JP6923875B2 - 腫瘍細胞のcd47発現を抑制するための薬剤組成物およびその利用 - Google Patents

腫瘍細胞のcd47発現を抑制するための薬剤組成物およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、腫瘍細胞のCD47発現を抑制するのに有効な量の細胞生産物質を含む薬剤組成物に関する。また、本発明は、該組成物を利用することを特徴とする、腫瘍細胞のCD47発現を抑制する方法に関する。
腫瘍細胞の細胞膜に存在するタンパク質の一種である「CD47」は、「Don’t eat me signal」とも呼ばれているように、腫瘍細胞(乳がん細胞、卵巣がん細胞、子宮がん(子宮頸がんおよび子宮体がんを包含する。以下同じ。)細胞、前立腺がん細胞、膀胱がん細胞、大腸がん細胞、肝臓がん細胞、扁平上皮がん細胞、脳腫瘍細胞、等)においてCD47を多量に発現することによって、マクロファージ、樹状細胞等の免疫細胞による自身への攻撃(貪食作用等)が回避されてしまうことが知られている。
したがって、腫瘍細胞(がん細胞)におけるCD47の発現を抑制することは、当該腫瘍細胞(がん細胞)に対する免疫療法の効果を増大させ得るという観点から、極めて重要なアプローチである。例えば、抗CD47抗体を患者に投与することによってCD47をブロックすることを目的とする抗腫瘍性の薬剤組成物の開発が進んでいる。例えば、特許文献1や特許文献2には、抗CD47抗体を主成分とする薬剤組成物(抗腫瘍性の薬学的組成物)の一例が開示されている。
特開2007−8895号公報 特表2015−536351号公報
しかしながら、上記のような抗CD47抗体を用いる抗腫瘍剤では、腫瘍細胞の細胞膜に多量に発現したCD47の活性を効果的に阻害することが困難であり、当該抗体を用いた場合の作用効果の更なる増強が要求されている。
そこで本発明は、かかる抗CD47抗体を使用する抗腫瘍アプローチとは異なり、腫瘍細胞におけるCD47発現そのものを抑制することにより、免疫細胞の当該腫瘍細胞への攻撃(貪食作用等)を容易にする方法と該方法に用いられる材料(薬剤組成物)を提供することを目的とする。
上記目的を実現するべく、ここで開示される腫瘍細胞におけるCD47の発現を抑制するための薬剤組成物は、
培養腫瘍細胞が生産したエクソソームであって、上記CD47の発現の抑制に有効な量のエクソソームと、
薬学的に許容可能な担体と、
を含むことを特徴とする、薬剤組成物(薬学的に用いられる組成物)である。
エクソソーム(Exosome)は、生体中の種々の細胞あるいは培養細胞から分泌される直径がおよそ20nm〜200nm程度の膜小胞であり、種々のタンパク質、脂質、RNA等の核酸を内部に含むことが知られている。
本発明者は、驚くべきことに、インビトロで培養した腫瘍細胞の培地から回収したエクソソームを、対象とする腫瘍細胞に供給することにより、当該腫瘍細胞のCD47の発現を顕著に抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ここで開示される薬剤組成物とともに、腫瘍細胞におけるCD47の発現を抑制する方法であって、
対象とする上記腫瘍細胞に対して、別途培養した腫瘍細胞が生産したエクソソームであって、上記CD47の発現の抑制に有効な量のエクソソームを供給することを特徴とする、CD47発現抑制方法を提供する。
ここで開示される薬剤組成物ならびにCD47発現抑制方法によると、対象(標的)とする腫瘍細胞(ならびに該細胞からなる腫瘍組織)におけるCD47の産生量を低減することができる。このため、当該腫瘍細胞に対するマクロファージ、樹状細胞その他の免疫系細胞(T細胞等)による攻撃を助長することができる。したがって、ここで開示される薬剤組成物ならびにCD47発現抑制方法によると、当該腫瘍細胞に対するがん免疫療法の有効性を向上させることができる。
ここで開示される薬剤組成物ならびにCD47発現抑制方法の好適な一態様では、上記培養腫瘍細胞(上記エクソソーム生産のために培養した腫瘍細胞)は、扁平上皮がん細胞および子宮がん細胞のうちのいずれかであることを特徴とする。
これらのがん種の培養細胞由来のエクソソームは、対象とする腫瘍細胞(例えば、扁平上皮がん細胞、子宮がん細胞、乳がん細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、膀胱がん細胞、大腸がん細胞、肺がん細胞、肝臓がん細胞、扁平上皮がん細胞、脳腫瘍細胞、リンパ腫細胞、骨髄腫細胞)のCD47発現を好適に抑制することができる。
