'相同領域(配列番号28)の増幅にはattB4配列を含むL4-1及びattB1配列を含むL4-2を、3'相同領域(配列番号29)の増幅にはattB2配列を含むL4-3及びattB3配列を含むL4-4を用いた。
Figure 0006925003
MultiSite Gateway system(より具体的には、pENTR lox-Hyg, pENTR lox-Puro, 及びpDEST DTA-MLS)を用いて、DT-A遺伝子を有するプラスミド上の5'相同領域及び3'相同領域の間にloxP配列で挟み込んだ薬剤耐性遺伝子(Hygr又はPuror)を導入し、ターゲティングベクターpLIG4-Hyg及びpLIG4-Puroを得た。これらのターゲティングベクターによれば、LIG4遺伝子のエクソン3の大部分を含むゲノム領域が欠失する。
まずpLIG4-Puroをリニア化して上記2.の通りにNalm-6細胞にトランスフェクトし、ピューロマイシン耐性コロニーを単離、増殖させてLIG4のヘテロ欠損株LIG4+/-を得た。遺伝子ターゲティングの成否は、L4-N及びUniversal primer Aを用いたPCRにより確認した。
次いで、LIG4+/-細胞にリニア化したpLIG4-Hygをトランスフェクトし、ハイグロマイシン耐性コロニーを単離、増殖させてLIG4のホモ欠損株LIG4-/-を得た。L4-N及びUniversal primer B、並びにL4-F及びL4-Rを用いたPCRにより、LIG4遺伝子の両アレルの破壊を確認した。
両アレルの破壊を確認した細胞株について、Cre組換え酵素を細胞内で一過的に発現させることで、loxPに挟み込まれた薬剤耐性遺伝子をゲノムから除去した。
(2) LIG4-/-POLQ+/-細胞及びLIG4-/-POLQ-/-細胞の作製
薬剤耐性遺伝子を除去したLIG4-/-細胞にターゲティングベクターpPOLQ 2A-Hygをトランスフェクトし、ハイグロマイシン耐性コロニーを単離、増殖させてPOLQのヘテロ欠損株LIG4-/-POLQ+/-を作製した。遺伝子ターゲティングの成否は、POLQ 5’ ext及びUniversal primer 2Aを用いたPCRにより確認した。
次いで、pPOLQ 2A-PuroをLIG4-/-POLQ+/-細胞にトランスフェクトし、ピューロマイシン耐性クローンをプライマーPOLQ-N Fw及びPOLQ-N Rvを用いたPCR解析に付した。さらに、プライマーPOLQ Exon 1 Fw及びUniversal primer 2A、並びにプライマーPOLQ Exon 13 Fw及びPOLQ-N Rvを用いたRT-PCR解析により、POLQ遺伝子の両アレルの破壊を確認した。
以上の通りにNalm-6細胞で作出したLIG4-/-細胞(LIG4-/-POLQ+/+細胞)、LIG4-/-POLQ+/-細胞及びLIG4-/-POLQ-/-細胞を以下の実験に用いた。
4.増殖速度の解析
細胞増殖速度の解析は文献2に記載の通りに行なった。すなわち、4×104細胞/mlの密度の細胞を24穴プレートのウェルに播種し、24時間ごとに細胞数を計測して細胞増殖速度を評価した。
結果を図2に示す。LIG4欠損の有無で増殖能に差異は見られなかったが、LIG4欠損に加えさらにPOLQを欠損させると増殖能が低下することが確認された。
5.エトポシドに対する感受性の解析
二本鎖切断(double-strand break; DSB)誘発剤エトポシドに対する感受性の解析は、既報(文献6)に従って実施した。簡潔に記載すると、細胞を2×104個/mlの密度で24穴プレートに植え込み、エトポシドを0〜10nMの濃度で添加した。72時間培養後、CellTiter-Glo Luminescent Viability Assay kit(プロメガ)を用いて細胞数を測定し、生存率を算出した。
結果を図3に示す。LIG4-/-POLQ-/-細胞は、DNA二本鎖切断に対してLIG4-/-POLQ+/+細胞よりもさらに高い感受性を示した。
6.インテグレーション頻度の解析
