次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の導線成形装置1を示す概略構成図である。同図に示す導線成形装置1は、図2に示すようなコイルCの一端から延出された長尺のバスバー部Bを成形するように形成されたものである。コイルCは、1本の矩形断面を有する平角線(導線)を例えば2列かつ複数段(例えば6−10段程度)にエッジワイズ方向に曲げながら巻回することにより形成された集中巻式の矩形コイル(カセットコイル)であり、例えば電気自動車やハイブリッド車両等に搭載される三相交流電動機に適用される。コイルCは、略四角錐台状の外形を呈しており、当該コイルCの他端からは、短尺のリード線部(端子部)Lが延出されている。また、バスバー部Bは、図示するように、リード線部Lから離間する方向に延在する。そして、コイルCは、上記電動機のステータコアのティースに例えば樹脂製のインシュレータと共に嵌め込まれ、バスバー部Bは、対応する他のコイルCのリード線部Lに電気的に接続(溶接)される。これにより、ステータにU相、V相およびW相のステータコイルが巻回されることになる。また、バスバー部Bやリード線部Lでは、平角線の絶縁被膜が先端側の予め定められた範囲で剥離されている。
図2に示すように、コイルCのバスバー部Bは、エッジワイズ方向(第1曲げ方向:平角線の断面の短辺と略直交する方向)に曲げられた複数のエッジワイズ屈曲部(第1屈曲部)Be1,Be2,Be3,およびBe4と、フラットワイズ方向(第2曲げ方向:平角線の断面の長辺と略直交する方向)に曲げられた複数のフラットワイズ屈曲部(第2屈曲部)Bf1およびBf2とを有する。本実施形態において、バスバー部Bの最も基端側(根元側)のエッジワイズ屈曲部Be1と、最も先端側のエッジワイズ屈曲部Be4とは、互いに逆方向に曲げられている。また、エッジワイズ屈曲部Be1とエッジワイズ屈曲部Be4との間に位置する2つのエッジワイズ屈曲部Be2,Be3は、互いに逆方向に曲げられている。更に、フラットワイズ屈曲部Bf1は、エッジワイズ屈曲部Be1とエッジワイズ屈曲部Be2との間に形成され、フラットワイズ屈曲部Bf2は、エッジワイズ屈曲部Be3とエッジワイズ屈曲部Be4との間に形成されている。また、フラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2は、互いに同方向に曲げられている。
導線成形装置1は、図1および図3に示すように、コイルCのバスバー部Bに複数のエッジワイズ屈曲部Be2,Be3および複数のフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を形成するための第1成形型10および第2成形型20と、バスバー部Bの先端部にエッジワイズ屈曲部Be4を成形するための先端成形部30(図3参照)と、コイルCを保持するコイル保持部40と、駆動軸S1を有する第1駆動装置(第1駆動源)50と、駆動軸S2を有する第2駆動装置(第2駆動源)60と、第1および第2駆動装置50,60並びにコイル保持部40を制御する制御装置100とを含む。
図1および図3に示すように、第1成形型10は、図中上側に型面を有する下型であり、当該第1成形型10の図中下面(型面とは反対側の面)には、第1駆動装置50の駆動軸S1の先端が固定される。第2成形型20は、図中下側に第1成形型10の型面を覆うことができる型面を有する上型であり、当該第2成形型20の図中上面(型面とは反対側の面)には、第2駆動装置60の駆動軸S2の先端が固定される。先端成形部30およびコイル保持部40は、それぞれ導線成形装置1の設置箇所に固定される。第1駆動装置50は、駆動軸S1が導線成形装置1の設置箇所の上下方向に延在する回転軸心RAと同軸に延在するように第1成形型10の図1おける下方に設置(固定)される。第2駆動装置60は、駆動軸S2が上記回転軸心RAと同軸に延在するように第2成形型20の図1おける上方に設置(固定)される。
