JP6917019B2 - Maldi−tof msを用いるバチルス・セレウス種及びその近縁種の識別及び/または同定方法 - Google Patents

Maldi−tof msを用いるバチルス・セレウス種及びその近縁種の識別及び/または同定方法 Download PDF

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Description

本発明は、セレウス菌(バチルス・セレウス:Bacillus cereus)種とその近縁種を、種特異的バイオマーカーを標的としたマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)法を用いて迅速に識別する技術、並びに、バチルス・セレウス種をその近縁種と迅速に識別して同定する技術に関する。
食品、医薬品及び環境などの管理において、衛生管理、汚染原因の究明、二次汚染防止及び殺菌処理方法の対応策は重要である。特に、食品の製造や臨床医療分野においては、汚染原因微生物や病原細菌を迅速に同定してその対応を図る必要がある。特に病原微生物の一種であるバチルス・セレウス種とその近縁菌は類似性が高く、従来の微生物同定法や、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法を用いた微生物由来の全タンパク質のフィンガープリント法では、それら菌群の同定は困難であることから、迅速かつ正確にバチルス・セレウス種とその近縁種を同定する方法の開発が重要である。
特許文献1には、嘔吐毒産生セレウス菌と嘔吐毒非産生セレウス菌を判別するための判別方法及び当該方法のためのプライマーセットが開示されている。特許文献1は、嘔吐毒合成酵素遺伝子を有するが動物細胞空胞化試験において陰性となる、いわゆる擬陽性嘔吐毒産生セレウス菌を判別し、動物細胞空胞化試験において陽性となる嘔吐毒産生セレウス菌のみを確実に検出できる方法を提供することを目的としている。
特許文献2には、細菌の特定の属または特定の種に特異的な配列を見出し、この塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを基板に固定した器具を用いて、被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより、迅速かつ正確に目的の細菌を感度よく検出・同定するための方法が開示されている。特許文献2には、検出・同定対象の細菌としてセレウス菌が挙げられている。
一方、MALDI-TOF MS法を用いた細菌の識別・同定のための方法が検討されている。非特許文献1には、MALDI-TOF MS法を用いた微生物由来の全タンパクのフィンガープリント法を用いた、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌の同定識別法の報告がなされている。
非特許文献2には、炭疽菌(Bacillus anthracis)を識別するための3つのバイオマーカーにより、Bacillus thuringiensis、Bacillus cereus及びBacillus mycoidesと炭疽菌を識別できたことについて報告されている。
非特許文献3には、MALDI-TOF MS法と人工ニューラルネットワークを用いて炭疽菌を特異的に検出できたことについて報告されている。
非特許文献4には、MALDI-TOF MS法を用いたBacillus thuringiensis、Bacillus cereus、Bacillus anthracisに特徴的なバイオマーカーを見いだし、3種のグループの迅速かつ特異的な同定を可能にした点について報告されている。
特開2007-312659号公報 特開2008-295431号公報
Claydon MA, Davey SN, Edwards-Jones V, & Gordon DB. The rapid identification of intact microorganisms using mass spectrometry. Nature Biotechnology, 1996, 14(11):1584-1586 Elhanany E, Barak R, Fisher M, Kobiler D, & Altboum Z. Detection of specific Bacillus anthracis spore biomarkers by matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry. Rapid Commun Mass Spectrom. 2001; 15(22):2110-6 Lasch P, Beyer W, Nattermann H, Stammler M, Siegbrecht E, Grunow R, Naumann D. Identification of Bacillus anthracis by using matrix-assisted laser desorption ionization-time of flight mass spectrometry and artificial neural networks. Appl Environ Microbiol. 2009 Nov; 75(22):7229-42. doi: 10.1128/AEM.00857-09. Epub 2009 Sep 18. Elhanany E, Barak R, Fisher M, Kobiler D, Altboum Z. Detection of specific Bacillus anthracis spore biomarkers by matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry. Rapid Commun Mass Spectrom. 2001; 15(22):2110-6