また、ここで開示される薬剤組成物ならびにCD47発現抑制方法の好適な他の一態様では、上記培養腫瘍細胞(上記エクソソーム生産のために培養した腫瘍細胞)は、上記CD47の発現を抑制する対象(標的)である腫瘍細胞由来であることを特徴とする。
対象腫瘍細胞と同じ腫瘍細胞(または対象腫瘍組織から取得した腫瘍細胞)を培養して生産、回収したエクソソームを使用することによって、標的とする腫瘍細胞(ならびに該細胞からなる腫瘍組織)におけるCD47の産生量を低減することができる。また、対象腫瘍細胞と同じ腫瘍細胞(または対象腫瘍組織から取得した腫瘍細胞)から得られるエクソソームの使用は、免疫反応が生じるリスクをより低減し得るため、インビトロにおける実施に加えてインビボにおけるCD47発現抑制方法の実施に好ましい態様である。
また、ここで開示される薬剤組成物の好適な他の一態様は、上記エクソソームとして、上記培養腫瘍細胞の培養液中から超遠心分離法によって単離されたエクソソームを含むものである。同様に、ここで開示されるCD47発現抑制方法の好適な他の一態様は、上記エクソソームとして、上記培養した腫瘍細胞の培養液中から超遠心分離法によって単離されたエクソソームを使用することを特徴とする。
超遠心分離法によって単離されたエクソソームの使用によると、標的とする腫瘍細胞(ならびに該細胞からなる腫瘍組織)におけるCD47の産生量を効果的に低減することができる。
培養腫瘍細胞(A431細胞)から回収したエクソソームを対象腫瘍細胞(培養HeLa細胞)に添加したときのCD47産生量の変化を調べたグラフであり、対象腫瘍細胞(培養HeLa細胞)の培地中の添加エクソソーム濃度(0μg/mL、5μg/mL、20μg/mL)別の結果を、抗CD47抗体を用いた蛍光抗体法(蛍光免疫染色法ともいう。以下同じ。)に基づく相対蛍光強度差(エクソソーム無添加区(0μg/mL)を強度100としたときの相対値)で示す。同様の試験を独立して3回繰り返したときの平均値を棒グラフで示し、標準偏差(±SD)をエラーバーで示す。 培養腫瘍細胞(A431細胞)から回収したエクソソームを対象腫瘍細胞(培養HeLa細胞)に添加したときの細胞生存率(%)を調べたグラフであり、対象腫瘍細胞(培養HeLa細胞)の培地中の添加エクソソーム濃度(0μg/mL、5μg/mL、20μg/mL)別の結果を、エクソソーム無添加区(0μg/mL)での細胞生存率を100%としたときの相対値で示す。同様の試験を独立して3回繰り返したときの平均値を棒グラフで示し、標準偏差(±SD)をエラーバーで示す。 培養腫瘍細胞(HeLa細胞)から回収したエクソソームを同じ細胞種である対象腫瘍細胞(培養HeLa細胞)に添加したときのCD47産生量の変化を調べたグラフであり、対象腫瘍細胞(培養HeLa細胞)の培地中の添加エクソソーム濃度(0μg/mL、5μg/mL)別の結果を、抗CD47抗体を用いた蛍光抗体法に基づく相対蛍光強度差(エクソソーム無添加区(0μg/mL)を強度100としたときの相対値)で示す。同様の試験を独立して3回繰り返したときの平均値を棒グラフで示し、標準偏差(±SD)をエラーバーで示す。 培養非腫瘍細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来のCHO−K1細胞)から回収したエクソソームを対象腫瘍細胞(培養HeLa細胞)に添加したときのCD47産生量の変化を調べたグラフであり、対象腫瘍細胞(培養HeLa細胞)の培地中の添加エクソソーム濃度(0μg/mL、5μg/mL)別の結果を、抗CD47抗体を用いた蛍光抗体法に基づく相対蛍光強度差(エクソソーム無添加区(0μg/mL)を強度100としたときの相対値)で示す。同様の試験を独立して3回繰り返したときの平均値を棒グラフで示し、標準偏差(±SD)をエラーバーで示す。 培養腫瘍細胞(A431細胞)から回収したエクソソームを同じ細胞種である対象腫瘍細胞(培養A431細胞)に添加したときのCD47産生量の変化を調べたグラフであり、対象腫瘍細胞(培養A431細胞)の培地中の添加エクソソーム濃度(0μg/mL、5μg/mL、20μg/mL)別の結果を、抗CD47抗体を用いた蛍光抗体法に基づく相対蛍光強度差(エクソソーム無添加区(0μg/mL)を強度100としたときの相対値)で示す。同様の試験を独立して3回繰り返したときの平均値を棒グラフで示し、標準偏差(±SD)をエラーバーで示す。 