JP6924653B2 - 混合装置及び混合方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大容量の液体に小容量の液体を添加して混合する混合装置及び混合方法に関する。
化学工業、医薬工業、食品工業等の分野においては、濃度の調整等を目的として、液体同士を混合する操作が行われている。このような目的の液−液混合は、大容量の主液に対し、小容量で高濃度の添加液を添加して行うのが一般的である。混合の方式としては、連続式や回分式の他、添加液のみ流入させて主液を流出させない半回分式がある。混合の操作は、機械攪拌により行われることが多く、攪拌翼を備えた撹拌槽が広く利用されている。
例えば、バイオ医薬品の製造の分野では、流加培養に際して、液体同士の混合が行われている。流加培養は、培養基質を含む流加液を培養液に添加しながら、培養液や細胞を抜き取らず行う培養法である。流加培養においては、培養槽に保持される培養液に対し、培地成分等の濃度が相対的に高い流加液が添加され、培養液と流加液との液−液混合によって培養条件が保たれている。
従来、流加培養において、高濃度の流加液の添加に伴う細胞への影響を低減する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、培養液に添加する溶液を空間的に複数に分割する技術が開示されている。特許文献1では、溶液を噴霧ノズルによって添加したり、複数の液滴として添加したりすることにより、局所的な濃度変化を迅速に解消し、細胞の死滅や損傷の可能性を低減するものとしている。
特開2009−089698号公報
大容量の主液に対し、小容量で高濃度の添加液を添加して行う液−液混合は、特許文献1に記載されるような流加培養の他にも、各種の工程で実施されている。主液に添加される添加液は、主液中に細胞が存在しない場合にも、混合の目的や主液の種類等によっては、濃度による影響を生じる場合がある。例えば、バイオ医薬品の製造においては、抗体医薬等、細胞が産生した物質を製剤化する過程で、溶液がウイルス不活化処理されることがある。
酸処理によるウイルス不活化処理は、抗体等を含む溶液に酸性溶液が混合されることにより行われている。そして、処理後の溶液は、アルカリ性溶液が混合されて中和されている。これらの操作では、酸性溶液やアルカリ性溶液の添加によって、溶液中に局所的な濃度変化が生じるため、高濃度の領域において、溶液に含まれている抗体、高分子等が変性ないし凝集化し、製品の品質が低下する場合がある。
添加液の添加による濃度の影響は、攪拌を適切に行い、局所的な濃度変化を迅速に解消することにより低減することができる。但し、そのための攪拌性能としては、均質化、攪拌動力、攪拌時間等、攪拌効率の観点だけでなく、適切な剪断力や吐出力の考慮も要求される。例えば、主液中に細胞が存在する場合には、攪拌により細胞が死滅、損傷する等の可能性があるし、抗体、高分子等が存在する場合には、攪拌により起泡、変性が生じる等の可能性がある。したがって、過剰な攪拌力が作用しない程度に、過不足が無い適切な攪拌速度で混合を行うことが望まれる。
特に、近年では、細胞培養に際して、シングルユース(ディスポーザブル)の容器が利用されるようになっている。シングルユースの容器は、攪拌翼を容器の下部側に取り付ける構造であることが多く、液面側ほど流速が遅くなる傾向がある。そのため、添加液の添加により液面付近で生じる濃度等の状態変化を、適切な攪拌力で速やかに解消するための手段が求められている。
そこで、本発明は、液−液混合時、液体を添加したときに生じる濃度等の状態変化を、適切な攪拌力で迅速に解消できる混合装置及び混合方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係る混合装置は、液体を添加するための添加口を上部に有し、内部に貯留されている第1液体に前記添加口から第2液体を添加して混合する容器と、前記容器の下部に配置され、前記容器内の液体を攪拌する回転攪拌機と、前記容器に貯留される液体の量を計測する液量計測器と、前記容器内の液質を計測する液質センサと、前記回転攪拌機の回転速度を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第2液体の添加量を、前記容器内の液質について予め設定された目標値と前記液質センサによる計測値との差分に基づいて制御し、前記回転攪拌機の回転速度を、前記添加量の下で、前記容器に貯留される液体の量及び前記容器内の液質に応じて求められた前記容器内の液面における拡散分布と前記回転攪拌機の回転速度との予め設定された関係と、前記液量計測器による計測と、前記液質センサによる計測と、に基づいて導かれた前記容器内の液面における拡散分布が所定の分布となる回転速度に制御する。または、前記第2液体の添加量を、前記容器内の液質について予め設定された目標値と前記液質センサによる計測値との差分に基づいて制御し、前記回転攪拌機の回転速度を、前記添加量の下で、前記容器内の液面の高さと前記回転攪拌機の回転速度との予め設定された関係と、前記液量計測器による計測によって求められる前記容器内の液面の高さと、前記液質センサによる計測と、に基づいて導かれた前記容器内の液面における拡散分布が所定の分布となる回転速度に制御する。
また、本発明に係る混合方法は、液体を添加するための添加口を上部に有し、内部に貯留されている第1液体に前記添加口から第2液体を添加して混合する容器と、前記容器の下部に配置され、前記容器内の液体を攪拌する回転攪拌機と、前記容器に貯留される液体の量を計測する液量計測器と、前記容器内の液質を計測する液質センサと、を備える混合装置において、前記容器内の液面における拡散分布と前記回転攪拌機の回転速度との関係を、流れ場及び拡散場を模擬的に解析して予め設定し、前記第1液体に前記第2液体を混合している間に、前記容器内の液質を計測し、前記回転攪拌機の回転速度を、前記容器内の液質について予め設定された目標値と前記液質センサによる計測値との差分に基づいて制御される前記第2液体の添加量の下で、前記容器に貯留される液体の量及び前記容器内の液質に応じて求められた前記容器内の液面における拡散分布と前記回転攪拌機の回転速度との予め設定された関係と、前記液量計測器による計測と、前記液質センサによる計測と、に基づいて導かれた前記容器内の液面における拡散分布が所定の分布となる回転速度に制御し、予め設定された前記関係、前記液量計測器による計測及び前記液質センサによる計測に基づいて前記回転速度を変更しながら混合を行う。