従来の性状試験やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法等による遺伝子解析による同定方法では、バチルス・セレウス種とその近縁種とを識別するためには、数日から2週間程度の時間を要していた。一方、現状のフィンガープリント法によるMALDI-TOF MS解析でも近縁種とも判定されるため、性状試験等を実施して同定、識別する必要があり、そのための日数を要していた。バチルス・セレウス種とその近縁種を迅速に、かつ正確に識別及び/または同定することにより、食品製造や臨床分野での汚染微生物を迅速に同定し、的確な対応をするための情報を得ることが求められている。
本発明の目的は、バチルス・セレウス種とその近縁種を迅速に、かつ正確に識別及び/または同定するための方法、並びにそれに用いるバイオマーカーセットを提供することにある。
本発明にかかる識別方法は、
バチルス・セレウス種及びその近縁種から選択した1種と、他の1種以上とを識別する識別方法であって、
識別対象種の細胞試料をマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)法により分析し、バイオマーカーに関する分析値を含むマススペクトルを得る工程と、
前記MALDI-TOF MS法により得られた前記バイオマーカーの分析値を、前記バチルス・セレウス種及びその近縁種から予め得られた前記バイオマーカーの既知分析値と比較して、前記分析値と異なる前記既知分析値を与える種と前記識別対象種とを識別する工程と、
を有し、
前記バイオマーカーが、バチルス・セレウス種及びその近縁種のリボゾームタンパク質L33、L30、L29、S18、L31、S20及びL22の少なくとも1つである
ことを特徴とする。
本発明にかかる同定方法は、
バチルス・セレウス種またはその近縁種の少なくとも1種の同定方法であって、
細胞試料をマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)法により分析し、バイオマーカーに関する分析値を含むマススペクトルを得る工程と、
前記バイオマーカーの分析値を、前記バチルス・セレウス種及びその近縁種から予め得られた前記バイオマーカーの既知分析値と比較して、前記細胞試料が、バチルス・セレウス種またはその近縁種であることを判定する工程と、
を有し、
前記バイオマーカーが、バチルス・セレウス種及びその近縁種のリボゾームタンパク質L33、L30、L29、S18、L31、S20及びL22の少なくとも1つである
ことを特徴とする。
本発明によれば、バチルス・セレウス種とその近縁種を迅速に、かつ正確に識別及び/または同定するための方法、並びにそれに用いるバイオマーカーセットを提供することができる。
MALDI-TOF MSによる Bacillus cereus NBRC 15305TのRibosomal Proteinの検出結果を示す図である。 バチルス・セレウス種とその近縁種におけるバイオマーカーの分析値の違いの一例を示す図である。
本発明者は、バチルス・セレウス種とその近縁種を迅速に、かつ正確に識別及び/または同定するための方法についての検討において、バイオマーカーの選択とその利用方法について着目した。
まず、バチルス・セレウス種ならびにその近縁種のゲノム情報より53種のリボソームタンパク質の理論分子量を取得し、菌種間で分子量が異なるタンパク質の特定を試みた。この情報を基に、NBRC株10株をMALDI-TOF MSで解析し、安定的に検出されるタンパク質をターゲットプロテインとできるか予備検討を行った。その結果、特定のタンパク質のピークの有無によるパターンで、識別できる可能性が示唆された。
なお、NBRC株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) バイオテクノロジーセンター(NBRC)(住所:〒292-0818、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)における保有株であり、公的に入手可能である。
更に、16S rRNA遺伝子配列では識別困難なバチルス・セレウス種と以下の近縁種8菌種の、リボソームタンパク質の理論分子量をゲノム情報から取得し、MALDI-TOF MSによる検出範囲外の15,000Da以上を除いた結果、30個のリボソームタンパク質が、バイオマーカーの候補として挙げられた。
近縁種:
(1)バチルス・セレウス(Bacillus cereus)種
(2)バチルス・アンシラシス(Bacillus anthracis)種
(3)バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)種
(4)バチルス・トヨネンシス(Bacillus toyonensis)種
(5)バチルス・マイコイデス(Bacillus mycoides)種
(6)バチルス・ウェイヘンステファネンシス(Bacillus weihenstephanensis)種
(7)バチルス・シュードマイコイデス(Bacillus pseudomycoides)種
(8)バチルス・サイトトキシカス(Bacillus cytotoxicus)種
(9)バチルス種(Bacillus sp.)