第1成形型10は、図4に示すように、コイルCのバスバー部Bにフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を形成するための第1フラットワイズ成形面11と、コイルCのバスバー部Bにエッジワイズ屈曲部Be2,Be3を形成するための第1エッジワイズ成形面12とを型面として含む。第1成形型10の第1フラットワイズ成形面11は、フラットワイズ屈曲部Bf1の図2中下面に対応した第1曲面(凸曲面)111と、フラットワイズ屈曲部Bf2の図2中下面に対応した第2曲面(凸曲面)112とを含む。更に、第1フラットワイズ成形面11は、第1曲面111の回転軸心RA側(図4中上側)に、エッジワイズ屈曲部Be1とフラットワイズ屈曲部Bf1との間におけるバスバー部Bの図2中下面に対応した平坦面110を含み、第1曲面111と第2曲面112との間に、フラットワイズ屈曲部Bf1とフラットワイズ屈曲部Bf2との間におけるバスバー部Bの図2中下面に対応した図4中下向きの平坦な傾斜面を含み、第2曲面112の回転軸心RAとは反対側に、フラットワイズ屈曲部Bf2よりも先端側におけるバスバー部Bの図2中下面に対応した図4中下向きの平坦な傾斜面を含む。また、第1成形型10の第2成形型20に近い側の端部には、それぞれ第1フラットワイズ成形面11の対応する平坦面や曲面、傾斜面に連続する回転軸心RAを中心軸とした円錐面等を含むガイド面13が形成されている。
第1成形型10の第1エッジワイズ成形面12は、第1成形型10の第2成形型20から遠い側の端部に沿って延在するように形成された段部14の側面である。段部14は、第1フラットワイズ成形面11から図4中上方に突出しており、第1エッジワイズ成形面12は、第1フラットワイズ成形面11の縁部から図中上方に立ち上がると共に当該縁部に沿って延在する。第1エッジワイズ成形面12は、エッジワイズ屈曲部Be2の外側面(図2中奥側の側面、平角線の断面の短辺を含む側面)に対応した第1曲面(凸曲面)122と、エッジワイズ屈曲部Be3の外側面に対応した第2曲面(凹曲面)123とを含む。更に、第1エッジワイズ成形面12は、第1曲面122の回転中心RA側(図3中上側)に、エッジワイズ屈曲部Be1とエッジワイズ屈曲部Be2との間におけるバスバー部Bの外側面に対応した平坦面を含み、第1曲面122と第2曲面123との間に、エッジワイズ屈曲部Be2とエッジワイズ屈曲部Be3との間におけるバスバー部Bの外側面に対応した平坦面を含み、第2曲面の回転軸心RAとは反対側に、エッジワイズ屈曲部Be3よりも先端側におけるバスバー部Bの外側面に対応した平坦面と含む。
また、第1成形型10は、第1移動規制部15と第2移動規制部16とを含む。第1移動規制部15は、第1エッジワイズ成形面12を含む段部14の表面から上方に突出する略四角柱状(棒状)の突起部であり、第1エッジワイズ成形面12の一部に連続して上方に延在する第1当接面15sを含む。また、第2移動規制部16は、第1エッジワイズ成形面12の一部と対向するように第1フラットワイズ成形面11の側方、すなわちガイド面13の表面から上方に突出する低背の突起部であり、当該第1フラットワイズ成形面11に沿って延びる第2当接面16sを含む。第1および第2移動規制部15,16は、それぞれ第1フラットワイズ成形面11に隣り合って互いに対向するように回転軸心RAを中心とした円弧に沿って第1成形型10に配列されている。
本実施形態において、第1および第2移動規制部15,16の第1成形型10の径方向における長さ(厚み)は、略同一に定められている。また、第1移動規制部15の高さ(第1フラットワイズ成形面11からの高さ)は、コイルCのバスバー部B(平角線)が第1成形型10の平坦面110に当接して水平に延在した際に、第1当接面15sの上端が当該バスバー部Bの側面(短辺側の側面)の少なくとも一部と対向するように定められている。更に、第2移動規制部16の第1フラットワイズ成形面11からの高さは、バスバー部Bのフラットワイズ方向における厚み以下に定められている。そして、第1および第2移動規制部15,16は、第1フラットワイズ成形面11の第1および第2曲面111,112や第1エッジワイズ成形面12の第1および第2曲面122,123からある程度離間した位置であって、回転軸心RAからできるだけ離間した位置、すなわち第1成形型10のできるだけ外周側に形成される。