または、前記容器内の液面の高さと前記回転攪拌機の回転速度との関係を、流れ場及び拡散場を模擬的に解析して予め設定し、前記第1液体に前記第2液体を混合している間に、前記容器内の液面の高さを計測し、前記回転攪拌機の回転速度を、前記容器内の液質について予め設定された目標値と前記液質センサによる計測値との差分に基づいて制御される前記第2液体の添加量の下で、前記容器内の液質に応じて求められた前記容器内の液面の高さと前記回転攪拌機の回転速度との予め設定された関係と、前記液量計測器による計測によって求められる前記容器内の液面の高さと、前記液質センサによる計測と、に基づいて導かれた前記容器内の液面における拡散分布が所定の分布となる回転速度に制御し、予め設定された前記関係、前記容器内の液面の高さ及び前記液質センサによる計測に基づいて前記回転速度を変更しながら混合を行う。
本発明に係る混合装置及び混合方法は、液−液混合時、液体を添加したときに生じる濃度等の状態変化を、適切な攪拌力で迅速に解消することができる。
本発明の実施形態に係る混合装置の構成を示す模式図である。 混合装置を使用して行う液体の混合方法の一例を示すフロー図である。 混合装置を使用して行う液体の混合方法の他例を示すフロー図である。 本発明の変形例に係る混合装置の構成を示す模式図である。 本発明の第1実施例に係る混合装置の構成を示す模式図である。 本発明の第2実施例に係る混合装置の構成を示す模式図である。
以下、本発明の一実施形態に係る混合装置及び混合方法について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る混合装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る混合装置1は、混合容器(容器)10と、攪拌翼20を有する回転攪拌機と、主液流入ライン(第1液体流入ライン)110と、添加液流入ライン(第2液体流入ライン)120と、混合液流出ライン130と、主液流量センサ(液量計測器)11と、添加液流量センサ(液量計測器)12と、無菌コネクタ16と、バルブ18と、添加液容器30と、定量ポンプ40と、流入部50と、液質センサ60と、解析装置70と、制御装置80と、を備えている。
混合装置1は、機械攪拌により液体同士を混合する装置である。図1においては、混合容器10に導入されて貯留されている大容量の主液(第1液体)に対し、小容量の添加液(第2液体)が添加されて、攪拌下、主液と添加液との液−液混合が行われる。主液や添加液としては、混合の目的等に応じて、各種の溶液、分散液、単一成分の液体等がそれぞれ用いられる。
混合装置1は、後記するように、攪拌翼20(回転攪拌機)の回転数(回転速度)が、混合容器10内の液面の混合状態の指標となる、混合容器10内の液面における拡散分布、又は、混合容器10内の液面の高さ、に基づいて制御される。
混合容器10は、図1に示すように、液体を添加するための添加口を上部に有している。図1において、混合容器10は、外形が円柱状を呈しており、混合容器10の上面に、二ヶ所の添加口が設けられている。一方の添加口には、主液を混合容器10に導入するための主液流入ライン110が接続している。また、他方の添加口(流入部50)には、添加液を混合容器10内の主液に添加するための添加液流入ライン120が接続している。
主液流入ライン110には、混合容器10に導入される主液の流量を測定する主液流量センサ11が設置されている。混合容器10に導入されて貯留される主液の量は、混合容器10への導入時に、主液流量センサ11で計測されるようになっている。
また、主液流入ライン110には、混合容器10と主液流量センサ11との間に、無菌コネクタ16が連結している。無菌コネクタ16は、混合容器10内の無菌状態を維持したまま配管同士を接続可能としている。主液流入ライン110は、無菌コネクタ16を介した配管同士の連結によって形成される。
添加液流入ライン120は、混合容器10と、用意した添加液を貯留する添加液容器30とを接続している。添加液流入ライン120は、添加液容器30の入出口の近傍に、添加液流入ライン120を開閉するバルブ18を備えている。また、添加液流入ライン120は、混合容器10側の末端に流入部50を有している。流入部50は、混合容器10内に貯留されている主液の液面の上方に位置し、液面を臨むように開口している。
添加液流入ライン120には、添加液容器30に貯留されている添加液を混合容器10に導入する定量ポンプ40と、混合容器10に導入される添加液の流量を測定する添加液流量センサ12とが設置されている。添加液は、混合容器10内の液体に、定量ポンプ40によって定量的に添加されるようになっている。また、添加液の添加量は、混合容器10に導入する間に、添加液流量センサ12で計測されるようになっている。
また、添加液流入ライン120には、混合容器10と添加液流量センサ12との間に、無菌コネクタ16が連結している。無菌コネクタ16は、混合容器10内の無菌状態を維持したまま配管同士を接続可能としている。添加液流入ライン120は、無菌コネクタ16を介した配管同士の連結によって形成される。
混合容器10は、図1に示すように、混合により得られた混合液を排出するための排出口を下部に有している。排出口には、混合液を混合容器10から流出させるための混合液流出ライン130が接続している。混合液流出ライン130には、無菌コネクタ16が連結している。混合液流出ライン130は、無菌コネクタ16を介した配管同士の連結によって形成されるようになっている。
攪拌翼20を有する回転攪拌機は、混合容器10の下部に配置されている。攪拌翼20は、混合容器10の底部の中央に配置されており、攪拌翼20の回転による機械攪拌で混合が行われる。攪拌翼20を駆動する不図示のモータは、回転速度が、制御装置80によって可変制御されるようになっている。攪拌翼20の回転速度は、例えば、インバータ制御で連続的な任意値に制御される。