G418耐性遺伝子を発現する公知のpPGKneoプラスミドを非ターゲティングベクターとして使用し、既報(文献7)に従い下記の手順でインテグレーションアッセイを行なった。
4×106個の細胞を4μgのリニア化pPGKneoとともにエレクトロポレーションに付し、増殖培地で24時間培養した後、1.0 mg/mlのG418を含む寒天培地に90mm培養皿あたり0.5〜1×106個の細胞密度で再播種した。一方、コロニー形成率(plating efficiency; PE)を調べるため、トランスフェクトされた細胞の一部をG418非含有寒天培地中に再播種した。2〜3週間培養した後、生育したコロニーをカウントし、下記の式でインテグレーション頻度を算出した。
インテグレーション頻度=G418耐性コロニー数/G418非含有培地でのコロニー数
結果を図4及び下記表4に示す。LIG4-/-POLQ-/-細胞においては、22.3×106個の細胞を観察してもランダム挿入によりG418耐性を獲得したクローンが得られず、二重欠損によりランダム挿入頻度が検出限界以下にまで低下することが確認された。LIG4-/-POLQ-/-細胞ではPEが若干低いが、これは二重欠損細胞で増殖能が低下するため(図2)と推察される。
Figure 0006925003
7.遺伝子ターゲティング効率の解析
遺伝子ターゲティングアッセイは、G418耐性遺伝子を発現するpPGKneoプラスミドを使用し、X染色体上のHPRT遺伝子座(HPRT遺伝子の破壊は6-チオグアニン耐性をもたらす)を利用して、文献4、7の記載に従い下記の通りに実施した。
ターゲティングベクターは、ゲノム上のHPRT遺伝子のエクソン3内にG418耐性遺伝子(NeoR)を挿入するように構築した。HPRT遺伝子のエクソン2及び3を含む8.9 kbのゲノム断片をBACクローンbWXD187 (Washington University School of Medicine, Department of Molecular Microbiology, Genome Sequencing Center, St. Louis, MO, USA) より切り出し、pBluescript II SK(-)にサブクローニングし、エクソン3のXhoIサイトにピューロマイシン耐性遺伝子を挿入することにより、[3.8 kbの5'相同領域]−[ピューロマイシン耐性遺伝子]−[5.1 kbの3'相同領域]が連結したターゲティングベクターを得た。
構築したターゲティングベクターをリニア化し、野生型(WT)、LIG4-/-POLQ+/+、LIG4-/-POLQ+/-、及びLIG4-/-POLQ-/-のNalm-6細胞にトランスフェクトした。22時間培養した後、1.0 mg/ml G418を含む寒天培地に90mm培養皿あたり0.5〜1×106個の細胞密度で再播種した。一方、コロニー形成率(plating efficiency)を調べるため、トランスフェクトされた細胞の一部を薬剤不含の寒天培地に再播種した。2〜3週間培養した後、生育したコロニーをカウントした。G418耐性コロニーは、全部又は一部を単離し、遺伝子ターゲティングの成否の解析に付した。
単離した各G418耐性コロニーを、20μM 6-チオグアニン(6-TG, Sigma-Aldrich)含有液体培地中で培養した。6-TG耐性を示したクローンよりゲノムDNAを抽出し、ターゲティングした部位を挟む位置に設定したプライマーセットHPRT-F(TGAGGGCAAAGGATGTGTTACGTG、配列番号22)及びHPRT-R(TTGATGTAATCCAGCAGGTCAGCA、配列番号23)を用いてPCRチェックを行ない、増幅産物のサイズから目的部位へのNeoRの挿入を確認した(文献4)。HPRT-F及びHPRT-Rによる増幅断片のサイズは、NeoRの挿入がない場合には約0.5 kbとなり、目的部位への挿入が生じた場合には検出されない、もしくは約0.5 kb + NeoRのサイズとなる。遺伝子ターゲティング効率は下記の式で算出した。
遺伝子ターゲティング効率(Gene-targeting efficiency, %)=目的部位へのNeoRの挿入が生じたクローン数/遺伝子ターゲティングの成否の解析に付したクローン数×100
