(第1実施形態)
本実施形態においては、複数の異なる種類の評価方法による複数の評価値に基づいて被検者の健康状態を診断することで、より健康状態の精度を高めるとともに、その被検者の健康状態を示すための仮想的な年齢である評価年齢を算出する。より具体的には、被検者の体力、認知機能、歩行能力の各要素について評価した上で、各評価値を総合することで、その被検者の健康状態を示すための仮想的な年齢である評価年齢を算出する。一方、比較対象として、要介護者認定がされた人や特定の疾患患者など、主に高齢者を中心に健康状態に問題があると認定された人たちを比較対象者とし、その比較対象者の評価年齢の平均値をあらかじめ算出して記憶しておく。そして、被検者の評価年齢と比較対象者の指標年齢の年齢差を算出し、その年齢差を「健康年齢差」と定める。例えば、被検者の評価年齢が比較対象者の指標年齢より20歳下回っていた場合、あと20年で健康状態に問題が生じるリスクがある、といった診断結果を提示できる。また例えば、被検者の評価年齢が実年齢を大きく超えて比較対象者の指標年齢より5歳上回っていた場合、すでに比較対象者の指標年齢を5歳も上回るほどすでに健康状態が悪く、直ちに問題が発生するリスクが高い、といった診断結果を提示できる。また、体力、認知機能、歩行能力の各要素の他に、健康診断の結果をさらに加味することにより、評価年齢の精度をより高めてもよい。
以下、体力、認知機能、歩行能力の各評価要素に関する評価方法を例示的に説明する。
体力評価方法としては、例えば文部科学省が提唱する「新体力テスト」による評価方法が知られている。新体力テストは年代別に実施要項が定められており、例えば65歳〜79歳の実施要項としては、日常生活活動テスト、握力、上体起こし、長座体前屈、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行といったテスト項目が定められ、総合評価として5段階の評価が得られる。これらのテスト項目によって、主に、柔軟性、握力、脚力、平衡力、持久力の5項目を評価することができるが、特に体力評価への寄与度が高い重要な要素は持久力である。すなわち、評価方法をより簡便なものとするために、体力評価方法の各種項目のうちいずれか1項目だけでより精度よく体力を評価するとすれば、「持久力」を評価することが望ましい。そこで、本実施形態においては、より簡便なテストでより精度よい評価結果を得るために特に「持久力」を評価する。ただし、変形例においては柔軟性、握力、脚力、平衡力、持久力のすべてを評価することとしてもよいし、いずれか複数項目を評価することとしてもよいし、持久力以外のいずれか1項目を評価することとしてもよい。こうして得られる体力に関する測定値ないし評価値を、他の評価値と共通の評価軸である所定の段階(例えば、10段階)の評価値に変換するとともに、さらに「体力健康年齢」のように仮想的な年齢の形に変換する。
認知機能評価方法としては、MMSE(ミニメンタルステート検査)やHDS−R(長谷川式認知症スケール)などの認知症診断テストの他、TMT(トレイルメイキングテスト)のような注意力の評価テストなどの評価方法が知られている。しかし、認知機能の評価方法はほとんどが高齢者向きの評価方法であって、認知症予備軍の評価法や若年層から中年層向けの評価方法はほとんどなく、リスク診断ができていない。認知機能評価方法によって、主に、記憶力、空間認識力、見当識、計画力、注意力の5項目を評価することができるが、特に重要な要素は、男性の場合は記憶力であり、女性の場合は空間認識力であることが分析によって判明している。このように、重要な認知機能評価項目は被検者の性別によって異なる。評価方法をより簡便なものとするために、認知機能評価方法の各種項目のうちいずれか1項目だけでより精度よく認知機能を評価するとすれば、男性の場合は「記憶力」を評価することが望ましく、女性の場合は「空間認識力」を評価することが望ましい。そこで、本実施形態においては、より簡便なテストでより精度よい評価結果を得るために被検者が男性の場合は「記憶力」を評価し、被検者が女性の場合は「空間認識力」を評価する。ただし、変形例においては記憶力、空間認識力、見当識、計画力、注意力のすべてを評価することとしてもよいし、いずれか複数項目を評価することとしてもよいし、男性の場合に記憶力以外のいずれか1項目を評価することとしてもよいし、女性の場合に空間認識力以外のいずれか1項目を評価することとしてもよい。こうして得られる認知機能に関する測定値ないし評価値を、他の評価値と共通の評価軸である所定の段階(例えば、10段階)の評価値に変換するとともに、さらに「認知健康年齢」のように仮想的な年齢の形に変換する。
歩行能力評価方法としては、歩行速度に基づく評価方法の他、歩行姿勢による歩行評価(特開2018−69035号)や、足底圧による歩行評価(特開2017−006305)がある。歩行能力の評価方法としては、主に、歩行速度、バランス能力、歩行姿勢の3項目で評価することができるが、特に重要な要素は歩行速度である。歩行速度は、簡便に評価が可能であり、特に高齢者においては体力や健康状態が反映されやすいと言われているためである。よって、評価方法をより簡便なものとするために、歩行能力評価方法の各種項目のうちいずれか1項目だけでより精度よく歩行能力を評価するとすれば、「歩行速度」を評価することが望ましい。そこで、本実施形態においては、より簡便なテストでより精度よい評価結果を得るために「歩行速度」を評価する。ただし、変形例においては歩行速度、バランス能力、歩行姿勢のすべてを評価することとしてもよいし、いずれか複数項目を評価することとしてもよいし、歩行速度以外のいずれか1項目を評価することとしてもよい。こうして得られる歩行能力に関する測定値ないし評価値を、他の評価値と共通の評価軸である10段階の評価値に変換するとともに、さらに「歩行健康年齢」のように仮想的な年齢の形に変換する。
体力、認知機能、歩行能力の各評価結果に加えて、さらに健康診断による評価値を加味してもよい。健康診断による評価としては、例えば脂質、肝機能、代謝系、血液一般、尿・腎機能、呼吸、心機能、肺、胃、大腸の評価を用いてもよい。