第2成形型20は、図5に示すように、第1成形型10に近い側の端部から反対側の端部に向けて延在する押圧面20pと、コイルCのバスバー部Bにフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を形成するための第2フラットワイズ成形面21と、コイルCのバスバー部Bにエッジワイズ屈曲部Be2,Be3を成形するための第2エッジワイズ成形面22とを含む。押圧面20pは、回転軸心RAを中心軸とした略扇形状の平面形状を有し、加工前の真っ直ぐに延在するバスバー部Bの形状に対応した形状を有する先端部から加工後のバスバー部Bの形状に対応した形状を有する第2フラットワイズ成形面21側の端部に向かうにつれて表面形状が回転軸心RAを中心軸として徐々に変化するように形成されている。
第2成形型20の第2フラットワイズ成形面21は、押圧面20pに連続しており、フラットワイズ屈曲部Bf1の図2中上面に対応した第1曲面(凹曲面)と、フラットワイズ屈曲部Bf2の図2中上面に対応した第2曲面(凹曲面)とを含む。更に、第2フラットワイズ成形面21は、第1曲面の回転軸心RA側に、エッジワイズ屈曲部Be1とフラットワイズ屈曲部Bf1との間におけるバスバー部Bの図2中上面に対応した平坦面を含み、第1曲面と第2曲面との間に、フラットワイズ屈曲部Bf1とフラットワイズ屈曲部Bf2との間におけるバスバー部Bの図2中上面に対応した図5中下向きの平坦な傾斜面を含み、第2曲面の回転軸心RAとは反対側に、フラットワイズ屈曲部Bf2よりも先端側におけるバスバー部Bの図2中上面に対応した図5中下向きの平坦な傾斜面を含む。
第2成形型20の第2エッジワイズ成形面22は、第2成形型20の第1成形型10から遠い側の端部に沿って延在するように形成された段部24の側面である。当該段部24は、第2フラットワイズ成形面21から図5中下方に突出しており、第2エッジワイズ成形面22は、第2フラットワイズ成形面21の縁部から図中下方に延在すると共に当該縁部に沿って延在する。第2エッジワイズ成形面22は、エッジワイズ屈曲部Be2の内側面(図2中手前側の側面)に対応した第1曲面(凹曲面)と、エッジワイズ屈曲部Be3の内側面に対応した第2曲面(凸曲面)とを含む。更に、第2エッジワイズ成形面22は、第1曲面の回転中心RA側に、エッジワイズ屈曲部Be1とエッジワイズ屈曲部Be2との間におけるバスバー部Bの内側面に対応した平坦面を含み、第1曲面と第2曲面との間に、エッジワイズ屈曲部Be2とエッジワイズ屈曲部Be3との間におけるバスバー部Bの内側面に対応した平坦面を含み、第2曲面の回転軸心RAとは反対側に、エッジワイズ屈曲部Be3よりも先端側におけるバスバー部Bの内側面に対応した平坦面と含む。
更に、第2成形型20には、押圧面20p、第2フラットワイズ成形面21、第2エッジワイズ成形面22および段部24を分断するように凹部25が形成されている。凹部25は、第1成形型10の第1および第2移動規制部15,16の軸線となる回転軸心RAを中心とした円弧に沿って延在するように形成されており、第1および第2移動規制部15,16の第1成形型10の径方向における長さ(厚み)よりも大きい幅(第2成形型20の径方向における長さ)と、第1移動規制部15の高さよりも大きい深さとを有する。
先端成形部30は、図3に示すように、導線成形装置1の設置箇所に固定される支持ブロック31と、当該支持ブロック31により例えば回転軸心RA側かつ若干下方に向けて延在する軸心の周りに回転自在に支持される成形ローラ(成形部材)35とを含む。支持ブロック31は、第1成形型10の初期位置(停止位置)よりも当該第1成形型10を初期位置に留まっている第2成形型20から離間するように回転軸心RAの周りに回転させたときの回転方向における下流側に、成形ローラ35が第1成形型10側を向くように設置される。
また、導線成形装置1の設置箇所には、先端成形部30に隣り合うようにバスバーガイド部(導線ガイド部)70が配置されている。バスバーガイド部70は、図3に示すように、導線成形装置1の設置箇所に固定される支持ブロック71と、当該支持ブロック71により回転軸心RAに対して若干傾斜した軸心の周りに回転自在に支持されるガイドローラ72とを含む。支持ブロック71は、先端成形部30よりも第1成形型10を初期位置に留まっている第2成形型20から離間するように回転軸心RAの周りに回転させたときの回転方向における上流側に、ガイドローラ72が第1成形型10側を向くように設置される。