一方、本発明者は、NBRC所有のバチルス・セレウス種の菌株25株以上及び近縁種(バチルス・アンシラシス種及びバチルス・サイトトキシカス種を除く)を実際にMALDI-TOF MS(使用機器:株式会社 島津製作所製 AXIMAシリーズ及びブルカー・ダルトニクス株式会社製 microflex LT)で解析し、各タンパク質の分子量を得た。この結果と、先述のゲノム情報より推定したバイオマーカー候補タンパク質とを比較し、MALDI-TOF MS用の装置で検出可能なリボソームタンパク質をバイオマーカーとして選抜した。その結果、特定の7つのバイオマーカーが同時に検出された場合は、バチルス・セレウス種であることが判明した。これより、簡便・特異的にバチルス・セレウス種を検出できる技術が確立した。更に、バイオマーカーの検出に質量分析、好ましくは、MALDI-TOF MSを用いることによって、迅速且つ簡便・特異的にバチルス・セレウス種を検出できる技術が確立した。
更に、本発明者の検討によれば、上記の特定の7つのバイオマーカーのアミノ酸配列は、バチルス・セレウス種及びその近縁種において非常に高い保存性を有し、かつ各近縁種において特異的なアミノ酸配列からなるバイオマーカーを含み、この特異的なアミノ酸配列がMALDI-TOF MS法における分析値の違いを与えることが判明した。なお、これらの特定の7つのバイオマーカーにおけるバチルス・セレウス種及びその近縁種における違いは、数個のアミノ酸の違いであると推定される。この特定の7つのバイオマーカーに、バチルス・セレウス種及びその近縁種のそれぞれにおいて特異的なバイオマーカーが含まれることは、従来技術からは想到し得ない本発明者による新たな知見である。
本発明は上述の本発明者による新たな知見及び確立した技術に基づいてなされたものである。なお、非特許文献1に開示される同定識別方法は、同定に用いるタンパク質の特定を行っていないこと、タンパク質をフィンガープリントで一致させてその類似度から同定しており、特定のバイオマーカーを用いた本発明とは異なる。
本発明において、バチルス・セレウス種及びその近縁種の識別及び/または同定用のバイオマーカーとして、バチルス・セレウス種及びその近縁種のリボゾームタンパク質L33(バイオマーカー1)、L30(バイオマーカー2)、L29(バイオマーカー3)、S18(バイオマーカー4)、L31(バイオマーカー5)、S20(バイオマーカー6)及びL22(バイオマーカー7)の少なくとも1つが用いられる。
バイオマーカーとして選抜した上記の7つのタンパク質には、バチルス・セレウス種及びその近縁種のいずれかに特異的であるアミノ酸配列からなるタンパク質が含まれており、それら7つのバイオマーカーのMALDI-TOF MS分析値であるm/z値の組み合わせにより、バチルス・セレウス種及びその近縁種の1種と他の種とを識別すること、並びに、バチルス・セレウス種及びその近縁種の少なくとも1種を同定することが可能となった。
従って、これらの7つのリボゾームタンパク質からバチルス・セレウス種及びその近縁種の識別及び/または同定用のバイオマーカーセットを提供することができる。
バチルス・セレウス種のバイオマーカー1〜7のそれぞれは以下のアミノ酸配列からなる。
・バイオマーカー1(バチルス・セレウス種のL33タンパク質)のアミノ酸配列
MRVNITLACTECGDRNYISKKNKRNNAERIELKKYCKRDKKSTLHRETK(配列番号:1)
・バイオマーカー2(バチルス・セレウス種のL30タンパク質)のアミノ酸配列
MAKKLEITLTRSVIGRPQDQRATVEALGLKKLNSTVVKEETPAILGMINKVSHLVTVKEA(配列番号:2)
・バイオマーカー3(バチルス・セレウス種のL29タンパク質)のアミノ酸配列
MKTNDIRELTTAEIETKVKALKEELFNLRFQLATGQLENPTRIREVRKAIARMKTVVREREIGINR(配列番号:3)
・バイオマーカー4(バチルス・セレウス種のS18タンパク質)のアミノ酸配列
MAGRKGGRAKRRKVCFFTANGITRIDYKDVDLLKRFVSERGKILPRRVTGTSAKYQRKLTVAIKRARQMALLPYVGE(配列番号:4)
・バイオマーカー5(バチルス・セレウス種のL31タンパク質)のアミノ酸配列
MKAGIHPDYKKVVFMDTNTGFKFLSGSTKGSNETVEWEDGNTYPLLKVEISSDSHPFYTGRQKFATADGRVDRFNKKYGLK(配列番号:5)
・バイオマーカー6(バチルス・セレウス種のS20タンパク質)のアミノ酸配列
MPRVKGGTVTRQRRKKVIKLAKGYYGSKNTLFKVANQQVMKSLMYAFRDRRQKKRDFRKLWITRINAAARMNGLSYSRLMHGLKNAGIEVNRKMLADLAVHDEKAFAELATVAKNNIN(配列番号:6)
・バイオマーカー7(バチルス・セレウス種のL22タンパク質)のアミノ酸配列
MQAKAVARTVRIAPRKVRLVVDLIRGKQVGEAIAILNHTPKTASPVVEKVLKSAIANAEHNYEMDINNLVVEKVFVDEGPTLKRFRPRAMGRASQINKRTSHITVVVSEKKEG(配列番号:7)
なお、バイオマーカー1〜7が与えるm/z値は、バチルス・セレウス種のバイオマーカー1〜7のアミノ酸配列と、その近縁種において類似性に基づいて推定でき、更に、各種から実際に得られる分析値により確認することができる。