結果を下記表5に示す。LIG4-/-POLQ-/-細胞では、NeoRの挿入が生じたクローンの全てが、相同組換えにより目的部位に挿入が生じたものであった。LIG4-/-POLQ-/-細胞ではランダム挿入が事実上起こらず、相同組換えを介した遺伝子ターゲティングの効率が100%となることが明らかとなった。
Figure 0006925003
8.siRNAを用いたPOLQ遺伝子のノックダウン
野生型のNalm-6細胞(WT)、並びに上記で作製したLIG4-/-POLQ+/+細胞、LIG4-/-POLQ+/-細胞及びLIG4-/-POLQ-/-細胞において、siRNAによりPOLQ遺伝子をノックダウンし、インテグレーションアッセイを行ないランダム挿入の頻度の変化を調べた。
POLQ siRNAは、エクソン9をターゲットとし、Enhanced siDirect(登録商標)(株式会社RNAi)を用いて配列を設計した。一部をDNAとしたキメラ型siRNAを株式会社RNAiに受託して合成した。このキメラ型siRNAのセンス鎖の配列を配列番号24(14〜21位がDNA)、アンチセンス鎖の配列を配列番号25に(1〜6位がDNA)それぞれ示す。
Figure 0006925003
siRNAのトランスフェクションは、文献7の記載に準じ、Lonza社のNucleofector II を用いて以下の通りに行なった。簡潔に記載すると、4.0 x 106 個の各細胞(WT、LIG4-/-POLQ+/+、LIG4-/-POLQ+/-、LIG4-/-POLQ-/-)を付属の溶液 (Solution T) 100μLに懸濁し、HindIIIでリニア化したpPGKneo(4μg)と、センス鎖及びアンチセンス鎖がアニーリングした形態のPOLQ siRNA(200 pmol)とを加え、トランスフェクションを行った(Nucleofector II を使用)。インテグレーションアッセイは「6.インテグレーション頻度の解析」と同様の手順で行った。
結果を図5に示す。LIG4-/-POLQ+/+細胞において、POLQ遺伝子のノックダウンによりランダム挿入頻度の低下が確認された。LIG4-/-POLQ+/-細胞では、POLQ遺伝子のノックダウンによるランダム挿入頻度の低下がLIG4-/-POLQ+/+細胞よりも顕著であった。すなわち、LIG4-/-POLQ+/-細胞では、LIG4-/-POLQ+/+細胞よりもさらにPOLQ阻害の影響がランダム挿入頻度の低下として観察しやすく、POLQ阻害剤スクリーニングのツールとして非常に有用であることが示された。
9.スクリーニングに適したインテグレーションアッセイ系の確立
マーカー遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子Nluc(トゲオキヒオドシエビ由来のルシフェラーゼNanoLuc(商標)、プロメガ社)を使用し、CMVプロモーターの下流にNlucを連結したpCMV-Nlucと、プロモーターを有しないpSA-2A-Nluc-2A-Hyg(以下、pSA-2A-Nlucと略記する)の2種類の非ターゲティングベクターを構築した(図6左)。また、薬剤選択用プラスミドとして、PGKプロモーターの下流にピューロマイシン耐性遺伝子を連結したpEpi-Puroを構築した(図6右)。
野生型のNalm-6細胞(wild-type)およびLIG4-/-POLQ-/-細胞(4x106個)に4μgの非ターゲティングベクター(リニア化したpCMV-NlucまたはpSA-2A-Nluc)および0.4μgの薬剤選択用プラスミド(pEpi-Puro)をエレクトロポレーション法により導入した。コントロールとして、Nalm-6細胞およびLIG4-/-POLQ-/-細胞(4x106個)に0.4μgのpEpi-Puroのみを導入したMockも調製した。細胞を24時間培養した後、ピューロマイシンを0.2μg/mlの濃度で添加してそのまま培養を継続し、経時的にルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性の測定の際は、細胞の一部を取り、Nano-Glo(商標) Luciferase Assay System(プロメガ社)に添付の細胞溶解剤中に懸濁し、発光をルミノメータで測定した。