図1は、健康状態診断システムの基本的な構成を模式的に示す。健康状態診断システム10は、健康状態取得装置12および健康状態診断装置14を備える。健康状態取得装置12は、被検者の体力、認知機能、歩行能力の各要素に関する評価値を取得するための装置であり、ハードウェアとしては複数の測定機器や電子機器の組み合わせで構成されてもよいし、携帯端末などの単一の電子機器で構成されてもよい。健康状態取得装置12は、複数の測定機器や電子機器で構成される仕様の場合、上述した様々な評価方法のうちどのような方法を採用するかに応じて、どのような測定機器を用いてどのように測定するかが定まる。健康状態取得装置12は、単一の電子機器で構成される場合、例えばスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末上で所定のプログラムを実行させることで測定機器として機能させる仕様であってもよい。本実施形態においては、複数の健康状態取得装置12a,12b,12cのそれぞれが、体力、認知機能、歩行能力のいずれかを測定ないし評価する構成を説明する。健康状態取得装置12aは、制御部220、データ格納部222、入出力部226、通信部228、計測部230、撮像部232がバスライン234を介して相互にデータを転送する形で構成される。制御部220は、例えば、CPUやGPUなどのプロセッサである。データ格納部222は、例えば、メインメモリやフラッシュメモリなどのデータストレージである。入出力部226は、例えば、タッチパネル、電子ペン、マイク、キーボード、マウスなどの入力装置や、タッチパネル、液晶モニタなどの出力装置である。通信部228は、無線LAN、近距離無線通信、有線LANなどの通信インターフェイスである。計測部230は、例えば、衛星測位システムから位置情報を取得する測位モジュールや端末の動きを検知する加速度センサなど、各評価要素の測定ないし評価に必要なデータを取得する計測センサや計測モジュールである。撮像部232は、例えば、静止画や動画を撮像するカメラである。データ格納部222に格納された、いずれかの評価要素に関する評価プログラムを制御部220が実行するとともに、入出力部226を介して情報の入力や情報の表示がなされる。評価プログラムによって取得された測定値ないし評価値は、計測部230からネットワーク16を介して健康状態診断装置14へ送信される。健康状態取得装置12b、12cもまた健康状態取得装置12aと同様のハードウェア構成であってよく、健康状態取得装置12aとは異なる種類の計測センサや計測モジュールが計測部230として搭載されてもよい。
健康状態診断装置14は、ネットワーク16を介して健康状態取得装置12から被検者の健康状態を示す各要素に関する評価値を取得し、それら評価値に基づいて被検者の健康状態を評価する処理を実行する装置である。健康状態診断装置14は、ハードウェアとしてはパーソナルコンピュータであってもよいし、サーバ用のコンピュータであってもよい。健康状態診断装置14は、制御部200、データ格納部202、入出力部206、通信部208がバスライン234を介して相互にデータを転送する形で構成される。制御部200は、例えば、CPUやGPUなどのプロセッサである。データ格納部202は、例えば、メインメモリや、フラッシュメモリ、ハードディスクなどのデータストレージである。入出力部206は、例えば、タッチパネル、電子ペン、マイク、キーボード、マウスなどの入力装置や、タッチパネル、液晶モニタ、プリンタなどの出力装置である。通信部208は、無線LAN、近距離無線通信、有線LANなどの通信インターフェイスである。データ格納部202に格納された、複数の健康状態取得装置12a,12b、12cから取得した各評価値を総合して被検者の健康状態を診断する診断プログラムを制御部200が実行するとともに、入出力部206を介して情報の入力と、診断結果の表示や印刷などの出力がなされる。診断結果はさらに、通信部208からネットワーク16を介して健康状態取得装置12a,12b、12cへ送信される。
本実施形態においては、健康状態診断システム10として、健康状態取得装置12と健康状態診断装置14の組み合わせで構成される例を説明した。変形例においては、健康状態診断システム10として一体的なハードウェアで構成される仕様であってもよく、その場合、被検者の体力、認知機能、歩行能力の各要素に関する評価値を取得する機能とそれら評価値をもとに診断結果を出力する機能を兼ね備えた装置として実現してもよい。そのような装置として、例えばスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末、ラップトップコンピュータなどの端末にすべての機能を持たせて構成させてもよい。
図2は、健康状態取得装置12の構成を示す機能ブロック図である。健康状態取得装置12は、体力評価取得部20、認知評価取得部22、歩行評価取得部24、情報入力部26、表示制御部28、通信制御部30を備える。体力評価取得部20は、所定の体力評価方法を用いた被検者の体力評価値を取得する。体力評価取得部20は、体力の評価要素のうち、持久力に関する評価値を取得する。例えば、被検者に健康状態取得装置12を携帯させた状態で「6分間歩行」のプログラムを実行し、測位モジュール(計測部230)が衛星測位システムから取得する位置情報の変化や加速度センサ(計測部230)が取得する被検者の動きの変化に基づいて被検者の所定時間における歩行距離を取得する。体力評価取得部20は、歩行距離の測定値、またはその測定値および所定基準に基づいた体力評価値を決定する。なお、変形例において、体力評価取得部20は、所定の評価項目における測定値ないし評価値を、入出力部226を介したデータ入力や、撮像部232により撮像された画像の解析により取得する仕様としてもよい。