培養腫瘍細胞(A431細胞)から回収したエクソソームを同じ細胞種である対象腫瘍細胞(培養A431細胞)に添加したときの細胞生存率(%)を調べたグラフであり、対象腫瘍細胞(培養A431細胞)の培地中の添加エクソソーム濃度(0μg/mL、5μg/mL、20μg/mL)別の結果を、エクソソーム無添加区(0μg/mL)での細胞生存率を100%としたときの相対値で示す。同様の試験を独立して3回繰り返したときの平均値を棒グラフで示し、標準偏差(±SD)をエラーバーで示す。 培養腫瘍細胞(A431細胞)から回収したエクソソームを対象腫瘍細胞(培養MDA−MB−231細胞)に添加したときのCD47産生量の変化を調べたグラフであり、対象腫瘍細胞(培養MDA−MB−231細胞)の培地中の添加エクソソーム濃度(0μg/mL、5μg/mL、20μg/mL)別の結果を、抗CD47抗体を用いた蛍光抗体法に基づく相対蛍光強度差(エクソソーム無添加区(0μg/mL)を強度100としたときの相対値)で示す。同様の試験を独立して3回繰り返したときの平均値を棒グラフで示し、標準偏差(±SD)をエラーバーで示す。 培養腫瘍細胞(A431細胞)から回収したエクソソームを対象腫瘍細胞(培養MDA−MB−231細胞)に添加したときの細胞生存率(%)を調べたグラフであり、対象腫瘍細胞(培養MDA−MB−231細胞)の培地中の添加エクソソーム濃度(0μg/mL、5μg/mL、20μg/mL)別の結果を、エクソソーム無添加区(0μg/mL)での細胞生存率を100%としたときの相対値で示す。同様の試験を独立して3回繰り返したときの平均値を棒グラフで示し、標準偏差(±SD)をエラーバーで示す。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば細胞培養技法、薬剤組成物の調製に関するような一般的事項)は、細胞工学、生理学、医学、薬学、有機化学、生化学等の分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本明細書において、「エクソソーム」とは、種々の真核細胞から細胞外に分泌される脂質二重膜でできた小胞を意味する。典型的には、直径がおよそ20nm〜200nmの小胞であるが、培養腫瘍細胞から産生されたものであればよく、エクソソームのサイズや形態自体に特に制限はない。
ここで開示される薬剤組成物の主成分として用いられるエクソソームは、種々の培養腫瘍細胞から分泌されるエクソソームを回収して用いる。例えば、乳がん細胞、卵巣がん細胞、子宮がん細胞、前立腺がん細胞、膀胱がん細胞、大腸がん細胞、肝臓がん細胞、扁平上皮がん細胞、脳腫瘍細胞、リンパ腫細胞、骨髄腫細胞、等の腫瘍細胞を、通常の培地で所定時間だけ培養し、その培地中から種々の方法で回収、精製し、使用することができる。例えば、通常入手可能な(典型的には市販されている)培養腫瘍細胞株、例えば、ヒト子宮頸がん細胞由来のHeLa細胞、ヒト扁平上皮がん細胞由来のA431細胞等は、エクソソームの生産に好適に使用し得る培養腫瘍細胞株である。
培養腫瘍細胞の培養条件や選択する培地構成材料は、使用する培養腫瘍細胞の種類に応じて従来から推奨される条件や培地構成材料に準じればよく、本発明の実施にあたって特に制限はない。例えば、DMEM、MEM、α−MEM、GMEM、Ham’sF−12、等の市販される培地に、FBS等の血清ならびに必要に応じて抗生物質等の成分を添加して調製した培地を使用することができる。
培養期間は、特に限定しないが、夾雑物の少ない十分量のエクソソームを効率的に回収するという観点から、COリッチ(例えば5%程度のCO濃度)雰囲気中、血清由来動物のエクソソームが混入していない血清含有培地を用い、37℃前後の温度条件で2〜7日程度の培養後、培養液からエクソソームを単離、回収することが好ましい。
培養液中からエクソソームを回収する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、従来からよく行われている超遠心分離法(例えば、Thery C., Curr. Protoc. Cell Biol. (2006) Chapter 3:Unit 3.22.参照)により、エクソソームを単離、回収することができる。
あるいはまた、免疫沈降法、FACS法、限外濾過法、ゲル濾過法、フィルター法、HPLC法、ポリマーやビーズ等に吸着させる方法等によって、培養液中からエクソソームを単離、回収することができる。市販のエクソソーム単離用試薬(キット)を採用して、エクソソームを単離、回収してもよい。例えば、コスモ・バイオ社等からエクソソーム単離キットを購入し、使用することで所望するエクソソームを単離、回収することができる。