コイル保持部40は、図3に示すように、導線成形装置1の設置箇所に固定される支持台41と、支持台41により昇降自在に支持されるコイル載置テーブル42と、支持台41により昇降自在に支持されるコイル押さえプレート44とを含む。かかるコイル保持部40では、図示しないコイル搬送装置により搬送されてきたコイルCがコイル載置テーブル42上に載置されると、制御装置100により制御される図示しない駆動機構によりコイル載置テーブル42が下降させられると共にコイル押さえプレート44がコイルCに当接するように下降させられる。これにより、コイル保持部40によりコイルCをしっかりと保持(クランプ)することが可能となる。また、導線成形装置1によるコイルCの成形が完了すると、当該駆動機構によりコイル載置テーブル42が上昇させられると共にコイル押さえプレート44がコイルCから離間するように上昇させられる。これにより、コイル載置テーブル42上の成形後のコイルCを図示しない搬送装置に受け渡すことが可能となる。
更に、コイル保持部40は、バスバー部Bに最も基端側のエッジワイズ屈曲部Be1を成形するための基端成形部45を含む。当該基端成形部45は、その側面が下降したコイル載置テーブル42上のコイルCのバスバー部Bの外側面に当接するように支持台41に形成されている。また、基端成形部45の先端部(第1成形型10側の端部)には、エッジワイズ屈曲部Be1に対応した曲面(円柱面状の曲面)であるエッジワイズ成形面47が形成されている。
第1駆動装置50は、制御装置100により制御されて駆動軸S1に回転トルク(駆動力)を付与するモータM1を含むものである。これにより、第1駆動装置50のモータM1により駆動軸S1を回転駆動することで、第1成形型10を回転軸心RAの周りに正逆方向に回転(旋回)させることが可能となる。また、第2駆動装置60は、制御装置100により制御されて駆動軸S2に回転トルク(駆動力)を付与するモータM2を含むものである。これにより、第2駆動装置60のモータM2により駆動軸S2を回転駆動することで、第2成形型20を回転軸心RAの周りに正逆方向に回転(旋回)させることが可能となる。
導線成形装置1の制御装置100は、CPU,ROM,RAM等を有するコンピュータや第1および第2駆動装置50,60のモータM1,M2の駆動回路、コイル保持部40の駆動機構の制御回路等を含む。また、制御装置100は、第1駆動装置50に含まれてモータM1の回転軸または駆動軸S1の回転位置を検出する図示しない回転センサからの信号や、第2駆動装置60に含まれてモータM2の回転軸または駆動軸S2の回転位置を検出する図示しない回転センサからの信号等を入力する。
更に、制御装置100には、CPUや駆動回路といったハードウエアと予めインストールされた各種プログラムとの協働により、第1駆動装置50の制御部や第2駆動装置60の制御部、コイル保持部40の制御部等が機能ブロックとして構築される。第1駆動装置50の制御部は、駆動軸S1が所望の回転方向に所望の回転速度で回転するようにモータM1を制御(回転数制御)したり、駆動軸S1に所望の回転トルクが出力されるようにモータM1を制御(トルク制御)したりする。同様に、第2駆動装置60の制御部は、駆動軸S2が所望の回転方向に所望の回転速度で回転するようにモータM2を制御(回転数制御)したり、駆動軸S2に所望の回転トルクが出力されるようにモータM2を制御(トルク制御)したりする。また、コイル保持部40の制御部は、導線成形装置1によるバスバー部Bの成形の進行に応じて図示しない駆動機構を制御し、コイル載置テーブル42およびコイル押さえプレート44を昇降させる。
次に、上述の導線成形装置1を用いたコイルCのバスバー部Bの成形手順について説明する。
導線成形装置1を用いたバスバー部Bの成形開始に際して、制御装置100は、第1および第2成形型10,20をそれぞれ図3に示す初期位置まで移動させ、第2成形型20を第1成形型10から離間させる。また、制御装置100は、コイル載置テーブル42およびコイル押さえプレート44がそれぞれ図3に示す初期位置まで上昇するようにコイル保持部40の駆動機構を制御する。コイル巻線装置により巻回された未成形のバスバー部Bを含むコイルCは、図示しない搬送装置によりコイル保持部40まで搬送され、コイル載置テーブル42上に載置される。