バイオマーカー1〜7はいずれも、MALDI-TOF MS法において安定的に、精度良く、かつ再現性良く検出分析値を与えるという本発明者により新たに見出された特長を有する。更に、これらのバイオマーカーは、MALDI-TOF MS法による分析値に、異なる種おいて有意な差が生じるように本発明者により新たに見出された特長を有する。
バイオマーカー1〜7の少なくとも1つを用いることにより識別及び/または同定可能なバチルス・セレウス種の近縁種としては、以下の各種を挙げることができる。
・バチルス・アンシラシス種
・バチルス・チューリンギエンシス種
・バチルス・トヨネンシス種
・バチルス・マイコイデス種
・バチルス・ウェイヘンステファネンシス種
・バチルス・シュードマイコイデス種
・バチルス・サイトトキシカス種
・バチルス種(Bacillus sp.:NBRC 100169グループ)
・バチルス種(Bacillus sp.:NBRC 103938グループ)
・バチルス種(Bacillus sp.:NBRC 13494グループ)
なお、バチルス・ウェイヘンステファネンシス種とバチルス・マイコイデス種は細菌命名規約に則った分類上は別種とされているが、ゲノム情報による分子系統学的には同種である。従って、本発明においては、これらを同種として扱う。
また、バチルス種(NBRC 100169グループ)、バチルス種(NBRC 103938グループ)及びバチルス種(Bacillus sp.:NBRC 13494グループ)は、16S rRNA遺伝子配列から、バチルス・セレウス種に近縁であることが明らかとなっている。また、これらは、全ゲノム配列を用いたインシリコDNA-DNA相同性試験(Average Nucleotide Identity (ANI)法)の類似度から、別種であることが明らかとなっている。従って、バチルス・セレウス種に近縁な新種とされる可能性が極めて高い。本発明にかかるバイオマーカー1〜7を用いる同定結果からも、これらのバチルス種は、バチルス・セレウス種と別種の近縁種であることが確認された。しかしながら、命名を行っていないため、バチルス種(Bacillus sp.)として、バチルス・セレウス種ではないグループに属する新規なBacillus属細菌として再同定した。
(識別方法)
本発明にかかる、バチルス・セレウス種及びその近縁種から選択した1種と、他の1種以上とを識別する識別方法は、以下の工程を有する。
(a)識別対象種の細胞試料をマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)法により分析し、バイオマーカーに関する分析値を含むマススペクトルを得る工程。
(b)MALDI-TOF MS法により得られたバイオマーカーの分析値を、バチルス・セレウス種及びその近縁種から予め得られた前記バイオマーカーの既知分析値と比較して、識別対象種の細胞試料から得られた分析値と異なる既知分析値を与える種と、識別対象種とを識別する工程。
バイオマーカーとして、先に挙げたバイオマーカー1〜7の少なくとも1つが用いられる。
本発明にかかる識別方法は、識別対象種がバチルス・セレウス種及びその近縁種のいずれかに該当することが推定される場合に、バチルス・セレウス種及びその近縁種のどの種に該当するかを決定して識別する方法であり、この方法により識別対象種と、他の少なくとも1種とを識別することができる。
例えば、後述するように、識別対象種がバチルス・セレウス種及びバチルス・シュードマイコイデス種のいずれかであることが推定され、かつ、バイオマーカー1を用いたMALDI-TOF MS法による分析によって、識別対象種がバチルス・セレウス種に特異的な既知分析値と一致する測定分析値を与える場合に、識別対象種をバチルス・セレウス種であると識別することができる。一方、識別対象種がバチルス・セレウス種に特異的な既知分析値と異なる測定分析値を与える場合や、識別対象種がバチルス・シュードマイコイデス種に特異的な既知分析値と一致する測定分析値を与える場合には、識別対象種をバチルス・シュードマイコイデス種であると識別することができる。
更に、識別対象種がバチルス・セレウス種、バチルス・シュードマイコイデス種及びバチルス・チューリンギエンシス種のいずれかであることが推定され、かつ、バイオマーカー1及びバイオマーカー2を用いたMALDI-TOF MS法による分析によって、識別対象種がバチルス・セレウス種に特異的な既知分析値と一致する測定分析値を与える場合に、識別対象種をバチルス・セレウス種であると、他の2種と区別して識別することができる。一方、識別対象種がバチルス・セレウス種に特異的な既知分析値と異なる測定分析値を与える場合や、識別対象種がバチルス・シュードマイコイデス種またはバチルス・チューリンギエンシス種に特異的な既知分析値と一致する測定分析値を与える場合には、識別対象種をバチルス・シュードマイコイデス種またはバチルス・チューリンギエンシス種であると、他の2種と区別して識別することができる。
従って、本発明にかかる識別方法では、識別対象種と、識別対象種と区別されるべき種の組み合わせに応じて、バイオマーカーとして、前記のバイオマーカー1〜7の少なくとも1つが用いられる。
なお、識別対象種がバチルス・セレウス種及びその近縁種以外の種であるかどうかの確認は、バイオマーカー1〜7の全てを用いた分析結果により行うことができる。