好適には、超遠心分離法に基づいてエクソソームを単離、回収することができる。この方法によると、特定の成分が流出する(回収困難となる)のを防止してエクソソーム全体の回収が確実に行われる。特に限定しないが、例えば、予め300×g〜10,000×g程度の遠心力で数段階(例えば4℃条件下で、300×gを5分〜20分、2,000×gを5分〜20分、10,000×gを20分〜30分)ほど前処理の遠心分離をすることによって夾雑物を排除し、次いで、100,000×g〜200,000×g程度の遠心力で60分〜90分程度の超遠心分離を行うことによって、夾雑物が少なく高純度のエクソソームを得ることができる。
上述した方法(例えば超遠心分離法)によりエクソソームが回収されたことは、透過型電子顕微鏡を用いた観察(典型的にはネガティブ染色)、あるいは、ウエスタンブロッティング、ELISA、FACS等の手法(典型的には免疫学的手法)によりエクソソームのマーカータンパク質(例えばCD9、CD63、CD81等)を検出する方法、等によって確認することができる。また、エクソソーム由来のRNAを測定してもよい。
なお、回収したエクソソーム量であるが、エクソソーム自体が種々の化合物の混合物といえるものであり、その全体量を質量で表わすのは困難であり、現実的ではない。このため、ここでは、エクソソーム量を、該エクソソーム中に含まれる全タンパク質量換算で示すものとする。即ち、回収したエクソソームの分散液中における全タンパク質量を測定することで、回収したエクソソーム量(g)とみなす。具体的には、回収したエクソソームの分散液中に1μg/mLの全タンパク質が含まれていた場合には、該エクソソーム分散液中には、1μg/mLのエクソソームが含まれているものとして扱うこととする。
ここで開示される薬剤組成物の実施(適用)対象、即ち、ここで開示されるCD47発現抑制方法の実施対象である標的腫瘍細胞は、腫瘍細胞である限り、特に制限されない。例えば、乳がん細胞、卵巣がん細胞、子宮がん細胞、前立腺がん細胞、膀胱がん細胞、大腸がん細胞、肝臓がん細胞、扁平上皮がん細胞、脳腫瘍細胞、リンパ腫細胞、骨髄腫細胞等の腫瘍細胞、あるいはこれら腫瘍細胞からなる主要組織が適用対象(標的)となり得る。インビトロで継代培養あるいは一時的に培養される腫瘍細胞(又は該細胞からなる組織)に対する実施であってもよいし、インビボ(すなわち患者の体内)における腫瘍細胞(又は該細胞からなる組織)に対する実施であってもよい。
ここで開示される薬剤組成物は、有効成分であるエクソソームをそのCD47発現抑制活性を失わずに有効量含有している限りにおいて、使用形態に応じて薬学(医薬)上許容され得る種々の担体を含み得る。例えば、希釈剤、賦形剤等として、一般にペプチド医薬において使用され得る担体を適用することができる。
ここで開示される薬剤組成物の用途や形態に応じて適宜異なり得るが、典型的には、水、生理学的緩衝液(PBS等)、種々の有機溶媒が挙げられる。適当な濃度のアルコール(エタノール等)水溶液、グリセロール、オリーブ油のような不乾性油であり得る。あるいはリポソームであってもよい。また、副次的含有成分として、種々の充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、表面活性剤、色素、香料等が挙げられる。
ここで開示される薬剤組成物は、腫瘍細胞のCD47発現を抑制するという観点から、抗腫瘍組成物あるいは抗腫瘍剤とも呼称し得る。その典型的な形態として、液剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル、泡沫剤、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル、軟膏、水性ジェル剤等が挙げられる。また、注射等に用いるため、使用直前に生理食塩水又は適当な緩衝液(例えばPBS)等に溶解して薬液を調製するための凍結乾燥物、造粒物とすることもできる。
なお、種々の形態の薬剤組成物を調製するプロセス自体は従来公知の方法に準じればよく、かかる製法自体は本発明を特徴付けるものでもないため詳細な説明は省略する。処方に関する詳細な情報源として、例えばComprehensive Medicinal Chemistry, Corwin Hansch監修,Pergamon Press刊(1990)等が挙げられる。この書籍の全内容は本明細書中に参照として援用されている。