認知評価取得部22は、所定の認知機能評価方法を用いた被検者の認知評価値を取得する。認知評価取得部22は、認知機能の評価要素のうち、男性の被検者に対しては記憶力に関する評価値を、女性の被検者に対しては空間認識力に関する評価値を取得する。例えば、被検者との対話式で、男性の被検者には「記憶力テスト」のプログラムを実行し、女性の被検者に対しては「空間認識力テスト」のプログラムを実行する。「記憶力テスト」は、被検者に様々な物事を提示してどこまで忘れず覚えていられるかをテストするプログラムである。「空間認識力テスト」は、画面に3次元の物体を表示し、被検者にその物体の位置、方向性、姿勢、大きさ、形状、間隔などの状態や関係を認識させるプログラムである。認知評価取得部22は、入出力部226を介した被検者からの入力に基づいて、記憶力テストまたは空間認識力テストの結果を示す値、またはその結果値および所定基準に基づいた認知評価値を決定する。なお、変形例において、認知評価取得部22は、所定の評価項目における測定値ないし評価値を、入出力部226を介したデータ入力や、計測部230により計測されたデータの解析、撮像部232により撮像された画像の解析により取得する仕様としてもよい。
歩行評価取得部24は、所定の歩行能力評価方法を用いた被検者の歩行評価値を取得する。歩行評価取得部24は、歩行能力の評価要素のうち、歩行速度に関する評価値を取得する。例えば、被検者に健康状態取得装置12を携帯させた状態で、上述の体力評価を兼ねた「6分間歩行」のプログラムを実行し、測位モジュール(計測部230)が衛星測位システムから取得する位置情報の変化や加速度センサ(計測部230)が取得する被検者の動きの変化および経過時間に基づいて被検者の歩行速度を取得する。歩行評価取得部24は、歩行速度の測定値、またはその測定値および所定基準に基づいた歩行評価値を決定する。なお、変形例において、歩行評価取得部24は、所定の評価項目における測定値ないし評価値を、入出力部226を介したデータ入力や、撮像部232により撮像された画像の解析により取得する仕様としてもよい。
情報入力部26は、被検者の氏名、性別、生年月日などの属性や個人を特定するための情報の入力を入出力部226(例えば、タッチパネル)を介して受け付ける。表示制御部28は、情報入力画面や、体力評価、認知評価、歩行評価のプログラムの実行内容を、制御部220(例えば、CPUやGPU)の制御により入出力部226(例えば、タッチパネル)の画面に表示する。通信制御部30は、体力評価取得部20、認知評価取得部22、歩行評価取得部24が取得した測定値または評価値を、通信部208からネットワーク16を介して健康状態診断装置14へ送信する。
健康状態取得装置12の構成は、ハードウェアコンポーネントでいえば、図1に示すように制御部220、データ格納部222、データ格納部222に格納されたプログラム、入出力部226、通信部228、計測部230、撮像部232などによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。また、図2では体力評価取得部20、認知評価取得部22、歩行評価取得部24を一つの健康状態取得装置12が備える例を説明しているが、図1のように複数の健康状態取得装置12a,12b,12cの組み合わせによって健康状態取得装置12を構成する場合には、それぞれに体力評価取得部20、認知評価取得部22、歩行評価取得部24のうち少なくともいずれかが備えられていれば足りる。後述する各実施形態における健康状態取得装置12の構成もまた、本実施形態と同様に様々な組合せにより実現され得る。
図3は、健康状態診断装置14の構成を示す機能ブロック図である。健康状態診断装置14は、体力評価取得部40、認知評価取得部42、歩行評価取得部44、情報入力部46、表示制御部48、通信制御部50、比較情報記憶部52、年齢差決定部54、結果出力部56を備える。体力評価取得部40は、健康状態取得装置12から送信される体力評価の評価値を取得するか、または取得する測定値および所定の評価基準に基づいて体力評価値を算出する。認知評価取得部42は、健康状態取得装置12から送信される認知評価の評価値を取得するか、または取得する測定値および所定の評価基準に基づいて認知評価値を算出する。歩行評価取得部44は、健康状態取得装置12から送信される歩行評価の評価値を取得するか、または取得する測定値および所定の評価基準に基づいて歩行評価値を算出する。情報入力部46は、健康状態診断の実施者による入出力部206(例えば、キーボードやマウス)を介したデータ入力を受け付け、表示制御部48は、健康状態診断の内容を入出力部206(例えば、液晶モニタ)の画面に表示する。通信制御部50は、通信部208によりネットワーク16を介して健康状態取得装置12との間でデータを送受信する。
評価年齢決定部51は、体力評価値、認知評価値、および、歩行評価値を用いて被検者の健康状態に対する評価年齢を決定する。具体的には、まず体力評価の測定値または評価値に基づいて体力評価年齢を決定し、認知評価の測定値または評価値に基づいて認知評価年齢を決定し、歩行評価の測定値または評価値に基づいて歩行評価年齢を決定する。評価年齢決定部51は、体力評価年齢、認知評価年齢、歩行評価年齢の平均値を算出して、その平均値を総合的な被検者の評価年齢とする。変形例においては、体力評価年齢、認知評価年齢、歩行評価年齢のそれぞれに対して重み付けを加えた加重平均値を被検者の評価年齢としてもよい。
比較情報記憶部52は、指標となる比較対象として、所定の健康状態にある複数人の比較対象者、より具体的には健康状態に問題が生じていると認定された複数人の比較対象者の平均評価年齢を「指標年齢」の形であらかじめ記憶する。本実施形態における比較対象者は、要介護者として認定された人または特定の疾患患者として認定された人であり、比較情報記憶部52はそうした健康状態にある人たちの評価年齢の平均値またはそのような人の実年齢ないしその平均値をあらかじめ指標年齢として記憶する。比較情報記憶部52が記憶する比較対象者の指標年齢は、複数人の比較対象者の実年齢と評価年齢の関係を回帰分析した回帰式として求めてもよく、比較情報記憶部52は、比較対象者の実年齢と総合的な評価年齢の関係に関する回帰式を指標年齢として記憶してもよい。比較情報記憶部52は、さらに評価要素ごとの指標として所定の健康状態にある比較対象者の平均体力評価年齢、平均認知評価年齢、平均歩行評価年齢をそれぞれ「指標体力年齢」「指標認知年齢」「指標歩行年齢」の形であらかじめ記憶する。比較情報記憶部52は、比較対象者の実年齢と体力評価年齢、認知評価年齢、歩行評価年齢のそれぞれとの関係に関する各回帰式として求めてもよく、各回帰式を指標体力年齢、指標認知年齢、指標歩行年齢として記憶してもよい。あるいは、所定の体力状態にある比較対象者の実年齢ないしその平均、所定の認知機能状態にある比較対象者の実年齢ないしその平均、所定の歩行能力状態にある比較対象者の実年齢ないしその平均を、それぞれ指標体力年齢、指標認知年齢、指標歩行年齢として記憶してもよい。