ルシフェラーゼ活性の測定結果を図7に示す。横軸の0日目がベクターを導入した日、1日目がピューロマイシンを添加した日である。
pSA-2A-Nlucを導入した野生型細胞では、ランダム挿入によりpSA-2A-Nlucがゲノムに挿入される。ゲノムにルシフェラーゼが組み込まれた細胞より発光が確認される。すなわち、pSA-2A-Nlucのランダム挿入をルシフェラーゼ活性(発光)として観察することができる。8日目あたりからpSA-2A-Nlucのランダム挿入が観察され始める。一方、二重欠損細胞(LIG4-/-POLQ-/-)では、pSA-2A-Nlucを細胞内に導入してもランダム挿入が起きないので、ゲノムへのルシフェラーゼの挿入が起きない。ゆえに発光量(ルシフェラーゼ活性)はバックグラウンドレベルのままとなる。
プロモーターを有するpCMV-Nlucでは一過性の発現が起こる。初期の発光はこの一過性の発現に起因している。野生型細胞ではpCMV-Nlucがゲノムに挿入されるので、ゲノムに組み込まれたルシフェラーゼによる一定の発光が認められるようになる(10日目以降)。二重欠損細胞ではpCMV-Nlucがゲノムに挿入されないため、徐々に発光量が低下し、最終的にはバックグラウンドレベルとなる。
このように、本アッセイ系を用いれば、インテグレーションの有無を簡便迅速に解析することができる。LIG4-/-POLQ+/-細胞を用いた本アッセイ系によるPOLQ阻害剤のスクリーニングでは、化合物ライブラリーを0〜1日目の間に(望ましくはベクター導入直後より)LIG4-/-POLQ+/-細胞に添加し、化合物共存下で培養を継続すればよい。添加した化合物がPOLQ阻害活性を有している場合には、LIG4-/-POLQ+/-細胞のゲノムへの非ターゲティングベクターのランダム挿入が低下するため、ルシフェラーゼ活性(発光)が低下する。本アッセイ系では、8日目付近でゲノムへのルシフェラーゼのランダム挿入が観察され始め、13〜14日目付近でルシフェラーゼ活性測定値が安定し始めるので、15日程度以上培養を継続し、化合物の非共存下で並行して培養しているLIG4-/-POLQ+/-細胞と比べてルシフェラーゼ活性がどの程度低下するかを調べるとよい。
プロモーターを有しない非ターゲティングベクターを用いた場合には、添加した化合物にPOLQ阻害活性があるときの他、添加した化合物が細胞毒性を有するときにもルシフェラーゼ活性が低下し得る。そのため、例えば、プロモーターを有する非ターゲティングベクターを用いて一次スクリーニングを行ない、細胞毒性のある化合物を排除した上で、プロモーターを有しない非ターゲティングベクターを用いて二次以降のスクリーニングを行なう、といった使い分けをしてもよい。
参考文献
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文献3: Adachi et al. (2008) Highly proficient gene targeting by homologous recombination in the human pre-B cell line Nalm-6. Methods Mol. Biol. 435: 17-29
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文献7: Ishii et al. (2014) Analysis of the role of homology arms in gene-targeting vectors in human cells. PLoS One 9: e108236

Claims (20)

  1. DNAリガーゼIV及びXRCC4から選択される少なくとも1種の非相同末端連結関連遺伝子の機能が阻害され、かつ、ポリメラーゼθ遺伝子がホモで破壊されている動物培養細胞を含む、相同組換え実験用、ゲノム改変実験用、又は遺伝子ターゲティング実験用の細胞