ここで開示される薬剤組成物は、その目的に応じた形態、方法、用量で使用することができる。
例えば、インビトロ(生体外)で培養している腫瘍細胞(又は該細胞からなる組織)に対してエクソソームを供給する目的で使用する場合においては、有効な適当量のエクソソームを、対象の腫瘍細胞(又は組織)に対し、培養過程のいずれかの段階(例えば、培養開始後初期の段階、または所定の期間培養(増殖)や継代を行った後)で培地に添加するとよい。
添加量および添加の回数は、腫瘍細胞の種類、細胞密度(培養開始時の細胞密度)、継代数、培養条件、培地の種類、等の条件によって異なり得るため特に限定されない。有効量として、培地中のエクソソーム濃度が、概ね5μg/mL以上であることが好ましく、10μg/mL以上であることが好ましい。一方、あまり多量のエクソソームを供給してしまうと、他の生理活性に影響が生じることもあり得るため、好ましくない。特に限定しないが、例えば、培地中のエクソソーム濃度が、概ね5μg/mL以上100μg/mL以下程度が適当であり、10μg/mL以上50μg/mL以下程度(例えば20μg/mL以上30μg/mL以下)が好適である。CD47発現抑制効果を一定期間以上継続させるためには、複数回の添加(例えば上記濃度となるように、1〜2回/1日から1回/1〜2日程度の間隔で繰り返す。)が好ましい。
あるいは、ここで開示される薬剤組成物を患者(即ち生体内:インビボ)に所望量供給することもできる。投与方法は特に限定されない。例えば、静脈内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内等への注射、経口投与、吸入投与、経皮投与、経粘膜投与、坐剤投与等が挙げられる。患部(腫瘍細胞あるいは該細胞からなる腫瘍組織)に直接供給する手段が特に好ましい。例えば、埋め込み製剤として皮下や筋膜下等に埋め込む方法で投与してもよい。
なお、ここで開示される薬剤組成物ならびにCD47発現抑制方法の実施対象の生物は、ヒト、若しくはヒト以外の動物(典型的は哺乳動物)であり得る。ヒトを対象とすることは、医療産業上の価値が高いため、特に好ましい。また、マウス、ラット、モルモット、ラビット、イヌ、カニクイサル等の試験動物を適応対象とすることは、種々の研究開発を促進する観点から好ましい。また、イヌ、ネコ等の愛玩動物を適応対象にすることは、動物医療産業上の利用価値が高いため好ましい。
ここで開示される薬剤組成物を人体その他の生体中に投与する場合は、供給するエクソソームおよび該エクソソームを含む組成物に対する安全性の確保や、免疫反応の低減が要求される。
かかる観点からは、採用する培養腫瘍細胞(エクソソーム生産源)は、標的とする腫瘍細胞(および腫瘍組織)と、生物種が同一であることが好ましい。例えば、ヒトの腫瘍細胞に外来物質を導入する場合であれば、ヒト由来の培養腫瘍細胞が生産したエクソソームを用いることが好ましい。このことに関する一態様として、培養腫瘍細胞(エクソソーム生産のための培養腫瘍細胞)として、CD47の発現を抑制する対象(標的)である腫瘍細胞由来の細胞を用いることが挙げられる。例えば、ヒトの乳がん細胞および該細胞からなる乳がん組織)を標的とする場合、予め、当該乳がん組織から細胞を採取しておき、当該細胞を培養してエクソソームを生産し、使用することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<試験1:エクソソームの生産および回収>
ここでは、以下に示す、計3種の細胞株を入手し、エクソソーム生産用の培養細胞とした。
(1)HeLa細胞(ヒト子宮頸がん細胞由来の樹立細胞株)
(2)A431細胞(ヒト扁平上皮がん細胞由来の樹立細胞株)
(3)CHO−K1細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来の樹立細胞株)

上記のうち(1)HeLa細胞については、理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室より入手した。(2)A431細胞および(3)については、米国ATCCより入手した。入手した各細胞株は、(1)についてはα−MEM培地(ギブコ社製)、(2)についてはMEM培地(ギブコ社製)、(3)についてはHam’sF−12培地(ギブコ社製)を用いて培養した。培地には、10%濃度となるようにFBSを加え、5%CO条件下、37℃で継代培養した。