年齢差決定部54は、被検者の評価年齢と比較対象者の指標年齢との年齢差を健康年齢差として決定する。年齢差決定部54は、被検者の体力評価年齢と比較対象者の指標体力年齢との年齢差を体力評価年齢差として決定し、被検者の認知評価年齢と比較対象者の指標認知年齢との年齢差を認知評価年齢差として決定し、被検者の歩行評価年齢と比較対象者の指標歩行年齢との年齢差を歩行評価年齢差として決定する。年齢差決定部54は、同じ被検者に対する2回目以降の評価年齢の決定があった場合、決定された評価年齢およびその決定時の経年の関係に基づいた回帰分析により評価年齢の経年変化度合いを示す回帰式を求める。年齢差決定部54は、その経年変化度合いを示す回帰式および比較対象者の指標年齢に基づいて健康年齢差を決定する。また、年齢差決定部54は、体力評価の経年変化度合いを示す回帰式および比較対象者の指標体力年齢に基づいて体力評価年齢差を決定し、認知評価の経年変化度合いを示す回帰式および比較対象者の指標認知年齢に基づいて認知評価年齢差を決定し、歩行評価の経年変化度合いを示す回帰式および比較対象者の指標歩行年齢に基づいて歩行評価年齢差を決定する。回帰式に基づく各年齢差の決定方法については後に詳述する。
結果出力部56は、決定された健康年齢差、体力評価年齢差、認知評価年齢差、歩行評価年齢差、各評価値などの情報を診断結果として入出力部206(例えば、液晶モニタやプリンタ)を介して出力する。結果出力部56は、診断結果を通信部208からネットワーク16を介して健康状態取得装置12へ送信することで健康状態取得装置12の画面に結果を表示させる他、診断結果を印刷などの出力手段によって外部へ出力する。
健康状態診断装置14の構成は、ハードウェアコンポーネントでいえば、図1に示すように制御部200、データ格納部202、データ格納部202に格納されたプログラム、入出力部206、通信部208などによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。後述する各実施形態における健康状態診断装置14の構成もまた、本実施形態と同様に様々な組合せにより実現され得る。
なお、変形例においては、健康状態診断装置14が体力評価取得部40、認知評価取得部42、歩行評価取得部44を備えず、上述した体力評価取得部40、認知評価取得部42、歩行評価取得部44の各機能を健康状態取得装置12の体力評価取得部20、認知評価取得部22、歩行評価取得部24のそれぞれに持たせる形で構成してもよい。別の変形例においては、健康状態取得装置12における体力評価取得部20、認知評価取得部22、歩行評価取得部24の各機能の少なくとも一部を、健康状態診断装置14における体力評価取得部40、認知評価取得部42、歩行評価取得部44のそれぞれに持たせる形で構成してもよい。
図4は、被検者と比較対象者の評価年齢差を示すグラフの図である。図4(a)は被検者に対する1回目の測定および評価における被検者と比較対象者の評価年齢差を示し、図4(b)は被検者に対する1〜3回目の測定および評価における被検者と比較対象者の評価年齢差を示す。本図では歩行評価年齢に関する年齢差を例示する。図においては、実年齢xを横軸にとり、歩行評価年齢yを縦軸にとる。
図4(a)に示すように、被検者の1回目の歩行評価により算出された歩行評価年齢を第1評価年齢83としてプロットする。平均回帰直線81は、被検者全体の評価年齢の平均として単回帰分析により求められた、歩行評価年齢yを目的変数とし、実年齢xを説明変数とする回帰直線である。指標歩行年齢としての指標回帰直線82は、複数人の比較対象者の歩行評価年齢の平均として単回帰分析により求められた、歩行評価年齢yを目的変数とし、実年齢xを説明変数とする回帰直線である。第1評価年齢差84は、被検者の1回目の歩行評価年齢と指標回帰直線82との評価年齢差を示す。1回目の歩行評価においては、図4(a)に示す関係から歩行評価年齢を算出する。複数人の比較対象者の平均として求められる回帰直線は、男性の場合と女性の場合で異なることから、男性の被検者の場合は男性の比較対象者における指標回帰直線82を比較対象に用い、女性の被検者の場合は女性の比較対象者における指標回帰直線82を比較対象に用いる。被検者の1回目の評価においては、本図(a)に示す歩行評価年齢の決定方法と同様に、体力評価年齢差、認知評価年齢差、および、総合的な評価年齢差を比較対象者の指標体力年齢、指標認知年齢、指標年齢の各回帰直線との年齢差から求める。ただし、各回帰直線との差ではなく、評価要素ごとの比較対象者の実年齢ないしその平均との差によって体力評価年齢差、認知評価年齢差、歩行評価年齢差、総合的な評価年齢差を求めてもよい。