コイル載置テーブル42にコイルCが載置されると、制御装置100は、図6に示すように、コイル載置テーブル42が下降すると共にコイル押さえプレート44がコイルCに当接するようにコイル保持部40の駆動機構を制御する。これにより、コイル保持部40によりコイルCがしっかりと保持(クランプ)される。また、コイル載置テーブル42が下降することで、コイルCのバスバー部Bは、図7に示すように、下面(平角線の断面の長辺を含む側面)の一部が第1成形型10の第1フラットワイズ成形面11の最も上側の平坦面110に当接した状態で水平に(真っ直ぐに)延在し、バスバー部Bの外側面(短辺側の側面)の一部は、第1成形型10の第1移動規制部15の第1当接面15s(上端)と少なくとも部分的に対向する。また、バスバー部Bの外側面の一部は、コイル保持部40の基端成形部45の側面と、第1成形型10の第1エッジワイズ成形面12の一部とに当接する。
続いて、制御装置100は、第2成形型20を第1成形型10に対して回転軸心RAの周りに予め定められた角度θ1だけ図6中時計方向に回転させるように第2駆動装置60のモータM2を制御する。角度θ1は、例えば、第2成形型20が初期位置から当該角度θ1だけ回転した際に、第1成形型10の第1エッジワイズ成形面12と第2成形型20の第2エッジワイズ成形面22との間隔がバスバー部Bの幅に概ね一致するようにバスバー部B(平角線)のスプリングバックを考慮して定められる。
第2成形型20を回転軸心RAの周りに回転させていくと、当該第2成形型20が第1成形型10に対して徐々に接近していき、第1成形型10の第1および第2移動規制部15,16が第2成形型20の凹部25内に差し込まれていく。これにより、第2成形型20を第1および第2移動規制部15,16と干渉させることなく第1成形型10に対して回転軸心RAの周りに回転させることができる。また、第2成形型20が第1成形型10に接近する方向に回転していくのに伴い、コイル保持部40に保持されたコイルCのバスバー部Bは、第2成形型20の押圧面20pにより図7中下向きすなわちフラットワイズ方向に少しずつ押し下げられる。更に、バスバー部Bの一部は、押圧面20pにより第2成形型20の押圧面20pにより押圧されて第1成形型10の第1移動規制部15の第1当接面15sに当接する。これにより、バスバー部Bは、第1移動規制部15の第1当接面15sによりガイドされながら、第2成形型20と共に回転軸心RAの周りに移動(回動)することなく、フラットワイズ方向に移動(変形)していく。すなわち、第2成形型20が第1成形型10に接近する方向に回転する際、第1移動規制部15は、バスバー部Bの一部に当接して当該バスバー部Bが第2成形型20と共に移動するのを規制する。
第2成形型20の回転角度が大きくなっていくと、バスバー部Bは、第1成形型10の第1フラットワイズ成形面11と第2成形型20の第2フラットワイズ成形面21とにより挟み込まれてフラットワイズ方向に曲げられていくと共に、第1成形型10の第1移動規制部15によりガイドされながら、第1エッジワイズ成形面12と第2移動規制部16の第2当接面16sとの間に入り込んでいく。第2成形型20の回転角度が更に大きくなっていくと、バスバー部Bは、第1成形型10の第1エッジワイズ成形面12と第2成形型20の第2エッジワイズ成形面22とにより挟み込まれてエッジワイズ方向に曲げられていく。このように、導線成形装置1では、第2成形型20が第1成形型10に接近する方向に回転する際に、第2成形型20によってバスバー部Bが当該第2成形型20の回転方向における前側に押圧されても、第1移動規制部15によりバスバー部Bが第2成形型20と共に移動するのを規制し、第1および第2フラットワイズ成形面11,21並びに第1および第2エッジワイズ成形面12,22に対してバスバー部Bを適正に当接させていくことが可能となる。