バイオマーカーの既知分析値と、細胞試料を用いて得られた測定による分析値は、同一条件でのMALDI-TOF MS法により得られた値であることが好ましい。
MALDI-TOF MS法により得られた分析値による種の識別の一例について図面を参照して説明する。
図1に、MALDI-TOF MSによる Bacillus cereus NBRC 15305TのRibosomal Proteinの検出結果(マススペクトル)を示す。
図1に示す通り、4000〜18000m/zの領域内に、バチルス・セレウス種のリボゾームタンパク質(small ribosomal subunit及びlarge ribosomal subunit)がその質量差に応じて分布したマススペクトルが得られる。なお、分析対象細胞が図1に示される各リボゾームタンパク質の中で、先に挙げたバイオマーカー1〜7のm/z値を全て有する場合は、分析対象細胞がバチルス・セレウス種であると同定することができる。
更に、バイオマーカー1〜7の少なくとも1つを用いてバチルス・セレウス種とその近縁種の識別を行うことができる。
図2に、バチルス・セレウス種とその近縁種とを識別するための分析値としての測定値の一例を示す。
図2(A)は、5840〜5960m/zの領域におけるマススペクトルを示しており、バイオマーカー1(L33)の検出領域において、バチルス・セレウス種のピークIからバチルス・シュードマイコイデス種ではピークIIにシフトしている。従って、L33ではバチルス・セレウス種とバチルス・シュードマイコイデス種では質量分析結果が異なり、この分析値の差を利用してこれらを識別することができる。
図2(B)は6360〜6500m/zの領域におけるマススペクトルを示しており、バイオマーカー2(L30)の検出領域において、バチルス・セレウス種のピークIからバチルス・トヨネンシス種及びバチルス・チューリンギエンシス種ではピークIIにシフトしている。従って、L30ではバチルス・セレウス種と、バチルス・トヨネンシス種及びバチルス・チューリンギエンシス種では質量分析結果が異なり、この分析値の差を利用してバチルス・トヨネンシス種及びバチルス・チューリンギエンシス種に対してバチルス・セレウス種を識別することができる。
図2(C)は8820〜8800m/zの領域におけるマススペクトルを示しており、バイオマーカー4(S18)の検出領域において、バチルス・セレウス種及びバチルス・チューリンギエンシス種のピークIから、バチルス・シュードマイコイデス種、バチルス・マイコイデス種及びバチルス・トヨネンシス種ではピークIIにシフトしている。従って、S18ではバチルス・セレウス種及びバチルス・チューリンギエンシス種と、バチルス・シュードマイコイデス種、バチルス・マイコイデス種及びバチルス・トヨネンシス種では質量分析結果が異なり、この分析値の差を利用してバチルス・セレウス種及びバチルス・チューリンギエンシス種に対して、バチルス・シュードマイコイデス種、バチルス・マイコイデス種及びバチルス・トヨネンシス種を識別することができる。
図2(D)は9190〜9390m/zの領域におけるマススペクトルを示しており、バイオマーカー6(S20)の検出領域において、バチルス・セレウス種、バチルス・シュードマイコイデス種及びバチルス・トヨネンシス種のピークIから、バチルス・チューリンギエンシス種のピークII、更に、バチルス・マイコイデス種のピークIIIにシフトしている。従って、S20ではバチルス・セレウス種、バチルス・シュードマイコイデス種及びバチルス・トヨネンシス種の群と、バチルス・チューリンギエンシス種と、バチルス・マイコイデス種とのそれぞれの質量分析結果が異なり、この分析値の差を利用して、これらを識別することができる。
更に、バイオマーカー1〜7の分析値を含むマススペクトルを各近縁種について得ることができる。後述の実施例にける表1には各マススペクトルから読み取った各バイオマーカーの分析値(m/z値)が示されている。
表1に示される各種において得られた分析値の差から、目的とする識別のためのバイオマーカーを選択し、必要に応じてバイオマーカーの複数を組合せることができる。
以下のバイオマーカーの選択により、以下に示す種の識別が可能となる。
(A)バイオマーカー2(L30)、バイオマーカー5(L31)、バイオマーカー6(S20)
バイオマーカー2、5、6の少なくとも1つによりバチルス・セレウス種とバチルス・チューリンギエンシス種を識別することができる。
(B)バイオマーカー2(L30)、バイオマーカー4(S18)、バイオマーカー5(L31)
バイオマーカー2、4、5の少なくとも1つによりバチルス・セレウス種とバチルス・トヨネンシス種を識別することができる。
(C)バイオマーカー3(L29)、バイオマーカー4(S18)、バイオマーカー5(L31)、バイオマーカー6(S20)、バイオマーカー7(L22)
バイオマーカー3〜7の少なくとも1つによりバチルス・セレウス種とバチルス・マイコイデス種を識別することができる。
(D)バイオマーカー1(L33)、バイオマーカー4(S18)、バイオマーカー5(L31)、バイオマーカー7(L22)
バイオマーカー1、4、5、7の少なくとも1つによりバチルス・セレウス種とバチルス・シュードマイコイデス種を識別することができる。
(E)バイオマーカー3(L29)、バイオマーカー4(S18)、バイオマーカー7(L22)