図4(b)に示すように、被検者の2回目および3回目の歩行評価により算出された歩行評価年齢を第2評価年齢85、第3評価年齢87としてプロットする。評価年齢変化回帰直線86は、被検者の第1評価年齢83、第2評価年齢85、第3評価年齢87の平均として単回帰分析により求められた、歩行評価年齢yを目的変数とし、実年齢xを説明変数とする回帰直線である。評価年齢変化回帰直線86の傾き、すなわち被検者の歩行評価年齢の経年変化度合いは、必ずしも被検者全体の平均である平均回帰直線81の傾きとは一致せず、被検者全体より早く比較対象者の指標歩行年齢に到達してしまうことが予測される場合や、被検者全体より遅く到達することが予測される場合があるなど、被検者によりばらつく。そこで、指標回帰直線82と評価年齢変化回帰直線86の交点を通る垂線、すなわち被検者の評価年齢が比較対象者の指標歩行年齢に到達すると予測される実年齢を指標歩行年齢91とする。その上で、第2評価年齢85と指標歩行年齢91の実年齢差を2回目の測定時における歩行評価年齢差とし、第3評価年齢87と指標歩行年齢91の実年齢差を3回目の測定時における歩行評価年齢差とする。被検者の2回目以降の評価においては、本図(b)に示す歩行評価年齢の決定方法と同様に、体力評価年齢差、認知評価年齢差、および、総合的な評価年齢差を比較対象者の指標体力年齢、指標認知年齢、指標年齢のそれぞれとの年齢差から求める。
なお、歩行評価に関しては、複数人の比較対象者の実年齢と評価結果の関係から求まる回帰直線を比較対象として評価年齢差を算出したが、体力評価および認知評価の評価年齢差の算出においては複数人の比較対象者の実年齢と評価結果の関係から求まる回帰直線ではなく、比較対象者の実年齢またはその平均を指標年齢としてもよい。例えば、体力評価に関しては、サルコペニア発症リスクが約10%となる実年齢ないしその平均、またはサルコペニア発症リスクが約20%となる実年齢ないしその平均を指標体力年齢としてもよい。サルコペニアとは、加齢や疾患による骨格筋量と筋肉機能が低下した状態をいい、例えばサルコペニア発症リスクが約10%となる指標体力年齢は「75歳以上」であり、サルコペニア発症リスクが約20%となる指標体力年齢は「80歳以上」である。この指標体力年齢は定数であるため、グラフに示す場合、縦軸上の75歳または80歳を通る横軸に平行な直線となる。例えば体力評価年齢が73歳であった被検者の場合、指標体力年齢との差から、あと2年でサルコペニア発症リスクが約10%となり、あと7年でサルコペニア発症リスクが約20%となる、という診断結果となる。また、体力評価年齢が37歳であった被検者の場合、指標体力年齢との差から、サルコペニア発症リスクが約10%となるまであと38年かかり、サルコペニア発症リスクが約20%となるまであと43年かかる、という診断結果となる。
認知評価に関しては、認知症発症リスクが約20%となる実年齢ないしその平均、または認知症発症リスクが約50%となる実年齢ないしその平均を指標認知年齢としてもよい。例えば認知症発症リスクが約20%となる指標認知年齢は「80歳以上」であり、認知症発症リスクが約50%となる指標認知年齢は「85歳以上」である。この指標認知年齢は定数であるため、グラフに示す場合、縦軸上の80歳または85歳を通る横軸に平行な直線となる。例えば認知評価年齢が80歳であった被検者の場合、指標認知年齢との差から、すでに認知症発症リスクが約20%である評価年齢に突入しており、また、あと5年で認知症発症リスクが約50%となる、という診断結果となる。また、認知評価年齢が30歳であった被検者の場合、指標認知年齢との差から、認知症発症リスクが約20%となるまであと50年かかり、認知症発症リスクが約50%となるまであと55年かかる、という診断結果となる。
図5は、健康状態取得装置12による情報入力画面を例示する。測定開始画面60においては、氏名入力欄62、性別入力欄64、生年月日入力欄66、測定開始ボタン68が表示される。被検者または健康状態診断の実施者は、健康状態取得装置12を操作して氏名入力欄62に被検者の氏名を入力し、性別入力欄64に被検者の性別を入力し、生年月日入力欄66に被検者の生年月日を入力する。初回の健康状態診断では氏名入力欄62、性別入力欄64、生年月日入力欄66が表示されるが、被検者の情報として健康状態診断装置14に登録される。よって、2回目以降の健康状態診断では測定開始画面60に氏名入力欄62、性別入力欄64、生年月日入力欄66は表示されず、これらの情報入力欄の代わりに、被検者に付与されたIDの入力欄が表示されてもよい。各種入力欄の下方には、体力評価、認知評価、歩行評価のためのテスト内容の説明が表示される。例えば、認知評価として、男性の被検者には「記憶力テスト」の文字列が表示され、女性の被検者には「空間認識力テスト」の文字列が表示される。また、本実施形態では体力評価と歩行評価を一つのテストで評価する「6分間歩行テスト」の文字列が表示される。被検者または健康状態診断の実施者が測定開始ボタン68を押下すると、「記憶力テスト」および「6分間歩行テスト」が順次開始される。
図6は、第1実施形態における診断結果の表示画面例を示す。本図に示す診断結果画面100は、健康状態診断装置14の入出力部206を介して表示装置に表示される他、ネットワーク16を介して評価結果が出力された健康状態取得装置12の入出力部226においても表示される。また、診断結果画面100の内容は、健康状態診断装置14または健康状態取得装置12から所定の印刷手段により出力される。
診断結果画面100には、被検者表示欄102、総合評価欄140、個別評価欄142が含まれる。被検者表示欄102には、被検者の氏名、性別、年齢が表示される。総合評価欄140は、評価年齢欄104、偏差値欄106、ランキング欄108、健康年齢差欄110が含まれる。評価年齢欄104には、被検者の総合評価としての評価年齢として、例えば「30歳」が表示される。偏差値欄106には、被検者の評価年齢と実年齢との差の偏差値として、例えば「57.3」が表示される。ランキング欄108には、被検者の評価年齢と実年齢との差の順位として「53/253位」が表示される。健康年齢差欄110には、被検者の健康年齢差として、「要介護リスクあと48年」が表示される。