また、第2成形型20によりバスバー部Bがフラットワイズ方向に押し下げられていくのに伴って、当該バスバー部Bの先端部Bt(絶縁被膜が剥離された部分)の外側面は、図8に示すように、バスバーガイド部70のガイドローラ72の外周面に接触する。更に、第1および第2成形型10,20の相対移動によりバスバー部Bがエッジワイズ方向に曲げられていく際、図9に示すように、バスバー部Bの先端部Btの外側面は、ガイドローラ72の外周面に接触する。そして、バスバー部Bの先端部Btは、図10および図11に示すように、第1および第2成形型10,20の相対移動によりバスバー部Bがフラットワイズ方向に曲げられていくに従ってガイドローラ72の外周面に接触しなくなる。これにより、第2成形型20が第1成形型10に接近する方向に回転する際に、バスバー部Bが第1成形型10の第1エッジワイズ成形面12を越えて段部14に乗り上げてしまうのを抑制しながら、当該バスバーBをエッジワイズ方向およびフラットワイズ方向に曲げていくことが可能となる。
この結果、第2成形型20の回転角度が予め定められた角度θ1に達した際には、図12に示すように、バスバー部Bにエッジワイズ屈曲部Be2,Be3およびフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2が精度よく形成されることになる。また、第2成形型20が回転軸心RAの周りに角度θ1だけ回転した際、バスバー部Bの先端部Btは、第1成形型10と第2成形型20との隙間を介して外部に突出し、ガイドローラ72の外周面と間隔をおいて対向する(図10および図11参照)。
本実施形態において、制御装置100は、第2成形型20の回転を開始させてから所定時間が経過するまで、駆動軸S2が予め定められた回転速度で回転するように第2駆動装置60のモータM2を制御(回転数制御)する。当該所定時間は、例えば、第2成形型20の回転を開始させてから第2成形型20の押圧面20pにより押圧されるバスバー部Bの一部が第1成形型10の第1エッジワイズ成形面12に当接するまでの時間として予め定められる。このようにバスバー部Bが第2成形型20の押圧面20pにより押圧される間にモータM2を回転数制御することで、バスバー部Bにエッジワイズ屈曲部Be2,Be3およびフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を形成するのに要する時間を短縮化することが可能となる。
また、制御装置100は、第2成形型20の回転を開始させてから上記所定時間が経過すると、駆動軸S2に予め定められた回転トルクを出力するように第2駆動装置60のモータM2を制御(トルク制御)する。更に、このようなモータM2のトルク制御を開始させると、制御装置100は、第1成形型10を初期位置に停止させておくための回転トルクを駆動軸S1に出力するように第1駆動装置50のモータM1を制御する。これにより、第2成形型20を第1成形型10に対して回転させながらバスバー部Bを成形する際に、第1および第2成形型10,20によりバスバー部Bをしっかりと挟み込んでエッジワイズ屈曲部Be2,Be3およびフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を精度よく形成することが可能となる。
第2成形型20の回転角度が角度θ1になると、制御装置100は、その時点から第1および第2成形型10,20が一体となって回転軸心RAの周りに予め定められた角度θ2だけ図12中時計方向に回転するように第1および第2駆動装置50,60のモータM1,M2を制御する。本実施形態において、第1および第2成形型10,20が一体に回転する方向は、屈曲部Be2,Be3,Bf1およびBf2の成形時における第2成形型20の第1成形型10に対する回転方向と同一である。また、この際、制御装置100は、第1および第2成形型10,20を互いに同一の回転速度で回転軸心RAの周りに回転させるように第1および第2駆動装置50,60のモータM1,M2を制御する。なお、第2成形型20が第1成形型10に対して回転軸心RAの周りに予め定められた角度θ1だけ回転した時点で、第2駆動装置60のモータM2の回転すなわち第2成形型20の回転を一旦停止させてもよい。