混合容器10は、合成樹脂製であり、折り畳み可能な可撓性を有している。また、攪拌翼20、主液流入ライン110、添加液流入ライン120及び混合液流出ライン130は、合成樹脂製である。合成樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン等や、これらの組み合わせからなる材料が用いられる。これらの部材を安価な合成樹脂で形成することにより、シングルユース(使い捨て)式での利用が可能とされている。
液質センサ60は、混合容器10の内壁の液面下に設置されている。液質センサ60は、混合容器10内の液体の状態(液質)、すなわち、溶質、分散質、化学種等の濃度や、温度等の状態量の計測を行う。液質センサ60は、混合の目的等に応じて、液体のpH、溶存酸素濃度、炭酸ガス濃度、有機物濃度、酸化還元電位、濁度、温度等を計測する各種のセンサで構成される。
液質センサ60としては、具体的には、pHセンサ、溶存酸素センサ、炭酸ガスセンサ、有機体炭素センサ、バイオセンサ、イオンセンサ、酸化還元電位センサ、吸光度センサ、濁度センサ、温度センサ等を、混合の目的等に応じて用いることができる。液質センサ60としては、一機が備えられてもよいし、複数機が備えられてもよい。また、互いに異なる液体の濃度や状態量を計測する複数種が併用されてもよい。
液質センサ60は、混合容器10に複数備える場合、それぞれが、混合容器10内の二ヶ所以上に配設されることが好ましく、混合容器10の高さ方向の異なる位置に配設されることがより好ましい。複数の液質センサ60を互いに異なる位置に配設すると、混合容器10内の液体の液質(濃度等)を多点計測することができる。そのため、後記するように、攪拌翼20の回転速度の制御に必要となる混合状態(拡散分布)を、流れ場及び拡散場の解析から正確に推定することができる。
解析装置70は、混合容器10内の液体の混合状態の解析を行う。解析装置70は、例えば、数値流体力学(Computational Fluid Dynamics:CFD)解析によるシミュレーションを行い、混合容器10内の流れ場及び拡散場を模擬的に解析する機能を備える。例えば、所定量の主液が貯留されている混合容器10における流れ場及び拡散場を、回転座標、静止座標等の適宜の座標系で定常解析によって求める。そして、定常解析による流れ場及び拡散場を初期値として非定常解析を行い、攪拌翼20の回転速度の決定に利用する、流速、濃度、温度等の分布を示す二次元又は三次元の空間分布(拡散分布)モデルを、時間軸に沿って変化する分布として得る。
解析装置70は、CFD解析のために、例えば、「ANSYS FLUENT」(ANSYS社製)等の商業的に利用可能な熱流体解析ソフトウェアを備えることができる。CFD解析は、基礎方程式として、ナビエ−ストークス方程式等に、化学種の輸送方程式を連結させて行うことができる。境界条件は、連続式、回分式及び半回分式のうち、いずれの混合方式を採用するかに応じて適宜の条件を付加する。例えば、添加液の流入条件は、流入部50から添加される添加液の液滴の大きさ、形状、分布等を予め計測することにより付加できる。
CFD解析は、混合容器10の形状、寸法や、主液及び添加液の温度、圧力や、溶媒、溶質等の粘度、熱伝導率、熱容量、物質拡散係数等の物性値に加え、攪拌翼20の形状、寸法、設置位置、段数等を設定して行ってもよい。混合容器10内の流れ場及び拡散場は、攪拌翼20の回転速度毎に予め解析される。その結果として得られる、流速、濃度、温度等の時間軸に沿って変化する空間分布(拡散分布)モデルの数値情報が、解析装置70に予め記憶される。
解析装置70は、混合容器10内の流れ場及び拡散場を模擬的に解析した結果を利用して、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)を推定する機能を有する。例えば、予め解析して得た空間分布(拡散分布)モデルを利用して、液質センサ60が設置された計測位置における液体の状態(濃度等)が所定値であるときの液面における推定値や、混合容器10内の液面の高さが所定値であるときの液面における推定値を抽出する。
解析装置70には、推定される混合容器10内の液面における拡散分布(推定値)や、混合容器10内の液面の高さに対応した、攪拌翼20の回転速度の制御用情報が予め記憶される。例えば、混合容器10内の液面における拡散分布と混合容器10内の液面の混和に必要な攪拌翼20の最小の回転速度とを紐付けた制御用情報や、混合容器10内の液面の高さと混合容器10内の液面の混和に必要な攪拌翼20の最小の回転速度とを紐付けた制御用情報が記憶される。
解析装置70は、予め記憶されている制御用情報を参照し、所定の時間間隔の計測によって求められる、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)や、混合容器10内の液面の高さに基づいて、攪拌翼20の回転速度の新しい制御目標を決定する機能を有する。解析装置70が決定した回転速度の新しい制御目標の信号は、制御装置80に伝送される。
制御装置80は、攪拌翼20(回転攪拌機)の回転速度や、定量ポンプ40の出力や、バルブ18の開閉を制御する機能を有する。定量ポンプ40の出力は、液質センサ60による計測に基づいて、比例制御、PI制御、PID制御等により制御される。攪拌翼20の回転速度は、混合の開始時には、混合の目的等に応じた既定の基本回転速度に制御される。そして、混合を行っている間には、解析装置70が決定した回転速度の新しい制御目標(新規目標値)に変更される。
図示するような混合容器10においては、容器の構造上、液質センサ60により混合容器10内の液面の状態(濃度等)を直接的に計測することが難しい。しかし、混合容器10内の流れ場及び拡散場を模擬的に解析しておくことにより、液質センサ60が設置された計測位置における計測値から、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)を推定することができる。
例えば、予め解析して得た空間分布(拡散分布)モデル上で、或る計算格子の状態(濃度等)が計測値と一致していれば、他の計算格子の状態(濃度等)が、その計算格子の位置で計測されるはずの計測値と等しい、と推定することができる。したがって、液面の状態(濃度等)の推定値を利用した計算により、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)を推定することができる。