個別評価欄142には、認知評価欄112、体力評価欄114、歩行評価欄116、認知評価グラフ118、体力評価グラフ120、歩行評価グラフ122、認知評価年齢欄124、認知評価年齢差欄126、体力評価年齢欄128、体力評価年齢差欄130、歩行評価年齢欄132、歩行評価年齢差欄134が含まれる。認知評価欄112には、認知評価の結果として、評価対象の種類である「認知」、評価テスト項目である「記憶力」、評価測定値である「131」、10段階の評価値である「6」、評価値の「6」を示す横棒グラフが表示される。体力評価欄114には、体力評価の結果として、評価対象の種類である「体力」、評価テスト項目である「持久力」、評価測定値である「44」、10段階の評価値である「6」、評価値の「6」を示す横棒グラフが表示される。歩行評価欄116には、歩行評価の結果として、評価対象の種類である「歩行」、評価テスト項目である「歩行速度」、評価測定値である「16」、10段階の評価値である「10」、評価値の「10」を示す横棒グラフが表示される。このように、認知評価欄112、体力評価欄114、歩行評価欄116において、それぞれ異なる基準で測定された認知評価の測定値「131」、体力評価の測定値「44」、歩行評価の測定値「16」は、互いに異なる評価軸に基づいているため単純な比較は難しい。しかし、それぞれ共通の評価軸である10段階評価に変換した評価値と、例えば、10段階の目盛りが付された横棒グラフにより表すことにより、相互に対比してどの評価要素が優り、どの評価要素が劣るかを一目で判断することを容易にする。
認知評価グラフ118、体力評価グラフ120、歩行評価グラフ122には、図4で示したようなグラフが表示される。認知評価グラフ118には、認知評価年齢と指標認知年齢との年齢差を示すグラフが表示される。このグラフには、被検者全体の平均的な認知評価年齢の経年変化度合い、ないし、被検者の実際の認知評価年齢の経年変化度合いがさらに示される。体力評価グラフ120には、体力評価年齢と指標体力年齢との年齢差を示すグラフが表示される。このグラフには、被検者全体の平均的な体力評価年齢の経年変化度合い、ないし、被検者の実際の体力評価年齢の経年変化度合いがさらに示される。歩行評価グラフ122には、歩行評価年齢と比較対象者の指標歩行年齢との年齢差を示すグラフが表示される。このグラフには、被検者全体の平均的な歩行評価年齢の経年変化度合い、ないし、被検者の実際の歩行評価年齢の経年変化度合いがさらに示される。なお、図示していないが、総合評価としての評価年齢と指標年齢との健康年齢差、および、被検者の評価年齢の経年変化度合いを示すグラフをさらに表示してもよい。
認知評価年齢欄124には、被検者の認知評価年齢として、例えば「28歳」が表示される。認知評価年齢差欄126には、被検者の認知評価年齢と指標認知年齢である認知症発症リスク年齢との年齢差として、「リスクあと57年」が表示される。体力評価年齢欄128には、被検者の体力評価年齢として、例えば「33歳」が表示される。体力評価年齢差欄130には、被検者の体力評価年齢と指標体力年齢であるサルコペニア発症リスク年齢との年齢差として、「リスクあと47年」が表示される。歩行評価年齢欄132には、被検者の歩行評価年齢として、例えば「29歳」が表示される。歩行評価年齢差欄134には、被検者の歩行評価年齢と指標歩行年齢である比較対象者の平均歩行評価年齢との年齢差として、「リスクあと40年」が表示される。
なお、本実施形態においては、体力評価、認知機能評価、歩行能力評価として、それぞれ1項目ずつの評価値を取得し、1項目ずつの評価結果を認知評価欄112、体力評価欄114、歩行評価欄116のそれぞれに表示する例を説明した。変形例においては、体力評価として柔軟性、握力、脚力、平衡力、持久力のすべてを評価し、認知機能評価として記憶力、空間認識力、見当識、計画力、注意力のすべてを評価し、歩行能力評価として歩行速度、バランス能力、歩行姿勢のすべてを評価することとしてもよい。例えば、体力評価取得部40は、柔軟性、握力、脚力、平衡力、持久力のすべての評価値を取得するとともに、これらを総合した体力評価値および体力評価年齢を決定する。その場合、すべての評価値の平均値を体力評価値としてもよいし、それぞれの重要度に応じた重み付けを加えた加重平均値を体力評価値としてもよい。認知評価取得部42は、記憶力、空間認識力、見当識、計画力、注意力のすべての評価値を取得するとともに、これらを総合した認知評価値および認知評価年齢を決定する。その場合、すべての評価値の平均値を認知評価値としてもよいし、それぞれの重要度に応じた重み付けを加えた加重平均値を認知評価値としてもよい。歩行評価取得部44は、歩行速度、バランス能力、歩行姿勢のすべての評価値を取得するとともに、これらを総合した歩行評価値および歩行評価年齢を決定する。その場合、すべての評価値の平均値を歩行評価値としてもよいし、それぞれの重要度に応じた重み付けを加えた加重平均値を歩行評価値としてもよい。認知評価欄112、体力評価欄114、歩行評価欄116のそれぞれにおいても、すべての評価要素について評価結果を表示させる。
(第2実施形態)
本実施形態は、基本的な構成において第1実施形態と共通するが、評価年齢や健康年齢差を決定して出力するだけでなく、さらに各種のリスク診断を実行する点で第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態と共通する事項については説明を省略し、相違する事項を中心に説明する。
本実施形態においては、被検者の評価年齢や健康年齢差等だけでなく、転倒リスクや疼痛リスクをさらに評価する。転倒リスクや疼痛リスクの評価方法を以下説明する。
転倒リスク評価方法としては、例えば認知機能評価要素の一つである「二重課題能力」と、歩行能力評価要素の一つである「躓き難さ」のうち、一方または双方を評価することにより転倒リスクを評価する方法がある。特に二重課題能力の評価がより有効であり、二重課題能力のみで転倒リスクを評価することとしてもよい。二重課題能力(デュアルタスク)は、2つ以上の課題を無意識下で同時に遂行する力であり、一般的には高齢になるほど二重課題能力が落ちると言われている。二重課題能力の評価としては、通常歩行と計算歩行の速度比に基づいて評価する方法がある。計算歩行は、計算などの課題を伴いながらの歩行であり、通常歩行と比べた速度低下の度合いによって評価する。躓き難さの評価としては、フットクリアランス、すなわち歩行時に爪先を床ないし地面からどのくらい離して歩けているかに基づいて評価する方法がある。