而して、直径100mmの培養用ディッシュに、10%濃度となるFBS(血清由来動物のエクソソームが除去されたFBS)を含む上記対応する培地を適量入れ、そこに上記(1)〜(3)の何れかを3×10セル/ディッシュとなるように播種した。そして、5%CO条件下、37℃で3日間培養した。
3日間の培養終了後、培養液を回収して超遠心分離に供し、エクソソームを単離、回収した。具体的には、いずれも4℃条件下、以下のとおり連続的に遠心分離を行った。即ち、回収した培養液を300×gで10分間の遠心分離処理し、上清を回収し、2000×gで10分間の遠心分離処理した。次いで上清を回収し、10,000×gで30分間の遠心分離処理し、上清を回収し、100,000×gで70分間×2回の超遠心分離処理を行った。
そして、上記超遠心分離終了後、沈殿物をPBSに分散して回収した。以上の処理により、上記(1)HeLa細胞由来のエクソソーム分散液、(2)A431細胞由来のエクソソーム分散液、および(3)CHO−K1細胞由来のエクソソーム分散液を得た。
回収したエクソソームの濃度は、Pierce(商標)BCA Protein Assay Kit(BCAタンパク質アッセイキット:Thermo Fisher Scientific社製)を用いて定量した全タンパク質濃度(μg/mL)をエクソソーム濃度(μg/mL)として扱う。後述する試験に備えて、各エクソソーム分散液のエクソソーム濃度は、PBSによって適宜希釈し、濃度調整を行った。
<試験2:対象腫瘍細胞へのエクソソームの供給とCD47産生(発現)量の計測>
ここでは、以下に示す、計3種の細胞株を入手し、エクソソームを供給する対象の腫瘍細胞とした。
(A)HeLa細胞(ヒト子宮頸がん細胞由来の樹立細胞株)
(B)A431細胞(ヒト扁平上皮がん細胞由来の樹立細胞株)
(C)MDA−MB−231細胞(ヒト乳腺がん由来の樹立細胞株)

上記のうち(A)HeLa細胞、および(B)A431細胞は、上記エクソソーム生産用の培養腫瘍細胞である(1)HeLa細胞、および(2)A431細胞と、それぞれ同じ細胞株である。また、(C)MDA−MB−231細胞は、英国ECACCより入手した。入手した各細胞株は、(A)についてはα−MEM培地(ギブコ社製)、(B)および(C)についてはMEM培地(ギブコ社製)を用いて培養した。培地には、10%濃度となるようにFBSを添加し、5%CO条件下、37℃で継代培養した。
而して、市販の24ウェル・マイクロプレート(Iwaki社製)を用いて、各ウェルに10%濃度となるFBSを含む上記対応する培地を適量入れ、そこに上記(A)〜(C)の腫瘍細胞の何れかを1.4×10セル/ウェルとなるように播種した。そして、5%CO条件下、37℃で24時間培養した。
24時間の培養終了後、各ウェルに上記得られた(1)HeLa細胞由来のエクソソーム分散液、(2)A431細胞由来のエクソソーム分散液、および(3)CHO−K1細胞由来のエクソソーム分散液の何れかを各ウェルに添加した(600μL/ウェル)。このとき、ウェル中のエクソソーム濃度(即ちタンパク質換算濃度)は、5μg/mLまたは20μg/mLとした。また、エクソソームを含まない10%FBS含有培地を600μL添加したウェル(0μg/mL)を比較対象とした。
エクソソーム分散液(またはエクソソームを含まない10%FBS含有培地のみ)を添加後、5%CO条件下、37℃で24時間培養した。次いで、各ウェルを血清フリーのHam’sF−12で洗浄し、抗CD47抗体(B6H12、Santa Cruz Biotechnology(サンタクルズ)社製品)を使用した蛍光抗体法により、エクソソームの添加/無添加、ならびに添加区であればエクソソーム濃度差がCD47の産生量(発現量)に及ぼす影響を調べた。具体的には、以下のとおりである。
上記洗浄後の各ウェルに上記抗体含有溶液(4μg/mL)を200μL添加し、4℃で30分間、静置した。次いで、Alexa Fluor(登録商標)488である蛍光色素が標識された二次抗体であるヤギ抗マウスIgG(インビトロゲン社製品)含有溶液(4μg/mL)を200μL添加し、4℃で30分間、静置した。
反応終了後、PBSで細胞洗浄し、200μLの2mM−EDTAでウェル中の細胞を37℃で10分間処置し、200μLのPBSをウェルに添加し、ウェル中の内容物(細胞)を回収した。
次いで、回収物(細胞)400μLを、フローサイトメータ(guava easyCyte:メルク・ミリポア社製品)に供した。