バイオマーカー3、4、7の少なくとも1つによりバチルス・セレウス種とバチルス・アンシラシス種を識別することができる。
(F)バイオマーカー2(L30)、バイオマーカー4(S18)、バイオマーカー5(L31)、バイオマーカー7(L22)
バイオマーカー2、4、5、7の少なくとも1つによりバチルス・セレウス種とバチルス・サイトトキシカス種を識別することができる。
(G))バイオマーカー2(L30)、バイオマーカー4(S18)、バイオマーカー5(L31)
バイオマーカー2、4、5の少なくとも1つによりバチルス・セレウス種とバチルス種(NBRC 100169グループ)を識別することができる。
(H)バイオマーカー7(L22)
バイオマーカー7によりバチルス・セレウス種とバチルス種(NBRC 103938グループ)を識別することができる。
(I)バイオマーカー5(L31)
バイオマーカー5によりバチルス・セレウス種とバチルス種(NBRC 13494グループ)を識別することができる。
(同定方法)
上述した本発明にかかる識別方法は、バチルス・セレウス種またはその近縁種の少なくとも1種を同定する方法に利用することができる。
本発明にかかる、バチルス・セレウス種またはその近縁種の少なくとも1種の同定方法は、以下の工程を有する。
(i)細胞試料をマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)法により分析し、バイオマーカーに関する分析値を含むマススペクトルを得る工程。
(ii)前記バイオマーカーの分析値を、前記バチルス・セレウス種及びその近縁種から予め得られた前記バイオマーカーの既知分析値と比較して、前記細胞試料が、バチルス・セレウス種またはその近縁種であることを判定する工程。
上記のバイオマーカーとして、先に挙げたバイオマーカー1〜7の少なくとも1つが用いられる。
種の判定は、細胞試料が種特異的な分析値を与えるかどうかにより行うことができる。
例えば、細胞試料が、バチルス・セレウス種及びその近縁種のいずれかであるか不明な場合には、バイオマーカー1〜7により得られる全ての分析値を、既知の分析値と比較して、既知の分析値と一致した場合に、既知の分析値を与える種であると同定することができる。バチルス・セレウス種及びその近縁種のそれぞれのバイオマーカー1〜7により得られる全ての分析値としては、表1に示す分析値を利用することができる。
バイオマーカー1〜7の少なくとも1つを菌種同定用として使用する形態としては、以下の形態を挙げることができる。
・バイオマーカー1〜7の全てを使用:バチルス・セレウス種、バチルス・トヨネンシス種、バチルス・アンシラシス種、バチルス種(NBRC 100169グループ)、バチルス種(NBRC 103938グループ)
・バイオマーカー1:バチルス・シュードマイコイデス種
・バイオマーカー2、4、5及び7の少なくとも1つ:バチルス・サイトトキシカス種
・バイオマーカー3、6及び7の少なくとも1つ:バチルス・マイコイデス種
・バイオマーカー5:バチルス種(NBRC 13494グループ)
・バイオマーカー6:バチルス・チューリンギエンシス種
なお、バチルス・セレウス種及びその近縁種とその他の細菌株は、バイオマーカー1〜7の全てを使用して区別することができる。すなわち、バイオマーカー1〜7の少なくとも1つが欠けている細胞試料は、バチルス・セレウス種及びその近縁種ではないと判定することができる。
また、同定対象の種がバチルス・セレウス種及びその近縁種であることが判明している場合には、先の識別方法において記載したように、同定対象の種を識別可能なバイオマーカーをバイオマーカー1〜7から選択し、得られた分析値やマススペクトルの必要領域を用いて種の判定を行うことができる。例えば、細胞試料がバチルス・セレウス種及びバチルス・シュードマイコイデス種のいずれかであることが判明している場合は、バイオマーカー1の分析値が異なることを利用して、これらを識別して同定することができる(例えば図2(A)参照)。この識別同定には、先に識別方法において説明したバイオマーカーの選択と種の識別が利用できる。この識別同定方法は、以下の各工程の1つ以上を含むことができる。
(A)前記リボゾームタンパク質L33、L30、L29、S18、L31、S20及びL22の分析値によりバチルス・セレウス種を同定する。
(B)前記リボゾームタンパク質S20の分析値によりバチルス・チューリンギエンシス種を同定する。
(C)前記リボゾームタンパク質L33、L30、L29、S18、L31、S20及びL22の分析値によりバチルス・トヨネンシス種を同定する。
(D)前記リボゾームタンパク質L29、S20及びL22の少なくとも1つの分析値によりバチルス・マイコイデス種を同定する。
(E)前記リボソームタンパク質L33の分析値によりバチルス・シュードマイコイデス種を同定する。
(F)前記リボゾームタンパク質L33、L30、L29、S18、L31、S20及びL22の分析値によりバチルス・アンシラシス種を同定する。
(G)前記リボソームタンパク質L30、S18、L31及びL22の少なくとも1つの分析値によりバチルス・サイトトキシカス種を同定する。
(H)前記リボゾームタンパク質L33、L30、L29、S18、L31、S20及びL22の分析値によりバチルス種(NBRC 100169グループ)を同定する。