混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)は、例えば、混合度(Γ)として数値化することが可能である。主液に添加される添加液を、或る濃度を有する濃度塊と捉えることにより、対流混合によるマクロ変化、すなわち濃度塊の大きさや移動等の変化と、拡散混合によるミクロ変化、すなわち濃度塊からの拡散による変化とに分けて、CFD解析により混合度(Γ)を計算することができる。
混合度(Γ)は、CFD解析において、化学種輸送モデルに基づく粒子トレーシングの計算を行うことにより求めることができる。混合度(Γ)は、i:観測点番号、V:体積、φ:パッシブスカラー、上付きバー:体積重み付け平均値として、次の式(I)で表される。なお、混合度(Γ)は、最終的な完全混合状態における分散値を求め得る場合には、Laceyの混合度計算式等を用いてもよい。
Figure 0006924653
液面における混合状態(拡散分布)や、液面の高さに基づいて決定する攪拌翼20の新しい回転速度(新規目標値)としては、例えば、所定時間後に液面が目的の混合度(Γ)となる最小の回転速度、液面の混合度(Γ)の時間変化が所定値以下となる回転速度等、混合容器10内の液体の混和が進む限り、任意の回転速度を設定することができる。混合度(Γ)の計算値は、所期状態で「0」、完全混合状態で「1」となるため、0〜1の間の中間値を対応させて、回転速度を設定することができる。通常、回転速度は、添加液の添加によって液面の高さが上昇するほど、高速となるように設定する。但し、完全混合状態をいつ達成する回転速度を設定するかは、混合の目的等に応じて自由に決めることができる。
設定に用いる混合度(Γ)は、液面全体を含む計算格子の全部に基づく計算値であってもよいし、添加液の落下点を含む一部の計算格子に基づく計算値であってもよい。また、液面に相当する最上層の計算格子のみから計算してもよいし、最上層を含む複数層の計算格子から計算してもよい。
次に、混合装置1を使用して行う液体の混合方法の一例について具体的に説明する。
混合装置1では、攪拌翼20(回転攪拌機)の回転速度を、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)を指標として制御することができる。この方法においては、攪拌翼20の回転速度を、混合容器10内の液面における拡散分布と攪拌翼20の回転速度との予め設定された関係と、液質センサ60による計測と、に基づいて導かれた回転速度に制御する。
図2は、混合装置を使用して行う液体の混合方法の一例を示すフロー図である。
図2においては、液質センサ60としてpHセンサを備える混合容器10において、主液と添加液との混合により、所定のpHに調整された混合液を得る流れを例示する。
この方法において、混合装置1には、混合容器10内の液面における拡散分布と攪拌翼20の回転速度との関係が、混合容器10内の流れ場及び拡散場を模擬的に解析して予め設定される。例えば、流れ場及び拡散場を模擬的に解析した結果得られた空間分布(拡散分布)モデルに基づいて、液面における拡散分布と攪拌翼20の適切な回転速度とが紐付けられ、制御用情報として予め設定される。
この方法においては、はじめに、主液の量を計測し、混合容器10に所定量の主液を貯留させる(ステップS10)。例えば、主液流入ライン110を通じて主液を導入する間に、混合容器10に導入される主液の流量を主液流量センサ11によって計測する。混合容器10に導入する主液の量は、流れ場及び拡散場を模擬的に解析したときの初期量に一致させる。
続いて、混合によって得ようとする混合液の目標pH(目標値)を設定する(ステップS11)。目標pHは、流れ場及び拡散場を模擬的に解析したときの最終状態における値に一致させる。
続いて、混合容器10において混合を開始する(ステップS12)。混合容器10における混合は、添加液の添加量を、流量、或いは、添加時間及び休止時間(デューティー比)の調節により制御しながら行う。攪拌翼20の回転速度は、攪拌の開始時、既定の基本回転速度に制御される。
続いて、混合容器10において混合を行っている間に、混合容器10内の液体のpH(計測値)を計測する(ステップS13)。液体のpHは、混合容器10の内壁に設置されたpHセンサにより、適宜の計測間隔で計測される。pHセンサによる計測位置におけるpH(計測値)の計測信号は、解析装置70に伝送される。
続いて、解析装置70は、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)と攪拌翼20の回転速度との予め設定された関係と、pHセンサによる計測と、に基づいて、攪拌翼20の新しい回転速度(新規目標値)を決定する(ステップS14)。新しい回転速度(新規目標値)は、例えば、液面における拡散分布と攪拌翼20の適切な回転速度とが紐付けられたテーブル等(制御用情報)から、計測されたpH(計測値)から推定される拡散分布に対応する回転速度値が抽出されることにより選定される。
続いて、予め設定されている混合容器10内の液体の目標pH(目標値)と、pHセンサによる計測値との差分に基づいて、混合容器10の添加口から添加する添加液の添加量を決定する(ステップS15)。添加液の添加量は、混合容器10内の局所的な濃度変化が低減されるように、流量、或いは、添加時間及び休止時間(デューティー比)の調節の下で設定する。
続いて、制御装置80は、攪拌翼20の回転速度を、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)と攪拌翼20の回転速度との予め設定された関係と、pHセンサによる計測と、に基づいて導かれた回転速度(新規目標値)に制御する(ステップS16)。攪拌翼20の回転速度は、通常、基本回転速度よりも速い回転速度に変更される。
続いて、制御装置80は、混合容器10の添加口から添加する添加液の添加量を、計測に基づいて決定された添加量に制御する(ステップS17)。制御装置80は、定量ポンプ40の出力を変更し、比例制御、PI制御、PID制御等を行う。
続いて、予め設定されている混合液の目標pH(目標値)と、pHセンサが計測したpH(計測値)との差分が許容値の範囲内であるか否かを判定する(ステップS18)。