上記フローサイトメータを用いて蛍光強度を測定した。具体的には、励起波長:488nm、発光波長:525nmの条件で、前方散乱光解析(forward scattering analyses)および側方散乱光解析(side scattering analyses)に基づき、1サンプルあたり10000個の生きた細胞に相当する蛍光強度を計った。
<試験3:対象腫瘍細胞へのエクソソームの供給と細胞生存率の測定>
エクソソームを供給する対象である上記3種の腫瘍細胞(A)〜(C)に、エクソソームを供給して培養したときの細胞生存率を、WST−1(4-[3-(4-iodophenyl)-2-(4-nitrophenyl)-2H-5-tetrazolio]-1,3-benzene disulfonate)(水溶性テトラゾリウム塩)を用いた吸光光度法による細胞増殖試験(WST−1アッセイ)を行うことで測定した。供給エクソソームとしては、上記(2)A431細胞由来のエクソソーム分散液を用いた。試験の詳細は以下のとおりである。
市販の96ウェル・マイクロプレートを用いて、各ウェルに10%濃度となるFBSを含む上記対応する培地を適量入れ、そこに上記(A)〜(C)の腫瘍細胞の何れかを1×10セル/ウェル(100μL)となるように播種した。そして、5%CO条件下、37℃で24時間培養した。
上記24時間の培養終了後、各ウェルに上記(2)A431細胞由来のエクソソーム分散液を添加した(50μL/ウェル)。このとき、ウェル中のエクソソーム濃度(即ちタンパク質換算濃度)は、5μg/mLまたは20μg/mLとなるようにした。また、エクソソームを含まない10%FBS含有培地のみ50μL添加したウェル(0μg/mL)を比較対象とした。上記のようにしてエクソソームを腫瘍細胞に供給した後、5%CO条件下、37℃で24時間培養した。
次いで、各ウェル中の腫瘍細胞の生存状態(生細胞数)を市販の発色測定キット(Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System、Takara Bio社製品)を使用して測定した。即ち、生細胞の酵素活性により試薬中のテトラゾリウム塩が還元されて水溶性ホルマザンが生成されることを利用し、培地中の水溶性ホルマザン量を吸光光度法(測定波長:450nm、対照波長:620nm)により測定して生細胞数を測定した。なお、以下に詳述する操作以外は上記測定キットに添付のマニュアルどおりに行った。
具体的には、上記所定の培養時間が経過した細胞培養ウェル中に、発色基材として「水溶性テトラゾリウム塩(WST−1)」を含む試薬を1ウェルあたり10μL添加し、5%CO、37℃の条件下で40分間インキュベートした。その後、該発色試薬を添加した細胞培養液について、波長450nmの吸光度(A450)および波長620nmの吸光度(A620)を分光光度計(マイクロプレートリーダ)を用いて測定し、A450をA620で補正した値A450-620を算出し、エクソソーム無添加区における細胞生存率を100%としたときの各試験区の細胞生存率(%)の相対値を以下の式:細胞生存率(%)=(各試験区のA450-620)÷(エクソソーム無添加区のA450-620)×100;により算出した。
<CD47発現抑制活性と細胞生存率の評価>
上述した試験2ならびに試験3の結果を、本明細書に添付するいくつかのグラフにまとめた。
先ず、図1Aは、(2)A431細胞由来のエクソソームを培養HeLa細胞に添加したときのCD47産生(発現)量の変化を調べたグラフである。図1Bは、(2)A431細胞由来のエクソソームを培養HeLa細胞に添加したときの細胞生存率(%)を調べたグラフである。
これらグラフに示す結果から明らかなように、A431細胞由来のエクソソームを添加することによって、培養HeLa細胞のCD47発現が顕著に抑制し得ることが認められた(図1A)。また、かかる抑制活性は、供給するエクソソーム量に対応しており、濃度依存性が存在することが明らかとなった。一方、A431細胞由来のエクソソームを20μg/mL以上供給した場合、HeLa細胞の生存率が増すことが確認された(図1B)。かかる結果は、エクソソームの過剰な添加は、CD47発現抑制活性は高まるものの、それ以外の何らかの生理活性を活発化させる作用も生じ得ることを示している。
したがって、本試験においては、エクソソーム添加量(培地中の濃度)は、概ね5μg/mL以上50μg/mL以下程度が好適であると判断された。
次に、図2は、(1)HeLa細胞由来のエクソソームを、同じ細胞株である培養HeLa細胞に添加したときのCD47産生(発現)量の変化を調べたグラフである。