(I)前記リボゾームタンパク質L33、L30、L29、S18、L31、S20及びL22の分析値によりバチルス種(NBRC 103938グループ)を同定する。
(J)前記リボゾームタンパク質L31の分析値によりバチルス種(NBRC 13494グループ)を同定する。
(バイオマーカーのその他の分析への利用)
本発明にかかるバイオマーカー1〜7の遺伝情報(バイオマーカー1〜7のそれぞれをコードするDNAやRNA)は、ハイブリダイゼーション法によるバチルス・セレウス種及びその近縁種の検出用のプローブの配列の供給元として、あるいはPCR法によるバチルス・セレウス種及びその近縁種の検出用のプライマーの供給元として用いることができる。このプローブまたはプライマーを用いて検出対象の細胞試料がバチルス・セレウス種及びその近縁種であることを確認してから、本発明にかかるMALDI-TOF MS法を用いた識別及び/または同定方法を行ってもよい。
更に、本発明にかかるバイオマーカー1〜7を用いた抗原抗体反応を利用したバチルス・セレウス種及びその近縁種の検出方法に利用することもできる。この抗原抗体反応を利用した検出方法により検出対象の細胞試料がバチルス・セレウス種及びその近縁種であることを確認してから、本発明にかかるMALDI-TOF MS法を用いた識別及び/または同定方法を行ってもよい。
なお、上述したプローブを用いた検出方法、プライマーを用いた検出方法及び抗原抗体反応を利用した検出方法は公知の方法により行うことができる。
(細胞試料の調製及びMALDI-TOF MS分析)
MALDI-TOF MSによるバイオマーカー検出用の細胞試料の調製方法は、目的とする細胞試料を調製することができれば特に限定されない。公知の方法や、目的とする細胞試料を調製可能なその他の方法から適宜選択して用いることができる。
例えば、食品、食器、食品加工機械等の食品関連品や、土壌、河川などの環境からの分析対象物から採取した微生物細胞を、バチルス・セレウス種及びその近縁種培養用の培地で培養する。なお、培地は、平板培地などの固体培地や液体培地が利用できる。
バチルス・セレウス種及びその近縁種培養用の培地としては、バチルス・セレウス種及びその近縁種の良好な増殖が得られる培地(増殖用培地)を用いることが好ましい。増殖用培地としては、NGKG培地、MPY培地、PEMBA培地、CHROMager培地等の公知の培地、あるいは細胞増殖が認められる、これら以外の各種の培地を用いることができる。培養条件は特に限定されないが、30℃、20時間程度の培養条件を用いることが好ましい。また、培地の形態としては、寒天平板培地や液体培地を用いることができる。
培養により単離されたコロニーから菌体の適当数をマトリクス剤と混合し、サンプルプレートに塗沫する。必要であれば、ギ酸処理等の前処理を行ってもよい。マトリクス剤は、目的とする分析が可能であれば特に限定されない。マトリクス剤としては、例えば、シナピン酸(Sinapic Acid)及びα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)を挙げることができる。
サンプルプレートをMALDI-TOF MS装置内に所定の手順に従って配置し、質量分析を行う。MALDI-TOF MS装置としては、株式会社 島津製作所製及びブルカー・ダルトニクス株式会社製等を用いることができる。
各バイオマーカーに関する分析値は、レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計の飛行時間型(リニアモード)で検出可能である。m/z値の分析は、5000以上15000以下の範囲で行う。
〔実施例1〕
(分析用試料プレートの調製)
分析対象菌の培養及びMALDI-TOF MS装置による分析用の試料の調製は、以下の手順に従って行った。
1.30℃のインキュベーターで、以下の組成のペプトン培地を用いて、平板培養を約20時間程度行う。
・ペプトン培地組成(NBRC培地番号#802):
Hipolypepton*:10g
Yeast extract:2 g
MgSO4・7H2O:1g
Distilled water:1L
Agar:15g
(pH 7.0)
*:和光純薬工業株式会社(Wako Pure Chemical Ind., Ltd., Osaka, Japan)社製
(上記ペプトン培地の各成分を含む調製品(発売元Code No. 398-01671)は、和光純薬工業株式会社から入手可能である。)
2.滅菌水300μlの入った1.5mL容チューブに、培養した菌株からコロニーを適量(5〜10mg)掻き取り加え、懸濁する。
3.項目2で調製した懸濁液に、エタノール900μLを加え、よく撹拌する。
4.項目3で調製した懸濁液を、冷却付き卓上遠心機を用いて、13,000rpmで2分間遠心する。
5.ピペットマンを使って、エタノールが残らないように、遠心により得られた上清を完全に捨てる。さらに、数分ほど自然乾燥させてエタノールを沈殿物から蒸発させる。
6.残った沈殿物に70質量%ギ酸を50μL加え、撹拌する。
7.項目6で調製した溶液にアセトニトリルを50μL加え、撹拌し、数秒スピンダウンさせる。
8.シナピン酸マトリクス溶液*1を10μL分注したエッペンチューブを用意し、項目7のギ酸処理した溶液を適量(1〜5μL)加え撹拌し、数秒スピンダウンさせる。
*1:シナピン酸マトリクス溶液