疼痛リスクには、主に肩痛リスク、腰痛リスク、股痛リスク、足首痛リスクがある。
肩痛リスク評価方法としては、例えば歩行能力評価要素の一つである「体幹姿勢」と、体力評価要素の一つである「上肢筋量」のうち、一方または双方を評価することにより肩痛リスクを評価する方法がある。特に体幹姿勢の評価がより有効であり、体幹姿勢のみで肩痛リスクを評価することとしてもよい。体幹姿勢は、肩水平角を計測することにより評価してもよい。上肢筋量は、体組成計で計測することにより評価してもよい。
腰痛リスク評価方法としては、例えば体力評価要素の一つである「平衡性」と、体力評価要素の一つである「持久力」のうち、一方または双方を評価することにより腰痛リスクを評価する方法がある。特に平衡性の評価がより有効であり、平衡性のみで腰痛リスクを評価することとしてもよい。平衡性は、閉眼片脚立ちにより評価してもよい。持久力は、持久力テストの点数で評価してもよい。
股痛リスク評価方法としては、例えば体力評価要素の一つである「股柔軟性」と、体力評価要素の一つである「下肢筋量」のうち、一方または双方を評価することにより股痛リスクを評価する方法がある。特に股柔軟性の評価がより有効であり、股柔軟性のみで股痛リスクを評価することとしてもよい。股柔軟性は、股関節の関節可動域測定により評価してもよい。下肢筋量は、体組成計で計測することにより評価してもよい。
足首痛リスク評価方法としては、例えば体力評価要素の一つである「血管弾力性」と、体力評価要素の一つである「脚力」のうち、一方または双方を評価することにより足首痛リスクを評価する方法がある。特に血管弾力性の評価がより有効であり、血管弾力性のみで足首痛リスクを評価することとしてもよい。血管弾力性は、加速度脈波による測定で評価してもよい。脚力は、5回の椅子立ち上がりにより評価してもよい。
上述の各評価要素に対する評価値は、図2における体力評価取得部20、認知評価取得部22、歩行評価取得部24のいずれかにより取得される。
図7は、第2実施形態における健康状態診断装置14の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態における健康状態診断装置14は、第1実施形態における健康状態診断装置14の構成に加えて、さらにリスク評価処理部150を備える。リスク評価処理部150は、体力評価取得部40、認知評価取得部42、歩行評価取得部44により取得される各評価値と上述の各リスク評価方法に基づき、転倒リスクと疼痛リスクの評価値を決定する。リスク評価処理部150によって決定された転倒リスクと疼痛リスクの評価値は、表示制御部48によって画面に表示されるとともに、結果出力部56によって診断結果として出力される。
図8は、第2実施形態における診断結果の表示画面例を示す。本実施形態における診断結果画面100には、被検者表示欄102、総合評価欄140の他、リスク評価欄144が含まれる。リスク評価欄144には、リスク評価として、転倒リスク、肩痛リスク、腰痛リスク、股痛リスク、足首痛リスクの5項目の評価結果を示すレーダーチャートが表示される。本図の例では、転倒リスク、肩痛リスク、股痛リスク、足首痛リスクの4項目の評価結果としては、リスクが低いことを示す「0」が示され、腰痛リスクの評価結果としては、リスクがやや高いことを示す「1」が示される。リスクが高い場合はその旨を示す「2」が示されることとなる。
(第3実施形態)
本実施形態は、基本的な構成において第1実施形態または第2実施形態と共通するが、評価年齢や健康年齢差を決定して出力するだけでなく、さらに各種の運動推薦を実行する点で第1実施形態および第2実施形態と相違する。以下、第1実施形態または第2実施形態と共通する事項については説明を省略し、相違する事項を中心に説明する。
本実施形態においては、被検者の評価年齢や健康年齢差等だけでなく、適切な運動や生活習慣を推薦することで、健康寿命の延伸や健康経営の実現を図る。例えば、体幹、下肢、上肢のうち、特に評価値が低かった部位に関する強化トレーニングプログラムやストレッチプログラムを推薦する。例えば、体幹、下肢、上肢のそれぞれに対して評価値の閾値をあらかじめ記憶し、体幹、下肢、上肢の各評価値のうち少なくともいずれかが閾値を下回った場合にその下回った評価値に対応する身体部位について改善する運動プログラムまたはストレッチプログラムを推薦する。この場合、体幹、下肢、上肢のうち全部の閾値に基づいて運動プログラムまたはストレッチプログラムの推薦を判定してもよいし、いずれか一部の閾値に基づいて運動プログラムまたはストレッチプログラムの推薦を判定してもよい。
体幹に関する運動プログラムとしては、体幹筋力に関する評価値がその閾値を下回ったときに、その評価要素に関する運動プログラムを推薦する。特に重要な評価要素である閉眼片脚立ちの評価値が閾値を下回ったことを条件としてその評価要素に関する運動プログラムを推薦することとしてもよい。運動プログラムとして、体幹筋力を改善する運動プログラムがあらかじめ記憶される。
上肢に関する運動プログラムとしては、上肢筋力に関する評価値がその閾値を下回ったときに、その評価要素に関する運動プログラムを推薦する。特に重要な評価要素である握力の評価値が閾値を下回ったことを条件としてその評価要素に関する運動プログラムを推薦することとしてもよい。運動プログラムとして、上肢筋力を改善する運動プログラムがあらかじめ記憶される。
下肢に関する運動プログラムとしては、下肢筋力に関する評価値がその閾値を下回ったときに、その評価要素に関する運動プログラムを推薦する。特に重要な評価要素である5回椅子立ち上がりまたは閉眼片脚立ちの評価値が閾値を下回ったことを条件としてその評価要素に関する運動プログラムを推薦することとしてもよい。運動プログラムとして、下肢筋力を改善する運動プログラムがあらかじめ記憶される。
体幹に関するストレッチプログラムとしては、体幹柔軟性に関する評価値がその閾値を下回ったときに、その評価要素に関するストレッチプログラムを推薦する。特に重要な評価要素である体幹姿勢の評価値が閾値を下回ったことを条件としてその評価要素に関するストレッチプログラムを推薦することとしてもよい。ストレッチプログラムとして、体幹柔軟性を改善するストレッチプログラムがあらかじめ記憶される。