ステップS18において、目標pH(目標値)と計測したpH(計測値)との差分が許容値の範囲内でないと(ステップS18;No)、混合液が所定のpHに調整されていないため、処理をステップS13に戻す。そして、適宜の計測間隔の下、主液と添加液との混合が続けられる。なお、所定の繰り返し回数を超えても処理を終了できない場合は、アラートを表示し、場合によっては自動的に停止する。
一方、ステップS18において、目標pH(目標値)と計測したpH(計測値)との差分が許容値の範囲内であると(ステップS18;Yes)、混合液が所定のpHに調整されているため、混合容器10における液体の混合を終了する。攪拌翼20の作動が停止されると共に、混合容器10への添加液の導入が停止されて、バルブ18が閉鎖される。なお、以上の混合方法は、液質として、pHに代えて、他の成分の濃度や状態量を用いる場合も同様にして行うことが可能である。
以上の混合装置1を使用して行う液体の混合方法によると、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)を指標として攪拌翼20の回転速度が変更される。そのため、主液に添加液を添加したとき、液面付近に生じる濃度等の状態変化を、適切な攪拌力で迅速に解消することができる。一般に、攪拌翼20は混合容器10の下部に配置され、液面側ほど攪拌力が弱くなる傾向があるところ、液面付近における液体の液質(濃度等)を直接的に計測すること無く、任意の位置に設置された液質センサ60を利用して、適切に混合を行うことができる。
また、混合装置1を使用して行う液体の混合方法によると、高濃度の添加液の濃度塊が主液に接触し続けるのを防ぐことができる。そのため、主液に細胞が含まれている場合には、細胞が高濃度の添加液で死滅又は損傷するのが防止されるし、主液にタンパク質のような高分子等が含まれている場合には、その物質が高濃度の添加液で変性、凝集等するのが防止される。
また、混合装置1を使用して行う液体の混合方法によると、液面の混和に必要な最小の回転速度に制御して混合を行うことが可能である。そのため、過剰な攪拌が行われることが無く、攪拌翼20による剪断力や衝撃力で、主液や添加液に含まれている溶質、分散質等が変質するのを防止することができる。また、混合容器10内の液体が起泡したり、攪拌翼20の駆動エネルギが余計に浪費されたりするのも防止することができる。
次に、混合装置1を使用して行う液体の混合方法の他例について具体的に説明する。
混合装置1では、攪拌翼20(回転攪拌機)の回転速度を、混合容器10内の液面の高さを指標として制御することができる。この方法においては、攪拌翼20の回転速度を、混合容器10内の液面の高さと攪拌翼20の回転速度との予め設定された関係と、主液流量センサ(液量計測器)11、及び、添加液流量センサ(液量計測器)12による計測によって求められる混合容器10内の液面の高さと、に基づいて導かれた回転速度に制御する。
図3は、混合装置を使用して行う液体の混合方法の他例を示すフロー図である。
図3においては、液質センサ60としてpHセンサを備える混合容器10において、主液と添加液との混合により、所定のpHに調整された混合液を得る流れを例示する。
この方法において、混合装置1には、混合容器10内の液面の高さと攪拌翼20の回転速度との関係が、混合容器10内の流れ場及び拡散場を模擬的に解析して予め設定される。例えば、流れ場及び拡散場を模擬的に解析した結果得られた空間分布(拡散分布)モデルに基づいて、液面の高さと攪拌翼20の適切な回転速度とが紐付けられ、制御用情報として予め設定される。
この方法においては、図2に示す方法と同様に、はじめに、主液の量を計測し、混合容器10に所定量の主液を貯留させる(ステップS20)。そして、混合によって得ようとする混合液の目標pH(目標値)を設定し(ステップS21)、混合容器10において混合を開始する(ステップS22)。
続いて、混合容器10において混合を行っている間に、混合容器10内の液面の高さ、及び、混合容器10内の液体のpH(計測値)を計測する(ステップS23)。液面の高さは、主液流量センサ11による計測、及び、添加液流量センサ12による計測によって、適宜の時間間隔で求められる。例えば、主液流量センサ11及び添加液流量センサ12による計測信号は、解析装置70に伝送される。また、液体のpHは、混合容器10の内壁に設置されたpHセンサにより、適宜の計測間隔で計測される。pHセンサによる計測位置におけるpH(計測値)の計測信号は、解析装置70に伝送される。
続いて、解析装置70は、混合容器10内の液面の高さと攪拌翼20の回転速度との予め設定された関係と、主液流量センサ11による計測、及び、添加液流量センサ12による計測によって求められた混合容器10内の液面の高さと、に基づいて、攪拌翼20の新しい回転速度(新規目標値)を決定する(ステップS24)。新しい回転速度(新規目標値)は、例えば、液面の高さと攪拌翼20の適切な回転速度とが紐付けられたテーブル等の制御用情報から、計測された液面の高さに対応する回転速度値が抽出されることにより選定される。
続いて、予め設定されている混合容器10内の液体の目標pH(目標値)と、pHセンサによる計測値との差分に基づいて、混合容器10の添加口から添加する添加液の添加量を決定する(ステップS25)。添加液の添加量は、混合容器10内の局所的な濃度変化が低減されるように、流量、或いは、添加時間及び休止時間(デューティー比)の調節の下で設定する。
続いて、制御装置80は、攪拌翼20の回転速度を、混合容器10内の液面の高さと攪拌翼20の回転速度との予め設定された関係と、混合容器10内の液面の高さと、に基づいて導かれた回転速度(新規目標値)に制御する(ステップS26)。なお、液面の高さは、解析装置70により、主液流量センサ11による計測、及び、添加液流量センサ12による計測に基づいて求められる。攪拌翼20の回転速度は、通常、基本回転速度よりも速い回転速度に変更される。
続いて、制御装置80は、混合容器10の添加口から添加する添加液の添加量を、計測に基づいて決定された添加量に制御する(ステップS27)。制御装置80は、定量ポンプ40の出力を変更し、比例制御、PI制御、PID制御等を行う。
続いて、予め設定されている混合液の目標pH(目標値)と、pHセンサが計測したpH(計測値)との差分が許容値の範囲内であるか否かを判定する(ステップS28)。