  2. 前記非相同末端連結関連遺伝子がDNAリガーゼIVである、請求項1記載の細胞。
  3. 前記動物培養細胞は、前記非相同末端連結関連遺伝子がホモで破壊されている、請求項1又は2記載の細胞
  4. 前記動物培養細胞が哺乳動物培養細胞である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の細胞
  5. 前記哺乳動物培養細胞がヒト培養細胞である、請求項4記載の細胞
  6. DNAリガーゼIV及びXRCC4から選択される少なくとも1種の非相同末端連結関連遺伝子の機能が阻害されている動物培養細胞を含む、ポリメラーゼθ阻害剤のスクリーニングのためのツール。
  7. 前記非相同末端連結関連遺伝子がDNAリガーゼIVである、請求項6記載のツール。
  8. 前記動物培養細胞は、前記非相同末端連結関連遺伝子がホモで破壊されている、請求項6又は7記載のツール。
  9. 前記動物培養細胞は、ポリメラーゼθ遺伝子がノックダウン又はヘテロで破壊されている、請求項6ないし8のいずれか1項に記載のツール。
  10. 化合物の共存下及び非共存下において、動物培養細胞にマーカー遺伝子を含むDNA構築物を導入し、該細胞のゲノムへのDNA構築物のランダムな挿入を生じさせる工程、
    マーカー遺伝子の発現を指標として、化合物共存下でのDNA構築物の挿入頻度、及び化合物非共存下でのDNA構築物の挿入頻度を調べる工程、
    化合物共存下の挿入頻度が化合物非共存下の挿入頻度よりも低下した化合物を、ポリメラーゼθ阻害剤候補化合物として選択する工程
    を含む、ポリメラーゼθ阻害剤のスクリーニング方法であって、前記動物培養細胞は、DNAリガーゼIV及びXRCC4から選択される少なくとも1種の非相同末端連結関連遺伝子の機能が阻害されている細胞である、方法
  11. 前記マーカー遺伝子が薬剤耐性遺伝子である、請求項10記載の方法。
  12. 前記マーカー遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子である、請求項10記載の方法。
  13. DNA二本鎖切断処理を施した動物培養細胞を化合物の共存下及び非共存下で培養し、細胞の生存率を調べる工程、
    化合物共存下の細胞生存率が化合物非共存下の細胞生存率よりも低下した化合物を、ポリメラーゼθ阻害剤候補化合物として選択する工程
    を含む、ポリメラーゼθ阻害剤のスクリーニング方法であって、前記動物培養細胞は、DNAリガーゼIV及びXRCC4から選択される少なくとも1種の非相同末端連結関連遺伝子の機能が阻害されている細胞である、方法
  14. DNA二本鎖切断誘発処理が、電離放射線照射、又はDNA二本鎖切断誘発剤による処理である、請求項13記載の方法。
  15. DNA二本鎖切断誘発剤が、トポイソメラーゼ2阻害剤、及び放射線類似作用物質から選択される薬剤である、請求項14記載の方法。
  16. DNA二本鎖切断誘発剤が、エトポシド、ブレオマイシン、及びネオカルチノスタチンから選択される薬剤である、請求項15記載の方法。
  17. 前記動物培養細胞は、ポリメラーゼθ遺伝子がノックダウン又はヘテロで破壊されている、請求項10ないし16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記非相同末端連結関連遺伝子がDNAリガーゼIVである、請求項10ないし17のいずれか1項に記載の方法。
  19. DNAリガーゼIV及びXRCC4から選択される少なくとも1種の非相同末端連結関連遺伝子の機能が阻害され、かつ、ポリメラーゼθ遺伝子がホモで破壊されている動物培養細胞にターゲティングベクターを導入し、該細胞内で相同組換えを生じさせることを含む、ゲノムが改変された動物培養細胞の製造方法。
  20. 前記非相同末端連結関連遺伝子がDNAリガーゼIVである、請求項19記載の方法。
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