第1および第2成形型10,20が一体に回転する際、バスバー部Bのコイル保持部40の基端成形部45により拘束された部分(基端)と、バスバー部Bの第1および第2成形型10,20(第1および第2エッジワイズ成形面12,22)により挟み込まれた部分との間の部分が基端成形部45のエッジワイズ成形面47に押し付けられてエッジワイズ方向に曲げられていく。これにより、第1および第2成形型10,20を回転軸心RAの周りに角度θ2だけ一体に回転させることで、図13に示すように、バスバー部Bに最も基端側のエッジワイズ屈曲部Be1を形成することができる。この際、第1および第2成形型10,20を互いに同一の回転速度で回転軸心RAの周りに回転させることで、第1および第2成形型10,20によりバスバー部Bをしっかりと挟み込んで最も基端側のエッジワイズ屈曲部Be1を精度よく形成することが可能となる。
また、第1および第2成形型10,20が一体に回転すると、第1および第2成形型10,20が一体に回転し始める位置すなわち第1成形型10の初期位置よりも両者の回転方向における下流側で、第1および第2成形型10,20との隙間を介して外部に突出したバスバー部Bの先端部の外側面(図12における左側の側面)が先端成形部30の成形ローラ35に当接する。第1および第2成形型10,20の回転に伴い、成形ローラ35は、当該第1および第2成形型10,20(第1および第2エッジワイズ成形面12,22)により保持されて回動するバスバー部Bの先端部の外側面上を転動する。これにより、バスバー部Bの先端部は、成形ローラ35により押圧され、第1および第2成形型10,20の回転方向とは逆向き、すなわち最も基端側のエッジワイズ屈曲部Be1とは逆向きにエッジワイズ方向に曲げられていく。
この結果、第1および第2成形型10,20を回転軸心RAの周りに角度θ2だけ一体に回転させることで、図13に示すように、バスバー部Bに最も先端側のエッジワイズ屈曲部Be4をも形成することができる。この際、第1および第2成形型10,20を互いに同一の回転速度で回転軸心RAの周りに回転させることで、第1および第2成形型10,20によりバスバー部Bをしっかりと挟み込んで最も先端側のエッジワイズ屈曲部Be4を精度よく形成することが可能となる。また、エッジワイズ屈曲部Be4の成形にバスバー部Bの先端部の外側面上を転動する成形ローラ35を用いることで、バスバー部Bの先端部Bt(絶縁被膜が剥離された部分)に細かな傷が付くのを抑制することができる。なお、第1および第2成形型10,20を一体に回転させる角度θ2は、エッジワイズ屈曲部Be1,Be4の曲げ角度とバスバー部B(平角線)のスプリングバックを考慮して定められる。
第1および第2成形型10,20の回転角度が角度θ2となってエッジワイズ屈曲部Be1,Be4の形成が完了すると、制御装置100は、第1および第2駆動装置50,60のモータM1,M2の回転すなわち第1および第2成形型10,20の回転を停止させる。更に、制御装置100は、第2成形型20が回転軸心RAの周りに第1成形型10から離間する方向に回転して初期位置まで戻るように第2駆動装置60のモータM2を制御する。この際、制御装置100は、駆動軸S2が予め定められた回転速度で回転するように第2駆動装置60のモータM2を制御(回転数制御)する。
ここで、バスバー部Bは、エッジワイズ屈曲部Be2,Be3やフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2の成形(曲げ加工)により発生するスプリングバック(特に、フラットワイズ方向のスプリングバック)によって第1および第2成形型10,20の第1および第2フラットワイズ成形面11,21並びに第1および第2エッジワイズ成形面12,22に押し付けられる。このため、第2成形型20を第1成形型10から離間するように回転させた際に、バスバー部Bが第2成形型20に引き摺られて変形し、それによりエッジワイズ屈曲部Be2,Be3やフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2の成形精度(特に、曲げ高さの寸法精度)が悪化してしまうおそれがある。