ステップS28において、目標pH(目標値)と計測したpH(計測値)との差分が許容値の範囲内でないと(ステップS28;No)、混合液が所定のpHに調整されていないため、処理をステップS23に戻す。そして、適宜の計測間隔の下、主液と添加液との混合が続けられる。所定の繰り返し回数を超えても処理を終了できない場合は、アラートを表示し、場合によっては自動的に停止する。
一方、解析装置70は、ステップS28において、目標pH(目標値)と計測したpH(計測値)との差分が許容値の範囲内であると(ステップS18;Yes)、混合液が所定のpHに調整されているため、混合容器10における液体の混合を終了する。攪拌翼20の作動が停止されると共に、混合容器10への添加液の導入が停止されて、バルブ18が閉鎖される。なお、以上の混合方法は、液質として、pHに代えて、他の成分の濃度や状態量を用いる場合も同様にして行うことが可能である。
以上の混合装置1を使用して行う液体の混合方法によると、混合容器10内の液面の高さを指標として攪拌翼20の回転速度が変更される。そのため、主液に添加液を添加したとき、液面付近に生じる濃度等の状態変化を、適切な攪拌力で迅速に解消することができる。一般に、攪拌翼20は混合容器10の下部に配置され、液面側ほど攪拌力が弱くなる傾向があるところ、添加液の添加量が累積して液面の高さが高くなった状態においても、適切に混合を行うことができる。また、図2に示す方法と同様に、主液、溶質等の変質や、起泡、駆動エネルギの浪費等を防止することができる。
次に、本発明の変形例に係る混合装置の構成について説明する。
図4は、本発明の変形例に係る混合装置の構成を示す模式図である。図4(a)は、変形例に係る混合装置の全体構成を示す模式図、図4(b)は、混合装置に備えられるスプレー式ノズルの模式断面図である。
図4(a)に示すように、前記の実施形態に係る混合装置(1)は、複数の流入部(50a,50b)から、複数箇所に添加液(第2液体)を添加する構成の混合装置(変形例に係る混合装置2)とされてもよい。
変形例に係る混合装置2において、混合容器10Aの上面には、添加口が三ヶ所設けられている。添加液(第2液体)を混合容器10A内の液体に添加するための添加液流入ライン120は、混合容器10A側が分岐しており、混合容器10A側の末端に二個の流入部(50a,50b)を有している。二個の流入部(50a,50b)は、混合容器10Aの上面に離散的に配置された二ヶ所の添加口のそれぞれに位置し、液面を臨むように開口している。
混合装置2を使用した混合操作においては、主液に混合される添加液が、二個の流入部(50a,50b)のそれぞれから同時に添加される。所定の濃度等に調整された混合液を得るにあたり、必要とされる所定の添加量の添加液を、空間的に複数に分割して主液に添加することができる。
また、図4(b)に示すように、前記の実施形態に係る混合装置(1)や、変形例に係る混合装置(2)は、添加液流入ライン120が、混合容器(10,10A)側の末端の流入部(50,50a,50b)にスプレー式ノズル50Aを備えてもよい。
スプレー式ノズル50Aは、液体を霧状ないし微小な液滴状として広範囲に散布するために備えられる。図4(b)に示すスプレー式ノズル50Aは、高圧空気室51と、溶液室52とを有している。高圧空気室51に、例えば、0.5〜10kPaの高圧空気を供給し、溶液室52に添加液を供給すると、添加液を霧状ないし微小な液滴状として、主液の液面の広範囲に散布することができる。
このような混合装置2や、スプレー式ノズル50Aによると、所定量の添加液を混合容器(10,10A)内に導入したとき、添加液の液滴と混合容器(10,10A)内の主液との接触面積が広くなる。また、添加液の液滴が、空間的に異なる位置から混合容器(10,10A)内の液面に入るので、攪拌による対流混合が進む。そのため、主液と所定量の添加液とを、より速やかに混和させて、添加液の添加により生じる濃度等の状態変化を、より迅速に解消することができる。
次に、本発明の実施例に係る混合装置の構成について説明する。
図5は、本発明の第1実施例に係る混合装置の構成を示す模式図である。
図5に示すように、前記の実施形態に係る混合装置(1)は、細胞を流加培養するための装置(第1実施例に係る混合装置3)を構成してもよい。
第1実施例に係る混合装置3においては、混合容器10に所望の細胞が播種された種培養液が導入され、混合容器10に貯留されている大容量の培養液に対し、小容量の流加液やアルカリ性溶液が添加される。培養液は、高濃度の培地成分等を含む流加液や、培養液のpHを中性付近に保つためのアルカリ性溶液が添加されながら、所定の培養条件を保って細胞を流加培養する。
混合装置3において、高濃度の培地成分等を含む流加液は、添加液流入ライン120に接続された流加液容器30aに用意される。また、培養液のpHを調整するためのアルカリ性溶液は、添加液流入ライン120に接続されたアルカリ性溶液容器30bに用意される。混合容器10の壁面には、液質センサとしてpHセンサ60a、溶存酸素センサ60b、温度センサ60c及び培地用センサ60dが備えられる。また、混合容器10の内部には、散気管90が設置され、散気管90には、散気装置100から空気と二酸化炭素との混合ガス等が供給される。
流加液やアルカリ性溶液は、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)を指標とした制御(図2参照)、又は、混合容器10内の液面の高さを指標とした制御(図3参照)に準じて、混合容器10に貯留されている培養液に添加される。流加液については、培地用センサ60dとして、例えば、有機体炭素センサ、バイオセンサ、イオンセンサ、酸化還元電位センサ等を備え、液質(濃度等)を計測して混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)を推定し、制御を行うことができる。なお、攪拌翼20の最小の回転速度は、散気装置100から供給するガスの相間物質移動を加味したCFD解析に基づいて決定してもよい。
培地用センサ60dによる計測の対象としては、例えば、グルタミン、グルコース等の培地成分や、高濃度になるにつれて細胞による物質の産生を阻害する成分や、細胞を死滅又は損傷させる物質や、細胞の代謝を阻害する物質や、培養液中の成分を変質させる物質や、副生成物を生成する物質等が挙げられる。培地用センサ60dは、図示する流加液に代えて、その他の添加液の液質(濃度等)を計測してもよい。