このグラフに示す結果から明らかなように、ここで開示される技術は、標的とする腫瘍細胞と同じ腫瘍細胞(または標的腫瘍組織から取得した腫瘍細胞)を培養して生産、回収したエクソソームを使用することによって、標的腫瘍細胞(ならびに該細胞からなる腫瘍組織)におけるCD47の発現を抑制することができる。このため、免疫反応が生じるリスクを低減しつつ、標的腫瘍細胞のCD47発現の抑制を行うことができる。
次に、図3は、非腫瘍細胞である(3)CHO−K1細胞由来のエクソソームを培養HeLa細胞に添加したときのCD47産生(発現)量の変化を調べたグラフである。
このグラフに示す結果から、非腫瘍細胞由来のエクソソームは、標的腫瘍細胞のCD47発現を抑制する効果が殆ど無いことがわかる。
次に、図4Aは、(2)A431細胞由来のエクソソームを、同じ細胞株である培養A431細胞に添加したときのCD47産生(発現)量の変化を調べたグラフである。図4Bは、(2)A431細胞由来のエクソソームを、同じ細胞株である培養A431細胞に添加したときの細胞生存率(%)を調べたグラフである。
これらグラフに示す結果から明らかなように、A431細胞についても、図2に示すHeLa細胞と同様、標的とする腫瘍細胞と同じ腫瘍細胞(または標的腫瘍組織から取得した腫瘍細胞)を培養して生産、回収したエクソソームを使用することによって、標的腫瘍細胞(ならびに該細胞からなる腫瘍組織)におけるCD47の発現を好適に抑制することが確認された。このため、免疫反応が生じるリスクを低減しつつ、標的腫瘍細胞のCD47発現の抑制を行うことができる。一方、図4Bから明らかなように、A431細胞に関しては、エクソソームの供給によって細胞生存率は高くならない。したがって、本試験においては、エクソソーム添加量(培地中の濃度)は、概ね20μg/mL以上が適当(例えば20μg/mL以上100μg/mL以下)であると判断された。
次に、図5Aは、(2)A431細胞由来のエクソソームを、培養MDA−MB−231細胞に添加したときのCD47産生(発現)量の変化を調べたグラフである。図5Bは、(2)A431細胞由来のエクソソームを培養MDA−MB−231細胞に添加したときの細胞生存率(%)を調べたグラフである。
これらグラフに示す結果から明らかなように、MDA−MB−231細胞についても、図4Aに示す結果と同様、CD47の発現を好適に抑制することが確認された。一方、図5Bから明らかなように、MDA−MB−231細胞に関しても、エクソソームの供給によって細胞生存率は高くならない。したがって、本試験においても、エクソソーム添加量(培地中の濃度)は、概ね20μg/mL以上が適当(例えば20μg/mL以上100μg/mL以下)であると判断された。
上述のように、ここで開示される技術によると、対象(標的)とする腫瘍細胞(および該細胞からなる腫瘍組織)のCD47の発現を効果的に抑制することができる。このため、ここで開示される薬剤組成物ならびにCD47発現抑制方法によると、腫瘍細胞に対するがん免疫療法の有効性を向上させることができる。

Claims (5)

  1. 腫瘍細胞におけるCD47の発現を抑制するための薬剤組成物であって、
    培養腫瘍細胞由来のエクソソームであって、前記CD47の発現の抑制に有効な量のエクソソームと、
    薬学的に許容可能な担体と、
    を含
    前記培養腫瘍細胞は、HeLa細胞およびA431細胞のうちのいずれかである、薬剤組成物。
  2. 前記培養腫瘍細胞は、上記CD47の発現を抑制する対象である腫瘍細胞由来である、請求項に記載の薬剤組成物。
  3. インビトロにおいて腫瘍細胞におけるCD47の発現を抑制する方法であって、
    対象とする前記腫瘍細胞に対して、別途培養したHeLa細胞およびA431細胞のうちのいずれかからなる培養腫瘍細胞が生産したエクソソームであって、前記CD47の発現の抑制に有効な量のエクソソームを供給することを特徴とする、CD47発現抑制方法。
  4. 記培養腫瘍細胞は、前記CD47の発現を抑制する対象である腫瘍細胞由来である、請求項に記載のCD47発現抑制方法。
  5. 前記エクソソームとして、前記培養腫瘍細胞の培養液中から超遠心分離法によって単離されたエクソソームを使用する、請求項3または4に記載のCD47発現抑制方法。
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