これを踏まえて、本実施形態の導線成形装置1では、第1成形型10に第2移動規制部16が形成されている。第2移動規制部16は、第2成形型20を第1成形型10から離間するように回転させた際、バスバー部Bの内側面(第2エッジワイズ成形面22側の側面)の一部に当接して当該バスバー部Bが第2成形型20と共に移動するのを規制する。これにより、成形により発生するスプリングバックによってバスバー部Bが第1および第2フラットワイズ成形面11,21並びに第1および第2エッジワイズ成形面12,22に押し付けられたとしても、回転(移動)する第2成形型20の第2フラットワイズ成形面21および第2エッジワイズ成形面22からバスバー部Bを良好に引き離すことができる。
この結果、第2成形型20を第1成形型10から離間する方向に回転させた際にバスバー部Bが第2成形型20に引き摺られて変形するのを極めて良好に抑制して、エッジワイズ屈曲部Be2,Be3やフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を精度よく形成することが可能となる。また、第2成形型20を回転軸心RAの周りに回転させて第1成形型10から引き離す導線成形装置1では、第2成形型20を第1成形型10から引き離す際に、第2成形型20に引き摺られるバスバー部Bの第1成形型10の径方向における外側の部分に回転軸心RA周りの比較的大きなモーメントが作用する。従って、第1成形型10に上述のような第2移動規制部16を設けておくことは、第1および第2成形型10,20の引き離しに伴うバスバー部Bの変形を抑制する上で極めて有効である。
図14に示すように、第2成形型20が初期位置に戻ると、制御装置100は、コイル載置テーブル42およびコイル押さえプレート44がそれぞれ図3に示す初期位置まで上昇するようにコイル保持部40の駆動機構を制御する。これにより、図15に示すように、コイル押さえプレート44がコイルCから離間すると共に、コイルCがコイル載置テーブル42と共に上昇する。そして、バスバー部Bの成形が完了したコイルCは、図示しない搬送装置へと受け渡される。その後、未成形のバスバー部Bを含むコイルCがコイル載置テーブル42上に載置されると、導線成形装置1によりバスバー部Bに対して複数の屈曲部Be1−Be4,Bf1およびBf2が形成されることになる。
以上説明したように、導線成形装置1のバスバーガイド部70は、第1および第2成形型10,20の相対移動によりバスバー部Bがエッジワイズ方向に曲げられていく際に当該バスバー部Bの先端部Btの外側面に接触すると共に、第1および第2成形型10,20の相対移動によりバスバー部Bがフラットワイズ方向に曲げられていくに従って当該バスバー部Bの先端部Btに接触しなくなるガイドローラ72を含む。これにより、第1および第2成形型10,20が相対移動する際に、バスバー部Bが第1成形型10の第1エッジワイズ成形面12を越えて段部14に乗り上げてしまうのを抑制しながら、バスバー部Bをエッジワイズ方向およびフラットワイズ方向に曲げていくことができる。この結果、バスバー部Bにエッジワイズ屈曲部Be2,Be3およびフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を精度よく形成することが可能となる。
また、バスバーガイド部70は、導線成形装置1の設置箇所に固定される支持ブロック71と、バスバー部Bの先端部Btの外側面に接触可能となるように支持ブロック71により回転自在に支持されるガイドローラ72とを含む。これにより、バスバー部Bの先端部Bt(絶縁被膜が剥離された部分)に細かな傷が付くのを良好に抑制しつつ、当該バスバー部Bを適正にガイドすることが可能となる。ただし、バスバーガイド部70には、ガイドローラ72の代わりに、図16に示すような可動部を含まない成形部材73が設けられてもよい。
なお、導線成形装置1は、第1成形型10に対して第2成形型20を回転軸心RAの周りに回転させてコイル保持部40により保持されたコイルCのバスバー部Bにエッジワイズ屈曲部Be2,Be3およびフラットワイズ屈曲部Bf1,Bf2を形成するものであるが、これに限られるものではない。すなわち、導線成形装置1は、第1および第2成形型10,20を予め定められた軸線に沿って相対移動させてコイルCのバスバー部Bにエッジワイズ屈曲部およびフラットワイズ屈曲部を形成するように構成されてもよい。
ここまで、本開示の発明を実施するための形態について説明したが、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。