混合装置3は、生物由来の物質を分離精製する分離精製システムに組み込んで使用することが可能である。例えば、抗体医薬の製造を目的とし、抗体産生細胞を培養した培養液から抗体を分離精製する分離精製システム等に使用することができる。物質産生細胞を培養した培養液は、混合液流出ライン130を通じて、精製カラムに流出させて、精製された物質を回収する。
このように、細胞を流加培養するための混合装置を構成すると、培養液に流加液やアルカリ性溶液を添加したとき、液面付近に生じる極端な培地成分の濃度変化やpH変化を、適切な攪拌力で迅速に解消することができる。一般に、高濃度の培地成分を含む流加液を添加すると、栄養濃度が高い領域が局所的に形成され、その領域において、細胞の代謝速度が変化することが知られている。しかし、このような領域が、適切な攪拌力によって無くなるため、混合容器10内で培養されている細胞を、適切な栄養濃度の下で均一に生育させて、高効率で物質を産生させることができる。また、細胞等が、培養液のアルカリ性化により、凝集したり、目的物質の立体構造や化学構造が変性したりするのも防止することができる。
図6は、本発明の第2実施例に係る混合装置の構成を示す模式図である。
図6に示すように、前記の実施形態に係る混合装置(1)は、ウイルスが含まれている液体(含ウイルス液)をウイルス不活化処理するための装置(第2実施例に係る混合装置4)を構成してもよい。
第2実施例に係る混合装置4においては、混合容器10に含ウイルス液が導入され、混合容器10に貯留されている大容量の含ウイルス液に対し、小容量の酸性溶液が添加される。含ウイルス液は、高濃度の酸性溶液の添加によりpH3程度まで酸性化され、混入しているウイルスが不活化される。そして、不活化された液体は、アルカリ性溶液の添加により中和された後、処理済液(ウイルス不活化液)として回収される。
混合装置4において、ウイルスを不活化させるための酸性溶液は、添加液流入ライン120に接続された酸性溶液容器30cに用意される。また、酸性化した含ウイルス液を中和するためのアルカリ性溶液は、添加液流入ライン120に接続されたアルカリ性溶液容器30dに用意される。混合容器10の壁面には、液質センサ60としてpHセンサが備えられる。
酸性溶液やアルカリ性溶液は、混合容器10内の液面における混合状態(拡散分布)を指標とした制御(図2参照)、又は、混合容器10内の液面の高さを指標とした制御(図3参照)に従って、混合容器10に貯留されている含ウイルス液に添加され、攪拌下、混合容器10内の液体のpHが調整される。
混合装置4は、生物由来の物質を分離精製する分離精製システムに組み込んで使用することが可能である。例えば、抗体産生細胞を培養した培養液から抗体を分離精製する、抗体医薬の製造を目的とした分離精製システム等に使用することができる。このような分離精製の過程では、培養液中や細胞中にウイルスが生存していると、製造物に混入して抗体医薬の安全性を損ねるため、含ウイルス液をpH3程度の酸性下、所定時間保持することによりウイルス不活化処理する。
分離精製システムにおいては、例えば、主液流入ライン110を、アフィニティクロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ等による精製を行う精製カラムに接続し、物質産生細胞を培養した培養液を精製カラムに通じて精製した後、混合容器10に導入してウイルス不活化処理を行うことができる。そして、処理済液(ウイルス不活化液)は、混合液流出ライン130を通じて、他の精製カラムや、生成物回収用の容器に流出させる。
このように、ウイルス不活化処理するための混合装置を構成すると、含ウイルス液に酸性溶液やアルカリ性溶液を添加したとき、液面付近に生じる極端なpH変化を、適切な攪拌力で迅速に解消することができる。そのため、含ウイルス液に含まれている抗体等が、溶液の酸性化やアルカリ性化により、凝集したり、立体構造や化学構造が変性したりするのを防止することができる。また、酸性溶液やアルカリ性溶液を速やかに混和させて短時間で処理できるため、処理中に抗体等が劣化するのを避けることができる。すなわち、生物由来の物質等を、生産性高く分離精製して回収することができる。
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、前記の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、或る実施形態や変形例の構成の一部を他の実施形態や変形例の構成に置き換えたり、或る実施形態や変形例の構成の一部を他の実施形態や変形例に追加したり、或る実施形態や変形例の構成の一部を省略したりすることも可能である。
例えば、前記の混合容器(10,10A)は、一本の添加液流入ライン120を通じて添加液を添加する構成とされているが、複数種の添加液を複数本のラインを通じて複数の添加口から添加する構成とされてもよい。また、前記の混合容器(10,10A)は、折り畳み可能な可撓性を有する合成樹脂製とされているが、ステンレス鋼等の金属製であってもよいし、容易に変形しない程度の剛性を有する合成樹脂製であってもよい。また、前記の混合容器(10,10A)は、多角形状等の他の形状であってもよい。また、攪拌翼20は、タービン翼、パドル翼、プロペラ翼、格子翼等の適宜の形状であってよいし、翼段数、翼径、翼高さ等は、容器に応じて適宜の条件にすることができる。
また、図2及び図3においては、センサによる計測(ステップS13、ステップS23参照)を混合中に実行しているが、混合の開始前に行ってもよい。すなわち、所定の添加量の添加液を添加する毎に、制御した回転速度で攪拌を行ってもよい。また、回転速度の決定(ステップS14、ステップS24参照)と添加液の添加量の決定(ステップS15、ステップS25参照)や、回転速度の制御(ステップS16、ステップS26参照)と添加液の添加量の制御(ステップS17、ステップS27参照)は、それぞれ、順序が入れ替えられてもよい。
1,2,3,4 混合装置
10,10A 混合容器(容器)
11 主液流量センサ(液量計測器)
12 添加液流量センサ(液量計測器)
16 無菌コネクタ
18 バルブ