シナピン酸(粉末5mg)に対し、アセトニトリル:2.0質量%トリフルオロ酢酸=1:1混合液を250μL加え、超音波処理をかけて溶解させたもの。)
9.あらかじめ、MALDI-TOF MSターゲットプレートのウェルにレイヤー用シナピン酸マトリクス*2を0.6〜1μL滴下し、自然乾燥させておく。
*2:レイヤー用シナピン酸マトリクス
SA(シナピン酸 粉末5mg)に対し、HPLCグレードのエタノールの250μLを加え、超音波処理をかけたもの。レイヤー用SAマトリクスを用いる際には、voltexを5秒程度行い、スピンダウンして上清を用いる。
10.項目8で調製した懸濁液1μLを、項目9のレイヤー用マトリクスを滴下したプレートのウェルに添加し、自然乾燥させ、結晶化させる。
11.項目10で調製した検出用プレートを自然乾燥させた後、MALDI-TOF MSにて分析する。
(分析対象菌)
分析対象菌として以下の各菌株を用いた。
・Bacillus cereus:NBRC 15305T
・Bacillus thuringiensis:NBRC 101235T
・Bacillus toyonensis:NBRC 110357株
・Bacillus sp.:NBRC 100169株
・Bacillus mycoides:NBRC 101228T
・Bacillus sp.:NBRC 103938株
・Bacillus pseudomycoides:NBRC 101232T
・Bacillus anthracis:A0488T
・Bacillus cytotoxicus:NVH391-98 T
・Bacillus sp.:NBRC 13494株
(MALDI-TOF MS分析)
分析用試料プレートをMALDI-TOF MS装置(使用機器:株式会社 島津製作所製 AXIMAシリーズ及びブルカー・ダルトニクス株式会社製 microflex LT)内に所定の手順に従って配置し、質量分析を行った。
Bacillus cereus NBRC 15305T株から得られたマススペクトルを図1に示す。
バチルス・セレウス種とその近縁種の各バイオマーカーにおける分析値の違いの一例を図2に示す。
更に、Bacillus cereus NBRC 15305T株及び各近縁種から得られたマススペクトルから読み取ったバイオマーカー1〜7の分析値を表1に示す。
Figure 0006917019
表2及び表3に示す各株を分析対象菌としてそれぞれ用いて、上記と同様にして分析用試料プレートを調製し、MALDI-TOF MS分析を行い、バイオマーカー1〜7における分析値を比較して、各株の再同定を行った。表2に再同定後の結果を示す。
Figure 0006917019
Figure 0006917019
NITE株(29株)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンターの保有株であり、公的に入手可能である。また、マルハニチロ株(2株)は、本発明者により単離され形態学的にバチルス・セレウス種に分類した株であり、バイオマーカー1〜7を用いて再同定した結果が表3に示されている。
食中毒菌であるバチルス・セレウス種、ならびにその近縁種を迅速に特定できる技術は、食品企業にとって重要な技術であり、本技術を品質管理に活用することで、安全な高品位の食品の提供に寄与でき、非常に有用である。

Claims (1)

  1. バチルス・セレウス(Bacillus cereus)種及びその近縁種から選択した1種と、他の1種以上とを識別する識別方法であって、
    識別対象種の細胞試料をマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)法により分析し、バイオマーカーに関する分析値を含むマススペクトルを得る工程と、
    前記MALDI-TOF MS法により得られた前記バイオマーカーの分析値を、前記バチルス・セレウス種及びその近縁種から予め得られた前記バイオマーカーの既知分析値と比較して、前記分析値と異なる前記既知分析値を与える種と前記識別対象種とを識別する工程と、を有し、
    前記バイオマーカーが、バチルス・セレウス種及びその近縁種のリボゾームタンパク質L33、L30、L29、S18、L31、S20及びL22であり、
    前記近縁種が、バチルス・アンシラシス(Bacillus anthracis)種、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)種、バチルス・トヨネンシス(Bacillus toyonensis)種、バチルス・マイコイデス(Bacillus mycoides)種、バチルス・ウェイヘンステファネンシス(Bacillus weihenstephanensis)種、バチルス・シュードマイコイデス(Bacillus pseudomycoides)種、バチルス・サイトトキシカス(Bacillus cytotoxicus)種、バチルス種(Bacillus sp.:NBRC 100169および本株と同種)、バチルス種(Bacillus sp.:NBRC 103938および本株と同種)及びバチルス種(Bacillus sp.:NBRC 13494および本株と同種)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする識別方法。
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