上肢に関するストレッチプログラムとしては、上肢柔軟性に関する評価値がその閾値を下回ったときに、その評価要素に関するストレッチプログラムを推薦する。特に重要な評価要素である肩関節可動域の評価値が閾値を下回ったことを条件としてその評価要素に関するストレッチプログラムを推薦することとしてもよい。ストレッチプログラムとして、上肢柔軟性を改善するストレッチプログラムがあらかじめ記憶される。
下肢に関するストレッチプログラムとしては、下肢柔軟性に関する評価値がその閾値を下回ったときに、その評価要素に関するストレッチプログラムを推薦する。特に重要な評価要素である股関節可動域の評価値が閾値を下回ったことを条件としてその評価要素に関するストレッチプログラムを推薦することとしてもよい。ストレッチプログラムとして、下肢柔軟性を改善するストレッチプログラムがあらかじめ記憶される。
図9は、第3実施形態における健康状態取得装置12の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態における健康状態取得装置12は、第1、2実施形態における健康状態取得装置12の構成に加えて、さらに体幹評価取得部152、上肢評価取得部154、下肢評価取得部156を備える。体幹評価取得部152は、体幹の評価要素である体幹姿勢等の評価値を取得する。上肢評価取得部154は、上肢の評価要素である肩関節可動域等の評価値を取得する。下肢評価取得部156は、下肢の評価要素である股関節可動域等の評価値を取得する。体幹評価取得部152、上肢評価取得部154、下肢評価取得部156は、被検者に各評価要素を測定するためのプログラムを実行し、各測定値を取得する。体幹評価取得部152、上肢評価取得部154、下肢評価取得部156は、各測定値またはその測定値および所定の評価軸に基づいた評価値を決定する。各測定値または評価値は、通信制御部30によって健康状態診断装置14へ送信される。
図10は、第3実施形態における健康状態診断装置14の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態における健康状態診断装置14は、第2実施形態における健康状態診断装置14の構成に加えて、さらに体幹評価取得部158、上肢評価取得部160、下肢評価取得部162、運動推薦処理部164を備える。体幹評価取得部158、上肢評価取得部160、下肢評価取得部162は、健康状態取得装置12から受け取る上述の各評価要素に対する評価値を取得し、または、健康状態取得装置12から受け取る各測定値および所定基準に基づいて各評価要素に対する評価値を決定する。運動推薦処理部164は、体幹評価取得部158、上肢評価取得部160、下肢評価取得部162によって取得された各評価値および上述の各推薦基準にしたがって、推薦する運動プログラムまたはストレッチプログラムを決定する。運動推薦処理部164は、持久力の評価値と歩行能力の評価値に基づいて、歩行プランをさらに推薦してもよい。
図11は、第3実施形態における診断結果の表示画面例を示す。本実施形態における診断結果画面100には、被検者表示欄102、総合評価欄140の他、運動推薦欄146が含まれる。運動推薦欄146には、運動プログラム欄147とストレッチプログラム欄148が含まれる。運動プログラム欄147には、推薦する運動プログラムとして、運動を推薦するアドバイスの文章、運動を推薦する身体部位(例えば「下肢」)、推薦する運動プログラム、例えば「スクワット」と「カーフレイズ」といったプログラム名、その写真、ポイントとなる事項が表示される。ストレッチプログラム欄148には、推薦するストレッチプログラムとして、ストレッチを推薦するアドバイスの文章、ストレッチを推薦する身体部位(例えば「下肢」)、推薦するストレッチプログラム、例えば「もも裏〜お尻」と「ふくらはぎ」といったストレッチ箇所、その写真、ポイントとなる事項が表示される。
(第4実施形態)
本実施形態は、基本的な構成において第1〜3実施形態と共通するが、年齢差決定部54が被検者の評価年齢を良好な健康状態にある比較対象者の指標年齢との年齢差を診断結果として決定する点で、第1〜3実施形態と相違する。以下、第1〜3実施形態と共通する事項については説明を省略し、相違する事項を中心に説明する。
比較情報記憶部52は、比較対象として、良好な健康状態にある複数人の比較対象者、より具体的には理想的な健康状態にあるアスリートやモデルといった比較対象者の指標年齢をあらかじめ記憶する。本実施形態における比較対象者は、理想とする健康状態にある人であり、比較情報記憶部52はそうした健康状態にある人たちの各評価年齢の平均値をあらかじめ指標年齢として記憶する。比較情報記憶部52が記憶する比較対象者の指標年齢は、複数人の比較対象者の実年齢と評価年齢の関係を回帰分析した回帰式として求めて記憶してもよい。あるいは、理想的な健康状態にある比較対象者の実年齢またはその平均を指標年齢として記憶してもよい。比較情報記憶部52は、理想的な健康状態にある比較対象者の指標体力年齢、指標認知年齢、指標歩行年齢、またはそれらの回帰式をさらに比較対象として記憶してもよい。あるいは、理想的な体力状態にある比較対象者の実年齢またはその平均、理想的な認知機能状態にある比較対象者の実年齢またはその平均、理想的な歩行能力状態にある比較対象者の実年齢またはその平均を、それぞれ指標体力年齢、指標認知年齢、指標歩行年齢として記憶してもよい。
年齢差決定部54は、被検者の評価年齢と指標年齢との年齢差を健康年齢差として決定する。ただし、第1〜3実施形態と異なり、本実施形態にいう健康年齢差は、「理想的な評価年齢まであと5歳」といった評価結果や、「理想的な評価年齢まであと10歳の若返りが必要」といった評価結果となる。
以上、本発明について実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。