20 攪拌翼(回転攪拌機)
30 添加液容器
40 定量ポンプ
50 流入部
60 液質センサ
70 解析装置
80 制御装置
110 主液流入ライン(第1液体流入ライン)
120 添加液流入ライン(第2液体流入ライン)
130 混合液流出ライン

Claims (11)

  1. 液体を添加するための添加口を上部に有し、内部に貯留されている第1液体に前記添加口から第2液体を添加して混合する容器と、
    前記容器の下部に配置され、前記容器内の液体を攪拌する回転攪拌機と、
    前記容器に貯留される液体の量を計測する液量計測器と、
    前記容器内の液質を計測する液質センサと、
    前記回転攪拌機の回転速度を制御する制御装置と、を備え、
    前記制御装置は、前記第2液体の添加量を、前記容器内の液質について予め設定された目標値と前記液質センサによる計測値との差分に基づいて制御し、前記回転攪拌機の回転速度を、前記添加量の下で、前記容器に貯留される液体の量及び前記容器内の液質に応じて求められた前記容器内の液面における拡散分布と前記回転攪拌機の回転速度との予め設定された関係と、前記液量計測器による計測と、前記液質センサによる計測と、に基づいて導かれた前記容器内の液面における拡散分布が所定の分布となる回転速度に制御する混合装置。
  2. 液体を添加するための添加口を上部に有し、内部に貯留されている第1液体に前記添加口から第2液体を添加して混合する容器と、
    前記容器の下部に配置され、前記容器内の液体を攪拌する回転攪拌機と、
    前記容器に貯留される液体の量を計測する液量計測器と、
    前記容器内の液質を計測する液質センサと、
    前記回転攪拌機の回転速度を制御する制御装置と、を備え、
    前記制御装置は、前記第2液体の添加量を、前記容器内の液質について予め設定された目標値と前記液質センサによる計測値との差分に基づいて制御し、前記回転攪拌機の回転速度を、前記添加量の下で、前記容器内の液質に応じて求められた前記容器内の液面の高さと前記回転攪拌機の回転速度との予め設定された関係と、前記液量計測器による計測によって求められる前記容器内の液面の高さと、前記液質センサによる計測と、に基づいて導かれた前記容器内の液面における拡散分布が所定の分布となる回転速度に制御する混合装置。
  3. 前記液質センサが、pH、溶存酸素濃度、炭酸ガス濃度、有機物濃度、酸化還元電位、濁度、又は、温度を計測する請求項1又は請求項2に記載の混合装置。
  4. 前記液質センサを複数備え、
    複数の前記液質センサのそれぞれが、前記容器内の二ヶ所以上に配設されている請求項1又は請求項2に記載の混合装置。
  5. 前記容器、前記回転攪拌機の攪拌翼、及び、前記容器に接続される配管が、合成樹脂製である請求項1又は請求項2に記載の混合装置。
  6. 前記容器、前記回転攪拌機の攪拌翼、及び、前記容器に接続される配管が、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、又は、これらの組み合わせからなる請求項1又は請求項2に記載の混合装置。
  7. 前記容器に接続される配管が、無菌コネクタを備える請求項1又は請求項2に記載の混合装置。
  8. 前記添加口に接続される配管が、前記容器側の末端にスプレー式ノズルを備える請求項1又は請求項2に記載の混合装置。
  9. 前記容器が、複数の前記添加口を有し、
    前記第2液体を添加するための分岐した配管が、複数の前記添加口のそれぞれに接続している請求項1又は請求項2に記載の混合装置。
  10. 液体を添加するための添加口を上部に有し、内部に貯留されている第1液体に前記添加口から第2液体を添加して混合する容器と、
    前記容器の下部に配置され、前記容器内の液体を攪拌する回転攪拌機と、
    前記容器に貯留される液体の量を計測する液量計測器と、
    前記容器内の液質を計測する液質センサと、を備える混合装置において、
    前記容器内の液面における拡散分布と前記回転攪拌機の回転速度との関係を、流れ場及び拡散場を模擬的に解析して予め設定し、
    前記第1液体に前記第2液体を混合している間に、前記容器内の液質を計測し、
    前記回転攪拌機の回転速度を、前記容器内の液質について予め設定された目標値と前記液質センサによる計測値との差分に基づいて制御される前記第2液体の添加量の下で、前記容器に貯留される液体の量及び前記容器内の液質に応じて求められた前記容器内の液面における拡散分布と前記回転攪拌機の回転速度との予め設定された関係と、前記液量計測器による計測と、前記液質センサによる計測と、に基づいて導かれた前記容器内の液面における拡散分布が所定の分布となる回転速度に制御し、
    予め設定された前記関係、前記液量計測器による計測及び前記液質センサによる計測に基づいて前記回転速度を変更しながら混合を行う混合方法。
  11. 液体を添加するための添加口を上部に有し、内部に貯留されている第1液体に前記添加口から第2液体を添加して混合する容器と、
    前記容器の下部に配置され、前記容器内の液体を攪拌する回転攪拌機と、
    前記容器に貯留される液体の量を計測する液量計測器と、
    前記容器内の液質を計測する液質センサと、を備える混合装置において、
    前記容器内の液面の高さと前記回転攪拌機の回転速度との関係を、流れ場及び拡散場を模擬的に解析して予め設定し、
    前記第1液体に前記第2液体を混合している間に、前記容器内の液面の高さを計測し、
    前記回転攪拌機の回転速度を、前記容器内の液質について予め設定された目標値と前記液質センサによる計測値との差分に基づいて制御される前記第2液体の添加量の下で、前記容器内の液質に応じて求められた前記容器内の液面の高さと前記回転攪拌機の回転速度との予め設定された関係と、前記液量計測器による計測によって求められる前記容器内の液面の高さと、前記液質センサによる計測と、に基づいて導かれた前記容器内の液面における拡散分布が所定の分布となる回転速度に制御し、
    予め設定された前記関係、前記容器内の液面の高さ及び前記液質センサによる計測に基づいて前記回転速度を変更しながら混合を行う混合方法。
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